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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】プラズマ発生装置および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20231222BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231222BHJP
   A01G 7/04 20060101ALI20231222BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H05H1/24
H01L21/304 645C
H01L21/304 643A
H01L21/304 647Z
A01G7/04 A
H01L21/30 572B
H01L21/30 572A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020015288
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021125283
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】堀越 章
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭平
(72)【発明者】
【氏名】高辻 茂
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴弘
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0374685(US,A1)
【文献】特開2008-028365(JP,A)
【文献】特開2016-207322(JP,A)
【文献】特表2020-524903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中に配置され、プラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、
第1主面、および、前記第1主面と反対側の第2主面を有する誘電体と、
前記誘電体によって封止され、前記第1主面に平行な配列面内で交互に配列された少なくとも一つの第1電極および少なくとも一つの第2電極を含み、前記第1電極と前記第2電極との間の高周波電圧の印加により生じた電界を前記第1主面よりも外側に作用させる電極群と
前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続され、前記高周波電圧を印加する高周波電源と、
を備え
前記高周波電源は、前記第1電極と、前記第2電極との間に印加する前記高周波電源の実効値および周波数が、電圧は9kV~15kV、周波数は12kHz~30kHzの間に設定される、プラズマ発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ発生装置であって、
前記電極群と前記第1主面との間の間隔は、前記電極群と前記第2主面との間の間隔よりも狭い、プラズマ発生装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記誘電体は、
前記第1主面を有する第1誘電部材と、
前記第2主面を有する第2誘電部材と
を含み、
前記第1誘電部材の誘電率は前記第2誘電部材の誘電率よりも低い、プラズマ発生装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置であって、
前記第1電極および前記第2電極は円柱形状である、プラズマ発生装置。
【請求項5】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板を保持する保持機構と、
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置と、
を備える、基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記保持機構に保持された前記基板の主面に、硫酸、硫酸塩、ペルオキソ硫酸およびペルオキソ硫酸塩の少なくともいずれか一つを含む処理液を供給する第1ノズルをさらに備え、
前記プラズマ発生装置によって生じたプラズマを前記処理液に作用させる、基板処理装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記プラズマ発生装置と、前記保持機構によって保持された基板との間にプラズマ用の気体を供給する第2ノズルをさらに備える、基板処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記保持機構を回転軸線まわりで回転させる回転機構と、
前記基板の前記主面上に前記処理液の液膜が維持されるように、前記回転機構と、前記第1ノズルから供給される前記処理液の流量とを制御する制御部と、
をさらに備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、プラズマ発生装置および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一対の電極間に高周波電圧を印加することで当該電極の周囲に電界を発生させ、当該電界により気体をプラズマ化させる技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、プラズマ発生装置は、第1電極と、複数の第2電極と、絶縁体と、絶縁層とを含んでいる。絶縁体は直方体形状を有する。第1電極は絶縁体の内部に埋設される。この第1電極は平板形状を有しており、絶縁体の一主面に平行な姿勢で、絶縁体の内部に埋設される。複数の第2電極は絶縁体の当該一主面の上に、互いに間隔を空けて配列される。この構造では、第2電極の各々は絶縁体の一主面に垂直な対向方向において、第1電極と向かい合う。絶縁層は絶縁体の当該一主面に設けられており、複数の第2電極を覆う。絶縁体および絶縁層を一体の絶縁部とみなせば、第1電極および第2電極は絶縁部に埋設される。
【0004】
絶縁層の一方の主面は絶縁体および第2電極に密着している。絶縁層の他方の主面は気体に面している。以下では、この他方の主面をプラズマ発生面とも呼ぶ。プラズマ発生面は第1電極と平行である。言い換えれば、プラズマ発生面は、第1電極および各第2電極が向かい合う対向方向に直交している。
【0005】
第1電極および第2電極には、高周波電圧が印加される。当該電圧の印加により、第1電極および第2電極の周囲には電界が発生する。当該電界は第1電極と第2電極との間内で強く生じるものの、第1電極と第2電極の周囲にも生じる。電界はプラズマ発生面よりも外側にも生じるので、当該電界が気体に作用し、気体がプラズマ化する。このようにして、プラズマ発生装置はプラズマを発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-222664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、プラズマ発生面は第1電極および第2電極の対向方向に直交しており、第2電極に対して第1電極とは反対側に位置している。この構造では、プラズマ発生面側の電界の強度は比較的に小さくなる。なぜなら、プラズマ発生面よりも外側の空間を通過する電気力線の経路が長くなるからである。具体的には、電気力線は第2電極から一旦、第1電極とは反対側に延びてプラズマ発生面よりも外側を通り、U字状に曲がって第1電極へと至る。このような電気力線の経路は長く、プラズマ発生面側の電界の強度は低くなる。よって、プラズマ発生面側の電界の強度を高くするには、第1電極と第2電極との間の高周波電圧の振幅を大きくする必要があった。つまり、より高価な高周波電源が必要であった。
【0008】
そこで、本願は、より小さい電圧でプラズマを発生させることができるプラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
プラズマ発生装置の第1の態様は、気体中に配置され、プラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、第1主面、および、前記第1主面と反対側の第2主面を有する誘電体と、前記誘電体によって封止され、前記第1主面に平行な配列面内で交互に配列された少なくとも一つの第1電極および少なくとも一つの第2電極を含み、前記第1電極と前記第2電極との間の高周波電圧の印加により生じた電界を前記第1主面よりも外側に作用させる電極群と、前記第1電極および前記第2電極と電気的に接続され、前記高周波電圧を印加する高周波電源と、を備え、前記高周波電源は、前記第1電極と、前記第2電極との間に印加する前記高周波電源の実効値および周波数が、電圧は9kV~15kV、周波数は12kHz~30kHzの間に設定される
【0010】
プラズマ発生装置の第2の態様は、第1の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記電極群と前記第1主面との間の間隔は、前記電極群と前記第2主面との間の間隔よりも狭い。
【0011】
プラズマ発生装置の第3の態様は、第1または第2の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記誘電体は、前記第1主面を有する第1誘電部材と、前記第2主面を有する第2誘電部材とを含み、前記第1誘電部材の誘電率は前記第2誘電部材の誘電率よりも低い。
【0012】
プラズマ発生装置の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記第1電極および前記第2電極は円柱形状である。
【0013】
基板処理装置の第1の態様は、基板を処理する基板処理装置であって、前記基板を保持する保持機構と、第1から第4のいずれか一つの態様にかかるプラズマ発生装置と、を備える。
【0014】
基板処理装置の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記保持機構に保持された前記基板の主面に、硫酸、硫酸塩、ペルオキソ硫酸およびペルオキソ硫酸塩の少なくともいずれか一つを含む処理液を供給する第1ノズルをさらに備え、前記プラズマ発生装置によって生じたプラズマを前記処理液に作用させる。
【0015】
基板処理装置の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記プラズマ発生装置と、前記保持機構によって保持された基板との間にプラズマ用の気体を供給する第2ノズルをさらに備える。
基板処理装置の第4の態様は、第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記保持機構を回転軸線まわりで回転させる回転機構と、前記基板の前記主面上に前記処理液の液膜が維持されるように、前記回転機構と、前記第1ノズルから供給される前記処理液の流量とを制御する制御部と、をさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
プラズマ発生装置の第1の態様によれば、第1電極および第2電極が第1主面に平行な配列面内で配列される。よって、第1電極と第2電極とを結んで誘電体の第1主面から外側の空間を通る電気力線の長さを比較的に短くすることができる。したがって、当該空間内の電界の強度を高くすることができ、当該空間の気体を容易にプラズマ化することができる。つまり、より小さい高周波電圧でも適切な強度で空間内の電界を発生させることができ、当該空間内でプラズマを発生させることができる。
【0017】
プラズマ発生装置の第2の態様によれば、誘電体の第1主面と電極群との間の間隔が狭いので、電界が第1主面よりも外側に生じやすく、第1主面よりも外側の空間の気体をプラズマ化しやすい。
【0018】
プラズマ発生装置の第3の態様によれば、誘電体の第1主面と電極群との間の部材の誘電率が小さいので、電界が第1主面よりも外側に生じやすく、第1主面よりも外側の空間の気体をプラズマ化しやすい。
【0019】
プラズマ発生装置の第4の態様によれば、電気力線が湾曲しやすく、第1主面よりも外側の空間で電界が広く形成される。よって、プラズマの点灯範囲(プラズマが形成される範囲)を広げることができる。
【0020】
基板処理装置の第1の態様によれば、低消費電力でプラズマを用いた基板処理を行うことができる。
【0021】
基板処理装置の第2の態様によれば、処理液に、強い酸化力を有するラジカルが生成する。よって、処理液の酸化力を用いた基板処理を効率的に行うことができる。
【0022】
基板処理装置の第3の態様によれば、プラズマを発生させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】プラズマ発生装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2】プラズマ発生装置の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図3】プラズマ発生装置の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図4】比較例にかかるプラズマ発生装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図5】プラズマ発生装置の構成の他の一例を概略的に示す平面図である。
図6】電極群の構成の他の一例を概略的に示す平面図である。
図7】基板処理システムの構成の他の一例を概略的に示す図である。
図8】制御部の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図9】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本開示の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法および数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0025】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。部材どうしを物理的に結合する表現(例えば「連結する」)は、両部材が直接に結合されることの他、別の部材を介して結合された態様を含む。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCのすべてを含む。
【0026】
<第1の実施の形態>
図1は、プラズマ発生装置1の構成の一例を概略的に示す平面図であり、図2は、プラズマ発生装置1の構成の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1のプラズマ発生装置1のI-I断面を示している。図1および図2には、適宜にXYZ直交座標系が示されている。以下では、X方向の一方側を+X側と呼び、X方向の他方側を-X側と呼ぶことがある。Y軸およびZ軸も同様である。
【0027】
プラズマ発生装置1は、電極群2と、誘電体3とを含んでいる。電極群2は複数の電極21を含んでいる。電極21は例えば金属などの導電性材料によって構成される。図1および図2の例では、複数の電極21として3つの電極21が示されている。
【0028】
図1の例では、複数の電極21の各々はX方向に長い長尺状の円柱形状を有している。つまり、図1の例では、電極21のX方向の長さは電極21のY方向の長さ(幅)よりも長い。また、電極21の軸はX方向に平行である。図2の例では、電極21の断面(YZ断面)の形状は円形状を有している。なお、電極21の形状は必ずしもこれに限らず、適宜に変更し得る。
【0029】
複数の電極21は所定の配列面内において間隔を空けて配列されている。ここでは一例として、配列面はXY平面に平行な平面である。図1の例では、複数の電極21はY方向において間隔を空けて並んで配列されている。つまり、複数の電極21は互いに平行に配列されている。電極21の相互間の間隔は、後述するように、電極21の周囲に生じた電界が気体をプラズマ化できる程度の値に設定される。以下では、3つの電極21のうち、両側の電極21を電極21aと呼ぶことがあり、中央の電極21を電極21bと呼ぶことがある。電極21a,21bはY方向において交互に配列される。
【0030】
図1の例では、電極21aは電極21bの+X側の端部よりも+X側に延在しており、電極21bは電極21aの-X側の端部よりも-X側に延在している。よって、電極21aおよび電極21bは櫛歯状に配列されている。
【0031】
誘電体3は複数の電極21を封止する。誘電体3は、例えば絶縁性樹脂、ガラスおよびセラミックなどの絶縁材料によって構成される。図2の例では、誘電体3は誘電部材31と誘電部材32とを含んでいる。誘電部材31,32は互いに異なる材料で構成されてもよく、同じ材料で構成されてもよい。
【0032】
図1の例では、誘電部材31は板状形状を有しており、その厚み方向がZ方向に沿う姿勢で配置されている。例えば誘電部材31は、Z方向に沿って見て、矩形形状を有し、その一辺がX方向に平行である。誘電部材31の主面31aの上には複数の電極21が設けられる。この場合、主面31aは、複数の電極21が配列される配列面であるともいえる。誘電部材31の+Z側の主面31aはXY平面に平行である。
【0033】
誘電部材32は誘電部材31の主面31aの上に設けられており、複数の電極21を覆う。誘電部材31,32はともに電極21に密着しており、誘電体3は複数の電極21を封止する。このように複数の電極21は誘電体3に埋設される。誘電部材32の+Z側の主面、つまり、誘電体3の主面3aは電極群2の配列面に平行である。言い換えれば、誘電体3の主面3aと各電極21との間の距離は互いに等しい。
【0034】
このような誘電部材32は例えば次のようにして形成される。例えば、液状の硬化性樹脂を誘電部材31の主面31aおよび複数の電極21の上に塗布し、これを熱または光などで硬化させることで形成され得る。あるいは、誘電部材32が接着テープ(例えばテフロン(登録商標)テープ)で構成され、誘電部材31の主面31aおよび電極21に接着されもよい。
【0035】
複数の電極21は、誘電体3の外部に設けられた高周波電源4と電気的に接続される。図1の例では、各電極21は引き出し配線41を介して高周波電源4に接続される。図1の例では、引き出し配線41として、電極21a,21bにそれぞれ対応した引き出し配線41a,41bが示されている。引き出し配線41aは電極21aと接続され、誘電体3の+X側の端部から引き出されている。引き出し配線41bは電極21bと接続され、誘電体3の-X側の端部から引き出されている。つまり、引き出し配線41a,41bは誘電体3の互いに反対側の端部からそれぞれ引き出されている。引き出し配線41aは高周波電源4の一方の出力端4aに接続され、引き出し配線41bは高周波電源4の他方の出力端4bに接続される。
【0036】
電極21と引き出し配線41の一部とは互いに一体に構成されてもよい。例えば金属製の棒状部材の先端側の部分が誘電体3によって封止され、基端側の部分が誘電体3の端部から外側に延在してもよい。この場合、当該棒状部材の先端側の部分が電極21となり、当該棒状部材の基端側の部分が引き出し配線41の一部となる。引き出し配線41は棒状部材の基端側の部分の他、導線およびコネクタなどによって構成される。引き出し配線41も絶縁被膜等によって保護される。
【0037】
高周波電源4は電極21aと電極21bとの間に高周波電圧を印加する。これにより、電極21aおよび電極21bの周囲に電界が生じる。当該電界の一部は、後述するように、誘電体3の主面31aよりも外側に作用して、気体をプラズマ化させる。言い換えれば、高周波電源4が出力する高周波電圧の実効値および周波数は、例えば、電圧は9kV~15kV、周波数は12kHz~30kHzであってもよく、電極21の周囲に生じた電界が気体をプラズマ化できる程度の値に設定される。高周波電源4は例えばインバータ回路(不図示)を含んでいてもよい。これにより、電極21a,21bの間に印加する高周波電圧の実効値および周波数を調整することができる。
【0038】
図2に例示するように、誘電部材32の厚み(Z方向の厚み)は誘電部材31の厚みより薄くてもよい。言い換えれば、誘電体3の+Z側の主面3aと電極群2との間の間隔(Z方向の間隔)D1は、誘電体3の-Z側の主面3bと電極群2との間の間隔D2よりも狭くてもよい。
【0039】
<プラズマ発生装置の動作>
プラズマ発生装置1は気体中に配置される。誘電体3の主面3aに面する空間R1(図3参照)には、その反対側の主面3bに面する気体よりもプラズマ化しやすいプラズマ用の気体が導入されてもよい。プラズマ化しやすい気体としては、例えば、アルゴンなどの希ガス、窒素あるいは酸素などを採用できる。
【0040】
高周波電源4が電極21aと電極21bとの間に高周波電圧を印加すると、電極21a,21bの間に電界が生じる。図3は、電極21a,21bの間に生じる電界の電気力線の一例を模式的に示す図である。図3に例示するように、電極21a,21bの間の空間R2を通る電気力線はY方向に平行であるものの、当該空間R2よりも+Z側および-Z側のそれぞれでは、電気力線は空間R2とは反対側に膨らんだ湾曲形状を有する。
【0041】
図3に例示するように、一部の電気力線は誘電体3の主面3aよりも+Z側の空間R1を通過する。つまり、電極21a,21bの周囲に生じる電界の一部は空間R1に作用する。言い換えれば、誘電体3の主面3aと電極群2との間の間隔D1は、当該電界が空間R1に作用する程度に設定される。電界が空間R1内の気体に作用することにより、当該気体がプラズマ化される。
【0042】
プラズマ発生装置1によって生じたプラズマを作用させる対象は特に制限されないものの、例えばプラズマを植物に作用させてもよい。これにより、植物の成長を促進させることができる。
【0043】
このプラズマ発生装置1では、複数の電極21は誘電体3によって封止されるので、プラズマ雰囲気に曝されない。つまり、複数の電極21は空間R1に露出していない。よって、プラズマに起因した電極21の劣化を回避することができる。したがって、プラズマ発生装置1の信頼性を向上することができる。
【0044】
しかも、図3の例では、隣り合う電極21どうしの対向方向(ここではY方向)は誘電体3の主面3aに平行であるので、電気力線はより短い経路で空間R1内を通る。これによれば、空間R1内において比較的に高い強度で電界を生じさせることができる。
【0045】
図4は、比較例にかかるプラズマ発生装置1Aの構成の一例を示す図である。プラズマ発生装置1Aは電極210aと複数の電極210bと誘電体300とを含んでいる。電極210aは平板形状を有しており、その厚み方向がZ方向に沿う姿勢で配置される。電極210aの+Z側の主面はXY平面に平行である。複数の電極210bは電極210aよりも+Z側に設けられている。複数の電極210bは電極210aに対して間隔を空けて配置される。図4の例では、複数の電極210bはXY平面内で互いに間隔を空けて配列される。具体的には、3つの電極210bがY方向において間隔を空けて並んでいる。
【0046】
誘電体300は電極210a,210bを覆っており、これらを封止する。言い換えれば、電極210a,210bは誘電体300に埋設される。誘電体300の+Z側の主面300aと電極210bとの間の間隔は狭い。誘電体300の主面300aはXY平面に平行である。
【0047】
電極210aは高周波電源の一方の出力端に接続され、複数の電極210bは高周波電源の他方の出力端に共通して接続される。高周波電源が電極210a,210bの間に高周波電圧を印加すると、電極210a,210bの周囲に電界が生じる。図4では、当該電界の電気力線が破線で模式的に示されている。図4に例示するように、誘電体3の主面300aに面する空間R100には、電極210bから+Z側に延びる電気力線が通過する。具体的には、当該電気力線は電極210bから+Z側に延びて空間R100を通りつつ、その進行方向をU字状に曲げて-Z側へと延在し、隣り合う電極210bの間を通って電極210aへと至る。
【0048】
このプラズマ発生装置1Aであっても、誘電体300の主面300aよりも+Z側の空間R100に電界が作用するので、空間R100内の気体をプラズマ化することは可能である。しかしながら、プラズマ発生装置1Aでは、電極210a,210bの対向方向(Z方向)が誘電体300の主面300aに直交する。よって、図4に示すように、空間R100を通る電気力線は、電極210bから一旦、電極210aとは反対側の方向に延びてから進路を曲げつつ電極210aに至る。これによれば、電気力線の長さは電極210a,210b間の距離に対して大幅に長くなり、空間R100には比較的に低い強度で電界が生じることになる。プラズマ発生装置1Aにおいて空間R100の電界の強度を増加させるには、より大きな電圧を出力可能な高周波電源が必要となる。
【0049】
これに対して、本実施の形態では、図3に例示するように、電極21a,21bの対向方向(Y方向)は誘電体3の主面3aに平行である。これによれば、誘電体3の主面3a側の空間R1を通る電気力線は図4とは異なってUターンしていない。したがって、図4の電気力線の長さは、電極21a,21bの間の距離よりも僅かに大きい程度である。よって、高い強度で空間R1に電界を生じさせることができ、空間R1内において気体を容易にプラズマ化させることができる。言い換えれば、低出力の安価な高周波電源4を採用しても、空間R1にプラズマを発生させることができる。例えば高周波電源4として安価なネオントランスを採用することが可能である。また、低い出力でプラズマを発生させることができるので、プラズマ発生装置1の消費電力も低減できる。
【0050】
しかも、上述の例では、電極21a,21bの断面形状は円形状である。これにより、電気力線が湾曲しやすく、空間R1において電界が広く形成される。したがって、プラズマの点灯範囲(プラズマが形成される範囲)を広くすることができる。
【0051】
なお、上述の例では、3つの電極21が設けられているものの、電極21の個数はこれに限らない。図5は、プラズマ発生装置1の構成の他の一例を概略的に示す平面図である。図5の例では、複数の電極21として5つの電極21が示されている。5つの電極21はY方向に間隔を空けて配列される。5つの電極21は図1と同様に櫛歯状に配列されており、電極21aおよび電極21bがY方向において交互に配列されている。電極21aは引き出し配線41aを介して高周波電源4の出力端4aに接続され、電極21bは引き出し配線41bを介して高周波電源4の出力端4bに接続される。
【0052】
これによれば、図1と同程度の間隔で電極21を配列する場合には、より広い空間R1内にプラズマを発生させることができる。一方、図1よりも狭い間隔で電極21を配列する場合には、より高い強度で空間R1内に電界を発生させることができ、プラズマの生成量を増加できる。
【0053】
また、上述の例では、誘電体3の主面3aと電極群2との間の間隔D1が、誘電体3の主面3bと電極群2との間の間隔D2よりも狭い。これにより、主面3a側の空間R1に電界が生じやすくなり、空間R1の気体をプラズマ化しやすい。一方で、主面3bに面する空間には電界が作用しにくくなるので、当該空間にはプラズマが生じにくい。よって、意図しない部材にプラズマが作用する可能性を低減できる。
【0054】
<誘電率>
主面3aを形成する誘電部材31の誘電率は、主面3bを形成する誘電部材31の誘電率よりも小さくてもよい。これによっても、主面3a側の空間R1に電界が生じやすくなり、空間R1の気体をプラズマ化しやすい。一方で、主面3b側の空間には電界が作用しにくくなるので、当該空間にはプラズマが生じにくい。よって、意図しない部材にプラズマが作用する可能性を低減できる。
【0055】
なお、図1および図5の例では、奇数個の電極21が設けられているものの、偶数個の電極が設けられてもよい。
【0056】
また、上述の例では、複数の電極21が配列される配列面は誘電体3の主面3aと平行である。しかしながら、必ずしもこれに限らない。電極21の配列面は誘電体3の主面3aに対して傾斜していてもよい。また、誘電体3の主面3aは必ずしも平面に限らない。主面3aには適宜に凹凸が形成されていてもよく、あるいは、主面3aは湾曲していてもよい。
【0057】
また、上述の例では、電極21は平面視(XY平面視)において直線的に延在しているものの、必ずしもこれに限らない。配列面における電極21の配列態様は適宜に変更し得る。図6は、電極群2の構成の一例を概略的に示す平面図である。図6の例では、2つの電極21が示されている。各電極21は渦巻き状に延在している。電極21は互いに間隔を空けて平行に延在している。これによっても、プラズマを生成することができる。また、電極21の断面(YZ断面)の形状は円形状に限られず、例えば、断面が矩形形状で、X方向に長い長尺状の形状であってもよい。
【0058】
あるいは、他の具体的な例として、複数の電極21がリング状または円弧状の形状を有し、これらが同心状に配列されてもよい。あるいは、複数の電極21が放射状に配列されてもよい。あるいは、複数の電極21がドット状(例えば円状または四角状)の形状を有し、配列面内で2次元的に配列されてもよい。
【0059】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、プラズマ発生装置1を基板の処理に利用する態様について述べる。図7は、基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理システム100は、ロードポートLPと、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御部90と、少なくとも1つの処理ユニットUT(図7)においては4つの処理ユニット)とを含む。複数の処理ユニットUTは、基板W(ウエハ)を処理するためのものであり、そのうちの少なくとも1つが、詳しくは後述する基板処理装置110に対応する。基板処理装置110は、基板処理に用いることができる枚葉式の装置であり、具体的には、基板Wに付着した有機物を除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。この有機物は、典型的には、使用済のレジスト膜である。このレジスト膜は、例えば、イオン注入工程用の注入マスクとして用いられたものである。基板処理装置110は、チャンバ111を有していてもよい。その場合、チャンバ111内の雰囲気を制御することによって、所望の雰囲気中での基板処理を行うことができる。
【0060】
制御部90は、基板処理システム100に備えられた各部の動作を制御することができる。キャリアCの各々は、基板Wを収容する収容器である。ロードポートLPは、複数のキャリアCを保持する収容器保持機構である。インデクサロボットIRは、ロードポートLPと基板載置部PSとの間で基板Wを搬送することができる。センターロボットCRは、基板載置部PSおよび少なくとも1つの処理ユニットUTのいずれか一つから他の一つへと基板Wを搬送することができる。以上の構成により、インデクサロボットIR、基板載置部PSおよびセンターロボットCRは、処理ユニットUTの各々とロードポートLPとの間で基板Wを搬送する搬送機構として機能する。
【0061】
未処理の基板WはキャリアCからインデクサロボットIRによって取り出され、基板載置部PSを介してセンターロボットCRに受け渡される。センターロボットCRはこの未処理の基板Wを処理ユニットUTに搬入する。処理ユニットUTは基板Wに対して処理を行う。処理済みの基板WはセンターロボットCRによって処理ユニットUTから取り出され、必要に応じて他の処理ユニットUTを経由した後、基板載置部PSを介してインデクサロボットIRに受け渡される。インデクサロボットIRは処理済みの基板WをキャリアCに搬入する。以上により、基板Wに対する処理が行われる。
【0062】
図8は、制御部90(図7)の構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部90は、電気回路を有する一般的なコンピュータによって構成されていてよい。具体的には、制御部90は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置91、ROM(Read Only Memory)などの非一時的な記憶部92、RAM(Random Access Memory)などの一時的な記憶部93、記憶装置94、入力部96、表示部97および通信部98と、これらを相互接続するバスライン95とを有している。
【0063】
記憶部92は基本プログラムを格納している。記憶部93は、演算処理装置91が所定の処理を行う際の作業領域として供される。記憶装置94は、フラッシュメモリまたはハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって構成されている。入力部96は、各種スイッチまたはタッチパネル等により構成されており、オペレータから処理レシピ等の入力設定指示を受ける。表示部97は、例えば液晶表示装置およびランプ等により構成されており、演算処理装置91による制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、LAN(Local Area Network)等を介してのデータ通信機能を有している。記憶装置94には、基板処理システム100(図7)を構成する各装置の制御についての複数のモードが予め設定されている。演算処理装置91が処理プログラム94Pを実行することによって、上記複数のモードのうちの1つのモードが選択され、該モードによって各装置が制御される。また、処理プログラム94Pは、記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体を用いれば、制御部90に処理プログラム94Pをインストールすることができる。また制御部90が実行する機能の一部または全部は、必ずしもソフトウェアによって実現される必要はなく、専用の論理回路などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0064】
図9は、処理ユニットUTの一例である基板処理装置110の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置110は、チャンバ111と、吸着保持機構50と、回転機構60と、処理部80と、プラズマ発生装置1とを含んでいる。
【0065】
吸着保持機構50は、チャンバ111内に設けられる。吸着保持機構50は基板Wの裏面を吸着し、基板Wを水平に保持する。ここでいう「裏面」とは、例えば、基板Wの主面のうち、デバイスが形成されていない面である。基板Wは、裏面が下方を向く姿勢で吸着保持機構50によって保持される。図9の例では、吸着保持機構50は吸着部材51を含んでおり、基板Wは吸着部材51の吸着面51aの上に載置される。吸着部材51の吸着面51aは平面視において例えば円形状を有する。吸着部材11の吸着面51aの直径は基板Wの直径よりも小さく、例えば、基板Wの直径の4分の1以下である。
【0066】
吸着部材51の吸着面51aには、不図示の吸着口が形成されている。吸着面51aには、複数の吸着口が分散して形成されていてもよい。吸着部材51の内部には、吸着口に繋がる不図示の内部流路が形成されている。当該内部流路は、吸引管55を介して吸引機構56に接続される。吸引機構56は例えばポンプを含んでおり、吸引管55の内部から気体を吸引する。これにより、吸着面51aの吸着口から気体が吸引されて、基板Wが吸着部材51に吸着保持される。吸引機構56は制御部90によって制御される。なお、基板Wは必ずしも吸着により保持される必要はなく、他の任意の手法で保持されればよい。
【0067】
回転機構60はチャンバ111内に設けられている。回転機構60は吸着保持機構50(より具体的には、吸着部材51)を、回転軸線Q1のまわりで回転させる。これにより、吸着保持機構50に吸着保持された基板Wも回転軸線Q1のまわりで回転する。回転軸線Q1は、基板Wの中央部を通って鉛直方向に沿って延在する仮想的な軸である。
【0068】
回転機構60はモータ61を含んでいる。モータ61はシャフト62を介して吸着部材51に連結される。シャフト62は回転軸線Q1に沿って延在しており、その上端が吸着部材51に連結される。シャフト62は例えば円筒形状を有する中空シャフトであり、吸引管55は当該シャフト62の中空部を通って吸着部材51の内部流路に接続される。
【0069】
モータ61はシャフト62に連結されており、シャフト62を回転軸線Q1のまわりで回転させる。図9の例では、モータ61はシャフト62と同軸に設けられている。シャフト62はモータ61から上方に延在している。モータ61がシャフト62を回転させることにより、吸着部材51を回転軸線Q1のまわりで回転させることができる。モータ61は制御部90によって制御される。
【0070】
モータ61は、モータ収容部材70に収容されている。モータ収容部材70はモータ61を外部の処理雰囲気から保護することができる。具体的な一例として、後述のノズル81から吐出された薬液およびリンス用ノズル(不図示)から吐出されたリンス液からモータ61を保護することができる。
【0071】
処理部80は、吸着保持機構50によって吸着保持された基板Wに対して処理を行う。図9の例では、処理部80はノズル81と配管82とバルブ83とを含んでいる。ノズル81はチャンバ111内に設けられており、吸着保持機構50によって保持された基板Wに向かって処理液を吐出する。図9の例では、ノズル81は基板Wよりも上方に配置されており、鉛直方向において基板Wの中央部と対向している。
【0072】
ノズル81は配管82を介して処理液供給源84に接続されている。処理液供給源84は配管82を介してノズル81に処理液を供給する。ノズル81は処理液を基板Wの表面の中央部に吐出する。配管82の途中には、バルブ83が介装されている。バルブ83は配管82の内部流路の開閉を切り替える。バルブ83は制御部90によって制御される。バルブ83は配管82の内部を流れる処理液の流量を調整可能なバルブであってもよい。
【0073】
回転機構60が吸着保持機構50および基板Wを回転させた状態で、バルブ83が開くことにより、ノズル81は回転中の基板Wに処理液を供給する。これにより、処理液は基板Wの上面の中央部に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面を広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。
【0074】
図9の例では、ノズル81は、ノズル移動機構85によって第1処理位置と第2待機位置との間で移動可能である。第1処理位置は、ノズル81が処理液を吐出する位置であり、図9の例では、基板Wよりも上方であって基板Wの中央部と対向する位置である。第1待機位置は、ノズル81が処理液を吐出しない位置であって、例えば基板Wと上下方向で対向しない位置である。つまり、例えば、第1待機位置は平面視において基板Wの周縁よりも外側の位置である。
【0075】
ノズル移動機構85は、例えば、いずれも不図示のアーム、支持棒およびモータを含んでもよい。アームは水平方向に沿って延び、その先端がノズル81に連結される。アームの基端は支持棒に連結される。支持棒は鉛直方向に沿って延びており、その基端がモータに連結される。モータは制御部90によって制御される。モータが支持棒を回転させることにより、アームが支持棒を中心に旋回し、アームの先端に連結されたノズル81が、支持棒を中心とした周方向に沿って、第1処理位置と第1待機位置との間を移動する。
【0076】
処理部80は複数種類の処理液を基板Wに供給してもよい。例えば処理部80は処理液の種類に応じた複数のノズルを備えていてもよい。例えば処理液として薬液およびリンス液を採用することができる。薬液としては、例えば酸性の薬液を採用することができる。より具体的な一例として、薬液として、硫酸、硫酸塩、ペルオキソ硫酸およびペルオキソ硫酸塩の少なくともいずれか一つを採用できる。あるいは、薬液として、過酸化水素水を含む薬液を採用してもよい。リンス液としては、例えば純水およびイソプロピルアルコール(IPA)の少なくともいずれか一つを採用することができる。
【0077】
以下では、ノズル81の他にリンス用ノズルが設けられる態様について述べる。具体的には、処理部80は例えばいずれも不図示のリンス用ノズル、リンス用配管およびリンス用バルブをさらに含む。リンス用ノズルは、吸着保持機構50によって保持された基板Wの中央部に向かってリンス液を吐出する。リンス液は、基板Wの上の薬液を洗い流すための処理液である。
【0078】
リンス用ノズルはリンス用配管を介してリンス液供給源に接続される。リンス用バルブはリンス用配管に改装されており、リンス用配管の内部流路の開閉を切り替える。リンス用バルブは制御部90によって制御される。リンス用バルブは、リンス用配管の内部を流れるリンス液の流量を調整可能なバルブであってもよい。リンス用ノズルはノズル81と連結されもよい。この場合、リンス用ノズルはノズル81と一体に移動可能である。
【0079】
処理部80はまず、回転中の基板Wの上面に薬液を供給する。これにより、薬液が基板Wの上面の全面に作用し、基板Wに対する処理が行われる。例えば、薬液により基板Wのレジスト膜を除去する除去処理が行われる。
【0080】
この処理において、パドル処理が行われてもよい。パドル処理では、処理部80が薬液の供給を停止し、回転機構60が基板Wの回転速度を低下させる。回転機構60は、基板Wの上面において薬液の液膜が維持される程度の回転速度で基板Wを回転させる。つまり、薬液が基板Wの周縁からほとんど飛散しない程度の回転速度で基板Wを回転させる。パドル処理では、薬液が供給されないので、薬液の消費量を低減できる。レジスト膜が十分に除去されると、回転機構60は再び基板Wの回転速度を高くし、基板Wの上面の薬液を基板Wの周縁から外側に飛散させる。
【0081】
次に、処理部80は回転中の基板Wにリンス液を供給することにより、基板Wの上面に残留した薬液を洗い流す。言い換えれば、基板Wの上面の薬液をリンス液に置換することができる。リンス液は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの周縁から外側に飛散する。
【0082】
図9の例では、基板処理装置110はガード76をさらに含んでいる。ガード76は平面視において基板Wを囲む筒状の形状を有している。このガード76は、基板Wの周縁から飛散した処理液を受け止めて、当該処理液を不図示の回収部に流す。ガード76は、ガード移動機構77によって上下方向に移動可能である。ガード移動機構77は、ガード76の上端が基板Wよりも上方に位置する上位置と、ガード76の上端が基板Wよりも下方に位置する下位置との間でガード76を移動させる。ガード移動機構77は例えばシリンダ機構またはボールねじ機構などを含む。
【0083】
図9の例では、プラズマ発生装置1は、吸着保持機構50によって保持された基板Wの上面と向かい合う位置に設けられている。つまり、プラズマ発生装置1は基板Wの上面よりも上方に設けられている。よって、プラズマ発生装置1は間隔を空けて基板Wの上面と対向する。プラズマ発生装置1は、平面視において、ノズル81からずれて配置される。つまり、プラズマ発生装置1はノズル81と基板Wとの間を避けて配置される。これにより、ノズル81から吐出された処理液がプラズマ発生装置1に衝突することを回避できる。
【0084】
プラズマ発生装置1も移動機構5によって移動可能に構成されていてもよい。移動機構5は、プラズマ発生装置1を第2処理位置と第2待機位置との間で移動させる。第2処理位置は、吸着保持機構50によって保持された基板Wの上面と対向する位置であり、第2待機位置は平面視において基板Wの周縁よりも外側の位置である。移動機構5は例えばノズル移動機構85と同様の構成を有していてもよい。
【0085】
プラズマ発生装置1は、チャンバ111の外部に配設されている高周波電源4に接続される。高周波電源4は制御部90によって制御される。プラズマ発生装置1は、その誘電体3の主面3aが基板Wを向く姿勢で、配置されている。よって、高周波電源4が電極21に高周波電圧を印加すると、プラズマ発生装置1は誘電体3と基板Wとの間の気体(例えば酸素)をプラズマ化させる。
【0086】
プラズマ発生装置1は、回転中の基板Wの上面に薬液が存在している状態で、第2処理位置においてプラズマを発生させてもよい。これによれば、プラズマは基板Wの上面の薬液の液膜に作用する。プラズマ発生装置1は平面視において基板Wの周方向の一部に配置されるものの、基板Wが回転することにより、プラズマは基板W上の薬液の液膜に対して全周に亘って作用する。プラズマが基板W上の薬液の液膜に作用することにより、当該液膜中に、強い酸化力を有するラジカルが発生する。よって、薬液の酸化力を用いた基板処理を効率的に行うことができる。具体的には、基板Wからレジスト膜を効率的に除去することができる。
【0087】
薬液は硫酸を含んでいることが好ましい。この場合、硫酸へのプラズマ照射によってペルオキソ一硫酸(カロ酸)を生成することができる。これによれば、カロ酸の生成に過酸化水素水を必要としない。過酸化水素水を用いない場合には、排液処理の負担を軽減したり、硫酸のリサイクルを容易としたりすることができる。ここで、硫酸を含む薬液を用いる場合、硫酸の濃度は94~98%の範囲が好ましく、96%程度がより好ましい。
【0088】
基板処理装置110には、チャンバ111内の気体を調整するために、気体供給部86が設けられてもよい。気体供給部86はチャンバ111内に気体(例えば窒素または希ガス等の不活性ガスまたは酸素ガス)を供給する。これにより、チャンバ111内の雰囲気を所望の雰囲気に近づけることができる。
【0089】
また、気体供給部86は、プラズマ発生装置1の近傍にプラズマ発生用の気体(例えば不活性ガスあるいは酸素)を供給してもよい。具体的な一例として、気体供給部86は、プラズマ発生装置1の主面3aと基板Wとの間の空間に気体を吐出するノズル(導出管)87を含む。ノズル87は供給管88を介して気体供給源891に接続される。気体供給源891は例えば窒素または希ガスなどの不活性ガスおよび酸素の少なくともいずれか一方をプラズマ用の気体として供給管88に供給する。供給管88にはバルブ89が設けられて、供給管88の開閉が制御される。バルブ89は制御部90によって制御される。
【0090】
ノズル87はプラズマ発生装置1の近傍に設けられてもよい。ノズル87の吐出口はプラズマ発生装置1と基板Wとの間の空間に向かって開口してもよい。あるいは、当該ノズル87は基板Wの中央部と対向する位置に設けられ、基板Wの中央部に向けて気体を吐出してもよい。当該ノズル87からの気体は基板Wの中央部から径方向外側に広がって流れるので、プラズマ発生装置1と基板Wとの間の空間にも流れる。ノズル87は誘電体3に連結されていてもよい。
【0091】
以上のように、基板処理装置110ではプラズマ発生装置1が設けられている。よって、低消費電力でプラズマを用いて基板Wに対する処理を行うことができる。しかも、プラズマ発生装置1によれば、電極21が誘電体3に封止されている。したがって、誘電体3は電極21をチャンバ111内の雰囲気から保護することができる。例えば、酸性の薬液が電極21に接触すると、電極21が腐食し得るところ、そのような腐食を避けることができる。逆に言えば、電極21から溶出した成分、あるいは、プラズマによってスパッタされた成分が基板Wに付着して基板Wを汚染することを回避できる。
【0092】
上述の例では、プラズマを薬液に作用させて、高い酸化力を有するラジカルを生じさせる。よって、基板Wに対するレジスト膜の除去処理をより効率的に行うことができる。
【0093】
なお、上述の例では、基板処理装置110において、プラズマは処理液に作用しているものの、プラズマを基板Wに直接に作用させてもよい。つまり、高周波電源4は基板Wに処理液が付着していない状態で、電極21a,21bの間に高周波電圧を印加してもよい。これにより、プラズマを基板Wに直接作用させることができ、表面改質(例えば親水化)などの処理を基板Wに対して行うことができる。
【0094】
以上のように、このプラズマ発生装置1および基板処理装置110は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、このプラズマ発生装置1および基板処理装置110がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態おおび各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 プラズマ発生装置
2 電極群
21 電極
21a 第1電極(電極)
21b 第2電極(電極)
3 誘電体
31 第1誘電部材(誘電部材)
32 第2誘電部材(誘電部材)
110 基板処理装置
50 保持機構
81 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9