(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】炭化水素製造システム
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20231222BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20231222BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020135625
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】今川 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 周
(72)【発明者】
【氏名】酒井 真利
(72)【発明者】
【氏名】平林 武史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 一伸
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142806(JP,A)
【文献】特開2019-108302(JP,A)
【文献】特開昭51-55780(JP,A)
【文献】特開2019-108290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/12
C07C 9/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素製造システムであって、
水素と、大気中の二酸化炭素とから炭化水素を製造する炭化水素製造装置と、
排出ガス中の二酸化炭素を吸着して、分離する二酸化炭素分離装置と、
前記二酸化炭素分離装置から得た熱を、熱媒を介して前記炭化水素製造装置へと供給する熱交換器と、
を備え、
前記炭化水素製造装置は、
大気中の二酸化炭素を吸蔵可能な吸蔵成分であって、金属酸化物と金属水酸化物との少なくとも一方を含む吸蔵成分と、水素と二酸化炭素とを用いて炭化水素を合成する合成触媒と、を収容する第1反応器と、
前記第1反応器に水素を供給する第1水素供給部と、
前記第1反応器に供給される大気の流量と、水素の流量と、をそれぞれ制御する流量制御部と、
を有し、
前記熱交換器は、前記二酸化炭素分離装置に供給された前記排出ガスを除熱し、除熱により得た熱を、前記炭化水素製造装置の前記第1反応器へと供給する、炭化水素製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素製造システムであって、
前記二酸化炭素分離装置は、さらに、
前記排出ガス中の二酸化炭素と、供給された水素とを用いて、発熱を伴って炭化水素を製造する反応触媒を収容する第2反応器と、
前記第2反応器に水素を供給する第2水素供給部と、
を有し、
前記熱交換器は、前記排出ガスの除熱により得た熱に代えて、又は、前記排出ガスの除熱により得た熱に加えて、前記第2反応器における炭化水素の製造より生じた熱を前記第1反応器へと供給する、炭化水素製造システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の炭化水素製造システムであって、
前記二酸化炭素分離装置は、さらに、前記排出ガス中の二酸化炭素を吸着すると共に、吸着した二酸化炭素を分離可能な成分を収容する吸着塔を有し、
前記熱交換器は、前記二酸化炭素分離装置から得た熱を、第1反応器に加えてさらに前記吸着塔へと供給する、炭化水素製造システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の炭化水素製造システムであって、
前記炭化水素製造装置は、さらに、前記第1反応器から排出されるガスに含まれる二酸化炭素の濃度を取得する濃度取得部を有し、
前記流量制御部は、前記濃度取得部により取得された二酸化炭素の濃度が20ppm以上400ppm以下の場合に、前記第1反応器への大気の供給を停止し、かつ、前記第1水素供給部から前記第1反応器への水素の供給を開始する、炭化水素製造システム。
【請求項5】
請求項4に記載の炭化水素製造システムであって、
前記流量制御部は、前記濃度取得部により取得された二酸化炭素の濃度が20ppm以上150ppm以下の場合に、前記第1反応器への大気の供給を停止し、かつ、前記第1水素供給部から前記第1反応器への水素の供給を開始する、炭化水素製造システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の炭化水素製造システムであって、さらに、
前記熱交換器による前記熱媒の流量を制御する熱媒制御部を備え、
前記炭化水素製造装置は、複数の前記第1反応器を有し、
前記熱媒制御部は、前記複数の第1反応器の内、前記第1水素供給部により水素が供給されている前記第1反応器に対して、前記熱媒の流量を制御して供給する、炭化水素製造システム。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の炭化水素製造システムであって、さらに、
前記熱交換器による前記熱媒の流量を制御する熱媒制御部を備え、
前記熱媒制御部は、前記熱交換器から前記第1反応器に対して、流量を制御した前記熱媒を常に供給する、炭化水素製造システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の炭化水素製造システムであって、さらに、
前記熱媒を加熱する加熱部を有する、炭化水素製造システム。
【請求項9】
請求項8に記載の炭化水素製造システムであって、さらに、
前記熱媒の温度を検出する第1温度センサと、
前記加熱部による前記熱媒の加熱を制御する加熱制御部と、
を備え、
前記炭化水素製造装置は、さらに、前記第1反応器の温度を検出する第2温度センサを有し、
前記加熱制御部は、
前記第1温度センサにより検出された前記熱媒の温度が第1温度未満の場合に、前記加熱部により前記熱媒を加熱し、
前記第1温度センサにより検出された前記熱媒の温度が前記第1温度未満から前記第1温度以上へと変化した場合に、前記加熱部による前記熱媒の加熱を停止し、
前記流量制御部は、前記第2温度センサにより検出された前記第1反応器の温度が前記第1温度よりも高い第2温度を超える場合に、前記第1水素供給部から前記第1反応器への水素の供給を停止する、炭化水素製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素を吸蔵する触媒を用いて、複数の種類のガスを含む混合ガスから二酸化炭素を分離し、分離した二酸化炭素から燃料としての炭化水素を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、1つの反応器に収容されたメタン化触媒と二酸化炭素吸蔵成分とにより、メタンが製造される技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、複数の反応器を備えるメタン製造システムが記載されている。このシステムでは、一の反応器からの排出ガス(排ガス)が他の反応器へと供給可能であり、複数の反応器内で連続的にメタンが製造され、かつ、メタン濃度が高い混合ガスが製造される。特許文献3に開示されたメタン製造システムは、複数の反応器を備え、反応器の排ガス中の二酸化濃度の濃度に応じて、二酸化炭素を含む混合ガスを供給する反応器を切り替えている。特許文献4に記載されたメタン製造装置では、反応器に窒素酸化物を浄化する触媒と窒素酸化物を吸蔵する成分とが収容されており、反応器の排ガス中の二酸化炭素と共に窒素酸化物も除去されている。非特許文献1,2には、メタン化触媒としてのRuと、二酸化炭素吸蔵成分としてCaO,担体としてAl2O3とを用いることが記載されている。非特許文献3には、二酸化炭素吸蔵成分としてCa,Naを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/007825号公報
【文献】特開2019-108290号公報
【文献】特開2019-108302号公報
【文献】特開2019-210260号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Melis S. Duyar, Martha A. Arellano Trevino, Robert J. Farrauto," Dual function materials for CO2 capture and conversion using renewable H2", Applied Catalysis B: Environmental, June 2015, Volumes 168-169, Pages 370-376
【文献】Shuoxun Wang, Erik T. Schrunk, Harshit Mahajan and And Robert J. Farrauto, " The Role of Ruthenium in CO2 Capture and Catalytic Conversion to Fuel by Dual Function Materials (DFM)", Catalysts 2017 7(3) 88
【文献】A. Bermejo-Lopez, B. Pereda-Ayo, J.A. Gonzalez-Marcos, J.R. Gonzalez-Velasco," Mechanism of the CO2 storage and in situ hydrogenation to CH4. Temperature and adsorbent loading effects over Ru-CaO/Al2O3 and Ru-Na2CO3/Al2O3 catalysts", Applied Catalysis B: Environmental, Volume 256, 5 November 2019, Article 117845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
混合ガスに含まれる二酸化炭素から炭化水素を製造し、製造した炭化水素を燃料として使用するシステムは、外部からの電力等のエネルギーが使用されることにより、排ガス中の二酸化炭素から燃料としての炭化水素へと再生している。そのため、このシステムでは外部から供給されるエネルギーを低減して再生を行い、システムを高効率化したいという課題がある。
【0007】
特許文献1に記載されたシステムでは、1つの反応器内に収容された二酸化吸蔵成分が飽和するまで二酸化炭素を吸蔵させているが、実際のシステムの使用を考慮した供給ガスの制御などについては言及されていない。非特許文献1~3には、反応器に収容される触媒について記載されているものの、システム全体の高効率化に関する記載はない。また、特許文献2~4のいずれにも、システム内の温度や熱に関する高効率化について検討されていない。このように、システム内の熱を利用した高効率化については改善の余地がある。特に、大気中の低濃度の二酸化炭素を利用して炭化水素を製造する場合には、反応器内の温度が大気によって冷却されてしまう。反応器内に炭化水素を製造するための触媒も収容されていると、反応器を加熱する必要があり、反応器を加熱するための外部エネルギーの低減について改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、システム全体のエネルギー効率を向上させた炭化水素製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0010】
(1)本発明の一形態によれば、炭化水素製造システムが提供される。この炭化水素製造システムは、排出ガス中の二酸化炭素を吸着して、分離する二酸化炭素分離装置と、前記二酸化炭素分離装置から得た熱を、熱媒を介して前記炭化水素製造装置へと供給する熱交換器と、を備え、前記炭化水素製造装置は、大気中の二酸化炭素を吸蔵可能な吸蔵成分であって、金属酸化物と金属水酸化物との少なくとも一方を含む吸蔵成分と、水素と二酸化炭素とを用いて炭化水素を合成する合成触媒と、を収容する第1反応器と、前記第1反応器に水素を供給する第1水素供給部と、前記第1反応器に供給される大気の流量と、水素の流量と、をそれぞれ制御する流量制御部と、を有し、前記熱交換器は、前記二酸化炭素分離装置に供給された前記排出ガスを除熱し、除熱により得た熱を、前記炭化水素製造装置の前記第1反応器へと供給する。
【0011】
この構成によれば、二酸化炭素分離装置に供給される排出ガス(排ガス)は、熱交換器の熱媒により除熱される。二酸化炭素分離装置は、供給される排ガスが低温である場合に二酸化炭素(CO2)の吸着性能が向上する。このため、除熱に伴う排出ガスの温度の低下によって、二酸化炭素分離装置における二酸化炭素の吸着性能を向上できる。さらに、熱交換器により排ガスから得られた熱は、第1反応器内の合成触媒の加熱に利用される。この結果、吸蔵成分がCO2を吸蔵する際に、大気により冷却された第1反応器内の合成触媒を加熱できるため、昇温された合成触媒の処理性能が向上する。このように、熱交換器による熱媒を介した熱利用により、炭化水素製造システムの全体のエネルギー効率が向上し、システムを稼働させるために必要な第1反応器を加熱するための外部エネルギーを低減できる。
【0012】
(2)上記形態の炭化水素製造システムにおいて、前記二酸化炭素分離装置は、さらに、前記排出ガス中の二酸化炭素と、供給された水素とを用いて、発熱を伴って炭化水素を製造する反応触媒を収容する第2反応器と、前記第2反応器に水素を供給する第2水素供給部と、を有し、前記熱交換器は、前記排出ガスの除熱により得た熱に代えて、又は、前記排出ガスの除熱により得た熱に加えて、前記第2反応器における炭化水素の製造より生じた熱を前記第1反応器へと供給してもよい。
この構成によれば、熱交換器により、第2反応器内の炭化水素製造時に発熱している第2反応器が冷却される。第2反応器が冷却されることにより、第2反応器内の反応触媒の炭化水素製造能力が向上する。さらに、熱交換器により第2反応器から得られた熱は、第1反応器内の合成触媒の加熱に利用される。この結果、炭化水素製造システムの全体のエネルギー効率が向上し、システムを稼働させるための外部エネルギーを低減できる。
【0013】
(3)上記形態の炭化水素製造システムにおいて、前記二酸化炭素分離装置は、さらに、前記排出ガス中の二酸化炭素を吸着すると共に、吸着した二酸化炭素を分離可能な成分を収容する吸着塔を有し、前記熱交換器は、前記二酸化炭素分離装置から得た熱を、第1反応器に加えてさらに前記吸着塔へと供給してもよい。
この構成によれば、第2反応器内の炭化水素製造時の発熱により得られた熱が、第1反応器の加熱に加えて、排ガス中のCO2の吸着から分離に必要な熱としても利用される。これにより、炭化水素製造システムの全体のエネルギー効率がさらに向上し、システムを稼働させるための外部エネルギーを低減できる。
【0014】
(4)上記形態の炭化水素製造システムにおいて、前記炭化水素製造装置は、さらに、前記第1反応器から排出されるガスに含まれる二酸化炭素の濃度を取得する濃度取得部を有し、前記流量制御部は、前記濃度取得部により取得された二酸化炭素の濃度が20ppm以上400ppm以下の場合に、前記第1反応器への大気の供給を停止し、かつ、前記第1水素供給部から前記第1反応器への水素の供給を開始してもよい。
この構成によれば、吸蔵成分が供給された大気からCO2を吸蔵している場合に、吸蔵成分が吸蔵できなくなったCO2が外気へと排出されることを抑制できる。この結果、本構成のシステムでは、システム内で循環しているCO2を高効率で再利用できる。
【0015】
(5)上記形態の炭化水素製造システムにおいて、前記流量制御部は、前記濃度取得部により取得された二酸化炭素の濃度が20ppm以上150ppm以下の場合に、前記第1反応器への大気の供給を停止し、かつ、前記第1水素供給部から前記第1反応器への水素の供給を開始してもよい。
この構成によれば、大気の供給を停止するためのCO2の濃度基準の最大値がさらに小さく設定されている。そのため、システム内で循環しているCO2をさらに高効率で再利用できる。
【0016】
(6)上記形態の炭化水素製造システムにおいて、さらに、前記熱交換器による前記熱媒の流量を制御する熱媒制御部を備え、前記炭化水素製造装置は、複数の前記第1反応器を有し、前記熱媒制御部は、前記複数の第1反応器の内、前記第1水素供給部により水素が供給されている前記第1反応器に対して、前記熱媒の流量を制御して供給してもよい。
この構成によれば、複数の第1反応器の内、いずれかの第1反応器の吸蔵成分がCO2を吸蔵しつつ、別の第1反応器で吸蔵成分から二酸化炭素を分離できる。この結果、より短時間で、システムの外部へとCO2を排出せずに、高効率でCO2をシステム内で再利用できる。
【0017】
(7)上記形態の炭化水素製造システムにおいて、さらに、前記熱交換器による前記熱媒の流量を制御する熱媒制御部を備え、前記熱媒制御部は、前記熱交換器から前記第1反応器に対して、流量を制御した前記熱媒を常に供給してもよい。
この構成によれば、熱媒の流路を開閉するためのバルブを備えてなくてもよい。これにより、システム全体の構成を簡素化した上で、吸蔵成分からCO2を脱離する際の第1反応器での処理能力を高くし、かつ、一酸化炭素(CO)が発生しない温度に維持できる。
【0018】
(8)上記形態の炭化水素製造システムにおいて、さらに、前記熱媒を加熱する加熱部を有してもよい。
この構成によれば、燃焼器から得られる熱が少ない場合に、加熱部により第1反応器へと供給される熱媒を加熱できる。この結果、吸蔵成分がCO2を脱離する際の第1反応器の温度をより適切な温度に設定できるため、第1反応器の処理性能が向上する。
【0019】
(9)上記形態の炭化水素製造システムにおいて、さらに、前記熱媒の温度を検出する第1温度センサと、前記加熱部による前記熱媒の加熱を制御する加熱制御部と、を備え、前記炭化水素製造装置は、さらに、前記第1反応器の温度を検出する第2温度センサを有し、前記加熱制御部は、前記第1温度センサにより検出された前記熱媒の温度が第1温度未満の場合に、前記加熱部により前記熱媒を加熱し、前記第1温度センサにより検出された前記熱媒の温度が前記第1温度未満から前記第1温度以上へと変化した場合に、前記加熱部による前記熱媒の加熱を停止し、前記流量制御部は、前記第2温度センサにより検出された前記第1反応器の温度が前記第1温度よりも高い第2温度を超える場合に、前記第1水素供給部から前記第1反応器への水素の供給を停止してもよい。
この構成によれば、吸蔵成分からCO2を脱離する際の第1反応器の温度は、合成触媒の処理性能が高い温度の第1温度と同等もしくは高く、かつ、COが発生しない温度の第1温度未満に維持される。この結果、吸蔵成分からCO2を脱離する際の第1反応器の処理性能がさらに向上する。
【0020】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、炭化水素製造システム、メタン製造システム、炭化水素製造装置、燃焼装置、炭化水素製造方法および炭化水素製造システムの制御方法これら装置や方法を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態としてのメタン製造システムの概略ブロック図である。
【
図2】反応器へと供給される熱媒の流量についての説明図である。
【
図3】本実施形態のメタン製造方法のフローチャートである。
【
図4】第2実施形態のメタン製造システムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としてのメタン製造システム(炭化水素製造システム)300の概略ブロック図である。メタン製造システム300は、二酸化炭素(CO
2)から炭化水素であるメタンを製造し、製造したメタンを燃料として燃焼するシステムである。
図1に示されるように、メタン製造システム300は、CO
2と水素(H
2)とからメタンを製造する第1メタン製造装置(炭化水素製造装置)100と、製造されたメタンを燃料として燃焼する燃焼器1と、燃焼器1による燃焼後に発生する二酸化炭素を含む排気ガス(排ガス)が供給される第2メタン製造装置(二酸化炭素分離装置)200と、を備えている。
【0023】
第1メタン製造装置100は、CO2を吸蔵すると共にメタンを製造する触媒(吸蔵成分、合成触媒)5を収容している反応器(第1反応器)4と、反応器4にH2を供給する第1H2供給部(第1水素供給部)20と、第1H2供給部20から反応器4へと供給されるH2の流量を制御するバルブ9と、大気を反応器4へと送り込むためのポンプ2と、ポンプ2から反応器4へと供給される大気の流量を制御するバルブ3と、反応器4から排出される排出ガス(排ガス)中のCO2濃度を検出するCO2濃度センサ(濃度取得部)7と、反応器4から排出されて第2メタン製造装置200へと供給される混合ガスの流量を制御する三方弁のバルブ6と、後述する熱交換器14から反応器4へと供給される熱媒HCを加熱する加熱部12と、加熱部12内を流れて反応器4へと供給される熱媒HCの温度を検出する第1温度センサ13と、反応器4内の温度を検出する第2温度センサ11と、加熱部12から反応器4へと供給される熱媒HCの流量を制御する熱媒供給部10と、各センサ7,11,13の検出値を取得すると共に各バルブ3,6,9、熱媒供給部10、およびポンプ2を制御する制御部8と、を備えている。
【0024】
反応器4に収容されている触媒5は、大気中のCO2を吸蔵可能な吸蔵成分としてのCaOと、CO2とH2とからメタンを合成する合成触媒のRuと、の混合物である。反応器4では、ポンプ2により大気が供給されて、吸蔵成分が大気中のCO2を吸蔵する。その後、第1H2供給部20から供給されたH2と、吸蔵成分に吸蔵されていたCO2とが、合成触媒により下記式(1)に示されるメタン化反応を生じさせることにより、メタンが製造される。
CO2+4H2 → CH4+2H2O ・・・(1)
【0025】
図1に示されるように、制御部8は、バルブ6を制御することにより、反応器4から排出される混合ガスを大気に排出できる。制御部8は、触媒5にCO
2を吸蔵させるCO
2吸蔵工程では、バルブ3を開いて、ポンプ2を作動させることにより反応器4に大気を供給させ、かつ、バルブ9を閉じ、バルブ6を開いて外気に接続する。これにより、触媒5によりCO
2が吸蔵された後の窒素(N
2)等を含む混合ガスは大気へと放出される。
【0026】
CO2吸蔵工程において、CO2濃度センサ7は、反応器4の排ガス中のCO2濃度が100ppmを超える状態を監視している。本実施形態では、CO2濃度が100ppmを越えると、CO2濃度センサ7は、制御部8へと制御信号を送信する。制御信号を受信した制御部8は、CO2吸蔵工程を停止して、第1H2供給部20から反応器4へとH2を供給してCO2とH2とからメタンを製造する還元工程を開始する。還元工程では、制御部8は、開いていたバルブ3を閉じ、かつ、閉じていたバルブ9を開き、さらにバルブ6を制御することにより反応器4の出口と第2メタン製造装置200とを接続する。還元工程が開始されてから所定時間が経過すると、制御部8は、バルブ3,6,9を制御して、還元工程からCO2吸蔵工程へと切り替える。本実施形態における制御部8、ポンプ2、およびバルブ3,9は、流量制御部に相当する。なお、熱媒HCについての説明は後述する。
【0027】
図1に示されるように、燃焼器1は、反応器4により製造されたメタンと、後述する第2メタン製造装置200のメタン化反応器18により製造されたメタンとを、大気から供給された空気と混合して燃焼する。燃焼された高温の排ガスは、熱交換器14へと供給される。
【0028】
第2メタン製造装置200は、燃焼器1の排ガス中のCO
2を分離して変換することにより、炭化水素であるメタンを製造する。
図1に示されるように、第2メタン製造装置200は、H
2を供給する第2H
2供給部(第2水素供給部)21と、第2H
2供給部21から供給されたH
2と排ガス中のCO
2とを用いてメタン化反応により炭化水素としてのメタンを製造するメタン化反応器(第2反応器)18と、メタン化反応器18および反応器4から燃焼器1へと供給されるメタンを含む混合ガスを除湿する除湿器19と、燃焼器1の排ガスが供給されて排ガスを除熱する熱交換器14と、熱交換器14により除熱された排ガスからCO
2を分離してメタン化反応器18へと供給するCO
2吸着器(吸着塔)17と、熱交換器14からCO
2吸着器17へと供給される排ガス中の水分を除去する除湿器15と、を備えている。
【0029】
メタン化反応器18には、CO2とH2とを用いて上記式(1)に示されるメタン化反応を生じさせる反応触媒22のRuが収容されている。そのため、メタン化反応器18内では、第2H2供給部21から供給されたH2と、CO2吸着器17から供給されたCO2とにより、メタンが製造される。なお、本実施形態では、メタン化反応器18内の反応触媒22と、反応器4内の合成触媒とは、同じ触媒のRuである。熱交換器14は、燃焼器1から排出される高温の排ガスを除熱し、除熱により得た熱を、熱媒HCを介して反応器4の加熱に利用する。なお、本実施形態の熱媒HCは、オイルであり、配管中を流れるように構成されている。
【0030】
熱交換器14により除熱された排ガスは、除湿器15により水分が除去され、CO
2吸着器17に供給される。CO
2吸着器17は、供給された排ガス中のCO
2を吸着する触媒としてのゼオライトを収容している。ゼオライトによりCO
2が吸着された後の排ガスは、
図1に示されるように大気へと放出される。CO
2を吸着したゼオライトは、温度スイングにより、CO
2を分離する。分離したCO
2は、メタン化反応器18へと供給される。
【0031】
熱交換器14により加熱された熱媒HCは、制御部8による熱媒供給部10の制御により、熱交換器14と反応器4との間での循環が制御される。本実施形態では、反応器4の周囲に熱媒HCが流通できる二重管構造を採用しているため、燃焼器1により生成された熱は、熱媒HCを介して反応器4へと供給される。なお、他の実施形態では、熱交換器14は、マスフローコントローラを備え、熱媒HCの流量をより精密に制御してもよい。制御部8および熱媒供給部10は、熱媒制御部に相当する。
【0032】
本実施形態では、制御部8は、反応器4のCO2吸蔵工程では熱媒HCを循環させず、還元工程で熱媒HCを循環させる。制御部8は、第1温度センサ13の検出温度と、第2温度センサ11の検出温度とを常に取得している。制御部8は、取得した2つの検出温度に応じて、熱媒供給部10を制御する。具体的には、制御部8は、反応器4の工程がCO2吸蔵工程から還元工程に切り替わると、熱媒供給部10を制御して熱媒HCを循環させる。制御部8は、第1温度センサ13により検出される加熱部12内の熱媒HCの温度が250℃(第1温度)未満の場合に、加熱部12を制御して熱媒HCを加熱させる。制御部8は、加熱部12内の熱媒HCの温度が250℃以上に変化すると、熱媒HCの加熱を停止させる。一方で、還元工程に切り替わった際の加熱部12内の熱媒HCの温度が250℃よりも高い330℃(第2温度T2)を超えている場合には、制御部8は、熱媒HCの循環を停止させる。これは、反応器4内の温度が高すぎると、触媒5により一酸化炭素(CO)が製造されるおそれと、反応活性が低下するおそれと、があるためである。なお、制御部8は、加熱制御部に相当する。
【0033】
図2は、反応器4へと供給される熱媒HCの流量についての説明図である。
図2には、本実施形態の制御部8が、還元工程において、反応器4の温度と、反応器4へと供給されるH
2の供給量とに応じて決定する熱媒HCの流量マップが示されている。
図2に示されるように、制御部8は、反応器4へのH
2の供給量を横軸とし、閾値としての330℃から、第2温度センサ11により検出された反応器4の温度を差し引いた値を縦軸とした場合のマップから、反応器4へと供給させる熱媒HCの流量を決定する。
図2に示される実線は、熱媒HCの流量が同じ流量であること表している。すなわち、制御部8は、
図2の破線の矢印で示されるように、H
2の供給量が多く、かつ、温度差が大きいほど、反応器4へと供給する熱媒HCの流量を多くする。一方で、制御部8は、H
2の供給量が少なく、かつ、温度差が小さいほど、反応器4へと供給する熱媒HCの流量を小さくする。
【0034】
図3は、本実施形態のメタン製造方法のフローチャートである。
図3に示される製造フローでは、初めに、反応器4に収容されている触媒5にCO
2を吸蔵させるCO
2吸蔵工程が開始される(ステップS1)。CO
2吸蔵工程開始時に、制御部8は、バルブ3,6を開き、かつ、バルブ9を閉じた状態で、ポンプ2を作動させることにより、反応器4内へと大気を供給する。CO
2が吸蔵された大気は、反応器4から排出されバルブ6を介して排出される。
【0035】
CO2濃度センサ7は、バルブ6を介して外気に排出される排ガス中のCO2濃度を常に検出している(ステップS2)。制御部8は、CO2濃度センサ7により検出されたCO2濃度が100ppmを超えているか否かを判定する(ステップS3)。制御部8は、CO2濃度が100ppm以下と判定した場合には(ステップS3:NO)、引き続き、CO2濃度を監視する。
【0036】
一方で、制御部8は、CO2濃度が100ppmを超えていると判定した場合には(ステップS3:YES)、CO2吸蔵工程を停止し、反応器4で行われる工程を還元工程へと切り替える(ステップS4)。還元工程に切り替わると、制御部8は、開いていたバルブ3を閉じてポンプ2の動作を停止させ、バルブ9を開いて反応器4へとH2を供給し、バルブ6を第2メタン製造装置200へと接続する。また、制御部8は、熱媒供給部10を制御することにより、反応器4への熱媒HCの循環を開始させる(ステップS5)。
【0037】
制御部8は、第1温度センサ13により取得される加熱部12内の熱媒HCの温度が第1温度T1(250℃)よりも低いか否かを判定する(ステップS6)。加熱部12内の熱媒HCの温度が第1温度T1以上と判定された場合には(ステップS6:NO)、後述するステップS10の処理が行われる。一方で、制御部8は、加熱部12内の熱媒HCの温度が第1温度T1よりも低いと判定した場合には(ステップS6:YES)、加熱部12を作動させることにより熱媒HCを加熱する(ステップS7)。
【0038】
次に、制御部8は、第1温度センサ13により検出される加熱後の熱媒HCの温度が250℃を超えたか否かを判定する(ステップS8)。制御部8は、熱媒HCの温度が第1温度T1を超えていないと判定した場合には(ステップS8:NO)、引き続き、加熱部12により熱媒HCを加熱し続ける。一方で、制御部8は、熱媒HCの温度が第1温度T1を超えたと判定した場合には(ステップS8:YES)、加熱部12による熱媒HCの加熱を停止させて(ステップS9)、ステップS10の処理が行われる。
【0039】
ステップS10の処理では、制御部8は、第2温度センサ11により検出される反応器4の温度が第2温度T2(330℃)よりも高いか否かを判定する(ステップS10)。反応器4の温度が330℃を超えると判定された場合には(ステップS10:YES)、制御部8は、熱媒HCの循環を停止させ(ステップS11)、ステップS12の処理を行う。一方で、制御部8は、反応器4の熱媒HCの温度が第2温度T2以下と判定した場合には(ステップS10:NO)、還元工程に切り替わってからの時間が予め設定された所定時間を経過しているか否かを判定する(ステップS12)。
【0040】
還元工程に切り替わってからの時間が所定時間を経過していないと判定された場合には(ステップS12:NO)、ステップS6以降の処理が繰り返される。一方で、制御部8は、還元工程に切り替わってからの時間が所定時間を経過していると判定した場合には(ステップS12:YES)、熱媒供給部10を制御することにより、熱媒HCの循環を停止し、バルブ6,9を閉めて還元工程を停止する(ステップS13)。その後、制御部8は、所定の操作を受け付けるなどにより、メタン製造の終了を判定する(ステップS14)。制御部8は、メタン製造を終了しないと判定した場合には(ステップS14:NO)、ステップS1以降の処理を繰り返す。一方で、制御部8は、所定の操作を受け付けた場合にはメタン製造を終了すると判定し(ステップS14:YES)、メタン製造フローが終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のメタン製造システム300は、第1メタン製造装置100と、燃焼器1からCO2を含む排ガスが供給される第2メタン製造装置200と、熱交換器14とを備えている。第1メタン製造装置100は、CO2吸蔵成分およびメタン化反応を生じさせる合成触媒を収容している反応器4と、反応器4へとH2を供給する第1H2供給部20と、反応器4へと供給されるH2および大気の流量を制御する制御部8と、を備えている。燃焼装置200は、燃焼器1の排ガス中のCO2を分離するCO2吸着器17を備えている。熱交換器14は、熱媒HCを用いて、第2メタン製造装置200に供給された高温の排ガスを除熱し、除熱により得た熱を反応器4の加熱に利用する。そのため、本実施形態では、燃焼器1から排出される高温の排ガスは、熱交換器14の熱媒HCにより冷却される。CO2吸着器17は、供給される排ガスが低温である場合にCO2の吸着性能が向上する。このため、除熱に伴う排ガスの温度の低下によって、第2メタン製造装置200におけるCO2の吸着性能を向上できる。さらに、熱交換器14により排ガスから得られた熱は、還元工程を行っている反応器4の加熱に利用される。この結果、CO2吸蔵工程で大気により冷却された反応器4内の合成触媒を加熱できるため、還元工程時の反応器4の処理性能が向上する。このように、熱交換器14による熱媒HCを介した熱利用により、メタン製造システム300の全体のエネルギー効率が向上し、反応器4内の触媒5を加熱するための外部エネルギーを低減できる。
【0042】
また、本実施形態の第1メタン製造装置100は、反応器4の排ガス中のCO2濃度を検出するCO2濃度センサ7を備えている。制御部8は、反応器4でCO2吸蔵工程を行っている場合に、CO2濃度センサ7により検出されるCO2濃度が100ppmよりも高くなると、CO2吸蔵工程から還元工程へと切り替える。そのため、本実施形態の反応器4では、CO2吸蔵工程が行われている場合に、大量のCO2が外気へと排出されることを抑制できる。この結果、メタン製造システム300では、システム内で循環しているCO2を高効率で再利用できる。
【0043】
また、本実施形態の第1メタン製造装置100は、熱交換器14から反応器4へと供給される熱媒HCの温度を加熱する加熱部12を備えている。そのため、本実施形態では、燃焼器1から得られる熱が少ない場合に、加熱部12により反応器4へと供給される熱媒HCを加熱できる。この結果、還元工程時の反応器4の温度をより適切な温度に設定できるため、反応器4の処理性能が向上する。
【0044】
また、本実施形態の第1メタン製造装置100は、加熱部12内の熱媒HCの温度を検出する第1温度センサ13と、反応器4内の温度を検出する第2温度センサ11と、を備えている。制御部8は、
図3に示されるように、第1温度センサ13により検出された熱媒HCの温度が第1温度T1(250℃)未満の場合に、加熱部12により熱媒HCを加熱させる。また、制御部8は、第2温度センサ11により検出された反応器4の温度が第2温度T2(330℃)を超える場合に、熱媒HCの循環を停止させる。そのため、還元工程が行われている反応器4の温度は、合成触媒の処理性能が高く、かつ、COが発生しない温度に維持される。この結果、還元工程時の反応器4の処理性能がさらに向上する。
【0045】
<第1実施形態の変形例>
上記第1実施形態では、
図3に示されるように、反応器4へと熱媒HCが供給されるのは還元工程時であり、CO
2吸蔵工程時には熱媒HCが反応器4に供給されていない。それに対し、変形例の制御部8は、熱交換器14から反応器4へと流量を制御した熱媒HCを常に供給している。この場合に、制御部8は、第1温度センサ13および第2温度センサ11の検出温度を常に監視しており、上記第1実施形態と同じ250℃と330℃との閾値により、加熱部12と工程切替とを制御している。
【0046】
以上説明したように、この変形例では、熱交換器14と反応器4との間を熱媒HCが常時循環しているため、システムが熱媒HCの流路を開閉するためのバルブを備えてなくてもよい。これにより、システム全体の構成を簡素化した上で、還元工程での反応器4での処理能力を高くし、かつ、COが発生しない温度に維持できる。
【0047】
メタン製造装置100が複数の反応器4を有し、制御部8は、複数の反応器4の内、第1H2供給部20によりH2が供給されている反応器4に熱媒HCを供給してもよい。これにより、いずれかの反応器4でCO2吸蔵工程を行いつつ、別の反応器4で還元工程を行うことができる。この結果、より短時間で、外部へとCO2を排出せずに高効率で、CO2を再利用できる。
【0048】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態のメタン製造システム300aの概略ブロック図である。第2実施形態のメタン製造システム300aでは、第1実施形態のメタン製造システム300と比較して、第2メタン製造装置200aが備える熱交換器14aと、第1メタン製造装置100aが備える制御部8aとが異なり、他の構成等については第1実施形態と同じである。そのため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成等について説明し、その他の説明を省略する。
【0049】
第2実施形態の熱交換器14aは、燃焼器1の排ガスの除熱により得た熱に代えて、メタン化反応器18によるメタン化反応の発熱反応により得られた熱を、熱媒HCを介して反応器4と、CO2吸着器17との両方へと供給する。なお、第2実施形態のCO2吸着器17aは、反応器4と同じように二重管構造を有している。
【0050】
以上説明したように、第2実施形態のメタン製造システム300aでは、第2メタン製造装置200aは、メタン化反応器18へとH2を供給する第2H2供給部21と、排ガス中のCO2と第2H2供給部21からのH2とを用いてメタン化反応によりメタンを製造するメタン化反応器18と、を備えている。熱交換器14aは、燃焼器1の排ガスの除熱により得た熱に代えて、メタン化反応による発熱により得た熱を反応器4へと供給する。そのため、第2実施形態のメタン製造システム300aでは、熱交換器14により、メタン化反応が発生しているメタン化反応器18が冷却される。メタン化反応は、発熱反応であるため、冷却されることによりメタン製造能力が向上する。さらに、熱交換器14によりメタン化反応器18から得られた熱は、還元工程を行っている反応器4の加熱に利用される。この結果、メタン製造システム300aの全体のエネルギー効率が向上し、システムを稼働させるための外部エネルギーを低減できる。
【0051】
また、第2実施形態の第2メタン製造装置200aが備えるCO2吸着器17aは、排ガス中のCO2を吸着し、温度スイングによって吸着したCO2を分離できるゼオライトを収容している。熱交換器14aは、メタン化反応器18から得た熱を、ゼオライトからCO2を分離させる温度スイングにも利用する。そのため、第2実施形態のメタン製造システム300aでは、メタン化反応の発熱反応により得られた熱が、反応器4の加熱に加えて、排ガス中のCO2の吸着から分離に必要な熱としても利用される。これにより、メタン製造システム300aの全体のエネルギー効率がさらに向上し、システムを稼働させるための外部エネルギーを低減できる。
【0052】
<第2実施形態の変形例>
熱交換器14aは、燃焼器1の排ガスの除熱により得た熱に代えて、メタン化反応による発熱により得た熱を反応器4およびCO2吸着器17aへと供給したが、燃焼器1の排ガスの除熱と、メタン化反応による発熱と、の両方により得た熱を、反応器4とCO2吸着器17aとの少なくとも一方に供給してもよい。
【0053】
<上記実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0054】
[変形例1]
第1実施形態および第2実施形態のメタン製造システム300,300aは、一例であり、メタン製造システム300,300aが備える構成および実行する制御については、種々変形可能である。例えば、熱媒HCを循環させるための熱交換器14,14a,加熱部12,第1温度センサ13,および熱媒供給部10は、第1メタン製造装置100,100aと第2メタン製造装置200,200aとのいずれにも含まれずに、独立した構成としてメタン製造システム300,300aに備えられていてもよい。メタン製造システム300は、第1メタン製造装置100と、二酸化炭素を着脱可能な第2メタン製造装置200と、熱交換器14とを備えており、第1メタン製造装置100が、反応器4と、第1H2供給部20と、流量制御部とを有している範囲で変形可能である。そのため、第1メタン製造装置100,100aは、加熱部12、およびCO2濃度センサ7を備えていなくてもよく、その他の構成を備えていてもよい。また、第2メタン製造装置200,200aは、第2H2供給部21と、メタン化反応器18とを備えていなくてもよく、その他の構成を備えていてもよい。例えば、ポンプ2は、反応器4へと大気を送り込む機能を有する装置の範囲で変形可能であり、送風ファンなどであってもよい。熱交換器14,14aは、除湿器15を有する一体化した装置であってもよい。
【0055】
第1メタン製造装置100,100aおよび第2メタン製造装置200,200aが製造する炭化水素の一例としてメタンを例に挙げて説明したが、製造される炭化水素はメタン以外であってもよく、例えば、エタンやプロパンであってもよい。製造される炭化水素に応じて、反応器4およびメタン化反応器18に収容される合成触媒および反応触媒22は選択されればよい。また、反応器4およびメタン化反応器18の制御温度についても、収容される合成触媒および反応触媒22などに応じて適宜選択されればよい。上記第1実施形態の反応器4に収容された吸蔵成分は、CaOであったが、大気中のCO2を吸蔵可能な金属酸化物と金属水酸化物との少なくとも1つが選択されればよく、例えば、Na,Caであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、反応器4およびメタン化反応器18でメタン化反応を生じさせる合成触媒または反応触媒22として、上記第1実施形態では、Ruを例に挙げたが、Ru以外であってもよく、例えば、Ni等であってもよい。
【0056】
上記第1実施形態の第1温度センサ13は、加熱部12内に配置されたが、反応器4へと供給される熱媒HCの温度を検出可能な範囲で変形可能である。例えば、熱媒供給部10に配置されてもよいし、熱媒供給部10と加熱部12とを接続する配管内に配置されてもよい。同じように、第2温度センサ11は、反応器4の温度を検出可能な範囲で変形可能であり、例えば、反応器4から排出される熱媒出口の温度を検出してもよい。
【0057】
制御部8,8aは、第1メタン製造装置100,100aおよび第2メタン製造装置200,200aの各部を制御したが、制御機能毎に分けられていてもよい。例えば、熱媒供給部10を制御する制御部と、加熱部12を制御する制御部と、反応器4への供給される大気の流量を制御する制御部と、第1H2供給部20および第2H2供給部21を制御する制御部と、が独立した構成であってもよい。第1H2供給部20と第2H2供給部21とは1つの水素タンクで形成されて、分岐した配管と、制御部8,8aとにより、反応器4およびメタン化反応器18に供給されるH2の流量が制御されてもよい。
【0058】
上記第1実施形態および第2実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0059】
[変形例2]
上記第1実施形態の制御部8は、
図3のステップS3に示されるように、CO
2濃度センサ7により検出される反応器4の排ガス中のCO
2濃度と、閾値としての100ppmとの比較により、CO
2吸蔵工程から還元工程への切替を判定したが、切替判定については変形可能である。例えば、制御部8は、予め設定された閾値時間の経過判定によって、CO
2吸蔵工程から還元工程へと切り替えてもよい。また、制御部8は、CO
2濃度で切替を判定する場合に、閾値として20ppm以上400ppm以下を採用することが好ましい。さらに、制御部8は、閾値として20ppm以上150ppm以下を採用するとより好ましい。閾値の最大値を小さくすることにより、メタン製造システム300内で循環しているCO
2をさらに高効率で再利用できる。
【0060】
上記第1実施形態の制御部8は、
図3のステップS6,S8に示されるように、第1温度センサ13の検出温度と、閾値としての第1温度T1である250℃との比較により、加熱部12の動作を制御したが、加熱部12の動作判定については変形可能である。例えば、還元工程が行われてからの経過時間に応じて、加熱部12の動作のオン/オフを決定してもよい。加熱部12は、周知の装置を採用でき、電力によって動作するヒータ等でもよい。また、第1温度T1については、第1温度センサ13がメタン製造システム300内で配置される位置に応じて変化してもよいし、製造される炭化水素の種類や反応器4に収容される触媒5に応じて変化させてもよい。同じように、制御部8は、
図3のステップS10に示されるように、第2温度センサ11の検出温度が閾値としての第2温度T2である330℃を超えている場合に、還元工程を停止させたが、還元工程の停止判定については種々変形可能である。第2温度T2は、第1温度T1よりも高い温度であり、第2温度センサ11が配置される位置や反応器4の大きさに応じて変化してもよい。例えば、メタン製造システム300は、熱媒HCを冷却する冷却部を備えており、制御部8は、還元工程を終了させる代わりに、熱媒HCの冷却を開始させてもよい。
【0061】
図3に示されるメタン製造方法のフローチャートでは、説明の便宜上、還元工程が終了した時点でフローの終了が判定されているが、フローの開始および終了のタイミングについては、適宜変形できる。例えば、フローの終了判定は、CO
2吸蔵工程の途中で行われてもよいし、CO
2吸蔵工程または還元工程の途中で行われてもよい。
【0062】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…燃焼器
2…ポンプ(流量制御部)
3,9…バルブ(流量制御部)
4…反応器(第1反応器)
5…触媒(吸蔵触媒、合成触媒)
6…バルブ
7…CO2濃度センサ(濃度取得部)
8,8a…制御部(流量制御部、熱媒制御部、加熱制御部)
10…熱媒供給部(熱媒制御部)
11…第2温度センサ
12…加熱部
13…第1温度センサ
14,14a…熱交換器
15,19…除湿器
17,17a…CO2吸着器(吸着塔)
18…メタン化反応器(第2反応器)
20…第1H2供給部(第1水素供給部)
21…第2H2供給部(第2水素供給部)
22…反応触媒
100,100a…第1メタン製造装置(炭化水素製造装置)
200,200a…第2メタン製造装置(二酸化炭素分離装置)
300,300a…メタン製造システム(炭化水素製造システム)
HC…熱媒
T1…第1温度
T2…第2温度