(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】TLR7/TLR8阻害剤の結晶形態
(51)【国際特許分類】
C07D 519/00 20060101AFI20231222BHJP
A61K 31/5355 20060101ALI20231222BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231222BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231222BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C07D519/00 311
C07D519/00 CSP
A61K31/5355
A61P37/06
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020564243
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 IB2019054066
(87)【国際公開番号】W WO2019220390
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/087448
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ビエリ,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】コルディコウスキ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】リ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ラステンバーガー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ラモス,リタ
(72)【発明者】
【氏名】セチュラマン,ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シーシー
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047081(WO,A1)
【文献】CAIRA, M.R.,Crystalline Polymorphism of Organic Compounds,Topics in Current Chemistry,1998年,No.198,p.163-208
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,pp. 17-23,37-40,45-51,57-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 519/00
A61K 31/5355
A61P 37/06
A61P 43/00
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形態である化合物(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態であって、
前記化合物が、3.5水和物であり、
前記結晶形態が、以下の特性の1つを特徴とする、結晶形態:
(i)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、2θを単位とする6.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、及び17.3±0.2°2θの代表的なピークを含むX線粉末回折パターン;
(ii)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、6.6±0.2°、7.1±0.2°、10.6±0.2°、13.2±0.2°、14.3±0.2°、16.0±0.2°、17.3±0.2°、23.5±0.2°、26.5±0.2
°、及び27.3±0.2°2θからなる群から選択される4つ以上の2θ値を含むX線粉末回折パターン;並びに
(iii)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、6.6±0.2°、7.1±0.2°、10.6±0.2°、13.2±0.2°、14.3±0.2°、16.0±0.2°、17.3±0.2°、23.5±0.2°、26.5±0.2
°、及び27.3±0.2°2θからなる群から選択される5つ以上の2θ値を含むX線粉末回折パターン
;
ここで、前記用語「約」は、±3%の変位量を示す。
【請求項2】
速度10℃/分で30~300℃に加熱されたとき、284J/gのエンタルピーΔHでT
オンセット=54.2℃、及び24J/gのエンタルピーΔHでT
オンセット=130.6℃の融解吸熱を示す示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有する、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
速度10℃/分で30~300℃に加熱されたとき、96℃で9.9%の重量減少を示す、熱重量分析(TGA)ダイアグラムを有する、請求項1又は2に記載の結晶形態。
【請求項4】
前記形態が実質的に純粋な相形態であ
り、ここで、前記「実質的に純粋な相形態」は、無水基準で化合物の重量に対して、90重量%を超える相純度を有する形態を意味する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の結晶形態、並びに1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項6】
前記結晶形態が実質的に純粋な相形態であ
り、ここで、前記「実質的に純粋な相形態」は、無水基準で化合物の重量に対して、90重量%を超える相純度を有する形態を意味する、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の結晶形態を、1種以上の治療剤と組み合わせて含む医薬組成物であって、前記治療剤が、抗炎症剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、サイトカイン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗マラリア化合物、抗リウマチ化合物、B細胞活性化因子(BAFF)の阻害剤、Bリンパ球刺激因子(BLyS)の阻害剤、及びステロイドホルモンからなる群から独立に選択される医薬組成物。
【請求項8】
前記結晶形態が実質的に純粋な相形態であ
り、ここで、前記「実質的に純粋な相形態」は、無水基準で化合物の重量に対して、90重量%を超える相純度を有する形態を意味する、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
自己免疫疾患の治療を必要とする対象の自己免疫疾患を治療する方法で用いるための医薬組成物であって、請求項1~
4のいずれか一項に記載の結晶形態を含み、前記方法が、前記
対象に、治療上有効な量の前記結晶形態を投与することを含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記対象がヒトである、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の化合物(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態を製造する方法であって、
a)非晶質の遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドを、少なくとも約2重量%の水を含む溶媒混合物に懸濁させて、懸濁混合物を形成する工程、
b)前記懸濁混合物を温度に溶解まで加熱して、溶液を形成する工程、
c)前記溶液を約-10℃に冷却して、懸濁液を形成する工程、
d)前記懸濁液を濾過して、前記結晶形態を回収する工程
を含
み、ここで、前記用語「約」は、±3%の変位量を示す、方法。
【請求項12】
工程a)における前記溶媒混合物が、アセトン、アルコール、テトラヒドロフラン、又はアセトニトリルを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)における前記溶媒混合物が、アセトン/水98:2(重量比)及びイソプロパノール/水95:5(重量比)から選択される、請求項
11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的に、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態に関する。本開示は、結晶形態を含む医薬組成物並びに結晶形態を製造する方法並びにTLR7及びTLR8から選択されるエンドソームのトール様受容体の活性と関連する特定の自己免疫疾患の治療において結晶形態を使用する方法並びにそのような結晶形態を得る方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドは、参照により全体として組み込まれている2017年9月6日に出願された国際公開第2018/047081号パンフレットにHCl塩として初めて開示され、式Iの構造を有する、TLR7及びTLR8の二重阻害剤である:
【化1】
【0003】
式Iの化合物は、TLR7及びTLR8から選択されるエンドソームのトール様受容体の活性と関連する種々の自己免疫病態の治療に有用である。したがって、式Iの化合物は、それ自体、例えば、全身性エリテマトーデス、皮膚ループス、円板状ループス、混合性結合組織病、原発性胆汁性肝硬変、免疫性血小板減少性紫斑病、化膿性汗腺炎、皮膚筋炎、多発筋炎、シェーグレン症候群、関節炎、関節リウマチ、又は乾癬を含む特定の自己免疫疾患の治療に有用である。
【0004】
特定の薬物の医薬品有効成分(API)の固体状態形態が、しばしば、薬物の調製の容易さ、吸湿性、安定性、溶解度、貯蔵安定性、製剤の容易さ、胃腸液中での溶解速度、及びインビボバイオアベイラビリティの重要な決定要素である。結晶形は、同じ組成物が異なる格子配列中に結晶化して、特定の結晶形に特有な異なる熱力学的性質及び安定性が生じる場合に起こる。結晶形は、同じ化合物の異なる水和物又は溶媒和物も含み得る。どの形態が好ましいかを決定する際に、形態の多くの性質が比較され、好ましい形態が、多くの物性変数に基づいて選択される。調製の容易さ、安定性などの特定の側面が決定的であると思われる幾つかの状況において、1つの形態が好ましくなり得ることが完全にあり得る。他の状況において、異なる形態が、より高い溶解速度及び/又は優れたバイオアベイラビリティのために好ましくなり得る。特定の化合物若しくは化合物の塩が多形体を形成するかどうか、そのような多形体が治療用組成物における商業的利用に好適であるかどうか、又はどの多形体がそのような望ましい性質を示すかを予測することはまだ可能ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、遊離形態(すなわち非塩形態)の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態を提供する。特定の実施形態において、遊離形態は水をさらに含む(本明細書で水和物と称される)。
【0006】
したがって、本開示は、遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態を提供する。
【0007】
本開示は、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの水和物の結晶形態をさらに提供する。
【0008】
これらの結晶形態の実施形態は、形態A及び形態HAと本明細書で称される形態を含む。具体的な形態を特定するために本明細書で使用される名称、例えば、「形態A」又は「形態HA」は、類似又は同一の物理的及び化学的特性を有する他の物質に関して限定的であると考えられるべきではなく、むしろ、これらの名称が、やはり本明細書において提示されている特性化情報に従って解釈されるべき識別子に過ぎないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書で形態Aと称される遊離形態の式Iの化合物の、X軸に2θ(2-シータ)度及びY軸に相対強度を示す実例的なXRPDスペクトルを提供する。
【
図2】本明細書で形態Aと称される遊離形態の式Iの化合物の実例的なDSCを提供する。
【
図3】本明細書で形態Aと称される遊離形態の式Iの化合物の実例的なTGAを提供する。
【
図4】本明細書で形態H
Aと称される水和物形態の式Iの化合物の、X軸に2θ(2-シータ)度及びY軸に相対強度を示す実例的なXRPDスペクトルを提供する。
【
図5】本明細書で形態H
Aと称される水和物形態の式Iの化合物の実例的なDSCを提供する。
【
図6】本明細書で形態H
Aと称される水和物形態の式Iの化合物の実例的なTGAを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
形態A及びHAのそれぞれのXRPDピークのより詳細な一覧表は、それぞれ以下の表1及び2に記載されており、表中では相対強度%(I/I0×100)も与えられている。X線粉末回折のスペクトル又はパターンにおいて、例えば、装置面の変動(装置間の差異を含む)の結果として、度2θ(°2θ)で測定された値に固有の変動性があることが理解されるべきである。したがって、XRPDピーク測定値には最大±0.2°2θの変動性があるが、そのようなピーク値がそれでも本明細書に記載される結晶性材料の特定の固体状態形態を代表すると考えられることが理解されるべきである。相対強度及び含水量など、XRPD実験及びDSC/TGA実験から得られる他の測定値が、例えば、試料調製及び/又は保存及び/又は環境条件の結果として変動し得るが、測定値がそれでも本明細書に記載される結晶性材料の特定の固体状態形態を代表すると考えられることが理解されるべきである。
【0011】
本開示は、遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミド(式Iの化合物)の結晶形態に関し、それは本明細書で説明及び特性化される。
【0012】
本発明は、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの水和物の結晶形態にも関する。より具体的には、本発明は、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの3.5水和物の結晶形態に関し、それは本明細書で説明及び特性化される。
【0013】
一実施形態において、本開示は、°2θを単位として約25℃の温度で測定された18.6±0.2°2θの代表的なピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態(形態A)を提供する。別の実施形態において、XRPDパターンは、4.1±0.2°2θ及び16.3±0.2°2θから選択される1つ以上の追加の代表的なピークをさらに含む。先の実施形態の一態様において、XRPDパターンは、約25℃の温度で測定された18.2±0.2°2θ及び19.8±0.2°2θから選択される1つ以上の追加の代表的なピークをさらに含む。したがって、遊離形態の式Iの化合物の結晶形態のXRPDパターンは、約25℃の温度で測定された18.6±0.2°2θ、4.1±0.2°2θ、16.3±0.2°2θ、18.2±0.2°2θ、及び19.8±0.2°2θから選択される1、2、3、又は4つの代表的なピークを含み得る。別の実施形態において、遊離形態の式Iの化合物の結晶形態は、約25℃の温度で測定された8.2±0.2°2θ、15.2±0.2°2θ、及び16.9±0.2°2θから選択される1つ以上の追加の代表的なピークをさらに含み得るXRPDパターンを有する。そのため、遊離形態の式Iの化合物の結晶形態のXRPDパターンは、約25℃の温度で測定された18.6±0.2°2θ、4.1±0.2°2θ、16.3±0.2°2θ、18.2±0.2°2θ、19.8±0.2°2θ、8.2±0.2°2θ、15.2±0.2°2θ、及び16.9±0.2°2θから選択される1、2、3、4、5、又は6つの代表的なピークを含み得る。遊離形態の式Iの化合物の結晶形態のXRPDパターンは、表1に開示され約25℃の温度で測定されたピークから選択される1、2、3、4、5、又は6つの代表的なピークを含み得る。
【0014】
上記実施形態の別の態様において、遊離形態の式Iの化合物の結晶形態は、約25℃の温度で測定された4.1±0.2°、8.2±0.2°、15.2±0.2°、16.3±0.2°、16.9±0.2°、18.2±0.2°、18.6±0.2°、19.8±0.2°、及び20.4±0.2からなる群から選択される4つ以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0015】
上記実施形態の別の態様において、遊離形態の式Iの化合物の結晶形態は、約25℃の温度で測定された4.1±0.2°、8.2±0.2°、15.2±0.2°、16.3±0.2°、16.9±0.2°、18.2±0.2°、18.6±0.2°、19.8±0.2°、及び20.4±0.2からなる群から選択される5つ以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0016】
上記実施形態のさらに別な態様において、遊離形態の式Iの化合物の結晶形態は、実質的に
図1に示されるXRPDパターンを有する。形態Aの含水量が約0%~約1.5%の範囲であり得るが、それでも上述又は表1中の1、2、3、4、5、又は6つの代表的なピークを含むXRPDパターンを有する結晶形態であると考えられ得ることが理解されるべきである。カールフィッシャー滴定法により決定される形態Aの含水量は0.9%である。
【0017】
遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態は、熱的に特性化できる。一実施形態において、遊離形態の式Iの化合物の結晶形態は、約182.7℃で始まり65J/gのエンタルピーΔHを有する単一の吸熱ピークを含む、10℃/分の加熱速度の示差走査熱量測定(DSC)により測定される熱プロファイルを有する。
【0018】
別の実施形態において、式Iの化合物の遊離形態の結晶形は、実質的に
図2に示される通りであるDSCサーモグラムを有する。水和された形態が、装置パラメーターによって異なるサーモグラム(ピーク形状及びプロファイルの点で)をもたらすことがあり、そのため、2つの異なる装置でデータが生成される場合、同じ物質が互いに大幅に異なるように見えるサーモグラムを有し得ることが理解されるべきである。
【0019】
別の実施形態において、式Iの化合物の遊離形態の結晶形は、
図3に示されるものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)ダイアグラムを有する。TGAによる重量減少は、182℃で約0.4%である。
【0020】
更に別の実施形態において、結晶形Aは実質的に相純粋(phase pure)である。
【0021】
さらに別の実施形態において、本発明は、化合物(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態Aを製造する方法であって:
a)非晶質の遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドをアセトン又はイソプロパノールに懸濁させて、懸濁混合物を形成する工程、
b)懸濁混合物を約50℃の温度に溶解まで加熱して、溶液を形成する工程、
c)溶液を約4時間かけて約15℃に冷却して、懸濁混合物を形成する工程、
d)任意選択で、工程b)及びc)を1回又は2回繰り返す工程、
e)懸濁混合物を約50℃に加熱し、ヘプタンを滴加する工程、
f)混合物を50℃で約1時間撹拌する工程、
g)溶液を約4時間かけて約15℃に冷却して、懸濁混合物を形成する工程、
h)懸濁混合物を15℃で1時間撹拌する工程、及び
i)懸濁液を濾過して、結晶形態Aを回収する工程
を含む方法に関する。
【0022】
本発明は、約25℃の温度で測定された°2θを単位とする14.3±0.2°2θの代表的なピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの水和物の結晶形態(形態HA)をさらに提供する。別の実施形態において、XRPDパターンは、約25℃の温度で測定された6.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、及び17.3±0.2°2θから選択される1つ以上の追加の代表的なピークをさらに含む。或いは、式Iの化合物の前記水和物の結晶形態のXRPDパターンは、約25℃の温度で測定された14.3±0.2°2θ、6.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、及び17.3±0.2°2θから選択される1、2、3、又は4つの代表的なピークを含み得る。
【0023】
別の実施形態において、式Iの化合物の前記水和物の結晶形態は、23.5±0.2°2θ、26.5±0.2°2θ、27.3±0.2°2θから選択される1つ以上の追加の代表的なピークをさらに含み得るXRPDパターンを有する。そのため、式Iの化合物の前記水和物の結晶形態のXRPDパターンは、14.3±0.2°2θ、6.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、17.3±0.2°2θ、23.5±0.2°2θ、26.5±0.2°2θ、及び27.3±0.2°2θから選択されるか、又は表2に開示され約25℃の温度で測定されたピークから選択される1、2、3、4、5、又は6つの代表的なピークを含み得る。
【0024】
別の実施形態において、前記水和物形態は、約25℃の温度で測定された6.6±0.2°、7.1±0.2°、10.6±0.2°、13.2±0.2°、14.3±0.2°、16.0±0.2°、17.3±0.2°、23.5±0.2°、26.5±0.2、及び27.3±0.2°2θからなる群から選択される4つ以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0025】
別の実施形態において、前記水和物形態は、約25℃の温度で測定された6.6±0.2°、7.1±0.2°、10.6±0.2°、13.2±0.2°、14.3±0.2°、16.0±0.2°、17.3±0.2°、23.5±0.2°、26.5±0.2、及び27.3±0.2°2θからなる群から選択される5つ以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0026】
さらに別の実施形態において、式Iの化合物の水和物の結晶形態は、実質的に
図4に示されるXRPDパターンを有する。形態H
Aの含水量が約9%~約12%の範囲であり得て、それでも上述の1、2、3、4、5、又は6つの代表的なピークを含むXRPDパターンを有する水和物であると考えられ得ることが理解されるべきである。カールフィッシャー滴定法により決定される形態H
Aの含水量は10.6%である。
【0027】
(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの水和物の結晶形態は熱的に特性化できる。一実施形態において、式Iの化合物の水和物の結晶形態は、約54.2℃で始まり284J/gのエンタルピーΔHを有する吸熱ピーク(脱水に相当する)及び約130.6℃で始まり24J/gのエンタルピーΔHを有する吸熱ピーク(融解に相当する)を含む示差熱重量測定プロファイルを有する。
【0028】
別の実施形態において、式Iの化合物の水和物の結晶形態は、実質的に
図5に示される通りであるDSCサーモグラムを有する。水和された形態が、装置パラメーターによって異なるサーモグラム(ピーク形状及びプロファイルの点で)をもたらすことがあり、そのため、2つの異なる装置でデータが生成される場合、同じ物質が互いに大幅に異なるように見えるサーモグラムを有し得ることが理解されるべきである。
【0029】
別の実施形態において、式Iの化合物の水和物の結晶形態は、
図6に示されるものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)ダイアグラムを有する。TGAによる重量減少は96℃で約9.9%である。
【0030】
さらに別の実施形態において、上述の結晶形態HAは3.5水和物形態である。
【0031】
さらに別の実施形態において、結晶形態HAは実質的に相純粋である。
【0032】
さらに別の実施形態において、本発明は、化合物(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態HAを製造する方法であって:
a)非晶質の遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドを、少なくとも約2重量%の水を含む溶媒混合物に懸濁させて、懸濁混合物を形成する工程、
b)懸濁混合物を温度に溶解まで加熱して、溶液を形成する工程、
c)溶液を約-10℃に冷却して、懸濁液を形成する工程、
d)懸濁液を濾過して、結晶形態HAを回収する工程
を含む方法にも関する。
【0033】
上記実施形態の特定の態様において、本発明は、工程a)における溶媒混合物が、アセトン、アルコール、テトラヒドロフラン、又はアセトニトリルを含む、結晶形態Aを製造する方法に関する。
【0034】
先の実施形態のさらに別な態様において、本発明は、工程a)における溶媒混合物が、アセトン/水98:2(重量比)及びイソプロパノール/水95:5(重量比)から選択される、結晶形態Aを製造する方法に関する。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、治療上有効な量の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態(形態A又は形態HA又はそれらの組合せ)、及び少なくとも1種の薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。特定の実施形態において、本発明は、結晶形態A及び1種以上の薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。さらに別な態様において、本発明は、実質的に純粋な相の結晶形態Aを含む医薬組成物に関する。さらに別の実施形態において、本発明は、結晶形態Aを含み、少なくとも1種の他の固体状態形態の5(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドをさらに含む医薬製剤に関する。この実施形態の一態様において、他方の固体状態形態は結晶形態HAである。さらに別の実施形態において、他方の固体状態形態は、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの非結晶形態である。
【0036】
特定の実施形態において、本発明は、結晶形態HA及び1種以上の薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。さらに別な態様において、本発明は、実質的に純粋な相の結晶形態HAを含む医薬組成物に関する。さらに別の実施形態において、本発明は、結晶形態HAを含み、少なくとも1種の他の固体状態形態の5(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドをさらに含む医薬組成物に関する。この実施形態の一態様において、他方の固体状態形態は結晶形態Aである。さらに別の実施形態において、他方の固体状態形態は、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの非結晶形態である。
【0037】
他の実施形態において、本発明は、治療上有効な量の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態(形態A、形態HA、又はそれらの組合せ)及び1種以上の治療剤を含む組合せ、とりわけ医薬組合せに関する。
【0038】
特定の実施形態において、本発明は、結晶形態A及び1種以上の治療剤を含む医薬組合せに関する。さらに別な態様において、本発明は、実質的に純粋な相の結晶形態A及び1種以上の治療剤を含む医薬組合せに関する。さらに別の実施形態において、本発明は、結晶形態Aを含み、少なくとも1種の他の固体状態形態の5(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドをさらに含む医薬組合せに関する。この実施形態の一態様において、他方の固体状態形態は結晶形態HAである。さらに別の実施形態において、他方の固体状態形態は、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの非結晶形態である。
【0039】
特定の実施形態において、本発明は、結晶形態HA及び1種以上の治療剤を含む医薬組合せに関する。さらに別な態様において、本発明は、実質的に純粋な相の結晶形態HA及び1種以上の治療剤を含む医薬組合せに関する。さらに別の実施形態において、本発明は、結晶形態HAを含み、少なくとも1種の他の固体状態形態の5(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドをさらに含む医薬組合せに関する。この実施形態の一態様において、他方の固体状態形態は結晶形態Aである。さらに別の実施形態において、他方の固体状態形態は、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの非結晶形態である。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、第2の薬剤が、抗炎症剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、サイトカイン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗マラリア化合物、抗リウマチ化合物(compunds)、B細胞活性化因子(BAFF)の阻害剤、Bリンパ球刺激因子(BLyS)の阻害剤、及びステロイドホルモンからなる群から独立に選択される、上述の医薬組合せを提供する。
【0041】
一実施形態において、本発明は、自己免疫疾患の治療を必要とする対象の自己免疫疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療上有効な量の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態(形態A、形態HA、又はそれらの組合せ)を、単独又は1種以上の治療剤と組み合わせて投与することを含む方法に関する。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患の治療を必要とする対象の自己免疫疾患を治療する方法であって、前記対象に、上述の医薬組成物を、単独又は1種以上の治療剤と組み合わせて投与することを含む方法に関する。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患の治療を必要とする対象の自己免疫疾患を治療する方法であって、前記対象に上述の医薬組合せを投与することを含む方法に関する。
【0044】
一実施形態において、本発明は、単独又は1種以上の治療剤と組み合わせた(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態(形態A、形態HA、又はそれらの組合せ)の、自己免疫疾患の治療のための使用に関する。
【0045】
さらに別の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患の治療に使用するための(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態(形態A、形態HA、又はそれらの組合せ)に関する。
【0046】
さらに(yet)実施形態において、本発明は、自己免疫疾患の治療に使用するための、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態(形態A、形態HA、又はそれらの組合せ)と1種以上の治療剤の組合せに関する。
【0047】
一実施形態において、本発明は、自己免疫疾患が、TLR7及びTLR8から選択されるエンドソームのトール様受容体の活性と関連する、治療の方法、使用、上述の通り使用するための化合物、又は上述の通り使用するための組合せに関する。この実施形態の一態様において、TLR7及びTLR8から選択されるエンドソームのトール様受容体の活性と関連する自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、皮膚ループス、円板状ループス、混合性結合組織病、原発性胆汁性肝硬変、免疫性血小板減少性紫斑病、化膿性汗腺炎、皮膚筋炎、多発筋炎、シェーグレン症候群、関節炎、関節リウマチ、及び乾癬から選択される。
【0048】
一実施形態において、本発明は、治療剤が、単一の組成物で一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物形態で別々に投与される、上記実施形態に従って使用するための方法、使用、又は組合せに関する。
【0049】
一実施形態において、本発明は、治療剤が、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態と同時に、その前に、又はその後に投与される、上述の通り使用するための方法、使用、又は組合せに関する。
【0050】
本明細書に記載の結晶形態は、好都合な性質を有することが見出された。選択の基準は、毒物学的考察、結晶性、融点、吸湿性、バルクでの安定性、賦形剤との適合性、水溶液のpH、水及び水性媒体への溶解度、モルホロジー、取扱い及び多形体挙動である。遊離形態A及び水和物形態HAは、特に、既に公知であり国際公開第2018/047081号パンフレットに記載されているHCl塩よりも優れた挙動を示した。HCl塩は、70%RHを超えると潮解性であることが見出され、潜在的な腐食性も有した。
【0051】
結晶形態Aは、薄い板状粒子からなり結晶性が高い(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの無水形態である。それは、70%RHまでわずかに吸湿性であり、1.3%の水分を吸収するが、より高湿度では(すなわち70%RHを超える)、それは、水和物結晶形態HAに変換する。
【0052】
結晶形態HAは、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの水和された形態である。TGA及びDVSデータは、それが3.5水和物であることを示す。結晶形態HAは、30%RHを超える湿度でわずかに吸湿性である。20%RH未満では、それは脱水して特性化されていない無水物形態になり、湿度が30%RHに達すると、再水和して水和物形態HAに戻る。
【0053】
溶媒中での安定性:
競合平衡(Competitive equilibrations)を実施して、競合溶媒平衡(competitive solvent equilibration)における形態A及びHAの相対的安定性を調査した。形態Aと形態HAの1:1混合物を調製し、種々の溶媒又はその混合物に25℃~50℃の温度で7日間懸濁させた。生じた懸濁液を濾過し、XRPD/DVSにより分析した。競合平衡及び生じたデータは、形態Aの形態HAへの変換が、低い含水量で起こることを示した。結果は、形態Aの形態HAへの変換が、およそaw=0.25の水分活性で起こることを示した。
【0054】
バルクでの、及び賦形剤混合物と共にある状態の固体状態安定性
安定性及び賦形剤適合性試験を、形態A及び形態HAで実施した。両形態を、以下に記載される種々の試験条件に付した:
【0055】
バルクでの試験条件:80℃、50℃、80℃-75%RH、又は50℃-75%RHで、気密容器中に1週間。
【0056】
賦形剤混合物(EM)と共にある状態の試験条件
a.2週間50℃で、EM1中の1%の形態A又は形態HA
b.2週間50℃で、EM2中の1%の形態A又は形態HA
c.2週間50℃で、砕かれたハードゼラチンカプセル(HGC)中の10%の形態A又は形態HA
d.2週間50℃で、砕かれたヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)中の10%の形態A又は形態HA
e.2週間50℃及び75%RHで、EM1中の1%の形態A又は形態HA
f.2週間50℃及び75%RHで、EM2中の1%の形態A又は形態HA
g.2週間50℃及び75%RHで、砕かれたHGC中の10%の形態A又は形態HA
h.2週間50℃及び75%RHで、砕かれたHMPC中の10%の形態A又は形態HA
【0057】
EM1:賦形剤混合物1:噴霧乾燥ラクトース(53%)、微結晶性セルロース(MCC)PH102(40%)、クロスポビドンXL(5%)、アエロジル(0.5%)、ステアリン酸マグネシウム(1.5%)
EM2:賦形剤混合物2:マンニトールDC(68%)、MCC PH102(26%)、Ac-Di-Sol(4%)、アエロジル(0.5%)、ステアリン酸マグネシウム(1.5%)
【0058】
分解生成物をHPLCにより分析し、試料をXPRDにより分析して、固体状態の変化を検出した。
【0059】
上述の試験条件下で、形態Aと形態HAは両方とも、バルク状態での、及び賦形剤と共にある状態の良好な安定性を示した。
【0060】
さらに、形態Aと形態HAは両方とも、露光下で(25℃で1200キロルクスに露光)、良好な物理的及び化学的安定性を示す。
【0061】
物理的安定性
圧縮下での挙動:各結晶形態(形態A又は形態HA)の物理的安定性も評価した。
【0062】
100mgの結晶形態を、液圧プレスにより5分間10トンで圧縮した(板状小片の直径8mm)。次いで、試料をXRPDにより特性化して、固体状態の変化を検出した。
【0063】
結晶形態の変化は、XRPDにより結晶形態(Forma)A及び結晶形態HAで全く観察されなかった。したがって、結晶形態A及びHAは、良好な物理的安定性を有することが示された。
【0064】
造粒シミュレーション実験下での挙動:結晶形態A及びHAの物理的安定性を、造粒シミュレーション実験でも評価した。これらの実験において、造粒溶媒は、結晶形態A又はHAに、固体が充分に濡らされるまで滴加された。次いで、混合物は25℃で各添加の間にボルテックスにかけられた。或いは、乾式粉砕が実施された。材料(粉砕後)の結晶性が、XRPD及び/又はDSCにより再評価された。乾式粉砕条件下で、結晶形態HAの粉砕後に、形態変化は全く検出されなかった。エタノール及び水を造粒溶媒として使用する造粒時に、XRPD結果は、やはり形態変化を全く示さなかった。
【0065】
改良物(Modification)Aも、乾式粉砕条件下で安定であったが、水による造粒の間に一部結晶形態HAに変化した。
【0066】
溶解度
形態Aは、4.7以下のpH値で溶解性が高いが(2mg/mLより高い溶解度)、より高いpHレベルでは、溶解性の低い形態HAが形成するので溶解度値が低い。
【0067】
形態HAは、生体関連媒体中の水性緩衝液中で約0.004mg/mLの溶解度を示す。
【0068】
結論として、結晶形態HAは、溶解状態と固体状態の両方で化学的及び物理的安定性を示したが、より低い溶解度を示す。結晶形態HAは、広い湿度範囲で安定であり、結晶性が高い。結晶形態Aは結晶性が高く無水形態である。それは、固体状態で化学的及び物理的安定性を示したが、含水量が低い溶媒中で形態HAに転化する。形態Aはより可溶性である。
【0069】
定義
本明細書では、用語「約」及び「実質的に」は、吸熱、吸熱ピーク、発熱、ベースラインシフトなどの特徴に関して、それらの値が変動し得ることを示す。X線回折ピーク位置に関して、「約」又は「実質的に」は、典型的なピーク位置及び強度の変動性が考慮に入れられていることを意味する。例えば、当業者は、ピーク位置(2θ)が、典型的には0.2°もの何らかの装置間変動性を示すことを認識するだろう。場合によって、変動性は、装置の較正の差により0.2°より高くなり得る。更に、当業者は、相対ピーク強度が、装置間変動性並びに結晶化度、好ましい配向、調製された試料表面、及び当業者に公知である他の因子による変動性を示し、定性的測定のためのみに測定されるべきであることを認識するだろう。DSCでは、観察される温度の変動は、温度変化の速度並びに試料調製技法及び利用される特定の装置によるだろう。そのため、DSC/TGAサーモグラムに関連する本明細書に報告される吸熱/融点値は、±2℃変動し得る(それでも、本明細書に記載される特定の結晶形に特有なものであると考えられる)。例えば重量パーセント(重量%)など、他の特徴の文脈で使用される場合、用語「約」は±3%の変位量を示す。
【0070】
本明細書では、「多形体」は、同じ化学組成を有するが、結晶を形成する分子、原子及び/又はイオンの空間的配置が異なる結晶形を指す。
【0071】
本明細書では、「非晶質」は、結晶性でない、分子、原子、及び/又はイオンの固体形態を指す。非晶質固体は、明確なX線回折パターンを示さない。
【0072】
本明細書では、式Iの化合物のいずれかの結晶形に関連して使用される「実質的に相純粋」は、無水基準で化合物の重量に対して、約90、91、92、93、94、95、96、97、98、及び約99重量%超を含み、約100重量%に等しい式Iの化合物も含む約90重量%を超える相純度を有する化合物を意味する。本明細書での用語「相純粋」又は「相純度」は、式Iの化合物の特定の固体状態形態に関する相の均質性を指し、化学純度に関する明確な言明がなければ高度な化学純度を必ずしも意味しない。相純度は、当技術分野に公知である方法に従って、例えば、XRPDを使用して決定され、当技術分野に公知である1つ又は複数の手法を利用して、例えば、外部標準法により、特定のスペクトル内の異なる相に帰属されるライン(ピーク)の特性の直接比較、又は内部標準法により定量的な相分析をすることができる。しかし、相純度のXRPD定量化は、非晶質材料の存在により複雑になり得る。したがって、相純度の決定に有用になり得る他の方法には、例えば、固体状態NMR分光法、ラマン及び/又は赤外分光法がある。当業者ならば、これらの方法及び相純度を決定するためのこれらの追加の(又は代替の)方法の利用の仕方を容易に理解するだろう。
【0073】
本明細書では、式Iの化合物のいずれかの結晶形に関連して使用される「実質的に化学的に純粋」は、塩の重量(無水基準で)に対して、約90、91、92、93、94、95、96、97、98、及び約99重量%超を含み、約100重量%に等しい式Iの化合物も含む約90重量%を超える化学純度を有する化合物を意味する。残りの物質は、一般的に、例えば、式Iの化合物の他の立体異性体、反応不純物、出発物質、試薬、副生成物、並びに/又は特定の結晶形の調製及び/若しくは単離及び/若しくは精製から生じる他の処理不純物など、他の化合物を含む。例えば、式Iの化合物の結晶形は、標準的で一般に認められている当技術分野に公知である方法により測定されて、約90重量%より高い化学純度を有することが決定された場合、実質的に化学的に純粋であると見なされ得るが、その場合、残りの約10重量%未満は、式Iの化合物の他の立体異性体、反応不純物、出発物質、試薬、副生成物、及び/又は処理不純物などの他の材料を構成する。化学純度は、当技術分野に公知である方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析法)、核磁気共鳴(NMR)分光法、又は赤外分光法により決定できる。当業者ならば、これらの方法及び化学純度を決定するためのこれらの追加の(又は代替の)方法の利用の仕方を容易に理解できるだろう。
【0074】
本発明の化合物の「治療有効量」という用語は、対象の生物学的若しくは医学的反応、例えば、酵素若しくはタンパク質活性の減少若しくは阻害を引き出す、又は症状を改善し、病態を緩和し、若しくは疾患の進行を緩徐化若しくは遅延させるなどの本発明の化合物の量を指す。非限定的な一実施形態において、用語「治療有効量」は、対象に投与されると、(1)(i)TLR7及び/又はTLR8の活性と関連するか、若しくは(ii)TLR7及び/又はTLR8受容体の(正常若しくは異常な)活性を特徴とする;又は(2)TLR7及び/又はTLR8受容体の活性を減少させるか、若しくは阻害するのに有効である本発明の化合物の量を指す。非限定的な別の実施形態において、用語「治療有効量」は、細胞、又は組織、又は非細胞の生物学的材料、又は媒体に投与されると、TLR7及び/又はTLR8の活性を少なくとも部分的に減少させるか、若しくは阻害する;又はTLR7及び/又はTLR8受容体の発現を少なくとも部分的に減少させるか、若しくは阻害するのに有効である本発明の化合物の量を指す。
【0075】
本明細書では、用語「対象」は動物を指す。好ましくは、動物は哺乳動物である。対象は、例えば、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚類、鳥類などを指す。好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0076】
本明細書では、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「前記(the)」、及び本発明の文脈で(特に請求項の文脈で)使用される類似の用語は、本明細書に特記されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を網羅すると解釈されるものとする。
【0077】
本明細書に記載される全方法は、本明細書に特記されない限り、又はその他の点で文脈により明らかに矛盾しない限り、あらゆる好適な順序で実施できる。本明細書に提供されるありとあらゆる例又は例示的な言葉(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより良く解明することのみが意図され、別な方法で特許請求される本発明の範囲に制限を加えない。
【0078】
本明細書では、用語「阻害する(inhibit)」、「阻害(inhibition)」、又は「阻害すること(inhibiting)」は、所与の病態、症状、若しくは障害若しくは疾患の減少若しくは抑制、又は生物学的な活性若しくはプロセスのベースライン活性の著しい減少を指す。
【0079】
本明細書では、用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、又は疾患若しくは障害の「治療(treatment)」は、一実施形態において、疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発生を緩徐化するか、又は停止するか、又は減少させること)を指す。別の実施形態において、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、患者により認識され得ないものを含む、少なくとも1種の身体的パラメーターを緩和するか、又は改善することを指す。更に別の実施形態において、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、身体的(例えば、認識できる症状の安定化)か、生理学的(例えば、身体的パラメーターの安定化)のいずれか、又はその両方で疾患又は障害を調節することを指す。一実施形態において、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は障害の進行を遅らせることを指す。
【0080】
本明細書では、用語「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」、又は疾患若しくは障害の「予防(prevention)」は、疾患若しくは障害の予防的な治療;又は疾患若しくは障害の発症を遅延させることを指す。
【0081】
本明細書で使用される用語「自己免疫疾患」又は「自己免疫障害」は、細胞が制御不能に体の自らの組織及び器官を攻撃し(自己免疫)、炎症反応並びに他の重篤症状及び疾患を起こす疾患を指す。自己免疫疾患の非限定的な例には、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、皮膚ループス、円板状ループス、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性強皮症、免疫介在性又は1型糖尿病、免疫介在性糸球体腎炎、強皮症、悪性貧血、脱毛症、天疱瘡、尋常性天疱瘡、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、グレーブス病、乾癬、自己免疫性甲状腺疾患、橋本病、橋本甲状腺炎、多発筋炎、皮膚筋炎、クレスト症候群、グッドパスチャー症候群、混合性結合組織病 偽麻痺性重症筋無力症、交感性眼炎(ophtalmia sympatica)、水晶体起因性ぶどう膜炎(phakogene uveitis)、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変(primary billiary cirrhosis)、自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemy)、ウェルローフ疾患(Werlof disease)、尋常性白斑、ベーチェット病、コラーゲン疾患、ぶどう膜炎、シェーグレン症候群、自己免疫性心筋炎、自己免疫性肝疾患、自己免疫性胃炎、天疱瘡、ギラン・バレー症候群、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、特発性血小板減少症、結節性多発動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、硬化性胆管炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、及びHTLV-1関連脊髄症がある。
【0082】
本明細書において用いられる「組合せ、併用(combination)」という語は、一つの投与剤形(dosage unit form)として固定された組合せを指すか、又は式Iの化合物の結晶形と併用相手(即ち免疫療法剤)とを独立に、同時に若しくは時間的な間隔を空けて別々に(特に、これらの時間的な間隔は、併用相手が協同的な、例えば相乗効果を示すことができるものである)投与することができる併用投与のいずれかを指す。単一の成分はキットとして又は別々に包装することができる。成分の一方又は両方(例えば、粉末又は液体)を投与前に所望の用量に再構成又は希釈することができる。
【0083】
本明細書において利用される「同時投与(co-administration)」又は「併用投与」又はこれに類する語は、それを必要とする単一の対象(例えば、患者)に、選択された併用相手を投与することを包含することを意味し、その薬剤が、同じ投与経路で又は同時に投与することを必ずしも必要としない治療レジメンを含むことを意図している。
【0084】
「組合せ医薬」及び「組合せ製品(combination product)」という語は互換的に使用され、一つの投与剤形中に固定された組合せを指すか、又は2種以上の治療剤を独立に同時に若しくは時間的間隔を空けて別々に(特に、これらの時間的間隔が、併用相手が協同的、例えば相乗効果を示すことが可能なものである)投与することができる、固定されていない組合せ若しくは併用投与のための構成成分(part)のキットのいずれかを指す。「固定された組合せ」という語は、式Iの化合物の結晶形及び併用相手(即ち、免疫療法剤)が、両方共、患者に同時に、単一の物質(entity)又は投与量で投与されることを意味する。「固定されていない組合せ」という語は、式Iの化合物の結晶形及び併用相手(即ち、免疫療法剤)が両方共、患者に別々の物質として、同時に(simultaneously)、並行して(concurrently)、又は具体的な時間制限なしに順次、のいずれかで投与されることを意味し、この種の投与により、患者の体内に2種の化合物が治療有効量で提供されることを意味する。後者はまた、多剤併用療法、例えば、3種以上の治療剤の投与にも適用される。好ましい実施形態において、組合せ医薬は、固定されていない組合せである。
【0085】
「併用療法」という語は、本開示に記載するように、自己免疫異常を治療するために2種以上の治療剤を投与することを指す。この種の投与は、これらの治療剤を実質的に同時に、例えば、有効成分の比率が固定された単一のカプセル剤等で同時投与することを包含する。或いは、この種の投与は、各有効成分を複数の、即ち別々の容器で(例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、及び液剤)同時投与することを包含する。散剤及び/又は液剤は、投与前に所望の用量に再構成又は希釈することができる。加えて、このような投与はまた、各種類の治療剤を、順次(ほぼ同時に又は異なる時点のいずれかで)使用することを包含する。いずれの場合においても、その治療レジメンは、本明細書に記載する状態又は障害の治療において薬物を併用することによる有益な効果をもたらすものとなる。
【0086】
医薬組成物、組合せ、用量、及び投与
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態は単独で使用でき、或いは、それらは、少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤も含み、多くの場合少なくとも2種以上の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物に製剤できる。幾つかの好適な賦形剤は本明細書に開示されている。当技術分野に公知である他の賦形剤を、本願の意図及び範囲から逸脱せずに使用できる。
【0087】
幾つかの実施形態において、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を利用する。医薬組成物は、経口投与、非経口投与、及び直腸投与など、特定の投与経路用に製剤できる。更に、本発明の医薬組成物は、固体形態(非限定的に、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、又は坐剤を含む)にも、液体形態(非限定的に、液剤、懸濁剤、又は乳剤を含む)にも作り上げることができる。医薬組成物は、滅菌などの従来の製薬操作に付すことができ、且つ/又は従来の不活性な希釈剤、滑沢剤、担体又は緩衝剤、並びに溶媒、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、及び増量剤などの補助剤を含んでよい。
【0088】
典型的には、医薬組成物は、有効成分を、下記などの少なくとも1種の賦形剤と共に含む錠剤又はカプセル剤である:
a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、及び/若しくはグリシン;
b)滑沢剤、例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウム若しくはカルシウム塩、及び/若しくはポリエチレングリコール;錠剤では、更に
c)結合剤、例えば、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/若しくはポリビニルピロリドン;所望の場合;
d)カプチゾール、PEG、グリセリン、シクロデキストリンなどの共溶媒和物質(co-solvating material)を含む水性ビヒクルなどの担体;
e)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸若しくはそのナトリウム塩、若しくは発泡性混合物;並びに/又は
f)吸収剤、着色剤、風味剤、及び甘味剤。
【0089】
錠剤は、当技術分野に公知である方法により、フィルムコート又は腸溶コートのいずれかを施されていてよい。
【0090】
好ましくは、化合物又は組成物は、例えば錠剤又はカプセル剤など、経口投与用に調製され、任意選択で医薬製品の投薬単位を保存及び/又は分注するのに好適な多用量フォーマットに包装される。好適な包装の例には、密封されたフォイル、投薬単位容器(例えばバイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックがあるが、これらに限定されない。
【0091】
錠剤は、有効成分を、錠剤の製造に適した無毒の医薬的に許容される賦形剤との混合物して含有し得る。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム;造粒/崩壊剤、例えば、コーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、又はアカシアガム;並びに滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクである。錠剤は、コーティングされていないか、又は胃腸管系での崩壊及び吸収を遅らせ、それによって長期間に亘る持続作用を提供するために、公知の技法によりコーティングされている。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の遅延剤(time delay material)を使用することができる。経口用製剤は、有効成分と不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、若しくはカオリンとが混合された硬ゼラチンカプセル剤として、又は有効成分と水若しくは油性媒体、例えば、落花生油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油とが混合された軟ゼラチンカプセル剤として提供することができる。
【0092】
更に本発明は、水が特定の化合物の分解を促進し得ることに基づき、本発明の化合物を有効成分として含む無水医薬組成物及び剤形を提供する。
【0093】
本発明の無水医薬組成物及び剤形は、無水又は低含水量成分を使用し、低水分量又は低湿度条件下に調製することができる。無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製及び保管することができる。したがって無水組成物は、適切な処方キットに収容できるように、水への曝露を防ぐことが知られている材料を使用して包装するのが好ましい。好適な包装の例としては、これらに限定されるものではないが、気密封止された金属箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられる。
【0094】
更に本発明は、有効成分である本発明の化合物が分解する速度を低下させる1種又は複数種の薬剤を含む医薬組成物及び剤形を提供する。本明細書において「安定剤」と称される。この種の薬剤としては、これらに限定されるものではないが、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤等が挙げられる。
【0095】
本発明の医薬組成物又は組合せは、約50~70kgの対象に対し、有効成分が約1~1000mg、又は有効成分が約1~500mg、約1~250mg、約1~150mg、又は約0.5~100mg、又は約1~50mgの単位用量とすることができる。化合物、医薬組成物、又はこれらの組合せの治療上有効な投与量は、対象の種、体重、年齢、及び個体の状態、治療される障害若しくは疾患又はそれらの重症度に依存する。通常の技術を有する医師、臨床家、又は獣医師は、障害又は疾患の進行を予防、治療、又は阻害するのに必要な各有効成分の有効量を容易に決定することができる。
【0096】
上述の投与量の特徴は、有利には、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、又は単離された臓器、組織、及びそれらの調製物を使用する生体外及び生体内試験で実証可能である。本発明の化合物は、生体外に溶液形態で、例えば、好ましくは水溶液で、及び生体内に経腸的、非経口的のいずれかで、有利には静脈内に、例えば懸濁液として又は水溶液中で適用することができる。生体内への投与量は、約10-3モル濃度から10-9モル濃度の間の範囲とすることができる。生体内での治療有効量は、投与経路に応じて、約0.1~500mg/kgの間、又は約1~100mg/kgの間の範囲とすることができる。
【0097】
他の実施形態において、上記実施形態による少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種の担体を含む医薬組成物が提供される。
【0098】
本明細書に記載の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態は、医薬品有効成分(API)並びに1種以上の薬学的に許容できる賦形剤を組み込み、ヒト対象への投与に好適である製剤を調製するための材料としても有用である。
【0099】
本明細書では、用語「薬学的に許容できる賦形剤」は、当業者に公知である通り(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照されたい)、ありとあらゆる溶媒、担体、希釈剤、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤、酸化防止剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬物安定剤、結合剤、添加剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着香剤、染料など、及びこれらの組合せを含む。従来の賦形剤が有効成分と非適合性でない限り、治療剤又は医薬組成物におけるあらゆる従来の賦形剤の使用が本願により企図されることが理解されるべきである。
【0100】
したがって、本開示の一実施形態において、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態(形態A又は形態HA)は、実質的に相純粋形態で提供される。実質的に相純粋形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドのこの結晶形態(形態A又は形態HA)を使用して、1種以上の薬学的に許容できる賦形剤をさらに含み得る医薬組成物を調製できる。いくつかの実施形態において、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態は、医薬組成物中でその結晶性を保持していないことがある。例えば、いくつかの実施形態において、結晶形態A又はHAは、例えば、噴霧乾燥又は湿式造粒を含む医薬組成物を調製する方法に使用され得る。そのため、結晶形態A又はHAが、得られた医薬組成物中にほとんど又は全く検出されないということもあり得る。
【0101】
治療キット
一実施形態において、本発明は、2種以上の別々の医薬組成物を含み、そのうちの少なくとも1種が式(I)の化合物の結晶形(形態A又は形態HA)を含む、キットを提供する。一実施形態において、キットは、容器、分割されたボトル、又は分割された金属箔の小包等、前記組成物を別々に保持するための手段を含む。この種のキットの例は、錠剤やカプセル剤等の包装に通常使用されるブリスターパックである。
【0102】
本発明のキットは、異なる剤形、例えば、経口及び非経口で投与するため、別々の組成物を異なる投与間隔で投与するため、又は別々の組成物を互いに滴定するために使用することができる。本発明のキットは、通常、服薬遵守を支援するために、投与指示書を含む。
【0103】
本発明の併用療法において、式(I)の化合物の結晶形(すなわち、形態A又は形態HA)及び他の療法剤は、同じ製造業者によっても、異なる製造業者によっても、製造及び/又は製剤されてよい。更に、式(I)の化合物の結晶形及び他の治療剤は、(i)医師への組合せ製品の発売前に(例えば、式(I)の化合物の結晶形及び他の治療剤を含むキットの場合);(ii)医師自身により(又は医師の指導の下で)投与の直前に;(iii)患者自身の中で、例えば、式(I)の化合物の結晶形と他の治療剤との連続的な投与の間に、合わせて併用療法にすることができる。
【0104】
したがって、本発明は、医薬品が別の治療剤と一緒の投与用に調製されている、自己免疫疾患を治療するための本明細書に記載の結晶形態(すなわち、形態A又は形態HA)の使用を提供する。本発明は、医薬品が式(I)の化合物の結晶形態と共に投与される、自己免疫疾患を治療するための治療剤の使用も提供する。
【0105】
本発明は、式(I)の化合物の結晶形態が別の治療剤と一緒の投与用に調製されている、自己免疫疾患を治療する方法に使用するための式(I)の化合物の結晶形態(すなわち、形態A又は形態HA)も提供する。本発明は、他方の治療剤が式(I)の化合物の結晶形態と一緒の投与用に調製されている、自己免疫疾患を治療する方法に使用するための別の免疫療法剤も提供する。本発明は、式(I)の化合物の結晶形態が別の治療剤と一緒に投与される、自己免疫疾患を治療する方法に使用するための式(I)の化合物の結晶形態も提供する。本発明は、他方の治療剤が式(I)の化合物の結晶形態と一緒に投与される、自己免疫疾患を治療する方法に使用するための別の治療剤も提供する。
【0106】
本発明は、患者が以前に(例えば24時間以内)別の治療剤により治療された、自己免疫疾患を治療するための式(I)の化合物の結晶形態の使用も提供する。本発明は、患者が以前に(例えば24時間以内)式(I)の化合物の結晶形態により治療された、自己免疫疾患を治療するための別の治療剤の使用も提供する。
【0107】
組合せ:
本発明の結晶形態と組み合わせて使用される追加の治療剤には、抗炎症剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、サイトカイン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗マラリア化合物、抗リウマチ化合物、B細胞活性化因子(BAFF)の阻害剤、Bリンパ球刺激因子(BLyS)の阻害剤、及びステロイドホルモンがあるが、これらに限定されない。
【0108】
本発明の化合物と組み合わせて使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)には、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサレート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク(dichlofenac)、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビンプロフェン(flurbinprofen)、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、テノキシカム、ナブメトム(nabumetome)、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アンチピリン、アミノピリン、アパゾン、及びニメスリドがあるが、これらに限定されない。
【0109】
本発明の化合物と組み合わせて使用される抗リウマチ化合物には、メトトレキサートがあるが、これに限定されない。
【0110】
本発明の化合物と組み合わせて使用される抗マラリア化合物には、クロロキン及びヒドロキシクロロキン(hydroxycloroquine)があるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明の化合物と組み合わせて使用されるB細胞活性化因子(BAFF)の阻害剤、別名Bリンパ球刺激因子(BLyS)の阻害剤には、ベリムマブ(Benlysta(登録商標))、ブリシビモド、及びBR3-Fcがあるが、これらに限定されない。
【0112】
本発明の化合物と組み合わせて使用される免疫抑制剤には、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ミコフェノール酸、シクロホスファミド、アザチオプリン、及びラキニモド(5-クロロ-N-エチル-4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-N-フェニル-1,2-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド)があるが、これらに限定されない。
【0113】
本発明の化合物と組み合わせて使用されるステロイドホルモンには、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)があるが、これに限定されない。
【0114】
(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態の調製:
結晶形は、例えば、好適な溶媒からの結晶化又は再結晶化、昇華、融解物からの成長、別の相からの固体状態変換、超臨界流体からの結晶化、及びジェット噴霧を含む種々の方法により調製できる。溶媒混合物からの結晶形の結晶化又は再結晶化の技法には、例えば、溶媒の蒸発、溶媒混合物の温度を低下させること、分子及び/又は塩の過飽和溶媒混合物の結晶シーディング(crystal seeding)、溶媒混合物の凍結乾燥、並びに貧溶媒(antisolvent)(逆溶媒(countersolvent)の溶媒混合物への添加がある。本明細書に記載される結晶形を調製する例示的な方法は以下に詳細に述べられる。
【0115】
多形体を含む薬物の結晶、調製の方法、及び薬物結晶の特性化は、Solid-State Chemistry of Drugs,S.R.Byrn,R.R.Pfeiffer,and J.G.Stowell,2nd Edition,SSCI,West Lafayette,Indiana(1999)に議論されている。
【0116】
溶媒を利用する結晶化技法では、1種又は複数種の溶媒の選択は、典型的には、化合物の溶解度、結晶化技法、及び溶媒の蒸気圧などの1つ又は複数の因子に依存する。例えば、化合物が第1の溶媒に可溶化されて溶液を与え、それに続いて貧溶媒が加えられて溶液中の化合物の溶解度が減少して、結晶の形成をもたらすなど、溶媒の組合せが利用され得る。貧溶媒は、化合物が低い溶解度を有する溶媒である。
【0117】
結晶を調製する一方法において、化合物は好適な溶媒に懸濁及び/又は撹拌されてスラリーが与えられ、それは加熱されて溶解が促進され得る。本明細書での用語「スラリー」は、追加の量の化合物も含んで、所与の温度で化合物と溶媒の不均一な混合物を与え得る、化合物の飽和溶液を意味する。これは、懸濁液とも称されることがある。
【0118】
種結晶を結晶化混合物に加えて、結晶化を促進することができる。シーディングを利用して、特定の多形体の成長を制御することも、結晶性生成物の粒径分布を制御することもできる。したがって、必要とされる種晶の量の計算は、例えば、“Programmed Cooling of Batch Crystallizers,”J.W.Mullin and J.Nyvlt,Chemical Engineering Science,1971,26,369-377に記載の通り、利用可能な種晶の大きさ及び平均的な生成物粒子の所望の大きさによる。一般に、サイズが小さい種晶が、バッチ中の結晶の成長を効果的に制御するために必要とされる。サイズが小さい種晶は、大きい結晶のふるい分け、粉砕、若しくは微粉化により、又は溶液の微細結晶化(micro-crystallization)により生成させることができる。結晶の粉砕又は微粉化が所望の結晶形態(crystal form)からの結晶性形態(crystallinity form)の変化(すなわち非晶質への、又は別の多形体への変化)を全く起こさないことに注意を払うべきである。
【0119】
冷却された結晶化混合物は真空下でろ過することができ、単離された固体を、冷再結晶化溶媒などの好適な溶媒で洗浄して、窒素パージ下で乾燥させると、所望の結晶形を与えることができる。単離された固体を、固体状態核磁気共鳴、示差走査熱量測定、X線粉末回折などの好適な分光学的又は分析技法により分析して、好ましい結晶形の生成物の形成を確認することができる。生じた結晶形は、典型的には、結晶化手順に元々利用された化合物の重量に基づいて、約70重量%を超える単離収率、好ましくは90重量%を超える単離収率の量で製造される。生成物は、必要な場合、共粉砕(co-milled)されるか、又はメッシュスクリーンに通されて、生成物を砕塊(delump)できる。
【0120】
或いは、結晶形態は、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドを調製する最終プロセスの反応媒体から直接調製され得る。これは、例えば、最終工程段階において、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドが結晶化し得る溶媒又は溶媒の混合物を利用することにより達成され得る。更に、結晶形は、蒸留又は溶媒添加技法によって得ることができる。
【0121】
以下に簡単に議論される方法の他に、種々の分析方法を、本明細書に記載される材料の特性化に利用できることが理解されるべきである。
以下の非限定的な例は本開示を説明するものである。
【実施例】
【0122】
略語:
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
HATU:O-(7-アゾベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウオニウム(tetramethyluonium)ヘキサフルオロホスフェート
DCM:ジクロロメタン
THF:テトラヒドロフラン
【0123】
実施例1:結晶形態Aの調製
【化2】
(S)-4-(tert-ブトキシカルボニル)モルホリン-3-カルボン酸(637g、2.75mol)をTHF(1.1L)に溶解させ、DIPEA(508g、3.9mol)、HATU(1097g、2.9mol)、及び4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-アミン(1a、1.1kg、2.6mol、国際公開第2018/047081号パンフレットに記載の通り)を加え、混合物を、黄色の懸濁液から黄色溶液に16時間撹拌すると、HPLCは反応が完了したことを示し、混合物を水(7.4kg)によりクエンチし、DCM(14.6kg)で抽出し、DCM層を、0.5M HCl溶液(5.5kg、DIPEAを完全に除くため)及び飽和NaCl溶液(5.5kg)で洗浄し、DCM層を分離した。
【0124】
このDCM相に、水(5.3kg)及び31%HCl溶液(1.2kg)を加えた。混合物を35℃で16時間撹拌すると、HPLCは脱保護反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、分離し、有機層を廃棄した。水相に、DCM(14.6kg)、及び20%NaOH溶液(およそ3.2kg)を、撹拌しながら8より高いpHまで加えた。有機層を分離し、5%NaOH(5.5kg×2、HPF6を完全に除去するため)で洗浄し、次いで水(5.5kg×3)で洗浄し、有機層をMg2SO4で乾燥させ、濾過し、次いで減圧下で濃縮すると、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドが遊離塩基(1b)として生じた。
【0125】
再結晶化工程:
上記で得られた材料(1b)をアセトン(8.7kg×3)に吸収させ、50℃の内部温度まで加温し、次いで4時間かけて15℃に冷却した。加熱/冷却サイクルを2回繰り返して、白色の懸濁液を形成させた。白色の懸濁液を50℃に加熱し、ヘプタン(15.6kg)を滴加し、懸濁液を50℃の内部温度で1時間撹拌し、次いで4時間かけて15℃の内部温度に冷却した。混合物を15℃で1時間撹拌し、濾過し、アセトン/ヘプタン(0.87kg/1.56kg)により洗浄し、50℃で16時間乾燥させると、白色固体890gを与えた。白色固体を、XRPD、DSC、及びTGAにより分析した(それぞれ
図1~3)。
【0126】
実施例2:水和物結晶形態H
Aの調製
【化3】
125mlのジクロロメタン中の(3S)-4-(tert-ブトキシカルボニル)モルホリン-3-カルボン酸(6.06g、26.2mmol)と4-メチルモルホリン(3.62g、35.8mmol)の混合物を、25mlのジクロロメタン中の4-{[5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル]メチル}ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-アミン(1a、10.0g、23.8mmol、国際公開第2018/047081号パンフレットに記載の通り)に加え、次いでHATU(10.9g、28.6mmol)を加え、混合物を室温で16時間撹拌する。転化の完了後に、反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。分離した有機層を濃縮して、塩酸塩(hydrochloride)2-プロパノールのtert-ブチルメチルエーテル溶液で処理する。生じた懸濁液を濾過し、tert-ブチルメチルエーテルで洗浄して、生成物tert-ブチル(3S)-3-[(4-{[5-(1,6-ジメチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル]メチル}ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)カルバモイル]モルホリン-4-カルボキシラート(2a)を単離し、塩酸塩として乾燥させる。
【0127】
70mlの水中の生成物tert-ブチル(3S)-3-[(4-{[5-(1,6-ジメチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル]メチル}ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)カルバモイル]モルホリン-4-カルボキシラート(2a、7.56g、11.3mmol)の混合物に、50mlのジクロロメタンを加え、次いで、31%塩酸塩(hydrochloride)水溶液(4.65g、39.5mmol)を加え、混合物を37℃で16時間撹拌する。転化の完了後、ジクロロメタン相を分離し、水層をtert-ブチルメチルエーテルで洗浄する。水相のpH値を16%水酸化ナトリウム水溶液により7~8に調整し、25mlの2-プロパノールを加え、pH値を、16%水酸化ナトリウム水溶液により8~9にさらに調整する。混合物のpHを、16%水酸化ナトリウム水溶液により12超にさらに調整する。生じた懸濁液を濾過し、2-プロパノール/水(70ml/5ml)にスラリー化し(slurred)、固体を濾過により回収し、水/2-プロパノール(50ml/3ml)で洗浄し、生成物(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミド(2b)を単離して、遊離形態として乾燥させる。
【0128】
再結晶化工程:
上述の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミド(2b)を、アセトン/水98:2(w:w)の混合物に懸濁させ、50℃に加熱して全てを溶解させる。透明濾過(clear filtration)後に、水を溶液に加えて、95:5アセトン/水(w:w)混合物を有する。溶液を45℃でシーディングする。次いで懸濁液を-10℃に冷却する。生成物を単離し、アセトン/水95:5(w:w)の混合物で洗浄し、濾過し、真空下で穏やかに乾燥させる。
【0129】
乾燥は、水の存在下でも実施できる。
【0130】
或いは、(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミド(上述の2b)を、イソプロパノール95:5水(w:w)に懸濁させ、50℃に加熱して、全てを溶解させる。透明濾過の後、溶液を25℃に冷却し、シーディングする。さらに水を加えて、-10℃に冷却する。生成物を単離して、真空下で穏やかに乾燥させる。
【0131】
乾燥は、水の存在下でも実施できる。
【0132】
水和物結晶形態HA(常に水との組合せ)の形成をもたらす上述のプロセスに使用できる他の溶媒は、エタノール、メタノール、及びイソブタノールなどの他のアルコール;THF又はアセトニトリルである。
【0133】
粉末X線回折
X線粉末回折(XRPD)データを、LynxEye検出器を有するBruker Discovery D8を使用して得た。粉末試料を、ゼロバックグラウンドSiサンプルホルダーに配置した。放射線は、Cu Kα(l=1.5418Å)であった。データを、少なくとも300秒の試料露光時間で、2~40°2シータの間で収集した。
【0134】
【0135】
【0136】
熱分析(TA):
結晶形態を、TA instrument Discovery(DSC)及び熱重量分析(TGA)を使用して分析した:アルミニウムパン(T150603)が付いているDiscovery(DSC)及びDiscovery(TGA);加熱速度10℃/分、温度範囲:30~300℃。
【0137】
DSC:
示差走査熱量測定を、TA Instruments、Discovery型を使用して各結晶形態に関して実施した。各分析で、DSCセルを50ml/分の超高純度窒素ガスでパージする。装置を、高純度インジウムにより較正した。加熱速度は30~300℃の温度範囲で毎分10℃であった。熱流は、試料重量により標準化するが、測定される使用温度に対してプロットする。温度をセルシウス度(℃)で報告し、エンタルピーをグラム当たりのジュール(J/g)で報告する。プロットは、吸熱ピークを下向きとして示している。吸熱融解ピーク(融点)を、外挿されたオンセット温度で評価した。この方法による測定された試料温度の正確さは約±1℃内であり、融解熱は約±5%の相対誤差内で測定できる。
【0138】
結晶形態A及びH
Aを使用して生成された実例的なDSCトレースを、それぞれ
図2及び4に示す。
【0139】
形態A:融解吸熱:Tオンセット=182.7℃、ΔH=65J/g
形態HA:融解吸熱:284J/gのエンタルピーΔHでTオンセット=54.2℃及び24J/gのエンタルピーΔHでTオンセット=130.6℃
【0140】
TGA:
結晶形態を試験するのに使用したTGA装置は、Q5000 TA Instruments型であった。10~20ミリグラムの試料を、20ml/分の一定流量の超高純度窒素ガスの下25℃~300℃の温度範囲で10℃/分の加熱速度で分析した。重量減少を測定された試料温度に対してプロットする。温度をセルシウス度(℃)で報告し、重量減少を%で報告する。
【0141】
結晶形態A及びH
Aを使用して生成された実例的なTGAトレースを、それぞれ
図3及び6に示す。
以下の態様を包含し得る。
[1] 遊離形態である化合物(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態。
[2] 形態Aを含む、上記[1]に記載の結晶形態。
[3] 以下の特性:
(i)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、2θを単位とする18.6±0.2°2θ、4.1±0.2°2θ、及び16.3±0.2°2θの代表的なピークを含むX線粉末回折パターン;
(ii)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、4.1±0.2°、8.2±0.2°、15.2±0.2°、16.3±0.2°、16.9±0.2°、18.2±0.2°、18.6±0.2°、19.8±0.2°、及び20.4±0.2からなる群から選択される4つ以上の2θ値を含むX線粉末回折パターン;並びに
(iii)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、4.1±0.2°、8.2±0.2°、15.2±0.2°、16.3±0.2°、16.9±0.2°、18.2±0.2°、18.6±0.2°、19.8±0.2°、及び20.4±0.2からなる群から選択される5つ以上の2θ値を含むX線粉末回折パターン
の1つを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の結晶形態。
[4] 図1に示されるX線粉末回折スペクトルと実質的に同じX線回折スペクトルを有する、上記[1]、[2]、及び[3]のいずれか一項に記載の結晶形態。
[5] 図2に示されるものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有する、上記[1]又は[2]に記載の結晶形態。
[6] 図3に示されるものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)ダイアグラムを有する、上記[1]又は[2]に記載の結晶形態。
[7] 基本的に形態Aからなる、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の結晶形態。
[8] 前記形態が実質的に純粋な相形態の形態Aである、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の結晶形態。
[9] 前記化合物が水和物である、上記[1]に記載の結晶形態。
[10] 形態H
A
を含む、上記[9]に記載の結晶形態。
[11] 以下の特性の1つを特徴とする、上記[9]又は[10]に記載の結晶形態:
(i)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、2θを単位とする6.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、及び17.3±0.2°2θの代表的なピークを含むX線粉末回折パターン;
(ii)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、6.6±0.2°、7.1±0.2°、10.6±0.2°、13.2±0.2°、14.3±0.2°、16.0±0.2°、17.3±0.2°、23.5±0.2°、26.5±0.2、及び27.3±0.2°2θからなる群から選択される4つ以上の2θ値を含むX線粉末回折パターン;並びに
(iii)約25℃の温度及び1.5418ÅのX線波長、λで測定された、6.6±0.2°、7.1±0.2°、10.6±0.2°、13.2±0.2°、14.3±0.2°、16.0±0.2°、17.3±0.2°、23.5±0.2°、26.5±0.2、及び27.3±0.2°2θからなる群から選択される5つ以上の2θ値を含むX線粉末回折パターン。
[12] 図4に示されるX線粉末回折スペクトルと実質的に同じX線回折スペクトルを有する、上記[9]、[10]、及び[11]のいずれか一項に記載の結晶形態。
[13] 図5に示されるものと実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有する、上記[9]又は[10]に記載の結晶形態。
[14] 図6に示されるものと実質的に同じ熱重量分析(TGA)ダイアグラムを有する、上記[9]又は[10]に記載の結晶形態。
[15] 前記水和物が3.5水和物である、上記[1]、及び[9]~[14]のいずれか一項に記載の結晶形態。
[16] 基本的に形態H
A
からなる、上記[9]~[15]のいずれか一項に記載の結晶形態。
[17] 前記形態が実質的に純粋な相形態の形態H
A
である、上記[9]~[15]のいずれか一項に記載の結晶形態。
[18] 上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の形態A、H
A
;及びそれらの組合せからなる群から選択される結晶形態、並びに1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
[19] 前記結晶形態が形態Aである、上記[18]に記載の医薬組成物。
[20] 前記形態Aが実質的に純粋な相形態である、上記[19]に記載の医薬組成物。
[21] 前記結晶形態が形態H
A
である、上記[18]に記載の医薬組成物。
[22] 前記形態H
A
が実質的に純粋な相形態である、上記[21]に記載の医薬組成物。
[23] 上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の形態A、H
A
;及びそれらの組合せからなる群から選択される結晶形態を、1種以上の治療剤と組み合わせて含む医薬組成物であって、前記治療剤が、抗炎症剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、サイトカイン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗マラリア化合物、抗リウマチ化合物、B細胞活性化因子(BAFF)の阻害剤、Bリンパ球刺激因子(BLyS)の阻害剤、及びステロイドホルモンからなる群から独立に選択される医薬組成物。
[24] 前記結晶形態が形態Aである、上記[23]に記載の医薬組成物。
[25] 前記形態Aが実質的に純粋な相形態である、上記[24]に記載の医薬組成物。
[26] 前記結晶形態が形態H
A
である、上記[23]に記載の医薬組成物。
[27] 前記形態H
A
が実質的に純粋な相形態である、上記[26]に記載の医薬組成物。
[28] 自己免疫疾患の治療を必要とする対象の自己免疫疾患を治療する方法であって、前記哺乳動物に、治療上有効な量の上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の形態A、H
A
;及びそれらの組合せからなる群から選択される結晶形態を投与することを含む方法。
[29] 前記結晶形態が形態Aである、上記[28]に記載の方法。
[30] 前記形態Aが実質的に純粋な相形態である、上記[29]に記載の方法。
[31] 前記結晶形態が形態H
A
である、上記[28]に記載の方法。
[32] 前記形態H
A
が実質的に純粋な相形態である、上記[31]に記載の方法。
[33] 前記対象がヒトである、上記[28]~[32]のいずれか一項に記載の方法。
[34] 化合物(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態H
A
を製造する方法であって、
e)非晶質の遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドを、少なくとも約2重量%の水を含む溶媒混合物に懸濁させて、懸濁混合物を形成する工程、
f)前記懸濁混合物を温度に溶解まで加熱して、溶液を形成する工程、
g)前記溶液を約-10℃に冷却して、懸濁液を形成する工程、
h)前記懸濁液を濾過して、前記結晶形態H
A
を回収する工程
を含む方法。
[35] 工程a)における前記溶媒混合物が、アセトン、アルコール、テトラヒドロフラン、又はアセトニトリルを含む、上記[34]に記載の方法。
[36] 工程a)における前記溶媒混合物が、アセトン/水98:2(重量比)及びイソプロパノール/水95:5(重量比)から選択される、上記[34]又は[35]に記載の方法。
[37] 化合物(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドの結晶形態Aを製造する方法であって、
j)非晶質の遊離形態の(S)-N-(4-((5-(1,6-ジメチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-1-イル)メチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)モルホリン-3-カルボキサミドを、アセトン又はイソプロパノールに懸濁させて、懸濁混合物を形成する工程、
k)前記懸濁混合物を約50℃の温度に溶解まで加熱して、溶液を形成する工程、
l)前記溶液を約4時間かけて約15℃に冷却して、懸濁混合物を形成する工程、
m)任意選択で、前記工程b)及びc)を1回又は2回繰り返す工程、
n)前記懸濁混合物を約50℃に加熱し、ヘプタンを滴加する工程、
o)前記混合物を50℃で約1時間撹拌する工程、
p)前記溶液を約4時間かけて約15℃に冷却して、懸濁混合物を形成する工程、
q)前記懸濁混合物を15℃で1時間撹拌する工程、及び
r)前記懸濁液を濾過して、前記結晶形態Aを回収する工程
を含む方法。