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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】内服用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20231222BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/132 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 36/31 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20231222BHJP
   A61P 17/14 20060101ALN20231222BHJP
   A61P 17/18 20060101ALN20231222BHJP
   A61P 39/06 20060101ALN20231222BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/132
A61K36/258
A61K36/31
A61P17/00
A61P17/14
A61P17/18
A61P39/06
A61P43/00 107
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019056389
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2019182842
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2018076987
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】愛宕 世高
(72)【発明者】
【氏名】田村 大介
(72)【発明者】
【氏名】野田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】上田 寿枝
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-151480(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165309(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/013086(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ピロロキノリンキノン又はその塩と、(B)ポリアミンと、(C)マカエキス及びオタネニンジンエキスからなる群より選択される少なくとも一種とを含有する、内服用組成物。
【請求項2】
(B)ポリアミンが、スペルミジン、スペルミン及びプトレスシンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の内服用組成物。
【請求項3】
(A)ピロロキノリンキノン又はその塩の含有量が、内服用組成物の全量を基準として、0.01~30重量%である、請求項1又は2に記載の内服用組成物。
【請求項4】
(B)ポリアミンがスペルミジンとスペルミンとを含み、スペルミジンに対するスペルミンの重量比率が0.01~10である、請求項1~3のいずれか一項に記載の内服用組成物。
【請求項5】
内服用組成物が、錠剤、顆粒剤、散剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、ゼリー剤又は液剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の内服用組成物。
【請求項6】
ピロロキノリンキノン又はその塩と、ポリアミンとを含有する組成物に、マカエキス及びオタネニンジンエキスからなる群より選択される少なくとも一種を配合することを含む、該ピロロキノリンキノン又はその塩の安定性を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内服用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロロキノリンキノン(PQQ)は新しいビタミンの可能性があることが提案されており、注目を集めている(例えば、非特許文献1)。ピロロキノリンキノンは、活性酸素やラジカルの除去作用、細胞増殖促進作用、紫外線吸収作用、神経成長因子産生促進作用、脳機能改善作用、育毛作用、顔色改善作用、メラニン産生抑制及び美白作用、ミトコンドリア賦活作用など多くの生理活性を有することが知られており、医薬品、医薬部外品、化粧品又は健康補助食品(サプリメント)における有効成分としての使用が期待されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
ここで、ピロロキノリンキノンの製剤中での安定性を向上させるための試みとして、例えば特許文献3及び4には、ピロロキノリンキノンの塩やその誘導体が製剤中での安定性に優れていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-20512号公報
【文献】特開平6-100428号公報
【文献】特開平8-20585号公報
【文献】特開2017-25110号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Nature,422,p832,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、本発明者らは、ピロロキノリンキノン又はその塩を含有する組成物に、タンパク質の合成や細胞増殖に必須とされるポリアミンを含有する組成物を配合すると、ピロロキノリンキノン又はその塩の安定性が低下するとの知見を得た(後述の参考試験例1)。
【0007】
本発明は、ポリアミンを含有しながらピロロキノリンキノンの安定性が向上した内服用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、(A)ピロロキノリンキノン又はその塩と、(B)ポリアミンとを含有する内服用組成物に(C)生薬を配合することにより、該組成物中におけるピロロキノリンキノン又はその塩の安定性が向上することを見出した。本発明はこの新規な知見に基づくものである。
【0009】
本発明は、例えば、以下の各発明を提供する。
[1]
(A)ピロロキノリンキノン又はその塩と、(B)ポリアミンと、(C)生薬とを含有する、内服用組成物。
[2]
(B)ポリアミンが、スペルミジン、スペルミン及びプトレスシンからなる群より選択される少なくとも一種である、[1]に記載の内服用組成物。
[3]
(B)ポリアミンとして、ポリアミン組成物を含有する、[1]又は[2]に記載の内服用組成物。
[4]
(C)生薬が、生薬抽出物である、[1]~[3]のいずれかに記載の内服用組成物。
[5]
生薬抽出物が、ショウガエキス、マカエキス、カンゾウエキス、オウギエキス、チンピエキス、シャクヤクエキス、オタネニンジンエキス、ウコンエキス、ニクジュヨウエキス、ケイヒエキス、エゾウコギエキス、サンザシエキス、ジオウエキス、トウキエキス及びノコギリヤシエキスからなる群より選択される少なくとも一種である、[4]に記載の内服用組成物。
[6]
生薬抽出物が、ショウガエキス、マカエキス、カンゾウエキス、オウギエキス、チンピエキス、シャクヤクエキス、オタネニンジンエキス、ウコンエキス、ニクジュヨウエキス、ケイヒエキス、エゾウコギエキス、サンザシエキス、ジオウエキス、トウキエキス、ノコギリヤシエキス、イチョウ葉エキス、トンカットアリエキス、フランス海岸松樹皮エキス、ヨーロッパオークエキス、ジオスゲニン含有山芋エキス、カンカエキス、ニンニクエキス、エゾウコギエキス、ムクナエキス、クチナシエキス、シラジットエキス、冬虫夏草菌糸体末、黒ショウガエキス及び黒胡椒抽出物からなる群より選択される少なくとも一種である、[4]に記載の内服用組成物。
[7]
(A)ピロロキノリンキノン又はその塩の含有量が、内服用組成物の全量を基準として、0.01~30重量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の内服用組成物。
[8]
(B)ポリアミンの含有量が、内服用組成物の全量を基準として、0.001~10重量%である、[1]~[7]のいずれかに記載の内服用組成物。
[9]
(B)ポリアミンがスペルミジンとスペルミンとを含有し、スペルミジンに対するスペルミンの重量比率が0.01~10である、[1]~[8]のいずれかに記載の内服用組成物。
[10]
(A)ピロロキノリンキノン又はその塩の一日あたりの摂取量が7~100mgである、[1]~[9]のいずれかに記載の内服用組成物。
[11]
(B)ポリアミンの一日あたりの摂取量が0.001~20mgである、[1]~[10]のいずれかに記載の内服用組成物。
[12]
内服用組成物が、錠剤、顆粒剤、散剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、ゼリー剤又は液剤である、[1]~[11]のいずれかに記載の内服用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリアミンを含有しながらピロロキノリンキノン又はその塩の安定性が向上した内服用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態に係る内服用組成物は、(A)ピロロキノリンキノン又はその塩(「(A)成分」ともいう。)と、(B)ポリアミン(「(B)成分」ともいう。)と、(C)生薬(「(C)成分」ともいう。)とを含有する。
【0013】
〔(A)成分〕
ピロロキノリンキノンは、下記式:
【化1】

で表される公知の化合物である。
【0014】
ピロロキノリンキノンの塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム円及びマグネシウム塩が挙げられる。
【0015】
ピロロキノリンキノン又はその塩としては、ピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩が好ましく、ピロロキノリンキノンのナトリウム塩がより好ましく、ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩が更に好ましい。
【0016】
ピロロキノリンキノン又はその塩は、市販されているものを使用することもできる。
【0017】
本実施形態に係る内服用組成物における(A)成分の含有量は、製剤の安定性の観点、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、内服用組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量が、0.01~30重量%であることが好ましく、0.2~10重量%であることがより好ましく、1~5重量%であることが更に好ましく、1.3~3重量%であることが特に好ましい。
【0018】
本実施形態に係る内服用組成物において、(A)成分の一日あたりの摂取量は摂取する個体の状態(体重、年齢、性別等)、内服用組成物の製剤形態等に応じて異なりうるが、1回量としての摂取しやすさの観点、(A)成分に基づく生理作用の有効性の観点、安全性の観点、本発明による効果をより一層高める観点から、好ましくは7~100mg、より好ましくは10~40mg、更に好ましくは20~21mgである。
【0019】
〔(B)成分〕
ポリアミンは、分子内に第一級アミノ基を2つ以上含む脂肪族炭化水素である。ポリアミンの具体例としては、例えば、プトレスシン、カダベリン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、カルジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、スペルミン、テルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、アミノプロピルホモスペルミン、カナバルミン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、アミノプロピルカナバルミン、ビス(アミノプロピル)ホモスペルミン、ビス(アミノプロピル)ノルスペルミン、アミノブチルカナバルミン、アミノプロピルホモスペルミン、ホモペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミン、セルモヘキサミン、ホモセルモヘキサミンが挙げられる。ポリアミンとしては、利用しやすさの観点から、スペルミジン、スペルミン、プトレスシンが好ましく、スペルミジン、スペルミンがより好ましく、スペルミジンが更に好ましい。
【0020】
ポリアミンは、市販のものを用いることもできる。ポリアミンは、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ポリアミンとして、大豆(好ましくは大豆胚芽)、小麦(好ましくは小麦胚芽)又は米(好ましくは米胚芽)等の植物からの抽出物、魚介類(好ましくは白子)からの抽出物、乾燥清酒酵母、酵母エキスなどのポリアミンを含有する組成物(「ポリアミン組成物」ともいう。)を用いることもできる。ポリアミン組成物が植物からの抽出物である場合、抽出溶媒としては、水、若しくはエタノール等の有機溶媒又はこれらの混合溶媒等を使用することができる。ポリアミン組成物としては、利用しやすさの観点から、植物からの抽出物が好ましく、大豆(好ましくは大豆胚芽)からの抽出物がより好ましい。市販のポリアミン組成物としては、例えば、「ソイポリア」(コンビ株式会社製)、「オリザポリアミン-P」(オリザ油化株式会社製)、「オリザポリアミン-LC」(オリザ油化株式会社製)、「ファイトポリアミン-S」(東洋紡株式会社製)、「ファイトポリアミン-SP」(東洋紡株式会社製)、「エリオンSP」(三菱瓦斯化学株式会社製)などが挙げられる。
【0021】
本実施形態に係る内服用組成物における(B)成分の含有量は特に限定されず、(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、内服用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(B)成分の含有量としては、製剤の安定性の観点、(B)成分の有する臭気の影響を小さくする観点から、例えば、内服用組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量が、0.001~10重量%であることが好ましく、0.01~0.1重量%であることがより好ましく、0.02~0.05重量%であることが更に好ましい。
【0022】
本実施形態に係る内服用組成物において、(B)成分としてポリアミン組成物を含有する場合、ポリアミン組成物の含有量は特に限定されず、ポリアミン組成物の種類、他の配合成分の種類及び含有量、内服用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。ポリアミン組成物の含有量としては、製剤の安定性の観点、(B)成分に基づく生理作用の有効性の観点、安全性の観点、(B)成分の有する臭気の影響を小さくする観点から、例えば、内服用組成物の総量を基準として、ポリアミン組成物の総含有量が、5~35重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましく、14~23重量%であることが更に好ましい。
【0023】
本実施形態に係る内服用組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、内服用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る内服用組成物に含まれる(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.001~0.1重量部であることが好ましく、0.01~0.03重量部であることがより好ましく、0.015~0.02重量部であることが更に好ましい。
【0024】
本実施形態に係る内服用組成物において、(B)成分としてポリアミン組成物を含有する場合、(A)成分に対するポリアミン組成物の含有比率は特に限定されず、(A)成分及びポリアミン組成物の種類、他の配合成分の種類及び含有量、内服用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するポリアミン組成物の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る内服用組成物に含まれる(A)成分の総含有量1重量部に対して、ポリアミン組成物の総含有量が、5~15重量部であることが好ましく、7~10重量部であることがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係る内服用組成物において、(B)成分がスペルミジンとスペルミンとを含む場合、スペルミジンに対するスペルミンの重量比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、内服用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。スペルミジンに対するスペルミンの重量比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、0.01~10であることが好ましく、0.1~2であることがより好ましく、0.2~0.5であることが更に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る内服用組成物において、(B)成分の一日あたりの摂取量は摂取する個体の状態(体重、年齢、性別等)、内服用組成物の製剤形態等に応じて異なりうるが、(B)成分に基づく生理作用の有効性の観点、安全性の観点、(B)成分の有する臭気の影響を小さくする観点から、好ましくは0.001~20mg、より好ましくは0.01~2mg、更に好ましくは0.1~0.7mg、特に好ましくは0.3~0.4mgである。
【0027】
本実施形態に係る内服用組成物において、(B)成分としてポリアミン組成物を含有する場合、ポリアミン組成物の一日あたりの摂取量は摂取する個体の状態(体重、年齢、性別等)、内服用組成物の製剤形態等に応じて異なりうるが、1回量としての摂取しやすさの観点、(B)成分に基づく生理作用の有効性の観点、安全性の観点、(B)成分の有する臭気の影響を小さくする観点から、好ましくは50~400mg、より好ましくは100~300mg、更に好ましくは200~250mg、特に好ましくは201~220mgである。
【0028】
〔(C)成分〕
生薬は、薬用にする目的をもって、植物、動物、鉱物等の天然物の全部又は一部をそのまま、又はこれを乾燥する等の簡単な加工を施したものをいう。本実施形態に係る内服用組成物において、生薬の形態としては、例えば、生薬そのもの(原生薬);原生薬を乾燥、粉末化した生薬末;原生薬又は生薬末を水、若しくはエタノール等の有機溶媒又はこれらの混合溶媒等で抽出した生薬抽出物などが挙げられる。これらの中でも、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、生薬抽出物が好ましい。生薬抽出物は、抽出液そのまま(チンキ、流エキスなど)であってもよく、抽出液を希釈又は濃縮したもの(軟エキスなど)であってもよく、又は抽出液を乾燥した後、粉末化若しくはペースト状としたもの(乾燥エキスなど)であってもよい。
【0029】
生薬抽出物の具体例としては、例えば、ショウガエキス、マカエキス、カンゾウエキス、オウギエキス、チンピエキス、シャクヤクエキス、オタネニンジンエキス、ウコンエキス、ニクジュヨウエキス、ケイヒエキス、エゾウコギエキス、サンザシエキス、ジオウエキス、トウキエキス、ノコギリヤシエキス、イチョウ葉エキス、トンカットアリエキス、フランス海岸松樹皮エキス、ヨーロッパオークエキス、ジオスゲニン含有山芋エキス、カンカエキス、ニンニクエキス、エゾウコギエキス、ムクナエキス、クチナシエキス、シラジットエキス、冬虫夏草菌糸体末、黒ショウガエキス、黒胡椒抽出物等が挙げられる。生薬抽出物としては、製剤の安定性の観点から、マカエキス、オタネニンジンエキス、ノコギリヤシエキス、ショウガエキス、トンカットアリエキス、フランス海岸松樹皮エキス、ヨーロッパオークエキスが好ましく、マカエキス、オタネニンジンエキスがより好ましい。
【0030】
生薬は、市販されているものを使用してもよい。生薬は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本実施形態に係る内服用組成物における(C)成分の含有量は特に限定されず、(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、内服用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(C)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、内服用組成物の総量を基準として、(C)成分の総含有量が、0.1~70重量%であることが好ましく、1~10重量%であることがより好ましく、2~4重量%であることが更に好ましい。
【0032】
本実施形態に係る内服用組成物における、(A)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、内服用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(C)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る内服用組成物に含まれる(A)成分の総含有量1重量部に対して、(C)成分の総含有量が、0.1~3重量部であることが好ましく、0.5~2.5重量部であることがより好ましく、1~1.5重量部であることが更に好ましい。
【0033】
本実施形態に係る内服用組成物における、(B)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(B)成分及び(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、内服用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(B)成分に対する(C)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る内服用組成物に含まれる(B)成分の総含有量1重量部に対して、(C)成分の総含有量が、50~250重量部であることが好ましく、80~200重量部であることがより好ましく、100~170重量部であることが更に好ましい。
【0034】
本実施形態に係る内服用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の薬理活性成分又は生理活性成分を含むことができる。このような薬理活性成分又は生理活性成分の具体例としては、例えば、ユビキノン(コエンザイムQ10)、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンA、ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、タウリン、カルノシン、アンセリン、バレニン、シトルリン、γアミノ酪酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アルギニン、オルニチン、カルニチン、グルタミン酸、グルタミン、クレアチン、カルニチン、ルテオリン、ケルセチン、ゲニスチン、シアニジン、レスベラトロール、ジオスゲニン、イソフラボンアグリコン、リポ酸、亜鉛、鉄、カルシウム、セレン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、βカロテン、ミスリチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プラセンタエキス、ピクノジェノール等が挙げられる。薬理活性成分又は生理活性成分は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本実施形態に係る内服用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記成分の他に種々の添加剤を含むことができる。このような添加剤の具体例としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、糖類、糖アルコール・多価アルコール類、高甘味度甘味料、油脂、乳化剤、増粘剤、酸味料、果汁類等が挙げられる。賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、ゼラチン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、硅酸等が挙げられる。結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。矯味剤としては、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。糖類としては、ショ糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖等が挙げられる。糖アルコール・多価アルコール類としては、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。油脂としては、紅花油(サフラワー油)、ブドウ種子油、ひまわり油(サンフラワー油)、オリーブ油、コーン油、ゴマ油、大豆油、菜種油、シソ油等が挙げられる。乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。増粘剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、ローカストビーンガム等が挙げられる。酸味料としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等が挙げられる。果汁類としてはレモン果汁、オレンジ果汁、ベリー系果汁等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。添加剤としては、製剤化時の(A)成分と(B)成分の安定性の観点から、油脂を含むことが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る内服用組成物の剤形としては特に限定されず、例えば、錠剤(口腔内崩壊錠、チュアブル錠、トローチ錠等を含む)、顆粒剤、散剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、トローチ剤、ゼリー剤又は液剤(懸濁剤、乳剤、シロップ剤等を含む)が挙げられる。内服用組成物の剤形としては、製剤化時の(A)成分と(B)成分の安定性の観点から、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤が好ましい。
【0037】
本実施形態に係る内服用組成物は、(A)ピロロキノリンキノン又はその塩を含有することにより、細胞増殖促進作用、脳機能改善作用、ミトコンドリア賦活作用等を有する。したがって、本実施形態に係る内服用組成物は、これらの作用を必要とする対象(例えば、ヒト、非ヒト動物等)に好適に使用することができる。
【0038】
本実施形態に係る内服用組成物は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品(飲料、食品)の成分として使用することができる。また、本実施形態に係る内服用組成物は、例えば、医薬製剤、医薬部外品製剤、特定保健用食品、栄養機能食品、老人用食品、特別用途食品、機能性表示食品、健康補助食品(サプリメント)、食品用製剤(例、製菓錠剤)、明らか食品として使用することもできる。
【0039】
本実施形態に係る内服用組成物が食品として使用される場合、当該食品は一般食品に(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに必要に応じてその他の成分を配合したものであってもよい。このような食品としては、クッキー、ビスケット、スナック菓子、ゼリー、グミ、チョコレート、ガム、飴、チーズ等の固体食品;栄養ドリンク、ジュース、茶飲料、コーヒー飲料、乳飲料等の液体食品が挙げられる。
【実施例
【0040】
以下、実施例等に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
〔参考試験例1:苛酷試験(1)〕
下記表1に示す内服用組成物(ソフトカプセル剤)を、常法に従い調製した。表1における各成分及び総重量の単位はmg(ミリグラム)である。得られた各内服用組成物を40℃で1ヶ月間保存した。保存後の各内服用組成物中のピロロキノリンキノン二ナトリウム塩(PQQ二ナトリウム塩)の含有量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。続いて、各内服組成物中のPQQ二ナトリウム塩について、上記測定において実際に使用したPQQ二ナトリウム塩の重量に対する測定値の割合を、基準量(20mg)に対する百分率として換算した(以下、当該換算によって算出した値を「換算量」と定義する)。この換算量を用いて、参考例1の換算量を基準とした比較例の換算量低下率を式1に従い算出した。結果を表1に示す。
(式1)換算量低下率(%)={(参考例1のPQQ二ナトリウム塩の換算量-比較例1のPQQ二ナトリウム塩の換算量)/参考例1のPQQ二ナトリウム塩の換算量}×100
<HPLC測定条件>
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:335nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:硫酸テトラブチルアンモニウム(2g)を水に溶解して1000mLの水溶液とした後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3.5に調整した水溶液/アセトニトリル(3:1)
流量:PQQ二ナトリウム塩の保持時間が約9.5分になるように調整
注入量:10μL
【0042】
【表1】
【0043】
PQQ二ナトリウム塩を含有する内服用組成物において、ポリアミン組成物を配合した内服用組成物(比較例1)では、ポリアミン組成物を配合していない内服用組成物(参考例1)と比較して、PQQ二ナトリウム塩の換算量が低下した。ピロロキノリンキノンは、アミノ酸などのアミノ基を有する物質と反応して、イミダゾロピロロキノリンに変換されることが報告されていること(BioFactors,5,p75-81,1995)、また、以下の試験例2において示されているように、PQQ二ナトリウム塩を含有する組成物において、ポリアミンの一種であるスペルミジンを配合した組成物では、スペルミジンを配合していない組成物と比較して、PQQ二ナトリウム塩の換算量Aが低下したことから、内服用組成物中のPQQ二ナトリウム塩がアミノ基を有するポリアミンと反応し、その結果PQQ二ナトリウム塩の安定性が低下することが強く示唆された。
【0044】
〔試験例1:苛酷試験(2)〕
下記表2に示す内服用組成物(ソフトカプセル剤)を、常法に従い調製した。表2における各成分及び総重量の単位はmg(ミリグラム)である。得られた各内服用組成物を40℃で1ヶ月間保存した。保存後の各内服用組成物中のPQQ二ナトリウム塩の含有量を、HPLCを用いて測定した。測定条件は参考試験例1と同様である。上記測定で得られた値から、参考試験例1と同様に換算量を算出した。比較例1の換算量を基準とした実施例の換算量低下抑制率を式2に従い算出した。結果を表2に示す。
(式2)換算量低下抑制率(%)={(実施例のPQQ二ナトリウム塩の換算量-比較例1のPQQ二ナトリウム塩の換算量)/比較例1のPQQ二ナトリウム塩の換算量}×100
【0045】
【表2】
【0046】
PQQ二ナトリウム塩とポリアミン組成物とを含有する内服用組成物において、生薬(マカエキス、オタネニンジンエキス)を配合した内服用組成物(実施例1、2)では、生薬を配合していない内服用組成物(比較例1)と比較して、PQQ二ナトリウム塩の換算量の低下が抑制された。すなわち、生薬がPQQ二ナトリウム塩を安定化していることが確認された。
なお、実施例1及び2で調製した、1粒あたりPQQ二ナトリウム塩を7mg、ポリアミン組成物(ソイポリア(コンビ株式会社製))を67mgそれぞれ含有するソフトカプセル剤は、1日あたり3粒摂取するのが望ましい。
【0047】
〔試験例2:保存試験〕
下記表3に示す組成物を、下記の方法に従い調製した。表3における各成分及び総重量の単位はmg(ミリグラム)である。具体的には、まずサフラワー油を65℃に加温し、次いでグリセリン脂肪酸エステルを投入して混合した後に、約30℃になるまで放冷した。得られた混合液に、PQQ二ナトリウム塩、スペルミジン、マカエキス及びオタネニンジンエキスを投入して混合した。混合後、-0.07MPaにて10分間減圧脱気を行って各組成物を得た。得られた各組成物を常温で24時間、次いで4±2℃で3日間保存した。保存後の各組成物中のPQQ二ナトリウム塩の含有量を、HPLCを用いて測定した。測定条件は参考試験例1と同様である。続いて、各組成物中のPQQ二ナトリウム塩について、上記測定において実際に使用したPQQ二ナトリウム塩の重量に対する測定値の割合を、基準量(各組成物100mg中におけるPQQ二ナトリウム塩の重量)に対する百分率として換算した(以下、当該換算によって算出した値を「換算量A」と定義する)。この換算量Aを用いて、参考例2の換算量Aを基準とした、実施例又は比較例の換算量A低下率を式3に従い算出した。結果を表3に併せて示す。
(式3)換算量A低下率(%)={(参考例2のPQQ二ナトリウム塩の換算量A-実施例又は比較例のPQQ二ナトリウム塩の換算量A)/参考例2のPQQ二ナトリウム塩の換算量A}×100
【0048】
【表3】
【0049】
PQQ二ナトリウム塩を含有する組成物において、ポリアミンの一種であるスペルミジンを配合した組成物(比較例2)では、スペルミジンを配合していない組成物(参考例2)と比較して、PQQ二ナトリウム塩の換算量Aが低下した。すなわち、組成物中のPQQ二ナトリウム塩がスペルミジンと反応し、その結果PQQ二ナトリウム塩の安定性が低下することが確認された。
一方、PQQ二ナトリウム塩とポリアミンの一種であるスペルミジンとを含有する組成物に、生薬(マカエキス、オタネニンジンエキス)を配合した組成物(実施例3、4)では、生薬を配合していない組成物(比較例2)と比較して、PQQ二ナトリウム塩の換算量Aの低下が抑制された。すなわち、生薬がPQQ二ナトリウム塩を安定化していることが確認された。
【0050】
〔製剤例〕
表4及び5に記載の各成分を常法に従い混合して、ソフトカプセルを製造する。表4及び5中における各成分の単位はmg(ミリグラム)である。なお、表4におけるポリアミン組成物について、ソイポリア(コンビ株式会社製)、「オリザポリアミン-P」(オリザ油化株式会社製)、「オリザポリアミン-LC」(オリザ油化株式会社製)、「ファイトポリアミン-S」(東洋紡株式会社製)、「ファイトポリアミン-SP」(東洋紡株式会社製)又は「エリオンSP」(三菱瓦斯化学株式会社製)を配合するものを、それぞれ製剤例1~10、製剤例11~20、製剤例21~30、製剤例31~40、製剤例41~50及び製剤例51~60とした。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
表6に記載の各成分を常法に従い混合して、表6に記載の各製剤を製造する。表6中における各成分の単位は表中に明記したもの以外はmg(ミリグラム)である。
【0054】
【表6】