(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】埋め込まれたスケートを有するプローブ先端部
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20231222BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20231222BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R31/26 J
G01R31/28 K
(21)【出願番号】P 2020547004
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 US2019023690
(87)【国際公開番号】W WO2019183548
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-17
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505377474
【氏名又は名称】フォームファクター, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キスター、ジャニュアリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チュン-チー
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-351846(JP,A)
【文献】特開2000-174079(JP,A)
【文献】特開2008-128882(JP,A)
【文献】国際公開第2016/146451(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0258844(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0269125(US,A1)
【文献】特表2018-508027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスに電気的に接触させるためのプローブであって、
2以上の層から構成される積層体を含むプローブ先端部を備え、
前記プローブ先端部は、前記プローブの遠位側に位置し、
前記プローブ先端部が、接触領域を有し、
前記プローブ先端部の前記接触領域が、1つの連続した滑らかな曲面によって形成され、
前記1つの連続した滑らかな曲面は、前記2以上の層から構成される積層体の少なくとも2つの層を含み、
前記積層体を構成する前記2以上の層の各々は、前記積層体の積層方向に対して直交する平面に沿って延在し、
前記2以上の層に対応するそれぞれの平面は互いに平行で、かつ被試験デバイスをプロービングするときの前記プローブ先端部の前記被試験デバイスに対する相対的な移動方向に対して平行であり、
前記積層体を構成する層のうちの選択された層の一部または全部が、前記積層体における最大の機械的摩耗抵抗を有し、かつ、
前記プローブ先端部の前記滑らかな曲面の最も遠位に位置する領域が、前記選択された層によって形成される、プローブ。
【請求項2】
請求項
1に記載のプローブであって、
前記積層体は、A層、B層、C層、B層及びA層がその順に積層されたA-B-C-B-A構造を有し、
前記A層、前記B層及び前記C層は、互いに異なる材料組成を有し、
前記A層は、前記B層または前記C層よりも高い
降伏強度及び極限強度を有し、
前記B層は、前記A層または前記C層よりも高い電気伝導率を有し、
前記C層は、前記A層または前記B層よりも高い機械的摩耗抵抗を有する、プローブ。
【請求項3】
請求項
2に記載のプローブであって、
前記A層は、PdCo合金及びNiCo合金からなる群より選択される、プローブ。
【請求項4】
請求項
2に記載のプローブであって、
前記B層は、Al合金及びCuからなる群から選択される、プローブ。
【請求項5】
請求項
2に記載のプローブであって、
前記C層は、Rh、Ru及びWからなる群から選択される、プローブ。
【請求項6】
請求項
1に記載のプローブであって、
前記選択された層は
、前記積層体の積層方向に対して直交する方向に
沿って複数の領域を有し、
前記
複数の領域のなかの選択された
1つの領域は、前記
複数の領域における最大の機械摩耗抵抗を有する
、プローブ。
【請求項7】
請求項
6に記載のプローブであって、
前記選択された
1つの領域は、
前記複数の領域のなかで、前記積層体の積層方向に対して直交する方向に
沿って中央
に位置する領域である、プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子集積回路を試験するためのプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
電気プローブが、集積回路を試験するために長年使用されてきた。この間、様々な種類のプローブ構造体が検討されてきた。このようなプローブ構造体の1つは、米国特許第7、733、101号明細書、及び本明細書の
図1に示すような多層プローブである。この多層プローブは、プローブ先端部において、他の層よりも延出する1以上のスケート層を含む。このアプローチの利点は、薄いスケート層によって、スケートを含まない場合と比べて高い接触圧力が得られることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
しかしながら、従来の多層スケートプローブには、望ましくない側面がある。使用中、プローブ先端部は、被試験デバイスのプロービングだけでなく、定期的なクリーニングプロセスによって、機械的摩耗を受ける。従来の多層スケートプローブは、スケートが摩耗したときに寿命に達するので、望ましくないことに、寿命が短かった。したがって、寿命が向上した多層スケートプローブを提供することは、当分野における進歩となるであろう。
【0004】
本開示は、従来のフィン状スケート形状とは対照的に、プローブ先端部の全体形状が滑らかな曲面である新規の多層プローブ設計を提供する。スケート層はプローブ先端部の全ての層において最も高い機械的摩耗抵抗を有しており、これにより、使用中のプローブ先端部の研磨クリーニング(あるいは、場合によっては、プローブ先端部の初期先端形状を形成するための、最初の使用前の研磨前処理)によって、スケート層に、滑らかな曲面のピークを形成することができる。本開示によれば、スケートは、クリーニングプロセスによって効果的に再形成することができるので、プローブの寿命は、プローブ先端部から合計で過度の量の材料が摩耗したときとなる。このため、従来の多層スケートプローブと比べて、プローブ寿命を大幅に向上させることができる。
【0005】
従来のスケートプローブのプローブ寿命は、スケートの鉛直高さを増加させるだけでは長くできないことに注意することが重要である。プローブスケート層は、一般的に、このアプローチを可能にするのには薄すぎる。本開示では、十分な機械的支持を提供するべく、スケート層をプローブ先端部の他の層の間に挟み込むことによって、スケート層の鉛直高さを効果的に増加させることができる。単純な研磨プロセスによって、必要に応じてプローブ先端部においてスケートを再形成する能力は、本開示の重要な側面である。
【0006】
好ましい実施形態では、プローブ先端部は、層1、層2、層3、層4、層5を有する5層構造を有する。層3は中央スケート層であり、層2及び4は良好な導電体(例えば、銅)であり、外層1及び5は機械的支持を提供する。スケートが、長方形または正方形の小さい断面積を有する実施形態では、プローブ先端部の接触圧力のさらなる増加を可能にし、それにより、電気接触抵抗の望ましい減少が可能となる。このようなスケートは、スケートの破壊を防ぐために、スケートの4つの側面のすべてが、機械的支持層によって取り囲まれる。スケートの位置、スケートを支持する及び取り囲む層の寸法及び組成は、後述する実施例のように、プローブ先端部の接触領域の望ましい形状及び位置を達成するように調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(A)~(D)は、例示的な従来の多層スケートプローブを示す。
【
図2】
図2(A)~(B)は、本発明の一実施形態による多層スケートプローブを示す。
【
図3】
図3(A)~(B)は、本発明の別の実施形態による多層スケートプローブを示す。
【
図4】
図4(A)~(C)は、本発明の原理に従ったプローブ先端部形状の第1の例を示す。
【
図5】
図5(A)~(C)は、本発明の原理に従ったプローブ先端部形状の第2の例を示す。
【
図6】
図6(A)~(C)は、本発明の原理に従ったプローブ先端部形状の第3の例を示す。
【
図7】
図7(A)~(C)は、本発明の原理に従ったプローブ先端部形状の第4の例を示す。
【
図8】
図8(A)~(C)は、本発明の原理に従ったプローブ先端部形状の第5の例を示す。
【
図9】
図9(A)~(B)は、研磨プロセスによる適切なプローブ先端部形状の形成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、例示的な従来の多層スケートプローブを示す。
図1(A)~
図1(B)は、被試験デバイス108に接触させた垂直プローブ102の2つの直交側面図である。プローブ102のプローブ先端部104は多層構造を有しており、層106が他の層よりも延出して、上述のようなスケートを形成している。
図1(A)では、プローブ先端部104は、被試験デバイス108と接触すると二重矢印で示す方向に移動する。プローブ先端部104のこのスクラブ動作が、使用中におけるプローブ先端部の摩耗の主要な原因である。
図1(C)~
図1(D)は、このような既知の多層スケートプローブの例示的な画像を示す。
【0009】
図2は、本発明の一実施形態による多層スケートプローブを示す。
図2(A)~
図2(B)は、被試験デバイス108に接触させた垂直プローブ202の2つの直交側面図である。プローブ102の先端部204は多層構造を有しており、層206が他の層よりも延出して、スケートを形成している。
図2(A)では、プローブ先端部204は、被試験デバイス108と接触すると二重矢印で示される方向に移動する。プローブ先端部204のこのスクラブ動作が、使用中におけるプローブ先端部の摩耗の主要な原因である。しかしながら、
図2のプローブでは、プローブ先端部204の接触領域は、図示のように、プローブ先端部204の滑らかな曲面によって形成されている。
【0010】
したがって、本発明の例示的な実施形態は、被試験デバイスに電気的に接触させるためのプローブであり、このプローブは、2以上の層から構成される積層体を含むプローブ先端部を備える。プローブ先端部は滑らかな曲面を有し、プローブ先端部の接触領域は、プローブ先端部の滑らかな曲面によって形成される。積層体を構成する層のうちの選択された層の一部または全部は、積層体における最大の機械的摩耗抵抗を有する。プローブ先端部の滑らかな曲面の遠位ピークは、図示のように、選択された層によって形成される。プローブの遠位端は、プローブにおける、被試験デバイスに接触させる端部である。プローブ先端部に滑らかな曲面を有するプローブの場合、その滑らかな曲面の遠位ピークは、プローブにおける、使用時に被試験デバイスと最初に接触する部分となる。
図2Aに示すように、2以上の層の平面は、被試験デバイスをプロービングするときのプローブ先端部の移動方向に対して平行であることが好ましい。プローブ先端部の形状に関するさらなる詳細は、以下の実施例によって提供される。
【0011】
「滑らかな曲面」は、プローブ先端部の形状を指し、「滑らかな」は、この形状が不連続部やエッジを含まないことを意味することに留意することが重要である。具体的には、「滑らかな曲面」は、プローブ先端部が研磨された表面または鏡のような表面を有することを意味しない。その代わりに、プローブ先端部を被試験デバイスに効果的に電気的に接触させるために、プローブ先端部が顕微鏡スケールで粗い仕上げを有することが重要である。本明細書に記載される研磨プロセスは、プローブ先端部に対して、粗い表面仕上げを適切に提供することができる。
【0012】
図3は、本発明の別の実施形態による多層スケートプローブを示す。
図3(A)は、例示的な多層積層体の側断面図である。この実施形態では、プローブ先端部は、層302、304、306、308、310を含む。これらの層から構成される積層体は、A層、B層、C層、B層及びA層がその順に積層されたA-B-C-B-A構造を有することが好ましい。A層(層302、310)、B層(層304、308)、C層(層306)は、互いに異なる材料組成を有する。A層、B層、C層の好ましい相対的な材料特性は次の通りである。A層は、B層またはC層よりも高い機械的強度(すなわち、降伏強度及び極限強度)を有する。B層は、A層またはC層よりも高い電気伝導率を有する。そして、C層は、A層またはB層よりも高い機械的摩耗抵抗(すなわち、より高い硬さ)を有する。
図3(B)は、この構造を有するように製造されたプローブ先端部の画像である。
図3(B)の例では、A層はPdCo合金であり、B層はCu、CはRhである。しかしながら、少なくとも1つの層が、スケートを形成するための明らかにより高い機械的摩耗抵抗を有するのであれば、全体的なプローブ設計によって指示されるように、他の材料を使用してもよい。A層の代替物としては、これに限定しないが、NiCo合金が挙げられる。B層の代替物としては、これに限定しないが、Al合金が挙げられる。C層の代替物としては、これに限定しないが、Ru及びWが挙げられる。
【0013】
図4は、本発明の原理に従ったプローブ先端部形状の第1の例を示す。
図4(A)は、プローブ先端部の端面図であり、
図4(B)は、
図4(A)の断面線B-B´に沿ったプローブ先端部の側断面図であり、
図4(C)は、
図4(A)の断面線C-C´に沿ったプローブ先端部の側断面図である。
図4(B)及び
図4(C)に示すように、プローブ先端部の滑らかな曲面402は、両横方向(左右両方向)において丸みを帯びている。このようなプローブ先端部形状は、後述する研磨プロセスを用いて形成することができ、層306がプローブ先端部において最も高い機械的摩耗抵抗を有するように、ピークが形成される。
【0014】
図5は、本発明の原理に従ったプローブ先端部形状の第2の例を示す。
図5(A)は、プローブ先端部の端面図であり、
図5(B)は、
図5(A)の断面線B-B´に沿ったプローブ先端部の側断面図であり、
図5(C)は、
図5(A)の断面線C-C´に沿ったプローブ先端部の側断面図である。この例では、
図4の例とは異なり、多層積層体を構成する層のうちの選択された層502は、複数の領域が、積層体の積層方向に対して直交する方向に積層された複数領域構造体である。複数の領域は、領域322、306、324であり、領域306は、複数領域構造体における最も高い機械的摩耗抵抗を有し、領域322、324は機械的支持を提供する。図示のように、複数領域構造における選択された領域は、機械的支持を提供する他の領域間に挟まれた、複数領域構造における中間領域(中央領域)であることが好ましい。
【0015】
形成されたプローブ先端部形状の詳細は、先端部を構成する各層及び各領域の材料組成を調節することによって、及び/または、後述する研磨プロセスの詳細なパラメータを調節することによって決定することができる。
図6は、このようなプローブ先端部の変形例を示す。
図6の例は、材料組成及び/または研磨プロセスが、図示のように、滑らかな曲面602の角度α1及びα2が2つの横方向において互いに著しく異なるように調整されていることを除いては、
図5の例と同様である。
【0016】
機械的摩耗抵抗が最も高い領域は、プローブ先端部の横方向の中央に位置する必要はない。
図7は、このようなプローブ先端部の変形例を示す。
図7の例は、選択された領域306が、選択された層502における中央から外れた位置に配置されていることを除いては、
図5の例と同様である。滑らかな曲面702の形状は、
図7(A)の断面線B-B´に沿って非対称であり(
図7(B)参照)、かつ、
図7(A)の断面線C-C´に沿って対称である(
図7(C)参照)。
【0017】
図8は、このようなプローブ先端部の別の変形例を示す。
図8の例は、選択された領域306が、選択された層502における中央から外れた位置に配置されている、かつ、選択された層502が、層302、304、502、308、310から構成される積層体における中央から外れた位置に配置されていることを除いては、
図5の例と同様である。滑らかな曲面802の形状は、
図8(A)の断面線B-B´に沿って非対称であり(
図8(B)参照)、かつ、
図8(A)の断面線C-C´に沿って非対称である(
図8(C)参照)。プローブ先端部の1または複数の層または領域が、プローブ先端部の残りの部分よりも明らかに高い機械的摩耗抵抗を有する限り、他の滑らかな曲面を有するプローブ先端部形状を用いて、本発明を実施することができる。プローブ先端部の研磨プロセスによって、輪郭がはっきりとしたスケートを形成することが好ましい。
【0018】
図9は、研磨プロセスによる適切なプローブ先端部形状の形成を概略的に示す。
図9(A)の開始時点の構造では、プローブ先端部は、上述したような滑らかな曲面を有していない。研磨プロセス902により、
図9(A)の開始時点の構造から、
図9(B)に示す滑らかに湾曲したプローブ先端面402を形成することができる。
【0019】
研磨プロセスは、プローブ先端部に曲面を形成する初期先端形成ステップを含むことができる。このステップは、
図9に概略的に示すように、それ以前のステップで作製されたプローブの先端部が、曲面をほとんどまたは全く有していない場合に実施される。
【0020】
研磨プロセスはまた、デバイス試験におけるプローブの動作によるプローブ先端部の摩耗、及び/または、プローブ先端部のクリーニングプロセスによるプローブ先端部の摩耗を含むことができる。例示的な研磨プロセスとしては、例えば、被試験デバイスの代わりにサンドペーパーをプローブ先端部に接触させることが挙げられる。別の代替方法は、被試験デバイスの代わりに研磨弾性媒体をプローブ先端部に接触させることである。このようなプローブ先端部形状の形成プロセスは、各プローブに対して個別に行うのではなく、プローブのアレイ全体に対して1回の操作で行うことが好ましい。