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特許7407595バースト放出を低減する薬剤送達用の埋込可能な装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】バースト放出を低減する薬剤送達用の埋込可能な装置
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/24 20060101AFI20231222BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231222BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231222BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20231222BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20231222BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/4458 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20231222BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20231222BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61K9/24
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/02
A61L31/12 110
A61L31/14 500
A61L31/16
A61K31/198
A61K31/4045
A61K31/675
A61K31/513
A61K31/506
A61K31/4458
A61K31/65
A61K31/155
A61K31/122
A61K31/485
A61K38/22
A61L31/04 110
A61L31/04 120
A61L31/06
A61P3/10
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P5/14
A61P9/12
A61P25/16
A61P25/32
A61P25/00
A61P31/18
A61P33/06
A61P43/00 121
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019518024
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017055432
(87)【国際公開番号】W WO2018067882
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】62/404,643
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502197932
【氏名又は名称】タイタン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシュ エー.パテル
(72)【発明者】
【氏名】スニール スリードハラン
(72)【発明者】
【氏名】スニール アール.ボーンスレー
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522314(JP,A)
【文献】特開昭61-277629(JP,A)
【文献】特表2001-508756(JP,A)
【文献】特表2004-535431(JP,A)
【文献】特表平06-502636(JP,A)
【文献】米国特許第05756115(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0209539(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0165795(US,A1)
【文献】米国特許第06022554(US,A)
【文献】Journal of Biomedical Materials Research,1991年,Vol.25,pp.1119-1131
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー材料とコア医薬物質とを含むコア;および
エチレン-酢酸ビニルと細孔形成材料とを含むシェル;
を含む、医薬物質を送達する埋込可能なデバイスであって、
前記シェルは非医薬層であり、
前記細孔形成材料は、平均直径が1μm~300μmの粒子を含み、
全体が第1のポリマー材料とコア医薬物質で作製された対比のデバイスに比較して、バースト放出が低減されている埋込可能なデバイス。
【請求項2】
第1のポリマー材料とコア医薬物質を含む第1の組成物を押出してコアを形成すること;および
エチレン-酢酸ビニルと細孔形成材料を含む第2の組成物によりコアを被覆してシェルを形成すること;を含む、埋込可能なデバイスを形成する方法であって、
前記第2の組成物は非医薬層であり、
前記細孔形成材料は、平均直径が1μm~300μmの粒子を含む、方法。
【請求項3】
第1のポリマー材料とコア医薬物質を含む第1の組成物およびエチレン-酢酸ビニルと細孔形成材料を含む第2の組成物を共押出することを含み、
第1の組成物を押出してコアを形成し、共押出された第2の組成物はコアの周りにシェルを形成する、埋込可能なデバイスを形成する方法であって、
前記第2の組成物は非医薬層であり、
前記細孔形成材料は、平均直径が1μm~300μmの粒子を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本特許出願は、2016年10月5日に出願の米国仮特許出願第62/404,643号の優先権および利益を主張する。その出願の全体が参照により本明細書内に組み込まれている。
【0002】
本発明は、長期間にわたってバースト放出を低減し、最小化し、または発生させずに、トリヨードチロニンのような医薬物質を放出する患者内に埋込可能な装置を提供する。
【背景技術】
【0003】
多くの患者は、薬物や医薬物質を長期間にわたって定期的に投与されることを必要とする。効果的な治療には、しばしば長期間にわたって1日当たり1個以上の錠剤の摂取を必要とする。例えば、甲状腺癌の一般的治療法である甲状腺摘出術を受けた患者は、その余命の間、経口チロキシン錠を服用するのが必須となる。典型的には、その患者は生体内でトリヨードチロニン(T3)に転化されるレボチロキシン(T4)を摂取する。T4およびT3の両方とも、基礎代謝率を含むヒトでの多様な代謝経路を調節する。
【0004】
頻繁な投与に必要な経口または他の経路によって摂取される薬物の長期投与中には、いくつかの問題が発生することがある。長期の投与計画を遵守することは、しばしば不都合であり、また困難なことがある。例えば、(アルツハイマー病や他の疾患により)認知機能を害した患者は、忠実に薬物を自分で服用することができず、薬物治療の適切な実施を確実にするように介護者が必要なこともある。さらに、経腸による薬物送達は、特定の適応症を有する患者には、しばしば許容され難く、または禁止されている。頻繁なまたは定期的な投与では、最初の投与後に急激に薬物の血中濃度がピークに達し、その後の次の投与前には急激に低下することになり、これは毎日の経口での送達や舌下での送達で起こりうることである。
【0005】
薬物送達に使用する埋込可能な装置は、薬物の経口投与、舌下投与、または静脈内投与に伴ういくつかの問題を克服できる。これらの装置は、長期間の連続的な薬物送達を可能にし、患者が係らなくとも服薬の遵守を確実にでき、薬物の安定した血中濃度を維持でき、かつ不慮の使用、乱用、または販売への転用の可能性を低減できる。ポリマー母材中にカプセル化した化合物を含有する装置を埋め込んで、長期間にわたる生体内での化合物の連続放出を達成できる。連続的な薬物放出のための埋込み可能なポリマー装置の例は、例えば、米国特許第4,883,666号、第5,114,719号、および第5,601,835号に記載されている。Patelらの米国特許出願公開第2004/0033250号、第2007/0275031号、および第2008/0026031号、ならびにKleppnerらの2006 J. Pharm. Pharmacol. 58:295-302には、エチレン-酢酸ビニル(EVA)共重合体と混合したブプレノルフィンを含む埋込可能な装置が記載されている。Patelらの米国特許出願公開第2005/0031668号には、ナルメフェンを持続的に放出する埋込み可能なポリマー装置を記載している。Patelらの米国特許出願公開第2005/0031667号には、ドーパミン作動薬を持続的に放出する埋込み可能なポリマー装置を記載している。さらなる薬物送達装置として、薬物を含む組成物で被覆されたステントが挙げられる。様々な装置および被覆物が、Harishの米国特許第6,506,437号、Claudeの米国特許第7,364,748号、およびHossainyの米国特許第7,384,660号に記載されている。米国特許第3,625,214号には、螺旋状または「ゼリーロール」状に製造された、長期の薬物送達のための薬物送達装置を記載している。米国特許第3,926,188号は、薬物放出速度を制御するポリマーで製造した外側薄層の間に、ポリマー母材中に分散された低水溶性の結晶性薬物のコア薄層を挿入した3層の積層薬物のディスペンサーを記載している。米国特許第5,683,719号には、活性材料および賦形剤の押出コアを含み、そのコアが水不溶性被覆物で被覆されることで放出を制御する組成物が記載されている。
【0006】
埋込物を含む実質的に持続性の全ての薬物製剤が遭遇する1つの問題点は、バースト放出である。バースト放出は、製剤が最初に投与される際に、所望の放出速度よりも大きくなる薬物の大量の放出であり、それは過剰濃度の薬物から生じる有害な薬理作用を引き起こすことがある。このバースト放出は、甲状腺ホルモンを放出する埋込物のようなシステムには、危険な心臓合併症が起こる場合があるので特に望ましくない。従って、T3などの甲状腺ホルモンを含む医薬物質を送達する制御放出システムでのバースト放出を低減または排除する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ポリマー(またはポリマーブレンド)と1種以上の薬物または医薬物質を含むコア、およびポリマー(またはポリマーブレンド)と1種以上の細孔形成材料を含む外側シェルを含む埋込可能な薬物送達装置を提供する。このシェルは、さらに1種以上の薬物または医薬物質を任意に含むことができる。この薬物含有コアを細孔形成材料含有シェルで囲むと、持続放出の製剤でしばしば見られるバースト放出を低減できる。また、狭いサイズ分布を持つ細孔形成材料の使用、およびその細孔形成材料の除去後にシェル内に残る細孔の結果としての狭いサイズ分布とにより、コアからの薬物の放出速度をより最適に制御および調節できる。
【0008】
いくつかの態様において、本発明は、第1のポリマー材料とコア医薬物質を含むコア、および第2のポリマー材料と細孔形成材料を含むシェルを含む医薬物質を送達する埋込可能な装置を提供する。このシェルは医薬物質を含まなくてもよく、あるいはこのシェルは医薬物質(「シェル医薬物質」と呼ぶ)をさらに含んでもよい。このシェルは、約1重量%~約80重量%の細孔形成材料を含んでもよい。いくつかの態様において、細孔形成材料は球状の粒子を含み、少なくとも約90%の球状の粒子の直径は約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は、約1μm~約50μmの平均直径を有する球状の粒子を含む。いくつかの態様において、細孔形成材料は球状の粒子を含み、少なくとも約90%の球状の粒子の直径は、平均直径から10%以内に分布する。
【0009】
細孔形成材料は生体内分解性材料を含んでもよい。細孔形成材料は、生体内非分解性材料を含んでもよい。細孔形成材料は、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、脂肪酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、リノール酸、生体適合性塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、およびリン酸ナトリウムからなる群から選択される材料を含んでもよく、いくつかの態様において、細孔形成材料はエチルセルロースを含む。いくつかの態様において、細孔形成材料は、埋込可能な装置を洗浄すると、シェルから溶解または解離する。
【0010】
第1のポリマー材料または第2のポリマー材料は、生体内分解性材料を含んでもよい。第1のポリマー材料または第2のポリマー材料は、生体内非分解性材料を含んでもよい。第1のポリマー材料は、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ABS樹脂、アクリルポリマーおよび共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルモノマーの単独重合体およびオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALとして公知である)、ポリセバシン酸グリセリル、ポリ(グリコール酸-co-炭酸トリメチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ナイロン66、ポリカプロラクタム、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、フッ化ビリニデン系の単独重合体または共重合体、レーヨン、レーヨン-トリアセタート、シリコーン、ハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、およびこれらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群から選択される1種以上の材料を含んでもよい。
【0011】
第2のポリマー材料は、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ABS樹脂、アクリルポリマーおよび共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルモノマーの単独重合体およびオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALとして公知である)、ポリ(セバシン酸グリセリル)、ポリ(グリコール酸-co-炭酸トリメチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ナイロン66、ポリカプロラクタム、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、フッ化ビリニデン系の単独重合体または共重合体、レーヨン、レーヨン-トリアセタート、シリコーン、ハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、およびこれらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群から選択される1種以上の材料を含んでもよい。
【0012】
第1のポリマー材料は、エチレン-酢酸ビニルを含んでもよい。第2のポリマー材料は、エチレン-酢酸ビニルを含んでもよい。一態様において、第1のポリマー材料と第2のポリマー材料は両方とも、エチレン-酢酸ビニルを含む。
【0013】
埋込可能な装置は棒状であってもよい。いくつかの態様において、埋込可能な装置の直径は、約1mm~約8mmである。いくつかの態様において、埋込可能な装置の長さは、約10mm~約80mmである。いくつかの態様において、埋込可能な装置では、埋込可能な装置の一方の端部が封止されている。いくつかの態様において、埋込可能な装置では、埋込可能な装置の両方の端部が封止されている。
【0014】
コア医薬物質は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、L-チロキシン(T4)およびL-トリヨードチロニン(T3)の組合せ、ロピニロール、テノホビル、エムトリシタビン、テノホビルとエムトリシタビンの組合せ、ボセンタン、メチルフェニダート、リラグルチド、アトバコン、プログアニル、アトバコンとプログアニルの組合せ、およびナルメフェンからなる群から選択される1種以上の物質を含んでもよい。いくつかの態様において、コア医薬物質はトリヨードチロニンを含む。いくつかの態様において、コア医薬物質はロピニロールを含む。コア医薬物質は、コアの約1重量%~約80重量%を構成してもよい。
【0015】
シェル医薬物質は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、L-チロキシン(T4)およびL-トリヨードチロニン(T3)の組合せ、ロピニロール、テノホビル、エムトリシタビン、テノホビルとエムトリシタビンの組合せ、ボセンタン、メチルフェニダート、リラグルチド、アトバコン、プログアニル、アトバコンとプログアニルの組合せ、およびナルメフェンからなる群から選択される1つ以上の物質を含んでもよい。いくつかの態様において、シェル医薬物質はトリヨードチロニンを含む。いくつかの態様において、シェル医薬物質はロピニロールを含む。シェル医薬物質は、シェルの約1重量%~約40重量%を構成してもよい。
【0016】
コア医薬物質および(存在する場合に)シェル医薬物質は、トリヨードチロニンまたはロピニロールなどの同一の医薬物質であってもよい。コア医薬物質および(存在する場合に)シェル医薬物質は、異なる医薬物質であってもよい。
【0017】
いくつかの態様において、埋込可能な装置は、コアの内部にさらに補強部材を含む。
【0018】
本発明はさらに、埋込可能な装置を形成する方法を提供し、この方法は、第1のポリマー材料とコア医薬物質とを含むコアを含む第1の組成物を押出してコアを形成し、第2のポリマー材料と細孔形成材料とを含む第2の組成物でコアを被覆してシェルを形成することを含む。第1の組成物は、第1のポリマー材料とコア医薬物質とを組み合わせることにより形成できる。第2の組成物は、第2のポリマー材料と細孔形成材料とを組み合わせることにより形成できる。
【0019】
本発明はさらに、第1の組成物と第2の組成物を共押出することを含む埋込可能な装置を形成する方法を提供し、この方法では、第1のポリマー材料とコア医薬物質とを含む第1の組成物を押出してコアを形成し、第2のポリマー材料と細孔形成材料とを含む共押出された第2の組成物はコアの周りにシェルを形成する。第1の組成物は、第1のポリマー材料とコア医薬物質とを組み合わせることにより形成できる。第2の組成物は、第2のポリマー材料と細孔形成材料とを組み合わせることにより形成できる。
【0020】
いくつかの態様において、これらの方法は、さらに埋込可能な装置を洗浄することを含む。埋込可能な装置は、エタノール、水、またはエタノールと水の混合物で洗浄することができる。装置の洗浄により、埋込可能な装置から細孔形成材料を溶解するか、または細孔形成材料を解離させて、シェル内に複数の細孔を形成できる。
【0021】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第2の組成物は非医薬材料であってもよく、または第2の組成物はさらにシェル医薬物質を含んでもよい。
【0022】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第2の組成物は、約1重量%~約40重量%の細孔形成材料を含んでもよい。いくつかの態様において、細孔形成材料は球状の粒子を含み、少なくとも約90%の球状の粒子の直径は、約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は、約1μm~約50μmの平均直径を有する球状の粒子を含む。いくつかの態様において、細孔形成材料は球状の粒子を含み、少なくとも約90%の球状の粒子の直径は、平均直径から10%以内に分布する。
【0023】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、細孔形成材料は粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は、約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、それら粒子の平均最長寸法は、約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は、粒子の平均最長寸法の10%以内に分布する。
【0024】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、細孔形成材料は粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の平均寸法は、約1μm~約50μmであり、粒子の平均寸法は、粒子の最長寸法と最短寸法の平均値である。いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、粒子の平均寸法は、約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の平均寸法は、粒子の平均寸法の平均値の10%以内に分布する。
【0025】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、細孔形成材料は生体内分解性材料を含んでもよく、または細孔形成材料は生体内非分解性材料を含んでもよい。細孔形成材料は、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、脂肪酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、リノール酸、生体適合性塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、およびリン酸ナトリウムからなる群から選択される材料を含んでもよい。細孔形成材料はエチルセルロースを含んでもよい。
【0026】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第1のポリマー材料または第2のポリマー材料は、生体内分解性材料を含んでもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第1のポリマー材料または第2のポリマー材料は、生体内非分解性材料を含んでもよい。
【0027】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第1のポリマー材料は、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ABS樹脂、アクリルポリマーおよび共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルモノマーの単独重合体およびオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALとして公知である)、ポリ(セバシン酸グリセリル)、ポリ(グリコール酸-co-炭酸トリメチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ナイロン66、ポリカプロラクタム、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、フッ化ビリニデン系の単独重合体または共重合体、レーヨン、レーヨン-トリアセタート、シリコーン、ハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、およびこれらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群から選択される1種以上の材料を含んでもよい。
【0028】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第2のポリマー材料は、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ABS樹脂、アクリルポリマーおよび共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルモノマーの単独重合体およびオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALとして公知である)、ポリ(セバシン酸グリセリル)、ポリ(グリコール酸-co-炭酸トリメチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ナイロン66、ポリカプロラクタム、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン系の単独重合体または共重合体、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、フッ化ビリニデン系の単独重合体または共重合体、レーヨン、レーヨン-トリアセタート、シリコーン、ハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、およびこれらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群から選択される1種以上の材料を含んでもよい。
【0029】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第1のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニルを含んでもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第2のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニルを含んでもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、第1のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニルを含んでもよく、かつ第2のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニルを含んでもよい。
【0030】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、埋込可能な装置は棒状であってもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、埋込可能な装置の直径は、約1mm~約8mmであってもよい。明細書に開示される任意の埋込物または方法において、埋込可能な装置の長さは、約10mm~約80mmであってもよい。
【0031】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法は、埋込可能な装置の一方の端部で埋込可能な装置を封止することをさらに含んでもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法は、埋込可能な装置の両端部で埋込可能な装置を封止することをさらに含んでもよい。
【0032】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、コア医薬物質は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、L-チロキシン(T4)とL-トリヨードチロニン(T3)の組合せ、ロピニロール、テノホビル、エムトリシタビン、テノホビルとエムトリシタビンの組合せ、ボセンタン、メチルフェニダート、リラグルチド、アトバコン、プログアニル、アトバコンとプログアニルの組合せ、およびナルメフェンからなる群から選択される1つ以上の物質を含んでもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、コア医薬物質はトリヨードチロニンを含んでもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、コア医薬物質はロピニロールを含んでもよい。コア医薬物質は、第1の組成物の約1重量%~約80重量%を構成してもよい。
【0033】
本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、シェル医薬物質は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、L-チロキシン(T4)とL-トリヨードチロニン(T3)の組合せ、ロピニロール、テノホビル、エムトリシタビン、テノホビルとエムトリシタビンの組合せ、ボセンタン、メチルフェニダート、リラグルチド、アトバコン、プログアニル、アトバコンとプログアニルの組合せ、およびナルメフェンからなる群から選択される1つ以上の物質を含んでもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、シェル医薬物質はトリヨードチロニンを含んでもよい。本明細書に開示される任意の埋込物または方法において、シェル医薬物質はロピニロールを含んでもよい。シェル医薬物質は、第2の組成物の約1重量%~約40重量%を構成してもよい。
【0034】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に開示される任意の埋込可能な装置を対象内に埋め込み、対象の疾患を治療する方法を提供する。この疾患は、甲状腺機能低下症、パーキンソン病、下肢静止不能症候群(RLS)、HIV感染、レトロウイルス感染、肺動脈高血圧症、注意欠陥多動性障害、2型糖尿病、代謝異常症候群、高脂血症、肥満症、マラリア、アルコール依存症、またはアルコール中毒であってもよい。
【0035】
いくつかの態様において、本発明は、疾患の治療に使用するために、本明細書に開示される任意の埋込可能な装置を提供する。この疾患は、甲状腺機能低下症、パーキンソン病、下肢静止不能症候群(RLS)、HIV感染、レトロウイルス感染、肺動脈高血圧症、注意欠陥多動性障害、2型糖尿病、代謝異常症候群、高脂血症、肥満症、マラリア、アルコール依存症、またはアルコール中毒であってもよい。
【0036】
いくつかの態様において、本発明は、疾患の治療のために、本明細書に開示される任意の埋込可能な装置の使用を提供する。この疾患は、甲状腺機能低下症、パーキンソン病、下肢静止不能症候群(RLS)、HIV感染、レトロウイルス感染、肺動脈高血圧症、注意欠陥多動性障害、2型糖尿病、代謝異常症候群、高脂血症、肥満症、マラリア、アルコール依存症、またはアルコール中毒であってもよい。
【0037】
いくつかの態様において、本発明は、甲状腺機能低下症、代謝異常症候群、高脂血症、または肥満症を治療する本明細書に記載の任意の埋込可能な装置の作製のための、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、またはL-チロキシン(T4)とL-トリヨードチロニン(T3)の組合せの使用を提供し;パーキンソン病または下肢静止不能症候群を治療する本明細書に記載の任意の埋込可能な装置の製造のためにロピニロールの使用を提供し;HIV感染症、レトロウイルス感染症を治療し、またはHIV感染症もしくはレトロウイルス感染症を予防する本明細書に記載の任意の埋込可能な装置の製造のためにテノホビル、エムトリシタビン、またはテノホビルとエムトリシタビンの組合せの使用を提供し;肺動脈高血圧症を治療する本明細書に記載の任意の埋込可能な装置の製造のためにボセンタンの使用を提供し;注意欠陥多動性障害を治療する本明細書に記載の任意の埋込可能な装置の製造のためにメチルフェニダートの使用を提供し;2型糖尿病または肥満症を治療する本明細書に記載の任意の埋込可能な装置の製造のためにリラグルチドの使用を提供し;マラリアを治療し、またはマラリアを予防する本明細書に記載の任意の埋込可能な装置の製造のためにドキシサイクリン、アトバコン、プログアニル、またはアトバコンとプログアニルの組合せの使用を提供し;または、アルコール依存症またはアルコール中毒を治療する本明細書に記載の任意の埋込可能な装置の製造のためにナルメフェンの使用を提供する。
【0038】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に開示される任意の埋込可能な装置を対象内に埋め込むことを含み、HIVへの暴露前予防またはレトロウイルス感染の予防を提供する方法を提供する。
【0039】
埋込可能な装置は、対象に埋め込まれると、最初の30日間に1日あたり平均約10μg~約150μgのコア医薬物質を放出できる。埋込可能な装置は、対象に埋め込まれると、最初の30日間に1日の平均放出量に対し約10%未満の日差変動でコア医薬物質を放出できる。
【0040】
埋込可能な装置は、対象に埋め込まれると、シェルのない比較用埋込物からの初期バーストよりも少なくとも50%低い初期バーストによりコア医薬物質を放出できる。比較する初期バーストの期間は、埋込後の最初の1時間、埋込後の最初の6時間、埋込後の最初の12時間、埋込後の最初の24時間、埋込後の最初の48時間、埋込後の最初の3日間、埋込後の最初の4日間、埋込後の最初の5日間、埋込後の最初の6日間、埋込後の最初の7日間、埋込後の最初の8日間、埋込後の最初の9日間、または埋込後の最初の10日間であってもよい。一態様において、シェルのない比較用埋込物は、コア-シェル型埋込物の薬用コアのみを持ち、シェルのない埋込物である。従って、例えば図1で、シェルのない比較用埋込物は単に外側シェルを除去したものである。別の態様において、シェルのない比較用埋込物は、コアおよびシェルを持つ代わりに、比較用埋込物の全体がコア-シェル型埋込物と同一の寸法でコアを形成する材料からなる埋込物である。従って、例えば図1で、シェルのない比較用埋込物は、比較用埋込物が本発明の埋込物と同一の寸法であるが、コア医薬物質を含むコア材料から均一に製造されるように、外側シェルがコア医薬物質を含む追加のコア材料により置換されたものであってもよい。
【0041】
本明細書に記載の任意の態様において、コア医薬物質は、活性物質の塩、溶媒和物、または水和物の形態で存在してもよい。
【0042】
別の態様において、埋込可能な装置は、定常状態量で、ほぼ一定量で、または本質的に一定量で医薬物質または薬物を患者の血液中に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、外側シェルに約30%~約60%の細孔形成充填剤(シェルの残部はエチレン-酢酸ビニルからなる)およびコアに約60%のT3(コアの残部はエチレン-酢酸ビニルからなる)を有する一態様の本発明の埋込物の図面を示す。図面は縮尺通りではない。
【0044】
図1Aは、本発明の埋込物の断面図面110を示す。図面は縮尺通りではない。
【0045】
図2A図2Aは、シェル内に30%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物を備えるイヌ中のT3血漿濃度(ng/dL)を示す。
【0046】
図2B図2Bは、図2Aの215日~225日の拡大版を示す。
【0047】
図3図3は、シェル内に30%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物を備えるイヌ中の除去前後でのT4血漿濃度(mcg/dL)を示す。
【0048】
図4A図4Aは、プラセボ(T3非含有)埋込物の除去後の対照イヌ中のT4血漿濃度(mcg/dL)を示す。
【0049】
図4B図4Bは、プラセボ(T3非含有)埋込物の除去後の対照イヌ中のT3血漿濃度(ng/dL)を示す。
【0050】
図4C図4Cは、プラセボ(T3非含有)埋込物の除去後の対照イヌ中のTSH血漿濃度を示す。
【0051】
図5図5は、シェル内に60%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物の投与量を段階的に増加させ、それに続いて全てのT3埋込物を除去した際のイヌ中のT3血漿濃度(ng/dL)を示す。
【0052】
図6図6は、シェル内に60%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物の投与量を段階的に増加させ、それに続いて全てのT3埋込物を除去した際のイヌ中のT4血漿濃度(mcg/dL)を示す。
【0053】
図7図7は、甲状腺摘出ラット対正常ラットでのT3血漿濃度(ng/dL)を示し、それぞれのラットは、シェル内に60%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物を保持する。図7での正常ラットのデータは、異なる単位を使用して、図12Aおよび図12Bにも示す。
【0054】
図8図8は、シェル内に30%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物の除去前後のイヌ中のLDL濃度を示す。
【0055】
図9図9は、シェル内に30%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物の除去前後のイヌ中のトリグリセリド濃度を示す。
【0056】
図10図10は、シェル内に30%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物の除去前後のイヌ中のHDL濃度を示す。
【0057】
図11図11は、シェル内に30%のエチルセルロース細孔形成材料とコア内に60%のT3を有するT3埋込物を備えるイヌの経時的な平均観察体重を、処置していないイヌの経時的な予測体重と対比して示す。
【0058】
図12A図12Aは、コアとシェルの両方ともに薬物を含有する埋込物と対比して、薬物含有コア/細孔形成材料シェルの埋込物の初期埋込時のバースト放出の減少を示す。Y軸には等分目盛を使用し、単位にはng/mLを使用している。薬物含有コア/細孔形成材料シェル埋込物のデータを、異なる単位を使用して図7にも示す。
【0059】
図12B図12Bは、図12Aと同一のデータを示し、Y軸に対数目盛(ng/mL)を使用している。薬物含有コア/細孔形成材料シェル埋込物のデータを、異なる単位を使用して図7にも示す。
【0060】
図13A図13Aは、シェルのない埋込物のコアと対比して、ロピニロール含有コア/細孔形成材料シェルの埋込物の初期埋込時のバースト放出の減少を示す。Y軸には等分目盛を使用し、単位にはng/mLを使用している。
【0061】
図13B図13Bは、図13Aと同一のデータを示し、Y軸に対数目盛(ng/mL)を使用している。
【0062】
図14図14は、洗浄したEVAシートを平面(上段、A1、B1、およびC1パネル)視野および断面(下段、パネルA2、B2、およびC2)視野から見た走査型電子顕微鏡による状態写真を示し、それらは洗浄後の空隙(細孔)を示している。区画A1とA2では、細孔形成材料としてクエン酸を使用した。区画B1とB2では、細孔形成材料として安息香酸を使用した。区画C1とC2では、細孔形成材料として安息香酸の異なる調製物を使用した。各区画は、試料の約685μm幅の視野である。
【発明の詳細な説明】
【0063】
本発明は、長期間にわたり持続的に薬物送達する埋込可能な装置を提供する。一態様において、これら装置では埋込時のバースト放出が低減される。この装置は以下の1)、2)を含む。
【0064】
1)1種以上の薬物もしくは医薬物質と混合された1種のポリマー(または2種以上のポリマーの混合物)を含むコア。
【0065】
2)細孔形成材料と混合された1種のポリマー(または2種以上のポリマーの混合物)を含むシェル。このシェルはまた、任意に1種以上の薬物または医薬物質を含む。
【0066】
一態様において、細孔形成材料は、患者内に埋込まれる際に装置に含まれる。患者への埋込後に、シェル内の細孔形成材料は溶解し、シェルポリマー内に細孔を残す。次に間質液がコアに接近でき、それにより間質液内に薬物が溶出し最終的に全身に循環する。
【0067】
別の態様において、細孔形成材料は埋込前に装置から除去される。患者への埋込後に、間質液はコアに接近でき、生じた細孔を通して薬物が間質液内に溶解かつ拡散し、最終的に全身に循環する。
【0068】
本発明はまた、本発明の装置を用いて持続的な薬物放出を提供し、かつ疾患および障害を治療する方法、および本発明の方法に有用なキットを提供する。
定義および概説
【0069】
「薬物」および「医薬物質」は同等の用語であり、置換可能に使用され、それを必要とする患者、個体、または対象での治療的、診断的、または栄養的な使用を意図した任意の物質を包含する。「薬物」および「医薬物質」として、限定はされないが、診断薬、治療薬、ホルモン、栄養素、ビタミン、およびミネラルが挙げられる。
【0070】
細孔形成材料は、第2の材料内に埋込まれるかまたは混合され、かつ第2の材料から(例えば、溶解、拡散、または分解によって)除去できる第1の材料である。細孔形成材料を除去すると、第2の材料に細孔が形成される。
【0071】
材料またはシステムを説明するのに使用する場合の「生体適合性」とは、ヒトなどの生物と接触した際に、その材料またはシステムが副作用を引き起こさない、または最小限の許容可能な副作用のみを引き起こすことを意味する。
【0072】
「患者」、「個体」、または「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒト、またはウシ、ブタ、ヤギ、もしくはヒツジなどの農用動物、またはイヌもしくはネコなどの飼育動物を指す。好ましい態様において、患者、個体、または対象は、ヒトである。
【0073】
本明細書に開示された装置および方法を用いる疾患または障害の「治療」とは、追加的に薬剤を用いてまたは用いずに、疾患または障害のいずれか、または疾患または障害の1つ以上の症状を低減し、もしくは疾患または障害、または疾患や障害の1つ以上の症状の進行を遅らせ、もしくは疾患または障害、または疾患や障害の1つ以上の症状の重症度を軽減するために、本明細書に開示される1つ以上の装置を投与することとして定義される。本明細書に開示される装置および方法による疾患または障害の「抑制」とは、追加的に薬剤を用いてまたは用いずに、疾患または障害の臨床症状を抑制するために、または疾患または障害の有害症状の発現を抑制するために、それを必要とする患者に本明細書に開示される1つ以上の装置を投与することとして定義される。治療と抑制の区別として、治療は疾患または障害の有害な症状が患者に発現した後に行うことを意味し、抑制は疾患または障害の有害な症状が患者に発現する前に行うことを意味する。抑制は、部分的、ほぼ全体的、または全体的に実施されてもよい。いくつかの疾患または障害は遺伝に基づくので、遺伝的検査を用いて疾患または障害の危険性がある患者を識別してもよい。次いで、本発明の装置および方法を使用して、任意の有害な症状の出現を抑制するために、疾患または障害の臨床症状を発症する危険性のある無症候期の患者を治療してもよい。
【0074】
本明細書に開示される装置の「治療的使用」は、本明細書に開示される1つ以上の装置を使用して、上記の定義のように疾患または障害を治療することとして定義される。薬物または治療薬の「治療有効量」は、患者に投与した際に、疾患または障害のいずれか、もしくは疾患または障害の1つ以上の症状を軽減または排除し、もしくは疾患または障害、または疾患や障害の1つ以上の症状の進行を遅らせ、もしくは疾患または障害、または疾患や障害の1つ以上の症状の重症度を軽減するのに十分な薬物または治療薬の量である。治療有効量は、単回用量として患者に投与してもよく、または分割して複数回用量として投与してもよい。
【0075】
本明細書に開示される装置の「予防的使用」は、本明細書に開示される1つ以上の装置を使用して、上記の定義のように疾患または障害を抑制することとして定義される。薬物または治療薬の「予防的有効量」は、患者に投与した際に、疾患または障害の臨床症状の発現を抑制し、もしくは疾患または障害の有害症状の発現を抑制するのに十分な量の薬物または薬剤である。予防有効量は、単回用量として患者に投与してもよく、または分割して複数回用量として投与してもよい。
【0076】
本明細書で使用される「血中濃度」とは、対象の血液中の薬物、治療薬、ホルモン、代謝産物、または他の物質の濃度を指す。血中濃度は、分析する物質に対する標準的な臨床検査室の実務に従って、全血、血清、または血漿中で測定できる。
【0077】
本明細書で使用される単数形の「a」、「an」、および「the」は、他に指示がない限り、または文脈で明らかに他に記載のない限り、複数を含む。
【0078】
本明細書で用語「約」または用語「およそ」を用いて数値が表示される場合に、当然のことであるが、特定された値、ならびに特定された値に適度に近い値の両方ともが含まれる。例えば、「約50℃」または「およそ50℃」という記述は、50℃自体とともに50℃に近い値の両方の開示を含む。従って、「約X」または「およそX」という語句は、X自体の値の記述を含む。「およそ50℃~60℃」または「約50℃~60℃」など範囲が指定される場合は、当然のことであるが、終端点で特定された両方の値は含まれ、かつ各終端点または両方の終端点に近い値は、各終端点または両方の終端点として含まれる。すなわち、「およそ50℃~60℃」(または「約50℃~60℃」)は、「50℃~60℃」および「およそ50℃~およそ60℃」(または「約50℃~60℃」)の両方を記載しているのと同義である。
【0079】
本明細書に開示される数値範囲に関して、ある成分の任意の開示される上限を、その成分の任意の開示される下限と組合わせて、(上限が組合わせる下限よりも大きい場合に)範囲を提供できる。開示される上限および下限のこれらの各組合せは、本明細書内で明白に想定される。例えば、特定の成分の量の範囲を10%~30%、10%~12%、および15%~20%と示す場合は、10%~20%および15%~30%の範囲もまた想定され、一方で15%の下限と12%の上限との組合せは不可能であって、それは想定されない。
【0080】
他で特定しない限り、組成物中の成分の百分率は、重量%、または重量/重量%として表示される。当然のことであるが、組成物中の相対重量百分率に対する基準は、組成物中の全成分の合計した総重量百分率が合計で100になると仮定している。さらに当然のことであるが、1つ以上の成分の相対重量百分率を、組成物中の成分の重量%を組合わせて合計で100となるように上方または下方に調節してもよいが、任意の特定の成分の重量%がその成分に特定された範囲の限界を外れないようにする。
【0081】
本明細書に記載のいくつかの態様は、その中の様々な要素に対し、「含んでいる」または「含む」のように記載されている。異なる態様において、これらの要素は、これらの要素に応じて、「から本質的になっている」または「から本質的になる」という移行句で記載されてもよい。さらに異なる態様において、これらの要素は、これらの要素に応じて、「からなっている」または「からなる」という移行句で記載されてもよい。従って、例えば組成物または方法が「AおよびBを含む」と本態様に開示される場合に、「AおよびBから本質的になる」という組成物または方法に関する異なる態様、および「AおよびBからなる」という組成物または方法に関する異なる態様は、本態様内に既に開示されていたと見做してもよい。同様に、これらの様々な要素に関して「から本質的になる」または「からなる」として記載された態様はまた、これらの要素に応じて、「含む」として記載されてもよい。最後に、これらの様々な要素に関して「から本質的になる」として記載された態様は、これらの要素に応じて「からなる」として記載されてもよく、これらの様々な要素に関して「からなる」として記載される態様はまた、これらの要素に応じて「から本質的になる」と記載されてもよい。
【0082】
装置、組成物、またはシステムが、列記された要素から「本質的になる」と記載される場合に、その装置、組成物、またはシステムは、明白に列記された要素を含むとともに、(症状を治療する組成物において)治療中の症状または記載された装置もしくはシステムの特性に顕著に影響を及ぼさない他の要素を含んでいてもよい。しかしながら、装置、組成物、またはシステムは、(システムを処理する組成物において)治療中の症状に顕著に影響を及ぼす明白に列記された要素以外の他のいかなる要素を含まないか、あるいは装置またはシステムの特性に顕著に影響を及ぼすいかなる要素も含まない。もしくは装置、組成物、またはシステムが、治療中の症状またはシステムの特性に顕著に影響を及ぼす可能性がある列記されたもの以外の追加の要素を含む場合に、装置、組成物またはシステムは、装置またはシステムの組成や特性によって治療中の症状に顕著に影響を及ぼすのに十分となる濃度または量であるそれらの追加の要素を含まない。ある方法が列記された工程から「本質的になる」と記載される場合に、この方法は列記した工程を含み、かつこの方法によって治療中の症状、またはこの方法によって製造され使用される装置もしくはシステムの特性に顕著に影響を及ぼさない他の工程を含んでもよい。しかしこの方法は、明示的に列記された工程以外に、この方法によって治療される症状または製造し使用される装置もしくはシステムに顕著に影響を及ぼすいかなる他の工程も含まない。
【0083】
本開示はいくつかの態様を提供する。任意の態様からの任意の特徴項目は、可能性のある任意の他の態様からの任意の特徴項目と組合せが可能であると考えられる。このように開示された特徴項目の複合構成も、本発明の範囲内となる。
装置構造および製造
本発明の装置の物理的パラメータ
【0084】
いくつかの態様において、本発明の装置は棒状またはほぼ棒状であり、長さは約0.5cm~10cmであり、例えば約1cm~約6cm、または約1cm~約5cm、または約1cm~約4cm、または約1cm~3cm、または約1.5cm~3.5cm、または約2cm~4cm、または約2cm~3cm、または約2cm~5cm、または約2cm~6cm、または約3cm~5cm、または約3cm~6cm、または約4cm~約5cm、または長さ約4cm~約6cm、または約2.6cmである。いくつかの態様において、装置は棒状またはほぼ棒状であり、長さは約3cm~約5cm、または約3.5cm~約4.5cm、または約4cmである。いくつかの態様において、装置は棒状またはほぼ棒状であり、長さは約5cm~約7cm、または約5.5cm~約6.5cm、または約6cmである。
【0085】
一態様において、装置は棒状またはほぼ棒状であり、装置の全体の(すなわちコアとシェルの両方を含む)直径は、約1~約3mmである。いくつかの態様において、装置は棒状またはほぼ棒状であり、直径寸法は約0.5~約7mm、または約2~約5mm、または約2~約3mm、または約2.4mm、または約3mmを含む。いくつかの態様において、装置は棒状またはほぼ棒状であり、全体の直径は約2.4mm、かつ全体の長さが約2.6cmの寸法を含む。
【0086】
コアおよびシェルは、個別に厚さを変えてもよい。図1Aは、コア130を取り囲むシェル120を有する埋込物の一態様の断面110を示す。コアの直径は符号132の矢印で示され、シェルの厚さは符号122の矢印で示される。なお、符号112の矢印で示される埋込装置の全体の直径は、コア132の直径にシェル122の厚さの2倍を加えたものである。一態様において、コアの直径とシェルの厚さの2倍との合計が約7mm以下(すなわち、埋込可能装置の全体の直径は約7mm以下)であることを条件として、コアは個別に約0.25mm~約6.75mmの直径を有し、シェルは個別に約0.125mm~約3.375mmの厚さを有する。一態様において、コアの直径とシェルの厚さの2倍の合計が約7mm以下であるという条件で、コアは個別に約0.25mm~約4mmの直径を有し、シェルは個別に約0.125mm~約2mmの厚さを有する。一態様において、コアの直径とシェルの厚さの2倍の合計が約7mm以下であるという条件で、コアは個別に約1mm~約4mmの直径を有し、シェルは個別に約0.125mm~約2mmの厚さを有する。一態様において、コアの直径とシェルの厚さの2倍の合計が約7mm以下(本態様においては、コアの直径とシェルの厚さの2倍の合計は約5.25mmを超えない)であるという条件で、コアは個別に約2mm~約4mmの直径を有し、シェルは個別に約0.125mm~約0.625mmの厚さを有する。好ましい一態様において、コアは個別に、約2.5mm~約3mm、例えば2.75mmの直径を有し、シェルは個別に約0.3mm~約0.5mm、例えば0.375mmの厚さを有する。(コアが2.75mmの直径を有し、シェルが約0.375mmの厚さを有する態様においては、埋込物の全体の直径は約{2.75mm+(2×0.375mm)}=3.5mmとなる。)
【0087】
棒状装置の場合に、補強部材をコアに組み込んでもよい。その補強部材は、薬物含有コア内にポリマー物質を共押出して組み込んでもよく、それにより補強部材、補強部材を含有するかまたは補強部材を囲む薬物含有コア、および細孔形成材料含有シェルを持つ装置の第3の部分を形成する。補強部材は、純度の高いエチレン-酢酸ビニルなど、良好な力学強度および弾力性を持つポリマーを含んでもよい。補強部材は、金、銅、アルミニウム、またはステンレス鋼などの生体適合性金属からなる金属線であってもよい。
【0088】
共押出して、続いて押出した棒を切断することで棒状の装置を製造すると、円筒状の棒が得られる。円筒の両端部(円筒の基部)は露出したコア領域を持つことになる。装置のいずれかの端部の露出したコア領域からの薬物の溶出を防ぐために、装置の一方の端部または両方の端部を封止材料で封止してもよい。封止材料は、エチレン-酢酸ビニル、シリコーン、または受食性ポリマーなどのポリマーであってもよい。封止材料の厚さは、1mm、2mm、または3mmであってもよい。封止材料は、コア医薬物質に対して不透過性であってもよく、この材料は、装置の端部からのコア医薬物質の溶出を防ぐのに役立つ。封止材料は、コア医薬物質に対して透過性であってもよく、この材料は、装置の端部からのコア医薬物質の溶出を調節するのに役立つ。
本発明の装置の化学組成
【0089】
コア:装置のコアはポリマーと薬物を含む。一態様において、コアは、T3などの約40%~約80%の薬物、またはT3などの約45%~約75%の薬物、またはT3などの約50%~約70%の薬物、またはT3などの55%~約65%の薬物、またはT3などの約60%の薬物を含む。コア中の残部はポリマーからなり、その好ましいポリマーはエチレン-酢酸ビニル(EVA)である。EVA混合物は、約60%~約75%のエチレン含有量と、約40%~約25%の酢酸ビニル含有量とを有してもよい。好ましいEVA混合物は、約33%の酢酸ビニル含有量を有する。
【0090】
シェル:装置のシェルはポリマーおよび細孔形成材料を含む。好ましい細孔形成材料はエチルセルロースである。一態様において、シェルは、エチルセルロースなどの約1%~約80%の細孔形成材料、またはエチルセルロースなどの約1%~約40%の細孔形成材料、またはエチルセルロースなどの約30%~約80%の細孔形成材料、またはエチルセルロースなどの約5%~約25%の細孔形成材料、またはエチルセルロースなどの約5%~約15%の細孔形成材料、またはエチルセルロースなどの約25%~約50%の細孔形成材料、または約30%~約60%の細孔形成材料、エチルセルロースなどの約35%~約55%の細孔形成材料、またはエチルセルロースなどの約40%~約50%の細孔形成材料、またはエチルセルロースなどの約30%~約40%の細孔形成材料、またはエチルセルロースなどの約50%~約60%の細孔形成材料を含有する。シェル中の残部はポリマーからなる。一態様において、コアに使用するのと同一のEVAなどのポリマーをシェルに使用し、例えばそのEVAは約33%の酢酸ビニルを有する。別の態様において、コアに使用するポリマーとは異なるポリマーをシェルに使用する。
【0091】
さらなる好ましい細孔形成材料は、クエン酸および安息香酸、あるいはクエン酸または安息香酸の塩、例えばナトリウム塩およびカリウム塩である。クエン酸および安息香酸は、EVAシェルを有する埋込物、またはEVAシェルおよびEVAコアを有する埋込物ではシェルの細孔形成材料として特に有用である。クエン酸および安息香酸は安価であり、USP/NFグレードで一般に入手可能であり、通常のHPLC分析中にそれらの紫外線吸収特性によって容易に識別できる。安息香酸は、227nmと275nmに特に強い吸収特性(=λmax)を持つ。一態様において、シェルは、安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約1%~約80%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約1%~約40%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約30%~約80%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約5%~約25%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約5%~約15%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約25%~約50%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約30%~約60%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約35%~約55%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約40%~約50%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約30%~約40%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約50%~約60%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約60%~約70%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約50%~約70%の細孔形成材料、または安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩などの約50%~約80%の細孔形成材料を含有する。シェルの残部はポリマーからなる。一態様において、コアに使用するのと同一のEVAなどのポリマーをシェルに使用し、例えばそのEVAは約33%の酢酸ビニルを有する。別の態様において、コアに使用するポリマーとは異なるポリマーをシェルに使用する。
【0092】
安息香酸はアルコール可溶性であり、細孔形成するシェルから容易に除去できる。安息香酸はまた、局所投与、経口投与、直腸投与、膣内投与、筋肉内投与、および静脈内投与用に、米国食品医薬品局によって現在承認されている。クエン酸より安息香酸は、金属加工装置に対し低腐食性である。さらに、安息香酸は120℃の融点を持ち、加熱ノズルを通過する際に、ポリマーと細孔形成材料の配合物の押出において表面潤滑剤として機能できる。
【0093】
本発明のいくつかの態様において、装置はさらに放射線不透過性物質を含む。放射線不透過性物質は、好ましくはX線放射に対して不透過である。放射線不透過性物質は、埋込物を非侵襲的に、例えばX線またはCTスキャンにより埋込物の精度の良い配置を支援する。放射線不透過性物質は、コア内、シェル内、またはコアとシェルの両方内に配置してもよい。硫酸バリウムは好ましい放射線不透過性物質である。使用可能な他の放射線不透過性物質として、限定はされないが、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、ビスマス塩、およびタングステン酸カルシウムが挙げられる。
【0094】
本発明のいくつかの態様において、装置はさらに、MRI走査中に埋込物の位置の特定に使用するように、磁気共鳴画像法により検出可能な物質を含む。この磁気共鳴画像法により検出可能な物質は、コア内、シェル内、またはコアとシェルの両方内に配置してもよい。
【0095】
本発明のいくつかの態様において、装置はさらに、放射線不透過性物質と磁気共鳴画像法により検出可能な物質の両方を含む。磁気共鳴画像法によって検出可能な物質は、コア内、シェル内、またはコアとシェルの両方内に配置してもよく、放射線不透過性物質は、コア内、シェル内、またはコアとシェルの両方内に配置してもよい。
本発明の装置を用いたバースト放出の低減
【0096】
本発明の装置からのバースト放出は、以前から使用される装置と比較して低減され、バースト放出の減少の例を、図12A図12B図13A、および図13Bに示す。本発明の装置は、細孔形成材料を含まない装置に対比してバースト放出の低減を調節するように、様々な割合の細孔形成材料および様々なサイズの細孔形成材料を用いて調製できる。いくつかの態様において、バースト放出は少なくとも約3桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は最大約3桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は、約2桁~約3桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は少なくとも約2桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は最大約2桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は約2桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は、約1~約2桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は少なくとも約1桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は最大約1桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は約1桁低減される。いくつかの態様において、バースト放出は約50%低減される。
【0097】
比較のためにバースト放出を測定する最初の期間は、埋込後の最初の1時間、埋込後の最初の6時間、埋込後の最初の12時間、埋込後の最初の24時間、埋込後の最初の48時間、埋込後の最初の3日間、埋込後の最初の4日間、埋込後の最初の5日間、埋込後の最初の6日間、埋込後の最初の7日間、埋込後の最初の8日間、埋込後の最初の9日間、または埋込後の最初の10日間であってもよい。
装置に使用する医薬物質および薬物
【0098】
本発明の装置には様々な医薬物質および薬物を使用してもよい。一態様において、コア内の医薬物質または薬物は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、またはそれらの組合せからなる群から選択される物質を含む。一態様において、コア内の医薬物質または薬物は、L-トリヨードチロニン(T3)を含む。一態様において、コア内の医薬物質または薬物は、L-チロキシン(T4)を含む。一態様において、コア内の医薬物質または薬物は、L-チロキシン(T4)とL-トリヨードチロニン(T3)の組合せを含む。
【0099】
一態様において、コア内の医薬物質または薬物はロピニロールを含んでもよい。一態様において、コア内の医薬物質または薬物はテノホビルを含んでもよい。一態様において、コア内の医薬物質または薬物は、エムトリシタビンを含んでもよい。一態様において、コア内の医薬物質または薬物は、テノホビルとエムトリシタビンの組合せを含んでもよい。一態様において、コア内の医薬物質または薬物はボセンタンを含んでもよい。一態様において、コア内の医薬物質または薬物はメチルフェニダートを含んでもよい。一態様において、コア内の医薬物質または薬物はリラグルチドを含んでもよい。一態様において、コア内の医薬物質または薬物は、アトバコン、プログアニル、またはアトバコンとプログアニルの組合せを含んでもよい 一態様において、コア内の医薬物質または薬物はナルメフェンを含んでもよい。
【0100】
一態様において、コア内の医薬物質または薬物は、ドキシサイクリン、アトバコン、プログアニル、またはアトバコンとプログアニルの組合せを含むことができる。
【0101】
コアに使用してもよい任意の医薬物質または薬物は、シェル医薬物質を用いる埋込物および方法に、シェル医薬物質として使用してもよい。
【0102】
本明細書に記載の任意の医薬物質または薬物は、それらの塩でない形態で、または医薬物質または薬物の塩として使用してもよい。本明細書に記載の任意の医薬物質または薬物は、それらの非溶媒和物または非水和物の形態で、あるいは医薬物質または薬物の溶媒和物または水和物として使用してもよい。
本発明の装置により治療可能な疾患
【0103】
本発明の装置は、様々な疾患の治療方法に使用できる。その疾患として、甲状腺機能低下症、代謝異常症候群、高脂血症、および肥満症(T3、T4、またはT3とT4の組合せを含む装置を使用)、パーキンソン病(ロピニロールを含む装置を使用)、下肢静止不能症候群(RLS)(ロピニロールを含む装置を使用)、HIVまたは他のレトロウイルス感染の暴露前予防またはHIVおよび他のレトロウイルス感染の治療(テノホビル、エムトリシタビン、またはテノホビルとエムトリシタビンの組合せを含む装置を使用)、肺動脈高血圧症(ボセンタンを含む装置を使用)、注意欠陥多動性障害(メチルフェニダートを含む装置を使用)、および2型糖尿病(リラグルチドを含む装置を使用)が挙げられる。本発明の装置はまた、肥満症の治療および体重低減に使用(リラグルチドを含む装置を使用)してもよい。本発明の装置はまた、マラリアの治療またはマラリアの予防に使用(ドキシサイクリン、アトバコン、プログアニル、またはアトバコンとプログアニルの組合せを含む装置を使用)してもよい。本発明の装置は、アルコール依存症またはアルコール中毒の治療に使用(ナルメフェンを含む装置を使用)してもよい。
装置に使用する典型的なポリマー
【0104】
上述のように、埋込物のコアとシェルの両方に使用するのに好ましいポリマーは、エチレン-酢酸ビニル(EVA)である。しかし、他のポリマーを本発明に使用してもよい。本明細書で使用される「ポリマー」または「ポリマー材料」は、繰返しモノマー単位または共モノマー単位を含む高分子を意味する。ポリマーは、生体内分解性または生体内非分解性であってもよい。ポリマーは、単一重合体、共重合体、三元重合体であってもよく、または4個以上のモノマーを含有してもよい。ポリマーは好ましくは生体適合性である。
【0105】
本発明の装置の製造に使用してもよいポリマー例として、アクリル、アガロース、アルギン酸、およびそれらの組合せ、セルロースエーテル、コラーゲン、ポリエチレングリコール部分とポリブチレンテレフタラート部分を含む共重合体(PEG/PBT)(PolyActiveTM)、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体、それらとポリエチレングリコールとの共重合体、それらの誘導体および混合物、デキストラン、デキストロース、エラスチン、エポキシ化物、エチレン-酢酸ビニル(EVA共重合体)、フッ素系ポリマー、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、無水マレイン酸共重合体、メチルセルロースおよびエチルセルロース、非水溶性酢酸セルロース、非水溶性キトサン、非水溶性ヒドロキシエチルセルロース、非水溶性ヒドロキシプロピルセルロース、ペプチド類、PLLA-ポリグリコール酸(PGA)共重合体(ポリ-L-乳酸-co-グリコール酸、またはPLGAとして公知)、ポリL-乳酸、ポリメタクリル酸2-エトキシエチル、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸2-メトキシエチル、ポリメタクリル酸2-メトキシエチル、ポリアクリルアミド、ポリアルギン酸、ポリアミノ酸、ポリ無水物類、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸ベンジル、ポリβ-ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリD,L-乳酸、ポリD,L-ラクチド(PLA)、ポリ(D,L-ラクチド-co-カプロラクトン)(PLA/PCL)ならびにポリ(グリコリド-co-カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLA/PGA)、ポリエーテルウレタン尿素、ポリ(グルタミン酸エチル-co-グルタミン酸)、ポリ炭酸エチレン、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)、ポリグルタミン酸、ポリ(グルタミン酸 -co-グルタミン酸エチル)、ポリグリコール酸、ポリ(グリコリド-co-炭酸トリメチレン)(PGA/PTMC)、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリイミノカルボナート、ポリロイシン、ポリ(ロイシン-co-ヒドロキシエチルグルタミン)、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリリジン、ポリオルトエステル、ポリオキサアミド、ポリオキサエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスファゼン、ポリ炭酸プロピレン、ポリプロピレングリコール、ポリピロール、ポリ(tertブチルオキシ-グルタミン酸カルボニルメチル)、ポリテトラメチレングリコール、ポリ炭酸トリメチレン、ポリ尿素 、ポリウレタン、ポリ(ウレタン-尿素)、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール-co-酢酸ビニル)、高分子量ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ[(97.5%ジメチル-炭酸トリメチレン)-co-(2.5%炭酸トリメチレン)]、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキシド、ポリアミド、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ヒドロキシ酪酸 -co-ヒドロキシ吉草酸)共重合体(PHBV)、ポリカプロラクトン-co-アクリル酸ブチル、ポリデプシペプチド類、ポリジオキサノン(PDS)、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリグリコール酸ならびにポリ(L-ラクチド)(PLLA)などのそれらの共重合体および混合物、ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリヒドロキシ酪酸(PHBT)およびポリヒドロキシ酪酸の共重合体、ポリイミノカルボナート、ポリ乳酸、ポリメタクリル酸、ポリオレフィン、ポリホスファゼンポリマー、フマル酸ポリプロピレン、ヒアルロン酸などの多糖類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE Teflon(登録商標))、ポリウレタン、シリコーン、チロシン由来ポリアリラート、チロシン由来ポリカルボナート、チロシン由来ポリイミノカルボナート、チロシン由来ポリホン酸、ウレタン、およびそれらの組合せ、誘導体ならびに混合物が挙げられる。
【0106】
本発明の装置の製造に使用してもよい分解性ポリマーまたは生体内分解性ポリマーの例として、ポリアミド、脂肪族ポリカルボナート、ポリシアノアクリル酸アルキル、ポリシュウ酸アルキレン、ポリ無水物類、ポリカルボン酸、ポリエステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリイミド、ポリイミノカルボナート、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ-D、L-乳酸(DL-PLA)、ポリジオキサノン、ポリ(グリコール酸)、ポリ-L-乳酸(L-PLA)、ポリ-L-乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、およびポリホスホエステル、ポリ炭酸トリメチレン、ならびにそれらの誘導体および混合物の分解性形態または生体内分解性形態が挙げられる。このポリマーはまた、セルロースエステル、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリビニリデン、フッ化物、シリコーン、ならびにそれらの誘導体および組合せからなる群から選択される材料から生成してもよい。
【0107】
本発明で使用するポリマーのさらなる代表例として、限定はされないが、ABS樹脂、アクリルポリマーおよびアクリル共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、ならびにカルボキシメチルセルロース、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体、セロファン、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、セルロースエーテル、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、ビニルモノマー同士ならびにオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOHの一般名、またはEVALの商品名により公知)、ポリ(セバシン酸グリセリル)、ポリ(グリコール酸-co-トリ炭酸メチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン66およびポリカプロラクタムなどのポリアミド、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどの商品名SolefTMまたはKynarTMのポリフッ化ビニリデン系の単一ポリマーまたは共重合体のようなポリハロゲン化ビニリデン、レーヨン、三酢酸レーヨン、シリコーン、ポリ塩化ビニルのようなハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、これらのポリマーとポリ(エチレングリコール)(PEG)との共重合体、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0108】
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ無水物類、ポリD,L-乳酸、ポリD,L-ラクチド、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ炭酸エチレン、ポリグリコール酸、ポリグリコリド、ポリL-乳酸、ポリL-ラクチド、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリオルトエステル、ポリオキサアミド、ポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ポリホスホエステル、ポリ炭酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリチロシン由来カルボナート、ポリチロシン由来イミノカルボナート、ポリチロシン由来アリラート、これらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体、またはそれらの組合せであってもよい。
【0109】
本発明で有用な生体内非分解性ポリマーの例としては、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(EVA)、ポリビニルアルコール、およびポリカルボナート系ポリウレタンなどのポリウレタンが挙げられる。
【0110】
前述のように、本発明の装置のコアとシェルの両方に好ましいポリマーは、酢酸エチルビニル(EVA)である。
【0111】
装置は、1種のポリマーまたは2種以上のポリマーの混合物を含んでもよい。2種のポリマーの混合物は、薬物の放出速度を調節できる。治療有効量の薬物は、本発明の装置から適度な長期間にわたって放出されることが望ましい。Yangらの米国特許第6,258,121号は、異なる放出速度を有する2種のポリマーを混合しそれらを単一層内に組み込んで、放出速度を変更する方法を開示している。この技術はまた、埋込時の薬物のバースト放出を低減するのに役立てることができる。
典型的な細孔形成材料
【0112】
シェルに使用してもよい細孔形成材料の例として、エチルセルロース、メチルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロースなどのアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース;ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、リノール酸などの脂肪酸;塩化ナトリウム、塩化カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの生体適合性塩;および低分子量ポリビニルピロリドン(PVP)などの可溶性ポリマーが挙げられる。細孔形成材料の粒子を好ましくは狭いサイズ分布で使用して、細孔のサイズを制御することが可能となる。使用される細孔形成材料の平均直径は、約1μm~約300μmであってもよい。いくつかの態様において、細孔形成材料の平均直径はシェルの厚さより大きい。いくつかの態様において、細孔形成材料の平均直径はシェルの厚さにほぼ等しい。いくつかの態様において、細孔形成材料の平均直径はシェルの厚さより小さい。いくつかの態様において、細孔形成材料の平均直径はシェルの厚さの約75%未満である。いくつかの態様において、細孔形成材料の平均直径はシェルの厚さの約50%未満である。いくつかの態様において、細孔形成材料の平均直径はシェルの厚さの約25%未満である。
【0113】
細孔形成材料は、埋込可能な装置のシェル内に細孔を形成するように機能し、かつ好ましい態様においては薬学的に活性な物質または薬物ではない。別の好ましい態様おいて、細孔形成材料は、埋込可能な装置が治療を目的とする疾患または症状に対して薬学的に活性な物質または薬物ではない。したがって、例えば細孔形成材料がクエン酸である場合に、埋込可能な装置は、クエン酸が治療に有用である疾患または症状の治療を目的としない。
【0114】
いくつかの態様において、細孔形成材料は球状の粒子またはほぼ球状の粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の直径は約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は、約1μm~約50μmの平均直径を持つ球状の粒子またはほぼ球状の粒子を含む。いくつかの態様において、細孔形成材料は球状の粒子またはほぼ球状の粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布する。
【0115】
いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は、約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、粒子の最長寸法は約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は、粒子の平均最長寸法から10%以内に分布する。
【0116】
いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の平均寸法は約1μm~約50μmであり、粒子の平均寸法とは、粒子の最長寸法と粒子の最短寸法の平均である。いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、粒子の平均寸法は約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、細孔形成材料は粒子を含み、少なくとも約90%の粒子の平均寸法は、粒子の平均寸法をさらに平均した値から10%以内に分布する。
【0117】
球状の粒子またはほぼ球状の粒子などの細孔形成材料粒子の平均直径は、約1μm~約300μmであってもよい。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約300μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約200μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約100μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約50μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約30μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約25μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約20μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約10μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は平均直径から約10%以内に分布し、この平均直径は約1μm~約5μmである。
【0118】
一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約300μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約200μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約100μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約50μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約30μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約25μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約20μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約10μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の直径は約5μm未満である。
【0119】
一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約300μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約200μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約100μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約50μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約30μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約25μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約20μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約10μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の直径は約5μm未満である。
【0120】
針状の粒子などの非球状または不規則な形状の粒子の場合に、粒子はそれらの最長寸法によって特徴付けてもよい。細孔形成材料の平均最長寸法は、約1μm~約300μmであってもよい。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約300μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約200μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約100μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約50μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約30μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約25μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約20μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約10μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は平均最長寸法から約10%以内に分布し、この平均最長寸法は約1μm~約5μmである。
【0121】
一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約300μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約200μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約100μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約50μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約30μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約25μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約20μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約10μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子の最長寸法は約5μm未満である。
【0122】
一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約300μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約200μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約100μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約50μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約30μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約25μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約20μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約10μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子の最長寸法は約5μm未満である。
【0123】
針状の粒子などの非球状または不規則な形状の粒子の場合に、粒子はまた、それらの最長寸法と最短寸法の平均(「LDとSDの平均」)によって特徴付けられてもよい。細孔形成材料のLDとSDの平均をさらに平均した値は、約1μm~約300μmであってもよい。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約300μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約200μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約100μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約50μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約30μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約25μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約20μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約10μmである。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は、LDとSDの平均をさらに平均した値から約10%以内に分布し、このLDとSDの平均をさらに平均した値は約1μm~約5μmである。
【0124】
一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約300μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約200μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約100μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約50μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約30μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約25μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約20μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約10μm未満である。一態様において、少なくとも約75%の粒子のLDとSDの平均は約5μm未満である。
【0125】
一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約300μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約200μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約100μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約50μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約30μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約25μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約20μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約10μm未満である。一態様において、少なくとも約90%の粒子のLDとSDの平均は約5μm未満である。
【0126】
シェルに使用する細孔形成材料として、単一の材料を使用してもよい。あるいは2種以上の異なる細孔形成材料を使用してもよい。
本発明の装置の製造
【0127】
いくつかの態様において、本発明の埋込可能な装置は、装置の薬物含有コアと細孔形成材料含有シェルとを共押出して製造できる。薬物物質を、微粉砕(例えば、ボールミル粉砕、インパクトミル粉砕)、噴霧乾燥、溶媒沈殿、篩い分け、または当技術分野で公知の他の微粉末を製造する方法を用いて、もしくは方法を組合せて微粒子まで小さくする。これも微粒子として調製されているポリマーをこの薬物とを組み合わせて、薬物含有コアの作製に使用される混合物を生成できる。同様に、細孔形成材料含有シェルは、ポリマーの微粒子を所望のサイズの細孔形成材料の粒子と混合して調製される。各混合物は、ポリマーの軟化点などの押出に適した温度まで加熱される。この時点で、任意にかつ必要に応じて、軟化した混合物の一方または両方を均質化できる。次いで混合物を、例えば、Microtruderスクリュー押出機(モデル番号RCP-025、Randcastle Extrusion Systems、Cedar Grove、NJ)を介して、または業界で公知の他の押出装置を介して共押出する。押出の直径、ならびに温度、圧力および他のパラメーターは、各薬物およびポリマーに適するように調節してもよい。
【0128】
押出物を水平に押出し、次の工程のために回収できる。押出物は所望の長さ、例えば約1~約3cmに切断してもよい。次いで押出物を、埋込物の表面から過剰な薬物を溶解除去する溶媒中で、または殺菌を促進する溶媒中で洗浄できる。埋込前に細孔形成材料の除去が望ましい場合には、シェルから細孔形成材料を除去する溶媒で洗浄するかまたはその溶媒中に浸漬してもよい。埋込物の洗浄に使用できる溶媒の例として、水、食塩水、水性緩衝液、およびエタノールまたはイソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。エタノール-水混合物などの水とアルコールの混合物もまた使用してもよい。好ましい溶媒は、100%エタノールまたは水-エタノール混合物である。その後に埋込物を乾燥して包装してもよい。
【0129】
洗浄後に溶媒を除去するために乾燥してもよい。乾燥は、典型的には約30℃~約60℃で約6~約24時間、例えば約40℃で約12時間実施される。
【0130】
乾燥後に包装および殺菌を実施してもよい。埋込物を、防湿箔付きパウチ内に真空パックし、熱シールおよび/または真空シールし、次いで、例えば約20~30kGyまたは約25kGy、あるいは約2.5~約3.5Mradまたは約2.9~約3.1Mradまたは約3Mradのγ線照射を用いて殺菌してもよい。
装置の薬理学的性質
薬物動態
【0131】
埋込物は、ほぼ一定の血中濃度を提供できる。薬物の送達量は、好ましくは薬物の治療範囲内であり、毒性をもたらす可能性のある量より低くする。一態様において、本発明の装置は複数の薬物を含んでもよい。一態様において、2個以上の埋込可能な装置を患者内に挿入して、血中の所望の薬物濃度を達成してもよい。
【0132】
正常成人中の総血清T3(すなわち遊離したT3およびタンパク質に結合したT3の両方)は、約0.9~約2.7nmol/L(約60~約180ng/dL)の範囲にある(Klee G.G., Clinical Chemistry 42(1):155(1996))。したがって本発明のT3含有埋込物は、患者に投与されて、約0.9~約2.7nmol/L(約60~約180ng/dL)、または約1.2~約2.7nmol/L(約80~約180ng/dL)の総T3濃度を提供できる。本発明のT3含有埋込物は、患者に投与されて、約0.34~約4.82μIU/mLの甲状腺刺激ホルモンの血中濃度をもたらすことができる。
【0133】
本発明の装置は、血中(例えば血漿中または血清中)に定常状態の濃度の薬物を提供するように設計してもよい。本発明の装置は、結果として得られる血中の薬物濃度が長期間にわたって本質的に一定のままであるように設計してもよい。本発明の装置は、結果として生じる血中の薬物濃度が長期間にわたってほぼ一定のままであるように設計してもよい。
【0134】
本発明の装置からの薬物の放出は、溶解速度およびポリマー母材を通る受動拡散、ならびに他のパラメーターに依存する。
【0135】
薬物の放出速度はまた、患者内への挿入前の埋込物の洗浄によって影響される。埋込物は、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶媒で洗浄してもよい。
【0136】
「ほぼ一定の血中濃度」とは、対象または患者の血中で、ある期間にわたってほぼ一定の薬物濃度を指している。先に定義したように、「血中濃度」は、対象の血液中の薬物、ホルモン、代謝産物、または他の物質の濃度を指し、検査される物質に対する標準的な臨床検査室の業務に従って、全血中、血清中、または血漿中で測定できる。一態様において、ほぼ一定の薬物の血中濃度は、1日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または9ヶ月にわたって、それらの期間での平均血中濃度に対して約±30%以内に分布している。別の態様において、ほぼ一定の薬物の濃度は、1日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または9ヶ月にわたって、それらの期間での平均血中濃度に対して約±20%以内に分布している。別の態様において、ほぼ一定の薬物の濃度は、1日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または9ヶ月にわたって、それらの期間での平均血中濃度に対して約±10%以内に分布している。「ほぼ一定の放出速度」とは、1日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または9ヶ月などの期間にわたって、ほぼ一定量の医薬物質が本発明の装置から放出されることを示している。いくつかの態様において、ほぼ一定の放出速度は、指定期間にわたって、平均の放出に対して約±50%、約±40%、約±30%、約±20%、または約±10%以内に分布している。ほぼ一定の血中濃度を得るためには、ほぼ一定の放出速度が好ましい。「本質的に一定」とは、長期間の内の約95%にわたって、血中の薬物濃度が平均血中濃度の約3標準偏差以内、約2標準偏差以内、または好ましくは約1標準偏差以内にあることを意味している。血中濃度の測定は、1時間毎、1日に2回、1日毎、1週間に2回、1週間毎、2週間に1回、1月毎、または他の任意の定期的な間隔で、平均の血中濃度を測定するように実施できる。例えば、1週間毎の間隔で採取された薬物の平均血中濃度が2.0ng/mlであり、かつ測定値の1標準偏差が±0.1ng/mlの場合に、約95%の測定値が±0.3ng/ml、±0.2ng/ml、または好ましくは約±0.1ng/ml以内となる血中濃度は、本質的に一定であると見做される。「長期間」とは、約3ヶ月~約1年またはそれより長い期間を意味し、例えば、長期間は、約3ヶ月または約3ヶ月以上、約4ヶ月または約4ヶ月以上、約5ヶ月または約5ヶ月以上、約6ヶ月または約6ヶ月以上、約9ヶ月または約9ヶ月以上、約12ヶ月または約12ヶ月以上、約15ヶ月または約15ヶ月以上、約18ヶ月または約18ヶ月以上、約21ヶ月または約21ヶ月以上、約24ヶ月または約24ヶ月以上であってもよい。
薬物送達装置の挿入と除去
【0137】
本発明の別の態様は、それを必要とする患者に医薬物質または薬物を送達する方法であり、その方法は本明細書に開示する1つ以上の装置を患者に挿入する工程を含み、医薬物質または薬物は、1つ以上の装置から患者内に放出される。本発明の好ましい方法において、本発明の装置は皮下への埋込により投与される。種々の態様において、装置は、上腕、肩甲部、背中、脚および腹部からなる群から選択される部位で皮下に埋込まれる。埋込の前に、患者に例えばイソフルランまたは当技術分野で公知の他の麻酔薬で軽く麻酔をかけてもよく、および/または埋込の部位に局所的に経皮的にまたは皮下に麻酔薬を適用してもよい。皮膚を通して小部分を切開し、トロカールを皮下に挿入し、次いで1個の埋込物を装填してもよい。スタイレットを挿入して埋込物を所定の位置に保持し、トロカールを慎重に取り外して、埋込物を皮下の隙間に残留させてもよい。各部位は封止するように縫合してその後に検査してもよい。皮膚刺激、炎症、感染または他の部位に特異的な有害作用などの合併症を監視して、必要に応じて例えば抗生物質により治療してもよい。
【0138】
様々な態様において、本発明の装置は体内に最大1年またはそれ以上残留させてもよい。したがって、体内への薬物の持続放出の期間は、約1ヶ月~約1年またはそれ以上、あるいは約3ヶ月~約1年またはそれ以上であり、例えば、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約15ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約21ヶ月、または少なくとも約24ヶ月またはそれ以上であってもよい。いくつかの態様において、装置は1年を超えて体内に残留させてもよい。埋込物は、治療期間が終了した際に、鉗子を使用して切開して、例えば3mmで切開して身体から除去されてもよい。
【0139】
第2の埋込物は、例えば、第1の埋込物から放出された薬物によって引き起こされる任意の有害作用を相殺する医薬物質を送達するように使用されてもよい。
【0140】
複数の埋込物を1人の患者内に挿入して、単一の薬物の送達を調節し、またはいくつかの薬物を送達してもよい。
例示的な態様
【0141】
本発明を以下の態様によりさらに説明する。各態様の特徴は、適切かつ実用的であるなら、他の任意の態様とも組合せ可能である。
【0142】
態様1:第1のポリマー材料とコア医薬物質とを含むコア、および第2のポリマー材料と細孔形成材料とを含むシェルを含む、医薬物質を送達する埋込可能な装置であって、全体が第1のポリマー材料とコア医薬物質で作製された対比の装置に比較して、バースト放出が低減されている埋込可能な装置。
【0143】
態様2:前記シェルは非医薬層である、態様1の埋込可能な装置。
【0144】
態様3:前記シェルはシェル医薬物質をさらに含む、態様1の埋込可能な装置。
【0145】
態様4:前記シェルは約1重量%~約80重量%の細孔形成材料を含む、態様1~3のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0146】
態様5:前記細孔形成材料は球状の粒子を含み、少なくとも約90%の前記球状の粒子の直径は約1μm~約50μmである、態様1~4のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0147】
態様6:前記細孔形成材料は、約1μm~約50μmの平均直径を有する球状の粒子を含む、態様1~5のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0148】
態様7:前記細孔形成材料は球状の粒子を含み、少なくとも約90%の前記球状の粒子の直径は平均直径から10%以内に分布する、態様1~6のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0149】
態様8:前記細孔形成材料は生体内分解性材料を含む、態様1~7のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0150】
態様9:前記細孔形成材料は生体内非分解性材料を含む、態様1~7のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0151】
態様10:前記細孔形成材料は、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、脂肪酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、リノール酸、生体適合性の塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、およびリン酸ナトリウムからなる群から選択される材料を含む、態様1~7のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0152】
態様11:前記細孔形成材料はエチルセルロースを含む、態様1~7のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0153】
態様12:前記埋込可能な装置を洗浄すると、前記細孔形成材料はシェルから溶解または解離する、態様1~11のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0154】
態様13:前記第1のポリマー材料または前記第2のポリマー材料は生体内分解性材料を含む、態様1~12のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0155】
態様14:前記第1のポリマー材料または前記第2のポリマー材料は生体内非分解性材料を含む、態様1~12のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0156】
態様15:前記第1のポリマー材料は、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ABS樹脂、アクリルポリマーおよび共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルモノマーの単独重合体およびオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALとして公知である)、ポリセバシン酸グリセリル、ポリ(グリコール酸-co-炭酸トリメチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ナイロン66、ポリカプロラクタム、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン系の単独重合体または共重合体、レーヨン、レーヨン-トリアセタート、シリコーン、ハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、およびこれらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群から選択される1種以上の材料を含む、態様1~12のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0157】
態様16:前記第1のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニルを含む、態様15の埋込可能な装置。
【0158】
態様17:前記第2のポリマー材料は、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ABS樹脂、アクリルポリマーおよび共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルモノマーの単独重合体およびオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALとして公知である)、ポリセバシン酸グリセリル、ポリ(グリコール酸-co-炭酸トリメチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ナイロン66、ポリカプロラクタム、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン系の単独重合体または共重合体、レーヨン、レーヨン-トリアセタート、シリコーン、ハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、およびこれらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群から選択される1種以上の材料を含む、態様1~12、15および16のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0159】
態様18:前記第2のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニルを含む、態様17の埋込可能な装置。
【0160】
態様19:前記埋込可能な装置は棒状である、態様1~18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0161】
態様20:前記埋込可能な装置の直径は約1mm~約8mmである、態様19の埋込可能な装置。
【0162】
態様21:前記埋込可能な装置の長さは約10mm~約80mmである、態様19または20の埋込可能な装置。
【0163】
態様22:前記埋込可能な装置は、該埋込可能な装置の一方の端部が封止されている、態様19~21のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0164】
態様23:前記埋込可能な装置は、該埋込可能な装置の両方の端部が封止されている、態様19~22のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0165】
態様24:前記コア医薬物質は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、L-チロキシン(T4)およびL-トリヨードチロニン(T3)の組合せ、ロピニロール、テノホビル、エムトリシタビン、テノホビルとエムトリシタビンの組合せ、ボセンタン、メチルフェニダート、およびリラグルチドからなる群から選択される1つ以上の物質を含む、態様1~23のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0166】
態様25:前記コア医薬物質はロピニロールまたはトリヨードチロニンを含む、態様1~24のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0167】
態様26:前記コア医薬物質は、前記コアの約1重量%~約80重量%を構成する、態様1~25のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0168】
態様27:前記シェル医薬物質は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、L-チロキシン(T4)とL-トリヨードチロニン(T3)の組合せ、ロピニロール、テノホビル、エムトリシタビン、テノホビルとエムトリシタビンの組合せ、ボセンタン、メチルフェニダート、およびリラグルチドからなる群から選択される1つ以上の物質を含む、態様3~26のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0169】
態様28:前記シェル医薬物質はロピニロールまたはトリヨードチロニンを含む、態様3~27のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0170】
態様29:前記シェル医薬物質は、外層の約1重量%~約40重量%を構成する、態様3~28のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0171】
態様30:前記コアの内部に補強部材をさらに含む、態様3~29のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0172】
態様31:第1のポリマー材料とコア医薬物質を含む第1の組成物を押出してコアを形成すること、および第2のポリマー材料と細孔形成材料を含む第2の組成物によりコアを被覆してシェルを形成することを含む、埋込可能な装置を形成する方法。
【0173】
態様32:第1のポリマー材料とコア医薬物質を含む第1の組成物および第2のポリマー材料と細孔形成材料を含む第2の組成物を共押出することを含み、第1の組成物を押出してコアを形成し、共押出された第2の組成物はコアの周りにシェルを形成する、埋込可能な装置を形成する方法。
【0174】
態様33:前記第1の組成物は、前記第1のポリマー材料と前記コア医薬物質とを組み合わせることにより形成される、態様31または態様32の方法。
【0175】
態様34:前記第2の組成物は、前記第2のポリマー材料と前記細孔形成材料とを組み合わせることにより形成される、態様31~33のいずれか1つの方法。
【0176】
態様35:前記埋込可能な装置を洗浄することをさらに含む、態様31~34のいずれか1つの方法。
【0177】
態様36:前記埋込可能な装置は、エタノール、水、またはエタノールと水の混合物中で洗浄される、態様35の方法。
【0178】
態様37:前記装置の洗浄は、前記細孔形成材料を前記埋込可能な装置から溶解させるか、または細孔形成材料を解離させてシェルに複数の細孔を形成する、態様35または態様36の方法。
【0179】
形態38:前記第2の組成物は非医薬材料である、態様31~37のいずれか1つの方法。
【0180】
態様39:前記第2の組成物はシェル医薬物質をさらに含む、態様31~38のいずれか1つの方法。
【0181】
態様40:前記第2の組成物は約1重量%~約80重量%の細孔形成材料を含む、態様31~39のいずれか1つの方法。
【0182】
態様41:前記細孔形成材料は球状の粒子を含み、少なくとも約90%の球状の粒子の直径は約1μm~約50μmである、態様31~40のいずれか1つの方法。
【0183】
態様42:前記細孔形成材料は、約1μm~約50μmの平均直径を有する球状の粒子を含む、態様31~41のいずれか1つの方法。
【0184】
態様43:前記細孔形成材料は球状の粒子を含み、少なくとも約90%の球状の粒子の直径は平均直径から10%以内に分布する、態様31~42のいずれか1つの方法。
【0185】
態様44:前記細孔形成材料は生体内分解性材料を含む、態様31~43のいずれか1つの方法。
【0186】
態様45:前記細孔形成材料は生体内非分解性材料を含む、態様31~43のいずれか1つの方法。
【0187】
態様46:前記細孔形成材料は、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、脂肪酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、リノール酸、生体適合性の塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、およびリン酸ナトリウムからなる群から選択される材料を含む、態様31~43のいずれか1つの方法。
【0188】
態様47:前記細孔形成材料はエチルセルロースを含む、態様46の方法。
【0189】
態様48:前記第1のポリマー材料または前記第2のポリマー材料は、生体内分解性材料を含む、態様31~47のいずれか1つの方法。
【0190】
態様49:前記第1のポリマー材料または前記第2のポリマー材料は、生体内非分解性材料を含む、態様31~47のいずれか1つの方法。
【0191】
態様50:前記第一ポリマー材料は、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ABS樹脂、アクリルポリマーおよび共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルモノマーの単独重合体およびオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALとして公知である)、ポリセバシン酸グリセリル、ポリ(グリコール酸-co-炭酸トリメチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ナイロン66、ポリカプロラクタム、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン系の単独重合体または共重合体、レーヨン、レーヨン-トリアセタート、シリコーン、ハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、およびこれらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群から選択される1種以上の材料を含む、態様31~47のいずれか1つの方法。
【0192】
態様51:前記第1のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニルを含む、態様50の方法。
【0193】
態様52:前記第2ポリマー材料は、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン-co-テトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ABS樹脂、アクリルポリマーおよび共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アルキド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ビニルモノマーの単独重合体およびオレフィンとの共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALとして公知である)、ポリセバシン酸グリセリル、ポリ(グリコール酸-co-炭酸トリメチレン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-co-吉草酸)、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリフマル酸プロピレン、ポリ炭酸トリメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ナイロン66、ポリカプロラクタム、ポリカルボナート、ポリシアノアクリラート、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイソブチレンおよびエチレン-αオレフィン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリホスホエステルウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリスチレン、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-co-HFP)およびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン系の単独重合体または共重合体、レーヨン、レーヨン-トリアセタート、シリコーン、ハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、およびこれらのポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群から選択される1種以上の材料を含む、態様31~47、50または51のいずれか1つの方法。
【0194】
態様53:前記第2のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニルを含む、態様52の方法。
【0195】
態様54:前記埋込可能な装置は棒状である、態様31~53のいずれか1つの方法。
【0196】
態様55:前記埋込可能な装置の直径は約1mm~約8mmである、態様31~54のいずれか1つの方法。
【0197】
態様56:前記埋込可能な装置の長さは約10mm~約80mmである、態様31~55のいずれか1つの方法。
【0198】
態様57:前記埋込可能な装置の一方の端部で前記埋込可能な装置を封止することをさらに含む、態様31~56のいずれか1つの方法。
【0199】
態様58:前記埋込可能な装置の両方の端部で前記埋込可能な装置を封止することをさらに含む、態様31~57のいずれか1つの方法。
【0200】
態様59:前記コア医薬物質は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、L-チロキシン(T4)とL-トリヨードチロニン(T3)の組合せ、ロピニロール、テノホビル、エムトリシタビン、テノホビルとエムトリシタビンの組合せ、ボセンタン、メチルフェニダート、およびリラグルチドからなる群から選択される1つ以上の物質を含む、態様31~58のいずれか1つの方法。
【0201】
態様60:前記コア医薬物質は、ロピニロールまたはトリヨードチロニンを含む、態様31~59のいずれか1つの方法。
【0202】
態様61:前記コア医薬物質は、前記第1の組成物の約1重量%~約80重量%を構成する、態様31~60のいずれか1つの方法。
【0203】
態様62:前記シェル医薬物質は、L-チロキシン(T4)、L-トリヨードチロニン(T3)、L-チロキシン(T4)とL-トリヨードチロニン(T3)の組合せ、ロピニロール、テノホビル、エムトリシタビン、テノホビルとエムトリシタビンの組合せ、ボセンタン、メチルフェニダート、およびリラグルチドからなる群から選択される1つ以上の物質を含む、態様38~61のいずれか1つの方法。
【0204】
態様63:前記シェル医薬物質は、ロピニロールまたはトリヨードチロニンを含む、態様38~62のいずれか1つの方法。
【0205】
態様64:前記シェル医薬物質は、前記第2の組成物の約1重量%~約40重量%を構成する、態様38~63のいずれか1つの方法。
【0206】
態様65:態様1~30のいずれか1つの埋込可能な装置を対象内に埋込むことを含む、前記対象の疾患を治療する方法。
【0207】
態様66:前記疾患は、甲状腺機能低下症、パーキンソン病、下肢静止不能症候群(RLS)、HIV感染、レトロウイルス感染、肺動脈高血圧症、注意欠陥多動性障害、2型糖尿病、または肥満症である、態様65の方法。
【0208】
態様67:態様1~30のいずれか1つの埋込可能な装置を対象内に埋込むことを含む、HIVの曝露前予防またはレトロウイルス感染の予防を提供する方法。
【0209】
態様68:前記埋込可能な装置は、対象内に埋込まれた際に、最初の30日間に1日あたり平均で約10μg~約150μgの前記コア医薬物質を放出する、態様65~67のいずれか1つの方法。
【0210】
態様69:前記埋込可能な装置は、対象内に埋込まれた際に、最初の30日間に毎日の平均放出量から約10%未満の日差変動により前記コア医薬物質を放出する、態様64~68のいずれか1つの方法。
【0211】
態様70:前記埋込可能な装置は、対象内に埋込まれた際に、シェルのない比較用の埋込物からの初期バーストよりも少なくとも50%低い初期バーストにより前記コア医薬物質を放出する、態様64~68のいずれか1つの方法。
【0212】
態様71:前記埋込可能な装置は、対象内に埋込まれた際に、シェルが追加のコア材料で置換された比較用の埋込物からの初期バーストよりも少なくとも50%低い初期バーストによりコア医薬物質を放出する、請求項64~68のいずれか1つの方法。
【0213】
態様A1:第1のポリマー材料とコア医薬物質とを含むコア、および第2ポリマー材料と細孔形成材料とを含むシェルを含む、医薬物質を送達する埋込可能な装置。
【0214】
態様A2:前記コアの直径は約0.5mm~約3.5mmであり、前記シェルの厚さは約0.25mm~約1.75mmである、態様A1の埋込可能な装置。
【0215】
態様A3:前記コアの直径は約0.5mm~約3.5mmであり、前記シェルの厚さは約0.25mm~約1.75mmであり、前記コアの直径に前記シェルの厚さの2倍を加えた総計は約4mmを超えないことを前提とする、態様A1の埋込み可能な装置。
【0216】
態様A4:前記コアの直径は約1.5mm~約3mmであり、前記シェルの厚さは約0.25mm~約0.75mmである、態様A1~A3のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0217】
態様A5:前記シェル中に約1%~約80%の前記細孔形成材料を含む、態様A1~A4のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0218】
態様A6:前記シェル中に約5~約25%の前記細孔形成材料を含む、態様A1~A4のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0219】
態様A7:前記シェル中に約25%~約50%の前記細孔形成材料を含む、態様A1~A4のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0220】
態様A8:前記シェル中に約50%~約70%の前記細孔形成材料を含む、態様A1~A4のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0221】
態様A9:前記細孔形成材料は、埋込前に前記装置から除去される、態様A1~A8のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0222】
態様A10:前記細孔形成材料は、エチルセルロース、安息香酸、安息香酸塩、クエン酸、またはクエン酸塩のうちの1つ以上を含む、態様A1~A9のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0223】
態様A11:前記細孔形成材料はエチルセルロースを含む、態様A1~A10のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0224】
態様A12:前記細孔形成材料は安息香酸を含む、態様A1~A10のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0225】
態様A13:前記細孔形成材料は安息香酸塩を含む、態様A1~A10のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0226】
態様A14:前記細孔形成材料はクエン酸を含む、態様A1~A10のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0227】
態様A15:前記細孔形成材料はクエン酸塩を含む、態様A1~A10のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0228】
態様A16:前記細孔形成材料の最長平均寸法は約5μm~約200μmである、態様A1~A15のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0229】
態様A17:前記細孔形成材料の最長平均寸法は約10μm~約150μmである、態様A1~A15のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0230】
態様A18:前記細孔形成材料の最長平均寸法は、約5μm~約30μmである、態様A1~A15のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0231】
態様A19:前記コア医薬物質はL-チロキシン(T4)である、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0232】
態様A20:前記コア医薬物質はL-トリヨードチロニン(T3)である、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0233】
態様A21:前記コア医薬物質は、L-チロキシン(T4)とL-トリヨードチロニン(T 3)の組合せである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0234】
態様A22:前記コア医薬物質はロピニロールである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0235】
態様A23:前記コア医薬物質はテノホビルである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0236】
態様A24:前記コア医薬物質はエムトリシタビンである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0237】
態様A25:前記コア医薬物質はテノホビルとエムトリシタビンの組合せである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0238】
態様A26:前記コア医薬物質はボセンタンである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0239】
態様A27:前記コア医薬物質はメチルフェニダートである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0240】
態様A28:前記コア医薬物質はリラグルチドである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0241】
態様A29:前記コア医薬物質はドキシサイクリンである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0242】
態様A30:前記コア医薬物質はプログアニルである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0243】
態様A31:前記コア医薬物質はアトバコンである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0244】
態様A32:前記コア医薬物質はプログアニルとアトバコンの組合せである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0245】
態様A33:前記コア医薬物質はナルメフェンである、態様A1~A18のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0246】
態様A34:前記コア中に約1%~約80%の前記コア医薬物質を含む、態様A1~A33のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0247】
態様A35:前記コア中に約10%~約80%の前記コア医薬物質を含む、態様A1~A33のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0248】
態様A36:前記コア中に約30%~約70%の前記コア医薬物質を含む、態様A1~A33のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0249】
態様A37:前記コア中に約50%~約70%の前記コア医薬物質を含む、態様A1~A33のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0250】
態様A38:前記第1のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニル(EVA)である、態様A1~A37のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0251】
態様A39:前記第2のポリマー材料はエチレン-酢酸ビニル(EVA)である、態様A1~A38のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0252】
態様A40:前記埋込可能な装置は、対象内に埋込まれた際に、前記シェルのない比較用の埋込物からの初期バーストよりも少なくとも50%低い初期バーストで前記コア医薬物質を放出する、態様A1~A39のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0253】
態様A41:前記埋込可能な装置は、対象内に埋込まれた際に、前記シェルが前記第1ポリマー材料と前記コア医薬物質を含む追加のコア材料で置換された比較用の埋込物からの初期バーストよりも少なくとも50%低い初期バーストにより前記コア医薬物質を放出する、態様A1~A39のいずれか1つの埋込可能な装置。
【0254】
態様A42:第1ポリマー材料とコア医薬物質とを含む第1組成物を押出してコアを形成すること、および第2のポリマー材料と細孔形成材料とを含む第2の組成物により前記コアを被覆してシェルを形成することを含む、態様A1~A41のいずれか1つの埋込可能な装置を形成する方法。
【0255】
態様A43:第1のポリマー材料とコア医薬物質を含む第1の組成物および第2のポリマー材料と細孔形成材料を含む第2の組成物を共押出することを含み、第1の組成物を押出してコアを形成し、共押出された第2の組成物はコアの周りにシェルを形成する、態様A1~A41のいずれか1つの埋込可能な装置を形成する方法。
【0256】
態様A44:前記細孔形成材料は薬学的に活性な物質または薬物ではない、態様1~30または態様A1~41のいずれか1つの埋込可能な装置、または態様31~71またはA42~43のいずれか1つの方法。
【0257】
態様A45:前記細孔形成材料は、前記装置または前記方法が治療を目的とする疾患または症状を治療するための薬学的に活性な物質または薬物ではない、態様1~30または態様A1~41のいずれか1つの埋込可能な装置、または態様31~71またはA42~43のいずれか1つの方法。
【実施例
【0258】
以下の実施例は、本発明を例証することを意図しており、本発明を例示した態様に限定する意図はない。
実施例1
イヌでの埋込物試験
【0259】
埋込物を上述の共押出により作製し、2つのイヌ群で試験し、第3のイヌ群を対照とした。イヌ群1の各々(n=3)には、3個の埋込物(30%のエチルセルロースシェル/60%のT3コア、26×2.4mm、75.8mgのT3)を投与し、埋込物の除去後1週間を含み約8ヶ月間追跡した。イヌ群2の各々(n=3)には、投与量漸増の検討のために、1日目に3個のT3埋込物(60%のエチルセルロースシェル/60%のT3コア)、87日目に3個の追加のT3埋込物、さらに118日目に3個の追加のT3埋込物を投与した。T3埋込物のコアの直径は約2mmであり、シェルの厚さは約0.2mmであった(シェルの厚さの2倍をコアの直径に加えて、2.4mmの直径のT3埋込物を得た)。対照のイヌ群(n=3)には甲状腺ホルモンを含有しないEVA系の埋込物を投与した。1回目の埋込物の長さは4cm、直径は3mmであり、その後の埋込物の長さは6cm、直径は3mmであった。埋込物は使用前にエタノールで洗浄した。T3、T4、およびTSH濃度を免疫測定により試験した。
【0260】
図2Aは、イヌ群1でのT3濃度を示す。図2Bは、217日目の埋込物除去時のT3濃度を拡大して示す。T3濃度は、埋込物を除去した後に低下し2日後に元に戻った。
【0261】
図3は、217日目に群1の埋込物を除去した際のT4濃度を示す。T4濃度は、埋込物を除去した後に一時的に低下し、その後除去後4日(221日目)で急激に最大に達した。T4は内因的にのみ産生され、かつ外因性のT3が存在する際には抑制されるので、この結果は、これらのイヌがT3の低下に応答して過剰のT4を産生し始める埋込物が除去される時まで(約8ヶ月)T3を放出し続けていたことを示唆している。
【0262】
図4Aは、対照のイヌでのT3非含有埋込物の除去時のT4濃度を示す。図4Bは、対照のイヌでのT3非含有埋込物の除去時のT3濃度を示す。図4Cは、対照のイヌでのT3非含有埋込物の除去時のTSH濃度を示す。対照では、T3非含有埋込物を除去した後に、T3、TSHまたはT4濃度への顕著な影響は見られなかった。
【0263】
図5は、1日目、87日目、および118日目の各々で3個のT3埋込物を埋込んだイヌ群2でのT3濃度を示す。埋込み投与量の各増大後に、初期のピークとそれに続くT3の定常状態の放出が見られた。9個の全ての埋込物を除去した後には、T3濃度は急激に低下した。図6はイヌ群2でのT4濃度を示す。T3埋込物の投与量の各増大後にT4濃度は低下した。9個の全ての埋込物を除去した後には、T4濃度は急激に上昇した。TSH濃度もまた、T3埋込物の投与量の増加につれ低下し、かつ全ての埋込物の除去後に上昇した(図示せず)。
【0264】
4ではなくT3が甲状腺機能低下症のヒト対象でLDLおよびトリグリセリドを低下させることが、NIH(国立衛生研究所)が実施した研究に報告されている。Celiらは、(脳下垂体に対して)同量でL-T4をL-T3に置換すると体重が減少し、脂質代謝に対する甲状腺ホルモン作用がより大きくなることを報告した(Celi et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. (2011), 96(11):3466-74)。そこで脂質試験をイヌ群1で実施した。図8はイヌ群1でのLDL濃度を示す。平均LDL濃度は、T3埋込物の除去後に一時的に低下し、その後除去後3日目までに急激に最大に達した。図9はイヌ群1でのトリグリセリド濃度を示す。T3埋込物を除去した後に平均トリグリセリド濃度は急激に上昇し、その1日後に最大に達し、その後2日目までに低下し再び上昇し始めた。図10はイヌ群1でのHDL濃度を示す。T3埋込物を除去した後の第1日目には平均HDL濃度への影響は無かったが、その後2日目までに急激に低下し3日目までには上昇した。
【0265】
図11は、イヌ群1の平均体重を示す。T3埋込物を投与されたイヌの経時的な平均体重は、下記のゴンペルツ式(Helmsmulleret al. BMC Veterinary Research 2013, 9:203)により導出されたビーグル犬での模擬的な正常体重の増加曲線に沿っていた。
【0266】
t=mmaxexp(-exp[-(t-c)/b]
【0267】
ここで、mtは時間tでの重量、mmaxは成熟時の体重、bは成長期間に比例する値であり、cは変曲点での週齢(すなわち成熟時の体重の36.8%)であり、tは週齢である。少数の経時的に記録した平均体重はまた、何匹かのビーグル犬の週齢での体重値は「商売のために年齢が上がるにつれて体重が減る犬は殆どいない」という注意書きを伴うと指摘した動物供給業者(リドグラン・ファームズ社)から得られており、これはリドグラン・ファームズ社によって報告された経時的な平均体重値での大きなバラツキに繋がっているようである。
実施例2
甲状腺摘出ラットでのT3埋込物の試験
【0268】
外因性T3の投与は、甲状腺による内因性T3の産生の減少をもたらす。埋込物からのT3放出の分析を混乱させる内因性T3の問題を回避するために、低いT3バックグラウンド値を有する甲状腺摘出ラットモデルを用いた。
【0269】
甲状腺摘出ラットの各々(n=3)には、T3埋込物(60%のエトセルシェル/60%のT3コア、40×3mm)を1本投与した(エトセル(ETHOCEL)は、エチルセルロースポリマーでのDow Chemical Company, Midland, Michigan, United Statesの登録商標である)。正常ラットと比較して図7に結果を示す。甲状腺摘出ラットでのT3埋込物からのT3放出は、正常ラットでのこれらの埋込物からの放出に類似している。定量化の分析上限値は1200ng/dLに制限した。埋込物は使用前にエタノールで洗浄した。
【0270】
60%のエトセルシェル/60%のT3コアの埋込物を投与された正常ラットのデータをさらに、60%のT3シェル/コア埋込物を投与された正常ラットと比較して、図12Aおよび図12Bに示す。
実施例3
イヌへのロピニロール埋込物
【0271】
ロピニロールを含有する埋込物を調製した。EVA中に60%のロピニロールを有するシェルのない埋込物(「コアのみ」埋込物)を調製し、その埋込物は直径2.4mm、長さ26mmであった。異なる2つの組のシェル付きの埋込物を調製した。一方の組のシェル付き埋込物は、長さ40mmおよび直径3mmに作製され、EVA中に60%ロピニロールも有する同一直径2.4mmのコアと、EVA中に10%のエトセルを有する厚さ0.3mmのシェルとを保持した(シェルの厚さの2倍をコアの直径に加えて、これらの埋込物は直径3mmとなる)。他方の組のシェル付き埋込物も同一であるが、長さを40mmではなく60mmとした。皮下への埋込前に埋込物をエタノールで洗浄した。3つの群のオスのビーグル犬を使用して、各群毎に3匹ずつとした。3匹のイヌにそれぞれシェルのないコアのみの埋込物を2個ずつ投与し、3匹のイヌにそれぞれシェル付きの40mm長さの埋込物を2個ずつ投与し、さらに3匹のイヌにそれぞれシェル付きの60mm長さの埋込物を2個ずつ投与した。
【0272】
これら動物でのロピニロールの血漿濃度を、図13A(Y軸は均等目盛)および図13B(Y軸は対数目盛)に示す。誤差範囲は平均値の標準誤差(SEM)を指している。容易に分かるように、シェルのない埋込物は顕著なバースト放出をもたらし、細孔形成材料含有シェルを有する埋込物はバースト放出をほぼ一桁まで低減させ、かつバースト放出をもたらさないと見做すことができた。シェルのない埋込物は2ヶ月にわたって変動の激しい放出をもたらしたが、細孔形成材料含有シェルを有する埋込物から得られた血漿濃度は、3ヶ月間にわたってはるかに一定した血漿濃度を示し、少なくとも3.5ヶ月まではゼロではない血漿濃度をもたらした。
実施例4
シェルの細孔形成材料としての安息香酸およびクエン酸
【0273】
ProCepT社のmodel 4M8 systemを使用して、クエン酸および安息香酸をエタノール溶液(10%w/v固形分)から噴霧乾燥した。クエン酸は約65%の収率で1つの画分内に採取され、安息香酸は約55%の総収率で2つの画分内に採取された。これら粉末を、Olympus社のBX60光学顕微鏡を使用して粒径および形態により特徴付けた。噴霧乾燥操作により、クエン酸および安息香酸の両方ともで微細かつ流動性の粉末が得られた。全体として、クエン酸の粒径(10~20μm)は安息香酸の粒径(30~150μm)よりも小さかった。安息香酸の2つの調製物では、第2画分中には多数のリボン状粒子があり、主にその形態により区別された。クエン酸の粉末混合物は安息香酸の粉末混合物よりもかなり高密度であり、安息香酸は、運搬を容易にするためには供給ホッパーのより慎重な清掃を必要とした。しかし最終的な押出、成形、および物理的な取扱い特性は、混合物間で違いはなかった。
【0274】
噴霧乾燥粉末を、細孔形成材料を60重量%の充填量として、粉砕したEVAポリマーと混合した。クエン酸、安息香酸の第1の調製物、または安息香酸の第2の調製物をそれぞれ含有する3つの別々の混合物を調製した。各混合物を合計10~15gで調製し押出した。純粋なEVAを使用して、クエン酸物と安息香酸物の押出操作の間には押出機を清掃した。
【0275】
細孔形成材料の配合物を85±5℃の容器温度に設定して押出した。混合した粉末を手で押出機内に供給した。溶融生成物は、押出機の3mmの開口穴から直接に押出され(すなわち外付けノズルは使用せず)、押出された細糸は電動コンベヤーベルト(Dorner 2200)上に集められた。
【0276】
押出された細糸を約5cm片に手で切断し、アルミニウム製の当て金(厚さ0.02インチ)を備えた加熱(100℃)したCarver油圧プレスを使用してシート状に圧縮した。シートの両面を冷却後には除去されるPET製剥離フィルムで保護した。公称厚さが0.45mmのシートを次に2×2cm四方の試験片に切断した。これらを容器に詰め、20mL/gの割合で加えた無水エタノール中に一晩浸漬した。
【0277】
浸漬後に浸漬溶液を排除し、試験片および容器を新鮮なエタノールで濯いだ。濯ぎ後に、試験片をそれらの元の容器内で真空下で乾燥した。乾燥重量を記録し、代表的な試験片をZeiss社のEVO-50環境制御型SEMで画像化するように区画化した。
【0278】
押出、圧縮、および洗浄したEVA試験片の乾燥後の重量損失は、細孔形成材料のほぼ定量的な除去と一致し(表1参照)、洗浄した表面には粒子は存在しないように見えた。観察した重量損失の差異は、局所的な混合物の均一性の違いを反映している可能性が高い。
【表1】
【0279】
図14は、洗浄後のEVAシートを上方(上段、区画A1、B1、およびC1)および断面(下段、区画A2、B2、およびC2)の視野から見た環境制御走査型電子顕微鏡による写真を示し、洗浄後の空隙(細孔)を示している。区画A1およびA2では、細孔形成材料としてクエン酸を使用した。区画B1およびB2では、細孔形成材料として安息香酸を使用した。区画C1およびC2では、細孔形成材料として安息香酸の異なる調製物を使用した。各区画は、試料の約685μm幅の視野を示す。
【0280】
3つの試験群全てが、押出、成形、および洗浄工程後に、高度に相互接続した多孔性を示していた。表面部の細孔分布では、安息香酸の群の方がより均一であったが、断面部の細孔径分布では、クエン酸試料が全体にわたってより小さくかつより均一であった。安息香酸の粉末混合物で嵩密度がより低いことを考慮すると、これらの試料では押出中により多くの空気が取り込まれた可能性が高い。洗浄後の2つの異なる安息香酸試料の間には、顕著な特徴の相違は見られなかった。
【0281】
理解を進める目的で、前述の発明を例示や実施例の方法によってある程度詳細に説明してきたが、本発明の趣旨や範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正を実施可能であることは当業者には明白である。したがって、以上の説明は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0282】
本明細書に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図1A
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14