(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】皮膚粘着テープ用織物、皮膚粘着テープ、及び医療用品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20240101AFI20231222BHJP
【FI】
A61F13/02 310A
A61F13/02 310Z
A61F13/02 340
(21)【出願番号】P 2019219593
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高木 和寿
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082102(JP,A)
【文献】特開2003-278042(JP,A)
【文献】特開2011-208069(JP,A)
【文献】特開2016-102277(JP,A)
【文献】特開2019-115403(JP,A)
【文献】特開2002-249944(JP,A)
【文献】特開2011-032625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸および緯糸ともに合成長繊維とポリウレタン弾性繊維の複合糸から構成される、皮膚粘着テープ用織物であって、
前記合成長繊維の繊度が20dtex~60dtexであり、伸長率が経緯ともに20%~50%であり、伸長回復率が経緯ともに80%以上であり、そして目付が50g/m
2~120g/m
2であり、スナッグが3級以上であることを特徴とする、皮膚粘着テープ用織物。
【請求項2】
撥水度が初期4級以上である、請求項1に記載の皮膚粘着テープ用織物。
【請求項3】
前記合成長繊維がポリエステル系繊維又はポリアミド系繊維である、請求項1又は2に記載の皮膚粘着テープ用織物。
【請求項4】
前記織物の厚みが15μm~40μmである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の皮膚粘着テープ用織物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の皮膚粘着テープ用織物を用いた皮膚粘着テープ。
【請求項6】
請求項
5に記載の皮膚粘着テープを用いた医療用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚粘着テープ用織物、皮膚粘着テープ、及び医療用品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指などの小さな傷や、ひじ、ひざなどのすり傷の保護材として絆創膏が医療機関はもとより、一般家庭の必需品として広く普及している。例えば、以下の特許文献1に記載されるように、かかる絆創膏は、適当な大きさ、形の粘着剤層を有する基材の中央にガーゼなどのパッド材を粘着したものがほとんどである。
【0003】
絆創膏の基材としては、塩化ビニル等のフィルム材が用いられているが、塩化ビニル等のフィルム材は通気性や透湿性に劣り、患部が蒸れたりかぶれたりすることがある。このため、基材に多数の小孔を設けて通気性を確保することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炊事や洗面等で水がかかったり、風呂で湯につかったりした際に、この小孔を通じて、基材と皮膚との間に水が浸入してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、小孔を設けなくても通気性や透湿性を有し、薄くても耐摩耗性に優れた皮膚粘着テープ用織物、皮膚粘着テープ、及び医療用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、皮膚粘着テープ用の基材として、フィルム材や編物に代えて、織物を採用するとともに、該織物について皮膚粘着テープ用の基材としての要求特性を鋭意研究し実験を重ねることにより、特定し、もって、上記目的を達成できることを予想外に見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]経糸および緯糸ともに合成長繊維とポリウレタン弾性繊維の複合糸から構成される、皮膚粘着テープ用織物であって、前記合成長繊維の繊度が20dtex~60dtexであり、伸長率が経緯ともに20%~50%であり、伸長回復率が経緯ともに80%以上であり、そして目付が50g/m2~120g/m2であり、スナッグが3級以上であることを特徴とする、皮膚粘着テープ用織物。
[2]撥水度が初期4級以上である、[1]に記載の皮膚粘着テープ用織物。
[3]前記合成長繊維がポリエステル系繊維又はポリアミド系繊維である、[1]又は[2]に記載の皮膚粘着テープ用織物。
[4]
前記織物の厚みが15μm~40μmである、[1]~[3]のいずれかに記載の皮膚粘着テープ用織物。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の皮膚粘着テープ用織物を用いた皮膚粘着テープ。
[6][5]に記載の皮膚粘着テープを用いた医療用品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、織物の繊維材料を限定するともに、織物についての特性を上記のように規定することにより、小孔を設けなくても通気性や透湿性を有し、薄くても耐摩耗性に優れた皮膚粘着テープ用織物、皮膚粘着テープ、及び医療用品を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための実施の形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「~」で表されている数値範囲は、上限と下限の数値を含むものとする。
【0010】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物は、合成長繊維とポリウレタン弾性繊維の複合糸から構成される織物であって、伸長率が経緯ともに20~50%であり、伸長回復率が経緯ともに80%以上であり、そして目付が50~120g/m2であることを特徴とする。
【0011】
本実施形態では、合成長繊維とポリウレタン弾性繊維を用いた織物について、各種特性を上記のように規定することにより、薄くても耐摩耗性に優れた皮膚粘着テープ用織物を実現することができる。
【0012】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物に用いられる合成長繊維は、特に限定されるものではないが、ポリエステル系繊維又はポリアミド系繊維であることが好ましい。
【0013】
ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどからなる繊維が挙げられる。このようなポリエステル系繊維は、医療用具に使用される電子滅菌に対し耐性が高く、好ましく用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレートが強度や寸法安定性が高い点でより好ましく使用される。
【0014】
ポリアミド系繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などのナイロン系繊維が挙げられる。
【0015】
本発明の皮膚粘着テープ用織物において、合成長繊維とポリウレタン弾性繊維の複合糸を構成する合成長繊維は、モノフィラメント又はマルチフィラメントのいずれでもよいが、総繊度が20dtex~60dtex(デシテックス)であることが好ましい。更に好ましくは30dtex~50dtexである。
20dtex未満であると引裂が低下し使用に耐えられない。また、60dtex以上であると厚く(重く)なる。
【0016】
合成長繊維とポリウレタン弾性繊維の複合糸を構成するポリウレタン弾性繊維は、ポリウレタンやポリウレタンウレアを主な構成単位とする重合体からなる伸縮性を持つ繊維である。
【0017】
ポリウレタン弾性繊維は、ポリエーテルジオール及び有機ジイソシアネートから成るソフトセグメント部分と、有機ジイソシアネート及びジアミン又はジオールから成るハードセグメント部分とから構成される。
【0018】
ポリウレタン弾性繊維はモノフィラメント及びマルチフィラメントのいずれでもよいが、15dtex以上44dtex未満が好ましく、17dtex以上30dtex以下がより好ましい。15dtex未満であるとストレッチ性が不足する、糸の拘束力が弱くなるなどのおそれがある。また、44dtex以上であるとストレッチ性が高いものが得られるが、ゴム感が強く、風合いが硬い生地となってしまう。
【0019】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物は、合成長繊維とポリウレタン弾性繊維の複合糸を用いたものであれば、特に限定されるものではなく、合成長繊維を鞘糸とし、ポリウレタン弾性繊維を芯糸としてシングルカバーリングした複合糸条を、経糸及び/又は緯糸として用いて製織されたものであることができる。具体的には、例えば、ポリアミド繊維糸条を鞘糸とし、ポリウレタン弾性糸を芯糸とするシングルカバーリング繊維糸条が好ましく用いられる。
【0020】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物の組織としては、平織、ツイル織、サテン織、経二重織、緯二重織、ドビー織等の組織を使用できるが、これに限定されるものではないが、厚みを薄くするためには平織であることが好ましい。
【0021】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物の織密度としては、経方向で100~250本/2.54cm、緯方向で100~250本/2.54cmが好ましい。
【0022】
織密度が前記下限値よりも小さいと、生地の十分な強度が得られない。一方、織密度が前記上限値よりも大きいと、通気性が十分に得られない。織密度を前記範囲とすることで、十分な強度と通気性とを得ることができる。
【0023】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物の伸長率は、経緯ともに20~50%であり、伸長回復率が経緯ともに80%以上である。
【0024】
本明細書において、伸長率は、JIS-L-1096「織物及び編物の生地試験方法」に規定の方法に従い、A法にて繊維方向の織物の伸長率を測定した値である。具体的な測定条件については後述する。
【0025】
伸長率が20%未満では、ストレッチ性が不足する。また、伸長率が50%を超えると伸長回復率が低く、反発性に劣る。伸長率が前記範囲であることにより、良好なストレッチ性と反発性を有するものとなる。
【0026】
また、伸長回復率は、JIS-L-1096「織物及び編物の生地試験方法」に規定の方法に従い、A法にて伸長回復率を測定した値である。尚、伸長回復率は交織物の反発性の指標となる。具体的な測定条件については後述する。
【0027】
伸長回復率が80%未満であると、反発性に劣る。例えば、このような織物を基材として用いた絆創膏を指の関節部分に貼り、指を曲げ戻した際に、絆創膏と皮膚の間に隙間ができてしまう。伸長回復率が前記範囲であることにより、良好な反発性を有するものとなり、皮膚粘着テープを貼った指を曲げ伸ばししても隙間ができず、隙間からの水の浸入なども防止される。
【0028】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物の引裂き強度は、経緯ともに12N以上であることが好ましい、これにより十分な強度を有するものとなる。
【0029】
本明細書において、引裂き強度は、JIS-L-1096「織物及び編物の生地試験方法」に規定の方法に従い、D法(ペンジュラム法)により試験を行い評価したものである。具体的な測定条件については後述する。
【0030】
皮膚粘着テープ用織物において、撥水度が初期4級以上であることが好ましい。これにより、皮膚粘着テープ用織物は、十分な撥水性を有するものとなる。
【0031】
本明細書において、撥水度は、JIS-L-1092「繊維製品の防水性試験方法」 7.2 はっ水度試験(スプレー試験)に規定の方法に従い、試験を行い評価したものである。具体的な測定条件については後述する。
【0032】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物の目付は、50~120g/m2である。
【0033】
本明細書において、目付は、JIS-L-1906「織物及び編物の生地試験方法」に規定の方法に従い、測定されたものであり、縦20cm×横25cmの試験片を試料の幅1mあたり3箇所採取して質量を測定し、その平均値を単位面積あたりの質量に換算して求める。
【0034】
目付けが50g/m2未満では、繊維量が少なくなり、肌触り性などが低下する。一方、120g/m2を超えると、繊維量が多く剛性が高くなり、また生地も重いため皮膚に貼った際の快適性が低下する。さらに、後述するスナッグ性も低下する。
【0035】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物において、スナッグが3級以上であることが好ましい。
スナッグとは、椅子の傷、金属のバリ、爪などが布帛表面に引っ掛かり、布帛を構成している糸の一部が布帛表面から引き出され、外観を損なう欠点をいう。
【0036】
本明細書において、織物のスナッグ性は、JIS-L1058「織物及び編物のスナッグ試験方法」に規定の方法に従い、D-1法(ダメージ棒を回転箱に取り付ける方法)による試験を行い、評価したものである。具体的な測定条件については後述する。
【0037】
JIS-L1058(D-1法)に準ずる試験で3級を下回ると、実着用時のスナッグによる外観悪化が顕著になることがある。
【0038】
このスナッグを抑制する方法として、一般的には織物の組織や密度を工夫する。具体的には、織物を、凹凸の少ない組織や高密度に仕上げることである。このように、凹凸のような引っ掛かる表面状態をなくすことで、スナッグは抑制される。
【0039】
本実施形態の皮膚粘着テープ用織物の厚みは、15μm~40μm以下であることが好ましい。
【0040】
本明細書において、織物の厚みは、JIS-L-1906に規定の方法に従い測定した値であり、接圧荷重100g/cm2にて幅方向に10箇所測定し、その平均値を厚みとする。
【0041】
生地の厚みが前記下限値よりも薄いと、十分な強度を確保するのが困難である。また、厚みが前記上限値よりも厚いと、剛性が高くなり、ごわつき感が生じる。また、生地が重くなり皮膚に貼った際の快適性が低下する。織物生地の厚みを前記範囲とすることで、十分な強度を確保し肌触りがよいものとすることができる。
【0042】
このような皮膚粘着テープ用織物を基材として用いた皮膚粘着テープは、薄く良好なストレッチ性を有し、皮膚に貼った際に快適に用いられる。小孔を設けなくても十分な通気性を有するため、蒸れたりかぶれたりすることが防止される。さらに、指の関節部分などに貼った場合に、指の曲げ伸ばし等をしてもテープと皮膚との間に隙間ができないため、隙間からテープと皮膚との間に水が入り込むようなこともなく、快適に使用することができる。
【0043】
以下では、本発明の皮膚粘着テープ用織物を用いた医療用品として、絆創膏を例に挙げて説明する。
絆創膏は、支持体としての前記織物の片面にパッド材を含む接着剤層を有する。
【0044】
粘着剤層は、織物の片面に粘着剤が全面-様、又は不存部が点在する様、あるいは線状にうすく塗布された層である。粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系、ウレタン系やゴム系の接着剤、その他皮膚に刺激を与えないものであればよい。
【0045】
パッド材は、傷口からの血液などの液体を吸収し、傷口を保護する役目を果たすものである。
【0046】
パッド材としては、通常の絆創膏に使用されているものを用いることができ、例えば、ガーゼやネット、不織布、軟質発泡体等の多孔質体や多孔質体の外側をポリエステル等のフィラメントで形成したネットや粗目布等で被覆したもの等が挙げられる。その中でも、ガーゼ、脱脂綿などが、肌触りがよく好ましい。傷口への通気性をもたすため、特殊ネットを積層してもよい。必要に応じて、殺菌剤や止血剤、鎮痛剤、消毒剤、その他の薬剤を含ませることができる。
本発明の織物の一方の面にパッド材を積層一体化させる方法としては、不織布又はパッド材のどちらかにホットメルト樹脂を点在させ、加熱接着させる方法、不織布又はパッド材のどちらかに接着剤を、不在部を有して塗布し、加圧接着させる方法など通気性を損なわないようにすればいずれの方法でもよい。
【0047】
傷口パッドを含む接着剤層の表面は、非使用時には離型シート等のカバーフィルムで覆われているのが一般的であり、使用に際してはカバーフィルムを剥して利用される。
【0048】
このような絆創膏(医療用品)では、上述したような薄くても耐摩耗性に優れた織物を用いているので、通気性や透湿性を有し使用時の快適性に優れたものとなる。
【0049】
尚、本実施形態の皮膚粘着テープ用織物は、絆創膏以外にも、固定用テープ、テープ包帯、テーピング用テープ、磁石付きパッチ、湿布等、皮膚に粘着して用いられる医療用品の基材として、広く適用することができることは言うまでもない。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明する。しかしながら、本実施の形態は、その要旨から逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の物性は以下の方法により測定した。
【0051】
(1)目付(g/m2)
JIS-L-1906に規定の方法にしたがい、縦20cm×横25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3箇採取して質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの質量に換算して求めた。
【0052】
(2)厚み(μm)
JIS-L-1906に規定の方法に従い、接圧荷重100g/cm2にて幅方向に10箇所測定し、その平均値を厚みとした。厚み計は、PEACOCK社製NO.207を用いた。測定値はmmにて得られるが、小数点第3位まで読み取り平均した後、有効数字を2桁としてμmに換算した。
【0053】
(3)伸長率(%)
JIS-L-1096「織物及び編物の生地試験方法」に規定の方法に従い、A法にて繊維方向の織物の伸長率を測定した。
伸長率LA(%)=[(L1-L)/L]×100
L1:14.7Nの荷重を加え1分間保持後の印間の長さ(mm)
L:元の印間の長さ(200mmまたは500mm)
【0054】
(4)伸長回復率(%)
JIS-L-1096「織物及び編物の生地試験方法」に規定の方法に従い、A法にて伸長回復率を測定した。
伸長回復率LB(%)=[(A1-A2)/(A1-A)]×100
A2:荷重を取り除いた後1時間後に初荷重を加えたときの印間の長さ(mm)
A1:14.7Nの荷重を1時間加えた後の印間の長さ(mm)
A:初荷重を加えたときの印間の長さ(200mmまたは500mm)
【0055】
(5)引裂き強度(N)
JIS-L-1096「織物及び編物の生地試験方法」に規定の方法に従い、D法(ペンジュラム法)にて試験を行い測定した。本明細書においては、経方向と緯方向の引裂き強度を3点以上測定し、平均値を計算した当該数値をパラメータとした。
【0056】
(6)撥水度
JIS-L-1092「繊維製品の防水性試験方法」7.2はっ水度試験(スプレー試験)に規定の方法に従い試験を行い評価した。
試験片を保持具に取り付け、水250mlを25~30秒間散布する。保持具を外し試験片の表側を下向きにして固い物に軽く当てて水滴を落とした後、比較見本を基準にはっ水度を判定した。
比較見本を基準に1級~5級の5段階ではっ水度を評価した。
1級:表面全体に湿潤を示すもの
2級:表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示
すもの
3級:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの
4級:表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの
5級:表面に湿潤及び水滴の付着がないもの
【0057】
(7)スナッグ性
JIS-L1058「織物及び編物のスナッグ試験方法」に規定の方法に従い、D-1法(ダメージ棒を回転箱に取り付ける方法)による試験を行い、評価した。
たて120mm×よこ100mm、たて100mm×よこ120mmをそれぞれ2枚採取し、特殊ゴム管に巻き付け、特殊ゴム管に巻き付けられた試料を、ピリング試験箱に入れ、更にダメージ棒を箱の中にセットし、試験箱を回転させた。
ダメージ棒に研磨布を用いた場合は1時間試験箱を回転し試験後、スナッグ判定標準写真と比較し級数を付けた。
【0058】
[実施例1]
ポリアミド繊維(合成長繊維)とポリウレタン弾性繊維とを用いた織物を製織した。
経糸に、33デシテックス/10フィラメントのポリアミド繊維糸条を鞘糸とし、22デシテックスのポリウレタン弾性糸を芯糸とするシングルカバーリング繊維糸条を用いた。
緯糸に、33デシテックス/10フィラメントのポリアミド繊維糸条を鞘糸とし、17デシテックスのポリウレタン弾性糸を芯糸とするシングルカバーリング繊維糸条を用いた。
織物の経密度は145本/2.54cmであり、緯密度は110本/2.54cmであった。
【0059】
次に、常法に従い精練、乾燥、及び中間セットした後、常法に従い染色、乾燥、撥水、及び仕上げセットを行い、加工布としての織物を得た。
【0060】
このようにして得られた織物は、経密度が189本/2.54cmであり、緯密度が156本/2.54cmであり、目付が84.8g/m2であり、引裂強度が経13.8N、緯12.7Nであり、伸長率が経43%、緯35%であり、伸長回復率が経92%、緯90%であり、撥水度が初期5級であり、そしてスナッグが3級であった。
【0061】
[比較例1]
ポリウレタン弾性糸を用いなかった以外は、実施例1と同様にして織物(加工布)を得た。
このようにして得られた織物は、経密度が200本/2.54cmであり、緯密度が155本/2.54cmであり、目付が80g/m2であり、引裂強度が経13.8N、緯12.7Nであり、伸長率が経5.2%、緯7.0%であり、伸長回復率が経55.5%、緯53.5%であり、撥水度が初期4級であり、そしてスナッグが3級であった。
【0062】
[比較例2]
目付が120g/m2より大きくなるようにした以外は、実施例1と同様にして織物(加工布)を得た。
このようにして得られた織物は、経密度が270本/2.54cmであり、緯密度が230本/2.54cmであり、目付が128g/m2であり、引裂強度が経11.5N、緯10.8Nであり、伸長率が経30%、緯27%であり、伸長回復率が経90%、緯87%であり、撥水度が初期4級であり、そしてスナッグが3級であった。
【0063】
[比較例3]
合成長繊維としてのポリアミド繊維の代わりに、吸湿性繊維(綿、T/C等)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして織物(加工布)を得た。
このようにして得られた織物は、経密度が110本/2.54cmであり、緯密度が91本/2.54cmであり、目付が112g/m2であり、引裂強度が経18.8N、緯16.0Nであり、伸長率が経40%、緯38%であり、伸長回復率が経85%、緯83%であり、撥水度が初期3級であり、そしてスナッグが2級であった。
【0064】
以上のようにして製織された実施例、及び比較例の織物を支持体(基材)として絆創膏を作製した。その絆創膏を皮膚に貼り、そのときの快適性について評価した。
【0065】
実施例1では、薄くて軽い絆創膏とすることができた。また、小孔を設けなくても通気性や透湿性を有するため、皮膚に貼った際にも蒸れたりすることなく快適であった。また、伸長回復率も十分に高いため、絆創膏を指の関節部分に貼り、指を曲げ戻した際にも、皮膚と絆創膏との間に隙間ができることはなかった。
【0066】
ポリウレタンを使用しなかった比較例1では、生地の伸長率が10%以下であり、伸長回復率は80%未満であった。このように伸長回復率が悪いため、絆創膏を指の関節部分に貼り、指を曲げ戻した際に、皮膚と絆創膏との間に隙間ができてしまった。
【0067】
目付が120g/m2より大きい比較例2では、生地が重くなり、皮膚に貼った際に快適ではなかった。
【0068】
合成長繊維に代えて吸湿性繊維を用いた比較例では、生地が吸湿するため、皮膚に貼った際にふやけ易くなり快適ではなかった。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明による膚粘着テープ用織物を用いることで、小孔を設けなくても通気性や透湿性を有し、薄くても耐摩耗性に優れたものとなり、絆創膏等の医療用品として広く利用することができる。