IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチコン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図1
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図2
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図3
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図4
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図5
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図6
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図7
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図8
  • 特許-電動車を充電する際に使用される中継器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】電動車を充電する際に使用される中継器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231222BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20231222BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231222BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20231222BHJP
   B60L 53/16 20190101ALI20231222BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
H02J13/00 B
H02J13/00 301A
B60L50/60
B60L53/66
B60L53/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020092405
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021191059
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大隈 重男
(72)【発明者】
【氏名】青木 覚志
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-096648(JP,A)
【文献】特開2014-140279(JP,A)
【文献】特開2014-124033(JP,A)
【文献】特開2014-073056(JP,A)
【文献】特開2018-007471(JP,A)
【文献】特開2014-147137(JP,A)
【文献】特開2020-057246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 13/00
B60L 50/60
B60L 53/66
B60L 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1充電規格に準拠した充電装置で前記第1充電規格とは異なる第2充電規格に準拠した電動車のバッテリを充電する際に、前記充電装置の充電コネクタと前記電動車の充電インレットとの間に接続して使用される中継器であって、
前記充電コネクタに接続される中継用インレットと、
前記充電インレットに接続される中継用コネクタと、
前記中継用インレットを介して受信した前記第1充電規格に準拠した信号を前記第2充電規格に準拠した信号に変換して前記中継用コネクタから送信すること、および前記中継用コネクタを介して受信した前記第2充電規格に準拠した信号を前記第1充電規格に準拠した信号に変換して前記中継用インレットから送信することが可能な信号変換部を有する制御部と、
を備え、
前記制御部は、充電終了プロセス中に、前記充電装置との通信および前記電動車との通信に関する異常を検知する異常検知部と、前記異常の発生により中断した前記充電終了プロセスを続行させるための模擬信号を生成するとともに当該模擬信号を前記中継用コネクタまたは前記中継用インレットから送信する模擬信号生成部とをさらに有する
ことを特徴とする中継器。
【請求項2】
ユーザに対して視覚的または聴覚的な通知を行う通知部と、
前記ユーザの操作を受け付ける入力部と、
をさらに備え、
前記異常検知部は、前記異常を検知すると前記通知部を作動させて前記異常を検知したことを前記ユーザに通知し、
前記模擬信号生成部は、前記通知の後に前記入力部が前記ユーザの操作を受け付けると前記模擬信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の中継器。
【請求項3】
前記制御部に電力を供給する補助電源部をさらに備え、
前記制御部は、前記異常検知部が前記異常を検知すると、前記補助電源部を作動させる補助電源起動部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中継器。
【請求項4】
前記異常検知部は、前記中継用インレットから前記信号変換部が信号を送信した後、所定期間内に当該送信に対するリアクションとしての信号を前記信号変換部が前記中継用インレットを介して受信しなかった場合に、前記充電装置との通信に異常が発生したと判定する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の中継器。
【請求項5】
前記異常検知部は、前記中継用コネクタから前記信号変換部が信号を送信した後、所定期間内に当該送信に対するリアクションとしての信号を前記信号変換部が前記中継用コネクタを介して受信しなかった場合に、前記電動車との通信に異常が発生したと判定する
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の中継器。
【請求項6】
前記第1充電規格がCHAdeMO規格であり、前記第2充電規格がCombo規格である
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の中継器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1充電規格に準拠した充電装置で第1充電規格とは異なる第2充電規格に準拠した電動車のバッテリを充電する際に使用される中継器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッドカー(PHV)等の電動車の普及に伴い、これらに搭載されたバッテリの充電を比較的短時間で行うことができる充電スタンドの設置が各地で進められている。電動車の充電には幾つかの規格が存在するところ、日本では、CHAdeMO(登録商標)規格に準拠した電動車が主流であるため、CHAdeMO規格に準拠した充電スタンドの設置が進められている。一方、例えば欧州では、CHAdeMO規格とは互換性がないCombo規格に準拠した電動車および充電スタンドも利用されている。
【0003】
このような状況に鑑みて、特許文献1では、CHAdeMO規格に準拠した充電スタンドでCombo規格に準拠した電動車を充電する際に、両者の間に接続して使用される中継器(アダプタ)が提案されている。この中継器は、充電スタンドからCAN通信により送信されてきた信号を変換してPLC通信により電動車に送信する機能と、電動車からPLC通信により送信されてきた信号を変換してCAN通信により充電スタンドに送信する機能とを有している。この中継器によれば、互換性のない複数の充電規格が存在することによる不便を幾分解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5942837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、充電スタンドは非常に高出力なので、充電中に充電スタンドの充電コネクタが電動車の充電インレットから取り外されると、感電等の重大な事故が発生するおそれがある。このため、充電スタンドの充電コネクタには、電動車の充電インレットからの取り外しを不能とするコネクタロック機構を設けなければならない。同様の理由から、充電コネクタと充電インレットとの間に中継器を接続する場合は、充電コネクタ-中継器間の着脱に関わるコネクタロック機構と、中継器-充電インレット間の着脱に関わるコネクタロック機構とが必須である。これらのロックは、充電が終了したときに解除される。
【0006】
しかしながら、上記従来の中継器では、充電終了プロセス中にCAN通信またはPLC通信に異常が発生すると、充電終了プロセスが中途半端なところで中断してしまい、コネクタロック機構が作動し続けたままとなることがあった。この場合、電動車のユーザは、電動車から中継器を取り外すために、特別なスキルまたは資格を持った者にコネクタロックの解除を依頼しなければならない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、充電終了プロセス中に通信異常が発生しても、コネクタロック機構が作動したままとならない中継器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る中継器は、第1充電規格に準拠した充電装置で第1充電規格とは異なる第2充電規格に準拠した電動車のバッテリを充電する際に、充電装置の充電コネクタと電動車の充電インレットとの間に接続して使用されるものであって、充電コネクタに接続される中継用インレットと、充電インレットに接続される中継用コネクタと、中継用インレットを介して受信した第1充電規格に準拠した信号を第2充電規格に準拠した信号に変換して中継用コネクタから送信すること、および中継用コネクタを介して受信した第2充電規格に準拠した信号を第1充電規格に準拠した信号に変換して中継用インレットから送信することが可能な信号変換部を有する制御部と、を備え、制御部は、充電終了プロセス中に、充電装置との通信および電動車との通信に関する異常を検知する異常検知部と、異常の発生により中断した充電終了プロセスを続行させるための模擬信号を生成するとともに当該模擬信号を中継用コネクタまたは中継用インレットから送信する模擬信号生成部とをさらに有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、通信異常により充電終了プロセスが中断しても、模擬信号生成部が模擬信号を生成および送信することにより充電終了プロセスが続行されるので、コネクタロック機構が作動したままとなることはない。
【0010】
上記中継器は、ユーザに対して視覚的または聴覚的な通知を行う通知部と、ユーザの操作を受け付ける入力部とをさらに備え、異常検知部は、異常を検知すると通知部を作動させてその旨をユーザに通知し、模擬信号生成部は、通知の後に入力部がユーザの操作を受け付けると模擬信号を生成する、との構成を有していてもよい。
【0011】
この構成によれば、中断した充電終了プロセスを続行させるか否かをユーザが選択することができる。
【0012】
上記中継器は、制御部に電力を供給する補助電源部をさらに備え、制御部は、異常検知部が異常を検知すると補助電源部を作動させる補助電源起動部をさらに有する、との構成を有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、充電装置からの補助電力の供給が途絶えたとしても、補助電源部からの電力によって制御部を引き続き作動させ、充電終了プロセスを完了させることができる。
【0014】
ここで、上記中継器の異常検知部は、中継用インレットから信号変換部が信号を送信した後、所定期間内に当該送信に対するリアクションとしての信号を信号変換部が中継用インレットを介して受信しなかった場合に、充電装置との通信に異常が発生したと判定してもよい。
【0015】
また、上記中継器の異常検知部は、中継用コネクタから信号変換部が信号を送信した後、所定期間内に当該送信に対するリアクションとしての信号を信号変換部が中継用コネクタを介して受信しなかった場合に、電動車との通信に異常が発生したと判定してもよい。
【0016】
あるいは、上記中継器の異常検知部は、中継用インレットおよび中継用コネクタに接続された充電電力供給線の電圧に基づいて電動車との通信に異常が発生したか否かを判定してもよい。
【0017】
なお、第1充電規格の一例はCHAdeMO規格であり、第2充電規格の一例はCombo規格である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、充電終了プロセス中に通信異常が発生しても、コネクタロック機構が作動したままとならない中継器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施例に係る中継器およびその周辺の概略的な構成を示すブロック図である。
図2】第1実施例に係る中継器の制御部の動作を示すフロー図である。
図3】第1実施例における正常な充電終了プロセスを示すフロー図である。
図4】第1実施例における、CAN通信に異常が発生した場合の充電終了プロセスを示すフロー図である。
図5】第1実施例における、PLC通信に異常が発生した場合の充電終了プロセスを示すフロー図である。
図6】本発明の第2実施例に係る中継器およびその周辺の概略的な構成を示すブロック図である。
図7】第2実施例に係る中継器の制御部の動作を示すフロー図である。
図8】第2実施例における、CAN通信に異常が発生した場合の充電終了プロセスを示すフロー図である。
図9】第2実施例における、PLC通信に異常が発生した場合の充電終了プロセスを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る中継器の第1実施例および第2実施例について説明する。
【0021】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る中継器10Aを示す。本実施例に係る中継器10Aは、CHAdeMO規格に準拠した一般的な充電スタンド30でCombo規格に準拠した一般的な電動車40のバッテリを充電する際に使用されるもので、同図に示すように、充電スタンド30の充電コネクタ31が接続される中継用インレット11と、電動車40の充電インレット41に接続される中継用コネクタ12と、制御部14Aとを主に備えている。
【0022】
充電コネクタ31は、充電スタンド30の本体から延びるケーブルの先端に設けられている。ケーブルは、充電電力供給線P、CAN通信線L1および補助電力供給線L2を含む複数の配線からなっている。充電コネクタ31には、充電スタンド30によって駆動されるコネクタロック機構32が設けられている。
【0023】
中継用コネクタ12は、中継器10Aの本体から延びるケーブルの先端に設けられている。ケーブルは、充電電力供給線PおよびPLC通信線L3を含む複数の配線からなっている。中継用コネクタ12には、中継器10Aによって駆動されるコネクタロック機構13が設けられている。なお、2つのコネクタロック機構13,32を区別するために、以下では、コネクタロック機構13を「中継器側コネクタロック機構」と呼び、コネクタロック機構32を「スタンド側コネクタロック機構」と呼ぶこととする。
【0024】
制御部14Aは、マイクロプロセッサ(MPU,Micro Processing Unit)等からなっている。制御部14Aは、CAN通信線L1(中継用インレット11)を介して、充電スタンド30に充電に必要な信号を送信したり充電スタンド30から充電に必要な信号を受信したりすることができるとともに、PLC通信線L3(中継用コネクタ12)を介して、電動車40に充電に必要な信号を送信したり電動車40から充電に必要な信号を受信したりすることができる。また、制御部14Aは、補助電力供給線L2(中継用インレット11)を介して供給される電圧12Vの補助電力によって駆動されている。
【0025】
制御部14Aは、信号変換部20と、異常検知部21Aと、模擬信号生成部22Aとを有している。
【0026】
信号変換部20は、CAN通信線L1を介して受信したCHAdeMO規格に準拠した信号をCombo規格に準拠した信号に変換して中継用コネクタ12から送信すること、およびPLC通信線L3を介して受信したCombo規格に準拠した信号をCHAdeMO規格に準拠した信号に変換して中継用インレット11から送信することができるように構成されている。本実施例に係る中継器10Aの主要機能である中継機能は、この信号変換部20によって実現されているということができる。
【0027】
異常検知部21Aは、充電終了プロセス中に、CAN通信線L1を介した充電スタンド30との通信(以下、単に「CAN通信」ともいう)、およびPLC通信線L3を介した電動車40との通信(以下、単に「PLC通信」ともいう)に関する異常を検知するように構成されている。
【0028】
模擬信号生成部22Aは、充電終了プロセス中に異常検知部21Aが異常を検知すると、当該異常により中断した充電終了プロセスを続行させるための模擬信号を生成し、これを中継用コネクタ12または中継用インレット11から送信するように構成されている。
【0029】
このように、本実施例に係る中継器10Aでは、充電終了プロセスが開始されると、信号変換部20による充電終了プロセスの進行に必要な信号の中継と並行して、異常検知部21Aによって通信異常が発生した否かの判定が連続的に行われる(図2のステップS1-1)。そして、通信異常が発生したとの判定がなされると、模擬信号生成部22Aによって、通信異常の状況に応じた模擬信号(すなわち、充電終了プロセスを続行させるために必要な模擬信号)が生成され(ステップS1-2)、生成された模擬信号が充電スタンド30または電動車40に送信される(ステップS1-3)。
【0030】
前述した通り、従来の中継器では、充電終了プロセス中にCAN通信またはPLC通信に異常が発生すると、充電終了プロセスが中断してしまい、中継器側コネクタロック機構およびスタンド側コネクタロック機構の一方または両方が作動したままとなることがあった。そして、この場合、ユーザは、電動車の充電インレットから中継器の中継用コネクタを取り外したり、中継器の中継用インレットから充電スタンドの充電コネクタを取り外したりすることができない。しかしながら、本実施例に係る中継器10Aでは、充電終了プロセス中にCAN通信またはPLC通信に異常が発生しても模擬信号によってプロセスを続行させることができるので、上記のような問題は起こらない。
【0031】
続いて、本実施例に係る中継器10Aの充電終了プロセス中の動作について説明する。
【0032】
・中継器10Aの第1動作例
まず、第1動作例として、通信異常が発生しない場合について説明する。この場合は、以下に示す(1A)~(12A)の流れで充電終了プロセスは進行する(図3参照)。

(1A)電動車40が、充電が完了したと判定する。
(2A)電動車40が、充放電停止の要求に関するCombo規格に準拠した信号をPLC通信により中継器10Aに送信するとともに、充電終了制御を開始する。
(3A)中継器10Aの信号変換部20が、受信した信号をCHAdeMO規格に準拠した信号に変換し、CAN通信により充電スタンド30に送信する。
(4A)充電スタンド30が、充放電停止制御を開始する。
(5A)充電スタンド30が、充放電停止制御の開始に関するCHAdeMO規格に準拠した信号をCAN通信により中継器10Aに送信する。
(6A)中継器10Aの信号変換部20が、受信した信号をCombo規格に準拠した信号に変換し、PLC通信により電動車40に送信する。
(7A)電動車40の充放電停止制御が完了する。
(8A)電動車40が、コネクタロック解除の要求に関するCombo規格に準拠した信号をPLC通信により中継器10Aに送信する。
(9A)中継器10Aの信号変換部20が、受信した信号をCHAdeMO規格に準拠した信号に変換し、CAN通信により充電スタンド30に送信する。
(10A)充電スタンド30の充放電停止制御が完了する。
(11A)充電スタンド30が、コネクタロック解除の要求に関するCHAdeMO規格に準拠した信号をCAN通信により中継器10Aに送信するとともに、スタンド側コネクタロック32を解除する。
(12A)中継器10Aが、中継器側コネクタロック13を解除する。
【0033】
スタンド側コネクタロック32の解除により、ユーザは、中継器10Aの中継用インレット11から充電スタンド30の充電コネクタ31を取り外すことができるようになる。また、中継器側コネクタロック13の解除により、ユーザは、電動車40の充電インレット41から中継器10Aの中継用コネクタ12を取り外すことができるようになる。
【0034】
・中継器10Aの第2動作例
続いて、図4を参照しながら、上記(3A)のCAN通信に異常が発生した場合、すなわち、信号変換部20が、充電スタンド30に向けて送信したCHAdeMO規格に準拠した信号(充放電停止要求)に対するリアクションとしての信号(充放電停止制御開始)を、当該送信から所定時間が経過するまでの間に受信することができない場合について説明する。
【0035】
本動作例では、異常検知部21Aは、所定期間内に充電スタンド30からのリアクションがなかったことに基づいて、充電スタンド30とのCAN通信に異常があったことを検知する。そして、模擬信号生成部22Aは、当該異常により中断した充電終了プロセスを続行させるための模擬信号、すなわち、模擬的な充放電停止の要求に関するCHAdeMO規格に準拠した信号を生成し、これを中継用インレット11から電動車30に送信する。当該異常の原因が一時的なものであれば、この模擬信号の送信により、上記(4A)以降の工程を進行させることができる。そして、最終的にユーザは、中継用インレット11から充電コネクタ31を取り外すこと、および充電インレット41から中継用コネクタ12を取り外すことができる。
【0036】
・中継器10Aの第3動作例
続いて、図5を参照しながら、上記(2A)のPLC通信に異常が発生した場合、すなわち、信号変換部20が充放電停止の要求に関するCombo規格に準拠した信号を受信していないにもかかわらず、電動車40が充電終了制御を開始したことにより充電電力供給線Pの電圧が低下し始めた場合について説明する。
【0037】
本動作例では、異常検知部21Aは、この電圧の低下に基づいて、電動車40とのPLC通信に異常があったことを検知する。そして、模擬信号生成部22Aは、当該異常により中断した充電終了プロセスを続行させるための模擬信号、すなわち、模擬的な充放電停止の要求に関するCHAdeMO規格に準拠した信号を生成し、これを中継用インレット11から電動車30に送信する。そして、最終的にユーザは、中継用インレット11から充電コネクタ31を取り外すこと、および充電インレット41から中継用コネクタ12を取り外すことができる。
【0038】
なお、本実施例に係る中継器10Aは、充電電力供給線Pの電圧を検知するために、電圧検知部15をさらに備えていてもよい。
【0039】
[第2実施例]
図6に、本発明の第2実施例に係る中継器10Bを示す。同図から明らかなように、本実施例に係る中継器10Bは、制御部14Aの代わりに制御部14Bを備えている点と、通知部16、入力部17および補助電源部18をさらに備えている点とにおいて中継器10Aと相違しているが、他の点については中継器10Aと共通している。
【0040】
通知部16は、ユーザに対して視覚的または聴覚的な通知を行うように構成されている。通知部16は、例えば、液晶ディスプレイ、LED、スピーカ等からなっている。
【0041】
入力部17は、ユーザによる操作を受け付けるとともに、受け付けた操作に関する信号を制御部14Bに送るように構成されている。入力部17は、例えば、押しボタン等からなっている。なお、本実施例に係る中継器10Bは、通知部16と入力部17とを兼ねたタッチパネルディスプレイを備えていてもよい。
【0042】
補助電源部18は、充電スタンド30が補助電力供給線L2を介して制御部14Bに供給する電圧12Vの補助電力と同等の補助電力を制御部14Bに供給することができるように構成されている。補助電源部18は、蓄電池と当該蓄電池の放電電力を昇圧/降圧するコンバータとを組み合わせたものからなっているが、比較的大容量のキャパシタ等であってもよい。
【0043】
制御部14Bは、異常検知部21Aの代わりに異常検知部21Bを有している点と、模擬信号生成部22Aの代わりに模擬信号生成部22Bを有している点と、補助電源起動部23をさらに有している点とにおいて制御部14Aと相違しているが、他の点については制御部14Aと共通している。
【0044】
異常検知部21Bは、異常検知部21Aと同様、充電終了プロセス中にCAN通信およびPLC通信に関する異常を検知するように構成されている。また、異常検知部21Bは、通信異常を検知すると、通知部16を作動させてその旨をユーザに通知するようにも構成されている。
【0045】
模擬信号生成部22Bは、通知部16が通知を行った後に入力部17からユーザの操作に関する信号を受け取ると、中断した充電終了プロセスを続行させるための模擬信号を生成し、これを中継用コネクタ12または中継用インレット11から送信するように構成されている。
【0046】
補助電源起動部23は、充電終了プロセス中に異常検知部21Bが異常を検知すると、補助電源部18を作動させるように構成されている。補助電源部18が作動すると、補助電力が制御部14Bに供給されるようになる。なお、キャパシタ等からなる補助電源部18と制御部14Bとの間に開閉器が存在する場合は、この開閉器を開状態から閉状態とすることが「補助電源部18を作動させる」に相当する。
【0047】
このように、本実施例に係る中継器10Bでは、充電終了プロセスが開始されると、信号変換部20による充電終了プロセスの進行に必要な信号の中継と並行して、異常検知部21Bによって通信異常が発生したか否かの判定が連続的に行われる(図7のステップS2-1)。そして、通信異常が発生したとの判定がなされると、補助電源起動部23によって補助電源部18が作動させられるとともに(ステップS2-2)、通知部16によって通信異常が発生した旨の通知が行われる(ステップS2-3)。
【0048】
その後、通知を受けたユーザが入力部17を操作することにより充電終了プロセスの続行の意思を示すと(ステップS2-4)、模擬信号生成部22Bによって、通信異常の状況に応じた模擬信号(すなわち、充電終了プロセスを続行させるために必要な模擬信号)が生成され(ステップS2-5)、生成された模擬信号が充電スタンド30または電動車40に送信される(ステップS2-6)。
【0049】
続いて、本実施例に係る中継器10Bの充電終了プロセス中の動作について説明する。
【0050】
・中継器10Bの第1動作例
まず、第1動作例として、通信異常が発生しない場合について説明する。この場合は、中継器10Aの第1動作例と同様、(1B)~(12B)の流れで充電終了プロセスは進行する(図3参照)。

(1B)電動車40が、充電が完了したと判定する。
(2B)電動車40が、充放電停止の要求に関するCombo規格に準拠した信号をPLC通信により中継器10Bに送信するとともに、充電終了制御を開始する。
(3B)中継器10Bの信号変換部20が、受信した信号をCHAdeMO規格に準拠した信号に変換し、CAN通信により充電スタンド30に送信する。
(4B)充電スタンド30が、充放電停止制御を開始する。
(5B)充電スタンド30が、充放電停止制御の開始に関するCHAdeMO規格に準拠した信号をCAN通信により中継器10Bに送信する。
(6B)中継器10Bの信号変換部20が、受信した信号をCombo規格に準拠した信号に変換し、PLC通信により電動車40に送信する。
(7B)電動車40の充放電停止制御が完了する。
(8B)電動車40が、コネクタロック解除の要求に関するCombo規格に準拠した信号をPLC通信により中継器10Bに送信する。
(9B)中継器10Bの信号変換部20が、受信した信号をCHAdeMO規格に準拠した信号に変換し、CAN通信により充電スタンド30に送信する。
(10B)充電スタンド30の充放電停止制御が完了する。
(11B)充電スタンド30が、コネクタロック解除の要求に関するCHAdeMO規格に準拠した信号をCAN通信により中継器10Bに送信するとともに、スタンド側コネクタロック32を解除する。
(12B)中継器10Bが、中継器側コネクタロック13を解除する。
【0051】
スタンド側コネクタロック32の解除により、ユーザは、中継器10Bの中継用インレット11から充電スタンド30の充電コネクタ31を取り外すことができるようになる。また、中継器側コネクタロック13の解除により、ユーザは、電動車40の充電インレット41から中継器10Bの中継用コネクタ12を取り外すことができるようになる。
【0052】
・中継器10Bの第2動作例
続いて、図8を参照しながら、上記(9B)のCAN通信に異常が発生した場合、すなわち、信号変換部20が、充電スタンド30に向けて送信したCHAdeMO規格に準拠した信号(作動許可禁止要求)に対するリアクションとしての信号(コネクタロック解除要求)を、当該送信から所定時間が経過するまでの間に受信することができない場合について説明する。なお、本動作例のように、充電スタンド30が充放電停止制御を開始した後に異常が発生すると、長期にわたって補助電力供給線L2を介した補助電力の供給が継続されることは期待できない。
【0053】
本動作例では、異常検知部21Bは、所定期間内に充電スタンド30からのリアクションがなかったことに基づいて、充電スタンド30とのCAN通信に異常があったことを検知する。また、異常検知部21Bが異常を検知すると、補助電源起動部23が、制御部14Bの継続的な駆動に必要な電力を確保するために補助電源部18を作動させるとともに、異常検知部21Bが、異常の発生をユーザに通知するために通知部16を作動させる。
【0054】
その後、通知を受けたユーザが入力部17を操作することにより充電終了プロセスの続行の意思を示すと、模擬信号生成部22Bが、当該異常により中断した充電終了プロセスを続行させるための模擬信号、すなわち、模擬的な作動許可禁止の要求に関するCHAdeMO規格に準拠した信号を生成し、これを中継用インレット11から電動車30に送信する。そして、最終的にユーザは、中継用インレット11から充電コネクタ31を取り外すこと、および充電インレット41から中継用コネクタ12を取り外すことができる。
【0055】
・中継器10Bの第3動作例
続いて、図9を参照しながら、上記(8B)のPLC通信に異常が発生した場合、すなわち、信号変換部20が、電動車40に向けて送信したCombo規格に準拠した信号(充放電停止制御開始)に対するリアクションとしての信号(コネクタロック解除要求)を、当該送信から所定時間が経過するまでの間に受信することができない場合について説明する。なお、この場合も、長期にわたって補助電力供給線L2を介した補助電力の供給が継続されることは期待できない。
【0056】
本動作例では、異常検知部21Bは、所定期間内に電動車40からのリアクションがなかったことに基づいて、充電スタンド40とのPLC通信に異常があったことを検知する。また、異常検知部21Bが異常を検知すると、補助電源起動部23が、制御部14Bの継続的な駆動に必要な電力を確保するために補助電源部18を作動させるとともに、異常検知部21Bが、異常の発生をユーザに通知するために通知部16を作動させる。
【0057】
その後、通知を受けたユーザが入力部17を操作することにより充電終了プロセスの続行の意思を示すと、模擬信号生成部22Bが、当該異常により中断した充電終了プロセスを続行させるための模擬信号、すなわち、模擬的な作動許可禁止の要求に関するCHAdeMO規格に準拠した信号を生成し、これを中継用インレット11から電動車30に送信する。そして、最終的にユーザは、中継用インレット11から充電コネクタ31を取り外すこと、および充電インレット41から中継用コネクタ12を取り外すことができる。
【0058】
[変形例]
以上、本発明に係る中継器の第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0059】
例えば、本発明に係る中継器は、第1充電規格に準拠した任意の形式の充電装置で第1充電規格とは異なる第2充電規格に準拠した電動車のバッテリを充電する際に使用こともできる。第1充電規格はCHAdeMO規格に限定されず、第2充電規格はCombo規格に限定されない。
【0060】
また、本発明に係る中継器は、中継用コネクタが中継器本体に直付けされていてもよい。つまり、中継用コネクタと中継器本体との間にケーブルが存在していなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10A,10B 中継器
11 中継用インレット
12 中継用コネクタ
13 中継器側コネクタロック機構
14A,14B 制御部
15 電圧検知部
16 通知部
17 入力部
18 補助電源部
20 信号変換部
21A,21B 異常検知部
22A,22B 模擬信号生成部
23 補助電源起動部
30 充電スタンド
31 充電コネクタ
32 スタンド側コネクタロック機構
40 電動車
41 充電インレット
L1 CAN通信線
L2 補助電力供給線
L3 PLC通信線
P 充電電力供給線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9