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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】フロントマウント型乗用草刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
A01D34/64 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020135182
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030874
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大野 航平
(72)【発明者】
【氏名】戸越 義和
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-201306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の前方に位置する草刈装置と、
前記車体から前記草刈装置の上方へ揺動昇降可能に延ばされ、前記草刈装置を昇降操作可能に支持する昇降リンクと、
前記昇降リンクを揺動操作する油圧アクチュエータと、が備えられ、
前記昇降リンクは、車体横幅方向に沿う方向の枢支軸芯を揺動支点にして前記草刈装置を揺動可能に支持する支持部を有し、前記草刈装置を底面側が車体前後向きになる作業姿勢で支持する下降状態と、前記草刈装置を対地上昇すると共に前記底面側が前向きになるメンテナンス姿勢で支持する上昇状態とに切り換え可能に構成され、
前記上昇状態の前記昇降リンクと前記車体とを連結し、前記昇降リンクを前記上昇状態で前記車体に保持させるロック姿勢と、前記昇降リンクと前記車体との連結を解除し、前記昇降リンクの揺動を許容するロック解除姿勢とに姿勢切り換え可能なロック部材が備えられ、
前記ロック部材は、前記車体または前記昇降リンクに装備され
前記ロック部材は、前記車体に上下揺動可能に装備されたフック状の部材であり、下降揺動によって前記ロック姿勢になり、上昇揺動によって前記ロック解除姿勢になるように構成され、かつ、前記ロック姿勢に姿勢変更されると、前記昇降リンクに備えられているロックピンに係合可能であるフロントマウント型乗用草刈機。
【請求項2】
車体と、
前記車体の前方に位置する草刈装置と、
前記車体から前記草刈装置の上方へ揺動昇降可能に延ばされ、前記草刈装置を昇降操作可能に支持する昇降リンクと、
前記昇降リンクを揺動操作する油圧アクチュエータと、が備えられ、
前記昇降リンクは、車体横幅方向に沿う方向の枢支軸芯を揺動支点にして前記草刈装置を揺動可能に支持する支持部を有し、前記草刈装置を底面側が車体前後向きになる作業姿勢で支持する下降状態と、前記草刈装置を対地上昇すると共に前記底面側が前向きになるメンテナンス姿勢で支持する上昇状態とに切り換え可能に構成され、
前記上昇状態の前記昇降リンクと前記車体とを連結し、前記昇降リンクを前記上昇状態で前記車体に保持させるロック姿勢と、前記昇降リンクと前記車体との連結を解除し、前記昇降リンクの揺動を許容するロック解除姿勢とに姿勢切り換え可能なロック部材が備えられ、
前記ロック部材を前記ロック解除姿勢に付勢するスプリングが備えられ
前記ロック部材は、前記車体に上下揺動可能に装備され、下降揺動によって前記ロック姿勢になり、上昇揺動によって前記ロック解除姿勢になるように構成され、かつ、前記ロック姿勢において、前記ロック部材が前記上昇状態の前記昇降リンクと連結することで、前記ロック姿勢が維持されるフロントマウント型乗用草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントマウント型乗用草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントマウント型乗用草刈機には、車体の前方に位置する草刈装置と、車体から草刈装置の上方へ揺動昇降可能に延ばされ、草刈装置を昇降操作可能に支持する昇降リンクと、昇降リンクを揺動操作する油圧アクチュエータと、が備えられたものがある。この種のフロントマウント型乗用草刈機において、昇降リンクは、車体横幅方向に沿う方向の枢支軸芯を揺動支点にして草刈装置を揺動可能に支持する支持部を有し、草刈装置を底面側が車体前後向きになる作業姿勢で支持する下降状態と、草刈装置を対地上昇すると共に底面側が前向きになるメンテナンス姿勢で支持する上昇状態とに切り換え可能に構成されたものがある。
この種のフロントマウント型乗用草刈機としては、例えば特許文献1に示されるフロントマウント型乗用芝刈機がある。このフロントマウント型乗用芝刈機では、草刈装置としてのモーアが備えられ、油圧アクチュエータとしての油圧シリンダが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-256556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したフロントマウント型乗用草刈機では、草刈装置がメンテナンス姿勢で昇降リンクによって支持されことにより、草刈装置を昇降リンクから外さずに容易にメンテナンスすることが可能である。また、草刈装置が車体から前方に突出する長さを作業時よりも短くした状態で車体を移動走行させたり、格納したりすることが可能である。しかし、油圧アクチュエータに連係する油圧回路に作動油の漏れが発生すると、昇降リンクが下降して草刈装置が下がり、たとえば、移動走行の場合、草刈装置の下降に気づかず、草刈装置が走行地の段差に衝突することがある。メンテナンスの場合、作業床に置いてある工具が草刈装置の下敷きになることがある。
【0005】
本発明は、作動油が漏れても、草刈装置の下降を簡素な構造でしっかり防止できるフロントマウント型乗用草刈機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるフロントマウント型乗用草刈機は、
車体と、前記車体の前方に位置する草刈装置と、前記車体から前記草刈装置の上方へ揺動昇降可能に延ばされ、前記草刈装置を昇降操作可能に支持する昇降リンクと、前記昇降リンクを揺動操作する油圧アクチュエータと、が備えられ、前記昇降リンクは、車体横幅方向に沿う方向の枢支軸芯を揺動支点にして前記草刈装置を揺動可能に支持する支持部を有し、前記草刈装置を底面側が車体前後向きになる作業姿勢で支持する下降状態と、前記草刈装置を対地上昇すると共に前記底面側が前向きになるメンテナンス姿勢で支持する上昇状態とに切り換え可能に構成され、前記上昇状態の前記昇降リンクと前記車体とを連結し、前記昇降リンクを前記上昇状態で前記車体に保持させるロック姿勢と、前記昇降リンクと前記車体との連結を解除し、前記昇降リンクの揺動を許容するロック解除姿勢とに姿勢切り換え可能なロック部材が備えられ、前記ロック部材は、前記車体または前記昇降リンクに装備され、前記ロック部材は、前記車体に上下揺動可能に装備されたフック状の部材であり、下降揺動によって前記ロック姿勢になり、上昇揺動によって前記ロック解除姿勢になるように構成され、かつ、前記ロック姿勢に姿勢変更されると、前記昇降リンクに備えられているロックピンに係合可能である。
【0007】
本構成によると、草刈装置をメンテナンス姿勢で支持する上昇状態の昇降リンクをロック部材によって車体に固定できるので、油圧回路に作動油の漏れが発生しても、昇降リンクの下降を回避できる。ロック部材の構造を車体と昇降リンクとを連結するフック構造など簡素な構造に済ませつつ、昇降リンクを車体にしっかり固定させることができるので、草刈装置の下降を簡素な構造でしっかり防止できる。
また、ロック部材をロック解除姿勢にしておく通常時において、ロック部材は、ロック姿勢のときよりも高い位置に位置するので、ロック部材を昇降リンクの上昇に対する障害にならないようにし易い。
【0008】
【0009】
本構成によると、ロック部材は、固定側の支持部に支持されるので、可動側の昇降リンクに支持されるのに比べ、ロック部材を昇降リンクの昇降に対する障害にならないように装備し易い。
【0010】
【0011】
【0012】
本発明によるフロントマウント型乗用草刈機は、
車体と、前記車体の前方に位置する草刈装置と、
前記車体から前記草刈装置の上方へ揺動昇降可能に延ばされ、前記草刈装置を昇降操作可能に支持する昇降リンクと、前記昇降リンクを揺動操作する油圧アクチュエータと、が備えられ、前記昇降リンクは、車体横幅方向に沿う方向の枢支軸芯を揺動支点にして前記草刈装置を揺動可能に支持する支持部を有し、前記草刈装置を底面側が車体前後向きになる作業姿勢で支持する下降状態と、前記草刈装置を対地上昇すると共に前記底面側が前向きになるメンテナンス姿勢で支持する上昇状態とに切り換え可能に構成され、前記上昇状態の前記昇降リンクと前記車体とを連結し、前記昇降リンクを前記上昇状態で前記車体に保持させるロック姿勢と、前記昇降リンクと前記車体との連結を解除し、前記昇降リンクの揺動を許容するロック解除姿勢とに姿勢切り換え可能なロック部材が備えられ、前記ロック部材を前記ロック解除姿勢に付勢するスプリングが備えられ、前記ロック部材は、前記車体に上下揺動可能に装備され、下降揺動によって前記ロック姿勢になり、上昇揺動によって前記ロック解除姿勢になるように構成され、かつ、前記ロック姿勢において、前記ロック部材が前記上昇状態の前記昇降リンクと連結することで、前記ロック姿勢が維持される。
【0013】
本構成によると、ロック姿勢のときよりも高い位置に位置するロック解除姿勢のロック部材を振動などによってロック姿勢に姿勢変化しないようにスプリングによってロック姿勢にしっかり保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フロトマウント型乗用草刈機の全体を示す左側面図である。
図2】草刈装置および草刈装置の支持構造を示す左側面図である。
図3】草刈装置および草刈装置の支持構造を示す平面図である。
図4】メンテナンス姿勢の草刈装置を示す左側面図である。
図5】フック部材の支持構造を示す平面図である。
図6】上昇ロック解除姿勢の左のフック部材を示す側面図である。
図7】上昇ロック解除姿勢の右のフック部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、フロントマウント型乗用草刈機の車体に関し、図1,2,3に示される矢印Fの方向を「車体前方」、矢印Bの方向を「車体後方」、図1,2に示される矢印Uの方向を「車体上方」、矢印Dの方向を「車体下方」、図1の紙面表側の方向、および、図3に示される矢印Lの方向を「車体左方」、図1の紙面裏側の方向、および、図3に示される矢印Rの方向を「車体右方」とする。
【0016】
〔フロントマウント型乗用草刈機の全体の構成〕
図1に示されるように、フロントマウント型乗用草刈機は、左右一対の前車輪1が駆動可能に装備され、左右一対の後車輪2が操向可能に装備された車体、車体の前方に位置する草刈装置10を備えている。車体の前部には、運転座席3、後車輪2を操向操作するステアリングホィール4を有する乗用型の運転部5が形成されている。車体の後部には、エンジン6を有する原動部7が形成されている。運転部5の下方に、ミッションケース8が設けられている。ミッションケース8には、エンジン6からの動力が入力され、入力された動力を前車輪1及び草刈装置10に出力するミッション(図示せず)が収容されている。図2,3に示されるように、車体のうちの車体フレームを構成するミッションケース8から昇降リンク20が前方に草刈装置10の上方へ揺動昇降操作可能に延ばされている。草刈装置10は、昇降リンク20に支持され、昇降リンク20によって下降作業状態と上昇非作業状態とにわたって昇降操作される。
【0017】
〔草刈装置の構成〕
草刈装置10は、図1,2,3に示されるように、刈り刃ハウジング11と、刈り刃ハウジング11の上方に設けられて、刈り刃ハウジング11を吊り下げ支持する支持フレーム24と、を備えている。刈り刃ハウジング11の内部に、車体横幅方向に並ぶ3枚の刈り刃12が設けられている。3枚の刈り刃12は、車体上下方向に沿う方向に延びる回転支軸13を有し、回転支軸13を介して刈り刃ハウジング11の上部に回転可能に支持されている。支持フレーム24が有する左右の前後向きフレーム25の前端部に、接地輪27が支持されている。接地輪27は、前後向きフレーム25に対する取付け高さの調節が可能な状態で支持されている。刈り刃ハウジング11の前外側および後外側に、アンチスキャルプローラ14が設けられている。
【0018】
支持フレーム24は、刈り刃ハウジング11の左端寄り部分の上方に車体前後方向に沿う方向に延びる状態で位置する左の前後向きフレーム25と、刈り刃ハウジング11の右端寄り部分の上方に車体前後方向に沿う方向に延びる状態で位置する右の前後向きフレーム25と、左右の前後向きフレーム25の間に車体横幅方向に沿う方向の延びる状態で位置し、左右の前後向きフレーム25の中間部を連結している横向きフレーム26と、を有している。
【0019】
支持フレーム24に、左の前後向きフレーム25の前部25aと右の前後向きフレーム25の前部25aとに振り分けて揺動可能に支持された左右の前揺動支持杆32、及び、左の前後向きフレーム25の後部25bと右の前後向きフレーム25の後部25bとに振り分けて揺動可能に支持された左右の後揺動支持杆34が備えられている。左右の前揺動支持杆32のそれぞれは、刈り刃ハウジング11の前部に立設された前支持部35が有する長穴形の連結穴35aと、連結穴35aにスライド可能に係入する状態で前揺動支持杆32の遊端部に備えられた連結軸32aとを介して前支持部35に連結されている。左右の後揺動支持杆34のそれぞれは、刈り刃ハウジング11の後部に立設された後支持部36が有する長穴形の連結穴36aと、連結穴36aにスライド可能に係入する状態で後揺動支持杆34の遊端部に備えられた連結軸34aとを介して後支持部36に連結されている。刈り刃ハウジング11は、支持フレーム24に支持される左右の前揺動支持杆32および左右の後揺動支持杆34によって吊り下げ支持される。
【0020】
図2,3に示されるように、左右の前揺動支持杆32は、左の前揺動支持杆32の支持と右の前揺動支持杆32の支持とに供用の一つ回転支軸31を介して前後向きフレーム25に支持されている。左右の後揺動支持杆34は、左右の後揺動支持杆34に各別に備えられた個別の支軸33を介して前後向きフレーム25に支持されている。左の前揺動支持杆32と左の後揺動支持杆34とは、左連動リンク37によって連動連結され、右の前揺動支持杆32と右の後揺動支持杆34とは、右連動リンク38によって連動連結されている。
【0021】
左右の前揺動支持杆32および左右の後揺動支持杆34に対して取付け角調節機構40が連動連結されている。取付け角調節機構40は、右の前後向きフレーム25の内側近くにおいて、横向きフレーム26よりも前側の箇所に設けられている。取付け角調節機構40は、左右の前揺動支持杆32に対して回転支軸31によって連動連結され、左の後揺動支持杆34に対して回転支軸31、左の前揺動支持杆32及び左連動リンク37を介して連動連結され、右の後揺動支持杆34に対して回転支軸31、右の前揺動支持杆32及び右連動リンク38を介して連動連結されている。取付け角調節機構40は、左右の前揺動支持杆32および左右の後揺動支持杆34を連動させて揺動操作し、左右の前揺動支持杆32の支持フレーム24に対する取付け角、および、左右の後揺動支持杆34の支持フレーム24に対する取付け角を一挙に調節するように構成されている。
【0022】
〔草刈装置の支持〕
昇降リンク20は、左右一対の昇降リンク20によって構成されている。図3に示されるように、左の昇降リンク20は、ミッションケース8の下部に備えられた左の支軸20aから上下揺動可能に延ばされている。右の昇降リンク20は、ミッションケース8の下部に備えられた右の支軸20aから上下揺動可能に延ばされている。図2,3に示されるように、左右の昇降リンク20は、ミッションケース8の上部から前向きに上下揺動可能に延ばされた左右一対のリフトアーム22に各別にリフトリンク23によって連結されている。左右一対のリフトアーム22を連動連結する状態で支持する回転支軸22aに、回転支軸22aを回転操作する揺動アーム22bが備えられている。揺動アーム22bに油圧シリンダ21が連動連結され、左右のリフトアーム22は、回転支軸22a及び揺動アーム22bを介して油圧シリンダ21に連動連結されている。揺動アーム22b及び油圧シリンダ21は、ミッションケース8の内部に設けられている。左右の昇降リンク20は、リフトリンク23、リフトアーム22、回転支軸22a、および、揺動アーム22bを介して油圧シリンダ21に連動連結され、油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ21の伸縮作動によって支軸20aを揺動支点して揺動昇降操作される。
【0023】
図3に示されるように、支持フレーム24における横向きフレーム26の左端部および右端部に連結部26aが形成されている。左の連結部26aは、左の昇降リンク20の先端部に形成された支持部20bに枢支軸29を介して連結され、右の連結部26aは、右の昇降リンク20の先端部に形成された支持部20bに枢支軸29を介して連結されている。左右の昇降リンク20の支持部20bは、草刈装置10が車体横幅方向に沿う方向に延びる枢支軸芯Xを揺動支点にして昇降リンク20に対して揺動することを可能にしている。
【0024】
草刈装置10における支持フレーム24が左右の昇降リンク20に支持され、左右の昇降リンク20が油圧シリンダ21の短縮作動によって下降操作されると、草刈装置10が左右の昇降リンク20によって下降操作される。図2に示されるように、草刈装置10が下降操作されて接地輪27が地面Gに当たると、草刈装置10が下降作業状態になり、草刈装置10の下面側が地面Gの近くで車体前後向きになる。刈り刃ハウジング11は、支持フレーム24が支持する左右の前揺動支持杆32及び左右の後揺動支持杆34による吊り下げ支持によって作業状態に維持される。草刈作業を行う場合、図2に示されるように、左の連結部26aに装備されている第1ロックピン30が左の昇降リンク20に備えられている第1ピン穴20c(図4参照)に挿入され、支持フレーム24における左右の連結部26aにおいて、連結部26aが備えるピン穴26b(図4参照)と、昇降リンク20が備える第2ピン穴20dとに第2ロックピン28が装着されることにより、支持フレーム24が昇降リンク20に対して揺動しないようにロックされ、草刈装置10の枢支軸29を揺動支点にした揺動が防止される。草刈作業を行う場合、取付け角調節機構40を操作することにより、左右の前揺動支持杆32及び左右の後揺動支持杆34の支持フレーム24に対する取付け角が調節されて刈り刃ハウジング11の吊り高さが変更され、草刈高さを調節できる。取付け角調節機構40を刈り刃ハウジング11の上昇側に操作するとき、刈り刃ハウジング11の荷重が取付け角調節機構40に掛かるが、左右の後揺動支持杆34に連結されている援助スプリング45によって刈り刃ハウジング11の上昇操作が援助される。
【0025】
左右の昇降リンク20が油圧シリンダ21の伸長作動によって上昇操作されると、草刈装置10が左右の昇降リンク20によって上昇操作され、左右の昇降リンク20が上昇エンドなど設定高さまで上昇すると、草刈装置10が上昇非作業状態になり、草刈装置10の下面側が地面Gに対して上方に離れて位置する。
【0026】
草刈装置10のメンテンナスなどを行う場合、図4に示されるように、ミッションケース8から草刈装置10に動力伝達する回転軸9(図1参照)を取り外し、第1ロックピン30が左の昇降リンク20の第1ピン穴20cから抜き外され、左右の第2ロックピン28が連結部26a、および、昇降リンク20の第1ピン穴20cから抜き外され、昇降リンク20が上昇状態に操作されると、草刈装置10の後端側が枢支軸芯Xを揺動支点にして下降することが可能になり、草刈装置10の底面側が前向きになり、かつ、草刈装置10が対地浮上するメンテナンス姿勢で草刈装置10を昇降リンク20に吊り下げ支持させることができる。対地浮上は、地面Gに対して浮上することのみならず、地面G以外の作業床に対して浮上することを含む。この場合、第1ロックピン30が左の昇降リンク20に備えられている第2ピン穴20d(図4参照)に挿入されることにより、支持フレーム24が昇降リンク20に対して揺動しないように第1ロックピン30によって固定される。草刈装置10が枢支軸芯Xを揺動支点にして揺れ動くことを防止できる。
【0027】
草刈装置10がメンテナンス姿勢で昇降リンク20によって支持される場合、油圧シリンダ21に連係する油圧回路に作動油の漏れが発生すると、左右の昇降リンク20が下降して草刈装置10が下がるが、図4に示されるように、車体に装備されているロック部材としてのフック部材51によって草刈装置10の下降を防止できる。
【0028】
すなわち、図2,5に示されるように、運転部5の下部に、車体のうちの車体フレームを構成する運転部フレーム50が設けられている。運転部フレーム50は、左右一対の第1運転部フレーム50a、第2運転部フレーム50bおよび連結フレーム54を備えている。左右の第1運転部フレーム50aは、ミッションケース8の前部から前上向きに延ばされ、延伸端部が運転部床5aの前部における下部に連結される状態で設けられている。左右一対の第2運転部フレーム50bは、ミッションケース8に備えられた支軸20aから前上向きに延ばされ、延伸端部が第1運転部フレーム50aの延伸端部よりも後方で運転部床5aの下部に連結される状態で設けられている。第2運転部フレーム50bと運転部床5aとの連結は、連結座部60を介して行われる。連結フレーム54は、左右の第1運転部フレーム50aの途中箇所、および、左右の第2運転部フレーム50bの途中箇所に連結され、左右の第1運転部フレーム50aおよび左右の第2運転部フレーム50bを連結している。
【0029】
図5に示されるように、フック部材51は、左右の昇降リンク20のそれぞれに対応させて設けられている。左右のフック部材51は、フック部材51の基部に備えられた支軸52を介して支持部54aに枢支されている。支持部54aは、連結フレーム54に形成されている。左右のフック部材51は、車体のうちの運転部フレーム50における連結フレーム54に装備されている。
【0030】
左右のフック部材51は、図5,6,7に示されるように、フック部材51の基部に連結された連結部材53によって連動連結されており、支軸52を揺動支点にして連動して下降ロック姿勢と上昇ロック解除姿勢とにわたって昇降可能な状態で支持されている。左右のフック部材51は、図6,7に示されるように、上昇解除姿勢になると、フック部材51の背部が連結フレーム54に当って受け止め支持され、上昇ロック解除姿勢に連結フレーム54によって姿勢決めされる。左右のフック部材51は、右のフック部材51に連結されたスプリング55によって上昇解除姿勢に揺動付勢されている。左右のフック部材51は、図5に示されるように、連結部材53、連結部材53に連結されたリンク部材56、リンク部材56に一端部が連結された操作ケーブル57を介して操作ペダル58に連動連結されている。操作ペダル58は、運転部5に設けられている。
【0031】
左右のフック部材51は、操作ペダル58に替えて、操作レバーなどの各種の操作具の採用が可能である。
【0032】
図4に示されるように、草刈装置10がメンテンス姿勢で昇降リンク20に支持される場合、左右のフック部材51が下降ロック姿勢に姿勢変更されると、左右のフック部材51の先端部が昇降リンク20に備えられているロックピン59に係合する。すなわち、左右のフック部材51は、下降ロック姿勢にされると、昇降リンク20にロックピン59を介して連結し、支軸52を介して連結フレーム54に連結した状態になり、昇降リンク20を上昇状態で連結フレーム54に保持させる。油圧シリンダ21に連係する油圧回路において作動油が漏れても、左右の昇降リンク20の下降がフック部材51によって防止される。
【0033】
図6,7に示されるように、左右のフック部材51が上昇ロック解除姿勢に姿勢変更されると、左右のフック部材51の先端部が昇降リンク20のロックピン59から外れ、左右のフック部材51は、昇降リンク20との連結を解除し、かつ、連結フレーム54との連結を解除して昇降リンク20の昇降を可能にする。左右のフック部材51は、上昇ロック解除姿勢に姿勢変更されると、振動などによって下降ロック姿勢に姿勢変化しないように、上昇ロック解除姿勢にスプリング55によって保持される。
【0034】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、刈り刃ハウジング11が前揺動支持杆32及び後揺動支持杆34によって吊り下げ支持される例を示したが、これに限らない。たとえば、前揺動支持杆32及び後揺動支持杆34を備えず、支持フレーム24が刈り刃ハウジング11に固定された状態で昇降リンク20の支持部20bに枢支され、枢支軸芯Xよりも後方において、刈り刃ハウジング11を吊り下げ支持する状態と、吊り下げ支持を解除する状態とに切り換え可能な支持杆を左右の昇降リンク20と刈り刃ハウジング11とにわたって設けたものであってもよい。
【0035】
(2)上記した実施形態では、左右のフック部材51を設けた例を示したが、左右の昇降リンク20は、左右のリフトリンク23、左右のリフトアーム22および回転支軸22aを介して連動連結されているので、左右の昇降リンク20のいずれか一方のみに作用する一つだけのフック部材51を設けたものであってもよい。
【0036】
(3)上記した実施形態では、フック部材51が車体のうちの運転部フレーム50における連結フレーム54に装備された例を示したが、昇降リンク20に装備され、第1運転部フレーム50aに係脱されるものであってもよい。上記した実施形態では、フック部材51がロック部材として採用された例を示したが、これに限らない。たとえば、一端側が運転部フレーム50及び昇降リンク20の一方に支持され、他端側が運転部フレーム50及び昇降リンク20の他方の連結穴に係脱可能なロッドなどであってもよい。ロック部材を連結する車体としては、運転部フレーム50以外のどのような車体部分を採用したものであってもよい。
【0037】
(4)上記した実施形態では、油圧シリンダ21が採用されているが、これに限らず、油圧モータが採用されたものであってもよい。
【0038】
(5)上記した実施形態では、フック部材51の切り換え操作を運転部で行う構成を採用しているが、車体の外部で行う構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、車体の前方に位置する草刈装置と、車体から草刈装置の上方へ揺動昇降可能に延ばされ、草刈装置を昇降操作可能に支持する昇降リンクと、昇降リンクを揺動操作する油圧アクチュエータと、が備えられ、昇降リンクは、草刈装置を底面側が車体前後向きになる作業姿勢で支持する下降状態と、草刈装置を対地上昇すると共に底面側が前向きになるメンテナンス姿勢で支持する上昇状態とに切り換え可能に構成された乗用草刈機に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
10 草刈装置
20 昇降リンク
20b 支持部
21 油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)
54 車体(連結フレーム)
51 ロック部材(フック部材)
55 スプリング
X 枢支軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7