(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
H01H83/02 D
(21)【出願番号】P 2019130514
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
(72)【発明者】
【氏名】古川 勇樹
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-283901(JP,A)
【文献】特開2012-182363(JP,A)
【文献】実開平02-031188(JP,U)
【文献】実開昭57-008796(JP,U)
【文献】特開平07-262902(JP,A)
【文献】実開平02-004294(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、前記第1の部材に対して組み付けられる第2の部材とを有する本体ケース内に、漏電を検出するための電子回路基板が設置された回路遮断器であって、
前記第1の部材に、前記第2の部材側へ突出する位置決め突起が設けられている一方、
前記電子回路基板に、前記位置決め突起が嵌入可能な位置決め部が設けられ
ているとともに、
前記第2の部材における前記第1の部材に対向する面に、前記第1の部材への組み付け時に前記電子回路基板の表面に当接するリブが突設されて
おり、
さらに、前記電子回路基板の前記第2の部材に対向する面に、リード線を接続する接続部が設けられていることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
基台と、前記基台の上方を覆うように組み付けられるカバー部材とからなる前記本体ケースを有する回路遮断器であって、
前記基台が、電路が配設される保持部材と、前記保持部材の底面に下方から組み付けられる底部材とを有しており、前記第1の部材が前記保持部材であり、前記第2の部材が前記底部材であることを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば分電盤内等に設置される回路遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、漏電の発生をうけて電路を遮断可能な回路遮断器には、漏電を検出するための電子回路基板が設置されている。そして、そのような電子回路基板は、回路遮断器の本体ケースの底部にネジ止め等して設置されることが多い(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子回路基板を本体ケースに一々ネジ止めする作業は煩雑であり、作業性が悪いという問題がある。また、本体ケースの底部に電子回路基板をネジ止めするような構造であると、電子回路基板にリード線等を接続するための半田作業は、電子回路基板を本体ケースにネジ止めする前に行わなければならない。そのため、電子回路基板を一旦別部材に固定して半田作業を行った後、電子回路基板を該別部材から取り外し、今度は本体ケースにネジ止めする等の作業が必要であり、組み立て作業が一層煩雑化するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、従来よりも簡易に組み立てることのできる回路遮断器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、第1の部材と、前記第1の部材に対して組み付けられる第2の部材とを有する本体ケース内に、漏電を検出するための電子回路基板が設置された回路遮断器であって、前記第1の部材に、前記第2の部材側へ突出する位置決め突起が設けられている一方、前記電子回路基板に、前記位置決め突起が嵌入可能な位置決め部が設けられているとともに、前記第2の部材における前記第1の部材に対向する面に、前記第1の部材への組み付け時に前記電子回路基板の表面に当接するリブが突設されており、さらに、前記電子回路基板の前記第2の部材に対向する面に、リード線を接続する接続部が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、基台と、前記基台の上方を覆うように組み付けられるカバー部材とからなる前記本体ケースを有する回路遮断器であって、前記基台が、電路が配設される保持部材と、前記保持部材の底面に下方から組み付けられる底部材とを有しており、前記第1の部材が前記保持部材であり、前記第2の部材が前記底部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の部材に、第2の部材側へ突出する位置決め突起が設けられている一方、電子回路基板に、位置決め突起が嵌入可能な位置決め部が設けられているとともに、第2の部材における前記第1の部材に対向する面に、第1の部材への組み付け時に電子回路基板の表面に当接するリブが突設されている。したがって、電子回路基板を、第1の部材の底面とリブの先端とにより挟持して設置することができるため、従来のように電子回路基板をネジ止め等する必要がなく、回路遮断器の組み立て作業を簡易化することができる。さらに、電子回路基板の第2の部材に対向する面に、リード線を接続する接続部が設けられているため、第1の部材に電子回路基板を位置決めした状態において、電子回路基板へリード線等を接続するための半田作業を行うことができ、回路遮断器の組み立てを一層効率良く且つ簡易に行うことができる。
また、特に請求項2に記載の発明によれば、本体ケースの基台を、電路が配設される保持部材と、保持部材の底面に下方から組み付けられる底部材とから構成し、第1の部材を保持部材とし、第2の部材を底部材としたことで、本体ケースの底部に電子回路基板を設置しているにも拘わらず、電子回路基板を保持部材に位置決めした状態において半田作業を行うことができるとともに電子回路基板をネジ止めする必要のない構造とすることができるため、回路遮断器の組み立て作業の簡易化及び作業効率の向上を一層顕著なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】カバー部材が取り外された回路遮断器を示した斜視説明図である。
【
図2】回路遮断器の前後方向での断面を示した説明図である。
【
図3】保持部材に電子回路基板を位置決めした状態を下方から示した斜視説明図である。
【
図4】保持部材を下方から示した斜視説明図である。
【
図5】電子回路基板を後面側から示した斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる回路遮断器について図面にもとづき詳細に説明する。
図1は、カバー部材が取り外された回路遮断器1を示した斜視説明図である。
図2は、回路遮断器1の前後方向での断面を示した説明図である。
図3は、保持部材21に電子回路基板31を位置決めした状態を下方から示した斜視説明図である。
図4は、保持部材21を下方から示した斜視説明図である。
図5は、電子回路基板31を後面側から示した斜視説明図である。
図6は、底部材22を上方から示した斜視説明図である。
【0010】
回路遮断器1は、基台2に対して、その上方を覆うようにカバー部材(図示せず)を組み付けてなる合成樹脂製の本体ケースを有するものであって、本体ケースの後部には電源側端子4が、前部には負荷側端子3が夫々備えられている。また、基台2上には、負荷側端子3と電源側端子4とを電気的に接続すべく、前後方向へ延びる3つの電路が左右に並べて配設されている。各電路は、負荷側端子3から後方へ延びて前側電路の一構成要素となる第1固定金具5、前端に固定接点7が設けられ、電源側端子4から前方へ延びて後側電路を構成する第2固定金具6、及び後端に可動接点8が設けられ、後端側を上下動させて可動接点8を固定接点7に対して接触/離隔させることにより、前側電路と後側電路とを電気的に接続/遮断させる可動接点部材10等を備えてなる。
【0011】
また、本体ケース内には、可動接点部材10を作動させるための遮断機構部9、及び遮断機構部9を動作させるための共通機構部13が設けられているとともに、電路に短絡電流等の過大な異常電流が流れると、共通機構部13を動作させるべく作動する電磁引き外し装置11や、後述する電子回路基板31による漏電の検出をうけて、共通機構部13を動作させるべく作動するマグネットユニット12等が設置されている。そして、回路遮断器1では、漏電や異常電流等、電路に異常が発生すると共通機構部13が作動するとともに、当該共通機構部13の作動をうけて遮断機構部9が動作し、結果として可動接点8が固定接点7から離隔する方向へ可動接点部材10が作動して電路が遮断されるようになっている。なお、30は、遮断機構部9を介して可動接点部材10を作動させることで、電路をオン/オフ操作するためのハンドルである。
【0012】
ここで、本発明の要部である電子回路基板31の設置構造について詳細に説明する。
本体ケースを構成する基台2は、上記電路が配設されているとともに遮断機構部9や電磁引き外し装置11等を保持する保持部材21と、保持部材21の底面に下方からネジ止めされる底部材22とを有してなる。そして、保持部材21の底面には、電子回路基板31を位置決めするための3つの位置決め突起23、23・・が下方へ突設されている。また、底部材22の上面(保持部材21と対向する側の面)には、保持部材21へのネジ止め時に電子回路基板31の下面に当接するリブ24a、24bが上方へ突設されている。一方、電子回路基板31は、上述したように漏電を検出するためのものであって、前縁側には位置決め孔32、32が、後縁側には後縁から前方へ切り込まれた切り欠き33が夫々設けられている。
【0013】
そして、電子回路基板31を本体ケースの底部に設置するにあたっては、底面を上方へ向けられた保持部材21に対し、位置決め孔32、32や切り欠き33内へ位置決め突起23、23・・を嵌入させることにより、保持部材21の底面上に電子回路基板31を位置決めする。また、電子回路基板31にリード線(図示せず)を接続するための半田作業は、当該状態のまま行う。その後、上方を向いている電子回路基板31の下面を覆うようにして、保持部材21に底部材22をネジ止めすれば、保持部材21の底面とリブ24a、24bの先端とにより上下から挟持された状態で、電子回路基板31が本体ケースの底部に設置されることになる。
【0014】
以上のように構成される回路遮断器1によれば、保持部材21の底面に下方へ突出する位置決め突起23、23・・を設ける一方、電子回路基板31に、位置決め突起23が嵌入可能な位置決め孔32や切り欠き33を設けており、さらに、保持部材21の底面に組み付けられる底部材22に、保持部材21側へ突出しており、保持部材21への組み付けに伴い電子回路基板31の下面に当接するリブ24a、24bを設けている。そして、保持部材21に対して電子回路基板31を位置決めした状態において、底部材22を保持部材21に組み付けることで、電子回路基板31が保持部材21の底面とリブ24a、24bの先端とにより上下から挟持されるようにしている。したがって、従来のように電子回路基板31をネジ止めする必要がなく、従来よりも簡易に回路遮断器1を組み立てることができる。
【0015】
また、従来では本体ケースへの設置前に行っていた電子回路基板31へのリード線の半田作業を、電子回路基板31を保持部材21に位置決めした状態で行うことができ、従来よりも効率良く回路遮断器1を組み立てることができる。
さらに、本体ケースの基台2を、保持部材21と底部材22とで構成したことにより、本体ケースの底部という従来では本体ケースへの設置後に半田作業を行うことのできない位置に電子回路基板31を設置しているにも拘わらず、上述したように本体ケース側へ位置決めした状態において電子回路基板31への半田作業を行うことができるとともに、電子回路基板31をネジ止めする必要のない構造とすることができる。したがって、回路遮断器1の組み立て作業の簡易化及び作業効率の向上を一層顕著なものとすることができる。
【0016】
なお、本発明の回路遮断器に係る構成は、上記実施形態のものに何ら限定されることはなく、回路遮断器の全体的な構造は勿論、電子回路基板の設置構造等に係る構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。
【0017】
たとえば、上記実施形態では、本体ケースの底部に電子回路基板を設置しているが、本体ケースにおける電子回路基板の設置位置は適宜変更可能であり、本体ケースの上部に電子回路基板を設置するのであれば、基台の上面に上方へ突出する位置決め突起を、基台を上方から覆うように組み付けられるカバー部材に下方へ突出するリブを夫々設けるという構成を採用することも可能である。
【0018】
また、上記実施形態とは異なり、電子回路基板を基台に対して起立させた状態で設置する場合には、基台に前後方向へ突出する位置決め突起を、カバー部材の内面(たとえば前面)に後方へ突出するリブを夫々設ける等してもよいし、基台を中央部材と前部材(若しくは後部材)とに分割し、中央部材に前方(若しくは後方)へ突出する位置決め突起を、前部材に後方へ突出するリブ(若しくは後部材に前方へ突出するリブ)を夫々設ける等してもよい。
【符号の説明】
【0019】
1・・回路遮断器、2・・基台(本体ケース)、21・・保持部材(第1の部材)、22・・底部材(第2の部材)、23・・位置決め突起、24a、24b・・リブ、31・・電子回路基板、32・・位置決め孔(位置決め部)、33・・切り欠き(位置決め部)。