(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】断熱材の製造方法、及び冷蔵庫の製造方法
(51)【国際特許分類】
F25D 23/06 20060101AFI20231222BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20231222BHJP
F16L 59/065 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
F25D23/06 V
F16L59/02
F16L59/065
(21)【出願番号】P 2019229992
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】中野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】安部 昌則
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017752(JP,A)
【文献】特開2019-168001(JP,A)
【文献】特開2005-076726(JP,A)
【文献】特表2017-511445(JP,A)
【文献】特開2010-001922(JP,A)
【文献】特開2003-148687(JP,A)
【文献】特開2012-082954(JP,A)
【文献】特開2011-122739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/06
F16L 59/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の表面のうち一方側を第1表面とし他方側を第2表面とした場合に少なくとも前記第1表面を窪ませて形成された窪み部を有し、気密性を有する外包材に芯材を収容し前記外包材内を減圧することで構成された断熱材の製造方法であって、
前記第1表面側に凹形状が形成された第1部材に対し、前記第1部材よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材を配置し、
前記第1部材と前記第2部材とを含む板状の前記芯材を形成する芯材形成工程と、
前記芯材を前記外包材に収容し前記外包材内を減圧する減圧工程と、
を備え、
前記減圧工程後において、前記第2部材は、
前記窪み部の
表面形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、
前記第1部材よりも前記窪み部側に設けられている、又は、前記第1部材よりも前記窪み部の幅方向に関して内側に設けられており、
さらに、前記第1表面側にあって前記窪み部に隣接する部位に前記第1部材よりも圧縮性の低い第3部材を配置する工程を備える、
断熱材の製造方法。
【請求項2】
板状の表面のうち一方側を第1表面とし他方側を第2表面とした場合に少なくとも前記第1表面を窪ませて形成された窪み部を有し、気密性を有する外包材に芯材を収容し前記外包材内を減圧することで構成された断熱材の製造方法であって、
前記第1表面側に凹形状が形成された第1部材に対し、前記第1部材よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材を配置し、
前記第1部材と前記第2部材とを含む板状の前記芯材を形成する芯材形成工程と、
前記芯材を前記外包材に収容し前記外包材内を減圧する減圧工程と、
を備え、
前記減圧工程後において、前記第2部材は、前記窪み部の
表面形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、前記第2部材の全体が前記第1部材よりも前記窪み部の幅方向に関して内側に設けられている、
断熱材の製造方法。
【請求項3】
前記減圧工程前において、前記第2部材は前記第1部材に対して突出していない、
請求項1又は2に記載の断熱材の製造方法。
【請求項4】
前記窪み部は、前記外包材内を減圧する際に、前記第1部材と前記第2部材との圧縮性の差によって形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項5】
前記第1部材は、前記第2表面において前記断熱材の幅方向の長さ寸法の半分以上に亘って配置されており、
前記断熱材の厚み方向において前記窪み部の底部と重なる部分には、前記第1部材と前記第2部材とが前記厚み方向に積層されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項6】
前記第1表面側にあって前記窪み部に隣接する部位に設けられて前記第1部材よりも圧縮性の低い第3部材を備える、
請求項2から5のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項7】
前記外包材は、前記窪み部の周囲にあって前記第1部材の少なくとも一部を覆う第1部分と、前記第2部材を覆う第2部分とを備え、
前記第1部分の剛性は、前記第2部分の剛性よりも高い、
請求項1から6のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項8】
前記第1部材と前記第2部材とは、接合されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項9】
前記外包材と、前記芯材の前記第2表面の側の少なくとも一部とは接合されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項10】
断熱性を有し内部に貯蔵室を有する断熱箱体を備える冷蔵庫の製造方法であって、
前記断熱箱体を構成する断熱壁のうち側面及び背面を構成する断熱壁の少なくとも一方は、内部に断熱材を設けて構成され、
前記断熱材は、
気密性を有する外包材に芯材を収容し前記外包材内を減圧することで板状に構成され、
前記板状の表面のうち一方側を第1表面として他方側を第2表面とした場合に少なくとも前記第1表面を窪ませて形成された窪み部を備え、
前記第1表面側に凹形状が形成された第1部材に対し、前記第1部材よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材を配置し、
前記第1部材と前記第2部材とを含む板状の前記芯材を形成する芯材形成工程と、
前記芯材を前記外包材に収容し前記外包材内を減圧する減圧工程と、を備え、
前記減圧工程後において、前記第2部材は、前記窪み部の
表面形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、前記第2部材の全体が前記窪み部の幅方向に関して内側に設けられている、
冷蔵庫の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、断熱材の製造方法、及び冷蔵庫の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱性能を有する芯材を気密性を有する外包材に収容し、外包材内を減圧して構成された板状の断熱材、いわゆる真空断熱パネルがある。この種の断熱材を冷蔵庫に備える場合には、例えば放熱パイプを収容するための溝形状を断熱材に設ける必要がある。すなわち、断熱材の表面に凹溝等の所望の窪み形状を形成することが求められる。
【0003】
例えば、外包材内を減圧して板状に構成した後に、外包材の上からローラー等を用いて押圧し、外包材と芯材とを塑性変形させることによって表面に窪み形状が形成された断熱材が知られている。しかしながら、外包材を減圧した後に押圧によって塑性変形された断熱材は、外包材が塑性変形により延びて薄くなってしまう。すると、外包材の気密性が低下し、ひいては断熱材の断熱性が低下する虞れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、窪み形状を有するものにおいて外包材の気密性の低下を抑制し断熱性能の向上を図ることができる断熱材、断熱材を備える冷蔵庫、及び断熱材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の断熱材は、気密性を有する外包材に芯材を収容し前記外包材内を減圧して板状に構成され、前記板状の表面のうち一方側を第1表面とし他方側を第2表面とした場合に少なくとも前記第1表面を窪ませて形成された窪み部を備える。前記芯材は、第1部材と、前記第1部材よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材と、を有する。前記第2部材は、前記窪み部の形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、前記第1部材よりも前記窪み部側に設けられている。
【0007】
実施形態の断熱材は、気密性を有する外包材に芯材を収容し前記外包材内を減圧して板状に構成され、前記板状の表面のうち一方側を第1表面とし他方側を第2表面とした場合に少なくとも前記第1表面を窪ませて形成された窪み部を備える。前記芯材は、第1部材と、前記第1部材よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材と、を有する。前記第2部材は、前記窪み部の形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、前記第1部材よりも前記窪み部の幅方向に関して内側に設けられている。
【0008】
実施形態の冷蔵庫は、断熱性を有し内部に貯蔵室を有する断熱箱体を備える。前記断熱箱体を構成する断熱壁のうち側面及び背面を構成する断熱壁の少なくとも一方は、内部に断熱材を設けて構成される。前記断熱材は、気密性を有する外包材に芯材を収容し前記外包材内をして板状に構成され、前記板状の表面のうち一方側を第1表面として他方側を第2表面とした場合に少なくとも前記第1表面を窪ませて形成された窪み部を備える。前記芯材は、第1部材と、前記第1部材よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材と、を有する。前記第2部材は、前記窪み部の形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、前記第1部材よりも前記窪み部側又は前記第1部材よりも前記窪み部の幅方向に関して内側に設けられている。
【0009】
実施形態の断熱材の製造方法は、表面を窪ませて形成された窪み部を有し、気密性を有する外包材に芯材を収容し前記外包材内をして構成された断熱材の製造方法である。断熱材の製造方法は、前記窪み部の形状を規定する第1部材に対し、前記第1部材よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材を配置し、板状の芯材を形成する芯材形成工程と、前記芯材を外包材に収容し前記外包材内をする減圧工程と、を備える。前記減圧工程後において、前記第2部材は、前記窪み部の形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、前記第1部材よりも前記窪み部側に設けられている、又は、前記第1部材よりも前記窪み部の幅方向に関して内側に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態による冷蔵庫の概略構成を示す斜視図
【
図2】第1実施形態による冷蔵庫について、真空断熱パネルの構成を模式的に示す断面図
【
図3】第1実施形態による冷蔵庫について、真空断熱パネルの製造方法において実行される各工程を示すフローチャート
【
図4】第1実施形態による真空断熱パネルの製造工程を示す模式図
【
図5】第1実施形態による真空断熱パネルの製造工程を示す模式図
【
図6】第2実施形態による真空断熱パネルの構成を模式的に示す断面図
【
図7】第2実施形態による冷蔵庫について、真空断熱パネルの製造方法において実行される各工程を示すフローチャート
【
図8】第2実施形態による真空断熱パネルの製造工程を示す模式図
【
図9】第3実施形態による真空断熱パネルの構成を模式的に示す断面図
【
図10】第4実施形態による真空断熱パネルの構成を模式的に示す断面図
【
図11】第4実施形態による冷蔵庫について、真空断熱パネルの製造方法において実行される各工程を示すフローチャート
【
図12】第4実施形態による真空断熱パネルの製造工程を示す模式図
【
図13】その他の実施形態による真空断熱パネルの構成を模式的に示す断面図
【
図14】その他の実施形態による真空断熱パネルの構成を模式的に示す断面図
【
図15】その他の実施形態による真空断熱パネルの構成を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態による冷蔵庫について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、冷蔵庫10は、前面が開口した縦長の矩形状の断熱箱体20内に、複数の貯蔵室を有して構成されている。以下の説明では、冷蔵庫10の開口側を冷蔵庫10の前側とし、開口とは反対側を冷蔵庫10の後ろ側とする。また、冷蔵庫10を
図1の姿勢で床面に設置した場合における重力方向に対応する上下方向を、冷蔵庫10の上下方向とする。また、
図1の冷蔵庫10を前側から見た場合における左右方向を、冷蔵庫10の左右方向とする。なお、冷蔵庫10について、各貯蔵室の内側を冷蔵庫10の庫内とし、各貯蔵室の外側を庫外と称する。
【0013】
図1に示すように、冷蔵庫10は、断熱箱体20を主体として構成されている。断熱箱体20は、前面が開口した箱体で構成されており、断熱性を有している。断熱箱体20は、食品などの貯蔵物を貯蔵するための複数の貯蔵室として、例えば、冷蔵室11、野菜室12、製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15を有している。冷蔵室11は、断熱箱体20の最上部に設けられている。野菜室12は、冷蔵室11の下方に設けられている。製氷室13及び小冷凍室14は、野菜室12の下方にあって、左右に並べて設けられている。冷凍室15は、製氷室13及び小冷凍室14の下方、つまり断熱箱体20の最下部に設けられている。
【0014】
なお、
図1に示す冷蔵庫10の構成は一例であり、貯蔵室の数や種類および配置は、
図1に示すものに限定されない。例えば、冷蔵室11の下方に製氷室13及び小冷凍室14が設けられ、製氷室13及び小冷凍室14の下方に冷凍室15が設けられ、冷凍室15の下方に、つまり断熱箱体20の最下部に野菜室12が設けられていても良い。
【0015】
冷蔵室11及び野菜室12は、いずれも冷蔵温度帯の貯蔵室であり、その庫内は例えば1~4℃のプラス温度帯に維持されている。冷蔵室11と野菜室12との間は、断熱性を必要としない図示しない非断熱仕切り壁により上下に仕切られている。製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15は、いずれも冷凍温度帯の貯蔵室であり、その庫内は例えば-10℃~-20℃のマイナス温度帯に維持される。野菜室12と、製氷室13及び小冷凍室14との間は、詳細は図示しないが、断熱性を有する断熱仕切り壁によって仕切られている。なお、冷蔵室11と野菜室12との間は、断熱性を有する断熱仕切り壁によって仕切られていても良い。
【0016】
冷蔵庫10は、冷蔵室扉111、112、野菜室扉121、製氷室扉131、小冷凍室扉141、及び冷凍室扉151を備えている。冷蔵室扉111、112は、例えば観音開きのヒンジ開閉式の扉であって、冷蔵室11の開口を開閉する。野菜室扉121、製氷室扉131、小冷凍室扉141、及び冷凍室扉151は、いずれも引き出し式であって、それぞれ野菜室12、製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15の開口を開閉する。
【0017】
断熱箱体20は、例えば分割された複数の断熱壁、この場合、左右の側部断熱壁21、背部断熱壁22、天井部断熱壁23、及び底部断熱壁24を組み合わせることにより箱状に構成されている。側部断熱壁21は、断熱箱体20の左右の側面を構成する断熱壁である。
【0018】
冷蔵庫10の各扉111、112、121、131、141、151、複数の断熱壁21、22、23、24、及び断熱仕切りのうちの少なくとも1つ又は複数は、板状に形成された断熱材30を備えている。以下では、側部断熱壁21を例にとって説明する。なお、本実施形態において、断熱材30は、断熱パネル30又は、真空断熱パネル30と称する場合がある。この場合、「真空」とは、厳密な真空までは要求されず、大気圧に対して減圧状態であれば良い。
【0019】
側部断熱壁21は、詳細は図示しないが、外板と内板との間に、断熱材としての真空断熱パネル30を設けて構成されている。図示しない外板は、金属製の薄板で構成されている。外板は、冷蔵庫10の庫外側の面を構成する。図示しない内板は、合成樹脂製の薄板で構成され、弾性変形が可能となっている。内板は、冷蔵庫10の庫内側の面を構成する。本実施形態の場合、側部断熱壁21は、断熱材として真空断熱パネル30に加えて、図示しない発泡断熱材を有している。発泡断熱材は、例えばウレタンフォーム等で構成されており、外板と内板との間において真空断熱パネル30が存在していない隙間部分に充填されている。
【0020】
本実施形態において、真空断熱パネル30は、冷蔵庫10の庫内、つまり各貯蔵室である冷蔵室11、野菜室12、製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15を断熱対象としている。真空断熱パネル30は、例えば全体として上下方向に長い矩形の板状に構成されている。真空断熱パネル30は、詳細は図示しないが、例えば外板及び内板のうち少なくとも一方の面に、ホットメルト接着剤などの図示しない接着剤を介して接着固定されている。本実施形態の場合、真空断熱パネル30は、内板と離間した状態で、外板にホットメルト接着剤を介して接着固定されている。そして、内板と真空断熱パネルの間に、発泡断熱材が設けられている。なお、真空断熱パネル30は、内板にホットメルト接着剤を介して接着固定する構成でも良い。また、真空断熱パネル30は、接着剤に換えて、両面テープなどを用いて外板又は内板に接着固定する構成でもよい。
【0021】
冷蔵庫10は、例えば
図1及び
図2に示すように、配管部材16を備えている。配管部材16は、図示しない冷凍サイクルを構成する部材であって、例えば図示しない蒸発器とコンプレッサとを繋ぐサクションパイプなどであり、例えば剛性を有する金属管などで構成されている。配管部材16は、外板と内板との間でかつ真空断熱パネル30と外板との間に設けられている。本実施形態の場合、配管部材16は、側部断熱壁21及び背部断熱壁22の内部に設けられている。配管部材の形状は、設計に応じて適宜変更することができる。
【0022】
図2は、真空断熱パネル30の断面図を示す。
図2の左右方向を、真空断熱パネル30の幅方向と、
図2の上下方向を、真空断熱パネル30の厚み方向と称する。真空断熱パネル30は、板状に構成され、第1表面31と、第2表面32と、窪み部33と、外包材40と、芯材50と、を有する。第1表面31と第2表面32とは、真空断熱パネル30の外側表面を構成している。第1表面31と第2表面32とは、互いに離間し、平行に形成されている。
【0023】
第1表面31は、1つまたは複数の窪み部33を有する。本実施形態では、窪み部33は、複数この場合2つ設けられている。窪み部33の数は、配管部材の配置や構成等に応じて、1つまたは複数とすることができる。窪み部33は、第1表面31の一部を窪ませて形成されている。窪み部33は、第1表面31の断面が台形状又は角を落とした台形状若しくは椀状または半球状となるように第1表面31を窪ませて形成されている。窪み部33は、配管部材16の全部又は一部を第1表面31から突出させずに配設できる凹部としての機能を有する。
【0024】
外包材40は、例えばアルミ等の金属蒸着フィルム等の気密性を有する材料によって袋状に構成されている。この場合、外包材40は、一枚のシート状の部材を折り曲げて、周囲部分を接着することにより袋状に形成されている。芯材50は、外包材の中に収容される芯材であって、例えばグラスウールやグラスファイバ、金属繊維などの無機繊維や、ポリエステルなどの有機繊維を積層して板状に成形したものである。
【0025】
芯材50は、第1部材51と、第2部材52と、を備える。第1部材51を構成する材料と第2部材52を構成する材料とは、同じ材料で構成されていても良いし、異なる材料で構成されていても良い。本実施形態では、第1部材51と第2部材52とは、いずれもシート状のグラスウールを複数層積層させて所定の厚みに構成されている。真空断熱パネル30は、外包材40の内部に第1部材51及び第2部材52を収容し、外包材40の内部を減圧した状態でその外包材40を密閉することで構成される。
【0026】
第1部材51は、窪み部33の形状を規定する規定領域511を有する。この場合、窪み部33の形状を規定するとは、窪み部33の形状の基礎づけることを指す。つまり、窪み部33の形状は、規定領域511に基づいている。規定領域511は、第1部材51と第2部材52との境界面を構成する。規定領域511は、第1部材51の表面を窪み部33よりも大きい形状に窪ませて形成されている。規定領域511の内側には、規定領域511に接して第2部材52が設けられている。
【0027】
第1部材51と第2部材52とは、規定領域511において接合されている。本実施形態では、第1部材51と第2部材52との間には、接着剤層55が設けられている。接着剤層55は、規定領域511に接して設けられ、第1部材51と第2部材52とを接着している。なお、接着剤の代わりに、ニードルパンチ法やウォータージェット法等を用いることで、第1部材51と第2部材52とを接合しても良い。また、第1部材51と第2部材52とが接合されれば、糸などによって縫合しても良い。なお、第1部材51と第2部材52との間には、接着剤層55に換えて、又は接着剤層55に加えて、フィルム状の部材、シート状の部材、板状の部材等が配置されていても良い。
【0028】
第2部材52は、その一部または全体が規定領域511の内側に設けられており、第1部材51の規定領域511に沿うことで第2部材52の内側の面に窪み部33の凹形状を形成している。第2部材52は、第1部材51よりも窪み部33側に設けられている。第2部材52は、第1部材51よりも窪み部33の幅方向に関して内側に設けられている。換言すると、第1部材51と、第2部材52とは、窪み部に対して、遠い方から第1部材51、第2部材52の順に配置されている。第1部材51は、窪み部33に対して第2部材52よりも遠位に設けられている。第2部材52は窪み部33に対して第1部材51よりも近位に設けられている。この場合「窪み部33に対して遠位」とは、窪み部33に対してより遠くに位置することを指し、「窪み部33に対して近位」とは、窪み部33に対してより近くに位置することを指す。
【0029】
本実施形態では、第2部材52は、第1部材51と隣接して設けられている。なお、この場合「隣接する」とは、第1部材51と第2部材52とが近接して配置されていることを指し、第1部材51と第2部材52とが直接的に接している場合だけでなく、第1部材51と第2部材52との間にシート状やフィルム状の部材又は接合のための接着剤層55等が介在することも含む。
【0030】
本実施形態では、規定領域511は、断面がU字状または逆椀状に設けられている。第2部材52は、規定領域511に沿って断面がU字状又は逆椀状に湾曲して構成されている。そして、窪み部33は、第2部材52の外面形状に沿って断面がU字状又は逆椀状に構成されている。
【0031】
ここで、
図2に示すように、例えば真空断熱パネル30を厚み方向の中心を通る中心線Lで分割した場合について見る。この場合、芯材50のうち概ね第1表面31側の部分においては、第1部材51と、第2部材52と、第1部材51とが、真空断熱パネル30の面方向に向かって順に隣接して配置されている。これに対し、第1部材51は、1つの規定領域511と厚み方向に重なる第2表面32側の部分において、当該1つの規定領域511の幅寸法の少なくとも2倍の幅寸法に亘って配置されている。一実施形態では、芯材50のうち第2表面32側の部分において、第1部材51が芯材50の幅方向の長さ寸法の半分以上に亘って配置されている。本実施形態では、芯材50のうち第2表面32側の部分において、第1部材51が芯材50の幅全体に亘って配置されている。
【0032】
また、真空断熱パネル30の厚み方向について見ると、芯材50の窪み部33と厚み方向に重なる部分は、第1表面31側から第2表面32側にかけて第2部材52、第1部材51の順に配置されている。つまり、真空断熱パネル30の厚み方向において窪み部33の底部と重なる部分には、第1部材51と第2部材52とが、厚み方向に積層されている。窪み部33と重ならない部分は、第1部材51が厚み方向の全体に亘って配置されている。
【0033】
少なくとも減圧操作つまりいわゆる真空引きによって圧縮される以前の状態において、第2部材52は、第1部材51よりも低密度又は高圧縮性の少なくとも一方、若しくは両方の特性を有する部材で構成されている。本実施形態では、少なくとも減圧操作によって圧縮される以前の状態において、第2部材52は、第1部材51よりも高圧縮性の部材で構成されている。つまり、減圧操作により真空断熱パネル30の厚み方向に圧縮される際における、第2部材52の厚み寸法の変化率は、第1部材51の厚み寸法の変化率よりも大きい。換言すれば、減圧下と大気圧下との両方において、第2部材52の厚み方向の変化率つまり圧縮率は、第1部材51の圧縮率よりも大きい。本実施形態の場合、第2部材52は、減圧操作によって圧縮される以前及び以後の両方の状態において、第1部材51よりも低密度となっている。なお、減圧操作によって圧縮された後の状態において、第2部材52と第1部材51との密度は同一になっていても良い。
【0034】
なお、1枚の真空断熱パネル30が備える第1部材51は、1枚の真空断熱パネル30が備える第2部材52よりも体積が大きい。つまり、真空断熱パネル30全体でみると、第1部材51が半分以上の割合を占めており、第2部材52が占める割合は半分未満である。
【0035】
外包材40は、
図2に示すように耳部41を有している。耳部41は、外包材40を袋状に形成するための接着部分であり、外包材40の外周部分のうち芯材50よりも外側に位置している。耳部41は、真空断熱パネル30の中心側へ折り返されて、外包材のうち対向する部分、この場合第1表面に熱溶着や粘着テープなどによって貼り付けられている。本実施形態の場合、耳部41は、冷蔵庫10の外板側に位置している。なお、耳部41は、第2表面32に貼り付けられていても良い。その場合、耳部41は、冷蔵庫10の内板側に位置することになる。
【0036】
真空断熱パネル30は、例えば
図3から
図5に示すように、次のようにして製造される。本実施形態において、真空断熱パネル30の製造工程は、
図3に示すように、ステップS10~15の芯材形成工程と、ステップS16~S18の減圧工程と、を含んでいる。ステップS10~S14の芯材形成工程では、平板状の芯材50を形成する。
【0037】
第1部材51は、例えば第1部材51の厚みよりも薄いシート状のグラスウールを多数枚重ねることで、所定の厚みを有する形状に構成されている。本実施形態の場合、芯材形成工程としてステップS10~15が順に実行される。ステップS10は、第1部材51を構成するためのシート状のグラスウールを所望の形状に切断し、規定領域511部分を形成する工程である。ステップS11は、ステップS10で切断されたシート状のグラスウールを複数層積層して第1部材51を形成する工程である。ステップS10、S11の実行により、
図4(A)に示すように、凹形状、つまり断面がU字状の規定領域511を有する第1部材51が製造される。
【0038】
ステップS12は、シート状のグラスウールを規定領域511の形状に対応する形状に切断する工程である。規定領域511の形状に対応する形状とは、必ずしも規定領域511の形状と同一であることを意図せず、減圧圧縮による変形後の規定領域511が所望の形状となるような形状を指す。つまり、減圧圧縮による第1部材51と第2部材52との圧縮変形を考慮した上での、減圧工程後に規定領域511となる部分の形状を指す。ステップS13は、ステップS12で切断したシート状のグラスウールを複数層積層して第2部材52を形成する工程である。ステップS14は、
図4(B)に示すように、規定領域511に接着剤を塗布して接着剤層55を形成する工程である。そして、ステップS15は、ステップS13で形成した第2部材52を、第1部材51の規定領域511の内側に配置して接着する工程である。これにより、
図4(C)に示すように、全体として板状の芯材50が形成される。この場合、芯材50における第2部材52側の表面は、全体として平坦に形成されている。つまり、本実施形態の場合、真空引きする以前の芯材50において、第2部材52は、第1部材51に対して突出しておらずかつ窪んでもいない。
【0039】
なお、ステップS12及びステップS13は、ステップS15の前であれば、いずれのタイミングで実行されても良い。例えば、ステップS10の前に、ステップS12及びステップS13を行っても良いし、ステップS10と並行してステップS12を行い、ステップS11の後にステップS13を行っても良い。
【0040】
芯材50は全体として平板状の1つの部材を構成しているが、芯材50は減圧操作の際の圧縮性が異なる複数の部材を備える。本実施形態の場合、第1部材51と第2部材52とは、減圧操作の前後の状態のうち少なくとも減圧操作を行う以前の状態において、各々を構成する部材の密度が異なることにより圧縮性が異なる。具体的には、減圧操作の前後の状態のうち少なくとも減圧操作を行う以前の状態において、第1部材51は、第2部材52よりも高密度でかつ低圧縮性の部材で構成されている。すなわち、第1部材51及び第2部材52のいずれもがシート状のグラスウールを積層して構成されているが、第1部材51の方が第2部材52よりもグラスウールのシートが高密度である。そのため、第1部材51の方が第2部材52よりも低圧縮性である。換言すれば、減圧操作の前後の状態のうち少なくとも減圧操作を行う以前の状態において、第2部材52は、第1部材51よりも低密度でかつ高圧縮性の部材で構成されている。
【0041】
次に、減圧工程としてステップS15~S17が順に実行される。なお、本実施形態の場合、ステップS15~S17の減圧工程は、真空引き工程と称することもできる。この場合、「真空」とは、厳密な真空までは要求されず、大気に対して減圧状態であれば良い。ステップS15は、芯材50を外包材40内に挿入し収容する工程である。
図5(A)に示す外包材40は、一辺部に開口部42を有し、他の辺部が接着されて袋状に形成されたものである。
図5(A)に示すように、第1部材51と第2部材52とを含む芯材50は、袋状の外包材40の開口部42から外包材40の内部に挿入される。
【0042】
ステップS16は、外包材40の内部を減圧する、いわゆる真空引きする工程である。これにより、
図5(B)に示すように、窪み部33が形成される。すなわち、この減圧の際、第1部材51と第2部材52とを含む芯材50は厚み方向に圧縮される。
【0043】
ここで、芯材50が同一の圧縮性でかつ同一の密度の部材で構成されている場合、減圧後の真空断熱パネル30の厚み寸法は真空断熱パネル30の全幅に亘って一定となる。これに対し、本実施形態では、第2部材52は、第1部材51よりも低密度でかつ高圧縮性の部材で構成されている。そのため、高圧縮性の第2部材52は、減圧の前後で第1部材51よりもより大きく圧縮される。このとき、第2部材52は、第1部材51の規定領域511の形状に沿って圧縮され、その結果、第2部材52が積層されている部分の第1表面31側に窪み部33が形成される。つまり、窪み部33は、外包材40内を減圧する際に、第1部材51の圧縮性と第2部材52の圧縮性との間の差があることによって形成される。
【0044】
そして、外包材40の内部を減圧した状態で外包材40の開口部42を熱溶着して密閉する。この際、芯材50よりも外側にはみだして熱圧着された部分が耳部41として形成される。そして、
図5(C)に示すように、耳部41を真空断熱パネル30の中心側へ折り返して、熱溶着又は、粘着テープ若しくは接着剤等によって真空断熱パネル30の第2表面に接着する(ステップS17)。このようにして、真空断熱パネル30が製造される。
【0045】
なお、外包材40は、芯材50を収容する際に袋状となっていなくても良い。すなわち、外包材40は、芯材50を収容する際に、外周の縁部がいずれも溶着されていないシート状であっても良い。また、外包材40は、向かい合う2つの縁部が溶着された筒状であっても良く、更には直交する2つの縁部が溶着された半袋状となっていても良い。
【0046】
以上説明した実施形態によれば、真空断熱パネル30は、第1表面31と、第1表面31と離間して平行に形成された第2表面32と、を有し、第1表面31を窪ませて形成された窪み部33を有し気密性を有する外包材40に芯材50を収容し外包材40内を減圧することで板状に構成されている。また、芯材50は、第1部材51と、第1部材51よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材と、を有する。第2部材52は、窪み部33の形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、第1部材51よりも窪み部33側に設けられている。
【0047】
また、芯材50は、第1部材51と、第1部材51よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材と、を有する。第2部材52は、窪み部33の形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、第1部材51よりも窪み部33の幅方向に関して内側に設けられている。
【0048】
更に、芯材50は、窪み部33の形状を規定する第1部材51と、第1部材51よりも高圧縮性の部材で構成され、窪み部33に対して第1部材51よりも近位に設けられて窪み部33の表面形状の少なくとも一部または全部を形成する第2部材と、を有している。更に、芯材50は、窪み部33の形状を規定する規定領域511を有する第1部材51と、第1部材51よりも高圧縮性の部材で構成され、規定領域511に隣接して設けられて窪み部33の表面形状の少なくとも一部または全部を形成する第2部材と、を有している。
【0049】
ここで、製造時に、減圧操作後に外包材の上からローラー等によって押圧し、押圧力によって外包材と芯材とを塑性変形させて、表面に所望の凹形状が形成された真空断熱パネルが知られている。このように製造された場合、外包材は塑性変形の際に引き伸ばされたり押しつぶされたりすることになり、外包材を構成する金属蒸着層及び樹脂フィルム層のいずれにも物理的な負荷がかかる。とりわけ、凹形状の両側のエッジ部分には応力が集中する。その結果、金属蒸着層や樹脂フィルム層にクラックが入ったり、金属蒸着層や樹脂フィルム層が薄くなったりする等して、外包材の気密性が低下する虞れがある。
【0050】
これに対し、本実施形態の真空断熱パネル30によれば、減圧操作後に押圧することなく、第1部材51と第2部材52との減圧下での圧縮率の差を利用して窪み部33を形成している。
【0051】
これによれば、本実施形態の真空断熱パネル30は、窪み部33を形成する際に外包材40の塑性変形が生じ難くなる。すなわち、外包材40と芯材50とが減圧によって密着してから押圧により窪み部33を形成するのではなく、外包材40と芯材50との減圧による密着と窪み部33の形成とが概ね並行して進行する。したがって、外包材が塑性変形によって引き伸ばされたり押しつぶされたりすることが抑制される。また、窪み部33の両側のエッジ部分への応力の集中を低減することができる。そのため、押圧による外包材40の金属蒸着層及び樹脂フィルム層への負荷がかからず、金属蒸着層及び樹脂フィルム層へのクラックの発生や引き延ばしにより各層が薄くなることを抑制できるため、外包材40の気密性の低下が抑制され、ひいては断熱性能が向上される。したがって、本実施形態によれば、外包材40の気密性の低下を抑制し断熱性能が向上された断熱材が提供される。
【0052】
また、窪み部33は、外包材40内を減圧する際に、第1部材51と第2部材52との圧縮性の差によって形成されている。つまり、外包材40の減圧工程と、窪み部33の形成とを一度に行っている。したがって、外包材40の減圧工程の後に、更に窪み部を形成する工程を行う必要がなく、断熱材の製造工程を必要以上に複雑化しないという利点がある。
【0053】
ここで、窪み部33の底部と重なる部分に、第2部材52と第1部材51とが積層されていない場合、つまり第1部材51が第2表面32において真空断熱パネル30の幅方向の長さ寸法の半分以上に亘って配置されていない場合、芯材50は、規定領域511において複数に分断されていることになる。つまり、積層されるシート状のグラスウールのいずれの層も、真空断熱パネル30の幅方向に亘って配置されるものがない。この場合、とりわけ第1部材51と第2部材52とが接着剤やその他の方法によって接合されていないと、第1部材51と第2部材52とが分離してしまい易くなる。芯材50を形成後にすぐに外包材40に収容しないで保管するような場合には、取り扱いが困難になりやすく、作業性が低下してしまう虞れがある。
【0054】
これに対し、本実施形態の第1部材51は、第2表面32において真空断熱パネル30の幅方向の長さ寸法の半分以上に亘って配置されている。真空断熱パネル30の厚み方向において窪み部33の底部と重なる部分には、第1部材51と第2部材52とが、厚み方向に積層されている。これにより、第1部材51と第2部材52とが接着されていない場合であっても、第1部材51のうち少なくとも最下層、つまり最も第2表面32側の層を形成するグラスウールのシートは、真空断熱パネル30の幅方向の長さ寸法の半分以上に亘っているため、第1部材51と第2部材52とが分離し難く、取り扱いがより容易になり、作業性の低下を抑制することができる。
【0055】
また、第1部材51と第2部材52とは、接合されている。本実施形態では、第1部材51と第2部材52とは、規定領域511に接して設けられた接着剤層55によって接合されている。
【0056】
これによれば、第1部材51と第2部材52とは、外包材40に収容する前に分離し難くなるため、作業性が向上する。また、ここで第1部材51と第2部材52とが接合していなかった場合、第1部材51と第2部材52との圧縮性又は密度の違いから収縮率が異なり変形スピードが異なるために、減圧する際に互いに分離してしまう虞れがある。例えば、第2部材52が規定領域511に隣接した位置にとどまらず、丸まってつぶれてしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、第1部材51と第2部材52とは、接合されているため、圧縮性又は密度の違いに関わらず、減圧する際に第1部材51と第2部材52との相対位置が所望の位置にとどまる。そのため、良品率を上げ、製造性を向上させることができる。
【0057】
また、冷蔵庫10は、断熱性を有する断熱箱体20を備えている。断熱箱体20は、内部に貯蔵室として冷蔵室11、野菜室12、製氷室13、小冷凍室14、及び冷凍室15を有している。断熱箱体20を構成する断熱壁21、22、23、24のうち側面を構成する側部断熱壁21及び背面を構成する背部断熱壁22の少なくとも一方は、内部に真空断熱パネル30を設けて構成されている。
【0058】
そして、真空断熱パネル30は、第1表面31と、第1表面31と離間して平行に形成された第2表面32とを有し、第1表面31を窪ませて形成された窪み部33を有し、気密性を有する外包材40に芯材を収容し外包材40内を減圧することで板状に構成された断熱材である。
芯材50は、窪み部33の形状を規定する規定領域511を有する第1部材51と、規定領域511に隣接して設けられて窪み部33の表面形状の少なくとも一部または全部を形成する第1部材51よりも高圧縮性の第2部材52と、を有している。
【0059】
これによれば、上述の通り、真空断熱パネル30の外包材40の気密性の低下が抑制されるため、断熱性能が向上した冷蔵庫10が提供される。
【0060】
本実施形態の製造方法は、第1表面を窪ませて形成された窪み部33を有し、気密性を有する外包材40に芯材50を収容し外包材40内を減圧することで構成された断熱材の製造方法である。断熱材の製造方法は、芯材形成工程と、減圧工程と、を備える。芯材形成工程は、窪み部33の形状を規定する第1部材51に、第1部材51よりも高圧縮性の部材で構成された第2部材52を配置し、板状の芯材50を形成する。減圧工程は、芯材50を外包材40に収容し外包材40内を減圧する。減圧工程後において、第2部材は、窪み部33の形状の少なくとも一部または全部を形成し、かつ、第1部材51よりも窪み部33側に設けられている、又は、第1部材51よりも窪み部33の幅方向に関して内側に設けられている。これによれば、上述の通り、真空断熱パネル30の外包材40の気密性の低下が抑制されるため、断熱性能が向上した冷蔵庫が提供される。
【0061】
更に、芯材形成工程は、窪み部33の形状を規定する第1部材51に、第1部材51よりも高圧縮性の第2部材52を窪み部33に対して第1部材51よりも近位に配置し、板状の芯材50を形成する工程としてもよい。更にまた、芯材形成工程は、窪み部33の形状を規定する規定領域を有する第1部材51に対して、第1部材51よりも高圧縮性の第2部材52を規定領域511に隣接して配置し、板状の芯材50を形成する工程としてもよい。これらによっても、上述の通り、真空断熱パネル30の外包材40の気密性の低下が抑制されるため、断熱性能が向上した冷蔵庫が提供される。
【0062】
減圧工程の際、外包材40に挿入された芯材50は、
図5(B)の紙面上下方向から治具によって加圧されても良い。治具は、外包材40に対向する面が、窪み部33に対応する凸部を有さない概ね平坦な形状であっても良い。また、治具は、外包材40に対向する面が、全体として平坦な形状に構成され、窪み部33の形状と位置に対応する凸部を有していても良い。治具の形状が窪み部33に対応する凸部を有さない場合、加圧時の凸部と対向する外包材40への局所的な負荷が軽減される。そのため、一層外包材40の引き延ばしやクラックの形成等を軽減でき、外包材40の気密性の低下を抑制でき、真空断熱パネル30の断熱性能が向上され得る。
【0063】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図6~
図8を参照して説明する。本実施形態において、真空断熱パネル30は、第3部材53を更に備えている。第3部材53は、板状に形成され、第1部材51及び第2部材52とは別部材で構成されている。第3部材53は、第1部材51における第1表面31側であって窪み部33に隣接する部位である周辺部512に接して設けられている。この場合、第3部材53は、第1表面31及び第2表面32に対して平行な面を構成するように配置されている。第3部材53と周辺部512とは、図示しない接着剤によって接着されていても良い。
【0064】
第3部材53は、第1部材51及び第2部材52よりも圧縮性が低く構成されている。換言すれば、第3部材53は、第1部材51及び第2部材52よりも剛性が高く構成されている。本実施形態では、第3部材53は、第1部材51及び第2部材52とは異なる高剛性の材質で構成されており、実質的に非圧縮性である。すなわち、第3部材53は、減圧下において、少なくとも真空断熱パネル30の厚み方向に圧縮されない。第3部材53は、熱伝導率の低い部材で構成されていても良い。第3部材53は、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ABS樹脂、PET樹脂などの樹脂で構成されても良い。
【0065】
本実施形態における真空断熱パネル30の製造方法は、
図7に示すように、芯材形成工程がステップS20の工程を更に備えている点で、上記第1実施形態と異なる。すなわち、本実施形態の芯材形成工程は、上記第1実施形態と同様にステップS10~S15を備えるとともに、ステップS20を更に備えている。
【0066】
ステップS20は、第3部材53を周辺部512に配置する工程である。つまり、第1部材51と第2部材52とが全体として平板状に形成された後、
図8に示すように、第3部材53が第1部材51の周辺部512に配置される。なお、周辺部512又は第3部材53の少なくとも一方に図示しない接着剤を塗布し、接着剤によって第1部材51と第3部材53とを接着させても良い。
【0067】
なお、ステップS20は、ステップS11の後でかつ減圧工程の前であれば、いつの時点で行われても良い。例えば、ステップS11の後に行っても良いし、ステップS15と同時に行っても良い。ステップS10~S15、及びS20の芯材形成工程によって全体として平板状に形成された芯材50は、その後、ステップS16~S18に示す減圧工程を順次実行することによって、外包材40に収容された後に外包材40内が減圧され、真空断熱パネル30となる。
【0068】
ここで、第3部材53がない場合、第1部材51と第2部材52との原材料によって、又は減圧前の規定領域511の形状によっては、減圧時に外包材40が第2部材52に密着しながら沈み込むようにして変形して窪み部33を形成する際に、第1部材51の周辺部512及びその周囲の部分が窪み部33側に引き込まれてしまう虞れがある。この場合、周辺部512が窪み部33側に引き込まれてしまうと、減圧後の真空断熱パネル30の形状が、とりわけ第1表面31の側において平面度に劣ってしまう虞れがある。そして、真空断熱パネル30の平面度が劣ってしまうと、真空断熱パネル30と、外板又は内板等の接着対象との接触面積が低下してしまい、接着性が低下してしまうなどの不都合が生じる。
【0069】
これに対し、本実施形態の真空断熱パネル30は、第3部材53を更に備えている。第3部材53は、第1表面31側にあって窪み部33に隣接する部位である周辺部512に設けられており、第1部材51よりも圧縮性の低い部材、つまり剛性の高い部材で構成されている。これによれば、剛性が高く非圧縮性の板状部材であり、第1表面31及び第2表面32に平行に設けられた第3部材53が、窪み部33の周囲に設けられているため、減圧操作の際の周辺部512の過剰な変形を抑制する。そのため、芯材50のうち第3部材53と重なる部分、つまり第1部材51の周辺部512及びその周囲の部分は、減圧時に窪み部33側に引き寄せられ難くなる。その結果、真空断熱パネル30の第1表面31の平面部分の面積が必要以上に小さくなってしまうことを抑制できるとともに、真空断熱パネル30の剛性が担保されるため、第2表面32の側においても、平面形状を保つことができる。また、それにより、真空断熱パネル30と、外板との接着性がよくなり、不要なウレタンフォームが外板と真空断熱パネル30との間に侵入することを低減することができる。そのため、冷蔵庫10の真空断熱性の低下を抑制することができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図9を参照して説明する。
図9に示すように、外包材40は、第1部分401と、第2部分402と、を有している。第1部分401は、外包材40のうち、第1部材51の周辺部512の少なくとも一部を覆う部分に設けられている。第2部分402は、外包材40のうち、第2部材52を覆う部分に設けられている。
【0071】
第1部分401の剛性は、第2部分402の剛性よりも高く構成されている。本実施形態では、例えば、第1部分401は、外包材40の厚みを第2部分402の厚みよりも厚くすることによって、剛性が高く構成されている。すなわち、外包材40の第1部分401に該当する部分に、外側から樹脂フィルムを貼り付けて構成されている。なお、第1部分401は、金属蒸着層の厚みを第2部分402の金属蒸着層の厚みよりも厚くすることによって、剛性が高く構成されていても良いし、その他の方法によって第1部分401の剛性を第2部分402の剛性よりも高く構成しても良い。なお、本実施形態では、第1部分401の剛性は、第2部分402の剛性と、外包材40のうち第1部分401及び第2部分402のいずれでもない部分の剛性よりも大きく構成されている。また、第2部分402の剛性は、外包材40のうち第1部分401及び第2部分402のいずれでもない部分の剛性と同程度に構成されている。
【0072】
なお、第1部分401は、第1部材51の、周辺部512以外の部分にも対向して設けられていても良い。例えば、第1部分401は、外包材40のうち窪み部33を除く第1表面31の全体に設けられていても良い。また、第1部分401は、外包材40のうち窪み部33を除く第1表面31の全体と、真空断熱パネル30の外表面のうち厚み方向に延びる面とに、すなわち、真空断熱パネル30のうち、窪み部33に対向する部分と第2表面とのいずれをも除いた部分に設けられていても良い。更に、第1部分401は、外包材40のうち窪み部33を除く第1表面31の全体と、真空断熱パネル30の外表面のうち厚み方向に延びる面と、第2表面の内の少なくとも一部と、に設けられていても良い。更には、第1部分401は、外包材40のうち窪み部33を除いた部分に設けられていても良い。
【0073】
以上説明した第3実施形態によれば、真空断熱パネル30の外包材40は、窪み部33の周囲にあって第1部材51の少なくとも一部を覆う第1部分401と、第2部材52を覆う第2部分402と、を備える。第1部分401の剛性は、第2部分402の剛性よりも高い。これによれば、上述の第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図10~
図12を参照して説明する。
図10に示すように、真空断熱パネル30は、接着剤層56を更に備える。外包材40と芯材50の第2表面32側の少なくとも一部とは、接着剤層56を介して相互に接合されている。この場合、第1部材51のうち第2表面32側であって窪み部33の底部と重なる部分は、接着剤層56を介して外包材40に接合されている。なお、本実施形態では、外包材40と芯材50とは、接着剤層56によって接着されているが、外包材40と芯材50とが接着されるのであれば、他の方法であっても構わない。
【0075】
本実施形態では、接着剤層56は、窪み部33の底部と重なる部分だけでなく、窪み部33の底部と重なる部分よりも左右に広がって設けられている。すなわち、接着剤層56の幅寸法は、窪み部33の幅寸法よりも大きく構成されている。なお、接着剤層56は少なくとも窪み部33の底部と重なる部分に設けられていればよく、例えば第1部材51の第2表面32側の幅方向の長さ寸法の半分以上に亘っても受けられていても良い。また、接着剤層56は、第1部材51の第2表面32側の幅全体に亘って設けられていても良い。
【0076】
本実施形態における真空断熱パネル30の製造方法は、
図11に示すように、減圧工程がステップS30を更に備えている点で、上記第1実施形態と異なる。すなわち、本実施形態の減圧工程は、上記第1実施形態と同様にステップS16~S18を備えるとともに、ステップS30を更に備えている。
【0077】
ステップS
30は、第1部材51に、接着剤を塗布して接着剤層56を形成する工程である。これにより、
図12(A)に示すように、第1部材51の第2表面32側であって少なくとも窪み部33の底部と重なる部分に、接着剤層56が設けられる。そして、
図12(B)に示すように、芯材50は接着剤層56と共に外包材40に挿入される。
図12(C)に示すように、接着剤層56は、芯材50と外包材40との接着と、外包材40内部からの減圧が並行して行われる。なお、芯材50と外包材40との接着が、外包材40の減圧よりも先に行われても良い。
【0078】
ここで、外包材40と、芯材50の第2表面32側の少なくとも一部とが接着していない場合、減圧下において、第2表面32側も窪み部33に向かって収縮してしまう虞れがある。その場合、真空断熱パネル30の第2表面32の平面度が下がってしまうので、真空断熱パネルの剛性が低下し、冷蔵庫の内板や外板への納まりが悪くなってしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、外包材40と、芯材50の第2表面32側の少なくとも一部とが接着しているため、減圧下における第2表面32側の窪み部33に向かう収縮を抑制することができる。そのため、真空断熱パネル30の第2表面32の平面度の低下を抑制が可能となり、冷蔵庫の歩留まりの向上や、断熱性能の改善と言った効果が奏される。
【0079】
(その他の実施形態)
上記各実施形態の真空断熱パネル30は、芯材形成工程において
図13(A)に示すような概ね平板状の芯材50を形成してから、外包材40内を減圧する減圧工程を行うことによって
図13(B)に示すような真空断熱パネル30としても良い。この場合、減圧前の第2部材52は、
図13(A)に示すように断面T字形状に構成されている。これによれば、窪み部33の左右両端部の傾斜角度がなだらかになる。ここで、窪み部33の側面と周辺部512とが成す内角が直角又は鋭角であると、つまり窪み部33の側面と周辺部512とが成す内角が90°以下であると、エッジ部分に応力が集中して外包材40にクラックが入りやすくなる虞れがある。これに対し、本実施形態では、窪み部33の側面と周辺部512とが成す内角が90°よりも大きくなるため、エッジ部分に応力が集中することを抑制し、外包材40に対する負荷がより低減される。それにより、外包材の劣化が抑制され、真空断熱パネル30と冷蔵庫10の断熱性能が改善される。
【0080】
また、
図14(A)、(B)に示すように、芯材50のうち窪み部33の底部と厚み方向に重なる部分には、第1部材51が配置されていなくても良い。すなわち、第2部材52と第1部材51とは積層されていなくても良い。
図14(A)は、減圧前の芯材50を表している。第1部材51と第2部材52とは、真空断熱パネル30の厚み方向に積層されていない。すなわち、減圧前の状態において、第1部材51と第2部材52とは、密度の異なるグラスウールをそれぞれ同一の高さに積層して構成されている。そのため、第1実施形態と異なり、第1部材51は、1つの窪み部33につきそれぞれ2つの規定領域511を備える。つまり、第2部材52は、両側面を規定領域511に挟まれている。
【0081】
減圧後において、窪み部33は、
図14(B)に示すように、第1実施形態の場合に比較して、より深く窪んでおり、断面がU字状に形成されている。これは、第1部材51と第2部材52とが、真空断熱パネル30の厚み方向に積層されていないため、すなわち減圧後に窪み部33の底部に重なる部分に、密度が高い又は圧縮性の低い第1部材が積層されていないためである。このため、真空減圧下で、低密度又は高圧縮性を有する第2部材52で構成されている窪み部33の底部と重なる部分は、第1実施形態よりも大きく圧縮され、より深い窪み部33が形成される。第2部材52は、窪み部33の形状の少なくとも一部を形成する。また、第2部材52は、第1部材51よりも窪み部33の幅方向に関して内側、つまり第1部材51よりも窪み部33の幅方向に関して中心側に設けられている。この場合、第1実施形態よりも製造時の作業性に関して多少劣りやすいが、真空断熱パネル30の断熱性能については、同様の効果を奏することができる。
【0082】
更に、
図15(A)、(B)に示すように、窪み部33は、真空断熱パネル30の端部に設けられていても良い。その場合、芯材形成工程において
図15(A)に示すよう第1部材51と、第1部材51を包埋するように設けられた第2部材52と、を有する平板状の芯材50を形成する。第1部材51は、端部の第1表面31側を斜めに切り欠いた切り欠き形状の規定領域511を有する。第2部材52は、第1表面31側において概ね平板状に延びる部分と、端部において真空断熱パネル30の厚み方向に延びる部分と、を有し、平板状に延びる部分と厚み方向に延びる部分との間を繋ぐ連結部分を有する。連結部分の内側は傾斜しており、第1部材51の切り欠き形状の規定領域511に接する。
【0083】
外包材内を減圧する減圧工程後、真空断熱パネル30は、
図15(B)に示すような端部に斜めに切り欠いた窪み部33を有する。真空断熱パネル30は、第1表面の幅方向の両端部の少なくとも一方を切り欠いた窪み部33が設けられている。この場合、耳部41は、第2表面32側に折り返されて接着されている。第2部材52は、窪み部33の形状を形成する。また、第2部材52は、第1部材51よりも窪み部33側、つまり第1部材51よりも窪み部33の近くに設けられている。これによっても、上記の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
なお、詳細は図示しないが、冷蔵室扉111、112、野菜室扉121、製氷室扉131、小冷凍室扉141、及び冷凍室扉151の縁部には、防露用の図示しない露取り用ヒーターが設けられている。そして、露取り用ヒーターの代わりに、比較的高温の冷媒が流れる配管部材を設けても良い。その場合、各扉111、112、131、141、及び151に、真空断熱パネル30を設けても良い。また、野菜室12と製氷室13及び小冷凍室14とを仕切る断熱仕切りに、真空断熱パネル30を設けても良い。
【0085】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
図面中、10は冷蔵庫、30は真空断熱パネル、31は第1表面、32は第2表面、33は窪み部、40は外包材、50は芯材、51は第1部材、511は規定領域、512は周辺部、52は第2部材、を示す。