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特許7407632線材束及びその製造方法、並びに配線構造及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】線材束及びその製造方法、並びに配線構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/32 20060101AFI20231222BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20231222BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20231222BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231222BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20231222BHJP
   H01B 7/285 20060101ALI20231222BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20231222BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20231222BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20231222BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
H01B13/32
H01B13/012 B
H01B7/08
H01B7/00 301
H01B7/40 308
H01B7/00 306
H01B7/285
H01B17/58 C
H01B7/00 310
H01B13/00 555
H02G3/22
B60R16/02 622
B60R16/02 623Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020049307
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150193
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】張ヶ谷 竜一
(72)【発明者】
【氏名】中井 利匡
(72)【発明者】
【氏名】大木 恒雄
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181793(JP,A)
【文献】特開2000-165061(JP,A)
【文献】特開2001-231132(JP,A)
【文献】特開2002-369349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00-7/42
H01B 13/00-13/34
H01B 17/58
H02G 3/22
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線材と、前記複数の線材の任意の箇所を束ねるシリコーン含有部材と、を備えた線材束の製造方法であって、
前記複数の線材を並列に配置するとともに、前記複数の線材が並列に配置されてなる線材群の少なくとも一部において、前記線材群の一方の面側と他方の面側から、JIS K 6249:1997に準じて測定される未硬化時のウイリアム可塑度(25℃)が5~45である可塑性を有する硬化型のシリコーン材料で前記一部を挟むことにより、
前記シリコーン材料からなる第一シリコーン層と、前記複数の線材が並列に配置されてなる線材層と、前記シリコーン材料からなる第二シリコーン層とがこの順に積層されたサンドイッチ構造を得て、
前記サンドイッチ構造を、前記複数の線材が並列に配置された方向に巻回するか又は1回以上折り返すことにより、
前記シリコーン材料が、前記複数の線材の任意の箇所を保持したブロック体を得ることを含む、線材束の製造方法。
【請求項2】
前記サンドイッチ構造において、前記複数の線材同士の間隙の少なくとも一部を前記シリコーン材料が充填している、請求項1に記載の線材束の製造方法。
【請求項3】
前記ブロック体において、前記複数の線材同士の間隙の少なくとも一部を前記シリコーン材料が充填している、請求項1又は2に記載の線材束の製造方法。
【請求項4】
前記ブロック体の外周面に、自己融着性シリコーンゴムテープを巻回し、前記ブロック体の中心側に圧縮力を加えた状態で、前記自己融着性シリコーンゴムテープを前記外周面に固定する、請求項1~3の何れか一項に記載の線材束の製造方法。
【請求項5】
前記複数の線材の少なくとも一部が電線であり、前記電線の少なくとも一方の末端に接続用端子が備えられている、請求項1~4の何れか一項に記載の線材束の製造方法。
【請求項6】
貫通孔を有する部材と、前記貫通孔に挿通させた線材束とを備えた配線構造の製造方法であって、
請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法で得た線材束を使用し、
前記線材束が有する前記ブロック体の外周面、又は前記ブロック体の外周面に自己融着性シリコーンゴムテープが巻回されている場合には前記自己融着性シリコーンゴムテープの外周面を、前記貫通孔の内壁に密着させることにより、前記貫通孔に前記線材束を固定することを含む、配線構造の製造方法。
【請求項7】
前記貫通孔を有する部材がグロメットである、請求項6に記載の配線構造の製造方法。
【請求項8】
複数の線材と、前記複数の線材の任意の箇所を束ねるシリコーン含有部材と、を備えた線材束であって、
前記シリコーン含有部材は、前記複数の線材の任意の箇所でブロック体を形成しており、
前記複数の線材は、前記ブロック体の内部を貫通しており、
前記複数の線材同士の間隙の少なくとも一部は、前記シリコーン含有部材によって充填されており、
前記シリコーン含有部材は、JIS K 6249:1997に準じて測定される未硬化時のウイリアム可塑度(25℃)が5~45である可塑性を有する硬化型のシリコーン材料によって形成されている、線材束。
【請求項9】
前記ブロック体の外周面に、自己融着性シリコーンゴムテープが巻回されている、請求項8に記載の線材束。
【請求項10】
貫通孔を有する部材と、前記貫通孔に挿通された請求項8又は9に記載の線材束と、を備えた配線構造であって、
前記ブロック体の外周面、又は前記ブロック体の外周面に自己融着性シリコーンゴムテープが巻回されている場合には前記自己融着性シリコーンゴムテープの外周面が、前記貫通孔の内壁の少なくとも一部に密着されたことにより、前記貫通孔に前記線材束が固定されている、配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材束及びその製造方法、並びに配線構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンルームと車室とを仕切るパネル(壁材)を通してワイヤハーネスを配線する場合、パネルに穿設した貫通孔にゴム製のグロメットを装着し、グロメットの貫通孔を通してワイヤハーネスを配線し、車室側への浸水を防止することが行われている。グロメットのゴム弾性を利用してワイヤハーネスを固定するだけでは充分な防水性が得られないため、例えば、特許文献1では、ワイヤハーネスの各電線同士の間隙と、各電線とグロメットの貫通孔の内壁との間隙に、流動性シール材を注入し、それらの間隙を充填した防水構造が提案されている。
【0003】
特許文献1の防水構造の形成方法において、ワイヤハーネスの各電線の間を広げて隙間を作り、その隙間にチューブを挿入し、そのチューブから流動性シール材を注入する作業は煩雑であり、製造効率が低い問題があった。この問題を解決する止水構造(防水構造)の形成方法が特許文献2で提案されている。具体的には、熱可塑性エラストマーからなる固体の止水材を予めグロメットの貫通孔に設置しておき、その止水材が有する貫通孔にワイヤハーネスを通した状態で、止水材を熱によって一時的に溶融させ、各電線間の間隙及びグロメットとワイヤハーネスの間隙に溶融した止水材を流入させ、その後冷却して止水材を固化する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-351133号公報
【文献】特開2019-160541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の方法では、グロメット内の止水材を溶融するために加熱する必要があり、熱によってグロメット本体やワイヤハーネスの被覆樹脂が劣化する懸念がある。また、このような劣化を防ぐためには特殊な加熱装置が必要であると考えられ、普通の自動車整備工場で防水構造を修繕することは困難となる。
【0006】
本発明は、止水材を液状化させることなく止水構造を形成することが可能な、線材束及びその製造方法、並びに配線構造及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 複数の線材と、前記複数の線材の任意の箇所を束ねるシリコーン含有部材と、を備えた線材束の製造方法であって、前記複数の線材を並列に配置するとともに、前記複数の線材が並列に配置されてなる線材群の少なくとも一部において、前記線材群の一方の面側と他方の面側から、可塑性を有するシリコーン材料で前記一部を挟むことにより、前記シリコーン材料からなる第一シリコーン層と、前記複数の線材が並列に配置されてなる線材層と、前記シリコーン材料からなる第二シリコーン層とがこの順に積層されたサンドイッチ構造を得て、前記サンドイッチ構造を、前記複数の線材が並列に配置された方向に巻回するか又は1回以上折り返すことにより、前記シリコーン材料が、前記複数の線材の任意の箇所を保持したブロック体を得ることを含む、線材束の製造方法。
[2] 前記サンドイッチ構造において、前記複数の線材同士の間隙の少なくとも一部を前記シリコーン材料が充填している、[1]に記載の線材束の製造方法。
[3] 前記ブロック体において、前記複数の線材同士の間隙の少なくとも一部を前記シリコーン材料が充填している、[1]又は[2]に記載の線材束の製造方法。
[4] 前記ブロック体の外周面に、自己融着性シリコーンゴムテープを巻回し、前記ブロック体の中心側に圧縮力を加えた状態で、前記自己融着性シリコーンゴムテープを前記外周面に固定する、[1]~[3]の何れか一項に記載の線材束の製造方法。
[5] 前記複数の線材の少なくとも一部が電線であり、前記電線の少なくとも一方の末端に接続用端子が備えられている、[1]~[4]の何れか一項に記載の線材束の製造方法。
[6] 貫通孔を有する部材と、前記貫通孔に挿通させた線材束とを備えた配線構造の製造方法であって、[1]~[5]の何れか一項に記載の製造方法で得た線材束を使用し、前記線材束が有する前記ブロック体の外周面、又は前記ブロック体の外周面に巻回された前記自己融着性シリコーンゴムテープの外周面を、前記貫通孔の内壁に密着させることにより、前記貫通孔に前記線材束を固定することを含む、配線構造の製造方法。
[7] 前記貫通孔を有する部材がグロメットである、[6]に記載の配線構造の製造方法。
[8] 複数の線材と、前記複数の線材の任意の箇所を束ねるシリコーン含有部材と、を備えた線材束であって、前記シリコーン含有部材は、前記複数の線材の任意の箇所でブロック体を形成しており、前記複数の線材は、前記ブロック体の内部を貫通しており、前記複数の線材同士の間隙の少なくとも一部は、前記シリコーン含有部材によって充填されている、線材束。
[9] 前記ブロック体の外周面に、自己融着性シリコーンゴムテープが巻回されている、[8]に記載の線材束。
[10] 貫通孔を有する部材と、前記貫通孔に挿通された[8]又は[9]に記載の線材束と、を備えた配線構造であって、前記ブロック体の外周面、又は前記ブロック体の外周面に巻回された前記自己融着性シリコーンゴムテープの外周面が、前記貫通孔の内壁の少なくとも一部に密着されたことにより、前記貫通孔に前記線材束が固定されている、配線構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明の線材束の製造方法によれば、グロメット等の貫通孔に挿通した配線構造を形成する際、止水材を液状化させることなく止水構造を形成することが可能な線材束を、簡便に製造することができる。この線材束を使用することにより、グロメット等の貫通孔に挿通した配線構造を簡便に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一のシリコーンゴムテープの長手方向に複数の線材を並べて配置した様子を示す斜視図である。
図2図1の複数の線材が並んだ第一のシリコーンゴムテープの表面に第二のシリコーンゴムテープを重ねた様子を示す斜視図である。
図3図2の第一のシリコーンゴムテープと第二のシリコーンゴムテープを互いに密着させたサンドイッチ構造の断面図である。
図4】サンドイッチ構造をシリコーンゴムテープの長手方向(Y方向)に巻回して形成したブロック体の断面図である。
図5】サンドイッチ構造をシリコーンゴムテープの長手方向(Y方向)に折り返して形成したブロック体の断面図である。
図6】線材束のブロック体に自己融着性シリコーンゴムテープを巻回した様子を示す斜視図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8】グロメットの貫通孔に線材束が挿通された状態で、ブロック体が貫通孔を充填した様子を示す断面図である。
図9図8のIX-IX矢視図である。
図10】グロメットの貫通孔に線材束が挿通された状態で、ブロック体が貫通孔を充填した様子を示す断面図である。
図11】壁材の貫通孔に線材束が挿通された状態で、ブロック体が貫通孔を充填した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の例を説明する。各図は、説明の便宜上、部分的に拡大したり、縮小したり、省略している場合がある。
本明細書及び特許請求の範囲において、「可塑性」とは、固体に力を加えて弾性限界を越える変形を与えたとき、力を取り去っても歪みの少なくとも一部が残る性質をいう。また、「弾性」とは、外力によって変形した物体が、その外力が除かれた時、もとの形にもどろうとする性質をいう。可塑性を有する物体は、当然に弾性を有する。
本明細書及び特許請求の範囲において、「密着」とは、異なる部材同士が隙間なく接することを意味する。密着した異なる部材同士は、外部からの応力によって剥がれる場合もあるし、それらの部材同士が接着して容易には剥がれない場合もある。
【0011】
≪線材束の製造方法≫
本発明の第一態様は、複数の線材と、前記複数の線材の任意の箇所を束ねるシリコーン含有部材と、を備えた線材束の製造方法である。ここで「任意の箇所」とは、前記複数の線材を束ねた線材束としたとき、その線材束の長手方向の何れかの箇所を意味する。前記線材束の中央部でもよいし、中央部から一方の端部までの任意の箇所でもよいし、中央部から他方の端部までの任意の箇所でもよい。線材束を構成する各線材の長手方向は揃えられて、各線材同士が互いに平行に配置されていることが好ましい。また、線材束は一方の端部と他方の端部が接続された円環状であってもよい。
【0012】
本態様の製造方法では、まず、線材束を構成する複数の線材を仮想面上に並列に(横並びに)配置するとともに、前記複数の線材が並列に配置されてなる線材群の少なくとも一部において、線材群の一方の面側と他方の面側から、可塑性を有するシリコーン材料で前記一部を挟む。これにより、前記シリコーン材料からなる第一シリコーン層と、前記複数の線材が並列に配置されてなる線材層と、前記シリコーン材料からなる第二シリコーン層とがこの順に積層されたサンドイッチ構造を得る。
【0013】
前記線材層が含む複数の線材は、サンドイッチ構造の積層方向に見て、互いに一部が重なっていてもよいし、互いに独立して離間していてもよい。線材同士の間隙にシリコーン材料を充填することを考慮すると、サンドイッチ構造において、各線材は互いに離間して、重ならないことが好ましい。
【0014】
具体的には、例えば、図1に示すように、第一のシリコーンゴムテープ1を台上に置き、その長手方向(Y方向)に直交する方向(X方向)に、複数の線材2を載置する。複数の線材2の長手方向は、互いに略平行となるように並列に配置されている。複数の線材2の配置を固定するために、第一のシリコーンゴムテープ1の表面1aに、各線材2の一部をめり込ませてもよい。
【0015】
続いて、図2に示すように、第二のシリコーンゴムテープ3を、複数の線材2が配置された第一のシリコーンゴムテープ1の表面に重ね置く。これにより、図3に示すように、第一のシリコーンゴムテープ1からなる第一シリコーン層4と、複数の線材2が並列に配置されてなる線材層5と、第二のシリコーンゴムテープ3からなる第二シリコーン層6とが、この順に積層されたサンドイッチ構造7が得られる。サンドイッチ構造7を形成する際には、第一シリコーン層4と第二シリコーン層6を互いに密着させることにより、各線材2を、第一シリコーン層4の表面と第二シリコーン層6の表面の各々にめり込ませてもよい。
【0016】
図3に示すように、サンドイッチ構造7において、複数の線材2同士の間隙の少なくとも一部を、シリコーン材料である第一シリコーン層4及び第二シリコーン層6のうち少なくとも一方が充填していることが好ましい。つまり、互いに隣接する線材2同士の間隙にシリコーン材料が介在することによって、線材2同士の接触が抑制されていることが好ましい。このように線材2同士の間隙がシリコーン材料によって充填されることにより、後段で形成する線材束における線材2同士の間隙を水等の流体が流通することを防止し、優れた止水効果が得られる。
【0017】
次に、サンドイッチ構造7の一方の端部7a側から、他方の端部7b側に向けて巻回して、図4に示すようなブロック体8を得る。サンドイッチ構造7を巻回した方向は、第一のシリコーンゴムテープ1及び第二のシリコーンゴムテープ3の長手方向(Y方向)に沿っており、各線材2の長手方向(X方向)に直交する。Y方向に向けて一方の端部側から他方の端部側へサンドイッチ構造7を巻回することにより、各線材2を折り曲げることなく、各線材2を束状にまとめた線材束が得られる。この線材束において、サンドイッチ構造7を巻回してなるブロック体8(前記シリコーン材料の塊)が各線材2の任意の箇所を保持して、束ねている。
【0018】
サンドイッチ構造7を巻回する場合の巻き数は特に制限されず、束ねる線材2の本数や、束ねる線材2の直径、線材束の用途等によって適宜調整される。図4には、2~3回巻いて形成したブロック体8をY-Z面で輪切りにした断面図を示しており、線材2は省略して描いていない。このブロック体8の断面は、円形に近似できる。
【0019】
図4では巻回する場合を例示したが、サンドイッチ構造7を長手方向(Y方向)に重なるように1回以上折り返すことにより、各線材2を束状にまとめた線材束を得てもよい。この線材束においても、サンドイッチ構造7を折り畳んでなるブロック体8が各線材2の任意の箇所を保持して、束ねている。
【0020】
サンドイッチ構造7を折り返す場合の折り方や折り数は特に制限されず、束ねる線材2の本数や、束ねる線材2の直径、線材束の用途等によって適宜調整される。図5には、つづら折りで3~4回折り返して形成したブロック体8をY方向に輪切りにした断面図を示しており、線材2は省略して描いていない。折り返して形成したブロック体8の断面は、四角形に近似できる。
【0021】
複数の線材2を束ねるブロック体8において、複数の線材2同士の間隙の少なくとも一部は前記シリコーン材料によって充填されていることが好ましい。つまり、互いに隣接する線材2同士の間隙にシリコーン材料が介在することによって、線材2同士の接触が抑制されていることが好ましい。このように線材2同士の間隙がシリコーン材料によって充填されることにより、ブロック体8に束ねられた線材2同士の間隙を水等の流体が流通することを防止し、優れた止水効果が得られる。
【0022】
通常、サンドイッチ構造7において、複数の線材2同士の間隙の少なくとも一部を、シリコーン材料が充填していれば、ブロック体8における複数の線材2同士の間隙の少なくとも一部が前記シリコーン材料によって充填される。
【0023】
ブロック体8を構成する前記シリコーン材料は、自己融着性シリコーンゴムを含むものであってもよいし、硬化型のシリコーンゴムを含むものでもよいし、非硬化型のシリコーンゴムコンパウンドを含むものであってもよい。
ブロック体8の弾性率を高め、各線材2の保持力、各線材2同士の配置の固定力を高め、ブロック体8の取り扱い性を高める観点から、前記シリコーン材料は自己融着性シリコーンゴムを含むものであることが好ましく、自己融着性シリコーンゴムテープ(シリコーンゴムを含有する自己融着テープ)であることがより好ましい。
【0024】
ブロック体8の形成により、前記シリコーン材料はシリコーン含有部材9になったと考える。前記シリコーン材料が自己融着性シリコーンゴムを含む場合、ブロック体8の形成直後に自己融着は始まり、数秒~数十秒で充分な接着力を発揮することができる。前記シリコーン材料が硬化型のシリコーンゴムを含む場合、数分~数時間で硬化させることができる。前記シリコーン材料が非硬化型のシリコーンゴムコンパウンドである場合、シリコーンゴムコンパウンドはそれが有する剛性の範囲で、線材2を保持する。
各線材2を束ねるブロック体8の形成により、本態様の線材束を得たと考えてもよい。
【0025】
ブロック体8の強度及び各線材2の保持力を高める観点から、図6~7に示すように、ブロック体8の外周面8aの少なくとも一部に、自己融着性シリコーンゴムテープ11を任意に巻回することが好ましい。この際、ブロック体8の中心側(ブロック体8の線材2の長手方向に直交する断面における中心側)に圧縮力を加えた状態で、自己融着性シリコーンゴムテープ11をブロック体8の外周面8aに固定することが好ましい。ブロック体8を構成するシリコーン含有部材9が自己融着性シリコーンゴムを含む場合、固定した自己融着性シリコーンゴムテープ11をブロック体8に融着させて、一体化することができる。上記の圧縮力により、ブロック体8において、シリコーン含有部材9の各線材2に対する密着力が高まり、互いに隣接する線材2同士の間隙にシリコーン含有部材9が充分に充填され、線材2同士の接触をより一層抑制することができる。なお、上記圧縮力は、自己融着性シリコーンゴムテープ11のゴム弾性によって得られるので、テープ11を引き伸ばしながらブロック体8の外周に巻回することが好ましい。
【0026】
以上の製造方法によって得た線材束10は、図6~7に例示するように、長手方向が揃うように平行に配置された複数の線材2と、複数の線材2の任意の箇所を束ねるシリコーン含有部材9と、を備える。シリコーン含有部材9は、複数の線材2の任意の箇所でブロック体8を形成している。また、ブロック体8の外周面に、自己融着性シリコーンゴムテープ11が巻回されており、自己融着性シリコーンゴムテープ11からなる被覆が形成されている。
【0027】
線材束10にあっては、複数の線材2は、ブロック体8の内部を一の方向に貫通しており、複数の線材2同士の間隙の少なくとも一部は、シリコーン含有部材9によって充填されている。この結果、複数の線材2同士の間隙を水などの流体の流通が防止されているので、優れた止水効果が得られる。
【0028】
線材束10を構成する各線材2の種類は特に制限されず、例えば、電線、ワイヤー、ケーブル、光ファイバー等が挙げられる。各線材2の種類は互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
線材束10を構成する線材2の本数は特に制限されず、例えば、2~20本が挙げられる。
線材束10を構成する各線材2の長さは特に制限されず、例えば、10cm~10mが挙げられる。各線材2の長さは互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
線材束10を構成する各線材2の直径(長手方向に直交する断面を含む最小円の直径)は特に制限されず、例えば、1mm~10mmが挙げられる。各線材2の直径は、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。前記断面の輪郭の形状は、円でもよいし、楕円でもよいし、任意の多角形でもよいし、その他の形状でもよい。
【0029】
例えば、線材束10を構成する各線材2の少なくとも一部は、電線であり、線材束10はこの電線を束ねるワイヤハーネスを構成しており、前記電線の少なくとも一方の末端に、他の装置等の外部機器に接続するための接続用端子が備えられていてもよい。
【0030】
線材束10を形成するために使用するシリコーン材料の形状は、上述のように、テープ状であることが好ましいが、幅広のシート状であってもよいし、厚みのある棒状や角材状であってもよいし、その他の任意の形状であってもよい。
【0031】
前記シリコーン材料がテープ状である場合、その幅(長手方向に直交する長さ)は、例えば、1cm~10cmであることが好ましく、2cm~6cmであることがより好ましいい。この範囲の幅であると、取り扱い易く、各線材2を束ね易いので好ましい。
前記シリコーン材料がテープ状である場合、その長さ(長手方向の長さ)は、束ねる線材2の本数や直径によって適宜調整すればよく、例えば、5cm~50cmが挙げられる。
前記シリコーン材料がテープ状である場合、その厚さは、例えば、0.5mm~5mmが挙げられる。このテープの長手方向に直交する断面の形状は、矩形であってもよいし、山形(三角形)であってもよいし、菱形であってもよい。
【0032】
≪線材束≫
本発明の第二態様は、複数の線材と、前記複数の線材の任意の箇所を束ねるシリコーン含有部材と、を備えた線材束である。前記シリコーン含有部材は、前記複数の線材の任意の箇所でブロック体を形成しており、前記複数の線材は、前記ブロック体の内部を貫通しており、前記複数の線材同士の間隙の少なくとも一部は、前記シリコーン含有部材によって充填されている。
本態様の線材束は、第一態様の製造方法によって製造することができる。
【0033】
本態様の線材束の一例は、図6~7に示した線材束10である。線材束10を構成する自己融着性シリコーンゴムテープ11からなる被覆は、任意の構成であり、前記被覆が備えられておらず、ブロック体8の外周面が露出した状態であっても構わない。
【0034】
線材束10を構成するブロック体8のX方向の長さは、線材束10の用途に応じて適宜設定され、例えば、1cm~10cmとすることができる。
線材束10を構成するブロック体8及びその外周の被覆11を含めた、X方向に直交する断面の輪郭の直径(輪郭を含む最小円の直径)は、線材束10の用途や、束ねた線材2の本数や直径に応じて適宜設定され、例えば、5mm~20cmとすることができる。
前記断面の輪郭の直径は、ブロック体8の奥行き方向(X方向)に見て、拡径してもよいし、縮径してもよいし、同じ直径で続いてもよい。
【0035】
線材束10で束ねられた各線材2はブロック体8の内部をX方向に貫通している。ブロック体8の内部において、複数の線材2同士の間隙の少なくとも一部が、シリコーン含有部材9によって充填されていることにより、複数の線材2同士の間隙を水などの流体が流通することが防止されているので、優れた止水効果が得られる。
【0036】
≪配線構造の製造方法≫
本発明の第三態様は、貫通孔を有する部材と、前記貫通孔に挿通させた線材束とを備えた配線構造の製造方法である。本態様では、第一態様の製造方法で得た線材束、又は第二態様の線材束を使用する。
【0037】
具体例として、図8~9に示すように、線材束10が有するブロック体8の外周面8aを構成するシリコーン含有部材9、又はブロック体8の外周面8aに巻回された自己融着性シリコーンゴムテープ11からなる被覆の外周面を、貫通孔21を有する部材22の内壁21aの少なくとも一部に密着させることにより、貫通孔21に線材束10を固定することを含む、配線構造20の製造方法が挙げられる。
【0038】
貫通孔21に線材束10を固定した状態で、貫通孔21の長さ方向の少なくとも一部において、貫通孔21の径方向の全体を線材束10が充填するように固定することが好ましい。この構成によって、水などの流体が貫通孔21を流通しないようにすることができる。
【0039】
図8~9に例示した部材22は、貫通孔21を有する自動車用のグロメットであり、特許文献2に例示された形態である。グロメットである部材22は、エンジンルームと車室とを隔てるパネル等の壁材31に設けられた貫通孔32に嵌め込まれている。線材束10のブロック体8の長手方向(X方向)の全体が貫通孔21の内部に配置されており、ブロック体8に巻回された自己融着性シリコーンゴムテープ11からなる被覆の外周面が貫通孔21の内壁に密着して固定されている。このように配置する方法として、例えば、貫通孔21をジグで拡径し、線材束10を挿通した後で、ジグを取り外して貫通孔21を元の径に戻す方法が挙げられる。
本例にあっては、貫通孔21の中央部において、貫通孔21の径方向の全体が線材束10によって充填されている。
【0040】
配線構造20の変形例として、図10に示す配線構造25が挙げられる。貫通孔21を有する部材22は図8~9と同じグロメットである。線材束10を構成するブロック体8を構成するシリコーン含有部材9が、貫通孔21の内部の全体を充填し、さらに一方の開口部及び他方の開口部からそれぞれ突出している。貫通孔21の一方の開口部から突出したシリコーン含有部材9の表面は、一方の開口部を構成する側面23に密着して固定されている。このように配置する方法として、貫通孔21の一方の開口部から、線材束10を構成する各線材2を挿通させ、これに続いて線材束10を構成するブロック体8を挿通させる方法が挙げられる。ここで予め、ブロック体8の直径を、先に挿通する側から後方に向けて拡径する形状に成形しておき、ブロック体8を貫通孔21に挿通すると、拡径した部分が貫通孔21の一方の開口部で詰まる。さらに押圧することにより、ブロック体8を構成するシリコーン含有部材9の表面の一部を貫通孔21の一方の開口部を構成する側面23に密着させて固定することができる。この形態によれば、貫通孔21の一方の開口部から水などの流体が貫通孔21内へ流入することをより確実に防止することができる。
【0041】
図10において、ブロック体8の外周面に巻回された自己融着性シリコーンゴムテープ11からなる被覆は省略して描いていない。また、図10の例では、貫通孔21の長さ方向の全体がブロック体8によって充填されているが、必ずしも全体が充填されていなくてもよい。上述のようにブロック体8の直径が先端から後方に向けて徐々に拡径する場合、拡径の程度が小さい部位の直径は貫通孔21の直径よりも小さくてもよく、貫通孔21の直径よりも小さい部位は貫通孔21をその径方向に充填していなくても構わない。
【0042】
別の配線構造の例として、図11に示す配線構造30が挙げられる。貫通孔32を有する部材はパネル等の壁材31である。線材束10を構成するブロック体8を構成するシリコーン含有部材9が、貫通孔32の内部を充填し、さらに一方の開口部及び他方の開口部からそれぞれ突出している。貫通孔32の一方の開口部から突出したシリコーン含有部材9の表面は、一方の開口部を構成する側面33に密着して固定されている。このように配置する方法として、貫通孔32の一方の開口部から、線材束10を構成する各線材2を挿通させ、これに続いて線材束10を構成するブロック体8を挿通させる方法が挙げられる。ここで予め、ブロック体8の直径を、先に挿通する側から後方に向けて拡径する形状に成形しておき、ブロック体8を貫通孔32に挿通すると、拡径した部分が貫通孔32の一方の開口部で詰まる。さらに押圧することにより、ブロック体8を構成するシリコーン含有部材9の表面の一部を貫通孔32の一方の開口部を構成する側面33に密着させて固定することができる。この形態によれば、貫通孔32の一方の開口部から水などの流体が貫通孔32内へ流入することをより確実に防止することができる。
なお、図11において、ブロック体8の外周面に巻回された自己融着性シリコーンゴムテープ11からなる被覆は省略して描いていない。
【0043】
≪配線構造≫
本発明の第四態様は、貫通孔を有する部材と、前記貫通孔に挿通された第二態様の線材束と、を備えた配線構造である。前記ブロック体の外周面、又は前記ブロック体の外周面に巻回された自己融着性シリコーンゴムの外周面が、前記貫通孔の内壁の少なくとも一部に密着されたことにより、前記貫通孔に前記線材束が固定されている。本態様の配線構造は、第三態様の製造方法によって製造することができる。
【0044】
本態様の配線構造にあっては、前記貫通孔の内壁の少なくとも一部に前記線材束が固定された状態で、前記貫通孔の長さ方向の少なくとも一部において、前記貫通孔の径方向の全体が線材束のブロック体によって充填されていることが好ましい。この構成によって、水などの流体が前記貫通孔を流通せず、優れた止水効果が得られる。
【0045】
本態様の配線構造の例は、図8~11に示した配線構造20,25,30である。線材束10を構成する自己融着性シリコーンゴムテープ11からなる被覆は、任意の構成であり、前記被覆が備えられておらず、ブロック体8の外周面が露出した状態で貫通孔に挿通されていても構わない。
【0046】
前記貫通孔を有する部材は特に制限されず、例えば、自動車のエンジンルームと車室とを隔てるパネル、配電盤や電気機器のケース(筐体)、建物の外壁、建物内の仕切り壁、建物の床及び天井、窓、扉等が挙げられる。これらの部材が有する貫通孔は、本発明の線材束が有するブロック体によって、直接に充填されていてもよいし、前述のグロメット等を介在して間接的に充填されていてもよい。つまり、前記貫通孔を有する部材は、グロメットに代表されるように、別の部材の貫通孔に取り付けられる部材であってもよい。
【0047】
前記貫通孔を有する部材を構成する材料としては、例えば、合成樹脂、ゴム、金属、コンクリート、ガラス、木材等が挙げられる。前記貫通孔又はその開口部に対する前記線材束の密着力及び固定力を高めるために、前記貫通孔又はその開口部の密着面に予めプライマー剤を塗布し、前記シリコーン含有部材に対する密着性に優れたプライマー層を形成してもよい。
【0048】
前記線材束が挿通される前記貫通孔の直径は特に制限されず、例えば、1cm~20cmとすることができる。
前記線材束が挿通される前記貫通孔の長さは特に制限されず、例えば、5mm~50cmとすることができる。
【0049】
<シリコーン材料の化学成分>
本発明で使用するシリコーン材料の化学成分は、シリコーンを含有し、複数の線材を束ねることが可能なものであればよく、複数の線材を束ねたシリコーン含有材料となったときに、ゴム弾性を示す材料、すなわちシリコーンゴムを形成する材料であることが好ましい。
好適なシリコーン材料は、自己融着性を有するものと、自己融着性を有しないものとに大別することができる。自己融着性を有するものとしては、例えば、自己融着性シリコーンゴムが挙げられる。自己融着性を有しないものとしては、例えば、硬化型のシリコーンゴム、ミラブル型のシリコーンゴムコンパウンド(シリコーン組成物)等が挙げられる。
【0050】
(自己融着性シリコーンゴム)
好適な自己融着性シリコーンゴムとしては、例えば、特開2016-114180号公報に開示されている、下記の平均組成式(I)で示されるジオルガノポリシロキサンとホウ酸化合物とを含有するシリコーン組成物を硬化させた硬化物が挙げられる。
【0051】
SiO(4-n) ・・・(I)
[式(I)中、Rは炭素数1~10の炭化水素基を表し、nは1.98~2.02の範囲の任意の数を表す。]
【0052】
の炭化水素基の炭素数は、1~10であり、1~8が好ましい。
の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0053】
は、炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された基でもよい。
前記シリコーン組成物を硬化させる際には、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物で硬化を促進させてもよい。この場合、Rとしては、アルケニル基又はアルケニル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基で置換された基が好ましい。
式(I)におけるnは、自己融着性を充分に得る点から、1.98~2.02が好ましい。
【0054】
ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、100~100,000,000cStが好ましく、100,000~10,000,000cStがより好ましい。ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が前記範囲内であれば、硬化後の機械的物性に優れる。
【0055】
ホウ酸化合物としては、例えば、無水ホウ酸、ピロホウ酸、オルトホウ酸等のホウ酸類;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、トリメトキシボロキシン等の無水ホウ酸の誘導体等が挙げられる。また、ホウ酸化合物として、例えば、ジメチルジメトキシシラン又はジメチルジエトキシシラン等のオルガノアルコキシシランと無水ホウ酸とを縮合させて得たポリオルガノボロシロキサンを用いることもできる。
ホウ酸化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
自己融着性シリコーンゴムテープにおけるホウ酸化合物の含有割合は、ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、0.5~30質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。ホウ酸化合物の含有割合が前記下限値以上であれば、充分な自己融着性を確保しやすい。ホウ酸化合物の含有割合が前記上限値以下であれば、機械的物性の低下を抑制しやすい。
【0057】
自己融着性シリコーンゴムテープの長手方向に沿う引張強さ(単位:N)は、30N以上が好ましく、50N以上がより好ましい。
自己融着性シリコーンゴムテープの長手方向に沿う引張伸び率は、500%以上が好ましく、600%以上がより好ましい。
前記の引張強さ及び引張伸び率が前記下限値以上であれば、充分に高い自己融着性を発揮でき、線材への密着性に優れる。
なお、前記の引張強さ及び引張伸び率は、引張試験機を用い、自己融着性シリコーンゴムテープの長手方向に沿って、23℃、引張速度500mm/分の条件で測定した値である。
【0058】
自己融着性シリコーンゴムテープの幅は、10mm~100mmが好ましく、20mm~50mmがより好ましい。幅が前記下限値内であれば、取り扱い時の作業性が良い。
【0059】
自己融着性シリコーンゴムテープの厚さは、0.1mm~2.0mmが好ましく、0.2mm~1.0mmがより好ましい。厚さが前記下限値内であれば、引っ張った時の強度下で作業性が良い。
【0060】
自己融着性シリコーンゴムテープは透明であることが好ましい。これにより、被覆された自己融着性シリコーンゴムテープを透視して、固定した線材の様子を観察できる。そのため、線材束の前記ブロック体を解くことなく線材の腐食や断線等を観察でき、メンテナンスの要否を容易に判断できる。
ここで、「透明」であるとは、可視光の透過率が30%以上であることを意味する。
自己融着性シリコーンゴム及びそのテープは透明でなくてもよい。
【0061】
自己融着性シリコーンゴムテープをブロック体の外周面に引き伸ばしながら巻回する場合、巻回前の幅をD(mm)、巻回後の幅をD(mm)としたとき、比率P(%)は、P=D/D×100で表される式で算出される。
比率Pは、30~80%が好ましく、50~70%がより好ましい。比率Pが前記範囲の下限値以上であれば、自己融着性シリコーンゴムテープがブロック体の外周面に充分に密着することができ、前記範囲の上限値以下であれば、ブロック体の中心部に対して充分な圧縮力を加えることができる。
【0062】
好適な物性を示す自己融着性シリコーンゴム及びそのテープは、市販されており、公知方法により製造することもできる。
【0063】
(硬化型シリコーンゴム)
硬化型シリコーンゴムは、縮合硬化型でもよいし、付加硬化型でもよい。付加硬化型は、未使用時には低温で保存し、使用時には常温以上に加熱することによって硬化させる。縮合硬化型は、未使用時には乾燥環境(防湿環境)で保存し、使用時には空気中の水分を吸湿させることによって硬化させる。縮合硬化型シリコーンゴムは、例えば、ポリオルガノシロキサン、架橋剤、硬化触媒、充填剤及び接着性賦与成分を含有するシリコーン組成物によって形成することができる。
【0064】
硬化型シリコーンゴムは未硬化時には所望の形状に成形可能であり、硬化後にはその形状を保持する。本発明に用いる硬化型シリコーンゴムの未硬化時のウイリアム可塑度(25℃)は、5~45が好ましく、5~30がより好ましい。ウイリアム可塑度が前記範囲内にあると、未硬化の状態で充分な可塑性を有し、所望の形状に成形することが容易である。
ここで、ウイリアム可塑度は、JIS K 6249:1997の「未硬化及び硬化シリコーンゴムの試験方法」に準じて測定して算出された値である。すなわち、25℃において硬化型シリコーンゴム2gの略球状の試験片を準備し、この試験片をセロハン紙に挟んでダイヤルゲージの付いた平行板可塑度計(例えば、上島製作所製「ウイリアムプラストメータ」)中にセットし、5kgの荷重を加えて3分間放置した後、ダイヤルゲージの目盛をミリメートルで読み取り、試験片の厚さを記録して、この数値を100倍した値である。
【0065】
硬化型シリコーンゴムの硬化後の硬度を、JIS K 6253:2012の「第3部:デュロメータ硬さ(タイプA)」に基づいて評価した場合、A40以上であることが好ましい。A40以上であると、本発明にかかる線材束及び配線構造の耐候性をより一層高めることができる。前記硬度の上限値は特に限定されないが、前記貫通孔を有する部材が外部からの応力によって変形したときに、硬化型シリコーンゴムがその変形に追随することを考慮して、例えば、A90程度が上限として挙げられる。
【0066】
好適なウイリアム可塑度や硬度を呈する硬化型シリコーンゴムは、市販されており、公知方法により製造することもできる。
【0067】
(ミラブル型シリコーンゴムコンパウンド)
一般に、主材料としてポリオルガノシロキサンを含み、シリカ系の充填剤やその他の添加剤が練り込まれたものがミラブル型シリコーンゴムコンパウンドとされている。
ミラブル型シリコーンゴムコンパウンドは、固形であるものと、液状であるもとに大別され、さらに、加熱して加硫する(硬化する)タイプと、10~40℃程度の室温で加硫する(硬化する)タイプが知られている。本発明においては、固形であることが好ましい。加硫のタイプは何れでもよいが、室温程度で加硫するタイプの方が簡便に扱えるので好ましい。
ミラブル型シリコーンゴムコンパウンドは、市販されており、公知方法により製造することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1…第一のシリコーンゴムテープ、1a…表面、2…線材、3…第二のシリコーンゴムテープ、4…第一シリコーン層、5…線材層、6…第二シリコーン層、7…サンドイッチ構造、8…ブロック体、8a…外周面、9…シリコーン含有部材、10…線材束、11…自己融着性シリコーンゴムテープ、20…配線構造、21…貫通孔、21a…内壁、22…部材、23…側面、25…配線構造、30…配線構造、31…壁材、32…貫通孔、33…側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11