(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】プラズマ重合装置
(51)【国際特許分類】
B82Y 40/00 20110101AFI20231222BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20231222BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
B82Y40/00
B01J19/08 K
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2021512661
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 AU2019050961
(87)【国際公開番号】W WO2020047611
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-15
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】523042857
【氏名又は名称】ナノメデックス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイズ,スティーヴン ギャリー
(72)【発明者】
【氏名】コレイア ドス サントス,ミゲル アンゲロ
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/112543(WO,A1)
【文献】特表2008-532760(JP,A)
【文献】特開2004-088051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0222143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B82Y 40/00
H05H
B01J
C08F
C23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ重合装置であって、
反応ゾーン、
ガスの形態の少なくとも1つのモノマーを前記反応ゾーンに供給するための少なくとも1つのガス入口、
離間して配置され、前記反応ゾーンに電界を生成して、前記少なくとも1つのモノマーからプラズマポリマーナノ粒子材料を形成するように構成された第1の電極及び第2の電極、
前記反応ゾーンで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集するように構成された複数のコレクタであって、前記第2の電極に隣接して配置されており、各々が
三次元形状であり、前記反応ゾーンにおいて形成された前記プラズマポリマーナノ粒子材料を受け入れる凹部を画定する前記複数のコレクタ
、
前記第2の電極に隣接して配置され、前記複数のコレクタを冷却するように構成された冷却装置
、及び
前記反応ゾーンに前記電界を閉じ込めるための閉じ込めグリッドを含
み、
前記閉じ込めグリッドは、前記第1の電極と前記第2の電極との間に延在し、複数の開口部を有するメッシュを含み、管状または部分的に管状の構造を有し、前記第1及び/または第2の電極の最大幅と実質的に同じ最大幅を有する、前記プラズマ重合装置。
【請求項2】
前記冷却装置が、前記複数のコレクタと前記第2の電極との間に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記冷却装置が1つ以上の熱電半導体装置を含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記冷却装置が1つ以上のペルチェ装置を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記冷却装置が前記複数のコレクタの背面に結合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記複数のコレクタが複数のバイアルまたはウェルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも12、24、48または96のバイアルまたはウェルを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数のコレクタがウェルプレートに備えられている、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数のコレクタが前記反応ゾーンから取り外し可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記冷却装置が熱交換器に結合されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記熱交換器が、複数のフィンを含むヒートシンクを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記熱交換器が、熱伝達流体が流れる冷却ループを含む、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記熱交換器が複数の熱交換パイプを含む、請求項10、11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記熱交換器の少なくとも一部が、真空チャンバの外に供給するため前記装置から突出している、請求項10~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記熱交換器を冷却するように構成されたファンを備える、請求項10~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記熱交換器の前記突出
する部分を冷却するように構成されたファンを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記開口部が各々約50μm~5mmの間の最大寸法を有する、請求項
1~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記開口部の各々が、実質的に円形、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、または六角形である、請求項
1~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記構造が、実質的に円形、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形または六角形の断面を有する、請求項
1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記反応ゾーンにおける前記プラズマポリマーナノ粒子材料の形成を制御するためのコントローラをさらに含む、請求項1~
19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラが前記冷却装置によって適用される前記冷却を制御する、請求項
20に記載の装置。
【請求項22】
前記コントローラがプラズマ入力パラメータを制御する、請求項
20または
21に記載の装置。
【請求項23】
前記プラズマ入力パラメータが、前記第1または第2の電極への電力、前記反応ゾーンに供給されるガスの流量、及び/または前記反応ゾーンのガスの圧力のうちの1つ以上を含む、請求項
22に記載の装置。
【請求項24】
前記コントローラが、電源によって前記冷却装置に供給される電力、及び/または電力が前記電源によって前記冷却装置に供給される期間を調整することによって、前記冷却装置により適用される前記冷却を制御する、請求項
20~
23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
ユーザインターフェースを含み、前記コントローラが前記ユーザインターフェースからの入力に基づいて制御する、請求項
20~
24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
粒子センサを含み、前記コントローラが前記粒子センサからの入力に基づいて制御する、請求項
20~
25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記粒子センサが、前記反応ゾーンの前記
プラズマポリマーナノ粒子材料の少なくとも1つの特性を測定する、請求項
26に記載の装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つの特性が、ナノ粒子またはナノ粒子の凝集体のサイズ、またはナノ粒子またはナノ粒子の凝集体の数のうちの1つ以上である、請求項
27に記載の装置。
【請求項29】
温度測定装置を含み、前記コントローラが、前記温度測定装置からの入力に基づいて制御する、請求項
20~
28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
プラズマ診断装置を含み、前記コントローラが、前記プラズマ診断装置からの入力に基づいて制御する、請求項
20~
29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記第2の電極が、(a)前記複数のコレクタが少なくとも部分的に受け入れられ、及び/または(b)前記冷却装置が少なくとも部分的に受け入れられている、凹部を含む、請求項1~
30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
前記第2の電極は、前記熱交換器が、少なくとも部分的に受け入れられた凹部を含む、請求項10~16のいずれか一項に記載の、または請求項10~16のいずれか一項に従属する場合の請求項
31に記載の装置。
【請求項33】
前記反応ゾーン、第1の電極、第2の電極、複数のコレクタ、
閉じ込めグリッド及び冷却装置が、反応チャンバに配置されている、請求項1~
32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
前記反応チャンバが真空チャンバである、請求項
33に記載の装置。
【請求項35】
プラズマ重合装置であって、
反応ゾーン、
ガスの形態の少なくとも1つのモノマーを前記反応ゾーンに供給するための少なくとも1つのガス入口、
離間して配置され、前記反応ゾーンに電界を生成して、前記少なくとも1つのモノマーからプラズマポリマーナノ粒子材料を形成するように構成された第1の電極及び第2の電極、
前記反応ゾーンで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集するように構成された複数のコレクタであって、前記第2の電極に隣接して配置されている前記複数のコレクタ、及び
前記第1の電極と前記第2の電極との間に
延在し、前記反応ゾーンに前記電界を閉じ込めるよう構成される閉じ込めグリッドを含
み、
前記閉じ込めグリッドは、複数の開口部を有するメッシュを含み、管状または部分的に管状の構造を有し、前記第1及び/または第2の電極の最大幅と実質的に同じ最大幅を有する、前記プラズマ重合装置。
【請求項36】
前記開口部が各々約50μm~5mmの間の最大寸法を有する、請求項
35に記載の装置。
【請求項37】
前記開口部の各々が、実質的に円形、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、または六角形である、請求項
35または
36に記載の装置。
【請求項38】
前記構造が、実質的に円形、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形または六角形の断面を有する、請求項
35~37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
プラズマポリマーナノ粒子材料を収集する方法であって、
ガスの形態の少なくとも1つのモノマーを反応ゾーンに供給すること、
第1の電極及び前記第1の電極から離間して配置された第2の電極の間で、前記反応ゾーンに電界を生成して、前記少なくとも1つのモノマーからプラズマポリマーナノ粒子材料を形成すること、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に
延在する閉じ込めグリッドを用いて前記プラズマを閉じ込めることであって、前記閉じ込めグリッドは、前記反応ゾーンに前記電界を閉じ込めるよう構成され
、複数の開口部を有するメッシュを含み、管状または部分的に管状の構造を有し、前記第1及び/または第2の電極の最大幅と実質的に同じ最大幅を有する、閉じ込めること、及び
前記第2の電極に隣接している複数のコレクタにおいて、前記反応ゾーンで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集することを含む、前記方法。
【請求項40】
前記第2の電極に隣接して配置される冷却装置を用いて前記複数のコレクタを冷却することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年9月7日に出願された豪州仮特許出願第2018903344号の優先権の利益を主張するものであり、その内容のすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、コンジュゲート(conjugates)の形成に使用できる、プラズマから誘導されたナノ粒子を含む、ナノ粒子及びその凝集体などのナノ粒子材料に関する。本願はまた、ナノ粒子材料を収集するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
同じ構造内で複数の分子カーゴ(molecular cargos)を送達できる多機能ナノキャリアは、多くの疾患の治療と診断の両方の転帰を大幅に改善することが期待されている。しかし、現在のナノ粒子ベースの治療法及び診断法は、依然本質的に生物活性がなく、おそらく医薬品との直接かつ単純なコンジュゲーションを可能にはしない材料を利用している。ナノ粒子(例えば、金、酸化鉄、ポリマー、量子ドットなど)の機能化は、通常複雑であり、一般に、ナノキャリア表面と関連するカーゴとの間の堅牢なコンジュゲーションを実現するために、時間を要する多段階のプロトコルに依存する。
【0004】
ナノ医療の研究における昨今の急速な成長にもかかわらず、パフォーマンス、機能性、及び患者の安全性が向上した新しい製品を提供できる新しいナノファブリケーション戦略が必要である。例えば、ヒトにおける薬物送達の分野において、現在商業的に承認されている医薬ナノキャリアは、パッシブターゲティングの概念に基づいている。パッシブターゲティングでは、キャリアは、腫瘍や炎症領域などの病理学的部位の異常な漏出性血管系に浸透するために、それらの小さいサイズに依存している。これらのナノ粒子-薬物システムは、時に治療の有効性を高めることがあるが、他の代替治療法と比較した場合、薬物の生体内分布と部位の蓄積について欠点が残っている。薬の副作用の減少と用量耐性の増加の見込みは実現されていない。この点に関して、用量耐性を高めたアクティブターゲティングの選択的な送達を提供する潜在可能性があるナノキャリアプラットフォームを開発するべく相当の努力をしてきた。
【0005】
広範囲の治療用途での特異的かつターゲティングされた送達を達成するために、ナノ粒子は、標的細胞にて発現される特定の表面シグネチャーを認識して結合する様々な標的リガンドで機能化することができる。癌などの多因子性疾患は様々なシグナル伝達経路が複雑であることから、治療抵抗性を回避できる多剤阻害剤ベースの治療法の開発への道が開かれてきた。重要なのは、同じナノキャリア内または同じナノキャリア上で異なる薬物を組み合わせると、多剤アプローチの有効性が高まることである。さらに、医療での画像化による治療中にナノ粒子システムに対して優れた制御及び監視を達成することも望ましい、つまり、ナノ粒子が適切な造影剤を組み込むことも有利であることを意味する。したがって、同じナノ構造内に標的療法、診断、及び画像化の両方を統合しながら、異なる機能の調整された混合を達成することのできる多機能ナノ粒子を開発することが強く求められている。ただし、同じナノキャリアで複数の分子カーゴを結合する能力は、この分野では特にとらえどころのないものである。
【0006】
さらに、疾患における異常なタンパク質の発現を調節するためのDNA、mRNA、及びsiRNAを含む核酸の治療的送達にはかなりの余地がある。このアプローチは、in vitroで相当の見込みを示してきたが、臨床的に、つまりin vivoでの処置については十分に実現されていない。いくつかの欠点の中でも、とりわけ、全身投与された場合、これらの分子は、血液中で非常に不安定であり、腎臓と肝臓によってろ過され、それらの高度に帯電した状態は、細胞膜を横切る手早い輸送を妨げる。さらに、細胞膜を通過すると、mRNAとsiRNAはエンドソームを脱出して細胞質に到達し、活性を得る必要があるが、DNAは核に入る必要がある。リポソームナノ粒子を含むナノ粒子プラットフォームは、送達を促進するために使用されて中程度の成功を伴ったが、それにもかかわらず、これは毒性及び細胞内での長期持続性の問題によって妨げられている。このタイプのカーゴを、優先的にもターゲティングされた方法で細胞質または核に、細胞膜を横切るようにして運ぶ能力を備えたナノ粒子プラットフォームは、この分野の著しい進歩を示す。
【0007】
堅牢な化学的コンジュゲーション部位を提供することができる表面を有するナノ粒子は、当分野での大きな進歩となる。現在のプラットフォームでは、単一の構造でナノ粒子の複数の機能を組み合わせる際の制限の1つは、ナノ粒子の実際の表面化学である。ナノキャリアの様々な機能に対する優れた制御を実現するには、化学結合を介した付着が、より弱い非共有結合戦略よりも望ましい。この課題を克服するために、多くの商用プラットフォームで採用されている一般的な戦略は、ナノ粒子にポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリマーをグラフトすることである。しかし、これらのコーティング及び機能化戦略には、安全性または廃棄上の問題をもたらす溶媒が含まれることが多い、多段階で時間のかかる複雑なプロトコルが含まれる。さらに、PEGの表面濃度と厚さの最適化、再現性、及び制御は、通常、これらのコンジュゲーションプロセスでは実現が困難である。通常、コーティングリガンドの末端基は、固定化できる生体分子の範囲も制限する。他のコンジュゲーション戦略には、自己組織化プロセスにおける分子とナノ粒子材料の事前のコンジュゲーションが含まれる。ただし、これらの後者のアプローチはまた、有機溶媒の使用と、分子カーゴの本来のコンフォメーションと機能を損なう複数の精製ステップに依存している。複数の合成ステップを使用すると、機能化されたナノ粒子の最終的な収量が減少する可能性もある。
【0008】
したがって、治療部分及び/または画像化部分とのコンジュゲーションのために活性化されたナノ粒子を生成するための改善されたプロセスが必要である。理想的には、活性化されたナノ粒子は、生体分子を含む溶液との直接インキュベーションなどの単純なアプローチを使用して、複数の機能性分子で機能化できるべきである。
【0009】
プラズマ重合(PP)は、技術的及び生物医学的用途における好ましい表面堆積プラットフォームとして確立されてきた。プラズマの反応環境は、モノマーを断片化し、イオン化してビルディングブロックにし、プラズマ境界に向かって重合及び拡散し、表面重合を引き起こす。最終的に、プラズマの外側へのこれらの反応性ブロックの拡散は、変調された特性を備えた薄膜の堆積をもたらす可能性がある。
【0010】
一部のPP反応では、薄膜の堆積(表面重合)がプラズマ塊状重合と同時に発生し、帯電したプラズマダスト粒子、つまりプラズマダストまたはダストプラズマが形成される。例えば、プラズマ中のアセチレンのイオン化は、凝集してプラズマボリューム内にナノサイズからミクロンサイズの帯電粒子を形成する炭素質ナノクラスターの連続形成を引き起こし、プラズマポリマーナノ粒子(PPN)の形成をもたらす。
【0011】
調整可能な物理的及び化学的特性を備えたPPNは、幅広いナノ医療の適用で使用するための新しいクラスのナノ粒子として機能する可能性があることが提唱されている。ダストプラズマにおけるナノ粒子のプラズマ重合は、実行可能な合成プラットフォームを提供する。ただし、臨床用途などでナノ医療を適用する場合、ナノ粒子は、機能化が容易な生体適合性材料で作成するべきである。
【0012】
最近、炭素系PPN(ナノP3)は、(Santos et al. 2018, ACS Applied Materials & Surfacesを参照)細胞毒性を誘導することなく生体機能カーゴを送達することができる汎用性ナノキャリアとして認識されている。ナノP3は、反応性であるナノP3の表面にて得られ、球状ナノ粒子に反応性の炭素クラスターのアセンブリを介してアセチレン系プラズマに形成されている。ラジカル及び機能性表面基は、水溶液中での単純なワンステップのインキュベーションにより、広範囲の機能性生体分子を容易に固定化する。
【0013】
プラズマ反応器のバルクで形成されたPPNは、技術的用途では望ましくない副産物と長い間考えられてきた。PPNの成長とそれに続く表面での堆積は、超小型コンポーネントの合成における汚染源を表す。したがって、ダストプラズマの分野における研究の大部分は、モデリングと実験ツールを組み合わせて、反応性プラズマにおけるダスト粒子の形成を理解し、粒子のダイナミクスを制御して反応器から消去または除去することを目的としている。
【0014】
この点に関して、PPNを除去するための一般的な戦略は、粒子の収集を可能にするために、例えば磁場を使用した、粒子のダイナミクスを操作するための外力の適用を伴う。しかし、このような収集方法は、ナノ粒子の収率が低い、PPNのサイズが多分散性である、または不可逆的な凝集を特徴とすることがよくある。さらに、これらは多くの場合、コストと設計の複雑さを増大させる特殊な機器(例えば、電源、真空フィードスルー)を備えた既存のプラズマチャンバの改変を必要とする。ナノ粒子の凝集を最小限に抑える高収率で効率的な収集戦略の発展はまだ報告されていない。
【0015】
したがって、ダストプラズマ中のナノ粒子のプラズマ重合によって形成されたPPNを収集するための改善されたプロセスが必要である。
【0016】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品などのいかなる説明も、これらの事項のいずれかもしくは全てが先行技術の基礎の一部を形成すること、または本出願の各請求項の優先日より前に存在していた本開示に関連する分野における共通の一般常識であることを承認するものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0017】
本開示の一態様によれば、プラズマ重合装置が提供され、この装置は、
反応ゾーン、
ガスの形態の少なくとも1つのモノマーを反応ゾーンに供給するための少なくとも1つのガス入口、
離間して配置され、反応ゾーンに電界を生成して、少なくとも1つのモノマーからプラズマポリマーナノ粒子材料を形成するように構成された第1の電極及び第2の電極、
反応ゾーンで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集するように構成された複数のコレクタであって、第2の電極に隣接して配置されている複数のコレクタ、及び
第2の電極に隣接して配置され、複数のコレクタを冷却するように構成された冷却装置を含む。
【0018】
本開示の別の態様によれば、プラズマ重合装置が提供され、この装置は、
反応ゾーン、
ガスの形態の少なくとも1つのモノマーを反応ゾーンに供給するための少なくとも1つのガス入口、
離間して配置され、反応ゾーンに電界を生成して、少なくとも1つのモノマーからプラズマポリマーナノ粒子材料を形成するように構成された第1の電極及び第2の電極、
反応ゾーンで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集するように構成された複数のコレクタであって、第2の電極に隣接して配置されている複数のコレクタ、及び
第1の電極と第2の電極との間に延びる閉じ込めグリッドを含む。
【0019】
本開示の別の態様では、プラズマポリマーナノ粒子材料を収集する方法が提供され、この方法は、
ガスの形態の少なくとも1つのモノマーを反応ゾーンに供給すること、
第1の電極及び第1の電極から離間して配置された第2の電極の間で、反応ゾーンに電界を生成して、少なくとも1つのモノマーからプラズマポリマーナノ粒子材料を形成すること、
第2の電極に隣接している複数のコレクタにおいて、反応ゾーンで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集すること、及び
第2の電極に隣接して配置される冷却装置を用いる複数のコレクタを冷却することを含む。
【0020】
本開示のさらに別の態様では、プラズマポリマーナノ粒子材料を収集する方法が提供され、この方法は、
ガスの形態の少なくとも1つのモノマーを反応ゾーンに供給すること、
第1の電極及び第1の電極から離間して配置された第2の電極の間で、反応ゾーンに電界を生成して、少なくとも1つのモノマーからプラズマポリマーナノ粒子材料を形成すること、
第1の電極と第2の電極との間に延びる閉じ込めグリッドを用いてプラズマを閉じ込めること、及び
第2の電極に隣接している複数のコレクタにおいて、反応ゾーンで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここで、本開示の実施形態が、図面を参照して、例としてのみ説明される。
【0022】
【
図1】
図1aは、本開示の一実施形態によるプラズマ重合(PP)装置の断面図を示す。
図1bは、
図1aのプラズマ重合(PP)装置の改変された部分の断面図を示す。
【0023】
【
図2a】本開示の別の実施形態によるプラズマ重合(PP)装置の断面図を示す。
【0024】
【
図3】プラズマプロセス入力パラメータ、及び
図1a、
図1b及び
図2のPP装置の冷却装置によって適用される冷却を制御するためのコントローラの電子部品の概略図を示す。
【0025】
【
図4】
図4aは、本開示の実施形態によるPP装置を使用する3次元コレクタ(複数のウェルを含む取り外し可能なウェルプレート)を使用する、ダストプラズマでのPPNの収集の概略図を示す。比較のために、従来式の2次元コレクタ(つまり、ウェルなし)を
図4bに示す。
【0026】
【
図5】平坦な2次元コレクタ(左)及びウェルタイプの3次元コレクタ(右)が存在する場合のPPNのダイナミクスの概略的な比較を示している。
【0027】
【
図6】
図6a及び
図6bは、異なるアスペクト比の、本開示の実施形態による複数のコレクタを使用するPPN凝集の概略的な比較を示し、粒子の凝集がより短いウェルで阻害されることを示している。
【0028】
【
図7】単一ペルチェ素子とカスケードに取り付けられた二重ペルチェ素子との両方、及びペルチェ素子に熱で結合された熱交換器に、熱で結合されたときの取り外し可能なプレート(ウェルコレクタ)で測定された温度プロファイルのプロットを示している。さらに、熱交換器によって蓄積された熱を放散するためにファンが使用されたときの、単一及び二重のペルチェ素子構成の温度安定性の比較が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ナノ粒子材料の製造は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2018/112543に詳細に記載されている、「ナノP3(nanoP3)」または「ナノP3(NanoP3)」、「ナノP3材料(nanoP3 material)」、または「ナノP3材料(NanoP3 material)」として本明細書に記載した。
【0030】
これらナノP3材料は、容易に官能化することができる汎用性と多機能性ナノキャリアのクラスとして作用することができる。ナノP3材料は、ナノP3材料の表面に拡散するナノP3材料の中に埋め込まれたラジカルとの反応を介して及び/またはナノP3材料またはそのコンジュゲートの表面に形成された部分/官能基との反応によって、広範囲の生体分子や薬物に結合できる。
【0031】
本明細書に開示されるプロセス、例えばプラズマベースのプロセスは、様々なナノ医療の用途のために複数の機能を統合することができる、有利で調整可能な物理的、化学的、及び形態学的特性を有するナノ粒子材料をより効果的に製造及び収集するために使用することができる。
【0032】
定義
本明細書全体において、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」のような変形例は、記載された要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップのグループの包含を意味するが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップのグループの除外を意味するものではないことが理解されよう。
【0033】
本明細書全体を通して、「から本質的になる」という用語は、特性に実質的に影響を及ぼさない要素を含み得るが、クレームされている組成物の特性に実質的に影響を与える要素を除外することを意図する。
【0034】
本明細書で提示される定義に関して、特に明記しない限り、または文脈から暗示されない限り、定義された用語及び句は、提示された意味を含む。別途明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語及び句は、その用語または句が関連技術の当業者により得ている意味を排除するものではない。定義は、特定の実施形態の説明を助けるために提示され、発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限されるので、特許請求された発明を限定することを意図するものではない。更に、別段文脈により要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0035】
本明細書全体を通して、本発明の様々な態様及び構成要素は、範囲の形式で提示することができる。範囲の形式は便宜上含まれているものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではない。したがって、範囲の説明は、特に明記されていない限り、すべての可能な副次的範囲とその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなすべきである。例えば、1~5などの範囲の記述は、整数が必要な場合や文脈から暗黙的に指定されている場合でなければ、1~3、1~4、1~5、2~4、2~5、3~5などの副次的範囲、ならびに、1、2、3、4、5、5.5、6などの記載された範囲内の個別及び部分的な数値を、具体的に開示しているとみなすべきである。これは、開示された範囲の幅に関係なく適用される。特定の値が必要な場合、これらは本明細書に示される。
【0036】
「約」
本明細書において、「約」という用語は、その用語に関連する任意の値(複数可)における10%の許容誤差を包含する。
【0037】
「炭化水素」
本明細書に開示される炭化水素モノマーは、水素原子及び炭素原子のみからなるモノマーであると理解される。炭化水素の例には、アルケン、アルキン、シクロアルケン、芳香族化合物、またはそれらの混合物が含まれる。
【0038】
「凝集体」
本明細書で使用される場合、別途記載されていない、または用いられている文脈から明白でなければ、「凝集体」という用語は、複数のナノ粒子ポリマーを含み、5nm~100μmの範囲のサイズ、例えば、約5nm~約500nmの範囲のサイズを有する粒子を意味するものとする。
【0039】
「コンジュゲート」
本明細書において、「コンジュゲート」という用語は、1つ以上の化合物をナノ粒子ポリマーまたはナノ粒子ポリマーを含む凝集体へ付着させることによって、形成される分子を指す。「1つ以上の化合物」は、本明細書で定義される第2の種とすることができる。付着は、共有結合または静電相互作用を介したものであってもよい。
【0040】
「不活性ガス」
「不活性ガス」という用語は、一般に、ナノ粒子ポリマーまたはその凝集体を調製するために使用されるものなど、一組の所与の条件下で活性化することができ、本明細書に記載されるように、1つ以上のモノマーと化学反応を受け得るガスを指すが、ただしこれはナノ粒子ポリマーまたはその凝集体に組み込まれていない。不活性ガスの例には、例えば、ヘリウム、ネオン、及びアルゴンが含まれる。
【0041】
「モノマー」
他に明記しない限り、「モノマー」という用語は、プラズマでの断片化及び反応プロセスによって生成可能なポリマーを、1つ以上の反応性官能基により形成するべく反応できるモノマー化合物を意味すると、理解される。
【0042】
「ナノP3」
他に指定されていない、または用いられている文脈から明白でない限り、「ナノP3」という用語は、100ミクロン未満のサイズを有するナノ粒子材料を指し、例えばナノP3は、約5~500nmのサイズを有することができる。文脈から明示または暗示されない限り、「ナノP3」という用語は、他に指定されていない、または用いられている文脈から明白でない限り、本明細書で定義される「ナノ粒子ポリマー」及び「凝集体」の両方を包含する。「ナノP3」という用語は、「ナノ粒子材料」と互換的に使用することができる。好ましい一実施形態では、ナノ粒子材料はプラズマポリマーを含む。プラズマポリマーは、プラズマ中の断片の縮合によって形成することができ、当該材料は、1つ以上の化合物、例えば、有機または有機金属種を含む1つ以上の「第2の種」を共有結合することができる。
【0043】
「ナノ粒子ポリマー」
本明細書において、「ナノ粒子ポリマー」という用語は、本明細書で定義されるモノマーで形成されたポリマーを指し、ナノ粒子ポリマーは、約1nm~約50nmの範囲の粒子サイズを有する。好ましい一実施形態では、ナノ粒子ポリマーは、プラズマでの断片の縮合によって形成され、当該材料は、有機または有機金属の種を含む1つ以上の化合物を共有結合することができる。
【0044】
「ポリマー」
「ポリマー」という用語は、重合のプロセスを通じて作成された、不均一であり得る、及び/または無秩序構造に配置可能な繰り返し構造単位からなる化合物または化合物の混合物を指す。本発明において有用な適切なポリマーは、全体を通して記載されている。一実施形態では、ポリマーは、繰り返し単位が比較的無秩序な構造に組み立てられているプラズマポリマーである。
【0045】
「プラズマ」
「プラズマ」という用語は、概して、イオン、電子、中性種、及び放射線の混合物を含む、(部分的に)イオン化されたガスを指す。本明細書で言及されるプラズマは、少なくとも1つのモノマーを含む。
【0046】
「プラズマポリマー」
本明細書において、「プラズマポリマー」は、1つ以上のモノマーを含む、プラズマから誘導されるポリマーである。プラズマはまた、1つ以上の反応性の非重合性(モノマーではない)ガス、及び/または1つ以上の不活性ガスを含み得る。
【0047】
「反応性ガス」
本明細書において、「反応性ガス」という用語は、概して、ナノ粒子ポリマーまたはその凝集体を調製するために使用されるものなど、一組の所与の条件下で活性化され、本明細書に記載の1つ以上のモノマーとの化学反応を経るガスを指す。
【0048】
モノマー
本明細書に記載のナノP3の材料は、1つ以上のモノマーから少なくとも部分的に誘導する(derive)ことができる。一実施形態では、1つ以上のモノマーは、ナノP3材料を形成するためにガスの形態で使用される。
【0049】
適切なモノマーの例は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2018/112543の18ページの26行目~21ページの1行目に記載されている。
【0050】
非重合性反応性ガス
示されているように、本明細書に記載のナノP3材料は、1つ以上のモノマー及び1つ以上の非重合性の反応性ガスから誘導することができる。一実施形態では、1つ以上の非重合性(モノマーではない)の反応性ガスが活性化され、1つ以上のモノマーと反応して、ナノP3を形成し得る。非重合性反応性ガスの断片は、ナノ粒子ポリマーまたはその凝集体に組み込まれ得る。
【0051】
適切な非重合性反応性ガスの例は、周期表の15族、16族、または17族のガスであり得る。例えば、非重合性反応性ガスは、窒素(N2)ガス、または酸素(O2)ガスであり得る。一例としての窒素は、生じるナノP3材料の疎水性の低減を確実にするのに特に適切であり得、これは、必要に応じて、水溶液中のナノP3材料のより良好な分散を可能にし得る。例えば、窒素が存在していることは、ナノ粒子ポリマーまたはナノP3材料のアミン、イミンまたはニトリル基、あるいはそれらの混合物の存在をもたらし得る。
【0052】
ナノP3
ナノP3材料は、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。一実施形態では、ナノP3材料はホモポリマーである。別の実施形態では、ナノP3材料はコポリマーである。
【0053】
一実施形態では、ナノP3は、本明細書に記載の1つ以上のモノマーを含むプラズマから誘導され、これらは最初はガスの形態で存在する。1つ以上の不活性ガス、例えば、ヘリウム、ネオンまたはアルゴンは、任意選択で、1つ以上のモノマーと共に、例えば、1つ以上の非重合性反応性ガスと組み合わせて存在し得る。
【0054】
適切なナノP3材料及び適切なナノP3材料を導出する方法の例は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2018/112543の21ページの2行目~28ページの12行目に記載されている。
【0055】
凝集体
凝集体はナノP3材料の製造時に、本明細書に記載のナノ粒子のポリマーから形成することができる。
【0056】
一実施形態では、凝集体は、約5nm~約100μmの範囲、例えば、約5nm~約500nmのサイズを有する。
【0057】
コンジュゲート
本明細書に記載のナノ粒子ポリマー、凝集体またはナノP3材料は、コンジュゲートを形成するために、1つ以上の化合物、例えば、有機化合物、有機金属化合物、または本明細書で定義される第2の種に結合することができる。
【0058】
適切なコンジュゲート及び適切なコンジュゲートを導出するための方法の詳細は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2018/112543の28ページの18行目~40ページの6行目に記載されている。
【0059】
医薬組成物
医薬組成物は、本明細書で定義されるナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲート、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤、または結合剤を含み得る。適切な医薬組成物及び適切な医薬組成物を導出するための方法の詳細は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2018/112543の40ページの7行目~44ページの26行目に記載されている。
【0060】
治療方法
疾患、障害、または状態の1つ以上の症状を患う、なり易い、または呈する対象を治療する方法は、本明細書で定義されるナノ粒子ポリマー、その凝集体またはコンジュゲート、あるいは本明細書で定義されているような医薬組成物を、対象に対して投与するステップを含み得る。本明細書に記載のナノ粒子ポリマー、凝集体またはコンジュゲートはまた、診断試験において使用することができる。
【0061】
治療及び診断試験の適切な方法の詳細は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2018/112543の45ページの1行目~48ページの10行目に記載されている。
【0062】
基板
本明細書で定義されるようなナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、基板に含まれ得る。
【0063】
適切な基板の詳細は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2018/112543の48ページの11行目~49ページの17行目に記載されている。
【0064】
ナノP
3粒子の生成
本開示の実施形態によるプラズマ重合(PP)装置100は、
図1aに示されている。PP装置100は、真空チャンバ101の内部に配置することができる。PP装置100は、ガスの形態の少なくとも1つのモノマー、及び任意選択で、1つ以上の非重合性の反応性ガスなどの1つ以上の追加のガスを、装置の反応ゾーン103に供給するための少なくとも1つのガス入口102を含む。装置100はまた、第1の電極104、反応ゾーン103の対向する側にある第1の電極104から離間された第2の電極105、第2の電極105に隣接して配置された複数のコレクタ106、及び第2の電極105に隣接して配置された冷却装置107を含む。複数のコレクタ106は、第2の電極105と接触して、近接して、または少なくとも部分的に内側にさえも位置付けることによって、第2の電極105に隣接して配置することができる。冷却装置107は、第2の電極105と接触して、近接して、または少なくとも部分的に内側にさえも位置付けることによって、第2の電極105に隣接して配置することができる。
【0065】
PP装置100は、ナノ粒子及びその凝集体を含む、反応性プラズマにおいて形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集するために使用することができる。例えば、以下でより詳細に論じられるように、ナノ粒子ポリマー及びその凝集体は、PP装置100を使用して形成することができ、ガスの形態の少なくとも1つのモノマーを反応ゾーン103に供給すること、第1の電極104に電力を供給して、反応ゾーンでプラズマを生成し、少なくとも1つのモノマーからプラズマポリマーナノ粒子を形成すること、及び複数のコレクタ106を使用して、反応ゾーン103で形成されたナノ粒子を収集することを含む方法で形成することができる。
【0066】
示されるように、少なくとも1つのモノマーがガスの形態で反応ゾーン103に提供される。これに関して、モノマーを含む少なくとも1つのガスを反応ゾーン103に供給することができる。供給される少なくとも1つのガスは、少なくとも1つの有機(すなわち、炭素を含み、二酸化炭素ではない)ガスを含み得る。さらに、供給される少なくとも1つのガスは、少なくとも1つの非重合性反応性ガス及び/または少なくとも1つの不活性ガスを含み得る。真空チャンバに供給される少なくとも1つのガスは、絶対圧が約1~約1500Pa、例えば、約6Pa~約67Paの範囲であり得る。
【0067】
非重合性反応性ガスはモノマーではない場合もある。非重合性反応性ガスは、窒素(N2)ガスであり得る。非重合性反応性ガスは酸素(O2)ガスであり得る。非重合性反応性ガスは空気であり得る。非重合性反応性ガスは、ナノ粒子材料に反応性であるガスであり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の非重合性反応性ガスを供給することができる。2つ以上の非重合性反応性ガスは、ガスの混合物、例えば、アルゴン、窒素及びアセチレン(炭素前駆体)のガスの混合物であり得る。2つ以上の非重合性反応性ガスのガス成分は、反応ゾーン103に個別に供給することができる。2つ以上の非重合性反応性ガスのガス成分は、反応ゾーン103に事前に調製された混合物として供給することができる。
【0068】
反応ゾーン103に供給可能なガスの混合物に非重合性反応性ガスを供給することは、水溶液に分散できず、ナノ粒子ポリマーまたはナノ粒子ポリマーを含む凝集体への1つ以上の化合物の付着によってコンジュゲートを形成できない、疎水性ナノ粒子ポリマー及びその凝集体の形成を低減するのに役立ち得る。
【0069】
有機ガスは炭化水素を含み得る。有機ガスは、炭素-炭素二重結合及び/または炭素-炭素三重結合を含み得る。有機ガスは、アルケンまたはアルキンであり得る。有機ガスは、そのようなガスの混合物であり得る。有機ガスは、本開示によるプロセスの条件下で重合可能であり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の有機ガスを供給することができる。
【0070】
一実施形態では、少なくとも1つのガスは、2つ以上のガスの混合物を含む。混合物の1つのガスは、ナノ粒子ポリマーまたはその凝集体に組み込まれていない不活性ガスであり得る。少なくとも1つのガスは、真空チャンバ101に導入される前に個々の構成ガスから調製することができるか、さもなければ、ガスの個々の成分のガスは、真空チャンバ101に別々に導入することができる。後者の場合、少なくとも1つのガスの構成ガスの比率は、異なる成分の異なる流量を制御することによって制御することができる。ガスの少なくとも1つが3つ以上の個別の成分を含む場合、反応ゾーン103に導入されるガスの少なくとも1つはそれ自体が混合物であり得るか、さもなければ、それぞれの別個の構成ガスは個別に導入することができる。構成ガスは、有機ガスを含み、また、1つ以上のキャリアガス、1つ以上の非重合性ガス、及び任意選択で他の構成ガスを含み得る。
【0071】
図1aに示されるように、PP装置100の第1の電極104及び第2の電極105は、離間して配置され、反応ゾーン103に電界を生成して、ナノ粒子及び/またはその凝集体などのプラズマポリマーナノ粒子材料を、ガスの形態の少なくとも1つのモノマーから形成するように構成される。第1の電極104と第2の電極105との間の距離は、例えば、約5cm~約60cmであり得る。いくつかの実施形態では、装置100は、第1及び/または第2の電極104、105を動かして、第1及び第2の電極104、105の間の距離を変えることができる直線運動装置を備え得る。
【0072】
第1の電極104は、例えば、約4cm~約19.9cmの半径、及び約0.5cm~約5cmの深さを有し得る。第1の電極104及び/または第2の電極105は、例えば、ステンレス鋼(例えば、304または316L)、アルミニウム、またはグラファイトから作製することができる。
【0073】
電力は、第1の電極104、第2の電極105、または両方の電極に印加することができる。いくつかの実施形態では、第1の電極104は電源に接続されており、第2の電極105は電気的に絶縁させて、反応ゾーン103の放電における電極の充電によって決定される浮遊電位を獲得することができるか、またはパルス高電圧電源に接続させてもよい。
【0074】
第1の電極104に印加される電力は、反応ゾーン103でプラズマ放電を生成及び維持するのに十分であるべきである。それは、ガス、例えば炭化水素ガス、反応性非重合性ガス、及び窒素などの追加のガスの混合物を断片化、解離、またはイオン化するのに十分であるべきで、その断片は、得られるポリマー材料に組み込まれ得る。ガスの解離及び断片化に起因する反応ゾーン103のプラズマ放電においてラジカル種を生成するのに十分であるべきである。反応ゾーン103でのナノ粒子材料の形成中に、反応ゾーン103でプラズマ放電を維持するのに十分であるべきである。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1の電極104に接続された電源は、第1の電極104に無線周波数(rf)、またはDC、またはパルスの無線周波数、またはパルスのDC電力を供給して、反応ゾーン103内部でプラズマを生成及び維持することができる。例えば、プラズマ生成中に、rf周波数は、約1~約200MHzで、約5~約500または約5~3000Wの電力で第1の電極104に供給することができる。別の例として、パルスバイアス電圧は、約1Hz~約50kHzの周波数、及び約1~約150マイクロ秒のパルス持続時間で第1の電極104に供給することができる。パルスのオフの時間とオンの時間との間の比率は、約10(すなわち、10:1)~約20までになり得る。バイアス電圧は、約-1000V~約1000Vであり得る。いくつかの実施形態では、バイアス電圧はゼロ以外である。したがって、正または負のいずれかになり得て、いずれの場合も絶対値は10~1000になり得る。
【0076】
プラズマ生成中、反応ゾーン103または真空チャンバ101内部の圧力は、約7.5mTorr~約115mTorr(絶対圧が約1~約1500Pa)または約7.5mTorr~約760mTorr(絶対圧が約1~約101325Pa)の間であり得る。所望の圧力を達成するために、真空チャンバ101は、最初に、この圧力より低く、例えば、約10mPa未満に排気することができる。次に、ガスまたはその個々の構成ガスを、ポンプ速度と共に調整される十分な速度で、ガス入口102を介して真空チャンバ101及び反応ゾーン103にブリードさせて、反応ゾーン103における所望の圧力及び所望のモノマー滞留時間を達成することを可能にすることによって、所望の圧力が成し遂げられる。反応ゾーン103でプラズマに結び付けられる、ガス分子の滞留時間、圧力、ガスの流量、及び電力は、プラズマのモノマー及び他のガス分子の断片化の程度を決める。必要な流量は、真空チャンバ101のサイズに依拠することが理解されよう。しかし、真空チャンバ101内部の圧力を監視することによって(例えば、真空チャンバ101の内部空間に結び付けられた圧力計によって)、流量(複数可)及びポンプ速度を調整して、望ましい圧力とガス滞留時間を達成することが可能であり得る。少なくとも1つのガスの流量(またはすべてのガスの流量の合計)は、約0.1~約4000sccm(標準立方センチメートル/分)であり得る。次に、キャリア及び反応性非重合性ガス(複数可)の流量を調整して、真空チャンバ101内部の所望の圧力及び反応ゾーン103内部の滞留時間を達成することができる。
【0077】
反応ゾーン103で形成されるプラズマポリマーナノ粒子材料の特に所望の特性に従って、流量、圧力、及び電力のいずれかを変えることができることが理解されよう。したがって、流量、圧力、及び電力のそれぞれについて本明細書に例示されている数値または範囲のいずれかを、任意の組み合わせで一緒に使用することができる。例えば、一実施形態では、約0.5~約10sccmの流量、約20Paの圧力、及び約50W~約100Wの電力を使用することができる。他のすべての可能な組み合わせが本明細書で想定されている。
【0078】
本開示の一実施形態では、第1の電極104は、無線周波数(rf)電源に接続され、第2の電極105は、浮遊し、当該反応ゾーン103の放電におけるその自発的充電によって決まる浮遊電位を達成することができる。
【0079】
上記のように反応性プラズマで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料は、複数のコレクタを使用して収集することができる。複数のコレクタ106のうちの各コレクタ1061は、互いに固定されていてもよく、または独立して移動可能であってもよい。各コレクタは、3次元形状であり得、凹部または受容部分を画定し得る。複数のコレクタ106は、例えば、取り外し可能なプレートに含まれるか、またはそれに配置されることによって、反応ゾーン103及び真空チャンバ101から取り外し可能であり得る。
図1aを参照すると、この実施形態では、複数のコレクタ106は、第1の電極104と第2の電極105との間に配置され、反応ゾーン103で形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料を収集するように構成される。
【0080】
複数のコレクタ106のうちのコレクタ1061が互いに固定されているか、そうでなければ、複数のコレクタ106は、円形、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、六角形など、または実質的に円形、実質的に正方形、実質的に楕円形、実質的に長方形、実質的に三角形、実質的に五角形、実質的に六角形などの外形を有する構造を有し得る。構造は、n角形ベースであり得る。例としては、長方形、正方形(n=4)、平行四辺形(Σ2ni=4、i=i1、2)、五角形(n=5)、六角形(n=5)などが挙げられる。等辺の長さnの範囲は約1cm~約50cmであり得る。例えば、複数のコレクタ106は、寸法が127.89×85.60mm(すなわち、全体の面積が108cm2、辺n1=127.89mm、及びn2=85.60mm)の長方形の組織培養プレートに含まれ得る。
【0081】
一実施形態では、複数のコレクタ106は、例えば
図1aに示されるように、複数のバイアル1061を含む。あるいは、またはさらに、例えば、
図1aを参照して上で説明したものと類似した機能を果たす本開示の別の実施形態によるプラズマ重合(PP)装置200を示す
図2aに示されるように、複数のコレクタ206は、複数のウェル2061を含み得る。例えば、複数のコレクタ206は、コレクタ(ウェル)プレート206に形成された複数のウェル2061を含み得、そのコレクタプレート206は、反応ゾーン203から取り外し可能であり得る。
【0082】
それぞれの個々のコレクタ1061、2061の形状及びサイズは、バイアル、ウェル、またはその他によって提供されるかどうかにかかわらず、粒子の凝集を制御するので重要である。各コレクタ(または少なくともその凹部または受容部分)のサイズ及び形状は、ナノ粒子材料の所望のサイズ及び収率に基づいて選択することができる。本開示のいくつかの態様において、コレクタ、例えば、バイアル及び/またはウェル(または少なくとも凹部またはその受容部分)は、それぞれ、約2~約20mmの深さを有し得る。場合によっては、バイアル及び/またはウェルはそれぞれ20mmより深くてもよい。例として、バイアルまたはウェルが略円形である場合、1つ以上のバイアルまたはウェルの半径は、約1mm~約50mmであり得る。各バイアルまたはウェルの半径に対する高さの比率は、ナノ粒子材料の所望のサイズ及び収量に応じて調整することができる。一例では、ウェルの半径に対する高さの比は、約5:1~0.1:1である。
【0083】
複数の円形ウェル2061を有する
図2に示される装置では、各ウェル2061は、約8.00mm~約17.40mmの高さを有し得る。各ウェル2061は、約3.43mm~約8.13mmの半径を有し得る。例えば、ウェルは高さ=17.40で半径=8.13mm、または高さ=10.67で半径=3.43mm、または、高さ=8.00で半径=7.00mmがあり得る。
【0084】
複数のコレクタ106、206は、密封可能であり得る。したがって、バイアルまたはウェル1061、2061は、個別にまたは集合的に密封可能であり得る。各バイアルまたはウェルをプラズマに曝露すると効果的に滅菌されるため、ナノ粒子材料を各バイアルまたはウェルにおいて直接収集すると、バイアルまたはウェルを単一のステップで収集及び滅菌する簡便な方法を提供することができる。コレクタは、非導電性材料から形成されていてもよいし、導電性材料から形成されていてもよい。コレクタは、プラズマに耐えることができる材料から形成されていてもよい。コレクタは、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ポリスチレンなどの低脱気ポリマー、高密度ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンを含む)、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセチレン、ポリプロピレン、ガラス(シリカ-二酸化ケイ素)、石英、及び/またはシリコン(半導電性結晶性ウェーハ)から形成することが可能である。
【0085】
装置100、200で形成されたナノ粒子は、反応ゾーン103、203内部の温度勾配のために熱泳動力を経る。熱泳動力は、プラズマ/ガスの種と高温の領域の粒子との間のより高い運動量の効率から生じる。本発明者らは、温度勾配を有利に使用して、反応ゾーン103の粒子を、より高温の領域からより低温の領域に押し出すことができると判断した。特に、温度勾配を調整して、複数のコレクタ106、206に向かいその中に入る粒子の動きを制御することができる。本実施形態では、適切な温度勾配は、複数のコレクタ106、206を冷却することによって生成される。複数のコレクタ106、206を、反応ゾーン103、203のプラズマ/ガスの温度よりも著しく低い温度に冷却することによって、大きな温度勾配を得ることができる。十分に大きな温度勾配の場合、熱泳動力は、粒子が受けるイオン及びガスの引き込み力に勝っている可能性がある。最終的に、これは、複数のコレクタ106、206においてより高いナノ粒子の収量を提供することができ、収集可能な粒子サイズの範囲を拡大することができる。例えば、より広い範囲の粒子サイズで、粒子を複数のコレクタに向かって押す正味の引き込み力(つまり、ガスの引き込み、イオンの引き込み、及び熱泳動力の合計)を使用可能にして、閉じ込められている任意の静電力を上回ることができる。
【0086】
図1を参照すると、冷却は、例えば、複数のコレクタ106を冷却装置107に熱で結合することによって達成することができ、例えば、複数のコレクタまたは複数のコレクタを含む他の構造物の1つ以上の表面を、冷却装置107の冷却面と直接接触させるか、または熱伝達媒体を介して接触させて配置することによって、達成することができる。冷却装置107は、単一の冷却装置またはアレイ、及び/または冷却装置のカスケード、例えば熱電半導体装置、例えば1つ以上のペルチェ半導体素子を備え得る。冷却装置107は、第1の電極104と第2の電極105との間に配置することができる。冷却装置107は、複数のコレクタ106と第2の電極107との間に配置することができる。冷却装置107は、反応ゾーン103でのナノ粒子材料の合成中に、各コレクタ1061の少なくとも一部をプラズマの温度よりも低く冷却することが可能であり得る。冷却装置107による冷却は、各コレクタ1061の壁を冷却することができる。
【0087】
一実施形態では、複数のコレクタ106と冷却装置107との間の熱結合は、複数のコレクタ106と冷却装置107との間に配置された真空適合性の高熱伝導率熱ペーストまたはパッドを介して達成することができる。冷却装置107の冷却面の面積は、冷却装置107に結合された複数のコレクタ106の表面の面積と同じであり得る。
【0088】
また、複数の冷却装置が、例えば、アレイまたはカスケードで設けられる場合、隣接する冷却装置間の熱結合が、それらの間の効率的な熱伝達を確実にするために設けられ得る。冷却装置アレイの間の結合はまた、真空適合性の高熱伝導率(例えば、3W/mK、6W/mK、12W/mKまたはそれより高い)熱ペーストまたはパッドを介して達成することができる。
【0089】
示されているように、冷却装置107は、少なくとも1つのペルチェ素子を含み得る。場合によっては、最大の市販のペルチェ素子の表面積は、冷却される複数のコレクタの表面積よりも小さい場合がある(例えば、100×100mm)。この状況では、ペルチェ素子のアレイを使用して、コレクタ全体に均一な冷却を実現できる。
【0090】
ペルチェ素子は、例えば、約2V~30Vの間の電圧の範囲で動作し得、例えば、約2A~40Aの間の総電流を引き出すことができる。ペルチェ素子の「加温側」と「冷却側」の最大の温度差は、1℃~80℃の範囲であり得る。カスケードに積み重ねられたペルチェ素子の場合、下部素子(複数のコレクタから最も遠いもの)へ印加する電圧は、上部素子(複数のコレクタに最も近いもの)よりも高くてもよい。2つの素子がカスケードに積み重ねられる一実施形態では、下部素子に印加される電圧は12Vであり得、上部素子に印加される電圧は5Vであり得る。別の実施形態では、3つの素子がカスケードに積み重ねられ、変更された冷却装置に関する
図1aの装置100の一部を示す
図1bで表されているように、下部素子107aに印加される電圧は12Vであり得、中央素子107bに印加される電圧は5Vであり得、上部素子107cに印加される電圧は3.3Vであり得る。
【0091】
図2a及び2bを参照すると、一実施形態では、冷却装置207は、コレクタプレート206の背面に熱で結合されたペルチェ装置などの熱電半導体装置のアレイであり得、コレクタプレートは、複数のウェル2061を備える。コレクタプレート206に隣接し、それに面する冷却装置207の冷却側2071は、コレクタプレート206を冷却する。コレクタプレート206の温度は、冷却装置207の反対側の加温側2072に効率的な熱放散をもたらすことによって安定化され、一定に維持することができる。冷却装置201の加温側2072によって生成された熱の効率的な放散は、冷却装置207と熱で結合可能な熱交換器201を用いて達成することができる。熱交換器201は、例えば、
図2a及び2bに示されるように、ヒートシンクなどのパッシブな部品を備えることができる。ヒートシンクは、例えば、複数のフィン2011を含むことにより、大きな表面積を含み得る。
【0092】
追加的または代替的に、熱交換器は、熱伝達流体(例えば、水、液体窒素、ヘリウム)を、冷却装置207の加温側2072と接触する金属パイプ(例えば、銅またはステンレス鋼で形成される)を通して絶えず流す、閉じた冷却ループなどのアクティブな構成要素を含み得る。
【0093】
追加的または代替的に、ヒートシンクは、熱放散を強化するためのアクティブな構成要素、例えば、ファン及び/または銅のヒートパイプを含み得る。一実施形態では、例として、ヒートシンクの延長部分は、装置200が配置されている真空チャンバの外側に延長するように構成される。ファンは、真空チャンバの外側に延びるヒートシンクの部分に結合することができる。
【0094】
図2に示されるように、いくつかの実施形態では、第2の電極205は、以下の、冷却装置207、コレクタプレート206、及び熱交換器201のうちの1つ以上が少なくとも部分的に受け入れられる凹部2051を備える。例えば、
図2aに示される実施形態によれば、少なくとも冷却装置207は、凹部2051に完全に収容することができる。コレクタプレート206を少なくとも部分的に受け入れるために、凹部は片側で開いていてもよい。
【0095】
図2aに示されるように、本開示によるPP装置200は、閉じ込めグリッド202などの閉じ込め手段をさらに含み得る。閉じ込めグリッド202は、第1の電極204と第2の電極205との間に延在することができる。閉じ込めグリッド202は、接地されるか、またはプラズマへの曝露時に閉じ込めグリッドの充電によって決まる電位を獲得することを可能にすることができる。これに関して、またはそうでなければ、閉じ込めグリッド202は、第3の電極を備えるとみなすことができる。閉じ込めグリッド202は、電界を閉じ込めることによって、第1の電極204と複数のコレクタ206との間にプラズマを実質的に閉じ込めることができる。閉じ込めグリッド202は、プラズマの横方向の膨張及び周囲の真空チャンバの壁への拡散を阻害し得る。いくつかの実施形態では、閉じ込めグリッドはまた、反応ゾーン203を閉じ込め及び/または画定することができる。プラズマにおいて形成されたナノ粒子材料は、反応ゾーン203の正のプラズマ電位によって閉じ込められるので、粒子損失は、閉じ込めグリッド203によって画定される境界内に反応ゾーン203(及び最終的にはプラズマ及びナノ粒子材料)を閉じ込めることによって大幅に抑制することができる。
【0096】
閉じ込めグリッド203は、例えば、
図2aに示されるように、複数の開口部2021を備えたメッシュを含み得る。メッシュの各開口部は、例えば、約50μm~5mmの間の最大寸法を有し得る。例のみとして、閉じ込めグリッド203のメッシュの開口部2021は、実質的に円形、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、六角形であり得る。組み合わせたとき、開口部は、例えば、円形、長方形、ハニカム、または三角形メッシュの閉じ込め構造を設けることができる。各開口部2021は、形状及び/またはサイズが均一であり得る。あるいは、異なる形状及び/またはサイズの開口部を備えることができる。
【0097】
閉じ込めグリッド203は、導電性または非導電性材料から形成されていてもよい。閉じ込めグリッド203は、プラズマに耐えることができる材料から形成されていてもよい。閉じ込めグリッド203は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、及び/または銅から形成されていてもよい。閉じ込めグリッド203は、管状または部分的に管状である全体的な構造を有し得る。閉じ込めグリッド203の断面、例えば、第1及び第2の電極204、205の間に延びる軸に垂直な平面を横切るその幅方向の断面は、実質的に円形、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、六角形であり得る。例えば、
図2a及び2bから明らかなように、断面は円形であり、したがって、閉じ込めグリッド203は、実質的に円筒形の構造を有する。
【0098】
閉じ込めグリッド203は、約5cm~約20cmの最大幅を有し得る。閉じ込めグリッド203は、第1及び/または第2の電極204、205の最大幅と実質的に同じかそれよりも大きい最大幅を有し得る。
【0099】
第1及び第2の電極204、205の間に延びる閉じ込めグリッド203の長さは、例えば、約3cm~約30cmであり得る。閉じ込めグリッド203は、第1及び第2の電極204、205との間の距離と実質的に同じかそれよりも長い長さを有し得る。
【0100】
本明細書に記載の構成は、PP装置100、200が、反応性プラズマで形成されたプラズマポリマーナノ粒子材料の収集を強化することを可能にし得る。一例として、プロセス収率は、複数のコレクタ106、206が冷却装置107、207によって冷却されるときの熱泳動力の増加によって高めることができ、反応ゾーン103、203において複数のコレクタ106、206に向く正味の引き込み力をより多くの粒子が経ることになる。収率の向上は、閉じ込めグリッド202を使用して反応ゾーン103、203のプラズマ境界を閉じ込めることによってさらに実現することができる。
【0101】
図1及び
図2には示されていないが、本開示によるPP装置100、200は、冷却装置107、207によって適用される冷却を制御するためのコントローラ310を備え得る。冷却を制御することにより、コントローラは、次に、複数のコレクタ106、206によって収集された粒子の収量及び/または特性を制御することができる。
【0102】
一例では、
図3に示されるように、コントローラ301は、電源302によって冷却装置107、207に供給される電力(例えば、電圧)を調整することによって、冷却装置107、207によって適用される冷却の程度を制御することができる。コントローラ301は、ユーザインターフェース303からの入力に基づいて、及び/または粒子センサ304からの入力に基づいて、及び/または温度測定装置305からの入力に基づいて、及び/またはプラズマ診断装置306からの入力に基づいて、電力を調整することができる。
【0103】
ユーザインターフェース303は、1つ以上のボタン、ダイヤル、キーボード、タッチセンシティブスクリーン、またはその他を含み得、それを通して、ユーザは、所望の粒子特性を選択し得る。
【0104】
粒子センサ304は、例えば、プラズマ、反応ゾーン103、203、及び/または複数のコレクタ106、206に位置する粒子をスキャンするスキャナを含み得る。粒子センサ304は、例えば、ナノ粒子材料に散乱されたレーザー源から放出された光の強度及び空間分布を検出するカメラを含み得る。温度測定装置305は、例えば、複数のコレクタ106、206または個々のウェル/バイアル1061、2061と接触している熱電対を含み得る。プラズマ診断装置306は、反応ゾーンの異なる位置、例えば複数のコレクタ106、206の近くで、電子の温度及び密度などの関連するプラズマ出力パラメータを測定するためのラングミュアプローブのアレイを含み得る。追加的または代替的に、プラズマ診断装置306は、反応ゾーン103、203内の異なる位置でプラズマによって放出された放射線を収集するために、強化電荷結合装置画像センサ及び光ファイバーに結合された光学分光計(またはモノクロメーター)を含み得る。放電発光強度は、例えば、PCT公開番号WO2018/112543の72ページの19行目~28行目、79ページの3行目~80ページの27行目、及び
図5、
図6、
図11~15、
図17及び
図18に記載されているように、反応チャンバのナノ粒子材料の形成、成長、及び除去中に振動する可能性がある。振動の周期と相対強度は、ナノ粒子の化学的性質、サイズ、及び収率に関連している。したがって、粒子センサ304、温度測定装置305、及び/またはプラズマ診断装置306は、例えば装置を使用して生成された粒子の現在の粒子特性を計算するために使用することができ、現在の粒子特性と所望の粒子特性との間の何らかの差異に応じて、コントローラ301は、冷却、プラズマに結合される電力、モノマー及び/または他のガスの流量、ならびに/あるいは反応チャンバ内の圧力を、例えば自動的に調整することができる。これに関して、装置は、感知された粒子特性、プラズマ診断、及び/または複数のコレクタの温度測定に基づいて、プラズマ入力パラメータ(結合された電力、ガスの流量及び/または放電圧力など)を調整して粒子特性を調整し、及び/または冷却制御を使用して粒子の収量及び熱泳動力を調整するフィードバックループを含み得る。
【0105】
粒子特性は、ナノ粒子またはナノ粒子の凝集体の平均または平均サイズ、ナノ粒子またはナノ粒子の凝集体の数、またはナノ粒子またはナノ粒子の凝集体の化学などを、個別に含めることができる。
【0106】
コントローラ301は、プロセッサを含み得る。本明細書に開示されるプロセッサは、装置及び方法の1つ以上の機能を制御するためのいくつかの制御または処理モジュールを含み得、また、データ、例えば、スキャンデータ、所望の粒子特性またはその他を記憶するための1つ以上の記憶素子を含み得る。モジュール及び記憶素子は、1つ以上の処理装置及び1つ以上のデータ記憶装置を使用して実装することができ、これらのモジュール及び/または記憶装置は、1つの場所にあるか、または複数の場所に分散され、1つ以上の通信リンクによって相互接続することができる。使用される処理装置は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、携帯情報端末、及び本開示による機能を実行するために特別に製造された装置を含む他のタイプの処理装置に配置することができる。
【0107】
さらに、処理モジュールは、コンピュータプログラムまたはプログラム命令を含むプログラムコードによって実装することができる。コンピュータプログラム命令は、ソースコード、オブジェクトコード、マシンコード、またはプロセッサに説明されたステップを実行させるように動作可能な他の任意の格納されたデータを含むことができる。コンピュータプログラムは、コンパイル言語またはインタプリタ言語を含むいずれかの形式のプログラミング言語で記述されてもよく、スタンドアロンプログラム若しくはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピューティング環境における使用に適切な他のユニットとして含む、いずれかの形式において開発されてもよい。データ記憶装置(複数可)は、揮発性(例えば、RAM)及び/または不揮発性(例えば、ROM、ディスク)メモリ、またはその他などの適切なコンピュータ可読媒体を含み得る。
【実施例】
【0108】
実施例1-コレクタの形状が粒子の凝集を制御する
C
2H
2/N
2/Arの容量結合した無線周波数ダストプラズマにおけるプラズマポリマーナノ粒子またはナノ粒子材料(PPN)の収集を例示するために、取り外し可能なウェルプレートに含まれる複数のウェルを使用した(PCT公開番号WO2018/112543に記載されているものに従った)。ウェルプレートを浮遊基板ホルダー(第2の下部電極)の上部に配置して、各ウェルの境界内にPPNを閉じ込めた(
図4a)。比較のために、
図4bに示すように、ウェルのないステンレス鋼(SS)シートでも実験を行い、プラズマポリマーコーティングの堆積において広く採用されている従来式の平坦な(2次元)基板形状で得られたサンプルと直接比較できるようにした。
図4bに示すように、従来式の2次元形状(ウェルなし)では、通常、薄膜コーティングの形でプラズマポリマー材料が生成される(例えば、Santos et al. 2016, ACS Applied Materials & Surfacesを参照)。3次元ウェルプレートコレクタの使用は、従来式の2次元コレクタと比較して、大幅なPPNの収量の増加を達成することが示され、ウェルプレートコレクタのウェルアスペクト比はまたPPN凝集、サイズ、及び多分散性インデックスを調節することが示されている(PCT公開番号WO2018/112543を参照)。異なるウェルプレートの収集効率は、最初に、8.5cmx12.7cmのポリスチレン組織培養プレートを使用して例示されているが、プレートは、4行(A~D)x6列(1~6)のウェルマトリックスに分散されている24のウェルを含んでいる。各ウェルは、深さが1.7cm、表面積が2cm
2であった。ウェルプレートをダストプラズマに7分間曝すと(5回の完全なPPN成長サイクルに対応)、粉末状の茶色の物質が堆積することにより、プレートの外観に大きな変化が生じた。合成されたままのナノ粒子の高解像度の二次電子画像が撮影された。走査型電子顕微鏡(SEM)を使用してサンプルを画像化する目的で、プラズマは、複数世代のナノ粒子の重ね合わせを回避するために、単一の成長サイクル(つまり、80秒)で実行されるように設定された。得られたSS表面は、カリフラワー様の表面のトポグラフィーを特徴とする多数の球状ナノ粒子で覆われていた。ナノ粒子はシート全体に均一に分布し、シート表面の29%を覆い、ほとんどが3~20までの粒子の集合によって形成された凝集体に配置されていた。興味深いことに、プレートコレクタの内側に配置された表面ではコーティングの形成は認められず、ウェルの底で表面の重合が起こらないことを示唆している。したがって、この収集方法により、コーティングのない純粋なナノ粒子のサンプルが得られた。対照的に、プラズマポリマーのコーティングは、通常(例えば、Santos et al. 2016, ACS Applied Materials & Surfacesを参照)、平坦な構成(つまりプレートコレクタなし)で基板ホルダーに配置されたSSシート上で同じ放電パラメータの下で取得される。プラズマからの活性種の拡散及びその後の表面の重合は、基板での均一な金色のコーティングをもたらした。コーティングの形態は、表面プラズマ重合が局所的に島状に起こり、その後融合して下にある基板をコンフォーマルに覆うことを示唆した。平坦な基板へのナノ粒子の堆積は事実上無視でき、表面の1%未満しか覆っていない。
【0109】
合成中にコレクタウェルの外側と内側のPPNに作用していると理解される力を
図5に示す。平坦な2次元コレクタ(
図5の左側)が存在するPPNの場合、PPNは平坦な基板の上のプラズマシースの近くの垂直な平衡する位置で浮上する。チャンバの壁に向かうイオンフラックスによる正味のイオンの引き込み力(水平成分による)は、粒子を基板領域の外側に引き込み、その結果、粒子数の少ないコーティングが堆積する。対照的に、ウェルタイプの3D基板、例えばウェルプレート(
図5の右側を参照)が存在するPPNの場合、プラズマの膨張によりPPNがウェル内に引き込まれる。正味の引き込み力(垂直、下向きの成分による)は、トラップされた粒子をウェルの底に向かって引く。ウェルの底にコーティングは堆積しない。
【0110】
図6は、各バイアルまたはウェルの半径(r)に対する高さ(h)の比率が、PPNの凝集を調整する各ウェル内のプラズマの分布にどのように影響するかを示している。より高いウェル(
図6a)では、プラズマはウェルの全長を拡張できず、PPN粒子は、プラズマ領域の外側のウェルの底に向かって継続的に引き込まれるため、表面の電荷が減少することに起因して、凝集する。プラズマがウェルの高さを通して拡張できるため、ウェルの長さが減少している(つまり、ウェルが短い)とき、PPN粒子の凝集が大幅に抑制される(
図6b)。したがって、コレクタの寸法は、好ましいサイズのナノ粒子及び凝集体を生成するために変えることができる。
【0111】
実施例2-3Dのマルチコレクタ、プレートを使用してナノ粒子の収量を増やすための冷却装置
プラズマポリマーナノ粒子材料またはナノ粒子(PPN)の収集は、概して
図1a、
図1b、
図2a及び
図2bを参照して本明細書に記載の実施形態に従って、アクティブな冷却装置を追加したことを除いて、実施例1と同様の方法で実施された。
【0112】
プラズマ中のPPNは、熱泳動、つまり、ガスの中のナノ粒子が、プラズマ/ガスの種と高温領域の粒子との間のより良好な運動量効率から生じる熱泳動力(Ft)に対して異なる応答を示す現象を示す可能性がある。
【0113】
ウェルプレートを、異なる熱交換器の構成と共に、単一のペルチェ素子と、カスケード構成(互いに積み重ねられている)において取り付けられた2つのペルチェ素子とを含む異なる構成のペルチェ素子に、熱で結合することにより、異なる温度勾配が達成された。
【0114】
図7は、単一のペルチェ素子と、カスケードに取り付けられた二重のペルチェ素子との両方を使用してプレートの表面で測定された様々な温度プロファイルを示している。ペルチェ素子(複数可)に熱で結合された熱交換器には、熱の放散を助けるために銅製のヒートパイプが装備されていた。ペルチェ素子(単一構成)に印加される電圧は12Vで、最大電流は10Aであった。二重カスケード構成で上部のペルチェ素子(ウェルコレクタと熱で結合)に印加される電圧は5Vで、合計で電流は4Aで、二重カスケード構成で下部のペルチェ素子(熱交換器と熱で結合)に印加される電圧は12Vで、最大電流は10Aであった。
【0115】
単一の構成を使用すると、ウェルの底で測定された温度は、ペルチェ素子をアクティブにしてから約60秒後に最低-11℃に達する前、平均速度-0.57℃/秒で低下した。次に、ペルチェ素子の「加温側」によって生成された熱が熱交換器の熱放散能力を超えたため、温度は0.1℃/秒の一定速度で上昇した。二重カスケード構成を使用すると、最低温度はまた約60秒に達成されたが、-27.4℃で大幅に低くなり、平均温度降下は-0.84℃/秒を示した。温度の上昇は、単一素子の構成での0.1℃/秒と同じであった。
【0116】
ウェルコレクタの温度を安定させ、低温で一定に維持できるかどうかを検証するために、ペルチェ素子の加温側の熱の放散を強化することにより、カスタムの真空フィードスルーを利用して、熱交換器の大部分を真空チャンバの外側に延ばすように配置した。ファンを熱交換器に結合して、熱放散能力を高めた。
図8はまた、熱交換器によって蓄積された熱を放散するためにファンが使用された、単一及び二重のペルチェ素子の構成の温度プロファイルを示している。単一素子の構成の最低温度は60秒後に到達し、アッセイの間-14.4℃で一定に維持された。二重ペルチェ素子の構成のウェルの底で測定された温度は大幅に低く、60秒で-30℃に達し、アッセイの期間中、180秒から-32℃にさらに低下した。
【0117】
したがって、真空チャンバの外側のヒートシンクに結合されたファンを使用すると、熱の放散を強化するための費用効果が高く、簡素な解決策が提供される。これにより、プラズマバルクとPP装置100の底部との間の温度勾配(最大1840K/m)をプロセス期間全体にわたって維持でき、最終的には各合成の実行でナノ粒子の収量が増加する。
【0118】
本開示の広い全体的な範囲から逸脱することなく、多くの変形例及び/または修正が、上記の実施形態になされ得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなすべきである。