(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】加速度測定装置および加速度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01P 21/02 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
G01P21/02
(21)【出願番号】P 2020028856
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】下村 和広
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169783(JP,A)
【文献】特開2004-85562(JP,A)
【文献】特開平6-347355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷出力型加速度センサと、前記電荷出力型加速度センサと伝送ケーブルで電気的に接続される電荷増幅器とを備える加速度測定装置において、
既知の重畳信号を出力する重畳信号源と、
前記重畳信号を前記電荷出力型加速度センサの検出信号に重畳するスイッチ部とをさらに備え、
前記電荷増幅器は、前記検出信号を前記伝送ケーブルを介して受け付け前記検出信号を増幅して得られる出力信号を出力する増幅回路と、前記出力信号に基づいて加速度を導出する計算部とを備え、
前記計算部は、前記スイッチ部を制御し、(a)前記重畳信号が前記検出信号に重畳された状態で得られた前記出力信号から前記電荷出力型加速度センサの静電容量を導出し、(b)導出した前記静電容量に基づいて温度補償を行いつつ、前記重畳信号が前記検出信号に重畳されていない状態で得られた前記出力信号から加速度を導出すること、
を特徴とする加速度測定装置。
【請求項2】
前記増幅回路は、反転増幅回路を備え、
前記反転増幅回路は、オペアンプと、前記オペアンプの正入力端に接続された入力側抵抗とを備え、
前記検出信号は、前記オペアンプの負入力端に入力され、
前記スイッチ部は、前記入力側抵抗に前記重畳信号源を並列に接続することで、前記重畳信号を前記検出信号に重畳すること、
を特徴とする請求項1記載の加速度測定装置。
【請求項3】
前記増幅回路は、反転増幅回路を備え、
前記反転増幅回路は、オペアンプを備え、
前記スイッチ部は、前記電荷出力型加速度センサに前記重畳信号源を直列に接続することで、前記重畳信号を前記検出信号に重畳すること、
を特徴とする請求項1記載の加速度測定装置。
【請求項4】
前記重畳信号は、前記重畳信号が前記検出信号に重畳された状態で、前記検出信号の最大振幅時に、前記出力信号における前記検出信号に起因する成分が所定誤差レベル未満となるように、前記検出信号の最大振幅より大きい振幅を有し、
前記計算部は、前記出力信号における前記検出信号に起因する成分を無視して、前記電荷出力型加速度センサの静電容量を導出すること、
を特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の加速度測定装置。
【請求項5】
前記重畳信号は、前記検出信号の周波数帯域とは異なる周波数帯域の信号であって、
前記計算部は、前記出力信号における前記検出信号の周波数成分をフィルタリングで減衰させて、前記出力信号における前記検出信号に起因する成分を無視して、前記電荷出力型加速度センサの静電容量を導出すること、
を特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の加速度測定装置。
【請求項6】
電荷出力型加速度センサの検出信号を伝送ケーブルを介して受け付けて電荷増幅器で前記検出信号を増幅して得られる出力信号を出力し、前記電荷増幅器で前記出力信号に基づいて加速度を導出する加速度測定方法において、
スイッチ部を制御して重畳信号源から出力される既知の重畳信号が電荷出力型加速度センサの検出信号に重畳された状態とし、
前記状態で得られた前記出力信号から前記電荷出力型加速度センサの静電容量を導出し、
導出した前記静電容量に基づいて温度補償を行いつつ前記重畳信号が重畳されていない前記出力信号から加速度を導出すること、
を特徴とする加速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度測定装置および加速度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を使用した電荷出力型の加速度センサでは、温度に対する電荷感度の変化が大きい。そのため、ある圧電素子は、温度補償用のコンデンサを接続され、温度依存性が改善されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、あるセンサ出力回路では、サーミスタなどの測温抵抗体に基づいて圧電センサの温度を測定し、その温度に基づいて温度補償を行う(例えば特許文献2参照)。
【0004】
このように、加速度センサの電荷感度が温度依存性を有していても、加速度センサの温度が特定されれば電荷感度の温度変化を補正してより高精度な測定結果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平05-284600号公報
【文献】特開2011-169783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の技術では、加速度センサの温度を特定するためには、温度センサを設けて、加速度センサの温度を測定する必要があるが、温度センサが加速度センサ近傍に設けられたとしても、圧電素子自体の実際の温度と温度センサで測定される温度とが一致するとは限らず、加速度センサの温度補償が正確に行われない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、加速度センサに温度センサを内蔵せずに加速度センサの温度補償を正確に行う加速度測定装置および加速度測定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る加速度測定装置は、電荷出力型加速度センサと、電荷出力型加速度センサと伝送ケーブルで電気的に接続される電荷増幅器とを備える。当該加速度測定装置は、既知の重畳信号を出力する重畳信号源と、重畳信号を電荷出力型加速度センサの検出信号に重畳するスイッチ部とをさらに備える。電荷増幅器は、検出信号を伝送ケーブルを介して受け付け検出信号を増幅して得られる出力信号を出力する増幅回路と、出力信号に基づいて加速度を導出する計算部とを備える。そして、計算部は、スイッチ部を制御し、(a)重畳信号が検出信号に重畳された状態で得られた出力信号から電荷出力型加速度センサの静電容量を導出し、(b)導出した静電容量に基づいて温度補償を行いつつ出力信号から加速度を導出する。
【0009】
本発明に係る加速度測定方法は、電荷出力型加速度センサの検出信号を伝送ケーブルを介して受け付けて電荷増幅器で検出信号を増幅して得られる出力信号を出力し、電荷増幅器で出力信号に基づいて加速度を導出する加速度測定方法であり、(a)スイッチ部を制御して重畳信号源から出力される既知の重畳信号が電荷出力型加速度センサの検出信号に重畳された状態とし、その状態で得られた出力信号から電荷出力型加速度センサの静電容量を導出し、(b)導出した静電容量に基づいて温度補償を行いつつ重畳信号が重畳されていない出力信号から加速度を導出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加速度センサに温度センサを内蔵せずに加速度センサの温度補償を正確に行う加速度測定装置および加速度測定方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る加速度測定装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、電荷出力型の加速度センサの電荷感度の温度依存特性を説明する図である。
【
図3】
図3は、電荷出力型の加速度センサの静電容量の温度依存特性を説明する図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1における増幅回路21を示す回路図である。
【
図5】
図5は、
図1における計算部22の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2における増幅回路21を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
実施の形態1.
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る加速度測定装置の構成を示す図である。
図1に示す加速度測定装置は、加速度センサ1と、電荷増幅器2と、加速度センサ1と電荷増幅器2とを電気的に接続する伝送ケーブル3(例えばローノイズケーブル)とを備える。
【0015】
加速度センサ1は、電荷出力型加速度センサであり、増幅器などを内蔵しないセンサである。なお、
図1に示す加速度センサ1は、シェア型であるが、圧縮型などの他の型式のものでもよい。
図1では、加速度センサ1は、ポスト11に設置された圧電素子12(圧電セラミックなど)と、圧電素子12に設置された錘13を備える。圧電素子12としては、例えば、PZT(Pb[Zr・Ti]O
3)などの圧電素子が使用される。
【0016】
図2は、電荷出力型の加速度センサの電荷感度の温度依存特性を説明する図である。
図3は、電荷出力型の加速度センサの静電容量の温度依存特性を説明する図である。このような圧電素子12を使用した加速度センサ1では、例えば
図2および
図3に示すように、電荷感度や静電容量が温度に応じて変化する。なお、
図2および
図3は、摂氏20度の値を基準とした、各温度での相対変化率を示している。
【0017】
また、電荷増幅器2は、加速度センサ1の出力する検出信号を増幅して出力信号を生成し加速度の測定値を導出する装置である。例えば
図1に示すように、電荷増幅器2は、増幅回路21と、計算部22とを備える。増幅回路21は、加速度センサ1の検出信号を伝送ケーブル3を介して受け付けその検出信号を増幅して得られる出力信号を出力する。計算部22は、その出力信号に基づいて加速度(つまり、加速度センサ1による加速度測定値)を導出する。
【0018】
図4は、実施の形態1における増幅回路21を示す回路図である。なお、
図4において、加速度センサ1および伝送ケーブル3は、等価回路で示されている。
【0019】
実施の形態1では例えば
図4に示すように、電荷増幅器2は、既知の重畳信号を出力する重畳信号源V2と、その重畳信号を上述の検出信号に重畳するスイッチ部SW1とをさらに備える。ここで、重畳信号は、既知の周波数の交流電圧を有する。スイッチ部SW1は、計算部22によって制御され、計算部22から供給される制御信号CNTに従って開閉する。
【0020】
実施の形態1では、例えば
図4に示すように、増幅回路21は、反転増幅回路を備え、その反転増幅回路は、オペアンプAMPと、帰還抵抗R1と、コンデンサC3と、オペアンプAMPの一方の入力端(正入力端)に接続された入力側抵抗R2とを備える。上述の検出信号は、オペアンプAMPの他方の入力端(負入力端)に入力される。そして、スイッチ部SW1は、入力側抵抗R2に重畳信号源V2を並列に(つまり、オペアンプAMPの正入力端)接続することで、重畳信号を検出信号に重畳する。
【0021】
図5は、
図1における計算部22の構成を示すブロック図である。計算部22は、制御部41、記憶部42、A/D変換部43、演算部44、および信号出力部45を備える。
【0022】
制御部41は、動作モードの切り替えを行うとともに、制御信号CNTをスイッチ部SW1に供給してスイッチ部SW1を制御する。制御部41は、動作モードを、温度補償情報測定モードおよび加速度測定モードから選択し、選択した動作モードに応じて、スイッチ部SW1の開閉状態を制御する。温度補償情報測定モードでは、スイッチ部SW1を閉じ増幅回路21の出力信号Voutに基づいて温度補償情報が測定され、加速度測定モードでは、スイッチ部SW1を開き測定された温度補償情報で温度補償しつつ加速度が測定される。
【0023】
記憶部42は、不揮発性記憶装置を備え、その不揮発性記憶装置に、温度補償情報の測定、温度補償、および加速度の測定に必要なデータを格納している。
【0024】
A/D変換部43は、出力信号Voutをアナログ信号からデジタル信号へ変換する。
【0025】
演算部44は、出力信号Voutの値から温度補償情報を導出したり、温度補償しつつ出力信号Voutの値から加速度測定値を導出したりする。
【0026】
具体的には、温度補償情報測定モードにおいて、演算部44は、重畳信号が検出信号に重畳された状態で得られた出力信号Voutから、現時点の温度Tに対応する加速度センサ1の静電容量C1(T)を温度補償情報として導出する。
【0027】
また、加速度測定モードにおいて、演算部44は、導出した温度補償情報(つまり、現時点の温度Tに対応する静電容量)に基づいて温度補償を行いつつ、重畳信号が検出信号に重畳されていない状態で得られた出力信号Voutから加速度を導出する。
【0028】
具体的には、加速度センサ1の電荷感度の温度依存特性情報および加速度センサ1の静電容量の温度依存特性情報に基づいて温度補償が行われる。電荷感度および静電容量の温度依存特性情報は、記憶部42に予め格納されており、演算部44は、その情報を読み出して使用することで温度補償情報を導出する。
【0029】
上述の電荷感度の温度依存特性情報は、例えば変換テーブルや変換式であって、温度とその温度での加速度センサ1の電荷感度(あるいはその温度での電荷感度と基準温度での電荷感度との変化率)との対応関係を示す。
【0030】
上述の静電容量の温度依存特性情報は、例えば変換テーブルや変換式であって、温度とその温度での加速度センサ1の静電容量(あるいはその温度での静電容量と基準温度での静電容量との変化率)との対応関係を示す。
【0031】
なお、上述の電荷感度の温度依存特性情報および上述の静電容量の温度依存特性情報は、予め、実験などで特定される。
【0032】
より具体的には、演算部44は、(a)静電容量C1(T)の温度依存特性情報に基づいて、得られた静電容量C1(T)に対応する現時点での加速度センサ1の温度Tを特定し、(b)電荷感度の温度依存特性情報に基づいて、特定された温度Tに対応する電荷感度を特定し、(c)特定した電荷感度に基づいて出力信号Voutを補正して温度補償を行う。
【0033】
なお、静電容量C1(T)の温度依存特性情報が離散的な変換テーブルである場合、入力値(静電容量C1(T)あるいはその変化率)に一致する値が変換テーブルにないときには、入力値に対して最も近い値に対応する出力値(温度T)が使用されたり、入力値の周辺の複数の値に対応する複数の出力値を補間して得られる値(温度T)が使用されたりする。
【0034】
同様に、電荷感度の温度依存特性情報が離散的な変換テーブルである場合、入力値(温度T)に一致する値が変換テーブルにないときには、入力値に対して最も近い値に対応する出力値(電荷感度あるいはその変化率)が使用されたり、入力値の周辺の複数の値に対応する複数の出力値を補間して得られる値(電荷感度あるいはその変化率)が使用されたりする。
【0035】
さらに、例えば、(a)重畳信号が検出信号に重畳された状態で、検出信号の最大振幅時に、出力信号Voutにおける検出信号に起因する成分が所定誤差レベル未満となるように、重畳信号の振幅を、検出信号の最大振幅より大きく設定しておき(例えば、重畳信号の振幅を検出信号の最大振幅の100倍以上としておき)、(b)演算部44は、出力信号Voutにおける検出信号に起因する成分を無視して、加速度センサ1の静電容量C1(T)を導出するようにしてもよい。
【0036】
また、例えば、(a)重畳信号を、検出信号の取り得る周波数帯域とは異なる特定の周波数あるいは特定の周波数帯域の信号とし、(b)演算部44は、出力信号Voutにおける検出信号の周波数成分をフィルタリングで減衰させ、出力信号Voutにおける検出信号に起因する成分を無視して、加速度センサの静電容量C1(T)を導出するようにしてもよい。例えば、重畳信号の周波数は、検出信号の取り得る周波数帯域より十分高く設定され、ハイパスフィルター処理で検出信号の周波数成分を減衰させる。
【0037】
また、信号出力部45は、例えばインターフェイス回路を備え、そのインターフェイス回路で、演算部44によって得られた温度補償後の加速度測定値を所定のデータ形式で出力する。
【0038】
例えば、計算部22における制御部41、演算部44などは、所定のプログラムを実行するコンピュータで実現される。
【0039】
次に、実施の形態1に係る加速度測定装置の動作について説明する。
【0040】
まず、制御部41は、温度補償情報測定モードを選択し、スイッチ部SW1を制御して重畳信号源V2をオペアンプAMPの入力端に電気的に接続することで、既知の重畳信号が加速度センサ1の検出信号に重畳された状態とする。そして、温度補償情報測定モードにおいて、演算部44は、この状態で得られた出力信号から加速度センサ1の静電容量C1(T)を導出する。
【0041】
静電容量C1(T)が導出された後、ただちに、制御部41は、加速度測定モードを選択し、スイッチ部SW1を制御して重畳信号源V2をオペアンプAMPの入力端から電気的に切り離すことで、重畳信号が加速度センサ1の検出信号に重畳されていない状態とする。そして、加速度測定モードにおいて、演算部44は、導出した静電容量C1(T)に基づいて温度補償を行いつつこの状態で得られた出力信号Voutから加速度を導出する。
【0042】
ここで、具体的に、実施の形態1における静電容量C1(T)の導出と温度補償について説明する。
【0043】
なお、ここでは、V1(T)を加速度センサ1の現時点の温度Tでの加速度センサ1の検出電圧とし、V2を重畳信号の電圧とし、Vout(T)を、加速度センサ1の現時点の温度がTであるときの増幅回路21の出力電圧とし、C1(T)を加速度センサ1の現時点の温度Tでの加速度センサ1の静電容量とし、C2を伝送ケーブル3の静電容量(既知)とし(一般的なローノイズケーブルの場合100 pF/m程度)、C3を増幅回路21における反転増幅回路の帰還部の静電容量(一般的には1000pF程度)とし、R1を増幅回路21における反転増幅回路の帰還抵抗の抵抗値(一般的には、1GΩ程度)とする。
【0044】
図4に示す回路の場合、増幅回路21の出力電圧Vout(T)は、次式のように表現される。
【0045】
Vout(T) =-V1(T)×C1(T)/C3+V2×((C1(T)+C2)/C3+1)
【0046】
なお、加速度センサ1の現時点の温度Tは、別途のセンサなどで測定されず未知である。
【0047】
ここで、V2を上述のように十分大きくした場合やV2の周波数を上述のように設定しフィルタリングを行う場合には、上記の式の第1項を無視できるため、増幅回路21の出力電圧Voutは、次式のように表現される。
【0048】
Vout(T) ≒ V2×((C1(T)+C2)/C3+1)
【0049】
そして、この場合、この式から、次式が得られるため、次式に従って、出力電圧Vout(T)から静電容量C1(T)が導出される。
【0050】
C1(T) = C3×(Vout(T)/V2-C2/C3-1)
【0051】
他方、
図4に示す回路では、出力電圧Vout(T)については、次式が成立する。
【0052】
Vout(T) = V1(T)×C1(T)/C3
【0053】
ここで、現時点の温度Tでの加速度センサ1の電荷感度を電荷出力Q1(T)[pC/(m/s2)]で示すと、この式は、次式のようになる。
【0054】
Vout(T)=Q1(T)/C3
【0055】
そして、静電容量C1(T)に対応する電荷出力Q1(T)と、基準温度Trefでの電荷出力Q1(Tref)との比率が、静電容量C1(T)の温度依存特性情報および電荷感度の温度依存特性情報に基づいて特定され、特定されたその比率に基づいて、Vout(T)を補正することで、温度補償が行われる。
【0056】
例えば、
図2および
図3に示すように、静電容量C1(T)の温度依存特性情報および電荷感度の温度依存特性情報が、基準温度Trefに対する各温度での値の変化率として記述されている場合、まず、静電容量C1(T)と基準温度Trefでの静電容量C1(Tref)との比が導出され、静電容量C1(T)の温度依存特性情報に基づいて、その比(つまり、変化率)に対応する温度Tが特定され、電荷感度の温度依存特性情報に基づいて、特定された温度Tに対応する電荷感度の変化率(つまり、上述の、現時点の温度Tでの電荷出力Q1(T)と、基準温度Trefでの電荷出力Q1(Tref)との比率)が特定される。なお、静電容量C1(Tref)は既知である。
【0057】
以上のように、上記実施の形態1によれば、電荷増幅器2は、加速度センサ1の検出信号を伝送ケーブル3を介して受け付け検出信号を増幅して得られる出力信号を出力する増幅回路21と、出力信号に基づいて加速度を導出する計算部22とを備える。そして、電荷増幅器2は、既知の重畳信号を出力する重畳信号源V2と、重畳信号を検出信号に重畳するスイッチ部SW1とをさらに備え、計算部22は、スイッチ部SW1を制御し、(a)重畳信号が検出信号に重畳された状態で得られた出力信号から加速度センサ1の静電容量を導出し、(b)導出した静電容量に基づいて温度補償を行いつつ出力信号から加速度を導出する。
【0058】
これにより、加速度センサ1に温度センサを内蔵せずに加速度センサ1の温度補償を正確に行いつつ加速度測定が行われる。
【0059】
実施の形態2.
【0060】
実施の形態2に係る加速度測定装置では、電荷増幅器2における増幅回路21が、反転増幅回路を備える。
【0061】
図6は、実施の形態2における増幅回路21を示す回路図である。なお、
図6において、加速度センサ1および伝送ケーブル3は、等価回路で示されている。
【0062】
実施の形態2では例えば
図6に示すように、電荷増幅器2は、既知の重畳信号を出力する重畳信号源V2と、その重畳信号を上述の検出信号に重畳するスイッチ部SW2とを備える。ここで、スイッチ部SW2は、スイッチ部SW1と同様に、計算部22によって制御され、計算部22から供給される制御信号CNTに従って加速度センサ1を接地点または重畳信号源V2に電気的に接続する。
【0063】
実施の形態2では、
図6に示すように、増幅回路21は、反転増幅回路を備え、その反転増幅回路は、オペアンプAMPと、帰還抵抗R1と、コンデンサC3とを備え、オペアンプAMPの一方の入力端(正入力端)が接地され、上述の検出信号は、オペアンプAMPの他方の入力端(負入力端)に入力される。そして、スイッチ部SW2は、加速度センサ1に重畳信号源V2を直列に接続することで、重畳信号を検出信号に重畳する。
【0064】
次に、実施の形態2に係る加速度測定装置の動作について説明する。
【0065】
まず、制御部41は、温度補償情報測定モードを選択し、スイッチ部SW2を制御して重畳信号源V2を加速度センサ1に対して直列に接続することで、既知の重畳信号が加速度センサ1の検出信号に重畳された状態とする。そして、温度補償情報測定モードにおいて、演算部44は、この状態で得られた出力信号から加速度センサ1の静電容量C1(T)を導出する。
【0066】
静電容量C1(T)が導出された後、ただちに、制御部41は、加速度測定モードを選択し、スイッチ部SW2を制御して重畳信号源V2を加速度センサ1から電気的に切り離すことで、重畳信号が加速度センサ1の検出信号に重畳されていない状態とする。そして、加速度測定モードにおいて、演算部44は、導出した静電容量C1(T)に基づいて温度補償を行いつつこの状態で得られた出力信号Voutから加速度を導出する。
【0067】
ここで、具体的に、実施の形態2における静電容量C1(T)の導出と温度補償について説明する。
【0068】
なお、ここでは、V1(T)を加速度センサ1の現時点の温度Tでの加速度センサ1の検出電圧とし、V2を重畳信号の電圧とし、Vout(T)を、加速度センサ1の現時点の温度がTであるときの増幅回路21の出力電圧とし、C1(T)を加速度センサ1の現時点の温度Tでの加速度センサ1の静電容量とし、C2を伝送ケーブル3の静電容量(既知)とし、C3を増幅回路21における反転増幅回路の帰還部の静電容量とし、R1を増幅回路21における反転増幅回路の帰還抵抗の抵抗値とする。
【0069】
このとき、増幅回路21の出力電圧Voutは、次式のように表現される。
【0070】
Vout(T) = ‐V1(T)×C1(T)/C3‐V2×(C1(T)+C2)/C3
【0071】
なお、加速度センサ1の現時点の温度Tは、別途のセンサなどで測定されず未知である。
【0072】
ここで、V2を上述のように十分大きくした場合やV2の周波数を上述のように設定しフィルタリングを行う場合には、上記の式の第1項を無視できるため、増幅回路21の出力電圧Voutは、次式のように表現される。
【0073】
Vout(T) ≒ ‐V2 × ((C1(T)+C2)/C3)
【0074】
そして、この場合、この式から、次式が得られるため、次式に従って、静電容量C1(T)が導出される。
【0075】
C1(T) = C3×(Vout(T)/V2)-C2
【0076】
そして、実施の形態1と同様にして、静電容量C1(T)に対応する電荷出力Q1(T)と、基準温度Trefでの電荷出力Q1(Tref)との比率が、静電容量C1(T)の温度依存特性情報および電荷感度の温度依存特性情報に基づいて特定され、特定されたその比率に基づいて、Vout(T)を補正することで、温度補償が行われる。
【0077】
なお、実施の形態2に係る加速度測定装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
以上のように、上記実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、加速度センサ1に温度センサを内蔵せずに加速度センサ1の温度補償を正確に行いつつ加速度測定が行われる。
【0079】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0080】
例えば、上記実施の形態1,2において、加速度センサ1の複数の種別に対応して上述の温度依存特性情報を複数、予め記憶部42に記憶しておき、伝送ケーブル3を介して実際に接続される加速度センサ1の種別に対応する温度依存特性情報を選択して、上述の温度補償に使用するようにしてもよい。なお、加速度センサ1の種別は、例えば、ユーザー操作によって指定される。
【0081】
また、上記実施の形態1,2において、記憶部42に記憶されている上述の温度依存特性情報をユーザーが追加したり更新したりできるようにしてもよい。その場合、例えば、制御部41が、所定のインターフェイスを使用して、外部の記憶媒体などから新たな温度依存特性情報を読み込み、その新たな温度依存特性情報で、記憶部42に記憶されている温度依存特性情報を更新したり、その新たな温度依存特性情報を記憶部42に追加したりする。
【0082】
さらに、上記実施の形態1,2において、上述の重畳信号源V2および/またはスイッチ部SW1,SW2を電荷増幅器2の外部に配置するようにしてもよい。例えば、実施の形態2(
図6)の場合、重畳信号源V2およびスイッチ部SW2を測定アダプタとし、加速度センサ1と電荷増幅器2との間に配置するようにしてもよい。その場合、例えば、測定アダプタは伝送ケーブル3に内蔵されたり、伝送ケーブル3に接続されたりする。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、例えば、電荷出力型の加速度センサを使用した加速度測定に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 加速度センサ
2 電荷増幅器
3 伝送ケーブル
21 増幅回路
22 計算部
SW1,SW2 スイッチ部
V2 重畳信号源