(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20231222BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20231222BHJP
H01M 10/04 20060101ALN20231222BHJP
H01M 10/058 20100101ALN20231222BHJP
【FI】
G01N23/04
H01G13/00 371C
H01G13/00 391Z
H01G13/00 361Z
H01M10/04 Z
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2020045216
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】染谷 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正治
(72)【発明者】
【氏名】半杭 秀一
(72)【発明者】
【氏名】永田 航平
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆行
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075830(JP,A)
【文献】特開2014-048178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082777(US,A1)
【文献】特開2015-075400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 35/00 - G01N 35/10
G01B 15/00 - G01B 15/08
G01B 11/00 - G01B 11/30
B65G 1/00 - B65G 49/08
H01G 13/00 - H01G 13/06
H01M 10/00 - H01M 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に放射線ビームを照射する放射線発生器と、
前記放射線発生器に対向して設けられた放射線検出器と、
前記放射線発生器と前記放射線検出器の間に設けられ、前記被検査物を一定の間隔で複 数並べた状態で搬送する直線状の検査コンベアと、
前記被検査物を前記検査コンベアの搬入側まで搬入する搬入装置と、
前記搬入装置から前記検査コンベアへと前記被検査物を移載する第1の移載装置と、
前記検査コンベアの側方かつ前記搬入装置と前記検査コンベアとの間に設けられた第1 の受け渡し部と、
前記放射線検出器は、前記被検査物の良否を判定する判定部を備え、
前記判定部が否と判定した前記被検査物を振り分ける誘導機構と、
前記判定部が否と判定した前記被検査物を、前記検査コンベアから前記誘導機構へと移載する第2の移載装置と、
前記検査コンベアの側方かつ前記検査コンベアと前記誘導機構との間に設けられた第2の受け渡し部と、
を備え、
前記被検査物の移載経路において、前記搬入装置
の載置面の端部、前記第1の受け渡し部
の載置面の端部、前記検査コンベ
アの載置面
の端部が、
各前記載置面が同一平面上
となるように、前記搬入装置及び前記検査コンベアの駆動を妨げない程度に互いに隙間なく突き合わされており、
前記判定部が否と判定した前記被検査物の移載経路において、前記検査コンベア
の前記載置面の前記端部、前記第2の受け渡し部
の載置面の端部、前記誘導機構
の載置面の端部が、
各前記載置面が同一平面上
となるように、前記検査コンベア及び前記誘導機構の駆動を妨げない程度に互いに隙間なく突き合わされている、
非破壊検査装置。
【請求項2】
前記第1の移載装置は、前記被検査物を保持または解放する複数の凹部を備えるホイー ルを備え、
前記複数の凹部は、前記ホイールの外周に沿って等間隔に設けられている、
請求項
1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記検査コンベアの上面には一定間隔ごとに突起が設けられ、
前記被検査物は、前記突起の間に載置されて搬送される、
請求項
1又は2のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記放射線発生器及び前記放射線検出器は、2組設けられ、
一方の組が前記被検査物の上側を撮像し、
他方の組が前記被検査物の下側を撮像する、
請求項1乃至
3のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記誘導機構の出口に設けられ、前記判定部が否と判定した前記被検査物を貯留するストックヤードと、
前記ストックヤードの出口に設けられ、当該ストックヤードに貯留された前記被検査物を前記搬入装置へと再投入する再投入機構と、
を更に備える、
請求項
1乃至4のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線で代表される放射線を被検査物に照射し、被検査物を透過することで減弱した放射線の二次元分布を検出して画像化することで、被検査物の非破壊検査を行う非破壊検査装置が知られている。被検査物は、例えば円筒型のリチウムイオン電池であり、その内部は正極板と負極板とを円筒状に幾重にも巻き付けてなる捲回構造となっている。
【0003】
この捲回構造に巻きずれがあると、例えば正極板が負極板よりはみ出していると、はみ出した正極板にリチウムが析出してショートし、発火するおそれがある。そのため、リチウムイオン電池の内部において正極板が負極板からはみ出していないかを検査する必要がある。この非破壊検査は、被検査物をコンベア等で搬送し、放射線発生器の前を通過させることにより行われる。
【0004】
例えば、特許文献1に示す従来技術の非破壊検査装置は、ループ状の検査用搬送路に沿って2組の放射線発生器と放射線検出器を配置して、被検査物の異なる個所を1回で検査できるようにしたものであり、効率的に検査を実施できる点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、このようなループ状の検査用搬送路を有する非破壊検査装置は、その構成部品が大型化・複雑化する傾向があり、比較的低コストで構成できる直線状の検査コンベアに沿って放射線発生器と放射線検出器が配置された非破壊検査装置も検討されている。このタイプの非破壊検査装置では、検査工程の前後には製造工程や出荷工程が設けられているため、これらの工程に設けられた搬入用或いは搬出用のコンベアと、検査工程の直線状のコンベアとの間で、未検査の被検査物或いは検査済みの被検査物を移載する必要がある。具体的には、各工程のコンベア同士をその端部で突き合わせ、コンベアからコンベアに被検査物を移載させる。
【0007】
しかしながら、コンベアの端部はスプロケットの外周に沿って下方に凹んでいるため、2つのコンベアを突き合わせた場合にはその端部間にV字状の凹みができる。この凹みの近傍を移載する際に、被検査物が傾き、転倒するおそれがある。また、転倒しないまでも被検査物の搬送間隔が変わってしまうこともあり、被検査物を連続して撮像する場合に上手く撮像できないおそれがある。
【0008】
本実施形態は、上記課題を解決すべく、比較的低コストで構成できる直線状の検査コンベアを採用しながらも、非検査物の確実な移載を可能とする非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の非破壊検査装置は、次のような構成を備える。
(1)被検査物に放射線ビームを照射する放射線発生器。
(2)前記放射線発生器に対向して設けられた放射線検出器。
(3)前記放射線発生器と前記放射線検出器の間に設けられ、前記被検査物を一定の間隔で複数並べた状態で搬送する直線状の検査コンベア。
(4)前記被検査物を前記検査コンベアの搬入側まで搬入する搬入装置。
(5)前記搬入装置から前記検査コンベアへと前記被検査物を移載する第1の移載装置。
(6)前記検査コンベアの側方かつ前記搬入装置と前記検査コンベアとの間に設けられた第1の受け渡し部。
(7)前記被検査物の移載経路において、前記搬入装置、前記第1の受け渡し部、前記検査コンベアにおける前記被検査物の各載置面が、同一平面上で互いに隙間なく突き合わされている。
【0010】
実施形態の非破壊検査装置は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)前記放射線検出器は、前記被検査物の良否を判定する判定部を備え、前記判定部が否と判定した前記被検査物を振り分ける誘導機構と、前記判定部が否と判定した前記被検査物を、前記検査コンベアから前記誘導機構へと移載する第2の移載装置と、前記検査コンベアの側方かつ前記検査コンベアと前記誘導機構との間に設けられた第2の受け渡し部と、を更に備え、前記判定部が否と判定した前記被検査物の移載経路において、前記検査コンベア、前記第2の受け渡し部、前記誘導機構における前記被検査物の各載置面が、同一平面上で互いに隙間なく突き合わされている。
【0011】
(2)前記第1の移載装置は、前記被検査物を保持または解放する複数の凹部を備えるホイールを備え、前記複数の凹部は、前記ホイールの外周に沿って等間隔に設けられている。
【0012】
(3)前記検査コンベアの上面には一定間隔ごとに突起が設けられ、前記被検査物は、前記突起の間に載置されて搬送される。
【0013】
(4)前記放射線発生器及び前記放射線検出器は、2組設けられ、一方の組が前記被検査物の上側を撮像し、他方の組が前記被検査物の下側を撮像する。
【0014】
(5)前記誘導機構の出口に設けられ、前記判定部が否と判定した前記被検査物を貯留するストックヤードと、前記ストックヤードの出口に設けられ、当該ストックヤードに貯留された前記被検査物を前記搬入装置へと再投入する再投入機構と、を更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る非破壊検査装置の構成を示す平面図である。
【
図2】実施形態に係る移載装置の近傍を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る被検査物が搬入される様子を示す平面図である。
【
図4】実施形態に係る被検査物が搬出される様子を示す平面図である。
【
図5】実施形態に係る制御を示す機能ブロック図である。
【
図6】実施形態に係る非破壊検査装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.第1の実施形態]
[1-1.実施形態の構成]
以下、第1の実施形態に係る非破壊検査装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
[被検査物]
被検査物Wは、放射線により非破壊検査されるものであれば特に限定されないが、本実施形態では、内部に捲回構造を備える円筒型のリチウムイオン電池とする。被検査物Wは、円柱状のホルダーHの上面に設けられた凹みに保持されて搬送される(
図2参照)。
【0018】
[非破壊検査装置]
図1に示すように、非破壊検査装置1は、被検査物Wに放射線を照射し、被検査物Wを透過した放射線を検出する。この検出結果に基づき、非破壊検査装置1は、被検査物Wの透視画像を生成する。非破壊検査装置1は、被検査物Wの透視画像を撮像する放射線発生器2と放射線検出器3、遮蔽箱4、被検査物Wが保持されたホルダーHを搬送する搬送機構5、検査を終えた被検査物Wを仕分けする誘導機構7、ストックヤード8、再投入機構9、これらの動作を制御する制御部10を備える(
図5参照)。
【0019】
放射線発生器2は、被検査物Wに向けて放射線ビームを照射する。放射線ビームは、焦点を頂点として角錐形状に拡大する放射線の束である。放射線は、例えばX線である。この放射線発生器2は、例えばX線管である。
【0020】
放射線検出器3は、放射線発生器2の焦点と対向して配置され、放射線の透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出し、当該放射線強度に比例した透過データを出力する。この放射線検出器3は、例えばイメージインテンシファイア(I.I.)とカメラ、又はフラットパネルディテクタ(FPD)により構成される。
【0021】
放射線検出器3は、判定部31、記憶部32を備える(
図5参照)。判定部31は、例えばCPUであり、記憶部32は、例えばHDDまたはSSDといったストレージである。判定部31は、放射線検出器3が撮像した画像を、記憶部32内部に予め記憶している基準画像と比較することにより、被検査物Wの良否を判定する。被検査物Wの良否は、例えば正極板が負極板よりはみ出していないか否かによって判定される。また、被検査物Wの良否は、撮像した画像が鮮明か否かによっても判定される。本実施形態では、前者の基準で否と判定されたものを不良品X、後者の基準で否と判定されたものを未検査品Yとする。なお、前者後者両方の基準で共に否と判定されたものは未検査品Yとする。また、前者後者両方の基準で共に良と判定されたものを良品Zとする。
【0022】
本実施形態において、放射線発生器2と放射線検出器3は横並びに2組設けられ、いずれの組も非検査物Wの検査用搬送路を挟んで対向するように配置されている。また、2組は非検査物Wを撮像する高さが互いに異なり、一方は非検査物Wの上側を、他方は被検査物Wの下側を、それぞれ撮像可能な高さに位置している。
【0023】
遮蔽箱4は、放射線発生器2、放射線検出器3を囲い、放射線を遮蔽する。遮蔽箱4は、鉛などの放射線を遮蔽する材料を含み構成されている。遮蔽箱4は、例えば直方体形状である。遮蔽箱4には、被検査物Wが保持されたホルダーHを内部に搬入する搬入口41、遮蔽箱4内部の被検査物Wを遮蔽箱4外部に搬出する搬出口42が設けられている。
【0024】
搬送機構5は、被検査物Wが載置されたホルダーHを搬送する機構である。搬送機構5は、被検査物Wの検査用搬送路である検査コンベア51、検査コンベア51の搬入側に設けられた搬入装置52、検査コンベア51の搬出側に設けられた搬出装置53、検査コンベア51と搬入装置52との間に設けられた第1の移載装置6a、検査コンベア51と搬出装置53との間に設けられた第2の移載装置6bを備える。
【0025】
検査コンベア51は、遮蔽箱4に設けられた搬入口41と搬出口42を結ぶ方向に直線状に設けられ、遮蔽箱4を貫通している。検査コンベア51としては、例えばチェーンコンベアやベルトコンベアを用いることが出来る。検査コンベア51の両端にはスプロケット511が設けられ、図示しないモータが回転することによりスプロケット511に巻き付けられたチェーンまたはベルトが駆動する。また、
図2に示すように、検査コンベア51の上面には一定間隔ごとに突起512が設けられている。より詳細には、検査コンベア51の搬送方向における中心線よりも片側、すなわち後述の移送機構6の反対側に寄って設けられている。この突起512により、ホルダーHは一定の間隔を開けた状態で搬送される。
【0026】
搬入装置52、搬出装置53としては、上述のチェーンコンベアやベルトコンベアだけでなく、ターンテーブルを用いることも出来る。また、
図1に示すように、これらを組み合わせて用いることも出来る。本実施形態の搬入装置52は、コンベア52a、ターンテーブル52b、52c、52dの組み合わせによりなる。搬入装置52は、被検査物Wが載置されたホルダーHを第1の移載装置6aを介して検査コンベア51に搬入する。また、第1の移載装置6aの手前には、ゲート521が例えばモータにより開閉可能に設けられ、被検査物Wの搬入を停止させることが出来る。本実施形態の搬出装置53は、ターンテーブル53a、53b、コンベア53cによりなる。搬出装置53は、検査コンベア51において非破壊検査を終えた被検査物Wのうち、第2の移載装置6bを介して良品と判定された良品Zが載置されたホルダーHを検査コンベア51から搬出する。
【0027】
第1の移載装置6aは、搬入装置52と検査コンベア51の間に設けられ、搬入装置52から検査コンベア51へと被検査物Wが載置されたホルダーHを移載する。また、第2の移載装置6bは、検査コンベア51と後述の誘導機構7との間に設けられ、検査コンベア51から誘導機構7へと被検査物Wが載置されたホルダーHを移載する。
【0028】
第1の移載装置6aと第2の移載装置6bは、基本的に同様な構成を有する。第1の移載装置6aは、ホイール61aと、このホイール61aの下方に設けられた第1の受け渡し部62aを備える(
図3参照)。第2の移載装置6bは、ホイール61bと、このホイール61bの下方に設けられた第2の受け渡し部62bを備える(
図4参照)。本実施形態のホイール61a、61bは、例えば
図2に示すようなスターホイールであって、それぞれ複数の凹部611を備える。この複数の凹部611は、ホイール61a、61bの外周に沿って等間隔に設けられている。なお、
図2は、搬入装置52と検査コンベア51の間に設けられる第1の移載装置6aを示している。ホイール61a、61bは、図示しないモータにより回転し、凹部611に設けられた図示しない保持機構により、ホルダーHを保持または解放し、ホルダーHを移載する。この保持は、例えば真空または磁力による吸着や機械によるクランプにより実現されるが、本実施形態では真空または磁力による吸着を採用している。
【0029】
第1の受け渡し部62aは、検査コンベア51の側方かつ搬入装置52と検査コンベア51の間に設けられる。すなわち、搬入装置52と検査コンベア51の隙間を埋めるように設けられる。また、第2の受け渡し部62bは、検査コンベア51の側方かつ検査コンベア51と誘導機構7の間に設けられる。より詳細には、検査コンベア51と誘導機構7の隙間及び誘導機構7のターンテーブル71aと72aの隙間を埋めるように設けられる。本実施形態においては、第1の受け渡し部62aは、
図3に示すように概略五角形であり、第2の受け渡し部62bは、
図4に示すように概略T字型である。なお、検査コンベア51の側方とは、当該検査コンベア51の両端に設けられたスプロケット511の外周に沿って下方に凹んでいない部分を指す。
【0030】
第1の受け渡し部62aにおけるホルダーHの載置面は、その両側の搬入装置52と検査コンベア51におけるホルダーHの載置面と同一平面上に位置する。また、第2の受け渡し部62bの載置面は、検査コンベア51と誘導機構7の載置面と同一平面上に位置する。同一平面上とは、ホルダーHが各構成の載置面間をスムーズに渡ることが可能な程度に同一平面上であることを示す。さらに、搬入装置52、第1の受け渡し部62a、検査コンベア51における被検査物Wの各載置面は、互いに隙間なく突き合わされている。隙間なくといっても、搬入装置52や検査コンベア51の駆動を妨げない程度には隙間があり、ホルダーHが各構成の載置面間をスムーズに渡ることが可能な程度に各構成の載置面が近接していることを示す。
【0031】
載置面とはホルダーHが載置される面を指すので、少なくともホルダーHの移載経路において、各構成の載置面が同一平面上かつ互いに隙間なく突き合わされていればよい。なお、ホルダーHの載置面は、特許請求の範囲における「被検査物の載置面」に含まれる概念であり、この場合の「被検査物の載置面」は、当然のことながらホルダーHの上面を指すものではない。
【0032】
誘導機構7は、非破壊検査を終えて不良品Xまたは未検査品Yと判定された被検査物Wが第2の移載装置6bにより振り分けられる誘導路である。誘導機構7は、不良品Xの誘導路71、未検査品Yの誘導路72を備える。本実施形態の誘導路71、72は、第2の移載装置6bの回転方向に沿って順次設けられ、誘導路71が検査コンベア51から180°位置に、誘導路72が270°位置に、それぞれ設けられる。誘導路71、72は、底部に設けられたターンテーブルによってそれぞれ不良品Xまたは未検査品Yを搬送する。本実施形態の誘導路71、72は、例えば回転方向の異なるターンテーブル71a、71bまたは72a、72bを並べることにより、不良品Xまたは未検査品Yを搬送するS字状の誘導路とすることが出来る。
【0033】
ストックヤード8は、誘導路71、72の出口に設けられ、搬送されてきた不良品X及び未検査品Yを一時的に貯留する空間である。ストックヤード8は、
図1に示すように、検査コンベア51と平行に設けられる。ストックヤード8は、それぞれ長手方向に延びる2つの空間に区分される。この2つの空間のうち、誘導路71の出口と接続される空間が貯留部81であり、誘導路72の出口と接続される空間が貯留部82である。貯留部81には不良品Xが、貯留部82には未検査品Yが、それぞれ貯留される。貯留部81、82の底部には検査コンベア51と平行に延びるコンベア83が設けられており、誘導路71、72から搬送されてきた不良品X及び未検査品Yは、ストックヤード8の出口側、すなわち被検査物Wの搬入側へと搬送される。コンベア83としては、例えばチェーンコンベアやベルトコンベアを用いることが出来る。不良品Xの貯留部81及び未検査品Yの貯留部82の出口付近には、ストックヤード8内に不良品X及び未検査品Yを停止させておくためのゲート811、821がそれぞれ設けられる。ゲート811、821は、例えばモータにより独立して開閉可能である。
【0034】
ゲート811、821の先には、再投入機構9が設けられる。再投入機構9は、不良品Xまたは未検査品Yを搬入装置52へと再投入する誘導路である。本実施形態の再投入機構9は、
図1に示すように、ターンテーブル9aと搬入経路変更スイッチ91により構成される。ターンテーブル9aは、ゲート811、821から流れてきた不良品Xまたは未検査品Yを搬入装置52へと再投入するために、平面視でゲート811、821と搬入装置52の間を埋めるように設けられる。搬入装置52へと不良品Xまたは未検査品Yを再投入する部分の近傍には、例えばモータにより駆動する搬入経路変更スイッチ91が設けられる。搬入経路変更スイッチ91は、非破壊検査前の被検査物Wの流れを停止させ、再投入機構9から搬入装置52へと不良品Xまたは未検査品Yを再投入する切り替えスイッチである。
【0035】
制御部10は、被検査物Wを搬送及び検査するために、放射線発生器2、放射線検出器3、搬送機構5、誘導機構7、ストックヤード8、再投入機構9の動作を制御する。制御部10は、所謂コンピュータであり、HDDまたはSSDといったストレージ、RAM、CPU及びドライバ回路で構成される。ストレージには、例えば各構成を制御するためのプログラムやデータが記憶されている。RAMには、プログラムが展開され、またデータが一時的に記憶される。CPUはプログラムを処理し、この処理結果に従ってドライバ回路は各構成に電力を供給する。
【0036】
[1-2.実施形態の作用]
本実施形態の被検査物Wの搬送及び検査手順について、
図5の機能ブロック図及び
図6のフローチャートを参照しつつ、以下に説明する。なお、
図5は、制御部10による制御の一部を示すのみであり、例えば搬送機構5の動作の制御などは示していない。前提として、搬入装置52の搬送経路には、被検査物Wが載置されたホルダーHがゲート521の手前まで並べられている。制御部10による制御により、ゲート521が開かれ、搬送機構5が駆動されると、ホルダーHは順次ターンテーブル52dから第1の移載装置6aの凹部611へと受け渡される。凹部611は、真空または磁力によりホルダーHを吸着保持し、ホイール61aが時計回りに回転することにより、第1の受け渡し部62aの載置面上を滑らせながら検査コンベア51の載置面へと移載する(ステップS01)。より詳細には、
図2に示すように、検査コンベア51の上面に一定間隔ごとに設けられた突起512の間にホルダーHを移載する。検査コンベア51の載置面に移載されたホルダーHに対して、当該ホルダーHを吸着保持している凹部611は真空または磁力を解除する。これにより、ホルダーHは凹部611から解放され、検査コンベア51上を搬送される(ステップS02)。
【0037】
検査コンベア51上を搬送されるホルダーHは、搬入口41から遮蔽箱4内部へと搬入される。遮蔽箱4内部において、2組の放射線発生器2及び放射線検出器3は、ホルダーH上に載置された被検査物Wを撮像する(ステップS03)。より詳細には、一方の組が被検査物Wの上部を撮像し、他方の組が被検査物Wの下部を撮像する。2つの放射線検出器3の判定部31は、それぞれ被検査物Wに対してその良否を判定し、判定結果を制御部10へと出力する(ステップS04)。この判定結果とは、被検査物Wが、不良品X、未検査品Y、良品Zのいずれであるかという情報である。
【0038】
制御部10は、2つの判定部31からの判定結果に基づき、第2の移載装置6bを制御する。以降では、被検査物Wが、不良品Xまたは未検査品Yの場合、良品Zの場合に分けて説明する。なお、本実施形態において、2つの判定部31からの判定結果が異なる場合は、未検査品Y>不良品X>良品Zの優劣により最終的な判定結果を定めるものとする。例えば、一方の判定結果が不良品Xまたは未検査品Yであるのに対し、他方の判定結果が良品Zである場合は、最終的な判定結果は不良品Xまたは未検査品Yであるものとする。また、一方の判定結果が不良品Xであるのに対し、他方の判定結果が未検査品Yである場合は、最終的な判定結果は未検査品Yであるものとする。
【0039】
[判定結果が良品Zの場合]
判定結果が良品Zの場合、制御部10は第2の移載装置6bを制御せず、すなわち凹部611に当該良品Zを吸着保持させない(ステップS05のNO)。この場合、良品Zは凹部611により搬送経路を変更されないので、良品Zは検査コンベア51の出口へと到達し、搬出装置53のターンテーブル53a、53b、コンベア53cにより被検査装置1の外部へと搬出される。
【0040】
[判定結果が不良品Xまたは未検査品Yの場合]
第2の移載装置6bの凹部611は、遮蔽箱4の搬出口42から検査コンベア51により搬送されてきた、不良品Xまたは未検査品Yであると判定された被検査物Wを吸着保持する。この被検査物Wは、ホイール61bが時計回りに回転することにより、第2の受け渡し部62bの載置面上を滑りながらターンテーブル71aの載置面へと移載される(ステップS05のYES)。ここで、吸着保持された被検査物Wが不良品Xである場合は、凹部611による吸着保持が解除される(ステップS06のYES)。凹部611から解放された当該不良品Xはターンテーブル71aから71bへと移載され、ストックヤード8の貯留部81へと搬送される。貯留部81において、不良品Xは、コンベア83によりゲート811の手前、すなわちストックヤード8の出口まで順次搬送される(ステップS07-1)。
【0041】
一方で、第2の移載装置6bの凹部611により吸着保持された被検査物Wが未検査品Yである場合は、ターンテーブル71aの載置面において吸着保持が解除されず、再び第2の受け渡し部62bの載置面上を滑ってターンテーブル72aの載置面へと移載される(ステップS06のNO)。ここで、凹部611による吸着保持が解除され、凹部611から解放された当該未検査品Yはターンテーブル72aからターンテーブル72bへと移載され、ストックヤード8の貯留部82へと搬送される。貯留部82において、未検査品Yは、コンベア83によりゲート821の手前、すなわちストックヤード8の出口まで順次搬送される(ステップS07-2)。不良品Xまたは未検査品Yを再投入機構9により搬入コンテナ52へと再投入しない場合、不良品Xまたは未検査品Yに係るステップは終了する(ステップS08のNO)。
【0042】
ステップS07の後、不良品Xまたは未検査品Yを再投入機構9により搬入コンテナ52へと再投入する場合について説明する。再投入する場合、搬送機構5及び誘導機構7上に存在する被検査物Wを非破壊検査装置1から取り除く(ステップS08のYES)。次に、搬入経路変更スイッチ91を切り替える(ステップS09)。最後にゲート811、821を開けることにより、不良品Xまたは未検査品Yが、コンベア83からターンテーブル9aを介して搬入装置52のターンテーブル52cへと再投入される(ステップS10)。なお、制御部10は、ゲート811、821を個別に開閉可能であり、本実施形態では不良品Xと未検査品Yは別々に再投入され、再検査される。
【0043】
以上、ステップS01~S10により、ホルダーHに載置された被検査物Wが順次搬送及び検査される。
【0044】
[1-3.実施形態の効果]
(1)本実施形態では、直線状の検査コンベア51の側方かつ搬入装置52と検査コンベア51との間に第1の受け渡し部62aが設けられ、搬入装置52、第1の受け渡し部62a、検査コンベア51におけるホルダーHの各載置面は同一平面上で互いに隙間なく突き合わされている。これにより、ループ状の検査用搬送路に比べて低コストで導入可能な直線状の検査コンベア51を採用しながらも、第1の移載装置6aは、直線状の検査コンベア51の側方に設けられているので、搬入装置52から検査コンベア51へと被検査物Wを転倒させることなくスムーズに移載することができる。また、転倒せずとも移載時に搬送間隔が変わってしまうといった課題も解消するので、撮像に失敗するおそれも低減される。
【0045】
(2)本実施形態では、直線状の検査コンベア51の側方かつ検査コンベア51と誘導機構7との間に第2の受け渡し部62bが設けられ、検査コンベア51、第2の受け渡し部62b、誘導機構7におけるホルダーHの各載置面は同一平面上で互いに隙間なく突き合わされている。これにより、第2の移載装置6bは、検査コンベア51から誘導機構7へと不良品Xまたは未検査品Yを転倒させることなくスムーズに移載することができる。
【0046】
(3)本実施形態では、第1の移載装置6a及び第2の移載装置6bは、それぞれホイール61a、61bを備え、これらホイール61a、61bの外周に沿って等間隔に設けられた複数の凹部611が、ホルダーを保持または解放するものとした。これにより、搬入装置52におけるホルダーHの搬送間隔が不揃いであっても、検査コンベア51には等間隔に移載することが出来る。これにより、被検査物Wを連続的に撮像する場合であっても、撮像に失敗するおそれが低減される。
【0047】
(4)本実施形態では、検査コンベア51の上面に一定間隔ごとに突起512が設けられる。これにより、検査コンベア51がその搬送を停止してもホルダーH間の間隔が保たれるので、放射線発生器2及び放射線検出器3の撮像タイミングがずれるおそれが低減される。その結果、未検査品Yが出る確率が低減され、被検査物Wの歩留まりが向上する。
【0048】
(5)本実施形態では、2組の放射線発生器2及び放射線検出器3が設けられ、一方が被検査物Wの上部を、他方が被検査物Wの下部を撮像する。これにより、被検査物Wの良否を高精度で判定することができ、被検査物Wの品質が向上する。
【0049】
(6)本実施形態では、誘導機構7の出口に設けられたストックヤード8と、ストックヤード8に貯留された不良品Xまたは未検査品Yを搬入装置52へと再投入する再投入機構9を備える。これにより、不良品Xまたは未検査品Yを再検査することができるので、被検査物Wの歩留まりが向上する。
【0050】
[2.他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0051】
(1)第1の実施形態では、不良品Xまたは未検査品Yを再投入することにより再検査することとしたが、不良品Xについては再検査を行うことなく、破棄或いは再生処理を行うことも出来る。その場合、不良品Xの貯留部81の出口に回収ボックスなどを配置する。
【0052】
(2)第1の実施形態では、被検査物Wを内部に捲回構造を備える円筒型のリチウムイオン電池としたが、例えば角型やラミネート型の各種電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタなどの電気化学キャパシタであってもよい。
【0053】
(3)第1の実施形態では、判定部31が判定する被検査物Wの良否について、不良品Xであるとも未検査品Yであるとも判定されたものは未検査品Yとしたが、不良品Xとしてもよい。また、2つの放射線検出器3の判定部31の一方が、被検査物Wを不良品Xと判定し、他方が当該被検査物Wを未検査品Yと判定した場合、制御部10は当該被検査物を未検査品Yとしたが、不良品Xとしてもよい。さらに、不良品Xの基準についても、正極板が負極板からはみ出ていることに限られない。
【0054】
(4)第1の実施形態では、第1の移載装置6a、第2の移載装置6bを設けたが、さらに検査コンベア51の出口と搬出装置53との間に、第1の移載装置6a、第2の移載装置6bと基本的に同様の構成である第3の移載装置を設けてもよい。この場合、検査コンベア51とターンテーブル53aの間に第3の受け渡し部が設けられ、検査コンベア51、第3の受け渡し部、ターンテーブル53aの載置面は同一平面上にある。同一平面上とは、ホルダーHが各構成の載置面間をスムーズに渡ることが可能な程度に同一平面上であることを示す。
【0055】
(5)第1の実施形態では、搬入装置52、搬出装置53は、コンベアとターンテーブルを組み合わせて構成されたが、コンベアのみまたはターンテーブルのみで構成されてもよく、その数やターンテーブルの回転方向も第1の実施形態に限定されない。
【0056】
(6)第1の実施形態の移載装置としては、真空または磁力によりホルダーHを吸着保持するスターホイールであるホイール61a、61bを採用したが、吸着保持しなくとも、凹部611間の突起でホルダーHを押し出すことも出来る。また、移載装置もスターホイールに限定されるものではなく、無端状のチェーンコンベアの周囲に所定間隔で被検査物Wを送り出す突起やアームを設けたものでも良い。また、回転軸の周囲に放射状に突起やアームを設けたものでも良い。
【符号の説明】
【0057】
1…非破壊検査装置
2…放射線発生器
3…放射線検出器
4…遮蔽箱
41…搬入口
42…搬出口
5…搬送機構
51…検査コンベア
511…スプロケット
512…突起
52…搬入装置
52a…コンベア
52b、52c、52d…ターンテーブル
521…ゲート
53…搬出装置
53a、53b…ターンテーブル
53c…コンベア
6a…第1の移載装置
6b…第2の移載装置
61a、61b…ホイール
611…凹部
62a…第1の受け渡し部
62b…第2の受け渡し部
7…誘導機構
71、72…誘導路
71a、71b、72a、72b…ターンテーブル
8…ストックヤード
81、82…貯留部
811、821…ゲート
83…コンベア
9…再投入機構
9a…ターンテーブル
91…搬入経路変更スイッチ
10…制御部
H…ホルダー
W…被検査物
X…不良品
Y…未検査品
Z…良品