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特許7407734光検出装置及び光検出装置の制御方法、並びに、測距装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】光検出装置及び光検出装置の制御方法、並びに、測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20231222BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20231222BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20231222BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20231222BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01C3/06 120Q
G01J1/42 H
G01J1/42 N
H01L31/10 B
H01L31/10 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020559892
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2019045367
(87)【国際公開番号】W WO2020116158
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018227809
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 治
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0217521(US,A1)
【文献】特開2015-117970(JP,A)
【文献】特開平07-063854(JP,A)
【文献】特表平02-500789(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107271036(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0180471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G01J 1/00 - 1/60
11/00
H01L 31/00 - 31/02
31/08 - 31/10
31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子、
受光素子に接続される負荷回路、及び、
受光素子の素子特性に応じて、負荷回路に流れるリチャージ電流を制御する制御部、
を備え
受光素子の素子特性は、温度センサによって検出される受光素子の温度である、
光検出装置。
【請求項2】
制御部は、受光素子の温度の低下に応じてリチャージ電流を上げる制御を行う、
請求項に記載の光検出装置。
【請求項3】
受光素子、
受光素子に接続される負荷回路、及び、
受光素子の素子特性に応じて、負荷回路に流れるリチャージ電流を制御する制御部、
を備え、
受光素子の素子特性は、受光素子のブレークダウン電圧であり、
制御部は、受光素子のブレークダウン電圧とリチャージ電流とを対応付けたルックアップテーブルを基にリチャージ電流の制御を行う、
光検出装置。
【請求項4】
制御部は、受光素子のブレークダウン電圧の低下に応じてリチャージ電流を上げる制御を行う、
請求項に記載の光検出装置。
【請求項5】
受光素子は、光子の受光に応じて信号を発生する素子である、
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項6】
受光素子は、単一光子アバランシェダイオードから成る、
請求項に記載の光検出装置。
【請求項7】
受光素子、及び、
受光素子に接続される負荷回路、
を備える光検出装置の制御に当たって、
温度センサによって検出される受光素子の温度に応じて、負荷回路に流れるリチャージ電流を制御する、
光検出装置の制御方法。
【請求項8】
測定対象物に対して光を照射する光源、及び、
測定対象物で反射された光を検出する光検出装置を有し、
光検出装置は、
受光素子、
受光素子に接続される負荷回路、及び、
受光素子の素子特性に応じて、負荷回路に流れるリチャージ電流を制御する制御部、
を備え
受光素子の素子特性は、温度センサによって検出される受光素子の温度である、
測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検出装置及び光検出装置の制御方法、並びに、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光検出を行う受光素子(受光部)として、光子の受光に応じて信号を発生する素子を用いた測距装置がある(例えば、特許文献1参照)。この従来技術に係る測距装置では、ToF(Time of Flight:飛行時間)の測定結果に基づいて、光量が低い場合は、パルスの数を検出し、光量が高い場合は、パルスの幅を検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-081254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光子の受光に応じて信号を発生する受光素子を光検出に用いる場合、例えばSPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子を用いるときには、アバランシェ電流によって引き下げられたカソード電圧を回復させるために、受光素子にリチャージ電流を流すリチャージ動作を行う必要がある。しかし、リチャージ電流が大きすぎると、光検出時に、カソード電圧が下がりきらずに貫通電流が流れたままになってしまう状態、所謂、ラッチングカレント問題が発生してしまう。
【0005】
このラッチングカレント問題が起こらないようにするためには、アバランシェ電流を考慮してリチャージ電流を決める必要があるが、アバランシェ電流は、温度依存性が大きいため最悪の条件を考慮して設定することになる。しかし、受光素子の動作温度要求範囲が広い場合は、室温などの条件では、必要以上に、光センサとして反応できない時間、所謂、デッドタイムが長くなってしまう問題が起こる。
【0006】
上記の特許文献1に記載の従来技術では、アバランシェ電流の温度依存性については考慮されていない。
【0007】
本開示は、広い温度範囲でラッチングカレント問題を起こすことなく、光検出動作を行うことができる光検出装置及び光検出装置の制御方法、並びに、当該光検出装置を有する測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の光検出装置は、
受光素子、
受光素子に接続される負荷回路、及び、
受光素子の素子特性に応じて、負荷回路に流れるリチャージ電流を制御する制御部、
を備える。
受光素子の素子特性は、温度センサによって検出される受光素子の温度である。
【0009】
また、上記の目的を達成するための本開示の光検出装置の制御方法は、
受光素子、及び、
受光素子に接続される負荷回路、
を備える光検出装置の制御に当たって、
温度センサによって検出される受光素子の温度に応じて、負荷回路に流れるリチャージ電流を制御する。
更に、上記の目的を達成するための本開示の測距装置( 距離測定装置) は、
測定対象物に対して光を照射する光源、及び、
測定対象物で反射された光を検出する光検出装置を備え、
光検出装置として、上記の構成の光検出装置を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る測距装置を示す概略構成図である。
図2図2A及び図2Bは、本開示の一実施形態に係る測距装置の具体的な構成を示すブロック図である。
図3図3Aは、SPAD素子を用いた光検出装置の基本的な画素回路の第1例を示す回路図であり、図3Bは、SPAD素子を用いた光検出装置の基本的な画素回路の第2例を示す回路図である。
図4図4Aは、SPAD素子のPN接合の電流-電圧特性を示す特性図であり、図4Bは、PN接合の電流-電圧特性の高温時の振る舞いについて説明する特性図である。
図5図5は、画素回路の回路動作の説明に供する波形図である。
図6図6は、照射光量が相対的に少ない場合のSPAD素子のデッドタイムDTについて説明する波形図である。
図7図7は、実施例1に係る光検出装置における画素回路を示す回路図である。
図8図8は、実施例2に係る光検出装置における画素回路を示す回路図である。
図9図9は、実施例3に係る光検出装置における画素回路を示す回路図である。
図10図10は、実施例4に係る光検出装置における画素回路を示す回路図である。
図11図11Aは、SPAD素子のPN接合のI-V特性の低温時及び高温時の振る舞いについて説明する特性図であり、図11Bは、ブレークダウン電圧とリチャージ電流とを対応付けたルックアップテーブルの一例を示す図である。
図12図12は、実施例5に係る光検出装置の制御方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
図14図14は、測距装置の設置位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る技術を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本開示に係る技術は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値などは例示である。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.本開示の光検出装置及び測距装置、全般に関する説明
2.実施形態に係る測距装置
2-1.測距装置の構成の概略
2-2.SPAD素子を用いた光検出装置の基本的な画素回路
2-2-1.第1例に係る画素回路
2-2-2.第2例に係る画素回路
2-3.画素回路の回路動作
2-4.SPAD素子のデッドタイムDTについて
2-5.ラッチングカレント問題について
3.実施形態に係る光検出装置
3-1.実施例1(SPAD素子の素子特性が温度の例)
3-2.実施例2(実施例1の変形例:負荷回路が定電流源から成る例)
3-3.実施例3(SPAD素子の素子特性がアバランシェ電流の例)
3-4.実施例4(SPAD素子の素子特性がブレークダウン電圧の例)
3-5.実施例5(実施形態に係る光検出装置の制御方法の例)
4.変形例
5.本開示に係る技術の適用例(移動体の例)
6.本開示がとることができる構成
【0012】
<本開示の光検出装置及び測距装置、全般に関する説明>
本開示の光検出装置及び測距装置にあっては、受光素子の素子特性について、温度センサによって検出される受光素子の温度である形態とすることができる。このとき、制御部について、受光素子の温度の低下に応じてリチャージ電流を上げる制御を行う構成とすることができる。
【0013】
上述した好ましい形態、構成を含む本開示の光検出装置及び測距装置にあっては、受光素子の素子特性について、受光素子のアバランシェ電流である形態とすることができる。このとき、制御部について、受光素子のアバランシェ電流とリチャージ電流との比が一定になるようにリチャージ電流の制御を行う構成とすることができる。
【0014】
あるいは又、上述した好ましい形態、構成を含む本開示の光検出装置及び測距装置にあっては、受光素子の素子特性について、受光素子のブレークダウン電圧である形態とすることができる。このとき、制御部について、受光素子のブレークダウン電圧の低下に応じてリチャージ電流を上げる制御を行う構成とすることができる。また、制御部について、受光素子のブレークダウン電圧とリチャージ電流とを対応付けたルックアップテーブルを基にリチャージ電流の制御を行う構成とすることができる。
【0015】
また、上述した好ましい形態、構成を含む本開示の光検出装置及び測距装置にあっては、受光素子について、光子の受光に応じて信号を発生する素子である構成とすることができる。また、受光素子について、単一光子アバランシェダイオードから成る構成とすることができる。
【0016】
<実施形態に係る測距装置>
[測距装置の構成の概略]
図1は、本開示の実施形態に係る測距装置を示す概略構成図である。本実施形態に係る測距装置1は、測定対象物である被写体10までの距離を測定する測定法として、被写体10に向けて照射した光(例えば、レーザ光)が、当該被写体10で反射されて戻ってくるまでの時間を測定するToF法を採用している。ToF法による距離測定を実現するために、本実施形態に係る測距装置1は、光源20及び光検出装置30を備えている。そして、光検出装置30として、後述する本開示の一実施形態に係る光検出装置を用いる。
【0017】
本実施形態に係る測距装置1の具体的な構成を図2A及び図2Bに示す。光源20は、例えば、レーザドライバ21、レーザ光源22、及び、拡散レンズ23を有し、被写体10に対してレーザ光を照射する。レーザドライバ21は、制御部40による制御の下に、レーザ光源22を駆動する。レーザ光源22は、例えば半導体レーザから成り、レーザドライバ21によって駆動されることによりレーザ光を出射する。拡散レンズ23は、レーザ光源22から出射されたレーザ光を拡散し、被写体10に対して照射する。
【0018】
光検出装置30は、受光レンズ31、光センサ32、及び、論理回路33を有し、レーザ照射部20による照射レーザ光が被写体10で反射されて戻ってくる反射レーザ光を受光する。受光レンズ31は、被写体10からの反射レーザ光を光センサ32の受光面上に集光する。光センサ32は、受光レンズ31を経た被写体10からの反射レーザ光を画素単位で受光し、光電変換する。光センサ32の出力信号は、論理回路33を経由して制御部40へ供給される。光センサ32の詳細については後述する。
【0019】
制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央処理ユニット)等によって構成され、光源20及び光検出装置30を制御するとともに、光源20から被写体10に向けて照射したレーザ光が、当該被写体10で反射されて戻ってくるまでの時間tの計測を行う。この計測した時間tを基に、被写体10までの距離Lを求めることができる。
【0020】
時間tを計測する方法としては、光源20からパルス光を照射したタイミングでタイマをスタートさせ、光検出装置30が当該パルス光を受光したタイミングでタイマをストップすることで時間tを計測する。時間計測のその他の方法として、光源20から所定の周期でパルス光を照射し、光検出装置30が当該パルス光を受光した際の周期を検出し、発光の周期と受光の周期との位相差から時間tを計測してもよい。時間計測は複数回実行され、複数回計測された時間を積み上げたヒストグラムのピークを検出することで時間tを計測する。
【0021】
光センサ32としては、受光素子(受光部)を含む画素が2次元アレイ状に配置されて成る2次元アレイセンサ(所謂、エリアセンサ)を用いることもできるし、受光素子を含む画素が直線状に配置されて成る1次元アレイセンサ(所謂、ラインセンサ)を用いることもできる。
【0022】
そして、本実施形態では、光センサ32として、画素の受光素子が、光子の受光に応じて信号を発生する素子、例えば、SPAD(Single Photon Avalanche Diode:単一光子アバランシェダイオード)素子から成るセンサを用いている。すなわち、本実施形態に係る光検出装置30は、画素の受光素子がSPAD素子から成る構成となっている。尚、受光素子については、SPAD素子に限定されず、APD(Avalanche Photo Diode)やCAPD(Current Assisted Photonic Demodulator)等の種々の素子であってもよい。
【0023】
[SPAD素子を用いた光検出装置の基本的な画素回路]
SPAD素子を用いた光検出装置30の基本的な画素回路の第1例を図3Aに示し、第2例を図3Bに示す。ここでは、1画素分の基本構成を図示している。
【0024】
(第1例に係る画素回路)
画素回路の第1例は、負荷回路55が抵抗素子Rから成る例である。第1例に係る画素回路50では、SPAD素子51は、カソード電極が、負荷回路55である抵抗素子Rを介して、電源電圧VDDが与えられる端子52に接続され、アノード電極が、アノード電圧Vbdが与えられる端子53に接続されている。アノード電圧Vbdとしては、アバランシェ増倍が発生する大きな負電圧が印加される。そして、SPAD素子51のカソード電圧VCAが、P型MOSトランジスタQp及びN型MOSトランジスタQnから成る波形整形回路54を介してSPAD出力(画素出力)として導出される。
【0025】
SPAD素子51には、ブレークダウン電圧VBD(例えば、-50~-10V)以上の電圧が印加される。ブレークダウン電圧VBD以上の過剰電圧は、エクセスバイアス電圧VEXと呼ばれ、2-5V程度の電圧が一般的である。これは、従来のフォトダイオードよりも大きな値である。SPAD素子51は、DC的な安定点が無いガイガーモードと呼ばれる領域で動作する。SPAD素子51のPN接合のI(電流)-V(電圧)特性を図4Aに示す。
【0026】
ここで、SPAD素子51のPN接合のI-V特性の高温時の振る舞いについて、図4Bの特性図を用いて説明する。図4Bの特性図において、高温時の特性を破線で図示している。高温時は、ブレークダウン電圧VBDが、よりマイナス側にシフトしてアバランシェ電流Iaが減少してしまう。すなわち、高温時は、シリコンの格子振動が大きいため、電子の平均自由行程が短くなっている。従って、高電界が印加されていても、高エネルギーになる電子が少ないため、アバランシェ電流Iaが発生しずらくなる。
【0027】
(第2例に係る画素回路)
画素回路の第2例は、負荷回路55が定電流源、例えばP型MOSトランジスタQLから成る例である。第2例に係る画素回路50は、第1例に係る画素回路50における負荷回路55を、抵抗素子RからP型MOSトランジスタQLに置き換えただけの違いであり、それ以外の回路構成は、基本的に、図3Aに示す第1例に係る画素回路50と同じである。
【0028】
[画素回路の回路動作]
続いて、上記の構成の画素回路50の回路動作について、図5の波形図を用いて説明する。
【0029】
SPAD素子51に電流が流れていない状態では、SPAD素子51には、VDD-Vbdの電圧が印加されている。この電圧値(VDD-Vbd)は、(VBD+VEX)である。そして、SPAD素子51のPN接合部で暗電子の発生レートDCR(Dark Count Rate)や光照射によって発生した電子がアバランシェ増倍を生じ、アバランシェ電流Iaが発生する。この現象は、遮光されている状態(即ち、光が入射していない状態)でも確率的に発生している。これが暗電子の発生レートDCRである。
【0030】
カソード電圧VCAが低下し、SPAD素子51の端子間電圧、即ちカソード電圧VCAがPNダイオードのブレークダウン電圧VBDになると、アバランシェ電流Iaが停止する。この動作が、所謂、クエンチ動作であり、このときのSPAD素子51のカソード電圧VCAがクエンチ電圧である。
【0031】
そして、負荷回路55である抵抗素子R、又は、P型MOSトランジスタQLからリチャージ電流Irが供給されることで、SPAD素子51のカソード電圧VCAが、クエンチ電圧から電源電圧VDDまで回復し、再び初期状態に戻る。すなわち、抵抗素子R、又は、P型MOSトランジスタQLから成る負荷回路55は、SPAD素子51のカソード電圧VCAを回復させるためにSPAD素子51にリチャージ電流Irを供給するリチャージ回路である。
【0032】
SPAD素子51に光が入射して1個でも電子-正孔対が発生すると、それが種となってアバランシェ電流Iaが発生するので、光子1個の入射でも、ある確率PDE(Photon Detection Efficiency)で検出することができる。この光子を検出できる確率PDEは、通常、数%~20%程度のものが多い。
【0033】
以上の動作が繰り返される。そして、この一連の動作において、カソード電圧VCAが、波形整形回路54で波形整形され、1フォトンの到来時刻を開始点とするパルス幅Tのパルス信号がSPAD出力(画素出力)となる。
【0034】
SPAD素子51は、単一光子の入射を、ある確率PDEで検出できる高性能な光センサである。しかし、一度光子の検出を行うと、数ns~数十nsの間、光センサとして光子に反応できない時間、即ち、デッドタイムDT(Dead Time)が存在する。そのため、高光量条件になって光子の検出頻度が高くなり、デッドタイムDTのトータル時間が観測時間に対して無視できない大きさになると、光検出精度が低下する。
【0035】
[光子に反応できないデッドタイムDT]
ここで、光センサとして光子に反応できないデッドタイムDTについて、図6の波形図を用いてより具体的に説明する。上述したように、SPAD素子51には、カソード電圧VCAが電源電圧VDDまで回復する時間に起因して、光入射があっても反応できないデッドタイムDTが存在する。例えば、領域aでは、アバランシェ増倍が2回発生し、これに伴ってSPAD出力として2つのパルス信号が生成されるが、領域bでは、アバランシェ増倍が2回発生しているが、パルス信号の生成は1つである。
【0036】
理論的には、SPAD素子51が一度反応してからカソード電圧VCAが、次段の波形整形回路54の閾値電圧以上の電圧になるまでに発生した光入射に対しては、SPAD素子51はSPAD出力を生成しない。つまり、この期間がデッドタイムDTであり、パルス幅Tがその限界値となる。
【0037】
[ラッチングカレント問題について]
上述したように、SPAD素子51を用いた光検出動作は、アバランシェ電流Iaの発生/停止を繰り返すことによって行われる。アバランシェ電流Iaによって引き下げられたSPAD素子51のカソード電圧VCAは、負荷回路55(抵抗素子RやP型MOSトランジスタQLから成る定電流源)からリチャージ電流Irが供給されることによって電源電圧VDDへの回復が行われる。
【0038】
ここで、リチャージ電流Irは、大きいほど、カソード電圧VCAの電源電圧VDDへの回復が早く、光センサとして光子に反応できないデッドタイムDTが短くなるため、特性的には有利である。すなわち、リチャージ電流Irが大きいほど、回復時間(デッドタイムDT)が短く、光センサとして良好な特性を実現できる。しかし、アバランシェ電流Iaに比べてリチャージ電流Irを十分に小さくする必要があり、温度依存性が大きい。
【0039】
SPAD素子51を光センサ32として用いる光検出装置30を有する測距装置1については、後述するように、自動車などの移動体に搭載して用いることができる。このように車両に搭載する場合など、広範囲の温度範囲動作を実現しようとする場合、室温でのデッドタイムDTが悪化するなどの弊害が発生してしまう。
【0040】
SPAD素子51はダイオード構造となっており、SPAD素子51に電流が流れていない状態では、ブレークダウン電圧VBDよりも大きな電圧が印加されている(ガイガーモード)。この状態で光子や熱雑音起因でのアバランシェ電流Iaが流れることによってSPAD素子51のカソード電圧VCAが低下し、アノード電圧VANとの差電圧(VCA-VAN)がブレークダウン電圧VBDになると、アバランシェ電流Iaが停止することでON/OFFの動作を行う。しかし、ブレークダウン電圧VBDは温度依存性が大きく、高温条件ではより大きな電圧をかける必要があり、アバランシェ電流Iaも減少してしまう。
【0041】
SPAD素子51を光検出に用いる場合は、アバランシェ電流Iaによって引き下げられたカソード電圧VCAを回復させるために、先述したように、抵抗素子RやP型MOSトランジスタQLから成る定電流源などによってリチャージ動作が行われる。そして、リチャージ電流Irは大きいほど回復が早く、光センサとして反応できないデッドタイムDTを短くできる。
【0042】
一方、光検出時には、SPAD素子51のアバランシェ電流Iaがリチャージ電流Irよりも十分に大きく、カソード電圧VCAがブレークダウン電圧VBDになるところまで低下する必要がある。そのため、リチャージ電流Irが大きすぎると、光検出時に、カソード電圧VCAが下がりきらずに貫通電流が流れたままになってしまうラッチングカレント問題が発生してしまう。
【0043】
そのため、リチャージ電流Irについて、ラッチングカレント問題が起こらないように、アバランシェ電流Iaを考慮して決める必要があるが、アバランシェ電流Iaは温度依存性が大きいため最悪の条件で設定することになる。車両に搭載する場合など、動作温度要求範囲が広い場合、室温などの条件では必要以上にデッドタイムDTが長くなってしまう問題が起こる。
【0044】
<実施形態に係る光検出装置>
本開示の実施形態に係る光検出装置30は、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御する制御部が、受光素子の一例であるSPAD素子51の素子特性に応じてリチャージ電流Irを制御する構成となっている。これにより、例えば車両に搭載する場合など、広い温度範囲でラッチングカレント問題を起こすことなく、光検出動作を行うことができるため、例えば車載規格温度に対応できる。また、温度毎に適切なリチャージ電流Irを設定できるため、最悪の条件でリチャージ電流Irを決める必要がなく、各条件で最適なデッドタイムDTが実現できる。更に、敢えてデッドタイムDTを長くするようなモード、例えば、省エネモードや夜間モード等の設定も可能になる。
【0045】
以下に、SPAD素子51の素子特性に応じてリチャージ電流Irを制御する本実施形態の具体的な実施例について説明する。
【0046】
[実施例1]
実施例1は、SPAD素子51の素子特性が、SPAD素子51の温度の例である。実施例1に係る光検出装置における画素回路の回路図を図7に示す。
【0047】
図7には、1画素分の回路構成を図示している。実施例1に係る画素回路50は、SPAD素子51、波形整形回路54、及び、負荷回路55の他、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御する制御部61、及び、SPAD素子51の素子特性としてSPAD素子51の温度を検出する温度センサ62を備えている。制御部61及び温度センサ62は、複数の画素回路50に対して共通に設けられることになる。
【0048】
また、実施例1に係る画素回路50は、負荷回路55として、抵抗値が可変な可変抵抗素子VRを用いている。可変抵抗素子VRは、抵抗値の変化によってSPAD素子51に供給するリチャージ電流Irを変えることができる。
【0049】
尚、ここでは、負荷回路55として可変抵抗素子VRを用いるとしているが、これに限られるものではなく、例えば、複数の抵抗素子とスイッチ素子との組み合わせから成り、スイッチ素子によって抵抗値を変更する構成とすることもできる。
【0050】
制御部61は、温度センサ62によって検出されるSPAD素子51の温度を素子特性として、当該素子特性に応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Ir、即ち、SPAD素子51に供給するリチャージ電流Irを制御する。より具体的には、制御部61は、所定の設定温度に対するSPAD素子51の温度の低下に応じてリチャージ電流Irを上げ、逆に、温度の上昇に応じてリチャージ電流Irを下げる制御を行う。低温時に、リチャージ電流Irを増やすことで、デッドタイムDTを短縮することができる。また、高温時に、リチャージ電流Irを減らすことで、確実にクエンチ動作を実現することができる。
【0051】
光検出装置は、例えば、第1半導体基板と第2半導体基板の少なくとも2つの半導体基板基板が積層されて成る積層構造を有し、第1半導体基板にSPAD素子51が2次元アレイ状に配置され、第2半導体基板にSPAD素子51を除く画素回路50等の回路部が配置される。この光検出装置の積層構造において、温度センサ62は、例えば第2半導体基板に搭載されることで、SPAD素子51の温度を検出することができる。温度センサ62としては、例えば、半導体のバンドギャップで温度変化により電気特性が比例的に変化する特性を利用して温度を計測する周知の温度センサを用いることができる。
【0052】
上述したように、実施例1に係る画素回路50を備える光検出装置では、SPAD素子51の温度に応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御するようにしている。これにより、広い温度範囲でラッチングカレント問題を起こすことなく、光検出動作を行うことができる。また、温度毎に適切なリチャージ電流Irを設定できるため、最悪の条件でリチャージ電流Irを決める必要がなく、各条件で最適なデッドタイムDTが実現できる。
【0053】
[実施例2]
実施例2は、実施例1の変形例であり、負荷回路55が定電流源、例えばP型MOSトランジスタQLから成る例である。実施例2に係る光検出装置における画素回路の回路図を図8に示す。
【0054】
負荷回路55は、P型MOSトランジスタQLのゲート電圧が変化することによってSPAD素子51に供給するリチャージ電流Irを変えることができる。そこで、制御部61は、温度センサ62によって検出されるSPAD素子51の温度に応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Ir、即ち、SPAD素子51に供給するリチャージ電流Irを制御する。
【0055】
尚、ここでは、負荷回路55として単一のP型MOSトランジスタQLを用い、そのゲート電圧を変更することによってリチャージ電流Irを制御するとしたが、これに限られるものではなく、例えば、P型MOSトランジスタQLを構成するトランジスタの並列接続数を変更する構成とすることもできる。
【0056】
負荷回路55が定電流源から成る実施例2に係る画素回路50を備える光検出装置にあっても、負荷回路55が可変抵抗素子VRから成る実施例1に係る画素回路50を備える光検出装置と同様の作用、効果を得ることができる。すなわち、SPAD素子51の温度に応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御するようにしているため、広い温度範囲でラッチングカレント問題を起こすことなく、光検出動作を行うことができる。また、温度毎に適切なリチャージ電流Irを設定できるため、最悪の条件でリチャージ電流Irを決める必要がなく、各条件で最適なデッドタイムDTが実現できる。
【0057】
[実施例3]
実施例3は、SPAD素子51の素子特性が、SPAD素子51のアバランシェ電流Iaの例である。実施例5に係る光検出装置における画素回路の回路図を図9に示す。
【0058】
実施例3に係る画素回路50は、実施例2と同様に、負荷回路55が定電流源、例えばP型MOSトランジスタQLから成り、SPAD素子51の素子特性として、SPAD素子51のアバランシェ電流Iaをモニタするアバランシェ電流観測回路63を有する構成となっている。
【0059】
制御部61は、アバランシェ電流観測回路63によって検出されるSPAD素子51のアバランシェ電流Iaを素子特性として、当該素子特性に応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御する。より具体的には、制御部61は、SPAD素子51のアバランシェ電流Iaとリチャージ電流Irとの比が一定になるようにリチャージ電流Irの制御を行う。アバランシェ電流Iaとリチャージ電流Irとの比については、例えば、100:1の比に固定とする。
【0060】
上述したように、実施例3に係る画素回路50を備える光検出装置では、SPAD素子51のアバランシェ電流Iaに応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御するようにしている。これにより、広い温度範囲でラッチングカレント問題を起こすことなく、光検出動作を行うことができる。また、温度毎に適切なリチャージ電流Irを設定できるため、最悪の条件でリチャージ電流Irを決める必要がなく、各条件で最適なデッドタイムDTが実現できる。
【0061】
尚、実施例3では、実施例2の場合と同様に、負荷回路55が定電流源、例えばP型MOSトランジスタQLから成る画素回路を例示したが、実施例1の場合と同様に、負荷回路55が可変抵抗素子VRから成る画素回路の場合であっても、同様の作用、効果を得ることができる。
【0062】
[実施例4]
実施例4は、SPAD素子51の素子特性が、SPAD素子51のブレークダウン電圧VBDの例である。実施例4に係る光検出装置における画素回路の回路図を図10に示す。
【0063】
実施例4に係る画素回路50は、実施例2の場合と同様に、負荷回路55が定電流源、例えばP型MOSトランジスタQLから成り、SPAD素子51と同じ素子特性を有するリファレンスSPAD素子64を有し、リファレンスSPAD素子64のブレークダウン電圧VBDを、SPAD素子51の素子特性としてモニタする構成となっている。
【0064】
リファレンスSPAD素子64のブレークダウン電圧VBDについては、リファレンスSPAD素子64のI-V特性から求めることができる。具体的には、例えば、単体のリファレンスSPAD素子64のカソード電極/アノード電極に逆方向電圧を印加して、所望の電流が流れる電圧差をブレークダウン電圧VBDと定義する。あるいは、リファレンスSPAD素子64に電流を流し、このとき発生する電圧差をモニタしてブレークダウン電圧VBDと定義する。
【0065】
制御部61は、リファレンスSPAD素子64のブレークダウン電圧VBDを、SPAD素子51の素子特性(ブレークダウン電圧VBD)として検出し、当該素子特性に応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御する。より具体的には、制御部61は、SPAD素子51の素子特性であるブレークダウン電圧VBDの低下に応じてリチャージ電流Irを上げる制御を行う。
【0066】
SPAD素子51は、高温条件時ほど、ブレークダウン電圧VBDの絶対値は大きくなり、エクセスバイアス電圧VEXが一定だとしても、アバランシェ電流Iaは減少する。従って、事前に、それぞれのブレークダウン電圧VBDの条件での負荷回路55に流れるリチャージ電流Irについて最適な電流値を求めておく。そして、ブレークダウン電圧VBDとリチャージ電流Irとを対応付けたルックアップテーブルを作成し、当該ルックアップテーブルを基にリチャージ電流Irの制御を行うようにする。
【0067】
SPAD素子のPN接合のI-VF特性の低温時及び高温時の振る舞いについて図11Aに示し、ブレークダウン電圧VBDとリチャージ電流Irとを対応付けたルックアップテーブルの一例を図11Bに示す。
【0068】
上述したように、実施例4に係る画素回路50を備える光検出装置では、SPAD素子51のブレークダウン電圧VBDに応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御するようにしている。これにより、広い温度範囲でラッチングカレント問題を起こすことなく、光検出動作を行うことができる。また、温度毎に適切なリチャージ電流Irを設定できるため、最悪の条件でリチャージ電流Irを決める必要がなく、各条件で最適なデッドタイムDTが実現できる。
【0069】
尚、実施例4では、実施例2の場合と同様に、負荷回路55が定電流源、例えばP型MOSトランジスタQLから成る画素回路を例示したが、実施例1の場合とと同様に、負荷回路55が可変抵抗素子VRから成る画素回路の場合であっても、同様の作用、効果を得ることができる。
【0070】
[実施例5]
実施例5は、本開示の実施形態に係る光検出装置30の制御方法の例である。実施例5に係る光検出装置の制御方法の処理の一例のフローチャートを図12に示す。
【0071】
ここでは、制御方法の一例として、実施例1に係る光検出装置、即ち、SPAD素子51の温度を、SPAD素子51の素子特性として用いる光検出装置における制御方法について説明する。本制御方法の処理は、制御部61による制御の下に実行される。
【0072】
制御部61は、温度センサ62からSPAD素子51の温度を、SPAD素子51の素子特性として取得し(ステップS11)、次いで、SPAD素子51の素子特性として取得したSPAD素子51の温度を所定の設定温度と比較し(ステップS12)、設定温度であれば(S12のYES)、本制御方法のための一連の処理を終了する。
【0073】
制御部61は、SPAD素子51の温度が設定温度よりも低下していれば(S12の低下)、リチャージ電流Irを上げる処理を行い(ステップS13)、しかる後、ステップS11の処理に戻り、上述した処理を繰り返して実行する。また、制御部61は、SPAD素子51の温度が設定温度よりも上昇していれば(S12の上昇)、リチャージ電流Irを下げる処理を行い(ステップS14)、しかる後、ステップS11の処理に戻り、上述した処理を繰り返して実行する。
【0074】
上述したように、実施例5に係る光検出装置の制御方法では、SPAD素子51の温度を、SPAD素子51の素子特性として温度センサ62から取得し、その取得したSPAD素子51の温度に応じて、負荷回路55に流れるリチャージ電流Irを制御するようにしている。これにより、広い温度範囲でラッチングカレント問題を起こすことなく、光検出動作を行うことができる。また、温度毎に適切なリチャージ電流Irを設定できるため、最悪の条件でリチャージ電流Irを決める必要がなく、各条件で最適なデッドタイムDTが実現できる。
【0075】
<変形例>
以上、本開示に係る技術について、好ましい実施形態に基づき説明したが、本開示に係る技術は当該実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態において説明した撮像装置の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。例えば、上記の実施形態では、受光素子としてSPAD素子を用いる場合を例に挙げて説明したが、受光素子としては、SPAD素子に限られるものではなく、APDやCAPD等の素子を用いても同様の作用、効果を得ることができる。
【0076】
<本開示に係る技術の適用例>
本開示に係る技術は、様々な製品に適用することができる。以下に、より具体的な適用例について説明する。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される測距装置として実現されてもよい。
【0077】
[移動体]
図13は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図13に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0078】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図13では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0079】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0080】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0081】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0082】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0083】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0084】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0085】
ここで、図14は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0086】
尚、図14には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0087】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0088】
図13に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0089】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0090】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0091】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0092】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0093】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX、LTE(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0094】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0095】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。尚、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0096】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。尚、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0097】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0098】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0099】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0100】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0101】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図13の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0102】
尚、図13に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0103】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部7910,7912,7914,7916,7918や車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930に適用され得る。そして、本開示に係る技術を適用することにより、光検出装置として、車載規格温度に対応可能で、広い温度範囲でラッチングカレント問題を起こすことなく、光検出動作を行うことができるため、例えば、撮像対象を高精度にて検出可能な車両制御システムを構築できる。
【0104】
<本開示がとることができる構成>
尚、本開示は、以下のような構成をとることもできる。
【0105】
≪A.光検出装置≫
[A-1]受光素子、
受光素子に接続される負荷回路、及び、
受光素子の素子特性に応じて、負荷回路に流れるリチャージ電流を制御する制御部、
を備える光検出装置。
[A-2]受光素子の素子特性は、温度センサによって検出される受光素子の温度である、
上記[A-1]に記載の光検出装置。
[A-3]制御部は、受光素子の温度の低下に応じてリチャージ電流を上げる制御を行う、
上記[A-2]に記載の光検出装置。
[A-4]受光素子の素子特性は、受光素子のアバランシェ電流である、
上記[A-1]に記載の光検出装置。
[A-5]制御部は、受光素子のアバランシェ電流とリチャージ電流との比が一定になるようにリチャージ電流の制御を行う、
上記[A-4]に記載の光検出装置。
[A-6]受光素子の素子特性は、受光素子のブレークダウン電圧である、
上記[A-1]に記載の光検出装置。
[A-7]制御部は、受光素子のブレークダウン電圧の低下に応じてリチャージ電流を上げる制御を行う、
上記[A-6]に記載の光検出装置。
[A-8]制御部は、受光素子のブレークダウン電圧とリチャージ電流とを対応付けたルックアップテーブルを基にリチャージ電流の制御を行う、
上記[A-7]に記載の光検出装置。
[A-9]受光素子は、光子の受光に応じて信号を発生する素子である、
上記[A-1]乃至上記[A-8]のいずれかに記載の光検出装置。
[A-10]受光素子は、単一光子アバランシェダイオードから成る、
上記[A-9]に記載の光検出装置。
【0106】
≪B.測距装置(距離測定装置)≫
[B-1]測定対象物に対して光を照射する光源、及び、
測定対象物で反射された光を検出する光検出装置を有し、
光検出装置は、
受光素子、
受光素子に接続される負荷回路、及び、
受光素子の素子特性に応じて、負荷回路に流れるリチャージ電流を制御する制御部、
を備える、
測距装置。
[B-2]受光素子の素子特性は、温度センサによって検出される受光素子の温度である、
上記[B-1]に記載の測距装置。
[B-3]制御部は、受光素子の温度の低下に応じてリチャージ電流を上げる制御を行う、
上記[B-2]に記載の測距装置。
[B-4]受光素子の素子特性は、受光素子のアバランシェ電流である、
上記[B-1]に記載の測距装置。
[B-5]制御部は、受光素子のアバランシェ電流とリチャージ電流との比が一定になるようにリチャージ電流の制御を行う、
上記[B-4]に記載の測距装置。
[B-6]受光素子の素子特性は、受光素子のブレークダウン電圧である、
上記[B-1]に記載の測距装置。
[B-7]制御部は、受光素子のブレークダウン電圧の低下に応じてリチャージ電流を上げる制御を行う、
上記[B-6]に記載の測距装置。
[B-8]制御部は、受光素子のブレークダウン電圧とリチャージ電流とを対応付けたルックアップテーブルを基にリチャージ電流の制御を行う、
上記[B-7]に記載の測距装置。
[B-9]受光素子は、光子の受光に応じて信号を発生する素子である、
上記[B-1]乃至上記[B-8]のいずれかに記載の測距装置。
[B-10]受光素子は、単一光子アバランシェダイオードから成る、
上記[B-9]に記載の測距装置。
【符号の説明】
【0107】
1・・・測距装置、10・・・被写体(測定対象物)、20・・・光源、21・・・レーザドライバ、22・・・レーザ光源、23・・・拡散レンズ、30・・・光検出装置、31・・・受光レンズ、32・・・光センサ、33・・・回路部、40・・・制御部、50・・・画素回路、51・・・SPAD素子、54・・・波形整形回路、55・・・負荷回路、61・・・制御部、62・・・温度センサ、63・・・アバランシェ電流観測回路、64・・・リファレンスSPAD素子
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