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特許7407530ビールサーバシステム及びビールホースの洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ビールサーバシステム及びビールホースの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/07 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
B67D1/07
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019129319
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2020015553
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018131792
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平山 裕二
(72)【発明者】
【氏名】木田 亘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 時夫
(72)【発明者】
【氏名】東山 堅一
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218226(JP,A)
【文献】特開2001-072193(JP,A)
【文献】特開2000-079993(JP,A)
【文献】特開2017-043385(JP,A)
【文献】特開平11-171298(JP,A)
【文献】中国実用新案第205649553(CN,U)
【文献】特開2012-250767(JP,A)
【文献】特開2001-289364(JP,A)
【文献】特開2001-287797(JP,A)
【文献】特表2007-515359(JP,A)
【文献】特開2014-000548(JP,A)
【文献】米国特許第04941593(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/07
B08B 9/027
B08B 9/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビールを注出するサーバ本体と、前記サーバ本体に供給されるビールが充填されたビール樽と、前記ビール樽に充填されたビールを前記サーバ本体に圧送するための炭酸ガスを前記ビール樽に供給する炭酸ガス供給源と、を有するビールサーバシステムであって、
前記ビール樽から少なくとも前記サーバ本体にビールを通液するビールホースと、
前記炭酸ガス供給源から前記ビール樽に前記炭酸ガスを通気するガスホースと、
前記ビールホース及び前記ガスホースが接続されるとともに、前記ビール樽に着脱自在なディスペンスヘッドと、
さらに、前記ディスペンスヘッドに前記ビール樽に代えて着脱自在であり、前記ビールホースの洗浄時に使用される洗浄用アダプタと、が備えられ、
前記ビールホースは、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成され、
前記洗浄用アダプタは、洗浄水を貯留する洗浄水ボトルと、前記洗浄水ボトルに設けられた前記洗浄水の給水口に着脱自在なボトルヘッドとを備え、
前記ボトルヘッドは、前記ディスペンスヘッドが接続可能に構成されるとともに、前記炭酸ガス供給源から供給される前記炭酸ガスによって、前記ディスペンスヘッドを介して前記ビールホースに圧送される前記洗浄水に前記炭酸ガスを混合させる、マイクロバブル発生部を含まない気液混合部を備え、
前記気液混合部は、前記ボトルヘッドから前記洗浄水ボトルの内部に垂下するように設けられた流体ホースから構成され、
前記流体ホースは、前記ボトルヘッドと前記洗浄水ボトルに貯留された前記洗浄水との水面との間に前記ガスホースから供給された前記炭酸ガスを、該流体ホースの内部に導入するガス導入口が設けられ、
前記流体ホースは、前記洗浄水ボトルの深さの1/3以下の長さに構成されているビールサーバシステム。
【請求項2】
前記流体ホースは、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成されている請求項1に記載のビールサーバシステム。
【請求項3】
ビールを注出するサーバ本体と、前記サーバ本体に供給されるビールが充填されたビール樽と、前記ビール樽に充填されたビールを前記サーバ本体に圧送するための炭酸ガスを前記ビール樽に供給する炭酸ガス供給源と、を有するビールサーバシステムに備えられ、前記ビール樽から少なくとも前記サーバ本体にビールを通液するビールホースの洗浄方法であって、
前記ビールホースは、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成されたものであって、
該ビールホースの内部に、気液混合流体を通流させて該ビールホースの内部を洗浄する工程を有し、
前記ビールホースの内部を洗浄する工程において、前記ビールホースに、前記ビール樽に代えて、洗浄水が貯留された洗浄用アダプタを接続し、
該洗浄用アダプタに前記炭酸ガス供給源から炭酸ガスを供給することによって、前記洗浄用アダプタに貯留された洗浄水の全量の35%以下を、前記炭酸ガスとともに気液混合流体として前記ビールホースに通流させ、
前記気液混合流体は、マイクロバブル発生部を含まない気液混合部において生成される、
ことを特徴とするビールホースの洗浄方法。
【請求項4】
前記ビールホースの内部を洗浄する工程において、前記気液混合流体に含まれる前記洗浄水の衝突によって、前記ビールホースの内部に付着した汚れを剥離させる請求項3に記載のビールホースの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールを注出するサーバ本体と、前記サーバ本体に供給されるビールが充填されたビール樽と、前記ビール樽に充填されたビールを前記サーバ本体に圧送するための炭酸ガスを前記ビール樽に供給する炭酸ガス供給源と、を有するビールサーバシステム、及び、前記ビールサーバシステムに備えられ、前記ビール樽から少なくとも前記サーバ本体にビールを通液するビールホースの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビアホール、居酒屋等の店舗においては、店員がビールサーバシステムからビールをジョッキに注いで客に提供している。
【0003】
このようなビールサーバシステムは、サーバコックを前面に備えるとともに冷却装置が内蔵されたサーバ本体と、サーバ本体に供給するビールが詰められたビール樽と、ビール樽に供給する炭酸ガスが充填されているガスボンベ等、が備えられている。
【0004】
ビール樽には、ガスボンベからの炭酸ガスが供給されるガスホースと、ビール樽内のビールをサーバコックへ供給するためのビールホースとが接続されている。ガスボンベから所定圧力に調整された炭酸ガスがガスホースを介してビール樽に供給され、ビール樽内においては、炭酸ガスによってビールの液面上の空洞部分の気圧が高められ、ビールの液面が押圧された状態となっている。サーバコックの操作により、ビール樽内のビールは、ビールホースに圧送され、冷却装置を通過する際に冷却され、該サーバコックからジョッキに注出される。
【0005】
このようなビールサーバシステムにおいては、経時的に、ポリエチレンのような可撓性樹脂から構成されるビールホース内に、ビールに含まれる酵母に由来して汚れ成分が発生付着する。この汚れ成分によって、ビールホースの見た目や注出されるビールの風味が損なわれる虞がある。そこで、店舗においては、例えば一日一回程度、ビールホースに洗浄水を通水し、一週間に一回程度、ビールホースに洗浄用のスポンジを通流させる洗浄作業が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2007-515359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、洗浄用のスポンジによるビールホースの洗浄作業は手間と時間がかかるため、洗浄用のスポンジによる洗浄作業をなくしたいという要望があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術が与える課題に鑑み、ビールホースの洗浄力が向上したビールサーバシステム及びビールホースの洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するための、本発明によるビールサーバシステムの特徴構成は、ビールを注出するサーバ本体と、前記サーバ本体に供給されるビールが充填されたビール樽と、前記ビール樽に充填されたビールを前記サーバ本体に圧送するための炭酸ガスを前記ビール樽に供給する炭酸ガス供給源と、を有するビールサーバシステムであって、前記ビール樽から少なくとも前記サーバ本体にビールを通液するビールホースと、前記炭酸ガス供給源から前記ビール樽に前記炭酸ガスを通気するガスホースと、前記ビールホース及び前記ガスホースが接続されるとともに、前記ビール樽に着脱自在なディスペンスヘッドと、さらに、前記ディスペンスヘッドに前記ビール樽に代えて着脱自在であり、前記ビールホースの洗浄時に使用される洗浄用アダプタと、が備えられ、前記ビールホースは、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成され、前記洗浄用アダプタは、洗浄水を貯留する洗浄水ボトルと、前記洗浄水ボトルに設けられた前記洗浄水の給水口に着脱自在なボトルヘッドとを備え、前記ボトルヘッドは、前記ディスペンスヘッドが接続可能に構成されるとともに、前記炭酸ガス供給源から供給される前記炭酸ガスによって、前記ディスペンスヘッドを介して前記ビールホースに圧送される前記洗浄水に前記炭酸ガスを混合させる、マイクロバブル発生部を含まない気液混合部を備え、前記気液混合部は、前記ボトルヘッドから前記洗浄水ボトルの内部に垂下するように設けられた流体ホースから構成され、前記流体ホースは、前記ボトルヘッドと前記洗浄水ボトルに貯留された前記洗浄水との水面との間に前記ガスホースから供給された前記炭酸ガスを、該流体ホースの内部に導入するガス導入口が設けられて、前記流体ホースは、前記洗浄水ボトルの深さの1/3以下の長さに構成されている点にある。
【0010】
発明者らは、鋭意研究の結果、ビールホースのうち汚れ成分の発生付着する面である内面をポリフッ化ビニリデンから構成し、かつ、液体と気体とが混合された気液混合流体を通流させると、該ビールホースの内面に発生付着した汚れ成分を効果的に洗浄することができるという知見を得た。
【0011】
気液混合流体とは、液体と、気泡の径が目視可能な大きさの気体とが不均一に混合された流体である。ただし、液体と、気泡の径が極めて小さい気体とが均一に混合された流体、いわゆるマイクロバルブは含まない。
【0012】
気液混合流体は、液体である洗浄水に気体である炭酸ガスを導入させたものであってもよいし、液体である洗浄水と、気体である炭酸ガスをビールホースに対して交互に供給したものであってもよい。なお、炭酸ガスの導入や交互の供給は、自動的に行われてもよいし、手動的に行われてもよい。
【0013】
このように生成された気液混合流体を、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成されたビールホースに通流させると、ビールホースの内面に発生付着した汚れ成分に、炭酸ガスによって分断された洗浄水が断続的に接触し、この衝撃によって汚れ成分はビールホースの内面から剥離される。これはマイクロバブルのような疎水性を利用した汚れ成分の除去メカニズムとは異なる。
【0014】
上述のように気液混合流体の生成には、ビール樽のビールをサーバ本体に圧送するために使用される炭酸ガス供給源の炭酸ガスが用いられるので、ビールの圧送のための炭酸ガス供給源とは別に、気液混合流体を生成するための炭酸ガス供給源を用意する必要はない。
【0016】
上述の構成によると、流体ホースに備えられたガス導入口を介して、炭酸ガスを流体ホースの内部に直接的に導入することによって、洗浄水と該炭酸ガスとの気液混合流体が容易に生成される。
【0018】
流体ホースが、洗浄水ボトルの底まで至る長さであると、洗浄水の全量を圧送し終えるまで洗浄が終わらない。所定の洗浄時間、洗浄水量を実現するために、洗浄ボトル内に貯留する洗浄水量をあらかじめ減らすと、気液混合流体の圧送に不具合、すなわち、洗浄水の水位が低水位になると、気液混合が適切に行われない等の不具合が生じることが判明した。
【0019】
これに対して、流体ホースを、例えば洗浄水ボトルの底部まで至らない途中の長さに設定することによって、洗浄水の量を調節しなくても、所定の洗浄時間、洗浄水量を使用した時点で、洗浄を終えることができる。洗浄水の水位が、流体ホースの下端まで低下した時点で、該下端からは炭酸ガスのみが導入され、洗浄水が圧送されることがなくなるため、作業員は、サーバ本体側における気液混合流体の吐出の終了によって、ビールホースの洗浄の終了を確認することができる。
【0020】
本発明においては、前記流体ホースは、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成されていると好適である。
【0021】
流体ホースの内面が、ビールホースの内面と異なる材質から構成されていると、気液混合流体が流体ホースからビールホースに通液される際に、その流路表面の環境が大きく変化し、気液混合流体の性質に影響を及ぼす虞がある。これに対して、ビールホースと同様に、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成されていると、気液混合流体は流逮ホース内を通過するときと、ビールホースを通過するときとで、流路表面の環境が大きく変化することがないため、上述の虞がない。
【0022】
上述の目的を達成するための、本発明によるビールホースの洗浄方法の特徴構成は、ビールを注出するサーバ本体と、前記サーバ本体に供給されるビールが充填されたビール樽と、前記ビール樽に充填されたビールを前記サーバ本体に圧送するための炭酸ガスを前記ビール樽に供給する炭酸ガス供給源と、を有するビールサーバシステムに備えられ、前記ビール樽から少なくとも前記サーバ本体にビールを通液するビールホースの洗浄方法であって、前記ビールホースは、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成されたものであって、該ビールホースの内部に、気液混合流体を通流させて該ビールホースの内部を洗浄する工程を有し、前記ビールホースの内部を洗浄する工程において、前記ビールホースに、前記ビール樽に代えて、洗浄水が貯留された洗浄用アダプタを接続し、該洗浄用アダプタに前記炭酸ガス供給源から炭酸ガスを供給することによって、前記洗浄用アダプタに貯留された洗浄水の全量の35%以下を、前記炭酸ガスとともに、気液混合流体として前記ビールホースに通流させ、前記気液混合流体は、マイクロバブル発生部を含まない気液混合部において生成される点にある。
【0023】
発明者らの鋭意研究の結果、汚れ成分の発生付着する面である内面がポリフッ化ビニリデンから構成されたビールホースに対して、液体と気体とが混合された気液混合流体を通流させると、ビールホースの内面に発生付着した汚れ成分を効果的に洗浄することができるという知見が得られた。
【0024】
気液混合流体は、液体である洗浄水に気体である炭酸ガスを導入させたものであてもよいし、液体である洗浄水と、気体である炭酸ガスをビールホースに対して交互に供給したものであってもよい。なお、導入や、交互の供給は、自動的に行われてもよいし、手動的に行われてもよい。
【0026】
洗浄用アダプタに炭酸ガスを供給することによって、洗浄用アダプタに貯留した洗浄水とから気液混合流体を生成することができるため、ビールサーバとは別に気液混合流体を生成するための気体を用意する必要はない。
【0028】
上述の構成によると、洗浄水用アダプタに貯留された洗浄水の全量を使用しなくてもよいため、洗浄時間が必要以上に長くなりすぎることがない。
【0029】
本発明においては、前記ビールホースの内部を洗浄する工程において、前記気液混合流体に含まれる前記洗浄水の衝突によって、前記ビールホースの内部に付着した汚れを剥離させると好適である。
【0030】
上述の構成によると、ビールホースの内面に発生付着した汚れに、炭酸ガスによって分断された洗浄水が断続的に接触することによって、該汚れはビールホースの内面から剥離される。したがって、マイクロバブルのような疎水性を利用した汚れの除去メカニズムとは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ビールサーバシステムの説明図
図2】洗浄用アダプタの説明図
図3】洗浄評価試験の説明図
図4】洗浄評価試験の説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1に示すように、ビールサーバシステム1は、ビールをジョッキに注出するためのサーバコック3が備えられたサーバ本体4と、サーバ本体4に供給されるビールが充填されたビール樽2と、ビール樽2に充填されたビールをサーバ本体4に圧送するための炭酸ガスをビール樽2に供給する炭酸ガス供給源であるガスボンベ5と、を有する。
【0034】
ビール樽2には、着脱自在なディスペンスヘッド6が接続されている。ディスペンスヘッド6には、ガスボンベ5からビール樽2に炭酸ガスを通気するガスホース8と、ビール樽2からサーバ本体4へビールを通液するビールホース7と、が接続されている。
【0035】
ガスボンベ5から、圧力調整器9によって所定の圧力に調圧された炭酸ガスがガスホース8及びディスペンスヘッド6を介して、ビール樽2の内部に供給されると、ビール樽2の気相部の内圧が高められ、この内圧がビール樽2内のビール液面に作用し、ビールはディスペンスヘッド6及びビールホース7を介してサーバ本体4へ圧送される。
【0036】
ビールホース7は、少なくとも内面、好ましくは全体がポリフッ化ビニリデンから構成された可撓性の材料から構成されている。ビールホース7の長さは、該ビールサーバシステム1の設置状況に応じてさまざまだが、概ね2~3mである。
【0037】
サーバ本体4の内部には、冷却装置によって冷却された冷却槽10が備えられている。
冷却槽10には、ビールホース7とサーバコック3とを連通する冷却配管11が浸漬配置されている。ビール樽2から圧送されたビールは冷却槽10に浸漬配置された冷却配管11を通過する際に冷却される。なお、ビールホース7と冷却配管11とは、単一の配管であってもよい。この場合は、ビールホース7がディスペンスヘッド6とサーバコック3とを連通し、その一部が冷却槽10に浸漬配置される。
【0038】
サーバコック3は、ビールノズルと泡ノズルとが備えられたコック本体に、ビールを発泡させる発泡機構と、操作レバーの操作に連動してビールの通液経路の開閉及び切り替えを行う弁機構が内蔵されている。店員が該操作レバーを手前に傾倒操作するとビールノズルからビールが注出され、該操作レバーを奥へ傾倒操作すると泡ノズルから、発泡機構によって発泡させられた泡が注出される。
【0039】
なお、本発明において、「ビール」とは、上面発酵、下面発酵、自然発酵のもの、発泡酒等のビール風味の発泡アルコール飲料、ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料等を広く含む概念であって、ビール樽2に充填され、上記ビールサーバシステム1によってサーバ本体4のサーバコック3から注出し得る飲料であればよく、なんらか特定の種類や銘柄を排除するものではない。
【0040】
ところで、ビールサーバシステム1は、さらに、ビールホースの洗浄時に使用される洗浄用アダプタ20を備えている。洗浄用アダプタ20は、ビール樽2に代えてディスペンスヘッド6に着脱自在に構成されている。
【0041】
洗浄用アダプタ20は、洗浄水としての水道水を貯留する洗浄水ボトル21と、洗浄水ボトル21に設けられた洗浄水の給水口22に取付可能であり、これにディスペンスヘッド6が着脱自在に構成されたボトルヘッド23とを備えている。
【0042】
洗浄水ボトル21は、内容量が2L程度のボトルである。ボトルヘッド23を取り外した状態で給水口22から洗浄水を注ぎ入れることができる。
【0043】
ボトルヘッド23は、ディスペンスヘッド6が接続可能に構成されるとともに、ディスペンスヘッド6から供給される炭酸ガスによって、ディスペンスヘッド6を介してビールホース7に圧送される洗浄水に炭酸ガスを混合させる気液混合部24を備えている。
【0044】
ボトルヘッド23には、洗浄水ボトル21の内部に垂下するように流体ホース25が設けられている。流体ホース25も、ビールホース7と同様に、少なくとも内面、好ましくは全体がポリフッ化ビニリデンから構成された可撓性の材料から構成されている。
【0045】
流体ホース25は、ボトルヘッド23と洗浄水ボトル21に貯留された洗浄水との水面との間にガスホース8から供給された炭酸ガスを、流体ホース25の内部に導入するガス導入口26が設けられている。この流体ホース25及びガス導入口26が、ディスペンスヘッド6から供給される炭酸ガスによって、ビールホース7に圧送される洗浄水に炭酸ガスを混合させる気液混合部24を構成する。
【0046】
流体ホース25は、内径が約1.5cmであり、洗浄水ボトル21に貯留された洗浄水の全量である約2Lのうち所定量、例えば約0.7Lだけをビールホース7に圧送可能な長さ、例えば洗浄水ボトル21の深さの約1/3の長さに構成されている。これにより、洗浄水の水位が流体ホース25の下端以下となったときに流体ホース25には洗浄水が流れない。
【0047】
ガス導入口26は、流体ホース25のうち、上端から約2cmの高さ位置の周方向の20カ所に設けられた各直径が約1.0mmの孔部から構成されている。
【0048】
このような構成により、洗浄水ボトル21に貯留された洗浄水を、流体ホース25に圧送する際に、洗浄水ボトル21の気相部の炭酸ガスが、ガス導入口26を介して流体ホース25の内部に直接的に導入されることによって、流体ホース25を流れる洗浄水と、導入された炭酸ガスとから気液混合流体が生成される。そして、ビールサーバシステム1において、本発明に係るビールホースの洗浄方法が実行され得る。
【0049】
すなわち、ビールホースの洗浄方法は、ビールを注出するサーバ本体4と、サーバ本体4に供給されるビールが充填されたビール樽2と、ビール樽2に充填されたビールをサーバ本体4に圧送するための炭酸ガスをビール樽2に供給するガスボンベ5と、を有するビールサーバシステム1に備えられ、ビール樽2から少なくともサーバ本体4にビールを通液するビールホース7の洗浄方法であって、ビールホース7は、少なくとも内面がポリフッ化ビニリデンから構成されたものであって、該ビールホース7の内部に、気液混合流体を通流させて該ビールホース7の内部を洗浄する工程を有する。
【0050】
その際、ビールホース7の内部を洗浄する工程において、ビールホース7に、ビール樽2に代えて、洗浄水が貯留された洗浄用アダプタ20を接続し、該洗浄用アダプタ20にガスボンベ5から炭酸ガスを供給することによって、洗浄用アダプタ20に貯留された洗浄水とともに気液混合流体としてビールホース7に通流させるのである。
【0051】
洗浄用アダプタ20に貯留された洗浄水の全量である2.0Lのうち所定量、例えば0.7Lだけを、炭酸ガスとともに、気液混合流体としてビールホース7に通流させる。すると、ビールホース7の内部を洗浄する工程において、気液混合流体に含まれる前記洗浄水の衝突によって、ビールホース7の内部に付着した汚れが剥離されるのである。
【0052】
なお、ガス導入口26は、所定の流路断面積の流体ホース25に対して、生成される気体混合流体が所定の気液混合比となるように、単位時間あたりに所定量の炭酸ガスを導入可能な大きさであればよく、その形状、数、位置、段数等は適宜設定される。
【実施例
【0053】
上述の構成のビールサーバシステム1について、ビールホースの洗浄評価試験を、以下の手法により行った。
【0054】
同じ構成のサーバ本体、ビール樽、ガスボンベ及び材質が異なるビールホースを有するビールサーバを複数用意し、それぞれを所定時間運転させ汚れ成分を発生付着させたビールホースに対して、洗浄条件を異ならせて、ビールホースに残った汚れ成分の重量を測定することにより、各条件によって洗浄がどの程度行われたかを比較した。
【0055】
実験例1は、ポリフッ化ビニリデンから構成されたビールホースに気液混合流体を通流させたものである。気液混合流体は、図2に示すように、流体ホースに所定のガス導入口を設けた洗浄水ボトルを使用することによって生成する。以下、これを気液混合流体(ガス導入)と記載する。
【0056】
実験例2は、ポリフッ化ビニリデンから構成されたビールホースに気液混合流体を通流させたものである。気液混合流体は、流体ホースにガス導入口が設けられていない洗浄水ボトルを使用しながら、所定の時間毎に洗浄水ボトルの天地を入れ替えて、流体ホースに洗浄水と炭酸ガスとを交互に流れさせることによって生成する。以下、これを気液混合流体(間欠通水)と記載する。
【0057】
比較例1は、ポリエチレンから構成されたビールホースに洗浄水のみを通流させたものである。流体ホースにガス導入口が設けられていない洗浄水ボトルが使用される。したがって、この比較例1は、従来のビールサーバシステムに対応する。
【0058】
比較例2は、ポリフッ化ビニリデンから構成されたビールホースに、比較例1におけるものと同様に、洗浄水のみを通流させたものである。
【0059】
比較例3は、ポリエチレンから構成されたビールホースに気液混合流体(ガス導入)を通流させたものである。
【0060】
比較例4は、ポリエチレンから構成されたビールホースに気液混合流体(間欠通水)を通流させたものである。
【0061】
該洗浄評価試験の結果を図3に示す。なお、汚れ重量は、各条件によって洗浄されたあとのビールホース内に残った汚れ成分を集め、その乾燥重量を計測した。したがって、各条件のうち洗浄力が強いほど汚れ重量は少ないことになる。
【0062】
実験例1(汚れ重量9.8mg)及び比較例1(汚れ重量21.1mg)の結果から、ビールホースの材質を、従来のポリエチレン(図3中「PE」と表記する。)から、ポリフッ化ビニリデン(図3中「PVDF」と表記する。)に変更し、洗浄水のみによる洗浄から、気液混合流体(ガス導入)による洗浄へと変更することによって、洗浄力が向上することが確認された。
【0063】
実験例1(汚れ重量9.8mg)及び比較例2(汚れ重量28.7mg)の結果から、ビールホースの材質がポリフッ化ビニリデンであっても、気液混合流体(ガス導入)による洗浄ではなく、洗浄水のみによる洗浄であると、洗浄力は向上しないことが確認された。なお、比較例1及び比較例2の結果から、ビールホースの材質を、従来のポリエチレンから、ポリフッ化ビニリデンに変更するのみでは、洗浄力は向上しないことが確認された。
【0064】
比較例1(汚れ重量21.1mg)及び比較例3(汚れ重量27.2mg)の結果から、ビールホースの材質がポリエチレンであれば、洗浄水のみによる洗浄から、気液混合流体(ガス導入)による洗浄へと変更しても、洗浄力は向上しないことが確認された。
【0065】
実験例2(汚れ重量11.1mg)及び比較例4(汚れ重量23.2mg)の結果から、ビールホースの材質を、従来のポリエチレンから、ポリフッ化ビニリデンに変更し、洗浄水のみによる洗浄から、気液混合流体(間欠通水)による洗浄へと変更することによって、洗浄力が向上することが確認された。
【0066】
なお、実験例1(汚れ重量9.8mg)及び実験例2(汚れ重量11.1mg)の結果から、気液混合流体(ガス導入)のほうが、気液混合流体(間欠通水)よりも、洗浄力が向上していることが確認された。
【0067】
次に、上記の実験例、比較例と同様に、サーバ本体、ビール樽、ガスボンベ及び材質が異なるビールホースを有するビールサーバを複数用意し、それぞれを所定時間運転させて汚れ成分を発生付着させたビールホースに対して、洗浄後にビールホースに残った汚れ度合を濁度によって比較した。
【0068】
濁度は、洗浄後のビールホース2mに対して、スポンジと水200mlを炭酸ガス圧3.5kgf/cmで通して得られたもの(懸濁水)を十分に撹拌した状態で10ml抜き出し、笠原理化工業株式会社製の高感度濁度計TR-55を用いて透過散乱光測定方式により測定した。なお、濁度はビールホース内の汚れ成分が少ないほど小さくなる。
【0069】
実験例3は、実験例1と同様に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から構成されたビールホースに気液混合流体(ガス導入)を通流させたものである。
【0070】
比較例5は、比較例3と同様に、ポリエチレン(PE)から構成されたビールホースに気液混合流体(ガス導入)を通流させたものである。
【0071】
比較例6は、ポリプロピレン(PP)から構成されたビールホースに気液混合流体(ガス導入)を通流させたものである。
【0072】
比較例7は、4フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)から構成されたビールホースに気液混合流体(ガス導入)を通流させたものである。
【0073】
該洗浄評価試験の結果を図4に示す。実験例3(濁度5)、比較例5(濁度78)の結果から、濁度による評価は、汚れ重量から評価した実験例1(汚れ重量9.8mg)、比較例3(汚れ重量27.2mg)の結果と相関がとれていることが確認された。
【0074】
比較例6(濁度53)の結果から、ビールホースの材質としてポリプロピレンを用いた場合は、洗浄力が不十分であることが確認された。
【0075】
比較例7(濁度41)の結果から、ビールホースの材質として4フッ化エチレン・エチレン共重合体を用いた場合は、フッ素系樹脂であっても、実験例3のポリフッ化ビニリデンを用いた場合に比べ、濁度が大きく、洗浄力が不十分であることが確認された。
【0076】
[その他の実施形態]
サーバ本体4は、サーバコック3の操作レバーの傾動方向に応じて、ビールと泡とが選択的に注出される構成について説明したが、これに限らない。例えば、サーバ本体4に、ビール用のコックと、泡用のコックとがそれぞれ別に備えられ、ビールホース7ないし冷却配管11が途中で分岐して各コックに接続された構成であってもよい。
【0077】
なお、上述した実施形態においては、洗浄用アダプタ20に設けられる流体ホース25は、洗浄水ボトル21の底部まで至らない途中の長さに設定されている構成について説明した、これに限らない。流体ホース25は、ボトルヘッド23から洗浄水ボトル21の内部において底部に至るまで垂下する長さに構成されていてもよい。
【0078】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 :ビールサーバシステム
2 :ビール樽
3 :サーバコック
4 :サーバ本体
5 :ガスボンベ(炭酸ガス供給源)
6 :ディスペンスヘッド
7 :ビールホース
8 :ガスホース
11 :冷却配管
20 :洗浄用アダプタ
21 :洗浄水ボトル
22 :給水口
23 :ボトルヘッド
24 :気液混合部
25 :流体ホース
26 :ガス導入口
図1
図2
図3
図4