(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】流体を肺系に供給するための液滴送達装置、及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2019510563
(86)(22)【出願日】2017-05-03
(86)【国際出願番号】 US2017030917
(87)【国際公開番号】W WO2017192771
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2019-11-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2016-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518389853
【氏名又は名称】ニューマ・リスパイラトリー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,チャールズ・エリック
(72)【発明者】
【氏名】リー,チェンジー
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,クリストファー・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,ジャック・シー
(72)【発明者】
【氏名】ヘブランク,ジョン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ジェルミナリオ,ルイス・トーマス
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】井上 哲男
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特許第6774508(JP,B2)
【文献】特表平10-506037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0072717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸可能範囲内で対象者の肺系に液滴の放出流として流体を生成し送達するための圧電作動式の液滴送達装置であって、
ハウジングであって、当該ハウジングの空気流出口に位置するマウスピースと、当該ハウジングの空気流入口に位置する空気流層流要素とを含む、ハウジングと、
一定量の流体を受容するために、前記ハウジング内に又は前記ハウジングと流体連通するように配置された貯蔵部と、
前記噴出器機構と前記空気流出口との間で前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの差圧センサと、
圧電アクチュエータ及びアパーチャプレートを備えた噴出器機構であって、前記アパーチャプレートは、その厚さを通して形成された複数の開口を有し、前記圧電アクチュエータは、前記アパーチャプレートを振動させて前記液滴の放出流を生成する、噴出器機構と、
を備え、
前記少なくとも1つの差圧センサは、前記ハウジング内の所定の圧力変化を感知すると前記噴出器機構を作動させ、それにより前記液滴の放出流を生成するように構成され、
前記ハウジング、空気流層流要素、及びマウスピースは、前記アパーチャプレートの出口側を横切る層流を促進すると共に、前記液滴送達装置内に内部気流抵抗を提供して、使用中に前記ハウジングを通る空気流を提供するように構成され、
前記圧電作動式の液滴送達装置は、
(a)少なくとも約70%が約5μm未満の平均放出液滴直径を有する液滴の放出流を発生させ、
(b)使用中に前記液滴の放出流の質量の少なくとも約70%が呼吸可能な範囲で被験体の肺系に送達されるように、前記液滴の放出流を前記対象者の前記肺系に送達するように構成さ
れ、
前記液滴の放出流が前記圧電作動式の液滴送達装置内で約90度の軌跡の変化を受け、約5μmより大きい直径を有する液滴が、慣性力により、前記圧電作動式の液滴送達装置を通って出る同伴空気流中で前記対象者の前記肺系に運ばれることなく、前記液滴の放出流から濾過される、
圧電作動式の液滴送達装置。
【請求項2】
前記液滴の放出流が、肺の疾患、障害、又は状態の治療のための治療薬を含む、請求項1に記載の圧電作動式の液滴送達装置。
【請求項3】
前記圧電作動式の液滴供給装置の前記アパーチャプレートがドーム型形状を備える、請求項1
または2に記載の圧電作動式の液滴送達装置。
【請求項4】
前記肺の疾患、障害、又は状態は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、結核、慢性気管支炎、及び肺炎から選択される、請求項
2に記載の圧電作動式の液滴送達装置。
【請求項5】
前記治療薬は、COPD薬、喘息薬、または抗生物質である、請求項
4に記載の圧電作動式の液滴送達装置。
【請求項6】
前記治療薬は、硫酸アルブテロール、臭化イプラトロピウム、トブラマイシン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項
5に記載の圧電作動式の液滴送達装置。
【請求項7】
前記肺の疾患、障害、又は状態は、真性糖尿病、慢性関節リウマチ、プラーク乾癬、クローン病、ホルモン補充、好中球減少症、吐き気、及びインフルエンザから選択される、請求項
2に記載の圧電作動式の液滴送達装置。
【請求項8】
前記治療薬は、治療用ペプチド、タンパク質、抗体、又は他の生体工学的分子である、請求項
7に記載の圧電作動式の液滴送達装置。
【請求項9】
前記治療薬は、インスリン、ワクチン、抗体、Fc融合タンパク質、ホルモン、酵素、遺伝子治療およびRNAi細胞治療薬、抗体薬物コンジュゲート-アドセトリス、サイトカイン、抗感染薬、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項
8に記載の圧電作動式の液滴送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2016年5月3日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/331,328号、2016年5月5日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/332,352号、2016年5月10日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/334,076号、2016年6月24日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/354,437号、2016年9月23日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/399,091号、2016年11月1日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/416,026号、 2016年11月16日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/422,932号、2016年12月1日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/428,696号;2017年1月20日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/448,796号、及び2017年3月15日に出願された「DISPOSABLE PULMONARY DRUG DELIVERY APPARATUS AND METHODS OF USE」と題する米国仮特許出願第62/471,929号について、米国特許法第119条に基づく優先権を主張する。各出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、液滴送達装置に関し、より具体的には、流体を肺系に送達するための液滴送達装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 様々な呼吸器疾患の治療のためのエアロゾル発生装置の使用は、大きな関心が寄せられている分野である。吸入は、喘息、COPD、及び部位特異的状態を治療するためのエアロゾル化薬物の送達を、身体全体への悪影響を低減して提供する。主要な課題は、標的肺通路への薬剤の送達を成功させるのに適した液滴サイズで、正確で、一貫性があり、検証可能な用量を送達する装置を提供することである。
【0004】
[0004] 所定の時間における正確な用量の用量確認、送達、及び吸入は重要である。患者に吸入器を正しく使用させることも主要な問題である。患者が吸入器を正しく使用し、所定の時間に適切な用量を服用することを確実にする必要性が存在する。患者が誤用したり投薬量を誤って服用したりすると、問題が発生する。患者が利益を感じず薬剤の服用をやめる、又は期待される利益が感じられない、若しくは薬剤を過度に使用して過度の投与量のリスクを増加させると、予期せぬ結果が生じる。また、医師は、治療結果が得られないときに、処方された治療の解釈および診断の問題に直面する。
【0005】
[0005] 現在、定量吸入器(MDI)および加圧式定量吸入器(p-MDI)または空気圧式および超音波駆動式の装置のような吸入器システムの多くは、高速で、且つ高い運動量及び運動エネルギを有する大きい液滴を含む広い範囲の液滴サイズを生成する。そうした高い運動量を有する液滴およびエアロゾルは、遠位の肺または低位の肺通路には到達せず、口および喉に沈着する。その結果、目標とする領域に所望の沈着を達成するために、より多くの総薬物用量が必要とされる。これらの大量投与は、望ましくない副作用の可能性を増加させる。
【0006】
[0006] 現在のエアロゾル送達システムから生成されるエアロゾルプルームは、それらの高い噴出速度および薬剤運搬推進剤の急速な膨張によって、噴出表面への局所的な冷却、続いて起こる凝縮、付着、及び結晶化をもたらし得る。堆積した薬物残留物による噴出器のアパーチャ(開口)の閉塞も問題である。
【0007】
[0007] また、表面凝縮のこうした現象は、市販されている既存の振動型メッシュ式またはアパーチャプレート式噴霧器の課題でもある。これらのシステムでは、製造者は、微生物汚染の可能性を防ぐために、一回使用した後に、消毒を必要とすると共に、メッシュアパーチャ表面への薬剤の蓄積を防ぐために、たびたびの洗浄および清掃を必要とする。他の課題として、粘性薬物および懸濁液の送達によってアパーチャまたは孔が詰まり、患者への薬物送達における非効率もしくは不正確、または装置の動作不能を招くことが挙げられる。また、洗浄剤または他の清掃もしくは殺菌流体の使用は、噴出器機構または噴霧器の他の部分の劣化を生じさせ、患者への正確な用量を提供する能力または装置の動作状態について、不確実性をもたらし得る。
【0008】
[0008] したがって、検証可能な量で適切なサイズ範囲の粒子を送達し、表面への流体の堆積、及びアパーチャの閉塞を避けることができる吸入器装置が求められると共に、患者、及び医師、薬剤師、又はセラピストなどの専門家に、吸入器の正確で一貫した使用に関するフィードバックを提供できる吸入装置が求められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009] さらなる態様において、本開示は、慣性力を用いてエアロゾル化プルームから大きな液滴を濾過する方法に関する。この方法は、液滴送達装置を用いて液滴の放出流を生成するステップを含み、前記噴出器機構は、前記ハウジングから排出される前に、前記液滴の放出流が約90度軌跡を変化して前記ハウジングの中へ及び当該ハウジングを通って導かれるように前記ハウジングに関して方向付けられ、約5μmよりも大きい直径を有する液滴が、慣性力により、前記液滴送達装置を通って出る同伴空気流中で対象者の肺系に運ばれることなく前記ハウジングの側壁に堆積する。
【0010】
[0010] 別の態様では、本開示は、呼吸可能範囲内で対象者の肺系に液滴の放出流として流体を生成し送達するための方法に関する。この方法は、(a)圧電作動式の液滴送達装置を介して、少なくとも約70%が約5μm未満の平均放出液滴直径を有する液滴の放出流を発生させるステップと、(b)使用中に前記液滴の放出流の質量の少なくとも約70%が呼吸可能な範囲で被験体の肺系に送達されるように、前記液滴の放出流を前記対象者の前記肺系に送達するステップと、を含む。
【0011】
[0011] 他の態様では、開示された方法の前記液滴の放出流が前記圧電作動式の液滴送達装置内で約90度の軌跡の変化を受け、約5μmより大きい直径を有する液滴が、慣性力により、前記圧電作動式の液滴送達装置を通って出る同伴空気流中で前記対象者の前記肺系に運ばれることなく、前記液滴の放出流から濾過される。さらに他の態様では、約5μmより大きい直径を有する液滴を濾過することにより、使用中に前記対象者の前記肺系に送達される前記液滴の噴出流の質量を増加させる。他の態様では、前記液滴の放出流が、約5μmから約10μmの間の平均放出液滴直径を有する液滴をさらに含む。さらなる態様において、前記液滴の放出流が、肺の疾患、障害、又は状態の治療のための治療薬を含んでもよい。
【0012】
[0012] さらなる態様では、前記圧電作動式の液滴送達装置は、ハウジングと、一定量の流体を受容するために、前記ハウジング内に又は前記ハ圧電アクチュエータ及びアパーチャプレートを備える噴出器機構であって、前記アパーチャプレートは、その厚さを通して形成された複数の開口を有し、前記圧電アクチュエータは、前記アパーチャプレートを振動させて液滴の放出流を生成する、噴出器機構と、ウジングと流体連通するように配置された貯蔵部と、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの差圧センサと、を備え、前記少なくとも1つの差圧センサは、前記ハウジング内の所定の圧力変化を感知すると前記噴出器機構を作動させ、それにより液滴の放出流を生成するように構成される。
【0013】
[0013] さらに別の態様では、前記圧電作動式の液滴供給装置の前記アパーチャプレートがドーム型形状を備える。他の態様では、前記圧電作動式の液滴送達装置が、前記ハウジングの前記空気流入口側に配置された層流要素であって、前記アパーチャプレートの前記出口側を横切る層流を促進し、使用中に前記液滴送達装置を通って前記液滴の放出流が流れることを保証するのに十分な空気流を提供するように構成された層流要素を更に備える。
【0014】
[0014] 一態様では、本開示は、液滴の放出流として流体を対象者の肺系に送達するための圧電作動式の液滴送達装置に関する。液滴送達装置は、ハウジングと、一定量の流体を受容するために、前記ハウジング内に又は前記ハウジングと流体連通するように配置された貯蔵部と、圧電アクチュエータ及びアパーチャプレートを備える噴出器機構であって、前記アパーチャプレートは、その厚さを通して形成された複数の開口を有し、前記圧電アクチュエータは、前記アパーチャプレートを振動させて液滴の放出流を生成する、噴出器機構と、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの差圧センサと、を備え、前記少なくとも1つの差圧センサは、前記ハウジング内の所定の圧力変化を感知すると前記噴出器機構を作動させ、それにより液滴の放出流を生成するように構成され、前記噴出器機構は、液滴の放出流の質量の少なくとも約70%が、使用中に対象者の肺系に呼吸に適した範囲で送達されるように、少なくとも約70%の前記液滴が約5ミクロン未満の平均放出液滴直径を有する液滴の放出流を生成するように構成される。
【0015】
[0015] 特定の態様では、液滴送達装置は、前記アパーチャプレートと前記貯蔵部との間に表面張力プレートを更に含み、前記表面張力プレートは、前記一定量の流体と前記アパーチャプレートとの接触を増加させるように構成される。他の態様では、前記噴出器機構および前記表面張力プレートとが平行な向きに構成されている。さらに他の態様では、前記表面張力プレートは、前記表面張力プレートと前記アパーチャプレートとの間に毛細管流動を提供するのに十分な静水圧を生じさせるように前記アパーチャプレートの2mm以内に配置される。
【0016】
[0016] さらに他の態様では、液滴送達装置の前記アパーチャプレートがドーム型形状を含む。他の態様では、前記アパーチャプレートが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、Ni、NiCo、Pd、Pt、NiPd、合金、及びそれらの組み合わせからなるグループから選択される材料から構成される。他の態様では、前記複数の開口のうちの1つ以上が異なる断面形状または直径を有し、それにより異なる平均放出液滴直径を有する放出液滴を提供する。
【0017】
[0017] いくつかの態様では、前記ハウジングの前記空気流入口側に配置された層流要素であって、前記アパーチャプレートの前記出口側を横切る層流を促進し、使用中に前記液滴送達装置を通って前記液滴の放出流が流れることを保証するのに十分な空気流を提供するように構成された層流要素を更に備える。他の態様では、液滴送達装置は、前記層流要素の反対側で前記ハウジングと結合されたマウスピースを更に備えてもよい。
【0018】
[0018] 他の態様では、液滴送達装置の前記噴出器機構は、前記ハウジングから排出される前に、前記液滴の放出流が約90度軌跡を変化して前記ハウジングの中へ及び当該ハウジングを通って導かれるように前記ハウジングに関して方向付けられる。
【0019】
[0019] さらに他の態様では、液滴送達装置の前記貯蔵部が前記ハウジングと取り外し可能に結合される。他の態様では、液滴吐出装置の貯蔵部が前記噴出器機構に結合されて結合貯蔵部/噴出器機構モジュールを形成し、前記結合貯蔵部/噴出器機構モジュールが前記ハウジングと取り外し可能に結合される。
【0020】
[0020] 他の態様では、液滴送達装置は、無線通信モジュールを更に備えてもよい。いくつかの態様では、前記無線通信モジュールは、Bluetooth (登録商標)送信機である。
【0021】
[0021] さらに他の態様では、液滴送達装置が、赤外線送信機、光検出器、追加の圧力センサ、及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数のセンサを更に備えてもよい。
【0022】
[0022] さらなる態様では、本開示は、対象者の肺系に液滴の放出流として流体を送達するための呼吸作動式の液滴送達装置に関する。この装置は、ハウジングと、一定量の流体を受容して液滴の放出流を生成するために、前記ハウジングと流体連通するように配置された結合貯蔵部/噴出器機構モジュールと、圧電アクチュエータ、及びドーム型形状を有するアパーチャプレートを備える前記噴出器機構であって、前記アパーチャプレートは、その厚さを通して形成された複数の開口を有し、前記圧電アクチュエータは、前記アパーチャプレートを振動させて液滴の放出流を生成する、前記噴出器機構と、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの差圧センサと、を備え、前記少なくとも1つの差圧センサは、対象者が前記ハウジングの気流出口側に吸息をもたらしたときに前記ハウジング内の所定の圧力変化を感知すると、前記噴出器機構を作動させて前記液滴の放出流を生成するように構成され、前記噴出器機構は、液滴の放出流の質量の少なくとも約70%が、使用中に前記対象者の肺系に呼吸に適した範囲で送達されるように、少なくとも約70%の前記液滴が約5ミクロン未満の平均放出液滴直径を有する液滴の放出流を生成するように構成される。
【0023】
[0023] 他の態様では、呼吸作動式の液滴送達装置の前記ドーム型形状の前記ドーム型形状のアパーチャプレートが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、Ni、NiCo、Pd、Pt、NiPd、合金、及びそれらの組み合わせからなるグループから選択される材料から構成される。
【0024】
[0024] 他の態様では、呼吸作動式の液滴送達装置は、前記ハウジングの空気流入口側に配置された層流要素であって、前記アパーチャプレートの前記出口側を横切る層流を促進し、使用中に前記液滴送達装置を通って前記液滴の放出流が流れることを保証するのに十分な空気流を提供するように構成された層流要素を更に備える。さらに他の態様において、呼吸作動式の液滴送達装置は、前記層流要素の反対側で前記ハウジングと結合されたマウスピースを更に備える。
【0025】
[0025]本発明は、以下の実施形態によって得られる説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】[0026]
図1Aは、本開示の一実施形態による、液滴送達装置を使用する自動呼吸作動および慣性フィルタリングを示す図である。
【
図1B】[0027]
図1Bは、流れ制限部を横切る圧力差を検出することによって空気流を検知する吸入検出システムの一例を示している。
図1Bは、圧力センサおよび制限部の例示的な位置を示している。
図1Bは、制限部がマウスピースチューブの内部にある例である。
【
図1C】
図1Cは、流れ制限部を横切る圧力差を検出することによって空気流を検知する吸入検出システムの一例を示している。
図1Cは、圧力センサおよび制限部の例示的な位置を示している。
図1Cは、制限部が層流要素に位置し、圧力がマウスピースチューブの内部とチューブの外側との差として検知される例である。
【
図1D】
図1Dは、流れ制限部を横切る圧力差を検出することによって空気流を検知する吸入検出システムの一例を示している。
図1Dは、約1秒の持続時間の吸入息に対するデルタPセンサ応答を示すスクリーンキャプチャである。
【
図1E】
図1Eは、流れ制限部を横切る圧力差を検出することによって空気流を検知する吸入検出システムの一例を示している。
図1Eは、デルタPセンサの設計およびデバイスボード上へのアセンブリを示している(
図1E-1)。センサはプリント回路基板(PCB)の穴を介して空気接続されており、
図1E-2に示されるようにメインPCB上に、または
図1E-3に示されるようにドーターボードに取り付けられる。
【
図2A】[0028]
図2Aは、本開示の一実施形態による液滴送達装置の断面図である。
【
図2C】[0029]
図2Cは、液滴送達装置の分解図である。
【
図2D】[0030]
図2Dは、本開示の実施形態による、マウスピースチューブの平面図である。
【
図2E】[0031]
図2Eは、本開示の一実施形態による、空気口のグリッドまたは開口を有するマウスピースチューブの正面図である。
【
図3A】[0032]
図3Aは、本開示の一実施形態による液滴送達装置の別の実施形態である。
【
図4A】[0033]
図4Aは、本開示の一実施形態によるコンビネーション貯蔵部/噴出器機構モジュールの実施形態を示している。
図4Aは、モジュールの分解図を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示の一実施形態によるコンビネーション貯蔵部/噴出器機構モジュールの実施形態を示している。
図4Bは、蒸発を制限するための例示的な超疎水性フィルタとミクロンサイズのアパーチャの側面図を示す。
【
図4C】
図4Cは、本開示の一実施形態による、噴出器機構を貯蔵部に機械的に取り付けるためのモジュールおよび機構の断面図および平面図を示している。
【
図5A】[0034]
図5Aは、本開示の一実施形態による例示的な噴出器閉鎖機構を示しており、開放位置における噴出器閉鎖機構を示している。
【
図5B】
図5Bは、本開示の一実施形態による例示的な噴出器閉鎖機構を示しており、閉鎖位置における噴出器閉鎖機構を示している。
【
図5C】
図5Cは、本開示の一実施形態による例示的な噴出器閉鎖機構の詳細を示す平面図である。
【
図5D】
図5Dは、本開示の一実施形態による例示的な噴出器閉鎖機構の詳細を示しており、作動段階のモータを示している。
【
図5E】
図5Eは、本開示の一実施形態による例示的な噴出器閉鎖機構の詳細を示しており、作動段階のモータを示している。
【
図5F】
図5Fは、本開示の一実施形態による例示的な噴出器閉鎖機構の分解図である。
【
図5G】
図5Gは、本開示の一実施形態による例示的な噴出器閉鎖機構の分解図である。
【
図6A】[0035]
図6Aは、孔の数の関数としての、本開示の液滴送達装置に取り付けられた層流要素を通る流量の関数としての差圧のプロットである。
【
図6B】[0036]
図6Bは、スクリーン孔のサイズおよび孔の数が一定の17孔にされた関数としての、層流要素を通る流量の関数としての差圧のプロットである。
【
図6C】[0037]
図6Cは、直径1.9mmの29孔を有する空気入口層流スクリーンの図である。
【
図7A】[0038]
図7Aは、本開示の実施形態による例示的な噴出器機構の設計を示している。
【
図7B】
図7Bは、本開示の実施形態による例示的な噴出器機構の設計を示している。
【
図8A】[0039]
図8Aは、本開示の実施形態による例示的なドーム型アパーチャプレートの設計の斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、本開示の実施形態による例示的なドーム型アパーチャプレートの設計の側面図である。
【
図9】[0040]
図9は、本開示の実施形態によるアパーチャプレートの開口設計を示している。
【
図10A】[0041]
図10Aは、本開示の実施形態による平面形状のアパーチャプレートの共振周波数に対する媒体減衰の影響を示す周波数掃引プロットである。
【
図10B】
図10Bは、本開示の実施形態によるドーム型形状のアパーチャプレートの共振周波数に対する媒体減衰の影響を示す周波数掃引プロットである。
【
図11】[0042]
図11は、ドーム型アパーチャプレートの50kHzから150kHzへの変位振幅と、5Vppの励起電圧とに対するDHMベースの周波数スイープを示すグラフである。 共振周波数59kHz、105kHz、及び134kHzに関連する固有モード形状が拡大されている。
【
図12A】[0043]
図12Aは、本開示の実施形態によるアパーチャプレートのドーム高さとアクティブ領域の直径との関係を示す図である。
図12Aにおいて、dは、アクティブ領域の直径であり、hは、アパーチャプレートのドーム高さである。
【
図12B】
図12Bは、本開示の実施形態によるアパーチャプレートのドーム高さとアクティブ領域の直径との関係を示す図である。
図12Bは、アクティブ領域に対するドーム高さとアパーチャプレートの高さの計算のプロットを示す。
【
図13】[0044]
図13は、本開示の一実施形態による可撓性薬物アンプルを含む貯蔵部の分解図である。
【
図14A】[0045]
図14Aは、本開示の実施形態による例示的な表面張力プレートの平面図である。
【
図14B】
図14Bは、本開示の実施形態による例示的な表面張力プレートの平面図である。
【
図15A】[0046]
図15Aは、本開示の一実施形態による表面張力プレートの例示的な平面図を示す。
【
図15B】[0047]
図15Bは、アパーチャプレートと表面張力プレート組成物とからの表面張力プレートの距離が質量堆積に及ぼす影響を示す(5回、2.2秒の作動の平均)。
【
図16A】[0048]
図16Aは、本開示の一実施形態によるデュアル結合貯蔵部/噴出器機構モジュールの断面図を示す。
【
図16B】[0049]
図16Bは、本開示の一実施形態によるデュアル結合貯蔵部/噴出器機構モジュールを備えた液滴送達装置を示す。
【
図17A】[0050]
図17Aは、本開示の一実施形態による液滴送達装置による液滴生成を記録したネガ画像である。
【
図17B】[0051]
図17Bは、エアロゾルプルームからより大きな液滴をフィルタリングして排除するための慣性フィルタリングを示す図であり、本開示の液滴送達装置からの液滴流れを示し、領域1は層流の領域を表し、領域2は混入空気の発生による乱流領域を表す。液滴が噴出器機構から出てくるので、液滴は噴霧方向(4-5)で90度変化し、肺気道への吸入前に層流要素を通って空気流(3)によって掃引される。
【
図17C】[0052]
図17Cは、液滴出口角度を変化させることによって液滴サイズ分布を設定する機構を備えた慣性フィルタを示す。
【
図17D】
図17Dは、液滴出口角度を変化させることによって液滴サイズ分布を設定する機構を備えた慣性フィルタを示す。
【
図18A】[0053]
図18Aは、深赤色LED(650nm)レーザとフォトダイオード検出器とを用いたスプレー検証の例である。
【
図18B】
図18Bは、IRLED(850nm)付近のレーザとフォトダイオード検出器とを用いたスプレー検証の例である。
【
図19】[0054]
図19は、本開示の特定の実施形態による機械的人工呼吸器と組み合わせた液滴送達装置を含むシステムを示す。
【
図20】[0055]
図20は、本開示の特定の実施形態による例えば睡眠中の心臓事象を補助するために、CPAP機械と組み合わせた液滴送達装置を含むシステムを示す。
【
図21A】[0056]
図21Aは、本開示の液滴送達装置のアンダーセンカスケードインパクタ試験(Anderson Cascade Impactor test)中に収集された質量分布の概要を示している。
【
図21B】[0057]
図21Bは、本開示の液滴送達装置のアンダーセンカスケードインパクタ試験中に得られたMMADおよびGSD液滴データの概要を示している(カートリッジ3つ、カートリッジ当たり10回の作動; Albuterol、0.5%、28.3lpm;合計30回の作動)。
【
図21D】[0059]
図21Dは、咽喉、粗粒分、呼吸、及び細粒分の概要である。本開示の液滴送達装置のアンダーセンカスケードインパクタ試験(カートリッジ3つ、カートリッジ当たり10回の作動、0.5%、28.3lpm、合計30回の作動)。
【
図22A】[0060]
図22Aは、本開示の液滴送達装置からのエアロゾルプルームを示している。
【
図22B】
図22Bは、レスピマットソフトミスト吸入器(Respimat SoftMist Inhale)からのエアロゾルプルームを示している。
【
図23A】[0061]
図23Aは、本開示の液滴送達装置、レスピマット、及びプロエア(ProAir)吸入器装置(アンダーセンカスケードインパクタ試験、28.3lpm、平均 +/- SD、3つの装置、装置当たり10回の作動)のMMADおよびGSDデータの比較である。
【
図23B】[0062]
図23Bは、レスピマットおよびプロエア吸入器装置(アンダーセンカスケードインパクタ試験、28.3lpm、平均 +/- SD、3つの装置、装置当たり10回の作動)粗粒分、呼吸、及び細粒分の概要である。
【
図24A】[0063]
図24Aは、本開示の液滴送達装置を用いて作製された対照SECクロマトグラフを示す。
【
図24B】
図24Bは、本開示の液滴送達装置を用いて作製されたエアロゾル化エンブレル(Enbrel)溶液のSECクロマトグラフを示す。
【
図25A】[0064]
図25Aは、本開示の液滴送達装置を用いて作製された対照のSECクロマトグラフを示す。
【
図25B】
図25Bは、本開示の液滴送達装置を用いて作製されたエアロゾル化インスリン溶液のSECクロマトグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[0065] 肺胞を通じて肺の深部肺領域へ薬剤を効果的に送達することは、特に、限られた肺容量および呼吸流路の狭窄を有する小児および老人ならびに病的状態の患者にとって常に問題とされる。狭窄した肺の通路は、深い吸気を制限すると共に、投与された用量と吸気/呼気サイクルとの同期を制限する。肺胞気道における最適な堆積のためには、空気力学的直径が1~5μmの範囲である粒子が最適であり、約4μm未満の粒子は肺の肺胞領域に到達することが知られるのに対し、より大きな粒子は舌に堆積したり、喉に打ち付けられて気管支通路を覆う。より深く肺に浸透する、例えば約1μm未満のより小さい粒子は、吐き出されてしまう傾向がある。
【0028】
[0066] 特定の態様では、本開示は、対象の肺系への液滴の放出流として流体を送達するための液滴送達装置、及び肺系への安全で適切で再現性のある投薬量を送達する方法に関する。また、本開示は、適切かつ反復可能で使用中に高い割合の液滴が気道内の所望の場所、例えば対象者の肺胞気道に送達されるような液滴の放出流の態様で、所定量の流体を送達することができる液滴送達装置およびシステムを含む。
【0029】
[0067] 本開示は、液滴の放出流として流体を対象の肺系に送達するための液滴送達装置を提供し、当該装置は、ハウジングと、多量の流体を貯蔵するための貯蔵部と、圧電アクチュエータおよびアパーチャプレートを含む噴出器機構と、を備え、噴出器機構は、5ミクロン未満の平均放出液滴直径を有する液滴の流れを噴出するように構成される。特定の実施形態では、噴出器機構は、液滴送達装置のハウジング内に配置され、ハウジング内の所定の圧力変化を検出する少なくとも1つの差圧センサによって作動する。本明細書でさらに詳細に説明するように、特定の実施形態では、このような所定の圧力変化は、装置のユーザによる吸気サイクル中に検知されてもよい。
【0030】
[0068] 本開示の特定の態様によれば、肺への効果的な堆積は、概して、直径が5μm未満の液滴を求める。理論に制限されることを意図するものではないが、流体を肺に送達するために、液滴送達装置は、装置からの噴出が可能となるのに十分な大きさの運動量であって、舌または咽喉の後部に堆積するのを防ぐのに十分な小ささの運動量をを与えなければならない。直径5μm未満の液滴は、それ自身の運動によってではなく、気流の動きと液滴を運ぶ混入空気の動きとによってほぼ完全に運ばれる。
【0031】
[0069] 特定の態様では、本開示は、5μm未満の呼吸可能範囲内の液滴の流れを噴出するように構成された噴出器器機構を含み、提供する。噴出器機構は、圧電アクチュエータに直接的または間接的に結合されたアパーチャプレートを備える。特定の実施形態では、アパーチャプレートは、圧電アクチュエータに結合されたアクチュエータプレートに結合されてもよい。アパーチャプレートは、概して、その厚さを通して形成された複数の開口を含み、圧電アクチュエータは、アパーチャプレートの一方の表面に接触する流体を有するアパーチャプレートを、患者が吸入するときにアパーチャプレートの開口を通って肺への液滴の指向性エアロゾル流を発生させる周波数および電圧で、直接的または間接的に(例えば、アクチュエータプレートを介して)振動させる。アパーチャプレートがアクチュエータプレートに結合される他の実施形態では、アクチュエータプレートは、指向性エアロゾル流またはエアロゾル液滴のプルームを生成する周波数および電圧で圧電発振器によって振動させられる。
【0032】
[0070] 特定の態様では、本開示は、液滴の放出流として被験体の肺系に流体を送達するための液滴送達装置に関する。特定の観点では、治療剤は、代替投与経路および標準吸入技術と比較して、高用量濃度および高い有効性で送達され得る。
【0033】
[0071] 特定の実施形態では、本開示の液滴送達装置は、被験体の肺系に治療剤を送達することによって、様々な疾患、障害、および状態を治療するために使用され得る。これに関して、液滴送達装置は、局所的に肺系に、及び全身に体内へ治療薬を送達するために使用され得る。
【0034】
[0072] より具体的には、液滴送達装置は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、結核、慢性気管支炎、または肺炎といった、肺疾患または障害の治療または予防のために、対象の肺系へ液滴の放出流として治療剤を送達するために使用され得る。特定の実施形態では、液滴送達装置は、COPD薬物、喘息薬、又は抗生物質などの治療薬を送達するために使用され得る。非限定的な例として、そのような治療剤としては、硫酸アルブテロール、臭化イプラトロピウム、トブラマイシン、及びそれらの組み合わせが使用され得る。
【0035】
[0073] 他の実施形態では、液滴送達装置は、小分子、治療用ペプチド、タンパク質、抗体、及び肺系を介した他の生体工学的分子を含む治療剤の全身送達のために使用され得る。非限定的な例として、液滴送達装置は、例えば真性糖尿病、慢性関節リウマチ、プラーク乾癬、クローン病、ホルモン補充、好中球減少症、吐き気、インフルエンザ等を誘発する兆候の治療または予防のための治療薬を全身的に送達するために使用され得る。
【0036】
[0074] 非限定的な例として、治療用ペプチド、タンパク質、抗体、及び他の生体工学的分子は、インスリン、ワクチン(Prevnor-Pneumonia、Gardasil-HPV)、抗体(アバスチン(Avastin)、ヒュミラ(Humira)、インフリキシマブ(Remicade)、ハーセプチン(Herceptin))、Fc融合タンパク質(エンブレル(Enbrel)、オレンシア(Orencia))、ホルモン(エロンバ(Elonva)-長時間作用型FSH、成長ホルモン)、酵素(プルモザイム(Pulmozyme)-rHu-DNAase-)、他のタンパク質(凝固因子、インターロイキン、アルブミン)、遺伝子治療およびRNAi、細胞治療(プロベンジ-前立腺癌ワクチン)、抗体薬物コンジュゲート-アドセトリス(conjugates-adcetris(HLのためのブレンツキシマブ ベドチン(Brentuximab vedotin))サイトカイン(cytokines)、抗感染剤、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えば、遺伝子ベクター)、又はそれらの任意の組み合わせ、又はフルナーゼ(Flonase)(フルチカゾンプロピオン酸(fluticasone propionate)もしくはアドベア(Advair)(フルチカゾンプロピオン酸およびサルメテロールキシナホ酸)のような固体粒子または懸濁液を含む。
【0037】
[0075] 他の実施形態では、本開示の液滴送達装置は、禁煙または医療または獣医学的処置に必要とされる状態のための高度に制御された投薬量の送達のため、水-ニコチン共沸混合物を含むニコチン溶液を送達するために使用され得る。さらに、流体は、発作および他の状態の治療のために、マリファナに含まれるTHC,CBD、又は他の化学物質を含んでもよい。
【0038】
[0076] 特定の実施形態では、本開示の薬物送達装置は、投薬が医師または薬剤師による装置への指示によってのみ可能とされる鎮痛薬の高度に制御された投与のための麻薬などの定期的および制御された物質を送達するために使用されてもよく、患者のスマートフォン上のGPS位置によって確認される患者の居住地などの特定の場所でのみ投薬が可能にされ得るものとしてもよい。制御された薬剤の高度に制御された投薬のこのメカニズムは、麻薬または他の習慣性薬物の乱用または過量を防止することができる。
【0039】
[0077] 薬物および他の医薬品の送達のための肺経路の特定の利点は、低分子から非常に大きなタンパク質まで及ぶ広範な物質の送達に適した非侵襲性で針を使用しない送達システムを含み、消化管と比較して低いレベルの代謝酵素であり、吸収される分子が初回通過効果を生じないことを含む。(A. Tronde et al., J Pharm Sci, 92 (2003) 1216-1233; A.L. Adjei et al.., Inhalation Delivery of Therapeutic Peptides and Proteins, M. Dekker, New York, 1997)。さらに、経口的にまたは静脈内に投与される薬物は、身体を通して希釈されるが、肺に薬物が直接投与されることにより、標的部位(肺)に、同じ静脈内投与量よりも約100倍高い濃度が提供され得る。これは、例えば、薬剤耐性菌、薬剤耐性結核の治療に特に重要であり、ICUにおいて増加する問題である薬剤耐性細菌感染に対処するために重要である。
【0040】
[0078] 薬剤を肺に直接投与することの別の利点は、血流中の薬物の高い毒性レベルに関連する副作用を最小限に抑えることができることである。例えば、トブラマイシンの静脈内投与は、腎臓に対して毒性となる非常に高い血中濃度を導くためめ、その使用は制限されているが、吸入による投与は、腎臓機能に対する重度の副作用なしに肺機能を有意に改善する。(Ramse et al., Intermittent administration of inhaled tobramycin in patients with cystic fibrosis. N Engl J Med 1999;340:23-30; MacLusky et al., Long-term effects of inhaled tobramycin in patients with cystic fibrosis colonized with Pseudomonas aeruginosa. Pediatr Pulmonol 1989;7:42-48; Geller et al., Pharmacokinetics and bioavailablility of aerosolized tobramycin in cystic fibrosis. Chest 2002;122:219-226.)
【0041】
[0079] 上述のように、肺気道の深部に液滴を効果的に送達するには、直径5ミクロン未満の液滴、具体的には5ミクロン未満の質量平均空気力学的直径(MMAD)を有する液滴が求められる。質量平均空気力学的直径は、質量による粒子の50%がより大きく、50%がより小さい直径として定義される。本開示の特定の態様では、肺胞気道に堆積させるために、このサイズ範囲の液滴粒子は、装置からの放出を可能にするのに十分高いが、舌(軟口蓋)または咽喉への堆積を克服するのに十分低い運動量を有していなければならない。
【0042】
[0080] 本開示の他の態様では、本開示の液滴送達装置を使用してユーザの肺系への送達のための液滴の放出流を生成するための方法が提供される。特定の実施形態では、液滴の放出流は、制御可能で規定された液滴サイズ範囲において生成される。一例として、液滴サイズ範囲は、噴出された液滴の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%などは、約5μm未満の呼吸可能範囲にある。
【0043】
[0081] 他の実施形態では、液滴の放出流は、気道の複数の領域(口、舌、喉、上気道、下気道、肺の深部など)を標的とするため、複数の直径を有する液滴が生成されるように、1つ以上の直径を有してもよい。一例として、液滴直径として、約1μm以上約200μm以下、約2μm以上約100μm以下、約2μm以上約60μm以下、約2μm以上約40μm以下、約2μm以上約20μm以下、約1μm以上、約5μm以下、約1μm以上約4.7μm以下、約1μm以上約4μm以下、約10μm以上約40μm以下、約10μm以上約20μm以下、約5μm以上約10μm以下、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、液滴の少なくとも一部分は呼吸可能な範囲の直径を有するが、他の粒子は、呼吸不能な位置を標的とするために他のサイズの直径を有し得る(例えば、5μmより大きい)。この点に関して例示的に放出された液滴流は、呼吸可能範囲(約5μm未満)に50%から70%の液滴を有し、呼吸可能範囲外(約5μm以上約10μm以下、約5μm以上約20μm以下など)に30%から50%の液滴を有してもよい。
【0044】
[0082] 別の実施形態では、本開示の液滴送達装置を使用して、安全で、適切で、反復可能な薬剤の用量を肺系に送達するための方法が提供される。本方法は、肺の深部および肺胞気道を含む、対象者の肺系の所望位置に液滴の放出流を送達する。
【0045】
[0083] 本開示の特定の態様では、対象者の肺系へ液滴の放出流を送達するための液滴送達装置が提供される。液滴供給装置は、概して、ハウジングと、ハウジング内に配置される又はハウジングと流体連通している貯蔵部と、貯蔵部と流体連通する噴出器機構と、ハウジング内に配置された少なくとも1つの差圧センサとを含む。差圧センサは、ハウジング内の所定の圧力変化を検知すると噴出器機構を作動させるように構成され、噴出器機構は、液滴の放出流の制御可能なプルームを生成するように構成される。液滴の放出流には、噴出器機構を使用して液滴を形成することができる範囲の粘度を有する溶液、懸濁液、または乳剤が含まれるが、これらに限定されない。噴出器機構は、その厚さを通して形成された複数の開口を有するアパーチャプレートに直接的または間接的に結合された圧電アクチュエータを含んでもよい。圧電アクチュエータは、アパーチャプレートを周波数で直接的または間接的に振動させて、それにより液滴の放出流を生成するように動作可能である。
【0046】
[0084] 特定の実施形態では、液滴送達装置は、処方薬または店頭薬に適するように、周期的な基準、例えば毎日、毎週、毎月、又は必要に応じてなどのいずれかで交換可能または使い捨て可能な結合貯蔵部/噴出器機構モジュールを含んでもよい。貯蔵部は、手動またはマイクロポンプによって駆動される中空注入シリンジのような適切な注入手段を使用することによって、患者に投与するための薬局で予め充填して貯蔵されてもよいし、又は薬局もしくは他の場所で充填されてもよい。シリンジは、剛性容器または他の折りたたみ可能なまたは折りたたみできない容器の中へ、又はそこから流体を圧送することによって、貯蔵部を満たしてもよい。特定の態様では、こうした使い捨て/交換可能な結合貯蔵部/噴出器機構モジュールは、その使用時間が短いため、アパーチャプレート上の表面堆積物または表面微生物汚染の蓄積を最小にして防止することができる。
【0047】
[0085] また、本開示は、使用される場所の高度に影響されない液滴送達装置を提供する。特定の実施態様では、液滴送達装置は、例えば、4psiより大きい圧力差が存在じ得る飛行機において移動する間など、ユーザが海面から海中および高地に移動するときに生じ得る圧力差に影響されないように構成される。本明細書でさらに詳細に説明されるように、本開示の特定の実施形態では、液滴送達装置は、水分または流体が通過するのを阻止しながら、フィルタを横切って貯留部内外への空気の自由な交換を提供する超疎水性フィルタを含み、これにより、アパーチャプレート表面上の流体漏れまたは堆積が低減または防止される。
【0048】
[0086] 以下、図面を参照する。図面では、同様の構成要素には同様の参照番号が付されている。
【0049】
[0087]
図1Aを参照すると、本開示の一態様における、患者によって使用されている液滴送達装置100が示されている。液滴送達装置100は、装置の自動電子呼吸作動を提供するために1つ以上の差圧センサ(図示せず)を含んでもよい。そのような圧力センサは、ユーザの吸入サイクルの間に所望のポイントを自動的に検出して、噴出器機構104を起動させて液滴の放出流を生成する。例えば、ユーザが吸入を開始すると、符号1で装置の背面を通って空気が引き込まれ、差圧センサが動作することにより噴出器機構104が起動し、符号2で液滴の放出流が生成されて液滴の流れがユーザの吸入空気流に取り込まれ、それにより、符号3で装置に沿って、及びユーザの気道へと移動する。本明細書でさらに詳細に説明するように、大きな液滴は、慣性フィルタリングによって取り込まれた空気流から除去され、符号4で装置の底面に落下する。非限定的な例として、圧力センサは、ユーザが装置内で生成した空気流が約10SLMまたは同様の圧力であるときに2秒の噴出を引き起こすようにプログラムされてもよい。しかし、標的ユーザの標準生理学的範囲内の任意の適切な差圧を使用することができる。吸気サイクルの間のそのようなトリガポイントは、ユーザの吸入サイクルの間に最適なポイントを提供して、液滴の放出流の生成および薬剤の送達を起動および作動させることができる。電子呼吸作動はユーザと装置との協調を必要としないので、本開示の液滴送達装置および方法は、吸入薬物の最適送達に対する保証をさらに提供する。
【0050】
[0088] 非限定的な例として、
図1B~
図1Eは、流れ制限部を横切る圧力差を検出することによって空気流を感知する、本開示の実施形態による吸入検出システムを示す。
図2A、
図2C、
図3Aを参照して以下でさらに詳細に説明するように、圧力センサは、本開示の液滴送達装置内に、例えばエアロゾル送達マウスピースチューブのような装置内部の制限部を伴って配置され得る。例えば、
図1Bは、制限が装置チューブの内部にある例であり、
図1Cでは、制限部は空気流入層流要素である。圧力は、装置チューブの内側の圧力とチューブの外側の圧力との差として感知される。
図1Dは、約1秒間の吸入息に対する例示的な圧力センサ応答のスクリーンキャプチャである。
図1Eは、装置基板(1)上の例示的な差圧センサの設計およびアセンブリを示す。センサは、プリント回路基板(PCB)の穴を通る空気圧接続を有してもよく、以下のスキーム(2)に示すようにメインPCB上に取り付けてもよいし、又はスキーム(3)に示すようにドータボード上に取り付けてもよい。
【0051】
[0089] 起動すると、本開示の液滴送達装置は、所望の投薬量を送達するのに十分な任意の適切な時間、液滴の放出流を送達するように作動され得る。例えば、圧電アクチュエータは、アパーチャプレートを振動させるように作動され、それにより短時間の噴出、例えば10分の1秒、又は例えば5秒間といった数秒において液滴の放出流を生成してもよい。特定の実施形態では、液滴送達装置は、例えば約5秒まで、約4秒まで、約3秒まで、約2秒まで、約1秒まで、1秒から2秒の間、又は0.5秒から2秒の間、動作して液滴の放出流を生成してもよい。
【0052】
[0090] 特定の実施形態では、例えば±5SLM、10SLM、20SLMなど、標準吸入サイクル中に得られた圧力変化を測定するのに適切な感度を有する任意の適切な差圧センサが使用されてもよい。例えば、センシリオン社(Sensirion Inc.)SDP31又はSDP32(米国特許第7,490,511号)は、これらの用途に特に適している。
【0053】
[0091] 本開示の特定の実施形態では、圧力センサによって生成された信号は、患者の吸入(吸気)サイクルのピーク時またはその間に、液滴送達装置の噴出器機構の作動および起動のためのトリガを提供し、ユーザの肺気道への液滴の放出流の最適な堆積および薬物の送達を保証する。
【0054】
[0092] さらに、カメラ、スキャナ、又は限定されるものではないが電荷結合素子(CCD)等のその他のセンサを含む画像取込装置が設けられて、放出されたエアロゾルプルームを検出して測定してもよい。これらの検出器、LED、デルタPトランスデューサ、CCD装置のすべては、流体の放出を監視し、検知し、測定し、及び制御して、患者の服薬遵守、治療時間、投薬量、および患者使用履歴などを報告するために使用される装置のマイクロプロセッサ又は制御器へ、Bluetooth (登録商標)等を介して制御信号を送信する。
【0055】
[0093] 本開示の特定の態様では、噴出器機構、貯蔵部、およびハウジング/マウスピースは、5μm未満の液滴直径を有する流体のプルームまたはエアロゾルを生成するように機能する。上述したように、特定の実施形態では、貯蔵部および噴出器機構が一体化されて、装置ハウジング内の電子機器によって駆動される圧電アクチュエータと、2、3回または数百回の医薬品投与のために十分な流体を収容できる薬物貯蔵部と、を備える結合貯蔵部/噴出器機構を形成する。
【0056】
[0094] 特定の実施形態では、本明細書に示すように、結合モジュールは、商用航空機などの大気圧変化中の漏れを最小限に抑えるための圧力均等化ポート又はフィルタを有してもよい。また、結合モジュールは、アクチュエータ周波数および持続時間、薬物識別、並びに患者の投薬間隔に関連する情報などのキーパラメータを含む、ハウジング電子装置によって読み取られた情報を伝えることができる構成要素を含んでもよい。いくつかの情報は工場でモジュールに加えられ、一部は薬局で加えられてもよい。特定の実施形態では、工場によって付された情報は、薬局による修正から保護されてもよい。モジュール情報は、モジュール形状(例えば、ハウジング上でセンサによって読み取られるフランジの光透過孔)にコード化された印刷バーコードまたは物理的バーコードとして伝えられてもよい。また、情報は、圧電式電力接続を介してハウジング内の電子機器と通信するモジュール内のプログラム可能または非プログラム可能な又はプログラム不可のマイクロチップによって伝えられてもよい。例えば、装置が起動されるたびに、カートリッジは、圧電式電力接続を介して最小電圧、例えば5ボルトが送信され、データチップは、低レベルパルス電流を同じ電力接続を介して電子機器に送り返す。
【0057】
[0095] 一例として、工場または薬局でのモジュールプログラミングは、装置によって読み取られ、関連するユーザスマートフォンにBluetooth (登録商標)を介して伝達され、ユーザにとって正しいと確認される薬物コードを含んでもよい。ユーザが不正確な、ジェネリック、損傷したもの等のモジュールを装置に挿入した場合、スマートフォンは、装置の動作をロックアウトするように促し、受動的吸入器装置では不可能なユーザの安全性およびセキュリティの尺度を提供する。他の実施形態では、装置の電子機器は、薬物の劣化またはアパーチャプレートにおける汚染の徐々の蓄積に関連する問題を回避するために、制限期間(おそらく1日または数週間または数ヶ月)で使用を制限してもよい。
【0058】
[0096] 装置エアロゾル送達チューブに配置された気流センサは、マウスピースの内外を流れる吸気および呼気の流量を測定する。このセンサは、薬物送達を妨げない、又は残留物の貯まり場、細菌の増殖、若しくは汚染を促進する場所とならないように配置される。流量制限部(例えば、層流要素)の下流にある差圧(またはゲージ圧)センサは、マウスピースの内部と外部空気圧との圧力差に基づいて空気流を測定する。吸入(吸気流)の間、マウスピースの圧力は周囲圧力よりも低くなり、呼気(吐気流)の間、マウスピースの圧力は周囲の圧力よりも大きくなる。吸気サイクル中の圧力差の大きさは、エアロゾル送達チューブの空気入口端部における気流および気道抵抗の大きさの尺度である。
【0059】
[0097] 一実施形態では、
図2Aを参照すると、例示的な液滴送達装置100が示されており、液滴送達装置100は、電力/起動ボタン132と、電子回路基板1102と、圧電アクチュエータ106およびアパーチャプレート108を含む噴出器機構104と、その表面に付加的なフィルタ110aを含んでもよい貯蔵部110と、圧電アクチュエータ106へ電気的に接続される電源112(再充電可能であってもよい)と、を備えている。特定の実施形態では、貯蔵部110は、噴出器機構104に結合され、又は噴出器機構104と一体化されて、交換可能、使い捨て可能、または再使用可能であり得る結合薬物貯蔵部/噴出器機構モジュールを形成する(
図4A~
図4C参照)。液滴送達装置100は、例えば圧力センサ122が装置内の所定の圧力変化を検知したときに作動し、圧電アクチュエータ106を励起してアパーチャプレート108を振動させて、アパーチャプレート108を介して所定の方向に射出される液滴の放射流を生じさせる電源112を備えてもよい。液滴送達装置100は、本明細書でさらに説明されるように、少なくとも部分的に流体をアパーチャプレート108に方向付けして集中させる表面張力プレート114をさらに含んでもよい。
【0060】
[0098] 構成要素は、使い捨てまたは再使用可能なハウジング116内に包まれてもよい。ハウジング116は手に持てる大きさであってもよく、例えば、対象者のスマートフォン、タブレット、又はスマートデバイス(図示せず)と通信するために、Bluetooth (登録商標)通信モジュール118または同様の無線通信モジュールを介して他のデバイスと通信するように適合されてもよい。一実施形態では、層流要素120をハウジング116の空気取り入れ側に配置して、アパーチャプレート108の出口側を横切る層流を促進し、液滴の放出流が使用中に装置を通じて流れることを保証するのに十分な空気流を提供する。さらに、本実施形態の態様は、本明細書でさらに詳細に説明されるように、異なるサイズの開口および様々な構成を有する層流要素の配置を可能にして、内部圧力抵抗を選択的に増加または減少させることによって、液滴送達装置の内部圧力抵抗をカスタマイズすることもできる。
【0061】
[0099] 液滴送達デバイス100は、装置の起動、スプレー検証、患者コンプライアンス、若しくは診断メカニズムを容易にするため、又はデータ記憶、ビッグデータ分析、若しくは対象者のケアおよび治療のために使用される相互作用および相互接続のためのより大きなネットワークの一部として、様々なセンサおよび検出器122,124,126,128を更に含んでもよい。さらに、ハウジング116は、起動/準備完了、異常などの様々な状態通知を示すために、その表面にLEDアセンブリ130を含んでもよい。
【0062】
[0100]
図2Bをより具体的に参照すると、本開示の一実施形態による噴出器機構104の拡大図が示されている。噴出器機構104は、概して、圧電アクチュエータ106と、その厚さを通して形成された複数の開口108aを有するアパーチャプレート108と、を備えてもよい。また、表面張力プレート114は、本明細書でより詳細に説明されるように、アパーチャプレートの流体対向表面に配置されてもよい。圧電アクチュエータ106は、例えばその共振周波数でアパーチャプレート108を振動させるように動作可能であり、それによって複数の開口108aを通る液滴の放出流を生成する。特定の実施形態では、開口108aおよび噴出器機構104は、5μm以下のMMADを有する液滴の放出流を生成するように構成されてもよい。
【0063】
[0101]
図2Aの液滴供給装置100のハウジング116における、対象者の気道に吸い込まれるときに液滴の放出流が出る空気流出口は、限定されるものではないが、円形、楕円形、矩形、六角形、又は他の形状の断面形状を有し、再び限定されるものではないが、チューブの長さ形状は、直線状であってもよく、湾曲していてもよく、ベンチュリ型の形状であってもよい。
【0064】
[0102] 別の実施形態(図示せず)では、層流要素120の空気入口側に、又は気流内のハウジング116の内部に、ミニファン又は遠心送風機が配置されてもよい。ミニファンは、概して、空気流の出力に追加の空気流および圧力を提供し得る。肺の出力が低い患者の場合、この追加の気流は、液滴の放出流が装置を通って対象者の気道に確実に押し込まれるようにすることができる。特定の実施形態では、この追加の気流源は、放出された液滴を放出面からきれいに掃除することを保証し、液滴プルームを気流に広げて液滴間の分離を大きくする機構を提供する。ミニファンによって提供される空気流は、キャリアガスとしても作用し、適切な薬の希釈および送達を保証する。
【0065】
[0103]
図2Cを参照すると、本開示の液滴送達装置の別の実装形態が分解図で示されている。繰り返しとなるが、同様の構成要素は同様の参照番号で示される。液滴送達装置150は、アロゾル送達マウスピースチューブ154を覆って貯蔵部110との接点を画定するトップカバー152と、ベースハンドル156と、起動ボタン132と、ハンドル158のためのベースカバーと、共に図示されている。
【0066】
[0104] LEDアセンブリによって駆動される一連の着色光は、噴出器装置の前方領域に配置される。この実施形態では、例えば4つのLED130Aと、LEDアセンブリ130が搭載されてメイン電子機器ボード102への電気的接続を提供する電子ボード130Bとを含むLEDアセンブリ130が設けられている。LEDアセンブリ130は、ユーザに、電源オン、オフなどの機能に関する即時フィードバックを提供してもよいし、呼吸活性化が生じたときに(本明細書でさらに説明するように)信号を送信して、有効な投薬量または効果のない投薬量が配信される時間についてのフィードバックをユーザに提供してもよいし、患者のコンプライアンスを最大限にするための他のユーザのフィードバックを提供してもよい。
【0067】
[0105] 層流要素120は、マウスピースチューブ154の患者使用端に対向して配置され、差圧センサ122、圧力センサ電子回路基板160、及び圧力センサOリング162が近くに配置される。
【0068】
[0106]
図2Cに詳細に示される残りの要素は、電源112用のマウントアセンブリ164(例えば、AAAバッテリ3つ)、上部及び下部バッテリ接点112A、112B、並びにオーディオチップ及びスピーカ166A、166Bを含む装置ハンドル156に配置される。
【0069】
[0107] 再び、
図2Cを参照すると、液滴送達装置150をスマートフォンまたは他の同様のスマートデバイス(図示せず)にリンクするために、Bluetooth (登録商標)通信モジュール118または同様の無線通信モジュールが設けられている。Bluetooth (登録商標)接続は、装置の使用に関する患者の教練を提供して容易にすることができる様々なソフトウェアまたはアプリケーションの実装を容易にする。効果的な吸入薬治療への大きな障害は、規定のエアロゾル療法への患者の抵抗、又は吸入器装置の使用における誤りであった。スマートフォン画面に患者の吸気サイクル(流量対時間)および総体積のプロットをリアルタイムで表示することにより、患者は、事前に決められて医師のオフィスでの教練過程においてスマートフォンに記録した総吸気量の目標に達するように挑戦するであろう。ブルートゥース (登録商標)接続は、患者のケアに使用される可能性のあるコンプライアンス情報や診断データの保存と達成手段(スマートフォンやクラウドなどの大規模なデータ貯蔵ネットワーク上)を提供することで、規定の薬物療法への患者の能動的な参加を容易にして服薬遵守を促進する。
【0070】
[0108] エアロゾル送達マウスピースチューブは、取り外し可能、交換可能、及び滅菌可能であってもよい。この特徴は、置換、消毒、及び洗浄の容易性を提供することによって、マウスピースチューブ内のエアロゾル化薬剤の蓄積を最小限にする手段および方法を提供することによって、薬物送達の衛生を改善する。一実施形態では、マウスピースチューブは、ポリカーボネート、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどの滅菌可能で透明なポリマー組成物を使用して形成されるとよいが、こうした例に限定されない。
図2Dを参照すると、エアロゾルスプレーが噴出器機構(図示せず)から通過する円形のポート168と、圧力センサ(図示せず)を収容するスロット170の場所とを含む例示的なエアロゾル送達マウスピースチューブ154の上面図が示されている。エアロゾル送達マウスピースチューブの材料選択は、概して、効果的な洗浄を可能にし、対象の流体小滴を妨害または捕捉しない静電特性を有するとよい。より大きな液滴およびより高い分配速度を有する多くの噴出器装置とは異なり、本開示のマウスピースは、患者の口および咽喉の背部に影響を与える大きな液滴の速度を低下させるために、長くまたは特別な形状に成形されなくてもよい。
【0071】
[0109] 他の実施形態では、液滴送達装置の内部圧力抵抗は、空気口のグリッドまたは開口の様々な構成を含むマウスピースチューブの設計を変更することによって個々のユーザまたはユーザグループにカスタマイズされ、使用者が吸入するときに装置を通る空気流の抵抗が増加し、又は低下する。例えば、
図2Eを参照すると、マウスピースチューブ開口の例示的なアパーチャグリッド172が示されている。しかしながら、異なる空気進入口の大きさ及び数を使用して、異なる抵抗値を達成し、それにより異なる内部装置圧力値を達成してもよい。この特徴は、液滴送達装置の気道抵抗を個々の患者の健康状態または状態に容易かつ迅速に適応させ、カスタマイズするための機構を提供できる。
【0072】
[0110]
図3A~
図3Cを参照すると、本開示の液滴送達装置の別の実装形態が示されている。繰り返しとなるが、同様の構成要素は同様の参照番号で示されている。図示の実施形態では、液滴噴出器装置200は、垂直に向けられた噴出器機構104を含んでもよい。図示のように、液滴噴出器装置200は、電子回路基板102と、圧電アクチュエータ106及びアパーチャプレート108(
図3B)を含む噴出器機構194と、表面張力プレート114(
図3C)、交換可能な、使い捨て可能な、又は再使用可能な結合貯蔵部/噴出器機構モジュールを形成するために噴出器機構104に選択的に結合され得る貯蔵部110と、圧電アクチュエータに結合された電源112と、起動ボタン132と、を備える。電源112は、起動されると、圧電アクチュエータ106に電力を供給してアパーチャプレート108を振動させ、噴出された液滴の流れをアパーチャプレート108を通して所定の方向に射出させる。構成要素は、使い捨てまたは再使用可能なハウジング116内に包まれてもよい。ハウジング116は、手に持てる大きさであってもよく、他の装置との通信に適合されていてもよい。例えば、Bluetooth (登録商標)モジュール118は、患者のスマートフォン、タブレット、またはスマートデバイスとの通信に適合されていてもよい。装置200は、装置の起動、スプレー検証、患者の服薬遵守、診断手段、又はデータ記憶のための大規模ネットワークの一部のため、及び対象者のケアおよび治療に使用される相互作用および相互接続デバイスのための1つまたは複数のセンサまたは検出器手段122,124,126を含んでもよい。この装置は、例えば、使い捨て可能な結合貯蔵部/噴出器機構モジュール、使い捨て可能なマウスピース、及び使い捨てまたは再使用可能な電子機器を備えた、単一、2つ、又は3つの部材であってもよい。
【0073】
[0111] 任意の適切な材料を使用して、液滴送達デバイスのハウジングを形成することができる。特定の実施形態では、材料は、装置の構成要素または放出される流体(例えば、薬物または薬剤成分)と相互作用しないように選択されるとよい。例えば、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、芳香族ポリエステル(PET、PETG)などのガンマ線適合性ポリマー材料を含む、医薬用途での使用に適したポリマー材料を使用することができる。
【0074】
[0112] 本開示の特定の態様では、例えば空気流路に沿ったハウジングの内面など、ハウジングの1つ以上の部分に静電コーティングを施し、静電気の蓄積のために使用中に噴出される液滴が堆積することを減らすようにしてもよい。あるいは、ハウジングの1つ以上の部分は、電荷散逸性ポリマーで形成されてもよい。例えば、導電性フィラ―は市販されており、導電性フィラ―が、PEEK、ポリカーボネート、ポリオレフィン(ポリプロピレンまたはポリエチレン)、またはポリスチレン若しくはアクリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体のようなスチレン等の医療用途に使用される一般的なポリマーに配合されてもよい。
【0075】
[0113] 上述のように、本開示の特定の構成では、貯蔵部および噴出器機構は、取り外し可能および/または使い捨て可能な結合貯蔵部/噴出器機構モジュールに一体化されてもよい。特定の実施形態では、結合貯蔵部/噴出器機構モジュールは、表面張力プレートが貯留部内の流体とアパーチャプレートの流体接触面との間の流体接触を容易にするように、垂直に配向されてもよい。他の構成では、結合貯蔵部/噴出器機構モジュールは、装置内で水平に配向され、貯蔵部内の流体がアパーチャプレートの流体接触面と常に接触するように配置される。
【0076】
[0114] 一例として、
図4A~4Cを参照すると、圧電アクチュエータ106と、アパーチャプレート108と、表面張力プレート114と、モジュール400の噴出器装置(図示せず)への挿入を容易にして整列させるガイド402と、を含む結合貯蔵部/噴出器機構モジュール400が示されている。特定の実施形態では、フィルタ404は、日東電工のTemish、高性能通気性多孔質膜によって得られるような、ポリマー、金属、または他の複合材料構造が、2つの超疎水性フィルタ404Aの間に配置された微小サイズのアパーチャ404Bを含むサンドイッチ構造を備える。
【0077】
[0115] 特定の実施形態では、モジュール400は、流体をアンプルに分配するために使用される充填穴をシールするシール404Cをさらに含んでもよい。他の構成要素は、アンプルの上部をシールするポリマーキャップ406と、表面張力プレート114を含むハウジングカップ408と、アパーチャプレート108を支持するOリング構造410と、圧電アクチュエータ106とを含み、コネクタピン412を介して電子機器に電気的に接続される。
【0078】
[0116] モジュール400には、圧電アクチュエータ106への電気的接触および電気的供給を提供するとともに、例えば単回投与または複数回投与計画などの投与情報、投与頻度、及び投与時間のような薬物の種類、初期薬物量、濃度などの情報を提供する付加的なバーコード(図示せず)が設けられてもよい。更なる情報として、アパーチャプレートのタイプ、標的小滴サイズ分布、及び排気道または身体の標的部位の作用を、概して識別し得るバーコードが含まれてもよい。あるいは、この情報は、モジュールに埋め込まれた電子チップに保持されてもよく、このチップは、無線接続を介して、または圧電式電力接続によって搬送される信号を介して、または1つまたは複数の更なる物理的接触を介して読み出されてもよい。バーコード又はチップに含まれる他の情報は、重要な薬物内容情報またはカートリッジの識別を提供してもよく、これにより、例えば、装置の不適切な使用、又は期限切れまたは不適切な投薬の誤った挿入を防止することができる。
【0079】
[0117] 特定の実施形態では、本開示の液滴送達装置は、アパーチャプレートを通る貯蔵部の流体の蒸発を抑制する閉鎖バリアを提供することができ、アパーチャプレートの汚染からの保護障壁を提供することができる噴出器閉鎖メカニズムを含んでもよい。当業者には理解されるように、貯蔵部と同様に、噴出器閉鎖機構は、貯蔵部/噴出器機構モジュールの保護エンクロージャを提供し、それによって蒸発損失、汚染、および/または異物の内部への侵入を最小にすることができる。
【0080】
[0118]
図5A、
図5Bを参照すると、例示的な噴出器閉鎖機構502が噴出器スプレー出口ポート504に示されている(
図5Aは開いた構成の噴出器閉鎖機構502を示し、
図5Bは閉じた構成の噴出器閉鎖機構502を示す)。噴出器閉鎖機構は、手動で開閉されてもよいし、電子的に作動してもよい。特定の実施形態では、噴出器閉鎖機構は、噴出器閉鎖機構が開いていないときに噴出器機構の動作を防止する1つ以上のセンサを含んでもよい。他の実施形態では、噴出器閉鎖機構は、液滴送達装置に電力が供給されたときに自動的に電力供給されてもよく、及び/又は噴出器閉鎖機構は、例えば15秒、30秒、1分、5分、10分などの投与の作動後、所定の時間間隔で自動的に閉じてもよい。
【0081】
[0119]
図5C~
図5Eを参照すると、例示的な噴出器閉鎖機構のより詳細な図が提供される。ハウジング上部カバー152を取り外することによって、閉鎖ガイド508、摺動シールプレート510、及びモータ機構512を含む噴出器閉鎖作動機構506が露出する。モータ機構512は、作動することによって摺動シールプレート510を開閉する。任意の適切な小型モータ機構、例えばSI サイエンティフィック・インスツルメンツ社(www.si-gmbh.de)からの超音波swiggleモータのような圧電駆動および作動されるネジ及びスクリューモータが使用されてもよい。この機構は、完全に密閉された貯蔵部/噴出器機構モジュールを維持し、それによってアパーチャプレートを通る蒸発損失またはアパーチャプレートの汚染を最小にすることを保証し得る。また、
図5F、
図5Gは、噴出器閉鎖機構のより詳細な図を提供する。摺動シールプレート510および閉鎖ガイド508が分解図で示されている。
【0082】
[0120] 本明細書に記載されるように、本開示の液滴送達装置は、概して、ハウジングの空気入口側に位置する層流要素を含み得る。層流要素は、部分的には、アパーチャプレートの出口側を横切る層流を容易にし、十分な空気流を提供して、液滴の放出流が、使用中に液滴送達装置を通って流れることを保証する。層流要素は、内部圧力抵抗を選択的に増加または減少させるために、異なるサイズの開口および様々な構成を設計することによって、内部装置の耐圧性をカスタマイズすることを可能にする。
【0083】
[0121] 特定の実施形態では、層流要素は、肺気道の深部に放出された液滴の送達を促進する深い吸入に必要なピーク吸入流を達成するための最適な気道抵抗を提供するように設計および構成される。層流要素は、アパーチャプレートを横切る層流を促進するようにも機能し、空気流再現性、安定性に寄与し、送達される用量の最適精度を保証する。
【0084】
[0122] 理論に制限されることを意図するものではないが、本開示の態様に従って、本開示の層流要素における孔のサイズ、数、形状、及び配向は、液滴送達装置内で所望の圧力降下を提供するように構成される。特定の実施形態では、ユーザの呼吸または呼吸の知覚に強く影響を与えるほど大きくない圧力降下を提供することが一般に望まれる。
【0085】
[0123] これに関連して、
図6Aは、孔の直径(0.6mm、1.6mm、及び1.9mm)の関数としての本開示の例示的な層流要素を通る差圧と流量との関係を示す。
図6Bは、孔の数(29個の孔、23個の孔、17個の孔)の関数としての本開示の層流要素を通る流量の関数としての差圧を示す。層流要素は、
図2Cに提供されるものと同様の液滴送達装置に取り付けられる。
【0086】
[0124]
図6Cに示すように、流速が差圧の平方根の関数としてプロットされるとき、孔の大きさの関数としての差圧に対する流速は、線形関係を有することが示されている。穴の数は17穴で一定に保たれている。これらのデータは、層流要素の設計を選択して所望の耐圧を提供する方法を提供すると共に、
図2Cに提供されるものと同様の液滴送達装置で測定されるような流速と差圧との関係のモデルを提供する。
【0087】
【0088】
[0125]
図6Dを参照すると、直径がそれぞれ1.9mmである29個の穴を有する非限定的な例示的な層流要素が示されている。しかし、本開示はこうした例に限定されない。例えば、層流要素は、例えば、直径0.1mmから空気入口チューブの断面直径(例えば、0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm等)に等しい直径までの範囲の孔直径を有することができ、孔の数は、例えば、1から層流要素領域を満たすための孔の数(例えば、30、60、90、100、150等)の範囲であり得る。層流要素は、本明細書で説明するように、液滴送達装置の空気入口側に取り付けられてもよい。
【0089】
[0126] 特定の実施形態では、肺の差異および若年者および老人、小さい人および大きい人、及び様々な肺疾患状態に関連する吸気流速に対応するために、異なるサイズの穴を有する層流要素の使用、または調整可能な開口の使用が要求され得る。例えば、患者によってアパーチャが(おそらく、回転可能なスロットリングを有することによって)調節可能である場合、アパーチャの穴の設定を読み取ってその位置をロックしてアパーチャの穴の大きさ、つまり流量計測の意図しない変更を防止する方法が提供される。圧力検出は流量測定の正確な方法であるが、他の実施形態は、例えば、流量に比例して熱を失う熱ワイヤ若しくはサーミスタタイプの流量測定方法、動翼(タービン流量計技術)、又はバネ負荷プレートを使用することによってもよく、こうした例に限定されない。
【0090】
[0127] 本明細書に記載されるように、本開示の液滴送達装置は、概して、アパーチャプレートに直接的にまたは間接的に結合された圧電アクチュエータを含む噴出器機構を含んでもよく、アパーチャプレートは、その厚さを通して形成される複数の開口を有する。複数の開口は、様々な形状、サイズ、及び向きを有してもよい。
図7A、
図7Bを参照すると、本開示の例示的な噴出器機構が示されている。
図7Aは、本開示の噴出器機構の或る構成の構成要素を示し、圧電アクチュエータ106は、アパーチャプレートに直接結合されている。
図7Bは、圧電アクチュエータ106がアクチュエータプレート108bを介してアパーチャプレート108に間接的に結合される本開示の噴出器機構の別の構成を示す。
図7Bの実施形態では、圧電アクチュエータ106は、アクチュエータプレート108bに直接結合され、それからアパーチャプレート108に直接結合される。起動すると、圧電アクチュエータ106はアクチュエータプレート108bを振動させ、アパーチャプレート108を振動させて液滴の放出流を生成する。
【0091】
[0128] アパーチャプレートは、任意の適切なサイズ、形状、または材料を有することができる。例えば、アパーチャプレートは、円形、環状、楕円形、正方形、長方形、または概ね多角形の形状を有してもよい。さらに、本開示の態様によれば、アパーチャプレートは、概ね平面であってもよく、または凹状または凸状の形状を有してもよい。特定の実施形態では、アパーチャプレートは、概ねドーム型または半球型の形状を有し得る。非限定的な例として、
図8A、
図8Bを参照すると、例示的なアパーチャプレート808が示されており、開口808aは、概ねドーム形の領域内に配置されている。
【0092】
[0129] これに関して、本開示の特定の態様において、概ねドーム形のアパーチャプレートを有することにより改良された噴出器機構の性能が得られることが予想外に見出された。
図10A,
図10Bを参照すると平坦なアパーチャプレート(
図10A)対ドーム形状のアパーチャプレート(
図10B)の共振周波数に対する空気対蒸留水の媒体減衰効果の比較が提供される。これらのプロットは、ドーム形状のアパーチャプレートを使用する噴出器機構が、平坦なアパーチャプレートを使用する噴出器機構と比較して、粘度および質量負荷および媒体減衰効果に対してより安定し、より敏感でないことを示唆している。ドーム形状のアパーチャプレートを使用する噴出器機構は、安定した最適な共振周波数を維持することによって、改善された性能を提供する。これに関して、概ねドーム状の形状を有するアパーチャプレートを含む本開示の液滴送達装置は、対象者の肺系へ医薬品を正しく送達するのに適した、より正確で一貫性のある検証可能な用量を対象者に送達し得る。
【0093】
[0130]
図11を参照すると、本開示の一態様によるドーム型のアパーチャプレートの共振周波数を識別するため、にデジタルホログラフィック顕微鏡法(DHM)が適用されている。共振時の変位振幅、及び振動、円形、ドーム形状のアパーチャプレートの瞬間的な固有モード形状のキャプチャ、ならびに周波数掃引対ドーム形状のアパーチャプレートの50kHzから150kHzまで、及び励振電圧を5Vppとするの変位振幅に対応するグラフが示されている。共振周波数59kHz、105kHz、及び134kHzに関連付けられた固有モードの形状は、ドーム型のアパーチャプレートの吹き出しに示されている。圧電作動円形および平坦なアパーチャプレートに関連する予測および実験的に検証された固有モードとは異なり、ドーム形のアパーチャプレートに関連する固有モードは、励振周波数が増加するにつれて形状または固有モードを変化させないが、休止したアパーチャプレート形態のドーム型形状を保持する。
【0094】
[0131] 本開示の特定の実施形態では、例示的なアパーチャプレートのドーム型形状を画定する設計パラメータは、ドーム高さ、アクティブ領域(複数の開口を含む領域)、及びドームの形状および幾何学形状を含む。
図12A、
図12Bを参照すると、ドーム高さ(h)とドーム直径(d)とは、有効領域の周囲の辺を含む直径を有する円を描いて形成された円弧によって画定される(
図12A)。ドームの高さとアクティブ領域(ドームの基部)のパラメータを定める結果の式を
図12Bに示す。
図12Bは、アパーチャプレートのドーム高さとアクティブ領域の直径との関係を示している。
【0095】
[0132] 以下の表に示すように、1分間に噴出される流体のmlで測定される液滴生成効率に関して、平坦なアパーチャプレート対ドーム型のアパーチャプレートの性能比較は、ドーム型の形状において性能の顕著な改善がもたらされることを示している。
【0096】
【0097】
[0133] これらのデータは、平坦な表面が、28.3mm2のフットプリント(面積)のアクティブ表面積に対して0.5mL/分を放出し、ドーム型の表面が、同様の開口のためのわずか3.1mm2のアクティブ表面積のフットプリントから0.7mL/分を放出することを示す。換言すれば、ドーム型の表面は、平坦な表面と比較して、アクティブ表面積の単位面積当たり12.6倍の質量を放出する。
【0098】
[0134] 本開示のアパーチャプレートは、そのような目的のために当技術分野で知られている任意の適切な材料から形成されてもよい。非限定的な例として、アパーチャプレートは、例えば、Ni、NiCo、Pd、Pt、NiPd、又は他の金属といった純金属、又は合金の組み合わせから構成されてもよいし、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(Kapton)、ポリエーテルイミド(Ultem)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)といった高弾性ポリマー材料から構成されてもよく、物理的および科学的特性を向上させるためにポリマーにブレンドされた特定の範囲の充填剤材料が、アパーチャプレートの設計および製造に使用されてもよい。フィラー材料には、ガラスおよびカーボンナノチューブが含まれ得るが、これらに限定されない。これらの材料は、降伏強度および剛性または弾性率を高めるために使用されてもよい。一実施形態では、アパーチャプレートは、Optnics Precision Co. LTD. model No. Td-15-05B-OPT-P90-MEDから入手され得る。
【0099】
[0135] 特定の実施形態では、マイクロ流体特性を向上させ、表面を親水性または疎水性にし、または表面を抗菌性にするために、アパーチャプレートに(化学的または構造的に)コーティングまたは表面改質を施すことが望ましい場合がある。
【0100】
[0136] 本開示の特定の実施態様では、高弾性ポリマーから形成されたアパーチャプレートは、フィルム形成および製造中にその形態および厚さに蓄積し得る残留応力を低減するように処理され得る。例えば、PEEKフィルムのアニール処理は、最適化された結晶化度を得て、固有応力を緩和するために、Victrexによって提案された標準的な手順である。(www.victrex.com)高弾性ポリマー材料の残留応力を放出するためのシステムおよび方法は、アパーチャプレートの振動における安定性を最適化するとともに作動中のノズルプレートのオ入口および出口オリフィス形状における塑性変形を最小限に抑えるように、こうした材料から形成されるアパーチャプレートの降伏強度の増加を提供し得る。これに関して、高弾性ポリマーのアパーチャプレート内の残留応力を放出するためのシステムおよび方法は、繰返し可能で一貫した用量の薬剤の送達および投与を保証し得る。
【0101】
[0137] さらに、PEEKは、動的負荷におけるその望ましい機械的性能および高温までのその耐性のために、レーザマイクロマシニングおよびエキシマレーザアブレーションが容易であり、アパーチャプレートの製造に適した材料となる。非限定的な例として、PEEKアパーチャプレートへの圧電セラミックの接着結合を改善するために、PEEKアパーチャプレートの表面処理に、ポリマー表面、特にPEEK表面のレーザエキシマ処理を使用することができる。(P. Laurens, et al., Int. J. Adhes. (1998) 18)。さらに、PEEKアパーチャプレートの選択された表面領域上に超疎水性領域を形成することになる平行溝または他の表面構造を形成するために、PEEKのレーザアブレーションおよび微細マシニングを使用することができ、薬液または懸濁液が、アパーチャプレートの選択された領域が濡らすことを抑制し得る。
【0102】
[0138] 非限定的な例として、複数の開口は、約1μmから約200μm、約2μmから約100μm、約2μmから約60μm、約2μmから約40μm、約2μmから約20μm、約2μmから約5μm、約1μmから約2μm、約2μmから約4μm、約10μmから約40μm、約10μmから約20μm、約5μmから約10μm等の平均直径の範囲であってもよい。さらに、特定の実施形態では、アパーチャプレートの様々な開口は、同じまたは異なるサイズまたは直径を有してもよく、例えば、幾つかは、約1μmから約2μmの範囲の平均直径であり、他は、約2μmから約4μm、約5μm、約10μmの直径を有してもよい。例えば、異なるサイズの穴を使用することにより、様々なサイズ範囲内で液滴を生成して、舌、口腔、咽頭、気管、上気道、下気道、深呼吸、及びそれらの組合せを標的とするなど、肺系の異なる領域を標的とし得る。
【0103】
[0139] アパーチャプレートの厚さは、約10μmから約300μm、約10μmから約200μm、約10μmから約100μm、約25μmから約300μm、約25μmから約200μm、約25μmから約100μmなどの範囲であってもよい。さらに、アパーチャプレートの開口の数は、例えば、約5から約5000、約50から約5000、約100から約5000、約250から約4000、約500から約4000などの範囲であってもよい。特定の実施形態では、開口の数は、アパーチャプレートのピッチ(すなわち、開口の中心間距離)を増加または減少させることによって増加または減少させることができる。この点に関して、充填密度の増加、すなわちピッチ距離の減少、及びアパーチャプレートの開口の数の増加は、総液滴放出量の増加につながる。
【0104】
[0140] 特定の実施形態では、アパーチャプレートの開口は、概ね円筒形、テーパ形、円錐形、又は砂時計形を有してもよい。特定の実施形態では、開口は、アパーチャプレートの一方の表面にある大きな開口、アパーチャプレートの反対側の表面にある小さな開口、及びそれらの間の毛細管を有する、概ね溝付きの形状(fluted shape)を有してもよい。開口の大きい及び小さい部分は、必要に応じて、アパーチャプレートの流体入口又は流体出口面に向けられてもよい。
【0105】
[0141]
図9に示す実施形態において、アパーチャプレートは、より大きな開口が流体入口に向けられ、小さい開口が流体出口に向くように配向される。理論によって制限されることを意図するものではないが、アパーチャプレートの開口形状、毛細管長さ、及び流体粘度は、アパーチャプレートの開口を通る流れに対する抵抗を決定し、液滴の効率的な放出を提供するように最適化され得る。
【0106】
[0142]
図9を参照するとアパーチャプレートの開口部は、流体出口側開口部の直径(D
ex)よりも大きい直径(D
en)の流体入口側開口部を有する。流体入口チャンバの壁は、次式で示されるように入口キャビティの断面プロファイルがアパーチャプレートの厚さ(t)から毛細管長さ(C
L)を引いたものに等しい曲率半径(E
c)を形成するように溝をつけられて外形が形成される。
E
c=t-C
L
【0107】
[0143] ここで、流体入口側開口直径(Den)が、入口キャビティの曲率半径の2倍に流体出口側開口直径(Dex)を加えたものに等しい:
Den=2(Ec)+Dex
【0108】
[0144] 特定の実施形態では、流体出口直径に対する流体入口のアスペクト比を毛細管長さと組み合わせて最適化することにより、比較的高い粘度を有する流体の放出液滴を形成することが可能になる。
【0109】
[0145] 当技術分野で知られているように、関心のある特定の材料に適しているように、アパーチャプレートおよびアパーチャプレート内の複数の開口を製造するために、任意の適切な方法を使用することができる。一例として、マイクロマシニング、プレシング、レーザアブレーション、LIGA、熱成形などを使用することができる。特に、ポリマーのレーザアブレーションは、工業的応用のための確立されたプロセスである。エキシマレーザマイクロマシニングは、ポリマーアパーチャプレートの製造に特に適している。しかし、本開示はそれらに限定されず、任意の適切な方法を使用することができる。
【0110】
[0146] 本明細書に記載されるように、本開示の噴出器機構は、圧電アクチュエータを備える。圧電アクチュエータは、例えば、センサー、液滴噴出器、又はマイクロポンプとして使用される電子部品として当該技術分野において周知である。圧電材料を横切って電圧が印加されると、圧電材料の結晶構造が変化し、圧電材料の形状が変化する。交番電界が圧電材料に印加されると、印加された信号の周波数で振動(収縮および膨張)する。圧電材料のこの特性は、機械的負荷を作用させるのに有効なアクチュエータを製造するために利用することができる。圧電アクチュエータに電圧が印加されると、その結果生じる圧電材料の形状およびサイズの変化が負荷を作用させる。
【0111】
[0147] 本明細書で説明されるように、特定の態様では、圧電アクチュエータは、液滴の放出流の形成をもたらす振動を生成するアパーチャプレートの振動を駆動する。圧電アクチュエータの表面の電極に交番電圧が印加されると、アパーチャプレートが振動し、液滴の流れが生成され、流体貯蔵部から離れる方向にアパーチャプレートの開口から吐出される。
【0112】
[0148] 圧電アクチュエータは、任意の適切な圧電材料または材料の組み合わせから形成され得る。非限定的な例として、適切な圧電材料には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO2)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、またはチタン酸バリウム(BaTiO3)などの圧電効果を示すセラミックが挙げられる。さらに、圧電アクチュエータは、アパーチャプレートを振動させるのに適合するように、任意の適切なサイズおよび形状を有することができる。一例として、圧電アクチュエータは、液滴の放出流を通過させることができるように、アパーチャプレートのアクティブ領域(複数の開口を有する領域)を収容する中央開口部を有する、概ね環状またはリング形状を有してもよい。
【0113】
[0149] この点に関して、様々なマイクロ流体用途のために概して円形の基板プレート内で運動を生成するために環状またはリング形状の軸対称圧電アクチュエータを使用することは周知である。ある範囲の作動電圧は、様々な波形、例えば正弦波、方形、又はその他の形態で印加される周期的な電圧信号として使用され、電圧差の方向は、圧電材料の共振周波数に依存する振動の周期、例えば+15Vから-15Vへ、又はピーク間の範囲で5Vから250Vまで、周期的に反転させることができる。本開示の実施形態では、任意の適切な電圧信号および波形を適用して、アパーチャプレートの所望の振動および作動を得ることができる。
【0114】
[0150] 圧電作動装置では、圧電アクチュエータを駆動する信号の周波数および振幅は、圧電アクチュエータの挙動およびその変位に大きな影響を及ぼす。圧電素子が共振状態にあるとき、圧電装置は機械的負荷の最大変位を達成し、その最高動作効率を達成することも周知である。加えて、様々な要因がアパーチャプレートの変位の大きさに影響を与え得る。圧電アクチュエータの駆動信号、選択された共振周波数、及び固有モードなどの要因。他の要因としては、電界に対する誘電体の応答および加えられた応力に対する機械的応答に起因する圧電材料による損失、または逆に、加えられた応力に対する応答としての電荷または電圧の生成が挙げられる。
【0115】
[0151] さらに、圧電アクチュエータの電気的および機械的応答は、製造方法、圧電アクチュエータの構成および寸法、アパーチャプレートおよび液滴送達装置への圧電アクチュエータの機械的取り付けの位置および配置、及び圧電電極の寸法および取付などによって変化する。
【0116】
[0152] 本開示の別の態様では、貯蔵部は、内部の可撓性のある薬剤アンプルを含むように構成されて、気密な薬剤容器を提供してもよい。
図13を参照すると、硬質シェル構造1304内にパッケージされた可撓性薬物アンプル1302、ねじ閉鎖1306A設計(図示されている)含む蓋閉鎖1306、スナップイン設計又は他の代替閉鎖システム、並びに噴出器機構ハウジング104Aを備えている。また、可撓性の薬剤アンプルを有する貯蔵部は、ホイル蓋1308、可撓性アンプルを支持するための剛性構造を提供するリテーナリング1310を含み、ホイル蓋1308がその内容物を解放するために穴をあけられたときに漏れを防ぐOリング1312を収容するためのスロットを提供する。特定の実施形態では、硬質シェル構造1302は、貯蔵部110が液滴送達装置の基部上の所定の位置に置かれると、ホイル蓋1308を穿刺するように回転される、又は配置される1つ以上の穿刺要素(図示せず)を含んでもよい。ホイル蓋1308が穿孔されると、可撓性薬物アンプル1302内の流体は、噴出器機構へ流れ出ることができる。
【0117】
[0153] 本開示の実施形態によれば、可撓性薬物アンプルは、従来の成形充填シール(form-fill-seal)プロセスを用いて形成することができる。その構造に利用可能な医療用フィルム材料は、以下に示され、主として、マイクロ厚(例えば、50.8~101.6μm(2~4mil))の低密度ポリエチレンフィルムを含む。
【0118】
【0119】
[0154] 本開示の別の態様では、液滴送達装置は、アパーチャプレートの流体接触側のアパーチャプレートに近接して配置された表面張力プレートを備えてもよい。上述したように、表面張力プレートは、少なくとも部分的に、流体をアパーチャプレートに方向づけして集中させる。より具体的には、特定の実施形態において、表面張力プレートは、貯蔵部からアパーチャプレート上への流体の均一な分配を提供するように、アパーチャプレートの流体接触側にあってもよい。本開示の特定の態様では、本明細書においてさらに詳細に説明されるように、アパーチャプレートからの表面張力プレートの配置距離は、放出された液滴質量割合によって測定される、噴出器機構の性能の最適化を提供する。
【0120】
[0155] 限定することを意図するものではなく、表面張力プレートは、円形、正方形、六角形、三角形、又は他の断面形状を有する様々なサイズおよび構成の穿孔または穴のグリッドを有し得る。特定の実施形態では、穿孔または孔は、表面張力プレートの縁、中心、又は全体にわたって配置されてもよい。本明細書で説明されるように、所望の静水圧および毛細管作用が達成されるように、任意の適切なサイズおよび構成の穿孔または孔を使用することができる。
図14A、
図14Bは、本開示の様々な表面張力プレート1400の例示的な穿孔または穴1402の構成を示す。薬学的適用のための当技術分野で公知の任意の適切な材料が、液滴送達装置の構成要素または送達される流体と相互作用しないように使用され得る。例えば、ポリエチレンおよびナイロンのようなそうした目的のために当技術分野で知られている薬学的に不活性なポリマーを使用することができる。
【0121】
[0156] 特定の実施形態では、
図2A、
図2Bに示すように、表面張力プレートは、アパーチャプレートに近接して後方に、概してアパーチャプレートの流体接触側に配置され得る。さらに、特定の実施形態では、表面張力プレートは、結合貯蔵部/噴出器機構モジュールの構成要素として含まれてもよい。
【0122】
[0157] 理論によって制限されることを意図するものではないが、表面張力プレートはアパーチャプレートの背後に静水圧を発生させ、その大きさは表面張力プレートとアパーチャプレートとの間の間隔に依存する。例えば、流体によって加えられる静水圧は、表面張力プレートとアパーチャプレートとの間の間隔が減少するにつれて増加する。さらに、アパーチャプレートからの表面張力プレートの距離が減少するにつれて、表面張力プレートとアパーチャプレートとの間の流体の毛細管上昇として現れる静水圧の増加が生じる。このように、アパーチャプレートの流体接触側に表面張力プレートを配置することによって、吸入器装置の向きにかかわらず、アパーチャプレートのアクティブ領域への流体の一定の供給を提供するのを助けることができる。
【0123】
[0158]
図15Bを参照すると、放出された液滴質量速度(ml/分)が、作動の前後に充填貯蔵部を秤量することによって重量測定的に測定されている。
図15Bは、
図15Aに示すように構成された穿孔1402を有する表面張力プレート1400とドーム型形状のアパーチャプレート(図示せず)とを含む噴出器機構を使用して生成された5回、2.2秒の作動(スプレー)の平均を表す。表面張力プレートのポリマー組成が噴出器機構の性能に及ぼす影響も試験した。表面張力プレートは、ナイロン6またはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)コポリマーを用いて形成した。これらの組成は、噴出器機構のスプレー性能に対する臨界表面張力、水接触角、及び表面張力プレートとアパーチャプレートとの間の間隔の影響を調べるために選択された。
【0124】
【0125】
[0159]
図15Bに示すように、ナイロン6からなる表面張力プレートは、ABSからなる表面張力プレートと比較して、ドーム型のアパーチャプレートから1.5mm離れて配置されたときに、液滴質量速度の予想外の増加を示した。
【0126】
[0160] 本開示の液滴送達装置は、限定されるものではないが、構成材料間の表面エネルギ差、ならびに静水圧力と、表面張力プレートとアパーチャプレートとの間の距離との間の逆相関に基づくと、表面張力プレートの距離が約2mmを超えると、アパーチャプレートへの流体の一定の供給を保証するのに十分な毛細管作用または静水圧力が得られない可能性がある。したがって、特定の実施形態では、表面張力プレートは、アパーチャプレートから約2mm以内、アパーチャプレートから約1.9mm以内、アパーチャプレートから約1.8mm以内、アパーチャプレートから約1.7mm以内、アパーチャプレートから約1.6mm以内、アパーチャプレートから約1.5mm以内、アパーチャプレートから約1.4mm以内、アパーチャプレートから約1.3mm以内、アパーチャプレートからの約1.2mm以内、アパーチャプレートから約1.1mm以内、アパーチャプレートから約1mm以内などに配置されるとよい。
【0127】
[0161] 本開示の別の実施形態では、液滴送達装置は、2つ以上、3つ以上、4つ以上の貯蔵部、例えば、複数またはデュアル貯蔵部構成を含み得る。特定の実施形態では、複数またはデュアル貯蔵部は、取り外し可能および/または使い捨てであり得る、複数またはデュアル結合貯蔵部/噴出器モジュール構成であり得る。複数またはデュアル貯蔵部は、多剤併用のために複数の薬物、フレーバー(flavors)、又はそれらの組み合わせを送達してもよい。
【0128】
[0162] 特定の態様では、このシステムおよび方法は、患者に処方された複数の薬剤を送達することができ、同じ装置を通して送達することができる複数またはデュアル貯留部構成を提供する。これは、複数の兆候のために薬を服用する、または同じ兆候のために複数の薬を必要とする対象者にとって特に有用であり得る。本開示に沿って、液滴送達装置は、例えば薬局でプログラムされたバーコード又は埋め込みチップ情報に基づいて、適切な投与スケジュールに従って適切な投薬量で適切な薬物を投与するようにプログラムされ得る。
【0129】
[0163] 非限定的な例として、
図16A、
図16Bは、本開示の実施形態による、例示的な結合デュアル貯蔵部/噴出器機構モジュールと液滴送達装置とを示す。
図16Bに示されるように、液滴送達装置1600は、装置基部1602(使い捨てマウスピース及び使い捨てまたは再使用可能な電子機器ユニットを備える)と、結合デュアル貯蔵部/噴出器機構モジュール1604とを含む。表面張力プレート1606、アパーチャプレート1608、圧電アクチュエータ1610、付加的なバーコードまたは埋め込みチップ(例えば、投薬指示、薬剤識別などを提供するため)、及びモジュール挿入ガイド1614を含む、結合デュアル貯蔵部/噴出器機構1604が、
図16Aにおいて更に詳細に示されている。図示されるように、各デュアル貯蔵部/排出器機構モジュールは、概ね同様の構成要素で構成される。
【0130】
[0164] より具体的には、結合デュアル貯蔵部/噴出器機構モジュールは、設計が類似していて肺気道の類似の領域を対象とする類似の液滴サイズ分布を有する放出液滴を生成することができるアパーチャプレートを有し得る。あるいは、複数の薬剤または多剤併用の使用が、肺気道の異なる領域への薬剤の送達を必要とし得る。これらの状況下では、デュアル貯蔵部/噴出器機構モジュールの各貯蔵部は、排気道の異なる領域を標的とする異なる液滴サイズ分布を送達するために、異なる開口構成(例えば、異なる入口開口サイズおよび/または出口開口サイズ、間隔など)を有するアパーチャプレートを有してもよい。
【0131】
[0165] 他の実施形態では、本開示はまた、アパーチャプレートが複数のサイズ構成を有する開口(例えば異なる入口開口サイズおよび/または出口開口サイズ、間隔など)を含み得る、多剤併用のための複数の薬剤、フレーバー、またはそれらの組み合わせを送達できるシングルまたはデュアル使い捨て/再使用可能薬物貯蔵部/噴出器モジュールを提供する。複数のサイズ構成を有する開口を有するアパーチャプレートは、異なるサイズ分布の液滴を生成し、それによって肺気道の異なる領域を標的にする。多くの大きさの孔の組み合わせが可能であるが、非限定的な例として、例えば約1μm、約1μm、約3μm、約4μm、約10μm、約15μm、約20μm、約30μm、約40μmなどの平均出口直径を有する開口の様々な組み合わせおよび密度が可能である。
【0132】
[0166] 非限定的な例として、4μmの平均出口直径を有する1つの開口と、20μmの平均出口直径を有する8個のより大きい八角形配列の開口とを有してもよい。このようにして、アパーチャプレートは、比較的大きい液滴(直径約20μm)および比較的小さな液滴(直径約4μm)の両方を送達することができ、肺気道の異なる領域を標的とすることができ、例えば喉へのフレーバーと深い肺胞通路への薬とを同時に送達し得る。
【0133】
[0167] 本明細書に記載されるように、本開示の別の態様は、高い慣性力および運動量を利用して(本明細書では「慣性フィルタリング」と呼ぶ)、エアロゾルプルームから大きな(約5μmより大きいMMADを有する)液滴を濾過および排除することによって液滴の放出流の呼吸可能用量を増加させる液滴送達装置構成および方法を提供する。5μmより大きいMMADを有する液滴粒子が生成された場合、それらの大きな慣性質量は、液滴送達装置のマウスピースへの堆積によって空気流から大きい粒子を排除する手段を提供し得る。本開示の薬物送達装置のこの慣性フィルタ効果は、装置によって提供される呼吸可能用量をさらに増加させ、使用中の気道の所望の領域への薬物の改善された標的化送達を提供する。
【0134】
[0168] 理論によって制限されることを意図するものではないが、エアロゾル液滴は、アパーチャプレートから出る液滴プルームによって運ばれるのに十分大きい初期運動量を有する。ガス流がその経路内の物体の周りを流れるにつれて方向を変えると、懸濁粒子はそれらの慣性のため元の方向に移動し続ける傾向がある。しかしながら、5μmより大きいMMADを有する液滴は、概して十分大きい運動量有し、偏向されて空気流に運ばれる代わりに、(それらの慣性質量のために)マウスピースチューブの側壁上に堆積する。
【0135】
[0169] 慣性質量は、力が加えられたときの物体の加速度に対する抵抗の尺度である。それは、物体に力を加え、その力から生じる加速度を計測することによって測定される。慣性質量が小さい物体は、同じ力が作用したときに、慣性質量が大きい物体よりも加速する。
【0136】
[0170] 液滴粒子の慣性質量を測定するために、ニュートン力Fが物体に加えられ、m/s2での加速度が計測される。慣性質量mは加速度あたりの力で、単位はキログラムである。その名前が示すように、慣性力は液滴の運動量による力である。これは一般に運動量方程式で項(ρv)vで表される。つまり、流体が密になるほど、そしてその速度が速くなるほど、運動量(慣性)は大きくなる。
【0137】
【0138】
[0171]
図17A~
図17Bを参照し、
図17Aは、
図2Aおよび
図2Bのものと同様の液滴送達装置によって生成された液滴の流れについて記録されたネガ画像を示す。この画像は、液滴から周囲の空気への運動量移動と直径5μm以下の液滴の大きな比表面積と組み合わせの結果として、放出された液滴から混入空気を発生させるメカニズムの実証的証拠を示している。領域1は層流の領域を表し、領域2は混入空気の発生による乱流の領域である。
図17Bは、エアロゾルプルームから大きな液滴を濾過および排除するための本開示の例示的な液滴送達装置によって提供される慣性フィルタを図示する。液滴が噴出器機構から出て、肺気道への吸入の前に層流要素を通る空気流(3)によって掃引されると、液滴は噴霧方向において90度の変化を生じる。5μmを超える大きな液滴(6)は、慣性フィルタによってマウスピースチューブの側壁に付着する。
【0139】
[0172] 特定の実施形態では、慣性フィルタの効果内で、または慣性フィルタの様々な効果で、大きい液滴が液滴送達装置を通過することが可能になり得る。例えば、(例えば、本明細書に記載のミニファンを使用することにより)流入気流速度を増加させることができるので、大きな液滴粒子を肺気道に運搬することができる。あるいは、マウスピースチューブの出口角度は、マウスピースの側壁上に様々なサイズの液滴を堆積させることを可能にするために、変化(増加または減少)させてもよい。一例として、
図17C、
図17Dを参照して、マウスピースの角度が変更されると、より大きい又はより小さい液滴がマウスピースの側壁に衝突してマウスピースに堆積する、又は衝突することなくマウスピースを通過する。
図17Cは、標準的な90度回転を有する実施形態を示し、
図17Dは、90度を超える回転を示す。
図17Dの実施形態では、わずかに大きい直径を有する液滴がマウスピースの側壁に衝突することなく通過することを可能にする。
【0140】
[0173] 本開示の別の態様では、特定の実施形態では、液滴送達装置は様々な自動化、監視、および診断機能を提供する。一例として、上述のように、装置作動は、自動的な対象者呼吸作動によって提供されてもよい。さらに、特定の実施形態では、装置は、装置が適切な液滴生成を生成し、対象者への適切な投与に提供されることを確実にするために自動スプレー検証を提供してもよい。これに関して、液滴送達装置は、そのような機能を容易にするために1つまたは複数のセンサを備えてもよい。
【0141】
[0174] より具体的には、特定の実施形態では、液滴送達装置は、LEDおよび光検出器機構を介して自動噴霧検証を提供し得る。
図2A~
図2Cを参照して、液滴のプルームを検出し、それによってスプレーの検出および検証に使用することができる赤外線送信機(例えば、IR LED、または280nm未満のUV LED)126、及び赤外線またはUV(280nm未満のカットオフを有するUV)光検出器124が、装置の液滴噴出側に沿って取り付けられている。 IRまたはUV信号は、エアロゾルプルームと相互作用し、液滴の流れが放出されたことを確認するため、ならびに対応する放出された薬剤の投与量の尺度を提供するために使用することができる。例としては、限定するものではないが、スペクトルの太陽ブラインド領域におけるエアロゾルスプレー検証のため、8、10、及び12度の狭い視野角を有する赤外線850nmエミッタ(MTE2087シリーズ)またはGaN光検出器を有する275nmUV LEDが挙げられる。あるいは、用途によっては、280nm以下のLED(例えば、260nmのLED)が、スペーサチューブ128の消毒に使用されてもよい。
【0142】
[0175] 一例として、放出流中の薬剤の濃度は、ベールの法則式(吸光度=eLc)に従って作成することができる。ここで、eは、モル吸光係数(またはモル減光係数)であって特定の化合物または配合物に関連する定数であり、Lは、LEDエミッタと光検出器との間の経路長または距離であり、cは、溶液の濃度である。この実施態様は、薬物濃度の尺度を提供し、検証および患者の服薬遵守を監視するため、ならびに薬物の有効な送達を検出するための手段および方法に使用され得る。
【0143】
[0176]
図18A、
図18Bを参照すると、(
図18A)ディープレッドLED(650nm)および/または(
図18B)近IRLED(850nm)レーザを使用する自動スプレー検証で可能にされる、LED126および光検出器124を含む例示的な液滴送達装置(
図2A~
図2Cを参照)からの結果が示される。液滴の流れの正しい生成は、エアロゾルプルーム測定によって確認することができる。非限定的な例として、エアロゾルプルーム測定は、マウスピースの出口端部と噴出器機構との間の装置マウスピースチューブ内の位置で、噴出器機構の面を横切って、または両方の位置で実施され得る。エアロゾルプルームは、吸収測定のためにマウスピースの直径を横切る光透過を介して、又はエアロゾルプルームからの散乱が光検出器で受光される光を増加させるように光検出器に対して90度で光検出器で散乱することによって光学的に測定され得る。
【0144】
[0177] さらに他の実施形態では、スプレー検証および用量検証は、蛍光を発する化合物を含むように流体/薬物を配合することによって達成することができる(または流体/薬物が自然に蛍光を発してもよい)。液滴の流れが送達されると、蛍光発光が標準的な光学的手段を用いて測定され得る。測定に使用される光源は、外部光の影響を最小限に抑えるために変調されてもよい。取り付けられたとき、光路がアパーチャプレートと平行でかつ直接横切るように、アパーチャプレートによる液滴の発生が直接測定されてもよい。この直接測定は、アパーチャプレートが活動して正しく作動していることの直接的な確認を可能にし得る。液滴出口とアパーチャプレートとの間に取り付けられたとき、エアロゾルプルームは、液滴送達装置を通過するときに監視され得る。光学手段は、比較的狭いビームおよび20度未満の半角を有する任意の従来のLEDであってもよい。あるいは、レーザーダイオードを使用して、個々の液滴を反射することになる非常に狭い平行ビームを生成してもよい。近紫外から近赤外までの様々な波長が、透過モードでエアロゾルプルーム吸収を好適に測定するために使用された。280nm未満の非常に短い波長のLEDを使用すると、275nmより長い波長を減衰させるフィルタを検出器上に配置することによって太陽光または他の従来の光源からの干渉を回避することができる。同様に、蛍光物質が流体/薬物に添加される場合、刺激光または外部光からの干渉を回避するために光学バンドパスフィルタが検出器の前に配置されてもよい。周囲光の制限はまた、装置と周囲空気との間の空気制限開口部の一部として羽根またはシェードを利用することによっても達成され得る。
【0145】
[0178] 本開示の別の態様では、液滴送達装置は、呼吸補助気流への治療用薬剤のインライン投与を提供するために、人工呼吸器または携帯型持続気道陽圧(CPAP)機などの呼吸補助装置と関連してまたは一体化して使用され得る。
【0146】
[0179] 例えば、気管内(ET)チューブを有する人工呼吸器は、意識不明の患者の肺へ分泌物が侵入するのを阻止するため、及び/又は患者の呼吸のために使用される。ETチューブは、膨らませることができるバルーンで喉頭のすぐ下の気管の内側を封止する。しかしながら、人工呼吸器の使用に起因する一般的な望ましくない副作用には、人工呼吸器を48時間以上使用している患者の約1/3に発生する人工呼吸器補助肺炎(VAP)がある。結果として、VAPは高い罹患率(20%から30%)および健康管理システム費用の増加と関連する。(Fernando, et al., Nebulized antibiotics for ventilation-associated pneumonia: a systematic review and meta-analysis. Critical Care 19:150 2015)
【0147】
[0180] 肺経路を介したトブラマイシン投与は、一般に、VAPを治療するための静脈内投与よりも優れていると考えられており、噴霧器が、典型的には、連続的な液滴の流れを人工呼吸器気流中に生成することによって抗生物質を送達するために使用される。経口または静脈内投与抗生物質に対する吸入の主な利点は、高濃度の抗生物質を直接肺に送達することができることである。しかしながら、噴霧器ミストの連続的な発生は、吸入サイクルと呼気サイクルとの間で確認することができない不正確な投与を提供する。
【0148】
[0181] したがって、
図19を参照すると、本開示の実施形態が提供され、液滴送達装置1902が、人工呼吸器1900(例えば、GE Carescape R860)と直列に配置されている。液滴送達装置1902は、トブラマイシンなどの治療薬を含む、本明細書に記載の液滴流れを生成し、当該液滴流は気管内チューブ1904の患者側端部近くの人工呼吸器気流に入る。
図19は、人工呼吸器1900と共に動作する独立型装置1902の一例を提供する。人工呼吸器1900は、吸入空気流1900Aを供給し、患者に近い単一気管内チューブ1904に合流する別のチューブ内の呼気空気流1900Bを除去して吸入と呼気とデッドボリュームの混合を最小化する。液滴送達装置1902は、チューブの側壁に付着し得る液滴の損失を最小限に抑えるために、気管内チューブ1904の患者側端部の近くに配置してもよい。気管内チューブ1904の患者側端部は、患者の喉に配置され、チューブの端部近くのバルーン(図示せず)で定位置に保持される。
【0149】
[0182] 液滴送達装置の作動は吸入サイクルの開始時に開始される。液滴送達装置は、電池式の自己起動式であってもよいし、呼気作動式であってもよいし、又は人工呼吸器の一部である電子機器に接続されてもよい。システムは、投与頻度および持続時間が人工呼吸器または装置のいずれかにおいて設定され得るように構成され得る。同様に、液滴噴出のタイミングおよび期間は、装置によって決定され得るか、または人工呼吸器によって開始され得る。例えば、装置は、連続した10回の呼吸毎に1回、または大体1分に1回、0.5秒の間投薬するようにプログラムされてもよい。装置は、独立した方法で動作してもよく、または直接的な電気的接続によって、またはBluetooth (登録商標)もしくは同様の無線プロトコルを介して投与のタイミングを人工呼吸器に伝達してもよい。
【0150】
[0183] 本開示の別の態様は、例えば夜間の連続的または定期的投与が有益である場合に、治療薬を送達するために従来の携帯用CPAP装置と共に使用されてもよいシステムを提供する。別の実施形態では、本開示の液滴送達装置は、多くの場合、携帯型CPAP装置と関連して使用されて、睡眠中の心臓事象を予防および治療する。
【0151】
[0184] 一般的に、CPAP装置は、睡眠中に患者に陽圧を供給するためにマスクを使用する。 CPAP装置と組み合わせた液滴送達装置の適用は、肺炎、心房細動、心筋梗塞、または継続的または定期的に夜間に薬を投与することが望ましい疾患、状態、もしくは障害などの疾患、状態、又は障害の外来治療のため、抗生物質や心臓用薬などの治療薬の連続投与において効率的な方法を提供し得る。
【0152】
[0185] 睡眠時無呼吸(SA)においては、呼吸していない期間およびそれに伴う血中酸素レベルの低下がある。当然のことながら、心不全または「心臓発作」は睡眠時無呼吸に関連する。この関連は、低酸素レベルに関連する心臓へのストレスと、身体が心臓からの血圧および心拍出量の増加を必要とするときの心臓へのストレスの増加の両方に起因すると考えられている。さらに、高齢者や太りすぎの成人では睡眠時無呼吸のリスクが高くなる。したがって、SAを有する人は、SAが心臓にストレスを与え、SAに関連する危険因子が心臓発作の危険因子と非常に類似しているので、一般集団よりも心臓発作のリスクが高い。
【0153】
[0186] 2016年のJournal of New Englandは、睡眠時無呼吸の2700人の男性に対するCPAPの効果の4年間の研究を発表し、CAPAがいびきと昼間の眠気を有意に減少させ、健康に関連した生活の質と気分を改善することを示した。(R. Doug McEvoy, et al. CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea, N. ENGL. J. MED. 375;10 nejm.org 2016年9月8日)。しかしながら、CPAPの使用は心臓事象の数を有意に減少させなかった。この記事は、「閉塞性睡眠時無呼吸は心血管疾患患者の間で一般的な状態であり、そのような患者の40から60%が罹患している」と述べた。
【0154】
[0187] これらの心臓事象の多くは、適切な薬物の投与によって少なくすることができる。例えば、メトプロロールのようなベータ遮断薬は、そのような症状の死を防ぐのに十分な程度まで心房細動および心筋梗塞の影響を減らすことができる。
【0155】
[0188] 本開示の特定の態様では、CPAP装置を使用して心臓事象の存在を感知し、肺内送達を介して改善薬を投与することによって、人々の集団における有害な心臓事象を軽減する要求に対処している。具体的には、心臓事象は、心臓状態を検出および評価するための従来から利用可能な手段によって検出することができる。これらには、心拍数モニタ(胸部のゴムバンドで固定された電気センサ、耳たぶ、指、又は手首の光学モニタなど)、自動血圧計カフ、又は指もしくは耳の血中酸素飽和度モニタなどが含まれる。モニタが悪条件を検出すると、特定の用量の適切な薬物がCPAPチューブまたはマスクを介して本開示の液滴送達装置によって投与され、薬物が吸入され、肺への深層吸入によって血流に運ばれる。肺投与は、5ミクロン未満のサイズの液滴の生成、及び吸入サイクルの開始時における液滴の送達の両方によって最適化される。
【0156】
[0189]
図20を参照すると、睡眠中の心臓事象を補助するためのCPAP装置2004を有する本開示の液滴送達装置2002を含むシステム2000の概略図および使用例が示されている。本明細書に記載された本開示の特定の態様では、患者はCPAPマスク2006を適所につけて寝た状態で示され、加圧空気はCPAP装置2004によってマスク2006に送られる。心臓の状態は、指、つま先、耳たぶ、又は手首(図示せず)での心拍の光学的測定によって監視される。液滴送達装置2002は、CPAP装置2004とCPAPマスク2006との間でチューブ2008に沿って配置されてもよく、あるいは代替としてCPAPマスク2006の空気流入口に配置されてもよい(図示せず)。呼吸は、CPAP装置2004からCPAPマスク2006までのチューブ2008内の気流測定によって監視される。気流速度および方向は、わずかな量の気流制限を加えるスクリーンの両側の圧力を測定することによって測定することができる。典型的には、吸気時に流量が増加する連続的な正の空気流が生じる。制御器は、心房細動の増加などの異常な心臓状態を検出し、CPAP供給チューブ内の気流によって検出されるように吸入サイクルの開始時に抗不整脈薬の液滴の放出を開始する。情報は患者のスマートフォン2010に記録され格納されてもよく、必要であれば、心臓事象が検出された(例えば、Bloutooth又は他の無線通信手段を介して送信された)場合、様々な警報が鳴らされてもよい。さらに、患者の状態および薬の調剤はスマートフォンのアプリを介して監視され、患者及び医療提供者に患者の状態の正確な記録が提供されてもよい。
【0157】
[0190] 睡眠時無呼吸、人工呼吸器の使用、またはCPAP装置に一般的に関連する他の疾患もまた、患者の状態を非侵襲的に監視し、本開示の液滴送達装置を介した適切な改善薬の肺投与を提供するシステムから利益を受け得る。例えば、糖尿病患者は、わずかなインスリン過剰摂取による低血糖が意識喪失につながることをしばしば懸念している。この場合、異常に低い心拍数、呼吸、又は血圧が検出され、糖またはインスリンが液滴を介して肺系に投与され得る。
【0158】
実施例
実施例A:自動呼吸作動
[0191]
図1B~
図1Eを参照すると、本開示の液滴送達装置構成は、噴出器機構の自動呼吸作動および自動スプレー検証を提供する様々なセンサ適応を含めて提供している。センサは、患者の吸入サイクルのピーク時にエアロゾルプルームの作動を引き起こす。特定の実施において、患者の吸入のピーク期間の調整は、患者の肺気道へのエアロゾルプルームの最適な堆積および関連する薬物送達を確実にし得る。多様な配置が可能であるが、
図1Bは、例示的なセンサ構成を示している。 Sensirion(www.sensirion.com)のSDPxシリーズ(SDP31又はSDP3s圧力センサ)が使用され得る。
【0159】
実施例B:液滴サイズ分布
[0192] アンダーセンカスケードインパクタ試験、総薬物質量出力速度、総薬物呼吸可能質量、送達効率、及び再現性を含む、本開示の例示的な液滴送達装置について、液滴サイズ分布および関連機能性を評価した。
図21A~21Fは試験結果の要約を提供する。
【0160】
試験設計
[0193] Pneuma(米国商標)吸入器装置を使用してエアロゾルの特徴および硫酸アルブテロールの送達量を評価するためにARE Labs, Inc.で研究が行われた。この研究は、単一のPneuma(米国商標)吸入器の装置性能を評価するために設計された。各試験について新しい使い捨て薬物カートリッジを用いて一連の3つの個別試験を行った。試験プラットフォームは、流速測定のために較正されたAALBORGモデルGFM47質量流量計(AALBORG Instruments and Controls; Orangeburg、NY)を備えた8段階ノンバイアブル(nonviable)アンダーセンカスケードインパクタ(Thermo Fisher Scientific; Waltham、MA)を利用する。バルブ付きGastロータリーベイン真空ポンプ(Gast Manufacturing, Benton Harbor, MI)を使用して
【0161】
[0194]
図2A~
図2Cに示すものと同様の本開示の液滴送達装置が、3つの実施された試験について、750μlの5000mg/ml硫酸アルブテロールを充填した新しい貯蔵部を用いて、3回試験した。較正されたマイクロピペットを使用して硫酸アルブテロールのストック調製溶液から少量の薬物(100μl)を抽出し、移動相で希釈し、薬物濃度についてHPLCにより分析した。各試験の終わりに、マウスピースを移動相ですすぎ、HPLC分析のために収集して、慣性フィルタによってマウスピース内に捕捉された吸入不可能なエアロゾル化薬物の質量分率を測定した。各試験の後、インパクタステージサンプルを溶媒中に抽出および回収し、UV検出を備えたDionex Ultimate 3000nan-HPLC(Thermo Scientific、カリフォルニア州サニーベール)を用いて活性医薬成分(API)について分析した。
【0162】
[0195] カスケードインパクタ試験手順は、マウスピース接続シールを用いてマウスピースをインパクタUSPスロートに嵌め込むことを含む。カスケードインパクタに試料空気流を供給する真空ポンプを起動させ、エアロゾル試験中にインパクタおよび吸入器本体を通して28.3L/分の総流量を供給するようにポンプ制御弁を調節した。
【0163】
[0196] 各試験の開始時に、較正済みマイクロピペットを用いて新しい貯蔵部に750μlの硫酸アルブテロール溶液を充填した。装置をインパクタUSBスロートに接続し、電源を入れ、そして各試験につき10回作動させた。試験期間の終わりに、装置、インパクタ、及び希釈空気源を停止させた。薬物を抽出するためにマウスピースをすすぎ、カスケードインパクタのすべてのステージを所定量の適切な溶媒ですすいだ(HPLC移動相)。抽出したサンプルをラベル付きの滅菌したHPLCバイアルに入れ、蓋をして、UV検出を有するHPLCにより薬物含有量を分析した。マウスピースから残留薬物を抽出し、HPLCを介して薬物含有量を分析して、インパクタステージで収集された合計に対するマウスピース薬物堆積を測定した。
【0164】
[0197] 全てのシステム流速およびインパクタサンプル流を各試験期間を通して監視した。各試験に続いて、インパクタスライドをラベル付けされた滅菌ペトリ皿に入れ、較正されたマイクロピペットで注がれた2mlの移動相を使用してインパクタステージから薬物を抽出した。マウスピースおよびインパクタから抽出されたサンプルはすべて、標識された琥珀色の滅菌HPLCサンプルバイアルに入れられ、HPLC分析まで約2℃で冷蔵保存された。
【0165】
[0198] すべての試験のためのインパクタ収集ステージは、汚染を避けるために各吸入器試験試行の前に脱イオン水およびエタノールですすぎ、風乾した。3つの個々の試験のそれぞれに新しい吸入薬カートリッジを使用した。
【0166】
薬物分析
[0199] 全ての薬物含有量分析は、マイクロフローセル(75μm×10mm光路長、総分析容量44.2nl)を用いたDionex UVD-3000多波長UV/VIS検出器を備えたDionex Ultimate 3000ナノHPLCを使用して実施した。硫酸アルブテロールに使用したカラムは、186バールの公称圧力で6μl/分のカラム流速を有するPhenomenex Luna(内径0.3mm×150mm)C18,100A(USP L1)カラムであった。全HPLC実行時間は、サンプルあたり6分で、各サンプルの間に約5分のフラッシュをした。サンプル注入は、フルループ(Full loop)注入モードで1μlのサンプルループを用いて行った。硫酸アルブテロールについては276nmのUVで検出した。
【0167】
HPLC法と基準
[0200] 硫酸アルブテロールの分析のための参照方法として、米国薬局方モノグラフUSP29nf24s_ms1218に従った。手短に言えば、この方法は、移動相中の硫酸アルブテロールの適切な製剤の希釈を含んでいた(60%緩衝液および40%HPLCグレードメタノール(Acros Organics))。緩衝液製剤は、2mlの氷酢酸(Acros Organics)を加えた1200mlの水中の1.13grの1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム(Alfa Aesar)を含む逆浸透濾過脱イオン水を含む。移動相溶液を混合し、そして0.45μmフィルタ膜を通して濾過した。最終移動相は、緩衝液:MEOHの60:40希釈液である。
【0168】
統計分析
[0201] 吸入薬充填量、総送達量、経過粒子投与量、経過粒子割合、呼吸可能粒子投与量、呼吸可能粒子割合、微粒子投与量、微粒子割合;エアロゾルMMADおよびGSDの各成分について、3回の反復試験セットすべてに対して平均および標準偏差を計算した。すべてのデータセットに対して95%の信頼水準を示すように試行回数がもたらされた。
【0169】
結果
[0202] 以下の表は、アンダーセンカスケードインパクタ試験の各液滴サイズ段階(Albuterol、0.5%、アンダーセンカスケード、28.3lpm、10回の作動)で収集された液滴の質量分率の要約を示している。示されるように、約5μm未満の平均直径の液滴の75%超、および約4μm未満の平均直径の液滴の70%超がある。
【0170】
【0171】
[0203] 以下の表は、カスケードインパクタ試験結果の要約の代替フォーマットを提供し、マウスピース/スロート/粗粒分、呼吸に適した液滴、および微細液滴(Albuterol、0.5%、アンダーセンカスケード、28.3lpm、10回の作動)における液滴衝突のありそうな領域に基づく結果を提供している。
【0172】
【0173】
[0204]
図21A~
図21Dは、様々な編集における同じデータを示す。
図21Aは、マウスピース、のど、粗粒分、呼吸に適した、及び微細における堆積した液滴の割合を示す。
図21Bは、すべての試験実施についてのMMAD及びGSD、及び平均値(3カートリッジ、カートリッジ当たり10回の作動;アルブテロール、0.5%、28.3lpm;合計30回の作動)を示す。
図21C-1、21C-2は、
図21Bからのデータの空気力学的サイズ分布の累積プロットを示す。
図21Dは、各試行におけるスロート、粗粒分、呼吸に適した粒子、および微細な粒子の割合、ならびに平均値(3カートリッジ、カートリッジあたり10回の作動;アルブテロール、0.5%、28.3lpm;合計30回の作動)を示す。
【0174】
実施例C:コンビベント(米国登録商標)レスピマット(米国登録商標)およびプロエア(米国登録商標)HFAに対する液滴生成の比較
[0205] 本開示の液滴送達装置を2つの基本的な装置、コンビベント(米国登録商標)レスピマット(米国登録商標)吸入器(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals Inc., Ridgefield CT)、及びPROAIR(米国登録商標)FHA(Teva Respratory, LLC Frazer, PA)と評価および比較するためにインビトロ研究を行った。まず、
図22A、
図22Bを参照すると、本開示の液滴送達装置(試験装置)およびレスピマットソフトミスト(米国登録商標)吸入器から生成されたエアロゾルプルームの比較が示されている。
図22Aにおいて、試験装置によって生成されたエアロゾルプルームは、層流(1)乱流(2)に関連する2つの異なる流れパターンを有する。本明細書で前述したように、液滴が5μm未満のMMAD直径を有し、同伴空気の発生を招くと、乱流および渦電流の形成が生じる。これとは対照的に、
図22Bにおいて、レスピマットソフトミスト(米国登録商標)吸入器によって形成されたプルームは、高い運動量および運動エネルギを有する、高速度および広範囲の液滴サイズを有する液滴が特徴的であることを示している。
【0175】
[0206] 装置は、硫酸アルブテロールエアロゾルサイズ分布を投与することおよび質量送達特性で試験された。本明細書に記載されるように、本開示の液滴送達装置は、取り外し可能かつ交換可能な貯蔵部を有する呼気作動型の圧電作動装置である。この例では、貯蔵部は、一回の使用につき100~200回の呼気作動量を提供するための治療用吸入薬を収容するように設計されている。述語装置であるコンビベントレスピマットは、無噴射剤、ピストン作動、多用量計量吸入器であり、プロエアHFA装置は、CFCを含まない、推進剤に基づく定量吸入器である。
【0176】
[0207] 単一の試験装置本体、及び3つの貯蔵部/噴出器機構モジュールを試験した。すべての述語装置を3回ずつ、全部で9回のカスケードインパクタ試験を実施した。本開示の装置は、3回試験され、3回の試験のそれぞれについて、750μlの0.5%硫酸アルブテロールを充填した新しい薬物貯蔵部を用いた。
【0177】
[0208] 粒径分布は、各試験中にアンダーセンカスケードインパクタ(ACI)サンプリングを用いて一定の28.3lpmでサンプリングして測定した。アンダーセンカスケードインパクタ試験は、実施例Bに上記した通りであり、試験エアロゾルの粗粒子質量、粗粒子割合、呼吸可能粒子質量、呼吸可能粒子割合、微粒子質量、及び微粒子割合を測定するために使用され得る。ACIデータはまた、エアロゾルサイズ分布の質量中央空気力学的直径(MMAD)および幾何標準偏差(GSD)を計算するためにも使用され得る。液滴分類は次のように定義される。粗粒子割合、>4.7μm;呼吸に適した粒子割合、0.4~4.7μm;微粒子割合、<0.4μm。
【0178】
[0209] 述語コンビベント(米国登録商標)レスピマット(米国登録商標)吸入器を、20mcgの臭化イプラトロピウムおよび100mcgのアルブテロールを含有するコンビベント(米国登録商標)レスピマット(米国登録商標)カートリッジを使用して、1回の作動当たり120mcgの硫酸アルブテロール送達を試験した。1回の作動当たり90mcgの送達用量に相当する108mcgの硫酸アルブテロールを含有するカートリッジで述語プロエア(米国登録商標)HFA吸入器を評価し、1回の作動につき85mcgの送達用量で0.5%アルブテロールに相当する5000ug/mlの濃度の硫酸アルブテロールを使用して本開示の液滴送達装置を評価した。
【0179】
[0210] 硫酸アルブテロールについて3回試験した各吸入器についてのカスケードインパクタ試験の結果は以下の通りである(
図23A、
図23B)。
【0180】
[0211] 硫酸アルブテロールを分注するための平均MMAD:試験装置、1.93±0.11μm、コンビベント(米国登録商標)レスピマット(米国登録商標)、1.75±0.19μm、プロエア(登録商標)HFA、2.65±0.05μm。
【0181】
[0212] 平均GSD:試験装置、1.96±0.16、コンビベント(米国登録商標)レスピマット(米国登録商標)、2.79±0.25、プロエア(米国登録商標)HFA、1.48±0.02。
【0182】
[0213] 試験装置、コンビベントレスピマット(米国登録商標)およびプロエア(米国登録商標)HFA吸入器のカスケードインパクタ試験の要約および比較を、以下の表および
図23A、
図23Bに示す。これらのデータは、調査された装置において、試験装置が最高の呼吸可能粒子割合を提供し(
図23B)、平均±標準偏差を示すことを示している。
【0183】
【0184】
実施例D:臨床試験-硫酸アルブテロールおよび臭化イプラトロピウム
[0214] 本開示の例示的な噴出器装置(試験装置)を使用して、慢性閉塞性肺疾患を有する患者のグループにおいて、硫酸アルブテロールおよび臭化イプラトロピウムを使用した試験装置の急性気管支拡張作用と無治療とを比較するクロスオーバー臨床試験を実施した。
【0185】
[0215] 最大で75人のCOPD患者が登録されている。来院1において以下の条件を満たす患者を本研究の適格者とした。1)以前にCOPDと診断されている、2)少なくとも10パックイヤーの喫煙歴がある、3)1つ以上の吸入気管支拡張薬を処方されている、4)適切な参照式を用いて、気管支拡張薬投与後のFEV1が予測正常値に対して25%以上および70%未満を示す。
【0186】
[0216] 本試験は、COPD患者のグループにおける本開示の試験装置を用いて標準用量の硫酸アルブテロールおよび臭化イプラトロピウムの急性気管支拡張効果を測定するためのクロスオーバー、単一施設、1日肺機能試験である。
【0187】
[0217] 被験者は、最大1週間のスクリーニング期間を経てもよい。患者が長時間作用型ベータ作用薬または長時間作用型ムスカリン拮抗剤を使用しておらず、過去6時間に短時間作用型気管支拡張薬を使用していない場合は、休薬期間は不要であり、直ちに来院2に進むことができる。被験者が長時間作用型ベータ作用薬を使用している場合、48時間休薬される。被験者が長時間作用型ムスカリン拮抗剤を使用している場合、休薬期間は1週間になる。休薬期間中、被験者は吸入コルチコステロイド(ICS)、短時間作用型ベータ作用薬(SABA)、短時間作用型ムスカリン拮抗剤(SAMA)、ロイコトリエン拮抗剤、及びホスホジエステラーゼ4阻害薬を使用し続けることが許されるであろう。休薬期間中にCOPDが悪化した被験者は試験から除外される。スクリーニング期間を首尾よく完了した被験者が、試験に含まれた。
【0188】
[0218] 本明細書に記載されるように、試験装置は、貯蔵部と一体化された圧電作動式噴出器機構を含む。貯蔵部は装置ハウジングに取り付けられている。装置ハウジングは2つの領域、1)マウスピースチューブ、2)ハンドルを有する。患者はマウスピースチューブを通して呼吸し、噴出器機構を作動させる。マウスピースチューブはハウジングから取り外され、患者の使用後に殺菌されそして再使用されるか、又は処分され得る。
【0189】
[0219] 主要な有効性の評価項目には、本開示の噴出器装置を使用して硫酸アルブテロールおよび臭化イプラトロピウムの投与を受ける20分前、および本開示の噴出器装置からの硫酸アルブテロールおよび臭化イプラトロピウムの投与を受けた20分後の2つの期間のFEV1の変化が含まれ得る。安全性の評価項目には、生体兆候とFEV1の変化が含まれ得る。統計分析には、T検定を使用したFEV1の変化分析が含まれ得る。
【0190】
[0220] 中間結果は、本開示の噴出器装置の使用が、無治療と比較して有意な気管支拡張効果をもたらすことを実証している。例えば、部分的に、次の平均FEV1測定値が得られた。
【0191】
【0192】
[0221] 上の表に示されるように、本開示の噴出器装置による治療は、平均で約260~275ccだけFEV1を改善した。この改善は、同じ用量の活性薬物を有する標準的な手動吸入器を用いて典型的に観察される気管支拡張作用増加の1.2から2倍である。
【0193】
実施例E:臨床試験-硫酸アルブテロール
[0222] 本開示の例示的な液滴送達装置(試験装置)を使用して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者のグループにおける硫酸アルブテロールを使用した、試験装置対プロエア(米国登録商標)HFA吸入器の急性気管支拡張作用を比較するクロスオーバー臨床試験を実施した。
【0194】
[0223] 最大で75人のCOPD患者が登録されている。来院1において以下の条件を満たす患者を本研究の適格者とした。1)以前にCOPDと診断されている、2)少なくとも10パックイヤーの喫煙歴がある、3)1つ以上の吸入気管支拡張薬を処方されている、4)適切な参照式を用いて、FEV1が予測された正常値に対して70%未満または少なくとも10%低いことを示す。
【0195】
[0224] これは、COPD患者のグループにおいて試験装置を使用して標準用量の硫酸アルブテロールの急性気管支拡張効果を測定して述語装置であるプロエアHFA吸入器と比較するクロスオーバー、単一施設、2~3日の肺機能試験であるが、試験装置では、述語装置とで投与される用量の半分とされている。
【0196】
[0225] 被験者は、最大1週間のスクリーニング期間を経てもよい。患者が長時間作用型ベータ作用薬または長時間作用型ムスカリン拮抗剤を使用しておらず、過去6時間に短時間作用型気管支拡張薬を使用していない場合は、休薬期間は不要であり、直ちに来院2に進むことができる。被験者が長時間作用型ベータ作用薬を使用している場合、48時間休薬される。被験者が長時間作用型ムスカリン拮抗剤を使用している場合、休薬期間は1週間になる。休薬期間中、被験者は吸入コルチコステロイド(ICS)、短時間作用型ベータ作用薬(SABA)、短時間作用型ムスカリン拮抗剤(SAMA)、ロイコトリエン拮抗剤、及びホスホジエステラーゼ4阻害薬を使用し続けることが許されるであろう。休薬期間中にCOPDが悪化した被験者は試験から除外される。スクリーニング期間を首尾よく完了した被験者が、試験に含まれた。
【0197】
[0226] 本明細書に記載されるように、試験装置は、貯蔵部と一体化された圧電作動式噴出器機構を含む。貯蔵部は装置ハウジングに取り付けられている。装置ハウジングは2つの領域、1)マウスピースチューブ、2)ハンドルを有する。患者はマウスピースチューブを通して呼吸し、噴出器機構を作動させる。マウスピースチューブはハウジングから取り外され、患者の使用後に殺菌されそして再使用されるか、又は処分され得る。
【0198】
[0227] 主要な有効性の評価項目には、硫酸アルブテロールの投与を受ける20分前、および本開示の試験装置を使用して硫酸アルブテロールの投与を受けた20分後の2つの期間のFEV1の変化が含まれ得る。安全性の評価項目には、生体兆候とFEV1の変化が含まれ得る。統計分析には、T検定を使用したFEV1の変化分析が含まれ得る。
【0199】
[0228] 結果は、本開示の試験装置の使用が、無処置に対して有意な気管支拡張効果を提供し、述語装置であるプロエアHFA装置を使用した2倍用量での処置に対して同様又はわずかに改善された気管支拡張効果を提供することを実証した。より具体的には、アルブテロール100マイクログラム用量では、無処置と比較してFEV1(120ml)に統計的に有意な改善が見られた。さらに、述語装置であるプロエアHFA吸入器を使用して200マイクログラムとする2倍の用量で見られた改善よりも、平均的な改善が11.9ml大きいことが予想外に見出された。これに関して、本開示の試験装置は、述語装置の用量の半分で同様又はわずかに改善された臨床的有効性を達成し得る。試験装置は、標準的な治療法の選択肢と比較して、濃縮されたCOPD薬を送達することができ、有意な治療効果を提供することができた。
【0200】
[0229] 下記の表は詳細なデータを示している。
【表12】
【表13】
【0201】
実施例F:大分子の送達-局所送達および全身送達
[0230] 本開示の例示的な液滴送達装置を使用して、上皮成長因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体、ベバシズマブ(アバスチン)、アダリムマブ(ヒュミラ)、及びエタネルセプト(エンブレル)を含む大分子が、本開示の装置を通じた放出によって変性したり劣化したりすることはなく、局所的な肺への送達および/または活性剤の全身への送達が達成されることを検証するために試験を行う。
【0202】
[0231] 液滴の特徴付け:液滴の生成を確認するために、本明細書に記載のように、液滴インパクタ試験が実施されてもよい。
【0203】
[0232] ゲル電気泳動:液滴生成後の活性剤の安定性を測定するために、活性剤を含む生成された液滴流を収集し、ゲル電気泳動を用いて活性剤の分子量を検証する。ゲル電気泳動は、コントロールから、つまり全EGFR抗体、ベバシズマブ、アダリムマブ、又はエタネルセプトのそれと比較して、エアロゾル後の活性剤の電気泳動移動度、つまり分子量にごくわずかな変化があることを示すであろう。ゲルはまた、ゲル上のタンパク質のより小さい断片の証拠ではないことを示し、エアロゾル発生がそれほど顕著なタンパク質分解を引き起こさないことを裏付ける。さらに、ゲルは、抗体またはタンパク質の明らかな凝集を示さないであろう。多くの吸入装置がタンパク質の凝集を起こしやすいと報告されており、したがってタンパク質および抗体のような大きな高分子の肺送達には不適当である。
【0204】
[0233] サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):代替的に、液滴生成後の活性剤の安定性を測定するために、活性剤を含む生成された液滴の流れを収集し、SEC-HPLICを用いて高分子凝集およびタンパク質断片含有量の変化を監視してもよい。可溶性タンパク質凝集体およびタンパク質断片含有量は、分注されたタンパク質溶液のSEC-HPLC曲線下のそれぞれのピーク面積を対照(装置貯蔵部内に残っている溶液)と比較することによって計算することができる。
【0205】
[0234] 試験用の薬液としては、エンブレル(25mgのエンブレル(米国登録商標)使い捨ての薬液充填済みシリンジ(50mg/mLエタネルセプト溶液を0.51mL)、及びインスリン(ヒューマログ、200ユニット/ml、3ml kwikpens)が挙げられる。
【0206】
[0235] エンブレル(米国登録商標)(エタネルセプト)は、ヒトIgG1のFc部分に結合したヒト75キロダルトン(p75)腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分からなる二量体融合タンパク質である。エタネルセプトのFc成分は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及びヒンジ領域を含むが、IgG1のCH1ドメインは含まない。エタネルセプトは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)哺乳動物細胞発現系において組換えDNA技術によって産生される。それは、934アミノ酸からなり、見かけの分子量約150キロダルトンを有する。
【0207】
[0236] SECは、Yarra TM 3μm SEC-2000 LCカラム300×7.8mm、SecurityGuardカートリッジキットおよびSecurityGuardカートリッジGFC-2000、4×3mm IDを用いて実施する。シリンジ(エンブレル(米国登録商標)使い捨ての薬液充填済みシリンジ、50mg/mLエタネルセプト溶液を25mg/0.51mL)からの50マイクロリットルを希釈する(4:1)(4パート、200mclの移動相緩衝液を1パートへ、シリンジから50mclのEnbrel)。50μlの希釈したエンブレルを注入し、そして分離を1.0ml/分の流速で行った。移動相緩衝系は、PHOS.BUFF.SALINE(PBS)溶液および0.025%NaN3、pH6.8を含んでいた。UV検出は280nmで行われる。
【0208】
[0237] 本開示の噴出器機構による液滴生成の効果を測定し比較するために、280nmでのUV信号の曲線下の総面積対対照の溶出時間を、100%に設定されたエアロゾル化サンプルと比較する。
【0209】
[0238] 50マイクロリットル(mcl)のインスリン(ヒューマログ、200ユニット/ml、3ml Kwikpens)をKwikpenから直接引き出し、分析のためにSECカラムに注入し、その一方で200mclのKwikpen溶液を、試験装置による作動およびエアロゾル発生前のカートリッジ/アンプルに直接注入する。エアロゾル収集およびSECは、エンブレル分析およびエアロゾル収集の場合と同様の方法で行われる。
【0210】
[0239] アンプル/カートリッジを、4:1(10mg/ml)に希釈した0.20mlのエンブレル(米国登録商標)(50mg/ml)(4部(200mcl)のPBS0.025%NaN3および1部(50ml))のいずれかで満たす。 20回の作動およびエアロゾル化の後、約150mclのエアロゾル化されたエンブレル溶液が噴出器機構の下に位置するポリプロピレンチューブに集められて収集される。対照は希釈したエンブレル溶液からなり、そのうち50mlを分析のためにSECカラムに注入する。
【0211】
[0240] ヒューマログのインスリン溶液、200ユニット/ml、3mlKwikpenをシリンジで吸引し、200mclを直接貯蔵部/噴出器機構モジュールに注入し、作動前に試験装置に取り付ける。試験装置から出てくるエアロゾルは、アパーチャプレートの真下に0.5mlのポリプロピレン試験チューブを置くことによって集められる。20回の作動エアロゾル化は、約150mclのエアロゾルインスリンスプレーの回収をもたらした。50マイクロリットルのKwikpenインスリン溶液を対照試料用のSECカラムに注入しながら、50マイクロリットルの収集したエアロゾルスプレーを分析のためにSECカラムに注入する。
【0212】
結果;エンブレル
[0241]
図24A~24Bを参照すると、作動後に試験装置から収集された、4:1に希釈されたエンブレル(米国登録商標)(10mg/ml)対照(
図24A)およびエアロゾル化Enbrel溶液(
図24B)のSECクロマトグラフである。単一の主ピークが、約25分の溶出時間でエアロゾル化されたエンブレル溶液のクロマトグラフにおいて明らかである。以下の表は、対照およびエアロゾル化エンブレル溶液について、特定の溶出時間(分)で出現するさまざまなピークについてのUV曲線下面積を比較したものである。
【0213】
【0214】
[0242] これらのデータは、試験装置がエアロゾル用量を送達した後に構造的に変化しない95.4%のエンブレルを送達することができ、その一方で用量の4.6%のみが13および25分の溶出時間で分子断片の形成をもたらすことを実証する。
【0215】
[0243] 重量分析は、投与前後にエンブレル溶液を充填したアンプルを秤量することによって行った。平均5回の投与(作動)は、平均4.25mg±0.15mgで分析された。作動当たりのエンブレルの総投与量は、作動当たり42.5mcgである。対照的に、同じアンプルで蒸留水を作動させると、9.26mg±1.19mgの送達用量が得られた。
【0216】
結果;インスリン
[0244]
図25A、
図25Bを参照すると、対照としてのKwikpenからのインスリンのSECクロマトグラフ(200U/ml;34.7mcg/U;6.94mg/ml)(
図25A)と、試験装置からエアロゾル化されたインスリンのSECクロマトグラフとである(
図25B)。作動後、約150mclのエアロゾル化インスリン溶液を試験装置から集めた。単一の主ピークは、エアロゾル化インスリン溶液のクロマトグラフにおいて明らかであり、溶出時間は約25分である。以下の表は、対照およびエアロゾル化インスリン溶液について特定の溶出時間で出現する様々なピークについてのUV曲線下面積を比較する。保持時間は数分である。
【0217】
【0218】
[0245] これらのデータは、試験装置が構造的に変化していない97.5%の放出用量のインスリンを送達することができ、その一方で2.5%の放出用量が~25分で溶出するフラグメントを形成することを実証する。
【0219】
[0246] 重量分析は、投与前後のインスリン溶液を充填したアンプルを秤量することによって実施した。平均5回の投与(作動)を分析し、平均5.01mg±0.53mgであった。作動当たりのインスリンの全送達用量は、作動当たり34.8mcgである。
【0220】
[0247] 抗体/タンパク質結合アッセイ:
エアロゾル化した抗体またはタンパク質の活性は、細胞表面上のその抗原または標的に結合するその能力、すなわちEGFR、TNFαなどを試験することによって実証される。エアロゾル化または非エアロゾル化活性剤のいずれかと共にインキュベートされた細胞のフローサイトメトリーデータは活性を反映するであろう。具体的には、データは、未処理細胞に対するものと比較して、非エアロゾル化蛍光標識活性剤と共にインキュベートされた細胞の蛍光強度のシフトを示すであろう。エアロゾル化活性剤とインキュベートした細胞でも同様のシフトが得られ、エアロゾル化後の活性剤はその免疫活性、したがって細胞表面上のその標的受容体に結合する能力を保持していることが示唆される。
【0221】
[0248] 臨床/InVivo試験:
概して
図1A~1Eに示される本開示の例示的な噴出器装置を使用して、大分子活性剤の投与後の薬物動態データを評価するために臨床試験が行われている。pKデータは、高分子活性剤が体系的に投与されたことを証明するであろう。