(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】接着剤配合物
(51)【国際特許分類】
C09J 167/04 20060101AFI20231222BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231222BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231222BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231222BHJP
C09J 7/28 20180101ALI20231222BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20231222BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20231222BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231222BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20231222BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20231222BHJP
【FI】
C09J167/04
C09J11/06
C09J11/04
C09J7/38
C09J7/28
C09J7/22
C09J7/21
C09J11/08
C09J4/02
C09J7/35
(21)【出願番号】P 2020544125
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2018080640
(87)【国際公開番号】W WO2019092118
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-08-27
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520160657
【氏名又は名称】ザ プロボスト フェローズ スカラーズ アンド アザー メンバーズ オブ ボード オブ トリニティ カレッジ ダブリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スリニヴァーサ レディ チャガンティ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ モラレス-ガメス
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン オコナー
(72)【発明者】
【氏名】ラメシュ バブ パダマティ
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532404(JP,A)
【文献】特表2006-519293(JP,A)
【文献】特開2011-148876(JP,A)
【文献】特開2016-056296(JP,A)
【文献】特開2005-344008(JP,A)
【文献】特開2008-201899(JP,A)
【文献】特表2015-515513(JP,A)
【文献】特表2012-514083(JP,A)
【文献】特開平11-193371(JP,A)
【文献】VENDAMME et al.,Recent Synthetic Approaches and Emerging Bio-Inspired Strategies for the Development of Sustainable Pressure-Sensitive Adhesives Derived from Renewable Building Blocks,J. APPL. POLYM. SCI.,2014年,DOI: 10.1002/APP.40669
【文献】GAGNON et al.,Chemical modification of bacterial elastomers: 1. Peroxide crosslinking,POLYMER,1994年,35, 20,pp. 4358-4367,DOI: 10.1016/0032-3861(94)90093-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 63/00-64/42
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
60~85質量%の溶媒と、10~30質量%の中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート(mcl-PHA)と、0.1~5質量%の過酸化物硬化剤と、0.01~1質量%の助剤と、0.1~3.0質量%のナノクレイとを含み、mcl-PHAは、C6~C14の平均モノマー鎖長を有する線状ポリエステルを含み、mcl-PHAは30%未満の結晶化度を有し、前記助剤は、フリーラジカルに対して高反応性である多官能性有機化合物である、感圧性接着剤配合物。
合物。
【請求項2】
mcl-PHAは10%未満の結晶化度を有する、
請求項1に記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項3】
mcl-PHAは5%までの結晶化度を有する、
請求項2に記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項4】
mcl-PHAは非晶質である、
請求項1~3のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項5】
65~85質量%の溶媒と、10~30質量%のmcl-PHAと、0.1~2質量%の過酸化物硬化剤と、0.01~1質量%の助剤と、0.1~3.0質量%のナノクレイとを含む、
請求項1~4のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項6】
75~82質量%の溶媒と、16~22質量%のmcl-PHAと、0.3~0.8質量%の過酸化物硬化剤と、0.06~0.15質量%の助剤と、0.5~1.5質量%のナノクレイとを含む、
請求項1~5のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項7】
過酸化物硬化剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、および過酸化ジクミルから選択される、
請求項1~6のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項8】
助剤は、多官能性のアクリレートおよびメタクリレートエステル、およびジマレイミドから選択される、
請求項1~7のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項9】
1質量%~3質量%のナノクレイを含む、
請求項5に記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項10】
ナノクレイは有機修飾されたナノクレイを含む、
請求項9に記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項11】
生物由来である、
請求項1~10のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項12】
生分解性である、
請求項1~11のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物を乾燥および硬化させることにより形成されており、少なくとも80質量%のmcl-PHAを含む、感圧性接着剤層。
【請求項14】
少なくとも90質量%のmcl-PHAを含む、請求項13に記載の感圧性接着剤層。
【請求項15】
裏打ち基板上に、
請求項13または14に記載の感圧性接着剤層を含む感圧性接着製品。
【請求項16】
裏打ち基板は、ポリマーフィルム、紙、または金属箔から選択される、
請求項15に記載の感圧性接着製品。
【請求項17】
感圧性接着(PSA)製品を作製する方法であって、前記方法は、
中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート(mcl-PHA)を適当な溶媒中に溶解させる工程と;
撹拌しながら、溶解したmcl-PHAに対して、過酸化物硬化剤、助剤およびナノクレイを添加して、液状PSA配合物を提供する工程
であって、前記液状PSA配合物は、60~85質量%の溶媒と、10~30質量%の中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート(mcl-PHA)と、0.1~5質量%の過酸化物硬化剤と、0.01~1質量%の助剤と、0.1~3.0質量%のナノクレイとを含む工程と;
適当な基材上に液状PSA配合物の層を適用する工程と;
液状PSA配合物の層を乾燥させる工程と;
適当な硬化時間にわたって、高温においてPSA配合物を架橋させる工程と
を含み、mcl-PHAは、C6~C14の平均モノマー鎖長を有する線状ポリエステルを含み、mcl-PHAは30%未満の結晶化度を有し、前記助剤は、フリーラジカルに対して高反応性である多官能性有機化合物である、方法。
【請求項18】
感圧性接着剤配合物を少なくとも12時間にわたって乾燥させる、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
感圧性接着剤配合物を、70~150℃の温度において、1~10時間にわたって硬化させる、
請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤配合物、特に感圧性およびホットメルト接着剤配合物、ならびに、自己接着性フィルムを作製するための複合接着剤配合物に関する。また、本発明は、コンポスト化可能な生体高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着性フィルムは、多数の用途、特にあらゆる種類の商品を梱包するために用いられている。接着剤産業は、より良好な性能、特定の用途、および配合物中のより環境に優しい成分を有する製品を継続的に探索している。市場において入手可能な接着剤は、非生分解性かつ石油誘導体であり、よってそれらの原料および廃棄物の両方において環境に悪影響を与える。目的とする使用のために充分な接着力を提供する、生分解性接着剤組成物、生物由来接着剤組成物、および生分解性かつ生物由来の接着剤組成物に関する要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の課題の少なくとも1つを克服することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、目的とする使用のために充分な接着力を提供すると同時に環境的に健全な方法で分解し、および再生可能原料から製造され、よって完全に環境に優しい、生分解性/生物由来の疎水性接着剤組成物の必要性に対処する。概略的に、本発明は、再生可能供給原料の微生物的発酵により生産される、中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート(以下「mcl-PHA」)、特に非結晶性mcl-PHAを含む接着剤配合物および接着性フィルムを提供する。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、5~98%(質量)の実質的に非結晶性mcl-PHAを含む接着剤配合物が提供される。
【0006】
1つの実施形態において、接着剤配合物は、ホットメルト接着剤(HMA)または感圧性接着剤(PSA)としての使用のために選択される。
【0007】
1つの実施形態において、接着剤配合物は、硬化剤(架橋剤)を含む。1つの実施形態において、硬化剤は、過酸化物硬化剤である。1つの実施形態において、配合物は0.1%~5%の硬化剤を含む。1つの実施形態において、配合物は0.5%~3%の硬化剤を含む。好ましくは、配合物は3%の硬化剤を含む。1つの実施形態において、硬化剤は、過酸化ベンゾイルである。
【0008】
1つの実施形態において、配合物は、ナノクレイを含む。好ましくは、配合物は1%~3%のナノクレイを含み、適当には、ナノクレイは有機修飾されたナノクレイを含む。
【0009】
1つの実施形態において、接着剤はホットメルト接着剤であり、25質量%~55質量%のmcl-PHAを含む。
【0010】
1つの実施形態において、ホットメルト接着剤は、ベース材料としてのmcl-PHAと、粘着剤と、ロウと、任意選択的に充填材(すなわち、クレイ)とを含む。
【0011】
1つの実施形態において、ホットメルト接着剤は:
25%~55%の実質的に非結晶性のmcl-PHAと;
35%~55%の粘着剤と;
2%~35%のロウと;
任意選択的に、充填材、抗酸化剤、可塑剤および粘着防止剤の1つまたは複数から選択される添加剤と
を含む。
【0012】
1つの実施形態において、mcl-PHAは30%未満の結晶化度を有する。好ましくは、mcl-PHAは10%未満の結晶化度を有する。より好ましくは、mcl-PHAは5%までの結晶化度を有する。より好ましくは、mcl-PHAは非晶質(アモルファス)である。
【0013】
1つの実施形態において、ホットメルト接着剤は:
25%~40%の実質的に非結晶性のmcl-PHAと;
40%~50%の粘着剤と;
10%~30%のロウと;
任意選択的に、充填材、抗酸化剤、可塑剤および粘着防止剤の1つまたは複数から選択される添加剤と
を含む。
【0014】
1つの実施形態において、ホットメルト接着剤は:
約28%~約30%の実質的に非結晶性のmcl-PHAと;
約42%~約47%の粘着剤と;
約15%~約25%のロウと;
任意選択的に、充填材、抗酸化剤、可塑剤および粘着防止剤の1つまたは複数から選択される添加剤と
を含む。
【0015】
1つの実施形態において、粘着剤は生分解性である。1つの実施形態において、ロウは生分解性である。
【0016】
1つの実施形態において、ホットメルト接着剤配合物は、溶媒を実質的に含まない(すなわち、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の溶媒)。
【0017】
1つの実施形態において、ホットメルト接着剤配合物は、硬化剤を含む。好ましくは、配合物は0.1%~5%の硬化剤を含む。適当には、配合物は、3%の硬化剤を含む。
【0018】
有利なことには、硬化剤は過酸化ベンゾイルである。
【0019】
1つの実施形態において、ホットメルト接着剤配合物は、ナノクレイを含む。好ましくは、ホットメルト接着剤配合物は1%~3%のナノクレイを含み、適当には、ナノクレイは有機修飾されたナノクレイを含む。
【0020】
好ましい実施形態において、ホットメルト接着剤配合物は、生物由来および/または生分解性である。
【0021】
また、本発明は、本発明のホットメルト接着剤配合物から形成されるホットメルト接着製品に関する。1つの実施形態において、HMA製品は、スティックの形状である。
【0022】
また、本発明は、感圧性接着層を作製するために有用な配合物(以下、「感圧性接着剤配合物」)に関する。配合物は、一般的に10~50%、好ましくは約10~30%のmcl-PHAと、大量の溶媒とを含む。当該配合物は、乾燥および硬化されて感圧性接着層を形成し、一般的には乾燥前に基材に適用される。
【0023】
1つの実施形態において、接着剤配合物は、感圧性接着剤(PSA)配合物である。1つの実施形態において、感圧性接着剤配合物は、溶媒と、mcl-PHAと、過酸化物硬化剤と、助剤と、任意選択的に充填材とを含む。
【0024】
1つの実施形態において、PSA配合物は、60~85%の溶媒と、10~30%の実質的に非結晶性のmcl-PHAと、0.1~5%の過酸化物硬化剤と、0.01~1%の助剤と、任意選択的に0.1~3.0%の充填材(すなわち、クレイ)とを含む感圧性接着剤配合物を含む。
【0025】
1つの実施形態において、PSA配合物は、70~90%の溶媒と、10~30%の実質的に非結晶性のmcl-PHAと、0.1~2%の過酸化物硬化剤と、0.01~1%の助剤と、任意選択的に0.1~3.0%の充填材(すなわち、クレイ)とを含む。
【0026】
適当には、mcl-PHAは30%未満の結晶化度を有する。好ましくは、mcl-PHAは10%未満の結晶化度を有する。より好ましくは、mcl-PHAは5%までの結晶化度を有する。より好ましくは、mcl-PHAは非晶質(アモルファス)である。
【0027】
また、本発明は、65~85%の溶媒と、10~30%の実質的に非結晶性のmcl-PHAと、0.1~2%の過酸化物硬化剤と、0.01~1%の助剤と、任意選択的に0.1~3.0%の充填材(すなわち、クレイ)とを含む、請求項22~25のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物に拡張される。
【0028】
1つの実施形態において、PSA配合物は、78~82%の溶媒と、16~22%のmcl-PHAと、0.3~0.8%の過酸化物硬化剤と、0.06~0.15%の助剤と、任意選択的に0.5~1.5%の充填材(すなわち、クレイ)とを含む。
【0029】
別の実施形態において、PSA配合物は、請求項22~27のいずれかに記載の感圧性接着剤配合物を含み、かつ、75~82%の溶媒と、16~22%の実質的に非結晶性のmcl-PHAと、0.3~0.8%の過酸化物硬化剤と、0.06~0.15%の助剤と、任意選択的に0.5~1.5%の充填材(すなわち、クレイ)とを含む。
【0030】
1つの実施形態において、過酸化物硬化剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、および過酸化ジクミルから選択される。
【0031】
1つの実施形態において、助剤は、多官能性のアクリレートおよびメタクリレートエステル、およびジマレイミドから選択される。1つの実施形態において、多官能性アクリレートは、エチレングリコールジメタクリレートである。
【0032】
1つの実施形態において、PSA配合物は、ナノクレイを含む。適当には、配合物は1%~3%のナノクレイを含み、好ましくは、ナノクレイは有機修飾されたナノクレイを含む。
【0033】
好ましい実施形態において、PSA配合物は、生物由来および/または生分解性である。
【0034】
1つの実施形態において、溶媒は、クロロホルムまたはアセトンのような非極性溶媒である。
【0035】
1つの実施形態において、感圧性接着剤配合物は、乾燥および硬化されて、感圧性接着層を提供する。感圧性接着層は、少なくとも80質量%の実質的に非結晶性のmcl-PHAを含む。
【0036】
1つの実施形態において、感圧性接着層は、少なくとも70質量%、少なくとも80質量%、または少なくとも90質量%、または少なくとも98質量%の実質的に非結晶性のmcl-PHAを含む。1つの実施形態において、感圧性接着層は、約80質量%~約90質量%のmcl-PHAを含む。1つの実施形態において、感圧性接着層は、約82質量%~約86質量%のmcl-PHAを含む。
【0037】
1つの実施形態において、感圧性接着層は、50~500μm、典型的には60~400μm、および理想的には約60~300μmの厚さを有する。
【0038】
また、本発明は、裏打ち基材上のPSA層を含むPSA製品を提供する。裏打ち基材は、フィルム(すなわちPETフィルムのようなポリマーフィルム)、紙、金属箔、または他の好適な基材であってもよく、一般的には、平坦な材料である。製品は、フィルム、ラベル、またはステッカーであってもよい。製品は、一般的には、基材上に配合物を延展し、配合物を乾燥および硬化させてPSA層を提供することにより形成される。
【0039】
また、本発明は、(本発明の)PSA製品を作製する方法に関し、当該方法は:
実質的に非結晶性のmcl-PHAを適当な溶媒中に溶解させる工程と;
撹拌しながら、溶解した実質的に非結晶性のmcl-PHAに対して、過酸化物硬化剤および助剤(および、任意選択的に充填材)を添加して、液状PSA配合物を提供する工程と;
適当な基材上に液状PSA配合物の層を適用する工程と;
液状PSA配合物の層を乾燥させる工程と;
適当な硬化時間にわたって、高温においてPSA配合物を架橋させる工程と
を含む。
【0040】
1つの実施形態において、PSA配合物を、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、または少なくとも24時間にわたって乾燥させる。これは、充分な量の溶媒を蒸発させてPSAを固形化させると同時に、それをホットメルト感圧性接着剤として機能させる。
【0041】
1つの実施形態において、PSA配合物を、70~150℃、好ましくは70~90℃、および理想的には約80℃の温度で硬化させる。1つの実施形態において、PSA配合物を、1~10時間、2~7時間、および理想的には約3~5時間にわたって硬化させる。硬化の時間および温度を変化させて、PSAの特性を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】Al-HMA/PSA-Al積層体、PET-HMA/PSA-PET積層体、および紙-HMA/PSA-紙積層体の調製を示す図である。
【
図2】L8900-mcl-PHA HMA積層体の光学像を示す図である。
【
図3】L8900-mcl-PHA HMA積層体のSEM像を示す図であり、a)はPIFL 13の表面を示す図であり、b)はPIFL 13の断面を示す図である。
【
図4】架橋反応に用いられる過酸化物および助剤の化学構造を示す図である。
【
図5】ラベル用途のための被覆フィルムの例を示す図である。
【
図6】過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミルおよび過酸化ラウロイルを用いて架橋したポリマーのゾル-ゲル分析を示すグラフである。
【
図7】a)はHMA調製のための実験装置を示す図であり、b)はセルロースフィルム窓を有する紙袋を示す図である。
【
図8】異なる温度におけるブルックフィールド粘度測定を示すグラフである。
【
図9】a)はHMA G60-PHA(100%生物由来の配合物)の粘度測定(ASTM D4499およびISO 10363熱安定性測定に基づく測定)を示すグラフであり、b)はEVAをベースとする不安定な接着剤の160℃における熱挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許、特許出願および他の参考文献は、全ての目的において、それぞれの個別の刊行物、特許または特許出願が、具体的かつ別個に参照により組み込まれることが示されており、その内容が完全に説明されているかのように、参照によりその全文が本明細書の一部をなすものとする。
【0044】
(定義および全般的優先事項)
本明細書で用いられている場合、および、他の方法で具体的に示されていない限り、以下の用語は、当該技術において享受されている当該用語の広義(または狭義)の意味に加えて、以下の意味を有することを意図する。
【0045】
他の方法で明示されていない限り、または文脈上必要とされない限り、本明細書中に与えられる全ての%値は、質量%である。
【0046】
文脈上他の方法で必要とされない限り、本明細書における単数形の使用は、複数形を含むと解釈すべきであり、逆も同様である。実在物に関する用語「a」および「an」は、当該実在物の1つまたは複数に言及すると解釈すべきである。それゆえ、用語「a」(または「an」)、「1つまたは複数(one or more)」および「少なくとも1(at least one)」は、本明細書において互換的に用いられる。
【0047】
本明細書で用いられる際に、用語「含む(comprise)」および「comprises」または「comprises」のような活用形は、言及されている完全体(integer)(たとえば、特徴、要素、特徴、特性、方法/加工工程、または限定)または一群の完全体(たとえば、複数の特徴、複数の要素、複数の特徴、複数の特性、複数の方法/複数の加工工程、または複数の限定)の包含を示すが、他の完全体または一群の完全体の排除を示すものではないと解釈すべきである。よって、本明細書で用いられる際に、用語「含む(comprising)」は、非排他的またはオープンエンドであり、追加の言及されていない完全体または方法/加工工程を排除するものではない。
【0048】
本明細書で用いられる際に、用語「中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート」または「mcl-PHA」は、C6~C14の平均モノマー鎖長を有し、かつ生分解性である線状ポリエステルを意味する。これらのポリエステルは、適当な基質、典型的には糖および脂質の細菌醗酵により生成される。好ましい実施形態において、mcl-PHAは、実質的に非結晶性であり、および典型的には、X線回折の方法により決定される30%未満の結晶化度を有する。典型的には、実質的に非結晶性のmcl-PHAは30%未満の結晶化度を有し、好ましい実施形態においては、実質的に非結晶性のmcl-PHAは10%未満の結晶化度を有する。理想的には、実質的に非結晶性のmcl-PHAは、5%までの結晶化度、好ましくは約2~5%の結晶化度を有する。特に好ましい実施形態において、実質的に非結晶性のmcl-PHAは、非晶質(アモルファス)である。
【0049】
mcl-PHAを製造する方法は、Lee他(Biotechnology and Bioengineering, Vol. 68, No.4, 2000)およびMadison他(Microbiology and Molecular Biology Reviews, March 1999, P21-53)を含む文献中に記載されており、後者において、mcl-PHAはmsc-PHAと呼称され、脂肪酸からの形成が第39頁および第40頁に記載されている。
【0050】
本明細書で用いられる際に、用語「接着剤」は、表面上に適用され、当該表面を第2の表面に結合させる物質を意味する。感圧性接着剤およびホットメルト接着剤を含む、種々の形態の接着剤が知られている。接着剤は、種々の形態で提供されてもよく、たとえば、固体または液体であってもよい接着性膠剤、一般的に室温において固体であり、送達/適用のために熱を必要とするホットメルト接着剤、および一般的に固体かつ粘着性である感圧性接着剤として提供されてもよい。多くの接着剤は、接着性フィルム(「自己接着性フィルム」としても知られている)の形態で提供され、それは、一般的に、ホットプレス/押出によりフィルムの形態にされる接着性配合物から製造される。本発明の接着剤は、典型的には5~95質量%の量でmcl-PHAを含み、したがって少なくとも部分的には生分解性である。いくつかの実施形態において、本発明の接着剤は、少なくとも10質量%、少なくとも20質量%、少なくとも30質量%、少なくとも40質量%、少なくとも50質量%、少なくとも60質量%、少なくとも70質量%、少なくとも80質量%、または少なくとも98質量%のmcl-PHAを含む。いくつかの実施形態において、接着剤(すなわち、感圧性接着剤または自己接着性フィルム)は、典型的には過酸化物硬化剤によって硬化される。いくつかの実施形態において、接着剤は、複合接着剤であり、mcl-PHAと、加えて第2の生分解性ポリマー(すなわち、ポリ乳酸)または非生分解性熱可塑性エラストマー、たとえばアクリレートに基づく熱可塑性エラストマーとを含む。
【0051】
本明細書で用いられる際に、用語「硬化剤」または「架橋剤」は、ポリマー鎖の架橋によりポリマーを強化または硬化させるために用いられる剤を意味する。また、加硫剤とも呼称される。硬化剤は、ポリマー科学の技術分野の通常の知識を有する者によく知られている。過酸化物硬化剤は、本発明の接着剤に対して特に有用であり、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ラウリル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DTBPH)、およびジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(DTBPIP)を含む。適当な過酸化物硬化剤(加硫剤)は、Alvarez-grimaら(博士論文、University of Twente, Enschede, Netherlands, 2007 ISBN: 90-365-2456-3)のセクション2.1に記載されている。
【0052】
本明細書で用いられる際に、用語「複合接着剤」は、mcl-PHAのような生分解性剤と、非生分解性熱可塑性エラストマーとを含む接着剤を意味する。1つの実施形態において、複合接着剤は、5%~75%のmcl-PHAと、25~95%の非生分解性熱可塑性エラストマーと、任意選択的に硬化剤とを含む。1つの実施形態において、本発明は、本発明の複合接着剤から得ることが可能な形成される接着性フィルム、特に自己接着性フィルムを提供する。当該フィルムは、一般的には、剤をホットプレス/押出してフィルムを形成することにより得ることができる。
【0053】
本明細書で用いられる際に、接着剤または材料に適用される際の用語「生分解性」は、たとえば細菌細胞または真菌細胞のような細胞から誘導される酵素の作用がその分解をもたらす、酵素的プロセスによって接着剤または材料を分解することができることを意味する。mcl-PHAは、生分解性材料である。
【0054】
本明細書で用いられる際に、接着剤または材料に適用される際の用語「生物由来」は、接着剤または材料が、化石由来資源に比較して炭素が若い再生可能資源を起源とする資源から作製されることを意味する。
【0055】
本明細書で用いられる際に、用語「熱可塑性エラストマー」は、熱可塑性およびエラストマー性の両方を有し、一般的に使用中のエラストマー性および溶融時の熱可塑性を有するポリマーを意味する。本発明における使用に適当な例は、アクリレートをベースとする熱可塑性エラストマーを含み、それは、Dufour他(Macromolecular Chemistry & Physics, 209, 1686-1693 (2008))、Dufour他(Macromolecules, 41, 2451-2458 (2008))、Mosnacek他(Polymer, 50, 2087-2094 (2009))、Nese他(Macromolecules, 43, 1227-1235 (2010))、およびJuhari他(Polymer, 21, 4806-4813 (2010))に記載されている。1つの実施形態において、熱可塑性エラストマーは、ポリ(エチレン-co-メタクリレート-co-グリシジルメタクリレート)およびポリ(エチレン-co-エタクリレート-co-無水マレイン酸)、または使用時のエラストマー性および溶融時の熱可塑性を有するそれらの誘導体から選択される。1つの実施形態において、熱可塑性エラストマーは、エチレンと、アクリル酸エステルと、グリシジルメタクリレートまたは無水マレイン酸とのランダム3元重合体である。
【0056】
本明細書で用いられる際に、接着性フィルム形成するための用語「ホットプレス」は、接着性フィルムを、均一な厚さのフィルムを製造するための温度および圧力下で圧縮することを意味する。
【0057】
本明細書で用いられる際に、用語「ホットメルト接着剤」または「HMA」は、固体形態(一般的にはスティックとして)において供給され、ホットグルーガンを用いて融解および適用されるように設計されている熱可塑性接着剤の形態を意味する。接着剤は、一般的には、熱時に粘着性であり、数秒から1分間で固形化する。また、ホットメルト接着剤は、浸漬、被覆、または吹付で適用することができる。一般的に、HMAは、ベース材料としてのmcl-PHAと、粘着剤と、ロウと、任意選択的に充填材(すなわち、クレイ)とを含む。1つの実施形態において、粘着剤は生分解性である。1つの実施形態において、ロウは生分解性である。1つの実施形態において、HMAは、25%~55%のmcl-PHAを含む。1つの実施形態において、HMAは、25%~40%のmcl-PHAを含む。1つの実施形態において、HMAは、25%~35%のmcl-PHAを含む。1つの実施形態において、HMAは、約28%~約30%のmcl-PHAを含む。1つの実施形態において、HMAは、35~55%の粘着剤を含む。1つの実施形態において、HMAは、40%~50%の粘着剤を含む。1つの実施形態において、HMAは、約42%~約47%の粘着剤を含む。1つの実施形態において、HMAは、2~35%のロウを含む。1つの実施形態において、HMAは、10%~30%のロウを含む。1つの実施形態において、HMAは、15%~25%のロウを含む。1つの実施形態において、HMAは、約18%~約22%のロウを含む。1つの実施形態において、ロウは、蜜ロウ、カルナバロウ、およびパラフィンロウから選択される。1つの実施形態において、ロウは、生分解性ロウ(すなわち、カルナバロウ)および任意選択的に非生分解性ロウ(すなわち、パラフィンロウ)を含む。また、HMAは、抗酸化剤、粘着防止剤、および可塑剤から選択される1つまたは複数の追加の添加剤を含む。
【0058】
本明細書で用いられる際に、用語「ロウ」は、疎水性であり、室温またはその付近において展性を有する固体であり、水に不溶性で有機非極性溶媒に可溶性であり、一般的に40℃より高い融点を有する高級アルカンおよび脂質を含む、一群の有機化合物を意味する。ロウは、生分解性ロウ(たとえば動物性ロウまたは植物性ロウ)、または植物性ロウまたは動物性ロウの修飾物、または石油由来のロウであってもよい。植物性ロウおよび動物性ロウの例は、蜜ロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナバロウ、カンデリラロウおよびオーリクリーロウを含む。石油由来のロウの例は、パラフィンロウを含む。パラフィンロウは、飽和n-およびios-アルカン、ナフテン、ならびにアルキル置換芳香族化合物およびナフテン置換芳香族化合物の混合物である。1つの実施形態において、パラフィンロウは、低粘度パラフィンロウである。
【0059】
本明細書で用いられる際に、用語「粘着剤」は、接着剤を配合するのに用いられ、タック(接着剤の表面への他着性)を増大させる化合物を意味する。それらは、Tseら(Journal of Adhesion Science and Technology. 3(1): 551-570)に記載されている。1つの実施形態において、粘着剤は、樹脂、たとえばロジンまたはその誘導体(たとえば、水素化ロジン)、テルペンおよび修飾テルペン、脂肪族樹脂、環状脂肪族樹脂および芳香族樹脂、水素化炭化水素樹脂およびその混合物、およびテルペンフェノール樹脂である。1つの実施形態において、HMAにおいて粘着剤の組み合わせを用いる。1つの実施形態において、粘着剤は60℃より高い軟化点を有する。1つの実施形態において、粘着剤は生分解性である。その例は、水素化ロジンのエステル(すなわち、Foral 85)およびポリテルペン樹脂(すなわち、Piccolyte F105)を含む。
【0060】
本明細書で用いられる際に、用語「充填材」は、HMAに嵩を付与し、凝集強度を改善する材料を意味する。その例は、カオリンのようなクレイ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、カーボンブラックを含む。
【0061】
本明細書で用いられる際に、用語「可塑剤」は、HMAの可塑性または粘度を増大させる、HMA中に用いられる添加剤である。その例は、動物油、植物油または石油由来油を含む油、1,4-シクロヘキサンジメタノールのようなベンゾエート類、フタレート類、および塩素化パラフィンを含む。生分解性可塑剤の例は、植物油、動物油、およびアセチルトリブチルシトレートを含む。
【0062】
本明細書で用いられる際に、用語「感圧性接着剤」は、基材に対して接着剤を合体させるために圧力が印加される際に、基材に対する結合を形成する接着剤を意味する。それは、感圧性テープ、ラベル、グルードット、ノートパッド、自動車用装飾材料、および多くの他の製品において用いられる。本発明は、感圧性接着剤配合物、感圧性接着剤硬化物、およびフィルムのような基材に適用された感圧性接着剤硬化物を含む感圧性接着製品を提供する。配合物は、mcl-PHA、過酸化物硬化剤、任意選択的に助剤、および1つの実施形態において充填材を含む。mcl-PHAは、一般的には、硬化剤および任意選択的な助剤および充填材が添加される前に、適当な溶媒(すなわち、クロロホルム)に溶解され、次いで配合物はフィルムとして基材に適用され、乾燥され、および加熱硬化される。
【0063】
本明細書で用いられる際に、用語「過酸化物硬化剤」は、ポリマーの加硫に適当な過酸化物化合物である。過酸化物硬化剤は、当該技術においてよく知られており、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ラウリル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DTBPH)、およびジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(DTBPIP)を含む。適当な過酸化物硬化剤(加硫剤)は、Alvarez-grimaら(博士論文、University of Twente, Enschede, Netherlands, 2007 ISBN: 90-365-2456-3)のセクション2.1に記載されている。
【0064】
本明細書で用いられる際に、用語「助剤」は、フリーラジカルに対して高反応性である多官能性有機化合物を意味する。それらは、過酸化物の加硫効率を向上させる反応性添加剤として用いられる。一般的に、助剤は、(メタ)アクリレート基、マレイミド基またはアリル基を有する分子を含む。しかしながら、高いビニル含量を有するポリマー材料(すなわち、1,2-ポリブタジエン)も助剤として機能し得る。1つの実施形態において、助剤は、いわゆるI型助剤であり、それらは、低分子量および活性化された二重結合を有する実質的に極性の分子である。その例は、マレイミドおよび(メタ)アクリレートをベースとする助剤を含み、その具体例は、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、N,N-m-フェニレンジマレイミド(BMI-MP)およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTM)を含む。適当な助剤は、Alvarez-grimaら(博士論文、University of Twente, Enschede, Netherlands, 2007 ISBN: 90-365-2456-3)のセクション2.2に記載されている。
【実施例】
【0065】
今や、具体的な例を参照して本発明を説明する。これらは、単に例示的であり、かつ例示のみを目的とするものであり、請求する独占権の範囲または記載される発明を何ら限定することを意図するものではない。これらの例は、本発明を実施するために現状で意図されるベストモードを構成する。
【0066】
(A.Bioplastech mcl-PHAに基づく感圧性接着剤およびホットメルト接着剤:PSA配合物および結果)
架橋のためのフリーラジカル開始剤として過酸化物を用いる、mcl-PHA(O)および2官能性アクリル製コモノマー(助剤)の架橋反応により、PSAを調製する。過酸化物(過酸化ベンゾイル)および2官能性助剤(エチレングリコールジメタクリレート)の化学構造を
図4に示す。同様に、過酸化ラウロイルおよび過酸化ジクミルのような種々の他の過酸化物を、mcl-PHAを架橋させるためのフリーラジカル開始剤として評価した。
【0067】
(調製および評価)
典型的な加工スキームにおいて、以下のようにフィルムを調製する。
i) 100mlのクロロホルム中に100gのmcl-PHA「PHAO」を溶解させた。
ii) この溶液に対して、室温において、30分の時間をかけて、粘稠で透明な均一溶液が得られるまで撹拌しながら、3gの過酸化ベンゾイルおよび0.75gのエチレングリコールジメタクリレートを添加した。
iii) PSAテープまたはラベルを作製するために、精密ナイフを有する自動フィルム塗布機を用いて、制御された厚さにおいて、溶液を所望される基材(PETまたはセルロースをベースとするフィルムのようなもの)上に延展した。
iv) 塗布後、換気フード内で少なくとも24時間にわたってフィルムを乾燥させる。
v) 次に塗布されたフィルムを、85℃において4時間にわたって架橋反応が行われる真空オーブン内に配置する。
【0068】
得られるPSA接着剤の厚さは80~300μmの範囲内である。
図5は、セルロース基材上の乾燥したPSAフィルムを示す。
【0069】
PSAフィルムの剥離強度を向上させるため、1質量%の合成ナノクレイ(Somasif MAE)を有する溶液を調製した。選択される組成物に関して、所望量のナノクレイをクロロホルム中に分散させ、mcl-PHAのクロロホルム溶液(工程i))に添加した。最良の架橋開始剤および架橋反応の程度を評価するため、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルおよび過酸化ジクミルを用いて調製した最終フィルムにおいて、ゲル成分の量を測定した。同様に、機械的特性を試験した。これらの評価において、工程i)およびii)において前述したとおりに材料を調製し、次いで溶液をペトリ皿中にピペット分注した。約2日間にわたって溶液を揮発するままとした。典型的には5mm厚さの得られたポリマーフィルムを第1表に記載される時間および温度にしたがって真空オーブン中で架橋させた。
【0070】
【0071】
ゲル成分を測定するため、フィルムの試料を計量し、約5~10mlのクロロホルムを収容した丸底フラスコ中に配置した。フィルムを室温において2時間にわたって溶媒中に浸し、定期的に撹拌した。2時間後、クロロホルム溶液を濾過することによりフィルムを回収し、ゲルをガラス皿に配置し、質量が一定になるまで1~3日間にわたって乾燥させた。
【0072】
式1によって、固形分パーセンテージ(%Sol)を計算した。過酸化ベンゾイルを用いて調製したフィルムが最も高い%固形分を示し、それは、他の2つの開始剤と比較して最大程度の架橋を示す。
【0073】
【0074】
(式中、Solは、溶媒抽出後の非架橋試料質量画分であり、Gelは、溶媒抽出後の架橋試料質量画分である。)
【0075】
(機械的特性)
架橋剤として過酸化ベンゾイルを用いて調製した架橋およびナノ複合PSAフィルムの機械的特性を第2表に示す。
【0076】
過酸化ベンゾイル含量を1.5質量%から4質量%へ増大させた際に、引張強度が255%増大し(0.1MPaから0.38MPa)、ヤング率が161%増大した(0.07MPaから0.19MPa)。
【0077】
3質量%の過酸化ベンゾイルを有する試料に対する1質量%のナノクレイの添加により、フィルムの引張強度は、さらに68%増大した。
【0078】
【0079】
(剥離試験およびゾル-ゲル分析)
種々の濃度の過酸化ベンゾイルを有するmcl-PHA架橋フィルムを用いて、ASTM 3300(感圧性テープの剥離接着力)に基づくPSAフィルムの剥離強度試験を実施した。剥離試験は、被覆された可撓性PET(ラベル)基材を用い、ナノクレイを含まない新品の試料に対して180度の角度で実施した。PSA配合物の剥離強度を第3表に示す。
【0080】
【0081】
1質量%の架橋剤を用いたフィルムがより高い剥離強度を有するものの、材料の一体性およびフィルムの均一性は、3%の架橋剤を用いたフィルムに比べて劣悪であった。全てのさらなる最適化において、3質量%の過酸化ベンゾイルを用いてPSAフィルムを調製した。
【0082】
(低温における剪断試験)
低温における剪断試験を実施して、低温環境における性能を実証した。EN1943(自己接着性テープ:静的剪断接着力の測定)の手順G(高温において実施される試験)を改作した。この試験は、テープおよび基材の表面に平行方向に印加される一定荷重の下で接着したままであるPSAの能力を決定することを目的とする。測定は、-16.5℃、-4.0℃、および18℃(室温)の温度において実施した。この試験に用いた試験質量は1000gであり、結果を第4表に示す。開発したPSAで被覆されたフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびセルロースフィルムであり、2種の異なる基材(パネル)(ステンレス鋼(SS)パネルおよびPETパネル)を試験した。結果は、性能が基材および接着された材料に硬度に依存することを示し、全ての場合において、被覆されたフィルムは、低温における結合能力を示し、さらに、PET基材に対するフィルムに関して最低温度において著しく良好な性能を示した。PET基材が想定される用途において用いられる蓋然性が高いため、これは所望される結果である。
【0083】
【0084】
(HMA配合物および結果)
mcl-PHAを、生分解性および非生分解性ロウと、および粘着剤、ナノクレイおよび界面活性剤のような他の添加剤と組み合わせて、HMAを配合した。いくつかの組成物は生分解性であり、他の組成物は生分解性が100%ではない。それら全ては、完全に生物由来または部分的に生物由来のいずれかである。粘着性樹脂は、天然および修飾ロジンの群から選択された。
【0085】
(調製および評価)
Bioplastech mcl-PHA(PHA12またはO)を用いてホットメルト接着剤を調製した。
【0086】
実験装置の概略を
図7(a)に示す。典型的な加工スキームにおいて:
i) 撹拌パドルを取り付けたオーバーヘッド攪拌機を有する250ml反応器を、130℃に予熱した。
ii) 抗酸化剤Irganox 1010とともに、粘着性樹脂の50%およびロウの50%を、反応器に装填した。
iii) 樹脂およびロウの溶融後に、溶融物に対してナノクレイを添加し、均質な溶融物が得られるまで継続的に撹拌した。
iv) 130℃において、粘着性樹脂およびロウの残りをその中に混合した。
v) 溶融物の温度を100℃に低下させ、10分間かけてゆっくりとmcl-PHAを添加し、続いて界面活性剤の添加を行い、撹拌を30分間にわたって継続した。
vi) 最後に、混合物を被覆ガラスカップへと注ぎ、室温まで冷却した。得られる接着剤は、無地の黒色である。
【0087】
商業的使用に対する評価に関して、含有するロウの種類のみが相違する2種の異なる配合物を選択し、配合物を第5表に示す。得られた接着剤を用いて、箱およびショッピングバッグのような種々の使い捨て容器を組み立てた。
図7(b)は、クラフト紙およびセルロースフィルムのウィンドウから作製したコンポスト化可能な紙袋を示す。
【0088】
HMAと確認される最適組成は:
29%のBioplastech mcl-PHA O、
46%の、60℃より高い軟化点を有する粘着剤の組み合わせ、
20%のロウ希釈剤、
3%の有機修飾されたナノクレイ(Cloisite 30B)、
1%の抗酸化剤(Irganox 1010)、
1質量%の非イオン性界面活性剤(TRITON 100)
を含有する(質量比)。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
mcl-PHAをベースとするHMAの稼働領域を決定するために、高温における溶融粘度を正確に測定するためのThermosel制御装置を有するブルックフィールド粘度計DV-II(スピンドルCS4)を用いて、種々の温度におけるHMAの粘度を測定した。本発明の選択された配合物G60を2種の商業的に入手可能な接着剤:
BAM 356A(一般包装、適用温度150~170℃)
BAM 802 (ラベル、適用温度120~140℃)
と比較した(
図6)。
【0094】
推奨適用温度は、830~1600cPの間の粘度に相当し、それから、G60 mcl-PHA接着剤の適用温度は100℃と120℃との間であるべきことが推定される。
【0095】
ホットメルト接着剤は、適用中に加えて、保存中および加工中の両方において安定である必要がある。特に、ホットメルト接着剤の熱安定性は、主たる重要性を有する。適用温度における経時的な粘度の増大は、末端使用者に問題点をもたらす可能性があり、たとえば、輸送ラインおよび塗布機の詰まりのために予定外の製造中段をもたらす可能性がある。不安定な接着剤の挙動の例を、接着剤製造業者により公開される
図2(b)に示す。
【0096】
図9(a)は、時間の関数としての、100℃における開発されたG60配合物の溶融粘度を示す。溶融粘度の減少は、接着剤の熱分解を示す。開発された接着剤に関して、溶融粘度は減少する傾向にあり、1.5日後に安定化する。しかしながら、配合物の熱安定性は、石油をベースとする接着剤より低いと予想される。
【0097】
剥離強度は、2つの表面間の接着強度を決定し、所与の用途における接着剤の適性を決定する重要なパラメータである。開発された接着剤の剥離強度を評価するために、130℃において静圧プレスを用い、PETフィルムの間に接着剤を配置することにより、2つのPETストリップの積層フィルムを得た。
【0098】
ASTM D3330、ISO 8510およびISO 11339にしたがって剥離試験を実施した。これらの結果を、2種の商業的に入手可能な接着剤、ラベル用途のためのEVAをベースとするBAM802、および包装用途のためのBAM356Aと比較する。mcl-PHAを用いて調製された配合物は、商業的HMAに比べて良好な剥離強度を示す。
【0099】