(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】マスクシステムおよび持続気道陽圧システム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021155710
(22)【出願日】2021-09-24
(62)【分割の表示】P 2019117622の分割
【原出願日】2012-08-21
【審査請求日】2021-10-22
(32)【優先日】2011-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・リー・ダン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ジョン・フォーミカ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ポール・バーバラ
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/066004(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/114492(WO,A1)
【文献】特開2011-16007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の顔を密封し、それによって呼吸空洞を形成するように適合されたマスクであって、陽圧治療のために、患者の気道に加圧空気を送達するマスクと、
治療中に患者の顔の所定の位置に前記マスクを支持するヘッドギアアセンブリと、
を含んでなる、睡眠呼吸障害の患者を治療するためのマスクシステムにおいて、
前記ヘッドギアアセンブリが、
一対の下部ストラップ部分であって、各下部ストラップ部分が、丸編みによって形成され、その内部にポケットまたはトンネルが形成された管状編み布地を含み、各下部ストラップ部分が、内側の患者接触側および外側の非患者接触側を有し、使用中に、患者の目と耳との間の患者の顔の側面に沿ってそれぞれ延在するように構成されている、一対の下部ストラップ部分と、
前記ヘッドギアアセンブリを剛性化するために前記ポケットまたはトンネル内に配置された硬化材料であって、前記管状編み布地と比較して剛性が増加された硬化材料と、
前記一対の下部ストラップ部分に接続され、それらの間に延在する上部ストラップ部分であって、使用中に、使用中の患者の頭の頂部にわたって延在するように構成されている上部ストラップ部分と、
前記一対の下部ストラップ部分に接続され、それらの間に延在する後部ストラップ部分であって、使用中に、患者の頭の後部の周りに延在するように構成されている後部ストラップ部分と、
を備えて
おり、
前記一対の下部ストラップ部分は、前記マスクに接続されて前記マスクを患者の顔に対し支え、前記下部ストラップ部分が前記マスクに接続されている唯一のストラップ部分であり、
前記上部ストラップ部分は、その内部に形成された上部ストラップポケットまたは上部ストラップトンネルを有する上部ストラップ管状編み布地を含み、上部ストラップ硬化材料が、前記ヘッドギアアセンブリを剛性化するために前記上部ストラップポケットまたは前記上部ストラップトンネル内に配置され、前記上部ストラップ硬化材料が、前記上部ストラップ管状編み布地と比較して剛性が高く、
前記上部ストラップ硬化材料は、前記ヘッドギアアセンブリを安定させ、前記マスクを患者の顔の所定の位置に安定させることを特徴とする、マスクシステム。
【請求項2】
管状編み構造を有する前記管状編み布地のために、前記内側の患者接触側と前記外側の非患者接触側との間の移行部に継ぎ目がないことを特徴とする、請求項1に記載のマスクシステム。
【請求項3】
前記後部ストラップ部分および前記上部ストラップ部分が一緒になって患者の頭の一部を取り囲んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載のマスクシステム。
【請求項4】
前記一対の下部ストラップ部分が前記マスクに接続されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項5】
前記下部ストラップ部分のそれぞれが湾曲していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項6】
前記マスクは、使用中に、患者の鼻の下に配置され、前記患者の鼻の外面を密封するように構成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項7】
前記ヘッドギアアセンブリを前記マスクに接続するためのコネクタをさらに備えていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項8】
前記硬化材料がプラスチックを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項9】
前記硬化材料が、ナイロン、ポリプロピレン、またはポリカーボネートを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項10】
前記下部ストラップ部分は、前記後部ストラップ部分と比較して増加された剛性を有していることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項11】
前記管状編み布地がスペーサーファブリックであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項12】
前記内側の患者接触側を構成するヤーンまたは繊維が、前記外側の非患者接触側を構成するヤーンまたは繊維と同じ物理的特性を有していることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のマスクシステム。
【請求項13】
前記内側の患者接触側を構成するヤーンまたは繊維が、前記外側の非患者接触側を構成するヤーンまたは繊維と同じ伸縮性を有していることを特徴とする、請求項12に記載のマスクシステム。
【請求項14】
睡眠呼吸障害の治療のための持続気道陽圧システムであって、
請求項1から
13のいずれか一項に記載のマスクシステムと、
加圧空気の供給をもたらす持続気道陽圧(CPAP)デバイスと、
前記加圧空気をCPAP装置から前記マスクシステムを介して患者の気道に送るように構成された供給チューブと、
を含んでなることを特徴とする、持続気道陽圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年7月11日に出願した米国仮特許出願第61/670,495号及び2011年8月22日に出願した米国仮特許出願第61/526,057号の利益を主張するものである。上記で言及した各出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、ヘッドギア及びマスク、並びに例えば持続気道陽圧(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)または非侵襲的陽圧換気(NIPPV)による睡眠呼吸障害(SDB:Sleep Disordered Breathing)の治療において使用するためのヘッドギア及びマスクを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:Obstructive Sleep Apnea)等のSDBの治療に使用されるマスクは、一般に、ヘッドギアによって患者の頭部に保持される。ヘッドギアは、一般に、マスクと係合し患者の顔の所定の位置にマスクを保持するように適合された1つまたは複数のヘッドギアストラップを含む。更に、ヘッドギアは、患者が夜間の睡眠中にマスクを装着することができるほど快適であるべきである。当技術分野では、快適で、広範な患者にフィットし、容易に製造され、廉価なヘッドギアが常に必要とされている。
【0004】
ヘッドギアを製造する既知の方法は、
図1に示すように、生地(fabric)のシート1000からヘッドギア構成要素1020を裁断するステップを含む。この方法に関連する問題は、この方法では、シート1000の比較的大部分が廃棄物になることである。シート1000上にヘッドギア部品をできる限り接近して入れることによって、廃棄物を最小限に抑えることが可能であるが、この工程で必要とされる裁断ステップによって、廃棄物材料が確実に生じる。従来の方法でヘッドギアを製造する際、いくつかの異なる材料及びいくつかの異なる製造工程を使用しなければならない。ヘッドギアを製造するうえで、構成要素及び副構成要素(sub-component)を適切なサイズ及び形状に切り抜き、これらの要素を互いに縫い合わせるまたは接着するまたは積層させるために、かなりの時間及び労力が必要とされる。これらの技法は大量の時間、労力、及び工程を使用し、通常、構成要素を適切に入れても、裁断工程またはトリミング工程によって、材料の実際に使用される部分に比べて望ましくない量の廃棄物が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/066004号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2007/0181135号明細書
【文献】国際公開第2009/026627号パンフレット
【文献】国際公開第2011/014931号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示する技術の一態様は、マスクシステムと共に使用するための生地構成要素に関する。
【0007】
開示する技術の別の態様は、マスクシステムと共に使用するためのヘッドギアに関する。
【0008】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、ヘッドギアは、単一で一体型のシームレス構造から形成された少なくとも1つの構成要素(例えば、ストラップ、頂部部分、他の頭部/顔接触部分)を備える、ヘッドギアに関する。
【0009】
開示する技術の別の態様は、隣接する部分品(section)を縫製する、溶解する、接着する、または別の方法で取り付けるために必要である更なる製造ステップがないまたは非常に少なくなるように、種々のヘッドギア部分品を連続して編むことに関する。その結果、製造工程ではステップを減少させることができ、廃棄物材料の量が減少し、ヘッドギアの隣接する部分品間では縫い目が事実上なくなり、目立った接合部または縫い目無しで生地から作製されるヘッドギアは患者にとって快適となりうる。
【0010】
開示する技術の別の態様は、種々のヘッドギア部分品を連続して編むこと、すなわち、少なくとも2つの領域を有する単一で一体型のシームレス構造を形成することに関し、この少なくとも2つの領域は、接合部からさまざまな角度方位で延びる。例えば、第1のストラップは略水平方向に延びることができ、第2のストラップは略垂直方向に延びることができ、第1のストラップと第2のストラップは、連続工程(例えば、編み物)において形成される単一で一体型のシームレス構造として形成される。
【0011】
開示する技術の別の態様は、種々のヘッドギア部分品を連続して編むこと、すなわち、少なくとも2つの領域を有する単一で一体型のシームレス構造を形成することに関し、この少なくとも2つの領域は、互いと異なる角度で、または異なる方向に枝分かれするまたは延びる。
【0012】
開示する技術の別の態様は、マスクシステムと共に使用するためのヘッドギアであって、機械的に操作されたヤーンから形成された布地(textile)から構築されるヘッドギアに関する。
【0013】
開示する技術の更なる態様は、マスクシステムと共に使用するためのヘッドギアであって、編むことを含めて、インターループ(interlooping)によって、機械的に操作されたヤーンから形成された布地から構築されるヘッドギアに関する。
【0014】
開示する技術の更なる態様は、マスクシステムと共に使用するためのヘッドギアであって、織り合わせ(interweaving)によって、機械的に操作されたヤーンから形成された布地から構築されるヘッドギアに関する。
【0015】
開示する技術の更なる態様は、マスクシステムと共に使用するためのヘッドギアであって、組み紐及び糸結びを含めて、撚り合わせ(intertwining)によって、機械的に操作されたヤーンから形成された布地から構築されるヘッドギアに関する。
【0016】
開示する技術の別の態様は、ヘッドギアを製造する方法であって、(例えば、インターループ、織り合わせ、撚り合わせに限定されない、例えば編むこと、かぎ針編み(crochet)、組み紐、製織、または積層造形(additive manufacturing)/3D印刷を含む、手段を含むヤーンの機械的操作によって、裁断することなく成形するように一体的に形成される)成形するように布地を形成するステップを含む方法に関し、布地は、使用に際してマスクを患者の顔に支持するように適合される。
【0017】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、スペーサーファブリック(spacer fabric)から少なくとも部分的に構築されたストラップを備えるヘッドギアに関する。
【0018】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築されたストラップを備え、このスペーサーファブリックは、第1の底層(ground layer)または構造及び第2の底層または構造によって形成され、この第1の底層または構造と第2の底層または構造は実質的に並行である、ヘッドギアに関する。
【0019】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築されたストラップを備え、このスペーサーファブリックは、第1の底層または構造及び第2の底層または構造によって形成され、この第1の底層または構造と第2の底層または構造は実質的に並行であり、この第1の底層または構造と第2の底層または構造は異なる剛性(stiffness)を有する、ヘッドギアに関する。
【0020】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築されたストラップを備え、このスペーサーファブリックは、第1の底層または構造及び第2の底層または構造によって形成され、この第1の底層または構造と第2の底層または構造を接続するように適合された横断するまたは浮いているヤーンまたはパイルを更に備える、ヘッドギアに関する。
【0021】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築されたストラップを備え、このスペーサーファブリックは編むことによって形成される、ヘッドギアに関する。
【0022】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築されたストラップを備え、ヘッドギアの外面は、気持ちの良い手触りを実現するために、例えば約30~100、20~300、または50~200デニールのヤーンから形成することができる、ヘッドギアに関する。
【0023】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、少なくとも第1のヤーンと第2のヤーンとを備え、第1のヤーンは第1の剛性を有し、第2のヤーンは第2の剛性を有する、ヘッドギアに関する。
【0024】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、平編み(flat knitting)または丸編みによって形成されるヘッドギアに関する。
【0025】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、平編みによって形成されるヘッドギアに関する。このヘッドギアは、ポケット、トンネル、層、及び/またはリブを更に備えることができる。そのうえ、ポケットまたはトンネルは、剛性をヘッドギアに加えるために剛性の高い材料で補強することができる。
【0026】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、平編みまたは丸編みによって形成されるヘッドギアに関する。このヘッドギアは、ポケット、トンネル、層、及び/またはリブを更に備えることができる。このポケットまたはトンネルは、ポケットまたはトンネルを、浮いているヤーン、ループヤーン、フォーム、または他の緩衝材料を含む詰め物で満たすことによって緩衝することができる。
【0027】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、平編みまたは丸編みによって形成され、更に、耳(selvedge)を有し、すなわちヤーンの端は、ほどけることまたはほどけることを防止するためにヘッドギアの縁の遠位にある、ヘッドギアに関する。
【0028】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、規則的または不規則なピケ編み物によって形成され、そのため、表側に露出されるヤーンは、裏側に露出されるヤーンと異なる、ヘッドギアに関する。例えば、表側のヤーンは感じのよい視覚的外観を有することができ、裏側のヤーンは、患者の皮膚と接触するのに良い手触りを有することができる。あるいは、または更に、表側のヤーンは第1の吸湿性(moisture wicking property)を有することができ、裏側は第2の吸湿性を有することができる。例えば、表側のヤーンは、第1の吸湿性を有するマイクロファイバーの割合が高くてよく、裏側は、第2の吸湿性を有する、マイクロファイバーでないものの割合が高くてよい。
【0029】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、ヤーンから構築され、ヤーンの第1の密度を持つ第1の領域と、ヤーンの第2の密度を持つ第2の領域とを有するヘッドギアに関する。ヤーンのより大きな密度を持つ領域は、より低い伸縮性、より低い透過性、及びより高い剛性を有することができる。
【0030】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、第1のヤーン及び第2のヤーンから構築され、第1のデニールを有する第1のヤーンから構築された第1の領域と、第2のデニールを有する第2のヤーンから構築された第2の領域とを有する、ヘッドギアに関する。
【0031】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、第1のヤーン及び第2のヤーンから構築され、第1のねじれ/インチ特性を有する第1のヤーンから構築された第1の領域と、第2のねじれ/インチ特性を有する第2のヤーンから構築された第2の領域とを有する、ヘッドギアに関する。
【0032】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、ヤーンから構築され、このヤーンは、ざらざらした(textured)フィラメントを含む、ヘッドギアに関する。このざらざらしたフィラメントは、手触りを改善し、ヘッドギアの伸長特性を変えることができる。
【0033】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、このヘッドギアを水溶性ヤーンで編むステップと、少なくともヘッドギアの縁を水に溶解させるステップと、ヘッドギアを乾燥させる(それによって、ヘッドギアを収縮させる)ステップとを含む、方法に関する。ヘッドギアの縁を収縮させた結果、仕上げ縁を形成することができる。
【0034】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、a)マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素(例えば、ストラップ)を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップであって、この構成要素は取り付け部材に接続され、この取り付け部材は、構成要素をマスクに接続するように適合される、ステップを含み、ステップa)において、取り付け部材内に形成された接続部分を通してヤーンまたは糸をループにして、構成要素を取り付け部材に接続する、方法に関する。
【0035】
開示する技術の別の態様は、睡眠呼吸障害の患者を治療する際に使用するためのマスクシステムであって、患者の顔を密封し、それによって呼吸空洞を形成するように適合されたマスクアセンブリであって、このマスクは、第1の編み地から構築された1つまたは複数の部分を有する、マスクアセンブリと、このマスクを患者の顔で少なくとも部分的に支持するようにマスクに接続されたヘッドギアであって、第1の編み地と第2の編み地のうちの少なくとも1つから構築された1つまたは複数の部分を有するヘッドギアとを備える、マスクシステムに関する。
【0036】
開示する技術の別の態様は、睡眠呼吸障害の患者を治療する際に使用するためのマスクシステムであって、患者の顔を密封し、それによって呼吸空洞を形成するように適合されたマスクアセンブリであって、このマスクは、第1の編み地から構築された1つまたは複数の部分を有する、マスクアセンブリと、マスクを患者の顔で少なくとも部分的に支持するようにマスクに接続されたヘッドギアであって、第1の編み地と第2の編み地のうちの少なくとも1つから構築された1つまたは複数の部分を有するヘッドギアとを備えるマスクシステムに関する。第1の編み地は、インターループし、好ましくはシームレス接続または接合、例えばタック編みを有することによって、第2の編み地に接合することができる。
【0037】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップであって、この編み物の地の目(grain)またはコース(course)は、ヘッドギア構成要素の湾曲した部分を形成するように変えられる、ステップを含む方法に関する。
【0038】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップであって、この編み物の地の目またはコースは、ヘッドギア構成要素の少なくとも一部分における伸長を可能にするまたは不可能にするように構成される、ステップを含む方法に関する。
【0039】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアに関し、このヘッドギアは、スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築された第1の構成要素であって、このスペーサーファブリックが、内側生地と、外側生地と、この外側生地と内側生地を相互接続する内部スペーサー繊維とを含み、内側生地が中空内部区域の境界を決める、第1の構成要素を含む。
【0040】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、マスクを少なくとも部分的に指示するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップであって、このヘッドギア構成要素が、スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築され、スペーサーヤーンから形成された内層を有する、ステップと、ヘッドギア構成要素の属性を変化させるために、ヘッドギア構成要素の少なくとも1つの部分におけるスペーサーヤーンの長さまたは密度を変えるステップとを含む方法に関する。
【0041】
開示する技術の別の態様は、睡眠呼吸障害の患者を治療する際に使用するためのマスクアセンブリであって、スペーサーファブリックから構築された1つまたは複数の部分であって、このスペーサーファブリックは、スペーサーヤーンから形成された内層を有し、この層が、通気穴を形成する少なくとも1つの部分を有し、この少なくとも1つの部分が、スペーサーヤーンが実質的にない、1つまたは複数の部分を備えるマスクアセンブリに関する。
【0042】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、第1の編み地を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップと、第2の編み地を形成するようにヤーンまたは糸を並行して編むステップと、第1の編み地と第2の編み地のうちの1つが、患者とのインターフェースとなるように適合された内側生地を形成するように、第1の編み地を第2の編み地に同時に編むステップとを含む方法に関する。
【0043】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップと、ヘッドギア構成要素の属性を変化させるために、ヘッドギア構成要素の少なくとも1つの部分における縫い目の数を変えるステップとを含む方法に関する。
【0044】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップと、ヘッドギア構成要素の属性を変化させるために、ヘッドギア構成要素の少なくとも1つの部分における糸数または縫い目の様式を変えるステップとを含む方法に関する。
【0045】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアアセンブリに関し、このヘッドギアは、編み地から構築された第1のヘッドギア構成要素であって、この編み地は、第1のヤーンまたは糸と、この第1のヤーンまたは糸よりも高い剛性を有する第2のヤーンまたは糸とを含む、第1のヘッドギア構成要素を備え、第2のヤーンまたは糸は、第1のヘッドギア構成要素の硬化部分を提供するように構成される。
【0046】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するために基本ヘッドギア材料を用意するステップと、次に、この基本ヘッドギア材料内へとヤーンまたは糸を編む、刺繍を施す、または織る(しかし、これらの限定されない)ステップであって、ヤーンまたは糸は、基本材料よりも高い剛性を有する、ステップとを含み、ヤーンまたは糸は、第1のヘッドギア構成要素の硬化部分を提供するように構成される、方法に関する。
【0047】
開示する技術の別の態様は、患者の陽圧治療のために呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアアセンブリに関し、このヘッドギアは第1のヤーンを含み、この第1のヤーンは熱可塑材から形成され、この熱可塑性材料を溶解させて、ヘッドギア構成要素の硬化された部分を作製する。
【0048】
開示する技術の別の態様は、「積層造形」工程または「ラピッドマニュファクチャリング」工程または「3D印刷」工程(これらの用語は、口語的表現において交換可能に使用することが可能である)を使用して、マスクを少なくとも部分的に支持するように適合された第1のヘッドギア構成要素を少なくとも形成する布地を作製することによって、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法に関する。
【0049】
開示する技術の更に別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのカスタムメイドのヘッドギアを製造する方法であって、患者の頭部の形状及びサイズに関連するデータを収集するステップと、この収集したデータに応じて、コンピューティングデバイス及びコンピュータ支援設計プログラムを用いて電子的ヘッドギアモデルを作製するステップと、この電子的ヘッドギアモデルに少なくとも部分的に対応する第1のヘッドギア構成要素を少なくとも形成するステップとを含む方法に関する。
【0050】
開示する技術の別の態様は、呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するための一連のヘッドギアを製造する方法であって、第1のヘッドギアまたはヘッドギア構成要素を編むステップと、編み物解放部(knit release)を編むステップと、第2のヘッドギアまたはヘッドギア構成要素を編むステップと、編み物解放部において第1のヘッドギアまたはヘッドギア構成要素を第2のヘッドギアまたはヘッドギア構成要素から分離するステップとを含む方法に関する。
【0051】
開示する技術の別の態様は、伝導性等の種々の一意の性質を持つ1種類またはいくつかの種類のヤーンの使用を含めるために、編むこと、製織、かぎ針編み、または刺繍等の工程によって形成することができる構成要素(例えば、ヘッドギア、マスク、筒、緩衝材)に関する。例えば、構成要素の形態全体に一体化される伝導性ヤーンまたは糸は、例えば同様に一体化されたまたは付加された、センサ、発熱体、冷却体、張力システム、オン/オフボタン、電源、コンピュータチップ、コントローラ等へ及びそれから電気及び/またはデータを伝えるために使用することができる。
【0052】
本技術の他の態様、特徴、及び利点は、添付の図面と共に行う以下の詳細な説明から明らかになるであろう。これらは本開示の一部であり、本技術の原理を例として示すものである。
【0053】
添付図面によって、本技術のさまざまな実施形態の理解が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】生地シートから裁断されたヘッドギア部品の、従来技術による例を示す図である。
【
図2】開示する技術の一例により製造されたヘッドギアの斜視図である。
【
図3】開示する技術の別の例によるヘッドギアを製造する工程を示す図である。
【
図4-1】開示する技術の一例により連続ロールからヘッドギアストラップを形成する工程を示す図である。
【
図4-2】開示する技術の一例によるストラップを示す図である。
【
図4-3】
図4-2の線4-3から4-3に沿った断面図である。
【
図4-4】開示する技術の代替例によるストラップの断面図である。
【
図4-5】開示する技術の一例によるストラップを示す図である。
【
図4-6】
図4-5の線4-6から4-6に沿った断面図である。
【
図4-7】開示する技術の代替例によるストラップの断面図である。
【
図4-8】開示する技術の代替例によるストラップの断面図である。
【
図5-1】開示する技術の一例によるヘッドギアのマスクへの取り付けを示す斜視図である。
【
図5-2】開示する技術の一例による下部ヘッドギアクリップを示す図である。
【
図6】開示する技術の一例による、患者の頭部の所定の位置にある一体のヘッドギア及びマスクシステムの正面図である。
【
図9-1A】開示する技術の一例による基本的たて編生地を示す図である。
【
図9-1B】
図9-1Aの基本的たて編生地の概略図である。
【
図9-2】開示する技術の一例による基本的たて編生地を示す図である。
【
図10】開示する技術の一例による基本的よこ編生地を示す図である。
【
図11】開示する技術の一例による、患者の頭部に設置されたヘッドギアの側面図である。
【
図11A】開示する技術の一例による
図11のヘッドギアのコースまたは地の目の変化方向を示す図である。
【
図12】開示する技術の一例による編まれたヘッドギアのコースの方向に増加した伸長を示す図である。
【
図13】開示する技術の一例によるヘッドギアを示す図である。
【
図13A】開示する技術の一例によるヘッドギアを示す図である。
【
図14-1】開示する技術の例により、丸たて編み(circular warp knitting)によって筒として形成されたヘッドギアを製造する1つの方法を示す図である。
【
図14-2】開示する技術の例により、丸たて編みによって筒として形成されたヘッドギアを製造する1つの方法を示す図である。
【
図14-3】開示する技術の例により、丸たて編みによって筒として形成されたヘッドギアを製造する1つの方法を示す図である。
【
図14-4】開示する技術の例により、丸たて編みによって筒として形成されたヘッドギアを製造する1つの方法を示す図である。
【
図14-5】開示する技術の一例によるストラップの断面図である。
【
図14-6】開示する技術の一例によるストラップの部分図である。
【
図14-6A】
図14-6の線14-6Aから14-6Aに沿った断面図である。
【
図15-1】開示する技術の例による、可変の厚さを有する部分を含むヘッドギアを示す図である。
【
図15-2】開示する技術の例による、可変の厚さを有する部分を含むヘッドギアを示す図である。
【
図15-3】開示する技術の例による、可変の厚さを有する部分を含むヘッドギアを示す図である。
【
図15-4】開示する技術の例による、可変の厚さを有する部分を含むヘッドギアを示す図である。
【
図15-5】開示する技術の例による、可変の厚さを有する部分を含むヘッドギアを示す図である。
【
図16】開示する技術の一例による、孔構成要素を含んでも含まなくてもよいマスクの正面図である。
【
図18】開示する技術の一例による、薄い領域を有するヘッドギア部品の断面図である。
【
図19】開示する技術の一例による、密度の高い領域と密度の低い領域とを有するヘッドギア部品の断面図である。
【
図20】
図5-1の線20-20に沿った断面図である。
【
図21】
図6の線21-21に沿った断面図である。
【
図22-1】開示する技術の一例による二重編み(double knit)ヘッドギアまたはマスク構成要素の概略図である。
【
図22-2A】開示する技術の一例によるインターロック編みヘッドギアまたはマスク構成要素を示す図である。
【
図22-2B】開示する技術の一例によるインターロック編みヘッドギアまたはマスク構成要素を示す図である。
【
図23】開示する技術の一例による、患者の頭部の所定の位置にあるヘッドギア及びマスクの正面図である。
【
図25-1】開示する技術の一例による、患者の頭部の所定の位置に硬化材(rigidizer)を含むヘッドギアの側面図である。
【
図26】開示する技術の一例による、ヘッドギア内に硬化材を形成する工程を示す図である。
【
図27】開示する技術の一例による、ヘッドギア内に湾曲した硬化材を形成する工程を示す図である。
【
図28】開示する技術の一例によるヘッドギアを形成するために使用される3D印刷されたリンクを示す図である。
【
図29】開示する技術の一例による硬化材を含む3D印刷されたヘッドギア部品を示す図である。
【
図30】開示する技術の一例による3D印刷されたヘッドギアストラップ及びクリップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下の説明は、共通の特性及び特徴を共有することができるいくつかの例に関連して提供するものである。いずれか一例の1つまたは複数の特徴は他の例の1つまたは複数の特徴と組み合わせ可能であることを理解されたい。更に、例のいずれかにおけるいずれかの単一の特徴または特徴の組み合わせは、更なる1つまたは複数の例を構成することができる。
【0056】
本明細書において、「~を備える、含む(comprising)」という言葉は、その「オープンな(open)」意味で、すなわち、「~を含む(including)」という意味で理解され、従って、「クローズな(closed)」意味、すなわち、「のみからなる(consisting only of)」という意味に限定されない。対応する語句「備える(comprise)」、「備えた(comprised)」、及び「備える(comprises)」についても、同様の解釈がなされるべきである。
【0057】
1.ヘッドギア
図に、開示する技術の例によるヘッドギアを示す。図示の例では、ヘッドギアは、患者インターフェースに取り外し可能に取り付けられるように適合され、それによって患者インターフェースを患者の顔における所望の位置に保持及び維持する。ヘッドギアは特定の種類の患者インターフェース(例えば、マスク)と共に使用されているように示されることがあるが、各ヘッドギアは他の適切な患者インターフェースと共に使用するように適合可能であることを理解されたい。すなわち、患者インターフェースは単なる例に過ぎず、各ヘッドギア実施形態は、任意の適切な患者インターフェース、例えばフルフェイスマスク、鼻マスク、口マスク、ノズルまたはパフ、鼻カニューレ等と共に、任意の適切な構成で、例えば前額部の支持の有無に拘わらず、使用するように適合することができる。
【0058】
また、ヘッドギアは新しい患者インターフェースと共に使用されてもよいし、ヘッドギアは既存の患者インターフェースに組み込まれてもよいことを理解されたい。
【0059】
2.製造
開示する技術の一例により製造されたヘッドギア200の一例が
図2に示されている。このヘッドギアは、後部部分例えば「頂部」または「光輪(halo)」210と、この後部部分に取り付けられた複数のストラップ220とを含む。当業者ならば理解するように、後部部分210は、患者の後頭部を収容するように適合され、ストラップ220は、上部ヘッドギア取り付け点及び下部ヘッドギア取り付け点(例えばクリップ)に接続するように構成される。ヘッドギア200は単なる一例に過ぎず、開示する技術により、他のヘッドギア構成を行うことができることに留意されたい。
【0060】
ヘッドギア200は、成形可能に製造(manufactured to shape)され(例えば、かなりの量の材料を切り落とす必要なく「フルファッショニング」とも呼ばれる、成形して一体的に形成される)、それによって、廃棄物材料を殆どまたはまったく生じない。あるいは、ヘッドギアは複数のセグメントに分割されてもよく、これらのセグメントが個別に(例えば、編むことによって)成形可能に製造され、次いで互いに取り付けられる。
図2は、少なくとも2つの領域(例えば、後部部分210及びストラップ220)を有する単一の一体型シームレス構造を示す。この少なくとも2つの領域は接合部から延び(この接合はストラップ220と後部部分210の接続である)、ストラップは、後部部分に対して異なる角度方位で延びる。後部部分及びストラップは連続工程で形成される(すなわち、構成要素を構成する材料と構成要素の形状が単一のステップで形成される)。これは、材料のシートが作製され、次に成形するように切断される工程(これは、単一のステップとは見なされない)とは異なる。
図2はまた、縫い目または更なる形成ステップを必要とすることなく、ストラップ220が後部部分210に対して異なる角度または方向で枝分かれするまたは延びることを示す。
【0061】
図3では、後部部分210とストラップ220が別々に形成され、その後で接続される。ヘッドギア200の任意の一部分を個別に形成して、次に後で接続することが可能であることが、当業者には理解されよう。
図3の例では、ストラップ220は後部部分210に縫い付けられる。しかし、編むこと、縫製、かぎ針編み、接着テープによる熱接着、接着(gluing)、溶接(例えば、超音波溶接)等の他の適切な方法を使用してもよい。
【0062】
ヘッドギア等の編まれた構成要素は、更なる縫合工程または接合工程を実質的に含まない一体成形の編み物要素として構築されるとき、「一体型編み物構造」から形成されるように定められる。
【0063】
図4-1に示されるように、ストラップ220は、この手順により製造効率を更に向上させることができるように、その後で切断される連続部品として形成する(例えば、たて編によって)ことができる。
【0064】
隣接する部分品を縫製する、溶解する、接着する、または別の方法で取り付けるために必要である更なる製造ステップがないまたは非常に少ないとき、種々のヘッドギア部分品を連続して編むことが有利な場合がある。その結果、製造工程ではステップを減少させることができ、廃棄物材料の量が減少し、ヘッドギアの隣接する部分品間では縫い目が事実上なくなり、目立った接合部または縫い目無しで生地から作製されるヘッドギアは患者にとって快適となりうる。
【0065】
2.1 技法
本技術によるいくつかの技法を使用して、成形するようにヘッドギアを製造することができ、廃棄物材料は殆どまたはまったくない。好ましくは、この技法によって、単一で一体型シームレス構造であるヘッドギアを生産することができる。単一で一体型シームレス構造を生産することができる技法は、ヤーンの機械的操作を含み、この機械的操作には、インターループ(編むこと等)、織り合わせ、及び/または撚り合わせ(組み紐、糸結び、及びかぎ針編みを含む)がある。3D印刷という代替技法も、一体型シームレス構造を有するヘッドギアを作製することができる。
【0066】
開示する技術による製造技法は、好ましくは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する。
【0067】
1)廃棄物を殆どまたはまったく生じない、
【0068】
2)患者にとって快適なヘッドギアを生産する、
【0069】
3)一致したヘッドギアを生産する、
【0070】
4)通気性のあるヘッドギアを生産する、
【0071】
5)顔のマーキングを最小限にすることができるヘッドギアを生産する、及び/または
【0072】
6)軽量のヘッドギアを生産する。
【0073】
2.1.1 インターループ-編むこと
開示する技術の一例によれば、ヘッドギアは、編むこと(例えば、ヤーンまたは糸をかけて編み地を形成する)等のインターループによって形成することができる。ヘッドギアは、平編みまたは丸編みによって形成することができるが、他の形態の編み物も可能でありうる。平編み及び丸編みは、一体型シームレス構造を備えたヘッドギアを作製することが可能であるので、好ましい場合がある。平編み機または丸編み機を利用して、よこ編またはたて編を作製することができる。丸編みと、たてまたはよこの平編みを含むさまざまな編み物工程を利用して、1つまたは複数のヘッドギア構成要素製造することができる。平編みは、(1)更なる緩衝性または嵩を提供するために、浮いているヤーンを例えばヘッドギアストラップ内に配置することができること、及び/または(2)ヘッドギアストラップの上面若しくは下面にヤーンの更なるループを含み、従って、例えば、柔らかいタオル地材料という効果を生み出す、またはフックテープファスナ(hook tape fastener)と係合するための破損していないループ状生地を作り出すことができること、及び/または(3)単一の一体化されたヘッドギア構造内で両面仕上げの編み物構造に隣接する3Dスペーサー生地構造を編むことができることを含むがこれらに限定されない、いくつかの利点を有することができる。
【0074】
好ましくは、ヘッドギアは、主に、異なる物理的性質を備えた種々の部分品を有する単一で一体型構造を作るようにインターループ工程によって機械的に操作される複数のヤーンから形成される。
【0075】
図7は、よこ編生地70のうね(wale)、すなわち1本の糸のループが他の糸のループと接合する方向を示す。単一の糸からのループのコース80すなわち方向が
図8に示されている。
図9-1A及び
図9-1Bは、基本的閉ループたて編90を示す。
図9-2は、ヤーンが垂直方向にジグザグに編まれ、他のたてヤーンを捕らえ、うねがコースとやや平行に走る、たて編トリコットジャージ生地構造の一例を示す。
【0076】
図9-1A、
図9-1B、
図9-2、及び
図10を参照すると、たて編90、90-1は、互いと平行に走るうねとコースとを備え、よこ編100では、うねはコースと直角を為して走る。開示する技術のヘッドギア及びマスクは、たて編またはよこ編のどちらかによって形成することができる。たて編、例えばトリコット、ラッシェル、またはロックニットは、一般に、実行に対する耐性が増し、機械加工が容易であり、複数のヤーンを利用することができる(複数の色またはヤーンの種類の使用を可能にする)。よこ編は、単一のヤーンを用いて形成することが可能である。しかし、複数のヤーンの使用も可能である。開示する技術のヘッドギア及びマスクは、たて編またはよこ編によって構築することができる。
【0077】
編み地は、織り地に比べてさまざまな伸縮特性を有することができる。編み地は、一般に、一方向にのみ伸長可能な織り地よりも柔軟であり、従って、より快適なフィット性を患者に提供することができる。編み地は、生地が2方向の伸長を有するように構築することができる。すなわち、第1の方向に配向された第1のヤーンは、第2の方向に配向されたヤーンよりも低い柔軟性を有する。この構成は、ヘッドギアのストラップに沿って望ましいことがあり、それにより、ストラップは、長さに沿って伸長することはできるが幅にわたって伸長することはできない、または幅にわたって伸長することはできるが長さに沿って伸長することはできない。あるいは、編み地は、4方向の伸長、すなわち第1の方向及び第2の方向のヤーンを有することができ、この両者は、ストラップへの適用によって長手方向と横方向の両方の伸長が可能であるほど柔軟である。
【0078】
図12の例は、地の目またはコース1250を有するストラップ1200を示し、地の目またはコースの方向がどのように伸長に影響を与えるかを示す。編み地は、コースの方向により容易に伸長する傾向がある。従って、ヘッドギアは、特定の方向に伸長し、他の方向への伸長に対する耐性が増すように設計することができる。例えば、ストラップ1200は、その幅方向Aに(患者の顔から頭部の後ろへと)伸長する傾向があり、ストラップの長さに沿って限定された伸長を有することができる。この構成によって、フィット範囲を増加させながらヘッドギアの安定性を長手方向に増加させることができる。ストラップ1200は、特定の方向に伸長し、ストラップ1200がマスクアセンブリを患者の顔との密封を高めるように患者の顔において保持しやすくなるために他の方向への伸長に対する耐性があるように構成することができる。
【0079】
図5-1及び
図5-2を参照すると、マスク510は、ヘッドギア520によって患者の顔の所定の位置に保持される。マスク510は、加圧空気をマスクに供給するためにエルボ(図示せず)に接続するように適合されたエルボ結合部分512を含む。下部マスククリップ514は、ヘッドギア520に接続するように適合される。
【0080】
ヘッドギア520は、マスク510に接続するように構成された上部ヘッドギアストラップ530と下部ヘッドギアストラップ540とを含む。取り付け部材544(例えば、下部ヘッドギアクリップ)は、ストラップ材料(例えば、糸またはヤーン)を受け入れるための接続部分544(1)(例えば、穴)を有することができる。例えば、下部ヘッドギアストラップを構成するヤーンは、ストラップの製作中に穴544(1)によってループにされ、クリップ544とストラップ540を一体化することができる。
【0081】
図6に示される一代替例では、マスク610とヘッドギア630は、1つの部品として一体的に形成される。マスク610は、通気穴612として機能する開放区域を含むように編まれる。エルボ結合部分614は、ヤーンまたは糸を受け入れるための穴614(1)を含み、それによって、マスク610とエルボ結合部分614と一体化する。マスクは、積層または他の適切な方法によって気密にすることができる。
【0082】
ヘッドギア630は、頂部ストラップ632、634と、上側ストラップ640と、下部ヘッドギアストラップ650とを含む。編み物は、フィット性を調整して特定の区域における快適さを高めるように、きつく引っ張られてもよいし、ゆるく形成されてもよい。例えば、図示の頂部ストラップ632、634は、患者の頭部の頂部近くの区域における通気性を高めるゆるい編み物を有する。対照的に、下部ヘッドギアストラップ650は、マスクを安定させるためにより堅いストラップを作製するきつい編み物を有する。上側ストラップ640は、患者の視野を遮らないように設計された薄い領域642を含む。
【0083】
図11及び
図11Aを参照すると、編まれたストラップ1100は、上側部分1102と、後部部分1104と、下部部分1106とを含む。下部部分1106は、接合部で分岐すなわち枝分かれして、上側部分1102及び後部部分1104を形成することができる。上側部分1102の角度方位は後部部分1104と異なってもよく、例えば上側部分1102は、後部部分1104に対して約30~110度で延びてもよいし、後部部分1104に対して約90度すなわちこれに垂直であってもよい。編み物の方向、すなわち編み物の地の目またはコース1150は、特定の区域における生地の形状または伸長を調整するように変えることができる。例えば、地の目またはコース1150は、患者の目を遮らないようにするために頬領域でストラップを湾曲させるように構成することができる。更に、
図11Aに示されるように、地の目またはコース1150は、矢印Bによって示されるように、分かれ目まで湾曲し、それによって、上側部分1102及び後部部分1101を形成する。上側部分1102及び後部部分1101のこのような構成は、患者の頭部の所定の位置にストラップを安定させ、従ってストラップ1100がマスクアセンブリを患者の顔との密封を高めるように患者の顔に保持しやすくなることができる。
【0084】
ストラップ1100は、患者インターフェース1130(例えば、鼻マスク)を患者の顔に支持することができる。コネクタ1120は、ストラップ1100を患者インターフェース1130に取り付けるために使用することができ、供給管1140は、呼吸に適した気体を、患者インターフェースを介して患者の気道に送達することができる。図示の例では、患者インターフェース1130は患者の鼻の下に設置され、患者の鼻の外面を密封する。
【0085】
開示する技術のヘッドギアは、ポケット、トンネル、層、及び/またはリブを更に備えることができる。このような構造は、丸編みまたは平編みによって一体的に形成することができる。ポケットまたはトンネルは、編み地よりも高い剛性または堅さを有する材料で補強し、それによってヘッドギアを硬化させることができる。ヘッドギアを堅くすることによって、使用者の顔の所定の位置にマスクを更に安定させることができる。ヘッドギアを堅くするために使用される材料には、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のプラスチック、または組み紐等の剛性の高い布地が含まれうる。好ましくは、ヘッドギアを堅くすることは、患者の頭部の骨領域、例えば頬、後頭部、または頭頂部に設置することができる。編み物工程中に補強構造を挿入することができ、例えば、編み物工程中またはその後に、剛性の高いまたは平坦なヤーンまたは硬質ポリマー要素を編み物構造に挿入することができる。ストランドまたは硬質構成要素は、例えば治療のためにヘッドギアストラップをしっかりと締めることにより張力及び応力に耐えるように、若しくはマスクをより良く安定させるように機能し、またはヘッドギア部品をマスクインターフェースに取り付けるための結合材または固定材として機能する助けとなる。
【0086】
あるいは、快適さを加えるために、ポケットまたはトンネルを保護することができる。例えば、ポケットまたはトンネルは、フォーム、ゲル、浮いているヤーン、ループ状のヤーン、または他の緩衝材料で満たすことができる。
【0087】
好ましくは、ヘッドギアは平編みまたは丸編みによって形成され、ヘッドギアは耳を有する。すなわち、ヘッドギアは、ヘッドギアを構築するために使用されるヤーンの端が実質的にヘッドギア構成要素の縁にないような完成した構成を有するように形成することができる。ヘッドギア構成要素から完成した形状を作る利点は、ヤーンを切断せず、従って、ほどける可能性が低く、必要とする仕上げステップを少なくてよいことである。仕上げ縁を形成することによって、ヘッドギアの完全性が維持され、または強化されることさえあり、(1)ヘッドギア構成要素がほどけることを防止する、及び/または(2)明確だが軟らかい縁を作製する(「軟質縁」を超音波切断して生地-フォーム-生地積層材料上に密封する際等)、及び/または(3)ヘッドギアの審美特性及び耐久特性を高めるために必要な後処理ステップが少なくなるかまたはまったくない。
【0088】
開示する技術のヘッドギアは、規則的または不規則なピケ(pique)編み物によって形成することができる。ピケ編み物は、第1のヤーンを表側(ヘッドギアを被ると見える、非患者接触側)に、第2のヤーンを裏側(ヘッドギアを被ると見えない、患者接触側)に配向する。すなわち、表側で露出されるヤーンは、裏側で露出されるヤーンと異なることがある。例えば、表側のヤーンは感じのよい視覚的外観を有することができ、裏側のヤーンは、患者の皮膚と接触するのに良い手触りを有することができる。あるいは、または更に、表側のヤーンは第1の吸湿性を有することができ、裏側は第2の吸湿性を有することができる。例えば、表側のヤーンは、第1の吸湿性を有するマイクロファイバーの割合が高くてよく、裏側は、第2の吸湿性を有する、マイクロファイバーでないものの割合が高くてよい。
【0089】
ヘッドギアは、好ましくは、簡略にするために材料及び性質において均一であってもよい一体型編み物構造として形成することができるが、好ましくは、ヘッドギアは、異なる物理的性質を有してシームレスに接合される種々の部分品を含む一体型構造として形成される。この種々の部分品は、例えば限定するものではないが、異なる程度の強度、摩耗抵抗(abrasion resistance)、耐摩耗性(wear resistance)、柔軟性、増強された耐久性、向上または低下した吸水(吸水性)、吸湿能力、親水性、通気性または透気性、液体透過性、伸長または耐伸長性、圧縮性、緩衝能力、支持、剛性、復元、フィット性、及び形態を示すことができる。この種々の部分品は、4方向伸長、または2方向性伸長、調整されたレベルの耐伸長性、または伸長せず、等の方向性伸長の変化を示すように構築することができる。これは、例えば限定するものではないが、特定のヤーンまたは編み物構造種類を選択することによって、達成することができる。
【0090】
一体化されたシームレス構造であるヘッドギアは、均一な特性を備えて一体的に形成されてもよいし、さまざまな特性を備えた2つ以上の部分品から形成されてもよい。この2つ以上のヘッドギア部分品は、異なるねじれ、デニール、繊維組成等を持った2つ以上の異なるヤーンを使用すること、従って異なる物理的性質をヘッドギア構造に付与することによって、異なることができる。この2つ以上のヘッドギア部分品は、2つ以上の種々の表目の種類を使用すること、従って一意の物理的性質を2つの部分品に付与することによって、異なることができる。
【0091】
ある領域には、例えば、エラステイン(elastane)またはPBT(ポリブチレンテレフタレートポリエステル)を採用して伸長を高めることができるが、他の領域には、例えば、ナイロンまたはポリエステルを採用して耐久性を高めることができる。同様に、緩衝性、厚さ、または大きさをカスタマイズするために、ヘッドギアのある領域には1デニールのヤーンを採用することができ、他の領域には、より大きなまたは小さいデニール、ひだ(crimp)、または風合いを持つヤーンを含めることができる。
【0092】
ヘッドギア構造内の2つ以上の部分品は、タック編みまたは例えば第1の部分品を第2の部分品にシームレスに接合する他の表目を使用することによって、接続することができる。これは、第1の部分品を編み物し、次に第1の編まれた部分品と第2の編まれた部分品との間にタック編みを編み物し、次に第2の部分品を編むことによって達成される。タック編みは、特に筒の細い(narrow-tube)丸編み機を使用するとき、うねの間の部分品をシームレスに接続するために利用される。
【0093】
ヘッドギア部品は、縫い目無しで仕上げることができる。ヘッドギア部品が未染色ヤーンによって作製される場合、これは、水溶性繊維を含むヤーンによる編み物工程を終えることによって達成することができる。水溶性繊維を使用することによって、染色工程で生地が縮むことが可能になり、きちんと仕上げされた縁が提供され、縁に更なる縫い目を作る必要性がなくなる。
【0094】
製造効率を高めるために、編み機はまた、ストラップまたは頭頂部構成要素等の一連の接合されたヘッドギア構成要素を形成するために利用することができる。すなわち、編み機は、複数のヘッドギア部品を含む単一の構成要素を形成することができる。ヘッドギアセグメントのそれぞれは、実質的に同一の形状及びサイズを有してもよい。あるいは、ヘッドギア部品のそれぞれは、異なる形状及びサイズすら有してもよく、その形状及びサイズは順にプログラムすることができる。更に、種々のヘッドギアパーツ、例えばストラップを切断動作の必要なく分離することを可能にするために、編み物解放部区域(例えば限定するものではないが、溶解性ヤーン、ゆるく編まれたヤーン、より細いデニールのヤーン、またはちぎれやすいプレースホルダ(placeholder)ヤーンからなることができる)を編み物して、一連のヘッドギア構成要素を作製することができる。
【0095】
2.1.1.1 スペーサーファブリック
開示する技術の一例では、ヘッドギアは、スペーサーファブリック材料を使用して形成することができる。スペーサーファブリックは、上部底構造または層と、下部底構造または層と、マトリックスのような布地を形成するために上部底構造と下部底構造との間に織られた浮いているまたは横断するヤーンとを有する布地と定義することができる。上部底構造及び下部底構造は、生地から形成することができる。上部底構造は、下部底構造と異なる性質を有することができ、例えば、上部底構造と下部底構造は、異なる伸長、剛性、柔軟性、手触り、または他の特性を有することができる。上部底構造と下部底構造は、互いと略平行とすることができる。スペーサーファブリックは、平編みによって形成することができる。少なくとも1つの側(すなわち、上部底構造または下部底構造)は、気持ちの良い手触りを実現するために、例えば約30~100デニール、20~300デニール、または50~200デニールのヤーンを有する生地から形成することができる。
【0096】
図13及び
図13aの例では、後部部分1310は、患者とのインターフェースとなるための内側生地1320と、外側生地1330と、内側生地と外側生地を接合するスペーサースレッド(spacer thread)1340とを含む。内側生地1320は、軟質であり、快適さを高めるために湿気を吸い上げることが可能であるように構成することができる。外側生地は、睡眠中にマスクの位置を変えることなく動きを可能にするように低摩擦面を有するように設計することができる。外側生地はまた、汚れ防止面を有することができ、ストラップの取り付けを容易にするために破損していないループを更に含むことができる。
【0097】
別の例では、ヘッドギアは、
図14-1~
図14-4に示されるように、内部空間1405を有する編まれた筒として形成することができる。管状のヘッドギア部品1400は、外側繊維/インターフェース用生地1430と、内側スペーサー繊維またはパイル(接続層)1440と、内側繊維/生地1450とを含む。管状部品1400は、内側針1410と外側針1420とを有するデバイスによって構築され、内側針1410及び外側針1420は、外側繊維/インターフェース用生地1430、内側スペーサー繊維、及び内側繊維/生地1450を編むようにプログラムすることができる。
【0098】
管状部品1400は、
図14-3に示されるように、張力下にあるとき、使用中に平らになって、薄型ヘッドギア部品(例えば、ストラップ)を形成することができる。更に、
図14-4を参照すると、管状ストラップ1460は、後部部分1310に接続する部分がマスクに接続するように適合された端よりも幅広くなるように、さまざまな直径を有することができる。この構成は、ヘッドギアストラップ1460の視覚的な目障りさ(obtrusiveness)を減少させることができる。
【0099】
別の例では、内部空間1405は、空気を運ぶ、従って空気送達コンジットを形成するように構成することができる。国際公開第2012/167327号パンフレットには、布地材料または生地材料から作製された空気送達コンジットが記載されている。この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。国際公開第2012/167327号パンフレットに記載されたこのような空気送達コンジットは、この出願に記載された例のいずれかによって説明されるとおりに成形可能に(またはフルファッショニングで)製造することができ、更に、この出願に記載する例のいずれかに組み込むことができる。
【0100】
図15-1及び
図15-2を参照すると、ヘッドギアの深さまたは厚さは、スペーサーヤーン(スペーサースレッド)の長さを変化させることによって、変えることができる。ヘッドギア部品1500は、内側生地1520と、外側生地1525と、スペーサースレッド1540とを含む。ヘッドギア部品1500は、薄い領域1510と、厚い領域1520とを含むことができる。
図15-1の例では、薄い領域1510と厚い領域1520の緩やかな移り変わりが形成される。対照的に、より急な移り変わりを
図15-2の例に見ることができる。異なる厚さを持つ調整された緩衝材の1つの利益は、輪郭、快適さ、及び詰め物を作る特定の顔面骨/筋肉構造または通気性及び温度管理のための薄いゾーンに対応するために厚さが変化する緩衝性であることがある。
【0101】
図15-3~
図15-5を参照すると、ストラップ1530の厚さはまた、硬質部分1532及び接続部分1534を作製するために変化させることができる。硬質部分1532は、硬化材または安定材として機能し、ヘッドギアの特定の区域における形態を作ることができる。接続部分1534は、ストラップ1530をマスクに接続するために利用される穴または他の構造を含むことができる。
【0102】
ヘッドギアの深さまたは厚さを変化させることに加えて、スペーサースレッド内に間隙を形成することができる。これらの間隙を利用して、例えば、通気穴をマスク内に形成するまたはヘッドギアの柔軟な区域を作製することができる。
図16及び
図17では、マスク1610は、内側生地1620と、外側生地1630と、スペーサースレッド1640とを含む。スペーサースレッド内の空隙1660は、マスク内に通気穴1650を作製するために使用することができる。この特徴を促進するため、内側生地1620及び外側生地1630は、空隙1660の区域において薄くなる。マスクの端は、溶接する、編む、または他の任意の適切な方法で接合することができる。
【0103】
あるいは、空隙1660は、
図18に示されるように、熱成形するまたは別の方法で圧縮されて、薄い領域1810を形成することができる。薄い領域1810は、曲線のまわりで(例えば、患者の後頭部のまわりで)ヘッドギアを屈曲するように適合された蝶番または区域を形成することができる。
【0104】
更なる一例では、スペーサースレッド1640は、密度の低い区域1910及び密度の高い区域1920を作製するように不均等に離間することができる。これらの区域を設けることによって、ヘッドギアの柔軟性を必要に応じて調整することができる。例えば、ヘッドギアは、頬骨領域で剛性が高く(密度の高い区域1920)、頬筋領域では柔軟(密度の低い1910)であってよい。
【0105】
代替例では、
図5-1及び
図6のヘッドギア520及びヘッドギア630は、
図20及び
図21の断面図に示されるように、スペーサー材料を含むことができる。スペーサーファブリック構造は、より高い緩衝性、通気性、水分管理(例えば吸水性または吸湿性)、及び/または望ましさ(例えば、快適さ及び/または審美性の訴求)を提供することができる。
【0106】
図20を参照すると、上部ヘッドギアストラップ530は、内側生地530(1)と、外側生地530(2)と、スペーサーヤーン530(3)とを含むことができる。更に、ストラップ530の縁は、外側生地530(2)を引っ張って内側生地530(1)と係合し、一体化されたシームレス縁530(4)を作製するように編むことができる。あるいは、内側生地及び外側生地は、ストラップ530の縁で溶接(例えば、超音波溶接)することができる。
【0107】
次に
図21を参照すると、頂部ストラップ634は、内側生地634(1)と、外側生地634(2)と、スペーサーヤーン634(3)とを含むことができる。更に、外側生地634(2)は、ブラッシングするまたは別の方法で処理して、フック材料を受け入れるための破損していないループ材料を形成することができる。
【0108】
あるいは、ヘッドギアは、組み紐、かぎ針編み、網構造、若しくはラッシェルパターン、インターロック若しくはジャージ等の単層編み物若しくは二重層編み物によって、または積層造形(3D印刷)によってすら、構築することができる。基本的な片面生地または両面編み物の場合、患者に対する快適さを高めるために適切な緩衝性及び嵩を提供することができるざらざらしたヤーンを使用することが好ましい場合がある。
【0109】
図4-2~
図4-4を参照すると、スペーサーファブリックから形成されたたて編みストラップ420が示されている。ストラップ420は、内側生地431と、外側生地433と、スペーサースレッド435とを含む。このストラップは、ナイロン及び/またはポリエステル、または他の任意の適切な材料から形成することができる。内側生地431及び外側生地433は、高密度を有する軟質面を有することができる。ストラップは、別のヘッドギア部材(例えば、後部部分)に接続するように適合された幅広い部分422と、マスクに接続するように適合された細い部分424とを有することができる。スペーサーヤーンまたはパイルは、耐剪断性であるように形成することができる。内側生地と外側生地を耳437において一緒に編んで、スペーサーパイルを閉じ込める。別の例では、
図4-4に示されるように、外側生地433は、フック材料を受け入れるための破損していないループ材料440を含む。
【0110】
一例では、
図4-2に示されるように、d1は約22.5~42.5mm、例えば32.5mmとすることができ、d2は約30~50mm、例えば40mmとすることができ、d3は約152~292mm、例えば222mmとすることができ、d4は約11~17mm、例えば14mmとすることができ、d5は14~22mm、例えば18mmとすることができる。更に、
図4-3に示されるように、d1は約1.75~3.25mm、例えば2.5mmとすることができ、d2は約2.25~3.75mm、例えば3mmとすることができる。
【0111】
図4-5~
図4-9では、たて編みストラップ450は、内側生地461と、外側生地463と、スペーサーヤーン465とを含む。上記のストラップ420とは対照的に、ストラップ450は一定の幅を有する。スペーサーヤーンまたはパイルは、耐剪断性であるように形成することができる。内側生地と外側生地を耳467において一緒に編んで、スペーサーパイルを閉じ込める。別の例では、
図4-7に示されるように、外側生地463は、フック材料を受け入れるための破損していないループ材料470を含む。更なる一例では、
図4-8に示されるように、外側生地463に伸縮性を持たせて、高圧の外側生地463-1を形成することができる。伸縮性を持たせた外側生地463-1は、耳467をストラップの外面に引っ張り、ヘッドギアストラップをストラップの外側生地層の方へ上方及び内部に巻き付けさせるように機能することができる。断面では、
図4-8に示されるように、ストラップは、文字Cの外観を有することができる。この構成は、縁が皮膚から巻き上がるので、ストラップは、患者の皮膚に押し付けられたときに明確な縁を持たないため、顔のマーキングを減少させるうえで有利なことがある。
【0112】
一例では、
図4-5及び
図4-6に示されるように、d1は約1.75~3.25mm、例えば2.5mmとすることができ、d2は約2.25~3.75mm、例えば3mmとすることができ、d3は約11~17mm、例えば14mmとすることができる。
【0113】
2.1.1.2 二重編みまたはインターロック
あるいは、別の例によれば、ヘッドギアは、内面と外面とを有する成形し、これらの面の間に空間はないように形成することができる。
図22-1は二重編みの概略図であり、
図22-2A及び
図22-2Bはインターロック編みを示す。
図22-1、
図22-2A、及び
図22-2Bでは、内側生地2210と外側生地2220は、インターロック、二重編み、または二重ジャージ等の両面仕上げの生地を形成するほど、ごく接近して編まれる。
図22-1に示されるように、内側生地2210と外側生地2220は、内側生地層2210と外側生地層2220を一緒に引っ張るスペーサーヤーン2230と同時に編まれる。しかし、
図22-2A及び
図22-2Bの例では、内側生地2210及び外側生地2220は、インターロックとして一般に知られる方法で更なるスペーサーヤーンの必要なく共に(同時に)編まれ、それによって、内側生地及び外側生地をそれぞれ形成する2組のヤーンがある。
【0114】
両面生地または編み物生地は、できる限り患者にとって邪魔にならないように最も従来型のヘッドギア材料(例えば、フォームラミネート)よりも平坦である(すなわち、生地厚さはより薄く、ストラップ幅は細くない)が、一重編みよりも堅固であり、密度が高く、耐久性があり、堅牢で、または剛性が高いので、生地は、ヘッドギアにおいて使用するのに有益な場合がある。二重編み生地はまた、生地の片側での第1の特性またはパターン/構造を、生地の反対側での第2の特性またはパターン/構造と共に、可能にすることができる。例えば、患者接触側に軟質ヤーンを、非患者接触側に耐久性の高いヤーンまたは構造を設けることができる。更なる一例では、患者接触側に吸い上げ(wicking)マイクロファイバーを設けることができ、非患者接触側に親水性材料を設けることができる。更なる一例では、患者接触側にコットンヤーンを設けることができ、非患者接触側にポリエステルアウターを設けることができる。二重編みは、スペーサーファブリックよりも層の数が少ないために、より安価で複雑性が低いので、二重編み生地がスペーサーファブリックよりも好ましいことがある。
【0115】
2.1.1.3 縫合
縫い目の数は、快適さ、フィット性、及び/または性能を高めるように調整することができる。例えば、縫い目の数を変化させて、顔のマーキングを減少するように機能することができるひだ飾りを作製することができる。
図23の例では、マスク2305はヘッドギア2310によって支持される。このマスクは、患者の顔を密封する密封部分2307を含む。ヘッドギア2310はストラップ2312を含み、また、マスクを安定させる助けとなるための上部ストラップ2314も含んでよい。ストラップ2312の中間部分2320を通る縫い目の数は、ストラップの外縁近くの縫い目の数よりも少ない。縁部分における縫い目の数を増加すると、ストラップがひだ飾り2330を形成する。所望のフィット性を達成するようにヘッドギアの任意の部分における縫い目の数を調整することができることが理解されよう。
【0116】
図13及び
図13aに戻るが、後部部分1310における縫い目の数は、患者の頭部に適合するように構成された形状を後部部分に形成させるように調整することができる。
図13の円錐台形状は、形状を変更するように縫い目の数を調整する一例を示すために示されている。例えば、後部部分1310の遠位部分1312は、近位部分1314よりも少ない縫い目を有することができる。一例では、遠位部分は100の縫い目からなることができ、近位部分は200の縫い目からなることができる。この構成によって、近位部分が、増加した直径を有し、それによって外側に広がって円錐台形状を形成することができる。
【0117】
2.1.1.4 可変の糸数
別の例では、生地の全体にわたって糸数を変化させて、快適さ、フィット性、及び/または性能を高めることができる。例えば、糸数を、より高い剛性を必要とする領域(例えば、頬領域、後頭部)において多くすることができる。しかし、低い剛性が望ましい領域(例えば、ストラップに沿った)では、糸数を少なくし、それによって、材料がより容易に曲がることができるようにすることができる。
【0118】
糸数、従って剛性は、ヤーンの種類、縫い目の種類(例えば、十字形の縫い目は堅くなることができる)、及び縫い目間の距離によって決定することができる。
【0119】
2.1.1.5 硬化材
ヘッドギアは、剛性、堅さ、及び/または安定性をヘッドギアに加え、使用に際してヘッドギアを所定の位置に係留するような構造にされた、1つまたは複数の硬化材を含むことができる。一例では、硬化材は、ストラップと一体的に形成される。例えば、
図25-1及び
図25-2では、ヘッドギア2500の周囲のヤーンよりも高い剛性を有するヤーンを特定の領域(例えば、頬領域または頭頂部領域)において編み物して、硬化材2510を形成することができる。硬化材2510は、ヘッドギアを剛性化して、マスクに安定性を提供することができる。更に、硬化材2510は、患者インターフェース2530(例えば、鼻マスク)に取り付けるためのヘッドギアクリップ2520を形成するように成形することができる。
【0120】
別の例では、
図26に示されるように、硬化材2510を形成するヤーンを融解または溶解させ、ヤーンを更に剛性化して、溶接した硬化材2610を形成することができる。好ましくは、硬化材ヤーンは周囲のヤーンよりも低い融解温度を有し、従って、溶接した硬化材2610を、周囲のヤーンを変形させることなく形成することができる。一例では、硬化材ヤーンはポリプロピレンを含み、周囲のヤーンは、ナイロン、または綿若しくは羊毛等の他の非プラスチック材料を含む。
【0121】
編まれたヘッドギア構成要素は、編まれた構成要素の異なる領域において溶解されて異なる性質を付与する熱可塑性ヤーンを組み込むことができる。熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、隣接するヤーン、フィラメント、または繊維は、それらの区域内で互いに溶解して、編み物ループをまとめて係止し、それによって、患者の顔におけるマスクの剛性または耐摩耗性または安定性を増加させることができる。別の方法として、編まれたヘッドギア構成要素の全体は、熱可塑性ポリマー材料を組み込んだヤーンから形成することができ、溶解区域と対応する特定の部分のみを加熱して性質を修飾することができる。
【0122】
硬化材は、
図26に示される平坦な工具2650、または
図27に示される湾曲した工具2750によって形成することができる。
図27では、湾曲した硬化材2710を有する湾曲したヘッドギア2700が形成される。
【0123】
ヘッドギア生地の内層または外層は、スリット(または間隙)を含むように形成することができる。このスリットを通して剛性要素または半剛性要素を挿入し、ヘッドギアの内層と外層との間に設置される支持体を形成することができる。
図14-5に示される例では、(
図14-1~
図14-4に)類似の中空構造も、例えばたて編み機で、並行して、患者とのインターフェースとなる外側生地461-2をスペーサーヤーン465-2の層に編み物し、同時にスペーサーヤーン465-2の層を、スペーサーヤーンを包む内側生地463-2に編み物し、間隙470-2(またはポケット)を形成するポケット層469-2を編むことによって内側生地463-2を覆うことによって、平らになるように編むことができる。ポケット層469-2は、編まれた構造の耳467-2近くのみで、外側生地461-2、スペーサーヤーン465-2、及び/または内側生地463-2に接続される。
【0124】
図14-6及び
図14-6Aに示されるように、間隙470-2は、ストラップ450-1の中に中空ポケットを形成することができ、例えば、このポケットは、例えば、別個の硬化材472-2で満たしてもよく、または別の関連するマスク構成要素または取り付け機構を配置するために使用してもよい。スペーサーファブリックは、硬いパーツ(例えば、硬化材472-2)と患者の顔との間に軟かい緩衝性を提供し、ポケットは、硬いプラスチックパーツまたは緩衝材取り付け具を軟らかい生地ヘッドギアストラップ容器内へ配置するように機能し、この容器は、例えば、摩擦、クリップ、接着剤、熱ラミネート、または仕上げ縫い(overstitching)によって、所定の位置に固定することができる。
【0125】
2.1.1.6 ヤーン
ヤーンを利用して、開示する技術のヘッドギアを作製することができる。
【0126】
ヤーンは合成であってよく、ねじられたりざらざらにされてもよく、限定するものではないが、ナイロン、ポリエステル、アクリル、レーヨン、またはポリプロピレンから作製することができる。ヤーンは、従来のステープルヤーン、マイクロファイバーヤーン、またはこの両者の組み合わせとすることができる。
【0127】
ヤーンは、伸長性及び復元性を提供するために、DuPont社のLYCRA商標を持つ繊維等の、エラステイン繊維またはフィラメントを組み込むことができる。
【0128】
ヤーンは、合成材料から作製されてもよいし、綿、羊毛、または竹等の天然繊維からされてもよいし、絹等の天然のフィラメントから作製されてもよい。
【0129】
ヘッドギアの任意の構成要素を構築するために使用されるヤーンは、単繊維から形成されてもよいし、複数の単一フィラメントから形成されてもよい、すなわち多繊維ヤーンであってもよい。
【0130】
ヤーンは、異なる材料からそれぞれ形成される別個のフィラメントを含むことができる。ヤーンは、複合(bicomponent)ヤーン等の2つ以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントも含むことができ、フィラメントは、シース-コア構成すなわち異なる材料から形成される2つの半分を有する。異なる程度のねじれまたは圧着、並びに異なるデニールは、ヘッドギアの性質に影響を与えることができる。
【0131】
ヘッドギア構成要素を構築するために利用される材料は、リサイクル可能または生分解性とすることができ、例えば、ヤーンは、リサイクル可能または生分解性の繊維またはフィラメントを含むことができる。
【0132】
頭部の後部または首の項部に位置するヘッドギアの区域等の、強い摩耗(例えば限定するものではないが、区域または領域は患者の枕と接触する)を受けやすいヘッドギアの区域は、場合によっては、より高い密度で製作することがあり、従って、より重く、伸長性が低いことがある。反対に、この区域は、汗による最大量の水分蓄積に更されることがあり、従って、カスタムの開口パターンを有する細いが強度の高い網状構造から作製する必要があることがある。この場合、摩耗抵抗がヤーンの性質のみに固有である必要があることがある。
【0133】
2.1.2 3D印刷
別の例では、ヘッドギアは、3Dプリンタを使用して成形可能に製造することができる。
図28に示されるように、3Dプリンタを使用して、複数の接続されたリンク2802を印刷し、それによって、3D印刷された柔軟な布地2804を形成することができる。
図29を参照すると、ヘッドギア部品2900は、硬化材2920を含むように形成することができる。この硬化材は穴2922を含み、布地2904は布地と硬化材を一体化させるように印刷されているので、布地のリンクが穴2922を通過することができる。硬化材は、任意の適切な材料(例えば、ナイロン12等のポリマー、または金属粉末から焼結された固体、または積層造形工程に使用することが可能な他の任意の材料)から作製することができる。積層造形(「3D印刷」)工程技術が向上しているので、布地を3D印刷するための材料選択が幅広くなり、任意選択で剛性構成要素を含むことが想定される。構造は、材料に固有であってもよいし、構造に基づくものであってもよい。
【0134】
更に、
図30に示されるように、3D印刷されたストラップ3004は、オスクリップ3012及びメスクリップ3014の穴3012(1)、3014(1)に組み込むことができる。
【0135】
2.2 カスタムメイドのヘッドギア
開示する技術の一例により、カスタムメイドのヘッドギアを個々の患者用に製造することができる。患者の頭部の形状及びサイズに関するデータを(例えば、写真、3Dスキャンによって)収集する。カスタムメイドのヘッドギアを製造するために使用することができる測定値には、患者の頭頂部の円周、後頭部から頭頂部までの長さ、並びに患者の耳、目、及び鼻の位置を含めることができる。コンピュータ上で動作する視覚的モデリングソフトウェア(例えば、CADCAM)は、患者の測定値及びニーズに応じて、カスタムメイドヘッドギアのモデルを作製することができる。次に、このモデルを、ヘッドギアの作製のための機械(例えば、編み機または3Dプリンタ)に送信する。
【0136】
開示する技術の特徴をヘッドギアに関して詳しく説明してきたことに留意されたい。しかし、ヘッドギアに関して説明した特徴のすべては、開示する技術により構築された任意のマスクにおいても使用可能であることができる。
【0137】
本技術について、いくつかの例に関連して説明してきたが、本技術は開示する例に限定されるべきではなく、逆に、本技術の趣旨及び範囲に含まれる種々の変更形態及び等価な構成を包含するものであることを理解されたい。また、上記で説明した種々の例は他の例と共に実施してもよく、例えば、ある例の1つまたは複数の態様を別の例の1つまたは複数の態様と組み合わせて、更に別の例を実現してもよい。更に、任意の所与のアセンブリのそれぞれの独立した特徴または構成要素が更なる例を構成してもよい。更に、本技術は、OSAに罹患した患者に対する特定の用途を有するが、他の疾患(例えば、うっ血性心不全、糖尿病、病的肥満、脳卒中、肥満外科手術等)に罹患した患者も上記の教示から利益を得ることができることを理解されたい。更に、上記の教示は、非医学的用途において、患者及び非患者への適用性を同様に有する。
【0138】
第1項:
患者の陽圧治療のために呼吸マスクを前記患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアアセンブリであって、
一体型の、実質的にシームレス構造から形成された少なくとも1つのヘッドギア構成要素であって、接合部を備える少なくとも1つのヘッドギア構成要素
を備えるヘッドギアアセンブリ。
第2項:
前記少なくとも1つのヘッドギア構成要素が、互いに対する実質的にシームレス接続を有する少なくとも第1のヘッドギア構成要素と第2のヘッドギア構成要素とを含み、該少なくとも第1のヘッドギア構成要素と該第2のヘッドギア構成要素が前記接合部で交わる、第1項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第3項:
前記少なくとも第1のヘッドギア構成要素と第2のヘッドギア構成要素を実質的にシームレスな方法で互いに接続する縫い目を更に備える、第2項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第4項:
前記縫い目がタック編みである、第3項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第5項:
前記少なくとも第1のヘッドギア構成要素と第2のヘッドギア構成要素が異なる性質を有する、第1から4項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第6項:
前記第1のヘッドギア構成要素が、性質に関連する前記第2のヘッドギア構成要素の値と異なる、該性質に関連する値を有する、第5項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第7項:
前記性質が、強度、摩耗抵抗、耐摩耗性、柔軟性、耐久性、吸水性、吸湿能力、通気性、透気性、液体透過性、伸縮性、圧縮性、緩衝能力、剛性、及び復元のうちの少なくとも1つである、第6項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第8項:
前記少なくとも第1のヘッドギア構成要素と第2のヘッドギア構成要素が異なる材料を含む、第2から7項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第9項:
前記第1のヘッドギア構成要素の材料が、前記第2のヘッドギア構成要素の材料と異なるねじれ、ひだ、風合い、デニール、及び/または繊維組成を有する、第8項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第10項:
前記第1のヘッドギア構成要素が、前記第2のヘッドギア構成要素と異なる縫い目の種類を有する、第2から9項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第11項:
前記少なくとも第1のヘッドギア構成要素及び第2のヘッドギア構成要素のうちの少なくとも1つが、内層と外層と該内層と該外層を接合するスペーサースレッドとを有するスペーサーファブリックを含み、前記内層が前記外層に編まれて実質的にシームレス縁を形成する、第2から10項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第12項:
前記少なくとも第1のヘッドギア構成要素及び第2のヘッドギア構成要素の少なくとも1つがストラップを備える、第2から11項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第13項:
患者の陽圧治療のために呼吸マスクを前記患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアアセンブリであって、
実質的にシームレス構造を有する少なくとも1つのヘッドギア構成要素であって、患者接触側と非患者接触側とを含むヘッドギア構成要素
を備え、
前記患者接触側が、少なくとも1つの性質に関連する第1の特性を有し、前記非患者接触側が、前記少なくとも1つの性質に関連する第2の特性を有し、前記第1の特性が前記第2の特性と異なる、
ヘッドギアアセンブリ。
第14項:
第1の材料が患者接触側に提供され、第2の材料が非患者接触側に提供され、第13項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第15項:
前記少なくとも1つの性質が、軟質性、耐久性、吸湿能力、または親水性である、第13及び14項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第16項:
前記ヘッドギア構成要素が、第1のヤーンが患者接触側に配向され、第2のヤーンが非患者接触側に配向されるように、編まれる、第13から15項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第17項:
前記ヘッドギア構成要素が二重編みである、第13から16項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第18項:
前記ヘッドギア構成要素がピケ編み物である、第13から16項のいずれか一項に記載のヘッドギア。
第19項:
前記ヘッドギア構成要素がストラップを備える、第13から18項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第20項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
実質的にシームレス構造を有するように少なくとも1つのヘッドギア構成要素を編むステップであって、該ヘッドギア構成要素が患者接触側と非患者接触側とを含む、ステップを含み、
前記患者接触側が、少なくとも1つの性質に関連する第1の特性を有し、前記非患者接触側が、前記少なくとも1つの性質に関連する第2の特性を有し、前記第1の特性が前記第2の特性と異なる、
方法。
第21項:
第1の材料が患者接触側に提供され、第2の材料が非患者接触側に提供される、第20項に記載の方法。
第22項:
前記少なくとも1つの性質が、軟質性、耐久性、吸湿能力、または親水性である、第20及び21項のいずれか一項に記載の方法。
第23項:
前記ヘッドギア構成要素が、第1のヤーンが患者接触側に配向され、第2のヤーンが非患者接触側に配向されるように、編まれる、第20から22項のいずれか一項に記載の方法。
第24項:
前記ヘッドギア構成要素が二重編みである、第20から23項のいずれか一項に記載の方法。
第25項:
前記ヘッドギア構成要素がピケ編み物である、第20から23項のいずれか一項に記載の方法。
第26項:
前記ヘッドギア構成要素がストラップを備える、第20から25項のいずれか一項に記載の方法。
第27項:
患者の陽圧治療のために呼吸マスクを前記患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアアセンブリであって、
少なくとも1つのヘッドギア構成要素を備え、
該ヘッドギア構成要素がヤーンを備え、前記ヘッドギア構成要素が、前記ヤーンの第1の密度を有する第1の領域と、前記ヤーンの第2の密度を有する第2の領域とを有する、ヘッドギアアセンブリ。
第28項:
前記第1の領域が、第1のデニールを有する第1のヤーンを含み、前記第2の領域が、第2のデニールを有する第2のヤーンを含む、第27項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第29項:
前記第1の領域が、前記第2の領域よりも大きいヤーンの密度を有し、従って、前記第1の領域が、前記第2の領域よりも剛性が高く、伸長性が低く、及び/または透過性が低い、第27から28項のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリ。
第30項:
患者の陽圧治療のために呼吸マスクを前記患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアアセンブリであって、
少なくとも2つの隣接するヘッドギア領域を含む単一の一体型構造を備え、
解放区域が、前記少なくとも2つの隣接するヘッドギア領域の間に提供され、該少なくとも2つの隣接するヘッドギア領域を切断することなく互いから分離するように適合される、ヘッドギアアアセンブリ。
第31項:
前記解放区域が、溶解性ヤーン、ゆるく編まれたヤーン、より小さいデニールのヤーン、及び/またはちぎれやすいプレースホルダヤーンを含む、第30項に記載のヘッドギアアアセンブリ。
第32項:
患者の陽圧治療のために呼吸マスクを前記患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、
スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築されたストラップを備えるヘッドギア。
第33項:
前記スペーサーファブリックが、耐剪断性パイルから形成された内層を有する、第32項に記載のヘッドギア。
第34項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
a)前記マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたストラップを形成するようにヤーンまたは糸を編むステップであって、該ストラップが取り付け部材に接続され、該取り付け部材が、前記ストラップを前記マスクに接続するように適合される、ステップを含み、
ステップa)において、前記取り付け部材内に形成された接続部分を通して前記ヤーンまたは糸をループにして、前記ストラップを前記取り付け部材に接続する、方法。
第35項:
睡眠呼吸障害の患者を治療する際に使用するためのマスクシステムであって、
前記患者の顔を密封し、それによって呼吸空洞を形成するように適合されたマスクアセンブリであって、前記マスクが、第1の編み地から構築された1つまたは複数の部分を有する、マスクアセンブリと、
前記マスクを前記患者の顔で少なくとも部分的に支持するように前記マスクに接続されたヘッドギアであって、前記第1の編み地と第2の編み地のうちの少なくとも1つから構築された1つまたは複数の部分を有するヘッドギアと
を備えるマスクシステム。
第36項:
前記第1の編み地と前記第2の編み地が同じ材料から作製される、第35項に記載のマスクシステム。
第37項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
前記マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップであって、該編み物の地の目またはコースが、前記ヘッドギア構成要素の湾曲した部分を形成するように変えられる、ステップ
を含む方法。
第38項:
前記湾曲した部分が、前記患者に対する快適さを高める、及び/または前記呼吸マスクの性能を改善するように適合される、第37項に記載の方法。
第39項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
前記マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップであって、該編み物の地の目またはコースが、前記ヘッドギア構成要素の少なくとも1つの部分における伸長を可能にするまたは不可能にするように構成される、ステップ
を含む方法。
第40項:
前記地の目またはコースの前記構成が、前記患者に対する快適さを高める、及び/または前記呼吸マスクの性能を改善するように適合される、第39項に記載の方法。
第41項:
患者の陽圧治療のために呼吸マスクを前記患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアであって、
スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築された第1の構成要素であって、該スペーサーファブリックが、内側生地と、外側生地と、前記外側生地と前記内側生地を相互接続する内部スペーサー繊維とを含み、前記内側生地が中空内部区域の境界を決める、第1の構成要素と
を備えるヘッドギア。
第42項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
前記マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップであって、前記ヘッドギア構成要素が、スペーサーファブリックから少なくとも部分的に構築され、スペーサーヤーンから形成された内層を有する、ステップと、
前記ヘッドギア構成要素の属性を変化させるために、前記ヘッドギア構成要素の少なくとも1つの部分における前記スペーサーヤーンの長さまたは密度を変えるステップと
を含む方法。
第43項:
睡眠呼吸障害の患者を治療する際に使用するためのマスクアセンブリであって、
スペーサーファブリックから構築された1つまたは複数の部分であって、該スペーサーファブリックが、スペーサーヤーンから形成された内層を有し、該内層が、通気穴を形成する少なくとも1つの部分を有し、該少なくとも1つの部分が、スペーサーヤーンが実質的にない、1つまたは複数の部分
を備えるマスクアセンブリ。
第44項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
第1の編み地を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップと、
第2の編み地を形成するようにヤーンまたは糸を並行して編むステップと、
前記第1の編み地と前記第2の編み地のうちの1つが、前記患者とのインターフェースとなるように適合された内側生地を形成するように、前記第1の編み地を前記第2の編み地に同時に編むステップと
を含む方法。
第45項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
前記マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップと、
前記ヘッドギア構成要素の属性を変化させるために、前記ヘッドギア構成要素の少なくとも1つの部分における縫い目の数を変えるステップと
を含む方法。
第46項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
前記マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するようにヤーンまたは糸を編むステップと、
前記ヘッドギア構成要素の属性を変化させるために、前記ヘッドギア構成要素の少なくとも1つの部分における糸数または縫い目の様式を変えるステップと
を含む方法。
第47項:
患者の陽圧治療のために呼吸マスクを前記患者の顔の所定の位置に支持する際に使用するためのヘッドギアアセンブリであって、
編み地から構築された第1のヘッドギア構成要素であって、該編み地が、第1のヤーンまたは糸と、該第1のヤーンまたは糸よりも高い剛性を有する第2のヤーンまたは糸とを含む、第1のヘッドギア構成要素を備え、
前記第2のヤーンまたは糸が、前記第1のヘッドギア構成要素の硬化部分を提供するよ
うに構成される、ヘッドギアアセンブリ。
第48項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
前記マスクを少なくとも部分的に支持するように適合されたヘッドギア構成要素を形成するために基本ヘッドギア材料を用意するステップと、
前記基本ヘッドギア材料内へとヤーンまたは糸を編むステップであって、該ヤーンまたは糸が、前記基本材料よりも高い剛性を有する、ステップとを含み、
前記ヤーンまたは糸が、前記ヘッドギア構成要素の硬化部分を提供するように構成される、方法。
第49項:
前記ヤーンまたは糸が、前記硬化部分を剛性化するように融解され、前記ヤーンまたは糸が、前記基本ヘッドギア材料よりも低い融解温度を有する、第48に記載の方法。
第50項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのヘッドギアを形成する方法であって、
前記マスクを少なくとも部分的に支持するように適合された第1のヘッドギア構成要素を少なくとも形成するために布地を3D印刷するステップを含む方法。
第51項:
呼吸マスクを患者の顔の所定の位置に保持する際に使用するためのカスタムメイドのヘッドギアを製造する方法であって、
前記患者の頭部の形状及びサイズに関連するデータを収集するステップと、
前記収集したデータに応じて、コンピューティングデバイス及びコンピュータ支援設計プログラムを用いて電子的ヘッドギアモデルを作製するステップと、
前記電子的ヘッドギアモデルに少なくとも部分的に対応する第1のヘッドギア構成要素を少なくとも形成するステップと
を含む方法。
【符号の説明】
【0139】
510 マスク
512 エルボ結合部分
520 ヘッドギア
1100 ストラップ
1102 上側部分
1104 後部部分
1106 下部部分
1120 コネクタ
1130 患者インターフェース
1140 供給管