(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】水平ドレーン材の布設方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
E02D3/10 103
(21)【出願番号】P 2020057248
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390001993
【氏名又は名称】みらい建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502080047
【氏名又は名称】キャドテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109233
【氏名又は名称】チカミミルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田口 博文
(72)【発明者】
【氏名】田中 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岡部 有利子
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊治
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 浩延
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-148393(JP,A)
【文献】特開昭50-085109(JP,A)
【文献】特許第5510866(JP,B2)
【文献】特開平02-300416(JP,A)
【文献】特開平04-336110(JP,A)
【文献】米国特許第4244664(US,A)
【文献】特開2018-080541(JP,A)
【文献】特開2012-102584(JP,A)
【文献】特開2010-236354(JP,A)
【文献】特公平07-068694(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良対象の軟弱地盤領域を挟んで配置された2台の巻上装置間に主索と副索を架空し、
水平ドレーン材がロール状に巻かれた複数のドレーン材ユニットから導出された複数本の水平ドレーン材の先端を上記主索に懸垂させた搬器に固定し、
上記複数のドレーン材ユニットから引き出される上記複数本の水平ドレーン材の所定長さ毎に上記複数本の水平ドレーン材間を所定間隔に保持する剛性を有した間隔保持材を取り付け、
上記搬器を上記副索によって駆動することにより上記主索に沿って移動させて、上記ドレーン材ユニットから上記複数本の水平ドレーン材を少なくとも先端側を空中に位置させた状態で上記軟弱地盤領域の対岸間に亘って引き出して上記軟弱地盤領域に布設する
ことを特徴とする軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法。
【請求項2】
上記複数のドレーン材ユニットから引き出された上記複数本の水平ドレーン材間を所定長さ毎にバイパス用水平ドレーン材により連結することを特徴とする請求項1に記載の軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法。
【請求項3】
上記複数本の水平ドレーン材の布設を完了したら、次の複数本の水平ドレーン材の布設位置に上記2台の巻上装置を移動させて、次の複数本の水平ドレーン材を布設する作業を繰り返すことにより、上記軟弱地盤領域の全体に水平ドレーン材を布設することを特徴とする請求項1又は2に記載の軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、軟弱地盤の改良工法として、ドレーン材を軟弱地盤中に水平方向に埋設し、そのドレーン材の一端から地盤中に負圧をかけ、ドレーン材を通して強制的に排水するようにした水平ドレーン工法が知られている。
【0003】
水平ドレーン材を軟弱地盤に一定の間隔で布設することは、足場さえ確保できれば容易にできるのであるが、浚渫した軟弱土を処分場に投入するような作業条件では、足場が確保されず、全く別な方法を採用せざるを得ず、例えば、泥上でも移動可能な泥上作業車を使用したり、水を張って作業船を使用することになるが、施工性が悪く、品質も不満足で、しかも、費用が高額になるという問題があった。
【0004】
従来の水平ドレーン材の埋設は、埋設専用の台船より地盤内の所定深さ位置までマンドレルを貫入し、その状態で台船を牽引して移動させ、その移動に合わせてドレーン材をマンドレルから繰り出すことにより布設する方法が一般的であったが、埋設専用の台船を作成する費用が高額になることから、ドレーン材を予め必要な布設間隔となるよう、紐状材(ドレーン材間連結具)にて連結して網状体としておき、これを巻き取った巻体を軟弱地盤上に搬入し、これを展開することによって布設する水平ドレーン材の布設方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2884025号公報
【文献】特許第5510866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2により提案されている従来の水平ドレーン材の布設方法では、施工現場における作業を少なくし、経済的に水平ドレーン材の水平布設が可能なのであるが、布設間隔を保持するように連結された複数本の水平ドレーン材を巻き取った巻体から水平ドレーン材を引き出して対岸側に引き寄せることにより水平ドレーン材を軟弱地盤上に展開する際に、ドレーン材先端の搬器が軟弱地盤の抵抗を受けて地盤中に潜り込む等して、搬器の損傷や引き寄せ困難になる虞がある。すなわち、ドレーン材先端の搬器は、棒状のものであっても構造上は剛性が必要で相当の寸法・重量となるため、引き寄せる際に軟弱地盤の抵抗を受けてしまう。軟弱地盤の抵抗を避けるためにフロート構造を採用する方法もあるが、これは構造が大きくなってしまい、引き寄せた後の地盤を乱してしまうという問題がある。また、水平ドレーン材を引き寄せる作業は隣のレーンに移動する毎に繰り返し行うが、引き寄せ作業に用いるロープや紐などの牽引用部材を軟弱地盤上で所定の位置に移動させることは難しい作業である。
【0007】
従来の水平ドレーン材の布設方法では、水平ドレーン材を引き寄せる過程において、紐状材と軟弱地盤との接触による紐状材の屈曲により、水平ドレーン材同士が接近して布設間隔を保持できない。
【0008】
また、従来の水平ドレーン材の布設方法では、水平ドレーン材を引き寄せる過程において、軟弱地盤の表面の状況は均一でないので、水平ドレーン材が蛇行してしまう虞があるが、引き寄せるだけで制御することはできない。
【0009】
そこで、本発明の課題は、上述の如き従来の技術の実状に鑑み、水平ドレーン材を軟弱地盤上に展開する際に、軟弱地盤の凹凸によりドレーン材先端の搬器が軟弱地盤の抵抗を受けることなく、水平ドレーン材を軟弱地盤領域の対岸間に亘って引き出して確実に布設することができる軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の課題は、所定の布設間隔を保持した状態で確実に水平ドレーン材を布設することができる軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の課題は、水平ドレーン材が蛇行することなく、水平ドレーン材を所定の位置に確実に布設することができる軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の課題、本発明によって得られる具体的な利点は、以下において図面を参照して説明される実施に形態から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、地盤改良対象の軟弱地盤領域を挟んで主索と副索を架空し、軟弱地盤領域を挟んだ対岸間に、主索に懸垂させた搬器を副索により駆動する索道を構築する。そして、索道に沿って移動される搬器により、水平ドレーン材がロール状に巻かれた複数のドレーン材ユニットから上記複数本の水平ドレーン材を少なくとも先端側を空中に位置させた状態で上記軟弱地盤領域の対岸間に亘って引き出して上記軟弱地盤領域に布設する。
【0014】
すなわち、本発明は、軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法であって、地盤改良対象の軟弱地盤領域を挟んで配置された2台の巻上装置間に主索と副索を架空し、水平ドレーン材がロール状に巻かれた複数のドレーン材ユニットから導出された複数本の水平ドレーン材の先端を上記主索に懸垂させた搬器に固定し、上記複数のドレーン材ユニットから引き出される上記複数本の水平ドレーン材の所定長さ毎に上記複数本の水平ドレーン材間を所定間隔に保持する剛性を有した間隔保持材を取り付け、上記搬器を上記副索によって駆動することにより上記主索に沿って移動させて、上記ドレーン材ユニットから上記複数本の水平ドレーン材を少なくとも先端側を空中に位置させた状態で上記軟弱地盤領域の対岸間に亘って引き出して上記軟弱地盤領域に布設することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法は、上記複数のドレーン材ユニットから引き出された上記複数本の水平ドレーン材間を所定長さ毎にバイパス用水平ドレーン材により連結することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法は、上記複数本の水平ドレーン材の布設を完了したら、次の複数本の水平ドレーン材の布設位置に上記2台の巻上装置を移動させて、次の複数本の水平ドレーン材を布設する作業を繰り返すことにより、上記軟弱地盤領域の全体に水平ドレーン材を布設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、地盤改良対象の軟弱地盤領域を挟んで配置された2台の巻上装置間に主索と副索を架空し、軟弱地盤領域を挟んだ対岸間に、主索に懸垂させた搬器を副索により駆動する索道を構築する。そして、索道に沿って移動される搬器により、水平ドレーン材がロール状に巻かれた複数のドレーン材ユニットから複数本の水平ドレーン材を少なくとも先端側を空中に位置させた状態で上記軟弱地盤領域の対岸間に亘って引き出して布設するので、ドレーン材先端の搬器が軟弱地盤の抵抗を受けることなく、水平ドレーン材を軟弱地盤領域の対岸間に亘って引き出して確実に布設することができる。
【0018】
本発明において、上記搬器によりドレーン材ユニットから引き出される複数本の水平ドレーン材は、所定長さ毎に間隔保持材を取り付けることにより、上記複数本の水平ドレーン材間を所定間隔に保持した状態で軟弱地盤領域を挟んだ対岸間に亘って展開させることができる。間隔保持材は、伸縮することなく水平ドレーン材間を所定間隔に保持する剛性を有した部材である。例えば、真竹は、間隔保持材に使用すると、軽くて滑りやすく弾力に富むので、軟弱地盤上で引っ掛かる虞が少ない。
【0019】
また、本発明では、地盤改良対象の軟弱地盤領域を挟んで配置された2台の巻上装置間に主索と副索を架空し、軟弱地盤領域を挟んだ対岸間に、主索に懸垂させた搬器を副索により駆動する索道を構築する。そして、索道に沿って移動される搬器により水平ドレーン材を引き出して、上記軟弱地盤領域の対岸間に亘って布設するので、水平ドレーン材が蛇行することなく、水平ドレーン材を所定の位置に確実に布設することができる。
【0020】
また、ドレーン材ユニットから引き出される複数本の水平ドレーン材の所定長さ毎に取り付けられる間隔保持材を主索に懸垂させた複数の搬器に取り付けて、水平ドレーン材全体を軟弱地盤領域から浮かせた状態で搬送するようにすれば、軟弱地盤領域に接触することによる水平ドレーン材の布設の課題を確実に解消することができる。
【0021】
さらに、上記複数のドレーン材ユニットから引き出された上記複数本の水平ドレーン材間を所定長さ毎にバイパス用水平ドレーン材で連結することにより、仮に水平ドレーン材の一部に損傷が発生したとしてもバイパス用水平ドレーン材によりバイパス路を確保される。
【0022】
そして、本発明では、上記複数本の水平ドレーン材の布設を完了したら、次の複数本の水平ドレーン材の布設位置に上記2台の巻上装置を移動させて、次の複数本の水平ドレーン材を布設する作業を繰り返すことにより、上記軟弱地盤領域の全体に水平ドレーン材を効率よく迅速に布設することができる。
【0023】
したがって、本発明によれば、水平ドレーン材を軟弱地盤上の所定の位置と間隔に確実に布設する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法の一実施形態における水平ドレーン材の布設過程を示す模式図であって、(A)は地盤改良対象の軟弱地盤領域を挟んだ対岸に巻上装置としてクローラクレーンを配置して、対岸間に索道を構築した状態を示し、(B)は索道に沿って移動される搬器によりドレーン材ユニットから複数本の水平ドレーン材を引き出した状態を示し、(C)は複数本の水平ドレーン材を軟弱地盤領域の対岸間に亘って展開した状態を示し、(D)は展開した複数本の水平ドレーン材を軟弱地盤領域上に布設した状態を示している。
【
図2】ドレーン材ユニットから引き出した複数本の水平ドレーン材の状態を示す模式的な平面図である。
【
図3】クローラクレーンを移動して次の布設位置に配置して、水平ドレーン材を布設する過程を示す模式図であって、(A)は次の布設位置にクローラクレーンを移動して、対岸間に索道を構築した状態を示し、(B)は索道に沿って移動される搬器によりドレーン材ユニットから複数本の水平ドレーン材を引き出した状態を示し、(C)は複数本の水平ドレーン材を軟弱地盤領域の対岸間に亘って展開した状態を示し、(D)は展開した複数本の水平ドレーン材を軟弱地盤領域上に布設した状態を示している。
【
図4】クローラクレーンを移動して軟弱地盤領域上に水平ドレーン材を布設する布設作業を繰り返し行い、全領域に水平ドレーン材を布設する布設作業途中における水平ドレーン材の布設状態を示す模式的な平面図である。
【
図5】本発明に係る軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法の他の一実施形態における水平ドレーン材の布設過程を示す模式図であって、(A)は地盤改良対象の軟弱地盤領域を挟んだ対岸に巻上装置としてクローラクレーンを配置して、対岸間に索道を構築した状態を示し、(B)は索道に沿って移動される搬器によりドレーン材ユニットから複数本の水平ドレーン材を引き出した状態を示し、(C)は複数本の水平ドレーン材を軟弱地盤領域の対岸間に亘って展開した状態を示し、(D)は展開した複数本の水平ドレーン材を軟弱地盤領域上に布設した状態を示している。
【
図6】本発明に係る軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法のさらに他の一実施形態における水平ドレーン材の布設過程を示す模式図であって、(A)は地盤改良対象の軟弱地盤領域を挟んだ対岸に巻上装置としてクローラクレーンを配置して、対岸間に索道を構築した状態を示し、(B)は索道に沿って移動される搬器によりドレーン材ユニットから複数本の水平ドレーン材を引き出した状態を示し、(C)は複数本の水平ドレーン材を軟弱地盤領域の対岸間に亘って複数の搬器により搬送して展開した状態を示し、(D)は展開した複数本の水平ドレーン材を軟弱地盤領域上に布設した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法の実施の形態を図面を参照にして詳細に説明をする。
【0026】
本発明は、例えば、
図1に示すように、浚渫した軟弱土を投入した処分地における軟弱地盤の改良作業に適用され、その処分地1内の軟弱地盤領域2が所定の厚さになった時に、軟弱地盤領域2上に水平ドレーン材21を布設する軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法である。
【0027】
図1は、本発明に係る軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法の一実施形態における水平ドレーン材21の布設過程を示す模式図であって、(A)は地盤改良対象の軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1Bにクローラクレーン10A、10Bを2台の巻上装置として配置して、対岸1A、1B間に索道13を構築した状態を示し、(B)は索道13に沿って移動される搬器14により複数のドレーン材ユニット20から複数本の水平ドレーン材21を引き出した状態を示し、(C)は複数本の水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2の対岸1A、1B間に亘って展開した状態を示し、(D)は展開した複数本の水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2上に布設した状態を示している。
【0028】
すなわち、本発明に係る軟弱地盤での水平ドレーン材の布設方法の実施形態では、
図1の(A)に示すように、地盤改良対象の軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1Bにクローラクレーン10A、10Bを2台の巻上装置として配置して、軟弱地盤領域2を挟んで主索11と副索12を架空する。そして、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に、主索11に懸垂させた搬器14を副索12により駆動する索道13を構築する。上記索道13に沿って移動される搬器14には、ドレーン材ユニット20から引き出された複数本の水平ドレーン材21の先端が取り付けられている。
【0029】
索道13は、向かい合った対岸1A、1Bの一方から他方にケーブルを渡して構築する。
【0030】
処分地1は幅が100m程で、対岸1A、1Bに2台の巻上装置として配置されるクローラクレーン10A、10Bは堤防盛土上で走行できる必要がある。なお、対岸1A、1Bに配置される2台の巻上装置は、堤防盛土上でドレーン材ユニット20の布設作業位置に移動できるものであれば、クローラクレーンである必要はない。
【0031】
そして、
図1の(B)に示すように、索道13に沿って矢印A方向に移動される搬器14により、水平ドレーン材21がロール状に巻かれた複数のドレーン材ユニット20から複数本の水平ドレーン材21を引き出し、
図1の(C)に示すように、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開した後に、
図1の(D)に示すように、展開した複数本の水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2上に布設する。
【0032】
ここで、ドレーン材ユニット20はテンションをかけ過ぎると水平ドレーン材としての機能が損なわれてしまうので、テンションにより水平ドレーン材としての機能が損なわれることのない範囲の引張強度で上記複数のドレーン材ユニット20から上記複数本の水平ドレーン材21が引き出されて軟弱地盤領域2上に布設される。
【0033】
ドレーン材ユニット20から引き出される複数本の水平ドレーン材21は、自重により懸垂曲線を描いて対岸まで引き出されることになるが、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間の距離が長い場合など、複数本の水平ドレーン材21の先端側が固定された搬器14が通過する軟弱地盤領域2の上面からの高さを十分に確保することができない場合には、中途部分が軟弱地盤領域2に接触する状態になる。しかし、先端側が搬器14に固定された複数本の水平ドレーン材21の先端側が軟弱地盤領域2から浮かせた状態で引き寄せられるので、水平ドレーン材21先端の搬器14が軟弱地盤の抵抗を受けることなく、水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2の対岸1A、1B間に亘って引き出して確実に布設することができる。
【0034】
複数本の水平ドレーン材21が布設される幅は好ましくは10m以内である。
【0035】
ここで、本実施形態において、搬器14は、主索11が挿通され副索12に固定された円環状部材からなり、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に構築した索道13に沿って対岸1A、1B間を往復移動することができる。
【0036】
図2は、複数のドレーン材ユニット20から引き出した複数本の水平ドレーン材21の状態を示す模式的な平面図である。
【0037】
本実施形態において、複数のドレーン材ユニット20から矢印A方向に引き出された複数本の水平ドレーン材21は、
図2に示すように、搬器14に取り付けられたロープ15に両端が繋がれた例えば竹材を使用した間隔保持材22に繋がれて、ドレーン材ユニット20から所定長さ引き出される毎に一定間隔で間隔保持材22に繋がれることにより、ドレーン材同士の間隔を一定に維持する。また、複数本の水平ドレーン材21は、排水機能が独立しているが、損傷対策のために、ドレーン材ユニット20から所定長さ引き出される毎に、バイパス用の水平ドレーン材21Aが水平ドレーン材21に重ねられて重畳部分がステープラにて締結されることにより、バイパス用の水平ドレーン材21Aで連結される。
【0038】
間隔保持材22としては、例えば長さ10m(末口3cm)程度の真竹を使用する。真竹は、軽くて滑りやすく弾力に富むので、軟弱地盤上で引っ掛かる虞が少ない。
【0039】
複数の水平ドレーン材21同士を連結しバイパスとなる水平ドレーン材21Aの間隔も例えば10m程度とする。
【0040】
すなわち、ここでは、対岸1Aのクローラクレーン10A側から対岸1Bのクローラクレーン10Bに向かって、上記搬器14によりドレーン材ユニット20から先端側が軟弱地盤領域2から浮かせた状態で複数本の水平ドレーン材21が引き出され、所定長さ毎に上記複数本の水平ドレーン材21間を所定間隔に保持する間隔保持材22を取り付けることにより、上記複数本の水平ドレーン材21間を所定間隔に保持した状態で軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開される。
【0041】
そして、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開された上記複数本の水平ドレーン材21は、先端側が搬器14から取り外されて、軟弱地盤領域2上に布設された状態とされる。
【0042】
すなわち、本実施形態では、ドレーン材ユニット20から引き出された複数本の水平ドレーン材21は、中途部分が軟弱地盤領域2上を引き摺られることになるが、上記搬器14によりドレーン材ユニット20から先端側が軟弱地盤領域2から浮かせた状態で対岸1B側に引き寄せられ、間隔保持材22により所定間隔を保持した状態で軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開されて、所定の布設間隔を保持した状態で確実に布設される。
【0043】
本実施形態の布設方法において、上記ドレーン材ユニット20から引き出された上記複数本の水平ドレーン材21の終端は、次のドレーン材ユニット20から導出された複数本の水平ドレーン材21の先端に連結され、複数のドレーン材ユニット20から引き出されて連結された一連の複数本の水平ドレーン材21を上記軟弱地盤領域2の全長に亘って布設する。
【0044】
上記複数本の水平ドレーン材21の布設作業を完了したら、2台の巻上装置すなわちクローラクレーン10A、10Bを移動させて、次の布設位置において布設作業を行う。
【0045】
図3は、2台の巻上装置としてクローラクレーン10A、10Bを移動して次の布設位置に配置して、水平ドレーン材21を布設する過程を示す模式図であって、(A)は次の布設位置にクローラクレーン10A、10Bを移動して、対岸1A、1B間に索道13を構築した状態を示し、(B)は索道13に沿って移動される搬器14によりドレーン材ユニット20から複数本の水平ドレーン材21を引き出した状態を示し、(C)は複数本の水平ドレーン材21を対岸1A、1B間に亘って展開した状態を示し、(D)は展開した複数本の水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2上に布設した状態を示している。
【0046】
すなわち、
図3の(A)に示すように、地盤改良対象の軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1Bにおいてクローラクレーン10A、10Bを次の布設位置に配置して、軟弱地盤領域2を挟んで主索11と副索12を架空する。そして、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に、主索11に懸垂させた搬器14を副索12により駆動する索道13を構築する。
【0047】
次の布設位置における布設作業では、
図3の(B)に示すように、対岸1Bのクローラクレーン10B側から対岸1Aのクローラクレーン10Aに向かって、上記搬器14によりドレーン材ユニット20から複数本の水平ドレーン材21が先端側を軟弱地盤領域2から浮かせた状態で矢印B方向に引き出され、所定長さ毎に上記複数本の水平ドレーン材21間を所定間隔に保持する間隔保持材22を取り付けることにより、
図3の(C)に示すように、上記複数本の水平ドレーン材21間を所定間隔に保持した状態で軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開される。
【0048】
そして、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開された上記複数本の水平ドレーン材21は、
図3の(D)に示すように、軟弱地盤領域2上に布設される。
【0049】
本実施形態では、
図4に示すように、対岸1A、1Bに配置した2台の巻上装置すなわちクローラクレーン10A、10Bを順次の布設位置に移動させて、クローラクレーン10Aとクローラクレーン10Bとの間で上記搬器14によりドレーン材ユニット20から複数本の水平ドレーン材21をその先端側を軟弱地盤領域2から浮かせた状態で矢印A方向と矢印B方向に交互に引き出して、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開し、軟弱地盤領域2上に布設する布設作業を繰り返し行う。
【0050】
すなわち、本実施形態では、地盤改良対象の軟弱地盤領域2を挟んで主索11と副索12を架空し、水平ドレーン材21がロール状に巻かれた複数のドレーン材ユニット20から導出された上記複数本の水平ドレーン材21の先端を上記主索11に懸垂させた搬器14に固定し、上記複数のドレーン材ユニット20から引き出される上記複数本の水平ドレーン材21の所定長さ毎に上記複数本の水平ドレーン材21間を所定間隔に保持する間隔保持材22を取り付け、上記搬器14を上記副索12によって駆動する。そして、上記複数のドレーン材ユニット20から上記複数本の水平ドレーン材21をその先端側を軟弱地盤領域2から浮かせた状態で引き出して上記軟弱地盤領域2に布設する。
【0051】
このようにして、上記複数本の水平ドレーン材21間を所定間隔に保持した状態で、先端側を軟弱地盤領域2から浮かせた状態で軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開させることができ、地盤の影響を受けることなく単純な作業手順で効率よく迅速に水平ドレーン材21を布設することができ、所定の布設間隔を保持した状態で確実に水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2上に布設することができる。
【0052】
ここで、ドレーン材ユニット20から引き出される複数本の水平ドレーン材21は、自重により懸垂曲線を描いて対岸まで引き出されることになるが、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間の距離が短い場合など、複数本の水平ドレーン材21の先端側が固定された搬器14が通過する軟弱地盤領域2の上面からの高さを十分に確保することができる場合には、
図5に示すように、軟弱地盤領域2に接触させることなく対岸1A、1B間に亘って展開して軟弱地盤領域2上に布設することができ、水平ドレーン材21が蛇行することなく、水平ドレーン材21を索道13に沿って所定の位置に確実に布設することができる。
【0053】
すなわち、
図5の(A)に示すように、地盤改良対象の軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1Bにクローラクレーン10A、10Bを2台の巻上装置として配置して、軟弱地盤領域2を挟んで主索11と副索12を架空し、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に、主索11に懸垂させた搬器14を副索12により駆動する索道13を構築する。そして、
図5の(B)に示すように、索道13に沿って移動される搬器14により、水平ドレーン材21がロール状に巻かれた複数のドレーン材ユニット20から複数本の水平ドレーン材21を矢印A方向に引き出し、
図5の(C)に示すように、複数本の水平ドレーン材21全体を空中に浮かせた状態で軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開する。このようにして
図5の(D)に示すように、展開した複数本の水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2上の所定の位置に確実に布設することができる。
【0054】
なお、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間の距離が長い場合には、複数のドレーン材ユニット20から複数本の水平ドレーン材21を引き出して、複数本の水平ドレーン材21全体を空中に浮かせた状態で軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開しようとすると、水平ドレーン材21に自重によるテンションが加えられることにより破損されてしまう。そのため例えば
図6の(A)に示すように、地盤改良対象の軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1Bにクローラクレーン10A、10Bを2台の巻上装置として配置して、軟弱地盤領域2を挟んで主索11と副索12を架空し、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に、主索11に懸垂させた搬器14を副索12により駆動する索道13を構築する。そして、
図6の(B)に示すように、索道13に沿って移動される搬器14により、水平ドレーン材21がロール状に巻かれた複数のドレーン材ユニット20から複数本の水平ドレーン材21を引き出し、
図6の(C)に示すように、索道13に沿って矢印A方向に移動される複数個の搬器14、14A、14B、14Cにより、複数本の水平ドレーン材21全体を空中に浮かせた状態で軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開する。このようにして、
図6の(D)に示すように、展開した複数本の水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2上の所定の位置に確実に布設することができる。ここで、上記搬器14A、14B、14Cは、例えばS字フック等の簡易係止具が用いられ、水平ドレーン材21を軟弱地盤領域2上に布設した後に、人力作業などにより、間隔保持材22から取り外される。
【0055】
すなわち、ドレーン材ユニット20から引き出される複数本の水平ドレーン材21は、水平ドレーン材21の自重によるテンションで破損されてしまうことのない所定の間隔毎に主索11に懸垂させた複数個の搬器14、14A、14B、14Cにより、全体を空中に浮かせた状態で搬送されて、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開され、蛇行することなく軟弱地盤領域2上の所定の位置に確実に布設される。
【0056】
このように、ドレーン材ユニット20から引き出される複数本の水平ドレーン材21は、全体を軟弱地盤領域2から浮かせた状態で、軟弱地盤領域2を挟んだ対岸1A、1B間に亘って展開することにより、軟弱地盤領域2上の所定の位置に確実に布設することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 処分地、
1A、1B 対岸、
2 軟弱地盤領域、
10A、10B クローラクレーン(2台の巻上装置)、
11 主索、
12 副索、
13 索道、
14、14A、14B、14C 搬器、
15 ロープ、
20 ドレーン材ユニット、
21、21A 水平ドレーン材、
22 間隔保持材