IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電子放出素子及び発電素子 図1
  • 特許-電子放出素子及び発電素子 図2
  • 特許-電子放出素子及び発電素子 図3
  • 特許-電子放出素子及び発電素子 図4
  • 特許-電子放出素子及び発電素子 図5
  • 特許-電子放出素子及び発電素子 図6
  • 特許-電子放出素子及び発電素子 図7
  • 特許-電子放出素子及び発電素子 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】電子放出素子及び発電素子
(51)【国際特許分類】
   H01J 19/06 20060101AFI20231222BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01J19/06
H02N11/00 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020183576
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073536
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】木村 重哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 学史
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 久生
(72)【発明者】
【氏名】冨田 洋
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡一
(72)【発明者】
【氏名】星 岳志
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-323015(JP,A)
【文献】国際公開第2016/182080(WO,A1)
【文献】特開2009-238690(JP,A)
【文献】特開2020-013886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0198027(US,A1)
【文献】米国特許第6350999(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0050080(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0028365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/00-1/98,9/00-9/18,
19/00-19/82,37/00-49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n形の不純物の第1元素を含む半導体を含む第1領域と、
ダイヤモンドを含む第2領域であって、前記ダイヤモンドは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む、前記第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間に設けられた第3領域であって、前記第3領域は、Si、Ge、Te及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第3元素を含むAlx1Ga1-x1N(0<x1≦1)を含み、前記第3領域の+c軸方向は、前記第1領域から前記第2領域への向きの成分を含む、前記第3領域と、
を備えた電子放出素子。
【請求項2】
前記+c軸方向は、前記第1領域から前記第2領域への向きに沿う、請求項1記載の電子放出素子。
【請求項3】
前記x1は、0.2以上である、請求項1または2に記載の電子放出素子。
【請求項4】
前記x1は、0.5以上である、請求項1または2に記載の電子放出素子。
【請求項5】
前記第3領域における前記第3元素の濃度は、1×1014/cm以上である、請求項1~4のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項6】
前記第3領域における前記第3元素の濃度は、1×1016/cm以上である、請求項1~4のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項7】
前記第3領域における前記第3元素の前記濃度は、1×1020/cm以下である、請求項5または6に記載の電子放出素子。
【請求項8】
前記第1領域から前記第2領域への第1方向に沿う前記第3領域の厚さは、5nm以上である、請求項1~7のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項9】
前記第3領域の前記厚さは、50nm以下である、請求項8記載の電子放出素子。
【請求項10】
前記半導体は、Alx2Ga1-x2N(0≦x2<1、x2<x1)を含み、
前記第1元素は、Si、Ge、Te及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項11】
前記半導体は、Si及びSiCよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1元素は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項12】
前記半導体は、GaAsを含み、
前記第1元素は、S、Se及びTeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項13】
前記第2領域は、第1面と第2面とを含み、
前記第2面は、前記第1面と前記第3領域との間にあり、
前記第1面は、水素及び水酸基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~12のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項14】
前記第2領域は、第1面と第2面とを含み、
前記第2面は、前記第1面と前記第3領域との間にあり、
前記第1面における水素の濃度は、前記第2面における水素の濃度よりも高い、請求項1~12のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項15】
前記第3領域は前記第2領域と接する、請求項1~14のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項16】
前記ダイヤモンドは、複数の結晶粒を含む請求項1~15のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項17】
第1電極をさらに備え、
前記第1電極と前記第2領域との間に前記第1領域があり、
前記第1電極は前記第1領域と電気的に接続された、請求項1~16のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1つに記載の電子放出素子と、
前記第2領域と対向する導電性の対向部材と、
を備え、
前記第2領域と前記対向部材との間には空隙がある、発電素子。
【請求項19】
容器をさらに備え、
前記容器の中に前記電子放出素子及び前記対向部材が設けられる、請求項18記載の発電素子。
【請求項20】
前記第2領域から前記対向部材への方向に沿う、前記第2領域と前記対向部材との間の距離は、100nm以上1mm以下である、請求項18または19に記載の発電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子放出素子及び発電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子放出素子が、発電素子などに用いられる。電子放出素子において、効率の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-56995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、効率を向上可能な電子放出素子及び発電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、電子放出素子は、第1領域、第2領域及び第3領域を含む。前記第1領域は、n形の不純物の第1元素を含む半導体を含む。前記第2領域は、ダイヤモンドを含む。前記ダイヤモンドは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む。前記第3領域は、前記第1領域と前記第2領域との間に設けられる。前記第3領域は、Si、Ge、Te及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第3元素を含むAlx1Ga1-x1N(0<x1≦1)を含む。前記第3領域の+c軸方向は、前記第1領域から前記第2領域への向きの成分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る電子放出素子を例示する模式的断面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、電子放出素子の特性を例示する模式図である。
図3図3は、電子放出素子の特性を例示するグラフ図である。
図4図4は、電子放出素子の特性を例示するグラフ図である。
図5図5は、電子放出素子の特性を例示するグラフ図である。
図6図6は、第2実施形態に係る発電素子を例示する模式的断面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、実施形態に係る発電モジュール及び発電装置を示す模式図的断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、実施形態に係る発電装置及び発電システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電子放出素子を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る電子放出素子50は、第1領域11、第2領域12及び第3領域13を含む。
【0009】
第1領域11は、半導体11sを含む。半導体11sは、n形の不純物の第1元素を含む。半導体11sは、n形の半導体である。第1領域11の半導体11sは、例えば、AlGaN、GaAs、Si及びSiCよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。半導体11sの例については、後述する。
【0010】
第2領域12は、ダイヤモンドを含む。ダイヤモンドは、第2元素を含む。第2元素は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、n形の不純物として機能する。第2領域12のダイヤモンドは、n形である。第2領域12のダイヤモンドは、例えば、複数の結晶粒を含んでも良い。ダイヤモンドは、例えば、多結晶を含んでも良い。ダイヤモンドは、例えば、単結晶でも良い。ダイヤモンドは、例えば、ナノ結晶でも良い。
【0011】
第3領域13は、第1領域11と第2領域12との間に設けられる。第3領域13は、第3元素を含むAlx1Ga1-x1N(0<x1≦1)を含む。第3元素は、Si、Ge、Te及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3元素は、n形不純物として機能する。第3領域13に含まれるAlx1Ga1-x1N(0<x1≦1)は、n形である。第3領域13は、例えば、AlGaNまたはAlNを含む。後述するように、Alの組成比x1は、0.2以上であることが好ましい。Alの組成比x1は、0.5以上でも良い。
【0012】
第3領域13の結晶の+c軸方向は、第1領域11から第2領域12への向きの成分を含む。例えば、第3領域13の+c軸方向は、第1領域11から第2領域12への向きに沿う。
【0013】
実施形態に係る電子放出素子50において、電子が、第2領域12の表面12fから放出される。電子は、例えば、熱電子である。例えば、表面12fは、空間18に露出している。電子は、空間18に放出される。実施形態において、上記の第3領域13が設けられることで、電子を高い効率で放出できる。電子の放出の特性の例については、後述する。
【0014】
第1領域11から第2領域12への方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向に沿う。
【0015】
Z軸方向は、第1領域11、第3領域13及び第2領域12の積層方向に対応する。第1領域11及び第3領域13は、X-Y平面に沿って広がる。1つの例において、第2領域12は、X-Y平面に沿って広がる。例えば、第2領域12に含まれるダイヤモンドは、複数の島状でも良い。複数の島状のダイヤモンドがX-Y平面に沿って並んでも良い。
【0016】
第3領域13の結晶の+c軸方向は、例えば、Z軸方向に沿う。+cとZ軸方向との間の角度の絶対値は、45度以下である。+cとZ軸方向との間の角度の絶対値は、10度以下でも良い。角度の絶対値が小さいと、高い効率が得易くなる。
【0017】
第1領域11のZ軸方向に沿う厚さt1(図1参照)は、例えば、100nm以上200μm以下である。第3領域13のZ軸方向に沿う厚さt3は、例えば、5nm以上50nm以下である。第2領域12のZ軸方向に沿う厚さt2は、例えば、5nm以上50nm以下である。
【0018】
以下、電子放出素子の特性のシミュレーション結果の例について説明する。
【0019】
図2(a)及び図2(b)は、電子放出素子の特性を例示する模式図である。
これらの図の横軸は、Z軸方向に沿う位置pZである。これらの図の縦軸は、エネルギーEcである。これらの図には、伝導帯のエネルギーEcが例示されている。図2(a)においては、第3領域13の+c軸方向は、第1領域11から第2領域12への向きに沿う。この状態を「+c軸の結晶方位」とする。図2(b)においては、第3領域13の-c軸は、第1領域11から第2領域12への向きに沿う。この状態を「-c軸の結晶方位」とする。
【0020】
これらの図において、第1領域11は、第1元素としてSiを含むGaNである。第1領域11の温度は、600℃である。第2領域12は、第2元素としてN(窒素)を含むn形のダイヤモンドを含む。第2領域12の厚さt2は、20nmである。第3領域13のAlx1Ga1-x1NにおけるAlの組成比x1は、0.25である。第3領域13における第3元素(Si)の濃度は、1×1014/cmである。第3領域13の厚さt3は、20nmである。
【0021】
図2(a)及び図2(b)に示すように、第3領域13と第2領域12との境界において、エネルギーEcが最高になる。第3領域13と第2領域12との境界におけるエネルギーEcをエネルギーE1とする。「+c軸の結晶方位」の場合におけるエネルギーE1は、「-c軸の結晶方位」におけるエネルギーE1よりも低い。低いエネルギーE1において、電子が効率的に放出される。
【0022】
図3は、電子放出素子の特性を例示するグラフ図である。
図3の横軸は、第3領域13におけるAlの組成比x1である。縦軸は、エネルギーE1である。図3のシミュレーションにおいて、Alの組成比x1以外の条件は、図2(a)及び図2(b)に関して説明した条件が採用されている。図3には、「+c軸の結晶方位」の場合の結果と、「-c軸の結晶方位」の場合の結果と、が示されている。
【0023】
図3に示すように、「+c軸の結晶方位」の場合のエネルギーE1は、「-c軸の結晶方位」の場合のエネルギーE1よりも低い。このように、第3領域13における結晶方位が「+c軸の結晶方位」である場合に低いエネルギーE1が得られる。第3領域13の+c軸方向が第1領域11から第2領域12への向きのときに、高い効率で電子が放出される。実施形態によれば、効率を向上可能な電子放出素子を提供できる。
【0024】
図3に示すように、「+c軸の結晶方位」である場合に、第3領域13におけるAlの組成比x1が高いと、エネルギーE1が低い。実施形態においてAlの組成比x1は高いことが好ましい。実施形態において、第3領域13におけるAlの組成比x1は、0.2以上であることが好ましい。Alの組成比x1は、0.5以上でも良い。Alの組成比x1は、0.8以上でも良い。Alの組成比x1が高いことで、高い効率が得やすくなる。Alの組成比は、結晶性及び不純物濃度の観点で設定されても良い。
【0025】
以下、「+c軸の結晶方位」の場合における特性の例について説明する。
図4は、電子放出素子の特性を例示するグラフ図である。
図4の横軸は、第3領域13における第3元素の濃度C1である。縦軸は、エネルギーE1である。図4のシミュレーションにおいて、Alの組成比x1は、0.75である。濃度C1は、第3領域13におけるSiの濃度である。濃度C1を除く条件は、図2(a)に関して説明した条件が採用されている。
【0026】
図4に示すように、第3元素の濃度C1が高いと、エネルギーE1が低くなる。第3元素の濃度C1が高いことで、高い効率が得易くなる。実施形態において、第3領域13における第3元素の濃度C1は、1×1014/cm以上であることが好ましい。濃度C1は、1×1016/cm以上であることが好ましい。高い効率が得易い。実施形態において濃度C1は、例えば、1×1020/cm以下である。濃度C1が1×1020/cmを超えると、例えば、第3領域13における結晶性が低くなり、電気抵抗が上昇する場合がある。濃度C1が1×1020/cm以下であることで、低い電気抵抗が安定して得易い。
【0027】
図5は、電子放出素子の特性を例示するグラフ図である。
図5の横軸は、第3領域13の厚さt3である。図5の例において、Alの組成比x1は、0.75であり、第3元素の濃度C1は、1×1017/cmである。縦軸は、エネルギーE1である。これらを除く条件は、図2(a)に関して説明した条件が採用されている。
【0028】
図5に示すように、第3領域13の厚さt3が厚いと、エネルギーE1が低くなる。実施形態において、厚さt3は、5nm以上であることが好ましい。厚さt3は、10nm以上でも良い。厚さt3は、20nm以上でも良い。低いエネルギーE1が得られる。高い効率が得られる。厚さt3は、例えば、50nm以下である。厚さt3が50nmを超えると、電気抵抗が高くなり易い。厚さt3が50nm以下であることで、低い電気抵抗が安定して得易い。
【0029】
実施形態において、例えば、半導体11sを含む第1領域11の上に、Alx1Ga1-x1Nを含む第3領域13が設けられる。このような第3領域13の上に、ダイヤモンドを含む第2領域12が設けられる。例えば、第1領域11と第3領域13との界面を含む領域に、高濃度のキャリアを含む領域が形成される。高濃度のキャリアを含む領域は、例えば、二次元電子ガスなどを含む。高濃度のキャリアが第3領域13を移動し、第2領域12の表面12fから外部(空間18)に放出される。第3領域13は、例えば、第2領域12と接する。
【0030】
実施形態において、第1領域11に含まれる半導体11sは、例えば、Alx2Ga1-x2N(0≦x2<1、x2<x1)を含む。この場合、第1元素は、Si、Ge、Te及びSnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。高濃度のキャリアが効果的に得られる。例えば、第3領域13において、良好な結晶性が得易い。例えば、低い抵抗が得やすい。
【0031】
例えば、半導体11sは、Si及びSiCよりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。この場合、第1元素は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。高濃度のキャリアが効果的に得られる。例えば、低い抵抗が得やすい。
【0032】
例えば、半導体11sは、GaAsを含んでも良い。この場合、第1元素は、S、Se及びTeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、低い抵抗が得やすい。
【0033】
実施形態において、第2領域12の表面12fは、HまたはOHにより終端されても良い。例えば、図1に示すように、第2領域12は、第1面12aと第2面12bとを含む。第2面12bは、第1面12aと第3領域13との間にある。第1面12aは、表面12fである。第1面12aは、水素及び水酸基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1面12aが水素及び水酸基よりなる群から選択された少なくとも1つを含むことで、第1面12aが安定になる。安定した電子の放出が得られる。
【0034】
例えば、第1面12aにおける水素の濃度は、第2面12bにおける水素の濃度よりも高い。第2面12bにおける水素の濃度が高いと、例えば、第2面12bの近傍において、ホールの密度が高くなり易くなる。第2面12bにおける水素の濃度が低いことで、例えば、ホールの密度が高くなることが抑制できる。これにより、電子が第1面12aから放出されやすくなる。
【0035】
図1に示すように、電子放出素子50は、第1電極15をさらに含んでも良い。第1電極15と第2領域12との間に第1領域11がある。第1電極15は、第1領域11と電気的に接続される。電子の放出に伴う電流が第1電極15を流れる。
【0036】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る発電素子を例示する模式的断面図である。
図6に示すように、実施形態に係る発電素子110は、第1実施形態に係る電子放出素子50と、対向部材20と、を含む。対向部材20は、第2領域12と対向する。対向部材20は、導電性である。例えば、第1領域11と対向部材20との間に第2領域12がある。第2領域12と対向部材20との間には空隙55がある。
【0037】
例えば、第1領域11が高い温度に設定される。第2領域12の表面12fから空隙55に向けて電子が放出される。対向部材20は、電子を受ける。電子放出素子50と対向部材20との間に流れる電流が、発電素子110の電流として取り出される。
【0038】
図6に示すように、発電素子110は、容器60を含んでも良い。容器60の中に電子放出素子50及び対向部材20が設けられる。容器60の中の気圧は、大気圧よりも低い。例えば、空隙55は、減圧状態である。第2領域12から放出された電子が効率的に対向部材20に届く。
【0039】
第2領域12から対向部材20への方向(例えば、Z軸方向)に沿う、第2領域12と対向部材20との間の距離d1は、例えば、100nm以上1mm以下である。例えば、高い発電効率が得られる。例えば、距離d1は、1μm以上100μm以下でも良い。さらに高い発電効率が得られる。
【0040】
図6に示すように、対向部材20は、第2電極25と対向層21とを含む。第2領域12と第1電極25との間に対向層21が設けられる。対向層21は、例えば、ダイヤモンド、AlN、AlGaN、SiC、Mo、W、LaB、及び、タングステンよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。上記のタングステンは、酸化トリウムを含んでも良い。高い効率で電子が対向層21に入射できる。上記のタングステンは、酸化トリウムを含んでも良い。例えば、対向層21の空隙55側の表面に、アルカリ金属を含む領域が設けられても良い。このアルカリ金属は、例えば、Ba及びCsよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。これにより、さらに高い効率で電子が対向層21に入射できる。対向層21がダイヤモンドを含む場合、対向層21の空隙55側の表面に、水素及び水酸基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む領域(例えば終端領域)が設けられても良い。
【0041】
以下、発電素子の応用の例について説明する。
【0042】
図7(a)及び図7(b)は、実施形態に係る発電モジュール及び発電装置を示す模式図的断面図である。
図7(a)に示すように、実施形態に係る発電モジュール210においては、第2実施形態に係る発電素子(例えば発電素子110など)を含む。この例では、基板120の上において、複数の発電素子110が並ぶ。
【0043】
図7(b)に示すように、実施形態に係る発電装置310は、上記の発電モジュール210を含む。複数の発電モジュール210が設けられても良い。この例では、基板220の上において、複数の発電モジュール210が並ぶ。
【0044】
図8(a)及び図8(b)は、実施形態に係る発電装置及び発電システムを示す模式図である。
図8(a)及び図8(b)に示すように、実施形態に係る発電装置310(すなわち、実施形態に係る発電素子110など)は、太陽熱発電に応用できる。
【0045】
図8(a)に示すように、例えば、太陽61からの光は、ヘリオスタット62で反射し、発電装置310(発電素子110または発電モジュール210)に入射する。光は、電子放出素子の温度を上昇させる。熱が、電流に変換される。電流が、電線65などにより送電される。
【0046】
図8(b)に示すように、例えば、太陽61からの光は、集光ミラー63で集光され、発電装置310(発電素子110または発電モジュール210)に入射する。光による熱が、電流に変換される。電流が、電線65などにより送電される。
【0047】
例えば、発電システム410は、発電装置310を含む。この例では、複数の発電装置310が設けられる。この例では、発電システム410は、発電装置310と、駆動装置66と、を含む。駆動装置66は、発電装置310を太陽61の動きに追尾させる。追尾により、効率的な発電が実施できる。
【0048】
実施形態に係る発電素子(例えば発電素子110など)を用いることで、高効率の発電が実施できる。
【0049】
実施形態に係る電子放出素子は、例えば、発光装置、ディスプレイ、X線源、マグネトロン、または、放電管(例えば真空放電管)などに用いられても良い。
【0050】
実施形態によれば、効率を向上可能な電子放出素子及び発電素子を提供することができる。
【0051】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0052】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電子放出素子に含まれる、第1~第3領域、並びに、発電素子に含まれる対向部材などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0053】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0054】
その他、本発明の実施の形態として上述した電子放出素子及び発電素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電子放出素子及び発電素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0055】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと解される。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
11~13…第1~第3領域、 11s…半導体、 12a、12b…第1、第2面、 12f…表面、 15…第1電極、 18…空間、 20…対向部材、 21…対向層、 25…第2電極、 50…電子放出素子、 55…空隙、 60…容器、 61…太陽、 62…ヘリオスタット、 63…集光ミラー、 65…電線、 66…駆動装置、 110…発電素子、 120…基板、 310…発電装置、 410…発電システム、 C1…濃度、 E1…エネルギー、 Ec…エネルギー、 d1…距離、 pZ…位置、 t1~t3…厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8