(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】試料加工装置および試料加工方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/305 20060101AFI20231222BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01J37/305 A
H01J37/20 A
(21)【出願番号】P 2021117757
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】木村 達人
(72)【発明者】
【氏名】小塚 心尋
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直樹
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-054409(JP,A)
【文献】特開2000-021851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/30
H01J 37/20
H01J 37/22
B23K 15
G01N 1/28-1/32
C23F 4/00
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を加工制御用の照明条件、および前記加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明可能な照明系と、
前記試料を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された前記試料の画像が表示される表示部と、
前記照明系および前記カメラを制御して、前記イオン源の制御に用いられる加工制御用画像、および前記表示部に表示される表示用画像を取得する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記試料が前記加工制御用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
前記加工制御用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して前記加工制御用画像を取得する処理と、
前記加工制御用画像に基づいて、前記イオン源を制御する処理と、
前記試料が前記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得する処理と、
前記表示用画像を前記表示部に表示させる処理と、
を行い、
前記処理部は、
前記加工制御用画像を取得する処理を繰り返し、
繰り返し取得された前記加工制御用画像において変化の大きい領域を検出し、
検出された前記変化の大きい領域の位置に対応する前記表示用画像の領域を拡大して、前記表示部に表示させる、試料加工装置。
【請求項2】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を加工制御用の照明条件、および前記加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明可能な照明系と、
前記試料を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された前記試料の画像が表示される表示部と、
前記照明系および前記カメラを制御して、前記イオン源の制御に用いられる加工制御用画像、および前記表示部に表示される表示用画像を取得する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記試料が
前記加工制御用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
前記加工制御用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して前記加工制御用画像を取得する処理と、
前記加工制御用画像に基づいて、前記イオン源を制御する処理と、
前記試料が前
記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得する処理と、
前記表示用画像を前記表示部に表示させる処理と、
を行い、
前記照明系は、前記試料を同軸落射照明する同軸落射照明装置を含み、
前記試料ステージは、前記同軸落射照明装置の光軸に対して直交する軸を傾斜軸として、前記試料を傾斜させ、
前記処理部は、
第1傾斜角度に傾斜した前記試料を、前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得し、
前記第1傾斜角度とは異なる第2傾斜角度に傾斜した前記試料を、前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得し、
前記第1傾斜角度で撮影された前記表示用画像および前記第2傾斜角度で撮影された前記表示用画像を前記表示部に表示させる、試料加工装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記処理部は、
前記加工制御用画像を取得する処理を繰り返し、
繰り返し取得された前記加工制御用画像において変化の大きい領域を検出し、
検出された前記変化の大きい領域の位置に対応する前記表示用画像の領域を拡大して、前記表示部に表示させる、試料加工装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記処理部は、前記表示用の照明条件を変更する指示を受け付け、前記表示用の照明条件を変更する指示に基づいて前記表示用の照明条件を変更し、変更された前記表示用の照明条件で前記試料が照明されるように前記照明系を制御する、試料加工装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記処理部は、
前記表示部に表示された前記表示用画像の倍率を変更する指示を受け付ける処理と、
前記表示用画像の倍率を変更する指示に基づいて、前記表示用画像の倍率を変更して前記表示部に表示させる処理と、
を行う、試料加工装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記処理部は、
前記表示部に表示された前記表示用画像の視野を変更する指示を受け付ける処理と、
前記表示用画像の視野を変更する指示に基づいて、前記表示用画像の視野を変更して前記表示部に表示させる処理と、
を行う、試料加工装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、
前記処理部は、前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影する前に、前記イオン源に前記イオンビームの照射を停止させる、試料加工装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、
前記処理部は、
前記試料が、第1の前記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
第1の前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して第1の前記表示用画像を取得する処理と、
第1の前記表示用画像を前記表示部に表示させる処理と、
前記試料が、第2の前記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
第2の前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して第2の前記表示用画像を取得する処理と、
第2の前記表示用画像を前記表示部に表示させる処理と、
を行う、試料加工装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、
前記照明系は、前記試料を側射照明する側射照明装置を含む、試料加工装置。
【請求項10】
試料にイオンビームを照射するイオン源と、前記試料を加工制御用の照明条件、および前記加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明可能な照明系と、を含み、前記試料に前記イオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置を用いた試料加工方法であって、
前記試料が前記加工制御用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する工程と、
前記加工制御用の照明条件で照明された前記試料をカメラで撮影して加工制御用画像を取得する工程と、
前記加工制御用画像に基づいて、前記イオン源を制御する工程と、
前記試料が前記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する工程と、
前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して表示用画像を取得する工程と、
前記表示用画像を表示部に表示させる工程と、
を含み、
前記加工制御用画像を取得する工程を繰り返し、
繰り返し取得された前記加工制御用画像において変化の大きい領域を検出し、
検出された前記変化の大きい領域の位置に対応する前記表示用画像の領域を拡大して、前記表示部に表示させる、試料加工方法。
【請求項11】
試料にイオンビームを照射するイオン源と、
前記試料を加工制御用の照明条件、および前記加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明可能な照明系と、前記試料を
保持する試料ステージと、を含み、前記試料に前記イオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置を用いた試料加工方法であって、
前記試料が
前記加工制御用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する工程と、
前記加工制御用の照明条件で照明された前記試料をカメラで撮影して加工制御用画像を取得する工程と、
前記加工制御用画像に基づいて、前記イオン源を制御する工程と、
前記試料が前
記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する工程と、
前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して表示用画像を取得する工程と、
前記表示用画像を表示部に表示させる工程と、
を含み、
前記照明系は、前記試料を同軸落射照明する同軸落射照明装置を含み、
前記試料ステージは、前記同軸落射照明装置の光軸に対して直交する軸を傾斜軸として、前記試料を傾斜させ、
第1傾斜角度に傾斜した前記試料を、前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得し、
前記第1傾斜角度とは異なる第2傾斜角度に傾斜した前記試料を、前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得し、
前記第1傾斜角度で撮影された前記表示用画像および前記第2傾斜角度で撮影された前記表示用画像を前記表示部に表示させる、試料加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料加工装置および試料加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームを用いて試料を加工する試料加工装置として、試料の断面を加工するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)や、薄膜試料を作製するためのイオンスライサ(登録商標)などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バルク試料上に遮蔽ベルトを配置し、遮蔽ベルトを介して試料にイオンビームを照射し、遮蔽ベルトで遮蔽されなかった部分をイオンミリングすることによって透過電子顕微鏡用の薄膜試料を作製する試料加工装置が開示されている。
【0004】
特許文献1では、CCDカメラで試料のエッチング断面を撮影し、イオンミリング終了判定回路が試料の形状変化を監視する。イオンミリング終了判定回路が試料に貫通孔が開いたことを検出した場合、イオンビームの放出が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような試料加工装置では、カメラで撮影された画像を用いて、試料の形状変化を監視している。そのため、同じ条件で撮影された画像が必要となるため、カメラで試料を撮影する際には、同じ照明条件で撮影が行われる。
【0007】
しかしながら、イオンミリングの終了判定に用いられる画像とは異なる照明条件で撮影された試料像を取得できれば、ユーザーが加工状況を確認しやすい。例えば、照明条件を加工エッジが確認しやすい条件にしたり、試料の厚さを確認しやすい条件にしたりすることで、ユーザーが加工状況を正確に把握できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を加工制御用の照明条件、および前記加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明可能な照明系と、
前記試料を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された前記試料の画像が表示される表示部と、
前記照明系および前記カメラを制御して、前記イオン源の制御に用いられる加工制御用画像、および前記表示部に表示される表示用画像を取得する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記試料が前記加工制御用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
前記加工制御用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して前記加工制御用画像を取得する処理と、
前記加工制御用画像に基づいて、前記イオン源を制御する処理と、
前記試料が前記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得する処理と、
前記表示用画像を前記表示部に表示させる処理と、
を行い、
前記処理部は、
前記加工制御用画像を取得する処理を繰り返し、
繰り返し取得された前記加工制御用画像において変化の大きい領域を検出し、
検出された前記変化の大きい領域の位置に対応する前記表示用画像の領域を拡大して、
前記表示部に表示させる。
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を加工制御用の照明条件、および前記加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明可能な照明系と、
前記試料を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された前記試料の画像が表示される表示部と、
前記照明系および前記カメラを制御して、前記イオン源の制御に用いられる加工制御用画像、および前記表示部に表示される表示用画像を取得する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記試料が前記加工制御用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
前記加工制御用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して前記加工制御用画像を取得する処理と、
前記加工制御用画像に基づいて、前記イオン源を制御する処理と、
前記試料が前記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する処理と、
前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得する処理と、
前記表示用画像を前記表示部に表示させる処理と、
を行い、
前記照明系は、前記試料を同軸落射照明する同軸落射照明装置を含み、
前記試料ステージは、前記同軸落射照明装置の光軸に対して直交する軸を傾斜軸として、前記試料を傾斜させ、
前記処理部は、
第1傾斜角度に傾斜した前記試料を、前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得し、
前記第1傾斜角度とは異なる第2傾斜角度に傾斜した前記試料を、前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得し、
前記第1傾斜角度で撮影された前記表示用画像および前記第2傾斜角度で撮影された前記表示用画像を前記表示部に表示させる。
【0009】
このような試料加工装置では、加工制御用画像と表示用画像を異なる照明条件で撮影できる。そのため、加工制御用画像に適した画像および表示用画像に適した画像を得ることができる。したがって、加工制御用画像を用いてイオン源を適切に制御して加工を正確に行うことができ、かつ、表示部に表示画像を表示させることによってユーザーが加工状況を正確に把握できる。
【0010】
本発明に係る試料加工方法の一態様は、
試料にイオンビームを照射するイオン源と、前記試料を加工制御用の照明条件、および前記加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明可能な照明系と、を含み、前記試料に前記イオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置を用いた試料加工方法であって、
前記試料が前記加工制御用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する工程と、
前記加工制御用の照明条件で照明された前記試料をカメラで撮影して加工制御用画像を取得する工程と、
前記加工制御用画像に基づいて、前記イオン源を制御する工程と、
前記試料が前記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する工程と、
前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して表示用画像を取得
する工程と、
前記表示用画像を表示部に表示させる工程と、
を含み、
前記加工制御用画像を取得する工程を繰り返し、
繰り返し取得された前記加工制御用画像において変化の大きい領域を検出し、
検出された前記変化の大きい領域の位置に対応する前記表示用画像の領域を拡大して、前記表示部に表示させる。
本発明に係る試料加工方法の一態様は、
試料にイオンビームを照射するイオン源と、前記試料を加工制御用の照明条件、および前記加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明可能な照明系と、前記試料を保持する試料ステージと、を含み、前記試料に前記イオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置を用いた試料加工方法であって、
前記試料が前記加工制御用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する工程と、
前記加工制御用の照明条件で照明された前記試料をカメラで撮影して加工制御用画像を取得する工程と、
前記加工制御用画像に基づいて、前記イオン源を制御する工程と、
前記試料が前記表示用の照明条件で照明されるように前記照明系を制御する工程と、
前記表示用の照明条件で照明された前記試料を前記カメラで撮影して表示用画像を取得する工程と、
前記表示用画像を表示部に表示させる工程と、
を含み、
前記照明系は、前記試料を同軸落射照明する同軸落射照明装置を含み、
前記試料ステージは、前記同軸落射照明装置の光軸に対して直交する軸を傾斜軸として、前記試料を傾斜させ、
第1傾斜角度に傾斜した前記試料を、前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得し、
前記第1傾斜角度とは異なる第2傾斜角度に傾斜した前記試料を、前記カメラで撮影して前記表示用画像を取得し、
前記第1傾斜角度で撮影された前記表示用画像および前記第2傾斜角度で撮影された前記表示用画像を前記表示部に表示させる。
【0011】
このような試料加工方法では、加工制御用画像と表示用画像を異なる照明条件で撮影できる。そのため、加工制御用画像に適した画像および表示用画像に適した画像を得ることができる。したがって、加工制御用画像を用いてイオン源を適切に制御して加工を正確に行うことができ、かつ、表示部に表示画像を表示させることによってユーザーが加工状況を正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る試料加工装置の構成を示す図。
【
図12】一次ミリング処理の一例を示すフローチャート。
【
図13】加工を終了するか否かを判定する処理を説明するための図。
【
図14】加工を終了するか否かを判定する処理を説明するための図。
【
図15】加工領域の下端のエッジを検出する処理を説明するための図。
【
図16】バルク加工処理の一例を示すフローチャート。
【
図17】加工を終了するか否かを判定する処理を説明するための図。
【
図18】透過照明および同軸落射照明された試料を撮影して得られた画像。
【
図19】透過照明された試料を撮影して得られた画像。
【
図20】透過照明された試料を撮影して得られた画像。
【
図21】透過照明および同軸落射照明された試料を撮影して得られた画像。
【
図22】表示用画像の倍率および視野を変更する処理を説明するための図。
【
図23】表示用画像の倍率および視野を変更する処理を説明するための図。
【
図24】表示用画像の倍率および視野を変更する処理を説明するための図。
【
図25】カメラで撮影された画像から指示された2つの領域を切り出す処理を示す図。
【
図26】画像から指示された領域を切り出して拡大した画像を示す図。
【
図27】画像から指示された領域を切り出して拡大した画像を示す図。
【
図28】一次ミリング処理の変形例を示すフローチャート。
【
図29】一次ミリング処理の変形例を示すフローチャート。
【
図32】傾斜角度θ3=0°で撮影された試料の画像。
【
図33】傾斜角度θ3=4°で撮影された試料の画像。
【
図34】第7変形例に係る試料加工装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 試料加工装置
まず、本発明の一実施形態に係る試料加工装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る試料加工装置100の構成を示す図である。
図1には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0015】
試料加工装置100は、試料2にイオンビームIBを照射して試料2を加工し、観察や分析用の試料を作製するための装置である。試料加工装置100では、透過電子顕微鏡で観察可能な薄膜試料を作製できる。
【0016】
試料加工装置100は、
図1に示すように、イオン源10と、制御回路12と、試料ステージ20と、遮蔽部材30と、照明系40と、光学系50と、カメラ60と、情報処理装置70と、を含む。
【0017】
イオン源10は、試料2にイオンビームIBを照射する。イオン源10は、チャンバー11の上部に取り付けられており、チャンバー11に収容された試料2にイオンビームIBを照射する。チャンバー11内は、例えば、真空状態である。
【0018】
イオン源10は、例えば、所定の加速電圧でイオンを加速させてイオンビームIBを放出するイオン銃である。イオン源10は、Z軸に沿ってイオンビームIBを照射する。イオン源10は、例えば、イオンビームIBを試料2に照射する際に、X軸に平行な軸を回転軸として揺動する。イオン源10は、制御回路12で制御される。
【0019】
試料ステージ20は、試料2を保持する。試料ステージ20には、遮蔽部材30が取り
付けられている。遮蔽部材30は、試料2上に配置されている。遮蔽部材30の厚さは、例えば、10μm程度であり、加工前の試料2の厚さは、例えば、100μm程度である。遮蔽部材30は、試料2の厚さ方向の中心に配置される。
【0020】
試料ステージ20は、試料2および遮蔽部材30を揺動させるスイング機構22を備えている。スイング機構22は、試料2および遮蔽部材30をスイング軸(傾斜軸)を回転軸として傾斜させる。スイング軸は、例えば、Y軸に平行である。スイング機構22は、例えば、一定の周期で、試料2および遮蔽部材30を揺動させる。
【0021】
試料ステージ20に保持される試料2は、板状の形状を有している。試料2は、例えば、直方体である。試料2の詳細については後述する。
【0022】
遮蔽部材30は、イオンビームIBを遮蔽する。イオン源10から放出されたイオンビームIBは、遮蔽部材30を介して試料2に照射される。遮蔽部材30は、例えば、帯状である。遮蔽部材30は、例えば、遮蔽ベルトである。遮蔽部材30は、イオンビームIBでミリングされ難い材料からなる。遮蔽部材30は、試料2の上(+Z方向)に位置している。
【0023】
照明系40は、試料2を照明する。試料加工装置100では、加工中の試料2を照明系40で照明し、カメラ60で撮影する。照明系40は、互いに異なる方向から試料2を照明する複数の照明装置を含む。
図1に示す例では、照明系40は、透過照明装置42と、同軸落射照明装置44と、を含む。
【0024】
透過照明装置42は、試料2を透過照明する照明光を発する。透過照明では、試料2の背後、すなわち、試料2のカメラ60とは反対側から試料2に光をあてる。透過照明装置42は、試料2の背後から照明光を照射する。透過照明装置42が発する照明光の強度(明るさ)は、照明調光回路46で制御される。
【0025】
透過照明装置42、試料2、光学系50、およびカメラ60は、この順に、Y軸に沿って並んでいる。
【0026】
同軸落射照明装置44は、試料2を同軸落射照明する照明光を発する。同軸落射照明では、カメラ60(光学系50)の光軸と同じ方向から試料2に光をあてる。同軸落射照明装置44は、カメラ60の光軸に沿って照明光を試料2に照射する。図示の例では、光学系50は、ハーフミラー52を有しており、ハーフミラー52を用いて、照明光の光軸とカメラ60の光軸とを一致させている。同軸落射照明装置44が発する照明光の強度は、照明調光回路46で制御される。
【0027】
カメラ60は、光学系50を介して、試料2および遮蔽部材30を撮影する。カメラ60は、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラなどのデジタルカメラである。光学系50は、カメラ60で試料2を撮影するための光学系である。カメラ60は、チャンバー11の外に配置されており、チャンバー11に設けられた窓14を介して試料2を撮影する。
【0028】
情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像を取得し、当該画像に基づいて加工を制御する。また、情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像を表示部に表示させる。
【0029】
【0030】
情報処理装置70は、例えば、処理部72と、操作部74と、表示部76と、記憶部7
8と、を含む。
【0031】
操作部74は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部72に出力する。操作部74の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどのハードウェアにより実現することができる。
【0032】
表示部76は、処理部72によって生成された画像を表示する。表示部76の機能は、LCD、CRT、操作部74としても機能するタッチパネルなどにより実現できる。
【0033】
記憶部78は、処理部72の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部78は、処理部72のワーク領域としても機能する。記憶部78の機能は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。
【0034】
処理部72の機能は、各種プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、DSP
(Digital Signal Processor)等)などのハードウェアで、プログラムを実行することにより実現できる。処理部72は、画像取得部720と、加工制御部722と、表示制御部724と、を含む。
【0035】
画像取得部720は、イオン源10の制御に用いられる加工制御用画像、および表示部76に表示される表示用画像を取得する。加工制御用画像は、加工制御部722が加工の終了を判定するために用いる試料の像である。表示用画像は、ユーザーが加工の状況を確認するための画像である。加工制御用画像および表示用画像は、試料2をカメラ60で撮影して得られる。
【0036】
加工制御部722は、加工制御用画像に基づいて、イオン源10を制御する。例えば、加工制御部722は、加工制御用画像に基づいて、加工の終了を判定する。
【0037】
表示制御部724は、表示用画像を表示部76に表示させる。
【0038】
2. 試料加工装置の動作
試料加工装置100では、断面方向から観察するための試料を作製する二段ミリング法により、試料を作製できる。さらに、試料加工装置100では、バルク試料を加工するバルク加工法により試料を作製することができる。以下では、二段ミリング法およびバルク加工法について説明する。
【0039】
2.1. 二段ミリング法
二段ミリング法は、例えば、基板上に形成された薄膜や、基板上に形成された、配線やトランジスタなどが形成された積層膜など、を断面方向から観察するための試料を作製する手法である。二段ミリング法では、試料を全体的に薄くする一次ミリングと、観察対象物である薄膜や積層膜を透過電子顕微鏡で観察可能な厚さまで薄くする二次ミリングと、を行う。
【0040】
2.1.1. 一次ミリング
図3~
図5は、一次ミリングを説明するための図である。
図3は、試料2および遮蔽部材30を模式的に示す斜視図である。
図4は、試料2の揺動動作について説明するための図である。
図5は、イオン源10の動作を説明するための図である。
【0041】
図3に示すように、試料2は、基板4と、積層膜6と、保護部材8と、を含む。基板4は、例えば、シリコン基板、化合物基板などの半導体基板である。積層膜6は、例えば、
基板4上に半導体製造技術によって形成された、配線やトランジスタなどを含む。図示の例では、基板4上に形成された積層膜6の断面を観察するための透過電子顕微鏡用の試料を作製することができる。保護部材8は、加工時に積層膜6を保護するための部材であり、例えば、ガラス基板である。保護部材8は、エポキシ樹脂などで積層膜6に接着されている。保護部材8の厚さは、例えば、100μm程度である。
【0042】
試料2は、高さ(Z方向の大きさ)が500μm~800μm、幅(Y方向の大きさ)が100μm程度になるように、事前に板状に加工されている。
【0043】
なお、試料2の構成は、
図3に示す例に限定されず、二段ミリング法を用いて、様々な構成の試料を透過電子顕微鏡で観察可能に加工できる。
【0044】
一次ミリングでは、試料2は、試料2の第1端部2aが上、試料2の第2端部2bが下になるように配置される。試料2の第1端部2aは、試料2の保護部材8側の端部であり、試料2の第2端部2bは、試料2の基板4側の端部である。試料2は、遮蔽部材30の下に配置され、試料2の第1端部2a側からイオンビームIBが照射される。イオンビームIBは、遮蔽部材30を介して、試料2に照射される。
【0045】
イオンビームIBを照射して試料2を加工しているときには、
図4に示すように、試料ステージ20のスイング機構22を動作させて、試料2および遮蔽部材30を軸Aを回転軸として揺動させる。すなわち、スイング機構22は、試料2および遮蔽部材30を、軸Aを傾斜軸(回転軸)として、往復傾斜(回転)運動させる。軸Aは、例えばY軸に平行な軸である。軸Aは、例えば、試料2と遮蔽部材30の境界に位置している。
【0046】
なお、
図4では、傾斜角度θ1は、試料2がX軸に平行なときをθ1=0°として、反時計回りを「+」、時計回りを「-」で表している。
図4では、試料2の傾斜角度θ1が0°のとき、試料2の傾斜角度θ1が-30°のとき、試料2の傾斜角度θ1が+30°のときを図示している。
【0047】
試料2の加工時には、
図5に示すように、イオン源10も揺動させる。例えば、イオン源10をZ軸に対して所定の角度の範囲で傾斜させる。イオン源10を揺動させることによって、試料2の加工面に対して斜め方向からイオンビームIBを照射できる。例えば、試料2の加工面に対するイオンビームIBの入射角度が0.4°程度になるようにイオン源10を傾斜させる。すなわち、イオン源10の傾斜角度θ2の範囲は、-0.4°から+0.4°の範囲である。イオン源10の傾斜角度θ2は、例えば、試料2の材質等に応じて適宜変更可能である。
【0048】
このように、試料加工装置100では、試料2を揺動させ、かつ、イオン源10を揺動させながら、試料2にイオンビームIBを照射して、試料2の加工を行う。一次ミリングでは、加工によって、2つの傾斜面3と、2つの傾斜面3の間の加工領域5と、が形成される。一次ミリングでは、加工領域5の全体が遮蔽部材30の厚さとほぼ同じ厚さとなるように加工される。
【0049】
一次ミリングでは、試料2の第2端部2bが二次ミリングに適した厚さになった場合に、加工を終了する。後述するように、二次ミリングでは、第2端部2bが上、第1端部2aが下になるように試料2を配置して、第2端部2b側からイオンビームIBを照射する。そのため、試料2の第2端部2b側の厚さが大きい場合には、第2端部2b側に照射されるイオンビームIBの量が多くなり、第2端部2b側が急速に削れてしまう。この結果、積層膜6が薄くなるまえに、試料2がなくなってしまう可能性がある。そのため、一次ミリングにおいて、試料2の第2端部2bを二次ミリングに適した厚さにしなければなら
ない。
【0050】
ここで、試料2の第2端部2bの厚さは、カメラ60で撮影された画像からは確認できない。そのため、試料2の第2端部2b側の加工領域5の幅、すなわち、
図3に示す加工幅Wを目安として、一次ミリングの加工を終了するタイミングを判断する。試料加工装置100では、加工が進むにしたがって試料2の加工領域5が薄くなり、加工幅Wが拡がる。そのため、加工幅Wから加工領域5の厚さを推定できる。
【0051】
例えば、加工幅Wを300μm~600μm程度にすることによって、試料2の第2端部2bの厚さを、二次ミリングに適した厚さである10μm程度にできる。
【0052】
情報処理装置70は、照明系40を制御して、加工を制御するための加工制御用画像、および表示部76に表示される表示用画像を取得する。例えば、一次ミリングでは、透過照明および同軸落射照明された試料2をカメラ60で撮影して、加工制御用画像を取得する。また、一次ミリングでは、同軸落射照明された試料2をカメラ60で撮影して表示用画像を取得する。なお、表示用画像を撮影する際の照明条件は、ユーザーの指示に応じて適宜切り替え可能である。
【0053】
図6は、カメラ60で撮影された加工制御用画像I2の一例を示す図である。
図6に示す加工制御用画像I2は、同軸落射照明および透過照明された試料2をカメラ60で撮影して得られた画像である。
【0054】
試料2は、同軸落射照明されているため、
図6に示すように、加工制御用画像I2では、試料2の加工領域5、試料2の未加工領域、および遮蔽部材30が明るくなるのに対して、傾斜面3が暗くなる。これは、同軸落射照明では、観察方向(カメラ60の光軸)に対して垂直な面のみで、カメラ60に向かって照明光が反射するためである。傾斜面3は、観察方向に対して垂直な面ではないため、傾斜面3で反射した照明光は、カメラ60に向かわない。そのため、加工制御用画像I2では傾斜面3が暗くなる。同軸落射照明では、試料2を揺動させても、試料2の各領域の面の向きは変化しない。そのため、同軸落射照明では、加工時に試料2を揺動させても、常に、傾斜面3が暗い画像が得られる。
【0055】
また、試料2は、透過照明されているため、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から照明光が漏れる。また、試料2の下から照明光が回り込む。したがって、加工制御用画像I2では、試料2と遮蔽部材30との間の隙間および試料2の下の空間が明るくなる。この結果、加工制御用画像I2では、傾斜面3のみが暗くなる。
【0056】
情報処理装置70では、加工制御用画像I2において、2つの傾斜面3のみが暗くなることを利用して、2つの傾斜面3を抽出し、抽出した2つの傾斜面3の間の距離を測定することによって、加工幅Wを測定する。この加工幅Wが目標加工幅になったか否かを判定することで、加工の終了を判定する。
【0057】
2.1.2. 二次ミリング
図7は、二次ミリングを説明するための図である。
【0058】
図7に示すように、二次ミリングでは、試料2の第2端部2bが上、試料2の第1端部2aが下になるように配置される。二次ミリングでは、試料2の第2端部2b側からイオンビームIBが照射される。二次ミリングでは、遮蔽部材30を用いずに、直接、試料2にイオンビームIBを照射する。
【0059】
二次ミリングでは、試料2の積層膜6が透過電子顕微鏡で観察可能に薄膜化されるまで
、試料2を加工する。
【0060】
情報処理装置70は、照明系40を制御して、加工を制御するための加工制御用画像、および表示部76に表示される表示用画像を取得する。例えば、二次ミリングでは、透過照明された試料2をカメラ60で撮影して、加工制御用画像を取得する。また、二次ミリングでは、透過照明および同軸落射照明された試料2をカメラ60で撮影して表示用画像を取得する。なお、表示用画像を撮影する際の照明条件は、ユーザーの指示に応じて適宜切り替え可能である。
【0061】
図8は、カメラ60で撮影された加工制御用画像I4の一例を示す図である。
図8に示す加工制御用画像I4は、透過照明された試料2をカメラ60で撮影して得られた画像である。
【0062】
試料2は、透過照明されているため、加工領域5の下端(第1端部2a側)のエッジを確認することができる。したがって、情報処理装置70は、加工領域5の下端のエッジを検出し、下端のエッジが加工目標位置まで達したか否かを検出することで、加工の終了を判定する。
【0063】
2.2. バルク加工法
図9および
図10は、バルク加工法を説明するための図である。
図9は、試料2および遮蔽部材30を模式的に示す斜視図である。
図10は、試料2の揺動動作を説明するための図である。
【0064】
試料加工装置100では、
図9に示すように、試料2上に遮蔽部材30を配置して、遮蔽部材30の上方に配置されたイオン源10からイオンビームIBを照射する。イオンビームIBは、遮蔽部材30を介して、試料2に照射される。
【0065】
イオンビームIBを照射して試料2を加工しているときには、
図10に示すように、試料ステージ20のスイング機構22を動作させて、試料2および遮蔽部材30を軸Aを回転軸として揺動させる。すなわち、スイング機構22は、試料2および遮蔽部材30を、軸Aを傾斜軸として、往復傾斜運動させる。
【0066】
なお、
図10では、試料2の傾斜角度θ1が0°のとき、試料2の傾斜角度θ1が-30°のとき、試料2の傾斜角度θ1が+30°のときを図示している。
【0067】
試料2の加工時には、
図5に示すように、イオン源10も揺動させる。例えば、イオン源10をZ軸に対して所定の角度の範囲で傾斜させる。イオン源10を揺動させることによって、試料2の加工面に対して斜め方向からイオンビームIBを照射できる。例えば、試料2の加工面に対するイオンビームIBの入射角度が2.5°程度になるようにイオン源10を傾斜させる。すなわち、イオン源10の傾斜角度θ2の範囲は、-2.5°から+2.5°の範囲である。
【0068】
情報処理装置70は、照明系40を制御して、加工を制御するための加工制御用画像、および表示部76に表示される表示用画像を取得する。例えば、バルク加工法では、透過照明された試料2をカメラ60で撮影して、加工制御用画像を取得する。また、バルク加工法では、透過照明および同軸落射照明された試料2をカメラ60で撮影して表示用画像を取得する。なお、表示用画像を撮影する際の照明条件は、ユーザーの指示に応じて適宜切り替え可能である。
【0069】
図11は、カメラ60で撮影された加工制御用画像I6の一例を示す図である。バルク
加工法により試料2を加工する際には、試料2は透過照明装置42が発する照明光によって透過照明されている。そのため、加工制御用画像I6では、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光が確認できる。また、加工制御用画像I6では、試料2の下側から回り込んだ光が確認できる。
【0070】
情報処理装置70は、2重円のカーソルで囲まれた領域のうちの試料2を透過した光の輝度を検出し、検出した輝度に基づいて加工の終了を判定する。
【0071】
3. 試料加工方法
3.1. 一次ミリング処理
試料加工装置100では、情報処理装置70が、一次ミリングにより試料2を加工するための一次ミリング処理を行う。
図12は、一次ミリング処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
まず、画像取得部720は、試料2が表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S100)。これにより、試料2が表示用の照明条件で照明される。
【0073】
一次ミリングでは、試料2が同軸落射照明されるように照明系40を制御する。すなわち、透過照明装置42および同軸落射照明装置44で試料2を照明する。表示用画像を撮影する際の照明条件は、あらかじめ設定されていてもよいし、ユーザーが操作部74を介して設定してもよい。
【0074】
次に、画像取得部720は、カメラ60を制御して、表示用の照明条件で照明された試料2を撮影する(S102)。カメラ60で撮影された画像は、情報処理装置70に送られる。
【0075】
次に、画像取得部720は、カメラ60から送られた画像を取得し、設定された観察倍率となるように画像を拡大または縮小して表示用画像を生成する。表示制御部724は、当該表示用画像を表示部76に表示させる(S104)。これにより、表示部76に、試料2の像が表示される。
【0076】
加工制御部722は、表示部76に表示用画像が表示されると、イオンビームIBを照射する処理を開始する(S106)。具体的には、加工制御部722は、イオンビームIBを照射するための制御信号を生成し、制御回路12に送る。制御回路12は、制御信号に基づいて駆動信号を生成し、イオン源10に出力する。これにより、イオン源10からイオンビームIBが試料2に照射される。このとき、加工制御部722は、試料ステージ20のスイング機構22を動作させて、試料2および遮蔽部材30を揺動させる。
【0077】
試料加工装置100では、試料2および遮蔽部材30を揺動させ、かつ、イオン源10を揺動させながら、遮蔽部材30を介して試料2にイオンビームIBを照射して、試料2を加工する。
【0078】
加工制御部722は、スイング機構22が1周期動作したか否かを判定する(S108)。
図4に示すように、試料2の傾斜角度θ1が0°を初期位置として、試料2の傾斜角度θ1を-30°とした後、傾斜角度θ1を+30°とし、再び傾斜角度θ1を0°とする動作を、スイング機構22の動作の1周期とする。
【0079】
加工制御部722は、スイング機構22が1周期動作したと判定した場合(S108のYes)、イオンビームIBの照射、スイング機構22による試料2の揺動動作、およびイオン源10の揺動動作を停止させる(S110)。
【0080】
画像取得部720は、試料2が表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S112)。画像取得部720はカメラ60を制御して表示用の照明条件で照明された試料2を撮影し(S114)、表示制御部724は表示用画像を表示部76に表示させる(S116)。これにより、表示部76に加工中の試料2の画像が表示される。
【0081】
次に、画像取得部720は、試料2が加工制御用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S118)。一次ミリングでは、試料2が透過照明および同軸落射照明されるように照明系40を制御する。すなわち、透過照明装置42で試料2を透過照明し、同軸落射照明装置44で試料2を同軸落射照明する。
【0082】
次に、画像取得部720は、カメラ60を制御して、加工制御用の照明条件で照明された試料2を撮影する(S120)。カメラ60で撮影された試料2の画像は、情報処理装置70に送られる。
【0083】
画像取得部720は、カメラ60からの画像を受け付け、当該画像の所定の領域を切り取り、倍率を変更するなどの画像処理を行って、加工制御用画像を生成する。加工制御部722は、当該加工制御用画像に基づいて加工を終了するか否かを判定する(S122)。
【0084】
図13および
図14は、加工を終了するか否かを判定する処理を説明するための図である。
【0085】
加工制御部722は、
図13に示すように、加工制御用画像を二値化して二値化画像I2Bを生成する。これにより、傾斜面3を抽出できる。次に、加工制御部722は、二値化画像I2Bにおいて、傾斜面3に対応する白のピクセルの集合体を特定し、2つの集合体の間の距離を測定することによって加工幅Wを測定する。加工幅Wの測定は、例えば、まず、
図14に示すように、2つの集合体の各々について集合体のエッジを直線近似して、近似線L1および近似線L2を引く。次に、加工幅Wを測定する位置Pにおいて近似線L1と近似線L2との間の距離を測定する。これにより、加工幅Wを測定することができる。加工幅Wを測定する位置Pは、あらかじめ設定されており、例えば、二値化画像I2Bの縦方向の位置座標で特定される。
【0086】
加工制御部722は加工幅Wが目標加工幅TW以上となったか否かを判定する。すなわち、W≧TWを満たすか否かを判定する。W≧TWを満たした場合に、加工を終了すると判定する。
【0087】
加工制御部722が加工を終了しないと判定した場合(S122のNo)、処理部72は、処理S106に戻って、処理S106、処理S108、処理S110、処理S112、処理S114、処理S116、処理S118、処理S120、および処理S122を行う。
【0088】
処理部72は、加工を終了すると判定されるまで、処理S106、処理S108、処理S110、処理S112、処理S114、処理S116、処理S118、処理S120、および処理S122を繰り返す。
【0089】
加工制御部722が加工を終了すると判定した場合(S122のYes)、加工制御部722は、試料2を初期位置(傾斜角度θ1=0°)に戻し、画像取得部720は、試料2が表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S124)。画像取得部720はカメラ60を制御して表示用の照明条件で照明された試料2を撮影し(S12
6)、表示制御部724は表示用画像を表示部76に表示させる(S128)。これにより、表示部76に加工終了後の試料2の画像が表示される。そして、処理部72は、一次ミリング処理を終了する。
【0090】
3.2. 二次ミリング処理
試料加工装置100では、情報処理装置70が、二次ミリングにより試料2を加工するための二次ミリング処理を行う。
【0091】
上述した一次ミリング処理では、画像取得部720は、試料2が加工制御用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する処理S118において、試料2が透過照明および同軸落射照明されるように照明系40を制御した。
【0092】
これに対して、二次ミリング処理では、処理S118において画像取得部720は、試料2が透過照明されるように照明系40を制御する点で、一次ミリング処理と異なる。すなわち、二次ミリング処理では、処理S118において、透過照明装置42で試料2を透過照明する。
【0093】
また、上述した一次ミリング処理では、試料2が表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する処理S100、処理S112、および処理S124において、試料2が同軸落射照明されるように照明系40を制御したが、二次ミリング処理では試料2が透過照明および同軸落射照明されるように照明系40を制御する。
【0094】
また、二次ミリング処理では、加工を終了するか否かを判定する処理S122が、一次ミリング処理と異なる。
【0095】
二次ミリング処理では、加工制御部722は、加工領域5の下端のエッジを検出し、検出された下端のエッジの位置が目標位置に到達したか否かで、加工を終了するか否かを判定する。
【0096】
図15は、加工領域5の下端のエッジEを検出する処理を説明するための図である。
図15には、加工領域5の下端のエッジEを検出するための輝度プロファイルを取得するラインを、破線で示している。
【0097】
加工制御部722は、
図15に示すように、加工制御用画像I4の縦方向の輝度プロファイルを複数取得し、加工領域5の下端のエッジEの位置を特定する。加工制御用画像I4の縦方向の輝度プロファイルでは、加工領域5の下端のエッジEにおいて輝度が大きく変化するため、この輝度の変化からエッジEを検出する。加工制御部722は、複数の輝度プロファイルにおけるエッジEの検出結果から最も目標位置TPとの間の距離が小さいエッジE0を特定する。加工制御部722は、エッジE0と目標位置TPとの間の距離Lを計算する。加工制御部722は、加工領域5のエッジE0が目標位置TPに到達した場合、すなわちL=0となった場合に、加工を終了すると判定する。
【0098】
二次ミリング処理は、上記のように、加工制御用の照明条件、表示用の照明条件、および加工を終了するか否かを判定するための判定方法が異なる点を除いて、上述した一次ミリング処理と同様に行われる。
【0099】
3.3. バルク加工処理
試料加工装置100では、情報処理装置70が、バルク加工法により試料2を加工するためのバルク加工処理を行う。
図16は、バルク加工処理の一例を示すフローチャートである。
【0100】
まず、画像取得部720は、試料2が表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S200)。これにより、試料2が表示用の照明条件で照明される。
【0101】
バルク加工では、試料2が透過照明および同軸落射照明されるように照明系40を制御する。すなわち、透過照明装置42で試料2を透過照明し、同軸落射照明装置44で試料2を落射照明する。表示用画像を撮影する際の照明条件は、加工方法に応じてあらかじめ設定されていてもよいし、ユーザーが操作部74を介して設定してもよい。
【0102】
次に、画像取得部720は、カメラ60を制御して、表示用の照明条件で照明された試料2を撮影する(S202)。画像取得部720は、カメラ60から送られた画像を取得し、設定された観察倍率となるように画像を拡大または縮小して表示用画像を生成する。表示制御部724は、当該表示用画像を表示部76に表示させる(S204)。
【0103】
加工制御部722は、表示部76に表示用画像が表示されると、イオンビームIBを照射する処理を開始する(S206)。
【0104】
加工制御部722は、試料2の傾斜角度θ1が0°か否かを判定する(S208)。傾斜角度θ1が0°と判定された場合(S208のYes)、加工制御部722は、イオンビームIBの照射、スイング機構22による試料2の揺動動作、およびイオン源10の揺動動作を停止させる(S210)。
【0105】
画像取得部720は、試料2が表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S212)。画像取得部720は、カメラ60を制御して表示用の照明条件で照明された試料2を撮影し(S214)、表示制御部724は表示用画像を表示部76に表示させる(S216)。これにより、表示部76に加工中の試料2の画像が表示される。
【0106】
表示用画像を表示部76に表示される処理S216の後、画像取得部720は、試料2が加工制御用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S218)。また、傾斜角度θ1が0°でないと判定された場合(S208のNo)、同様に、画像取得部720は、試料2が加工制御用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S218)。
【0107】
バルク加工では、試料2が透過照明されるように照明系40を制御する。すなわち、透過照明装置42で試料2を透過照明し、同軸落射照明装置44をオフにする。
【0108】
次に、画像取得部720は、カメラ60を制御して、加工制御用の照明条件で照明された試料2を撮影する(S220)。カメラ60で撮影された試料2の画像は、情報処理装置70に送られる。
【0109】
画像取得部720は、カメラ60からの画像を受け付け、所定の領域を切り取り、倍率を変更するなどの画像処理を行って、加工制御用画像を生成する。加工制御部722は、当該加工制御用画像に基づいて加工を終了するか否かを判定する(S222)。
【0110】
図17は、加工を終了するか否かを判定する処理を説明するための図である。
【0111】
加工制御部722は、
図17に示すように、加工制御用画像I6の輝度の分布に基づいて、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光および試料2の下から回り込んだ光をマスクする。例えば、加工制御用画像I6の縦方向の輝度プロファイルを複数取得し、当該輝度プロファイルに基づいて隙間から漏れる光をマスクするマスク領域M1、および
試料2の下から回り込んだ光をマスクするマスク領域M2を形成する。マスク領域M1およびマスク領域M2を形成することによって、加工制御用画像I6から試料2に相当する領域を抽出できる。また、マスク領域M1およびマスク領域M2を形成することによって、試料2が傾斜している場合(傾斜角度θ1≠0°の場合)であっても、加工制御用画像I6から試料2に相当する領域を抽出できる。
【0112】
加工制御部722は、加工制御用画像I6においてマスク領域M1およびマスク領域M2を除いた非マスク領域M0で最大輝度を検出する。例えば、加工制御部722は、カーソルCで指定された領域内において非マスク領域M0における最大輝度を検出する。
【0113】
加工が進んで試料2の加工領域が薄くなると、照明光が試料2を透過する。照明光が試料2を透過すると、加工制御用画像I6において透過光に対応する領域の輝度が高くなる。加工制御部722は、非マスク領域M0において最大輝度を検出することによってこの輝度の上昇を検出し、加工の終了を判定する。例えば、加工制御部722は、最大輝度が閾値以上になった場合に、加工を終了すると判定する。閾値は、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光に基づいて設定してもよい。例えば、最大輝度が隙間から漏れる光の80%になった場合に、加工を終了すると判定してもよい。
【0114】
加工制御部722が加工を終了しないと判定した場合(S222のNo)、処理部72は、処理S206に戻って、処理S206、処理S208、処理S210、処理S212、処理S214、処理S216、処理S218、処理S220、および処理S222を行う。
【0115】
処理部72は、加工を終了すると判定されるまで、処理S206、処理S208、処理S210、処理S212、処理S214、処理S216、処理S218、処理S220、および処理S222を繰り返す。
【0116】
加工制御部722が加工を終了すると判定した場合(S222のYes)、加工制御部722は、イオンビームIBの照射を停止し、試料2を初期位置(傾斜角度θ1=0°)に戻す。また、画像取得部720は、試料2が表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する(S224)。画像取得部720はカメラ60を制御して表示用の照明条件で照明された試料2を撮影し(S226)、表示制御部724は表示用画像を表示部76に表示させる(S228)。これにより、表示部76に加工終了後の試料2の画像が表示される。そして、処理部72は、バルク加工処理を終了する。
【0117】
上述した一次ミリング処理および二次ミリング処理では、試料2の揺動動作の1周期に1回、表示用画像および制御用画像を取得した。これに対して、バルク加工処理では、表示用画像は、傾斜角度θ1=0°の場合に取得し、加工制御用画像は、傾斜角度によらず、常に取得する。バルク加工では、試料2に穴が開く直前に加工を終了することが望ましく、一次ミリングや二次ミリングと比較して、加工の終了のタイミングを正確に判断しなければならない。そのため、傾斜角度θ1によらず、常に、制御用画像を取得することによって、加工の終了のタイミングを正確に判断できる。
【0118】
4. 効果
試料加工装置100では、処理部72は、試料2が加工制御用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する処理と、加工制御用の照明条件で照明された試料2をカメラ60で撮影して加工制御用画像を取得する処理と、加工制御用画像に基づいてイオン源10を制御する処理と、試料2が加工制御用の照明条件とは異なる表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する処理と、表示用の照明条件で照明された試料2をカメラ60で撮影して表示用画像を取得する処理と、表示用画像を表示部76に表示させる処
理と、を行う。
【0119】
そのため、試料加工装置100では、加工制御用画像と表示用画像を異なる照明条件で撮影できる。そのため、試料加工装置100では、加工制御用画像に適した画像および表示用画像に適した画像を得ることができる。したがって、加工制御用画像を用いてイオン源を適切に制御して加工を正確に行うことができ、かつ、表示部76に表示用画像を表示させることによってユーザーが加工状況を正確に把握できる。
【0120】
また、加工制御用画像は、常に同じ照明条件で撮影された画像であることが望ましいが、表示用画像は加工中であってもユーザーが任意に照明条件を変更できることが望ましい。試料加工装置100では、加工制御用画像と表示用画像を異なる照明条件で撮影できるため、加工制御用画像を常に同じ照明条件で撮影し、かつ、表示用画像をユーザーが任意に設定した照明条件で撮影することができる。
【0121】
図18は、二次ミリングにおいて、透過照明および同軸落射照明された試料2をカメラ60で撮影して得られた画像である。
図19は、二次ミリングにおいて、透過照明された試料2をカメラ60で撮影して得られた画像である。
【0122】
二次ミリングにおいて、透過照明および反射照明された試料2をカメラ60で撮影した場合、
図18に示すように、基板4および積層膜6が削れている様子が確認できる。これに対して、透過照明された試料2をカメラ60で撮影した場合、
図19に示すように、保護部材8(ガラス)に形成された加工エッジが明瞭に確認できる。
【0123】
図20は、バルク加工において、透過照明された試料2をカメラ60で撮影して得られた画像である。
図21は、バルク加工において、透過照明および同軸落射照明された試料2をカメラ60で撮影して得られた画像である。
【0124】
バルク加工において、透過照明された試料2をカメラ60で撮影した場合、
図20に示すように、試料2が薄くなっている様子を確認できる。これに対して、透過照明および反射照明された試料2をカメラ60で撮影した場合、
図21に示すように、試料2の加工エッジを確認できる。
【0125】
このように、照明条件を変えて試料2を撮影することによって、画像から得られる情報が変わる。したがって、照明条件を変えて試料2を撮影することによって、試料2の加工状況をより正確に把握できる。
【0126】
試料加工装置100では、処理部72は、表示用の照明条件で照明された試料2をカメラ60で撮影する前に、イオン源10にイオンビームIBの照射を停止させる。そのため、試料加工装置100では、表示用画像を取得するための撮影の間に、試料2がイオンビームIBで加工されることを防ぐことができる。
【0127】
5. 変形例
5.1. 第1変形例
上述した実施形態では、加工制御部722が加工の終了を判定したが、例えば、ユーザーが加工の終了かを判定するモードと、加工制御部722が加工の終了を判定するモードと、が選択可能であってもよい。
【0128】
例えば、ユーザーが加工の終了を判定するモードでは、ユーザーは、表示部76に表示された表示用画像を見て加工状況を確認し、加工を終了するか否かを判定する。ユーザーが操作部74を介して加工を終了する指示を入力することで、加工制御部722は、イオ
ンビームIBの照射を停止する。
【0129】
5.2. 第2変形例
上述した実施形態では、表示用の照明条件はあらかじめ設定されていたが、ユーザーの指示に基づいて表示用の照明条件を変更してもよい。
【0130】
例えば、ユーザーが操作部74を介して表示用の照明条件を変更する指示を入力すると、画像取得部720は、表示用の照明条件を変更する指示を受け付け、当該指示に基づいて表示用の照明条件を変更し、変更された表示用の照明条件で試料2が照明されるように照明系40を制御する。
【0131】
例えば、上述した一次ミリング処理において、ユーザーが操作部74を介して表示用の照明条件を透過照明に変更する指示を入力すると、画像取得部720は、試料2が透過照明されるように透過照明装置42を制御する。このとき、画像取得部720は、同軸落射照明装置44をオフにする。画像取得部720は、例えば、
図12に示す処理S112の前に、表示用の照明条件を変更する指示を受け付ける。
【0132】
このように、処理部72が、表示用の照明条件を変更する指示を受け付け、当該指示に基づいて表示用の照明条件を変更し、変更された表示用の照明条件で試料2が照明されるように照明系40を制御することによって、ユーザーは様々な照明条件で加工中の試料2を観察できる。
【0133】
5.3. 第3変形例
上述した第2変形例では、表示用の照明条件を変更する例について説明したが、表示用画像の倍率、および表示用画像の視野が変更可能であってもよい。
【0134】
例えば、ユーザーが操作部74を介して表示用画像の倍率を変更する指示を入力すると、画像取得部720は、表示用画像の倍率を変更する指示を受け付け、倍率を変更する指示に基づいて表示用画像の倍率を変更する。表示制御部724は、倍率が変更された表示用画像を表示部76に表示させる。
【0135】
さらに、ユーザーが操作部74を介して表示用画像の視野を変更する指示を入力すると、画像取得部720は、表示用画像の視野を変更する指示を受け付け、視野を変更する指示に基づいて表示用画像の視野を変更する。表示制御部724は、視野が変更された表示用画像を表示部76に表示させる。
【0136】
さらに、ユーザーが表示用画像の倍率および視野の両方を変更する指示を入力すると、画像取得部720は、表示用画像の倍率および視野を変更する指示を受け付け、倍率および視野を変更する指示に基づいて表示用画像の倍率および視野を変更する。表示制御部724は、倍率および視野が変更された表示用画像を表示部76に表示させる。
【0137】
図22~
図24は、表示用画像の倍率および視野を変更する処理を説明するための図である。
図22に示す画像I10は、カメラ60で撮影された、カメラ60の全画素の画像であり、
図23は、画像I10から指示された領域を切り出す様子を示し、
図24に示す画像I12は、画像I10から指示された領域を切り出して拡大した画像である。
【0138】
カメラ60は、高画素のカメラである。そのため、画像取得部720は、
図22に示す画像I10から
図23に示すようにユーザーが指示した領域を切りだして拡大することによって画像I12を生成する。そして、表示制御部724は、画像I12を表示用画像として表示部76に表示する。このように、画像取得部720は、デジタルズームにより倍
率を変更する。また、画像I10から切り出す位置を変更することによって、視野を変更することができる。このように、画像取得部720は、画像処理によって表示用画像の倍率および視野を変更する。
【0139】
また、ユーザーが操作部74を介して表示用画像の明るさを変更する指示を入力すると、画像取得部720は、表示用画像の明るさを変更する指示を受け付け、明るさを変更する指示に基づいて表示用画像の明るさを変更する。また、ユーザーが操作部74を介して表示用画像のコントラストを変更する指示を入力すると、画像取得部720は、表示用画像のコントラストを変更する指示を受け付け、コントラストを変更する指示に基づいて表示用画像のコントラストを変更する。
【0140】
表示用画像の明るさやコントラストの変更は、例えば、カメラ60で撮影された画像を画像処理することによって行われる。
【0141】
このように、試料加工装置100では、表示用画像の倍率、視野、明るさ、コントラストを任意に変更できる。
【0142】
なお、画像取得部720は、倍率や視野が異なる複数の表示用画像を、表示部76に並べて表示してもよい。
【0143】
図25は、カメラ60で撮影された画像I10から指示された2つの領域を切り出す処理を示す図である。
図26は、画像I10から指示された領域を切り出して拡大した画像I14を示す図であり、
図27は、画像I10から指示された領域を切り出して拡大した画像I16を示す図である。
【0144】
画像取得部720は、
図25に示すように、ユーザーが指定した2つの領域を切りだして拡大し、画像I14および画像I16を生成する。表示制御部724は、画像I14および画像I16を、表示部76に並べて表示させる。なお、表示制御部724は、画像I14と画像I16を交互に表示部76に表示させてもよい。
【0145】
ここで、画像I10から画像I14を切り出したときの大きさ(面積)は、画像I10から画像I16を切り出したときの大きさ(面積)よりも大きい。また、表示部76に表示されたときには、画像I14の大きさと画像I16の大きさは等しい。そのため、表示部76には、倍率の異なる2つの画像(画像I14および画像I16)が表示される。
【0146】
5.4. 第4変形例
上述した第3変形例では、画像取得部720はカメラ60で撮影された画像I10からユーザーが指定した領域を切り出して拡大し、表示用画像を生成した。
【0147】
これに対して、画像取得部720は、加工制御用画像を取得する処理を繰り返し、繰り返し取得された加工制御用画像において変化の大きい領域を検出し、検出された変化の大きい領域の位置に対応する表示用画像の領域を拡大して、表示用画像を生成してもよい。
【0148】
例えば、一次ミリング処理では、加工を終了するか否かを判定する処理S122において加工幅Wを測定する。加工制御部722は、例えば、n回目に取得された加工制御用画像とn-1回目に取得された加工制御用画像とを比較して、変化の大きい領域を検出する。一次ミリングでは、イオンビームIBが照射されることで加工領域5が拡がり、2つの傾斜面3の間の距離が大きくなる。そのため、2つの傾斜面3を含む領域が変化の大きい領域として検出される。加工制御部722は、検出された変化の大きい領域の位置(座標)を特定し、画像取得部720は、検出された変化の大きい領域の位置に対応する表示用
画像の領域を拡大する。表示制御部724は、変化の大きい領域が拡大された表示用画像を表示部76に表示させる。
【0149】
二次ミリング処理およびバルク加工処理においても同様に、加工制御部722が加工制御用画像の変化の大きい領域を検出し、画像取得部720が検出された変化の大きい領域の位置に対応する表示用画像の領域を拡大する。
【0150】
5.5. 第5変形例
図28および
図29は、一次ミリング処理の変形例を示すフローチャートである。第5変形例では、画像取得部720が、イオンビームIBを停止する処理S110の後に、処理S112、処理S114、および処理S116を行わずに、第1の表示用画像および第2の表示用画像を表示部76に表示させる処理S300を行う点で、上述した
図12に示す一次ミリング処理と異なる。
【0151】
処理S300では、まず、画像取得部720は、
図29に示すように、第1の表示用の照明条件で試料2が照明されるように照明系40を制御する(S302)。第1の表示用の照明条件では、例えば、試料2が透過照明される。画像取得部720は、カメラ60を制御して第1の表示用の照明条件で照明された試料2を撮影し(S304)、表示制御部724は、第1の表示用画像を表示部76に表示させる(S306)。
【0152】
次に、画像取得部720は、第2の表示用の照明条件で試料2が照明されるように照明系40を制御する(S308)。第2の表示用の照明条件では、例えば、試料2が落射照明される。画像取得部720は、カメラ60を制御して第2の表示用の照明条件で照明された試料2を撮影し(S310)、表示制御部724は、第2の表示用画像を表示部76に表示させる(S312)。
【0153】
処理部72が処理S300を行うことよって、表示部76には、透過照明して撮影された第1の表示用画像と落射照明して撮影された第2の表示用画像が表示される。
【0154】
なお、上記では、一次ミリング処理の場合について説明したが、二次ミリング処理およびバルク加工処理についても同様である。
【0155】
このように、処理部72は、試料2が第1の前記表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する処理と、第1の表示用の照明条件で照明された試料2をカメラ60で撮影して第1の表示用画像を取得する処理と、第1の表示用画像を表示部76に表示させる処理と、試料が第2の表示用の照明条件で照明されるように照明系40を制御する処理と、第2の表示用の照明条件で照明された試料2をカメラ60で撮影して第2の表示用画像を取得する処理と、第2の表示用画像を表示部76に表示させる処理と、を行う。これにより、異なる照明条件で撮影された2つの表示用画像が表示部76に表示されるため、ユーザーは試料2の加工状況をより正確に把握できる。
【0156】
5.6. 第6変形例
図30は、試料加工装置100の構成の変形例を示す図である。
図30に示すように、試料ステージ20は、試料2を傾斜させて試料2に対するイオンビームIBの入射角度を制御する傾斜機構24を有している。
【0157】
図31は、傾斜機構24の動作を説明するための図である。
【0158】
上述した
図5に示す例では、イオン源10を揺動させて、試料2の加工面に対して斜め方向からイオンビームIBを照射した。これに対して、
図31に示すように、イオン源1
0を揺動させずに、試料2を揺動させることによって、試料2の加工面に対して斜め方向からイオンビームIBを照射してもよい。傾斜機構24は、X軸に平行な軸を傾斜軸として試料2を傾斜させる。傾斜機構24による試料2の傾斜角度θ3の範囲は、試料2の材質等に応じて適宜設定可能である。
【0159】
画像取得部720は、表示用の画像を取得する際に、傾斜機構24によって第1傾斜角度に傾斜した試料2をカメラ60で撮影して表示用画像を取得し、第1傾斜角度とは異なる第2傾斜角度に傾斜した試料2をカメラ60で撮影して表示用画像を取得し、表示制御部724は、第1傾斜角度で撮影された表示用画像および第2傾斜角度で撮影された表示用画像を表示部76に表示させる。
【0160】
図32は、傾斜角度θ3=0°で撮影された試料2の画像I20であり、
図33は、傾斜角度θ3=4°で撮影された試料2の画像I22である。
図32および
図33では、透過照明および同軸落射照明された試料2をカメラ60で撮影している。
【0161】
傾斜角度θ3を変更することによって、同軸落射照明装置44の光軸に対する試料2の傾斜角度を変更できる。すなわち、傾斜角度θ3を変更することによって、落射照明光が試料2で反射されてカメラ60に入射する割合を変更できる。例えば、
図32に示すように、傾斜角度θ3=0°の場合は、カメラ60に入射する反射光の割合が大きく、傾斜角度θ3=4°では、傾斜角度θ3=0°の場合と比べて、カメラ60に入射する反射光の割合が小さい。
【0162】
そのため、
図32および
図33に示すように、画像I22では、画像I20と比べて、試料2で反射された光の影響が小さく、試料2を透過した光の影響が大きい。したがって、画像I20では、基板4と保護部材8(ガラス)との間の積層膜6を確認できる。また、画像I22では、積層膜6の周辺が薄くなっている様子を確認できる。
【0163】
このように、傾斜角度θ3を変えて試料2を撮影することによって、画像から得られる情報が変わる。したがって、傾斜角度θ3を変えて試料2を撮影することによって、試料2の加工状況をより正確に把握できる。
【0164】
5.7. 第7変形例
図34は、第7変形例に係る試料加工装置200の構成を示す図である。以下、試料加工装置200において、上述した試料加工装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0165】
試料加工装置200は、
図34に示すように、照明系40が、側射照明装置48を含む。すなわち、照明系40は、試料2を透過照明する透過照明装置42と、試料2を同軸落射照明する同軸落射照明装置44と、試料2を側射照明する側射照明装置48と、を含む。このように、照明系40は、互いに異なる方向から試料2を照明する3つの照明装置を含む。
側射照明装置48は、試料2を側射照明する照明光を発する。側射照明では、カメラ60の横から試料2に対して斜めに光をあてる。試料2を側射照明することによって、試料2の凹凸によって陰影ができるため、試料2の輪郭を明瞭にとらえたり、立体的な像を得たりできる。
【0166】
表示用の照明条件として、側射照明を用いた照明条件や、側射照明および同軸落射照明を用いた照明条件、側射照明および透過照明を用いた照明条件など、様々な照明条件を設定できる。
【0167】
試料加工装置200の動作は、上述した試料加工装置100と同様であり、その説明を省略する。
【0168】
5.8. 第8変形例
上述した実施形態では、加工制御用画像に基づいて加工の終了を判定したが、加工制御用画像に基づいてイオンビームIBの照射条件を切り替えてもよい。例えば、加工制御用画像に基づいてイオンビームIBのエネルギー(加速電圧)を変更してもよい。具体的には、加工制御部722は、加工制御用画像に基づいて試料2の加工の状況を判断し、加工が進むにしたがってイオンビームIBのエネルギー(加速電圧)を低下させてもよい。
【0169】
5.9. 第9変形例
上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0170】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0171】
10…イオン源、11…チャンバー、12…制御回路、14…窓、20…試料ステージ、22…スイング機構、24…傾斜機構、30…遮蔽部材、40…照明系、42…透過照明装置、44…同軸落射照明装置、46…照明調光回路、48…側射照明装置、50…光学系、52…ハーフミラー、60…カメラ、70…情報処理装置、72…処理部、74…操作部、76…表示部、78…記憶部、100…試料加工装置、200…試料加工装置、720…画像取得部、722…加工制御部、724…表示制御部