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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20231222BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20231222BHJP
   H05B 3/48 20060101ALI20231222BHJP
   F23Q 7/00 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
H05B3/02 A
H05B3/03
H05B3/48
F23Q7/00 605H
F23Q7/00 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020128022
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2021093352
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019220958
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和宏
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-297922(JP,A)
【文献】特開2009-092320(JP,A)
【文献】特開2001-124336(JP,A)
【文献】特開2005-310767(JP,A)
【文献】特開2005-190948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0369485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00-3/86
F23Q 7/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる筒状の主体金具と、
前記主体金具の先端から自身の先端部が突出した状態で前記主体金具の内側に配置されると共に、第1外部電極および第2外部電極を備えるヒータ素子と、
前記主体金具の後端から自身の後端部が突出した状態で前記主体金具の内側に配置されると共に、前記第1外部電極と電気的に接続される中軸と、
前記主体金具の後端から自身の後端部が突出した状態で前記主体金具と前記中軸との間に配置されると共に、前記第2外部電極と電気的に接続されるリード管と、を備えるヒータであって、
前記中軸の前記後端部と前記リード管の前記後端部との間に配置される軟質の絶縁体と、
前記リード管の前記後端部の周囲に配置されるリングと、を備え、
前記リングは、前記リード管および前記絶縁体を介して前記中軸の固定部にかしめ固定されているヒータ。
【請求項2】
前記絶縁体は、引張強さが80MPa以上である請求項1記載のヒータ。
【請求項3】
前記中軸は、前記固定部よりも先端側に、前記固定部よりも径が大きい大径部が設けられている請求項1又は2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記大径部の後端向き面は、前記絶縁体に接している請求項3記載のヒータ。
【請求項5】
前記主体金具と前記リード管との間、かつ、前記主体金具と前記リングとの間に配置される電気絶縁性の筒状の支持部材を備え、
前記大径部の後端は、前記支持部材の先端よりも後端側に位置する請求項3又は4に記載のヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電によって発熱するヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
筒状の主体金具の先端からヒータ素子の先端部が突出し、ヒータ素子の第1外部電極に中軸が電気的に接続され、ヒータ素子の第2外部電極にリード管が電気的に接続されたヒータが知られている(特許文献1)。特許文献1に開示されたヒータは、中軸とリード管との短絡を防ぐため、主体金具の後端から突出した中軸の後端部とリード管の後端部との間に、ゴム製の円筒形状の絶縁体が配置されている。中軸の後端部は、自身の径方向に圧縮された絶縁体のゴム弾性(復元力)によってリード管に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-166758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、中軸にリード管を固定する絶縁体のゴム弾性は比較的弱いので、ヒータを取り扱うときに中軸に軸線方向の力がかかると、中軸がずれて短絡や断線の原因となるおそれがある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、リード管に中軸を強く固定できるヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のヒータは、軸線に沿って延びる筒状の主体金具と、主体金具の先端から自身の先端部が突出した状態で主体金具の内側に配置されると共に、第1外部電極および第2外部電極を備えるヒータ素子と、主体金具の後端から自身の後端部が突出した状態で主体金具の内側に配置されると共に、第1外部電極と電気的に接続される中軸と、主体金具の後端から自身の後端部が突出した状態で主体金具と中軸との間に配置されると共に、第2外部電極と電気的に接続されるリード管と、中軸の後端部とリード管の後端部との間に配置される軟質の絶縁体と、リード管の後端部の周囲に配置されるリングと、を備え、リングは、リード管および絶縁体を介して中軸の固定部にかしめ固定されている。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、中軸の後端部とリード管の後端部との間に軟質の絶縁体が配置され、リード管の後端部の周囲にリングが配置される。リングは、リード管および絶縁体を介して中軸の固定部にかしめ固定されているので、ゴム弾性を利用してリード管に中軸を固定するのに比べ、リード管に中軸を強く固定できる。その結果、ヒータを取り扱うときに中軸に軸線方向の力がかかっても、中軸がずれることを抑制できる。
【0008】
第2の態様によれば、絶縁体は引張強さが80MPa以上なので、中軸とリード管との間に挟まれた絶縁体を軸線方向に伸び難くできる。その結果、中軸に対してリード管を軸線方向にさらにずれ難くできるので、第1の態様の効果に加え、リード管に中軸をさらに強く固定できる。
【0009】
第3の態様によれば、中軸には、絶縁体が固定された固定部よりも先端側に、固定部よりも径が大きい大径部が設けられている。これにより軸線方向の後端側へ中軸が引っ張られて大径部が絶縁体に当たると、圧着部と大径部との間に挟まれた絶縁体が軸線方向に圧縮されるので、その反力によってそれ以上の中軸の後端側へのずれを低減できる。よって第1又は第2の態様の効果に加え、中軸の後端側へのずれ量を低減できる。
【0010】
第4の態様によれば、大径部の後端向き面は絶縁体に接している。よって軸線方向の後端側へ中軸が引っ張られると、圧着部と大径部との間に挟まれた絶縁体がすぐに軸線方向に圧縮される。よって第3の態様の効果に加え、中軸の後端側へのずれ量をさらに低減できる。
【0011】
第5の態様によれば、主体金具とリード管との間、かつ、主体金具とリングとの間に電気絶縁性の筒状の支持部材が配置される。大径部の後端は、支持部材の先端よりも後端側に位置する。これにより中軸へのリングのかしめ固定によって絶縁体が変形し、変形した絶縁体が、大径部に沿って径方向の外側へ広がり、絶縁体によって径方向の外側にリード管が押されても、リード管の変形を支持部材が低減する。よって第3又は第4の態様の効果に加え、リード管と主体金具との間の短絡を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施の形態におけるヒータの断面図である。
図2図1のIIで示す部分を拡大したヒータの断面図である。
図3図2のIII-III線におけるヒータの断面図である。
図4】第2実施の形態におけるヒータの断面図である。
図5図4のVで示す部分を拡大したヒータの断面図である。
図6図4のVIで示す部分を拡大したヒータの断面図である。
図7】第3実施の形態におけるヒータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態におけるヒータ10の軸線Oを含む断面図である。図2図1のIIで示す部分を拡大したヒータ10の断面図である。図1及び図2では、紙面下側をヒータ10の先端側、紙面上側をヒータ10の後端側という(図3から図6においても同じ)。図1に示すようにヒータ10は、主体金具11、ヒータ素子20、中軸30、リード管40、絶縁体50及びリング51を備えている。
【0014】
主体金具11は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の金属製(例えば炭素鋼やステンレス鋼等)の部材である。主体金具11の外周面には、おねじ12が形成されている。おねじ12は、加熱対象である相手部材(図示せず)に形成されたねじ穴に係合する。主体金具11には、おねじ12よりも後端側に工具係合部13が形成されている。工具係合部13は、相手部材のねじ穴におねじ12を締め付けるときに、レンチ等の工具を係合させる部位である。
【0015】
外筒16は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の金属製(例えばステンレス鋼等)の部材である。外筒16は、主体金具11の先端14に接合されている。外筒16は、ヒータ素子20の先端部27を先端側に突出させた状態でヒータ素子20を保持する。本実施形態では、ヒータ素子20と外筒16とは圧入構造をなしている。
【0016】
ヒータ素子20は、軸線Oに沿って延びる略円柱状の部材である。ヒータ素子20は、基体21と、基体21に埋め込まれた抵抗体22と、を備えている。基体21は略円柱状の絶縁性セラミックからなる。本実施形態では基体21の先端が球冠状に形成されている。基体21を構成する絶縁性セラミックは、例えば窒化珪素を主成分とする。抵抗体22は導電性セラミックからなり、例えば炭化タングステン及び窒化珪素を含有する。抵抗体22は、基体21の先端側に埋設され基体21の先端に沿って屈曲した発熱体23と、発熱体23の後端側に接続され後端側へ向かって軸線Oに沿って延びる一対のリード部24と、を備えている。発熱体23はヒータ素子20の先端部27に配置されている。
【0017】
片方のリード部24には、基体21の外周面に露出した第1外部電極25が設けられている。もう片方のリード部24には、第1外部電極25よりも先端側に、基体21の外周面に露出した第2外部電極26が設けられている。第1外部電極25及び第2外部電極26はリード部24と同じ材料で形成されている。第1外部電極25及び第2外部電極26は主体金具11の内側に位置する。
【0018】
発熱体23の断面積はリード部24の断面積より狭いので、発熱体23を構成する導電性セラミックの材質がリード部24を構成する導電性セラミックの材質と同じでも、発熱体23の抵抗をリード部24の抵抗よりも大きくできる。その結果、発熱体23の発熱量をリード部24の発熱量よりも大きくできるので、発熱体23を選択的に発熱させることができる。なお、発熱体23及びリード部24の断面積を異ならせるのではなく、比抵抗がリード部24の比抵抗よりも大きい材料を発熱体23に採用して、発熱体23を選択的に発熱させることは当然可能である。
【0019】
中軸30は、軸線Oに沿って延びる金属製の円柱状の部材である。中軸30の先端部31は、ヒータ素子20の後端側にヒータ素子20と隙間をあけて、主体金具11の内側に配置されている。中軸30の後端部32は、主体金具11の後端15から突出している。中軸30の後端部32(図2参照)には、固定部33が設けられている。リード管40及び絶縁体50は、リング51によって固定部33に固定される。中軸30には、固定部33の先端側に、固定部33よりも径が大きい大径部34が設けられている。大径部34は中軸30の先端部31まで連続している。大径部34の後端向き面35は、後端側に向かって縮径する円錐面である。
【0020】
リード管40は、軸線Oに沿って延びる金属製の筒状の部材である。リード管40は、中軸30の径方向の外側、且つ、主体金具11の径方向の内側に、主体金具11及び中軸30と隙間をあけて配置されている。リード管40の先端部41は、ヒータ素子20の第1外部電極25の径方向の外側に位置する。リード管40の後端部42は、主体金具11の後端15から突出している。
【0021】
第1部材43は、軸線O沿って延びる金属製の筒状の部材である。第1部材43は、リード管40の先端部41の径方向の内側に、リード管40と隙間をあけて配置されている。第1部材43は、中軸30の先端部31とヒータ素子20の第1外部電極25とを電気的に接続する。本実施形態では、ヒータ素子20と第1部材43とは圧入構造をなし、第1部材43は第1外部電極25に直接接続されている。
【0022】
第2部材44は、軸線O沿って延びる金属製の筒状の部材である。第2部材44は、ヒータ素子20の第1外部電極25よりも先端側、且つ、主体金具11の径方向の内側に、第1部材43及び主体金具11と隙間をあけて配置されている。第2部材44は、リード管40の先端部41とヒータ素子20の第2外部電極26とを電気的に接続する。本実施形態では、ヒータ素子20と第2部材44とは圧入構造をなし、第2部材44は第2外部電極26に直接接続されている。
【0023】
中軸30の後端部32とリード管40の後端部42との間に、中軸30とリード管40とを離隔する軟質の絶縁体50が配置されている。絶縁体50の先端50aは、主体金具11の後端15よりも先端側に位置する。絶縁体50の先端50aは、中軸30の大径部34の後端36と離れている。
【0024】
絶縁体50の材料は、例えば、はがしマイカや集成マイカ等のマイカ及び接着剤(必要に応じて補強材)を含有するフレキシブルマイカ、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチックが挙げられる。エンジニアリング・プラスチックは、例えばポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)が挙げられる。スーパーエンジニアリング・プラスチックは、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。絶縁体50の形状は、全周が連続する筒状のもの、中軸30の周りにシートを巻いて周の一部に切れ目を設けたもの、中軸30の周りにシートを巻いて周方向の両端を重ね合わせたもの等が用いられる。
【0025】
リング51は、リード管40の後端部42を外周から囲む金属製の部材である。リング51は、圧着部52と、圧着部52の先端から径方向の外側に向かって張り出した第1フランジ53と、圧着部52の後端から径方向の外側に向かって張り出した第2フランジ54と、を備えている。リング51は、圧着部52の物理的圧力によってリード管40の後端部42に固着されている。
【0026】
圧着部52に加えられた物理的圧力により、圧着部52の少なくとも一部が径方向の内側に塑性変形している。これにより圧着部52の少なくとも一部はリード管40の後端部42に密着している。リング51の形状は、全周が連続する環状のもの、Cリングのように周の一部に切れ目を設けたもの等が用いられる。
【0027】
支持部材55は、主体金具11に配置されリード管40を取り囲む筒状の部材であり、電気絶縁性を有している。支持部材55のフランジの後端は、主体金具11の後端15よりも後端側に位置し、支持部材55の先端55aは、主体金具11の後端15よりも先端側に位置する。大径部34の後端向き面35は、支持部材55の径方向の内側に位置し、支持部材55の先端55aは、大径部34の後端36よりも先端側に位置する。支持部材55は主体金具11の後端15に挿入されており、主体金具11によって支持部材55の先端側への移動は規制されている。
【0028】
支持部材55の材料は、例えばフレキシブルマイカ、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチックが挙げられる。支持部材55は、主体金具11に対してリード管40を径方向に離隔する。さらに支持部材55は、主体金具11とリング51との間に介在して主体金具11に対してリング51を軸線方向に離隔する。支持部材55によって主体金具11とリード管40との間、及び、主体金具11とリング51との間を電気的に絶縁できる。
【0029】
シール部材56は、リード管40を取り囲むリング状の部材であり、支持部材55の先端と主体金具11の内周面との間に配置されている。本実施形態では、シール部材56はOリングであり、主体金具11とリード管40との間を電気的に絶縁する。シール部材56は圧縮された状態で配置されているので、主体金具11とリード管40との間を気密封止する。
【0030】
本実施形態では、リング51はヒータ10の外部端子を兼ねている。よって、ヒータ10の中軸30の後端部32とリング51との間に電圧が印加されると、ヒータ素子20の抵抗体22に通電され、発熱体23が発熱する。
【0031】
塑性変形した圧着部52(リング51)の物理的圧力によって、リード管40のうち圧着部52の径方向の内側の部位が押されて径方向の内側に塑性変形する。絶縁体50は軟質なので、力が加えられると自然状態から変形する。よって、塑性変形したリード管40の物理的圧力によって、絶縁体50は径方向の内側に変形し中軸30の固定部33を押し付ける。即ち、リング51はリード管40及び絶縁体50を介して中軸30の固定部33にかしめ固定されている。
【0032】
これにより、絶縁体50の弾性だけを利用して中軸30にリード管40を固定するのに比べ、リード管40に中軸30を強く固定できる。その結果、ヒータ10を内燃機関(図示せず)に取り付けるとき等、ヒータ10を取り扱うときに中軸30に軸線方向の力がかかっても、中軸30が軸線方向にずれることを抑制できる。
【0033】
絶縁体50は、常温(15℃~25℃)における引張強さが80MPa以上のものが好ましい。絶縁体50を介してリード管40に中軸30を固定するからである。絶縁体50の材料の引張強さはASTM D638:2003に準拠して測定される。引張強さの測定には、標線間距離が50mmのダンベル状試験片が用いられる。
【0034】
絶縁体50は、常温における引張強さが250MPa以下のものが好ましい。絶縁体50を介してリード管40に中軸30を固定するときの、絶縁体50に加わる力が過大になるのを防ぎ、リード管40や中軸30の変形を低減するためである。
【0035】
図3図2のIII-III線におけるヒータ10の断面図である。図3に示すようにリング51の圧着部52に押されたリード管40と中軸30の固定部33との間に、絶縁体50が過度に潰れることなく介在する。リード管40と固定部33との間に介在する絶縁体50の径方向の厚さにより、リード管40と固定部33との間の絶縁距離が確保されるので、ヒータ10の短絡を防止できる。
【0036】
圧着部52は、軸線Oに垂直な断面が円環状であり、圧着部52が全周に亘ってリード管40を径方向の内側に押し付けている。その結果、リード管40の全周に亘る塑性変形により絶縁体50が全周に亘って径方向の内側に押され、絶縁体50が中軸30の固定部33の全周に接している。従って、リード管40の周の一部が塑性変形して絶縁体50の周の一部が径方向の内側に押される場合に比べ、絶縁体50に加わる荷重を分散できる。よって、絶縁体50の伸びや破損を抑制できる。
【0037】
本実施形態では、絶縁体50は引張強さが80MPa以上である。これにより絶縁体50を軸線方向にさらに伸び難くできるので、中軸30の後端部32に対してリード管40の後端部42を軸方向にずれ難くできる。リード管40に中軸30をさらに強く固定できるので、ヒータ10に加わる荷重によって中軸30が軸線方向にずれることを抑制できる。
【0038】
リング51のかしめ固定時に、圧着部52の塑性変形によって内側に押されたリード管40と中軸30との間に絶縁体50が挟まれると、絶縁体50は径方向に圧縮され軸線方向に伸びる。軸線方向に伸びる絶縁体50の摩擦によって、中軸30に軸線方向の力が加わる。絶縁体50は引張強さが80MPa以上なので、絶縁体50の軸線方向の伸びを抑え、絶縁体50の摩擦に伴う中軸30の軸線方向のずれを低減できる。
【0039】
中軸30には、絶縁体50が固定された固定部33よりも先端側に大径部34が設けられている。大径部34は絶縁体50よりも先端側に位置し、固定部33よりも径が大きい。これにより軸線方向の後端側へ中軸30が引っ張られて大径部34が絶縁体50に当たると、圧着部52と大径部34の後端向き面35との間に挟まれた絶縁体50が軸線方向に圧縮される。その反力によってそれ以上の中軸30の後端側へのずれを低減できる。従って中軸30の後端側へのずれ量を低減できる。
【0040】
中軸30の大径部34の後端36は、支持部材55の先端55aよりも後端側に位置する。これにより中軸30へのリング51のかしめ固定によって絶縁体50が変形し、変形した絶縁体50が、大径部34に沿って径方向の外側へ広がり、絶縁体50によって径方向の外側にリード管40が押されても、リード管40の変形を支持部材55が低減する。よってリード管40と主体金具11との間の短絡を防ぐことができる。
【0041】
リング51の第1フランジ53は、主体金具11とリード管40との間に固定された支持部材55の後端に当たっている。主体金具11によって支持部材55の先端側への移動は規制されているので、支持部材55とリング51との間に隙間が生じないようにできる。
【0042】
リング51に設けられた第1フランジ53が支持部材55に接しているので、第1フランジ53が無い場合に比べて、支持部材55の後端にリング51が加える圧力を小さくできる。その結果、リング51が接する支持部材55の摩耗や破損の抑制効果を向上できるので、支持部材55とリング51との間にさらに隙間を生じ難くできる。
【0043】
リード管40及び絶縁体50を介して中軸30にかしめ固定されたリング51は軸線方向に移動し難いので、支持部材55と主体金具11とによるシール部材56のつぶし代を確保できる。これによりシール部材56の圧縮された状態が維持されるので、シール部材56による気密性を確保できる。
【0044】
図4から図6までを参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、中軸30の大径部34の後端向き面35と絶縁体50とが離れている場合について説明した。これに対し第2実施形態では、中軸61の大径部62の後端向き面63が絶縁体50に接している場合について説明する。なお第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0045】
図4は第2実施の形態におけるヒータ60の軸線Oを含む断面図である。図5図4のVで示す部分を拡大したヒータ60の断面図である。図6図4のVIで示す部分を拡大したヒータ60の断面図である。
【0046】
図4及び図5に示すようにヒータ60は、主体金具11、ヒータ素子20、中軸61、リード管40、絶縁体50及びリング51を備えている。中軸61は、軸線Oに沿って延びる金属製の円柱状の部材である。中軸61には、固定部33の先端側に、固定部33よりも径が大きい大径部62が設けられている。大径部62の後端向き面63は、軸線Oに垂直な円環状の平面である。後端向き面63(大径部62の後端)は、支持部材55の径方向の内側に位置し、支持部材55の先端55aは、大径部62の後端向き面63よりも先端側に位置する。後端向き面63は、絶縁体50の先端50aに接している。
【0047】
図6に示すように、中軸61の先端部64には、第1部材43にはまり合う嵌合部65が設けられている。先端部64には、嵌合部65の後端の位置に先端向き面66が設けられている。第1部材43に嵌合部65がはまり合うと、第1部材43は先端向き面66より後端側に進むことができなくなる。よって第1部材43の中軸61への位置決めが容易になる。
【0048】
ヒータ60は、軸線方向の後端側へ中軸61が引っ張られると、圧着部52と大径部62の後端向き面63との間に挟まれた絶縁体50がすぐに軸線方向に圧縮される。よって中軸61の大径部62の後端向き面63と絶縁体50とが離れている場合に比べ、中軸61の後端側へのずれ量をさらに低減できる。
【0049】
図7を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施形態では、中軸61の大径部62の後端向き面63が、軸線Oに垂直な円環状の平面である場合について説明した。これに対し第3実施形態では、中軸71の大径部72の後端向き面73が円錐面である場合について説明する。なお第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0050】
図7は第3実施の形態におけるヒータ70の軸線Oを含む断面図である。図7は、図2と同様に、図1のIIで示す部分を拡大したヒータ70の断面図である。
【0051】
図7に示すようにヒータ70は、主体金具11、ヒータ素子20、中軸71、リード管40、絶縁体50及びリング51を備えている。中軸71は、軸線Oに沿って延びる金属製の円柱状の部材である。中軸71には、固定部33の先端側に、固定部33よりも径が大きい大径部72が設けられている。大径部72の後端向き面73は、後端側に向かって縮径する円錐面である。後端向き面73は、支持部材55の径方向の内側に位置し、支持部材55の先端55aは、大径部72の後端74(後端向き面73の後端)よりも先端側に位置する。絶縁体50の先端50aは、後端向き面73の先端75よりも先端側に位置する。すなわち大径部72の後端向き面73は絶縁体50に接している。
【0052】
ヒータ70は、軸線方向の後端側へ中軸71が引っ張られると、圧着部52と大径部72の後端向き面73との間に挟まれた絶縁体50がすぐに軸線方向に圧縮される。よって中軸71の大径部72の後端向き面73と絶縁体50とが離れている場合に比べ、中軸71の後端側へのずれ量をさらに低減できる。
【実施例
【0053】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0054】
絶縁体50の引張強さが異なる種々のサンプルNo.1-4を、第1実施形態のヒータ10に基づいて作製した。サンプル1は、硬質無焼成マイカ(フレキシブルマイカの1種)のシートを中軸30に巻いたものを絶縁体50にしたものであり、絶縁体50の引張強さは250MPaであった。サンプル2は、PPS(スーパーエンジニアリング・プラスチックの1種)のチューブを絶縁体50にしたものであり、絶縁体50の引張強さは140MPaであった。サンプル3は、PEEK(スーパーエンジニアリング・プラスチックの1種)のチューブを絶縁体50にしたものであり、絶縁体50の引張強さは90MPaであった。サンプル4は、ポリオレフィン系のチューブを絶縁体50にしたものであり、絶縁体50の引張強さは20MPaであった。
【0055】
絶縁体50の引張強さはASTM D638:2003に準拠して測定した。引張強さの測定には、標線間距離が50mmのダンベル状試験片を用いた。サンプルNo.1-4の一覧を表1に示す。
【0056】
【表1】
サンプルNo.1-4の主体金具11のおねじ12を、金属製のブロック(図示せず)のねじ穴に規定トルクで締め付けた後、引張試験機を用いて、ブロックに対して中軸30の後端部32を軸線方向に引っ張り、荷重を測定する引張試験を行った。荷重が増加すると、絶縁体50が著しく変形し始め、その変形速度が荷重の負荷速度(引張速度)より大きくなると、一時的に荷重が低下する。荷重が低下し始めたときを、中軸30が軸線方向にずれたときとみなし、荷重が低下し始める直前の荷重を記録した。その荷重が2300N以上はA、荷重が2000N以上2300N未満はB、荷重が2000N未満はCと評価した。
【0057】
表1に示すように、サンプルNo.1-3は荷重が2000N以上(評価A又はB)であり、満足できる結果であった。一方、サンプルNo.4は荷重が2000N未満(評価C)であった。また、引張試験を行う前のサンプルNo.1-3の中軸30とリング51との間に電圧を印加したところ発熱体23は正常に発熱した。一方、引張試験を行う前のサンプルNo.4の中軸30とリング51との間に電圧を印加したら短絡した。この実施例によれば、引張強さが80MPa以上の絶縁体50を用いたヒータ10は、リード管40に中軸30を強く固定できることが明らかになった。
【0058】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0059】
実施形態では、リング51が、ヒータ10,60,70の外部端子を兼ねる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。リング51とは別に、リード管40に電気的に接続された外部端子を設けることは当然可能である。この場合には、別に設けた外部端子と中軸30,61,71との間に電圧を印加することによりヒータ素子20が発熱する。
【0060】
実施形態では、リング51の圧着部52の、軸線Oに垂直な断面が円環状の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、圧着部52の軸線Oに垂直な断面を、楕円状や三角形や六角形などの多角筒状にすることは当然可能である。また、Cリングのように圧着部の一部に切れ目がある場合には、切れ目のない部分同士が近づくように、圧着部に物理的圧力を加えてリード管40の周の一部を塑性変形させる。
【0061】
リード管40を介して圧着部52が絶縁体50に加える物理的圧力は、絶縁体50の周方向において不均一になっても良い。また、圧着部52の径方向の内側において、絶縁体50の物理的圧力が周方向に不均一になることによって、中軸30,61,71やリード管40と絶縁体50との間に部分的に隙間が生じても構わない。
【0062】
実施形態では、リング51に第1フランジ53及び第2フランジ54が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1フランジ53や第2フランジ54の少なくとも一方を省略することは当然可能である。
【0063】
実施形態では、中軸30,71の大径部34,72の後端向き面36,73が円錐面である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。円錐面の後端向き面36,73に代えて、後端向き面36,73を球帯にすることは当然可能である。
【0064】
実施形態では、大径部34,62,72の後端向き面36,63,73が、中軸30,61,71の全周に亘って連続している場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。中軸30,61,71の全周の一部に後端向き面が設定されるように大径部を設けることは当然可能である。このような大径部は、例えば中軸30,61,71の外周から部分的に突き出た1つ又は複数の突起、中軸30,61,71の外周に断続的に設けられた歯形などが挙げられる。
【0065】
第3実施形態では、絶縁体50の先端50aが、後端向き面73の先端75より先端側にある場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。後端向き面73の先端75に絶縁体50の先端50aが位置するように絶縁体50を中軸71に配置し、後端向き面73に絶縁体50が接するようにすることは当然可能である。
【0066】
第2実施形態における中軸61の先端部64(嵌合部65を備えるもの)を、第1実施形態や第3実施形態における中軸30,71の先端部31に代えて、中軸30,71に設けることは当然可能である。これと反対に、第2実施形態における中軸61の先端部64に代えて、中軸30,71の先端部31を中軸61に設けることは当然可能である。
【0067】
実施形態では、支持部材55が、フランジをもった一部材である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。複数の部材を組み合わせて支持部材55を構成することは当然可能である。
【0068】
実施形態では、シール部材56は断面が円形のOリングの場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。シール部材56の断面を矩形にしたりリップを設けたりすることは当然可能である。支持部材55とシール部材56とを一体化しても良い。
【0069】
実施形態では、ヒータ素子20の基体21が円柱状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。基体21の形状は用途に応じて適宜設定できる。例えば、基体の軸線Oに直交する断面を楕円状、多角状等の形状にすることは当然可能である。また、ヒータ素子は棒状の基体をもつものに限られない。例えば、板状の基体間に抵抗体を挟み込んだいわゆる板状のヒータ素子とすることは当然可能である。
【0070】
実施形態におけるヒータ10,60,70の用途には制限がない。ヒータ10,60,70の用途としては、例えばグロープラグ、Diesel particulate filter(DPF)に用いられるヒータ、バーナーの着火用ヒータ、ガスセンサの加熱用ヒータ等が挙げられる。
【0071】
実施形態では、ヒータ素子20と第1部材43や第2部材44とが圧入構造をなし、第1部材43や第2部材44に圧入されたヒータ素子20の第1外部電極25や第2外部電極26に第1部材43や第2部材44が直接接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えばヒータ素子20の第1外部電極25や第2外部電極26と第1部材43や第2部材44との間をワイヤやろう材等の導電材料によって接続することは当然可能である。また、絶縁性セラミックからなる基体21の表面に、第1外部電極25や第2外部電極26に電気的に接続したリードを設けた後、リードと第1部材43や第2部材44とを電気的に接続することは当然可能である。
【符号の説明】
【0072】
10,60,70 ヒータ
11 主体金具
14 主体金具の先端
15 主体金具の後端
20 ヒータ素子
25 第1外部電極
26 第2外部電極
27 先端部
30,61,71 中軸
32 中軸の後端部
33 固定部
34,62,72 大径部
35,63,73 後端向き面
36,74 大径部の後端
40 リード管
42 リード管の後端部
50 絶縁体
51 リング
55 支持部材
55a 支持部材の先端
63 後端向き面(大径部の後端)
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7