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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】電気化学素子用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/44 20210101AFI20231222BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20231222BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231222BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231222BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20231222BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231222BHJP
【FI】
H01M50/44
H01G11/52
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/449
H01M50/489
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019165796
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021044166
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】諸星 翔平
(72)【発明者】
【氏名】村田 修一
(72)【発明者】
【氏名】川野 明彦
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-105927(JP,A)
【文献】特公平08-014064(JP,B2)
【文献】国際公開第2008/047542(WO,A1)
【文献】特開2010-126829(JP,A)
【文献】特開2014-022093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/44
H01G 11/52
H01M 50/414
H01M 50/417
H01M 50/449
H01M 50/489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接着繊維が接着しており、前記第1接着繊維がポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアゾール系樹脂、ポリイミド系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、かつ、以下の[酸化誘導時間測定方法]において測定される、構成繊維の酸化誘導時間が60分以上である接着繊維層と、接着繊維層に隣接して、平均繊維径が5μm以下の極細繊維と第2接着繊維とを含み、第2接着繊維が接着した極細繊維含有層とを有し、前記極細繊維の一部は接着繊維層に入り込んでおり、前記接着繊維層と前記極細繊維含有層との層間剥離強度を測定しようとしても、極細繊維含有層内で剥離してしまい、前記層間剥離強度の測定が不可能である、電気化学素子用セパレータ。
[酸化誘導時間測定方法]
(1)接着繊維層の構成繊維を5mg秤量し、サンプルを用意する。
(2)熱重量示差熱分析(TG-DTA)装置に前記サンプルをセットし、窒素ガス雰囲気下で200℃まで昇温する。
(3)酸素ガスをTG-DTA装置の窒素ガス雰囲気下に導入する。
(4)200℃で静置し、(3)の酸素ガス導入から、酸化反応による示差熱分析(DTA)の発熱ピークが観測できるまでの時間を測定し、これを酸化誘導時間(単位:分)とする。
【請求項2】
前記極細繊維がポリオレフィン系樹脂から構成されている、請求項に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項3】
前記第2接着繊維がポリオレフィン系樹脂から構成されている、請求項1または2に記載の電気化学素子用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気化学素子の正極と負極とを分離して短絡を防止すると共に、電解液を保持して起電反応を円滑に行うことができるように、正極と負極との間にセパレータが使用されている。また、電気化学素子が充放電する際に電気化学素子の電極が膨張し、セパレータに圧力がかかることでセパレータの電解液保持量が減少し、電気化学素子の電気抵抗上昇が起こることがあることから、電解液保持性に優れ、電気化学素子の電気抵抗を低くすることができるセパレータが求められている。
【0003】
このような電解液保持性に優れるセパレータとして、本願出願人は「第1融着繊維が融着した融着繊維層と、融着繊維層に隣接して、平均繊維径が5μm以下の極細繊維と第2融着繊維とを含み、第2融着繊維が融着した極細繊維層とを有し、前記極細繊維の一部は融着繊維層に入り込んでおり、前記融着繊維層と極細繊維層との層間剥離強度を測定しようとしても、極細繊維層内で剥離してしまい、前記層間剥離強度の測定が不可能であることを特徴とする、アルカリ電池用セパレータ。」(特許文献1)を提案した。特許文献1には、極細繊維層に含まれる極細繊維の一部が前記融着繊維層と極細繊維層との層間で剥離させようとしても剥離することができないほどに、融着繊維層に入り込んで一体化していることによって、融着繊維層と極細繊維層との層間における電解液の偏りが生じにくく、電気化学素子の電気抵抗を低くすることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2008/047542号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のセパレータは、確かに電解液保持性に優れ、電気抵抗の低い電気化学素子を実現できるセパレータであったが、電気化学素子の正極の酸化反応によって、セパレータが劣化し、それによりセパレータの機械的強度の低下が起こり、電気化学素子の短絡やセパレータの保液性低下による電気化学素子の電気抵抗上昇が起こるおそれがある問題があった。
【0006】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、機械的強度の低下が起こりにくく、かつ電気化学素子の電気抵抗を低くすることができる電気化学素子用セパレータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は「第1接着繊維が接着しており、かつ、以下の[酸化誘導時間測定方法]において測定される、構成繊維の酸化誘導時間が60分以上である接着繊維層と、接着繊維層に隣接して、平均繊維径が5μm以下の極細繊維と第2接着繊維とを含み、第2接着繊維が接着した極細繊維含有層とを有し、前記極細繊維の一部は接着繊維層に入り込んでおり、前記接着繊維層と前記極細繊維含有層との層間剥離強度を測定しようとしても、極細繊維含有層内で剥離してしまい、前記層間剥離強度の測定が不可能である、電気化学素子用セパレータ。[酸化誘導時間測定方法](1)接着繊維層の構成繊維を5mg秤量し、サンプルを用意する。(2)熱重量示差熱分析(TG-DTA)装置に前記サンプルをセットし、窒素ガス雰囲気下で200℃まで昇温する。(3)酸素ガスをTG-DTA装置の窒素ガス雰囲気下に導入する。(4)200℃で静置し、(3)の酸素ガス導入から、酸化反応による示差熱分析(DTA)の発熱ピークが観測できるまでの時間を測定し、これを酸化誘導時間(単位:分)とする。」である。
【0008】
本発明の請求項2にかかる発明は、「前記第1接着繊維がポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアゾール系樹脂、ポリイミド系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の電気化学素子用セパレータ。」である。
【0009】
本発明の請求項3にかかる発明は、「前記極細繊維がポリオレフィン系樹脂から構成されている、請求項1又は2に記載の電気化学素子用セパレータ。」である。
【0010】
本発明の請求項4にかかる発明は、「前記第2接着繊維がポリオレフィン系樹脂から構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学素子用セパレータ。」である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1にかかる電気化学素子用セパレータは、接着繊維層の構成繊維の酸化誘導時間が長く、接着繊維層が耐酸化性を有する繊維層であることから、電気化学素子の正極で起こる酸化反応による電気化学素子用セパレータの劣化が抑制でき、電気化学素子用セパレータの機械的強度の低下が起こりにくく、電気化学素子の短絡及び電気抵抗の上昇が起こりにくい。また、極細繊維含有層に含まれる極細繊維の一部が前記接着繊維層と極細繊維含有層との層間で剥離させようとしても剥離することができないほどに、接着繊維層に入り込んで一体化していることによって、接着繊維層と極細繊維含有層との層間における電解液の偏りが生じにくく電解液保持性に優れ、電気化学素子の電気抵抗を低くすることができる。
【0012】
本発明の請求項2にかかる電気化学素子用セパレータは、接着繊維層に耐酸化性を有する樹脂であるポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアゾール系樹脂、ポリイミド系樹脂のうち少なくとも1種の樹脂を含む第1接着繊維を有することから、電気化学素子の電極で起こる酸化反応や電解液による電気化学素子用セパレータの劣化が抑制でき、電気化学素子用セパレータの機械的強度の低下が起こりにくく、電気化学素子の短絡及び電気抵抗の上昇が起こりにくい。
【0013】
本発明の請求項3にかかる電気化学素子用セパレータは、極細繊維がポリオレフィン系樹脂から構成されていることから、電気化学素子の電極で起こる還元反応や電解液による電気化学素子用セパレータの劣化が抑制でき、電気化学素子用セパレータの機械的強度の低下が起こりにくく、電気化学素子の短絡及び電気抵抗の上昇が起こりにくい。
【0014】
本発明の請求項4にかかる電気化学素子用セパレータは、第2接着繊維がポリオレフィン系樹脂から構成されていることから、電気化学素子の電極で起こる還元反応や電解液による電気化学素子用セパレータの劣化が抑制でき、電気化学素子用セパレータの機械的強度の低下が起こりにくく、電気化学素子の短絡及び電気抵抗の上昇が起こりにくい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電気化学素子用セパレータ(以下、単に「セパレータ」と表記することがある)は、セパレータが耐酸化性を有するように、以下の[酸化誘導時間測定方法]において測定される、構成繊維の酸化誘導時間が60分以上である接着繊維層を有する。
[酸化誘導時間測定方法]
(1)接着繊維層の構成繊維を5mg秤量し、サンプルを用意する。
(2)熱重量示差熱分析(TG-DTA)装置に前記サンプルをセットし、窒素ガス雰囲気下で200℃まで昇温する。
(3)酸素ガスをTG-DTA装置の窒素ガス雰囲気下に導入する。
(4)200℃で静置し、(3)の酸素ガス導入から、酸化反応による示差熱分析(DTA)の発熱ピークが観測できるまでの時間を測定し、これを酸化誘導時間(単位:分)とする。
【0016】
上述の接着繊維層には、セパレータに強度を付与することができるように、第1接着繊維が接着している。
【0017】
第1接着繊維に含まれる樹脂としては、耐酸化性に優れるように、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂など)、ポリアゾール系樹脂(ポリベンゾイミダゾール樹脂など)、ポリイミド系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂を挙げることができる。
これらの樹脂の中でも耐酸化性が特に優れ、また機械的強度に優れることから、第1接着繊維に含まれる樹脂はポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアゾール系樹脂のいずれかがより好ましく、ポリフェニレンサルファイド樹脂が更に好ましい。
【0018】
第1接着繊維に含まれるこれらの樹脂の割合は、耐酸化性を有する樹脂を含む樹脂の割合が大きければ大きいほどセパレータの耐酸化性が優れることから、60mass%以上が好ましく、80mass%以上が好ましく、100mass%が最も好ましい。
【0019】
この接着繊維層を構成する第1接着繊維は、単一樹脂成分からなる単一型第1接着繊維であっても良いし、融点の異なる2種類以上の樹脂成分からなる、繊維断面における配置がサイドバイサイド型、芯鞘型、或いは海島型などの複合型第1接着繊維であっても良い。
【0020】
本発明の第1接着繊維の平均繊維径は特に限定するものではないが、セパレータに強度を付与することができるように、0.1μm以上であるのが好ましく、1μm以上であるのがより好ましく、5μm以上であるのが更に好ましい。一方で、薄いセパレータとすることができるように、35μm以下であるのが好ましく、30μm以下であるのがより好ましく、25μm以下であるのが更に好ましい。本発明における「繊維径」は、繊維の横断面形状が円形である場合はその直径をいい、円形以外の場合はその横断面積と同じ面積を持つ円の直径を繊維径とみなす。また、「平均繊維径」は10本の繊維の繊維径の算術平均値をいう。また、第1接着繊維の繊維長は、緻密なセパレータを製造できるように湿式不織布であるのが好ましいため、0.1~20mmであるのが好ましく、0.5~15mmであるのがより好ましく、1~12mmであるのが更に好ましい。
【0021】
本発明の接着繊維層は第1接着繊維が接着しているが、セパレータに十分な強度を付与できるように、第1接着繊維は接着繊維層の15mass%以上を占めているのが好ましく、20mass%以上を占めているのがより好ましく、25mass%以上を占めているのが更に好ましい。第1接着繊維の上限は100mass%であってもよいが、強度向上や緻密性向上、保液性向上を目的として、第1接着繊維以外の繊維を含んでいてもよい。その場合、第1接着繊維の上限は90mass%以下が望ましく、80mass%以下がより望ましい。
【0022】
本発明の接着繊維層は、前述のように第1接着繊維以外の繊維を含んでいてもよいが、耐酸化性に優れたセパレータであるように、接着繊維層は後述する極細繊維含有層を構成する繊維を除いて、上述の第1接着繊維を構成する樹脂から構成された繊維のみを含んでいるのが好ましい。
【0023】
本発明のセパレータは上述のような接着繊維層に隣接して平均繊維径が5μm以下の極細繊維を含む極細繊維含有層を備えていることによって、セパレータの緻密性を確保し、短絡を防止できるようになっている。また、接着繊維層と極細繊維含有層との層間剥離強度を測定しようとしても、極細繊維含有層内で剥離してしまい、層間剥離強度の測定が不可能である程度に、極細繊維の一部が接着繊維層に入り込んでいるため、接着繊維層と極細繊維含有層の層間における電解液の偏りが生じにくく、電気化学素子の電気抵抗を低くすることができるものである。
【0024】
本発明の極細繊維の構成樹脂は、電気化学素子の電極で起こる還元反応や電解液によるセパレータの劣化が抑制でき、セパレータの機械的強度の低下が起こりにくく、電気化学素子の短絡及び電気抵抗の上昇が起こりにくいことから、極細繊維はポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましい。
【0025】
この極細繊維含有層は緻密性に優れるセパレータであり、短絡防止性に優れているように、更には電解液の保持性に優れているように、平均繊維径が5μm以下の極細繊維を含んでいる。極細繊維の平均繊維径が小さければ小さい程、前記性能に優れているため、極細繊維の平均繊維径は4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましい。他方、極細繊維の平均繊維径の下限は、繊維脱落が起こりにくいことから、0.1μm以上であるのが好ましい。
【0026】
なお、融点の点で異なる(好ましくは10℃以上異なる)2種類以上の樹脂からなる極細繊維は融着することによって、極細繊維が極細繊維含有層から脱落しにくい。このような2種類以上の樹脂からなる極細繊維の横断面における樹脂の配置状態としては、例えば、芯鞘状(偏芯状も含む)、貼り合せ状、海島状、オレンジ状、多層積層状であることができ、融着面積の広い芯鞘状又は海島状であるのが好ましい。
【0027】
この極細繊維の繊維長は特に限定するものではないが、緻密なセパレータとしやすいよ
うに、0.1~10mmであるのが好ましく、0.5~8mmであるのがより好ましく、1~5mmであるのが更に好ましい。
【0028】
このような極細繊維は緻密性に優れ、短絡防止性に優れているように、極細繊維含有層中、10mass%以上を占めているのが好ましく、15mass%以上を占めているのがより好ましく、20mass%以上を占めているのが更に好ましい。一方で、極細繊維の脱落を防止できるように、第2接着繊維を含んでいるため、50mass%以下を占めているのが好ましく、45mass%以下を占めているのがより好ましく、40mass%以下を占めているのが更に好ましい。
【0029】
なお、本発明の極細繊維は常法の溶融紡糸法により得ることができるし、常法の複合紡糸法又は混合紡糸法により海島型複合繊維を紡糸した後に、海島型複合繊維の海成分を除去することによっても得ることができる。後者の方法によれば、繊維径が5μm以下の極細繊維を得やすい。特に、複合紡糸法によって紡糸した海島型複合繊維の海成分を除去することによって得た極細繊維は、繊維径が揃っており、より緻密性に優れるセパレータを製造できるため好適である。
【0030】
本発明のセパレータにおいては、接着繊維層と極細繊維含有層との層間剥離強度を測定しようとしても、極細繊維含有層内で剥離してしまい、前記層間剥離強度の測定が不可能である程度に、上述のような極細繊維の一部が接着繊維層に入り込んで一体化しているため、接着繊維層と極細繊維含有層との層間における電解液の偏りが生じにくく、電池の電気抵抗を低くすることができる。
【0031】
なお、「接着繊維層と極細繊維含有層との層間剥離強度の測定」はJIS L 1086(2013)7.10.1「剥離強さ 前処理をしない方法」に則って行う試験方法であり、「極細繊維含有層内で剥離してしまい、前記層間剥離強度の測定が不可能」とは、剥離した後に接着繊維層の極細繊維含有層側表面を顕微鏡等によって拡大して観察した時に、極細繊維の一部が接着繊維層内に入り込み、接着繊維層の極細繊維含有層側表面に残っていることから、実際には接着繊維層と極細繊維含有層との層間剥離強度を測定していないことをいう。
【0032】
本発明の極細繊維含有層は上述のような極細繊維を含んでいることに加えて、第2接着繊維を含み、第2接着繊維が接着していることによって極細繊維の極細繊維含有層からの脱落が防止されている。第2接着繊維の存在により、セパレータ全体の構造が均一となり、電解液の分布が一様となる結果、電気抵抗が低くなるという効果を奏する。
【0033】
第2接着繊維の平均繊維径は、5~20μmであるのが好ましく、7~17μmであるのがより好ましく、9~13μmであるのが更に好ましい。また、第2接着繊維の繊維長は、0.1~20mmであるのが好ましく、0.5~15mmであるのがより好ましく、1~10mmであるのが更に好ましい。
【0034】
このような第2接着繊維は樹脂組成、平均繊維径、及び/又は繊維長の点で、第1接着繊維と同じ繊維からなっていても良いし、異なる繊維からなっていても良い。第2接着繊維の樹脂組成は、耐電解液性に優れることから、ポリオレフィン系樹脂で構成されているのが好ましい。
【0035】
また、第2接着繊維は、第1接着繊維と同様に、単一樹脂成分からなる単一型第2接着繊維であっても良いし、融点の異なる2種類以上の樹脂成分からなる、繊維断面における配置がサイドバイサイド型、芯鞘型、或いは海島型などの複合型第2接着繊維であっても良い。なお、第2接着繊維は接着時に極細繊維までも溶融させて極細繊維による緻密性や電解液保持性を損なうことがないように、第2接着繊維の接着する樹脂は、極細繊維の最も融点の低い樹脂よりも10℃以上、好ましくは20℃以上融点が低いのが好ましい。
【0036】
本発明の極細繊維含有層においては、第2接着繊維が接着している。極細繊維含有層における第2接着繊維が占める割合は、極細繊維の脱落を防止できれば良く、特に限定するものではないが、第2接着繊維は極細繊維含有層の50mass%以上を占めているのが好ましく、55mass%以上を占めているのがより好ましく、60mass%以上を占めているのが更に好ましい。他方で、極細繊維による緻密性を損なわないように、極細繊維含有層の90mass%以下を占めているのが好ましく、85mass%以下を占めているのがより好ましく、80mass%以下を占めているのが更に好ましい。
【0037】
本発明のセパレータは電池の高容量化に対応できるように薄いものであることができ、300μm以下であることができ、より好ましくは240μm以下であることができ、更に好ましくは180μm以下であることができる。他方で、あまり薄くなり過ぎると、強度を確保するのが難しくなり、また、電池作製時に短絡する傾向があり、更に、電池の寿命が短くなる傾向があるため、35μm以上であるのが好ましい。本発明における「厚さ」は、JIS B 7502(2016)に規定されている外側マイクロメーター(0~25mm)を用いて、無作為に選んで測定した10点の算術平均値をいう。
【0038】
本発明のセパレータの目付は厚さによって異なり、特に限定するものではないが、前述のような薄いセパレータであるように、15~120g/mであるのが好ましく、30~85g/mであるのがより好ましく、50~70g/mであるのが更に好ましい。
【0039】
本発明のセパレータは、接着繊維層と極細繊維含有層から構成されているが、セパレータ全体に占める接着繊維層の割合は、耐酸化性に優れるように、また、接着繊維層の割合が高すぎると保液性が低下するおそれがあることから、10~50mass%が好ましく、15~45mass%がより好ましく、20~40mass%が更に好ましい。
【0040】
本発明のセパレータは緻密性に優れ、短絡防止性に優れているように、第1接着繊維及び第2接着繊維の接着と、極細繊維含有層を構成する繊維の接着繊維層への入り込みのみによって形態を維持しているのが好ましい。つまり、例えばエマルジョン型接着剤などによる接着作用を受けていると、接着剤が皮膜化して電気抵抗及び通気性が高くなる傾向があるためである。
【0041】
このような本発明のセパレータは、例えば、(1)第1接着繊維が接着した接着繊維シートを製造する工程、(2)平均繊維径が5μm以下の極細繊維と第2接着繊維とを含むスラリーを形成する工程、(3)前記接着繊維シート上に、前記スラリーを抄き上げて、極細繊維の一部を接着繊維シート内に入り込ませる工程、(4)前記スラリーを抄き上げた接着繊維シートの第2接着繊維を接着して、極細繊維を固定する工程、によって製造することができる。
【0042】
まず、(1)第1接着繊維が接着した接着繊維シートを製造する工程は、常法により実施することができる。接着繊維シートも地合いが優れ、緻密性に優れているように、湿式不織布からなるのが好適である。この好適である湿式不織布は、例えば、第1接着繊維を含む繊維ウエブを湿式法(例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方式など)により形成した後、ドライヤーにより第1接着繊維を接着させたり、ニップロールなどによって第1接着繊維を接着させたりすることで製造できる。このように第1接着繊維を接着させることにより、セパレータ製造時における搬送によっても破断せず、また、セパレータの強度を高めることができる。なお、第1接着繊維がフィルム化してしまうと電気抵抗が高くなるため、加熱条件及び/又は加圧条件を適宜調節し、第1接着繊維がフィルム化しないようにするのが好ましい。
【0043】
次いで、(2)平均繊維径が5μm以下の極細繊維と第2接着繊維とを含むスラリーを形成する工程を実施する。この工程は常法の湿式法におけるスラリーの形成方法と同様にすることができる。例えば、平均繊維径が5μm以下の極細繊維と第2接着繊維を準備した後、パルパー、ビーター、或いはリファイナー等によって個々の繊維とした後、水中に分散させてスラリーを形成することができる。なお、平均繊維径が5μm以下の極細繊維は、例えば、直接紡糸した繊維、海島型複合繊維の海成分を除去した島成分繊維、樹脂組成の異なる2種類以上の樹脂からなる分割型複合繊維をビーターやリファイナー等によって分割した極細繊維、メルトブロー法により製造したメルトブロー不織布をビーターやリファイナー等によって分割した極細繊維、などを使用することができる。これらの中でも繊維径が揃っている直接紡糸した繊維や海島型複合繊維の海成分を除去した島成分繊維を用いるのが好ましく、繊維径のより小さい、海島型複合繊維の海成分を除去した島成分繊維を用いるのがより好ましく、繊維径の揃っている、複合紡糸法により製造した海島型複合繊維の海成分を除去した島成分繊維を用いるのが更に好ましい。
【0044】
次いで、(3)前記接着繊維シート上に、前記スラリーを抄き上げて、極細繊維の一部を接着繊維シート内に入り込ませる工程を実施する。この工程は、傾斜ワイヤー型短網方式の湿式法により繊維ウエブを形成するのと同様にして実施できる。つまり、通常はネット等の支持体上に繊維を抄き上げて繊維ウエブを形成するが、ネット等の支持体上に接着繊維シートを積層し、この接着繊維シート上に極細繊維及び第2接着繊維を含むスラリーを抄き上げると、極細繊維の一部は白水の支持体からの排出(脱水)と一緒に接着繊維シート内に入り込むため、通常の湿式法と同様に本工程を実施できる。なお、接着繊維シート上にスラリーを抄き上げる際に、極細繊維だけでなく、第2接着繊維が接着繊維シートへ入り込んでもよい。また、接着繊維シート上にスラリーを抄き上げる際に、極細繊維を接着繊維シートへ深く入り込ませることを目的として、接着繊維シートの抄き上げる面の反対面から吸引することができる。このような吸引は、例えば、減圧タンクを使用して実施することができる。
【0045】
そして、(4)前記スラリーを抄き上げた接着繊維シートの第2接着繊維を接着して、極細繊維を固定する工程を実施して、本発明のセパレータを製造することができる。この第2接着繊維の接着による極細繊維の固定は、例えば、ドライヤーによる第2接着繊維の接着やニップロールなどの加熱されたロールによる第2接着繊維の接着により固定するのが好ましい。この場合も、第2接着繊維として融点の異なる2種類以上の樹脂からなる複合型第2接着繊維を使用することや、加熱条件及び/又は加圧条件を適宜調節するなどしてフィルム化しないようにするのが好ましい。
【0046】
以上のように、本発明の製造方法によれば、接着繊維層に相当する接着繊維シートを予め作製した後に、極細繊維を含むスラリーを抄き上げているため、薄型化するために低目付化したとしても、搬送時に破断することなく製造できる、生産性に優れる方法である。また、緻密性を上げるために、スラリー中における極細繊維の配合量を多くしても、接着繊維シート上に極細繊維を抄き上げているため、支持体(ネット等)への極細繊維の入り込みが起こらないか、起こったとしても容易に剥離できる程度に入り込んでいるに過ぎないため、この点からも生産性良く、セパレータを製造できる方法である。
【0047】
本発明のセパレータに、ポリオレフィン系樹脂などの電解液の保持性が悪い傾向がある樹脂から構成された繊維を用いる場合、公知の親水化処理、例えば、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、放電処理、界面活性剤処理、或いは親水性樹脂付与処理を実施するのが好ましい。
【0048】
本発明のセパレータは、例えば、一次電池(たとえばリチウム電池、マンガン電池、マグネシウム電池など)あるいは二次電池(例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、亜鉛電池、レドックスフロー電池など)、キャパシタなどの電気化学素子用のセパレータとして水系、非水系問わずに使用でき、特にニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池のセパレータであるのが好ましい。また、セパレータの使用形態はセパレータを組み込む電気化学素子の形状によって異なるが、例えば、ラミネート型の電気化学素子には、電気化学素子の電極間に平板状のセパレータを挟んで用いることができ、円筒型の電気化学素子には、電気化学素子の電極間にセパレータを挟み、電極及びセパレータを巻回して用いることができる。
【実施例
【0049】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
ポリフェニレンサルファイド樹脂100mass%から構成され、延伸されている延伸ポリフェニレンサルファイド繊維(平均繊維径:10μm、繊維長:10mm)70mass%と、ポリフェニレンサルファイド樹脂100mass%から構成され、延伸されていない未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維(=第1接着繊維、平均繊維径:17μm、繊維長:10mm)30mass%とを混合したスラリーを作製し、傾斜ワイヤー型短網湿式法により湿式繊維ウエブを形成した。
【0051】
次いで、この湿式繊維ウエブをコンベアで支持し、コンベアの下方から吸引して湿式繊維ウエブをコンベアと密着させた状態で搬送しながら、湿式繊維ウエブを温度120℃に設定した熱風貫通式乾燥機により熱処理し、その後湿式繊維ウエブを220℃に設定したロールに通して全面的に加熱加圧して未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維のみを接着させて、接着不織布(=接着繊維シート、目付:15g/m)を製造した。なお、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維はフィルム化していなかった。
【0052】
他方、複合紡糸法により紡糸した海島型複合繊維の海成分を除去した島成分からなるポリプロピレン極細繊維(平均繊維径:2μm、繊維長:3mm、融点:168℃)25mass%と、芯成分がポリプロピレン(融点:168℃)からなり、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点:130℃)からなる芯鞘型ポリオレフィン繊維(=第2接着繊維、繊維強度:6.5cN/dtex、平均繊維径:11μm、繊維長:5mm)75mass%とを混合したスラリーを作製した。
【0053】
次いで、前記接着不織布をネットで搬送しながら、この接着不織布上に前記スラリーを抄き上げて、ウエブ接着不織布(抄造繊維量:45g/m)を得た。なお、スラリーを抄き上げる際に、極細繊維の一部を接着不織布内に入り込ませた。
【0054】
続いて、このウエブ抄造接着不織布をコンベアで温度143℃に設定した熱風貫通式乾燥機へ搬送し、熱処理を実施して、及び抄造ウエブを構成する芯鞘型ポリオレフィン繊維の鞘成分を融着させて、極細繊維及び芯鞘型ポリオレフィン繊維を接着不織布に固定するとともに極細繊維含有層を形成した、積層不織布を製造した。
そして、この積層不織布をカレンダー処理して厚さを調整した後プラズマ処理を実施して、接着繊維層(接着不織布に由来)の片面に極細繊維含有層を備えたセパレータ(目付:60g/m、厚さ:0.16mm)を製造した。このセパレータにおいては、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維、芯鞘型ポリオレフィン繊維ともにフィルム化していなかった。
【0055】
(比較例1)
まず、実施例1と同様に接着不織布(目付:15g/m)を製造した。
【0056】
他方、実施例1と同様の方法でポリプロピレン極細繊維と芯鞘型ポリオレフィン繊維が混合したスラリーを作製し、傾斜ワイヤー型短網湿式法により極細繊維含有湿式繊維ウエブを形成した。
【0057】
次いで、この極細繊維含有湿式繊維ウエブをコンベアで支持し、コンベアの下方から吸引して極細繊維含有湿式繊維ウエブをコンベアと密着させた状態で搬送しながら、極細繊維含有湿式繊維ウエブを温度143℃に設定した熱風貫通式乾燥機により熱処理して芯鞘型ポリオレフィン繊維の鞘成分のみを融着させて、極細繊維含有不織布(目付:45g/m)を製造した。
【0058】
続いて、接着不織布と極細繊維含有不織布を140℃に加熱して貼り合わせ、カレンダー処理で厚さ調整を行った後、実施例1と同様にプラズマ処理を実施して、接着繊維層(接着不織布に由来)の片面に極細繊維含有層を備えたセパレータ(目付:60g/m、厚さ:0.18mm)を製造した。このセパレータにおいては、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維、芯鞘型ポリオレフィン繊維ともにフィルム化していなかった。
【0059】
(比較例2)
実施例1と同様の芯鞘型ポリオレフィン繊維のみから、傾斜ワイヤー型短網湿式法により芯鞘型繊維湿式繊維ウエブを形成した。
【0060】
次いで、この芯鞘型繊維湿式繊維ウエブをコンベアで支持し、コンベアの下方から吸引して芯鞘型繊維湿式繊維ウエブをコンベアと密着させた状態で搬送しながら、芯鞘型繊維湿式繊維ウエブを温度143℃に設定した熱風貫通式乾燥機により熱処理して、芯鞘型ポリオレフィン繊維の鞘成分のみを融着させて、芯鞘型繊維接着不織布(目付:15g/m)を製造した。なお、芯鞘型ポリオレフィン繊維はフィルム化していなかった。
【0061】
他方、実施例1と同様の方法でポリプロピレン極細繊維と芯鞘型ポリオレフィン繊維が混合したスラリーを作製し、芯鞘型繊維接着不織布上に前記スラリーを抄き上げて、ウエブ接着不織布(抄造繊維量:45g/m)を得た。
【0062】
続いて、温度143℃に設定した熱風貫通式乾燥機により熱処理して芯鞘型ポリオレフィン繊維の鞘成分のみを融着させて積層不織布を製造し、この積層不織布を実施例1と同様の方法で厚さ調整及びプラズマ処理を実施して、接着繊維層(芯鞘型繊維接着不織布に由来)の片面に極細繊維含有層を備えたセパレータ(目付:60g/m、厚さ:0.16mm)を製造した。このセパレータにおいては、芯鞘型ポリオレフィン繊維はフィルム化していなかった。
【0063】
(比較例3)
実施例1と同様の延伸ポリフェニレンサルファイド繊維70mass%と、実施例1と同様の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維30mass%とを混合したスラリーを作製し、傾斜ワイヤー型短網湿式法によりポリフェニレンサルファイド湿式繊維ウエブを形成した。
【0064】
次いで、このポリフェニレンサルファイド湿式繊維ウエブをコンベアで支持し、コンベアの下方から吸引してポリフェニレンサルファイド湿式繊維ウエブをコンベアと密着させた状態で搬送しながら、ポリフェニレンサルファイド湿式繊維ウエブを温度120℃に設定した熱風貫通式乾燥機により熱処理し、その後湿式繊維ウエブを220℃に設定したロールに通して全面的に加熱加圧して未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維のみを接着させてポリフェニレンサルファイド不織布(目付:60g/m)を製造した。
続いてポリフェニレンサルファイド不織布をカレンダー処理して厚さ調整を行った後、実施例1と同様にプラズマ処理を実施して、セパレータ(目付:60g/m、厚さ:0.13mm)を製造した。なお、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維はフィルム化していなかった。
なお、セパレータの各種物性の測定は次の通り行った。
【0065】
(加圧保液率の測定)
(1)実施例及び比較例のセパレータを直径30mmにそれぞれ裁断して試験片を調製し、温度20℃、相対湿度65%の状態下で、水分平衡に至らせた後、質量(M)をそれぞれ測定した。
(2)試験片の空気を水酸化カリウム溶液で置換するように、比重1.3(20℃)の水酸化カリウム溶液中に1時間浸漬し、水酸化カリウム溶液を保持させた。
(3)これらの試験片を上下3枚ずつのろ紙(直径:30mm)で挟み、加圧ポンプにより、5.7MPaの圧力を30秒間作用させた後、試験片の質量(M)を測定した。
(4)次の式により、加圧保液率を求めた。なお、この測定は1つのセパレータの4枚の試験片について行い、その算術平均を加圧保液率(R、単位:%)とした。
=[(M-M)/M]×100
【0066】
(電気抵抗の測定)
(1)各セパレータを35mm角に切断して試験片を作製した。
(2)比重1.3(20℃)の水酸化カリウム水溶液を各試験片に、各試験片の質量と同じ質量分だけ吸収させた後、35mm角のニッケル板で挟み、45N荷重時における電気抵抗(単位:Ω)を測定した。
【0067】
(層間剥離強度の測定)
2層構造のセパレータである実施例1、比較例1、2については、JIS L 1086(2013)7.10.1「剥離強さ 前処理をしない方法」に則ってセパレータの層間剥離強度(単位:cN)を測定した。なお、極細繊維含有層内で剥離した場合は、「測定不可能」とした。
【0068】
更に、セパレータを構成する接着繊維層の耐酸化性を確認するため、以下の酸化誘導時間測定を行った。
【0069】
(酸化誘導時間測定)
(1)以下の5種類の不織布サンプルを用意し、5mg秤量した。
・実施例1で用いた延伸ポリフェニレンサルファイド繊維70mass%と未延伸繊維ポリフェニレンサルファイド繊維30%から構成された不織布A(実施例1の接着繊維層と構成繊維の割合が同一)
・ポリスルホン系樹脂の一種であるポリスルホン樹脂100mass%からなる繊維から構成された不織布B
・ポリスルホン系樹脂の一種であるポリエーテルスルホン樹脂100mass%からなる繊維から構成された不織布C
・ポリアゾール系樹脂の一種であるポリベンゾイミダゾール樹脂100mass%からなる繊維から構成された繊維集合体を400℃で1分熱処理した不織布D
・実施例1で用いたポリプロピレン極細繊維15mass%と実施例1で用いた芯鞘型ポリオレフィン繊維85mass%から構成され、芯鞘型ポリオレフィン繊維の鞘成分のみが接着した不織布E
(2)熱重量示差熱分析(TG-DTA)装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、SDT Q600)に前記サンプルをセットし、窒素ガス雰囲気下で25℃から180℃まで100℃/minで昇温した。
(3)200℃まで10℃/minで昇温した。
(4)5分間静置した。
(5)酸素ガスをTG-DTA装置の窒素ガス雰囲気下に導入した。
(6)200℃で静置し、(5)の酸素ガス導入から、酸化反応による示差熱分析(DTA)の発熱ピークが観測できるまでの時間を測定し、これを酸化誘導時間(単位:分)とした。なお、60分経っても酸化反応による示差熱の発熱ビークが観測できない場合は、「酸化されず」とした。
(酸化誘導時間が遅ければ遅いほど、サンプルの耐酸化性が高く、非常に耐酸化性が高ければ、酸化反応による示差熱の発熱ピークが観測できない)
【0070】
セパレータの加圧保液率及び電気抵抗の測定結果を表1に、セパレータの層間剥離強度の測定結果を表2に、セパレータの構成繊維の酸化誘導時間測定の測定結果を表3に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表1及び表2の結果から、本発明のセパレータは、接着繊維層と極細繊維含有層を貼り合わせた比較例1のセパレータ及びポリフェニレンサルファイド繊維のみから構成された1層構造の比較例3のセパレータと比較して、電解液保持性に優れ、また、電解液の偏りが生じにくく電気化学素子の電気抵抗を低くすることができることが分かった。
【0075】
また、本発明のセパレータは、ポリオレフィン繊維のみから構成された比較例2との比較から、ポリフェニレンサルファイド繊維を含んでいるにもかかわらず、ポリオレフィン繊維のみから構成されたセパレータと同等の高い加圧保液率、及び低い電気抵抗が得られることが分かった。
【0076】
表3の結果から、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアゾール系樹脂のいずれかから構成された繊維は、ポリオレフィン系樹脂から構成された繊維に比べて酸化されにくい繊維であることから、これらの繊維から構成されたセパレータは、酸化反応による劣化が抑制でき、その結果機械的強度の低下が起こりにくいことが分かった。