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特許7407712光電変換素子、固体撮像装置及び電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】光電変換素子、固体撮像装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20231222BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20231222BHJP
   H10K 30/81 20230101ALI20231222BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20231222BHJP
【FI】
H10K30/60
H01L27/146 E
H10K30/81
H10K39/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020534663
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2019029804
(87)【国際公開番号】W WO2020027117
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018142985
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】平田 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】定榮 正大
(72)【発明者】
【氏名】村田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】坂東 雅史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 涼介
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016570(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066256(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0093932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0240123(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0102450(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0239271(US,A1)
【文献】特開2002-231054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-39/38
H01L 31/08-31/119
H01L 27/144-27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、
更に、第3電極を備え、
該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、
該仕事関数調整層が、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含み、
前記酸化物中の、前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の含有量と前記モリブデンの含有量との比は、6.7:3.3~7.3:2.7である、光電変換素子。
【請求項2】
前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素が、周期律表の第12族の金属元素、周期律表の第13族の金属元素又は周期律表の第14族の金属元素である、請求項に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素がインジウムである、請求項に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記仕事関数調整層と前記光電変換層との間に、p型バッファ層を更に備える、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記光電変換層と前記酸化物半導体層との間に、n型バッファ層を更に備える、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記第1電極と前記仕事関数調整層との間に、補助層を更に備える、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項7】
1次元又は2次元に配列された複数の画素毎に、
少なくとも、請求項に記載の1又は複数の光電変換素子と、半導体基板とが積層された、固体撮像装置。
【請求項8】
請求項に記載の固体撮像装置を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光電変換素子、固体撮像装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の超小型化及び高画質化を実現するために、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像装置の研究が盛んに行われている。
【0003】
例えば、光電変換層を間に対向配置された第1電極および第2電極のうち、光入射側とは反対側に配置された第2電極側に、第2電極とは離間して配置され、且つ、絶縁層を介して光電変換層に対向して配置された電荷蓄積用の電極を設けた撮像素子が開示されている(特許文献2を参照。)。この撮像素子では、光電変換によって生成した電荷を光電変換層内に蓄積することができ、露光開始時に電荷蓄積部を完全空乏化することが可能となる。よって、撮像画質の低下を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-157816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案された技術では、画質の更なる向上が図れないおそれがある。
【0006】
そこで、本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画質を更に向上させることを実現できる光電変換素子、固体撮像装置及び電子装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の目的を解決するために鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、画質を飛躍的に向上させることに成功し、本技術を完成するに至った。
【0008】
本技術では、第1の側面として、まず、第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、
更に、第3電極を備え、
該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、
該仕事関数調整層が、化学量論的組成を満たす酸素の量よりも多い酸素の量を含む、光電変換素子を提供する。
【0009】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記仕事関数調整層が、6価のモリブデン酸化物と、5価のモリブデン酸化物と、4価のモリブデン酸化物と、を含んでよく、
該6価のモリブデン酸化物の量が、該5価のモリブデン酸化物と該4価のモリブデン酸化物との合計量よりも多くてよい。
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記仕事関数調整層が非化学量論的組成のモリブデン酸化物を含んでよい。
【0010】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記仕事関数調整層が、6価のタングステン酸化物と、5価のタングステン酸化物と、4価のタングステン酸化物と、を含んでよく、
該6価のタングステン酸化物の量が、該5価のタングステン酸化物と該4価のタングステン酸化物との合計量よりも多くてよい。
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記仕事関数調整層が非化学量論的組成のタングステン酸化物を含んでよい。
【0011】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記仕事関数調整層が、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含んでよい。
【0012】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記酸化物に含有される前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の量が、前記酸化物に含有される前記モリブデンの量に対して多くてよい。
【0013】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素が、周期律表の第12族の金属元素、周期律表の第13族の金属元素又は周期律表の第14族の金属元素でよい。
【0014】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素がインジウムでよい。
【0015】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記仕事関数調整層と前記光電変換層との間に、p型バッファ層を更に備えてよい。
【0016】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記光電変換層と前記酸化物半導体層との間に、n型バッファ層を更に備えてよい。
【0017】
本技術に係る第1の側面の光電変換素子において、前記第1電極と前記仕事関数調整層との間に、補助層を更に備えていてよい。
【0018】
また、本技術では、第2の側面として、第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、
更に、第3電極を備え、
該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、
該仕事関数調整層が、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含む、光電変換素子を提供する。
【0019】
本技術に係る第2の側面の光電変換素子において、前記酸化物に含有される前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の量が、前記酸化物に含有される前記モリブデンの量に対して多くてよい。
【0020】
本技術に係る第2の側面の光電変換素子において、前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素が、周期律表の第12族の金属元素、周期律表の第13族の金属元素又は周期律表の第14族の金属元素でよい。
【0021】
本技術に係る第2の側面の光電変換素子において、前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素がインジウムでよい。
【0022】
さらに、本技術では、1次元又は2次元に配列された複数の画素毎に、
少なくとも、1又は複数の本技術に係る第1の側面又は第2の側面の光電変換素子と、半導体基板とが積層された、固体撮像装置を提供する。
【0023】
さらに、本技術では、本技術に係る固体撮像装置を備える、電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本技術によれば、画質を向上させることができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本技術を適用した第1の実施形態の光電変換素子の構成例を示す断面図である。
図2図2は、本技術を適用した第1の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
図3図3は、本技術を適用した第1の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
図4図4は、本技術を適用した第1の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
図5図5は、本技術を適用した第2の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
図6図6は、本技術を適用した第3の実施形態の光電変換素子の構成例を示す断面図である。
図7図7は、本技術を適用した第3の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
図8図8は、本技術を適用した第3の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
図9図9は、本技術を適用した第3の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
図10図10は、本技術を適用した第4の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
図11図11は、本技術を適用した第5の実施形態の固体撮像装置を構成する撮像素子の断面模式図である。
図12図12は、図11に示した光電変換素子の断面模式図である。
図13図13は、図11に示した撮像素子を画素として用いた、本技術に係る第5の実施形態の固体撮像装置の構成を表すブロック図である。
図14図14は、本技術を適用した固体撮像装置の使用例を示す図である。
図15図15は、本技術を適用した電子装置の一例の機能ブロック図である。
図16図16は、内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図17図17は、カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
図18図18は、車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図19図19は、車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0027】
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本技術の概要
2.第1の実施形態(光電変換素子の例1)
3.第2の実施形態(光電変換素子の例2)
4.第3の実施形態(光電変換素子の例3)
5.第4の実施形態(光電変換素子の例4)
6.第5の実施形態(固体撮像装置の例)
7.第6の実施形態(電子装置の例)
8.本技術を適用した固体撮像装置の使用例
9.内視鏡手術システムへの応用例
10.移動体への応用例
【0028】
<1.本技術の概要>
まず、本技術の概要について説明する。
【0029】
画質(撮像画質)の低下を抑制し得る構成として、電荷の蓄積・転送機能を備えた酸化物半導体層(電荷蓄積層)を有する撮像素子(例えば、有機光電変換素子)に関する技術がある。酸化物半導体層として高移動度のn型半導体である金属酸化物を用いたとき、優れた電荷の蓄積・転送機能が期待される。
【0030】
しかしながら、酸化物半導体層としてn型半導体を用いたとき、有機フォトダイオード(OPD)(有機光電変換層)の暗電流を抑制しつつ、有機フォトダイオード(OPD)にて光照射により生成した電子を速やかに酸化物半導体層へ転送・蓄積することが必要である。したがって、本技術では、仕事関数調整層を導入した構造を採用し、仕事関数調整層(WCL)には、モリブデン酸化物(MoO)やタングステン酸化物(WO)等の無機化合物を含むこととする。
【0031】
ところで、仕事関数調整として用いられる無機化合物(モリブデン酸化物(MoO)やタングステン酸化物(WO)等)において、金属モリブデン(Mo)やタングステン(W)と酸素(O)との結合状態によっては、外界の水などと反応して、水素(H)を放出することがあり、その水素(H)が酸化物半導体層の特性変動を引き起こすことがある。より具体的には、例えば、以下のような反応が起こり、水素(H)が発生する。
(反応式)
MoO(4価)+2HO→HMoO +3H++2e
【0032】
本技術は、以上の状況下に鑑みてなされたものである。本技術は、酸化物半導体層を備え、上部電極と有機光電変換層との間に仕事関数調整層(WCL)を配することを特徴とした、光電変換素子及び固体撮像装置である。仕事関数調整層(WCL)は、電荷蓄積用電極(蓄積電極、第3電極)の仕事関数(WF)よりも大きな仕事関数(WF)を有する無機化合物である、モリブデン(Mo)酸化物やタングステン(W)酸化物を含んでなる構成である。
【0033】
本技術によれば、仕事関数調整層(WCL)は、実効的な電極として振る舞い、光電変換層(例えば有機フォトダイオード(OPD)(有機光電変換層))内の内部電界を変化させ、暗電流を抑制し、光照射により生成した電子を速やかに酸化物半導体層転送・蓄積することが可能となり、画質(撮像画質)の向上を実現することができる。そして、仕事関数調整層は、主成分として、6価のモリブデン(Mo)や6価のタングステン(W)を含んでなるため、後工程で相互作用する可能性がある水分に触れた際に、水素を発生することがなく、酸化物半導体層の特性に影響を与えることがない。
【0034】
以下、本技術に係る実施形態の光電変換素子、固体撮像装置及び電子装置について、詳細に説明をする。
【0035】
<2.第1の実施形態(光電変換素子の例1)>
本技術に係る第1の実施形態(光電変換素子の例1)の光電変換素子は、第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、更に、第3電極を備え、該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、該仕事関数調整層が、化学量論的組成を満たす酸素の量よりも多い酸素の量を含む、光電変換素子である。
【0036】
本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子によれば、画質(撮像画質)を向上させることができ、より詳しくは、仕事関数調整層が化学量論的組成を満たす酸素の量よりも多い酸素の量を含む化学量論的組成よりも過剰に酸素を含むことで、仕事関数調整層で発生した酸素欠損を補填することができ、その結果、例えば、4価/5価のモリブデン(Mo)酸化物やタングステン(W)酸化物等の発生を抑制することができ、酸化物半導体層の特性に影響を与えることがなく、画質(撮像画質)を安定させて、画質(撮像画質)を向上させることができる。
【0037】
本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子において、仕事関数調整層が、6価のモリブデン酸化物と、5価のモリブデン酸化物と、4価のモリブデン酸化物と、を含むことが好ましく、6価のモリブデン酸化物の量が、5価のモリブデン酸化物と4価のモリブデン酸化物との合計量よりも多いことが好ましい。また、本技術に係る第1の実施形態において、仕事関数調整層が非化学量論的組成のモリブデン酸化物を含むことが好ましい。6価のモリブデン酸化物や非化学量論的組成のモリブデン酸化物は、これ以上の酸化が進行することがないため、水素が発生することがなく、画質(撮像画質)の安定、向上等に寄与する。
【0038】
さらに、本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子において、仕事関数調整層が、6価のタングステン酸化物と、5価のタングステン酸化物と、4価のタングステン酸化物と、を含むことが好ましく、6価のタングステン酸化物の量が、5価のタングステン酸化物と4価のタングステン酸化物との合計量よりも多いことが好ましい。また、本技術に係る第1の実施形態において、仕事関数調整層が非化学量論的組成のタングステン酸化物を含むことが好ましい。6価のタングステン酸化物や非化学量論的組成のタングステン酸化物は、これ以上の酸化が進行することがないため、水素が発生することがなく、画質(撮像画質)の安定、向上等に寄与する。
【0039】
本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子は、仕事関数調整層と光電変換層との間に、p型バッファ層を更に備えてよく、光電変換層と酸化物半導体層との間に、n型バッファ層を更に備えもよい。
【0040】
図1に、本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子の一例である光電変換素子100を示す。図1は、光電変換素子100の断面図である。
【0041】
図1に示されるように、光電変換素子100は、第1電極101と、仕事関数調整層108と、p型バッファ層109と、光電変換層102と、n型バッファ層103と、酸化物半導体層104と、第2電極107と、をこの順で少なくとも備える。光電変換素子100は、更に、第3電極105を備え、第3電極105は、第2電極107と離間して配され、絶縁層106を介して光電変換層102(酸化物半導体層104)と対向して形成されている。また、第2電極107は、第2電極105と、絶縁層106を介して対抗配置され、かつ、第1絶縁層106に設けられた開口を介して光電変換層102(酸化物半導体層104)と電気的に接続されている。
【0042】
仕事関数調整層108は、上記で説明をしたとおり、化学量論的組成を満たす酸素の量よりも多い酸素の量を含む。仕事関数調整層108には、一つ目の例として、6価のモリブデン酸化物と、5価のモリブデン酸化物と、4価のモリブデン酸化物とが含まれて、6価のモリブデン酸化物の量が、5価のモリブデン酸化物と4価のモリブデン酸化物との合計量よりも多い。仕事関数調整層108には、二つ目の例として、6価のタングステン酸化物と、5価のタングステン酸化物と、4価のタングステン酸化物とが含まれて、6価のタングステン酸化物の量が、5価のタングステン酸化物と4価のタングステン酸化物との合計量よりも多い。仕事関数調整層108には、三つ目の例として、6価のモリブデン酸化物と、5価のモリブデン酸化物と、4価のモリブデン酸化物と、6価のタングステン酸化物と、5価のタングステン酸化物と、4価のタングステン酸化物とが含まれて、6価のモリブデン酸化物と6価のタングステン酸化物との合計量が、5価のモリブデン酸化物と4価のモリブデン酸化物と5価のタングステン酸化物と4価のタングステン酸化物との合計量よりも多い。
【0043】
仕事関数調整層108は、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含んでもよい。仕事関数調整層108に、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物が含まれることで、画質(撮像画質)を向上させることができる。より詳しくは、仕事関数調整層108に含まれるモリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物は、モリブデン酸化物(例えば、化学量論的組成のモリブデン酸化物や、価数の低い(例えば、4価や5価)モリブデンのみから形成される酸化物)と比較して化学的に安定となり、そのため、後工程で相互作用する可能性がある水分に触れた際に、水素を発生することがなく、酸化物半導体層の特性に影響を与えない。また、酸化物にモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素が含有されても、光電変換素子(仕事関数調整層)の特性を損なうことはない。
【0044】
仕事関数調整層108において、酸化物に含有されるモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の量が、酸化物に含有されるモリブデンの量に対して多いことが好ましく、この好ましい態様により、酸化物は、少なくとも1種の金属元素がモリブデンを囲むように形成されやすくなり、化学的により安定な構造となる。そして、この化学的により安定な酸化物は、モリブデン(Mo)の酸化によって引き起こされる水素の発生をより抑制することができる。
【0045】
酸化物中の、モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の含有量とモリブデンの含有量との比(含有量比)は、モル比(モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素のモル:モリブデンのモル)で、随意でよいが、6.7:3.3~7.3:2.7であることが好ましく、7:3であることがより好ましい。好適な酸化物としては、例えば、インジウム(In)とモリブデン(Mo)とのモル比は7:3(In:Mo)である。なお、酸化物中のインジム(In)の含有量が多すぎると、エネルギーレベルが不適格になる場合があり、インジム(In)の含有量が少な過ぎると、化学的に安定な効果が弱まる場合がある。したがって、エネルギーレベルと化学的に安定な効果は、トレードオフの関係と考えられる。
【0046】
仕事関数調整層108において、モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素は、周期律表の第12族の金属元素、周期律表の第13族の金属元素又は周期律表の第14族の金属元素であることが好ましい。周期律表の第12族の金属元素としては、例えば、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)が挙げられる。周期律表の第13族の金属元素としては、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)が挙げられ、インジウム(In)が好適である。そして、好適な酸化物としては、例えば、電子親和力の大きいInMoOx(IMO)が挙げられ、そして、InMoOx(IMO)中の酸素の量を多くする(酸素分圧を高くする。)と、電子親和力はより大きくなり、仕事関数調整層としての機能をより果たしやすくなる。周期律表の第14族の金属元素としては、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)が挙げられる。
【0047】
酸化物半導体層104は、酸化物半導体材料を含んで構成されていてよい。酸化物半導体材料としては、例えば、IGZO(In-Ga-Zn-O系酸化物半導体),ZTO(Zn-Sn-O系酸化物半導体),IGZTO(In-Ga-Zn-Sn-O系酸化物半導体)、GTO(Ga-Sn-O系酸化物半導体)及びIGO(In-Ga-O系酸化物半導体)が挙げられる。酸化物半導体層は、上記酸化物半導体材料を少なくとも1種用いることが好ましく、なかでもIGZOが好適に用いられる。また、酸化物半導体層104を構成する材料として、例えば、遷移金属ダイカルコゲナイド;シリコンカーバイド;ダイヤモンド;グラフェン;カーボンナノチューブ;縮合多環炭化水素化合物や縮合複素環化合物等の有機半導体材料を挙げることができる。
【0048】
酸化物半導体層104の厚みは、例えば、30nm以上200nm以下であり、好ましくは60nm以上150nm以下である。
【0049】
酸化物半導体層104は、光電変換層102内で発生した信号電荷を蓄積すると共に、第2電極(読み出し電極)107へ転送するためのものである。酸化物半導体層104は、光電変換層102よりも電荷の移動度が高く、かつ、バンドギャップが大きな材料を用いて形成されていることが好ましい。これにより、例えば、電荷の転送速度を向上させることが可能になる共に、第2電極(読み出し電極)107から酸化物半導体層104への正孔の注入が抑制される。
【0050】
光電変換層102は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、例えば、400nm以上2500nm以下の波長域の光を吸収した際に生じる励起子が電子と正孔とに分離する場を提供するものである。光電変換層15の厚みは、例えば、100nm以上1000nm以下であり、好ましくは300nm以上800nm以下である。
【0051】
光電変換層102を構成する材料としては、例えば、有機系材料や無機系材料を挙げることができる。
【0052】
光電変換層102が有機系材料から構成される場合、光電変換層を以下((1)~(4))のような構成にすることができる。
【0053】
(1)p型有機半導体から構成する。
(2)n型有機半導体から構成する。
(3)p型有機半導体層/n型有機半導体層の積層構造から構成する。p型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)/n型有機半導体層の積層構造から構成する。p型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)の積層構造から構成する。n型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)の積層構造から構成する。
(4)p型有機半導体とn型有機半導体の混合(バルクヘテロ構造)から構成する。
の4態様のいずれかとすることができる。但し、積層順は任意に入れ替えた構成とすることができる。
【0054】
p型有機半導体として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、キナクリドン誘導体、チオフェン誘導体、チエノチオフェン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体、ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、トリアリルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピセン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、サブポルフィラジン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリベンゾチアジアゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0055】
n型有機半導体として、フラーレン及びフラーレン誘導体〈例えば、C60や、C70,C74等のフラーレン(高次フラーレン)、内包フラーレン等)又はフラーレン誘導体(例えば、フラーレンフッ化物やPCBMフラーレン化合物、フラーレン多量体等)〉、p型有機半導体よりもHOMO及びLUMOが大きい(深い)有機半導体、透明な無機金属酸化物を挙げることができる。n型有機半導体として、具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する複素環化合物、例えば、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、イソキノリン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、フェナントロリン誘導体、テトラゾール誘導体、ピラゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、サブポルフィラジン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリベンゾチアジアゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等を分子骨格の一部に有する有機分子、有機金属錯体やサブフタロシアニン誘導体を挙げることができる。フラーレン誘導体に含まれる基等として、ハロゲン原子;直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはフェニル基;直鎖若しくは縮環した芳香族化合物を有する基;ハロゲン化物を有する基;パーシャルフルオロアルキル基;パーフルオロアルキル基;シリルアルキル基;シリルアルコキシ基;アリールシリル基;アリールスルファニル基;アルキルスルファニル基;アリールスルホニル基;アルキルスルホニル基;アリールスルフィド基;アルキルスルフィド基;アミノ基;アルキルアミノ基;アリールアミノ基;ヒドロキシ基;アルコキシ基;アシルアミノ基;アシルオキシ基;カルボニル基;カルボキシ基;カルボキソアミド基;カルボアルコキシ基;アシル基;スルホニル基;シアノ基;ニトロ基;カルコゲン化物を有する基;ホスフィン基;ホスホン基;これらの誘導体を挙げることができる。有機系材料から構成された光電変換層(『有機光電変換層』と称する場合がある。)の厚さは、限定するものではないが、例えば、1×10-8m乃至5×10-7m、好ましくは2.5×10-8m乃至3×10-7m、より好ましくは2.5×10-8m乃至2×10-7m、一層好ましくは1×10-7m乃至1.8×10-7mを例示することができる。
【0056】
なお、有機半導体は、p型、n型と分類されることが多いが、p型とは正孔を輸送し易いという意味であり、n型とは電子を輸送し易いという意味であり、無機半導体のように熱励起の多数キャリアとして正孔又は電子を有しているという解釈に限定されない。
【0057】
あるいは又、緑色の波長の光を光電変換する有機光電変換層を構成する材料として、例えば、ローダミン系色素、メラシアニン系色素、キナクリドン誘導体、サブフタロシアニン系色素(サブフタロシアニン誘導体)等を挙げることができるし、青色の光を光電変換する有機光電変換層を構成する材料として、例えば、クマリン酸色素、トリス-8-ヒドリキシキノリアルミニウム(Alq3)、メラシアニン系色素等を挙げることができるし、赤色の光を光電変換する有機光電変換層を構成する材料として、例えば、フタロシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素(サブフタロシアニン誘導体)を挙げることができる。
【0058】
あるいは又、光電変換層を構成する無機系材料として、結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、結晶セレン、アモルファスセレン、及び、カルコパライト系化合物であるCIGS(CuInGaSe)、CIS(CuInSe2)、CuInS2、CuAlS2、CuAlSe2、CuGaS2、CuGaSe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgInS2、AgInSe2、あるいは又、III-V族化合物であるGaAs、InP、AlGaAs、InGaP、AlGaInP、InGaAsP、更には、CdSe、CdS、In2Se3、In23、Bi2Se3、Bi23、ZnSe、ZnS、PbSe、PbS等の化合物半導体を挙げることができる。加えて、これらの材料から成る量子ドットを光電変換層に使用することも可能である。
【0059】
第2電極(読み出し電極)107及び第3電極(蓄積電極)105は、透明導電材料からなる透明電極が好ましい。第2電極(読み出し電極)107及び第3電極(蓄積電極)105のそれぞれは、同じ材料から構成されてもよいし、異なる材料から構成されてもよい。第2電極(読み出し電極)107及び第3電極(蓄積電極)105のそれぞれは、スパッタリング法又は化学蒸着法(CVD)によって形成することができる。なお、図1においては、転送電極は不図示であるが、光電変換素子100に転送電極が設けられるときは、第2電極(読み出し電極)107及び第3電極(蓄積電極)105と同様に、転送電極は、透明導電材料からなる透明電極が好ましい。そして、転送電極もスパッタリング法又は化学蒸着法(CVD)によって形成することができる。
【0060】
透明導電材料としては、例えば、酸化インジウム、インジウム-錫酸化物(ITO,Indium Tin Oxide、SnドープのIn23、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-亜鉛酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、酸化ガリウムにドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-ガリウム酸化物(IGO)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムとガリウムを添加したインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO、In-GaZnO4)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムと錫を添加したインジウム-錫-亜鉛酸化物(ITZO)、IFO(FドープのIn23)、酸化錫(SnO2)、ATO(SbドープのSnO2)、FTO(FドープのSnO2)、酸化亜鉛(他元素をドープしたZnOを含む)、酸化亜鉛にドーパントとしてアルミニウムを添加したアルミニウム-亜鉛酸化物(AZO)、酸化亜鉛にドーパントとしてガリウムを添加したガリウム-亜鉛酸化物(GZO)、酸化チタン(TiO2)、酸化チタンにドーパントとしてニオブ(Nb)を添加したニオブ-チタン酸化物(TNO)、酸化アンチモン、スピネル型酸化物、YbFe24構造を有する酸化物を例示することができる。
【0061】
第1電極101は、例えば、酸化インジウム錫膜、酸化インジウム亜鉛膜等の透明導電膜等で形成される。
【0062】
絶縁層106の材料としては、酸化ケイ素系材料、窒化ケイ素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)等の金属酸化物高誘電絶縁材料等の無機系絶縁材料が挙げられる。この他、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤)、ノボラック型フェノール樹脂、フッ素系樹脂、オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に制御電極と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。なお、酸化ケイ素系材料としては、酸化シリコン(SiO )、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマーおよびベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボンおよび有機SOG)が挙げられる。
【0063】
p型バッファ層109は、光電変換層102で生じた正孔の第1電極101への供給を促進するためのものであり、例えば、酸化モリブデン(MoO),酸化ニッケル(NiO)又は酸化バナジウム(V)等により構成されていてよい。PEDOT(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))、TPD(N,N'-Bis(3-methylphenyl)-N,N'-diphenylbenzidine)、2T-NATA(4,4',4''-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン)等の有機材料によりp型バッファ層(正孔輸送層)を構成するようにしてもよい。
【0064】
n型バッファ層103は、光電変換層102で生じた電子の第2電極107への供給を促進するためのものであり、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)等により構成されていてよい。酸化チタンと酸化亜鉛とを積層させてn型バッファ層103を構成するようにしてもよい。また、n型バッファ層103は、高分子半導体材料、有機系材料、例えば、ピリジン、キノリン、アクリジン、インドール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、フェナントロリンのようなNを含む複素環を分子骨格の一部にする有機分子および有機金属錯体であって、更に可視光領域の吸収が少ない材料から構成されてもよい。
【0065】
本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子は、公知の方法、例えば、スパッタ法、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしてドライエッチング又はウェットエッチングする方法、湿式成膜法を用いて製造することができる。湿式成膜法としては、例えば、スピンコート法,浸漬法,キャスト法,スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法といった各種印刷法,スタンプ法,スプレー法,エアドクタコーター法,ブレードコーター法,ロッドコーター法,ナイフコーター法,スクイズコーター法,リバースロールコーター法,トランスファーロールコーター法,グラビアコーター法,キスコーター法,キャストコーター法,スプレーコーター法,スリットオリフィスコーター法,カレンダーコーター法といった各種コーティング法が挙げられる。
【0066】
以下、図2図4を用いて、本技術に係る第1の実施形態の光電変換層の製造方法を具体的に説明する。図2図4は、本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
【0067】
まず、図2を用いて、本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子の製造方法-1を説明する。
【0068】
図2(a)に示されるように、絶縁層206a上に酸化物半導体層204aが形成されている。酸化物半導体層204aの膜厚は1~100nmである。続いて、図2(b)に示されるように、絶縁層206b上の酸化物半導体層204b上に有機フォトダイオード(PD)層(有機光電変換層)202bが形成されている。有機フォトダイオード(PD)層202bの膜厚は10~500nmである。
【0069】
次に、図2(c)に示されるように、有機フォトダイオード(PD)層202c上に、モリブデン(Mo)酸化物から構成される仕事関数調整層208cを形成する。仕事関数調整層208cは、モリブデン6価(Mo6+)が主成分となっている。仕事関数調整層208cの膜厚は0.1~30nmである。なお、有機フォトダイオード(PD)層202cは、絶縁層206c上の酸化物半導体層204c上に形成されている。
【0070】
図2(d)に示されるように、モリブデン(Mo)酸化物から構成される仕事関数調整層208d上に上部透明電極層(第1電極)201dをスパッタで成膜する。この時、Mo酸化物中にスパッタダメージが入り、酸素欠損が生じるとともに、例えば、Mo6+がMo5+に還元されることを防ぐために低ダメージプロセスを選択する。その結果、モリブデン6価(Mo6+)が主成分である所望の膜(仕事関数調整層208d)が得られる。なお、仕事関数調整層208dは、有機フォトダイオード(PD)層202d上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層202dは、絶縁層206d上の酸化物半導体層204d上に形成されている。
【0071】
図3を用いて、本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子の製造方法-2を説明する。
【0072】
図3(a)に示されるように、絶縁層306a上に酸化物半導体層304aが形成されている。酸化物半導体層304aの膜厚は1~100nmである。続いて、図3(b)に示されるように、絶縁層306b上の酸化物半導体層304b上に有機フォトダイオード(PD)層(有機光電変換層)302bが形成されている。有機フォトダイオード(PD)層302bの膜厚は10~500nmである。
【0073】
次に、図3(c)に示されるように、有機フォトダイオード(PD)層302c上に、モリブデン(Mo)酸化物から構成される仕事関数調整層308cを形成する。仕事関数調整層308cは、モリブデン6価(Mo6+)が主成分となっている。仕事関数調整層308の膜厚は0.1~30nmである。なお、有機フォトダイオード(PD)層302cは、絶縁層306c上の酸化物半導体層304c上に形成されている。
【0074】
図3(d)に示されるように、モリブデン(Mo)酸化物から構成される仕事関数調整層308d上に上部透明電極層(第1電極)301dを蒸着で成膜する。上部透明電極層301dを下層に対してダメージレスな成膜手法を選択することで、Mo6+が還元されることを抑制し、モリブデン6価(Mo6+)が主成分である所望の膜(仕事関数調整層308d)が得られる。なお、仕事関数調整層308dは、有機フォトダイオード(PD)層302d上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層302dは、絶縁層306d上の酸化物半導体層304d上に形成されている。
【0075】
図4を用いて、本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子の製造方法-3を説明する。
【0076】
図4(a)に示されるように、絶縁層406a上に酸化物半導体層404aが形成されている。酸化物半導体層404aの膜厚は1~100nmである。続いて、図4(b)に示されるように、絶縁層406b上の酸化物半導体層404b上に有機フォトダイオード(PD)層(有機光電変換層)402bが形成されている。有機フォトダイオード(PD)層402bの膜厚は10~500nmである。
【0077】
次に、図4(c)に示されるように、有機フォトダイオード(PD)層402c上に、モリブデン(Mo)酸化物から構成される仕事関数調整層408cを形成する。仕事関数調整層408cは、モリブデン6価(Mo6+)が主成分となっている。仕事関数調整層408cの膜厚は0.1~30nmである。なお、有機フォトダイオード(PD)層402cは、絶縁層406c上の酸化物半導体層404c上に形成されている。
【0078】
図4(d)に示されるように、モリブデン(Mo)酸化物の化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む状態にするために、仕事関数調整層408dに対してラジカル酸化処理を行う。仕事関数調整層408dは、有機フォトダイオード(PD)層402d上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層402dは、絶縁層406d上の酸化物半導体層404d上に形成されている。
【0079】
最後に、図4(e)に示されるように、モリブデン(Mo)酸化物から構成される仕事関数調整層408e上に上部透明電極層(第1電極)401eをスパッタで成膜する。この時、モリブデン(Mo)酸化物は、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む状態になっているため、上部透明電極401eの成膜時に、モリブデン(Mo)酸化物内に発生する酸素欠損を補填することができ、その結果4価/5価のモリブデン(Mo)酸化物の発生を抑制することができる。
【0080】
その結果、モリブデン6価(Mo6+)が主成分である所望の膜(仕事関数調整層408e)が得られる。なお、仕事関数調整層408eは、有機フォトダイオード(PD)層402e上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層402eは、絶縁層406e上の酸化物半導体層404e上に形成されている。
【0081】
<3.第2の実施形態(光電変換素子の例2)>
本技術に係る第2の実施形態(光電変換素子の例2)の光電変換素子は、第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、更に、第3電極を備え、該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、該仕事関数調整層が、化学量論的組成を満たす酸素の量よりも多い酸素の量を含み、前記第1電極と前記仕事関数調整層との間に、補助層を更に備える、光電変換素子である。補助層は、上部に配される第1電極(上部電極)の作製のために用いられるスパッタ等による仕事関数調整層のダメージを防止する効果を有し、さらに仕事関数調整層の調整機能(電子的な機能)を損なわない効果を有する。この2つの効果が奏されれば、補助層は、任意の材料から構成されてよいが、例えば、非酸化物材料や酸化物材料から構成されてよく、例えば、HATCN、絶縁性を有さない酸化物材料(SiOの薄膜)等を採用することができる。
【0082】
本技術に係る第2の実施形態の光電変換素子によれば、画質(撮像画質)を向上させることができ、より詳しくは、仕事関数調整層が化学量論的組成を満たす酸素の量よりも多い酸素の量を含む化学量論的組成よりも過剰に酸素を含み、補助層が備えられることで、仕事関数調整層で発生した酸素欠損を補填することができ、その結果、例えば、4価/5価のモリブデン(Mo)酸化物やタングステン(W)酸化物等の発生を抑制することができ、酸化物半導体層の特性に影響を与えることがなく、画質(撮像画質)を更に安定させて、画質(撮像画質)を更に向上させることができる。
【0083】
本技術に係る第2の実施形態の光電変換素子において、仕事関数調整層が、6価のモリブデン酸化物と、5価のモリブデン酸化物と、4価のモリブデン酸化物と、を含むことが好ましく、6価のモリブデン酸化物の量が、5価のモリブデン酸化物と4価のモリブデン酸化物との合計量よりも多いことが好ましい。また、本技術に係る第2の実施形態において、仕事関数調整層が非化学量論的組成のモリブデン酸化物を含むことが好ましい。6価のモリブデン酸化物や非化学量論的組成のモリブデン酸化物は、これ以上の酸化が進行することがないため、水素が発生することがなく、画質(撮像画質)の安定、向上等に寄与する。
【0084】
さらに、本技術に係る第2の実施形態の光電変換素子において、仕事関数調整層が、6価のタングステン酸化物と、5価のタングステン酸化物と、4価のタングステン酸化物と、を含むことが好ましく、6価のタングステン酸化物の量が、5価のタングステン酸化物と4価のタングステン酸化物との合計量よりも多いことが好ましい。また、本技術に係る第2の実施形態において、仕事関数調整層が非化学量論的組成のタングステン酸化物を含むことが好ましい。6価のタングステン酸化物や非化学量論的組成のタングステン酸化物は、これ以上の酸化が進行することがないため、水素が発生することがなく、画質(撮像画質)の安定、向上等に寄与する。
【0085】
本技術に係る第2の実施形態の光電変換素子は、仕事関数調整層と光電変換層との間に、p型バッファ層を更に備えてよく、光電変換層と酸化物半導体層との間に、n型バッファ層を更に備えてもよい。
【0086】
本技術に係る第2の実施形態の光電変換素子は、公知の方法、例えば、スパッタ法、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしてドライエッチング又はウェットエッチングする方法、湿式成膜法を用いて製造することができる。湿式成膜法としては、例えば、スピンコート法,浸漬法,キャスト法,スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法といった各種印刷法,スタンプ法,スプレー法,エアドクタコーター法,ブレードコーター法,ロッドコーター法,ナイフコーター法,スクイズコーター法,リバースロールコーター法,トランスファーロールコーター法,グラビアコーター法,キスコーター法,キャストコーター法,スプレーコーター法,スリットオリフィスコーター法,カレンダーコーター法といった各種コーティング法が挙げられる。
【0087】
以下、図5を用いて、本技術に係る第2の実施形態の光電変換層の製造方法を具体的に説明する。図5は、本技術に係る第2の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
【0088】
図5を用いて、本技術に係る第2の実施形態の光電変換素子の製造方法-1を説明する。
【0089】
図5(a)に示されるように、絶縁層506a上に酸化物半導体層504aが形成されている。酸化物半導体層504aの膜厚は1~100nmである。続いて、図5(b)に示されるように、絶縁層506b上の酸化物半導体層504b上に有機フォトダイオード(PD)層(有機光電変換層)502bが形成されている。有機フォトダイオード(PD)層502bの膜厚は10~500nmである。
【0090】
次に、図5(c)に示されるように、有機フォトダイオード(PD)層502c上に、モリブデン(Mo)酸化物から構成される仕事関数調整層508cを形成する。仕事関数調整層508cは、モリブデン6価(Mo6+)が主成分となっている。仕事関数調整層508cの膜厚は0.1~30nmである。なお、有機フォトダイオード(PD)層502cは、絶縁層506c上の酸化物半導体層504c上に形成されている。
【0091】
図5(d)に示されるように、モリブデン6価(Mo6+)が主成分である仕事関数調整層508d上に補助層550d(例えば、HATCNから構成される補助層550d)を形成する。補助層550dの膜厚は0.1~30nmである。仕事関数調整層508dは、有機フォトダイオード(PD)層502d上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層502dは、絶縁層506d上の酸化物半導体層504d上に形成されている。
【0092】
最後に、図5(e)に示されるように、補助層550e上に上部透明電極層(第1電極)501eをスパッタで成膜する。この時、補助層550eが上部透明電極501e形成時のダメージバッファ層となり、モリブデン6価(Mo6+)が主成分である仕事関数調整層508eにおいて、モリブデン(Mo)6+が還元されることを抑制することができる。
【0093】
その結果、モリブデン6価(Mo6+)が主成分である所望の膜(仕事関数調整層508e)が得られる。仕事関数調整層508eは、有機フォトダイオード(PD)層502e上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層502eは、絶縁層506e上の酸化物半導体層504e上に形成されている。
【0094】
本技術に係る第2の実施形態の光電変換素子について、上記で説明をした以外は、本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子の欄で説明した内容(図1に関する記述を含む。)がそのまま適用することができる。
【0095】
<4.第3の実施形態(光電変換素子の例3)>
本技術に係る第3の実施形態(光電変換素子の例3)の光電変換素子は、第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、更に、第3電極を備え、該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、該仕事関数調整層が、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含む、光電変換素子である。
【0096】
本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子によれば、仕事関数調整層に、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物が含まれることで、画質(撮像画質)を向上させることができる。より詳しくは、本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子の仕事関数調整層に含まれるモリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物は、モリブデン酸化物(例えば、化学量論的組成のモリブデン酸化物や、価数の低い(例えば、4価や5価)モリブデンのみから形成される酸化物)と比較して化学的に安定となり、そのため、後工程で相互作用する可能性がある水分に触れた際に、水素を発生することがなく、酸化物半導体層の特性に影響を与えない。また、酸化物にモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素が含有されても、光電変換素子(仕事関数調整層)の特性を損なうことはない。
【0097】
本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子において、酸化物に含有されるモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の量が、酸化物に含有されるモリブデンの量に対して多いことが好ましく、この好ましい態様により、酸化物は、少なくとも1種の金属元素がモリブデンを囲むように形成されやすくなり、化学的により安定な構造となる。そして、この化学的により安定な酸化物は、モリブデン(Mo)の酸化によって引き起こされる水素の発生をより抑制することができる。
【0098】
酸化物中の、モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の含有量とモリブデンの含有量との比(含有量比)は、モル比(モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素のモル:モリブデンのモル)で、随意でよいが、6.7:3.3~7.3:2.7であることが好ましく、7:3であることがより好ましい。好適な酸化物としては、例えば、インジウム(In)とモリブデン(Mo)とのモル比は7:3(In:Mo)である。なお、酸化物中のインジム(In)の含有量が多すぎると、エネルギーレベルが不適格になる場合があり、インジム(In)の含有量が少な過ぎると、化学的に安定な効果が弱まる場合がある。したがって、エネルギーレベルと化学的に安定な効果は、トレードオフの関係と考えられる。
【0099】
本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子において、モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素は、周期律表の第12族の金属元素、周期律表の第13族の金属元素又は周期律表の第14族の金属元素であることが好ましい。周期律表の第12族の金属元素としては、例えば、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)が挙げられる。周期律表の第13族の金属元素としては、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)が挙げられ、インジウム(In)が好適である。そして、好適な酸化物としては、例えば、電子親和力の大きいInMoOx(IMO)が挙げられ、そして、InMoOx(IMO)中の酸素の量を多くする(酸素分圧を高くする。)と、電子親和力はより大きくなり、仕事関数調整層としての機能をより果たしやすくなる。周期律表の第14族の金属元素としては、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)が挙げられる。
【0100】
本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子は、仕事関数調整層と光電変換層との間に、p型バッファ層を更に備えてよく、光電変換層と酸化物半導体層との間に、n型バッファ層を更に備えもよい。
【0101】
図6に、本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子の一例である光電変換素子150を示す。図6は、光電変換素子150の断面図である。
【0102】
図6に示されるように、光電変換素子150は、第1電極151と、仕事関数調整層158と、p型バッファ層159と、光電変換層152と、n型バッファ層153と、酸化物半導体層154と、第2電極157と、をこの順で少なくとも備える。光電変換素子150は、更に、第3電極155を備え、第3電極155は、第2電極157と離間して配され、絶縁層156を介して光電変換層152(酸化物半導体層154)と対向して形成されている。また、第2電極157は、第2電極155と、絶縁層156を介して対抗配置され、かつ、第1絶縁層156に設けられた開口を介して光電変換層152(酸化物半導体層154)と電気的に接続されている。
【0103】
仕事関数調整層158は、上記で説明をしたとおり、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含む。モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物は、例えば、モリブデン(Mo)とインジム(In)とを含有する酸化物であり、好適な酸化物としては、インジム(In)の量がモリブデン(Mo)の量よりも多く、インジム(In)がモリブデン(Mo)を囲むようにして化学的に安定に形成された酸化物である。
【0104】
酸化物半導体層154の構成は、上記で説明をした酸化物半導体層104の構成と同様な構成なので、ここでは詳細な説明を省略する。また、光電変換層152の構成は、上記で説明をした光電変換層102の構成と同様な構成なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0105】
第2電極(読み出し電極)157及び第3電極(蓄積電極)155のそれぞれの構成は、上記で説明をした第2電極(読み出し電極)107及び第3電極(蓄積電極)105のそれぞれの構成と同様なので、ここでは詳細な説明を省略する。また、第1電極151の構成は、上記で説明をした第1電極101の構成と同様なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0106】
さらに、絶縁層156、p型バッファ層159及びn型バッファ層153のそれぞれの構成は、上記で説明をした、絶縁層106、p型バッファ層109及びn型バッファ層103のそれぞれの構成と同様なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0107】
本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子は、公知の方法、例えば、スパッタ法、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしてドライエッチング又はウェットエッチングする方法、湿式成膜法を用いて製造することができる。湿式成膜法としては、例えば、スピンコート法,浸漬法,キャスト法,スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法といった各種印刷法,スタンプ法,スプレー法,エアドクタコーター法,ブレードコーター法,ロッドコーター法,ナイフコーター法,スクイズコーター法,リバースロールコーター法,トランスファーロールコーター法,グラビアコーター法,キスコーター法,キャストコーター法,スプレーコーター法,スリットオリフィスコーター法,カレンダーコーター法といった各種コーティング法が挙げられる。
【0108】
以下、図7図9を用いて、本技術に係る第3の実施形態の光電変換層の製造方法を具体的に説明する。図7図9は、本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
【0109】
まず、図7を用いて、本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子の製造方法-1を説明する。
【0110】
図7(a)に示されるように、絶縁層256a上に酸化物半導体層254aが形成されている。酸化物半導体層254aの膜厚は1~100nmである。続いて、図7(b)に示されるように、絶縁層256b上の酸化物半導体層254b上に有機フォトダイオード(PD)層(有機光電変換層)252bが形成されている。有機フォトダイオード(PD)層252bの膜厚は10~500nmである。
【0111】
次に、図7(c)に示されるように、有機フォトダイオード(PD)層252c上に、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物(例えば、InMoOx(IMO))から構成される仕事関数調整層258cを形成する。仕事関数調整層258cの膜厚は0.1~30nmである。なお、有機フォトダイオード(PD)層252cは、絶縁層256c上の酸化物半導体層254c上に形成されている。
【0112】
図7(d)に示されるように、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物(例えば、InMoOx(IMO))から構成される仕事関数調整層258d上に上部透明電極層(第1電極)251dをスパッタで成膜する。この時、Mo酸化物中にスパッタダメージが入り、酸素欠損が生じるとともに、例えば、Mo6+がMo5+に還元されることを防ぐために低ダメージプロセスを選択する。その結果、モリブデン6価(Mo6+)が主成分である所望の膜(仕事関数調整層258d)が得られる。なお、仕事関数調整層258dは、有機フォトダイオード(PD)層252d上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層252dは、絶縁層256d上の酸化物半導体層254d上に形成されている。
【0113】
図8を用いて、本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子の製造方法-2を説明する。
【0114】
図8(a)に示されるように、絶縁層356a上に酸化物半導体層354aが形成されている。酸化物半導体層354aの膜厚は1~100nmである。続いて、図8(b)に示されるように、絶縁層356b上の酸化物半導体層354b上に有機フォトダイオード(PD)層(有機光電変換層)352bが形成されている。有機フォトダイオード(PD)層352bの膜厚は10~500nmである。
【0115】
次に、図8(c)に示されるように、有機フォトダイオード(PD)層352c上に、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物(例えば、InMoOx(IMO))から構成される仕事関数調整層358cを形成する。仕事関数調整層358cの膜厚は0.1~30nmである。なお、有機フォトダイオード(PD)層352cは、絶縁層356c上の酸化物半導体層354c上に形成されている。
【0116】
図8(d)に示されるように、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物(例えば、InMoOx(IMO))から構成される仕事関数調整層358d上に上部透明電極層(第1電極)351dを蒸着で成膜する。上部透明電極層351dを下層に対してダメージレスな成膜手法を選択する。なお、仕事関数調整層358dは、有機フォトダイオード(PD)層352d上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層352dは、絶縁層356d上の酸化物半導体層354d上に形成されている。
【0117】
図9を用いて、本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子の製造方法-3を説明する。
【0118】
図9(a)に示されるように、絶縁層456a上に酸化物半導体層454aが形成されている。酸化物半導体層454aの膜厚は1~100nmである。続いて、図9(b)に示されるように、絶縁層456b上の酸化物半導体層454b上に有機フォトダイオード(PD)層(有機光電変換層)452bが形成されている。有機フォトダイオード(PD)層452bの膜厚は10~500nmである。
【0119】
次に、図9(c)に示されるように、有機フォトダイオード(PD)層452c上に、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物(例えば、InMoOx(IMO))から構成される仕事関数調整層458cを形成する。仕事関数調整層458cの膜厚は0.1~30nmである。なお、有機フォトダイオード(PD)層452cは、絶縁層456c上の酸化物半導体層454c上に形成されている。
【0120】
図9(d)に示されるように、仕事関数調整層458dに対してラジカル酸化処理を行う。仕事関数調整層458dは、有機フォトダイオード(PD)層452d上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層452dは、絶縁層456d上の酸化物半導体層454d上に形成されている。
【0121】
最後に、図9(e)に示されるように、モリブデン(Mo)酸化物から構成される仕事関数調整層458e上に上部透明電極層(第1電極)451eをスパッタで成膜する。なお、仕事関数調整層458eは、有機フォトダイオード(PD)層452e上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層452eは、絶縁層456e上の酸化物半導体層454e上に形成されている。
【0122】
<5.第4の実施形態(光電変換素子の例4)>
本技術に係る第4の実施形態(光電変換素子の例4)の光電変換素子は、第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、更に、第3電極を備え、該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、該仕事関数調整層が、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含み、前記第1電極と前記仕事関数調整層との間に、補助層を更に備える、光電変換素子である。補助層は、上部に配される第1電極(上部電極)の作製のために用いられるスパッタ等による仕事関数調整層のダメージを防止する効果を有し、さらに仕事関数調整層の調整機能(電子的な機能)を損なわない効果を有する。この2つの効果が奏されれば、補助層は、任意の材料から構成されてよいが、例えば、非酸化物材料や酸化物材料から構成されてよく、例えば、HATCN、絶縁性を有さない酸化物材料(SiOの薄膜)等を採用することができる。
【0123】
本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子によれば、仕事関数調整層に、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物が含まれることで、画質(撮像画質)を向上させることができる。より詳しくは、本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子の仕事関数調整層に含まれるモリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物は、モリブデン酸化物(例えば、化学量論的組成のモリブデン酸化物や、価数の低い(例えば、4価や5価)モリブデンのみから形成される酸化物)と比較して化学的に安定となり、そのため、後工程で相互作用する可能性がある水分に触れた際に、水素を発生することがなく、酸化物半導体層の特性に影響を与えない。また、酸化物にモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素が含有されても、光電変換素子(仕事関数調整層)の特性を損なうことはない。
【0124】
本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子において、酸化物に含有されるモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の量が、酸化物に含有されるモリブデンの量に対して多いことが好ましく、この好ましい態様により、酸化物は、少なくとも1種の金属元素がモリブデンを囲むように形成されやすくなり、化学的により安定な構造となる。そして、この化学的により安定な酸化物は、モリブデン(Mo)の酸化によって引き起こされる水素の発生をより抑制することができる。
【0125】
酸化物中の、モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の含有量とモリブデンの含有量との比(含有量比)は、モル比(モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素のモル:モリブデンのモル)で、随意でよいが、6.7:3.3~7.3:2.7であることが好ましく、7:3であることがより好ましい。好適な酸化物としては、例えば、インジウム(In)とモリブデン(Mo)とのモル比は7:3(In:Mo)である。なお、酸化物中のインジム(In)の含有量が多すぎると、エネルギーレベルが不適格になる場合があり、インジム(In)の含有量が少な過ぎると、化学的に安定な効果が弱まる場合がある。したがって、エネルギーレベルと化学的に安定な効果は、トレードオフの関係と考えられる。
【0126】
本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子において、モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素は、周期律表の第12族の金属元素、周期律表の第13族の金属元素又は周期律表の第14族の金属元素であることが好ましい。周期律表の第12族の金属元素としては、例えば、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)が挙げられる。周期律表の第13族の金属元素としては、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)が挙げられ、インジウム(In)が好適である。そして、好適な酸化物としては、例えば、電子親和力の大きいInMoOx(IMO)が挙げられ、そして、InMoOx(IMO)中の酸素の量を多くする(酸素分圧を高くする。)と、電子親和力はより大きくなり、仕事関数調整層としての機能をより果たしやすくなる。周期律表の第14族の金属元素としては、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)が挙げられる。
【0127】
本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子は、仕事関数調整層と光電変換層との間に、p型バッファ層を更に備えてよく、光電変換層と酸化物半導体層との間に、n型バッファ層を更に備えてもよい。
【0128】
本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子は、公知の方法、例えば、スパッタ法、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしてドライエッチング又はウェットエッチングする方法、湿式成膜法を用いて製造することができる。湿式成膜法としては、例えば、スピンコート法,浸漬法,キャスト法,スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法といった各種印刷法,スタンプ法,スプレー法,エアドクタコーター法,ブレードコーター法,ロッドコーター法,ナイフコーター法,スクイズコーター法,リバースロールコーター法,トランスファーロールコーター法,グラビアコーター法,キスコーター法,キャストコーター法,スプレーコーター法,スリットオリフィスコーター法,カレンダーコーター法といった各種コーティング法が挙げられる。
【0129】
以下、図10を用いて、本技術に係る第4の実施形態の光電変換層の製造方法を具体的に説明する。図10は、本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子の製造方法を説明するための断面図である。
【0130】
図10を用いて、本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子の製造方法-1を説明する。
【0131】
図10(a)に示されるように、絶縁層556a上に酸化物半導体層554aが形成されている。酸化物半導体層554aの膜厚は1~100nmである。続いて、図10(b)に示されるように、絶縁層556b上の酸化物半導体層554b上に有機フォトダイオード(PD)層(有機光電変換層)552bが形成されている。有機フォトダイオード(PD)層552bの膜厚は10~500nmである。
【0132】
次に、図10(c)に示されるように、有機フォトダイオード(PD)層552c上に、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物(例えば、InMoOx(IMO))から構成される仕事関数調整層558cを形成する。仕事関数調整層558cの膜厚は0.1~30nmである。なお、有機フォトダイオード(PD)層552cは、絶縁層556c上の酸化物半導体層554c上に形成されている。
【0133】
図10(d)に示されるように、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物(例えば、InMoOx(IMO))から構成される仕事関数調整層558d上に補助層560d(例えば、HATCNから構成される補助層560d)を形成する。補助層560dの膜厚は0.1~30nmである。仕事関数調整層558dは、有機フォトダイオード(PD)層552d上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層552dは、絶縁層556d上の酸化物半導体層554d上に形成されている。
【0134】
最後に、図10(e)に示されるように、補助層560e上に上部透明電極層(第1電極)551eをスパッタで成膜する。この時、補助層560eが上部透明電極551e形成時のダメージバッファ層となる。仕事関数調整層558eは、有機フォトダイオード(PD)層552e上に形成されている。有機フォトダイオード(PD)層552eは、絶縁層556e上の酸化物半導体層554e上に形成されている。
【0135】
本技術に係る第4の実施形態の光電変換素子について、上記で説明をした以外は、本技術に係る第3の実施形態の光電変換素子の欄で説明した内容(図6に関する記述を含む。)がそのまま適用することができる。
【0136】
<6.第5の実施形態(固体撮像装置の例)>
本技術に係る第5の実施形態の固体撮像装置は、1次元又は2次元に配列された複数の画素毎に、少なくとも、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれ1つの実施形態の1又は複数の光電変換素子と、半導体基板とが積層された、固体撮像装置である。本技術に係る第5の実施形態の固体撮像装置によれば、画質(撮像画質)が向上され得る。
【0137】
図11は、本技術に係る第5の実施の形態の固体撮像装置を構成する撮像素子1の断面構成を模式的に表したものである。図12は、図11に示した撮像素子1の要部(光電変換素子10)の断面構成を拡大して模式的に表したものである。光電変換素子10は、第1の実施形態の光電変換素子でもよいし、第2の実施形態の光電変換素子でもよいし、第3の実施形態の光電変換素子でもよいし、第4の実施形態の光電変換素子でもよい。光電変換素子10が第2の実施形態の光電変換素子のとき、図12には、補助層が省略されていると考えてよい。撮像素子1は、例えば、CMOSイメージセンサ等の撮像装置(撮像装置1001;図13参照)において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。
【0138】
(撮像素子の構成)
撮像素子1は、例えば、半導体基板30の第1面(裏面)30A側に光電変換素子10が設けられたものである。光電変換素子10は、対向配置された下部電極11と上部電極(第1電極)16との間に、半導体ナノ粒子を用いて形成された光電変換層15を有する。下部電極11と光電変換層15との間には、絶縁層(第1絶縁層と称する場合がある。)12を介して電荷蓄積層(酸化物半導体層)13が設けられている。下部電極11は、互いに独立した複数の電極として読み出し電極(第2電極)11Aと、蓄積電極(第3電極)11Bと、例えば第2電極11Aと第3電極11Bとの間に配置された転送電極11Cとを有し、第3電極11Bおよび転送電極11Cは絶縁層12によって覆われ、第2電極11Aは絶縁層12に設けられた開口R(図12)を介して酸化物半導体層13と電気的に接続されている。本実施の形態では、光電変換素子10は、酸化物半導体層13と光電変換層15との間に、n型バッファ層14が設けられた構成を有する。
【0139】
なお、本実施の形態では、光電変換によって生じる電子および正孔の対(電子-正孔対)のうち、電子を信号電荷として読み出す場合について説明する。また、図中において、「p」「n」に付した「+(プラス)」は、p型またはn型の不純物濃度が高いことを表し、「++」はp型またはn型の不純物濃度が「+」よりも更に高いことを表している。
【0140】
光電変換素子10は、選択的な波長域(例えば、400nm以上2500nm以下)の一部または全部の波長域に対応する光を吸収して、電子-正孔対を発生させる光電変換素子である。光電変換素子10は、図12に示されたように、例えば、半導体基板30の第1面30A側に下部電極11、絶縁層12、酸化物半導体層13、n型バッファ層14、光電変換層15および上部電極(第1電極)16がこの順に積層された構成を有している。なお、図12では、固定電荷層17A、誘電体層17Bおよび層間絶縁層18等は省略して表している。下部電極11は、例えば、単位画素Pごとに分離形成されると共に、詳細は後述するが、絶縁層12を間に互いに分離された読み出し電極(第2電極)11A、蓄積電極(第3電極)11Bおよび転送電極11Cから構成されている。酸化物半導体層13、n型バッファ層14、光電変換層15および上部電極(第1電極)16は、図11では、撮像素子1ごとに分離形成されている例を示したが、例えば、複数の撮像素子1に共通した連続層として設けられていてもよい。
【0141】
下部電極11は、上記のように、例えば、互いに独立する読み出し電極(第2電極)11Aと、蓄積電極(第3電極)11Bと、転送電極11Cとから構成されている。下部電極11は、例えば、光透過性を有する導電性材料(透明導電性材料)を用いて形成することができる。透明導電材料のバンドギャップエネルギーは、例えば、2.5eV以上であることが好ましく、3.1eV以上であることが望ましい。透明導電材料としては、金属酸化物を上げることができる。具体的には、酸化インジウム、インジウム-錫酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn、結晶性ITOおよびアモルファスITOを含む)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-亜鉛酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、酸化ガリウムにドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-ガリウム酸化物(IGO)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムとガリウムを添加したインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO,In-GaZnO)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムと錫を添加したインジウム-錫-亜鉛酸化物(ITZO)、IFO(FドープのIn)、酸化錫(SnO)、ATO(SbドープのSnO)、FTO(FドープのSnO)、酸化亜鉛(他元素をドープしたZnOを含む)、酸化亜鉛にドーパントとしてアルミニウムを添加したアルミニウム-亜鉛酸化物(AZO)、酸化亜鉛にドーパントとしてガリウムを添加したガリウム-亜鉛酸化物(GZO)、酸化チタン(TiO)、酸化チタンにドーパントとしてニオブを添加したニオブ-チタン酸化物(TNO)、酸化アンチモン、スピネル型酸化物、YbFe構造を有する酸化物を例示することができる。この他、ガリウム酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物またはニッケル酸化物等を母層とする透明電極を挙げることができる。下部電極11のY軸方向の膜厚(以下、単に厚みとする)は、例えば、2×10-8m以上2×10-7m以下であり、好ましくは3×10-8m以上1×10-7m以下である。
【0142】
なお、下部電極11に透明性が不要である場合には、下部電極11は、例えば、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびモリブデン(Mo)等の金属あるいはそれらの合金を用いた単層膜または積層膜として形成することができる。具体的には、Al-Nd(アルミニウムとネオジウムとの合金)やASC(アルミニウムとサマリウムと銅との合金)等を用いて形成することができる。また、下部電極11は、上記金属あるいはそれらの合金からなる導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン、炭素系材料、酸化物半導体材料、カーボンナノチューブおよびグラフェン等の導電性材料を用いて形成するようにしてもよい。この他、下部電極11は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]といった有機材料(導電性高分子)を用いて形成してもよく、これらの導電性材料をバインダー(高分子)に混合してペースト又はインクとしたものを硬化させて形成するようにしてもよい。
【0143】
読み出し電極(第2電極)11Aは、光電変換層15内で発生した信号電荷をフローティングディフュージョンFD1に転送するためのものである。読み出し電極(第3電極)11Aは、例えば、上部第1コンタクト18A、パッド部39A、貫通電極34、接続部41Aおよび下部第2コンタクト46を介して、半導体基板20の第2面(表面)30B側に設けられたフローティングディフュージョンFD1に接続されている。
【0144】
蓄積電極(第3電極)11Bは、光電変換層15内で発生した電荷のうち、信号電荷(電子)を酸化物半導体層13内に蓄積するためのものである。蓄積電極(第3電極)11Bは、読み出し電極(第2電極)11Aよりも大きいことが好ましく、これにより、多くの電荷を蓄積することができる。
【0145】
転送電極11Cは、蓄積電極(第3電極)11Bで蓄積された電荷の読み出し電極(第3電極)11Aへの転送の効率を向上させるためのものであり、読み出し電極(第2電極)11Aと蓄積電極(第3電極)11Bとの間に設けられている。この転送電極11Cは、例えば、上部第3コンタクト18Cおよびパッド部39Cを介して駆動回路を構成する画素駆動回路に接続されている。読み出し電極(第2電極)11A、蓄積電極(第3電極)11Bおよび転送電極11Cは、各々独立して電圧を印加することが可能となっている。
【0146】
絶縁層12は、蓄積電極(第3電極)11Bおよび転送電極11Cと酸化物半導体層13とを電気的に分離するためのものである。絶縁層12は、下部電極11を覆うように、例えば、層間絶縁層18上に設けられている。また、絶縁層12には、下部電極11のうち、読み出し電極(第2電極)11A上に開口Rが設けられており、この開口Rを介して、読み出し電極(第2電極)11Aと酸化物半導体層13とが電気的に接続されている。開口Rの側面は、例えば、図12に示したように、光入射側S1に向かって広がる傾斜を有することが好ましい。これにより、酸化物半導体層13から読み出し電極(第2電極)11Aへの電荷の移動がより滑らかとなる。
【0147】
絶縁層12の材料としては、酸化ケイ素系材料、窒化ケイ素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)等の金属酸化物高誘電絶縁材料等の無機系絶縁材料が挙げられる。この他、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤)、ノボラック型フェノール樹脂、フッ素系樹脂、オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に制御電極と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。なお、酸化ケイ素系材料としては、酸化シリコン(SiO)、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマーおよびベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボンおよび有機SOG)が挙げられる。
【0148】
酸化物半導体層13は、光電変換層15内で発生した信号電荷を蓄積すると共に、読み出し電極(第2電極)11Aへ転送するためのものである。酸化物半導体層13は、光電変換層15よりも電荷の移動度が高く、且つ、バンドギャップが大きな材料を用いて形成されていることが好ましい。これにより、例えば、電荷の転送速度を向上させることが可能になる共に、読み出し電極(第2電極)11Aから酸化物半導体層13への正孔の注入が抑制される。
【0149】
酸化物半導体層13は、酸化物半導体材料を含んで構成されていてよい。酸化物半導体材料としては、例えば、IGZO(In-Ga-Zn-O系酸化物半導体),ZTO(Zn-Sn-O系酸化物半導体),IGZTO(In-Ga-Zn-Sn-O系酸化物半導体)、GTO(Ga-Sn-O系酸化物半導体)及びIGO(In-Ga-O系酸化物半導体)が挙げられる。酸化物半導体層は、上記酸化物半導体材料を少なくとも1種用いることが好ましく、なかでもIGZOが好適に用いられる。また、酸化物半導体層104を構成する材料として、例えば、遷移金属ダイカルコゲナイド;シリコンカーバイド;ダイヤモンド;グラフェン;カーボンナノチューブ;縮合多環炭化水素化合物や縮合複素環化合物等の有機半導体材料を挙げることができる。
【0150】
酸化物半導体層13の厚みは、例えば、30nm以上200nm以下であり、好ましくは60nm以上150nm以下である。
【0151】
n型バッファ層14は、光電変換層15で生じた電子の下部電極11(読み出し電極(第2電極)11A及び蓄積電極(第3電極)11B)への供給を促進するためのものであり、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)等により構成されていてよい。酸化チタンと酸化亜鉛とを積層させてn型バッファ層103を構成するようにしてもよい。また、n型バッファ層103は、高分子半導体材料、有機系材料、例えば、ピリジン、キノリン、アクリジン、インドール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、フェナントロリンのようなNを含む複素環を分子骨格の一部にする有機分子および有機金属錯体であって、更に可視光領域の吸収が少ない材料から構成されてもよい。
【0152】
撮像素子1はp型バッファ層を備えていてもよい。p型バッファ層は、光電変換層15で生じた正孔の上部電極(第1電極)16への供給を促進するためのものであり、例えば、酸化モリブデン(MoO),酸化ニッケル(NiO)又は酸化バナジウム(V)等により構成されていてよい。PEDOT(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))、TPD(N,N'-Bis(3-methylphenyl)-N,N'-diphenylbenzidine)、2T-NATA(4,4',4''-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン)等の有機材料によりp型バッファ層(正孔輸送層)を構成するようにしてもよい。
【0153】
上部電極(第1電極)16は、光透過性を有する導電性材料により構成されている。上部電極(第1電極)16は単位画素P毎に分離されていてもよいし、各単位画素Pに共通の電極として形成されていてもよい。上部電極(第1電極)16の厚みは、例えば、10nm~200nmである。
【0154】
本実施の形態の光電変換素子10では、上部電極(第1電極)16側から光電変換素子10に入射した近赤外光Lは光電変換層15で吸収される。これによって生じた励起子は、励起子分離して電子と正孔とに解離する。ここで発生した電荷(電子および正孔)は、キャリアの濃度差による拡散や、陽極(ここでは、上部電極(第1電極)16)と陰極(ここでは、下部電極11)との仕事関数の差による内部電界によって、それぞれ異なる電極へ運ばれる。電子および正孔の輸送方向は、下部電極11と上部電極(第1電極)16との間に電位を印加することによって制御される。ここでは、電子が信号電荷として下部電極11側に運ばれる。下部電極11側に運ばれた電子は、蓄積電極(第2電極)11B上の酸化物半導体層13内に蓄積されたのち、読み出し電極(第3電極)11Aに向かって転送され、光電流として検出される。
【0155】
半導体基板30の第2面30Bには、例えば、フローティングディフュージョン(浮遊拡散層)FD1(半導体基板30内の領域36B)アンプトランジスタ(変調素子)AMPと、リセットトランジスタRSTと、選択トランジスタSELと、多層配線40とが設けられている。多層配線40は、例えば、配線層41,42,43が絶縁層44内に積層された構成を有している。
【0156】
なお、図面では、半導体基板30の第1面30A側を光入射側S1、第2面30B側を配線層側S2と表している。
【0157】
半導体基板30の第1面30Aと下部電極11との間には、例えば、固定電荷を有する層(固定電荷層)17Aと、絶縁性を有する誘電体層17Bと、層間絶縁層18とが設けられている。上部電極(第1電極)16の上には、保護層19が設けられている。保護層19内には、例えば、読み出し電極(第2電極)11A上に、例えば遮光膜21が設けられている。この遮光膜21Aは、少なくとも蓄積電極(第3電極)11Bにはかからず、少なくとも光電変換層15と直接接している読み出し電極(第2電極)11Aの領域を覆うように設けられていればよい。例えば、蓄積電極(第3電極)11Bと同じ層に形成されている読み出し電極(第2電極)11Aよりも一回り大きく設けられていることが好ましい。また、例えば、蓄積電極(第3電極)11B上に、例えばカラーフィルタ22が設けられている。カラーフィルタ22は、例えば光電変換層15への可視光の入射を防ぐためのものであり、少なくとも蓄積電極(第3電極)11Bの領域を覆うように設けられていればよい。なお、図11では、遮光膜21およびカラーフィルタ22を保護層19の膜厚方向において異なる位置に設けた例を示したが、同じ位置に設けるようにしてもよい。保護層19の上方には、平坦化層(図示せず)やオンチップレンズ23等の光学部材が配設されている。
【0158】
固定電荷層17Aは、正の固定電荷を有する膜でもよいし、負の固定電荷を有する膜でもよい。負の固定電荷を有する膜の材料としては、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン等が挙げられる。また上記以外の材料としては酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化正孔ミウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化イットリウム、窒化アルミニウム膜、酸窒化ハフニウム膜または酸窒化アルミニウム膜等を用いてもよい。
【0159】
固定電荷層17Aは、2種類以上の膜を積層した構成を有していてもよい。それにより、例えば負の固定電荷を有する膜の場合には正孔蓄積層としての機能をさらに高めることが可能である。
【0160】
誘電体層17Bの材料は特に限定されないが、例えば、シリコン酸化膜、TEOS、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等によって形成されている。
【0161】
層間絶縁層(第2絶縁層と称される場合がある。)18は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン(SiON)等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。
【0162】
保護層19は、光透過性を有する材料により構成され、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン等のうちのいずれかよりなる単層膜、あるいはそれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。保護層19の厚みは、例えば、100nm~30000nmである。
【0163】
半導体基板30の第1面30Aと第2面30Bとの間には、貫通電極34が設けられている。光電変換素子10は、この貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampと、フローティングディフュージョンFD1を兼ねるリセットトランジスタRST(リセットトランジスタTr1rst)の一方のソース/ドレイン領域36Bに接続されている。これにより、撮像素子1では、半導体基板30の第1面30A側の光電変換素子10で生じた信号電荷を、貫通電極34を介して半導体基板30の第2面30B側に良好に転送し、特性を高めることが可能となっている。
【0164】
貫通電極34の下端は、配線層41内の接続部41Aに接続されており、接続部41Aと、アンプトランジスタAMPのゲートGampとは、下部第1コンタクト45を介して接続されている。接続部41Aと、フローティングディフュージョンFD1(領域36B)とは、例えば、下部第2コンタクト46を介して接続されている。貫通電極34の上端は、例えば、パッド部39Aおよび上部第1コンタクト18Aを介して読み出し電極(第3電極)11Aに接続されている。
【0165】
貫通電極34は、光電変換素子10とアンプトランジスタAMPのゲートGampおよびフローティングディフュージョンFD1とのコネクタとしての機能を有すると共に、光電変換素子10において生じた電荷(ここでは、電子)の伝送経路となるものである。
【0166】
フローティングディフュージョンFD1(リセットトランジスタRSTの一方のソース/ドレイン領域36B)の隣にはリセットトランジスタRSTのリセットゲートGrstが配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷を、リセットトランジスタRSTによりリセットすることが可能となる。
【0167】
半導体基板30は、例えば、n型のシリコン(Si)基板により構成され、所定領域にpウェル31を有している。pウェル31の第2面30Bには、上述したアンプトランジスタAMPと、リセットトランジスタRSTと、選択トランジスタSEL等が設けられている。また、半導体基板30の周辺部には、ロジック回路等からなる周辺回路(図示せず)が設けられている。
【0168】
リセットトランジスタRST(リセットトランジスタTr1rst)は、光電変換素子10からフローティングディフュージョンFD1に転送された電荷をリセットするものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。具体的には、リセットトランジスタTr1rstは、リセットゲートGrstと、チャネル形成領域36Aと、ソース/ドレイン領域36B,36Cとから構成されている。リセットゲートGrstは、リセット線RST1に接続され、リセットトランジスタTr1rstの一方のソース/ドレイン領域36Bは、フローティングディフュージョンFD1を兼ねている。リセットトランジスタTr1rstを構成する他方のソース/ドレイン領域36Cは、電源VDDに接続されている。
【0169】
アンプトランジスタAMPは、光電変換素子10で生じた電荷量を電圧に変調する変調素子であり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。具体的には、アンプトランジスタAMPは、ゲートGampと、チャネル形成領域35Aと、ソース/ドレイン領域35B,35Cとから構成されている。ゲートGampは、下部第1コンタクト45、接続部41A、下部第2コンタクト46および貫通電極34等を介して、読み出し電極(第3電極)11AおよびリセットトランジスタTr1rstの一方のソース/ドレイン領域36B(フローティングディフュージョンFD1)に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域35Bは、リセットトランジスタTr1rstを構成する他方のソース/ドレイン領域36Cと、領域を共有しており、電源VDDに接続されている。
【0170】
選択トランジスタSEL(選択トランジスタTR1sel)は、ゲートGselと、チャネル形成領域34Aと、ソース/ドレイン領域34B,34Cとから構成されている。ゲートGselは、選択線SEL1に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域34Bは、アンプトランジスタAMPを構成する他方のソース/ドレイン領域35Cと、領域を共有しており、他方のソース/ドレイン領域34Cは、信号線(データ出力線)VSL1に接続されている。
【0171】
本技術に係る第5の実施形態の固体撮像装置は、例えば、本技術に係る第1の実施形態の光電変換素子から第4の実施形態の光電変換素子のいずれか1つの実施形態の光電変換素子を用いて、公知の固体撮像装置の製造方法(例えば、特開2017-157816に記載された固体撮像装置の製造方法)に従って、製造することができる。
【0172】
(固体撮像装置の全体構成)
図13は、固体撮像装置1001を表す機能ブロック図である。この固体撮像装置1001は、CMOSイメージセンサであり、撮像エリアとしての画素部101aを有すると共に、例えば行走査部131、水平選択部133、列走査部134およびシステム制御部132からなる回路部130を有している。この画素部1aの周辺領域あるいは画素部101aと積層されて、回路部130は、画素部101aの周辺領域に設けられていてもよいし、画素部101aと積層されて(画素部101aに対向する領域に)設けられていてもよい。
【0173】
画素部101aは、例えば行列状に2次元配置された複数の単位画素P(例えば、撮像素子1(1画素分)に相当する。)を有している。この単位画素Pには、例えば画素行ごとに画素駆動線Lread(具体的には行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、画素からの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、行走査部131の各行に対応した出力端に接続されている。
【0174】
行走査部131は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、画素部101aの各画素Pを、例えば行単位で駆動する画素駆動部である。行走査部131によって選択走査された画素行の各画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通して水平選択部133に供給される。水平選択部133は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチ等によって構成されている。
【0175】
列走査部134は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、水平選択部133の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この列走査部134による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線135に伝送され、当該水平信号線135を通して外部へ出力される。
【0176】
システム制御部132は、外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータなどを受け取り、また、固体撮像装置1001の内部情報などのデータを出力するものである。システム制御部132はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に行走査部131、水平選択部133および列走査部134などの駆動制御を行う。
【0177】
<7.第6の実施形態(電子装置の例)>
本技術に係る第6の実施形態の電子装置は、本技術に係る第5の実施形態の固体撮像装置を備える、電子装置である。本技術に係る第5の実施形態の固体撮像装置は上記のとおりであるので、ここでは説明を省略する。本技術に係る第6の実施形態の電子装置は、優れた画質を有する固体撮像装置を備えるので、画質性能等の向上を図ることができる。
【0178】
以上、実施の形態を挙げて説明したが、本技術の内容は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、撮像素子1内に光電変換素子10を単独で用いた例を示したが、例えば可視光等、近赤外領域以外の波長の光を光電変換する他の光電変換素子と組み合わせて用いてもよい。他の光電変換素子としては、例えば、半導体基板30内に埋め込み形成される、所謂無機光電変換素子や、有機半導体材料を用いて光電変換層を形成した、所謂有機光電変換素子が挙げられる。
【0179】
また、上記の実施の形態では、裏面照射型の撮像素子1の構成を例に挙げて説明したが、表面照射型の撮像素子にも適用可能である。更に、上記のように、他の光電変換素子と組み合わせて用いる場合には、所謂縦方向分光型の撮像素子として構成してもよいし、半導体基板上に、他の波長域の光を光電変換する光電変換素子を2次元配列(例えばベイヤー配列)させたものであってもよい。更にまた、例えば、多層配線側にメモリ素子等の他の機能素子が設けられた基板が積層されていてもよい。
【0180】
また、本技術に係る光電変換素子10及び撮像素子1、並びに撮像装置1001では、上記実施の形態等で説明した各構成要素を全て備えている必要はなく、また逆に他の層を備えていてもよい。
【0181】
<8.本技術を適用した固体撮像装置の使用例>
図14は、イメージセンサとしての本技術に係る第5の実施形態の固体撮像装置の使用例を示す図である。
【0182】
上述した第5の実施形態の固体撮像装置は、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングするさまざまなケースに使用することができる。すなわち、図14に示すように、例えば、鑑賞の用に供される画像を撮影する鑑賞の分野、交通の分野、家電の分野、医療・ヘルスケアの分野、セキュリティの分野、美容の分野、スポーツの分野、農業の分野等において用いられる装置(例えば、上述した第6の実施形態の電子装置)に、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0183】
具体的には、鑑賞の分野においては、例えば、デジタルカメラやスマートフォン、カメラ機能付きの携帯電話機等の、鑑賞の用に供される画像を撮影するための装置に、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0184】
交通の分野においては、例えば、自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置に、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0185】
家電の分野においては、例えば、ユーザーのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、テレビ受像機や冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置で、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0186】
医療・ヘルスケアの分野においては、例えば、内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置に、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0187】
セキュリティの分野においては、例えば、防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置に、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0188】
美容の分野においては、例えば、肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置に、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0189】
スポーツの分野において、例えば、スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置に、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0190】
農業の分野においては、例えば、畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置に、第5の実施形態の固体撮像装置を使用することができる。
【0191】
次に、本技術に係る第5の実施形態の固体撮像装置の使用例を具体的に説明する。例えば、上述で説明をした固体撮像装置1001は、例えばデジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、撮像機能を有する携帯電話など、撮像機能を備えたあらゆるタイプの電子機器に適用することができる。図15に、その一例として、電子機器1002(カメラ)の概略構成を示す。この電子機器1002は、例えば静止画または動画を撮影可能なビデオカメラであり、固体撮像装置399と、光学系(光学レンズ)310と、シャッタ装置311と、固体撮像装置399およびシャッタ装置311を駆動する駆動部313と、信号処理部312とを有する。
【0192】
光学系310は、被写体からの像光(入射光)を固体撮像装置399の画素部へ導くものである。この光学系310は、複数の光学レンズから構成されていてもよい。シャッタ装置311は、固体撮像装置399への光照射期間および遮光期間を制御するものである。駆動部313は、固体撮像装置399の転送動作およびシャッタ装置311のシャッタ動作を制御するものである。信号処理部312は、固体撮像装置399から出力された信号に対し、各種の信号処理を行うものである。信号処理後の映像信号Doutは、メモリなどの記憶媒体に記憶されるか、あるいは、モニタ等に出力される。
【0193】
<9.内視鏡手術システムへの応用例>
本技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術(本技術)は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0194】
図16は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0195】
図16では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0196】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0197】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0198】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)11201に送信される。
【0199】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0200】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0201】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0202】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0203】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0204】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0205】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0206】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0207】
図17は、図16に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0208】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0209】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0210】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0211】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0212】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0213】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0214】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0215】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0216】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0217】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0218】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0219】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0220】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0221】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0222】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0223】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0224】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、内視鏡11100や、カメラヘッド11102(の撮像部11402)等に適用され得る。具体的には、本技術に係る固体撮像装置は、撮像部10402に適用することができる。内視鏡11100や、カメラヘッド11102(の撮像部11402)等に本開示に係る技術を適用することにより、内視鏡11100や、カメラヘッド11102(の撮像部11402)等の性能を向上させることが可能となる。
【0225】
ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0226】
<10.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0227】
図18は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0228】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図18に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0229】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0230】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0231】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0232】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0233】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0234】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0235】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0236】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0237】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図18の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0238】
図19は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0239】
図19では、車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0240】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101及び12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0241】
なお、図19には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0242】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0243】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0244】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0245】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0246】
以上、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部12031等に適用され得る。具体的には、本技術に係る固体撮像装置は、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、撮像部12031の性能を向上させることが可能となる。
【0247】
なお、本技術は、上述した実施形態及び使用例並びに応用例に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0248】
また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0249】
本技術は、以下のような構成を取ることもできる。
[1]
第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、
更に、第3電極を備え、
該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、
該仕事関数調整層が、化学量論的組成を満たす酸素の量よりも多い酸素の量を含む、光電変換素子。
[2]
前記仕事関数調整層が、6価のモリブデン酸化物と、5価のモリブデン酸化物と、4価のモリブデン酸化物と、を含み、
該6価のモリブデン酸化物の量が、該5価のモリブデン酸化物と該4価のモリブデン酸化物との合計量よりも多い、[1]に記載の光電変換素子。
[3]
前記仕事関数調整層が非化学量論的組成のモリブデン酸化物を含む、[1]又は[2]に記載の光電変換素子。
[4]
前記仕事関数調整層が、6価のタングステン酸化物と、5価のタングステン酸化物と、4価のタングステン酸化物と、を含み、
該6価のタングステン酸化物の量が、該5価のタングステン酸化物と該4価のタングステン酸化物との合計量よりも多い、[1]から[3]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[5]
前記仕事関数調整層が非化学量論的組成のタングステン酸化物を含む、[1]から[4]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[6]
前記仕事関数調整層が、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含む、[1]から[5]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[7]
前記酸化物に含有される前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の量が、前記酸化物に含有される前記モリブデンの量に対して多い、[6]に記載の光電変換素子。
[8]
前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素が、周期律表の第12族の金属元素、周期律表の第13族の金属元素又は周期律表の第14族の金属元素である、[6]又は[7]に記載の光電変換素子。
[9]
前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素がインジウムである、[6]又は[7]に記載の光電変換素子。
[10]
前記仕事関数調整層と前記光電変換層との間に、p型バッファ層を更に備える、[1]から[9]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[11]
前記光電変換層と前記少なくとも1つの酸化物半導体層との間に、n型バッファ層を更に備える、[1]から[10]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[12]
前記第1電極と前記仕事関数調整層との間に、補助層を更に備える、[1]から[11]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[13]
第1電極と、仕事関数調整層と、光電変換層と、酸化物半導体層と、第2電極と、を少なくともこの順で備え、
更に、第3電極を備え、
該第3電極が、該第2電極と離間して配され、かつ、絶縁層を介して該光電変換層と対向して配され、
該仕事関数調整層が、モリブデンとモリブデン以外の少なくとも1種の金属元素とを含有する酸化物を含む、光電変換素子。
[14]
前記酸化物に含有される前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素の量が、前記酸化物に含有される前記モリブデンの量に対して多い、[13]に記載の光電変換素子。[15]
前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素が、周期律表の第12族の金属元素、周期律表の第13族の金属元素又は周期律表の第14族の金属元素である、[13]又は[14]に記載の光電変換素子。
[16]
前記モリブデン以外の少なくとも1種の金属元素がインジウムである、[13]又は[14]に記載の光電変換素子。
[17]
前記仕事関数調整層と前記光電変換層との間に、p型バッファ層を更に備える、[13]から[16]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[18]
前記光電変換層と前記少なくとも1つの酸化物半導体層との間に、n型バッファ層を更に備える、[13]から[17]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[19]
前記第1電極と前記仕事関数調整層との間に、補助層を更に備える、[13]から[188]のいずれか1つに記載の光電変換素子。
[20]
1次元又は2次元に配列された複数の画素毎に、
少なくとも、[1]から[19]のいずれか1つに記載の1又は複数の光電変換素子と、半導体基板とが積層された、固体撮像装置。
[21]
[20]に記載の固体撮像装置を備える、電子装置。
【符号の説明】
【0250】
100、150…光電変換素子、101、151…第1電極、102、152…光電変換層、103、153…n型バッファ層、104、154…酸化物半導体層、105、155…第3電極、106、156…絶縁層、107、157…第2電極、108、158…仕事関数調整層、109、159…p型バッファ層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19