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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】光ファイバ保持具
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
G02B6/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020046599
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148870
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】角田 貫一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和男
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 朋也
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-018793(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00332900(EP,A1)
【文献】特開2008-273769(JP,A)
【文献】特開2003-202422(JP,A)
【文献】特開2016-186953(JP,A)
【文献】特開2013-242309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00 - 6/10
G02B 6/245 - 6/25
G02B 6/44 - 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを巻き固定する光ファイバ保持具であって、
自身の外周に前記光ファイバが巻かれる巻き芯部と、
前記巻き芯部の外周に巻かれた前記光ファイバを、前記巻き芯部の内側に向かって押し付ける押付部であって、前記光ファイバに接触する接触部の平面形状が略円弧状である押付部と、
を備え、
前記巻き芯部は、
略円弧状の複数の円弧部と少なくとも1つの凹部とを前記光ファイバが巻かれる外周に有する平面形状の平板状の第1部材と、
自身の少なくとも一部が前記凹部に配置され、前記巻き芯部の外周に巻かれた前記光ファイバを略円環状にする第1位置と、前記巻き芯部の外周に巻かれた前記光ファイバを曲線状の凹凸を有する環状にする第2位置と、に移動可能な第2部材であって、前記巻き芯部の外周となる外周部の平面形状が略円弧状に形成された第2部材と、
を備え、
前記押付部は、前記第1部材の前記凹部に向かって前記光ファイバを押し付けた状態で固定される、
光ファイバ保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ保持具であって、
前記第1部材は、1つの前記凹部と、前記凹部の両側に配置される2つの第1円弧部と、前記2つの第1円弧部の端と繋がる、前記第1円弧部より大きい径の第2円弧部と、で構成される平面形状である、
光ファイバ保持具。
【請求項3】
請求項2に記載の光ファイバ保持具であって、
前記第1円弧部の半径と前記第2円弧部の半径との比は、略1:3である、
光ファイバ保持具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ保持具であって、
前記第1部材の前記凹部は、2本の平行線を有する平面形状であり、
前記第2部材および前記押付部は、前記凹部の前記2本の平行線に沿って移動可能に構成されている、
光ファイバ保持具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ファイバ保持具であって、
前記光ファイバを冷却する冷却部を備える、
光ファイバ保持具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバ保持具であって、
前記第1部材の外周面は、熱伝導性が高い金属により形成されている、
光ファイバ保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバにおいて、例えば、ファイバレーザに用いる光ファイバでは、励起光を効率よくコアに吸収させ、出力の向上を図っている。励起光を効率よくコアに吸収させる方法として、従来、数m~数十m程度の光ファイバを曲げて束ねることが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
一方、励起光をコアに入射し易くするための方法として、光ファイバのクラッドの断面形状を円形から多角形に変えたり、さらにねじりを加えたものがある(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6255532号公報
【文献】国際公開第2003/067723号
【文献】特許第5469064号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】”High-Power Diode Lasers”,R.Diehl,Springer,P381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の技術では、支柱を立て、支柱に光ファイバを巻いて、いわゆる、キドニーシェイプを形成している。しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、曲げの曲率が制御できないため、曲げの曲率が小さくなった場合に、励起光が外部に放出されて励起光を効率よくコアに吸収させることができず、出力が低下する虞がある。また、光ファイバが固定されていないために持ち運びが困難であり実用的でないという課題もある。
【0007】
また、特許文献1~3に記載の技術のように、光軸と直交する断面においてクラッド形状が多角形やねじれを加えた光ファイバにおいても、励起光を効率よく吸収させるダブルクラッドファイバを用いることができるが、コストが高くなるという課題がある。また、内部に角部がある光ファイバでは、曲げた際に角部に応力集中が発生するため、曲げの曲率を大きくすることが好ましい。そのため、設備的に広いスペースを必要とする。
【0008】
本発明は、光ファイバを巻き固定する光ファイバ保持具において、光ファイバの出力低下を抑制する他の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本発明の一形態によれば、光ファイバ保持具が提供される。この光ファイバ保持具は、自身の外周に前記光ファイバが巻かれる巻き芯部と、前記巻き芯部の外周に巻かれた前記光ファイバを、前記巻き芯部の内側に向かって押し付ける押付部であって、前記光ファイバに接触する接触部の平面形状が略円弧状である押付部と、を備え、前記巻き芯部は、略円弧状の複数の円弧部と少なくとも1つの凹部とを有する平面形状の平板状の第1部材と、自身の少なくとも一部が前記凹部に配置され、前記巻き芯部の外周に巻かれた前記光ファイバを略円環状にする第1位置と、前記巻き芯部の外周に巻かれた前記光ファイバを曲線状の凹凸を有する環状にする第2位置と、に移動可能な第2部材であって、前記巻き芯部の外周となる外周部の平面形状が略円弧状に形成された第2部材と、を備え、前記押付部は、前記第1部材の前記凹部に向かって前記光ファイバを押し付けた状態で固定される。
【0011】
この構成によれば、光ファイバ保持具において、巻き芯部が第1部材と第2部材を備え、第2部材が第1部材の凹部内の位置を変更可能に構成されているため、第2部材を第1位置に配置した状態で光ファイバを巻き芯部の外周に巻き付けた後、第2部材を第2位置に移動させるとともに、前記押付部にて光ファイバを凹部に向かって押し付けて固定することにより、巻き芯部の外周に巻かれた前記光ファイバを曲線状の凹凸を有する環状に、容易に形成することができる。また、この構成によれば、光ファイバを曲線状の凹凸を有する環状に固定して保持することができるため、光ファイバ内における反射角が逐次変化し、励起光がクラッドファイバのコアを通過し吸収され易くなり、光ファイバの出力を向上させることができる。また、光ファイバは、第1部材の円弧部と押付部の略円弧状の接触部とに沿って巻かれた状態で固定されるため、第1部材の円弧部と押付部の接触部の曲率に応じた所定の曲率を加えることができ、環状に巻かれた光ファイバを、適切な曲率に、容易にコントロールすることができる。そのため、曲率が小さいことによる光ファイバの出力の低下を抑制することができる。
【0012】
(2)上記形態の光ファイバ保持具であって、前記第1部材は、1つの前記凹部と、前記凹部の両側に配置される2つの第1円弧部と、前記2つの第1円弧部の端と繋がる、前記第1円弧部より大きい径の第2円弧部と、で構成される平面形状であってもよい。このようにすると、環状に巻かれた光ファイバを、いわゆる、キドニーシェイプにすることができる。
【0013】
(3)上記形態の光ファイバ保持具であって、前記第1円弧部と前記第2円弧部との比は、略1:3であってもよい。このようにすると、光ファイバの割れや、励起光の放出を適切に抑制することができる。
【0014】
(4)前記第1部材の前記凹部は、2本の平行線を有する平面形状であり、前記第2部材および前記押付部は、前記凹部の前記2本の平行線に沿って移動可能に構成されていてもよい。このようにすると、第2部材と押付部とによって光ファイバを挟んだ状態で、第2部材と押付部とを、同時に同一直線上を移動させることができる。そのため、より安定して容易に適当な曲率を光ファイバに付与することができる。
【0015】
(5)上記形態の光ファイバ保持具であって、前記光ファイバを冷却する冷却部を備えてもよい。このようにすると、光ファイバ内で発生した熱を、光ファイバ保持具により放出させることができる。そのため、光ファイバの温度上昇を抑制することができる。
【0016】
(6)上記形態の光ファイバ保持具であって前記第1部材の外周面は、熱伝導性が高い金属により形成されていてもよい。このようにすると、光ファイバ内で発生した熱を、より効率よく放出させることができる。そのため、光ファイバの温度上昇を、さらに抑制することができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、光ファイバ保持具を備える加工装置、光ファイバ保持具を備える加工装置通信装置、光ファイバ保持方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態における光ファイバ保持具の構成を概略的に示す説明図である。
図2】光ファイバ保持具の平面構成を概略的に示す説明図である。
図3】第2部材の配置位置の説明図である。
図4】光ファイバ保持具を用いた光ファイバの巻き付け方法を示す説明図である。
図5】光ファイバ保持具を用いた光ファイバの巻き付け方法を示す説明図である。
図6】第2実施形態の光ファイバ保持具の概略構成を示す説明図である。
図7】変形例の光ファイバ保持具の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における光ファイバ保持具100の構成を概略的に示す説明図である。図2は、光ファイバ保持具100の平面構成を概略的に示す説明図である。光ファイバ保持具100は、光ファイバを巻き固定する。本実施形態において、光ファイバは、産業用レーザ加工装置に用いられる。他の実施形態では、例えば、通信用、照明用等種々の用途に用いられる光ファイバを保持してもよい。
【0020】
光ファイバ保持具100は、自身の外周に光ファイバLFが巻かれる巻き芯部110と、巻き芯部110の外周に巻かれた光ファイバLFを、巻き芯部の内側に向かって押し付ける押付部30と、光ファイバLFの巻き付け状態を保持する2つの保持部50と、巻き芯部110と押付部30と保持部50とが配置される台座部40と、を備える。
【0021】
図2に示すように、光ファイバLFは、巻き芯部110の外周に巻きつけられると共に、押付部30によって、巻き芯部110の内側に向かって押し付けられて、いわゆるキドニーシェイプ(腎臓曲げ)の環状に巻き付けられている。
【0022】
巻き芯部110は、第1部材10と、第2部材20と、を備える。図2に示すように、第1部材10は、1つの凹部13と、凹部13の両側に配置される2つの第1円弧部11と、2つの第1円弧部11の端と繋がる、第1円弧部より大きい径の第2円弧部12と、で構成される平面形状の平板状に形成されている。第1円弧部11の第1半径R1と第2円弧部12の第2半径R2との比は、17:50であり、略1:3である。凹部13は、2本の平行線14を有する平面形状である。第1円弧部11および第2円弧部12を、単に、「円弧部」とも呼ぶ。
【0023】
第2部材20は、2本の等しい長さの平行線と二つの円弧からなる長円形(角丸長方形)の平面形状であり、第1部材10の凹部13に配置され、凹部13の2本の平行線14に沿って、矢印方向に移動可能に構成されている。図2において、図面下方に配置される円弧状の外周部24は、巻き芯部110の外周の一部を構成する。
【0024】
押付部30は、第2部材20と同じ形状に形成されている。図示するように、押付部30は巻き芯部110の外側に配置され、第2部材20と押付部30とで光ファイバLFを挟持して、第1部材10の凹部13に向かって光ファイバLFを押し付けた状態で固定される。押付部30において、光ファイバLFに接触する接触部34の平面形状が略円弧状である。押付部30も、第2部材20と同様に、凹部13の2本の平行線14に沿って、矢印方向に移動可能に構成されている。
【0025】
台座部40は、角が45°面取りされた略長方形状の平板である。台座部40には、第1部材10が固定されており、第2部材20と押付部30とを、第1部材10の凹部13の2本の平行線14に沿って、矢印方向に移動させるための、溝部42が形成されている。図1に示すように、押付部30は台座部40の溝部42に嵌る突起部32を備える。ユーザは、押付部30の突起部32を溝部42に嵌めて、溝部42に沿って押付部30を動かすことにより、第1部材10の凹部13の2本の平行線14(図2)に沿って、矢印方向(図2)に移動させることができる。第2部材20も、押付部30と同じ突起部(不図示)を備えるため、同様に、溝部42に沿って移動させることができる。また、台座部40は、第2部材20および押付部30を、所定の位置で固定可能に構成されている。本実施形態の光ファイバ保持具100は、台座部40を介して、産業用レーザ加工機に取り付けられる。
【0026】
保持部50は、円柱状に形成されており、台座部40に固定される。図2に示すように、光ファイバLFは、2つの保持部50と第1部材10によって挟持されると共に、第2部材20と押付部30に挟持されて、キドニーシェイプが維持されている。
【0027】
本実施形態において、第1部材10、第2部材20、押付部30、および保持部50は、銅により形成されている。銅は、熱伝導性が高いため、光ファイバLF内で発生した熱を、効率よく放出させることができる。その結果、光ファイバLFの溶融や光学破壊、スペクトルの変化などの発生を抑制することができる。他の実施形態では、アルミニウム、銀、金等の熱伝導率が高い金属、熱伝導率が高い金属の少なくとも一種を含む合金や、炭化ケイ素、窒化アルミニウム等の高熱伝導性セラミックスや、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、緻密質炭素物質等の炭素材料等の熱伝導性が高い材料を用いることができる。また、これらの熱伝導性が高い材料により、光ファイバLFと接触する面を形成し、他の部分を別の材料で形成してもよい。例えば、光ファイバLFと接触する面積が大きい第1部材10の外周面を、銀により形成し、他の部分を銀より熱伝導性が低い材料により形成してもよい。熱伝導性が高い材料としては、熱伝導率が100(W/m/K)以上の材料が好ましい。
【0028】
台座部40の材料は、特に限定されない。第1部材10、第2部材20、押付部30、および保持部50の少なくとも一つと同じ材料で形成してもよいし、樹脂等の熱伝導性が高くない材料により形成してもよい。例えば、ゴム材料等を用いて形成し、振動吸収、絶縁性を確保してもよい。
【0029】
図3は、第2部材20の配置位置の説明図である。上述の通り、第2部材20は、第1部材10の凹部13の2本の平行線14(図2)に沿って移動可能に構成されている。具体的には、図3の左側に示す第1位置から図3の右側に示す第2位置に移動可能であり、その逆に第2位置から第1位置へも移動可能である。第1位置(図3の左図)は、巻き芯部110の外周に巻かれた光ファイバLFを略円環状にする位置であり、第2部材20の外周部24の最突出位置P1が、第1部材10の凹部13の開口位置より突出し、さらに、第1部材10の第1円弧部11より突出している。第2位置(図3の右図)は、巻き芯部110の外周に巻かれた光ファイバLFを曲線状の凹凸を有する環状にする位置であり、第2部材20の外周部24の最突出位置P1が、第1部材10の凹部13内に配置されている。
【0030】
図4図5は、光ファイバ保持具100を用いた光ファイバLFの巻き付け方法を示す説明図である。まず、図4(A)に示すように、光ファイバ保持具100において、押付部30と、2つの保持部50を外し、第2部材20を第1位置に配置する。図示するように、第2部材20は、台座部40の溝部42に嵌る突起部22を備える。ユーザは、第2部材20の外周部24を溝部42に嵌めて、溝部42に沿って第2部材20を動かし、螺子等により、第2部材20を台座部40に固定する。これにより、第2部材20が第1位置(図3)に配置された状態で、巻き芯部110の形状が固定される。
【0031】
次に、図4(B)に示すように、巻き芯部110の外周に光ファイバLFが巻き付けられる。このとき、光ファイバLFは、ゆるみがないように巻き付けられ、巻き芯部110に巻き付けられた光ファイバLFには張力が発生する。この工程では、第2部材20が第1位置に配置されており、第2部材20の外周部24が第1部材10の第1円弧部11より突出しているため、光ファイバLFは、容易に、略円環状に巻き付けられる。
【0032】
その後、図5(A)に示すように、2つの保持部50が台座部40に固定される。保持部50は、台座部40の螺子孔44(図4)を用いて、螺子により固定される。これにより、光ファイバLFの巻き付け状態が保持される。
【0033】
最後に、図5(B)に示すように、押付部30の接触部34と第2部材20の外周部24とで光ファイバLFを挟むように押付部30を配置して、第2部材20の固定を解除し、押付部30を矢印の方向へ押し込む。そうすると、押付部30と第2部材20とで光ファイバLFを挟んだ状態で、押付部30と第2部材20とが一緒に、矢印の方向に移動される。第2部材20が第2位置(図3)になったところで、第2部材20と押付部30とが台座部40に固定される。これにより、巻き芯部110の外周に巻かれた光ファイバLFを曲線状の凹凸を有する環状(本実施形態ではキドニーシェイプ)にすることができる(図2)。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ保持具100によれば、光ファイバLFの巻き付け形状を、曲線状の凹凸を有する、いわゆるキドニーシェイプの環状に、容易に形成することができる。
【0035】
また、光ファイバ保持具100によれば、光ファイバLFをキドニーシェイプの環状に固定して保持することができるため、光ファイバLF内における反射角が逐次変化し、励起光がクラッドファイバのコアを通過し吸収され易くなり、光ファイバLFの出力を向上させることができる。
【0036】
また、光ファイバLFは、第1部材10の第1円弧部11、第2円弧部12と押付部30の略円弧状の接触部34とに沿って巻かれた状態で固定されるため、第1円弧部11、第2円弧部12および接触部34の曲率に応じた所定の曲率を加えることができ、環状に巻かれた光ファイバを、適切な曲率に、容易にコントロールすることができる。そのため、曲率が小さいことによる光ファイバの出力の低下を抑制することができる。
【0037】
本実施形態の光ファイバ保持具100によれば、適切な曲率のキドニーシェイプに光ファイバLFを巻き保持することができる。そのため、光ファイバの光軸と直交する断面においてクラッド形状を多角形にしたり、ねじれを加えなくても、断面形状が円形状の一般的なクラッドを用いて、光ファイバの出力を向上させることができる。また、断面形状が多角形状のクラッドの光ファイバを用いる場合と比較して、光ファイバを巻く際の曲率を小さくすることができるため、光ファイバ保持具100の小型化することができる。
【0038】
また、光ファイバ保持具100によれば、光ファイバLFがキドニーシェイプに巻かれた状態で固定されるため、持ち運びが容易である。そのため、光ファイバ保持具100に光ファイバLFが巻かれた状態で、搬送したり、販売することが可能となる。
【0039】
光ファイバ保持具100によれば、第1円弧部11と第2円弧部12との比が、略1:3であるため、光ファイバLFの割れや、励起光の放出を適切に抑制することができる。
【0040】
光ファイバ保持具100によれば、第2部材20と押付部30とによって光ファイバLFを挟んだ状態で、第2部材20と押付部30とを、同時に同一直線上を移動させることができる。そのため、より安定して容易に適当な曲率を光ファイバに付与することができる。
【0041】
光ファイバ保持具100によれば、第1部材10、第2部材20、および保持部50が、銅により形成されている。銅は、熱伝導性が高いため、光ファイバLF内で発生した熱を、より効率よく放出させることができる。その結果、光ファイバLFの溶融や光学破壊、スペクトルの変化などの発生を抑制することができる。
【0042】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の光ファイバ保持具100Aの概略構成を示す説明図である。本実施形態の光ファイバ保持具100Aは、第1実施形態の光ファイバ保持具100の構成に加え、光ファイバLFを冷却する冷却部としての冷却水流路18を備える。以下に説明する実施形態において、光ファイバ保持具100と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0043】
図示するように、第1部材10Aは、内部に冷却水流路18を備える。冷却水流路18には、図に矢印で示すように、公知の冷却水が流通される。このようにすると、光ファイバと冷却水と熱交換により、光ファイバLF内で発生した熱を放出させることができる。そのため、光ファイバLFの温度上昇をさらに抑制することができる。
【0044】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0045】
・光ファイバ保持具は、台座部40および保持部50を備えなくてもよい。例えば、巻き芯部110および押付部30を、直接、産業用レーザ加工機等の光ファイバを用いる装置に取り付けてもよい。
【0046】
・第1部材10、第2部材20、および押付部30の形状は、上記実施形態に限定されない。第1部材10が、複数の凹部を有する平面形状に形成されてもよい。円弧部の数も上記実施形態に限定されない。一例を、図7に示す。但し、上記実施形態の光ファイバ保持具100は、光ファイバLFを曲線状の凹凸を有する環状に形成するのが容易であり、かつ、第1部材10が複数の凹部を有する平面形状の場合と、略同等の出力向上効果を得ることができるため、好ましい。
【0047】
図7は、変形例の光ファイバ保持具100Cの概略構成を示す説明図である。光ファイバ保持具100Cは、巻き芯部110Cと、2つの押付部30とを備える。巻き芯部110Cは第1部材10Cと、2つの第2部材20Cを備える。第1部材10Cは、4つの第1半径R1の第1円弧部11と、2つの第2半径R2の第2円弧部12と、2つの凹部13Cとを有する平面形状である。変形例の光ファイバ保持具100Cでは、光ファイバLFが、曲線状の凹凸を有する環状に形成される。
【0048】
・第1部材10における第1円弧部11と第2円弧部12との比は、上記実施形態に限定されない。
【0049】
・第1部材10は、円弧と円弧との間を直線により繋いだ形状にしてもよい。また、円弧部は、楕円弧であってもよい。
【0050】
・第1部材10の凹部13の平面形状は、上記実施形態に限定されない。2本の平行線14を備えなくてもよい。
【0051】
・上記実施形態において、第2部材20が突起部22を備えると共に押付部30が突起部32を備え、台座部40の溝部42に沿って移動可能に構成される例を示したが、第2部材20および押付部30は突起部を備えなくてもよい。第2部材20は自身の直線部を第1部材10の凹部13の平行線14に沿わせて移動可能であり、押付部30は、第2部材20の外周部24を押すことにより、光ファイバLFに凹みを加えることができる。
【0052】
・上記実施形態の光ファイバ保持具100において、光ファイバLFがキドニーシェイプに形成された後に、第2部材20が取り外されてもよい。このようにしても、押付部30により光ファイバLFが押さえられており、光ファイバLFの形状を維持することができる。
【0053】
・光ファイバ保持具100は、さらに、ヒートシンクや、冷却ファン等の冷却部を備えてもよい。
【0054】
・光ファイバ保持具の各部の形成材料は、上記実施形態に限定されず、種々の材料を用いることができる。
【0055】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0056】
10、10A、10C…第1部材
11…第1円弧部
12…第2円弧部
13、13C…凹部
14…平行線
18…冷却水流路
20、20C…第2部材
22、32…突起部
24…外周部
30…押付部
34…接触部
40…台座部
42…溝部
44…螺子孔
50…保持部
100、100A、100C…光ファイバ保持具
110、110C…巻き芯部
LF…光ファイバ
P1…最突出位置
R1…第1半径
R2…第2半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7