(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】撮像素子、積層型撮像素子及び固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20231222BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20231222BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20231222BHJP
【FI】
H01L27/146 E
H10K30/60
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2020531227
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2019026474
(87)【国際公開番号】W WO2020017330
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2018134012
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019123550
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】山本 孝久
(74)【代理人】
【氏名又は名称】吉井 正明
(72)【発明者】
【氏名】定榮 正大
(72)【発明者】
【氏名】村田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平田 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 利彦
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0037098(US,A1)
【文献】特開2018-107799(JP,A)
【文献】国際公開第2016/009693(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H10K 30/60
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、光電変換層及び第2電極が積層されて成る光電変換部を備えており、
光電変換層の直下には、光電変換層側から、酸化膜及び酸化物半導体層が形成されており、
酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における水素原子濃度の値ConcH-1は、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分における水素原子濃度の値ConcH-2よりも高い
撮像素子。
【請求項2】
第1電極、光電変換層及び第2電極が積層されて成る光電変換部を備えており、
光電変換層の直下には、光電変換層側から、酸化膜及び酸化物半導体層が形成されており、
酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における水素原子濃度の値をConcH-1、酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における酸化膜を構成する原子の濃度の値をConcM-1としたとき、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分に向かうConcH-1の平均変化率ΔConcH-1は、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分に向かうConcM-1の平均変化率ΔConcM-1よりも大きい
撮像素子。
【請求項3】
酸化膜を構成する元素の少なくとも一部は、酸化物半導体層を構成する元素と異なる
請求項1または請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
酸化物半導体層の伝導帯の最大エネルギー値におけるエネルギー平均値をE
2、酸化膜の伝導帯の最大エネルギー値におけるエネルギー平均値をE
1としたとき、
E
1-E
2≧-0.4(eV)
を満足する請求項1
または請求項2に記載の撮像素子。
【請求項5】
光電変換層のLUMO値におけるエネルギー平均値をE
0としたとき、
E
0-E
1≧-0.4(eV)
を満足する請求項
4に記載の撮像素子。
【請求項6】
E
0≧E
1≧E
2
を満足する請求項
5に記載の撮像素子。
【請求項7】
酸化膜の価電子帯における最小エネルギー値のエネルギー平均値をE
4、光電変換層のHOMO値におけるエネルギー平均値をE
3としたとき、
E
3-E
4≧-0.4(eV)
を満足する請求項1
または請求項2に記載の撮像素子。
【請求項8】
酸化物半導体層の価電子帯の最小エネルギー値におけるエネルギー平均値をE
5としたとき、
E
4-E
5≧-0.4(eV)
を満足する請求項
7に記載の撮像素子。
【請求項9】
E
3≧E
4≧E
5
を満足する請求項
8に記載の撮像素子。
【請求項10】
酸化膜を構成する材料は、金属酸化物から成る請求項1
または請求項2に記載の撮像素子。
【請求項11】
金属酸化物は、タンタル、チタン、バナジウム、ニオブ、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガリウム及びマグネシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を含む
請求項10に記載の撮像素子。
【請求項12】
酸化膜には、シリコン、タンタル、バナジウム、ニオブ、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガリウム、マグネシウム、アルミニウム、ストロンチウム、ゲルマニウム、水素、炭素及び窒素から成る群から選択された少なくとも1種類の元素(但し、金属酸化物を構成する元素とは異なる元素である)が添加されている
請求項11に記載の撮像素子。
【請求項13】
酸化膜の厚さは、1原子層以上、1×10
-7m以下である
請求項
10に記載の撮像素子。
【請求項14】
酸化膜は、トンネル酸化膜から成る請求項1
または請求項2に記載の撮像素子。
【請求項15】
トンネル酸化膜は、SiO
X、SiON、SiOC及びAlO
Yから成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成されている請求項
14に記載の撮像素子。
【請求項16】
トンネル酸化膜の厚さは、1原子層以上、5×10
-9m以下である請求項
14に記載の撮像素子。
【請求項17】
酸化膜は、金属酸化物から成る膜とトンネル酸化膜との積層構造を有する請求項1
または請求項2に記載の撮像素子。
【請求項18】
光電変換層において生成した電荷は、酸化膜及び酸化物半導体層を介して第1電極へと移動する請求項1
または請求項2に記載の撮像素子。
【請求項19】
電荷は電子である請求項
18に記載の撮像素子。
【請求項20】
請求項1乃至請求項
19のいずれか1項に記載の撮像素子を少なくとも1つ有する積層型撮像素子。
【請求項21】
請求項1乃至請求項
19のいずれか1項に記載の撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置。
【請求項22】
請求項20に記載の積層型撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像素子、積層型撮像素子及び固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサー等を構成する撮像素子として、近年、積層型撮像素子が着目されている。積層型撮像素子においては、光電変換層(受光層)が2つの電極で挟み込まれた構造を有する。そして、積層型撮像素子にあっては、光電変換に基づき光電変換層において発生した信号電荷を、蓄積し、転送する構造が必要とされる。従来の構造では、信号電荷がFD(Floating Drain)電極に蓄積及び転送される構造が必要とされ、信号電荷が遅延しないような高速転送が必要とされる。
【0003】
このような課題を解決するための撮像素子(光電変換素子)が、例えば、特開2016-063165号公報に開示されている。この撮像素子は、
第1の絶縁層上に形成された蓄積電極、
蓄積電極上に形成された第2の絶縁層、
蓄積電極及び第2の絶縁層を覆うように形成された半導体層、
半導体層に接するように形成され、蓄積電極から離れるように形成された捕集電極、
半導体層上に形成された光電変換層、及び、
光電変換層上に形成された上部電極、
を備えている。
【0004】
光電変換層に有機半導体材料を用いる撮像素子は、特定の色(波長帯)を光電変換することが可能である。そして、このような特徴を有するが故に、固体撮像装置における撮像素子として用いる場合、オンチップ・カラーフィルタ層(OCCF)と撮像素子との組合せから副画素が成り、副画素が2次元配列されている、従来の固体撮像装置では不可能な、副画素を積層した構造(積層型撮像素子)を得ることが可能である(例えば、特開2011-138927号公報参照)。また、デモザイク処理を必要としないことから、偽色が発生しないといった利点がある。以下の説明において、半導体基板の上あるいは上方に設けられた光電変換部を備えた撮像素子を、便宜上、『第1タイプの撮像素子』と呼び、第1タイプの撮像素子を構成する光電変換部を、便宜上、『第1タイプの光電変換部』と呼び、半導体基板内に設けられた撮像素子を、便宜上、『第2タイプの撮像素子』と呼び、第2タイプの撮像素子を構成する光電変換部を、便宜上、『第2タイプの光電変換部』と呼ぶ場合がある。
【0005】
図51に従来の積層型撮像素子(積層型固体撮像装置)の構成例を示す。
図51に示す例では、半導体基板370内に、第2タイプの撮像素子である第3撮像素子343及び第2撮像素子341を構成する第2タイプの光電変換部である第3光電変換部343A及び第2光電変換部341Aが積層され、形成されている。また、半導体基板370の上方(具体的には、第2撮像素子341の上方)には、第1タイプの光電変換部である第1光電変換部310Aが配置されている。ここで、第1光電変換部310Aは、第1電極321、有機系材料から成る光電変換層323、第2電極322を備えており、第1タイプの撮像素子である第1撮像素子310を構成する。第2光電変換部341A及び第3光電変換部343Aにおいては、吸収係数の違いにより、それぞれ、例えば、青色光及び赤色光が光電変換される。また、第1光電変換部310Aにおいては、例えば、緑色光が光電変換される。
【0006】
第2光電変換部341A及び第3光電変換部343Aにおいて光電変換によって生成した電荷は、これらの第2光電変換部341A及び第3光電変換部343Aに一旦蓄積された後、それぞれ、縦型トランジスタ(ゲート部345を図示する)と転送トランジスタ(ゲート部346を図示する)によって第2浮遊拡散層(Floating Diffusion)FD2及び第3浮遊拡散層FD3に転送され、更に、外部の読み出し回路(図示せず)に出力される。これらのトランジスタ及び浮遊拡散層FD2,FD3も半導体基板370に形成されている。
【0007】
第1光電変換部310Aにおいて光電変換によって生成した電荷は、コンタクトホール部361、配線層362を介して、半導体基板370に形成された第1浮遊拡散層FD1に蓄積される。また、第1光電変換部310Aは、コンタクトホール部361、配線層362を介して、電荷量を電圧に変換する増幅トランジスタのゲート部352にも接続されている。そして、第1浮遊拡散層FD1は、リセット・トランジスタ(ゲート部351を図示する)の一部を構成している。参照番号371は素子分離領域であり、参照番号372は半導体基板370の表面に形成された絶縁材料膜であり、参照番号376,381は層間絶縁層であり、参照番号383は保護材料層であり、参照番号314はオンチップ・マイクロ・レンズである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-063165号公報
【文献】特開2011-138927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特開2016-063165号公報には、半導体層を構成する材料に関して幾つか言及されている。しかしながら、半導体層を酸化物半導体層から構成した場合、酸化物半導体層の表面(光電変換層と接する面)あるいはその近傍において酸素欠損が生じると、酸化物半導体層の特性変動(例えば、閾値電圧で評価される特性の変動)が起こり、電荷転送特性が低下し、撮像された画像の画質低下が発生する虞がある。
【0010】
従って、本開示の目的は、光電変換層に蓄積された電荷の転送特性に優れた撮像素子、積層型撮像素子及び固体撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本開示の撮像素子は、
第1電極、光電変換層及び第2電極が積層されて成る光電変換部を備えており、
光電変換層の直下には、光電変換層側から、酸化膜及び酸化物半導体層が形成されている。
【0012】
上記の目的を達成するための本開示の積層型撮像素子は、上記の本開示の撮像素子を少なくとも1つ有する。
【0013】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様に係る固体撮像装置は、上記の本開示の撮像素子を、複数、備えている。また、上記の目的を達成するための本開示の第2の態様に係る固体撮像装置は、上記の本開示の積層型撮像素子を、複数、備えている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例1の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の一部分の模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の1つの模式的な一部断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の等価回路図である。
【
図4】
図4は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の等価回路図である。
【
図5】
図5は、実施例1の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図である。
【
図6】
図6は、実施例1の撮像素子の動作時の各部位における電位の状態を模式的に示す図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、
図6(実施例1)及び
図21、
図22(実施例5)の各部位を説明するための実施例1及び実施例5の撮像素子、積層型撮像素子の等価回路図である。
【
図8】
図8は、実施例1の固体撮像装置の概念図である。
【
図9】
図9は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の変形例の等価回路図である。
【
図10】
図10は、
図9に示した実施例1の撮像素子の別の変形例を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図である。
【
図11】
図11は、実施例1の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極の更に別の変形例の模式的な配置図である。
【
図12】
図12は、実施例3の撮像素子、積層型撮像素子の模式的な一部断面図である。
【
図13】
図13は、実施例4の撮像素子、積層型撮像素子の模式的な一部断面図である。
【
図14】
図14は、実施例4の撮像素子、積層型撮像素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図15】
図15は、実施例4の撮像素子の別の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図16】
図16は、実施例4の撮像素子の更に別の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図17】
図17は、実施例5の撮像素子、積層型撮像素子の一部分の模式的な一部断面図である。
【
図18】
図18は、実施例5の撮像素子、積層型撮像素子の等価回路図である。
【
図19】
図19は、実施例5の撮像素子、積層型撮像素子の等価回路図である。
【
図20】
図20は、実施例5の撮像素子を構成する第1電極、転送制御用電極及び電荷蓄積用電極並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図である。
【
図21】
図21は、実施例5の撮像素子の動作時の各部位における電位の状態を模式的に示す図である。
【
図22】
図22は、実施例5の撮像素子の別の動作時の各部位における電位の状態を模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、実施例5の撮像素子の変形例を構成する第1電極、転送制御用電極及び電荷蓄積用電極並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図である。
【
図24】
図24は、実施例6の撮像素子の一部分の模式的な一部断面図である。
【
図25】
図25は、実施例6の撮像素子の電荷蓄積用電極を備えた光電変換部を構成する第1電極、電荷蓄積用電極及び電荷排出電極の模式的な配置図である。
【
図26】
図26は、実施例7の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の一部分の模式的な断面図である。
【
図27】
図27は、実施例7の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極等並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図である。
【
図28】
図28は、実施例7の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極等の模式的な配置図である。
【
図29】
図29は、実施例7の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極等の変形例の模式的な配置図である。
【
図30】
図30は、実施例7の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極等の変形例の模式的な配置図である。
【
図31】
図31A及び
図31Bは、実施例7の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極等の変形例の模式的な配置図である。
【
図32】
図32は、実施例8の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の一部分の模式的な断面図である。
【
図33】
図33A及び
図33Bは、実施例8の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の変形例の一部分の模式的な断面図である。
【
図34】
図34は、実施例8の撮像素子(並置された2×2の撮像素子)の一部分の模式的な平面図である。
【
図35】
図35は、実施例8の撮像素子(並置された2×2の撮像素子)の変形例の一部分の模式的な平面図である。
【
図36】
図36A及び
図36Bは、実施例8の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の変形例の一部分の模式的な断面図である。
【
図39】
図39は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の更に別の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図40】
図40は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の更に別の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図41】
図41は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の更に別の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図42】
図42は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の別の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図43】
図43は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の更に別の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図44】
図44は、実施例4の撮像素子、積層型撮像素子の更に別の変形例の一部分の模式的な一部断面図である。
【
図45】
図45は、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子における光電変換層、酸化膜及び酸化物半導体層の積層構造体における各種エネルギー値の関係を模式的に示す図である。
【
図47】
図47の(A)及び
図47の(B)は、酸化物半導体層の上に酸化膜を形成した後、水素終端化していない場合の効果を調べた結果及び断面の概念図を示す図であり、
図47の(C)及び
図47の(D)は、酸化物半導体層の上に酸化膜を形成した後、水素終端化した場合の効果を調べた結果及び断面の概念図を示す図である。
【
図48】
図48は、
図47の(C)に示した酸化膜及び酸化物半導体層のSIMS解析結果の一例を示す図である。
【
図49】
図49の(a)及び(b)は、それぞれ、欠陥サイトの例として過剰な酸素が存在する酸化物半導体層と酸化膜との界面を第1原理計算に基づき予測した結果を示す図、及び、
図49の(a)に示す状態に水素を添加したときの状態を第1原理計算に基づき予測した結果を示す図である。
【
図50】
図50は、本開示の撮像素子、積層型撮像素子から構成された固体撮像装置を電子機器(カメラ)を用いた例の概念図である。
【
図51】
図51は、従来の積層型撮像素子(積層型固体撮像装置)の概念図である。
【
図52】
図52は、車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図53】
図53は、車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【
図54】
図54は、内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図55】
図55は、カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の撮像素子、本開示の積層型撮像素子、本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の撮像素子、本開示の積層型撮像素子、本開示の第2の態様に係る固体撮像装置)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1~実施例2の変形)
5.実施例4(実施例1~実施例3の変形、本開示の第1の態様に係る固体撮像装置)
6.実施例5(実施例1~実施例4の変形、転送制御用電極を備えた撮像素子)
7.実施例6(実施例1~実施例5の変形、電荷排出電極を備えた撮像素子)
8.実施例7(実施例1~実施例6の変形、下部電荷移動制御電極を備えた撮像素子)
9.実施例8(実施例1~実施例7の変形、上部電荷移動制御電極を備えた撮像素子)
10.その他
【0016】
〈本開示の撮像素子、本開示の積層型撮像素子、本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置、全般に関する説明〉
本開示の撮像素子、本開示の積層型撮像素子を構成する本開示の撮像素子、本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置を構成する本開示の撮像素子(以下、これらの撮像素子を総称して、『本開示の撮像素子等』と呼ぶ場合がある)において、酸化膜を構成する元素の少なくとも一部は、酸化物半導体層を構成する元素と異なる形態とすることができる。
【0017】
上記の好ましい形態を含む本開示の撮像素子等にあっては、真空準位をゼロ基準として、真空準位から離れるほどエネルギー(値の符号は負)の絶対値が大きいと定義すると、酸化物半導体層の伝導帯の最大エネルギー値(
図45の「C」参照)におけるエネルギー平均値(以下、『酸化物半導体層の伝導帯におけるエネルギー平均値』と略称する場合がある)をE
2、酸化膜の伝導帯の最大エネルギー値(
図45の「B」参照)におけるエネルギー平均値(以下、『酸化膜の伝導帯におけるエネルギー平均値』と略称する場合がある)をE
1としたとき、
E
1-E
2≧-0.4(eV)
好ましくは、
E
1-E
2≧0(eV)
より好ましくは、
E
1-E
2≧0.1(eV)
より一層好ましくは、
E
1-E
2>0.1(eV)
を満足することが好ましく、この場合、更には、光電変換層のLUMO値(
図45の「A」参照)におけるエネルギー平均値をE
0としたとき、
E
0-E
1≧-0.4(eV)
好ましくは、
E
0-E
1≧0(eV)
より好ましくは、
E
0-E
1≧0.1(eV)
より一層好ましくは、
E
0-E
1>0.1(eV)
を満足することが好ましく、更には、
E
0≧E
1≧E
2
を満足することが一層好ましい。各障壁の大小関係が、上述したとおり、(-0.4eV)程度であれば、電荷蓄積用電極及び第2電極に印加する電位を最適化し、光電変換層に加わる電界強度を増加させることにより、電荷を、例えば、光電変換層から酸化膜を介して酸化物半導体層へと確実に移動させることができる。また、後述するように、酸化膜を十分に薄膜化すれば、トンネル効果により電荷を移動させることができる。尚、『最小エネルギー』とはエネルギーの値の絶対値が最小であることを意味し、『最大エネルギー』とはエネルギーの値の絶対値が最大であることを意味する。以下においても同様である。
【0018】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子等にあっては、前述のように、真空準位をゼロ基準として、真空準位から離れるほどエネルギー(値の符号は負)の絶対値が大きいと定義すると、酸化膜の価電子帯における最小エネルギー値(
図45の「E」参照)のエネルギー平均値(以下、『酸化膜の価電子帯におけるエネルギー平均値』と略称する場合がある)をE
4、光電変換層のHOMO値(
図45の「D」参照)におけるエネルギー平均値をE
3としたとき、
E
3-E
4≧-0.4(eV)
好ましくは、
E
3-E
4≧0(eV)
より好ましくは、
E
3-E
4≧0.1(eV)
より一層好ましくは、
E
3-E
4>0.1(eV)
を満足することが好ましく、この場合、更には、酸化物半導体層の価電子帯の最小エネルギー値(
図45の「F」参照)におけるエネルギー平均値((以下、『酸化物半導体層の価電子帯におけるエネルギー平均値』と略称する場合がある)をE
5としたとき、
E
4-E
5≧-0.4(eV)
好ましくは、
E
4-E
5≧0(eV)
より好ましくは、
E
4-E
5≧0.1(eV)
より一層好ましくは、
E
4-E
5>0.1(eV)
を満足することがより好ましく、更には、
E
3≧E
4≧E
5
を満足することが一層好ましい。
【0019】
ここで、価電子帯のエネルギー、HOMOの値は、例えば、紫外光電子分光法(UPS法)に基づき求めることができる。また、伝導帯のエネルギーやLUMOの値は、{(価電子帯のエネルギー、HOMOの値)+Eb}から求めることができる。更には、バンドギャップエネルギーEbは、光学的に吸収する波長λ(光学的な吸収端波長であり、単位はnm)から、以下の式に基づき求めることができる。
Eb=hν=h(c/λ)=1239.8/λ[eV]
【0020】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子等において、酸化膜を構成する材料は、金属酸化物から成る構成とすることができ、この場合、金属酸化物は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ガリウム(Ga)及びマグネシウム(Mg)から成る群から選択された少なくとも1種類の元素を含む構成とすることができる。更には、酸化膜には、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、ゲルマニウム(Ge)、水素(H)、炭素(C)及び窒素(N)から成る群から選択された少なくとも1種類の元素(但し、金属酸化物を構成する元素とは異なる元素である)が添加されている構成とすることができ、この場合、酸化膜には、シリコン(Si)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、炭素(C)及び窒素(N)から成る群から選択された少なくとも1種類の元素(但し、金属酸化物を構成する元素とは異なる元素である)が添加されている構成とすることが好ましい。これらの添加元素の添加割合として、限定するものではないが、0.33原子%乃至16.7原子%、好ましくは0.54原子%乃至14.3原子%、より好ましくは0.81原子%乃至11.1原子%を挙げることができる。尚、金属酸化物を構成する原子(酸素原子を含む)の原子%の合計を100原子%とする。即ち、例えば、酸化膜がタンタル原子とシリコン原子と酸素原子から構成されている場合、金属酸化物を構成するタンタル原子の原子%と、シリコン原子の原子%と、酸素原子の原子%の合計を100原子%とする。酸化膜にこれらの元素をいずれかを添加することによって、撮像素子の製造工程における熱処理において酸化膜の結晶化を抑制することができる。酸化膜に局所的な結晶化は生じると、この局所的に結晶化した部分を基点したリーク電流が発生する虞があるが、均一なアモルファス構造を有する酸化膜を得ることができるので、このような問題の発生を防止することができ、光電変換層の閾値電圧の安定化を図ることができる結果、電荷蓄積及び転送効率の特性の一層の改善を図ることができ、撮像画質を向上することができる。更には、これらの場合、酸化膜の厚さは、1原子層以上、1×10-7m以下である構成とすることができる。金属酸化物として、具体的には、Ta2O5、TiO2、V2O5、Nb2O5、W2O3、ZrO2、HfO2、Sc2O3、Y2O3、La2O3、Ga2O3、MgOを挙げることができる。酸化膜の膜厚が1原子層(0.15nm程度)であっても、酸化物半導体の安定化には充分なる効果がある。
【0021】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子等において、酸化膜はトンネル酸化膜から成る構成とすることができ、この場合、トンネル酸化膜は、SiOX、SiON、SiOC及びAlOYから成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成することができ、更には、これらの場合、トンネル酸化膜の厚さは、1原子層以上、5×10-9m以下である構成とすることができる。
【0022】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子等において、酸化膜は、金属酸化物から成る膜とトンネル酸化膜との積層構造を有する構成とすることができ、この場合、金属酸化物は、タンタル、チタン、バナジウム、ニオブ、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガリウム及びマグネシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を含む構成とすることができ、更には、金属酸化物から成る膜の厚さは、1原子層以上、1×10-7m以下である構成とすることができる。更には、これらの場合、トンネル酸化膜は、SiOX、SiON、SiOC及びAlOYから成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成することができ、更には、これらの場合、トンネル酸化膜の厚さは、1原子層以上、5×10-9m以下である構成とすることができる。
【0023】
酸化物半導体層を構成する材料である酸化物半導体(以下、『酸化物半導体層構成材料』と呼ぶ場合がある)として、例えば、インジウム酸化物、ガリウム酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物や、これらの酸化物が少なくとも1種類含まれる材料、これらの材料にドーパントを添加した材料、具体的には、例えば、IGZO(酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムとガリウムを添加したインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物)、ITZO、IWZO、IWO、ZTO、ITO-SiOX系材料(ケイ素酸化物が混合又はドーピングされたインジウム-錫酸化物)、GZO(酸化亜鉛にドーパントとしてガリウムを添加したガリウム-亜鉛酸化物)、IGO(酸化ガリウムにドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-ガリウム酸化物)、ZnSnO3、AlZnO、GaZnO、InZnOを挙げることができるし、また、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIn2O4、CdO等を含む材料を挙げることができるが、これらの材料に限定するものではない。あるいは又、酸化物半導体層構成材料として、蓄積すべき電荷が電子である場合、光電変換層を構成する材料(以下、『光電変換層構成材料』と呼ぶ場合がある)のイオン化ポテンシャルよりも大きなイオン化ポテンシャルを有する材料を挙げることができるし、蓄積すべき電荷が正孔である場合、光電変換層構成材料の電子親和力よりも小さな電子親和力を有する材料を挙げることができる。あるいは又、酸化物半導体層構成材料における不純物濃度は1×1018cm-3以下であることが好ましい。酸化物半導体層は、単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。電荷蓄積用電極の上方に位置する酸化物半導体層構成材料と、第1電極の上方に位置する酸化物半導体層構成材料とを、異ならせてもよい。
【0024】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における水素原子濃度の平均値ConcH-1は、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分における水素原子濃度の平均値ConcH-2よりも高い構成とすることができ、この場合、
ConcH-1/ConcH-2≧1.1
を満足することが好ましい。更には、あるいは又、酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における水素原子濃度の値をConcH-1、酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における酸化膜を構成する原子の濃度の値をConcM-1としたとき、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分に向かうConcH-1の平均変化率ΔConcH-1は、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分に向かうConcM-1の平均変化率ΔConcM-1よりも大きい構成とすることができる。ここで、酸化膜と酸化物半導体層との界面とは、酸化膜における酸化膜を構成する原子の濃度のピーク値をConcM-Peakとしたとき、酸化膜における酸化膜を構成する原子の濃度の値がConcM-Peakの10%となる部分と定義する。また、酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分とは、酸化膜と光電変換層との界面を基準として、光電変換層の厚さの10%以内を占める領域(即ち、光電変換層の厚さの0%乃至10%に亙る領域)を指すし、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分とは、酸化膜と光電変換層との界面を基準として、光電変換層の厚さの40%から60%を占める領域(即ち、光電変換層の厚さの40%乃至60%に亙る領域)を指す。水素原子濃度や酸化膜を構成する原子の濃度は、例えば、アメテック株式会社 カメカ事業部の二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry 法,SIMS法)によって求めることができるし、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy 法,EDS法)に基づき求めることもできる。また、厚さ方向の或る領域(便宜上、『或る区間』と呼ぶ)における原子の濃度の値の平均変化率は、或る区間の支点から終点に亙り原子濃度値の分析値のスムージングを行い、{(スムージングによって得られた終点における原子濃度値)-(スムージングによって得られた支点における原子濃度値)}の値を、(終点から始点までの距離)で除することによって、求めることができる。
【0025】
第1電極、第2電極、電荷蓄積用電極及び光電変換層に関しては、後に詳しく説明する。
【0026】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、光電変換層において生成した電荷は、酸化膜及び酸化物半導体層を介して第1電極へと移動する形態とすることができ、この場合、電荷は電子である形態とすることができる。
【0027】
本開示の撮像素子等においては、酸化膜を構成する材料(以下、『酸化膜構成材料』と呼ぶ場合がある)の特性、光電変換層構成材料の特性、酸化物半導体層構成材料の特性を規定しているが、光電変換層構成材料の特性は、酸化膜の近傍に位置する光電変換層の部分の特性平均値を指す。酸化膜構成材料の特性は、酸化膜における平均値であるし、酸化物半導体層構成材料の特性は、酸化物半導体層における平均値である。即ち、酸化膜、酸化物半導体層の伝導帯におけるエネルギー平均値E1,E2は、酸化膜、酸化物半導体層における平均値とする。また、光電変換層のLUMO値におけるエネルギー平均値E0は、酸化膜の近傍に位置する光電変換層の部分における平均値とする。同様に、酸化膜、酸化物半導体層の価電子帯におけるエネルギー平均値値E4,E5は、酸化膜、酸化物半導体層における平均値とする。また、光電変換層のHOMO値におけるエネルギー平均値E3は、酸化膜の近傍に位置する光電変換層の部分における平均値とする。ここで、「酸化膜の近傍に位置する光電変換層の部分」とは、酸化膜と光電変換層との界面を基準として、光電変換層の厚さの10%以内を占める領域(即ち、光電変換層の厚さの0%乃至10%に亙る領域)に位置する光電変換層の部分を指す。
【0028】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、酸化物半導体層は非晶質である(例えば、局所的に結晶構造を持たない非晶質である)形態とすることができる。酸化物半導体層が非晶質であるか否かは、X線回折分析に基づき決定することができる。但し、酸化物半導体層は、非晶質であることに限定されず、結晶構造を有していてもよいし、多結晶構造を有していてもよい。
【0029】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、酸化物半導体層の厚さは、1×10-8m乃至1.5×10-7m、好ましくは、2×10-8m乃至1.0×10-7m、より好ましくは、3×10-8m乃至1.0×10-7mである形態とすることができる。酸化物半導体層のキャリア濃度(キャリア密度)は1×1016/cm3未満であることが好ましく、これによって、酸化物半導体層における電荷蓄積量の増加を図ることができる。また、酸化物半導体層構成材料のキャリア移動度は10cm2/V・s以上であることが好ましく、これによって、酸化物半導体層に蓄積された電荷を第1電極へと速やかに移動させることができる。
【0030】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、
第2電極から光が入射し、
光電変換層側の酸化物半導体層表面(酸化膜と酸化物半導体層との界面における酸化物半導体層表面であり、以下においても同様)の表面粗さRaは1.5nm以下であり、酸化物半導体層表面の二乗平均平方根粗さRqの値は2.5nm以下である形態とすることができる。表面粗さRa,Rqは、JIS B0601:2013の規定に基づく。このような酸化物半導体層表面の平滑性は、酸化物半導体層表面における散乱反射を抑制し、光電変換における明電流特性の向上を図ることができる。電荷蓄積用電極表面の表面粗さRaは1.5nm以下であり、電荷蓄積用電極表面の二乗平均平方根粗さRqの値は2.5nm以下である形態とすることができる。
【0031】
図51に示した従来の撮像素子にあっては、第2光電変換部341A及び第3光電変換部343Aにおいて光電変換によって生成した電荷は、第2光電変換部341A及び第3光電変換部343Aに一旦蓄積された後、第2浮遊拡散層FD
2及び第3浮遊拡散層FD
3に転送される。それ故、第2光電変換部341A及び第3光電変換部343Aを完全空乏化することができる。しかしながら、第1光電変換部310Aにおいて光電変換によって生成した電荷は、直接、第1浮遊拡散層FD
1に蓄積される。それ故、第1光電変換部310Aを完全空乏化することは困難である。そして、以上の結果、kTCノイズが大きくなり、ランダムノイズが悪化し、撮像画質の低下をもたらす虞がある。
【0032】
本開示の撮像素子等においては、上述したとおり、第1電極と離間して配置され、且つ、絶縁層を介して酸化物半導体層と対向して配置された電荷蓄積用電極を備えていれば、光電変換部に光が照射され、光電変換部において光電変換されるとき、酸化物半導体層(場合によっては、酸化物半導体層及び光電変換層、あるいは又、酸化物半導体層、酸化膜及び光電変換層)に電荷を蓄えることができる。それ故、露光開始時、電荷蓄積部を完全空乏化し、電荷を消去することが可能となる。その結果、kTCノイズが大きくなり、ランダムノイズが悪化し、撮像画質の低下をもたらすといった現象の発生を抑制することができる。尚、以下の説明において、酸化物半導体層、あるいは、酸化物半導体層及び光電変換層、あるいは、酸化物半導体層、酸化膜及び光電変換層を総称して、『酸化物半導体層等』と呼ぶ場合がある。
【0033】
酸化物半導体層や酸化膜は、例えば、物理的気相成長法(PVD法)、具体的には、例えば、スパッタリング法に基づき成膜することができる。より具体的には、スパッタリング装置として、例えば、平行平板スパッタリング装置あるいはDCマグネトロンスパッタリング装置、RFスパッタリング装置を用い、プロセスガスとしてアルゴン(Ar)ガスを使用し、所望の焼結体をターゲットとして用いたスパッタリング法を例示することができる。あるいは又、酸化膜の形成方法として、アトミック・レイヤー・デポジッション法(ALD法)を例示することができる。但し、これらの成膜方法に限定されるものではない。
【0034】
酸化物半導体層をスパッタリング法に基づき形成する場合、酸素ガス導入量(酸素ガス分圧)を制御することによって、酸化物半導体層のエネルギー準位を制御することができる。具体的には、スパッタリング法に基づき形成する際の
酸素ガス分圧=(O2ガス圧力)/(ArガスとO2ガスの圧力合計)
に基づき制御することが可能である。酸素ガス分圧は、0.005乃至0.10とすることが好ましい。更には、本開示の撮像素子等にあっては、酸化物半導体層における酸素の含有率が化学量論組成の酸素含有率よりも少ない形態とすることができる。ここで、酸素の含有率に基づいて酸化物半導体層のエネルギー準位を制御することができ、酸素の含有率が化学量論組成の酸素含有率よりも少なくなる程、即ち、酸素欠損が多くなる程、エネルギー準位が深くなる。
【0035】
本開示の撮像素子等として、CCD素子、CMOSイメージセンサー、CIS(Contact Image Sensor)、CMD(Charge Modulation Device)型の信号増幅型イメージセンサーを挙げることができる。本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置、後述する第1構成~第2構成の固体撮像装置から、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダ、監視カメラ、車両搭載用カメラ、スマートホン用カメラ、ゲーム用のユーザーインターフェースカメラ、生体認証用カメラを構成することができる。
【実施例1】
【0036】
実施例1は、本開示の撮像素子、本開示の積層型撮像素子及び本開示の第2の態様に係る固体撮像装置に関する。実施例1の撮像素子及び積層型撮像素子(以下、単に「撮像素子」と呼ぶ)の一部分の模式的な断面図を
図1に示す。尚、
図1においては、並置された2つの撮像素子を図示しているが、
図1の模式的な断面図は、例えば、
図11の一点鎖線A-Aに沿ったと同様の模式的な断面図である。また、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の1つの模式的な一部断面図を
図2に示し、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の等価回路図を
図3及び
図4に示し、実施例1の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図を
図5に示す。更には、実施例1の撮像素子の動作時の各部位における電位の状態を模式的に
図6に示し、
図6の各部位を説明するための実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の等価回路図を
図7Aに示し、実施例1の固体撮像装置の概念図を
図8に示す。尚、層間絶縁層81より下方に位置する各種の撮像素子構成要素を、図面を簡素化するために、便宜上、纏めて、参照番号13で示す場合がある。
【0037】
実施例1の撮像素子10は、第1電極21、光電変換層23A及び第2電極22が積層されて成る光電変換部を備えており、光電変換層23Aの直下には、光電変換層側から、酸化膜23B及び酸化物半導体層23Cが形成されている。ここで、実施例1において、酸化物半導体層23Cは第1電極21と接し、酸化物半導体層23Cと酸化膜23Bとは接し、酸化膜23Bは光電変換層23Aと接している。
【0038】
実施例1の積層型撮像素子は、実施例1の撮像素子10を少なくとも1つ有する。また、実施例1の固体撮像装置は、実施例1の積層型撮像素子10を、複数、備えている。そして、実施例1の固体撮像装置から、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダ、監視カメラ、車両搭載用カメラ(車載カメラ)、スマートホン用カメラ、ゲーム用のユーザーインターフェースカメラ、生体認証用カメラ等が構成されている。
【0039】
酸化物半導体層23Cは、第1電極21と接する領域、絶縁層82と接しており、下方には電荷蓄積用電極24が存在しない領域、及び、絶縁層82と接しており、下方に電荷蓄積用電極24が存在する領域を有する。そして、第2電極22から光が入射する。光電変換層側の酸化物半導体層23Cの表面における表面粗さRaは1.5nm以下であり、二乗平均平方根粗さRqの値は2.5nm以下である。また、酸化物半導体層23Cは非晶質であるし、酸化物半導体層23Cの厚さは、1×10-8m乃至1.5×10-7mである。
【0040】
酸化膜構成元素の少なくとも一部は、酸化物半導体層23Cを構成する元素と異なる。酸化物半導体層の伝導帯におけるエネルギー平均値をE
2、酸化膜の伝導帯におけるエネルギー平均値をE
1としたとき、
E
1-E
2≧-0.4(eV)
好ましくは、
E
1-E
2≧0(eV)
より好ましくは、
E
1-E
2≧0.1(eV)
より一層好ましくは、
E
1-E
2>0.1(eV)
を満足するし、更には、光電変換層のLUMO値におけるエネルギー平均値をE
0としたとき、
E
0-E
1≧-0.4(eV)
好ましくは、
E
0-E
1≧0(eV)
より好ましくは、
E
0-E
1≧0.1(eV)
より一層好ましくは、
E
0-E
1>0.1(eV)
を満足する。更には、好ましくは、
E
0≧E
1≧E
2
を満足する。光電変換層23A、酸化膜23B及び酸化物半導体層23Cの積層構造体における各種エネルギー値の関係を、
図45に模式的に示す。
【0041】
酸化膜構成材料は金属酸化物から成り、酸化膜23Bの厚さは1原子層以上、1×10-7m以下である。具体的には、酸化膜23Bは、例えば、厚さ10nmのTiO2といった金属酸化物から構成されているし、酸化物半導体層23Cは、例えば、厚さ50nmのIGZOから構成されている。また、光電変換層23Aは、例えば、C60を含む有機半導体材料(有機光電変換材料)から構成されている。酸化物半導体層の伝導帯におけるエネルギー平均値E2、価電子帯におけるエネルギー平均値E5、酸化膜の伝導帯におけるエネルギー平均値E1、価電子帯におけるエネルギー平均値E4、光電変換層のLUMO値におけるエネルギー平均値E0及びHOMO値におけるエネルギー平均値E3は、以下の表1のとおりである。そして、光電変換層23Aにおいて生成した電荷は、酸化膜23B及び酸化物半導体層23Cを介して第1電極21へと移動する。電荷は電子である。酸化物半導体層構成材料の移動度は10cm2/V・s以上であるし、酸化物半導体層23Cのキャリア濃度は1×1016/cm3未満である。尚、酸化膜23Bは、金属酸化物から成る層の単層構造とすることができるし、金属酸化物から成る層の複数が積層された積層構造とすることができる。
【0042】
〈表1〉
E2:-4.7eV
E1:-4.5eV
E0:-4.4eV
E5:-7.7eV
E4:-7.6eV
E3:-6.2eV
【0043】
酸化物半導体層23Cの上に酸化膜23Bを形成することの効果を調べた。具体的には、TFTのチャネル形成領域を酸化物半導体層及び酸化膜の積層構造から構成し、V
gsとI
dとの関係を求めた。その結果を
図46Aに示す。また、比較例として、チャネル形成領域を酸化物半導体層のみから構成したTFTにおけるV
gsとI
dとの関係を求めたグラフを
図46Bに示す。
図46A及び
図46Bから、チャネル形成領域を酸化物半導体層及び酸化膜の積層構造から構成する方が、特性が安定していることが判る。
【0044】
実施例1の撮像素子において、光電変換部は、第2電極側から、光電変換層、酸化膜及び酸化物半導体層から構成されているので、即ち、酸化物半導体層の上には酸化膜が形成されているので、酸化物半導体層の表面(光電変換層側の面)あるいはその近傍において酸素欠損が生じ難い。一般に、酸化物半導体層の表面は不安定であるが、このように酸化膜で終端させることでエネルギー的に安定化させることができ、酸化物半導体層の表面の酸素欠損を低減させることができる。それ故、酸化物半導体内のトラップ及びキャリアの低減を図ることができるので、酸化物半導体層の特性変動(例えば、閾値電圧で評価される特性の変動)が生じ難く、電荷蓄積及び電荷転送効率の特性改善を図ることができるし、電荷転送特性の低下、撮像された画像の画質低下といった問題の発生を確実に防止することができる。しかも、酸化物半導体層が設けられているので、例えば、電荷蓄積時の再結合を防止することができるし、光電変換層に蓄積した電荷の第1電極への電荷転送効率を一層増加させることができる。更には、光電変換層で生成された電荷を一時的に保持し、転送のタイミング等を制御することができるし、暗電流の生成を抑制することができる。
【0045】
ところで、酸化物半導体層23C中に、過剰な酸素や酸素欠損のような欠陥サイトが残存する場合がある。このような場合には、欠陥サイトを水素で終端処理することによって、欠陥サイトに起因する欠陥準位を低減あるいは無効化することができる。酸化物半導体層23Cの上に酸化膜23Bを形成し、水素終端化した場合の効果を調べた。具体的には、TFTのチャネル形成領域を酸化物半導体層23C及び酸化膜23Bの積層構造から構成し、水素終端処理前のV
gsとI
dとの関係を調べた結果を
図47の(A)に示し、併せて、
図47の(B)に断面の概念図を示す。また、水素終端処理後のV
gsとI
dとの関係を調べた結果を
図47の(C)に示し、併せて、
図47の(D)に断面の概念図を示す。水素終端処理を行うことにより、酸化物半導体層23Cと酸化膜23Bの積層構造がチャネル層として機能していることが判る。
図47の(B)及び(D)において、「酸化物」は酸化膜23Bを示し、「酸化物半導体」は酸化物半導体層23Cを示す。
図48に、
図47の(C)に示した酸化膜23B及び酸化物半導体層23CのSIMS解析結果の一例を示す。尚、
図47の(D)において「A」及び「B」で示す部分が、
図48において「A」及び「B」で示す部分に相当する。
図47の(D)及び
図48において「A」で示す部分は、酸化物半導体層23Cと酸化膜23Bとの界面に相当する。この例では、酸化物半導体層23Cから酸化膜23Bに向かって、酸化膜を構成する原子(具体的には、Ti)の濃度が急激に上昇する以上に、水素原子濃度が急激に上昇していることが判る。つまり、酸化物半導体層23Cと酸化膜23Bとの界面近傍の酸化物半導体層の部分において水素原子の濃度が上昇していることが判る。
図49の(a)に、欠陥サイトの例として過剰な酸素が存在する酸化物半導体層23Cと酸化膜23Bとの界面を第1原理計算に基づき予測した結果を示す。また、
図49の(b)に、
図49の(a)に示す状態に水素を添加したときの状態を第1原理計算に基づき予測した結果を示すが、水素原子が過剰な酸素原子と結合し、安定化した系を得ることができることが判る。
【0046】
即ち、酸化膜23Bと酸化物半導体層23Cとの界面近傍の酸化物半導体層23Cの部分における水素原子濃度の平均値Conc
H-1は、酸化物半導体層23Cの厚さ方向に沿った中央部分における水素原子濃度の平均値Conc
H-2よりも高い。具体的には、
Conc
H-1/Conc
H-2≧1.1
を満足することが好ましい。更には、あるいは又、酸化膜23Bと酸化物半導体層23Cとの界面近傍の酸化物半導体層23Cの部分における水素原子濃度の値をConc
H-1、酸化膜23Bと酸化物半導体層23Cとの界面近傍の酸化物半導体層23Cの部分における酸化膜23Bを構成する原子の濃度の値をConc
M-1としたとき、酸化物半導体層23Cの厚さ方向に沿った中央部分に向かうConc
H-1の平均変化率ΔConc
H-1は、
図48に示すように、酸化物半導体層23Cの厚さ方向に沿った中央部分に向かうConc
M-1の平均変化率ΔConc
M-1よりも大きい。尚、
図48において、酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分を、「区間A」で示す。
【0047】
酸化膜23Bを、トンネル酸化膜から構成することもできる。ここで、トンネル酸化膜は、SiOX、SiON、SiOC及びAlOYから成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成することができる。尚、トンネル酸化膜は、これらの材料の内の1種類の材料から成る層の単層構造とすることができるし、これらの材料の内の複数種の材料から成る複数の層が積層された積層構造とすることもできる。トンネル酸化膜の厚さは、1原子層以上、5×10-9m以下であることが好ましい。このようなトンネル酸化膜から酸化膜を構成した場合にも、上述したと同様の優れた結果を得ることができた。
【0048】
あるいは又、酸化膜23Bは、金属酸化物から成る膜とトンネル酸化膜との積層構造を有する構成とすることができ、この場合、金属酸化物は、タンタル、チタン、バナジウム、ニオブ、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガリウム及びマグネシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を含む構成とすることができ、更には、金属酸化物から成る膜の厚さは、1原子層以上、1×10-7m以下である構成とすることができる。更には、これらの場合、トンネル酸化膜は、SiOX、SiON、SiOC及びAlOYから成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成することができ、更には、これらの場合、トンネル酸化膜の厚さは、1原子層以上、5×10-9m以下である構成とすることができる。具体的には、例えば、酸化膜23Bを、厚さ10nmの金属酸化物から成る膜(より具体的には、例えば、光電変換層23A側に位置するTiO2膜)と、厚さ0.5nmのトンネル酸化膜(より具体的には、例えば、酸化物半導体層23C側に位置するSiO2膜)との積層構造を有する構成とすることができ、このような構造を有する酸化膜を用いた場合にも、上述したと同様の優れた結果を得ることができた。
【0049】
また、電荷を正孔とする場合、酸化膜の価電子帯におけるエネルギー平均値をE4、光電変換層のHOMO値におけるエネルギー平均値をE3としたとき、
E3-E4≧-0.4(eV)
好ましくは、
E3-E4≧0(eV)
より好ましくは、
E3-E4≧0.1(eV)
より一層好ましくは、
E3-E4>0.1(eV)
を満足することが好ましく、この場合、更には、酸化物半導体層の価電子帯におけるエネルギー平均値をE5としたとき、
E4-E5≧-0.4(eV)
好ましくは、
E4-E5≧0(eV)
より好ましくは、
E4-E5≧0.1(eV)
より一層好ましくは、
E4-E5>0.1(eV)
を満足することがより好ましく、更には、
E3≧E4≧E5
を満足することが一層好ましい。
【0050】
以下、本開示の撮像素子、本開示の積層型撮像素子及び本開示の第2の態様に係る固体撮像装置の全般的な説明を行い、次いで、実施例1の撮像素子、固体撮像装置の詳細な説明を行う。以下においては、第1電極に印加される電位が第2電極に印加される電位よりも高い場合について説明を行うが、第1電極に印加される電位が第2電極に印加される電位よりも低い場合には、各種電極に印加される電位の高低を逆とすればよい。以下の説明において各種電極に印加される電位を表す符号を、以下の表2に示す。
【0051】
〈表2〉
電荷蓄積期間 電荷転送期間
第1電極 V11 V12
第2電極 V21 V22
電荷蓄積用電極 V31 V32
電荷移動制御電極 V41 V42
転送制御用電極 V51 V52
電荷排出電極 V61 V62
【0052】
本開示の撮像素子等にあっては、酸化物半導体層の、波長400nm乃至660nmの光に対する光透過率は65%以上であることが好ましい。また、電荷蓄積用電極の、波長400nm乃至660nmの光に対する光透過率も65%以上であることが好ましい。電荷蓄積用電極のシート抵抗値は3×10Ω/□乃至1×103Ω/□であることが好ましい。
【0053】
本開示の撮像素子等にあっては、半導体基板を更に備えており、光電変換部は、半導体基板の上方に配置されている形態とすることができる。尚、第1電極、電荷蓄積用電極、第2電極及び各種電極は、後述する駆動回路に接続されている。
【0054】
光入射側に位置する第2電極は、複数の撮像素子において共通化されていてもよい。即ち、後述する本開示の上部電荷移動制御電極を備えた撮像素子等を除き、第2電極を所謂ベタ電極とすることができる。光電変換層は、複数の撮像素子において共通化されていてもよいし、即ち、複数の撮像素子において1層の光電変換層が形成されていてもよいし、撮像素子毎に設けられていてもよい。酸化物半導体層は、撮像素子毎に設けられていることが好ましいが、場合によっては、複数の撮像素子において共通化されていてもよい。即ち、例えば、後述する電荷移動制御電極を撮像素子と撮像素子との間に設けることで、複数の撮像素子において共通化された1層の酸化物半導体層が形成されていてもよい。複数の撮像素子において共通化された1層の酸化物半導体層が形成されている場合、酸化物半導体層の端部は、少なくとも光電変換層で覆われていることが、酸化物半導体層の端部の保護といった観点から望ましい。
【0055】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、第1電極は、絶縁層に設けられた開口部内を延在し、酸化物半導体層と接続されている形態とすることができる。あるいは又、酸化物半導体層は、絶縁層に設けられた開口部内を延在し、第1電極と接続されている形態とすることができ、この場合、
第1電極の頂面の縁部は絶縁層で覆われており、
開口部の底面には第1電極が露出しており、
第1電極の頂面と接する絶縁層の面を第1面、電荷蓄積用電極と対向する酸化物半導体層の部分と接する絶縁層の面を第2面としたとき、開口部の側面は、第1面から第2面に向かって広がる傾斜を有する形態とすることができ、更には、第1面から第2面に向かって広がる傾斜を有する開口部の側面は、電荷蓄積用電極側に位置する形態とすることができる。
【0056】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、
半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極及び電荷蓄積用電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極に電位V31が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層及び光電変換層、あるいは、酸化物半導体層、酸化膜及び光電変換層)に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極に電位V32が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層及び光電変換層)に蓄積された電荷が第1電極を経由して制御部に読み出される構成とすることができる。但し、第1電極の電位は第2電極の電位よりも高く、
V31≧V11、且つ、V32<V12
である。尚、酸化物半導体層、あるいは、酸化物半導体層及び光電変換層、あるいは、酸化物半導体層、酸化膜及び光電変換層を、総称して、前述したとおり、『酸化物半導体層等』と呼ぶ場合がある。
【0057】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等にあっては、隣接する撮像素子の間に位置する光電変換層の領域に絶縁層を介して対向する領域には、電荷移動制御電極が形成されている形態とすることができる。尚、このような形態を、便宜上、『本開示の下部電荷移動制御電極を備えた撮像素子等』と呼ぶ場合がある。あるいは又、隣接する撮像素子の間に位置する光電変換層の領域の上には、第2電極が形成される代わりに、電荷移動制御電極が形成されている形態とすることができる。尚、このような形態を、便宜上、『本開示の上部電荷移動制御電極を備えた撮像素子等』と呼ぶ場合がある。
【0058】
以下の説明において、「隣接する撮像素子の間に位置する光電変換層の領域」を、便宜上、『光電変換層の領域-A』と呼び、「隣接する撮像素子の間に位置する絶縁層の領域」を、便宜上、『絶縁層の領域-A』と呼ぶ。光電変換層の領域-Aは絶縁層の領域-Aと対応している。更には、「隣接する撮像素子の間の領域」を、便宜上、『領域-a』と呼ぶ。
【0059】
本開示の下部電荷移動制御電極(下方・電荷移動制御電極であり、光電変換層を基準として光入射側とは反対側に位置する電荷移動制御電極)を備えた撮像素子等にあっては、光電変換層の領域-Aに絶縁層を介して対向する領域には下部電荷移動制御電極が形成されている。云い換えれば、隣接する撮像素子のそれぞれを構成する電荷蓄積用電極と電荷蓄積用電極とによって挟まれた領域(領域-a)における絶縁層の部分(絶縁層の領域-A)の下に、下部電荷移動制御電極が形成されている。下部電荷移動制御電極は、電荷蓄積用電極と離間して設けられている。あるいは又、云い換えれば、下部電荷移動制御電極は、電荷蓄積用電極を取り囲んで、電荷蓄積用電極と離間して設けられており、下部電荷移動制御電極は絶縁層を介して、光電変換層の領域-Aと対向して配置されている。
【0060】
そして、本開示の下部電荷移動制御電極を備えた撮像素子等は、半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極、第2電極、電荷蓄積用電極及び下部電荷移動制御電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極に電位V31が印加され、下部電荷移動制御電極に電位V41が印加され、酸化物半導体層等に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極に電位V32が印加され、下部電荷移動制御電極に電位V42が印加され、酸化物半導体層等に蓄積された電荷が第1電極を経由して制御部に読み出される形態とすることができる。但し、
V31≧V11、V31>V41、且つ、V12>V32>V42
である。下部電荷移動制御電極は、第1電極あるいは電荷蓄積用電極と同じレベルに形成されていてもよいし、異なるレベルに形成されていてもよい。
【0061】
本開示の上部電荷移動制御電極(上方・電荷移動制御電極であり、光電変換層を基準として光入射側に位置する電荷移動制御電極)を備えた撮像素子等にあっては、隣接する撮像素子の間に位置する光電変換層の領域の上には、第2電極が形成される代わりに、上部電荷移動制御電極が形成されているが、上部電荷移動制御電極は、第2電極と離間して設けられている。云い換えれば、
[A]第2電極は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極は、第2電極の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極と離間して、光電変換層の領域-Aの上に設けられている形態とすることができるし、あるいは又、
[B]第2電極は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極は、第2電極の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極と離間して設けられており、上部電荷移動制御電極の下方には、電荷蓄積用電極の一部が存在する形態を挙げることもできるし、あるいは又、
[C]第2電極は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極は、第2電極の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極と離間して設けられており、上部電荷移動制御電極の下方には、電荷蓄積用電極の一部が存在し、しかも、上部電荷移動制御電極の下方には、下部電荷移動制御電極が形成されている形態を挙げることもできる。上部電荷移動制御電極と第2電極との間の領域の下に位置する光電変換層の領域には、上部電荷移動制御電極と第2電極とのカップリングによって生成した電位が加わる場合がある。
【0062】
また、本開示の上部電荷移動制御電極を備えた撮像素子等は、半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極、第2電極、電荷蓄積用電極及び上部電荷移動制御電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第2電極に電位V21が印加され、上部電荷移動制御電極に電位V41が印加され、酸化物半導体層等に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第2電極に電位V22が印加され、上部電荷移動制御電極に電位V42が印加され、酸化物半導体層等に蓄積された電荷が第1電極を経由して制御部に読み出される形態とすることができる。但し、
V21≧V41、且つ、V22≧V42
である。上部電荷移動制御電極は、第2電極と同じレベルに形成されている。
【0063】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等にあっては、第1電極と電荷蓄積用電極との間に、第1電極及び電荷蓄積用電極と離間して配置され、且つ、絶縁層を介して酸化物半導体層と対向して配置された転送制御用電極(電荷転送電極)を更に備えている形態とすることができる。このような形態の本開示の撮像素子等を、便宜上、『本開示の転送制御用電極を備えた撮像素子等』と呼ぶ。
【0064】
そして、本開示の転送制御用電極を備えた撮像素子等にあっては、
半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極、電荷蓄積用電極及び転送制御用電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極に電位V31が印加され、転送制御用電極に電位V51が印加され、酸化物半導体層等に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極に電位V32が印加され、転送制御用電極に電位V52が印加され、酸化物半導体層等に蓄積された電荷が第1電極を介して制御部に読み出される構成とすることができる。但し、第1電極の電位は第2電極の電位よりも高く、
V31>V51、且つ、V32≦V52≦V12
である。
【0065】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等にあっては、酸化物半導体層に接続され、第1電極及び電荷蓄積用電極と離間して配置された電荷排出電極を更に備えている形態とすることができる。このような形態の本開示の撮像素子等を、便宜上、『本開示の電荷排出電極を備えた撮像素子等』と呼ぶ。そして、本開示の電荷排出電極を備えた撮像素子等において、電荷排出電極は、第1電極及び電荷蓄積用電極を取り囲むように(即ち、額縁状に)配置されている形態とすることができる。電荷排出電極は、複数の撮像素子において共有化(共通化)することができる。そして、この場合、
酸化物半導体層等は、絶縁層に設けられた第2開口部内を延在し、電荷排出電極と接続されており、
電荷排出電極の頂面の縁部は絶縁層で覆われており、
第2開口部の底面には電荷排出電極が露出しており、
電荷排出電極の頂面と接する絶縁層の面を第3面、電荷蓄積用電極と対向する酸化物半導体層の部分と接する絶縁層の面を第2面としたとき、第2開口部の側面は、第3面から第2面に向かって広がる傾斜を有する形態とすることができる。
【0066】
更には、本開示の電荷排出電極を備えた撮像素子等にあっては、
半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極、電荷蓄積用電極及び電荷排出電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極に電位V31が印加され、電荷排出電極に電位V61が印加され、酸化物半導体層等に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極に電位V32が印加され、電荷排出電極に電位V62が印加され、酸化物半導体層等に蓄積された電荷が第1電極を介して制御部に読み出される構成とすることができる。但し、第1電極の電位は第2電極の電位よりも高く、
V61>V11、且つ、V62<V12
である。
【0067】
更には、本開示の撮像素子等における以上に説明した各種の好ましい形態、構成において、電荷蓄積用電極は、複数の電荷蓄積用電極セグメントから構成されている形態とすることができる。このような形態の本開示の撮像素子等を、便宜上、『本開示の複数の電荷蓄積用電極セグメントを備えた撮像素子等』と呼ぶ。電荷蓄積用電極セグメントの数は、2以上であればよい。そして、本開示の複数の電荷蓄積用電極セグメントを備えた撮像素子等にあっては、N個の電荷蓄積用電極セグメントのそれぞれに、異なる電位を加える場合、
第1電極の電位が第2電極の電位よりも高い場合、電荷転送期間において、第1電極に最も近い所に位置する電荷蓄積用電極セグメント(第1番目の光電変換部セグメント)に印加される電位は、第1電極に最も遠い所に位置する電荷蓄積用電極セグメント(第N番目の光電変換部セグメント)に印加される電位よりも高く、
第1電極の電位が第2電極の電位よりも低い場合、電荷転送期間において、第1電極に最も近い所に位置する電荷蓄積用電極セグメント(第1番目の光電変換部セグメント)に印加される電位は、第1電極に最も遠い所に位置する電荷蓄積用電極セグメント(第N番目の光電変換部セグメント)に印加される電位よりも低い形態とすることができる。
【0068】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、
半導体基板には、制御部を構成する少なくとも浮遊拡散層及び増幅トランジスタが設けられており、
第1電極は、浮遊拡散層及び増幅トランジスタのゲート部に接続されている構成とすることができる。そして、この場合、更には、
半導体基板には、更に、制御部を構成するリセット・トランジスタ及び選択トランジスタが設けられており、
浮遊拡散層は、リセット・トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
増幅トランジスタの一方のソース/ドレイン領域は、選択トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、選択トランジスタの他方のソース/ドレイン領域は信号線に接続されている構成とすることができる。
【0069】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、電荷蓄積用電極の大きさは第1電極よりも大きい形態とすることができる。電荷蓄積用電極の面積をs1’、第1電極の面積をs1としたとき、限定するものではないが、
4≦s1’/s1
を満足することが好ましい。
【0070】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等の変形例として、以下に説明する第1構成~第6構成の撮像素子を挙げることができる。即ち、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等における第1構成~第6構成の撮像素子において、
光電変換部は、N個(但し、N≧2)の光電変換部セグメントから構成されており、
酸化物半導体層等は、N個の光電変換層セグメントから構成されており、
絶縁層は、N個の絶縁層セグメントから構成されており、
第1構成~第3構成の撮像素子にあっては、電荷蓄積用電極は、N個の電荷蓄積用電極セグメントから構成されており、
第4構成~第5構成の撮像素子にあっては、電荷蓄積用電極は、相互に離間されて配置された、N個の電荷蓄積用電極セグメントから構成されており、
第n番目(但し、n=1,2,3・・・N)の光電変換部セグメントは、第n番目の電荷蓄積用電極セグメント、第n番目の絶縁層セグメント及び第n番目の光電変換層セグメントから構成されており、
nの値が大きい光電変換部セグメントほど、第1電極から離れて位置する。ここで、『光電変換層セグメント』とは、光電変換層と酸化膜と酸化物半導体層とが積層されて成るセグメントを指す。
【0071】
そして、第1構成の撮像素子にあっては、第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、絶縁層セグメントの厚さが、漸次、変化している。また、第2構成の撮像素子にあっては、第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、光電変換層セグメントの厚さが、漸次、変化している。尚、光電変換層セグメントにおいて、光電変換層の部分の厚さを変化させ、酸化物半導体層の部分の厚さを一定として、光電変換層セグメントの厚さを変化させてもよいし、光電変換層の部分の厚さを一定とし、酸化物半導体層の部分の厚さを変化させて、光電変換層セグメントの厚さを変化させてもよいし、光電変換層の部分の厚さを変化させ、酸化物半導体層の部分の厚さを変化させて、光電変換層セグメントの厚さを変化させてもよい。更には、第3構成の撮像素子にあっては、隣接する光電変換部セグメントにおいて、絶縁層セグメントを構成する材料が異なる。また、第4構成の撮像素子にあっては、隣接する光電変換部セグメントにおいて、電荷蓄積用電極セグメントを構成する材料が異なる。更には、第5構成の撮像素子にあっては、第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、電荷蓄積用電極セグメントの面積が、漸次、小さくなっている。面積は、連続的に小さくなっていてもよいし、階段状に小さくなっていてもよい。
【0072】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等における第6構成の撮像素子において、電荷蓄積用電極と絶縁層と酸化物半導体層と光電変換層の積層方向をZ方向、第1電極から離れる方向をX方向としたとき、YZ仮想平面で電荷蓄積用電極と絶縁層と酸化物半導体層と酸化膜と光電変換層が積層された積層部分を切断したときの積層部分の断面積は、第1電極からの距離に依存して変化する。断面積の変化は、連続的な変化であってもよいし、階段状の変化であってもよい。
【0073】
第1構成~第2構成の撮像素子において、N個の光電変換層セグメントは連続して設けられており、N個の絶縁層セグメントも連続して設けられており、N個の電荷蓄積用電極セグメントも連続して設けられている。第3構成~第5構成の撮像素子において、N個の光電変換層セグメントは連続して設けられている。また、第4構成、第5構成の撮像素子において、N個の絶縁層セグメントは連続して設けられている一方、第3構成の撮像素子において、N個の絶縁層セグメントは、光電変換部セグメントのそれぞれに対応して設けられている。更には、第4構成~第5構成の撮像素子において、場合によっては、第3構成の撮像素子において、N個の電荷蓄積用電極セグメントは、光電変換部セグメントのそれぞれに対応して設けられている。そして第1構成~第6構成の撮像素子にあっては、電荷蓄積用電極セグメントの全てに同じ電位が加えられる。あるいは又、第4構成~第5構成の撮像素子において、場合によっては、第3構成の撮像素子において、N個の電荷蓄積用電極セグメントのそれぞれに、異なる電位を加えてもよい。
【0074】
第1構成~第6構成の撮像素子から成る本開示の撮像素子等にあっては、絶縁層セグメントの厚さが規定され、あるいは又、光電変換層セグメントの厚さが規定され、あるいは又、絶縁層セグメントを構成する材料が異なり、あるいは又、電荷蓄積用電極セグメントを構成する材料が異なり、あるいは又、電荷蓄積用電極セグメントの面積が規定され、あるいは又、積層部分の断面積が規定されているので、一種の電荷転送勾配が形成され、光電変換によって生成した電荷を、一層容易に、且つ、確実に、第1電極へ転送することが可能となる。そして、その結果、残像の発生や電荷転送残しの発生を防止することができる。
【0075】
第1構成~第5構成の撮像素子にあっては、nの値が大きい光電変換部セグメントほど第1電極から離れて位置するが、第1電極から離れて位置するか否かは、X方向を基準として判断する。また、第6構成の撮像素子にあっては、第1電極から離れる方向をX方向としているが、『X方向』を以下のとおり、定義する。即ち、撮像素子あるいは積層型撮像素子が複数配列された画素領域は、2次元アレイ状に、即ち、X方向及びY方向に規則的に複数配列された画素から構成される。画素の平面形状を矩形とした場合、第1電極に最も近い辺が延びる方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とする。あるいは又、画素の平面形状を任意の形状とした場合、第1電極に最も近い線分や曲線が含まれる全体的な方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とする。
【0076】
以下、第1構成~第6構成の撮像素子に関して、第1電極の電位が第2電極の電位よりも高い場合についての説明を行うが、第1電極の電位が第2電極の電位よりも低い場合は、電位の高低を逆にすればよい。
【0077】
第1構成の撮像素子にあっては、第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、絶縁層セグメントの厚さが、漸次、変化しているが、絶縁層セグメントの厚さは、漸次、厚くなっていることが好ましく、これによって、一種の電荷転送勾配が形成される。そして、電荷蓄積期間において、V31≧V11といった状態になると、第n番目の光電変換部セグメントの方が、第(n+1)番目の光電変換部セグメントよりも、多くの電荷を蓄積することができるし、強い電界が加わり、第1番目の光電変換部セグメントから第1電極への電荷の流れを確実に防止することができる。また、電荷転送期間において、V32<V12といった状態になると、第1番目の光電変換部セグメントから第1電極への電荷の流れ、第(n+1)番目の光電変換部セグメントから第n番目の光電変換部セグメントへの電荷の流れを、確実に確保することができる。
【0078】
第2構成の撮像素子にあっては、第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、光電変換層セグメントの厚さが、漸次、変化しているが、光電変換層セグメントの厚さは、漸次、厚くなっていることが好ましく、これによって、一種の電荷転送勾配が形成される。そして、電荷蓄積期間においてV31≧V11といった状態になると、第n番目の光電変換部セグメントの方が、第(n+1)番目の光電変換部セグメントよりも強い電界が加わり、第1番目の光電変換部セグメントから第1電極への電荷の流れを確実に防止することができる。また、電荷転送期間において、V32<V12といった状態になると、第1番目の光電変換部セグメントから第1電極への電荷の流れ、第(n+1)番目の光電変換部セグメントから第n番目の光電変換部セグメントへの電荷の流れを、確実に確保することができる。
【0079】
第3構成の撮像素子にあっては、隣接する光電変換部セグメントにおいて、絶縁層セグメントを構成する材料が異なり、これによって、一種の電荷転送勾配が形成されるが、第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、絶縁層セグメントを構成する材料の比誘電率の値が、漸次、小さくなることが好ましい。そして、このような構成を採用することで、電荷蓄積期間において、V31≧V11といった状態になると、第n番目の光電変換部セグメントの方が、第(n+1)番目の光電変換部セグメントよりも多くの電荷を蓄積することができる。また、電荷転送期間において、V32<V12といった状態になると、第1番目の光電変換部セグメントから第1電極への電荷の流れ、第(n+1)番目の光電変換部セグメントから第n番目の光電変換部セグメントへの電荷の流れを、確実に確保することができる。
【0080】
第4構成の撮像素子にあっては、隣接する光電変換部セグメントにおいて、電荷蓄積用電極セグメントを構成する材料が異なり、これによって、一種の電荷転送勾配が形成されるが、第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、絶縁層セグメントを構成する材料の仕事関数の値が、漸次、大きくなることが好ましい。そして、このような構成を採用することで、電圧(電位)の正負に依存すること無く、信号電荷転送に有利な電位勾配を形成することができる。
【0081】
第5構成の撮像素子にあっては、第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、電荷蓄積用電極セグメントの面積が、漸次、小さくなっており、これによって、一種の電荷転送勾配が形成されるので、電荷蓄積期間において、V31≧V11といった状態になると、第n番目の光電変換部セグメントの方が、第(n+1)番目の光電変換部セグメントよりも多くの電荷を蓄積することができる。また、電荷転送期間において、V32<V12といった状態になると、第1番目の光電変換部セグメントから第1電極への電荷の流れ、第(n+1)番目の光電変換部セグメントから第n番目の光電変換部セグメントへの電荷の流れを、確実に確保することができる。
【0082】
第6構成の撮像素子において、積層部分の断面積は第1電極からの距離に依存して変化し、これによって、一種の電荷転送勾配が形成される。具体的には、積層部分の断面の厚さを一定とし、積層部分の断面の幅を第1電極から離れるほど狭くする構成を採用すれば、第5構成の撮像素子において説明したと同様に、電荷蓄積期間において、V31≧V11といった状態になると、第1電極に近い領域の方が、遠い領域よりも多くの電荷を蓄積することができる。従って、電荷転送期間において、V32<V12といった状態になると、第1電極に近い領域から第1電極への電荷の流れ、遠い領域から近い領域への電荷の流れを、確実に確保することができる。一方、積層部分の断面の幅を一定とし、積層部分の断面の厚さ、具体的には、絶縁層セグメントの厚さを、漸次、厚くする構成を採用すれば、第1構成の撮像素子において説明したと同様に、電荷蓄積期間において、V31≧V11といった状態になると、第1電極に近い領域の方が、遠い領域よりも、多くの電荷を蓄積することができるし、強い電界が加わり、第1電極に近い領域から第1電極への電荷の流れを確実に防止することができる。そして、電荷転送期間において、V32<V12といった状態になると、第1電極に近い領域から第1電極への電荷の流れ、遠い領域から近い領域への電荷の流れを、確実に確保することができる。また、光電変換層セグメントの厚さを、漸次、厚くする構成を採用すれば、第2構成の撮像素子において説明したと同様に、電荷蓄積期間において、V31≧V11といった状態になると、第1電極に近い領域の方が、遠い領域よりも強い電界が加わり、第1電極に近い領域から第1電極への電荷の流れを確実に防止することができる。そして、電荷転送期間において、V32<V12といった状態になると、第1電極に近い領域から第1電極への電荷の流れ、遠い領域から近い領域への電荷の流れを、確実に確保することができる。
【0083】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む第1構成~第6構成の撮像素子の2種類あるいはそれ以上を、所望に応じて、適宜、組み合わせることができる。
【0084】
本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置の変形例として、
第1構成~第6構成の撮像素子を、複数、有しており、
複数の撮像素子から撮像素子ブロックが構成されており、
撮像素子ブロックを構成する複数の撮像素子において第1電極が共有されている固体撮像装置とすることができる。このような構成の固体撮像装置を、便宜上、『第1構成の固体撮像装置』と呼ぶ。あるいは又、本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置の変形例として、
第1構成~第6構成の撮像素子、あるいは又、第1構成~第6構成の撮像素子を少なくとも1つ有する積層型撮像素子を、複数、有しており、
複数の撮像素子あるいは積層型撮像素子から撮像素子ブロックが構成されており、
撮像素子ブロックを構成する複数の撮像素子あるいは積層型撮像素子において第1電極が共有されている固体撮像装置とすることができる。このような構成の固体撮像装置を、便宜上、『第2構成の固体撮像装置』と呼ぶ。そして、このように撮像素子ブロックを構成する複数の撮像素子において第1電極を共有化すれば、撮像素子が複数配列された画素領域における構成、構造を簡素化、微細化することができる。
【0085】
第1構成~第2構成の固体撮像装置にあっては、複数の撮像素子(1つの撮像素子ブロック)に対して1つの浮遊拡散層が設けられる。ここで、1つの浮遊拡散層に対して設けられる複数の撮像素子は、後述する第1タイプの撮像素子の複数から構成されていてもよいし、少なくとも1つの第1タイプの撮像素子と、1又は2以上の後述する第2タイプの撮像素子とから構成されていてもよい。そして、電荷転送期間のタイミングを適切に制御することで、複数の撮像素子が1つの浮遊拡散層を共有することが可能となる。複数の撮像素子は連係して動作させられ、後述する駆動回路には撮像素子ブロックとして接続されている。即ち、撮像素子ブロックを構成する複数の撮像素子が1つの駆動回路に接続されている。但し、電荷蓄積用電極の制御は、撮像素子毎に行われる。また、複数の撮像素子が1つのコンタクトホール部を共有することが可能である。複数の撮像素子で共有された第1電極と、各撮像素子の電荷蓄積用電極の配置関係は、第1電極が、各撮像素子の電荷蓄積用電極に隣接して配置されている場合もある。あるいは又、第1電極が、複数の撮像素子の一部の電荷蓄積用電極に隣接して配置されており、複数の撮像素子の残りの電荷蓄積用電極とは隣接して配置されてはいない場合もあり、この場合には、複数の撮像素子の残りから第1電極への電荷の移動は、複数の撮像素子の一部を経由した移動となる。撮像素子を構成する電荷蓄積用電極と撮像素子を構成する電荷蓄積用電極との間の距離(便宜上、『距離A』と呼ぶ)は、第1電極に隣接した撮像素子における第1電極と電荷蓄積用電極との間の距離(便宜上、『距離B』と呼ぶ)よりも長いことが、各撮像素子から第1電極への電荷の移動を確実なものとするために好ましい。また、第1電極から離れて位置する撮像素子ほど、距離Aの値を大きくすることが好ましい。尚、以上の説明は、第1構成~第2構成の固体撮像装置だけでなく、本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置に対して適用することもできる。
【0086】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、第2電極側から光が入射し、第2電極よりの光入射側には遮光層が形成されている形態とすることができる。あるいは又、第2電極側から光が入射し、第1電極(場合によっては、第1電極及び転送制御用電極)には光が入射しない形態とすることができる。そして、この場合、第2電極よりの光入射側であって、第1電極(場合によっては、第1電極及び転送制御用電極)の上方には遮光層が形成されている構成とすることができるし、あるいは又、電荷蓄積用電極及び第2電極の上方にはオンチップ・マイクロ・レンズが設けられており、オンチップ・マイクロ・レンズに入射する光は、電荷蓄積用電極に集光される構成とすることができる。ここで、遮光層は、第2電極の光入射側の面よりも上方に配設されてもよいし、第2電極の光入射側の面の上に配設されてもよい。場合によっては、第2電極に遮光層が形成されていてもよい。遮光層を構成する材料として、クロム(Cr)や銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、光を通さない樹脂(例えば、ポリイミド樹脂)を例示することができる。
【0087】
本開示の撮像素子等として、具体的には、青色光(425nm乃至495nmの光)を吸収する光電変換層あるいは光電変換部(便宜上、『第1タイプの青色光用光電変換層』あるいは『第1タイプの青色光用光電変換部』と呼ぶ)を備えた青色光に感度を有する撮像素子(便宜上、『第1タイプの青色光用撮像素子』と呼ぶ)、緑色光(495nm乃至570nmの光)を吸収する光電変換層あるいは光電変換部(便宜上、『第1タイプの緑色光用光電変換層』あるいは『第1タイプの緑色光用光電変換部』と呼ぶ)を備えた緑色光に感度を有する撮像素子(便宜上、『第1タイプの緑色光用撮像素子』と呼ぶ)、赤色光(620nm乃至750nmの光)を吸収する光電変換層あるいは光電変換部(便宜上、『第1タイプの赤色光用光電変換層』あるいは『第1タイプの赤色光用光電変換部』と呼ぶ)を備えた赤色光に感度を有する撮像素子(便宜上、『第1タイプの赤色光用撮像素子』と呼ぶ)を挙げることができる。また、電荷蓄積用電極を備えていない従来の撮像素子であって、青色光に感度を有する撮像素子を、便宜上、『第2タイプの青色光用撮像素子』と呼び、緑色光に感度を有する撮像素子を、便宜上、『第2タイプの緑色光用撮像素子』と呼び、赤色光に感度を有する撮像素子を、便宜上、『第2タイプの赤色光用撮像素子』と呼び、第2タイプの青色光用撮像素子を構成する光電変換層あるいは光電変換部を、便宜上、『第2タイプの青色光用光電変換層』あるいは『第2タイプの青色光用光電変換部』と呼び、第2タイプの緑色光用撮像素子を構成する光電変換層あるいは光電変換部を、便宜上、『第2タイプの緑色光用光電変換層』あるいは『第2タイプの緑色光用光電変換部』と呼び、第2タイプの赤色光用撮像素子を構成する光電変換層あるいは光電変換部を、便宜上、『第2タイプの赤色光用光電変換層』あるいは『第2タイプの赤色光用光電変換部』と呼ぶ。
【0088】
本開示の積層型撮像素子は、少なくとも本開示の撮像素子等(光電変換素子)を1つ有するが、具体的には、例えば、
[A]第1タイプの青色光用光電変換部、第1タイプの緑色光用光電変換部及び第1タイプの赤色光用光電変換部が、垂直方向に積層され、
第1タイプの青色光用撮像素子、第1タイプの緑色光用撮像素子及び第1タイプの赤色光用撮像素子の制御部のそれぞれが、半導体基板に設けられた構成、構造
[B]第1タイプの青色光用光電変換部及び第1タイプの緑色光用光電変換部が、垂直方向に積層され、
これらの2層の第1タイプの光電変換部の下方に、第2タイプの赤色光用光電変換部が配置され、
第1タイプの青色光用撮像素子、第1タイプの緑色光用撮像素子及び第2タイプの赤色光用撮像素子の制御部のそれぞれが、半導体基板に設けられた構成、構造
[C]第1タイプの緑色光用光電変換部の下方に、第2タイプの青色光用光電変換部及び第2タイプの赤色光用光電変換部が配置され、
第1タイプの緑色光用撮像素子、第2タイプの青色光用撮像素子及び第2タイプの赤色光用撮像素子の制御部のそれぞれが、半導体基板に設けられた構成、構造
[D]第1タイプの青色光用光電変換部の下方に、第2タイプの緑色光用光電変換部及び第2タイプの赤色光用光電変換部が配置され、
第1タイプの青色光用撮像素子、第2タイプの緑色光用撮像素子及び第2タイプの赤色光用撮像素子の制御部のそれぞれが、半導体基板に設けられた構成、構造
を挙げることができる。これらの撮像素子の光電変換部の垂直方向における配置順は、光入射方向から青色光用光電変換部、緑色光用光電変換部、赤色光用光電変換部の順、あるいは、光入射方向から緑色光用光電変換部、青色光用光電変換部、赤色光用光電変換部の順であることが好ましい。これは、より短い波長の光がより入射表面側において効率良く吸収されるからである。赤色は3色の中では最も長い波長であるので、光入射面から見て赤色光用光電変換部を最下層に位置させることが好ましい。これらの撮像素子の積層構造によって、1つの画素が構成される。また、第1タイプの近赤外光用光電変換部(あるいは、赤外光用光電変換部)を備えていてもよい。ここで、第1タイプの赤外光用光電変換部の光電変換層は、例えば、有機系材料から構成され、第1タイプの撮像素子の積層構造の最下層であって、第2タイプの撮像素子よりも上に配置することが好ましい。あるいは又、第1タイプの光電変換部の下方に、第2タイプの近赤外光用光電変換部(あるいは、赤外光用光電変換部)を備えていてもよい。
【0089】
第1タイプの撮像素子にあっては、例えば、第1電極が、半導体基板の上に設けられた層間絶縁層上に形成されている。半導体基板に形成された撮像素子は、裏面照射型とすることもできるし、表面照射型とすることもできる。
【0090】
光電変換層を有機系材料から構成する場合、光電変換層を、
(1)p型有機半導体から構成する。
(2)n型有機半導体から構成する。
(3)p型有機半導体層/n型有機半導体層の積層構造から構成する。p型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)/n型有機半導体層の積層構造から構成する。p型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)の積層構造から構成する。n型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)の積層構造から構成する。
(4)p型有機半導体とn型有機半導体の混合(バルクヘテロ構造)から構成する。
の4態様のいずれかとすることができる。但し、積層順は任意に入れ替えた構成とすることができる。
【0091】
p型有機半導体として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、キナクリドン誘導体、チオフェン誘導体、チエノチオフェン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体、ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、トリアリルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピセン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、サブポルフィラジン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリベンゾチアジアゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等を挙げることができる。n型有機半導体として、フラーレン及びフラーレン誘導体〈例えば、C60や、C70,C74等のフラーレン(高次フラーレン)、内包フラーレン等)又はフラーレン誘導体(例えば、フラーレンフッ化物やPCBMフラーレン化合物、フラーレン多量体等)〉、p型有機半導体よりもHOMO及びLUMOが大きい(深い)有機半導体、透明な無機金属酸化物を挙げることができる。n型有機半導体として、具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する複素環化合物、例えば、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、イソキノリン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、フェナントロリン誘導体、テトラゾール誘導体、ピラゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、サブポルフィラジン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリベンゾチアジアゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等を分子骨格の一部に有する有機分子、有機金属錯体やサブフタロシアニン誘導体を挙げることができる。フラーレン誘導体に含まれる基等として、ハロゲン原子;直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはフェニル基;直鎖若しくは縮環した芳香族化合物を有する基;ハロゲン化物を有する基;パーシャルフルオロアルキル基;パーフルオロアルキル基;シリルアルキル基;シリルアルコキシ基;アリールシリル基;アリールスルファニル基;アルキルスルファニル基;アリールスルホニル基;アルキルスルホニル基;アリールスルフィド基;アルキルスルフィド基;アミノ基;アルキルアミノ基;アリールアミノ基;ヒドロキシ基;アルコキシ基;アシルアミノ基;アシルオキシ基;カルボニル基;カルボキシ基;カルボキソアミド基;カルボアルコキシ基;アシル基;スルホニル基;シアノ基;ニトロ基;カルコゲン化物を有する基;ホスフィン基;ホスホン基;これらの誘導体を挙げることができる。有機系材料から構成された光電変換層(『有機光電変換層』と呼ぶ場合がある)の厚さは、限定するものではないが、例えば、1×10-8m乃至5×10-7m、好ましくは2.5×10-8m乃至3×10-7m、より好ましくは2.5×10-8m乃至2×10-7m、一層好ましくは1×10-7m乃至1.8×10-7mを例示することができる。尚、有機半導体は、p型、n型と分類されることが多いが、p型とは正孔を輸送し易いという意味であり、n型とは電子を輸送し易いという意味であり、無機半導体のように熱励起の多数キャリアとして正孔又は電子を有しているという解釈に限定されない。
【0092】
あるいは又、緑色光を光電変換する有機光電変換層を構成する材料として、例えば、ローダミン系色素、メラシアニン系色素、キナクリドン誘導体、サブフタロシアニン系色素(サブフタロシアニン誘導体)等を挙げることができるし、青色光を光電変換する有機光電変換層を構成する材料として、例えば、クマリン酸色素、トリス-8-ヒドリキシキノリアルミニウム(Alq3)、メラシアニン系色素等を挙げることができるし、赤色光を光電変換する有機光電変換層を構成する材料として、例えば、フタロシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素(サブフタロシアニン誘導体)を挙げることができる。
【0093】
あるいは又、光電変換層を構成する無機系材料として、結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、結晶セレン、アモルファスセレン、及び、カルコパライト系化合物であるCIGS(CuInGaSe)、CIS(CuInSe2)、CuInS2、CuAlS2、CuAlSe2、CuGaS2、CuGaSe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgInS2、AgInSe2、あるいは又、III-V族化合物であるGaAs、InP、AlGaAs、InGaP、AlGaInP、InGaAsP、更には、CdSe、CdS、In2Se3、In2S3、Bi2Se3、Bi2S3、ZnSe、ZnS、PbSe、PbS等の化合物半導体を挙げることができる。加えて、これらの材料から成る量子ドットを光電変換層に使用することも可能である。
【0094】
本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置、第1構成~第2構成の固体撮像装置によって、単板式カラー固体撮像装置を構成することができる。
【0095】
積層型撮像素子を備えた本開示の第2の態様に係る固体撮像装置にあっては、ベイヤ配列の撮像素子を備えた固体撮像装置と異なり(即ち、カラーフィルタ層を用いて青色、緑色、赤色の分光を行うのではなく)、同一画素内で光の入射方向において、複数種の波長の光に対して感度を有する撮像素子を積層して1つの画素を構成するので、感度の向上及び単位体積当たりの画素密度の向上を図ることができる。また、有機系材料は吸収係数が高いため、有機光電変換層の膜厚を従来のSi系光電変換層と比較して薄くすることができ、隣接画素からの光漏れや、光の入射角の制限が緩和される。更には、従来のSi系撮像素子では3色の画素間で補間処理を行って色信号を作成するために偽色が生じるが、積層型撮像素子を備えた本開示の第2の態様に係る固体撮像装置にあっては、偽色の発生が抑えられる。有機光電変換層それ自体がカラーフィルタ層としても機能するので、カラーフィルタ層を配設しなくとも色分離が可能である。
【0096】
一方、本開示の第1の態様に係る固体撮像装置にあっては、カラーフィルタ層を用いることで、青色、緑色、赤色の分光特性への要求を緩和することができるし、また、高い量産性を有する。本開示の第1の態様に係る固体撮像装置における撮像素子の配列として、ベイヤ配列の他、インターライン配列、GストライプRB市松配列、GストライプRB完全市松配列、市松補色配列、ストライプ配列、斜めストライプ配列、原色色差配列、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、MOS型配列、改良MOS型配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列を挙げることができる。ここで、1つの撮像素子によって1つの画素(あるいは副画素)が構成される。
【0097】
カラーフィルタ層(波長選択手段)として、赤色、緑色、青色だけでなく、場合によっては、シアン色、マゼンダ色、黄色等の特定波長を透過させるフィルタ層を挙げることができる。カラーフィルタ層を、顔料や染料等の有機化合物を用いた有機材料系のカラーフィルタ層から構成するだけでなく、フォトニック結晶や、プラズモンを応用した波長選択素子(導体薄膜に格子状の穴構造を設けた導体格子構造を有するカラーフィルタ層。例えば、特開2008-177191号公報参照)、アモルファスシリコン等の無機材料から成る薄膜から構成することもできる。
【0098】
本開示の撮像素子等あるいは本開示における積層型撮像素子が複数配列された画素領域は、2次元アレイ状に規則的に複数配列された画素から構成される。画素領域は、通常、実際に光を受光し光電変換によって生成された信号電荷を増幅して駆動回路に読み出す有効画素領域と、黒レベルの基準になる光学的黒を出力するための黒基準画素領域(光学的黒画素領域(OPB)とも呼ばれる)とから構成されている。黒基準画素領域は、通常は、有効画素領域の外周部に配置されている。
【0099】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子等において、光が照射され、光電変換層で光電変換が生じ、正孔(ホール)と電子がキャリア分離される。そして、正孔が取り出される電極を陽極、電子が取り出される電極を陰極とする。第1電極が陽極を構成し、第2電極が陰極を構成する形態もあるし、逆に、第1電極が陰極を構成し、第2電極が陽極を構成する形態もある。
【0100】
第1電極、電荷蓄積用電極、転送制御用電極、電荷移動制御電極、電荷排出電極及び第2電極は透明導電材料から成る構成とすることができる。第1電極、電荷蓄積用電極、転送制御用電極、電荷移動制御電極及び電荷排出電極を総称して、『第1電極等』と呼ぶ場合がある。あるいは又、本開示の撮像素子等が、例えばベイヤ配列のように平面に配される場合には、第2電極は透明導電材料から成り、第1電極等は金属材料から成る構成とすることができ、この場合、具体的には、光入射側に位置する第2電極は透明導電材料から成り、第1電極等は、例えば、Al-Nd(アルミニウム及びネオジウムの合金)又はASC(アルミニウム、サマリウム及び銅の合金)から成る構成とすることができる。透明導電材料から成る電極を『透明電極』と呼ぶ場合がある。ここで、透明導電材料のバンドギャップエネルギーは、2.5eV以上、好ましくは3.1eV以上であることが望ましい。透明電極を構成する透明導電材料として、導電性のある金属酸化物を挙げることができ、具体的には、酸化インジウム、インジウム-錫酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn2O3、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-亜鉛酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、酸化ガリウムにドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-ガリウム酸化物(IGO)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムとガリウムを添加したインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO,In-GaZnO4)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムと錫を添加したインジウム-錫-亜鉛酸化物(ITZO)、IFO(FドープのIn2O3)、酸化錫(SnO2)、ATO(SbドープのSnO2)、FTO(FドープのSnO2)、酸化亜鉛(他元素をドープしたZnOを含む)、酸化亜鉛にドーパントとしてアルミニウムを添加したアルミニウム-亜鉛酸化物(AZO)、酸化亜鉛にドーパントとしてガリウムを添加したガリウム-亜鉛酸化物(GZO)、酸化チタン(TiO2)、酸化チタンにドーパントとしてニオブを添加したニオブ-チタン酸化物(TNO)、酸化アンチモン、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIn2O4、CdO、ZnSnO3、スピネル型酸化物、YbFe2O4構造を有する酸化物を例示することができる。あるいは又、ガリウム酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物、ニッケル酸化物等を母層とする透明電極を挙げることができる。透明電極の厚さとして、2×10-8m乃至2×10-7m、好ましくは3×10-8m乃至1×10-7mを挙げることができる。第1電極が透明性を要求される場合、製造プロセスの簡素化といった観点から、電荷排出電極も透明導電材料から構成することが好ましい。
【0101】
あるいは又、透明性が不要である場合、電子を取り出す電極としての機能を有する陰極を構成する導電材料として、低仕事関数(例えば、φ=3.5eV~4.5eV)を有する導電材料から構成することが好ましく、具体的には、アルカリ金属(例えばLi、Na、K等)及びそのフッ化物又は酸化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)及びそのフッ化物又は酸化物、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、タリウム(Tl)、ナトリウム-カリウム合金、アルミニウム-リチウム合金、マグネシウム-銀合金、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属、あるいは、これらの合金を挙げることができる。また、正孔を取り出す電極としての機能を有する陽極を構成する導電材料として、高仕事関数(例えば、φ=4.5eV~5.5eV)を有する導電材料から構成することが好ましく、具体的には、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、イリジウム(Ir)、ゲルマニウム(Ge)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、テルル(Te)を例示することができる。あるいは又、陰極や陽極を構成する材料として、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等の金属、あるいは、これらの金属元素を含む合金、これらの金属から成る導電性粒子、これらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン、炭素系材料、酸化物半導体材料、カーボン・ナノ・チューブ、グラフェン等の導電性材料を挙げることができるし、これらの元素を含む層の積層構造とすることもできる。更には、陰極や陽極を構成する材料として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]といった有機材料(導電性高分子)を挙げることもできる。また、これらの導電性材料をバインダー(高分子)に混合してペースト又はインクとしたものを硬化させ、電極として用いてもよい。
【0102】
第1電極等や第2電極(陰極や陽極)の成膜方法として、乾式法あるいは湿式法を用いることが可能である。乾式法として、物理的気相成長法(PVD法)及び化学的気相成長法(CVD法)を挙げることができる。PVD法の原理を用いた成膜方法として、抵抗加熱あるいは高周波加熱を用いた真空蒸着法、EB(電子ビーム)蒸着法、各種スパッタリング法(マグネトロンスパッタリング法、RF-DC結合形バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、高周波スパッタリング法)、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、分子線エピタキシー法、レーザ転写法を挙げることができる。また、CVD法として、プラズマCVD法、熱CVD法、有機金属(MO)CVD法、光CVD法を挙げることができる。一方、湿式法として、電解メッキ法や無電解メッキ法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法、スタンプ法、マイクロコンタクトプリント法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、ディップ法等の方法を挙げることができる。パターニング法として、シャドーマスク、レーザ転写、フォトリソグラフィー等の化学的エッチング、紫外線やレーザ等による物理的エッチング等を挙げることができる。第1電極等や第2電極の平坦化技術として、レーザ平坦化法、リフロー法、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用いることができる。
【0103】
絶縁層を構成する材料として、酸化ケイ素系材料;窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al2O3)等の金属酸化物高誘電絶縁材料に例示される無機系絶縁材料だけでなく、ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリビニルフェノール(PVP);ポリビニルアルコール(PVA);ポリイミド;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリスチレン;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤);ノボラック型フェノール樹脂;フッ素系樹脂;オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に制御電極と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができるし、これらの組み合わせを用いることもできる。酸化ケイ素系材料として、酸化シリコン(SiOX)、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率絶縁材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマー及びベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG)を例示することができる。絶縁層は、単層構成とすることもできるし、複数層(例えば、2層)が積層された構成とすることもできる。後者の場合、少なくとも電荷蓄積用電極の上、及び、電荷蓄積用電極と第1電極との間の領域に、絶縁層・下層を形成し、絶縁層・下層に平坦化処理を施すことで少なくとも電荷蓄積用電極と第1電極との間の領域に絶縁層・下層を残し、残された絶縁層・下層及び電荷蓄積用電極の上に絶縁層・上層を形成すればよく、これによって、絶縁層の平坦化を確実に達成することができる。各種層間絶縁層や保護材料層、絶縁材料層を構成する材料も、これらの材料から適宜選択すればよい。
【0104】
制御部を構成する浮遊拡散層、増幅トランジスタ、リセット・トランジスタ及び選択トランジスタの構成、構造は、従来の浮遊拡散層、増幅トランジスタ、リセット・トランジスタ及び選択トランジスタの構成、構造と同様とすることができる。駆動回路も周知の構成、構造とすることができる。
【0105】
第1電極は、浮遊拡散層及び増幅トランジスタのゲート部に接続されているが、第1電極と浮遊拡散層及び増幅トランジスタのゲート部との接続のためにコンタクトホール部を形成すればよい。コンタクトホール部を構成する材料として、不純物がドーピングされたポリシリコンや、タングステン、Ti、Pt、Pd、Cu、TiW、TiN、TiNW、WSi2、MoSi2等の高融点金属や金属シリサイド、これらの材料から成る層の積層構造(例えば、Ti/TiN/W)を例示することができる。
【0106】
酸化物半導体層と第1電極との間に、第1キャリアブロッキング層を設けてもよいし、有機光電変換層と第2電極との間に、第2キャリアブロッキング層を設けてもよい。また、第1キャリアブロッキング層と第1電極との間に第1電荷注入層を設けてもよいし、第2キャリアブロッキング層と第2電極との間に第2電荷注入層を設けてもよい。例えば、電子注入層を構成する材料として、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)といったアルカリ金属及びそのフッ化物や酸化物、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)といったアルカリ土類金属及びそのフッ化物や酸化物を挙げることができる。
【0107】
各種有機層の成膜方法として、乾式成膜法及び湿式成膜法を挙げることができる。乾式成膜法として、抵抗加熱あるいは高周波加熱、電子ビーム加熱を用いた真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、プラズマ蒸着法、EB蒸着法、各種スパッタリング法(2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、RF-DC結合形バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、高周波スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法)、DC(Direct Current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法や反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、分子線エピタキシー法、レーザ転写法、分子線エピタキシー法(MBE法)を挙げることができる。また、CVD法として、プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD法、光CVD法を挙げることができる。一方、湿式法として、具体的には、スピンコート法;浸漬法;キャスト法;マイクロコンタクトプリント法;ドロップキャスト法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法といった各種印刷法;スタンプ法;スプレー法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法といった各種コーティング法を例示することができる。塗布法においては、溶媒として、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、エタノールといった無極性又は極性の低い有機溶媒を例示することができる。パターニング法として、シャドーマスク、レーザ転写、フォトリソグラフィー等の化学的エッチング、紫外線やレーザ等による物理的エッチング等を挙げることができる。各種有機層の平坦化技術として、レーザ平坦化法、リフロー法等を用いることができる。
【0108】
撮像素子あるいは固体撮像装置には、前述したとおり、必要に応じて、オンチップ・マイクロ・レンズや遮光層を設けてもよいし、撮像素子を駆動するための駆動回路や配線が設けられている。必要に応じて、撮像素子への光の入射を制御するためのシャッターを配設してもよいし、固体撮像装置の目的に応じて光学カットフィルタを具備してもよい。
【0109】
また、第1構成~第2構成の固体撮像装置にあっては、1つの本開示の撮像素子等の上方に1つのオンチップ・マイクロ・レンズが配設されている形態とすることができるし、あるいは又、2つの本開示の撮像素子等から撮像素子ブロックが構成されており、撮像素子ブロックの上方に1つのオンチップ・マイクロ・レンズが配設されている形態とすることができる。
【0110】
例えば、固体撮像装置を読出し用集積回路(ROIC)と積層する場合、読出し用集積回路及び銅(Cu)から成る接続部が形成された駆動用基板と、接続部が形成された撮像素子とを、接続部同士が接するように重ね合わせ、接続部同士を接合することで、積層することができるし、接続部同士をハンダバンプ等を用いて接合することもできる。
【0111】
また、本開示の第1の態様~第2の態様に係る固体撮像装置を駆動するための駆動方法にあっては、
全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層及び光電変換層)に電荷を蓄積しながら、第1電極における電荷を系外に排出し、その後、
全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層及び光電変換層)に蓄積された電荷を第1電極に転送し、転送完了後、順次、各撮像素子において第1電極に転送された電荷を読み出す、
各工程を繰り返す固体撮像装置の駆動方法とすることができる。
【0112】
このような固体撮像装置の駆動方法にあっては、各撮像素子は、第2電極側から入射した光が第1電極には入射しない構造を有し、全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層等に電荷を蓄積しながら、第1電極における電荷を系外に排出するので、全撮像素子において同時に第1電極のリセットを確実に行うことができる。そして、その後、全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層等に蓄積された電荷を第1電極に転送し、転送完了後、順次、各撮像素子において第1電極に転送された電荷を読み出す。それ故、所謂グローバルシャッター機能を容易に実現することができる。
【0113】
以下、実施例1の撮像素子、固体撮像装置の詳細な説明を行う。
【0114】
実施例1の撮像素子10は、半導体基板(より具体的には、シリコン半導体層)70を更に備えており、光電変換部は、半導体基板70の上方に配置されている。また、半導体基板70に設けられ、第1電極21及び第2電極22が接続された駆動回路を有する制御部を更に備えている。ここで、半導体基板70における光入射面を上方とし、半導体基板70の反対側を下方とする。半導体基板70の下方には複数の配線から成る配線層62が設けられている。
【0115】
半導体基板70には、制御部を構成する少なくとも浮遊拡散層FD1及び増幅トランジスタTR1ampが設けられており、第1電極21は、浮遊拡散層FD1及び増幅トランジスタTR1ampのゲート部に接続されている。半導体基板70には、更に、制御部を構成するリセット・トランジスタTR1rst及び選択トランジスタTR1selが設けられている。浮遊拡散層FD1は、リセット・トランジスタTR1rstの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、増幅トランジスタTR1ampの他方のソース/ドレイン領域は、選択トランジスタTR1selの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、選択トランジスタTR1selの他方のソース/ドレイン領域は信号線VSL1に接続されている。これらの増幅トランジスタTR1amp、リセット・トランジスタTR1rst及び選択トランジスタTR1selは、駆動回路を構成する。
【0116】
具体的には、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子は、裏面照射型の撮像素子、積層型撮像素子であり、緑色光を吸収する第1タイプの緑色光用光電変換層を備えた緑色光に感度を有する第1タイプの実施例1の緑色光用撮像素子(以下、『第1撮像素子』と呼ぶ)、青色光を吸収する第2タイプの青色光用光電変換層を備えた青色光に感度を有する第2タイプの従来の青色光用撮像素子(以下、『第2撮像素子』と呼ぶ)、赤色光を吸収する第2タイプの赤色光用光電変換層を備えた赤色光に感度を有する第2タイプの従来の赤色光用撮像素子(以下、『第3撮像素子』と呼ぶ)の3つの撮像素子が積層された構造を有する。ここで、赤色光用撮像素子(第3撮像素子)12及び青色光用撮像素子(第2撮像素子)11は半導体基板70内に設けられており、第2撮像素子11の方が第3撮像素子12よりも光入射側に位置する。また、緑色光用撮像素子(第1撮像素子10)は、青色光用撮像素子(第2撮像素子11)の上方に設けられている。第1撮像素子10、第2撮像素子11及び第3撮像素子12の積層構造によって、1画素が構成される。カラーフィルタ層は設けられていない。
【0117】
第1撮像素子10にあっては、層間絶縁層81上に、第1電極21及び電荷蓄積用電極24が、離間して形成されている。層間絶縁層81及び電荷蓄積用電極24は、絶縁層82によって覆われている。絶縁層82上には酸化物半導体層23C、酸化膜23B及び光電変換層23Aが形成され、光電変換層23A上には第2電極22が形成されている。第2電極22を含む全面には、保護材料層83が形成されており、保護材料層83上にオンチップ・マイクロ・レンズ14が設けられている。カラーフィルタ層は設けられていない。第1電極21、電荷蓄積用電極24及び第2電極22は、例えば、ITO(仕事関数:約4.4eV)から成る透明電極から構成されている。酸化物半導体層23C及び酸化膜23Bは前述した材料から構成され、光電変換層23Aは、少なくとも緑色光に感度を有する周知の有機光電変換材料(例えば、ローダミン系色素、メラシアニン系色素、キナクリドン等の有機系材料)を含む層から構成されている。層間絶縁層81や絶縁層82、保護材料層83は、周知の絶縁材料(例えば、SiO2やSiN)から構成されている。酸化物半導体層23Cと第1電極21とは、絶縁層82に設けられた接続部67によって接続されている。接続部67内には、酸化物半導体層23Cが延在している。即ち、酸化物半導体層23Cは、絶縁層82に設けられた開口部84内を延在し、第1電極21と接続されている。
【0118】
電荷蓄積用電極24は駆動回路に接続されている。具体的には、電荷蓄積用電極24は、層間絶縁層81内に設けられた接続孔66、パッド部64及び配線VOAを介して、駆動回路を構成する垂直駆動回路112に接続されている。
【0119】
電荷蓄積用電極24の大きさは第1電極21よりも大きい。電荷蓄積用電極24の面積をs1’、第1電極21の面積をs1としたとき、限定するものではないが、
4≦s1’/s1
を満足することが好ましく、実施例1にあっては、限定するものではないが、例えば、
s1’/s1=8
とした。
【0120】
半導体基板70の第1面(おもて面)70Aの側には素子分離領域71が形成され、また、半導体基板70の第1面70Aには絶縁材料膜72が形成されている。更には、半導体基板70の第1面側には、第1撮像素子10の制御部を構成するリセット・トランジスタTR1rst、増幅トランジスタTR1amp及び選択トランジスタTR1selが設けられ、更に、第1浮遊拡散層FD1が設けられている。
【0121】
リセット・トランジスタTR1rstは、ゲート部51、チャネル形成領域51A、及び、ソース/ドレイン領域51B,51Cから構成されている。リセット・トランジスタTR1rstのゲート部51はリセット線RST1に接続され、リセット・トランジスタTR1rstの一方のソース/ドレイン領域51Cは、第1浮遊拡散層FD1を兼ねており、他方のソース/ドレイン領域51Bは、電源VDDに接続されている。
【0122】
第1電極21は、層間絶縁層81内に設けられた接続孔65、パッド部63、半導体基板70及び層間絶縁層76に形成されたコンタクトホール部61、層間絶縁層76に形成された配線層62を介して、リセット・トランジスタTR1rstの一方のソース/ドレイン領域51C(第1浮遊拡散層FD1)に接続されている。
【0123】
増幅トランジスタTR1ampは、ゲート部52、チャネル形成領域52A、及び、ソース/ドレイン領域52B,52Cから構成されている。ゲート部52は配線層62を介して、第1電極21及びリセット・トランジスタTR1rstの一方のソース/ドレイン領域51C(第1浮遊拡散層FD1)に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域52Bは、電源VDDに接続されている。
【0124】
選択トランジスタTR1selは、ゲート部53、チャネル形成領域53A、及び、ソース/ドレイン領域53B,53Cから構成されている。ゲート部53は、選択線SEL1に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域53Bは、増幅トランジスタTR1ampを構成する他方のソース/ドレイン領域52Cと領域を共有しており、他方のソース/ドレイン領域53Cは、信号線(データ出力線)VSL1(117)に接続されている。
【0125】
第2撮像素子11は、半導体基板70に設けられたn型半導体領域41を光電変換層として備えている。縦型トランジスタから成る転送トランジスタTR2trsのゲート部45が、n型半導体領域41まで延びており、且つ、転送ゲート線TG2に接続されている。また、転送トランジスタTR2trsのゲート部45の近傍の半導体基板70の領域45Cには、第2浮遊拡散層FD2が設けられている。n型半導体領域41に蓄積された電荷は、ゲート部45に沿って形成される転送チャネルを介して第2浮遊拡散層FD2に読み出される。
【0126】
第2撮像素子11にあっては、更に、半導体基板70の第1面側に、第2撮像素子11の制御部を構成するリセット・トランジスタTR2rst、増幅トランジスタTR2amp及び選択トランジスタTR2selが設けられている。
【0127】
リセット・トランジスタTR2rstは、ゲート部、チャネル形成領域、及び、ソース/ドレイン領域から構成されている。リセット・トランジスタTR2rstのゲート部はリセット線RST2に接続され、リセット・トランジスタTR2rstの一方のソース/ドレイン領域は電源VDDに接続され、他方のソース/ドレイン領域は、第2浮遊拡散層FD2を兼ねている。
【0128】
増幅トランジスタTR2ampは、ゲート部、チャネル形成領域、及び、ソース/ドレイン領域から構成されている。ゲート部は、リセット・トランジスタTR2rstの他方のソース/ドレイン領域(第2浮遊拡散層FD2)に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域は、電源VDDに接続されている。
【0129】
選択トランジスタTR2selは、ゲート部、チャネル形成領域、及び、ソース/ドレイン領域から構成されている。ゲート部は、選択線SEL2に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域は、増幅トランジスタTR2ampを構成する他方のソース/ドレイン領域と領域を共有しており、他方のソース/ドレイン領域は、信号線(データ出力線)VSL2に接続されている。
【0130】
第3撮像素子12は、半導体基板70に設けられたn型半導体領域43を光電変換層として備えている。転送トランジスタTR3trsのゲート部46は転送ゲート線TG3に接続されている。また、転送トランジスタTR3trsのゲート部46の近傍の半導体基板70の領域46Cには、第3浮遊拡散層FD3が設けられている。n型半導体領域43に蓄積された電荷は、ゲート部46に沿って形成される転送チャネル46Aを介して第3浮遊拡散層FD3に読み出される。
【0131】
第3撮像素子12にあっては、更に、半導体基板70の第1面側に、第3撮像素子12の制御部を構成するリセット・トランジスタTR3rst、増幅トランジスタTR3amp及び選択トランジスタTR3selが設けられている。
【0132】
リセット・トランジスタTR3rstは、ゲート部、チャネル形成領域、及び、ソース/ドレイン領域から構成されている。リセット・トランジスタTR3rstのゲート部はリセット線RST3に接続され、リセット・トランジスタTR3rstの一方のソース/ドレイン領域は電源VDDに接続され、他方のソース/ドレイン領域は、第3浮遊拡散層FD3を兼ねている。
【0133】
増幅トランジスタTR3ampは、ゲート部、チャネル形成領域、及び、ソース/ドレイン領域から構成されている。ゲート部は、リセット・トランジスタTR3rstの他方のソース/ドレイン領域(第3浮遊拡散層FD3)に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域は、電源VDDに接続されている。
【0134】
選択トランジスタTR3selは、ゲート部、チャネル形成領域、及び、ソース/ドレイン領域から構成されている。ゲート部は、選択線SEL3に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域は、増幅トランジスタTR3ampを構成する他方のソース/ドレイン領域と領域を共有しており、他方のソース/ドレイン領域は、信号線(データ出力線)VSL3に接続されている。
【0135】
リセット線RST1,RST2,RST3、選択線SEL1,SEL2,SEL3、転送ゲート線TG2,TG3は、駆動回路を構成する垂直駆動回路112に接続され、信号線(データ出力線)VSL1,VSL2,VSL3は、駆動回路を構成するカラム信号処理回路113に接続されている。
【0136】
n型半導体領域43と半導体基板70の表面70Aとの間にはp+層44が設けられており、暗電流発生を抑制している。n型半導体領域41とn型半導体領域43との間には、p+層42が形成されており、更には、n型半導体領域43の側面の一部はp+層42によって囲まれている。半導体基板70の裏面70Bの側には、p+層73が形成されており、p+層73から半導体基板70の内部のコンタクトホール部61を形成すべき部分には、HfO2膜74及び絶縁材料膜75が形成されている。層間絶縁層76には、複数の層に亙り配線が形成されているが、図示は省略した。
【0137】
HfO2膜74は、負の固定電荷を有する膜であり、このような膜を設けることによって、暗電流の発生を抑制することができる。HfO2膜の代わりに、酸化アルミニウム(Al2O3)膜、酸化ジルコニウム(ZrO2)膜、酸化タンタル(Ta2O5)膜、酸化チタン(TiO2)膜、酸化ランタン(La2O3)膜、酸化プラセオジム(Pr2O3)膜、酸化セリウム(CeO2)膜、酸化ネオジム(Nd2O3)膜、酸化プロメチウム(Pm2O3)膜、酸化サマリウム(Sm2O3)膜、酸化ユウロピウム(Eu2O3)膜、酸化ガドリニウム((Gd2O3)膜、酸化テルビウム(Tb2O3)膜、酸化ジスプロシウム(Dy2O3)膜、酸化ホルミウム(Ho2O3)膜、酸化ツリウム(Tm2O3)膜、酸化イッテルビウム(Yb2O3)膜、酸化ルテチウム(Lu2O3)膜、酸化イットリウム(Y2O3)膜、窒化ハフニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸窒化ハフニウム膜、酸窒化アルミニウム膜を用いることもできる。これらの膜の成膜方法として、例えば、CVD法、PVD法、ALD法が挙げることができる。
【0138】
以下、
図6、
図7Aを参照して、実施例1の電荷蓄積用電極を備えた積層型撮像素子(第1撮像素子10)の動作を説明する。実施例1の撮像素子は、半導体基板70に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、第1電極21、第2電極22及び電荷蓄積用電極24は、駆動回路に接続されている。ここで、第1電極21の電位を第2電極22の電位よりも高くした。即ち、例えば、第1電極21を正の電位とし、第2電極22を負の電位とし、光電変換層23Aにおいて光電変換によって生成した電子が浮遊拡散層に読み出される。他の実施例においても同様とする。尚、第1電極21を負の電位とし、第2電極22を正の電位とし、光電変換部において光電変換に基づき生成した正孔が浮遊拡散層に読み出される形態にあっては、以下の述べる電位の高低を逆にすればよい。
【0139】
図6、後述する実施例5における
図21、
図22中で使用している符号は、以下のとおりである。
【0140】
PA ・・・・・電荷蓄積用電極24あるいは転送制御用電極(電荷転送電極)25と第1電極21の中間に位置する領域と対向した光電変換部の領域の点PAにおける電位
PB ・・・・・電荷蓄積用電極24と対向した光電変換部の領域の点PBにおける電位
PC ・・・・・転送制御用電極(電荷転送電極)25と対向した光電変換部の領域の点PCにおける電位
FD・・・・・第1浮遊拡散層FD1における電位
VOA・・・・・電荷蓄積用電極24における電位
VOT ・・・・・転送制御用電極(電荷転送電極)25における電位
RST・・・・リセット・トランジスタTR1rstのゲート部51における電位
VDD・・・・・電源の電位
VSL1 ・・・信号線(データ出力線)VSL1
TR1rst ・・リセット・トランジスタTR1rst
TR1amp ・・増幅トランジスタTR1amp
TR1sel ・・選択トランジスタTR1sel
【0141】
電荷蓄積期間においては、駆動回路から、第1電極21に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極24に電位V31が印加される。光電変換層23Aに入射された光によって光電変換層23Aにおいて光電変換が生じる。光電変換によって生成した正孔は、第2電極22から配線VOUを介して駆動回路へと送出される。一方、第1電極21の電位を第2電極22の電位よりも高くしたので、即ち、例えば、第1電極21に正の電位が印加され、第2電極22に負の電位が印加されるとしたので、V31≧V11、好ましくは、V31>V11とする。これによって、光電変換によって生成した電子は、電荷蓄積用電極24に引き付けられ、電荷蓄積用電極24と対向した酸化物半導体層23C、あるいは、酸化物半導体層23C及び光電変換層23A、あるいは酸化物半導体層23C、酸化膜23B及び光電変換層23A(以下、これらを総称して、『酸化物半導体層23C等』と呼ぶ)の領域に止まる。即ち、酸化物半導体層23C等に電荷が蓄積される。V31>V11であるが故に、光電変換層23Aの内部に生成した電子が、第1電極21に向かって移動することはない。光電変換の時間経過に伴い、電荷蓄積用電極24と対向した酸化物半導体層23C等の領域における電位は、より負側の値となる。
【0142】
電荷蓄積期間の後期において、リセット動作がなされる。これによって、第1浮遊拡散層FD1の電位がリセットされ、第1浮遊拡散層FD1の電位は電源の電位VDDとなる。
【0143】
リセット動作の完了後、電荷の読み出しを行う。即ち、電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極21に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極24に電位V32が印加される。ここで、V32<V12とする。これによって、電荷蓄積用電極24と対向した酸化物半導体層23C等の領域に止まっていた電子は、第1電極21、更には、第1浮遊拡散層FD1へと読み出される。即ち、酸化物半導体層23C等に蓄積された電荷が制御部に読み出される。
【0144】
以上で、電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作が完了する。
【0145】
第1浮遊拡散層FD1へ電子が読み出された後の増幅トランジスタTR1amp、選択トランジスタTR1selの動作は、従来のこれらのトランジスタの動作と同じである。また、第2撮像素子11、第3撮像素子12の電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作は、従来の電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作と同様である。また、第1浮遊拡散層FD1のリセットノイズは、従来と同様に、相関2重サンプリング(CDS,Correlated Double Sampling)処理によって除去することができる。
【0146】
以上のとおり、実施例1にあっては、第1電極と離間して配置され、且つ、絶縁層を介して光電変換層と対向して配置された電荷蓄積用電極が備えられているので、光電変換層に光が照射され、光電変換層において光電変換されるとき、酸化物半導体層等と絶縁層と電荷蓄積用電極とによって一種のキャパシタが形成され、酸化物半導体層等に電荷を蓄えることができる。それ故、露光開始時、電荷蓄積部を完全空乏化し、電荷を消去することが可能となる。その結果、kTCノイズが大きくなり、ランダムノイズが悪化し、撮像画質の低下をもたらすといった現象の発生を抑制することができる。また、全画素を一斉にリセットすることができるので、所謂グローバルシャッター機能を実現することができる。
【0147】
図8に、実施例1の固体撮像装置の概念図を示す。実施例1の固体撮像装置100は、積層型撮像素子101が2次元アレイ状に配列された撮像領域111、並びに、その駆動回路(周辺回路)としての垂直駆動回路112、カラム信号処理回路113、水平駆動回路114、出力回路115及び駆動制御回路116等から構成されている。これらの回路は周知の回路から構成することができるし、また、他の回路構成(例えば、従来のCCD撮像装置やCMOS撮像装置にて用いられる各種の回路)を用いて構成することができることは云うまでもない。
図8において、積層型撮像素子101における参照番号「101」の表示は、1行のみとした。
【0148】
駆動制御回路116は、垂直同期信号、水平同期信号及びマスター・クロックに基づいて、垂直駆動回路112、カラム信号処理回路113及び水平駆動回路114の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成する。そして、生成されたクロック信号や制御信号は、垂直駆動回路112、カラム信号処理回路113及び水平駆動回路114に入力される。
【0149】
垂直駆動回路112は、例えば、シフトレジスタによって構成され、撮像領域111の各積層型撮像素子101を行単位で順次垂直方向に選択走査する。そして、各積層型撮像素子101における受光量に応じて生成した電流(信号)に基づく画素信号(画像信号)は、信号線(データ出力線)117,VSLを介してカラム信号処理回路113に送られる。
【0150】
カラム信号処理回路113は、例えば、積層型撮像素子101の列毎に配置されており、1行分の積層型撮像素子101から出力される画像信号を撮像素子毎に黒基準画素(図示しないが、有効画素領域の周囲に形成される)からの信号によって、ノイズ除去や信号増幅の信号処理を行う。カラム信号処理回路113の出力段には、水平選択スイッチ(図示せず)が水平信号線118との間に接続されて設けられる。
【0151】
水平駆動回路114は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路113の各々を順次選択し、カラム信号処理回路113の各々から信号を水平信号線118に出力する。
【0152】
出力回路115は、カラム信号処理回路113の各々から水平信号線118を介して順次供給される信号に対して、信号処理を行って出力する。
【0153】
実施例1の撮像素子、積層型撮像素子の変形例の等価回路図を
図9に示し、第1電極及び電荷蓄積用電極並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図を
図10に示すように、リセット・トランジスタTR1
rstの他方のソース/ドレイン領域51Bを、電源V
DDに接続する代わりに、接地してもよい。
【0154】
実施例1の撮像素子、積層型撮像素子は、例えば、以下の方法で作製することができる。即ち、先ず、SOI基板を準備する。そして、SOI基板の表面に第1シリコン層をエピタキシャル成長法に基づき形成し、この第1シリコン層に、p+層73、n型半導体領域41を形成する。次いで、第1シリコン層上に第2シリコン層をエピタキシャル成長法に基づき形成し、この第2シリコン層に、素子分離領域71、絶縁材料膜72、p+層42、n型半導体領域43、p+層44を形成する。また、第2シリコン層に、撮像素子の制御部を構成する各種トランジスタ等を形成し、更にその上に、配線層62や層間絶縁層76、各種配線を形成した後、層間絶縁層76と支持基板(図示せず)とを貼り合わせる。その後、SOI基板を除去して第1シリコン層を露出させる。第2シリコン層の表面が半導体基板70の表面70Aに該当し、第1シリコン層の表面が半導体基板70の裏面70Bに該当する。また、第1シリコン層と第2シリコン層を纏めて半導体基板70と表現している。次いで、半導体基板70の裏面70Bの側に、コンタクトホール部61を形成するための開口部を形成し、HfO2膜74、絶縁材料膜75及びコンタクトホール部61を形成し、更に、パッド部63,64、層間絶縁層81、接続孔65,66、第1電極21、電荷蓄積用電極24、絶縁層82を形成する。次に、接続部67を開口し、酸化物半導体層23C、酸化膜23B、光電変換層23A、第2電極22、保護材料層83及びオンチップ・マイクロ・レンズ14を形成する。以上によって、実施例1の撮像素子、積層型撮像素子を得ることができる。
【0155】
また、図示は省略するが、絶縁層82を、絶縁層・下層と絶縁層・上層の2層構成とすることもできる。即ち、少なくとも、電荷蓄積用電極24の上、及び、電荷蓄積用電極24と第1電極21との間の領域に、絶縁層・下層を形成し(より具体的には、電荷蓄積用電極24を含む層間絶縁層81上に絶縁層・下層を形成し)、絶縁層・下層に平坦化処理を施した後、絶縁層・下層及び電荷蓄積用電極24の上に絶縁層・上層を形成すればよく、これによって、絶縁層82の平坦化を確実に達成することができる。そして、こうして得られた絶縁層82に接続部67を開口すればよい。
【0156】
実施例1の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極の別の変形例の模式的な配置図を
図11に示すが、この例にあっては、4つの撮像素子において、4つの電荷蓄積用電極24に対応して共通の1つの第1電極21が設けられている。
【実施例2】
【0157】
実施例2は実施例1の変形である。実施例1においては、酸化膜23Bを、例えば、厚さ10nmのTiO2といった金属酸化物から構成し、酸化物半導体層23Cを、例えば、厚さ50nmのIGZOから構成した。一方、実施例2においては、TiO2から成る酸化膜23Bに、シリコン(Si)を1.58原子%添加した。具体的には、酸化物半導体層23C上に、ALD法に基づき1原子層分のTiO2層を、所望の層数、積層し、次いで、その上に、ALD法に基づき所望の1原子層分のSi層を、1層、形成するといった操作を、所望の回数、繰り返し行った後、熱処理を施すことで、Siが添加されたTiO2から成る酸化膜23Bを得ることができる。但し、このような方法に限定するものではなく、例えば、コ・スパッタリング法に基づき酸化膜を形成することもできる。
【0158】
TiO2から成る酸化膜23BにSiを添加することによって、撮像素子の製造工程における例えば350゜Cの熱処理において、酸化膜の結晶化を抑制することができる。シリコン(Si)を添加していない場合のTiO2膜における単位面積当たりの結晶粒数を「1.00」としたとき、シリコン(Si)を添加している場合のTiO2膜における単位面積当たりの結晶粒数は、0.043となり、シリコン(Si)を添加している場合のTiO2膜における単位面積当たりの結晶粒数は、シリコン(Si)を添加していない場合のTiO2膜における単位面積当たりの結晶粒数と比較して、激減していることが判った。尚、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、炭素(C)や窒素(N)を添加することでも、同様の効果を得ることができた。
【実施例3】
【0159】
実施例3は、実施例1~実施例2の変形である。
図12に模式的な一部断面図を示す実施例3の撮像素子、積層型撮像素子は、表面照射型の撮像素子、積層型撮像素子であり、緑色光を吸収する第1タイプの緑色光用光電変換層を備えた緑色光に感度を有する第1タイプの実施例1~実施例2の緑色光用撮像素子(第1撮像素子10)、青色光を吸収する第2タイプの青色光用光電変換層を備えた青色光に感度を有する第2タイプの従来の青色光用撮像素子(第2撮像素子11)、赤色光を吸収する第2タイプの赤色光用光電変換層を備えた赤色光に感度を有する第2タイプの従来の赤色光用撮像素子(第3撮像素子12)の3つの撮像素子が積層された構造を有する。ここで、赤色光用撮像素子(第3撮像素子12)及び青色光用撮像素子(第2撮像素子11)は半導体基板70内に設けられており、第2撮像素子11の方が第3撮像素子12よりも光入射側に位置する。また、緑色光用撮像素子(第1撮像素子10)は、青色光用撮像素子(第2撮像素子11)の上方に設けられている。
【0160】
【0161】
半導体基板70の表面70A側には、実施例1と同様に制御部を構成する各種トランジスタが設けられている。これらのトランジスタは、実質的に実施例1において説明したトランジスタと同様の構成、構造とすることができる。また、半導体基板70には、第2撮像素子11、第3撮像素子12が設けられているが、これらの撮像素子も、実質的に実施例1において説明した第2撮像素子11、第3撮像素子12と同様の構成、構造とすることができる。
【0162】
半導体基板70の表面70Aの上方には層間絶縁層81が形成されており、層間絶縁層81の上方に、実施例1~実施例2の撮像素子と同様に、第1電極21、酸化物半導体層23C、酸化膜23B、光電変換層23A及び第2電極22、並びに、電荷蓄積用電極24等が設けられている。
【0163】
このように、表面照射型である点を除き、実施例3の撮像素子、積層型撮像素子の構成、構造は、実施例1~実施例2の撮像素子、積層型撮像素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例4】
【0164】
実施例4は、実施例1~実施例3の変形である。
【0165】
図13に模式的な一部断面図を示す実施例4の撮像素子、積層型撮像素子は、裏面照射型の撮像素子、積層型撮像素子であり、第1タイプの実施例1の第1撮像素子10、及び、第2タイプの第3撮像素子12の2つの撮像素子が積層された構造を有する。また、
図14に模式的な一部断面図を示す実施例4の撮像素子、積層型撮像素子の変形例は、表面照射型の撮像素子、積層型撮像素子であり、第1タイプの実施例1の第1撮像素子10、及び、第2タイプの第3撮像素子12の2つの撮像素子が積層された構造を有する。ここで、第1撮像素子10は原色の光を吸収し、第3撮像素子12は補色の光を吸収する。あるいは又、第1撮像素子10は白色光を吸収し、第3撮像素子12は赤外線を吸収する。
【0166】
図15に模式的な一部断面図を示す実施例4の撮像素子の変形例は、裏面照射型の撮像素子であり、第1タイプの実施例1の第1撮像素子10から構成されている。また、
図16に模式的な一部断面図を示す実施例4の撮像素子の変形例は、表面照射型の撮像素子であり、第1タイプの実施例1の第1撮像素子10から構成されている。ここで、第1撮像素子10は、赤色光を吸収する撮像素子(赤色光用撮像素子)、緑色光を吸収する撮像素子(緑色光用撮像素子)、青色光を吸収する撮像素子(青色光用撮像素子)の3種類の撮像素子から構成されている。更には、これらの撮像素子の複数から、本開示の第1の態様に係る固体撮像装置が構成される。複数のこれらの撮像素子の配置として、ベイヤ配列を挙げることができる。
【0167】
第1タイプの実施例1の撮像素子を1つ、設ける代わりに、2つ、積層する形態(即ち、光電変換部を2つ、積層し、半導体基板に2つの光電変換部の制御部を設ける形態)、あるいは又、3つ、積層する形態(即ち、光電変換部を3つ、積層し、半導体基板に3つの光電変換部の制御部を設ける形態)とすることもできる。第1タイプの撮像素子と第2タイプの撮像素子の積層構造例を、以下の表に例示する。
【0168】
【実施例5】
【0169】
実施例5は、実施例1~実施例4の変形であり、本開示の転送制御用電極(電荷転送電極)を備えた撮像素子等に関する。実施例5の撮像素子、積層型撮像素子の一部分の模式的な一部断面図を
図17に示し、実施例5の撮像素子、積層型撮像素子の等価回路図を
図18及び
図19に示し、実施例5の撮像素子を構成する第1電極、転送制御用電極及び電荷蓄積用電極並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図を
図20に示し、実施例5の撮像素子の動作時の各部位における電位の状態を模式的に
図21及び
図22に示し、実施例5の撮像素子の各部位を説明するための等価回路図を
図7Bに示す。
【0170】
実施例5の撮像素子、積層型撮像素子にあっては、第1電極21と電荷蓄積用電極24との間に、第1電極21及び電荷蓄積用電極24と離間して配置され、且つ、絶縁層82を介して酸化物半導体層23Cと対向して配置された転送制御用電極(電荷転送電極)25を更に備えている。転送制御用電極25は、層間絶縁層81内に設けられた接続孔68B、パッド部68A及び配線VOTを介して、駆動回路を構成する画素駆動回路に接続されている。
【0171】
以下、
図21、
図22を参照して、実施例5の撮像素子(第1撮像素子10)の動作を説明する。尚、
図21と
図22とでは、特に、電荷蓄積用電極24に印加される電位及び点P
Cにおける電位の値が相違している。
【0172】
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極21に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極24に電位V31が印加され、転送制御用電極25に電位V51が印加される。光電変換層23Aに入射された光によって光電変換層23Aにおいて光電変換が生じる。光電変換によって生成した正孔は、第2電極22から配線VOUを介して駆動回路へと送出される。一方、第1電極21の電位を第2電極22の電位よりも高くしたので、即ち、例えば、第1電極21に正の電位が印加され、第2電極22に負の電位が印加されるとしたので、V31>V51(例えば、V31>V11>V51、又は、V11>V31>V51)とする。これによって、光電変換によって生成した電子は、電荷蓄積用電極24に引き付けられ、電荷蓄積用電極24と対向した酸化物半導体層23C等の領域に止まる。即ち、酸化物半導体層23C等に電荷が蓄積される。V31>V51であるが故に、光電変換層23Aの内部に生成した電子が、第1電極21に向かって移動することを確実に防止することができる。光電変換の時間経過に伴い、電荷蓄積用電極24と対向した酸化物半導体層23C等の領域における電位は、より負側の値となる。
【0173】
電荷蓄積期間の後期において、リセット動作がなされる。これによって、第1浮遊拡散層FD1の電位がリセットされ、第1浮遊拡散層FD1の電位は電源の電位VDDとなる。
【0174】
リセット動作の完了後、電荷の読み出しを行う。即ち、電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極21に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極24に電位V32が印加され、転送制御用電極25に電位V52が印加される。ここで、V32≦V52≦V12(好ましくは、V32<V52<V12)とする。これによって、電荷蓄積用電極24と対向した酸化物半導体層23C等の領域に止まっていた電子は、第1電極21、更には、第1浮遊拡散層FD1へと確実に読み出される。即ち、酸化物半導体層23C等に蓄積された電荷が制御部に読み出される。
【0175】
以上で、電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作が完了する。
【0176】
第1浮遊拡散層FD1へ電子が読み出された後の増幅トランジスタTR1amp、選択トランジスタTR1selの動作は、従来のこれらのトランジスタの動作と同じである。また、例えば、第2撮像素子11、第3撮像素子12の電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作は、従来の電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作と同様である。
【0177】
実施例5の撮像素子の変形例を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図を
図23に示すように、リセット・トランジスタTR1
rstの他方のソース/ドレイン領域51Bを、電源V
DDに接続する代わりに、接地してもよい。
【0178】
また、第1電極21に最も近い位置から電荷蓄積用電極24に向けて、複数の転送制御用電極を設けてもよい。
【実施例6】
【0179】
実施例6は、実施例1~実施例5の変形であり、本開示の電荷排出電極を備えた撮像素子等に関する。実施例6の撮像素子の一部分の模式的な一部断面図を
図24に示し、実施例6の撮像素子の電荷蓄積用電極を備えた光電変換部を構成する第1電極、電荷蓄積用電極及び電荷排出電極の模式的な配置図を
図25に示す。
【0180】
実施例6の撮像素子にあっては、接続部69を介して酸化物半導体層23Cに接続され、第1電極21及び電荷蓄積用電極24と離間して配置された電荷排出電極26を更に備えている。ここで、電荷排出電極26は、第1電極21及び電荷蓄積用電極24を取り囲むように(即ち、額縁状に)配置されている。電荷排出電極26は、駆動回路を構成する画素駆動回路に接続されている。接続部69内には、酸化物半導体層23C及び酸化膜23Bが延在している。即ち、酸化物半導体層23C及び酸化膜23Bは、絶縁層82に設けられた第2開口部85内を延在し、電荷排出電極26と接続されている。電荷排出電極26は、複数の撮像素子において共有化(共通化)されている。第2開口部85の側面には上方に向かって広がる傾斜が形成されていてもよい。電荷排出電極26は、例えば、光電変換部のフローティングディフュージョンやオーバーフロードレインとして用いることができる。
【0181】
実施例6にあっては、電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極21に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極24に電位V31が印加され、電荷排出電極26に電位V61が印加され、酸化物半導体層23C等に電荷が蓄積される。光電変換層23Aに入射された光によって光電変換層23Aにおいて光電変換が生じる。光電変換によって生成した正孔は、第2電極22から配線VOUを介して駆動回路へと送出される。一方、第1電極21の電位を第2電極22の電位よりも高くしたので、即ち、例えば、第1電極21に正の電位が印加され、第2電極22に負の電位が印加されるとしたので、V61>V11(例えば、V31>V61>V11)とする。これによって、光電変換によって生成した電子は、電荷蓄積用電極24に引き付けられ、電荷蓄積用電極24と対向した酸化物半導体層23C等の領域に止まり、第1電極21に向かって移動することを確実に防止することができる。但し、電荷蓄積用電極24による引き付けが充分ではなく、あるいは又、酸化物半導体層23C等に蓄積しきれなかった電子(所謂オーバーフローした電子)は、電荷排出電極26を経由して、駆動回路に送出される。
【0182】
電荷蓄積期間の後期において、リセット動作がなされる。これによって、第1浮遊拡散層FD1の電位がリセットされ、第1浮遊拡散層FD1の電位は電源の電位VDDとなる。
【0183】
リセット動作の完了後、電荷の読み出しを行う。即ち、電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極21に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極24に電位V32が印加され、電荷排出電極26に電位V62が印加される。ここで、V62<V12(例えば、V62<V32<V12)とする。これによって、電荷蓄積用電極24と対向した酸化物半導体層23C等の領域に止まっていた電子は、第1電極21、更には、第1浮遊拡散層FD1へと確実に読み出される。即ち、酸化物半導体層23C等に蓄積された電荷が制御部に読み出される。
【0184】
以上で、電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作が完了する。
【0185】
第1浮遊拡散層FD1へ電子が読み出された後の増幅トランジスタTR1amp、選択トランジスタTR1selの動作は、従来のこれらのトランジスタの動作と同じである。また、例えば、第2撮像素子、第3撮像素子の電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作は、従来の電荷蓄積、リセット動作、電荷転送といった一連の動作と同様である。
【0186】
実施例6にあっては、所謂オーバーフローした電子は電荷排出電極26を経由して駆動回路に送出されるので、隣接画素の電荷蓄積部への漏れ込みを抑制することができ、ブルーミングの発生を抑えることができる。そして、これにより、撮像素子の撮像性能を向上させることができる。
【実施例7】
【0187】
実施例7は、実施例1~実施例6の変形であり、本開示の電荷移動制御電極を備えた撮像素子等、具体的には、本開示の下部電荷移動制御電極(下方・電荷移動制御電極)を備えた撮像素子等に関する。実施例7の撮像素子の一部分の模式的な一部断面図を
図26に示し、実施例7の撮像素子を構成する第1電極及び電荷蓄積用電極等並びに制御部を構成するトランジスタの模式的な配置図を
図27に示し、実施例7の撮像素子の電荷蓄積用電極を備えた光電変換部を構成する第1電極、電荷蓄積用電極及び下部電荷移動制御電極の模式的な配置図を
図28、
図29に示す。
【0188】
実施例7の撮像素子において、隣接する撮像素子の間に位置する光電変換積層体23の領域(光電変換層の領域-A)23Aに絶縁層82を介して対向する領域には、下部電荷移動制御電極27が形成されている。云い換えれば、隣接する撮像素子のそれぞれを構成する電荷蓄積用電極24と電荷蓄積用電極24とによって挟まれた領域(領域-a)における絶縁層82の部分(絶縁層82の領域-A)82Aの下に、下部電荷移動制御電極27が形成されている。下部電荷移動制御電極27は、電荷蓄積用電極24と離間して設けられている。あるいは又、云い換えれば、下部電荷移動制御電極27は、電荷蓄積用電極24を取り囲んで、電荷蓄積用電極24と離間して設けられており、下部電荷移動制御電極27は絶縁層82を介して、光電変換層の領域-A(23A)と対向して配置されている。下部電荷移動制御電極27は撮像素子において共通化されている。そして、下部電荷移動制御電極27も駆動回路に接続されている。具体的には、下部電荷移動制御電極27は、層間絶縁層81内に設けられた接続孔27A、パッド部27B及び配線VOBを介して、駆動回路を構成する垂直駆動回路112に接続されている。下部電荷移動制御電極27は、第1電極21あるいは電荷蓄積用電極24と同じレベルに形成されていてもよいし、異なるレベル(具体的には、第1電極21あるいは電荷蓄積用電極24よりも下方のレベル)に形成されていてもよい。前者の場合、電荷移動制御電極27と光電変換層23Aとの間の距離を短くできるので、ポテンシャルを制御し易い。一方、後者の場合、電荷移動制御電極27と電荷蓄積用電極24との間の距離を短くすることができるため、微細化に有利である。
【0189】
実施例7の撮像素子にあっては、光電変換層23Aに光が入射して光電変換層23Aにおいて光電変換が生じるとき、電荷蓄積用電極24に対向する光電変換層23Aの部分に加えられる電位の絶対値は、光電変換層23Aの領域-Aに加えられる電位の絶対値よりも大きな値であるが故に、光電変換によって生成した電荷は電荷蓄積用電極24に対向する酸化物半導体層23Cの部分に強く引き付けられる。その結果、光電変換によって生成した電荷が隣接する撮像素子に流れ込むことを抑制することができるので、撮影された映像(画像)に品質劣化が生じることが無い。あるいは又、光電変換層23Aの領域-Aに絶縁層を介して対向する領域には下部電荷移動制御電極27が形成されているが故に、下部電荷移動制御電極27の上方に位置する光電変換層23Aの領域-Aの電界や電位を制御することができる。その結果、光電変換によって生成した電荷が隣接する撮像素子に流れ込むことを下部電荷移動制御電極27によって抑制することができるので、撮影された映像(画像)に品質劣化が生じることが無い。
【0190】
図28及び
図29に示す例にあっては、電荷蓄積用電極24と電荷蓄積用電極24とによって挟まれた領域(領域-a)における絶縁層82の部分82
Aの下に、下部電荷移動制御電極27が形成されている。一方、
図30、
図31A、
図31Bに示す例にあっては、4つの電荷蓄積用電極24によって囲まれた領域における絶縁層82の部分の下に、下部電荷移動制御電極27が形成されている。尚、
図30、
図31A、
図31Bに示す例は、第1構成及び第2構成の固体撮像装置でもある。そして、4つの撮像素子において、4つの電荷蓄積用電極24に対応して共通の1つの第1電極21が設けられている。
【0191】
図31Bに示す例では、4つの撮像素子において、4つの電荷蓄積用電極24に対応して共通の1つの第1電極21が設けられており、4つの電荷蓄積用電極24によって囲まれた領域における絶縁層82の部分の下に、下部電荷移動制御電極27が形成されており、更には、4つの電荷蓄積用電極24によって囲まれた領域における絶縁層82の部分の下に電荷排出電極26が形成されている。前述したとおり、電荷排出電極26は、例えば、光電変換部のフローティングディフュージョンやオーバーフロードレインとして用いることができる。
【実施例8】
【0192】
実施例8は、実施例1~実施例7の変形であり、本開示の上部電荷移動制御電極(上方・電荷移動制御電極)を備えた撮像素子等に関する。実施例8の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の一部分の模式的な断面図を
図32に示し、実施例8の撮像素子(並置された2×2の撮像素子)の一部分の模式的な平面図を
図34及び
図35に示す。実施例8の撮像素子において、隣接する撮像素子の間に位置する光電変換積層体23の領域23
Aの上には、第2電極22が形成される代わりに、上部電荷移動制御電極28が形成されている。上部電荷移動制御電極28は、第2電極22と離間して設けられている。云い換えれば、第2電極22は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極28は、第2電極22の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極22と離間して、光電変換積層体23の領域-Aの上に設けられている。上部電荷移動制御電極28は、第2電極22と同じレベルに形成されている。
【0193】
また、実施例8の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の一部分の模式的な断面図を
図33Aに示すように、第2電極22が複数に分割され、各分割された第2電極22に個別に異なる電位を印加してもよい。更には、
図33Bに示すように、分割された第2電極22と第2電極22との間に上部電荷移動制御電極28が設けられていてもよい。
【0194】
尚、
図34に示す例にあっては、1つの撮像素子において、1つの第1電極21に対応して1つの電荷蓄積用電極24が設けられている。一方、
図35に示す変形例にあっては、2つの撮像素子において、2つの電荷蓄積用電極24に対応して共通の1つの第1電極21が設けられている。
図32に示す実施例8の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の一部分の模式的な断面図は
図35に対応する。
【0195】
実施例8にあっては、光入射側に位置する第2電極22は、
図34の紙面、左右方向に配列された撮像素子において共通化されているし、
図34の紙面、上下方向に配列された一対の撮像素子において共通化されている。また、上部電荷移動制御電極28も、
図34の紙面、左右方向に配列された撮像素子において共通化されているし、
図34の紙面、上下方向に配列された一対の撮像素子において共通化されている。第2電極22及び上部電荷移動制御電極28は、光電変換積層体23の上に第2電極22及び上部電荷移動制御電極28を構成する材料層を成膜した後、この材料層をパターニングすることで得ることができる。第2電極22、上部電荷移動制御電極28のそれぞれは、別々に配線(図示せず)に接続されており、これらの配線は駆動回路に接続されている。第2電極22に接続された配線は、複数の撮像素子において共通化されている。上部電荷移動制御電極28に接続された配線も、複数の撮像素子において共通化されている。
【0196】
実施例8の撮像素子にあっては、電荷蓄積期間において、駆動回路から、第2電極22に電位V21が印加され、上部電荷移動制御電極28に電位V41が印加され、光電変換積層体23に電荷が蓄積され、電荷転送期間において、駆動回路から、第2電極22に電位V22が印加され、上部電荷移動制御電極28に電位V42が印加され、光電変換積層体23に蓄積された電荷が第1電極21を経由して制御部に読み出される。ここで、第1電極21の電位が第2電極22の電位よりも高いとしたので、
V21≧V41、且つ、V22≧V42
である。
【0197】
以上のとおり、実施例8の撮像素子にあっては、隣接する撮像素子の間に位置する光電変換層の領域の上には、第2電極が形成される代わりに、電荷移動制御電極が形成されているが故に、光電変換によって生成した電荷が隣接する撮像素子に流れ込むことを電荷移動制御電極によって抑制することができるので、撮影された映像(画像)に品質劣化が生じることが無い。
【0198】
実施例8の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の変形例の一部分の模式的な断面図を
図36Aに示し、一部分の模式的な平面図を
図37A及び
図37Bに示す。この変形例において、第2電極22は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極28は、第2電極22の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極22と離間して設けられており、上部電荷移動制御電極28の下方には、電荷蓄積用電極24の一部が存在する。第2電極22は、電荷蓄積用電極24の上方に、電荷蓄積用電極24より小さい大きさで設けられている。
【0199】
実施例8の撮像素子(並置された2つの撮像素子)の変形例の一部分の模式的な断面図を
図36Bに示し、一部分の模式的な平面図を、
図38A及び
図38Bに示す。この変形例において、第2電極22は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極28は、第2電極22の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極22と離間して設けられており、上部電荷移動制御電極28の下方には、電荷蓄積用電極24の一部が存在し、しかも、上部電荷移動制御電極(上方・電荷移動制御電極)28の下方には、下部電荷移動制御電極(下方・電荷移動制御電極)27が設けられている。第2電極22の大きさは、
図36Aに示した変形例よりも小さい。即ち、上部電荷移動制御電極28と対向する第2電極22の領域は、
図36Aに示した変形例における上部電荷移動制御電極28と対向する第2電極22の領域よりも、第1電極21側に位置する。電荷蓄積用電極24は、下部電荷移動制御電極27によって囲まれている。
【0200】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した撮像素子、積層型撮像素子、固体撮像装置の構造や構成、製造条件、製造方法、使用した材料は例示であり、適宜変更することができる。各実施例の撮像素子を、適宜、組み合わせることができる。本開示の撮像素子の構成、構造を、発光素子、例えば、有機EL素子に適用することもできるし、薄膜トランジスタのチャネル形成領域に適用することもできる。
【0201】
場合によっては、前述したとおり、浮遊拡散層FD1,FD2,FD3,51C,45C,46Cを共有化することもできる。
【0202】
また、
図39に、例えば、実施例1において説明した撮像素子、積層型撮像素子の変形例を示すように、第2電極22の側から光が入射し、第2電極22よりの光入射側には遮光層15が形成されている構成とすることもできる。尚、光電変換層よりも光入射側に設けられた各種配線を遮光層として機能させることもできる。
【0203】
尚、
図39に示した例では、遮光層15は、第2電極22の上方に形成されているが、即ち、第2電極22よりの光入射側であって、第1電極21の上方に遮光層15が形成されているが、
図40に示すように、第2電極22の光入射側の面の上に配設されてもよい。また、場合によっては、
図41に示すように、第2電極22に遮光層15が形成されていてもよい。
【0204】
あるいは又、第2電極22側から光が入射し、第1電極21には光が入射しない構造とすることもできる。具体的には、
図39に示したように、第2電極22よりの光入射側であって、第1電極21の上方には遮光層15が形成されている。あるいは又、
図43に示すように、電荷蓄積用電極24及び第2電極22の上方にはオンチップ・マイクロ・レンズ14が設けられており、オンチップ・マイクロ・レンズ14に入射する光は、電荷蓄積用電極24に集光され、第1電極21には到達しない構造とすることもできる。尚、実施例5において説明したように、転送制御用電極25が設けられている場合、第1電極21及び転送制御用電極25には光が入射しない形態とすることができ、具体的には、
図42に図示するように、第1電極21及び転送制御用電極25の上方には遮光層15が形成されている構造とすることもできる。あるいは又、オンチップ・マイクロ・レンズ14に入射する光は、第1電極21あるいは第1電極21及び転送制御用電極25には到達しない構造とすることもできる。
【0205】
これらの構成、構造を採用することで、あるいは又、電荷蓄積用電極24の上方に位置する光電変換部の部分のみに光が入射するように遮光層15を設け、あるいは又、オンチップ・マイクロ・レンズ14を設計することで、第1電極21の上方(あるいは、第1電極21及び転送制御用電極25の上方)に位置する光電変換部の部分は光電変換に寄与しなくなるので、全画素をより確実に一斉にリセットすることができ、グローバルシャッター機能を一層容易に実現することができる。即ち、これらの構成、構造を有する撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置の駆動方法にあっては、
全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層23C等に電荷を蓄積しながら、第1電極21における電荷を系外に排出し、その後、
全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層23C等に蓄積された電荷を第1電極21に転送し、転送完了後、順次、各撮像素子において第1電極21に転送された電荷を読み出す、
各工程を繰り返す。
【0206】
このような固体撮像装置の駆動方法にあっては、各撮像素子は、第2電極側から入射した光が第1電極には入射しない構造を有し、全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層等に電荷を蓄積しながら、第1電極における電荷を系外に排出するので、全撮像素子において同時に第1電極のリセットを確実に行うことができる。そして、その後、全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層等に蓄積された電荷を第1電極に転送し、転送完了後、順次、各撮像素子において第1電極に転送された電荷を読み出す。それ故、所謂グローバルシャッター機能を容易に実現することができる。
【0207】
複数の撮像素子において共通化された1層の酸化物半導体層23C及び酸化膜23Bが形成されている場合、酸化物半導体層23C及び酸化膜23Bの端部は、少なくとも光電変換層23Aで覆われていることが、酸化物半導体層23C及び酸化膜23Bの端部の保護といった観点から望ましい。このような場合の撮像素子の構造は、模式的な断面図を
図2に示した酸化物半導体層23C及び酸化膜23Bの右端に図示するような構造とすればよい。
【0208】
図44に模式的な一部断面図を示す実施例4の撮像素子の変形例において、各撮像素子(青色光用撮像素子10B、緑色光用撮像素子10G及び赤色光用撮像素子10R)の光入射側には、青色、緑色、赤色の分光を行うためのカラーフィルタ層16B,16G,16Rが配設されている。この場合、撮像素子10R,10G,10Bは、白色光を吸収する光電変換層23Aが形成された裏面照射型あるいは表面照射型の撮像素子から構成すればよい。撮像素子10B,10G,10Rは、カラーフィルタ層16B,16G,16Rが異なる点を除き、同じ構成、構造を有する。また、光電変換層23Aは、撮像素子10B,10G,10Rにおいて共通とすることができる。
【0209】
実施例においては、電子を信号電荷としており、半導体基板に形成された光電変換層の導電型をn型としたが、正孔を信号電荷とする固体撮像装置にも適用できる。この場合には、各半導体領域を逆の導電型の半導体領域で構成すればよく、半導体基板に形成された光電変換層の導電型はp型とすればよい。
【0210】
また、実施例にあっては、入射光量に応じた信号電荷を物理量として検知する単位画素が行列状に配置されて成るCMOS型固体撮像装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、CMOS型固体撮像装置への適用に限られるものではなく、CCD型固体撮像装置に適用することもできる。後者の場合、信号電荷は、CCD型構造の垂直転送レジスタによって垂直方向に転送され、水平転送レジスタによって水平方向に転送され、増幅されることにより画素信号(画像信号)が出力される。また、画素が2次元マトリクス状に形成され、画素列毎にカラム信号処理回路を配置して成るカラム方式の固体撮像装置全般に限定するものでもない。更には、場合によっては、選択トランジスタを省略することもできる。
【0211】
更には、本開示の撮像素子、積層型撮像素子は、可視光の入射光量の分布を検知して画像として撮像する固体撮像装置への適用に限らず、赤外線やX線、あるいは、粒子等の入射量の分布を画像として撮像する固体撮像装置にも適用可能である。また、広義には、圧力や静電容量等、他の物理量の分布を検知して画像として撮像する指紋検出センサ等の固体撮像装置(物理量分布検知装置)全般に対して適用可能である。
【0212】
更には、撮像領域の各単位画素を行単位で順に走査して各単位画素から画素信号を読み出す固体撮像装置に限られるものではない。画素単位で任意の画素を選択して、選択画素から画素単位で画素信号を読み出すX-Yアドレス型の固体撮像装置に対しても適用可能である。固体撮像装置はワンチップとして形成された形態であってもよいし、撮像領域と、駆動回路又は光学系とを纏めてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態であってもよい。
【0213】
また、固体撮像装置への適用に限られるものではなく、撮像装置にも適用可能である。ここで、撮像装置とは、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、携帯電話機等の撮像機能を有する電子機器を指す。電子機器に搭載されるモジュール状の形態、即ち、カメラモジュールを撮像装置とする場合もある。
【0214】
本開示の撮像素子、積層型撮像素子から構成された固体撮像装置201を電子機器(カメラ)200に用いた例を、
図50に概念図として示す。電子機器200は、固体撮像装置201、光学レンズ210、シャッタ装置211、駆動回路212、及び、信号処理回路213を有する。光学レンズ210は、被写体からの像光(入射光)を固体撮像装置201の撮像面上に結像させる。これにより固体撮像装置201内に、一定期間、信号電荷が蓄積される。シャッタ装置211は、固体撮像装置201への光照射期間及び遮光期間を制御する。駆動回路212は、固体撮像装置201の転送動作等及びシャッタ装置211のシャッタ動作を制御する駆動信号を供給する。駆動回路212から供給される駆動信号(タイミング信号)により、固体撮像装置201の信号転送を行う。信号処理回路213は、各種の信号処理を行う。信号処理が行われた映像信号は、メモリ等の記憶媒体に記憶され、あるいは、モニタに出力される。このような電子機器200では、固体撮像装置201における画素サイズの微細化及び転送効率の向上を達成することができるので、画素特性の向上が図られた電子機器200を得ることができる。固体撮像装置201を適用できる電子機器200としては、カメラに限られるものではなく、デジタルスチルカメラ、携帯電話機等のモバイル機器向けカメラモジュール等の撮像装置に適用可能である。
【0215】
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0216】
図52は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0217】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図52に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0218】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0219】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0220】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0221】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0222】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0223】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0224】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0225】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0226】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図52の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0227】
図53は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0228】
図53では、車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0229】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101及び12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0230】
なお、
図53には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0231】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0232】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0233】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0234】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0235】
また、例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0236】
図54は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0237】
図54では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0238】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0239】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0240】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0241】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0242】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0243】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0244】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0245】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0246】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0247】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0248】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0249】
図55は、
図54に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0250】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0251】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0252】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0253】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0254】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0255】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0256】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0257】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0258】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0259】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0260】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0261】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0262】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0263】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0264】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0265】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0266】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0267】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《撮像素子》
第1電極、光電変換層及び第2電極が積層されて成る光電変換部を備えており、
光電変換層の直下には、光電変換層側から、酸化膜及び酸化物半導体層が形成されている撮像素子。
[A02]酸化膜を構成する元素の少なくとも一部は、酸化物半導体層を構成する元素と異なる[A01]に記載の撮像素子。
[A03]酸化物半導体層の伝導帯の最大エネルギー値におけるエネルギー平均値をE2、酸化膜の伝導帯の最大エネルギー値におけるエネルギー平均値をE1としたとき、
E1-E2≧-0.4(eV)
を満足する[A01]又は[A02]に記載の撮像素子。
[A04]光電変換層のLUMO値におけるエネルギー平均値をE0としたとき、
E0-E1≧-0.4(eV)
を満足する[A03]に記載の撮像素子。
[A05]E0≧E1≧E2
を満足する[A04]に記載の撮像素子。
[A06]酸化膜の価電子帯における最小エネルギー値のエネルギー平均値をE4、光電変換層のHOMO値におけるエネルギー平均値をE3としたとき、
E3-E4≧-0.4(eV)
を満足する[A01]乃至[A05]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A07]酸化物半導体層の価電子帯の最小エネルギー値におけるエネルギー平均値をE5としたとき、
E4-E5≧-0.4(eV)
を満足する[A06]に記載の撮像素子。
[A08]E3≧E4≧E5
を満足する[A07]に記載の撮像素子。
[A09]酸化膜を構成する材料(酸化膜構成材料)は、金属酸化物から成る[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A10]金属酸化物は、タンタル、チタン、バナジウム、ニオブ、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガリウム及びマグネシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を含む[A09]に記載の撮像素子。
[A11]酸化膜には、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、ゲルマニウム(Ge)、水素(H)、炭素(C)及び窒素(N)から成る群から選択された少なくとも1種類の元素(但し、金属酸化物を構成する元素とは異なる元素である)が添加されている[A10]に記載の撮像素子。
[A12]酸化膜には、シリコン(Si)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、炭素(C)及び窒素(N)から成る群から選択された少なくとも1種類の元素(但し、金属酸化物を構成する元素とは異なる元素である)が添加されている[A11]に記載の撮像素子。
[A13]酸化膜の厚さは、1原子層以上、1×10-7m以下である[A09]乃至[A12]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A14]酸化膜は、トンネル酸化膜から成る[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A15]トンネル酸化膜は、SiOX、SiON、SiOC及びAlOYから成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成されている[A14]に記載の撮像素子。
[A16]トンネル酸化膜の厚さは、1原子層以上、5×10-9m以下である[A14]又は[A15]に記載の撮像素子。
[A17]酸化膜は、金属酸化物から成る膜とトンネル酸化膜との積層構造を有する[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A18]金属酸化物は、タンタル、チタン、バナジウム、ニオブ、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガリウム及びマグネシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の元素を含む[A17]に記載の撮像素子。
[A19]酸化膜には、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、ゲルマニウム(Ge)、水素(H)、炭素(C)及び窒素(N)から成る群から選択された少なくとも1種類の元素(但し、金属酸化物を構成する元素とは異なる元素である)が添加されている[A18]に記載の撮像素子。
[A20]酸化膜には、シリコン(Si)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、炭素(C)及び窒素(N)から成る群から選択された少なくとも1種類の元素(但し、金属酸化物を構成する元素とは異なる元素である)が添加されている[A19]に記載の撮像素子。
[A21]金属酸化物から成る膜の厚さは、1原子層以上、1×10-7m以下である[A17]乃至[A20]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A22]トンネル酸化膜は、SiOX、SiON、SiOC及びAlOYから成る群から選択された少なくとも1種類の材料から構成されている[A17]乃至[A21]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A23]トンネル酸化膜の厚さは、1原子層以上、5×10-9m以下である[A17]乃至[A22]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A24]酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における水素原子濃度の平均値ConcH-1は、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分における水素原子濃度の平均値ConcH-2よりも高い[A01]乃至[A23]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A25]ConcH-1/ConcH-2≧1.1
を満足する[A24]に記載の撮像素子。
[A26]酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における水素原子濃度の値をConcH-1、酸化膜と酸化物半導体層との界面近傍の酸化物半導体層の部分における酸化膜を構成する原子の濃度の値をConcM-1としたとき、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分に向かうConcH-1の平均変化率ΔConcH-1は、酸化物半導体層の厚さ方向に沿った中央部分に向かうConcM-1の平均変化率ΔConcM-1よりも大きい[A01]乃至[A25]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A27]第2電極の上方にはカラーフィルター層が設けられており、光電変換層は白色光を吸収する[A01]乃至[A26]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A28]光電変換層において生成した電荷は、酸化膜及び酸化物半導体層を介して第1電極へと移動する[A01]乃至[A27]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A29]電荷は電子である[A28]に記載の撮像素子。
[B01]光電変換部は、更に、絶縁層、及び、第1電極と離間して配置され、且つ、絶縁層を介して酸化物半導体層と対向して配置された電荷蓄積用電極を備えている[A01]乃至[A29]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[B02]光電変換層において生成した電荷は、酸化膜及び酸化物半導体層を介して第1電極へと移動する[A01]乃至[B01]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[B03]電荷は電子である[B02]に記載の撮像素子。
[B04]酸化物半導体層のキャリア移動度は10cm2/V・s以上である[A01]乃至[B03]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[B05]酸化物半導体層のキャリア濃度(キャリア密度)は1×1016/cm3未満である[A01]乃至[B04]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[B06]酸化物半導体層は、非晶質である[A01]乃至[B05]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[B07]酸化物半導体層の厚さは、1×10-8m乃至1.5×10-7mである[A01]乃至[B06]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C01]半導体基板を更に備えており、
光電変換部は、半導体基板の上方に配置されている[A01]乃至[B07]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C02]第1電極は、絶縁層に設けられた開口部内を延在し、酸化物半導体層と接続されている[A01]乃至[C01]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C03]酸化物半導体層及び保護層は、絶縁層に設けられた開口部内を延在し、第1電極と接続されている[A01]乃至[C01]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C04]第1電極の頂面の縁部は絶縁層で覆われており、
開口部の底面には第1電極が露出しており、
第1電極の頂面と接する絶縁層の面を第1面、電荷蓄積用電極と対向する酸化物半導体層の部分と接する絶縁層の面を第2面としたとき、開口部の側面は、第1面から第2面に向かって広がる傾斜を有する[C03]に記載の撮像素子。
[C05]第1面から第2面に向かって広がる傾斜を有する開口部の側面は、電荷蓄積用電極側に位置する[C04]に記載の撮像素子。
[C06]《第1電極及び電荷蓄積用電極の電位の制御》
半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極及び電荷蓄積用電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極に電位V31が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極に電位V32が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に蓄積された電荷が第1電極を経由して制御部に読み出される[A01]乃至[C05]のいずれか1項に記載の撮像素子。
但し、第1電極の電位は第2電極の電位よりも高く、
V31≧V11、且つ、V32<V12
である。
[C07]《下部電荷移動制御電極》
隣接する撮像素子の間に位置する光電変換層の領域に絶縁層を介して対向する領域には、下部電荷移動制御電極が形成されている[A01]乃至[C06]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C08]《第1電極、電荷蓄積用電極及び下部電荷移動制御電極の電位の制御》
半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極、第2電極、電荷蓄積用電極及び下部電荷移動制御電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極に電位V31が印加され、下部電荷移動制御電極に電位V41が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極に電位V32が印加され、下部電荷移動制御電極に電位V42が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に蓄積された電荷が第1電極を経由して制御部に読み出される[C07]に記載の撮像素子。
但し、
V31≧V11、V31>V41、且つ、V12>V32>V42
である。
[C09]《上部電荷移動制御電極》
隣接する撮像素子の間に位置する光電変換層の領域の上には、第2電極が形成される代わりに、上部電荷移動制御電極が形成されている[A01]乃至[C06]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C10]第2電極は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極は、第2電極の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極と離間して、光電変換層の領域-Aの上に設けられている[C09]に記載の撮像素子。
[C11]第2電極は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極は、第2電極の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極と離間して設けられており、上部電荷移動制御電極の下方には、電荷蓄積用電極の一部が存在する[C09]に記載の撮像素子。
[C12]第2電極は撮像素子毎に設けられており、上部電荷移動制御電極は、第2電極の少なくとも一部を取り囲んで、第2電極と離間して設けられており、上部電荷移動制御電極の下方には、電荷蓄積用電極の一部が存在し、しかも、上部電荷移動制御電極の下方には、下部電荷移動制御電極が形成されている[C09]乃至[C11]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C13]《第1電極、電荷蓄積用電極及び電荷移動制御電極の電位の制御》
半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極、第2電極、電荷蓄積用電極及び電荷移動制御電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第2電極に電位V21が印加され、電荷移動制御電極に電位V41が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第2電極に電位V22が印加され、電荷移動制御電極に電位V42が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に蓄積された電荷が第1電極を経由して制御部に読み出される[C09]乃至[C12]のいずれか1項に記載の撮像素子。
但し、
V21≧V41、且つ、V22≧V42
である。
[C14]《転送制御用電極》
第1電極と電荷蓄積用電極との間に、第1電極及び電荷蓄積用電極と離間して配置され、且つ、絶縁層を介して酸化物半導体層と対向して配置された転送制御用電極を更に備えている[A01]乃至[C13]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C15]《第1電極、電荷蓄積用電極及び転送制御用電極の電位の制御》
半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極、電荷蓄積用電極及び転送制御用電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極に電位V31が印加され、転送制御用電極に電位V51が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極に電位V32が印加され、転送制御用電極に電位V52が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に蓄積された電荷が第1電極を介して制御部に読み出される[C14]に記載の撮像素子。
但し、第1電極の電位は第2電極の電位よりも高く、
V31>V51、且つ、V32≦V52≦V12
である。
[C16]《電荷排出電極》
酸化物半導体層に接続され、第1電極及び電荷蓄積用電極と離間して配置された電荷排出電極を更に備えている[A01]乃至[C15]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C17]電荷排出電極は、第1電極及び電荷蓄積用電極を取り囲むように配置されている[C16]に記載の撮像素子。
[C18]酸化物半導体層及び保護層は、絶縁層に設けられた第2開口部内を延在し、電荷排出電極と接続されており、
電荷排出電極の頂面の縁部は絶縁層で覆われており、
第2開口部の底面には電荷排出電極が露出しており、
電荷排出電極の頂面と接する絶縁層の面を第3面、電荷蓄積用電極と対向する酸化物半導体層の部分と接する絶縁層の面を第2面としたとき、第2開口部の側面は、第3面から第2面に向かって広がる傾斜を有する[C16]又は[C17]に記載の撮像素子。
[C19]《第1電極、電荷蓄積用電極及び電荷排出電極の電位の制御》
半導体基板に設けられ、駆動回路を有する制御部を更に備えており、
第1電極、電荷蓄積用電極及び電荷排出電極は、駆動回路に接続されており、
電荷蓄積期間において、駆動回路から、第1電極に電位V11が印加され、電荷蓄積用電極に電位V31が印加され、電荷排出電極に電位V61が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に電荷が蓄積され、
電荷転送期間において、駆動回路から、第1電極に電位V12が印加され、電荷蓄積用電極に電位V32が印加され、電荷排出電極に電位V62が印加され、酸化物半導体層(あるいは、酸化物半導体層、保護層及び光電変換層)に蓄積された電荷が第1電極を介して制御部に読み出される[C16]乃至[C18]のいずれか1項に記載の撮像素子。
但し、第1電極の電位は第2電極の電位よりも高く、
V61>V11、且つ、V62<V12
である。
[C20]《電荷蓄積用電極セグメント》
電荷蓄積用電極は、複数の電荷蓄積用電極セグメントから構成されている[A01]乃至[C19]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C21]第1電極の電位が第2電極の電位よりも高い場合、電荷転送期間において、第1電極に最も近い所に位置する電荷蓄積用電極セグメントに印加される電位は、第1電極に最も遠い所に位置する電荷蓄積用電極セグメントに印加される電位よりも高く、
第1電極の電位が第2電極の電位よりも低い場合、電荷転送期間において、第1電極に最も近い所に位置する電荷蓄積用電極セグメントに印加される電位は、第1電極に最も遠い所に位置する電荷蓄積用電極セグメントに印加される電位よりも低い[C20]に記載の撮像素子。
[C22]半導体基板には、制御部を構成する少なくとも浮遊拡散層及び増幅トランジスタが設けられており、
第1電極は、浮遊拡散層及び増幅トランジスタのゲート部に接続されている[A01]乃至[C21]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C23]半導体基板には、更に、制御部を構成するリセット・トランジスタ及び選択トランジスタが設けられており、
浮遊拡散層は、リセット・トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
増幅トランジスタの一方のソース/ドレイン領域は、選択トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、選択トランジスタの他方のソース/ドレイン領域は信号線に接続されている[C22]に記載の撮像素子。
[C24]電荷蓄積用電極の大きさは第1電極よりも大きい[A01]乃至[C23]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C25]第2電極側から光が入射し、第2電極より光入射側には遮光層が形成されている[A01]乃至[C24]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C26]第2電極側から光が入射し、第1電極には光が入射しない[A01]乃至[C24]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C27]第2電極より光入射側であって、第1電極の上方には遮光層が形成されている[C26]に記載の撮像素子。
[C28]電荷蓄積用電極及び第2電極の上方にはオンチップ・マイクロ・レンズが設けられており、
オンチップ・マイクロ・レンズに入射する光は、電荷蓄積用電極に集光される[C26]に記載の撮像素子。
[C29]《撮像素子:第1構成》
光電変換部は、N個(但し、N≧2)の光電変換部セグメントから構成されており、
酸化物半導体層、保護層及び光電変換層は、N個の光電変換層セグメントから構成されており、
絶縁層は、N個の絶縁層セグメントから構成されており、
電荷蓄積用電極は、N個の電荷蓄積用電極セグメントから構成されており、
第n番目(但し、n=1,2,3・・・N)の光電変換部セグメントは、第n番目の電荷蓄積用電極セグメント、第n番目の絶縁層セグメント及び第n番目の光電変換層セグメントから構成されており、
nの値が大きい光電変換部セグメントほど、第1電極から離れて位置し、
第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、絶縁層セグメントの厚さが、漸次、変化している[A01]乃至[C28]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C30]《撮像素子:第2構成》
光電変換部は、N個(但し、N≧2)の光電変換部セグメントから構成されており、
酸化物半導体層、保護層及び光電変換層は、N個の光電変換層セグメントから構成されており、
絶縁層は、N個の絶縁層セグメントから構成されており、
電荷蓄積用電極は、N個の電荷蓄積用電極セグメントから構成されており、
第n番目(但し、n=1,2,3・・・N)の光電変換部セグメントは、第n番目の電荷蓄積用電極セグメント、第n番目の絶縁層セグメント及び第n番目の光電変換層セグメントから構成されており、
nの値が大きい光電変換部セグメントほど、第1電極から離れて位置し、
第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、光電変換層セグメントの厚さが、漸次、変化している[A01]乃至[C28]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C31]《撮像素子:第3構成》
光電変換部は、N個(但し、N≧2)の光電変換部セグメントから構成されており、
酸化物半導体層、保護層及び光電変換層は、N個の光電変換層セグメントから構成されており、
絶縁層は、N個の絶縁層セグメントから構成されており、
電荷蓄積用電極は、N個の電荷蓄積用電極セグメントから構成されており、
第n番目(但し、n=1,2,3・・・N)の光電変換部セグメントは、第n番目の電荷蓄積用電極セグメント、第n番目の絶縁層セグメント及び第n番目の光電変換層セグメントから構成されており、
nの値が大きい光電変換部セグメントほど、第1電極から離れて位置し、
隣接する光電変換部セグメントにおいて、絶縁層セグメントを構成する材料が異なる[A01]乃至[C28]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C32]《撮像素子:第4構成》
光電変換部は、N個(但し、N≧2)の光電変換部セグメントから構成されており、
酸化物半導体層、保護層及び光電変換層は、N個の光電変換層セグメントから構成されており、
絶縁層は、N個の絶縁層セグメントから構成されており、
電荷蓄積用電極は、相互に離間されて配置された、N個の電荷蓄積用電極セグメントから構成されており、
第n番目(但し、n=1,2,3・・・N)の光電変換部セグメントは、第n番目の電荷蓄積用電極セグメント、第n番目の絶縁層セグメント及び第n番目の光電変換層セグメントから構成されており、
nの値が大きい光電変換部セグメントほど、第1電極から離れて位置し、
隣接する光電変換部セグメントにおいて、電荷蓄積用電極セグメントを構成する材料が異なる[A01]乃至[C28]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C33]《撮像素子:第5構成》
光電変換部は、N個(但し、N≧2)の光電変換部セグメントから構成されており、
酸化物半導体層、保護層及び光電変換層は、N個の光電変換層セグメントから構成されており、
絶縁層は、N個の絶縁層セグメントから構成されており、
電荷蓄積用電極は、相互に離間されて配置された、N個の電荷蓄積用電極セグメントから構成されており、
第n番目(但し、n=1,2,3・・・N)の光電変換部セグメントは、第n番目の電荷蓄積用電極セグメント、第n番目の絶縁層セグメント及び第n番目の光電変換層セグメントから構成されており、
nの値が大きい光電変換部セグメントほど、第1電極から離れて位置し、
第1番目の光電変換部セグメントから第N番目の光電変換部セグメントに亙り、電荷蓄積用電極セグメントの面積が、漸次、小さくなっている[A01]乃至[C28]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[C34]《撮像素子:第6構成》
電荷蓄積用電極と絶縁層と酸化物半導体層と光電変換層の積層方向をZ方向、第1電極から離れる方向をX方向としたとき、YZ仮想平面で電荷蓄積用電極と絶縁層と酸化物半導体層と光電変換層が積層された積層部分を切断したときの積層部分の断面積は、第1電極からの距離に依存して変化する[A01]乃至[C28]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[D01]《積層型撮像素子》
[A01]乃至[C34]のいずれか1項に記載の撮像素子を少なくとも1つ有する積層型撮像素子。
[E01]《固体撮像装置:第1の態様》
[A01]乃至[C34]のいずれか1項に記載の撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置。
[E02]《固体撮像装置:第2の態様》
[D01]に記載の積層型撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置。
[F01]《固体撮像装置:第1構成》
第1電極、光電変換層及び第2電極が積層されて成る光電変換部を備えており、
光電変換部は、[A01]乃至[C34]のいずれか1項に記載の撮像素子を、複数、有しており、
複数の撮像素子から撮像素子ブロックが構成されており、
撮像素子ブロックを構成する複数の撮像素子において第1電極が共有されている固体撮像装置。
[F02]《固体撮像装置:第2構成》
[C01]に記載の積層型撮像素子を、複数、有しており、
複数の撮像素子から撮像素子ブロックが構成されており、
撮像素子ブロックを構成する複数の撮像素子において第1電極が共有されている固体撮像装置。
[F03]1つの撮像素子の上方に1つのオンチップ・マイクロ・レンズが配設されている[F01]又は[F02]に記載の固体撮像装置。
[F04]2つの撮像素子から撮像素子ブロックが構成されており、
撮像素子ブロックの上方に1つのオンチップ・マイクロ・レンズが配設されている[F01]又は[F02]に記載の固体撮像装置。
[F05]複数の撮像素子に対して1つの浮遊拡散層が設けられている[F01]乃至[F04]のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
[F06]第1電極は、各撮像素子の電荷蓄積用電極に隣接して配置されている[F01]乃至[F05]のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
[F07]第1電極が、複数の撮像素子の一部の電荷蓄積用電極に隣接して配置されており、複数の撮像素子の残りの電荷蓄積用電極とは隣接して配置されてはいない[F01]乃至[F06]のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
[F08]撮像素子を構成する電荷蓄積用電極と撮像素子を構成する電荷蓄積用電極との間の距離は、第1電極に隣接した撮像素子における第1電極と電荷蓄積用電極との間の距離よりも長い[F07]に記載の固体撮像装置。
[G01]《固体撮像装置の駆動方法》
第1電極、光電変換層及び第2電極が積層されて成る光電変換部を備えており、
光電変換部は、更に、第1電極と離間して配置され、且つ、絶縁層を介して光電変換層と対向して配置された電荷蓄積用電極を備えており、
第2電極側から光が入射し、第1電極には光が入射しない構造を有する撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置の駆動方法であって、
全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層に電荷を蓄積しながら、第1電極における電荷を系外に排出し、その後、
全ての撮像素子において、一斉に、酸化物半導体層に蓄積された電荷を第1電極に転送し、転送完了後、順次、各撮像素子において第1電極に転送された電荷を読み出す、
各工程を繰り返す固体撮像装置の駆動方法。
【符号の説明】
【0268】
10,10R,10G,10B・・・撮像素子(積層型撮像素子、第1撮像素子)、11・・・第2撮像素子、12・・・第3撮像素子、13・・・層間絶縁層より下方に位置する各種の撮像素子構成要素、14・・・オンチップ・マイクロ・レンズ(OCL)、15・・・遮光層、16R,16G,16B・・・カラーフィルタ層、21・・・第1電極、22・・・第2電極、23・・・光電変換積層体、23A・・・光電変換層、23B・・・酸化膜、23C・・・酸化物半導体層、24・・・電荷蓄積用電極、25・・・転送制御用電極(電荷転送電極)、26・・・電荷排出電極、27・・・下部電荷移動制御電極(下方・電荷移動制御電極)、27A・・・接続孔、27B・・・パッド部、28・・・上部電荷移動制御電極(上方・電荷移動制御電極)、41・・・第2撮像素子を構成するn型半導体領域、43・・・第3撮像素子を構成するn型半導体領域、42,44,73・・・p+層、45,46・・・転送トランジスタのゲート部、51・・・リセット・トランジスタTR1rstのゲート部、51A・・・リセット・トランジスタTR1rstのチャネル形成領域、51B,51C・・・リセット・トランジスタTR1rstのソース/ドレイン領域、52・・・増幅トランジスタTR1ampのゲート部、52A・・・増幅トランジスタTR1ampのチャネル形成領域、52B,52C・・・増幅トランジスタTR1ampのソース/ドレイン領域、53・・・選択トランジスタTR1selのゲート部、53A・・・選択トランジスタTR1selのチャネル形成領域、53B,53C・・・選択トランジスタTR1selのソース/ドレイン領域、61・・・コンタクトホール部、62・・・配線層、63,64,68A・・・パッド部、65,68B・・・接続孔、66,67,69・・・接続部、70・・・半導体基板、70A・・・半導体基板の第1面(おもて面)、70B・・・半導体基板の第2面(裏面)、71・・・素子分離領域、72,75・・・絶縁材料膜、74・・・HfO2膜、76,81・・・層間絶縁層、82・・・絶縁層、82A・・・隣接する撮像素子の間の領域(領域-a)、83・・・保護材料層、84・・・開口部、85・・・第2開口部、100・・・固体撮像装置、101・・・積層型撮像素子、111・・・撮像領域、112・・・垂直駆動回路、113・・・カラム信号処理回路、114・・・水平駆動回路、115・・・出力回路、116・・・駆動制御回路、117・・・信号線(データ出力線)、118・・・水平信号線、200・・・電子機器(カメラ)、201・・・固体撮像装置、210・・・光学レンズ、211・・・シャッタ装置、212・・・駆動回路、213・・・信号処理回路、FD1,FD2,FD3,45C,46C・・・浮遊拡散層、TR1trs,TR2trs,TR3trs・・・転送トランジスタ、TR1rst,TR2rst,TR3rst・・・リセット・トランジスタ、TR1amp,TR2amp,TR3amp・・・増幅トランジスタ、TR1sel,TR3sel,TR3sel・・・選択トランジスタ、VDD・・・電源、RST1,RST2,RST3・・・リセット線、SEL1,SEL2,SEL3・・・選択線、117,VSL,VSL1,VSL2,VSL3・・・信号線(データ出力線)、TG2,TG3・・・転送ゲート線、VOA,VOB,VOT,VOU・・・配線