(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】平型導体付電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20231222BHJP
【FI】
H01R12/77
(21)【出願番号】P 2020175547
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【氏名又は名称】藤岡 努
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐当 星太朗
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-69773(JP,A)
【文献】特開2007-4987(JP,A)
【文献】特開2015-149268(JP,A)
【文献】特開2003-109710(JP,A)
【文献】特開平4-322087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0054544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる帯状の平型導体の前端側部分を相手電気コネクタに嵌合接続するための平型導体付電気コネクタであって、
上記前後方向に延びる複数の回路部が上記平型導体の帯幅方向に配列して形成された該平型導体と、
上記平型導体の前端側部分を収容するハウジングと、
上記平型導体の前端側部分を支持可能に上記ハウジングに取り付けられるリテーナとを有する平型導体付電気コネクタにおいて、
上記ハウジングは、上記帯幅方向で最外端に位置する回路部同士の間の範囲内に位置し上記相手電気コネクタに対してロック可能なロック部と、上記平型導体の前端側部分とともに上記リテーナを収容する収容空間とを有しており、
上記平型導体の前端側部分は、上記帯幅方向で上記ロック部と少なくとも一部が重複する位置に、上記平型導体を該平型導体の厚み方向に貫通する貫通部が形成されており、
上記リテーナは、上記厚み方向に突出して上記平型導体の上記貫通部へ進入する突部を有し、該突部によって上記平型導体の後方への移動を規制可能となって
おり、
上記突部は、上記貫通部に挿通されて突出頂部が上記貫通部から突出して位置しており、
上記ハウジングは、上記収容空間を形成する壁部に、上記突出頂部の進入を許容する凹部を有し、該凹部の内面で上記帯幅方向での上記突部の移動を規制可能となっていることを特徴とする平型導体付電気コネクタ。
【請求項2】
上記ハウジングの上記凹部は、前後方向に延びるとともに後方に開放された溝状をなして形成されており、上記リテーナの上記突出頂部の後方からの進入を許容することとする請求項
1に記載の平型導体付電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型導体付電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
前後方向に延びる帯状の平型導体の前端側部分を相手コネクタに嵌合接続するためのコネクタが特許文献1に開示されている。この特許文献1のコネクタは、平型導体(フラット回路体)と、該平型導体の前端側部分を収容して保持するハウジング(スライダ)とを有しており、回路基板に実装された相手コネクタ(基板用コネクタ)へ後方から嵌合接続される。
【0003】
平型導体には、前後方向に延びる複数の回路部が該平型導体の帯幅方向に配列されて形成されている。該平型導体の前端側部分の両側縁部、換言すると、上記帯幅方向での回路部配列範囲の両外側には、ハウジングとの係合のための切欠き状のスライダ係合孔が形成されている。ハウジングには、該ハウジングの底壁の上面に沿ったスリット状の回路体挿入孔が形成されており、該回路体挿入孔に該平型導体の前端側部分が後方から挿入されるようになっている。ハウジングの上記帯幅方向での中央位置には、相手コネクタとのロックのためのロック部(ロックアーム)が設けられており、また、ハウジングの上記帯幅方向での両端部、すなわち上記ロック部と異なる位置には、平型導体のスライダ係合孔に対応する位置で、該スライダ係合孔の前端縁に係止可能な可撓係止片が設けられている。該可撓係止片は、前後方向に延び平型導体の厚み方向(上下方向)に弾性変形可能な弾性片と、該弾性片から下方へ突出した係止突起とを有している。
【0004】
平型導体の前端側部分をハウジングに取り付ける際、該前端側部分は、ハウジングの回路体挿入孔へ後方から挿入され、上記係止突起に後方から当接して上記弾性片を上方へ弾性変形させながら、さらに前方へ挿入される。スライダ係合孔が係止突起の位置に達すると、弾性片が自由状態に戻り、係止突起がスライダ係合孔へ上方から進入する。その結果、係止突起がスライダ係合孔の前端縁に対して後方から係止可能に位置し、ハウジングからの平型導体の不用意な抜けが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、平型導体付電気コネクタにおいては、平型導体の帯幅方向での小型化が要求されることが多い。しかし、特許文献1では、平型導体の抜けを防止するために、平型導体の両側縁にスライダ係合孔を形成するとともに、ハウジングの両端部に可撓係止片を設ける必要があり、上記帯幅方向で平型導体付電気コネクタを小型化することが困難であった。また、上記可撓係止片は上記ロック部と異なって位置しており、この点でも、上記帯幅方向での平型導体付電気コネクタの小型化が図られていない。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、ハウジングからの平型導体の不用意な抜けを防止しつつ、平型導体の帯幅方向での大型化を回避できる平型導体付電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る平型導体付電気コネクタは、前後方向に延びる帯状の平型導体の前端側部分を相手電気コネクタに嵌合接続するための平型導体付電気コネクタであって、上記前後方向に延びる複数の回路部が上記平型導体の帯幅方向に配列して形成された該平型導体と、上記平型導体の前端側部分を収容するハウジングと、上記平型導体の前端側部分を支持可能に上記ハウジングに取り付けられるリテーナとを有する。
【0009】
かかる平型導体付電気コネクタにおいて、本発明では、上記ハウジングは、上記平型導体の帯幅方向で最外端に位置する回路部同士の間の範囲内に位置し上記相手電気コネクタに対してロック可能なロック部と、上記平型導体の前端側部分とともに上記リテーナを収容する収容空間とを有しており、上記平型導体の前端側部分は、上記帯幅方向で上記ロック部と少なくとも一部が重複する位置に、上記平型導体を該平型導体の厚み方向に貫通する貫通部が形成されており、上記リテーナは、上記平型導体の厚み方向に突出して上記平型導体の上記貫通部へ進入する突部を有し、該突部によって上記平型導体の後方への移動を規制可能となっていることを特徴としている。
【0010】
本発明では、リテーナの突部を平型導体の貫通部に進入させて、該突部を該貫通部の前端縁に対して係止可能とすることにより、上記平型導体の後方への移動が規制され、ハウジングからの平型導体の不用意な抜けが防止される。ここで、平型導体の貫通部及びリテーナの突部は、平型導体の帯幅方向で最外端に位置する回路部同士の間の範囲内に位置している。したがって、本発明では、従来のように、上記帯幅方向での両端位置、換言すると、上記帯幅方向で最外端に位置する回路部よりもさらに外側の位置に、平型導体の抜けを防止するための機構を設ける必要がなくなるので、上記帯幅方向での平型導体付電気コネクタの大型化を回避できる。
【0011】
本発明において、上記リテーナの突部は、上記平型導体の上記貫通部に挿通されて突出頂部が上記貫通部から突出して位置しており、上記ハウジングは、上記収容空間を形成する壁部に、上記突部の上記突出頂部の進入を許容する凹部を有し、該凹部の内面で上記平型導体の帯幅方向での上記突部の移動を規制可能となっていてもよい。
【0012】
このように、ハウジングの凹部の内面で平型導体の帯幅方向でのリテーナの突部の移動を規制可能することにより、リテーナひいては平型導体の後方への抜けを防止するだけでなく、上記帯幅方向で位置決めすることができる。
【0013】
本発明において、上記ハウジングの上記凹部は、前後方向に延びるとともに後方に開放された溝状をなして形成されており、上記リテーナの上記突出頂部の後方からの進入を許容することとしてもよい。
【0014】
このように、上記凹部を後方へ開放された溝状とすることにより、リテーナをハウジングに対して後方から取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、以上のように、平型導体の抜けを防止するための平型導体の貫通部及びリテーナの突部は、平型導体の帯幅方向で最外端に位置する回路部同士の間の範囲内に位置している。したがって、従来のように、上記帯幅方向での両端位置、換言すると、上記帯幅方向で最外端に位置する回路部よりもさらに外側の位置に、平型導体の抜けを防止するための機構を設ける必要がなくなる。この結果、ハウジングからの平型導体の不用意な抜けを防止しつつ、上記帯幅方向での平型導体付電気コネクタの大型化を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気コネクタ組立体を後方側から見た斜視図であり、コネクタ嵌合前の状態を示している。
【
図2】
図1の電気コネクタ組立体を後方側から見た斜視図であり、コネクタ嵌合後の状態を示している。
【
図3】
図1の電気コネクタ組立体の平型導体付電気コネクタの各部材を分離した状態で示した斜視図である。
【
図4】(A)は平型導体の平面図であり、(B)は平型導体の底面図である。
【
図5】
図1の電気コネクタ組立体の平型導体付電気コネクタを単体で示す図であり、(A)は前方側から見た斜視図、(B)は前方から見た正面図である。
【
図6】
図5の平型導体付電気コネクタのリテーナを単体で示す図であり、(A)は前方側から見た斜視図、(B)は前方から見た正面図である。
【
図7】リテーナが取り付けられた平型導体を示す斜視図であり、(A)は上方側から見た状態、(B)が下方側から見た状態を示している。
【
図8】
図1の平型導体付電気コネクタの上下方向に対して直角な断面図であり、ハウジングの側方腕部とリテーナの側方被係止部の位置での断面を示している。
【
図9】(A)は
図1の平型導体付電気コネクタを後方から見た背面図であり、(B)は(A)の一部拡大図である。
【
図10】
図1の電気コネクタ組立体の相手電気コネクタを後方側から見た斜視図である。
【
図11】(A)は相手端子を後方側から見た斜視図であり、(B)は固定金具を後方側から見た斜視図である。
【
図12】
図2の電気コネクタ組立体のコネクタ幅方向に対して直角な面での断面図であり、(A)は相手端子の位置での断面図、(B)はハウジングのロック部及びリテーナの突部の位置での断面図、(C)は(B)の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1及び
図2は、本実施形態に係る電気コネクタ組立体の斜視図であり、
図1はコネクタ嵌合前の状態、
図2はコネクタ嵌合後の状態を示している。
図3は、
図1の電気コネクタ組立体の平型導体付電気コネクタの各部材を分離した状態で示した斜視図である。本実施形態では、電気コネクタ組立体は、前後方向(X軸方向)をコネクタ挿抜方向として挿抜可能に接続される平型導体付電気コネクタ1(以下、「コネクタ1」という)と相手電気コネクタ(以下、「相手コネクタ2」という)とを有している。コネクタ1は、前方(X1方向)へ向けて、回路基板(図示せず)の実装面に実装された相手コネクタ2へ嵌合されて、相手コネクタ2に嵌合接続される。
【0019】
コネクタ1は、前後方向に延びる平型導体Cと、平型導体Cの前端側部分を収容するハウジング10と、平型導体Cの前端側部分を後方から支持可能にハウジング10に取り付けられるリテーナ20とを有している。ハウジング10及びリテーナ20は、樹脂等の電気絶縁材で作られている。
【0020】
図4(A)は平型導体Cの平面図であり、
図4(B)は平型導体Cの底面図である。平型導体Cは、コネクタ幅方向(Y軸方向)を帯幅方向として前後方向(X軸方向)に延びる帯状をなしている。平型導体Cは、前後方向に延びる複数の回路部C1が平型導体Cの帯幅方向(Y軸方向)に配列されている。
図4(A)に見られるように、上記帯幅方向での平型導体Cの中央域には、回路部が存在しない回路部不存在範囲Sが形成されている。つまり、上記複数の回路部C1は、上記帯幅方向で回路部不存在範囲Sを隔てて二つの回路部群に区分されている。回路部C1は、平型導体Cの前端位置(X1側の端部位置)まで達している。
図4(A)に見られるように、回路部C1の前端側の部分は平型導体Cの上面にて露呈しており、その露呈した部分が、相手コネクタ2の後述の相手端子30と接触するための接触部C1Aをなしている。平型導体Cの前端側部分の下面には、
図4(B)に見られるように、補強板C2が貼付されており、前端側部分の補強が図られている。
【0021】
また、平型導体Cは、上記帯幅方向での回路部不存在範囲S内にて、接触部C1Aよりも後方位置で、平型導体Cの厚み方向、すなわち上下方向(Z軸方向)に貫通する貫通部C3が形成されている。貫通部C3は、四角形状の孔部をなしており、平型導体Cの本体とともに補強板C2をも貫通している(
図12(C)参照)。後述するように、貫通部C3は、リテーナ20の後述の突部21Cの上方から、すなわち平型導体Cの上面側からの挿通を許容する(
図7(B)、
図12(C)参照)。
【0022】
本実施形態では、
図4(A),(B)に見られるように、貫通部C3は、上記帯幅方向(Y軸方向)で平型導体Cの中央位置から若干Y2側に寄った位置に形成されている。このように貫通部C3が中央位置に対して上記帯幅方向でずれて位置していることにより、リテーナ20を誤って平型導体Cの下面側から取り付けてしまうことを防止できる。また、本実施形態では、貫通部C3は、コネクタ幅方向でハウジング10の後述のロック部11Eと重複する範囲をもって位置している。
【0023】
ハウジング10は、
図3に見られるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)を長手方向とする略直方体外形をなし、略前半部(X1側の部分)に、後述の相手ハウジング40と嵌合する嵌合部10Aを有しているとともに、略後半部(X2側の部分)に、リテーナ20が後方から装着されるリテーナ装着部10Bを有している。また、ハウジング10の内部空間には、前後方向(X軸方向)での嵌合部10Aの中間位置でコネクタ幅方向に延びる二つの仕切壁10C(
図8参照)が設けられており、仕切壁10Cによって上記内部空間が前後方向で仕切られている。具体的には、上記内部空間は、仕切壁10Cより前方に形成された二つの前方受入空間10Dと、仕切壁10Cより後方に形成された一つの後方受入空間10Eとに仕切られている。前方受入空間10Dは、コネクタ嵌合状態にて、相手コネクタ2の後述の嵌入部44を前方から受け入れるための空間である。これらの前方受入空間10Dは、コネクタ幅方向にて、平型導体Cの既述した二つの回路部群のそれぞれに対応して位置している。後方受入空間10Eは、リテーナ20を後方からから受け入れて収容するための収容空間である。
【0024】
また、ハウジング10の内部空間において、ハウジング10の下壁(後述の前方下壁12及び後方下壁17)の内面(上面)に沿って前後方向に延びて拡がる空間は平型導体挿入空間10Fとして形成されている(
図12(A),(B)参照)。平型導体挿入空間10Fは、後方から挿入された平型導体Cの前端側部分を収容する(
図12(A),(B)参照)。平型導体挿入空間10Fに平型導体Cの前端側部分が収容された状態において、ハウジング10の下壁の上面は、平型導体Cの下面に接面あるいは近接しており、平型導体Cの下面を支持可能となっている。
【0025】
ハウジング10の上壁(後述の前方上壁11及び後方上壁16)には、
図5(A),(B)に見られるように、コネクタ幅方向での中央域(平型導体Cの回路部不存在範囲に対応する範囲)かつ前後方向での全域に、後述するロック部11Eを収容するためのロック部収容空間10Gが形成されている。ロック部収容空間10Gは、前後方向での後述の前方上壁11の範囲にて、上下方向でのハウジング10のほぼ中央位置まで没入するとともに前後方向での前方上壁11全域にわたって延びる前方収容空間10G-1と、前後方向での後述の後方上壁16の範囲で、後方上壁16を上下方向に貫通するとともに前後方向での後方上壁16全域にわたって延びる後方収容空間10G-2とを有している。
図5(A),(B)に見られるように、前方収容空間10G-1の下側内壁面、換言すると前方上壁11の上面は、上下方向で受入空間10Dのほぼ中央位置と同位置にある。
【0026】
嵌合部10Aは、コネクタ幅方向に延び上下方向に対向する嵌合壁としての前方上壁11及び前方下壁12と、コネクタ幅方向での両端位置で上下方向に延びて前方上壁11及び前方下壁12とを連結する一対の前方側壁13と、上下方向に延び前方上壁11と前方下壁12とを連結する複数の隔壁14とを有している。
【0027】
前方上壁11には、コネクタ幅方向での両側端位置及び中間域での二位置に、前方上壁11の上面から突出するとともに前後方向に延びる突壁11A~11Dが形成されている。具体的には、突壁11A~11Dは、
図3及び
図5に見られるように、第一突壁11A、第二突壁11B、第三突壁11C、第四突壁11Dを、Y1側からY2側へ順次間隔をもって有している。第一突壁11A及び第四突壁11Dは、コネクタ幅方向での前方上壁11の両側端に位置しており、第二突壁11B及び第三突壁11Cは、コネクタ幅方向での前方上壁11の中間域に位置している。本実施形態では、突壁11A~11Dは、第三突壁11C、第二突壁11B、第一突壁11A、第四突壁11Dの順で幅広に形成されている。第二突壁11Bと第三突壁11Cとの間には、既述の前方収容空間10G-1が形成されている。
【0028】
また、前方上壁11のコネクタ幅方向での中央位置には、前方上壁11の上面の前端位置から後方へ向けてハウジング10の後端位置まで延びる片持ち梁状のロック部11Eが形成されている。ロック部11Eは、前方上壁11の上面との間に間隔をもった位置で前後方向に延び上下方向に弾性変形可能なロック腕部11E-1と、ロック腕部11E-1の前後方向での中間位置で上方に突出するロック係止部としてのロック突部11E-2とを有している。ロック部11Eは、ロック突部11E-2で相手コネクタ2の後述のロック孔部41Fに係止してロック可能となっている。また、ロック腕部11E-1の後端部(自由端部)は、相手コネクタ2とのロック状態を解除するための上方からの押圧操作(ロック解除操作)を受ける操作部11E-1Aとして機能する。
【0029】
本実施形態では、ロック腕部11E-1のうち操作部11E-1Aを除く部分がロック部収容空間10Gの前方収容空間10G-1内に収容され、操作部11E-1Aがロック部収容空間10Gの後方収容空間10G-2内に収容されている。つまり、ロック部11Eは、前後方向でハウジング10の前方受入空間10D及び後方受入空間10E(以下、必要に応じて「受入空間10D,10E」と総称する)と重複する範囲をもって位置している。また、ロック突部11E-2は、前方収容空間10G-1よりも上方に突出して位置している。
【0030】
ロック部11Eは、上下方向に見て受入空間10D,10Eの位置とは異なって位置しているとともに、ロック腕部11E-1の下部が上下方向で受入空間10D,10Eと重複して位置している(
図5(A),(B)参照)。したがって、従来のようにロック部をハウジングの受入空間よりも上方に設ける場合と比べて、本実施形態では、ロック部が受入空間10D,10Eとその重複している分だけ、ハウジング10ひいてはコネクタ1を上下方向で小さくして低背化を図ることができる。
【0031】
図5(A),(B)に見られるように、前方上壁11の上面には、コネクタ幅方向で第二突壁11Bよりも外側にて第二突壁11Bに寄った位置で、また、コネクタ幅方向で第三突壁11Cよりも外側にて第三突壁11Cに寄った位置で、上突条部11Fが形成されている。上突条部11Fは、前方上壁11の後端側で前方上壁11の上面から突出するとともに前後方向に延びている。上突条部11Fは、コネクタ嵌合状態にて相手コネクタ2の相手上壁41の内面(下面)に喰い込む。
【0032】
前方下壁12の下面には、上下方向に見て、前方上壁11の上突条部11Fと同じ位置に、上突条部11Fと同形状の下突条部12Aが形成されている(
図5(B)参照)。
【0033】
隔壁14は、
図5(A),(B)に見られるように、二つの前方受入空間10D、すなわちコネクタ幅方向で前方収容空間10G-1の両側に位置する前方受入空間10Dの範囲にて、コネクタ幅方向で等間隔に配列形成されている(
図8も参照)。これらの隔壁14によってぞれぞれの前方受入空間10Dがコネクタ幅方向で分割されている。
【0034】
リテーナ装着部10Bは、
図3に見られるように、コネクタ幅方向に延び上下方向に対向する後方上壁16及び後方下壁17と、コネクタ幅方向での両端位置で上下方向に延びて後方上壁16と後方下壁17とを連結する一対の後方側壁18とを有している。リテーナ装着部10Bは、コネクタ幅方向で嵌合部10Aよりも大きく形成されており、後方側壁18は、コネクタ幅方向で前方側壁13よりも外側に位置している。
【0035】
後方上壁16には、コネクタ幅方向での中央寄り位置に、ロック部11Eの操作部11E-1Aの両側で、後方上壁16の上面から突出する規制壁16Aが形成されている。規制壁16Aは、コネクタ幅方向で操作部11E-1Aに対して当接可能に位置しており、コネクタ幅方向でのロック部11Eの過剰な弾性変形を規制している。後方上壁16には、コネクタ幅方向での側端寄り位置で、後方上壁16の下面から没入して前後方向に延びる後方上溝部16Bが形成されている。後方上溝部16Bは、後方へ開放されていて、リテーナ20の後述の支持壁部22の上部の後方からの進入を許容している。
【0036】
後方下壁17には、コネクタ幅方向での回路部不存在範囲S内に位置し前後方向に延びる溝状の規制凹部17Aが形成されている。規制凹部17Aは、コネクタ幅方向でリテーナ20の後述の突部21Cに対応して位置し、後方へ開放されており、リテーナ20の突部21Cの突出頂部21C-1の後方からの進入を許容する(
図9(B)参照)。規制凹部17Aの内面のうち、コネクタ幅方向での両側に位置する面(コネクタ幅方向に対して直角な面)は、コネクタ幅方向での突出頂部21C-1ひいてはリテーナ20の移動を規制可能な規制面17A-1として機能する。また、後方下壁17には、上下方向に見て後方上溝部16Bと同位置に、後方下溝部17Bが形成されている。後方下溝部17Bは、後方下壁17の上面から没入して前後方向に延びるとともに後方へ開放されていて、リテーナ20の後述の支持壁部22の下部の後方からの進入を許容している。
【0037】
後方側壁18には、
図8に見られるように、後方側壁18の後端部の内面から該内面に沿って前方へ向けて延びる側方腕部18Aが形成されている。側方腕部18Aは前端部を自由端部とする片持ち梁状をなし、コネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。側方腕部18Aの前端部には、コネクタ幅方向で内方へ突出する側方係止突部18A-1が形成されている。側方係止突部18A-1は、その前端面(前後方向に対して直角な平坦面)で、リテーナ20の後述の側方被係止部22Aに対して後方から係止可能となっており、リテーナ20の不用意な抜けを防止している。
【0038】
本実施形態では、
図3に見られるように、前後方向での嵌合部10Aとリテーナ装着部10Bとの境界位置で、コネクタ幅方向での規制壁16Aよりも外側でハウジング10の上面から突出する防滴壁10Hが形成されている。この防滴壁10Hは、
図2に見られるように、コネクタ嵌合状態にてコネクタ1の前方上壁11と相手コネクタ2の相手上壁41との間に形成される隙間を塞ぐように位置する。防滴壁10Hがこのように隙間を塞ぐことにより、コネクタ外部にて結露により発生した水滴が相手コネクタ2の内部へ浸入することを防止する。
【0039】
本実施形態では、防滴壁10Hよりも後方には、
図1ないし
図3に見られるように、後方に開放された後方凹部10Iが形成されている。したがって、ハウジング10を作る際、成型金型(図示せず)を後方から配置してハウジング10を成型した後、該成型金型を後方に抜くだけで防滴壁10Hを形成することができる。つまり、防滴壁10Hを形成するために複数の成型金型を用意する必要がなく、上記成型金型を簡単な形状とすることができる。
【0040】
リテーナ20は、
図3に見られるように、コネクタ幅方向を長手方向として平型導体Cの帯幅寸法とほぼ同じ寸法で延びる中央板部21と、中央板部21のコネクタ幅方向での両端部に形成された支持壁部22とを有している。
【0041】
中央板部21は、
図3に見られるように、コネクタ幅方向での中央域、具体的には平型導体の回路部不存在範囲Sに対応する位置で前端部が切り欠かれて切欠部21Aが形成されている(
図6(A)も参照)。切欠部21Aは、前方に開口していることで、リテーナ20がハウジング10へ取り付けられた際に、リテーナ20とハウジング10との干渉を回避可能としている(
図8参照)。中央板部21のコネクタ幅方向での中央域、かつ切欠部21Aの後方位置には、中央板部21の上面から没するとともに前方へ開口した上方凹部21Bが形成されている。上方凹部21Bは、コネクタ幅方向で切欠部21Aよりも小さい寸法で形成されている。上方凹部21Bは、リテーナ20がハウジング10へ取り付けられた際に、ハウジング10のロック部11Eの操作部11E-1Aの下方に位置し(
図12(B)参照)、これによって、操作部11E-1Aひいてはロック部11Eが十分に大きく下方へ弾性変位することが可能となっている。
【0042】
また、中央板部21は、コネクタ幅方向での回路部不存在範囲S内、かつ、切欠部21Aよりも後方位置にて、中央板部21の下面から下方へ突出する略四角柱状の突部21Cを有している。突部21Cは、コネクタ幅方向で平型導体Cの貫通部C3及びハウジング10の規制凹部17Aに対応して、中央位置よりも若干Y1側へ寄って位置している(
図6(B)も参照)。突部21Cは、上下方向に対して直角な断面の形状が平型導体Cの貫通部C3よりも若干小さい四角形をなしており、貫通部C3へ上方から挿通可能となっている。突部21Cの上下方向寸法は平型導体Cの厚み寸法よりも大きくなっており、
図7(B)に見られるように、貫通部C3へ挿通された突部21Cの突出頂部21C-1は貫通部C3よりも下方へ突出する(
図9(A),(B)及び
図12(B),(C)も参照)。また、突部21Cは、ハウジング10の規制凹部17Aよりもコネクタ幅方向で若干小さくなっており、リテーナ20がハウジング10へ取り付けられた際に、突部21Cの突出頂部21C-1が規制凹部17Aへ後方から進入可能とっている(
図9(A),(B)参照)。
【0043】
コネクタ1は、次の要領で組み立てられる。まず、リテーナ20の突部21Cを平型導体Cの前端側部分の貫通部C3へ上方から挿通させ、突部21Cの突出頂部21C-1を貫通部C3よりも下方へ突出させる。次に、突部21Cが貫通部C3に挿通された状態(
図7(A),(B)に示される状態)を維持したまま、平型導体Cの前端側部分及びリテーナ20をハウジング10へ後方から取り付ける。この結果、平型導体Cの前端側部分がハウジング10の平型導体挿入空間10Fへ後方から挿入され、平型導体Cの接触部C1Aがハウジング10の前方受入空間10Dの位置に達する(
図8及び
図12(A)参照)。
【0044】
また、リテーナ20の取付過程にて、リテーナ20の側方被係止部22Aの前端が側方腕部18Aの側方係止突部18A-1に当接し、側方腕部18Aをコネクタ幅方向で外方へ弾性変形させ、これによって、リテーナ20のさらなる挿入が許容される。側方被係止部22Aが側方係止突部18A-1の位置を通過すると、側方腕部18Aが自由状態に戻り、側方係止突部18A-1が側方被係止部22Aに対して後方から係止可能に位置し(
図8参照)、リテーナ20の不用意な抜けが防止される。また、リテーナ20の突部21Cの突出頂部21C-1がハウジング10の規制凹部17Aへ後方から進入する(
図9(B)及び
図12(C)参照)。
【0045】
リテーナ20がハウジング10に取り付けられた状態にて、リテーナ20の突部21Cは平型導体Cの貫通部C3の前端縁C3A(
図3、
図7(B)及び
図12(C)参照)に対して後方から係止することで、平型導体Cの後方への移動を規制しており、平型導体Cの不用意な抜けが防止される。また、突部21Cの突出頂部21C-1がハウジング10の規制凹部17A内に収容され、規制凹部17Aの規制面17A-1によって突出頂部21C-1のコネクタ幅方向での移動が規制されることより、リテーナ20及び平型導体Cがコネクタ幅方向で位置決めされる。このようにしてリテーナ20がハウジング10に取り付けられることにより、コネクタ1の組立てが完了する。
【0046】
本実施形態では、リテーナ20の突部21Cを平型導体の貫通部C3に進入させて、突部21Cを貫通部C3の前端縁C3Aに対して係止可能とすることにより、平型導体Cの後方への移動が規制され、ハウジング10からの平型導体Cの不用意な抜けが防止される。ここで、平型導体Cの貫通部C3及びリテーナ20の突部21Cは、回路部不存在範囲S、換言すると、平型導体Cの帯幅方向(コネクタ幅方向)で最外端に位置する回路部C1同士の間の範囲内に位置している。このように平型導体Cの回路部不存在範囲Sを有効利用することにより、従来のように、上記帯幅方向での両端位置、換言すると、上記帯幅方向で最外端に位置する回路部C1よりもさらに外側の位置に、平型導体Cの抜けを防止するための機構を設ける必要がなくなるので、ハウジング10からの平型導体Cの不用意な抜けを防止しつつ、上記帯幅方向でのコネクタ1の大型化を回避できる。
【0047】
また、本実施形態では、回路部不存在範囲Sにて、平型導体Cの貫通部C3が上記帯幅方向でハウジング10のロック部11Eと重複する範囲をもって位置しており、この点でも、貫通部C3とロック部11Eとがコネクタ幅方向で異なる位置に設けられる場合と比べて、上記帯幅方向でのコネクタ1の大型化が回避される。
【0048】
相手コネクタ2は、
図10に見られるように、コネクタ1の平型導体Cの複数の接触部C1Aに対応してコネクタ幅方向(Y軸方向)に配列された複数の相手端子30と、複数の相手端子30を圧入保持する相手ハウジング40と、コネクタ幅方向での相手端子30の配列範囲外で相手ハウジング40に圧入保持される固定金具50とを有している。
【0049】
相手端子30は、
図11(A)に見られるように、金属板部材をその板厚方向に打ち抜いて作られており、平坦な板面が維持された平板状をなしている。相手端子30は、その板厚方向がコネクタ幅方向(Y軸方向)に一致した姿勢で、コネクタ幅方向を端子配列方向として配列されている。本実施形態では、相手端子30は、コネクタ幅方向でコネクタ1の二つの前方受入空間10Dに対応して位置する二つの相手端子群を有している。
【0050】
図11(A)に見られるように、相手端子30は、略四角平板状の基部31と、基部31の後端縁(X2側で上下方向に延びる端縁)から後方に延びる長腕部32及び短腕部33と、基部31の前端部の下縁から下方に延びる脚部34と、脚部34の下端から前方へ延びる接続部35とを有している。
【0051】
基部31は、前後方向での中間位置及び後端位置に、基部31の上縁から突出する圧入突部31Aが形成されている。相手端子30は、相手ハウジング40の後述の相手端子保持溝部40B-1へ前方から圧入されて圧入突部31Aが相手端子保持溝部40B-1の内面に喰い込むことにより、相手ハウジング40に保持される(
図12(A)参照)。
【0052】
長腕部32は、基部31の上部の後端縁から後方へ向けて延びており、上下方向に弾性変形可能となっている。長腕部32の後端位置には、平型導体Cの接触部C1Aと接圧をもって上方から接触する後方相手接触部32Aが、下方へ向け略三角形状に突出して形成されている。後方相手接触部32Aは、上下方向で短腕部33の後述の前方相手接触部33Aとほぼ同じ高さまで突出している。
【0053】
短腕部33は、長腕部32よりも下方に位置し、基部31の上下方向中間部の後端縁から後方へ向けて延びており、上下方向に弾性変形可能となっている。短腕部33の後端位置には、平型導体Cの接触部C1Aに接圧をもって上方から接触する前方相手接触部33Aが、下方へ向け略三角形状に突出して形成されている。短腕部33は、長腕部32よりも若干短く形成されており、短腕部33の前端は、長腕部32の前端よりも前方(X1側)に位置している。つまり、短腕部33の前方相手接触部33Aは、長腕部32の後方相手接触部32Aよりも前方に位置している。
【0054】
図11(A)及び
図12(A)に見られるように、後方相手接触部32Aと前方相手接触部33Aとは、互いにほぼ同じ高さに位置し、前後方向で互いに隣接して位置している。また、後方相手接触部32A及び前方相手接触部33Aは、相手ハウジング40の後述の嵌入部44の下面よりも突出して、後述の相手側受入空間40C内に位置しており、平型導体Cの接触部C1Aに接触可能となっている。本実施形態では、このように接触部C1Aに対して二点接触が可能となっていることで、接触部C1Aとの接触状態が良好に確保される。
【0055】
脚部34は、基部31の下縁から下方へ向けて直状に延びている。接続部35は、相手コネクタ2が回路基板(図示せず)に実装された状態にて、回路基板の実装面に形成された対応回路部(図示せず)と同じ高さに位置し、該対応回路部に対して半田接続可能となっている。
【0056】
相手ハウジング40は、
図10に見られるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)を長手方向とする略直方体外形をなし、
図12(A)に見られるように、略後半部に、コネクタ1のハウジング10と嵌合する相手嵌合部40Aを有しているとともに、略前半部に、相手端子30を圧入保持する相手端子保持部40Bを有している。
【0057】
相手嵌合部40Aは、コネクタ幅方向に延び上下方向に対向する相手嵌合壁としての相手上壁41及び相手下壁42と、コネクタ幅方向での両端位置で上下方向に延びて相手上壁41及び相手下壁42とを連結する一対の相手側壁43と、相手端子保持部40Bの後端面から相手嵌合部40Aの内部空間内を前方へ向けて延びる嵌入部44とを有している。相手上壁41、相手下壁42及び相手側壁43に囲まれて後方へ開口する空間は、コネクタ1の嵌合部10Aを受け入れるための相手側受入空間40Cとして形成している。
【0058】
相手上壁41は、コネクタ幅方向での三位置に、相手上壁41の下面から突出するとともに前後方向に延びる相手突壁41A~41Cが形成されている。具体的には、相手突壁41A~41Cは、
図10に見られるように、第一相手突壁41A、第二相手突壁41B、第三相手突壁41Cを、Y1側からY2側へ順次間隔をもって有している。第二相手突壁41Bは第一相手突壁41A及び第三相手突壁41Cよりも幅狭に形成されている。
【0059】
第二相手突壁41Bは、第一相手突壁41A及び第二相手突壁41Bとほぼ同じ上下方向寸法で突出する主突壁41B-1と、コネクタ幅方向での主突壁41B-1の両端位置から下方へ突出する二つの副突壁41B-2とを有している。
【0060】
第一相手突壁41Aは、コネクタ幅方向でコネクタ1の第一突壁11Aと第二突壁11Bとの間の空間に対応して位置している。第二相手突壁41Bの主突壁41B-1は、コネクタ幅方向で第二突壁11Bと第三突壁11Cとの間の空間に対応して位置している。第二相手突壁41Bの二つの副突壁41B-2は、コネクタ幅方向でコネクタ1のロック腕部11E-1と第二突壁11Bとの間の空間、ロック腕部11E-1と第三突壁11Cとの間の空間にそれぞれ対応して位置している。第三相手突壁41Cは、コネクタ幅方向でコネクタ1のロック腕部11E-1と第三突壁11Cと第四突壁11Dとの間の空間に対応して位置している。
【0061】
また、相手上壁41の後端部には、コネクタ幅方向での中央位置、すなわち、二つの副突壁41B-2の間の位置に、相手上壁41を上下方向に貫通するロック孔部41Fが形成されている。ロック孔部41Fは、後述するように、コネクタ1のロック突部11E-2と係止することでコネクタ1の抜けを防止する役割を担っている(
図12(B)参照)。
【0062】
相手側壁43には、
図10に見られるように、前方かつ下方へ開口するとともに前後方向に延びる金具保持溝部43Aが、コネクタ幅方向に対して直角な方向に拡がるスリット状をなして形成されている。
【0063】
嵌入部44は、既述の二つの相手端子群のそれぞれの配列範囲にてコネクタ幅方向に配列された複数の嵌入条部44Aを有している。嵌入条部44Aは、相手端子30同士の間に位置し、相手端子保持部40Bの後面から後方へ向けて延びている。相手端子30が相手ハウジング40に保持された状態にて、相手端子30の後方相手接触部32A及び前方相手接触部33Aは、嵌入条部44Aの下面よりも下方へ突出して位置する。
【0064】
相手端子保持部40Bは、
図12(A)に見られるように、相手端子30を圧入保持するための相手端子保持溝部40B-1が前後方向で相手端子保持部40Bを貫通して形成されている。相手端子保持溝部40B-1は、コネクタ幅方向に対して直角に拡がるスリット状をなし、コネクタ幅方向に配列されて形成されている。
【0065】
固定金具50は、
図11(B)に見られるように、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られている。固定金具50は、コネクタ幅方向に対して直角な板面をもち前後方向に延びる被保持板部51と、被保持板部51の前後方向での中間位置にて被保持板部51の下縁で直角に屈曲されコネクタ幅方向外方に延びる固定部52とを有している。被保持板部51は、前端部の上縁から突出する二つの圧入突部51Aを有している。固定金具50は、相手ハウジング40の金具保持溝部43Aへ後方から圧入されて圧入突部51Aが金具保持溝部43Aの内面に喰い込むことにより、相手ハウジング40に保持される。固定部52は、回路基板の実装面にパッドとして形成された対応部(図示せず)に、固定部52の下面で半田接続されることにより、上記対応部に固定される。
【0066】
相手コネクタ2は次の要領で組み立てられる。まず、相手端子30の基部31を相手ハウジング40の相手端子保持溝部40B-1へ前方から圧入する。また、固定金具50の被保持板部51を相手ハウジング40の金具保持溝部43Aへ後方から圧入する。この結果、相手端子30及び固定金具50が相手ハウジング40に保持され、相手コネクタ2の組立てが完了する。相手ハウジング40への相手端子30及び固定金具50の取付け(圧入)の順序は上述した順序に限られず、いずれが先でもよく、また、同時であってもよい。
【0067】
コネクタ1と相手コネクタ2とは、次の要領で嵌合接続される。まず、相手コネクタ2の相手端子30の接続部35を回路基板(図示せず)の対応回路部へ半田接続するとともに、固定金具50の固定部52を回路基板の対応部へ半田接続することにより、相手コネクタ2を回路基板に実装する。
【0068】
次に、
図1に見られるように、コネクタ1を相手コネクタ2の後方に位置させてから、コネクタ1を前方へ移動させて、コネクタ1の嵌合部10Aを相手コネクタ2の相手嵌合部40Aへ後方から嵌合させる。
【0069】
コネクタ嵌合過程にて、嵌合部10Aは相手側受入空間40C内に後方から進入し、ロック腕部11E-1のロック突部11E-2が相手ハウジング40の相手上壁41の後端部に当接することにより下方へ弾性変位し、コネクタ1のさらなる前進が許容される。また、コネクタ嵌合過程にて、コネクタ1の突壁11A~11Dは相手コネクタ2において対応する空間内へ後方から進入するとともに、相手コネクタ2の相手突壁41A~41Cはコネクタ1において対応する空間内へ前方から進入する。この結果、突壁11A~11Dが相手突壁41A~41Cによりコネクタ幅方向でのずれの規制を受けることとなり、コネクタ1が前方へ向けて円滑に案内される。
【0070】
コネクタ1がさらに前進して、ロック突部11E-2が相手上壁41のロック孔部41Fの位置に達すると、ロック腕部11E-1が自由状態に戻り、ロック突部11E-2がロック孔部41F内へ下方から進入する。その結果、
図12(A)に見られるように、ロック突部11E-2がロック孔部41Fの内面に後方へ向けて係止可能となり、相手コネクタ2の不用意な抜けが防止されたロック状態となる。
【0071】
また、コネクタ嵌合過程にて、相手ハウジング40の嵌入部44の各嵌入条部44A、そして嵌入条部44Aに配された相手端子30の長腕部32及び短腕部33は、コネクタ1において対応する前方受入空間10D、換言すると、複数の隔壁14で隔てられたそれぞれの前方受入空間10Dへ前方から進入する。その結果、長腕部32及び短腕部33は、上方へ弾性変形した状態で、後方相手接触部32A及び前方相手接触部33Aで平型導体Cの接触部C1Aに接圧をもって接触する(
図12(A)参照)。この結果、平型導体Cと相手端子30とが電気的に導通する。
【0072】
図12(A)では、各腕部32,33は弾性変形しておらず、各相手接触部32A,33Aが平型導体Cの接触部C1Aと重複した状態で示されているが、実際には、既述したように各腕部32,33が弾性変形しており、各相手接触部32A,33Aがその突出頂部で平型導体Cの接触部C1Aに接触した状態となっている。
【0073】
また、コネクタ1の前方上壁11の上突条部11F、前方下壁12の下突条部12Aは、それぞれ相手上壁41の下面、相手下壁42の上面に喰い込み、コネクタ幅方向及び上下方向での両コネクタ1,2の位置決めに寄与する。
【0074】
本実施形態では、コネクタ1のロック部11Eは一つのロック腕部11E-1を有していることとしたが、これに替えて、ロック部は、コネクタ幅方向で間隔をもって位置する複数のロック腕部を有していてもよい。このようにロック腕部を複数設けることにより、互いに隣接するロック腕部同士の間の位置で、ハウジングに前方受入空間を形成することができ、その結果、コネクタ幅方向でコネクタを大きくすることなく、平型導体の回路部の数ひいては相手コネクタの相手端子の数を増やすことができる。また、各ロック腕部が細く形成されることにより、ロック腕部が弾性変形しやすくなる。
【0075】
本実施形態では、ロック部11Eは、前後方向でハウジング10の受入空間10D,10Eと重複する範囲をもつ位置に設けられていたが、これに替えて、ロック部が受入空間と前後方向に重複することなく、受入空間よりも後方に設けられていてもよい。このようにロック部を受入空間よりも後方に設けた場合であっても、ロック部が上下方向で受入空間と重複する範囲をもって位置していれば、その重複した分だけ、コネクタの低背化が図られる。
【0076】
本実施形態では、ロック部11Eのうち上下方向で受入空間10D,10Eと重複して位置いるのはロック腕部11E-1の一部、具体的には下部であることとしたが、これに替えて、ロック腕部全体を上下方向で受入空間と重複させてもよいし、さらには、ロック部全体を上下方向で受入空間と重複させてもよい。このようにして、ロック部と受入空間との重複範囲が大きくなる分だけ、コネクタの低背化の効果が向上する。
【0077】
本実施形態では、平型導体Cはコネクタ幅方向に分割されることなく全体として一つの平型導体として形成されていたが、これに替えて、平型導体がコネクタ幅方向に分割されて複数の単位平型導体として形成されていてもよい。その場合、複数の単位平型導体はコネクタ幅方向で間隔をもって隣接し、その間隔の範囲を回路部不存在範囲とすることができる。このように単位平型導体同士の間に回路部不存在範囲が形成されている場合、コネクタ幅方向での回路部不存在範囲内で、ハウジングにロック部を形成できる。また、回路部不存在範囲を挟んで位置し互いに隣接する二つの単位平型導体の側縁部(前後方向に延びる縁部)のそれぞれに、コネクタ幅方向で互いに対向して開口する切欠部を貫通部として形成し、この貫通部にリテーナの突部を上下方向に進入させることができる。この結果、突部が各切欠部の前端縁に対して後方から係止可能となり、各単位平型導体の後方へ移動を規制して不用意な抜けを防止できる。
【符号の説明】
【0078】
1 コネクタ(平型導体付電気コネクタ)
2 相手コネクタ(相手電気コネクタ)
10 ハウジング
10D 受入空間
10E 後方受入空間(収容空間)
11E ロック部
11E-1 ロック腕部
11E-2 ロック突部(ロック係止部)
17 後方下壁
17A 規制凹部(凹部)
20 リテーナ
21C 突部
21C-1 突出頂部
C 平型導体
C1 回路部
C3 貫通部