(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ラジオコントロール送信機
(51)【国際特許分類】
A63H 30/02 20060101AFI20231222BHJP
A63H 30/04 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A63H30/02 A
A63H30/04 A
(21)【出願番号】P 2021075969
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】北澤 秀郎
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-120798(JP,U)
【文献】実開昭59-161264(JP,U)
【文献】特開2005-318967(JP,A)
【文献】特開2011-235099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0018800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ部と、
前記グリップ部の一端に設けられて操縦信号を出力する通信モジュールおよび操縦用アンテナを有するヘッド部と、
前記グリップ部よりも大径で形成されて前記グリップ部の他端に設けられ、バッテリを収容して前記グリップ部を支持する手首側が後部となり指側が前部となるベース部と、
前記ベース部の前記前部に設けられたコネクタと、
を具備する
とともに、
前記コネクタに結合・結合解除自在に接続されて操縦信号と異なる通信信号を送受信する無線通信モジュールを有することを特徴とするラジオコントロール送信機。
【請求項2】
請求項
1に記載のラジオコントロール送信機であって、
前記前部に装着され、前記コネクタを覆うカバーを備えることを特徴とするラジオコントロール送信機。
【請求項3】
請求項
2に記載のラジオコントロール送信機であって、
前記カバーが、前記コネクタとは反対の外側に膨出する隆起成形部を有することを特徴とするラジオコントロール送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種模型体(自動車、オートバイ、航空機、船舶など)や、クレーンなどの産業機械を被操縦体とし、無線通信により被操縦体を遠隔操作するラジオコントロール送信機に関し、特に、無線通信モジュールを着脱自在に設けたラジオコントロール送信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操縦信号を出力する通信モジュール(高周波モジュール)を交換可能としたラジオコントロール装置の送信機が知られている(特許文献1参照)。この送信機において、高周波モジュールはクリスタル式高周波モジュールと、PLL用高周波モジュールで構成され、これらのモジュールは、共通の送信機本体に着脱自在に設けられる。送信機本体には、何れかのモジュールが装着された時に、モジュール内の高周波回路と電気的に接続する第1の端子部と、PLL用高周波モジュールが装着された時のみ、モジュール内のPLL回路と電気的に接続する第2の端子部が設けられる。送信機は装着モジュールからのデータに基づいて設定される所望周波数の搬送波で送信データを出力する。これにより、送信機は、高周波モジュールを交換するだけで、その国での使用可能なチャンネル周波数に設定可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のラジオコントロール装置の送信機は、操縦用の高周波モジュールが交換可能となるが、操縦信号と異なる通信信号の通信を行うための無線通信モジュールをどのような構成で交換可能とするかの示唆がない。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、操縦信号と異なる通信信号の通信を行うための無線通信モジュールを着脱自在に設けることができるラジオコントロール送信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のラジオコントロール送信機は、グリップ部3と、
前記グリップ部3の一端に設けられて操縦信号を出力する通信モジュールおよび操縦用アンテナ11を有するヘッド部5と、
前記グリップ部3よりも大径で形成されて前記グリップ部3の他端に設けられ、バッテリ12を収容して前記グリップ部3を支持する手首側が後部13となり指側が前部14となるベース部4と、
前記ベース部4の前記前部14に設けられたコネクタ20と、
を具備するとともに、
前記コネクタ20に結合・結合解除自在に接続されて前記操縦信号と異なる通信信号を送受信する無線通信モジュール15を有することを特徴とする。
【0007】
このラジオコントロール送信機では、グリップ部3の他端にベース部4が設けられ、このベース部4にはコネクタ20が設けられる。コネクタ20には、例えば操縦信号と異なる通信信号を送受信する無線通信モジュール15等、任意のモジュールを接続することができる。グリップ部3は、ベース部4にバッテリ12が収容されることにより、下側が重くなる。グリップ部3は、ベース部4側を重くすることにより、ポジショニングしたときに、バランスが向上する。無線通信モジュール15等、交換可能に取り付けられるモジュールは、このベース部4に配置される。これにより、重量物が下半分に集められることになり、ポジショニング時のバランスが低下せずにより良好となる。
また、ベース部4は、搭載部品の中では比較的大型で重量物であるバッテリ12を収容することから、軽量なヘッド部5に比べ空きスペースの確保が容易となる。この空きスペースを有効に利用して、コネクタ20を配置することができ、モジュールの取り付けのためのスペースとして容易に確保可能となる。また、コネクタ20に接続されるモジュールを無線通信モジュール15とした場合には、ラジオコントロール送信機は、操縦信号を出力するヘッド部5と、操縦信号と異なる通信信号を送受信する無線通信モジュール15とが、グリップ部3の一端(上側)と、他端(下側)とで離間する。これにより、双方のアンテナ同士による電波の競合が抑制されている。さらに、この無線通信モジュール15がベース部4の前部14に配置されることにより、操縦者の身体側に近い後部13に配置されるよりも送受信が良好に行える。ラジオコントロール送信機は、例えば横向きにして、前後方向が身体と平行となる向きで持たれても、コネクタ20に接続される無線通信モジュール15がベース部4の前部14に設けられていることで、身体からの影響を受けにくくして良好な送受信が可能となる。
【0009】
また、このラジオコントロール送信機では、コネクタ20に接続される無線通信モジュール15は、操縦信号以外の通信信号の通信を可能にする。無線通信モジュール15は、コネクタ20により結合・結合解除自在となるので、種々の規格のもの、例えばBluetooth(登録商標)規格、Wi-Fi規格などの操縦信号と異なる通信信号を送受信するモジュールとすることができ、交換が可能となる。これにより、画像転送、操縦用のバックアップ用信号の送受信、安定した電波帯での送受信を、操作部の電波を使わずに行うことが可能となる。
【0010】
本発明の請求項2記載のラジオコントロール送信機は、請求項1に記載のラジオコントロール送信機であって、
前記前部14に装着され、前記コネクタ20を覆うカバー16を備えることを特徴とする。
【0011】
このラジオコントロール送信機では、ベース部4の前部14に装着されて、送信機としての外観が良好になり、コネクタ20に対して、塵埃や水滴など異物の付着を防止することができる。また、コネクタ20にモジュールが接続された場合には、モジュールを覆って保護する。
【0012】
本発明の請求項3記載のラジオコントロール送信機は、請求項2に記載のラジオコントロール送信機であって、
前記カバー16が、前記コネクタ20とは反対の外側に膨出する隆起成形部30を有することを特徴とする。
【0013】
このラジオコントロール送信機では、カバー16に、隆起成形部30が形成される。この隆起成形部30は、種々のモジュール、例えば無線通信モジュール15がコネクタ20に接続される場合、このモジュールの高さが変化した場合に有効となる。すなわち、無線通信モジュール15の場合では、四角形の基板部21における上面の中央部に回路部が配置される。回路部は、波線状のパターンアンテナ24に接続される。回路部は、ケース23に覆われる。カバー16は、隆起成形部30を有することにより、種々の無線通信モジュール15において、異なる高さで搭載されたケース23との干渉を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載のラジオコントロール送信機によれば、ベース部に設けられたコネクタに、任意のモジュールを接続することができる。
【0015】
また、このラジオコントロール送信機によれば、操縦信号と異なる通信信号の通信を行うための無線通信モジュール、例えばBluetooth規格、Wi-Fi規格などの操縦信号と異なる通信信号を送受信する無線通信モジュールを着脱自在に設けることができる。
【0016】
本発明に係る請求項2記載のラジオコントロール送信機によれば、送信機の外観が良好になり、コネクタへの異物の付着を防止できる。また、コネクタにモジュールが接続されている場合には、モジュールを覆って保護することができる。
【0017】
本発明に係る請求項3記載のラジオコントロール送信機によれば、カバーに形成される隆起成形部によって、種々のモジュール、例えば無線通信モジュールがコネクタに接続される場合、このモジュールのケースと干渉するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るラジオコントロール送信機の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るラジオコントロール送信機のベース部を断面で表した側面図である。
【
図3】
図2に示したベース部の前部を拡大した要部拡大側面図である。
【
図4】カバーおよび無線通信モジュールが取り外されたベース部の前部を表す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
本発明に係るラジオコントロール送信機(以下、送信機1という)は、例えば各種模型体(自動車、オートバイ、航空機、船舶など)や、クレーンなどの産業機械を被操縦体とし、予め決められた周波数帯(例えば2.4GHz帯)を使用し、その周波数帯の中から空きバンドを自動的に選択する周波数ホッピング方式によって送信周波数を決定し、筐体に設けられるトリガー2やスティックなどの操作部材の操作に応じた操縦信号(無線電波)を被操縦体に送信することにより被操縦体を遠隔操作するものである。
ここで、操縦信号とは、上記した通り被操縦体を操作し操縦する際に発せられる信号である。また、後述する通信信号とは、この操縦信号以外で操縦信号と異なる通信信号であり、すなわち、被操縦体を操作し操縦する際にリアルタイムで発せられる信号(操縦信号)とは別のものである。
【0021】
なお、本例では、送信機1によって遠隔操作される被操縦体が模型自動車の場合を例にとって説明する。また、被操縦体の動力源としては、エンジンを用いることを想定して説明するが、モーターを動力源として用いることもできる。
【0022】
図1は、本発明に係るラジオコントロール送信機の全体構成を示す斜視図である。
送信機1は、
図1に示すように、グリップ部3、ベース部4、ヘッド部5を備えて大略構成され、各部の筐体は可撓性を有する熱可塑性樹脂(例えば汎用プラスチック)で形成されている。
【0023】
グリップ部3は、一端(上側)がヘッド部5と一体をなし、他端(下側)がベース部4と一体をなしており、外形がベース部4からヘッド部5に向かって細く楕円柱状に形成される。グリップ部3は、被操縦体を遠隔操作するときに操縦者が把持する把持部として機能する。
【0024】
ベース部4は、グリップ部3の他端(下側)に設けられ、矩形状に形成される。ベース部4は、グリップ部3を把持する手の下限位置を規制して手がグリップ部3から抜け落ちるのを防ぐとともに、送信機1を使用していないときに例えば地面などに立てて置く際の所定の設置面積を底面に有する脚部としても機能する。
【0025】
また、ベース部4には、操縦者が両手を使ってホイール6やトリガー2を操作している際に操作するためのスイッチ機構7が設けられている。
図1では、このスイッチ機構7を操縦者がグリップ部3を把持したときの操縦者側の端部に設けた例である。スイッチ機構7は、両手操作中の操縦者が両手の指以外の身体の一部(例えば、胸、腹、肩、股、膝など)や近辺の物(例えば、競技場の手摺りなど)に送信機1を引き寄せてスイッチをオン・オフさせることにより、スイッチ機構7に割り当てられた機能を働かせることができる。
【0026】
スイッチ機構7に割り当てる機能としては、例えばターボ機能のオン・オフ、ミキシング、ジャイロ操作、ラップ計測、急ブレーキ、カメラなど任意であるが、特に操縦者が両手操作中に並行して操作したい機能を割り当てておけば、緊急事態の際に咄嗟の判断でスイッチ機構7を瞬時に操作でき、スイッチ機構7に割り当てた機能を即座にオン・オフさせることができる。
【0027】
ヘッド部5は、グリップ部3の一端(上側)に設けられ、第一操作部材としてのホイール6と、第二操作部材としてのトリガー2とを備えている。
【0028】
図2は、本発明に係るラジオコントロール送信機のベース部4を断面で表した側面図である。
ホイール6は、被操縦体の進行方向を制御するためのステアリングとしての操作部材である。ホイール6は、
図1および
図2に示すように、略円板形状の面の中心と軸心を一致させて、略円板状の面と垂直に送信機1のヘッド部5の方向に延在する回転軸によって支持される。ホイール6は、所定の基準位置から左および右回りに回動して被操縦体の進行方向を制御するためのステアリングとして操作される。
【0029】
トリガー2は、被操縦体の動力源を制御し、被操縦体の移動速度を制御するための操作部材である。トリガー2は、
図1や
図2に示すように、引き金形状をなし、第一のレバーとしてのスロットルレバー8と、第二のレバーとしてのブレーキレバー9とに分割された構成であり、
図2の矢印Aおよび矢印Bの方向に回動可能にヘッド部5に取り付けられる。
【0030】
トリガー2は、スロットルレバー8がヘッド部5の当接面(不図示)に当接する位置まで
図2の矢印Aの方向に回動可能とされ、ブレーキレバー9がヘッド部5の他端の当接面(不図示)に当接する位置まで矢印Bの方向に回動可能とされている。
【0031】
トリガー2は、一般的にグリップ部3を把持した手の人指し指をスロットルレバー8にかけて矢印Aの方向に引いて操作され、ブレーキレバー9をスロットルレバー8にかけた指の背で押して矢印Bの方向に操作される。
【0032】
トリガー2は、スロットルレバー8にかけている指を離すと、予め設定している初期位置(
図2に示す状態)に自動復帰するようになっている。この初期位置のことをニュートラル位置という。ニュートラル位置では、被操縦体のエンジンは回転しているが、クラッチが切れており、被操縦体は走行しない状態となっている。
【0033】
なお、被操縦体の動力源がモーターである場合は、ニュートラル位置ではモーターは回転していない。
【0034】
トリガー2は、スロットルレバー8を
図2の矢印Aの方向に引くことで被操縦体のエンジンのスロットルの制御を行い、被操縦体の移動速度を制御する。トリガー2は、スロットルレバー8を矢印Aの方向に操作するほど被操縦体が加速する。
【0035】
また、トリガー2は、ブレーキレバー9を
図2の矢印Bの方向に操作することでブレーキの制御を行うようにすることができる。そして、トリガー2は、ブレーキレバー9を矢印Bの方向に操作するほど強力なブレーキとなる。
【0036】
なお、送信機1の設定によっては、トリガー2のブレーキレバー9を
図2の矢印Bの方向に操作すると被操縦体を後進させるものもある。また、被操縦体の動力にモーターを用いた場合も、トリガー2のスロットルレバー8を
図2の矢印Aの方向に操作すると被操縦体を加速させることができる。
【0037】
さらに、送信機1には、ホイール6とトリガー2以外にも多数のボタンなどの操作部材が設けられている。これらの操作部材には、被操縦体の動作に関わる特殊な操作を割り当てることができる。
【0038】
ヘッド部5には、表示部10と操縦用アンテナ11が設けられている。表示部10は、操縦者がグリップ部3を把持したときに、操縦者が表示画面を見やすいように所定角度傾斜して設けられる。表示部10は、送信機1の設定を表示するディスプレイであり、表示部10の周辺に設けられる操作ボタンやスライドスイッチなどの設定用操作部材の操作により、表示の内容を切り替えたり、送信機1の設定を変更している。
【0039】
操縦用アンテナ11は、操縦者がグリップ部3を把持した状態で表示部10の反対側に位置するヘッド部5の一端部分(すなわち、操縦者がグリップ部3を把持した状態におけるヘッド部5の操縦者と対向する側の端部と反対側に位置する端部)に回転自在に軸支されている。操縦用アンテナ11は、被操縦体を遠隔操作するときに、ヘッド部5と一体に外形を形成する水平状態(
図2の状態)から90°回転して垂直方向に向いた起立状態で使用される。操縦用アンテナ11は、起立状態で使用することにより、被操縦体の遠隔操作時における指向性を高めることができる。
【0040】
さらに、ヘッド部5には、上述した表示部10の他、不図示の送信部(通信モジュール)、記憶部、制御部を含む電子回路部が内蔵されている。
【0041】
なお、ベース部4には、電子回路部の各部(表示部10、通信モジュール、記憶部、制御部)に必要な駆動電力を供給するためのバッテリ12が交換可能に設けられる。
【0042】
通信モジュールは、制御部により生成された送信データを変調・増幅し、この変調・増幅した操縦信号を、制御部の制御により、操縦用アンテナ11を介して被操縦体に送信する。
【0043】
記憶部は、設定用操作部材の操作に基づく各種設定情報を、制御部の制御により記憶している。また、記憶部には、送信機1を構成する各部の駆動制御を行うための制御プログラムが記憶されている。
【0044】
制御部は、表示部10、通信モジュール、記憶部を統括制御しており、ホイール6やトリガー2の操作や設定に応じた送信データの生成、表示部10の表示制御、通信モジュールから操縦用アンテナ11を介しての操縦信号の出力制御、記憶部に対する設定情報の保存、記憶部に記憶される制御プログラムに基づく送信機1の各部の駆動制御などを行っている。
【0045】
ベース部4は、
図2に示すように、グリップ部3よりも大径で形成されて、グリップ部3の他端(下側)に設けられる。このベース部4は、バッテリ12を収容する。ベース部4は、グリップ部3を支持する手首側が後部13となり、指側が前部14となる。
【0046】
図3は、
図2に示したベース部4の前部14を拡大した要部拡大側面図である。
ベース部4の前部14には、モジュールが着脱自在に設けられる。本実施形態では、操縦信号と異なる通信信号を送受信する無線通信モジュール15が着脱自在に設けられる。前部14に装着された無線通信モジュール15は、ベース部4における前部14の上面および先端面に渡って取り付けられる側面視L字状のカバー16により覆われる。
【0047】
図4は、カバー16および無線通信モジュール15が取り外されたベース部4の前部14を表す要部拡大斜視図である。
ベース部4の前部14には、ベース部4の外装パネル17が先端面に至る途中で終端となることにより、段部状となったモジュール取付部18が形成される。モジュール取付部18には、本体側の基板19が表出する。この本体側の基板19は、グリップ部3を通り、ヘッド部5に至るケーブルまたはFPC(Flexible Printed Circuits)等の可撓基板により、操作部のメイン基板(不図示)に接続される。本体側の基板19の上面には、雌雄コネクタのいずれか一方のコネクタ20が取り付けられている。
【0048】
無線通信モジュール15は、基板部21と、この基板部21の表面に形成された回路部と、基板部21の裏面に取り付けられた雌雄コネクタのいずれか他方のコネクタ22(
図3参照)と、を有する。基板部21は、他の部分との電波干渉を防ぐために、所定の面積を有する四角形で形成される。基板部21の略中央には、回路部が設けられる。回路部は、長方形のベース板(不図示)と、ベース板の上に実装されたICなどの電子部品を覆うケース23と、を有する。回路部には、パターンアンテナ24が接続される。
【0049】
なお、送信機1は、無線通信モジュール15の装着構造として、抜き差しできるカセットのような構造としてもよい。本実施形態では、本体側の基板19と無線通信モジュール15とが板面同士を対向させてコネクタ接続されるが、端縁同士を突き合わせるような構造であってもよい。例えば、ベース部4に端子を有したスリットを設け、そこにエッジコネクタを有する無線通信モジュール15を挿抜自在としてもよい。
【0050】
無線通信モジュール15は、例えばBluetooth規格、Wi-Fi規格、その他無線通信の規格とすることができる。Bluetooth規格は、有効範囲が数十mである。Wi-Fi規格は、有効範囲が数百mであり、2.4GHz帯、5GHz帯の周波数帯となる。その他無線通信の規格としては、920MHzの周波数帯がある。920MHzの周波数帯は、2.4GHz帯であると通信が不安定なとき、バックアップの電波として使用できる。
【0051】
送信機1は、Bluetooth規格、Wi-Fi規格などの無線通信モジュール15が着脱自在となる。これらは、電波の到達距離、到達範囲を、近距離無線通信規格であるNFC(Near Field Communication)よりも拡げることができる。送信機1は、無線通信モジュール15を備えることにより、例えば、操縦者が操縦台という高い位置に立っているときに、無線通信モジュール15を介して、外部端末にデータを送信して第三者が見るなどの無線通信が可能となる。なお、NFCは、かざして通信となるが、種々のデータを第三者が共有したりする目的で使用してもよい。
【0052】
無線通信モジュール15は、略半部が反射板25となっている。反射板25は、パターンアンテナ24の下部に位置する。反射板25は、電波反射面となって、パターンアンテナ24の指向性を向上させる。無線通信モジュール15は、ベース部4の前部14において、反射板25の上に配置されることで、ベース部4の前方(先端側)の方向に、指向性を付与して電波の送受信が可能となっている。無線通信モジュール15から出力される電波は、反射板25によって、前方に向かう半円状・半球状となった指向性を有する。操縦者は、やや前に傾けてグリップ部3を把持して使うことが多いので、ベース部4の前部14に無線通信モジュール15が配置されることにより、電波が前方に飛ぶことになる。
【0053】
前部14に設けられたモジュール取付部18は、無線通信モジュール15が装着された状態で、カバー16により覆われる。本実施形態において、カバー16は、ベース部4の前部14における上面と前端面を覆う側面視L字状で形成される。なお、カバー16の形状はこれに限定されない。カバー16は、係止構造によりベース部4に係止解除可能に係止される。係止構造は、カバー16に垂設した一対の弾性係止爪26と、モジュール取付部18の左右に設けられてこの弾性係止爪26が係止する係止穴27と、により構成できる。係止構造は、さらに、ベース部4の前端面に突設した爪部28と、カバー16の前面板裏面に形成されてこの爪部28が係止する係止凹部29(
図3参照)とを有してもよい。
【0054】
このように、カバー16は、ねじ止めせずにベース部4に固定される。カバー16は、金属やメッキを使用せず、樹脂製とすることにより、電波的な障害が生じないように図られている。なお、カバー16は、後方であれば金属を配置して、ベース部4の後部13に電波が向かわないように構成してもよい。これにより、電波をより確実に前方へ出力させることが可能になる。
【0055】
カバー16は、無線通信モジュール15を取り付けるコネクタ20およびモジュール取付部18と反対の外側に膨出する隆起成形部30を有する。すなわち、カバー16は、上面の真ん中が膨らんでいる。この膨らみは、ケース23の大きい無線通信モジュール15が装着された場合に、カバー16とケース23との干渉を回避するためのものとなる。
【0056】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0057】
本実施形態に係る送信機1では、グリップ部3の一端に操作部となるヘッド部5が設けられ、グリップ部3の他端にベース部4が設けられる。送信機1は、ヘッド部5が上側、ベース部4が下側となる向きでグリップ部3が把持される。ヘッド部5には、操縦信号を出力する通信モジュールおよび操縦用アンテナ11が設けられる。ベース部4には、操縦信号と異なる通信信号を送受信する無線通信モジュール15が装着される。
【0058】
グリップ部3は、ベース部4にバッテリ12が収容されることにより、下側が重くなる。グリップ部3は、持ったときの上半分(すなわち、ヘッド部5側)を軽くし、下半分(すなわち、ベース部4側)を重くすることにより、ポジショニングしたときに、その逆の場合に比べ、バランスが向上する。
【0059】
送信機1は、交換可能に取り付けられる無線通信モジュール15が、このベース部4に配置される。これにより、送信機1は、重量物が下半分に集められることになり、ポジショニング時のバランスが低下せずにより良好となる。すなわち、送信機1は、無線通信モジュール15を下側のベース部4に配置することにより、全体の操作感に良い影響を与えることができる。
【0060】
また、送信機1において、ベース部4は、搭載部品の中では比較的大型で重量物であるバッテリ12を収容することから、軽量なヘッド部5に比べ空きスペースの確保が容易となる。送信機1は、この空きスペースを有効に利用して、無線通信モジュール15の接続のためのコネクタ20およびモジュール取付部18が容易に確保可能となる。
【0061】
モジュール取付部18は、特に収容空間を形成せずに確保できる。ベース部4の前部14に段部状に形成されたモジュール取付部18を設けることにより、無線通信モジュール15をモジュール取付部18に載せる状態で装着することが可能となる。このモジュール取付部18には、一方のコネクタ20が設けられる。無線通信モジュール15は、この一方のコネクタ20に結合させ、モジュール取付部18に載せた状態で装着が可能となる。これにより、無線通信モジュール15は、着脱が極めて容易に可能となる。モジュール取付部18に装着された無線通信モジュール15は、ベース部4の前部14に着脱されるカバー16により覆われる。
【0062】
また、送信機1は、操縦信号を出力するヘッド部5と、操縦信号と異なる通信信号を送受信する無線通信モジュール15とが、グリップ部3の一端(上側)と、他端(下側)とで離間する。これにより、双方のアンテナ同士による電波の競合が抑制される。
【0063】
さらに、送信機1は、無線通信モジュール15がベース部4の前部14に配置されることにより、操縦者の身体側に近い後部13に配置されるよりも送受信が良好に行えるようになる。なお、送信機1は、使用時の向きが必ずしも前部14が前、後部13が後に限定されるものではない。送信機1は、例えば横向きにして、前後方向が身体と平行となる向きで持たれてもよい。このような場合においても、無線通信モジュール15は、ベース部4の前部14に設けられていることで、身体からの影響を受けにくくして良好な送受信が可能となる。
【0064】
そして、無線通信モジュール15は、操縦信号以外の通信信号の通信を可能にする。無線通信モジュール15は、コネクタ20により結合・結合解除自在となるので、種々の規格のものへと交換が可能となる。これにより、無線通信モジュール15は、操縦信号以外の通信信号の通信、例えば、画像転送、操縦用のバックアップ用信号の送受信、安定した電波帯での送受信を、操作部の電波を使わずに行うことが可能となる。このように、送信機1は、重量バランスと、電波の指向性と、通信環境と、が同時に満足されるように構成されている。
【0065】
また、この送信機1では、カバー16に、隆起成形部30が形成される。この隆起成形部30は、種々の無線通信モジュール15が交換される場合、モジュール取付部18からの装着高さが変化した場合に有効となる。すなわち、無線通信モジュール15は、四角形の基板部21における上面の中央部に回路部が配置される。回路部は、波線状のパターンアンテナ24に接続される。回路部は、ケース23に覆われる。パターンアンテナ24の周りは、一般的に空間を確保しなければならない仕様となっている。カバー16は、隆起成形部30を有することにより、種々の無線通信モジュール15において、異なる高さで搭載されたケース23との干渉を回避することが可能となる。その結果、高さの異なる無線通信モジュール15を着脱自在に設けることができる。
【0066】
また、カバー16は、取り付けられる無線通信モジュール15の形状や大きさ、高さなどが異なる場合に、それら形状や大きさや高さ等にそれぞれ対応可能とされる形状、大きさ、高さ或いは隆起形成部30を有するカバー16を用意することで対応させることとしてもよく、さらに、ケース23の形状や高さに対応する異なる形状、高さ等の隆起形成部30を有するカバー16を用意することとしてもよく、このように無線通信モジュール15やケース23の形状、大きさ、高さ等のそれぞれが異なる場合でも、これらに干渉することがなく、無線通信モジュール15やケース23に合わせて、様々な大きさや様々な隆起形成部30の形状を有するカバー16を適宜用意して交換して取り付けられるようにしてもよい。
【0067】
さらに、無線通信モジュール15がコネクタ20に接続されていない状態であっても、これを覆うようにカバー16を取り付けベース部4の前部14を構成してもよく、またカバー16の無い状態であっても、無線通信モジュール15やその他のモジュールを取り付けて使用することとしてもよい。例えばカバーを兼ねるような形状のモジュールなどをコネクタ20に接続し、ベース部4の前部14に配置して使用することも可能である。
【0068】
したがって、本実施形態に係る送信機1によれば、種々のモジュール、例えば操縦信号と異なる通信信号の通信を行うための無線通信モジュール15を着脱自在に設けることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…ラジオコントロール送信機(送信機)
3…グリップ部
4…ベース部
5…ヘッド部
11…操縦用アンテナ
12…バッテリ
13…後部
14…前部
15…無線通信モジュール
16…カバー
20…コネクタ(一方のコネクタ)
22…コネクタ(他方のコネクタ)
30…隆起成形部