(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】白朮及び五味子の抽出物を含む、鎮咳去痰活性を有する組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/79 20060101AFI20231222BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231222BHJP
A61P 11/10 20060101ALI20231222BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20231222BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231222BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231222BHJP
A61K 36/284 20060101ALI20231222BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231222BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20231222BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
A61K36/79
A61P43/00 121
A61P11/10
A61P11/14
A61P11/00
A61P29/00
A61K36/284
A23L33/105
A61K131:00
A61K125:00
(21)【出願番号】P 2020560326
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(86)【国際出願番号】 KR2019004598
(87)【国際公開番号】W WO2019212170
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0049840
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518208484
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン ス
(72)【発明者】
【氏名】リム ジョン レ
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第1050520(CN,C)
【文献】特開2007-161643(JP,A)
【文献】J Nat Med., 2016, Vol.70, p.36-44
【文献】天然薬物事典,第1刷,株式会社廣川書店,1986年,p.159(五味子)
【文献】和漢薬の選品と薬効,第3刷,(株)たにぐち書店,2000年,p.22-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/79
A61P 43/00
A61P 11/10
A61P 11/14
A61P 11/00
A61P 29/00
A61K 36/284
A23L 33/105
A61K 131/00
A61K 125/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分が、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の抽出物から成り、白朮及び五味子の抽出物又は蒼朮及び五味子の抽出物において、白朮及び五味子の重量比又は蒼朮及び五味子の重量比が0.4:1~5:1であり、前記抽出物は、炭素数1~4の低級アルコールの10%以上水溶液、または炭素数1~4の低級アルコールを用いた抽出物である、咳または痰を改善または予防するための組成物。
【請求項2】
前記組成物が、医薬品、保健機能食品、食品、飲料または食品添加物
の形態で用いられることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の混合抽出物を有効成分として含む、呼吸器疾患を治療または予防するための組成物に関する。具体的には、本発明は、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の混合抽出物が、それらの単一抽出物と比較して、優れた抗炎症及び鎮咳去痰作用を有することを確認することにより、呼吸器疾患の治療または予防に有用な組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
咳は、咽喉、喉頭、気管支、胸膜、鼓膜、副鼻腔、横隔膜、胃、食道などに分布する感覚受容体が物理化学的刺激を検知し、迷走神経を介して脳幹に刺激を伝達することで誘発される。咳は、異物が下気道に吸い込まれるのを防ぐための防御メカニズムであり、気道の過剰な分泌物や異物を取り除くための作用である。咳自体は重要であるが、咳による疲労、頭痛、喉の嗄れ、尿失禁、筋骨格系疼痛などの合併症を引き起こすため、咳の原因を特定し、治療または予防することが重要である。
【0003】
一般に、3週間以上続く咳は慢性の咳と呼ばれ、風邪によって誘発される急性の咳とは異なり、様々な原因による病気から発生する。咳は肺の重要な防御メカニズムであるが、通常よりも頻繁に咳が出る場合は、肺や気管支に疾患が存在することを意味するため、正確な原因を探す必要がある。
【0004】
また、外部からほこりや刺激物などが体内に入ると、我々の気管支では唾液とともに筋肉運動を行うことで体外に押し出すことになるが、それが喀痰形成の原因となる。普段、意識することはないが、喀痰は持続的に生成され、喉頭を通過し、胃腸管に飲み込まれることで処理される。喀痰の産生増加、粘度の変化、または喀痰の処理能力の低下などにより、喀痰が気道に貯留され、咳や呼吸困難などの症状を引き起こすことになる。
【0005】
近年では、微細ほこりに急性的または慢性的に曝露されることから咳や呼吸困難が生じ、肺機能が低下されるか、あるいは慢性気管支炎が増加するなどの様々な症状が発生している。故に、現代の人々にとって、これらの呼吸器疾患を予防または治療するための安全且つ効果的な方法を提供することは非常に重要である。
【0006】
鎮咳去痰剤は、鎮咳剤と去痰剤に大別されるが、鎮咳剤とは、原因に関係なく咳を抑える薬のことである。作用メカニズムによって中枢神経系に作用する薬物と末梢神経系に作用するものに分けられるが、その中でも中枢神経系に作用する薬剤は、麻薬類、麻薬誘導体、及び非麻薬類に分けられる。麻薬類の薬剤として代表的なものは、コデイン(codein)、ヒドロコドン(hydrocodone)、モルヒネ(morphin)などがあり、それらは限定した咳の抑制効果が証明されているが、結果が一定でなく、さらに、最適な用量でも、眠気、便秘、消化不良、薬物乱用または依存症の危険がある。末梢神経系に作用する鎮咳剤のうち、韓国で最も一般的に用いられる薬剤はレボドロプロピジン(Levodropropizine)であって、気道内の感覚神経ペプチドのレベルを調節することで効果を発揮すると考えられている。その他にテオブロミン(Theobromine)もそれに該当する。
【0007】
喀痰の主成分は粘液であるが、気管支粘液は、正常的に気管支粘膜に分布する粘液腺及び粘膜下腺を構成する粘液腺細胞と漿液腺細胞から分泌される。粘液は、95%が水であり、残りの5%が糖タンパク質、脂質、ミネラルなどで構成されているが、糖タンパク質の構造が線状ポリマーの二重構造からなるゲル状であるため、粘着性がある。このような喀痰を除去する去痰剤は、喀痰の水分含有量を増加させるための薬剤と、喀痰タンパク質のS-S結合を解除することで粘度を低下させるための粘液溶解剤に分けられる。このような去痰剤としては、N-アセチルシステイン(N-acetylcysteine)やカルボシステイン(carbocysteine)などのシステイン誘導体が用いられているが、このようなシステイン誘導体は、長期使用すると気管支攣縮などの副作用を引き起こす虞がある。従って、副作用や毒性は少なく、去痰効果に優れた去痰剤の開発が求められている。
【0008】
さらに、天然物由来の鎮咳去痰剤として、ツタの葉抽出物及びツタの葉と黄連抽出物の複合剤が広く使用されている。しかしながら、黄連の場合、動物実験で確認したところ、神経毒性や腎腸機能障害を誘発するなど、安全性と毒性における副作用がある。特に、黄連の主成分として知られているベルベリン(berberine)は、抗ガン活性、抗炎症効能などを奏することで広く知られているアルカロイドの薬理活性物質であるが、急性毒性を引き起こす物質であるため、使用する際に注意する必要がある。従って、安全性が確保され、汎用使用可能な生薬を用いた天然物製剤の開発が求められている。
【0009】
蒼朮とは、キク科(Compositae)に属するオケラ(Atractylodes japonica Koidzumi)の根茎を指し、白朮とは、根茎の端にある肥大な根皮を剥がし、乾燥させたものを指す。白朮及び蒼朮の性質は暖かく、味は甘苦く、主に脾臓と胃腸に作用し、脾臓を補い、胃腸を益し、湿気を燥かし、中焦を調和させる作用がある。故に、白朮及び蒼朮は、食欲不振、倦怠無力、脾臓及び胃の衰弱、及び下痢などの消化器系の機能低下を治療する薬剤として知られている。主な薬理活性成分として、アトラクチロン(atractylone)、オイデスモール(eudesmol)、パルミチン酸(palmitic acid)、ヒネソール(hinesol)などが含まれており、腸管運動の促進、肝臓の保護と利胆作用、抗酸化、血糖値の低下、胃潰瘍の予防などの効能が知られている。
【0010】
五味子(Schizandra chinensis Baillon)は、マツブサ科(Schizandraceae)に属する落葉性の木登り植物であり、赤い実が生薬剤や食品原料として使われている主な薬用植物の一つである。韓国には2つの属と3つの種のマツブサ科が分布されているが、五味子には、血圧の低下作用やアルコールの解毒作用に効果があることが知られ、ガン予防活性、老化防止活性、免疫調節作用、及び抗菌活性などの様々な生理機能を有していることが報告されている。五味子の果実に含まれている成分としては、シザンドリン(schizandrin)、ゴミシンA(gomisin A)、またはゴミシンN(gomisin N)などの主にリグナン化合物があり、その他に精油、顔料など、様々な成分も含まれている。特に、シザンドリンは、血糖降下作用、抗潰瘍作用、慢性肝炎治療効果、中枢神経系刺激作用、及び肝臓保護などの効能を示すことが知られている。
【0011】
現在用いられている鎮咳去痰剤の副作用や問題点を克服し、優れた鎮咳去痰効果を有する新たな天然物由来の治療薬を開発する必要がある。
【0012】
そのため、従来では主に消化機能の改善に用いられてきた白朮または蒼朮の抽出物が、鎮咳・去痰においても優れた効果を示すことが実験により新たに確認された。さらに驚くべきことに、白朮または蒼朮を五味子と併用すると、鎮咳及び去痰効果が著しく改善されることが確認された。また、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の混合物が抗炎症効果を有することを確認し、それにより、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の混合抽出物に関する本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の混合抽出物を有効成分として含む、咳、痰、及び炎症関連疾患を改善または予防するための組成物を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の混合抽出物が、それぞれの生薬抽出物を独立して含有する場合よりもはるかに少ない量でも優れた効能を示す、炎症、咳、または喀痰を改善または予防するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の混合抽出物を有効成分として含む、咳または痰を改善または予防するための組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、白朮及び五味子、または蒼朮及び五味子の混合抽出物を有効成分として含む、炎症性疾患を改善または予防するための組成物に関し、前記炎症性疾患には、急性または慢性の気管支炎、カタル性気管支炎、及び炎症性気管支炎が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明において、「白朮及び五味子の(混合)抽出物」とは、白朮と五味子をそれぞれ抽出して得られた白朮抽出物と五味子抽出物の混合物と、白朮と五味子の混合物を抽出することにより得られた抽出物との両方を意味する。
【0017】
本発明において、「蒼朮及び五味子の(混合)抽出物」とは、蒼朮と五味子をそれぞれ抽出して得られた蒼朮抽出物と五味子抽出物の混合物と、蒼朮と五味子の混合物を抽出することにより得られた抽出物との両方を意味する。
【0018】
本発明に用いられる抽出方法としては、通常用いられるあらゆる方法が利用可能であり、例えば、浸漬(冷浸または温浸)、熱水抽出、超音波抽出、または還流冷却抽出の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
驚くべきことに、白朮及び五味子の混合抽出物、並びに蒼朮及び五味子の混合抽出物が、白朮、蒼朮、または五味子の単一抽出物と比較して、抗炎症及び鎮咳去痰活性において非常に優れた効果を示すことを実験により確認し、本発明を達成するに至った。
【0020】
白朮及び五味子の混合抽出物、並びに蒼朮及び五味子の混合抽出物における抗炎症及び鎮咳去痰作用の相乗効果を最大化するために、生薬重量に対して、白朮(または蒼朮)及び五味子の重量比が0.1:1~10:1の量、より好ましくは、白朮(または蒼朮)及び五味子の重量比が0.2:1~9:1の量、さらに好ましくは、0.4:1~8:1の量、最も好ましくは、1:1~7:1の量で含まれる場合、著しく優れた効果を示すことを確認することができる。白朮(または蒼朮)及び五味子が5:1の比率で含まれる場合、最も優れた効果を示す。
【0021】
本発明に係る抽出物とは、粗抽出物または粗抽出物の溶媒抽出物画分を意味し、これらは溶液(遊動エキス)、濃縮物(軟エキス)、または乾燥粉末であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明において、白朮(または蒼朮)及び五味子は、水、炭素数1~4の低級アルコール、またはその水溶液で抽出されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0023】
白朮(または蒼朮)及び五味子の混合抽出物は、白朮(または蒼朮)、好ましくは白朮(または蒼朮)の根茎部、並びに五味子、好ましくは五味子の果実部を、水、炭素数1~4の低級アルコール、またはその水溶液で抽出して得られた粗抽出物(1次抽出物)またはその濃縮物であってもよい。前記炭素数1~4の低級アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びsec-ブタノールから選択されてもよい。
【0024】
特に、本発明において、白朮(または蒼朮)及び五味子は、エタノール水溶液で抽出されてもよく、好ましくは10~90%、より好ましくは30~70%、最も好ましくは50%のエタノール水溶液で抽出されてもよい。
【0025】
抽出温度は、40~120℃、好ましくは60~90℃であり、抽出時間は、2~48時間、好ましくは4~24時間である。
【0026】
本発明による組成物は、実際の臨床投与の際に、経口、直腸、または静脈内、筋肉、皮下、子宮内膜、及び脳血管内注射などの様々な製剤で投与されてもよい。本発明の組成物は、それぞれ通常の方法に応じて、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口用製剤、または経皮剤、坐剤、及び無菌注射液の形の非経口用製剤に製剤化して用いてもよい。
【0027】
他の側面において、本発明の組成物は、医薬品、機能性食品、食品、飲料、及び食品添加物などに用いられてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明による白朮及び五味子の混合抽出物、並びに蒼朮及び五味子の混合抽出物は、優れた抗炎症効果及び鎮咳去痰活性を示し、これは、白朮、蒼朮及び五味子の単一抽出物よりも優れた効果を奏する。
【0029】
また、本発明の混合抽出物は、急性または慢性の気管支炎、カタル性気管支炎、及び炎症性気管支炎を始めとする抗炎症性疾患の改善または治療に非常に有用である。
【0030】
白朮及び五味子の混合抽出物、並びに蒼朮及び五味子の混合抽出物は、既知の副作用のない安全性が高い有効成分であり、機能性食品、食品添加物、飲料、医薬品などに幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】白朮及び五味子の混合抽出物の鎮咳活性を示すものであり、モルモットを用いた咳抑制試験の結果を示す図である。
【
図2】白朮及び五味子の混合抽出物の去痰活性を示すものであり、マウスを用いたフェノールレッド法により測定した結果を示す図である。
【
図3】エルドステイン、実施例1、及び実施例12の去痰活性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明を説明するための例に過ぎず、本発明の範囲を限定しようとする意図ではない。
【0033】
[実施例1]白朮及び五味子(5:1)の50%エタノール抽出物の調製
白朮50gと五味子10gを混合し、50%(v/v)エタノール360mlで常温下24時間抽出した。それから抽出液をろ過してろ液を採取し、残渣については、6倍量の50%(v/v)エタノールを加えて24時間再抽出して得られたろ液を、先に採取したろ液と混合してから減圧濃縮することで、白朮及び五味子の混合抽出物17gを得た。
【0034】
[実施例2]五味子の50%エタノール抽出物の調製
五味子60gを、50%(v/v)エタノール360mlで実施例1と同様に調製し、抽出物22gを得た。
【0035】
[実施例3]白朮の50%エタノール抽出物の調製
白朮60gを、50%(v/v)エタノール360mlで実施例1と同様に調製し、抽出物12gを得た。
【0036】
[実施例4]白朮及び五味子(0.2:1)の50%エタノール抽出物の調製
白朮10gと五味子50gを混合し、50%(v/v)エタノール360mlで実施例1と同様に調製し、抽出物23gを得た。
【0037】
[実施例5]白朮及び五味子(0.4:1)の50%エタノール抽出物の調製
白朮20gと五味子50gを混合し、50%(v/v)エタノール420mlで実施例1と同様に調製し、抽出物23gを得た。
【0038】
[実施例6]白朮及び五味子(1:1)の50%エタノール抽出物の調製
白朮30gと五味子30gを混合し、50%(v/v)エタノール360mlで実施例1と同様に調製し、抽出物18gを得た。
【0039】
[実施例7]白朮及び五味子(2.5:1)の50%エタノール抽出物の調製
白朮50gと五味子20gを混合し、50%(v/v)エタノール420mlで実施例1と同様に調製し、抽出物23gを得た。
【0040】
[実施例8]白朮及び五味子(5:1)の水溶液抽出物の調製
白朮50gと五味子10gを混合し、水溶液360mlで実施例1と同様に調製し、抽出物23gを得た。
【0041】
[実施例9]白朮及び五味子(5:1)の10%エタノール抽出物の調製
白朮50gと五味子10gを混合し、10%(v/v)エタノール360mlで実施例1と同様に調製し、抽出物20gを得た。
【0042】
[実施例10]白朮及び五味子(5:1)の30%エタノール抽出物の調製
白朮50gと五味子10gを混合し、30%(v/v)エタノール360mlで実施例1と同様に調製し、抽出物21gを得た。
【0043】
[実施例11]白朮及び五味子(5:1)の100%エタノール抽出物の調製
白朮50gと五味子10gを混合し、100%(v/v)エタノール360mlで実施例1と同様に調製し、抽出物6gを得た。
【0044】
[実施例12]蒼朮及び五味子(5:1)の50%エタノール抽出物の調製
蒼朮50gと五味子10gを混合し、50%(v/v)エタノール360mlで常温下24時間抽出した。それから抽出液をろ過してろ液を採取し、残渣については、6倍量の50%(v/v)エタノールを加えて24時間再抽出して得られたろ液を、先に採取したろ液と混合してから減圧濃縮することで、蒼朮及び五味子の混合抽出物16gを得た。
【0045】
<実験例1.窒素酸化物(NO)の生成抑制効果の測定>
本発明の抽出物に対する抗炎症効果指標の一つである窒素酸化物(NO)の生成抑制効果を測定するために、BALB/cマウス由来のRaw 264.7マクロファージ細胞株を対象とする実験を行った。最初に、10%ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン(100U/ml)、及びストレプトマイシン(100μg/ml)が添加されたDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)培地溶液をRaw 264.7細胞と混合し、24ウェルプレートに、1ウェルあたり3×105個の細胞を入れ、24時間、5%二酸化炭素及び37℃の条件下で培養した。細胞が安定した後、誘発物質であるLPS(lipopolysaccharide)と共に、陽性対照物質(L-NMMA、NG-monomethyl-L-arginine)または実施例1~11で調製した抽出物を200μg/mlの濃度で処理し、24時間、5%二酸化炭素及び37℃の条件下で培養した。
【0046】
培養終了後、100μlの培養液を取り、同嵩のグリース(Griess)試薬と混合してから、540nmの吸光度で測定した。同じ培地に溶解した様々な濃度の亜硝酸ナトリウム(sodium nitrite)の標準曲線を使用して資料の亜硝酸塩(nitrite)量を定量し、その結果を以下の表1に示す。
【0047】
【0048】
前記の表1に示すように、本発明による実施例1~11の抽出物は、陽性対照群と比較して窒素酸化物の生成に対して優れた抑制効果を有することが分かる。特に、白朮及び五味子の混合抽出物(実施例1及び4~11)の活性は、単一抽出物(実施例2及び3)の活性よりも著しく優れていることが確認された。
【0049】
特に、白朮及び五味子のエタノール抽出物は、白朮及び五味子の水溶液抽出物よりもより優れた効果を示し、白朮及び五味子の50%エタノール抽出物が最も優れた効果を示した。
【0050】
また、白朮及び五味子の重量比における白朮の含有量が増えるほどより優れた効果が示されることがわかった。
【0051】
<実験例2.鎮咳活性の評価試験>
本発明の抽出物に対する鎮咳活性を評価するために、Tanakaなどの方法(American Journal of Respiratory and Citrical Care Medicine、1998、158、42-48)を用いた。
【0052】
前記実施例1で調製した白朮及び五味子の混合抽出物に対する各容量の鎮咳活性を、以下のように測定した。
【0053】
実験動物としては、体重350~400gの雄ハーテリーモルモット(オリエントバイオ、韓国)を各群当たり12匹使用した。各実験群において、実施例1で調製した抽出物、白朮の30%エタノール乾燥抽出物(11→1)及び五味子の10%エタノール乾燥抽出物(6.3→1)をそれぞれ経口投与した。それから1時間後、咳誘発物質(5%クエン酸)をモルモットに10分間スプレーして咳を誘発した。咳誘発物質への曝露開始時点から15分間発生した咳の数を測定した。前記白朮の30%エタノール乾燥抽出物(11→1)と、五味子の10%エタノール乾燥抽出物(6.3→1)は、市販の遊動エキスを乾燥して使用した。前記実験結果を下記の表2及び
図1に示す。
【0054】
【0055】
表2に示すように、実施例1の抽出物は、300mg/kgの用量において白朮の単一抽出物と類似の咳抑制率を示した。そのため、白朮及び五味子の混合抽出物は、白朮抽出物と比較して、白朮の原生薬量に対して半分以下の少ない量でも類似の効能を示すことが確認された。
【0056】
さらに、実施例1の抽出物は、100mg/kgの用量において、五味子の単一抽出物と類似の効能を示した。そのため、白朮及び五味子の混合抽出物は、五味子抽出物と比較して、五味子の原生薬量に対して約20倍以上の少ない量でも類似の効能を示すことが確認された。
【0057】
これらの結果から、白朮抽出物及び五味子抽出物を単独で使用する場合よりも白朮と五味子を組み合わせて使用する方が、原生薬量が非常に少なくても著しく優れた効能を示すことが分かる。
【0058】
<実験例3.白朮及び五味子抽出物の去痰活性の評価試験>
本発明の抽出物に対する去痰活性を評価するために、Englerなどの方法(Journal of Ethnopharmacology、1984、11、151-157)を用いた。
【0059】
前記実施例1で調製した混合抽出物に対する各容量の去痰活性を、以下のように測定した。
【0060】
実験動物としては、体重30~33gの雄ICRマウス(オリエントバイオ、韓国)を各群当たり12匹使用した。各実験群において、実施例1で調製した抽出物と、白朮の30%エタノール乾燥抽出物(11→1)及び五味子の10%エタノール乾燥抽出物(6.3→1)を経口投与し、30分後、5%フェノールレッド(phenol red)を腹腔内注射した。それから30分後、頸部脱臼を行い、腹部大動脈を放血させた後、気管(trachea)全体を解剖した。分離した気管を1mlの生理食塩水に入れて24時間冷蔵保存した。24時間後、冷蔵保存した気管を3000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液に1N水酸化ナトリウム(NaOH)を加えた(上澄み液1ml当たりNaOH0.1ml)後に、546nmにおける吸光度を測定し、フェノールレッドの濃度で去痰活性を測定した。
【0061】
【0062】
【0063】
前記表3に示すように、実施例1の抽出物は、100mg/kgの用量において白朮抽出物と類似の効能を示した。そのため、白朮及び五味子の混合抽出物は、白朮抽出物と比較して、白朮の原生薬量に対して約7倍以上少ない量でも類似の効能を示すことが確認された。
【0064】
さらに、実施例1の抽出物は、300mg/kgの用量において、五味子抽出物よりもより優れた効能を示した。そのため、白朮及び五味子の混合抽出物は、五味子抽出物と比較して、五味子の原生薬量に対して約7倍以上少ない量でも類似の効能を示すことが確認された。
【0065】
これらの結果から、白朮抽出物及び五味子抽出物を単独で使用する場合よりも白朮と五味子を組み合わせて使用する方が、原生薬量が非常に少なくても著しく優れた効能を示すことが分かる。
【0066】
要するに、前記実験で確認したところ、驚くべきことに、五味子を単独で使用した場合よりも五味子と白朮を併せて使用すると、咳抑制率及び喀痰排出能の活性が著しく向上し、特に、300mg/kg以上の用量では、優れた咳抑制率及び喀痰排出能を示すことが確認された。
【0067】
<実験例4:蒼朮及び五味子抽出物の去痰活性の評価試験>
前記実験例3と同様にして、代表的な鎮咳去痰剤であるエルドステインと、実施例1及び12に対する去痰活性を比較評価した。その結果を下記の表4及び
図3に示す。
【0068】
【0069】
前記表4に示すように、蒼朮及び五味子の混合抽出物は、白朮及び五味子の混合抽出物と類似の効能を示すことが分かる。