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特許7407616ダイヤフラムバルブとそのバルブ用弁座の交換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブとそのバルブ用弁座の交換方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/17 20060101AFI20231222BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20231222BHJP
   F16K 31/122 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
F16K7/17 C
F16K1/42 G
F16K31/122
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020027835
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131144
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】本間 克彦
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0211944(US,A1)
【文献】実開平04-048470(JP,U)
【文献】スイス国特許発明第360258(CH,A)
【文献】特表2017-516039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/42
F16K 7/12 - 7/17
G05D 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデー内に設けた弁座に接離させて開閉するダイヤフラムを有するダイヤフラバルブであって、流入口と流出口を有するボデーに設けた一次側開口部と、前記一次側開口部に設けた弁座装着用の外壁部と、前記外壁部の内周囲に設けた段部と、前記段部に圧入固定されたシートリングと、前記シートリングに設けた鍔部と、前記シートリングと前記外壁部との間と前記鍔部を底部として構成された弁座装着用の圧入溝と、を備え、前記圧入溝に圧入固定された前記弁座は、この弁座の上部の外周囲を大きくした延出部を前記外壁部の頂部近傍位置に被せ、かつ前記弁座の上部内周囲を小さくした延出部を前記シートリングの頂部近傍位置に被せる状態で前記弁座の上部をやや突出させたことを特徴とするダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記シートリングの内周面に雌ネジ部を設けた請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記シートリングの頂部を前記外壁部の高さより低くし、かつ前記シートリングの内径を前記一次側開口部の内径より大きくしている請求項1又は2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記段部にさらに圧入段部を設け、この圧入段部に前記シートリングを圧入して前記ボデーに前記シートリングを圧入固定した請求項1乃至3の何れか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記弁座の底部外周は、圧入固定後に抜けないように外径を大きくした拡径部を前記外壁部に設けた係合部に係合させて圧入固定後の弁座が抜けないようにした請求項1乃至4の何れか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
前記鍔部の上面に接触する状態で前記弁座の底部を前記圧入溝に圧入固定し、次いで、前記弁座を取外す際には、雄ネジ部を設けた治具を前記シートリングの雌ネジ部に螺合させて前記治具を引き上げることにより、前記シートリングの鍔部で前記弁座の底部を係止しながら前記弁座を抜き出すようにした請求項1に記載のダイヤフラムバルブの弁座交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブとそのバルブ用弁座の交換方法に関し、特に、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積法)プロセスなどに使用されるような極めて高い耐久性とCv値の安定化の維持を図ることができるダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造用ガス供給装置では、例えば、ALDに代表されるような短時間でバルブを開閉するプロセスが導入されることが多くなってきている。ALDプロセスなどでは、250℃程度の高温雰囲気の下、ガス供給系から、前駆体、不活性ガス、酸化種ガスなどの複数種のガスが極めて短いサイクルの高速切換により安定した流量で交互にチャンバーに供給され、チャンバー内のウエハにナノレベルで原子層が一層ずつ均質・均一に積み重ねられて薄膜が形成される。
【0003】
その際、ダイヤフラムバルブには、弁閉時のシール性の確保に加えて、250℃程度の高熱に耐え得る耐熱性、ガスを短時間で正確に供給する流量の安定性、ガスの混合を避けるために高い締切性能を伴いつつ短時間でガスの供給を切替えるための高速作動性、多数回のバルブ開閉サイクルに耐え得る高耐久性などの機能性が要求される。
【0004】
ALDプロセスではダイヤフラムバルブを短時間で高速開閉させるためにバルブの開閉動作回数が大幅に増加し、閉弁時にメタルダイヤフラムから樹脂製の弁座に加わる押圧力の影響が大きくなり、さらに供給する原料ガスの温度も250℃程度の高温状態であるために弁座の潰れや変形が生じ易くなり、弁座の潰れや変形が生じた場合には、シール性が維持できなくなるばかりでなく、Cv値が変動し、安定化を図ることが不可能になる。
【0005】
弁座に潰れや変形等が生じてシール性が維持できなくなった場合などには、速やかに損傷した弁座をボデーから取り出して新しい弁座に交換する必要があるため、ALDプロセスで使用するダイヤフラムバルブには、弁座の潰れや変形が生じにくく、また、弁座に潰れや変形が生じた際には、弁座の交換が容易であることが求められる。
【0006】
弁座の交換が容易に行えるダイヤフラムバルブとして、特許文献1には、弁座を取付ける際には、弁座設置ツールでボデー内部に設けた弁座陥凹に弁座を圧入し、弁座を取出す際には、先端に雄ネジ部を備えた弁座抽出ツールで弁座内周面に雌ネジを刻設し、雄ネジ部に螺着した弁座を上方へ引き抜くダイヤフラムバルブが提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、弁座を取付ける際には、内周側に金属製のスリーブを挿入した弁座を工具でボデーの弁座材取付孔に圧入し、弁座を取出す際には、手動タップのような一般的な手動工具を弁座の内周面に係合させ、スリーブと弁座の双方をボデーから抜き出すダイヤフラムバルブが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2017-516039号公報
【文献】特許第5280208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のダイヤフラムバルブでは、弁座の内周側に何ら支持部材がないので、特にPFAのような柔らかい材質の弁座を250℃程度の高温で使用する場合には、閉弁時に弁座が内周面側に変形し易くなり、変形によって弁座の頂部が低くなってダイヤフラムの耐久性が低下することになる。
【0010】
また、弁座の取出し時に弁座抽出ツールで弁座内周面に雌ネジを刻設するため、その際に微細な切粉が発生し、ボデー内の流路を汚染するおそれがある。
【0011】
特許文献2のダイヤフラムバルブでは、上方端を弁キャビティの表面及びスリーブの端部から突出させて弁座を形成しているため、弁座の耐久性に問題がある。
【0012】
また、スリーブの内径がボデーの一次側開口部の内径よりも小径であり、流路を狭めているので、バルブの流量低下の原因となる。
【0013】
そこで、本発明は上記問題点を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、高温状態で高速開閉動作させても弁座の潰れや変形の発生を抑制するとともに大流量を安定的に確保することができ、もって、高Cv値を変動なく安定して維持することができ、また、弁座の交換が容易なダイヤフラムバルブとそのバルブ用弁座の交換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ボデー内に設けた弁座に接離させて開閉するダイヤフラムを有するダイヤフラバルブであって、流入口と流出口を有するボデーに設けた一次側開口部と、一次側開口部に設けた弁座装着用の外壁部と、外壁部の内周囲に設けた段部と、段部に圧入固定されたシートリングと、シートリングに設けた鍔部と、シートリングと外壁部との間と鍔部を底部として構成された弁座装着用の圧入溝と、を備え、圧入溝に圧入固定された弁座は、この弁座の上部の外周囲を大きくした延出部を外壁部の頂部近傍位置に被せ、かつ弁座の上部の内周囲を小さくした延出部をシートリングの頂部近傍位置に被せる状態で弁座の上部をやや突出させたことを特徴とするダイヤフラムバルブである。
【0015】
請求項2に係る発明は、シートリングの内周面に雌ネジ部を設けたダイヤフラムバルブである。
【0016】
請求項3に係る発明は、シートリングの頂部を前記外壁部の高さより低くし、かつシートリングの内径を一次側開口部の内径より大きくしているダイヤフラムバルブである。
【0017】
請求項4に係る発明は、段部にさらに圧入段部を設け、この圧入段部にシートリングを圧入してボデーにシートリングを圧入固定したダイヤフラムバルブである。
【0018】
請求項5に係る発明は、弁座の底部外周は、圧入固定後に抜けないように外径を大きくした拡径部を外壁部に設けた係合部に係合させて圧入固定後の弁座が抜けないようにしたダイヤフラムバルブである。
【0019】
請求項6に係る発明は、鍔部の上面に接触する状態で弁座の底部を圧入溝に圧入固定し、次いで、弁座を取外す際には、雄ネジ部を設けた治具をシートリングの雌ネジ部に螺合させて治具を引き上げることにより、シートリングの鍔部で弁座の底部を係止しながら前座を抜き出すようにしたダイヤフラムバルブの弁座交換方法である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によると、高温状態での弁座の潰れや変形を抑制して高耐久性で高流量(高Cv値)を変動なく安定した状態で維持することを可能としたダイヤフラムバルブを得ることができる。
【0021】
請求項2に係る発明によると、弁座を損傷することなく容易に交換することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によると、シートリングを設けても一次側開口部の流路面積が縮小されることがなく、また一次側開口部から弁室への流れも妨害されないので大流量を確保することができる。
【0023】
請求項4に係る発明によると、シートリングを強固にボデーに圧入固定し、外壁部とシートリングとの間に弁座を圧入状態で確実に固定することができる。
【0024】
請求項5に係る発明によると、圧入固定後の弁座が抜け出すことがないので、高耐久性を得ることができる。
【0025】
請求項6に係る発明によると、弁座の交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のダイヤフラムバルブの一実施形態を示した縦断面図である。
図2図1のダイヤフラムバルブの要部断面図である。
図3図2の部分拡大断面図である。
図4】本発明のバルブ用弁座の交換方法の一例を説明する図面であり、(a)は、弁座の取付け方法、(b)は、弁座の取出し方法を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明におけるダイヤフラムバルブの実施形態の一例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のダイヤフラムバルブの一実施形態を示した縦断面図であり、図2はダイヤフラムバルブの要部断面図であり、図3は要部の部分拡大断面図である。
【0028】
図1において、ダイヤフラムバルブ1は、ボデー2と、弁座3と、シートリング4と、ダイヤフラム5と、アクチュエータ6とから構成させている。
【0029】
ボデー2は、例えばSUS316Lなどのステンレス材料で一体に形成されており、流入口8と流出口9が設けられ、その内部には流入口8から続く一次流路11と流出口9から続く二次流路12が形成されている。一次流路は一次側開口部13を介して弁室14に連通し、二次流路12は二次側開口部15を介して弁室14に連通している。
【0030】
また、ボデー2の上部には開口部17が設けられ、この開口部17の内周側には雌ネジ部18が形成されており、この雌ネジ部18にアクチュエータ6の下端部に形成した雄ネジ部19を螺合せ、ボデー2の上部にアクチュエータ6を搭載することができる。
【0031】
一次側開口部13には、弁座装着用の外壁部20が設けられ、外壁部20の内周囲には、シートリング4を圧入固定する段部21が設けられている。
【0032】
外壁部20の頂部23は断面アール形状に形成され、外壁部20の内周側下部には弁座3の拡径部30を挿入する断面アール形状の窪み24が形成されている。
【0033】
段部21には、シートリング4の鍔部32を装着する鍔部装着段部25と、シートリング4を圧入する圧入段部26と、が形成されており、鍔部装着段部25の底面25aと圧入段部26の壁面26aとの間は、なだらかな曲面で繋がれている。
【0034】
弁座3は、フッ素樹脂等の樹脂材料により略円筒状に設けられ、その断面形状は、図3に示すように、上部の外周囲を大きくした断面アール形状の延出部27と、上部の内周囲を小さくした断面アール形状の延出部28を設け、略平面の頂部29と延出部27、延出部28との間をなだらかな曲面で繋ぎ、底部外周には外径を大きくした断面アール形状の拡径部30を設けている。
【0035】
また、図2に示すように、弁座3は、弁座3を弁座装着用の圧入溝42に圧入固定した際に、外壁部20の頂部23の上方、及びシートリング4の頂部35の上方に突出する弁座3の高さが、ダイヤフラム5の閉動作時にダイヤフラム5の下面5aが外壁部20の頂部23及び前記シートリング4の頂部35に接触しない範囲で可能な限り低くなるように形成している。
【0036】
本例では、弁座3をPFA(パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)により形成したが、弁座3の材質はPFAに限られるわけではなく、適宜材質の変更が可能である。また、弁座3の頂部29から延出部27、28へと連なる扁平な形状は、弁座3の形成時に機械加工や射出加工により成形することもできるし、頂部の形状が異なる弁座をボデー2内に装着してから上部から治具等で意図的に押し潰すなどして成形することもできる。
【0037】
シートリング4は、例えばSUS316L等のステンレス鋼により略円筒形に設けられ、外周面には弁座3の底部31を支受けする鍔部32を、内周面33には雌ネジ部34を設け、頂部35と下端部36は断面アール状に形成している。
【0038】
また、図3に示すように、シートリング4は、シートリング4を圧入段部26に圧入固定した際のシートリング4の頂部35が、外壁部20の頂部23よりもΔHだけ低くなるように形成している。さらに、シートリング4の内径φD1を一次側開口部13の内径φD2よりも大径にすると共に、シートリング4の下部の外径を圧入段部26の壁面26aの内径よりも大きく、かつ圧入段部26にシートリング4を圧入可能な径としている。
【0039】
なお、本例では、シートリング4をステンレス鋼(SUS316L)で製作したが、シートリング4の材料はステンレス鋼に限られるわけではなく、内周面33に雌ネジ部34の形成が可能であり、バルブの使用温度において適切に硬度が保たれる材料であれば、プラスチック材で製作することもできる。
【0040】
ダイヤフラム5は、金属製の薄板状の部材が所定枚数重ねられて構成され、自然状態において片側(上方)に向けて中心部を頂点とした緩やかな凸曲面状を呈した外観略円盤状に形成され、この自然状態の形態に自己復帰可能な弾性力を有している。
【0041】
図2に示すように、ダイヤフラム5は、アクチュエータ6のダイヤフラムピース38が下降すると、ダイヤフラム5の中央付近が押圧されて中央付近を中心に変形し、弁座3に着座して弁閉状態となる。
【0042】
また、ダイヤフラムピース38の押圧力がなくなると、ダイヤフラム5がその弾性力によりダイヤフラムピース38を押し上げながら凸曲面状に復帰する方向に変形し、ダイヤフラム5が弁座3から離間して弁開状態となる。
【0043】
アクチュエータ6はエアー駆動式のアクチュエータであり、上部に設けたエアー供給口39からエアーが供給されるとスプリング40の押圧力に抗してピストン41が上昇するため、ダイヤフラムピース38の押圧力が消失してバルブは弁開状態となり、エアーの供給が停止されるとスプリング40の弾発力によりピストン41が下降してダイヤフラムピース38の押圧力が発生してバルブは弁閉状態となる。
【0044】
次に、本発明のダイヤフラムバルブの上記実施形態における作用を説明する。
図3に示すように、シートリング4をボデー2に設けた圧入段部26に圧入すると、シートリング4の下部の外径を圧入段部26に圧入固定が可能な径に設定したことにより、シートリング4の下部を確実かつ強固に圧入段部26に固定することができ、鍔部32が鍔部装着段部25に収納され、シートリング4と外壁部20との間に鍔部32の上面32aを底部として弁座装着用の圧入溝42が構成される。
【0045】
この時、シートリング4の下端部36が断面アール状に形成され、また鍔部装着段部25の底面25aと圧入段部26の壁面26aとを曲面で繋いで段部21が形成されているため、シートリング4の圧入段部26への圧入は容易である。また、シートリング4は、圧入段部26に締まり嵌めで固定されるため、シートリング4を圧入段部26から取外す際には、シートリング4を上方へ引き抜くだけでよい。
【0046】
このように形成された圧入溝42に弁座3を圧入すると、弁座3をボデー2に固定することができるが、弁座3の底部外周には外径を大きくした断面アール形状の拡径部30が設けられており、外壁部20の頂部23が断面アール形状に形成されているため、弁座3の圧入溝42への圧入を容易に行うことができる。さらに、圧入溝42に圧入後は、この拡径部30が外壁部20の内周側下部に形成された断面アール形状の窪み24に係合し、弁座3の圧入溝42からの抜け出しを防止する。
【0047】
弁座3は、この圧入溝42内に装着されると、外壁部20の内周面43とシートリング4の外周面44により圧入状態で固定されるため、外壁部20の内周面43と弁座3の外周面45との間が確実にシールされるので、弁座3の裏漏れが生じることがない。
【0048】
また、弁座3は、外壁部20の内周面43とシートリング4の外周面44により圧入状態で固定されるため、ダイヤフラムバルブ1が弁閉状態となり、ダイヤフラム5により弁座3の頂部29が押圧されても、ボデー2の外壁部20の内周面43とシートリング4の外周面44により内外周から支持されている弁座3の部分には傾きが生じない。
【0049】
さらに、弁座3の頂部29を略平面に形成すると共に、上部には外周囲を大きくした断面アール形状の延出部27と、内周囲を小さくした断面アール形状の延出部28とを設け、頂部29と延出部27、延出部28との間をなだらか曲面で繋いでいるため、弁座3の圧入溝42への圧入が完了すると、図3に示すように、延出部27が外壁部20の頂部23の近傍位置に密着して被さる状態に、また、延出部28がシートリング4の頂部35の近傍位置に密着して被さる状態になり、弁座3の頂部29は、外周側からは外壁部20の頂部23により、内周側からシートリング4の頂部35により支持される。
【0050】
これにより、弁座3の頂部29の受圧面積が増加することになり、ダイヤフラムバルブ1の閉動作時にダイヤフラム5の下面5aにより弁座3の頂部29が押圧された際の面圧が小さくなるため、弁座3の潰れを抑制することができる。
【0051】
また、弁座3は、図2及び図3に示すように、弁座3を弁座装着用の圧入溝42に装着した際に、外壁部20の頂部23の上方、及びシートリング4の頂部35の上方に突出する部分の弁座3の高さを、ダイヤフラムバルブ1の弁閉状態時にダイヤフラム5の下面5aが外壁部20の頂部23及びシートリング4の頂部35に接触しない範囲で可能な限り低く設定したので、外壁部20の頂部23の上方及びシートリング4の頂部35の上方に突出し、外壁部20の内周面43とシートリング4の外周面44により内外周から支持されない弁座3の部分の高さを最低限とすることができる。
【0052】
この結果、ダイヤフラムバルブ1の弁閉状態時にダイヤフラム5の下面5aに押圧されて変形する弁座の部分を最少化することができるので、弁座3の変形を抑制することができる。
【0053】
また、ダイヤフラム5の下面に5aにより衝撃を受けた弁座3の頂部29は、延出部27を介して外壁部20の頂部23により、また、延出部28を介してシートリング4の頂部35により内外周から支持されるので、ダイヤフラム5の押圧により発生する弁座3の変形を更に抑制することができる。
【0054】
以上のように、本発明のダイヤフラムバルブでは、弁閉状態時にダイヤフラム5の下面5aにより押圧される弁座3の面圧を小さくして弁座の潰れを抑制すると共に、弁座3の変形を大きく抑制することにより、弁座3の耐久性を向上させることができる。また、弁座3の耐久性が向上することに伴い、流量の経時変化を安定させることができる。
【0055】
図3に示すように、圧入段部26に圧入されたシートリング4は、外壁部20との間に鍔部32を底部として弁座装着用の圧入溝42を構成し、鍔部32で弁座3の底部31を支受している。シートリング4の内径φD1は、一次側開口部13の内径φD2より大径であるため、シートリング4を一次側開口部13に配置しても、一次側開口部13の流路面積は縮小されない。
【0056】
また、シートリング4の頂部35を断面アール形状に形成すると共に、シートリング4の高さは、シートリング4を圧入段部26に圧入固定した状態で、シートリング4の頂部35が外壁部20の頂部23よりもΔHだけ低くなるように設定し、一次側開口部13から弁室14内に向かう流れを妨害しないように構成している。
【0057】
以上のように、シートリング4を一次側開口部13に配置しても一次側開口部13の流路面積が縮小されることがなく、また、一次側開口部13から弁室14内に向かう流れを妨害しないので、大流量を確保してバルブのCv値を大きくすることができる。
【0058】
これに加え、シートリング4の内周面33には雌ネジ部34を形成しているため、シートリング着脱用の治具に設けた雄ネジ部をこの雌ネジ部34に螺合させ、容易にシートリング4をボデー2に着脱することができる。また、弁座3は底部31を鍔部32に支受されて圧入溝42に圧入固定されているので、弁座3を取出す際には、シートリング4を引き抜くと、弁座3が鍔部32に係止されているため、弁座3をシートリング4と同時に取出すことができるので、容易に弁座3を取出すことができると共に弁座3を傷つけることがなく弁座3を交換することができる。
【0059】
続いて、本発明の弁座の交換方法を説明する。図4は、シートリング着脱用の治具の一例を使用し、本発明のダイヤフラムバルブの弁座を交換する方法を説明する図面である。シートリング着脱用の治具は、弁座3の装着時と取外し時でその構成が異なるので、先ずは弁座3の装着時について説明する。
【0060】
弁座3を装着する治具47は、アダプタ48と圧入部材50とで構成される。アダプタ48は、圧入部材50をボデー2内に押し込むための部品であり、圧入部材50を挿通させる挿通孔51を中央に、ボデー2の雌ネジ部18に螺着させる雄ネジ部52を下部外周に、圧入部材50を押圧する押圧面53を下端部に備えている。圧入部材50は、ボデー2内の圧入段部26にシートリング4を圧入するための部品であり、下端部にアダプタ48の押圧面53から作用する押圧力を受ける鍔部54を、下部先端にシートリング4を螺着する雄ネジ部55を備えている。
【0061】
この治具47でボデー2内に弁座3を装着する際には、先ず、弁座3の底部31が鍔部32の上面32aに接触する状態で弁座3をシートリング4に取り付け、シートリング4を圧入部材50の下部先端の雄ネジ部55に弁座3の頂部29が圧入部材50の下面50aに接するまでねじ込んだ後、アダプタ48の下面側からシートリング4を螺着した圧入部材50を挿通孔51に挿通する。
【0062】
次に、ボデー2の開口部17の内周に設けた雌ネジ部18にアダプタ48の雄ネジ部52を軽くねじ込み、圧入部材50を挿通した状態のアダプタ48をボデー2の上部に取り付ける。この状態で、ボデー2の開口部17の中心とシートリング4の中心は一致しているので、弁座3の底部31が外壁部20の頂部23に接触するまで圧入部材50を軽く押し込み、その後、アダプタ48の押圧面53が圧入部材50の鍔部54に当接するまでアダプタ48を軽くねじ込む。
【0063】
アダプタ48の押圧面53が圧入部材50の鍔部54に当接したことを確認した後、アダプタ48を強くねじ込むと、圧入部材50の鍔部54がアダプタ48の押圧面53により押圧されて圧入部材50が下方に移動する結果、圧入部材50の下部先端に設けた雄ネジ部55に螺着されているシートリング4の下部が圧入段部26に圧入されると共に、圧入部材50の下面50aに頂部29を押圧された弁座3が圧入溝42に圧入される。
【0064】
圧入段部26へのシートリング4の圧入固定、及び圧入溝42への弁座3の圧入が完了すると、弁座3は外壁部20の内周面43とシートリング4の外周面44との間に密着状態で保持され、弁座3のボデー2への装着が完了する。
【0065】
次に、弁座3の取外し時について説明する。シートリング取外し用の治具56は、アダプタ48と、受圧金具57と、スペーサ58と、係合ボルト59と、ナット60と、から構成される。
【0066】
アダプタ48は治具47と兼用する部品であるが、弁座3の取出し用として用いる場合には、上面に設けた装着段部48a内に受圧金具57を装着して使用する。受圧金具57は、アダプタ48からの押圧力を係合ボルト59の頭部59aに伝達するための部品であり、中央に係合ボルト59を挿通させるボルト挿通孔57aを備えている。スペーサ58は、係合ボルト59の中心をアダプタ48の中心に合わせて保持するための部品であり、ボルト挿通孔58aを中心に設けている。係合ボルト59は、シートリング4の内周面33に設けた雌ネジ部34に螺着させシートリング4を圧入段部26から引き抜くための部品である。ナット60は、スペーサ58をアダプタ48の挿通孔51内に保持するための部品である。
【0067】
この治具56でボデー2内から弁座3を取外す際には、先ず、係合ボルト59を受圧金具57のボルト挿通孔57aとスペーサ58のボルト挿通孔58aに挿通した後、係合ボルト59にナット60を螺着し、スペーサ58の下面とナット60の上面との間隔がシートリング4の厚み程度になるまでナット60をねじ込んで受圧金具57、スペーサ58、係合ボルト59、ナット60を一体にする。
【0068】
その後、アダプタ48の上方から一体となった受圧金具57、スペーサ58、係合ボルト59、ナット60を挿通孔51に挿入して受圧金具57を装着段部48aに装着し、アダプタ48の雄ネジ部52をボデー2の開口部17の内周に設けた雌ネジ部18にねじ込み、アダプタ48をボデー2の上部に取り付ける。この状態で、ボデー2の一次側開口部13の中心と係合ボルト59の中心は一致しているので、係合ボルト59をねじ込むと、係合ボルト59はボデー2内の圧入段部26に圧入固定されているシートリング4の内周面33に設けた雌ネジ部34に螺合する。
【0069】
係合ボルト59の頭部59aが受圧金具57に当接したことを確認した後、アダプタ48をボデー2から取外す方向(左回り)に廻すと、アダプタ48の上昇に従って受圧金具57を介して係合ボルト59の頭部59aが上方に持ち上げられるため、これに伴って係合ボルト59に螺着させたシートリング4がボデー2内の圧入段部26から引き抜かれる。この際、弁座3はシートリング4の鍔部32で支受されているため、シートリング4の引き出しと同時に鍔部32が弁座3の底部31を係止しながら抜き出すので、ボデー2内から弁座3を傷つけることなくシートリング4と一緒に取出すことができる。
【0070】
このように、本発明の弁座の交換方法では、弁座を傷つけることなく弁座の交換を容易に行うことができる。
【0071】
以上詳細に説明したように、本発明のダイヤフラムバルブは、高温状態で高速開閉動作させても弁座の潰れや変形の発生を抑制することができると共に大流量を安定的に確保することができ、また、本発明の弁座の交換方法によれば、弁座を傷つけることなく容易に弁座の交換を行うことができるので、ALDプロセスを用いた半導体製造装置に好適である。
【符号の説明】
【0072】
1 ダイヤフラムバルブ
2 ボデー
3 弁座
4 シートリング
5 ダイヤフラム
6 アクチュエータ
13 一次側開口部
20 外壁部
21 段部
23 外壁部の頂部
26 圧入段部
27 延出部
28 延出部
32 鍔部
35 シートリングの頂部
42 圧入溝
図1
図2
図3
図4