(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】半径方向に変位可能なブラシシール
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3288 20160101AFI20231222BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20231222BHJP
F01D 11/12 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
F16J15/3288
F02C7/28 B
F01D11/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019163236
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590005438
【氏名又は名称】ロールス‐ロイス、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROLLS-ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ジェルバス、フランチェスキーニ
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0208427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/324-15/3296
F02C 7/28
F01D 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的高流体圧力領域と相対的低流体圧力領域との間の軸方向流路内の漏れ間隙を封止するためのブラシシールであって、外側ハウジングと、前記外側ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、かつ前記外側ハウジングに対して半径方向に変位するように構成された内側ハウジングと、を備え、
前記内側ハウジングが、第1の半径方向接触線に沿って構成された第1の下流側を向いた外側接触面を含む第1の下流外側接触部材と、前記第1の半径方向接触線に沿って、前記第1の下流側を向いた外側接触面から半径方向に離間して設けられるとともに、前記第1の下流側を向いた外側接触面との間に下流内側チャンバ開口部を画定するように構成された第2の下流側を向いた外側接触面を含む第2の下流外側接触部材と、を含み、
前記内側ハウジングが、第2の半径方向接触線に沿って構成された第1の上流側を向いた内側接触面と物理的に連通している第1のブリストル層を更に含み、
前記外側ハウジングの上流側を向いた内側面は、少なくとも前記第1の下流側を向いた外側接触面及び前記第2の下流側を向いた外側接触面と、その半径方向変位の間、物理的に連通した状態に維持され、
前記外側ハウジングに対する前記内側ハウジングの全ての相対的半径方向位置において、使用中、前記外側ハウジングの前記上流側を向いた内側面と、前記第1の下流側を向いた外側接触面及び前記第2の下流側を向いた外側接触面の両方との間の両方の接触面の面積の合計が、前記下流内側チャンバ開口部の開口面積の合計よりも大きく、
前記外側ハウジングの前記上流側を向いた内側面には、前記第1の下流側を向いた外側接触面および前記第2の下流側を向いた外側接触面に向かって突出するものがな
く、
前記第2の下流外側接触部材及び前記第2の下流側を向いた外側接触面が、前記第1の半径方向接触線に沿って、前記内側ハウジングの半径方向外側を向いた端壁から半径方向に離間して、第1の下流内側チャンバの第1の下流内側チャンバ開口部及び第2の下流内側チャンバの第2の下流内側チャンバ開口部を少なくとも部分的に画定し、かつこれらを互いに分離するように構成されている、ブラシシール。
【請求項2】
前記内側ハウジングが、前記第1の半径方向接触線に沿って構成された第3の又は更なる下流側を向いた外側接触面を含む、第3の又は更なる下流外側接触部材を含み、前記第3の又は更なる下流側を向いた外側接触面が、前記第1の下流側を向いた外側接触面と前記第2の下流側を向いた外側接触面との間に構成され、かつ、前記第1の半径方向接触線に沿って、前記第1の下流側を向いた外側接触面及び前記第2の下流側を向いた外側接触面から半径方向に異なる位置にあり、第1の下流内側チャンバの第1の下流内側チャンバ開口部及び第3の下流内側チャンバの第3の下流内側チャンバ開口部のいずれか又は両方を少なくとも部分的に画定する、
請求項1に記載のブラシシール。
【請求項3】
前記第3の又は更なる下流側を向いた外側接触面を含む前記第3の又は更なる下流外側接触部材が、第3の又は更なる下流内側チャンバの第3の又は更なる下流内側チャンバ開口部を少なくとも部分的に画定する、請求項2に記載のブラシシール。
【請求項4】
前記第2の下流外側接触部材が、前記第2の下流内側チャンバと前記第1の下流内側チャンバ、又は前記第2の下流内側チャンバと前記第3の
又は更なる下流内側チャンバのいずれかを流体接続するように構成された第1の下流内側通路を含む、
請求項2または3に記載のブラシシール。
【請求項5】
前記第3の下流外側接触部材が、少なくとも前記第3の下流内側チャンバと前記第1の下流内側チャンバとを流体接続するように構成された第2の下流内側通路を含む、
請求項4に記載のブラシシール。
【請求項6】
前記第1の下流内側通路が、加圧流体の供給源と、前記第2の下流内側チャンバ及び前記第1の下流内側チャンバ又は前記第2の下流内側チャンバ及び前記第3の
又は更なる下流内側チャンバとのいずれかを流体接続するように構成されており、第2の下流内側通路が存在する場合には、
当該第2の下流内側通路は、加圧流体の前記供給源と、少なくとも前記第3の下流内側チャンバ及び前記第1の下流内側チャンバとを流体接続するように構成されている、
請求項4または5に記載のブラシシール。
【請求項7】
前記加圧流体が、使用中に、前記相対的高流体圧力領域の圧力と実質的に等しい又は前記圧力よりも大きい圧力まで、前記下流内側チャンバのうちの1つ以上を加圧する、請求項
6に記載のブラシシール。
【請求項8】
相対的高流体圧力領域と相対的低流体圧力領域との間の軸方向流路内の漏れ間隙を封止するためのブラシシールであって、外側ハウジングと、前記外側ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、かつ前記外側ハウジングに対して半径方向に変位するように構成された内側ハウジングと、を備え、
前記内側ハウジングが、第1の半径方向接触線に沿って構成された第1の下流側を向いた外側接触面を含む第1の下流外側接触部材と、前記第1の半径方向接触線に沿って、前記第1の下流側を向いた外側接触面から半径方向に離間して設けられるとともに、前記第1の下流側を向いた外側接触面との間に下流内側チャンバ開口部を画定するように構成された第2の下流側を向いた外側接触面を含む第2の下流外側接触部材と、を含み、
前記内側ハウジングが、第2の半径方向接触線に沿って構成された第1の上流側を向いた内側接触面と物理的に連通している第1のブリストル層を更に含み、
前記外側ハウジングの上流側を向いた内側面は、少なくとも前記第1の下流側を向いた外側接触面及び前記第2の下流側を向いた外側接触面と、その半径方向変位の間、物理的に連通した状態に維持され、
前記外側ハウジングに対する前記内側ハウジングの全ての相対的半径方向位置において、使用中、前記外側ハウジングの前記上流側を向いた内側面と、前記第1の下流側を向いた外側接触面及び前記第2の下流側を向いた外側接触面の両方との間の両方の接触面の面積の合計が、前記下流内側チャンバ開口部の開口面積の合計よりも大きく、
前記外側ハウジングの前記上流側を向いた内側面には、前記第1の下流側を向いた外側接触面および前記第2の下流側を向いた外側接触面に向かって突出するものがな
く、
前記内側ハウジングが、前記第1の半径方向接触線に沿って構成された第3の又は更なる下流側を向いた外側接触面を含む、第3の又は更なる下流外側接触部材を含み、前記第3の又は更なる下流側を向いた外側接触面が、前記第1の下流側を向いた外側接触面と前記第2の下流側を向いた外側接触面との間に構成され、かつ、前記第1の半径方向接触線に沿って、前記第1の下流側を向いた外側接触面及び前記第2の下流側を向いた外側接触面から半径方向に異なる位置にあり、第1の下流内側チャンバの第1の下流内側チャンバ開口部及び第3の下流内側チャンバの第3の下流内側チャンバ開口部のいずれか又は両方を少なくとも部分的に画定する、ブラシシール。
【請求項9】
前記内側ハウジングが、第3の半径方向接触線に沿って構成された第1の上流側を向いた外面を含む第1の上流外側接触部材を含む、請求項
1から8のうちのいずれか一項に記載のブラシシール。
【請求項10】
前記内側ハウジングが第2の上流外側接触部材を含み、この第2の上流外側接触部材が、前記第3の半径方向接触線に沿って、前記第1の上流側を向いた外面から半径方向に離間するとともに、前記第1の上流側を向いた外面との間に上流内側チャンバ開口部を画定するように構成された第2の上流側を向いた外面を含む、請求項
9に記載のブラシシール。
【請求項11】
前記外側ハウジングに対する前記内側ハウジングの全ての相対的半径方向位置において、使用中、前記外側ハウジングの下流側を向いた面と前記内側ハウジングの前記上流側を向いた外面又は各上流側を向いた外面との間の接触面積の合計が、前記上流内側チャンバ開口部の開口面積の合計よりも大きい、請求項
10に記載のブラシシール。
【請求項12】
請求項1から11のうちのいずれか一項に記載のブラシシールを備えるガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
開示の分野
本開示は、流体シールに関する。より具体的には、本開示は、互いに対して移動可能な部品間の漏れ経路を封止するためのブラシシールに関する。
【0002】
関連技術の説明
互いに対して移動可能な構成要素間の流体シールを確立するために、圧力平衡ブラシシール及び標準的な単純支持環のブラシシールを使用することが既知である。典型的には、ブラシシールは、構成要素のうちの1つに固定され、かつ他の構成要素と摺動関係にある、弾力性のあるブリストルのパックを含む。例えば、回転可能なシャフトとシャフトを取り囲む静的構造体との間の漏れ経路内に配置された環状ブラシシールである。そのような用途におけるシールブリストルは、通常、取り付けリングに結合され、次いで、静的構造体内に保持される。ブリストルは、概ね半径方向内向きに向けられ、それにより、その自由端が摺動関係にシャフトに係合する。ブリストルパック及びシャフト表面は、協働して、高流体圧力領域と低流体圧力領域との間の漏れ障壁を画定する。
【0003】
圧力損失の影響により、ブリストルは変形する傾向がある。この効果に対抗するために、支持部材を使用して、下流(ブリストルの低圧側)のブリストルに対する追加の支持を提供し、支持部材はブリストルパックの下流面に沿って取り付け部材から延びて、ブリストルの自由端に達しない所で終端させ、それによって、ブリストルに対して必要な程度の軸方向支持を提供する。そのような支持部材は、回転可能なシャフトの回転軸及びシャフトを取り囲む静的構造体に対して、静的に構成されてもよく、又は半径方向に変位可能であってもよい。
【0004】
そのような構成の欠点は、大きな構造オフセット及び非軸対称移動により、支持部材をロータクリアランスまで増大させる必要性をもたらし、これが、ブラシシール性能及び構成要素の耐用寿命に有害であることである。性能のための小さな支持環のクリアランスと、移動に適応するための大きな支持環のクリアランスとの矛盾に対する以前の解決策は、米国特許第7,434,813号に提案されている浮動ブラシシールであった。低軸速度では、これは有望な挙動を示した。しかしながら、内側封止要素の回転を防止するために、ピン及びスロットが以前に提案されており、これは、構成内で摺動することと枢動することの両方を可能にし、スロット内のピンの位置がその挙動、特にその動的挙動に重要である、シールを生成する。したがって、摺動界面における金属対金属の接触により、フレッティング摩耗の受けやすさを引き起こした。
【0005】
更に、圧力平衡ブラシシール及び標準的な単純支持環のブラシシールなどのいくつかの構成では、過度及び反復的なブリストルパックの移動のいずれか又は両方は、支持部材に引っ掻き傷をつけ擦り傷を付けることがあり、最終的には、フレッティング摩耗を引き起こす。主に、これは、ブリストルと支持部材との間の無潤滑の接触のために起こり得る。受動圧力平衡ブラシシールは、この点に関して、標準的な単純支持部材のブラシシールと比較して改善をもたらす。受動圧力平衡ブラシシールでは、支持部材内の空洞を加圧するように上流空気を促すことによって、支持部材界面における接触荷重が低減される。これは全体的な封止性能の観点から有利であるとともに、接触荷重の低減は、ブリストルと支持部材との間の摩擦を低減することができ、ブリストルパック内のブリストルのより大きな円周方向及び半径方向の移動を可能にする。更に、支持部材内に空洞を含めることにより、ブリストルが支持環と接触する表面を制限することができる。したがって、接触荷重を低減することができるが、接触圧は、所望されるよりも高いことがある。一般に、摩耗は、接触圧と相関することが見出されており、表面速度及び界面温度によって更に影響され得る。したがって、改善された剛性及び動的挙動を提供しながら、フレッティング摩耗に対する改善された耐性を提供するシールが望まれる。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によれば、相対的高流体圧力領域と相対的低流体圧力領域との間の軸方向流路内の漏れ間隙を封止するためのブラシシールが提供される。ブラシシールは、外側ハウジングと、外側ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、外側ハウジングに対して半径方向に変位するように構成された内側ハウジングとを備えてもよい。内側ハウジングは、第1の半径方向接触線に沿って構成された第1の下流側外側接触面を含む第1の下流外側接触部材を含んでもよい。内側ハウジングは、第1の半径方向接触線に沿って、第1の下流側外側接触面から半径方向に離間して、間に下流内側チャンバ開口部を画定するように構成された第2の下流側外側接触面を含む第2の下流外側接触部材を含んでもよい。内側ハウジングは、第2の半径方向接触線に沿って構成された第1の上流側内側接触面と物理的に連通している第1のブリストル層を更に含んでもよい。外側ハウジングの上流側面は、少なくとも第1の下流側外側接触面及び第2の下流側外側接触面と、その半径方向の変位の間、物理的に連通して維持されてもよい。外側ハウジングに対する内側ハウジングの全ての相対的半径方向位置において、使用中、外側ハウジングの上流側面と第1の下流側外側接触面及び第2の下流側外側接触面の両方との間の集合的接触面(1以上の接触面の大きさ(面積)の合計を意味する。以下において同じ。)は、下流内側チャンバ開口部の集合的表面(1以上の開口部の表面の大きさ(面積)の合計を意味する。以下において同じ。)よりも大きくてもよい。
【0007】
この構成は、内側ハウジングと外側ハウジングとの間の摩耗を低減することができる。更に、この構成は、内側ハウジングと外側ハウジングとの間のフレッティング摩耗を低減することができる。内側ハウジングは、いくつかの実施例では、支持部材であってもよい。外側ハウジングと接触する内側ハウジングの表面積を最大化することによって、内側ハウジングと外側ハウジングとの間の接触面を増大することができ、それにより、接触圧を低減することができる。加えて又は代替的に、接触荷重を低減する圧力平衡効果を維持しながら、接触領域を増加させることにより、内側支持環と外側支持環との間のフレッティング摩耗を低減することができる。
【0008】
第1及び第2の半径方向接触線は、対応する第1及び第2の半径方向方位接触平面に沿ってそれぞれ延びてもよい。第1及び第2の半径方向接触線は、対応する第1及び第2の半径方向方位接触平面に平行に延びる対応する第1及び第2の半径方向線を指すことができる。したがって、第1の下流側外側接触面は、第1の半径方向方位接触平面に沿って構成されてもよく、第2の下流側外側接触面は、第1の半径方向方位接触平面に沿って、第1の下流側外側接触面から半径方向に離間して、間に下流内側チャンバ開口部を画定するように構成されている。更に、第1のブリストル層は、第2の半径方向方位接触平面に沿って構成された第1の上流側内側接触面と物理的に連通していてもよく、外側ハウジングの上流面は、少なくとも第1の下流外側接触部材の第1の下流側外側接触面及び第2の下流外側接触部材の第2の下流側外側接触面と、その半径方向変位の間、物理的に連通して維持される。
【0009】
第1の半径方向接触線に沿った外側ハウジングの実質的な部分(例えば、半径方向長さの少なくとも30%)は、使用中に、内側ハウジングの2つ以上の接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよいことが理解されるであろう。更なる実施例では、第1の半径方向接触線に沿った外側ハウジングの約35%~約100%は、使用中に、内側ハウジングの2つ以上の接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよい。また更なる実施例では、第1の半径方向接触線に沿った外側ハウジングの約40%~約100%は、使用中に、内側ハウジングの2つ以上の接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよい。また更なる実施例では、第1の半径方向接触線に沿った外側ハウジングの約50%~約100%は、使用中に、内側ハウジングの2つ以上の接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよい。
【0010】
内側ハウジングは、第3の半径方向接触線に沿って構成された第1の上流側外面を含む第1の上流外側接触部材を含んでもよい。第3の半径方向接触線は、第3の半径方向方位接触平面に沿って延びてもよい。第3の半径方向接触線は、第3の半径方向方位接触平面に平行に延びる第3の半径方向線を指すことができる。いくつかの実施例では、外側ハウジングの下流側面は、第3の半径方向接触線に沿って、第1の上流側外面から軸方向に離間されてもよい。いくつかの実施例では、外側ハウジングの下流側面の少なくとも一部分は、第3の半径方向接触線に沿って、第1の上流側外面と接触していてもよい。したがって、いくつかの実施例では、外側ハウジングの下流側面の少なくとも一部分は、使用中に、内側ハウジングの1つ以上の上流側外面と接触して維持され、それを軸方向に支持してもよい。
【0011】
内側ハウジングは、第3の半径方向接触線に沿って、第1の上流側外面から半径方向に離間して、間に上流内側チャンバ開口部を画定するように構成された第2の上流側外面を含む第2の上流外側接触部材を含んでもよい。いくつかの実施例では、外側ハウジングの下流側面の少なくとも一部分は、第3の半径方向接触線に沿って、第1の上流側外面及び第2の上流側外面と接触していてもよい。したがって、いくつかの実施例では、外側ハウジングの下流側面の少なくとも一部分は、使用中に、少なくとも内側ハウジングの第1の上流側外面及び第2の上流側外面と接触して維持され、それらを軸方向に支持してもよい。
【0012】
いくつかの実施例では、外側ハウジングに対する内側ハウジングの全ての相対的半径方向位置において、使用中、外側ハウジングの下流側面と内側ハウジングの上流側外面又は各上流側外面との間の集合的接触面は、上流内側チャンバ開口部の集合的表面よりも大きくてもよい。
【0013】
内側ハウジングは、第2の半径方向接触線に沿って、第1の上流側接触面から半径方向に変位され、間に下流内側ハウジングチャンバの下流内側チャンバ開口部を画定するように構成された、第2の上流側内側接触面を含んでもよい。第1、第2、又は更なるチャンバと併せて1つ以上の更なる上流側接触面を加えることによって、ブリストル層と接触する内側ハウジングの表面積を最適化すると同時に、ブリストル層の十分な圧力平衡を達成することができる。したがって、内側ハウジングに対するそれぞれのブリストルの接触圧を低減するために低い接触力を依然として維持しながら、追加の接触面を達成することができる。
【0014】
第1のブリストル層は、第2の半径方向接触線に沿って、第1の上流側内側接触面及び第2の上流側内側接触面の両方と物理的に連通していてもよい。第2の半径方向接触線に隣接して分割された、内側ハウジングの対応する上流側内側接触面のそれぞれと第1のブリストル層との間の集合的接触面は、下流内側チャンバ開口部の集合的表面積よりも大きくてもよい。この構成は、ブリストル層と内側ハウジングとの間の摩耗を低減することができる。具体的には、この構成は、ブリストル層と内側ハウジングとの間のフレッティング摩耗を低減することができる。ブリストル層と接触する内側ハウジングの表面を最大化することによって、内側ハウジングとブリストル層との間の接触面を増大することができ、それにより、接触圧を低減することができる。
【0015】
第2の半径方向接触線に沿ったブリストル層の大部分(例えば、長さの少なくとも30%)は、使用中に、内側ハウジングの2つ以上の上流側接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよいことが理解されるであろう。更なる実施例では、半径方向接触線に沿ったブリストル層の約30%~約100%は、使用中に、内側ハウジングの2つ以上の上流側接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよい。また更なる実施例では、半径方向接触線に沿ったブリストル層の約40%~約100%は、使用中に、内側ハウジングの2つ以上の上流側接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよい。また更なる実施例では、半径方向接触線に沿ったブリストル層の約50%~約100%は、使用中に、内側ハウジングの1つ以上の上流側接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよい。更なる実施例では、半径方向接触線に沿ったブリストル層の約60%、約70%、約80%、又は約90%は、使用中に、内側ハウジングの2つ以上の上流側接触面と接触して維持され、それによって支持されてもよい。したがって、内側ハウジングの1つ以上の接触面は、単純又は圧力平衡の内側ハウジングであってもよいことが理解されるであろう。圧力平衡内側ハウジングは、加圧流体を供給されてもよく、又は上流領域からのブリストルを通る加圧流体の漏れに依存してもよい。
【0016】
第2の下流外側接触部材及び第2の下流側外側接触面は、第1の半径方向接触線に沿って、内側ハウジングの半径方向外向端壁から半径方向に離間して構成されてもよい。第2の下流外側接触部材及び第2の下流側外側接触面は、第1の下流内側チャンバの第1の下流内側チャンバ開口部及び第2の下流内側チャンバの第2の下流内側チャンバ開口部を少なくとも部分的に画定し、分離してもよい。
【0017】
あるいは、内側ハウジングは、第1の半径方向接触線に沿って構成された第3の又は更なる下流側外側接触面を含む、第3の又は更なる下流外側接触部材を含んでもよい。第3の又は更なる下流側外側接触面は、第1の下流側外側接触面と第2の下流側外側接触面との間に構成され、かつ、第1の半径方向接触線に沿って、第1の下流側外側接触面及び第2の下流側外側接触面から半径方向に変位され、第1の下流内側チャンバの第1の下流内側チャンバ開口部、及び第3の若しくは更なる下流内側チャンバの第3の若しくは更なる下流内側チャンバ開口部のいずれか又は両方を少なくとも部分的に画定してもよい。第3の又は更なる下流側外側接触面は、第3の更なる下流チャンバの第3の又は更なる下流内側チャンバ開口部を少なくとも部分的に画定してもよい。加えて、内側ハウジングは、第1の半径方向接触線に沿って構成された第4の又は更なる下流側外側接触面を含む、第4の又は更なる下流外側接触部材を含んでもよい。第4の又は更なる下流側外側接触面は、第3の下流側外側接触面と第2の下流側外側接触面との間に構成され、かつ、第1の半径方向接触線に沿って、第3の下流側外側接触面及び第2の下流側外側接触面から半径方向に変位され、第3の下流内側チャンバの第3の下流内側チャンバ開口部、及び第4の若しくは更なる下流内側チャンバの第4の若しくは更なる下流内側チャンバ開口部のいずれか又は両方を少なくとも部分的に画定してもよい。第4の又は更なる下流側外側接触面は、第4の更なる下流のチャンバの第4の又は更なる下流内側チャンバ開口部を少なくとも部分的に画定してもよい。第2のチャンバと併せて1つ以上の更なる接触面を加えることによって、内側ハウジングと接触する外側ハウジングの表面を最適化すると同時に、内側ハウジングの十分な圧力平衡を達成することができる。したがって、外側ハウジングに対する対応する内側ハウジングの接触圧を低減するために低い接触力を依然として維持しながら、追加の接触面を達成することができる。
【0018】
第2の接触部材は、第2の下流内側チャンバと第1の下流内側チャンバ、又は第2の下流内側チャンバと第3の若しくは更なる下流内側チャンバのいずれかを流体接続するように構成された第1の下流内側通路を含んでもよい。したがって、内側ハウジングが第1の接触部材及び第2の接触部材のみを含む場合、第1の下流内側通路は、使用中に、第2の下流内側チャンバと第1の下流内側チャンバとの間で流体連通を提供することができる。加圧流体を第2の下流内側チャンバに供給し、第2の下流内側チャンバを加圧することによって、加圧流体は、第1の下流内側チャンバに更に連通してもよい。あるいは、加圧流体を第1の下流内側チャンバに供給し、第1の下流内側チャンバを加圧することによって、加圧流体は、第2の下流内側チャンバに更に連通してもよい。
【0019】
第3の下流外側接触部材は、少なくとも第3の下流内側チャンバと第1の下流内側チャンバとを流体接続するように構成された第2の下流内側通路を含んでもよい。したがって、第1の下流内側通路は、使用中に、第2の下流内側チャンバと第3の又は更なる下流内側チャンバとの間で流体連通を提供することができる。したがって、第1のチャンバ、第3のチャンバ、及び第2のチャンバは、少なくとも、対応する第2の通路及び第1の通路によって流体接続されてもよい。加圧流体を第2の下流内側チャンバに供給し、第2の下流内側チャンバを加圧することによって、加圧流体は、第3の下流内側チャンバに更に連通してもよい。更に、加圧流体を第3の下流内側チャンバに供給し、第3の下流内側チャンバを加圧することによって、加圧流体は、第1の下流内側チャンバに更に連通してもよい。
【0020】
第1の下流内側通路は、加圧流体の供給源と、第2の下流内側チャンバ及び第1の下流内側チャンバ、又は第2の下流内側チャンバ及び第3の下流内側チャンバのいずれかを流体接続するように構成されてもよい。したがって、例えば、内側ハウジングが第4の接触部材を含む場合、第1の下流内側通路は、加圧流体の供給源及び第2の下流内側チャンバを第4の下流内側チャンバと流体接続するように構成されてもよい。第2の下流内側通路は、存在する場合、加圧流体の供給源と少なくとも第3の下流内側チャンバ及び第1の下流内側チャンバを流体接続するように構成されてもよい。したがって、加圧流体を第1の下流内側通路を介して第3の又は更なる下流内側チャンバに供給し、第3の又は更なる下流内側チャンバを加圧することによって、加圧流体は、第2の下流内側通路を介して第1の下流内側チャンバに更に連通してもよい。加圧流体の供給源は、第1の下流内側チャンバ、第2の下流内側チャンバ、及び第3の下流内側チャンバのうちの1つ以上に所望の圧力で加圧流体を供給するために、優先的な軸方向上流位置に配置されてもよい。加えて又は代替的に、加圧流体の供給源は、ブラシシールの上流の軸方向流体流れとは別個でもよく、加圧流体は、エンジン内のより遠い位置、又は流体を加圧する手段のいずれかから供給されてもよい。いくつかの実施例では、第3の下流内側チャンバは、加圧流体の供給源によって供給される唯一のチャンバであってもよい。いくつかの実施例では、1つ以上のチャンバは、ブラシシールの上流の軸方向流体流れから供給される加圧流体を供給されてもよい。加えて又は代替的に、1つ以上のチャンバは、エンジン内のより遠い位置、又は流体を加圧する手段から供給される加圧流体を供給されてもよい。
【0021】
いくつかの実施例では、加圧流体は、内側ハウジングの孔を介して供給されてもよい。そのような孔は、上流領域を外側ハウジングの下流側内側チャンバ又は各下流側内側チャンバに直接接続してもよい。加えて又は代替的に、内側ハウジングの孔は、第1のブリストル層の上流の流体区域を、第1のブリストル層を介して外側ハウジングの下流内側チャンバ又は各下流内側チャンバと接続してもよい。既に説明した他の加圧手段と併せて、孔を使用して、高圧流体が、下流内側チャンバ又は各下流内側チャンバに背圧を加えることを可能にすることができる。
【0022】
加圧流体は、使用中に、相対的低流体圧力領域の圧力よりも高い圧力まで、下流内側チャンバのうちの1つ以上を加圧することができる。加圧流体は、使用中に、相対的高流体圧力領域の圧力と実質的に等しい又はその圧力未満の圧力まで、下流内側チャンバのうちの1つ以上を加圧することができる。加圧流体は、使用中に、相対的高流体圧力領域の圧力と実質的に等しい又はその圧力よりも大きい圧力まで、下流内側チャンバのうちの1つ以上を加圧することができる。あるいは、加圧流体は、使用中に、相対的高流体圧力領域の圧力と実質的に等しい又はその圧力よりも大きい圧力まで、対応する下流内側チャンバのうちの1つ以上を加圧してもよい。加圧流体は、使用中に、内側ハウジング上の軸方向に印加された力を外側ハウジングに対して少なくとも部分的に反作用させることができる。したがって、第1の下流内側チャンバ及び第2の下流内側チャンバのいずれか又は両方の内部の圧力は、内側ハウジングに加えられる反力を推測することができる。
【0023】
各下流外側接触部材は、内側ハウジングの面から直立した固有又は付随的な軸方向に延びる部分を含んでもよい。したがって、1つ以上の軸方向に延びる部分は、内側ハウジングと一体的に形成されて、一体型構造の内側ハウジングを形成してもよい。したがって、1つ以上の上流内側チャンバは、一体型本体として鋳造又は形成された、対応する接触部材又は各対応する接触部材の間に凹部を機械加工することによって形成されてもよい。したがって、内側ハウジング若しくは外側ハウジングのいずれか又は両方の少なくとも一部分は、3D印刷又は付加製造法を使用して製造されてもよい。そのような構成は、例えば、製造中に、通路のうちの1つ以上を対応する下流外側接触部材のうちの1つ以上に追加することを可能にすることができる。加えて又は代替的に、製造中に1つ以上の軸方向に延びる部分を内側本体に追加して、2つ以上の部品構成の内側本体を形成してもよい。そのような延びる部分は、例えば、溶接、ろう付け、接合、又は拡散接合を含む、従来の又は従来とは異なる製造形態によって、製造中に追加されてもよい。接合は、接着剤の使用を指す場合がある。そのような構成は、例えば、製造中に内側本体に追加される前に、通路のうちの1つ以上を対応する下流外側接触部材のうちの1つ以上に追加することを可能にすることができる。そのような構築方法は、そのような一部品又は一体型構築方法よりも簡単かつ安価であり得る。
【0024】
下流外側接触部材のうちの1つ以上は、外側ハウジングに係合する、内側ハウジングの面から直立する軸方向に延びるフランジを含んでもよい。このようにして、フランジは、特定の要件に従って成形又は形成することができる。したがって、下流外側接触面又は各下流外側接触面は、必要に応じて成形又は修正されてもよい。
【0025】
第1の下流内側通路の通路軸は、第1の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。したがって、1つ以上の第1の下流内側通路の1つ以上の通路軸は、第1の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。加えて又は代替的に、第2の下流内側通路の通路軸は、第1の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。したがって、1つ以上の第2の下流内側通路の1つ以上の通路軸は、第1の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。したがって、対応する第1若しくは第2の下流内側通路又は各対応する第1若しくは第2の下流内側通路の通路軸は、第1の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。少なくとも実質的に平行とは、方向が、第1の半径方向方位接触平面の第1の半径方向接触線に対して平行である、又は平行に近いことを意味する。
【0026】
第1の下流内側通路の通路軸は、第1の半径方向接触線から離れて周方向に傾斜した方向に延びてもよい。したがって、1つ以上の第1の下流内側通路の1つ以上の通路軸は、第1の半径方向接触線から離れて傾斜した方向に延びてもよい。加えて又は代替的に、第2の下流内側通路の通路軸は、第1の半径方向接触線から離れて傾斜した方向に延びてもよい。したがって、いくつかの実施例では、1つ以上の第2の下流内側通路の1つ以上の通路軸は、第1の半径方向方位接触平面上の第1の半径方向接触線から離れて傾斜した方向に延びてもよい。したがって、いくつかの実施例では、対応する第1若しくは第2の下流内側通路又は各対応する第1若しくは第2の下流内側通路の通路軸は、第1の半径方向接触線から離れて傾斜した方向に延びてもよい。いくつかの実施例では、第1の下流内側通路軸又は各第1の下流内側通路軸は、第1の半径方向接触線に対して約0°~約75°の角度で延びてもよい。更なる実施例では、第1の下流内側通路軸又は各第1の下流内側通路軸は、第1の半径方向接触線に対して約0°~約60°の角度で延びてもよい。また更なる実施例では、第1の下流内側通路軸又は各第1の下流内側通路軸は、第1の半径方向接触線に対して約0°~約45°の角度で延びてもよい。
【0027】
いくつかの実施例では、ブリストルが名目上偏向されていないとき、それぞれのブリストルは、第2の半径方向接触線に対して約10°~約70°の角度で延びてもよい。更なる実施例では、ブリストルが名目上偏向されていないとき、それぞれのブリストルは、第2の半径方向接触線に対して約15°~約65°の角度で延びてもよい。また更なる実施例では、ブリストルが名目上偏向されていないとき、それぞれのブリストルは、第2の半径方向接触線に対して約20°~約60°の角度で延びてもよい。また更なる実施例では、ブリストルが名目上偏向されていないとき、それぞれのブリストルは、第2の半径方向接触線に対して約30°~約55°の角度で延びてもよい。それぞれのブリストルは、ブリストルが名目上偏向されていないとき、通路軸に対して約90°の角度で延びてもよい。
【0028】
第1の下流内側通路は、内側ハウジングの一部分内に形成されてもよい。したがって、第1の下流内側通路のうちの1つ以上は、内側ハウジングの一部分内に形成されてもよい。加えて又は代替的に、第2の通路は、内側ハウジングの一部分内に形成されてもよい。したがって、第2の通路のうちの1つ以上は、内側ハウジングの一部分内に形成されてもよい。したがって、第1又は第2の通路のうちの1つ以上は、内側ハウジングの一部分内に形成されてもよい。内側ハウジングの一部分内に1つ以上の通路を形成することにより、外側ハウジングが個々の通路によって捕捉される可能性は、少なくとも部分的に低減される。更に、内側ハウジングと外側ハウジングとの間の接触領域は、負荷を低減するように最大化される。いくつかの実施例では、第1の下流内側通路は、内側ハウジングの一部分を通って半径方向内側に穿孔することによって形成されてもよい。孔は、自由に流れるようにすることができ、又は通路内の半径方向内側若しくは半径方向外側の位置で遮断されてもよい。内側ハウジングはまた、2つ以上の部品の後続の形成を伴う多部品構築方法を使用して形成されてもよい。
【0029】
第1の下流内側通路は、内側ハウジングの一部分上に形成されてもよい。したがって、第1の通路のうちの1つ以上は、内側ハウジングの一部分上に形成されてもよい。加えて又は代替的に、第2の通路は、内側ハウジングの一部分上に形成されてもよい。したがって、第2の通路のうちの1つ以上は、内側ハウジングの一部分上に形成されてもよい。したがって、第1又は第2の通路のうちの1つ以上は、内側ハウジングの一部分上に形成されてもよい。更に、第1のチャンバと第2のチャンバとの間を通過する通路内の流体は、内側ハウジング上の軸力を反作用させるのを助けることができる。したがって、チャンバのサイズは、それに応じて縮小することができる。
【0030】
内側ハウジング及び外側ハウジングは、環状であってもよく、第1の下流側外側接触面及び第2の下流側外側接触面はそれぞれ、円周領域を画定してもよい。第1の下流内側チャンバ及び第2の下流内側チャンバ、又は第1の下流内側チャンバ及び第2の下流内側チャンバのそれぞれは、環状であってもよく、チャンバ又は各チャンバは、円周領域を画定する。したがって、第1の下流内側チャンバ及び第2の下流内側チャンバ、又は第1の下流内側チャンバ及び第2の下流内側チャンバのそれぞれは、エンジンの軸の周囲に完全に延びて、1つ以上の対応する連続チャンバを形成してもよい。
【0031】
それぞれの上流側若しくは下流側の内側又は外側接触面のうちの1つ以上は、接触面又は各接触面から離間した内側ハウジングのより遠い部分よりも相対的に硬い硬化表面層を含んでもよい。加えて又は代替的に、内側若しくは外側ハウジングのそれぞれの上流側若しくは下流側の内側又は外側接触面のうちの1つ以上は、接触面又は各接触面から離間した内側ハウジングのより遠い部分よりも相対的に低い表面粗さ及び相対的に低い摩擦係数のいずれか又は両方を含む表面層を含んでもよい。対応する内側若しくは外側ハウジングの上流側若しくは下流側の内側若しくは外側接触面、又は各上流側若しくは下流側の内側若しくは外側接触面は、ダイヤモンド状炭素コーティングを含んでもよい。対応する内側若しくは外側ハウジングの上流側若しくは下流側の内側若しくは外側接触面、又は各上流側若しくは下流側の内側若しくは外側接触面は、酸化表面層を含んでもよい。対応する内側若しくは外側ハウジングの上流側若しくは下流側の内側若しくは外側接触面、又は各上流側若しくは下流側の内側若しくは外側接触面は、接触面又は各接触面から離間した内側ハウジングのより遠い部分よりも相対的に耐摩耗性が高い、耐摩耗性表面層を含んでもよい。そのような表面層は、電着、電気塗装、スパッタリング、物理的蒸着、又は化学蒸着のうちの1つ以上によって堆積させることができる。
【0032】
封止機構は、外側ハウジングに対する内側ハウジングの円周方向の回転を少なくとも実質的に防止するために、内側ハウジングと外側ハウジングとの間に構成された回転防止機構を含んでもよい。したがって、回転防止機構は、内側ハウジング及びブラシパックが外側ハウジング内の回転シャフトによって回転されることを少なくとも実質的に防止することができる。回転防止機構はまた、外側ハウジングに対する内側ハウジング及びブラシパックの半径方向の移動を可能にすることができる。したがって、回転防止機構は、軸方向の移動を外側ハウジングの形状によって防止することができるように、方位角又は円周方向の移動を防止しながら、半径方向の移動を可能にすることができる。更に、回転防止手段は、付勢又は調心装置としても機能することができる。これは、重力が内側ハウジングをスロットの底部に落下させる効果を有さないので、特に水平軸構造構成における、ガスタービンエンジン内へのシールの取付を補助することができる。そのような構成で用いることができる構成としては、例えば、スロット内のピン、放射状ばね、及び内側ハウジングの外周の周りの波形ばねが挙げられる。
【0033】
第2の態様によれば、第1の態様に関連して説明するようなブラシシールを備えるガスタービンエンジンが提供される。
【0034】
第3の態様によれば、相対的高流体圧力領域と相対的低流体圧力領域との間の軸方向流路内の互いに対して移動可能な部品間の漏れ間隙を封止するための方法が提供される。この方法は、相対的高流体圧力領域と相対的低流体圧力領域との間に、第1の態様で説明するタイプの内側ハウジング及び外側ハウジングを構成することを含むことができる。この方法は、第1の下流内側チャンバ及び第2の下流内側チャンバのうちの1つ以上に加圧流体を供給して、内側ハウジング上の軸方向に印加された力を外側ハウジングに対して少なくとも部分的に反作用させることを含んでもよい。
【0035】
第4の態様によれば、使用中に、相対的高流体圧力領域と相対的低流体圧力領域との間の軸方向流路内の互いに対して移動可能な部品間の漏れ間隙を封止するための、第1、第2、又は第3の態様に関連して説明するようなブラシシールが提供される。ブラシシールは、第1の中央内側接触部材及び第2の中央内側接触部材を含む内側ハウジングを更に備えてもよい。中央内側接触部材のうちの第1のものは、第1の上流側内側接触面を含んでもよい。接触部材のうちの第2のものは、第2の上流側接触面を含んでもよい。第2の上流側内側接触面は、第1の上流側内側接触面とは別個であり、かつ第2の半径方向接触線に沿って第1の上流側内側接触面から半径方向に変位され、間に1つ以上の中央内側チャンバの1つ以上の中央内側チャンバ開口部を画定してもよい。ブラシシールは、第2の半径方向接触線に沿って、第1の上流側内側接触面及び第2の上流側内側接触面の両方と物理的に連通している第1のブリストル層を更に備えてもよい。第1のブリストル層は、使用中に高圧領域と内側ハウジングとの間に構成されてもよい。第2の半径方向接触線に隣接して分割された、第1のブリストル層と対応する上流側内側接触面のそれぞれとの間の内側ハウジングの集合的接触面は、対応するチャンバ開口部又は各対応するチャンバ開口部の集合的表面よりも大きくてもよい。この構成は、ブリストル層と内側ハウジングとの間の摩耗を低減することができる。具体的には、この構成は、ブリストル層と内側ハウジングとの間のフレッティング摩耗を低減する。ブリストル層と接触する内側ハウジングの表面を最大化することによって、内側ハウジングとブリストル層との間の接触面を増大することができ、それにより、接触圧を低減することができる。
【0036】
第5の態様によれば、タービン、圧縮機、及びタービンを圧縮機に接続するコアシャフトを含むエンジンコアと、エンジンコアの上流に配置されたファンであって、複数のファンブレードを含むファンと、コアシャフトからの入力を受け取り、コアシャフトよりも低い回転速度でファンを駆動するように、ファンに推進力を出力するギアボックスと、を備える、航空機用ガスタービンエンジンが提供され、ガスタービンエンジンは、任意の他の態様で提供されるようなブラシシールを備える。
【0037】
タービンは、第1のタービンであってもよく、圧縮機は、第1の圧縮機であってもよく、コアシャフトは、第1のコアシャフトであってもよい。エンジンコアは、第2のタービンと、第2の圧縮機と、第2のタービンを第2の圧縮機に接続する第2のコアシャフトと、を更に含んでもよい。第2のタービン、第2の圧縮機、及び第2のコアシャフトは、第1のコアシャフトよりも高い回転速度で回転するように構成されてもよい。
【0038】
本明細書の他の箇所で説明するように、本開示は、ガスタービンエンジンに関してもよい。そのようなガスタービンエンジンは、タービンと、燃焼器と、圧縮機と、タービンを圧縮機に接続するコアシャフトと、を含むエンジンコアを備えてもよい。そのようなガスタービンエンジンは、エンジンコアの上流に配置されたファン(ファンブレードを有する)を備えてもよい。
【0039】
本開示の構成は、特に、排他的にではないが、ギアボックスを介して駆動されるファンにとって有益であり得る。したがって、ガスタービンエンジンは、コアシャフトからの入力を受け取り、コアシャフトよりも低い回転速度でファンを駆動するように、ファンに推進力を出力するギアボックスを備えてもよい。ギアボックスへの入力は、コアシャフトから直接であっても、又は、例えばスパーシャフト及び/若しくはギアを介して、コアシャフトから間接的であってもよい。コアシャフトは、タービン及び圧縮機が同じ速度で回転する(このときファンがより低速で回転する)ように、タービンと圧縮機とを強固に接続してもよい。
【0040】
本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンエンジンは、任意の好適な一般的構成を有することができる。例えば、ガスタービンエンジンは、タービンと圧縮機とを接続する任意の所望の数のシャフト、例えば、1つ、2つ、又は3つのシャフトを有してもよい。単なる例として、コアシャフトに接続されたタービンは、第1のタービンであってもよく、コアシャフトに接続された圧縮機は、第1の圧縮機であってもよく、コアシャフトは、第1のコアシャフトであってもよい。エンジンコアは、第2のタービンと、第2の圧縮機と、第2のタービンを第2の圧縮機に接続する第2のコアシャフトと、を更に含んでもよい。第2のタービン、第2の圧縮機、及び第2のコアシャフトは、第1のコアシャフトよりも高い回転速度で回転するように構成されてもよい。
【0041】
そのような構成では、第2の圧縮機は、第1の圧縮機の軸方向下流に配置されてもよい。第2の圧縮機は、第1の圧縮機からの流れを受ける(例えば、概ね環状のダクトを介して、例えば、直接受ける)ように構成されてもよい。
【0042】
ギアボックスは、最低回転速度で回転する(例えば、使用中に)ように構成されたコアシャフト(例えば、上記の例では第1のコアシャフト)によって駆動されるように構成されてもよい。例えば、ギアボックスは、最低回転速度で回転する(例えば、使用中に)ように構成されたコアシャフトのみ(例えば、上記の例では第2のコアシャフトではなく第1のコアシャフトのみ)によって駆動されるように構成されてもよい。あるいは、ギアボックスは、任意の1つ以上のシャフト、例えば、上記の例では第1及び/又は第2のシャフトによって駆動されるように構成されてもよい。
【0043】
ギアボックスは、減速ギアボックス(ファンへの出力が、コアシャフトからの入力よりも低い回転速度である)であってもよい。任意の種類のギアボックスが使用されてもよい。例えば、ギアボックスは、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するような、「遊星型」又は「星型」ギアボックスであってもよい。ギアボックスは、例えば、2.5より大きい、例えば、3~4.2又は3.2~3.8の範囲の、例えば、少なくとも3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、又は4.2のオーダーの、任意の所望の減速比(出力シャフトの回転速度で割った入力シャフトの回転速度として定義される)を有することができる。ギア比は、例えば、前の文における値のうちの任意の2つの間であってもよい。単なる例として、ギアボックスは、3.1又は3.2~3.8の範囲の比を有する「星型」ギアボックスであってもよい。いくつかの構成では、ギア比は、これらの範囲外であってもよい。
【0044】
本明細書で説明及び/又は特許請求するような任意のガスタービンエンジンでは、燃焼器は、ファン及び圧縮機(単数又は複数)の軸方向下流に設けられてもよい。例えば、燃焼器は、第2の圧縮機が設けられている場合、第2の圧縮機のすぐ下流(例えば、出口)にあってもよい。更なる例として、第2のタービンが設けられている場合、燃焼器への出口における流れは、第2のタービンの入口に供給されてもよい。燃焼器は、タービン(単数又は複数)の上流に設けられていてもよい。
【0045】
圧縮機又は各圧縮機(例えば、上述したような第1の圧縮機及び第2の圧縮機)は、任意の数の段、例えば複数の段を含んでもよい。各段は、ロータブレードの列及びステータベーンの列を含んでもよく、ステータベーンは、可変ステータベーン(それらの入射角を可変とすることができる)であってもよい。ロータブレードの列及びステータベーンの列は、互いに軸方向にオフセットされていてもよい。
【0046】
タービン又は各タービン(例えば、上述したような第1のタービン及び第2のタービン)は、任意の数の段、例えば複数の段を含んでもよい。各段は、ロータブレードの列及びステータベーンの列を含んでもよい。ロータブレードの列及びステータベーンの列は、互いに軸方向にオフセットされていてもよい。
【0047】
各ファンブレードは、半径方向内側ガス洗浄位置又は0%スパン位置の根元(又はハブ)から100%スパン位置の先端まで延びる半径方向スパンを有するとして定義することができる。ハブでのファンブレードの半径と先端でのファンブレードの半径との比は、0.4、0.39、0.38、0.37、0.36、0.35、0.34、0.33、0.32、0.31、0.3、0.29、0.28、0.27、0.26、又は0.25のいずれか未満(又はそのオーダー)とすることができる。ハブでのファンブレードの半径と先端でのファンブレードの半径との比は、前の文の値のうちの任意の2つによって画定される包含範囲(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)、例えば、0.28~0.32の範囲内であってもよい。これらの比は、一般に、ハブ対先端比と呼ばれる場合がある。ハブでの半径及び先端での半径は両方とも、ブレードの前縁(又は軸方向最前方)部分で測定されてもよい。ハブ対先端比は、当然ながら、ファンブレードのガス洗浄部分、すなわち、任意のプラットフォームの半径方向外側の部分を指す。
【0048】
ファンの半径は、エンジン中心線とファンブレードのその前縁部での先端との間で測定されてもよい。
【0049】
ファン直径(単にファンの半径の2倍であってもよい)は、220cm、230cm、240cm、250cm(約100インチ)、260cm、270cm(約105インチ)、280cm(約110インチ)、290cm(約115インチ)、300cm(約120インチ)、310cm、320cm(約125インチ)、330cm(約130インチ)、340cm(約135インチ)、350cm、360cm(約140インチ)、370cm(約145インチ)、380(約150インチ)cm、390cm(約155インチ)、400cm、410cm(約160インチ)、又は420cm(約165インチ)のうちのいずれかより大きく(又はそのオーダーと)することができる。ファン直径は、前の文における値のうちの任意の2つによって画定される包含範囲(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)、例えば、240cm~280cm又は330cm~380cmの範囲内であってもよい。
【0050】
ファンの回転速度は、使用中に変化し得る。一般的に、回転速度は、より大きな直径を有するファンに対してより低い。単なる非限定的な例として、巡航状態におけるファンの回転速度は、2500rpm未満、例えば、2300rpm未満であってもよい。単に更なる非限定的な例として、220cm~300cm(例えば、240cm~280cm又は250cm~270cm)の範囲のファン直径を有するエンジンに対する巡航状態におけるファンの回転速度は、1700rpm~2500rpmの範囲、例えば、1800rpm~2300rpmの範囲、例えば、1900rpm~2100rpmの範囲であってもよい。単に更なる非限定的な例として、330cm~380cmの範囲のファン直径を有するエンジンに対する巡航状態におけるファンの回転速度は、1200rpm~2000rpmの範囲、例えば、1300rpm~1800rpmの範囲、例えば、1400rpm~1800rpmの範囲であってもよい。
【0051】
ガスタービンエンジンの使用中、ファン(関連するファンブレードを有する)は、回転軸周りに回転する。この回転により、ファンブレードの先端が速度Utipで移動することになる。ファンブレード13によって流れに対して行われる仕事は、流れのエンタルピ上昇dHをもたらす。ファン先端部負荷は、dH/Utip
2として定義することができ、式中、dHは、ファンの両側のエンタルピ上昇(例えば、一次元平均エンタルピ上昇)であり、U
tipは、ファン先端の、例えば、先端の前縁での(並進)速度(前縁におけるファン先端半径に角速度を乗じたものとして定義することができる)である。巡航状態でのファン先端負荷は、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、又は0.4(全ての値が無次元である)のうちのいずれかよりも大きく(又はそのオーダーと)することができる。ファン先端負荷は、前の文における値のうちの任意の2つによって画定される包含範囲(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)、例えば、0.28~0.31又は0.29~0.3の範囲内であってもよい。
【0052】
本開示によるガスタービンエンジンは、任意の所望のバイパス比を有してもよく、バイパス比は、巡航状態でのバイパスダクトを通る流れの質量流量とコアを通る流れの質量流量との比として定義される。いくつかの構成では、バイパス比は、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20のいずれかよりも大きく(又はそのオーダーと)することができる。バイパス比は、前の文における値のうちの任意の2つによって画定される包含範囲(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)、例えば、12~16、13~15、又は13~14の範囲内であってもよい。バイパスダクトは、実質的に環状であってもよい。バイパスダクトは、コアエンジンの半径方向外側にあってもよい。バイパスダクトの半径方向外面は、ナセル及び/又はファンケースによって画定することができる。
【0053】
本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンエンジンの全体的な圧力比は、ファンの上流の淀み圧力と(燃焼器に入る前の)最高圧力の圧縮機の出口における淀み圧力との比として定義することができる。非限定的な例として、巡航での本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンエンジンの全体的な圧力比は、35、40、45、50、55、60、65、70、75のいずれかより大きく(又はそのオーダーと)することができる。全体的な圧力比は、前の文における値のうちの任意の2つによって画定される包含範囲(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)、例えば、50~70の範囲内であってもよい。
【0054】
エンジンの比推力は、エンジンの正味推力をエンジンを通る総質量流量で割ったものとして定義することができる。巡航状態では、本明細書で説明及び/又は特許請求するエンジンの比推力は、110Nkg-1s、105Nkg-1s、100Nkg-1s、95Nkg-1s、90Nkg-1s、85Nkg-1s、又は80Nkg-1sのうちのいずれか未満(又はそのオーダー)とすることができる。比推力は、前の文における値のうちの任意の2つによって画定される包含範囲(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)、例えば、80Nkg-1s~100Nkg-1s、又は85Nkg-1s~95Nkg-1sの範囲内であってもよい。そのようなエンジンは、従来のガスタービンエンジンと比較して特に効率的であり得る。
【0055】
本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンエンジンは、任意の所望の最大推力を有することができる。単なる非限定的な例として、本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンは、少なくとも、160kN、170kN、180kN、190kN、200kN、250kN、300kN、350kN、400kN、450kN、500kN、又は550kNのうちのいずれかの(又はそのオーダーの)最大推力を生成することが可能であり得る。最大推力は、前の文における値のうちの任意の2つによって画定される包括的範囲内であってもよい(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)。単なる例として、本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンは、330kN~420kN、例えば350kN~400kNの範囲の最大推力を生成することが可能であり得る。上記で言及した推力は、エンジンが静的な状態で、海抜プラス15℃(周囲気圧101.3kPa、温度30℃)における標準大気条件での最大正味推力であってもよい。
【0056】
使用中、高圧タービンへの入口における流れの温度は、特に高いことがある。この温度は、TETと呼ばれることがあり、燃焼器への出口で、例えば、それ自体はノズルガイドベーンと呼ばれることがある、第1のタービンベーンのすぐ上流で測定されてもよい。巡航では、TETは、少なくとも、1400K、1450K、1500K、1550K、1600K、又は1650Kのうちのいずれか(又はそのオーダー)であってもよい。巡航でのTETは、前の文における値のうちの任意の2つによって画定される包括的範囲内であってもよい(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)。エンジンの使用中の最大TETは、例えば、少なくとも、1700K、1750K、1800K、1850K、1900K、1950K、又は2000Kのうちのいずれか(又はそのオーダー)であってもよい。最大TETは、前の文における値のうちの任意の2つによって画定される包含範囲(すなわち、値は、上限又は下限を形成することができる)、例えば、1800K~1950Kの範囲内であってもよい。最大TETは、例えば、高推力状態、例えば、最大離陸(maximum take-off、MTO)条件で生じ得る。
【0057】
本明細書で説明及び/又は特許請求するファンブレード及び/又はファンブレードのエアロフォイル部分は、任意の好適な材料又は材料の組み合わせから製造することができる。例えば、ファンブレード及び/又はエアロフォイルの少なくとも一部は、複合材、例えば、金属マトリックス複合材及び/又は炭素繊維などの有機マトリックス複合材から少なくとも部分的に製造されてもよい。更なる例として、ファンブレード及び/又はエアロフォイルの少なくとも一部は、チタン系金属又はアルミニウム系材料(アルミニウムリチウム合金など)又は鋼系材料などの金属から少なくとも部分的に製造されてもよい。ファンブレードは、異なる材料を使用して製造された少なくとも2つの領域を含んでもよい。例えば、ファンブレードは、保護前縁部を有してもよく、これは、ブレードの残りの部分よりも(例えば、鳥類、氷、又は他の材料からの)衝撃に耐えることができる材料を使用して製造することができる。そのような前縁部は、例えば、チタン又はチタン系合金を使用して製造することができる。したがって、単なる例として、ファンブレードは、チタン前縁部を有する炭素繊維又はアルミニウム系本体(アルミニウムリチウム合金など)を有してもよい。
【0058】
本明細書で説明及び/又は特許請求するようなファンは、中央部分を含んでもよく、この中央部分からファンブレードは、例えば、半径方向に延びることができる。ファンブレードは、任意の所望の方法で中央部分に取り付けられてもよい。例えば、各ファンブレードは、ハブ(又はディスク)内の対応するスロットに係合することができる固定具を含んでもよい。単なる例として、そのような固定具は、ファンブレードをハブ/ディスクに固定するために、ハブ/ディスク内の対応するスロット内にはめ込む及び/又は係合することができるダブテールの形態であってもよい。更なる例として、ファンブレードは、中央部分と一体的に形成されてもよい。そのような構成は、ブレード付きディスク又はブレード付きリングと呼ばれることがある。任意の好適な方法を使用して、そのようなブレード付きディスク又はブレード付きリングを製造することができる。例えば、ファンブレードの少なくとも一部は、ブロックから機械加工されてもよく、及び/又はファンブレードの少なくとも一部は、線形摩擦溶接などの溶接によってハブ/ディスクに取り付けられてもよい。
【0059】
本明細書で説明及び/又は特許請求するガスタービンエンジンは、可変面積ノズル(variable area nozzle、VAN)を備えてもよい、又は備えなくてもよい。そのような可変面積ノズルは、使用中にバイパスダクトの出口面積を変化させることを可能にすることができる。本開示の一般原理は、VANを有する又は有さないエンジンに適用することができる。
【0060】
本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンのファンは、任意の所望の数のファンブレード、例えば14、16、18、20、22、24、又は26個のファンブレードを有してもよい。
【0061】
本明細書で使用するとき、巡航状態は、従来の意味を有し、当業者によって容易に理解されるであろう。したがって、航空機用の所与のガスタービンエンジンに関して、巡航状態が、ガスタービンエンジンが取り付けられるように設計された航空機の所与のミッション(当該産業では「経済的なミッション」と呼ばれることがある)の中間巡航でのエンジンの動作点を意味することを、当業者は直ちに認識するであろう。この点に関して、中間巡航は、上昇の頂部と下降の開始との間で燃焼される全燃料の50%が燃焼された航空機の飛行サイクルにおける点である(これは、上昇の頂部と下降の開始との間の時間及び/又は距離に関しての中間点によって近似することができる)。したがって、巡航状態は、その航空機に設けられるエンジンの数を考慮して、ガスタービンエンジンが取り付けられるように設計された航空機の中間巡航における定常状態動作(すなわち、一定の高度及び一定のマッハ数を維持する)を確実にすることになる推力を提供するガスタービンエンジンの動作点を定義する。例えば、エンジンが、同じタイプのエンジンを2つ有する航空機に取り付けられるように設計されている場合、巡航状態で、エンジンは、中間巡航でのその航空機の定常状態動作に必要とされることになる総推力の半分を提供する。
【0062】
換言すれば、航空機用の所与のガスタービンエンジンに関して、巡航状態は、中間巡航大気条件(中間巡航高度でのISO 2533に準拠した国際標準大気によって定義されている)における(航空機上の任意の他のエンジンと組み合わせて、所与の中間巡航マッハ数でのエンジンが取り付けられるように設計された航空機の定常状態動作を提供するために必要な)指定された推力を提供するエンジンの動作点として定義される。航空機用の任意の所与のガスタービンエンジンに対して、中間巡航推力、大気条件、及びマッハ数は既知であり、したがって、巡航状態におけるエンジンの動作点は、明確に定義される。
【0063】
単なる例として、巡航状態における前進速度は、マッハ0.7~0.9の範囲、例えば、0.75~0.85、例えば、0.76~0.84、例えば、0.77~0.83、例えば、0.78~0.82、例えば0.79~0.81、例えば、マッハ0.8のオーダー、マッハ0.85のオーダー、又は0.8~0.85の範囲の任意の点であり得る。これらの範囲内の任意の単一の速度は、巡航状態の一部であってもよい。一部の航空機に関して、巡航状態は、これらの範囲外である、例えば、マッハ0.7を下回る、又はマッハ0.9を上回ることができる。
【0064】
単なる例として、巡航状態は、10000m~15000mの範囲、例えば、10000m~12000mの範囲、例えば、10400m~11600m(約38000フィート)の範囲、例えば、10500m~11500mの範囲、例えば、10600m~11400mの範囲、例えば、10700m(約35000フィート)~11300mの範囲、例えば、10800m~11200mの範囲、例えば、10900m~11100mの範囲、例えば、11000mのオーダーの高度における、標準大気条件(国際標準大気(International Standard Atmosphere、ISA)による)に対応することができる。巡航状態は、これらの範囲内の任意の所与の高度における標準大気条件に対応することができる。
【0065】
単なる例として、巡航状態は、0.8の前進マッハ数及び38000フィート(11582m)の高度での標準大気条件(国際標準大気による)における、既知の必要推力レベル(例えば、30kN~35kNの範囲の値)を提供するエンジンの動作点に対応することができる。単に更なる例として、巡航状態は、0.85の前進マッハ数及び35000フィート(10668m)の高度での標準大気条件(国際標準大気による)における、既知の必要推力レベル(例えば、50kN~65kNの範囲の値)を提供するエンジンの動作点に対応することができる。
【0066】
使用中、本明細書で説明及び/又は特許請求するガスタービンエンジンは、本明細書の他の箇所で定義される巡航状態で動作することができる。そのような巡航状態は、推進推力を提供するために、少なくとも1つ(例えば、2つ又は4つ)のガスタービンエンジンを搭載することができる航空機の巡航状態(例えば、中間巡航状態)によって決定することができる。
【0067】
一態様によれば、本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンエンジンを備える航空機が提供される。この態様による航空機は、ガスタービンエンジンが取り付けられるように設計された航空機である。したがって、この態様による巡航状態は、本明細書の他の箇所で定義されるような、航空機の中間巡航に対応する。
【0068】
一態様によれば、本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンエンジンを動作させる方法が提供される。動作は、本明細書の他の箇所に定義されるような巡航状態(例えば、推力、大気条件、及びマッハ数に関して)におけるものであってもよい。
【0069】
一態様によれば、本明細書で説明及び/又は特許請求するようなガスタービンエンジンを備える航空機を動作させる方法が提供される。この態様による動作は、本明細書の他の箇所に定義されるような、航空機の中間巡航での動作を含んでもよい(又はそれであってもよい)。
【0070】
第1の中央内側通路は、第2の中央内側チャンバと第2の中央内側チャンバとの間、又は第2の中央内側チャンバと第3の若しくは更なる中央内側チャンバとの間に延びてもよい。第2の中央内側通路は、第3の又は更なる中央内側チャンバと第1の中央内側チャンバとの間に延びてもよい。したがって、第1の中央内側通路の通路軸は、第2の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。したがって、1つ以上の第1の中央内側通路の1つ以上の通路軸は、第2の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。加えて又は代替的に、第2の中央内側通路の通路軸は、第2の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。したがって、1つ以上の第2の中央内側通路の1つ以上の通路軸は、第2の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。したがって、対応する第1若しくは第2の中央内側通路又は各対応する第1若しくは第2の中央内側通路の通路軸は、第2の半径方向接触線に対して少なくとも実質的に平行な方向に延びてもよい。少なくとも実質的に平行とは、方向が、第2の半径方向方位接触平面の第2の半径方向接触線に対して平行である、又は平行に近いことを意味する。
【0071】
第1の中央内側通路の通路軸は、第2の半径方向接触線から離れて周方向に傾斜した方向に延びてもよい。したがって、1つ以上の第1の中央内側通路の1つ以上の通路軸は、第2の半径方向接触線から離れて傾斜した方向に延びてもよい。加えて又は代替的に、第2の中央内側通路の通路軸は、第2の半径方向方位接触平面上の第2の半径方向接触線から離れて傾斜した方向に延びてもよい。したがって、いくつかの実施例では、1つ以上の第2の中央内側通路の1つ以上の通路軸は、第2の半径方向接触線から離れて傾斜した方向に延びてもよい。したがって、いくつかの実施例では、対応する第1若しくは第2の中央内側通路又は各対応する第1若しくは第2の中央内側通路の通路軸は、第2の半径方向接触線から離れて傾斜した方向に延びてもよい。したがって、第1及び第2の中央内側通路のいずれか又は両方のうちの1つ以上を、ブリストルの撚り角度とは反対側の第2の半径方向接触線から離れる方向に傾斜させることにより、個々のブリストルが個々の通路内に捕捉される可能性が低減される。いくつかの実施例では、第1の中央内側通路軸又は各第1の中央内側通路軸は、第2の半径方向接触線に対して約0°~約75°の角度で延びてもよい。更なる実施例では、第1の中央内側通路軸又は各第1の中央内側通路軸は、第2の半径方向接触線に対して約30°~約70°の角度で延びてもよい。また更なる実施例では、第1の中央内側通路軸又は各第1の中央内側通路軸は、第2の半径方向接触線に対して約45°~約60°の角度で延びてもよい。
【0072】
更なる実施例では、1つ以上の第1の下流内側通路及び1つ以上の第2の若しくは更なる下流内側通路のいずれか又は両方は、外側ハウジングの下流半径方向壁の上流側面内に形成されてもよい。加えて又は代替的に、1つ以上の第1の下流内側通路及び1つ以上の第2の若しくは更なる下流内側通路のいずれか又は両方は、外側ハウジングの下流半径方向壁内に又はそれを通って形成されてもよい。このようにして、この構成は、内側ハウジングの製造の複雑さを低減することができる。
【0073】
当業者は、互いに排他的である場合を除き、上記態様のいずれか1つに関連して説明される特徴は、任意の他の態様に準用して適用されてもよいことを理解するであろう。更に、互いに排他的である場合を除き、本明細書に記載される任意の特徴を、任意の態様に適用してもよく、及び/又は本明細書に記載される任意の他の特徴と組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
ここで、図を参照して、実施形態を単に例として説明する。
【
図2】ギア付きファンガスタービンエンジンの機械的構成を示す。
【
図5a】本開示のブラシシール機構の断面図を示す。
【
図6a】本開示のブラシシール機構の断面図を示す。
【
図7a】本開示のブラシシール機構の断面図を示す。
【
図8a】本開示のブラシシール機構の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図1は、主回転軸9を有するガスタービンエンジン10を示す。エンジン10は、空気取り入れ口12と、2つの気流:コア気流A及びバイパス気流Bを生成する推進ファン23と、を備える。ガスタービンエンジン10は、コア気流Aを受けるコア11を備える。エンジンコア11は、軸流直列に、低圧圧縮機14と、高圧圧縮機15と、燃焼装置16と、高圧タービン17と、低圧タービン19と、コア排気ノズル20と、を備える。ナセル21は、ガスタービンエンジン10を取り囲み、バイパスダクト22及びバイパス排気ノズル18を画定する。バイパス気流Bは、バイパスダクト22を通って流れる。ファン23は、シャフト26及び遊星ギアボックス30を介して低圧タービン19に取り付けられ、これによって駆動される。
【0076】
使用中に、コア気流Aは、低圧圧縮機14によって加速及び圧縮され、高圧圧縮機15に導かれ、そこで更なる圧縮が行われる。高圧圧縮機15から排気された圧縮空気は、燃焼装置16に導かれ、そこで圧縮空気が燃料と混合され、混合物が燃焼される。次いで、結果として得られた高温燃焼生成物は、ノズル20を通って排出される前に、高圧タービン17及び低圧タービン19を通って膨張し、それによってそれらを駆動し、なんらかの推進推力をもたらす。高圧タービン17は、好適な相互接続シャフト27によって高圧圧縮機15を駆動する。ファン23は、概して、推進推力の大部分を提供する。遊星ギアボックス30は、減速ギアボックスである。
【0077】
ギア付きファンガスタービンエンジン10の例示的な構成を、
図2に示す。低圧タービン19(
図1を参照)は、遊星ギア機構30の太陽ホイール又は太陽ギア28に結合されたシャフト26を駆動する。遊星キャリア34によって互いに結合された複数の遊星ギア32は、太陽ギア28の半径方向外側にあり、それと噛み合う。遊星キャリア34は、遊星ギア32を拘束して、各遊星ギア32がそれ自体の軸周りに回転することを可能にしながら、太陽ギア28の周囲を同時に歳差運動させる。遊星キャリア34は、エンジン軸9周りのその回転を駆動するために、リンク機構36を介してファン23に結合される。リンク機構40を介して静止支持構造体24に結合された環又はリングギア38は、遊星ギア32の半径方向外側にあり、それと噛み合う。
【0078】
本明細書で使用するとき、用語「低圧タービン」及び「低圧圧縮機」は、それぞれ最低圧タービン段及び最低圧圧縮機段(すなわち、ファン23を含まない)、並びに/又はエンジン内の最低回転速度で相互接続シャフト26によって共に接続されるタービン段及び圧縮機段(すなわち、ファン23を駆動するギアボックス出力シャフトを含まない)を意味するものとすることができることに留意されたい。いくつかの文献では、本明細書で言及される「低圧タービン」及び「低圧圧縮機」は、代替的に、「中間圧力タービン」及び「中間圧力圧縮機」として知られていることがある。そのような代替的な命名法が使用される場合、ファン23は、第1の圧縮段又は最低圧圧縮段と呼ばれることがある。
【0079】
遊星ギアボックス30は、例として、
図3により詳細に示す。太陽ギア28、遊星ギア32、及びリングギア38のそれぞれは、他のギアと噛み合うように、それらの周辺部の周りに歯を備える。しかしながら、明確にするために、歯の例示的な部分のみを
図3に示す。図示した4つの遊星ギア32が存在するが、特許請求される本発明の範囲内で、より多い又はより少ない遊星ギア32を設けることができることが、当業者には明らかであろう。遊星型の遊星ギアボックス30の実用的な用途は、一般に、少なくとも3つの遊星ギア32を含む。
【0080】
リングギア38が固定された状態で、遊星キャリア34がリンク機構36を介して出力シャフトに結合されるという点で、
図2及び
図3に例として示す遊星ギアボックス30は、遊星型のものである。しかしながら、任意の他の好適な種類の遊星ギアボックス30を使用してもよい。更なる例として、遊星ギアボックス30は、リング(又は環)ギア38を回転が可能にした状態で、遊星キャリア34が固定して保持された、星型構成であってもよい。そのような構成では、ファン23は、リングギア38によって駆動される。更なる代替例として、ギアボックス30は、リングギア38及び遊星キャリア34が両方とも回転することが可能な、差動ギアボックスであってもよい。
【0081】
図2及び
図3に示す構成は、単なる例としてであり、様々な代替例が本開示の範囲内であることが理解されるであろう。単なる例として、エンジン10内にギアボックス30を配置するために、及び/又はギアボックス30をエンジン10に接続するために、任意の好適な構成を使用することができる。更なる例として、ギアボックス30とエンジン10の他の部分(入力シャフト26、出力シャフト、及び固定構造体24など)との間の接続(例えば、
図2の例におけるリンク機構36、40など)は、任意の所望の剛性度又は柔軟度を有することができる。更なる例として、エンジンの回転部分と静止部分との間(例えば、ギアボックスからの入力シャフト及び出力シャフトとギアボックスケーシングなどの固定構造体との間)のベアリングの任意の好適な構成を使用することができ、本開示は、
図2の例示的な構成に限定されない。例えば、ギアボックス30が星型構成(上述した)を有する場合、出力及び支持リンク機構並びにベアリング位置の構成が、典型的には
図2に例として示すものとは異なることになることを、当業者は容易に理解するであろう。
【0082】
したがって、本開示は、ギアボックス形式(例えば、星型又は遊星型)、支持構造体、入力及び出力シャフト構成、並びにベアリング位置の任意の構成を有するガスタービンエンジンに及ぶ。
【0083】
任意選択的に、ギアボックスは、追加の及び/又は代替の構成要素(例えば、中間圧力圧縮機及び/又はブースター圧縮機)を駆動してもよい。
【0084】
本開示が適用され得る他のガスタービンエンジンは、代替的な構成を有してもよい。例えば、そのようなエンジンは、代替の数の圧縮機及び/若しくはタービン、並びに/又は代替の数の相互接続シャフトを有してもよい。更なる例として、
図1に示すガスタービンエンジンは、分流ノズル18、20を有し、これは、バイパスダクト22を通る流れが、コアエンジンノズル20とは別個かつその半径方向外側にあるそれ自体のノズル18を有することを意味する。しかしながら、これは限定されず、本開示の任意の態様はまた、混流ノズルと呼ばれることがある単一のノズルの前(又は上流)で、バイパスダクト22を通る流れとコア11を通る流れとが混合又は組み合わせられるエンジンにも適用することができる。一方又は両方のノズル(混流又は分流にかかわらず)は、固定又は可変面積を有してもよい。説明した実施例は、ターボファンエンジンに関するものであるが、例えば、本開示は、例えば、開放ロータ(ファン段がナセルによって取り囲まれていない)又はターボプロップエンジンなどの任意の種類のガスタービンエンジンに適用することができる。いくつかの構成では、ガスタービンエンジン10は、ギアボックス30を備えなくてもよい。
【0085】
ガスタービンエンジン10及びその構成要素の形状は、軸方向(回転軸9と整列する)、半径方向(
図1の下から上への方向)、及び周方向(
図1の図の紙面に垂直)を含む、従来の軸系によって定義される。軸方向、半径方向、及び周方向は、互いに垂直である。
【0086】
図4aは、ガスタービンエンジンの一部を通る断面を示す、特許付与された欧州特許第1653129号に記載されている既知の構成を示しており、この構成では、軸103を有する回転可能なシャフト102が、静止同軸のケーシング104内に取り付けられている。シャフト102とケーシング104との間の環状間隙は、第2の下流領域110から第1の上流領域108を封止する、適合するシール106によって閉鎖される。ガスタービンエンジンの動作中、第1の上流領域108内の空気は、低圧下流領域110内の空気よりも相対的に高い圧力に加圧される。ブラシシール106は、領域108、110を互いに分離する。ブラシシール106は、環状シールパックキャリア114内に摺動可能に取り付けられたシールパック112を備える。シールパック112は、保持部材118によってその外周の周りで結合された、ブリストルパック117として知られるブリストル116の高密度環状アレイを含む、適合する環113を含む。シールパック112は、シールパック112の下流側面121を含む上流環状カバープレート120と、シールパック112の上流側面123を形成する下流環状支持部材122とを更に含む。
【0087】
シールパックキャリア114は、環状保持壁140、第1の上流半径方向壁142、及び第2の下流半径方向壁144を含む。保持壁140は、エンジンケーシング104に取り付けられ、シールパック112と環状保持壁140との間の環状クリアランスCを含む。このクリアランスCは、シールパック112の半径方向移動を吸収する。クリアランスは、エンジン動作中のシャフト102とエンジンケーシング104との間の最大偏心偏位、及びキャリア114に対するシールパック112の最大半径方向伸びに適応するようなサイズにされる。半径方向壁142、144は、離間した配置で保持壁140の上流端及び下流端それぞれから半径方向内側に突出し、保持壁140の半径方向内側に開放する環状スロット146を画定する。スロットの上流面148は、内径まで半径方向内側に延びる第1の上流半径方向壁142の下流側面によって形成される。同じ半径方向壁142の上流側面は、キャリア114の外側上流面151を形成する。スロットの下流面は、内径まで半径方向内側に延び、エンジンシャフト102周りの環状クリアランスを画定する第2の半径方向壁144の上流側面152によって形成される。壁144の下流側面155は、キャリア114の下流面を画定する。
【0088】
環状チャンバ156は、第2の上流側接触面166によってその中心から離れた周囲で、かつ、第1の上流側接触面158を画定する第1の上流側環状接触部材168によってその内側半径で結合された、第2の下流半径方向壁144の上流側面152に形成されている。下流半径方向壁144の第1の上流側接触面158は、下流半径方向壁144の第2の上流側接触面166とは別個であり、かつ下流半径方向方位接触平面上の半径方向接触線に沿って、第2の上流側接触面166から半径方向に変位され、間に第1の下流チャンバ開口部159を画定する。具体的には、シールパック112の下流面124と第1の上流側接触面158及び第2の上流側接触面166の両方との間の半径方向接触線に隣接する集合的接触面は、構成の圧力平衡を最大化するために、下流外側チャンバ開口部159の半径方向接触線に隣接する集合的表面よりも小さい。
【0089】
図5aは、ガスタービンエンジンの一部を通る断面を示す、本発明による構成を示しており、この構成では、回転軸203を有する回転可能なシャフト202が、静止同軸のケーシング204内に取り付けられている。シャフト202とケーシング204との間の環状間隙は、第2の下流の相対的低流体圧力領域210から第1の高流体圧力上流領域208を封止する、適合するシール206によって閉鎖される。ガスタービンエンジンの動作中、第1の上流領域208内の空気は、低圧下流領域210内の空気よりも相対的に高い圧力に加圧される。ブラシシール206は、領域208、210を互いに分離する。ブラシシール206は、外側ハウジング214を形成する環状シールパックキャリア内に摺動可能に取り付けられた、内側ハウジング212を形成するシールパックを備える。したがって、内側ハウジング212は、外側ハウジング214の中に少なくとも部分的に配置され、かつ外側ハウジング214と、軸方向流路及び回転軸203のいずれか又は両方との両方に対して半径方向に変位するように構成されている。いくつかの実施例では、内側ハウジング212は、内側ハウジング212及び外側ハウジング214の対向する表面間の摩擦係合のみで、外側ハウジング214内に摺動可能に取り付けられる。内側ハウジング212及びブラシを外側ハウジング214に対して摺動可能に取り付けることにより、ブラシシール206は、ブリストル負荷が閾値よりも高くなると摺動することができる。この閾値は、一般に、所与のブラシパックに対するブラシシール206の両側の差圧の関数である。この作用は、GT2012-68891、Franceschini G、Jones T.V、Gillespie D.R.H.「The Development of a Large Radial Movement Brush Seal」(ASME Gas Turbine and Aeroengine Congress,Copenhagen,Denmark,June 2012)に公開されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
内側ハウジング212は、保持部材218によってその外周の周りで結合され、ブリストルパック216として又はより具体的には第1のブリストル層217として構成された、ブリストルの高密度環状アレイを含む、適合する環を含む。内側ハウジング212は、上流側面221a及び下流側面221bを含む、上流環状カバープレート220を含む。内側ハウジング212は、半径方向外向端壁223cと共に、上流側面223a及び下流側面223bを含む、下流環状支持部材222を更に含む。図示のように、第1のブリストル層217は、第2の半径方向接触線S-Sに沿って構成された上流側面223aとして
図5aの特定の実施例に示す、少なくとも第1の上流側内側接触面
(「第1の上流側を向いた内側接触面」とも呼ぶ)と物理的に連通している。第2の半径方向接触線S-Sは、第2の半径方向方位接触平面に沿って延びてもよい。第2の半径方向接触線S-Sは、第2の半径方向方位接触平面に平行に延びる第2の半径方向線を指すことができる。第2の半径方向接触線S-Sに沿って、ブリストルパック216の一部を形成するブリストルは、この保持部材218から内側に向いて、それらの内径に封止面226を形成するように構成される。ブリストルは、各ブリストル216がその半径方向内側端部でシャフト202の表面に隣接して配置されるように、半径方向に対して撚り角度で傾斜している。カバープレート220は、ブリストルパック216から軸方向に離間している。カバープレート220は、カバープレート220と封止面226との間に環状間隙が画定されるように半径方向内側に延びる。下流環状支持部材222は、下流環状支持部材222と封止面226との間に環状間隙が画定されるように、保持部材218から半径方向内側に延び、間隙は、エンジン動作中のシールに対するシャフト202の半径方向伸びによる封止面226の最大予想偏向に適応するようなサイズにされる。図示の実施例では、下流環状支持部材222は、下流環状支持部材222の全長にわたって、ブリストルパック216の下流面を支持する。
【0091】
シール外側ハウジング214は、半径方向内向面245と、上流半径方向壁242と、下流半径方向壁244とを含む、環状保持壁240を含む。保持壁240は、エンジンケーシング204に取り付けられ、内側ハウジング212と外側ハウジング214の半径方向内向面245との間の環状クリアランスCを含む。クリアランスCは、外側ハウジング214に対するシールパック212の半径方向の移動を吸収する。クリアランスCは、エンジン動作中のシャフト202とエンジンケーシング204との間の最大偏心偏位、及び外側ハウジング214に対するシールパック212の最大半径方向伸びに適応するようなサイズにされる。軸方向に離間した半径方向壁242、244は、保持壁240の上流端及び下流端それぞれから半径方向内側に突出する。
【0092】
外側ハウジング214の上流半径方向壁242は、上流側外面251及び下流側内面248を含む。外側ハウジング214の下流半径方向壁244は、上流側内面(「上流側を向いた内面」とも呼ぶ)252及び下流側外面255を更に含む。したがって、外側ハウジング214の上流内面は、上流半径方向壁242の下流側面248によって形成される。更に、外側ハウジング214の下流内面は、下流半径方向壁244の上流側面252によって形成される。更なる実施例では、外側ハウジング214は、1つ以上の接触面、及び適用可能な場合、間に1つ以上のチャンバを含む、1つ以上の接触部材(図示せず)を含んでもよいことが理解されるであろう。例えば、図示していないが、外側ハウジング214は、第1の上流側外側接触面を画定する第1の下流外側接触部材、及び第2の上流側外側接触面を画定する第2の下流外側接触部材を含んでもよい。対応する半径方向壁242、244の上流内面248及び下流内面252は、内側ハウジング212が摺動可能に構成されたスロットの内側面を形成する。
【0093】
環状支持部材222は、第1の下流側外側接触面(「第1の下流側を向いた外側接触面」とも呼ぶ)258aを画定する第1の下流外側接触部材258と呼ばれる第1の下流側外側接触部材、及び第2の下流側外側接触面(「第2の下流側を向いた外側接触面」とも呼ぶ)268aを画定する第2の下流外側接触部材268と呼ばれる第2の下流側外側接触部材を含む。いくつかの実施例では、第1の下流外側接触部材258及び第2の下流外側接触部材268は、環状であってもよい。したがって、いくつかの実施例では、第1の下流側外側接触面258a及び第2の下流側外側接触面268aは、環状であってもよい。第1の下流内側チャンバ256は、第1の下流側外側接触面258aを画定する第1の下流外側接触部材258によってその内側半径で、かつ第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268によってその中心から離れた周囲で結合された環状支持部材222の下流側面223bに形成される。いくつかの実施例では、第1の下流内側チャンバ256は、環状であってもよい。第1の下流側外側接触面258a及び第2の下流側外側接触面268aの両方は、第1の半径方向接触線F-Fに沿って構成される。第1の半径方向接触線F-Fは、第1の半径方向方位接触平面に沿って延びてもよい。第1の半径方向接触線F-Fは、第1半径方向方位接触平面に平行に延びる第1半径方向線を指すことができる。第1の下流側外側接触面258aは、第2の下流側外側接触面268aとは別個であり、かつ第1の半径方向接触線F-Fに沿って、第2の下流側外側接触面268aから半径方向に離間して、間に第1の下流内側チャンバ開口部259aを画定する。
【0094】
図5aに示すように、第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268は、環状支持部材222に部分的に沿って延びる。具体的には、第2の下流外側接触部材268は、第1の下流内側チャンバ256と半径方向外向端壁223cとの間に延びる。したがって、第2の下流外側接触部材268は、第1の下流内側チャンバ256の半径方向外面を部分的に画定する第2の半径方向内側端壁268bを含む。
【0095】
外側ハウジング214の上流側内面252は、少なくとも第1の下流側外側接触面258a及び第2の下流側外側接触面268aの少なくとも一部分と、通常の使用中に生じることが予想されるそれらの間の全ての相対的半径方向変位の間、物理的に連通して維持される。したがって、クリアランスCの値は、通常のエンジン動作中のシャフト202とエンジンケーシング204との間の最大偏心偏位、及び外側ハウジング214に対するシールパック212の最大半径方向伸びのいずれか又は両方に適応するように変化することができる。したがって、通常の使用中に予想される外側ハウジング214に対する内側ハウジング212の全ての相対的半径方向位置において、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的接触面は、下流内側チャンバ開口部259aの第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的表面よりも大きい。
【0096】
図5bは、第1の半径方向方位接触平面F-F上で見た、内側ハウジング212の(下流から見た)背面図を示す。下流支持部材222及び第2の下流外側接触部材268は、半径方向外向端壁223cから半径方向内側に延びる。第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aは、第1の下流外側接触部材258及び第1の下流側外側接触面258aから半径方向に離間して、間に第1の下流内側チャンバ256を画定する。更に、図示の実施例では、第1の下流側外側接触面258aを画定する第1の下流外側接触部材258及び第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268の両方は、使用中に内側ハウジング212を支持するための、外側ハウジング214に対する反作用面を提供する。
【0097】
再び
図5aを参照して、図示の実施例では、半径方向に延びる間隙270が、上流半径方向壁242の上流内面248と上流側面221aとの間に存在する。いくつかの実施例では、半径方向に延びる間隙270は、環状であってもよい。図示のように、間隙は、第2の下流内側チャンバ246と相対的高流体圧力上流領域208との間に上流半径方向壁242の半径方向長さに沿って延びる。したがって、第2の下流内側チャンバ246は、相対的高流体圧力上流領域208と流体連通して維持されて、高圧流体を第2の下流内側チャンバ246に供給する。このようにして、内側ハウジング212は、半径方向に向いた内向きの力を与えられ、内側ハウジング212を回転可能なシャフト202に向かって半径方向内側に押して、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の環状クリアランスCを維持する。更なる実施例では、間隙270は、代わりに、下流側内面248又は上流側面221aに形成されて、内部にチャネルを提供してもよい。更なる実施例では、間隙270は、環状保持壁240の半径方向内向面245に形成されてもよい。また更なる実施例では、間隙270は、代わりに、上流半径方向壁242又は環状カバープレート220を通って形成されて、内部にチャネル又はオリフィスを提供してもよい。更なる実施例では、間隙270は、環状保持壁240を通って形成されて、内部にチャネル又はオリフィスを提供することができる。したがって、隙間は、高流体圧力上流領域208と第2の下流内側チャンバ246との間で高圧流体を移送するように構成されている。
【0098】
いくつかの実施例では、内側ハウジング212の上流側面221aは、第3の半径方向接触線T-Tに沿って構成された第1の上流側外面278aを含む第1の上流外側接触部材278を含む。したがって、いくつかの実施例では、第3の半径方向接触線T-Tは、第3の半径方向方位接触平面に沿って延びてもよい。第3の半径方向接触線T-Tは、第3の半径方向方位接触平面に平行に延びる第3の半径方向線を指すことができる。いくつかの実施例では、上流半径方向壁242の上流内面248の少なくとも一部分は、第3の半径方向接触線T-Tに沿って第1の上流側外面278aと接触していてもよい。したがって、上流半径方向壁242の上流内面248の少なくとも一部分は、使用中に、内側ハウジング212の上流側外側接触面278aと接触して維持され、それを軸方向に支持してもよい。更なる実施例では、内側ハウジング212は、第3の半径方向接触線T-Tに沿って第1の上流側外面から半径方向に離間して、間に、低圧下流領域210内の空気の圧力と相対的に類似又はそれよりも相対的に高い圧力の加圧流体を供給することができる上流内側チャンバ開口部(図示せず)を画定するように構成された、第2の上流側外面(図示せず)を含む第2の上流外側接触部材(図示せず)を含んでもよい。したがって、第1のチャンバ内の流体は、内側ハウジング212が軸方向に負荷を低減されるように、低圧下流領域210に通気することができる。
【0099】
ここで
図6a及び
図6bを参照して、
図5a及び
図5bそれぞれの特徴部に対応する特徴部は、ここで説明する特徴部を除いて、対応する参照番号を与えられる。
図6aに示すように、支持部材222は、第1の下流側外側接触面258aを画定する第1の下流外側接触部材258、及び第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268を含む。第1の下流内側チャンバ256は、第1の下流側外側接触面258aを画定する第1の下流外側接触部材258によってその内側半径で、かつ第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268によってその中心から離れた周囲で結合された支持部材222の下流側面223bに形成される。
図5aに関連して図示及び説明したように、第1の下流側外側接触面258a及び第2の下流側外側接触面268aの両方は、第1の半径方向接触線F-Fに沿って構成されている。第1の下流側外側接触面258aは、第2の下流側外側接触面268aとは別個であり、かつ第1の半径方向接触線F-Fに沿って、第2の下流側外側接触面268aから半径方向に離間して、間に第1の下流内側チャンバ開口部259aを画定する。
【0100】
図6aに示すように、第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aは、内側ハウジング212の半径方向外向端壁
(「半径方向外側を向いた端壁」とも呼ぶ)223cから半径方向に離間して、間に第2の下流内側チャンバ246を画定するように構成される。更に、第2の下流側外側接触面268aは、支持部材222の半径方向外向端壁223cとは別個であり、かつ第1の半径方向接触線F-Fに沿って、半径方向外向端壁223cから半径方向に離間して、間に第2の下流内側チャンバ開口部259bを画定する。図示のように、第2の下流外側接触部材268は、第1の下流内側チャンバ256の半径方向外面を部分的に画定する第2の半径方向内側端壁268b、及び第2の下流内側チャンバ246の半径方向内面を部分的に画定する第2の半径方向外側端壁268cを含む。したがって、第2の下流外側接触部材268は、第1の下流内側チャンバ256の第1の下流内側チャンバ開口部259a、及び第2の下流内側チャンバ246の第2の下流内側チャンバ開口部259bを少なくとも部分的に画定し、分離する。したがって、図示の実施例では、第2の下流外側チャンバ246は、下流側内面248と下流半径方向壁244の上流側面との間に軸方向に延びる。更に、第2の下流外側チャンバ246の一部分は、下流環状支持部材223cの半径方向外側端壁と環状保持壁240の半径方向内向面245との間に半径方向に延びる。また更に、第2の下流外側チャンバ246の一部分は、第2の下流外側接触部材268の第2の半径方向外側端壁268cと環状保持壁240の半径方向内向面245との間に半径方向に延びる。
【0101】
外側ハウジング214の上流側内面252は、少なくとも第1の下流側外側接触面258a及び第2の下流側外側接触面268aの少なくとも一部分と、通常の使用中に生じることが予想されるそれらの間の全ての相対的半径方向変位の間、物理的に連通して維持される。したがって、クリアランスCの値は、通常のエンジン動作中のシャフト202とエンジンケーシング204との間の最大偏心偏位、及び外側ハウジング214に対するシールパック212の最大半径方向伸びのいずれか又は両方に適応するように変化することができる。したがって、通常の使用中に予想される外側ハウジング214に対する内側ハウジング212の全ての相対的半径方向位置において、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的接触面は、下流内側チャンバ開口部259aの第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的表面よりも大きい。いくつかの実施例では、通常の使用中に予想される外側ハウジング214に対する内側ハウジング212の全ての相対的半径方向位置において、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的接触面は、下流内側チャンバ開口部259a及び第2の下流内側チャンバ開口部259bの両方の第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的表面よりも大きい。
【0102】
更なる実施例(図示せず)では、内側ハウジング212は、第1の半径方向接触線F-Fに沿って構成された第3の又は更なる下流側外側接触面を含む、第3の又は更なる下流外側接触部材を含んでもよい。第3の又は更なる下流側外側接触面は、第1の下流側外側接触面258aと第2の下流側外側接触面268aとの間に構成され、かつ、第1の半径方向接触線F-Fに沿って、第1の下流側外側接触面258a及び第2の下流側外側接触面268aから半径方向に変位され、第1の下流内側チャンバ256の第1の下流内側チャンバ開口部259a、及び第3の下流内側チャンバの第3の下流内側チャンバ開口部のいずれか又は両方を少なくとも部分的に画定することができる。第3の又は更なる下流側外側接触面は、第3の更なる下流チャンバの第3の又は更なる下流内側チャンバ開口部を少なくとも部分的に画定してもよい。
【0103】
図6bは、第1の半径方向方位接触平面F-F上で見た、
図6aに以前に示した内側ハウジング212の(下流から見た)背面図を示す。支持部材222は、半径方向外向端壁223cから半径方向内側に延びる。第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aは、半径方向外向端壁223cから離間し、半径方向外向端壁223cに対して半径方向内側に延び、それにより、第2の下流内側チャンバ246は、半径方向外向端壁223cと、第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aの両方との間に画定される。更に、第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aは、第1の下流外側接触部材258及び第1の下流側外側接触面258aから半径方向に離間して、間に第1の下流内側チャンバ256を画定する。更に、図示の例では、第1の下流側外側接触面258aを画定する第1の下流外側接触部材258及び第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268の両方は、外側ハウジング214の上流側内面252によって軸方向に支持される。
【0104】
加えて、支持部材222内の第2の下流外側接触部材268は、内部の1つ以上の第1の下流内側通路272又はチャネルを含む。具体的には、第1の下流内側通路272又は各第1の下流内側通路272は、第2の下流側外側接触面268a内に形成された通路、凹部、又は溝を含んでもよい。このようにして、第1の下流内側通路272は、少なくとも第1の下流内側チャンバ256と第2の下流内側チャンバを流体接続するように構成される。したがって、適用可能な場合、第3の又は更なる下流外側接触部材は、少なくとも第3の下流内側チャンバと第1の下流内側チャンバ256とを流体接続するように構成された第2の下流内側通路を含んでもよい。いくつかの実施例によれば、1つ以上の第1の下流内側通路272は、定義された直径又は深さを含むことができる。いくつかの実施例では、第1の下流内側通路272のうちの1つ以上の直径又は深さは、支持部材222の軸方向厚さの約20%~約80%であってもよい。更なる実施例では、第1の下流内側通路272のうちの1つ以上の直径又は深さは、支持部材222の軸方向厚さの約40%~約80%であってもよい。また更なる実施例では、第1の下流内側通路272のうちの1つ以上の直径又は深さは、支持部材222の軸方向厚さの約50%~約75%であってもよい。いくつかの実施例では、第1の通路240は、堆積又は層状構築法を使用して支柱間に設けられてもよい。また更なる実施例では、第1の通路の軸は、第1の半径方向接触線F-Fから離れて傾斜した方向に延びてもよい。したがって、第1の下流内側通路272、及び適用可能な場合、第2の下流内側通路は、加圧流体の供給源と第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方とを流体接続するように構成されてもよい。したがって、第1の下流内側通路は、加圧流体の供給源と第2の下流内側チャンバ又は第1の下流内側チャンバのいずれかとを流体接続するように構成されてもよい。加えて、第2の下流内側通路は、加圧流体の供給源と少なくとも第3の下流内側チャンバ及び第1の下流内側チャンバとを流体接続するように構成されてもよい。
【0105】
更なる実施例では、第1の下流内側通路272、及び適用可能な場合、第2の下流内側通路は、相対的高流体圧力上流領域208又は加圧流体の更なる供給源への任意の更なる流体接続なしに、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のみを流体接続するように構成されてもよい。また更なる実施例では、第1の下流内側通路272は、相対的高流体圧力上流領域208、加圧流体の更なる供給源、又は第2の下流内側チャンバ246への任意の更なる流体接続なしに、第1の下流内側チャンバ256及び第3の又は更なる下流内側チャンバのみを流体接続するように構成されてもよい。
【0106】
再び
図6aを参照して、図示の実施例では、半径方向に延びる間隙270は、第2の下流内側チャンバ246と相対的高流体圧力上流領域208との間に上流半径方向壁242の半径方向長さに沿って延びる。したがって、第2の下流内側チャンバ246は、高圧流体を第2の下流内側チャンバ246に供給するために、相対的高流体圧力上流領域208と流体連通して維持される。このようにして、高圧流体は、使用中、内側ハウジング212上の軸方向に印加された力を外側ハウジング214に対して少なくとも部分的に反作用させることができる。
【0107】
図6bに示すような第1の下流内側通路272によって、使用中、高圧流体は、第2の下流内側チャンバ246と第1の下流内側チャンバ256との間に流れることができる。したがって、高圧流体は、使用中に、内側ハウジング212上の半径方向に印加された力を外側ハウジング214に対して少なくとも部分的に反作用させることができる。したがって、高圧流体を第2の下流内側チャンバ246に供給することによって、高圧流体は、第3の又は更なる内側チャンバ及び第1の下流内側チャンバ256の両方を加圧するために、第1の下流内側通路272、及び関連する場合、第2の又は更なる下流内側通路を介して第1の下流内側チャンバ256に移送されてもよい。いくつかの実施例では、加圧流体は、使用中に第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方を、加圧流体の供給源の位置に応じて、相対的高圧上流領域208の圧力と実質的に等しい又はその圧力未満の圧力まで加圧することができる。更なる実施例では、加圧流体は、使用中に第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方を、加圧流体の供給源の位置に応じて、相対的高圧上流領域208の圧力と実質的に等しい又はその圧力より大きい圧力まで加圧することができる。また更なる実施例では、加圧流体は、使用中に第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方を、相対的低流体圧力領域210の圧力より高い圧力まで加圧することができる。全ての実施例では、加圧流体は、下流領域の静的流体圧力よりも相対的に大きい静的流体圧力に加圧された流体を指す。したがって、いくつかの実施例では、加圧流体は、約1気圧より大きい静的流体圧力に加圧された流体を指す。下流を上回る静圧と差圧(下流を上回る上流の)との商は、圧力平衡比と呼ばれることがある。いくつかの実施例では、流体は、約0.8~約1.1の圧力平衡比に加圧されてもよい。更なる実施例では、流体は、約0.9~約1.05の圧力平衡比に加圧されてもよい。また更なる実施例では、流体は、約0.95~約1.0の圧力平衡比に加圧されてもよい。好ましい実施例では、流体は、ガスであることが理解されるであろう。流体は、作動ガスであってもよい。最も好ましい実施例では、作動ガスは、空気である。
【0108】
加圧流体の供給源は、第1の下流内側通路272、外側ハウジング214、及び相対的高圧上流領域208と流体連通する半径方向に延びる間隙270のうちの1つ以上の軸方向上流の位置から、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方に供給してもよい。更に、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方の流体圧力は、例えば、半径方向に延びる間隙270、第1の通路272、又は第2の若しくは更なる通路のうちの1つ以上に、一定若しくは可変狭窄部、シール、又はバルブを配置することによって低減又は変更されてもよい。そのような構成は、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方における流体圧力を測定、監視、及び制御するように構成された1つ以上の圧力センサ及びコントローラを備えてもよい。このようにして、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方における流体圧力は、外側ハウジング214に対する内側ハウジング212上の軸方向に印加された力の平衡を可能にするように調整又は制御されてもよい。加圧流体の供給源から第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方に加圧流体を移送するための特定の通路構成は、いくつかの実施例では、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,173,962号に記載されているものと同等であってもよい。
【0109】
図6a及び
図6bの実施例に示すように、使用中に、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方内の加圧流体は、内側ハウジング212に加えられる力を外側ハウジング214に対して少なくとも部分的に反作用させてもよい。したがって、外側ハウジング214と、第1の下流側外側接触面258a、並びに第2の下流側外側接触面268a及び第3の若しくは更なる接触面のいずれか又は両方との間の正味の軸力は、少なくとも部分的に低減される。いくつかの実施例では、流体の圧力、したがって外側ハウジング214に加えられる力は、外側ハウジング214と、第1の下流側外側接触面258a、並びに第2の下流側外側接触面268a及び第3の若しくは更なる上流側接触面のいずれか又は両方との間の正味の軸力が、実質的に低減される、又は少なくとも実質的に除去される、のいずれかであるようなものであってもよい。
【0110】
いくつかの実施例では、外側ハウジング212と、第1の下流側外側接触面258a、並びに第2の下流側外側接触面268a及び第3の若しくは更なる接触面のいずれか又は両方との間の正味の軸力の少なくとも部分的な低減により、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の半径方向に向けられた拘束する摩擦力を少なくとも部分的に低減することができる。更なる実施例では、内側ハウジング212と、第1の下流側外側接触面258a、並びに第2の下流側外側接触面268a及び第3の若しくは更なる接触面のいずれか又は両方との間の正味の軸力の少なくとも部分的な低減により、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の半径方向に向けられた拘束する摩擦力を少なくとも実質的に低減する、又は少なくとも実質的に除去することができる。加圧流体の供給源における圧力が高すぎる場合、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間に作用する軸方向に向けられかつ半径方向に拘束する摩擦力は、内側ハウジング212を外側ハウジングに対して半径方向に変位させることができるように平衡化されることを停止し、流体の漏れを引き起こすことになる。したがって、内側ハウジング212の両側の圧力差が高すぎる場合、内側ハウジング212及びブリストルパック216のいずれか又は両方を通る流体の流れは、内側ハウジング212及びブリストル層217のいずれか又は両方が乱されて、第1の上流側内側接触部材258を通過する流体の漏れが増加することになる、レベルに増加することがある。前述したように、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方の流体圧力は、第1の通路272及び第2の若しくは更なる通路のいずれか又は両方に、一定若しくは可変狭窄部又はバルブを設けることによって低減又は変更されてもよい。好ましい実施例では、第1の下流内側チャンバ256、第2の下流内側チャンバ246、及び第3の又は更なる下流内側チャンバのうちの1つ以上において加圧流体によって内側ハウジング212に加えられる力は、上流領域208内の流体によって内側ハウジング212及びブリストル層217に加えられる反対の力を部分的にのみ平衡させ、それにより、内側ハウジング212と、第1の下流側外側接触面258a、並びに第2の下流側外側接触面268a及び第3の若しくは更なる接触面のいずれか又は両方との間に、概ね正味の軸力が存在する。これにより、内側ハウジング212上に半径方向に拘束する摩擦力が生じる。
【0111】
当業者であれば、ブラシシールが本質的に漏れやすく、ブリストル層を通る、より低いが有限の漏れ流量のために設計されていることを認識するであろう。本発明によるシールでは、漏れ流れは、通常の流路方向でブリストルを通って生じる。そのような流量を計算するための手段は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,173,962号に記載されている。
【0112】
ここで
図7a及び
図7bを参照して、
図6a及び
図6bそれぞれと共に、
図5a及び
図5bの特徴部に対応する特徴部は、ここで説明する特徴部を除いて、対応する参照番号を与えられる。
図7aに示すように、環状支持部材222は、第1の下流側外側接触面258aを画定する第1の下流外側接触部材258、及び第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268を含む。第1の下流内側チャンバ256は、第1の下流側外側接触面258aを画定する第1の下流外側接触部材258によってその内側半径で、かつ第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268によってその中心から離れた周囲で結合された環状支持部材222の下流側面223bに形成される。
図5a~
図6bに関連して図示及び説明したように、第1の下流側外側接触面258a及び第2の下流側外側接触面268aの両方は、第1の半径方向接触線F-Fに沿って構成されている。第1の下流側外側接触面258aは、第2の下流側外側接触面268aとは別個であり、かつ第1の半径方向接触線F-Fに沿って、第2の下流側外側接触面268aから半径方向に離間して、間に第1の下流内側チャンバ開口部259aを画定する。
【0113】
第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aは、内側ハウジング212の半径方向外向端壁223cから半径方向に離間して、間に第2の下流内側チャンバ246を画定するように構成される。更に、第2の下流側外側接触面268aは、半径方向外向端壁223cとは別個であり、かつ第1の半径方向接触線F-Fに沿って、半径方向外向端壁223cから半径方向に離間して、間に第2の下流内側チャンバ開口部259bを画定する。図示のように、第2の下流外側接触部材268は、第1の下流内側チャンバ256の半径方向外面を部分的に画定する第2の半径方向内側端壁268b、及び第2の下流内側チャンバ246の半径方向外面を部分的に画定する第2の半径方向外側端壁268cを含む。したがって、第2の下流外側接触部材268は、第1の下流内側チャンバ256の第1の下流内側チャンバ開口部259a、及び第2の下流内側チャンバ246の第2の下流内側チャンバ開口部259bを少なくとも部分的に画定し、分離する。
【0114】
図7aに図示及び説明したように、通常の使用中に予想される外側ハウジング214に対する内側ハウジング212の全ての相対的半径方向位置において、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的接触面は、下流内側チャンバ開口部259aの第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的表面よりも大きい。いくつかの実施例では、通常の使用中に予想される外側ハウジング214に対する内側ハウジング212の全ての相対的半径方向位置において、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的接触面は、下流内側チャンバ開口部259a及び第2の下流内側チャンバ開口部259bの両方の第1の半径方向接触線F-Fに沿った集合的表面よりも大きい。
【0115】
図示しない更なる実施例では、内側ハウジング212は、第1の半径方向接触線F-Fに沿って構成された第3の又は更なる下流側外側接触面を含む、第3の又は更なる下流外側接触部材を含んでもよいことが理解されるであろう。第3の又は更なる下流側外側接触面は、第1の下流側外側接触面258aと第2の下流側外側接触面268aとの間に配置され、かつ第1の半径方向接触線F-Fに沿って、第1の下流側外側接触面258a及び第2の下流側外側接触面268aから半径方向に変位され、第1の下流内側チャンバ256の第1の下流内側チャンバ開口部259a、及び第2の下流内側チャンバ246の第2の下流内側チャンバ開口部259bのいずれか又は両方を少なくとも部分的に画定することができる。第3の又は更なる下流側外側接触面は、第3の又は更なる下流チャンバの第3の又は更なる下流内側チャンバ開口部を更に画定してもよい。
【0116】
図7bは、第1の半径方向方位接触平面F-F上で見た、
図7aに以前に示した内側ハウジング212の(下流から見た)背面図を示す。支持部材222は、半径方向外向端壁223cから半径方向内側に延びる。第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aは、半径方向外向端壁223cから離間し、半径方向外向端壁223cに対して半径方向内側に延び、それにより、第2の下流内側チャンバ246は、半径方向外向端壁223cと、第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aの両方との間に画定される。更に、第2の下流外側接触部材268及び第2の下流側外側接触面268aは、第1の下流外側接触部材258及び第1の下流側外側接触面258aから半径方向に離間して、間に第1の下流内側チャンバ256を画定する。更に、図示の例では、第1の下流側外側接触面258aを画定する第1の下流外側接触部材258及び第2の下流側外側接触面268aを画定する第2の下流外側接触部材268の両方は、外側ハウジング214の上流側内面252によって軸方向に支持される。
【0117】
加えて、かつ更に
図6bに示す実施例に対して、
図7a及び
図7bの両方は、内部に一体的に形成された1つ以上の第1の下流内側通路272又はチャネルを含む第2の下流外側接触部材268を示す。具体的には、第1の下流内側通路272又は各第1の下流内側通路272は、第2の外側接触部材268の本体内に、かつ本体を通って形成された通路を含む。このようにして、第1の下流内側通路272は、
図6bに関連して説明したように、少なくとも第1の下流内側チャンバ256と第2の下流内側チャンバを流体接続するように構成される。したがって、適用可能な場合、第3の又は更なる下流外側接触部材は、対応する外側接触部材の本体内に、かつ本体を通って形成され、かつ少なくとも第3の下流内側チャンバと第1の下流内側チャンバ256とを流体接続するように構成された、第2の又は更なる下流内側通路を含んでもよい。したがって、第1の下流内側通路272、及び適用可能な場合、第2の下流内側通路は、加圧流体の供給源と第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方とを流体接続するように構成されてもよい。
【0118】
更なる実施例では、第1の下流内側通路272、及び適用可能な場合、第2の下流内側通路は、相対的高流体圧力上流領域208又は加圧流体の更なる供給源への任意の更なる流体接続なしに、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のみを流体接続するように構成されてもよい。また更なる実施例では、第1の下流内側通路272は、相対的高流体圧力上流領域208、加圧流体の更なる供給源、又は第2の下流内側チャンバ246への任意の更なる流体接続なしに、第1の下流内側チャンバ256及び第3の又は更なる下流内側チャンバのみを流体接続するように構成されてもよい。
【0119】
再び
図7aを参照して、図示の実施例では、半径方向に延びる間隙270は、第2の下流内側チャンバ246と相対的高流体圧力上流領域208との間に上流半径方向壁242の半径方向長さに沿って延びる。したがって、第2の下流内側チャンバ246は、高圧流体を第2の下流内側チャンバ246に供給するために、相対的高流体圧力上流領域208と流体連通して維持される。このようにして、高圧流体は、使用中、内側ハウジング212上の軸方向に印加された力を外側ハウジング214に対して少なくとも部分的に反作用させることができる。
【0120】
図7bに示すような第1の下流内側通路272によって、使用中、高圧流体は、第2の下流内側チャンバ246と第1の下流内側チャンバ256との間に流れることができる。したがって、高圧流体は、使用中に、内側ハウジング212上の半径方向に印加された力を外側ハウジング214に対して少なくとも部分的に反作用させることができる。したがって、高圧流体を第2の下流内側チャンバ246に供給することによって、高圧流体は、第3の又は更なる外側チャンバ及び第1の下流内側チャンバ256の両方を加圧するために、第1の下流内側通路272、及び関連する場合、第2の又は更なる下流内側通路を介して第1の下流内側チャンバ256に移送されてもよい。
【0121】
いくつかの実施例では、外側ハウジング214と、第1の下流側外側接触面258a、並びに第2の下流側外側接触面268a及び第3の若しくは更なる接触面のいずれか又は両方との間の正味の軸力の少なくとも部分的な低減により、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の半径方向に向けられた拘束する摩擦力を少なくとも部分的に低減することができる。更なる実施例では、内側ハウジング212と、第1の下流側外側接触面258a、並びに第2の下流側外側接触面268a及び第3の若しくは更なる上流側接触面のいずれか又は両方との間の正味の軸力の少なくとも部分的な低減により、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の半径方向に向けられた拘束する摩擦力を少なくとも実質的に低減する、又は少なくとも実質的に除去することができる。
【0122】
図6a及び
図6bに示す構成に加えて、第2の下流外側接触部材268内に1つ以上の第1の下流内側通路272又はチャネルを組み込むことにより、第2の下流側外側接触面268aの面積を最大化することができる。したがって、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間の接触領域を増加させることにより、接触圧を低減することができる。接触圧の低下により、使用中の内側ハウジング212と外側ハウジング214との間のフレッティング摩耗耐性の更なる改善をもたらすことができる。摩耗は、典型的には、接触圧と相関し、表面速度及び界面温度によって更に影響され得る。接触荷重は、内側ハウジング212及びブリストルパック216の周囲の圧力によって固定される。軸方向に向けられた接触荷重は、外側ハウジング214の下流半径方向壁244によって耐えることができる。接触圧は、接触領域258a、268a又は各接触領域258a、268aの表面積を増加させ、同時に内側ハウジング212を取り囲む圧力を変化させないままにすることによって、低減することができる。
【0123】
ここで
図8a及び
図8bを参照して、
図6a、
図6b、
図7a、及び
図7bそれぞれと共に、
図5a及び
図5bの特徴部に対応する特徴部は、ここで説明する特徴部を除いて、対応する参照番号を与えられる。
図8aは、回転防止機構280を追加した、
図7a及び
図7bのものと同様の構成を示す。回転防止機構は、内側ハウジング212と外側ハウジング214との間に位置する。具体的には、回転防止280機構は、内側ハウジング212の保持部材218と外側ハウジング214の環状保持壁240との間に位置する。図示の実施例では、回転防止機構は、波形ばねの形態で設けられ、これは、第1の半径方向方位接触平面F-F上で見た内側ハウジング212の(下流から見た)背面図を示す
図8bにより明確に示されている。ブラシシール206機構内に回転防止機構を用いるいくつかの実施例では、ピン及びスロットの回転防止機構は、低半径方向剛性の環状波形ばねと置き換えられてもよい。低半径方向剛性の環状波形ばねは、内側ハウジング212及び外側ハウジング214のいずれか又は両方に、ブラシシール206機構の周囲の部分的に周り又は周囲全体の周りのいずれかでスポット溶接されてもよい。したがって、外側ハウジング214に対して内側ハウジング212の内側の半径方向移動が必要とされる場合、内側ハウジング212は、外側ハウジング214に対して摺動することができる。
【0124】
許容差の積み重ねが大きい一部のエンジン位置に対して、生じる摺動の恩恵により、非常に低い圧力であっても、ブラシシール206に最初に「自動調心」して、それによって内側ハウジング212とシャフト203との間のクリアランスを増加させる必要性を除去する能力を与える。これの恩恵により、ブラシシール206を通る漏れがより低くなり、かつブリストル先端力がより低くなり、より長寿命のブラシパックが得られる。回転防止は、周方向の波形ばね機構を使用して、又は円周の周りに分散された放射状ばねのセット、若しくはピン及びスロットによって達成されてもよい。
【0125】
漏れ流量を更に低減し、したがって、ブリストルを通る漏れ流れを低減するために、
図5a~
図8bに関連して図示及び説明した実施例のそれぞれは、ブリストル層217又は第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか若しくは両方の上又は軸方向上流に、追加の多孔質層を重ね合わせることによって修正されてもよい。いくつかの実施例では、追加の多孔質層(図示せず)は、ブリストル層217のすぐ上流に配置されてもよい。更なる実施例では、追加の多孔質層(図示せず)は、ブリストル層217の一部分のみのすぐ上流に配置されてもよい。適用可能な場合、そのような追加の層は、ブリストルを著しく制動して、シャフトの移動などに適応するそれらの能力を阻害するべきではない。したがって、前述のブラシシール機構は、追加の密封要素と直列の関係で配置されてもよく、それにより、更なるチャンバが、対応するブラシシール機構と上流領域208内の流体との間に画定される。したがって、更なるチャンバ内の流体は、使用中に、上流領域208内の流体の圧力と相対的低圧下流領域210の圧力との間の圧力に維持又は制御されてもよい。このようにして、第1の下流内側チャンバ256及び第2の下流内側チャンバ246のいずれか又は両方に供給される流体圧力を低減して、説明した圧力平衡効果を達成することができる。
【0126】
ここで
図9を参照して、前の図の特徴部に対応する特徴部は、ここで説明する特徴部を除いて、対応する参照番号を与えられる。
図9は、
図8aのものと同様の構成を示し、第1の下流内側通路272又は各第1の下流内側通路272は、代わりに、外側ハウジング214の下流半径方向壁244の上流側面252に形成される。したがって、いくつかの実施例では、第1の下流内側通路272又は各第1の下流内側通路272は、外側ハウジング214の下流半径方向壁244内に、又はそれを通って形成されてもよい。このようにして、この構成は、内側ハウジング212の製造の複雑さを低減することができる。
【0127】
図示又は説明した各実施例では、ブリストル層217は、好適な剛性、温度耐性、耐クリープ性、耐侵食性、及び耐食性の特性を呈する多数の様々な材料から形成されてもよいことが理解されるであろう。いくつかの実施例では、ブリストル層217は、溶接又はろう付け又は圧着などの任意の好適な接合技術によって内側ハウジング212に固定された、複数本の弾性ワイヤの多数のタフトから形成されてもよい。用いられる特定の技術は、当然のことながら、用いられる材料の特定の選択、及びそれらが動作することが予想される温度によって決定される。図示した実施例では、ブリストル層217内に含まれるブリストルは、コバルト合金ワイヤである。更なる実施例では、ブリストル層217内に含まれるブリストルは、ニッケル系合金から構成されてもよい。更に、図示の実施例では、内側ハウジング212、外側ハウジング214、及びそれぞれの接触部材は、ニッケル系又は適合性合金であり、一緒に溶接されて、一体型ユニットを提供する。更なる実施例では、同様の若しくは実質的に同様の性能、特性、又は材料挙動を達成又は提供するために、別個に、又は開示した材料と組み合わせて、更なる材料を使用してもよいことが理解されるであろう。したがって、ブリストル層217、内側ハウジング212、外側ハウジング214、又はそれぞれの接触部材のうちの1つ以上は、ガスタービンエンジン又は高温用途で一般的に使用される多くの更なる合金成分を含んでもよいことが理解されるであろう。
【0128】
加えて又は代替的に、
図5a~
図8bのいずれかに関連して図示又は説明したそれぞれの接触面258a、268aのうちの1つ以上は、接触面258a、268a又は各接触面258a、268aから離間した内側ハウジング212のより遠い部分よりも相対的に硬い硬化表面層を含んでもよいことが理解されるであろう。加えて又は代替的に、
図5a~
図8bのいずれかに関連して図示又は説明したそれぞれの接触面258a、268aのうちの1つ以上は、接触面258a、268a又は各接触面258a、268aから離間した内側ハウジング212のより遠い部分よりも相対的に低い表面粗さ及び相対的に低い摩擦係数のいずれか又は両方を含む表面層を含んでもよい。例えば、ダイヤモンド状炭素表面処理を、内側ハウジング212及び外側ハウジング214のいずれか又は両方の半径方向内側、半径方向外側、上流若しくは下流の表面又は接触面のうちの任意の1つ以上に使用してもよい。そのようなダイヤモンド状炭素表面処理は、優れたフレッティング耐性を有する処理表面のうちの任意の1つ以上を提供することができる。
【0129】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本明細書に記載される概念から逸脱することなく、様々な修正及び改善を行うことができることが理解されるであろう。相互に排他的である場合を除き、特徴のうちのいずれかは、別個に、又は任意の他の特徴と組み合わせて用いられてもよく、本開示は、本明細書に記載される1つ以上の特徴の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせに及び、かつそれらを含む。