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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20231222BHJP
【FI】
C02F3/34 101C
C02F3/34 101A
C02F3/34 101B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020053456
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151645
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】安村 宜之
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-059396(JP,A)
【文献】特開2002-336892(JP,A)
【文献】特開平07-136683(JP,A)
【文献】特開平09-164399(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104609557(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中の窒素成分を間欠曝気運転により除去する水処理装置であって、
撹拌及び曝気に係る運転を1サイクルとし、あらかじめ決められた1サイクルの処理時間において、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の初期値と処理後の値を比較し、次の1サイクルの処理時間における運転配分と、次の1サイクルの処理時間における曝気により供給される空気量と、を調整する制御部を備えることを特徴とする、水処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の処理時の値の最大値あるいは最小値に基づき、被処理水の投入量を調整することを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の処理時の値の最大値あるいは最小値に基づき、水素供与体の添加量を調整することを特徴とする、請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
被処理水中の窒素成分を間欠曝気運転により除去する水処理方法であって、
撹拌及び曝気に係る運転を1サイクルとし、あらかじめ決められた1サイクルの処理時間において、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の初期値と処理後の値を比較し、次の1サイクルの処理時間における運転配分と、次の1サイクルの処理時間における曝気により供給される空気量と、を調整する制御工程を備えることを特徴とする、水処理方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関するものである。特に、被処理水中の窒素成分の硝化脱窒処理に係る水処理装置及び水処理方法である。
【背景技術】
【0002】
排水処理に係る処理手段は様々なものが知られており、排水中の除去対象成分に応じて処理手段を選択することが行われている。例えば、排水中の除去対象成分として窒素成分が含まれている場合の処理手段の一つとして、硝化脱窒処理が挙げられる。
【0003】
このような硝化脱窒処理としては、活性汚泥を用い、被処理水中の窒素成分を窒素ガスに還元する生物学的硝化脱窒処理が挙げられる。この活性汚泥を用いた生物学的硝化脱窒処理は、好気条件下で硝化菌によりアンモニア性窒素が硝酸性窒素や亜硝酸性窒素に硝化される硝化工程と、嫌気条件下で脱窒菌により硝酸性窒素や亜硝酸性窒素が窒素ガスに還元される脱窒工程とからなる処理として知られている。
【0004】
この生物学的硝化脱窒処理の一つとして、窒素成分を含む被処理水に対し、空気曝気と曝気停止を交互に繰り返し、好気条件下における硝化工程と嫌気条件下における脱窒工程を1サイクルとした処理を行う間欠曝気処理が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、窒素成分を含む被処理水の硝化脱窒処理として、間欠曝気処理によるものが記載されている。また、特許文献1には、間欠曝気処理を行う反応槽内のpHを経時的に測定し、間欠曝気処理の1サイクルにおけるpHの最大値と最小値の差分があらかじめ定めた値を下回った場合に、反応槽への被処理水の供給量を低減させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-36558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるような間欠曝気処理に用いられる水処理装置は、1槽内で処理を行うことができ、装置の小型化が容易であることが知られている。このため、間欠曝気処理による水処理は、窒素成分を含む被処理水の処理に広く活用されている。
【0008】
また、間欠曝気処理による水処理は、1槽内で空気曝気と曝気停止を行うことで、好気条件下における硝化工程と嫌気条件下における脱窒工程という2段階の処理工程を進行させるものであり、処理工程に係る運転管理が重要である。このため、硝化工程及び脱窒工程の進行に係る処理状態を把握し、安定した運転を維持するための制御を行う必要がある。
【0009】
特許文献1では、間欠曝気処理における処理状態を把握するために、pHを指標として用いている。しかし、pHを指標とする場合、被処理水の処理状態を間接的に評価するものであることから、間欠曝気処理における運転制御が十分に最適化されているとは言い切れない。したがって、被処理水の処理状態をより的確に評価することができる指標を用い、間欠曝気処理における運転制御を最適化することが求められている。
【0010】
本発明の課題は、被処理水中の窒素成分を間欠曝気処理する水処理において、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価し、間欠曝気運転の最適化を行うことができる水処理装置及び水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、撹拌と曝気を繰り返す間欠曝気処理を行う水処理装置であって、あらかじめ決められた1サイクルの処理時間において、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の初期値と処理後の値を比較し、次の1サイクルの処理時間における撹拌と曝気の運転配分と、次の1サイクルの処理時間における曝気により供給される空気量とを調整する制御部を備えることで、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価し、間欠曝気運転を最適化できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の水処理装置及び水処理方法である。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の水処理装置は、被処理水中の窒素成分を間欠曝気運転により除去する水処理装置であって、撹拌及び曝気に係る運転を1サイクルとし、あらかじめ決められた1サイクルの処理時間において、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の初期値と処理後の値を比較し、次の1サイクルの処理時間における運転配分と、次の1サイクルの処理時間における曝気により供給される空気量と、を調整する制御部を備えることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の水処理装置によれば、制御部を設け、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の初期値と処理後の値を比較することで、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価することができる。また、この比較結果を基に、次の1サイクルの処理時間における撹拌と曝気の運転配分と、次の1サイクルの処理時間における曝気により供給される空気量とを調整することで、被処理水中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【0014】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、制御部は、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の処理時の値の最大値あるいは最小値に基づき、被処理水の投入量を調整するという特徴を有する。
この特徴によれば、制御部において、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の処理時の値の最大値あるいは最小値を用いることで、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価するとともに、この値を基に、被処理水の投入量を調整することで、被処理水中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【0015】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、制御部は、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の処理時の値の最大値あるいは最小値に基づき、水素供与体の添加量を調整するという特徴を有する。
この特徴によれば、制御部において、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の処理時の値の最大値あるいは最小値を用いることで、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価するとともに、この値を基に、水素供与体の添加量を調整することで、被処理水中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の水処理方法は、被処理水中の窒素成分を間欠曝気運転により除去する水処理方法であって、撹拌及び曝気に係る運転を1サイクルとし、あらかじめ決められた1サイクルの処理時間において、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の初期値と処理後の値を比較し、次の1サイクルの処理時間における運転配分と、次の1サイクルの処理時間における曝気により供給される空気量と、を調整する制御工程を備えるという特徴を有する。
【0017】
本発明の水処理方法によれば、制御工程として、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の初期値と処理後の値を比較することで、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価することができる。また、この比較結果を基に、次の1サイクルの処理時間における撹拌と曝気の運転配分と、次の1サイクルの処理時間における曝気により供給される空気量とを調整することで、被処理水中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被処理水中の窒素成分を間欠曝気処理する水処理において、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価し、間欠曝気運転の最適化を行うことができる水処理装置及び水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施態様の水処理装置を示す概略説明図である。
図2】本発明の実施態様の水処理装置における測定部による測定結果の一例を示すグラフである。
図3】本発明の実施態様の水処理装置における制御部による制御の一例を示すフロー図である。
図4】本発明の実施態様の水処理装置における制御部による別の制御の一例を示すフロー図である。
図5】本発明の実施態様の水処理装置における制御部による別の制御の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の水処理装置及び水処理方法は、窒素成分を含む被処理水の水処理に利用されるものである。特に、本発明の水処理装置及び水処理方法は、生物学的硝化脱窒処理の一つとして、窒素成分を含む被処理水に対し、撹拌及び曝気に係る工程をそれぞれ1回ずつ行ったものを1サイクルとした処理を行う間欠曝気処理に利用されるものである。
【0021】
本発明における被処理水Wとしては、被処理水W内に処理対象となる窒素成分を含むものであればよく、特に限定されない。このような被処理水の具体的な例としては、例えば、工場排水、生活排水等の排水などが挙げられる。特に、窒素成分としてアンモニア性窒素あるいは硝酸性窒素を含む被処理水Wとしては、例えば、下水やし尿などが挙げられる。
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る水処理装置及び水処理方法の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明の水処理方法については、以下の水処理装置の構造及び作動の説明に置き換えるものとする。また、実施態様に記載する水処理装置の構造については、本発明に係る水処理装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0023】
[実施態様]
(水処理装置)
図1は、本発明の実施態様における水処理装置10の概略説明図である。
本実施態様に係る水処理装置10は、図1に示すように、ラインL1を介して被処理水Wが投入される処理槽1と、曝気装置2と、撹拌装置3と、水素供与体添加部4と、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度を測定する測定部5と、制御部6と、を備えている。また、ラインL1上には、被処理水Wの投入量を調整する被処理水量調整部7が設けられている。
なお、図1において、一点鎖線の矢印は、制御可能あるいは入力可能に接続されていることを示している。
【0024】
本実施態様の水処理装置10では、処理槽1内に投入された窒素成分を含む被処理水Wに対し、間欠曝気処理が行われる。
図1に示すように、処理槽1内には、曝気装置2及び撹拌装置3が備えられている。また、処理槽1内には、硝化菌及び脱窒菌等の微生物菌体を含む活性汚泥が投入されている。
この処理槽1において、曝気装置2による曝気と撹拌装置3による撹拌を交互に繰り返す間欠曝気運転を行うことにより、被処理水W中の窒素成分が処理される。
より具体的には、処理槽1内で曝気装置2を駆動させることで、好気性(酸化性)雰囲気が形成され、硝化菌によりアンモニア性窒素が硝酸性窒素に酸化される酸化反応が進行する。一方、処理槽1内で撹拌装置3を駆動させることで、嫌気性(還元性)雰囲気が形成され、脱窒菌により硝酸性窒素が窒素ガスに還元される還元反応が進行する。
そして、処理槽1において処理された処理水W1は、ラインL2を介して系外に排出される。
【0025】
曝気装置2は、処理槽1内に好気性雰囲気を形成するためのものである。
曝気装置2は、空気や酸素などの気体を処理槽1内に供給することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。曝気装置2としては、例えば、図1に示すように、散気体21とブロワBを接続したものが挙げられる。ここで、散気体21としては、複数のノズルを備える散気体のほか、多孔質材料からなる管状部材や、多数の孔あるいはスリットが設けられた管状部材や板状部材からなる散気体などが挙げられる。また、ブロワBとしては、気体を圧送することができるものであればよく、例えば送風機や圧縮機などを用いることが挙げられる。これにより、処理槽1内に気体を供給し、処理槽1内を好気性雰囲気下とし、硝化菌による硝化工程(酸化反応)を進行させることができる。
【0026】
撹拌装置3は、曝気装置2の停止時に処理槽1の撹拌を行うことにより、処理槽1内に嫌気性雰囲気を形成するためのものである。
撹拌装置3は、処理槽1内の被処理水Wを撹拌することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。撹拌装置3としては、例えば、図1に示すように、撹拌羽根31と、撹拌羽根31に取り付けられた撹拌軸32と、撹拌羽根31を回転させる駆動機構33を備えるものが挙げられる。これにより、処理槽1内を撹拌するとともに、処理槽1内を嫌気性雰囲気下とし、脱窒菌による脱窒工程(還元反応)を進行させることができる。
なお、撹拌装置3としては、撹拌羽根以外の構造を用いるものとしてもよい。また、回転以外の駆動機構によって撹拌を行うものとしてもよい。
【0027】
撹拌装置3の配置箇所は特に限定されない。図1に示すように、処理槽1上部側から撹拌羽根を設けるものとすること以外に、処理槽1の側壁側に撹拌羽根を設けるものとすることや、処理槽1の底面側に撹拌羽根を設けるものとすることなどが挙げられる。
【0028】
水素供与体添加部4は、処理槽1内の被処理水Wに対して水素供与体を添加するためのものである。
上述した脱窒工程に係る還元反応においては、反応を進行させるために水素が必要である。通常、被処理水W中のBOD成分が水素供与体として機能するが、被処理水Wの水質や処理状況によって不足する場合がある。このため、水素供与体添加部4を設け、必要に応じて被処理水Wに水素供与体を添加することにより、脱窒工程を効率的に進行させることが可能となる。
【0029】
水素供与体添加部4の構造については特に限定されない。例えば、図1に示すように、水素供与体を貯留する貯留部41と、処理槽1へ水素供与体を添加するための配管42と、水素供与体添加量を調整するために配管42上に設けられた調整機構43を備えるものが挙げられる。ここで、調整機構43としては、流量調整弁やポンプなどが挙げられる。
なお、水素供与体としては、易分解性の有機物を用いることが挙げられる。このような有機物としては、アルコール、酢酸などの有機酸、糖を含む廃液などが挙げられる。特に、水素供与体としては、脱窒菌の炭素源、エネルギー源としても作用するメタノールを用いることが好ましい。また、メタノールを水素供与体として用いることで、添加量に応じた脱窒工程(還元反応)への影響を算出することが容易となる。これにより、後述する制御部6において、被処理水W中に添加する水素供与体の添加量制御が容易となる。
【0030】
測定部5は、被処理水W中のアンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度を測定するためのものである。
測定部5は、少なくともアンモニア性窒素濃度あるいは硝酸性窒素濃度のいずれか一方を測定できるものであればよいが、アンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度の両方を測定できるものとすることがより好ましい。これにより、後述する制御部6において間欠曝気運転の最適化条件に係る演算精度が向上する。
測定部5は、アンモニア性窒素濃度計及び硝酸性窒素濃度計としてそれぞれ公知の測定機器を設け、アンモニア性窒素濃度と硝酸性窒素濃度を独立して測定するものとしてもよく、アンモニア性窒素濃度計あるいは硝酸性窒素濃度計のいずれか一方と全窒素濃度計との組み合わせにより、アンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度の値を得るものとしてもよい。なお、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度を測定可能な公知の測定機器としては、イオン電極を備えるものなどが挙げられる。
また、測定部5は、連続測定及びデータの自動送信が可能であることが好ましい。これにより、後述する制御部6における演算精度が高まるとともに、制御部6へのデータ入力が容易となる。
【0031】
被処理水量調整部7は、処理槽1内に投入する被処理水Wの量を調整するためのものである。
被処理水量調整部7は、後述する制御部6によりラインL1から投入する被処理水Wの量を調整することができるものであればよい。被処理水量調整部7としては、例えば、図1に示すように、ラインL1上に設けられる流量調整弁やバルブなどを用いることや、被処理水移送装置のインバータ制御によるものなどが挙げられる。
【0032】
制御部6は、処理槽1における間欠曝気運転に係る制御を行うためのものである。
制御部6は、図1に示すように、制御対象となる曝気装置2、撹拌装置3、水素供与体添加部4、被処理水量調整部7に対し、制御可能に接続されており、また、測定部5の測定結果が入力可能となるように接続されている。
【0033】
制御部6としては、制御対象として接続した各構成の制御あるいは情報取得を行うことができるものであればよい。本実施態様における制御部6としては、例えば、図1に示すように、情報取得部61と、演算部62と、運転制御部63を備えるものが挙げられる。
【0034】
情報取得部61は、測定部5における測定結果に係るデータの取得を行うものである。
また、演算部62は、情報取得部61が取得したデータに基づき、間欠曝気運転に係る曝気装置2の駆動時間、撹拌装置3の駆動時間、水素供与体添加部4による水素供与体の添加量、被処理水量調整部7による被処理水Wの投入量など、間欠曝気運転の制御に係る演算を行うものである。なお、この演算に係る説明については後述する。
さらに、運転制御部63は、演算部2の演算結果に基づく制御信号を、制御対象として接続された各構成に対して発信するものである。
【0035】
制御部6を構成する情報取得部61、演算部62及び運転制御部63は、作業者の手動による操作を含むものであってもよいが、情報取得のためのデータ入出力機能を有し、制御に係る演算や制御信号発信を行うためのプログラムをCPU等のプロセッサにより実行する計算装置を用い、自動制御可能とすることが好ましい。これにより、水処理装置10の間欠曝気運転を最適化することが容易となる。
【0036】
(水処理装置における間欠曝気運転の制御)
以下、本実施態様の水処理装置10を用い、被処理水Wとして窒素成分を含む被処理水の間欠曝気処理を行うにあたり、被処理水W中の窒素挙動に応じた好適な間欠曝気運転の制御について、例示して説明する。なお、各運転制御に係る説明及びフローチャートについては、実施態様の例示にすぎず、これに限定されるものではない。
【0037】
図2は、本実施態様の水処理装置10の間欠曝気運転に係る1サイクルの処理時間内において、測定部5で得られる測定結果を模式的に示すグラフである。
なお、本発明の間欠曝気運転においては、撹拌及び曝気の組み合わせを1サイクルと定義するものであり、撹拌と曝気の順序については特に限定されない。本実施態様においては、演算処理に係る説明の都合上、撹拌装置3による撹拌後、曝気装置2による曝気を行うものを1サイクルとして示しているが、これに限定されるものではなく、曝気装置2による曝気後、撹拌装置3による撹拌を行うものを1サイクルとするものであってもよい。
【0038】
図2は、水処理装置10に投入された被処理水Wに対し、撹拌装置3の駆動による脱窒工程(還元反応)後、曝気装置2の駆動による硝化工程(酸化反応)を行った時のアンモニア性窒素濃度の経時変化(図2A)及び硝酸性窒素濃度の経時変化(図2B)を示すものである。
このとき、アンモニア性窒素濃度の初期値をCNH4-N0、処理後の値をCNH4-N1、処理時における最大値をCNH4-Nmaxとし、硝酸性窒素濃度の初期値をCNO3-N0、処理後の値をCNO3-N1、処理時における最小値をCNO3-Nminとする。
また、このとき、脱窒工程に係る撹拌時間をTD0、硝化工程に係る曝気時間をTN0とし、1サイクルの処理時間をTとする。なお、TDO、TN0、Tの関係は、T=TD0+TN0が成り立つものとなっている。Tはあらかじめ決められた1サイクルの処理時間であり、TDO、TN0は、T以後の処理サイクルにおける撹拌及び曝気に係る基準時間となる。
【0039】
図2に示すようなデータが情報取得部61を介して、演算部62に入力されると、演算部62では、アンモニア性窒素濃度の初期値CNH4-N0と処理後の値CNH4-N1の比較を行う。より具体的には、アンモニア性窒素濃度の初期値CNH4-N0と処理後の値CNH4-N1の差分ΔCNH4(=CNH4-N1-CNH4-N0)を計算する。この差分ΔCNH4の値を、設定値X、Xと比較し、この比較による値区分に基づき、次の1サイクルにおける運転制御に係る内容を決定する。この運転制御に係る演算については後述する。
なお、設定値X及びXは、1サイクル内において許容されるアンモニア性窒素濃度の変動分あるいはアンモニア性窒素濃度の測定誤差分に相当し、X>Xの関係が成り立つものである。また、通常、XとXは絶対値が同じで正負の関係にあるものとするが、これに限定されるものではなく、XとXの絶対値が異なるものを設定するものとしてもよい。設定値X及びXについては、過去の処理実績などを基に適宜決定することができる。
【0040】
差分ΔCNH4の値と、設定値X及びXの比較における値区分に基づき、次の1サイクルの処理時間Tにおける運転配分と、次の1サイクルの処理時間Tにおいて曝気により供給される空気量の調整を行う。ここで、「運転配分」とは、1サイクルの処理時間内における脱窒工程と硝化工程の時間割合であり、言い換えれば、撹拌時間と曝気時間の時間数あるいは撹拌時間と曝気時間の割合を指すものである。
ここで、次の1サイクルの処理時間Tは、あらかじめ決められた1サイクルの処理時間Tと同じとし、1サイクルの処理時間自体は固定値として扱う。
また、このとき調整する空気量とは、硝化に必要な空気量であり、曝気時間と曝気装置の性能に基づき決めることができる。例えば、差分ΔCNH4の値が設定値Xよりも大きく、次の1サイクルにおいて硝化に係る空気量を増やす必要がある場合、曝気装置の性能は一定であるとし、次の1サイクルにおける曝気時間TN1を増加させるという制御を行う。また、曝気時間TN1の増加に伴い、T-TN1から次の1サイクルにおける撹拌時間TD1を求めることで、次の1サイクルにおける処理時間Tにおける運転配分を調整することができる。
【0041】
演算部62の演算結果に基づき、次の1サイクルの処理時間Tにおける運転配分と、次の1サイクルの処理時間Tにおいて曝気により供給される空気量の調整を実行するため、運転制御部63は、曝気装置2のブロワBの駆動時間、撹拌装置3の駆動機構33の駆動時間に係る制御信号をそれぞれの構成(曝気装置2及び撹拌装置3)に対して発信する。
これにより、被処理水W中の窒素挙動を直接把握して被処理水Wの処理状態を的確に評価した上で、被処理水W中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【0042】
演算部62で用いるデータとしては、上述したように、アンモニア性窒素濃度の値に基づくものだけに限定されるものではなく、硝酸性窒素濃度の値に基づくものをデータとして用い、同様の演算処理を行い、間欠曝気運転の制御を行うものとしてもよい。また、次の1サイクルの処理時間Tにおける運転配分の算出においては、処理時間Tと曝気時間TN1の差分により撹拌時間TD1を求めること以外に、処理時間Tと撹拌時間TD1の差分により曝気時間TN1を求めることや、曝気時間TN1と撹拌時間TD1の比率を求めることなどによるものとしてもよい。
【0043】
本実施態様においては、アンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度の値を用いた演算処理を行うことが好ましい。これにより、被処理水W中の窒素挙動をより詳細に捉えた上で、間欠曝気運転の最適化を行うことが可能となる。
【0044】
図3は、本実施態様の水処理装置10における制御部6の制御に係るフロー図を示すものであり、測定部5においてアンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度の両方を測定し、この測定した結果を情報取得部61に入力した場合のフロー図である。なお、以下、制御部6における制御に係る説明においては、1サイクルの処理時間を、全て処理時間T(T=T=T)として表記している。
【0045】
まず、1サイクルの処理時間Tにおいて、撹拌時間TD0、曝気時間TN0で処理を行う。そして、測定部5で得られたアンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度のデータを、情報取得部61を介して演算部62に入力する。ここで、アンモニア性窒素濃度の初期値CNH4-N0と処理後の値CNH4-N1の差分ΔCNH4を計算する。この差分ΔCNH4の値を、設定値X、Xと比較し、この比較による値区分を行う。この値区分は、図3に示すように、ΔCNH4<X、X≦ΔCNH4≦X、X<ΔCNH4の3つに分けられる。
【0046】
次に、硝酸性窒素濃度の初期値CNO3-N0と処理後の値CNO3-N1の差分ΔCNO3を計算する。この差分ΔCNO3の値を、設定値Y、Yと比較し、この比較による値区分を行う。この値区分は、図3に示すように、ΔCNO3<Y、Y≦ΔCNO3≦Y、Y<ΔCNO3の3つに分けられる。なお、設定値Y及びYは、1サイクル内において許容される硝酸性窒素濃度の変動分あるいは硝酸性窒素濃度の測定誤差分に相当し、Y>Yの関係が成り立つものである。また、通常、YとYは絶対値が同じで正負の関係にあるものとするが、これに限定されるものではなく、YとYの絶対値が異なるものを設定するものとしてもよい。設定値Y及びYについては、設定値X及びXと同様に過去の処理実績などを基に適宜決定することができる。
【0047】
差分ΔCNH4の値と、設定値X及びXの比較における値区分と、差分ΔCNO3の値と、設定値Y及びYの比較による値区分に基づき、次の1サイクルの処理時間Tにおける曝気時間TN1を、曝気時間TN0に対して増加あるいは減少させる調整を行う。これにより、次の1サイクルの処理時間Tにおける運転配分と、次の1サイクルの処理時間Tにおいて曝気により供給される空気量の調整が可能となる。
【0048】
図3で示すように、差分ΔCNH4に係る値区分がΔCNH4<Xの場合、差分ΔCNO3の値区分がいずれの範囲にあっても、硝化工程における処理に余力があると判断し、曝気時間TN1は曝気時間TN0よりも減少するように調整する。また、差分ΔCNH4に係る値区分がX<ΔCNH4の場合、差分ΔCNO3の値区分がいずれの範囲にあっても、硝化工程における処理が十分ではないと判断し、曝気時間TN1は曝気時間TN0よりも増加するように調整する。一方、差分ΔCNH4に係る値区分がX≦ΔCNH4≦Xの場合、差分ΔCNO3の値区分がΔCNO3<Y、Y≦ΔCNO3≦Yでは、曝気時間TN1は曝気時間TN0と同じ、つまり曝気時間TN0から変更せずに維持するが、差分ΔCNO3の値区分がY<ΔCNO3では、硝化工程よりも脱窒工程による処理を長く行う必要があると判断し、曝気時間TN1は曝気時間TN0よりも減少するように調整する。
このように、アンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度の両方を用いた演算を行うことで、被処理水W中の窒素挙動をより的確に把握して被処理水Wの処理状態を評価した上で、被処理水W中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転をより最適化することが可能となる。
【0049】
なお、上述したように、図3に基づく制御に係る説明においては、測定部5においてアンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度の両方の測定値を用いたものについて説明しているが、これに限定されない。いずれか一方の濃度を測定し、測定していない方の濃度については、計算等により推定値を得るものとしてもよい。例えば、アンモニア性窒素濃度を測定した場合、アンモニア性窒素が曝気により全量硝酸性窒素に変換されるものと仮定して硝酸性窒素濃度の推定値を求める計算を行うことや、変換に係る補正係数を乗じたものとして推定値を求める計算を行うことなどが挙げられる。
【0050】
本実施態様における制御部6による制御は、処理におけるアンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の値を用い、窒素挙動を的確に把握して被処理水Wの処理状態を評価した上で、被処理水W中の窒素制御をするものであり、1サイクル内における撹拌及び曝気の運転配分や、曝気により供給される空気量以外に、間欠曝気運転に関わる他の要素についても調整を行うことが好ましい。
【0051】
本実施態様における制御部6による他の制御としては、上述した制御内容に加え、例えば、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の処理時の値の最大値あるいは最小値に基づき、間欠曝気運転に関わる他の要素について調整を行うことが挙げられる。
【0052】
図4は、本実施態様の水処理装置10における制御部6の別の制御に係るフロー図を示すものである。
図4に示す制御は、被処理水Wの投入量を調整するものである。なお、図4において破線で囲った部分は、図3に示したフローチャートとの共通部分を示している。
【0053】
まず、1サイクルの処理時間Tにおいて、撹拌時間TD0、曝気時間TN0で処理を行う。そして、測定部5で得られたアンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度のデータとして、アンモニア性窒素濃度の処理時における最大値CNH4-Nmaxを、情報取得部61を介して演算部62に入力する。
次に、演算部62において、曝気時間TN0と、あらかじめ設定した最大曝気時間TNmax及び最小曝気時間TNminとの比較による値区分を行う。この値区分は、図4に示すように、TN0<TNmin、TNmin≦TN0≦TNmax、TNmax<TN0の3つに分けられる。
次に、アンモニア性窒素濃度の処理時における最大値CNH4-Nmaxと、あらかじめ設定した上限設定値CNH4-setとを比較し、値区分を行う。
【0054】
曝気時間TN1と、設定した最大曝気時間TNmax及び最小曝気時間TNminとの比較による値区分と、アンモニア性窒素濃度の処理時における最大値CNH4-Nmaxと、あらかじめ設定した上限設定値CNH4-setとの比較による値区分に基づき、次の1サイクルの処理時間Tにおける被処理水Wの投入量を増加あるいは減少させる調整を行う。
【0055】
図4に示すように、TN0<TNmin、TNmin≦TN0≦TNmax、TNmax<TN0のいずれの場合においても、CNH4-NmaxがCNH4-setより小(CNH4-Nmax<CNH4-set)となる場合、硝化工程における余力があると判断し、次の1サイクルの処理時間Tにおける被処理水Wの投入量を増加するように調整する。また、TN0<TNmin、TNmin≦TN0≦TNmax、TNmax<TN0のいずれの場合においても、CNH4-NmaxがCNH4-setより大(CNH4-set<CNH4-Nmax)となる場合、硝化工程における処理が追いついていないと判断し、次の1サイクルの処理時間Tにおける被処理水Wの投入量を減少するように調整する。
【0056】
ここで、TN0<TNmin及びTNmax<TN0のとき、CNH4-setとCNH4-Nmaxの値区分によって、次の1サイクルの処理時間TにおけるTNminの設定値及びTNmaxの設定値の変更を行う。これにより、硝化工程に係る曝気時間の範囲を硝化工程の実態に合わせて設定することが可能となる。
図4に示すように、TN0<TNminのとき、CNH4-NmaxがCNH4-setより小(CNH4-Nmax<CNH4-set)となる場合、TNminの値を下げるように調整する。一方、CNH4-NmaxがCNH4-setより大(CNH4-set<CNH4-Nmax)となる場合、TNminの値を上げるように調整する。同様に、TNmax<TN0のとき、CNH4-NmaxがCNH4-setより小(CNH4-Nmax<CNH4-set)となる場合、TNmaxの値を下げるように調整する。一方、CNH4-NmaxがCNH4-setより大(CNH4-set<CNH4-Nmax)となる場合、TNmaxの値を上げるように調整する。
【0057】
図4に示したフローチャートに基づき、次の1サイクルの処理時間Tにおける被処理水Wの投入量の調整を実行するため、運転制御部63は、被処理水量調整部7の駆動(開閉)に係る制御信号を発信する。これにより、ラインL1から投入する被処理水Wの量を調整することができる。
このように、アンモニア性窒素濃度の処理時の値の最大値を用いた演算を行うことで、被処理水W中の窒素挙動をより的確に把握して被処理水Wの処理状態を評価することができる。また、この評価を基に、被処理水の投入量を調整することで、被処理水中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【0058】
図5は、本実施態様の水処理装置10における制御部6の別の制御に係るフロー図を示すものである。
図5に示す制御は、水素供与体の添加量を調整するものである。なお、図5において破線で囲った部分は、図3に示したフローチャートとの共通部分を示している。
【0059】
まず、1サイクルの処理時間Tにおいて、撹拌時間TD0、曝気時間TN0で処理を行う。そして、測定部5で得られたアンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度のデータとして、硝酸性窒素濃度の処理時における最小値CN03-Nminを、情報取得部61を介して演算部62に入力する。ここで、CNO3-Nminの値がゼロとなる場合、脱窒工程による処理が過不足なく進行していると判断し、次の1サイクルの処理時間における水素供与体の添加を停止する。
【0060】
一方、CNO3-Nminの値がゼロ以外の場合、脱窒工程による処理に過不足が生じていると判断し、水素供与体の添加量に関する調整を行う。
ここで、演算部62において、硝酸性窒素濃度の処理時における最小値CNO3-Nminと、あらかじめ設定した下限設定値CNO3-setとを比較し、値区分を行う。
【0061】
硝酸性窒素濃度の処理時における最小値CNO3-Nminと、あらかじめ設定した下限設定値CNO3-setとの比較による値区分に基づき、次の1サイクルの処理時間Tにおける水素供与体の添加量を増加あるいは減少させる調整を行う。
【0062】
図5に示すように、CNO3-NminがCNO3-setより大(CNO3-Nmin>CNO3-set)となる場合、脱窒工程による処理が十分ではないと判断し、次の1サイクルの処理時間Tにおける水素供与体の添加量を増加するように調整する。また、CNO3-NminがCNO3-setより小(CNO3-set>CNO3-Nmin)となる場合、脱窒工程による処理に余力があると判断し、次の1サイクルの処理時間Tにおける水素供与体の添加量を減少するように調整する。
【0063】
図5に示したフローチャートに基づき、次の1サイクルの処理時間Tにおける水素供与体の添加量の調整を実行するため、運転制御部63は、水素供与体添加部4における調整機構43の駆動に係る制御信号を発信する。これにより、配管42を介し貯留部41から添加する水素供与体の量を調整することができる。
このように、硝酸性窒素濃度の処理時の値の最小値を用いた演算を行うことで、被処理水W中の窒素挙動をより的確に把握して被処理水Wの処理状態を評価することができる。また、この評価を基に、水素供与体の添加量を調整することで、被処理水中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【0064】
なお、上述したように、図4及び図5に基づく制御に係る説明においては、アンモニア性窒素濃度の処理時における最大値あるいは硝酸性窒素濃度の処理時における最小値を用いたものについて説明しているが、これに限定されない。それぞれの制御において用いられるデータは、1サイクル内における撹拌及び曝気の順番や、アンモニア性窒素濃度と硝酸性窒素濃度の関係性(処理による変換)等に応じて選択することができる。
例えば、アンモニア性窒素濃度の処理時における最小値に基づき、被処理水Wの投入量を調整するものとしてもよく、硝酸性窒素濃度の処理時における最大値又は最小値に基づき、被処理水Wの投入量を調整するものとしてもよい。また、アンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度の両方に係るデータを考慮した演算を行い、被処理水Wの投入量を調整するものとしてもよい。
また、同様に、硝酸性窒素濃度の処理時における最大値に基づき、水素供与体の添加量を調整するものとしてもよく、アンモニア性窒素濃度の処理時における最大値又は最小値に基づき、水素供与体の添加量を調整するものとしてもよい。また、アンモニア性窒素濃度及び硝酸性窒素濃度の両方に係るデータを考慮した演算を行い、水素供与体の添加量を調整するものとしてもよい。
【0065】
以上のように、本実施態様の水処理装置10は、制御部を設け、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の初期値と処理後の値を比較することで、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価することができる。また、この比較結果を基に、次の1サイクルの処理時間における撹拌と曝気の運転配分と、次の1サイクルの処理時間における曝気により供給される空気量とを調整することで、被処理水中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【0066】
また、本実施態様の水処理装置10は、制御部において、アンモニア性窒素濃度及び/又は硝酸性窒素濃度の処理時の値の最大値あるいは最小値を用いることで、被処理水中の窒素挙動を直接把握して被処理水の処理状態を的確に評価するとともに、この値を基に、被処理水の投入量や水素供与体の添加量を調整することで、被処理水中の窒素制御を細かく行うことができ、間欠曝気運転を最適化することが可能となる。
【0067】
なお、上述した実施態様は水処理装置及び水処理方法の一例を示すものである。本発明に係る水処理装置及び水処理方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る水処理装置及び水処理方法を変形してもよい。
【0068】
本実施態様の水処理装置は、撹拌及び曝気を繰り返す間欠曝気運転を行うものであればよく、1槽(単槽)で処理を行うものに限定されるものではない。例えば、複数の槽に対して本実施態様における制御に基づく間欠曝気運転を行うものとしてもよい。これにより、所定時間内で処理可能な被処理水の量を増加させることができ、処理効率を高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の水処理装置及び水処理方法は、窒素成分を含む被処理水の水処理に好適に用いられる。特に、被処理水中の窒素成分を間欠曝気運転により除去する硝化脱窒処理において好適に用いられる。
【符号の説明】
【0070】
10 水処理装置、1 処理槽、2 曝気装置、21 散気体、3 撹拌装置、31 撹拌羽根、32 撹拌軸、33 駆動機構、4 水素供与体添加部、41 貯留部、42 配管、43 調整機構、5 測定部、6 制御部、61 情報取得部、62 演算部、63 運転制御部、7 被処理水量調整部、B ブロワ、L1~L3 ライン、W 被処理水、W1 処理水
図1
図2
図3
図4
図5