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特許7407803リグノセルロース物質から作られた部品およびその部品を製造する方法
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  • 特許-リグノセルロース物質から作られた部品およびその部品を製造する方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】リグノセルロース物質から作られた部品およびその部品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 3/02 20060101AFI20231222BHJP
   B27K 3/34 20060101ALI20231222BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
B27K3/02 A
B27K3/34 Z
B60R13/02 Z
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021515097
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 FR2019052177
(87)【国際公開番号】W WO2020058629
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】1858555
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520299382
【氏名又は名称】ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ ウードゥー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル テベナン
(72)【発明者】
【氏名】ティモテ ボワトゥゼ
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077740(JP,A)
【文献】国際公開第2017/136714(WO,A1)
【文献】特開昭62-097803(JP,A)
【文献】特開平04-336202(JP,A)
【文献】特開平04-357023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0142145(US,A1)
【文献】特表2009-531229(JP,A)
【文献】特表2012-510082(JP,A)
【文献】特表2000-514015(JP,A)
【文献】特開2009-073406(JP,A)
【文献】国際公開第89/001856(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 3/02
B27K 3/34
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース物質から作られた部品であって、前記部品は、部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質の単一のシート(11、21、31)から形成され、前記部品(10、20、30)は二重曲率の表面を有する少なくとも1つの湾曲した部分を含むことを特徴とする部品。
【請求項2】
前記部品が前記シート(31)の上にオーバーモールドされた少なくとも1つの付属品(40)を含み、前記少なくとも1つの付属品(40)は前記シート(31)の含浸ポリマーに接着するように構成されたオーバーモールドポリマーで成形されていることを特徴とする請求項1に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項3】
前記部品が少なくとも1つの半透明の部分を含み、前記半透明の部分の光透過係数が少なくとも4%に等しいことを特徴とする請求項1または2に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項4】
前記リグノセルロース物質がリグニンならびにセルロースおよびヘミセルロースのネットワークを含む木材であり、前記木材は脱リグニンされており、除去されたリグニンの割合は前記木材中に存在するリグニンの40~90重量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項5】
前記脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシート(11、21、31)が、前記シート(11、21、31)の総質量に対して30~80質量%の含浸ポリマーフラクションを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項6】
含浸ポリマーが熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項7】
含浸ポリマーがポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることを特徴とする請求項6に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項8】
前記シート(11、21、31)の厚さが0.1~3mmであることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項9】
前記湾曲した部分が、曲率半径が80mm未満の、2つの直交面において実質的に同一の曲率を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項10】
前記湾曲した部分が、曲率半径が40mm未満の、2つの直交面において実質的に同一の曲率を有することを特徴とする請求項9に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項11】
前記湾曲した部分が実質的に20mmに等しい曲率半径を有することを特徴とする請求項10に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項12】
前記湾曲した部分が、第一の面において、曲率半径が10mm未満の曲率を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項13】
前記湾曲した部分が、第一の面において、曲率半径が8mm未満の曲率を有することを特徴とする請求項12に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項14】
前記湾曲した部分が、第一の面において曲率半径が10mm以上の曲率を有し、そして前記第一の面に直交する第二の面において曲率半径が4mm未満の曲率を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項15】
前記湾曲した部分が、前記第二の面において曲率半径が1.5~2.5mmの曲率を有することを特徴とする請求項14に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項16】
- リグノセルロース物質の板からリグニンを部分的に抽出する工程(S2)、
- 前記部分的に脱リグニンされた板に含浸化合物を充填する工程(S3)、
- 部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートを製造するために、前記含浸化合物を重合および/または架橋することによって仕上げをする工程(S4)、および
- 二重曲率の表面を有する少なくとも1つの湾曲した部分を含むリグノセルロース物質から作られた部品を得るために成形する工程(S5)
を含むことを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品を製造する方法。
【請求項17】
成形する工程(S5)が熱成形工程であることを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
成形する工程(S5)が、仕上げ工程(S4)の後に、前記部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートに実施されることを特徴とする請求項16または17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記製造方法が前記シートの上に付属品をオーバーモールドする工程(S6)をさらに含み、前記付属品は前記シートの含浸ポリマーに接着するように構成されたオーバーモールドポリマーで成形されることを特徴とする請求項16~18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
オーバーモールドポリマーが前記シートの含浸ポリマーと同一であることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品を変形させる方法であって、含浸ポリマーが熱可塑性ポリマーであり、前記方法は、
- 前記部品を加熱する工程(S10)、および
- 少なくとも1つの湾曲した部分を含む変形した部品を得るために、加熱された部品を熱成形する工程(S5)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記方法が前記加熱する工程(S10)と前記熱成形する工程(S5)の間に前記加熱された部品を平らにする工程(S11)を含むことを特徴とする請求項21に記載の変形させる方法。
【請求項23】
前記部品が表示装置のまたはタッチスクリーンのマンマシンインターフェースであることを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項24】
前記部品が、キャビンのトリミング構造である、またはケーシング構造を形成することを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【請求項25】
前記部品が、自動車、航空機もしくは船舶のトリミング構造である、または特に化粧品のパッケージを形成することを特徴とする請求項24に記載のリグノセルロース物質から作られた部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース物質から作られた部品、その部品を製造する方法、およびリグノセルロース物質から作られた部品を変形させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リグノセルロース物質で、特に木材で、作られた部品の使用は、木材の自然な美学、温かみのある色および特定の手ざわりのために非常に高く評価されている。それは、木製の被覆部品で飾られた構造を高尚にすることができる。
【0003】
したがって、木製被覆材は、現在、家具、内装建築および自動車の内装の装飾のために、または航空機もしくは船舶の分野で、非常に求められている。
【0004】
また、たとえば木材の板を成形することによって曲面を作り出すことによって、種々の形の木製被覆材を使用することも求められてきた。しかし、木製被覆材は壊れやすく、成形し強く曲げると、裂目や割れ目ができる。
【0005】
たとえば、0.1~1mmの厚さの木材の板から形成され、木材の板に可撓性を与えるために樹脂を含浸した木製部品が知られており、それは米国特許出願公開第2008/0020222号明細書に記載されている。したがって、この木材の板は選択された三次元形状の木製部品を得るために変形させることができる。
【0006】
米国特許出願公開第2008/0020222号明細書には、特に、ホットプレスプロセスの実施によって変形させる前に、樹脂を含浸させた数枚の木材の板を積み重ねて互いに接着した、種々の実施形態が記載されている。したがって、それぞれの木目の方向が互いに垂直になるように重ね合わせられた2枚の木材の板は、中央の平面部分および外側に広がった円錐台形状の周辺の部分を有するスピーカー部材を構成するために、変形させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2008/0020222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、変形可能な木製部品を形成するために木材の板を重ね合せると、必然的に分厚い部品が得られる。それによってそのような部品の重量は増加し、これは、特に自動車または航空機の内装の分野では、それらの使用を思いとどまらせるかもしれない。さらに、積み重ねられ互いに接着された木材の板から形成された部品の完全な状態を維持するために、ホットプレスによって重ね合わせられた木材の板を変形させるときは、特別の注意を払わなければならない。成形するときの木材の挙動は予測できないので、不良率は非常に高く、変形可能な木製部品の総原価が増加する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の欠点を軽減する、リグノセルロース物質から作られた部品、およびリグノセルロース物質で作られた部品を得ることを可能にする関連する製造方法を提供することを対象とする。
【0010】
その目的のために、第一の態様によれば、本発明は、リグノセルロース物質から作られた部品であって、前記部品は、部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質の単一のシートから形成され、前記部品は二重曲率の表面を有する少なくとも1つの湾曲した部分を含むことを特徴とする部品に関する。
【0011】
出願人は、部分的に脱リグニンされポリマーが含浸されたリグノセルロース物質から部品を調製することによって、単一のシートから少なくとも1つの二重曲率の部分を有する部品を製造することができることを観察した。
【0012】
部分的に脱リグニンされたリグノセルロース物質においては、リグニン(リグノセルロース物質のセルロース繊維の間で不均一に分布した化合物)は、含浸ポリマーに置き換えられる。後者は補強の役割を果たし、セルロース繊維を一緒に保持し、セルロース繊維に一様かつ均一な鞘を提供する。含浸ポリマーは、加熱されたとき、鞘を維持するのに十分に高いヤング率およびセルロース繊維間の力学的連結を有しながら、それが置き換えるリグニンよりも柔軟である。
【0013】
部分的に脱リグニンされポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートは、このように、機械的に強化され、より大きな曲げ、ねじれ、引張および圧縮変形を受けることができる。したがって、未処理の木材のシートでは達成することができない非常に多様な幾何学的形状を得ることが可能である。
【0014】
したがって、単一のシートから形成され、二重曲率の表面を有するリグノセルロース物質から作られた部品を得ることが可能である。したがって、その部品は、リグノセルロース物質から作られた部品のために非常に独創的な三次元形状を、たとえば双曲放物面、半球形状、シェル形状、外側に広がるコーン、先細の円柱、そしてより一般的にはいかなる種類のゆがんだ表面(展開不可能曲面)をも、持つかもしれない。
【0015】
単一のシートで成形することは、従来技術における木材の板の重ね合せによってリグノセルロース物質の繊維の交差を発生させることなしに、非常に軽い部品を得ることを可能にする。
【0016】
リグノセルロース物質から作られた部品は、改善された機械的な特性を有し、特に衝撃および破壊に対するより良好な耐性を有する。それは、より良好な靭性も、すなわち破壊に対する高い耐性および亀裂の伝搬の低い傾向も有する。
【0017】
そのようなリグノセルロース物質から作られた部品は、布地の補強層のような機械的強化を必要とせずに、使用されてもよい。
【0018】
有利な実施形態によれば、その部品は、前記シートの上にオーバーモールドされた少なくとも1つの付属品を含み、前記少なくとも1つの付属品は前記シートの含浸ポリマーに接着するように構成されたオーバーモールドポリマーで成形されている。
【0019】
付属品のオーバーモールドは、直接使用可能な完成部品を得るために、リグノセルロース物質から作られた部品に種々の機能を提供することを可能にする。付属品はたとえば固定具であってもよく、それは外部構造にリグノセルロース物質から作られた部品を固定することを可能にする。
【0020】
付属品のオーバーモールドは、オーバーモールドと含浸ポリマーの化学的適合性のおかげで、それらが互いに付着することを可能にする。
【0021】
実際の実施形態では、リグノセルロース物質から作られた部品は少なくとも1つの半透明部分を含み、その半透明部分の光透過係数は少なくとも4%に等しい。
【0022】
したがって、リグノセルロース物質から作られた部品は、たとえばバックライトを当てる、ディスプレイ装置または制御装置のためのインターフェースとして使用されてもよい。
【0023】
有利には、前記リグノセルロース物質はリグニンならびにセルロースおよびヘミセルロースのネットワークを含む木材であり、前記木材は脱リグニンされており、除去されたリグニンの割合は前記木材中に存在するリグニンの40%~90重量%である。
【0024】
当初の部品のリグノセルロース物質構造を維持するために、リグノセルロース物質は全部ではなく部分的に脱リグニンされることが重要である。
【0025】
リグノセルロース物質のセルロースとヘミセルロースの構造を維持することによって、その部品は木材に近い仕上がりと視覚的外観を有する。その部品の手ざわりは未処理の木材の手ざわりに近いままであることができる。
【0026】
除去されるリグニンの割合は、もっと低くてもよく、たとえば木材中に存在するリグニンの20%と等しくてもよく、10重量%にさえ等しくてもよい。
【0027】
実際には、少なくとも部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートは、含浸ポリマーの割合が前記シートの総質量に対して30~80質量%であってもよい。
【0028】
有利には、含浸ポリマーは熱可塑性樹脂であり、好ましくはポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。
【0029】
1つの実施形態では、前記シートの厚さは0.1~3mmである。
【0030】
次に、リグノセルロース物質から作られた部品は被覆部品を形成するために十分に適合される。
【0031】
1つの実施形態では、前記湾曲した部分は、2つの直交する面において実質的に同一の、80mm未満、好ましくは40mm未満の曲率半径の曲率を有する。たとえば、前記湾曲した部分は実質的に20mmに等しい曲率半径を有する。
【0032】
代替の実施形態では、前記湾曲した部分は、第一の面において、10mm未満、好ましくは8mm未満の曲率半径の曲率を有する。
【0033】
実際には、前記湾曲した部分が第一の面において10mm以上の曲率半径の曲率を有するとき、前記第一の面に直交する第二の面における曲率は、4mm未満、好ましくは1.5~2.5mmの曲率半径を有していてもよい。
【0034】
リグノセルロース物質から作られた部品は、このように、天然の木製部品では達成しがたく、かつ木材の繊維の方向と無関係には達成しがたい、二重曲率の表面の一部において非常に小さい曲率半径を有していてもよい。
【0035】
第二の態様によれば、本発明は、上記のリグノセルロース物質から作られた部品を製造する方法を関し、次の工程を含む。
- リグノセルロース物質の板からリグニンを部分的に抽出する工程、
- 前記部分的に脱リグニンされた板に含浸化合物を充填する工程、
- 部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートを製造するために、前記含浸化合物を重合および/または架橋することによって仕上げをする工程、および
- 二重曲率の表面を有する少なくとも1つの湾曲した部分を含むリグノセルロース物質から作られた部品を得るために成形する工程。
【0036】
リグノセルロース物質から作られた部品の製造は、リグノセルロース物質の単一のシートから多様な三次元形状を得ることを可能にする。そのような製造方法は、非常に多様な種類のリグノセルロース物質または木材で実施されてもよく、それは木製被覆部品の範囲を拡大することができる。
【0037】
それは、より壊れやすいがより安価な種類の木材を使用することを可能にする。
【0038】
そのようなリグノセルロース物質から作られた部品を製造する方法は、必要とする操作の数をより少なくし、それはより短い製造時間につながる。さらに、部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートの変形のより良い制御は、廃棄物の割合と原材料費を減少させることを可能にし、したがって製造原価を減少させることを可能にする。
【0039】
実際には、成形工程は熱成形工程であってもよい。
【0040】
1つの実施形態では、成形工程は、仕上げ工程の後に、部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートに実施される。
【0041】
したがって、成形工程は、含浸化合物が重合された構造化シートに実施される。したがって、リグノセルロース物質は、セルロースとリグニンのネットワークの中に組込まれたポリマーの三次元ネットワークによって形成された複合材料構造を有する。成形工程の実施のために操作するのは容易である。
【0042】
1つの実施形態では、成形工程は、成形面が少なくとも部分的に微細構造化またはサンドブラストされた金型で実施される。
【0043】
したがって、成形後のリグノセルロース物質から作られた部品の表面は、カスタマイズすることができる。したがって、その部品の手ざわりは、滑らか、サテン、または木材に類似したものになるように選択することができる。
【0044】
有利な実施形態では、製造方法は、さらに、前記シートの上に付属品をオーバーモールドする工程を含み、前記少なくとも1つの付属品は前記シートの含浸ポリマーに接着するように構成されたオーバーモールドポリマーで成形される。
【0045】
したがって、オーバーモールド工程は、リグノセルロース物質から作られた部品を製造する方法に組込まれてもよく、将来の使用のためにリグノセルロース物質から作られた部品に付属品を付けることを可能にする。改善されたオーバーモールド工程は、さらにリグノセルロース物質から作られたシートから製造された部品の寸法安定性を改善する。
【0046】
オーバーモールド工程は、リグノセルロース物質から作られた部品のために、木製部品では強化部材を追加しなければ達成するのが困難な機能を提供することを可能にする。
【0047】
第三の態様によれば、本発明は、上記のリグノセルロース物質から作られた部品を変形させる方法に関し、含浸ポリマーは熱可塑性ポリマーであり、その方法は次の工程を含む。
- 前記部品を加熱する工程、および
- 少なくとも1つの湾曲した部分を含む変形した部品を得るために、前記加熱された部品を熱成形する工程。
【0048】
好ましくは、前記変形させる方法は、前記加熱する工程と前記熱成形する工程の間に前記加熱された部品を平らにする工程を含む。
【0049】
したがって、リグノセルロース物質から作られた部品はリサイクルすることができ、リグノセルロース物質から作られた部品を熱可塑性含浸ポリマーのガラス遷移温度より高い温度に加熱することによって、異なる形状の部品を得るためにそのシートを熱成形することが可能である。したがって、リグノセルロース物質から作られた部品のライフサイクルは、リサイクルの可能性のおかげで延びるかもしれない。
【0050】
例として、リグノセルロース物質から作られた部品は、ディスプレイ装置のまたはタッチスクリーンのマンマシンインターフェース(MMI)、特に自動車の、航空機のまたは船舶の、キャビンのトリミング構造であってもよいし、またはケーシング構造、特に化粧品パッケージを形成してもよい。
【0051】
本発明のさらに他の特殊性および利点は、以下の説明の中に現われるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
非限定的な例として与えられた添付の図面において、
図1図1Aおよび1Bは、第一の実施形態のリグノセルロース物質から作られた部品を、正面図および断面図で、図式的に表わし、
図2図2Aおよび2Bは、第二の実施形態のリグノセルロース物質から作られた部品を、下面図および断面図で、図式的に示し、
図3図3Aおよび3Bは、第三の実施形態のリグノセルロース物質から作られた部品を、断面図で示し、
図4図4は、本発明の1つの実施形態のリグノセルロース物質から作られた部品を製造する方法の原理を図示するブロック図であり、そして
図5図5は、本発明の1つの実施形態のリグノセルロース物質から作られた部品を変形させる方法の原理を図示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
まず第一に、リグノセルロース物質から作られた部品の第一の実施形態について、図1Aおよび1Bを参照して説明する。
【0054】
リグノセルロース物質から作られた部品10は、部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質の単一のシート11から形成されている。
【0055】
以下の示すように、リグノセルロース物質は部分的にのみ(そして全部ではなく)脱リグニンされている。
【0056】
リグノセルロース物質は、好ましくは、任意の種類の木材、たとえばオーク、クルミ、ポプラ、トネリコ、カエデまたはサペリである。
【0057】
リグノセルロース物質は、たとえば、木材カットであり、好ましくは縦方向カット(縦方向半径方向カット(LRC)または接線方向縦方向カットTLC)または横方向カット(TC)である。
【0058】
リグニンおよびセルロースとヘミセルロースのネットワークを含む木材は、部分的に脱リグニンされる。
【0059】
使用される木の種類に応じて、除去されるリグニンの割合は、より高くなってもよいし、より低くなってもよい。
【0060】
非限定的な例として、除去されるリグニンの割合は、もとの木材中に存在するリグニンの40~90重量%である。
【0061】
この除去されるリグニンの割合は、より低くてもよく、たとえば、木材中に存在するリグニンの20重量%または10重量%に実質的に等しくてもよい。
【0062】
もとの木材の剛性はリグニンはおかげである。
【0063】
木材の部分的な脱リグニンは、それをわずかにより柔軟にしながら、その当初の構造を維持することを可能にする。
【0064】
分光法によるまたは顕微鏡による分析は、完全なままであるセルロースとヘミセルロースとは対照的に、脱リグニン後に多かれ少なかれ改変されたリグニンの構造を観察することを可能にする。
【0065】
リグノセルロース物質は、セルロースとヘミセルロースのネットワーク中に存在する隙間を充填し、また除去されたリグニンによって解放された空間を充填するように構成された含浸ポリマーで含浸される。したがって、含浸ポリマーは、木材のセルロース繊維を機械的に強化し鞘におさめるために、リグノセルロース物質の構造の中心に浸透する。
【0066】
含浸ポリマーは、ポリマーの混合物であってもよいし、ポリマーとモノマーの混合物であってもよく、それは熱可塑性であってもよいし、熱硬化性であってもよい。
【0067】
リグノセルロース物質の少なくとも部分的な脱リグニンのおかげで、シートはシートの総質量に対して30~80質量%の割合の含浸ポリマーを含むことができる。
【0068】
もちろん、除去されたリグニンの割合と含浸ポリマーの割合についての上記の値は、非限定的な例として与えられている。
【0069】
脱リグニンの程度および/または使用される含浸ポリマーは、少なくとも1つの半透明部分を含むリグノセルロース物質から作られた部品を得るために選択してもよい。
【0070】
光を通すことができる半透明部分は、少なくとも4%に等しい光透過係数を有する。
【0071】
リグノセルロース物質から作られた部品10を形成するシート11の厚さは、0.1~3mmである。
【0072】
好ましくは、この厚さは0.1~2mmであり、またはたとえば0.4~1.3mmである。
【0073】
リグノセルロース物質のシート11の厚さは、リグノセルロース物質から作られた部品の特定の実施形態では0.6mmまたは0.9mmに等しくてもよい。
【0074】
このシート11は、それ自体で、リグノセルロース物質から作られた部品10を形成し、その重量を制限する、より小さい厚さを有する。したがって、リグノセルロース物質のシート11は、トリミングとして役立つように、または搭載構造をコーティングするように構成された被覆部品を形成することができる。
【0075】
図1Aおよび1Bに図示されるようなリグノセルロース物質から作られた部品10は、二重曲率の表面を有する湾曲した部分を含む。
【0076】
この実施形態では、部品全体が二重曲率の形状を有する。もちろん、リグノセルロース物質から作られた部品の一部のみがそのような二重曲率の形状を有することも可能であり得る。
【0077】
図1Aおよび1Bの実施形態では、湾曲した部分は、直角の2つの面において実質的に同一の曲率半径ρを有する。
【0078】
したがって、リグノセルロース物質から作られた部品10の形状は、半径ρの球の一部である。
【0079】
曲率半径ρは少なくとも80mm未満であり、好ましくは40mm未満である。
【0080】
所望の実施形態によれば、曲率半径ρは、直角の両方の面では20mmに等しくてもよい。
【0081】
そのようにして得られた小さい曲率半径の、リグノセルロース物質から作られた部品10は、まさにドーム形の半球の形状の木材の装飾が製造されることを可能にすることができる。
【0082】
第二の実施形態は図2Aおよび2Bに図示される。
【0083】
リグノセルロース物質から作られた部品20は、本発明の第一の実施形態に関して上に記載されたものと同様に、単一のシート21から形成されている。
【0084】
この第二の実施形態では、リグノセルロース物質から作られた部品20は、直角の2つの面において異なる曲率半径の二重曲率の表面を有する湾曲した部分24を有する。
【0085】
非限定的な例として、図2Aおよび2Bに図示されたリグノセルロース物質から作られた部品20は、1つの面(図2Aに図示された下面図に対応する面)では円形の形状の、ケーシングである。
【0086】
したがって、部品20は、実質的に平らな底22、および底22から外側に広がる周辺の縁23を含む。
【0087】
したがって、平らな底22および周辺の縁23の間をつなぐゾーンに対応する、湾曲した部分24は、直角の2つの面において二重曲率の表面を有する。
【0088】
特に、一方の面における曲率があまり顕著でない場合、それに直角の他方の面における曲率は、小さい曲率半径、たとえば10mm未満、好ましくは8mm未満の曲率半径を有することができる。
【0089】
例として、湾曲した部分の曲率半径が第一の面において10mm以上である場合、第一の面に直角の第二の面における曲率半径は、4mm未満、たとえば1.5~2.5mmであることができる。
【0090】
例示として、図2Aおよび2Bに図示された実施形態では、湾曲した部分24は、部品20の横断面において、約4mmの第一の曲率半径ρを有し、部品20の平らな底22によって形成された面に平行な、直角の面において、約7.5cmの第二の曲率半径ρを有する。
【0091】
リグノセルロース物質から作られた部品の第三の実施形態を図3Aおよび3Bに示す。
【0092】
リグノセルロース物質から作られた部品30は、本発明の第一の実施形態に関して上に記載したのと同様に、単一のシート31から形成されている。
【0093】
この実施形態では、リグノセルロース物質から作られた部品30は、縦断面(図3A)および横断面(図3B)において二重曲率の表面を有する湾曲した部分から形成されている。
【0094】
直角の2つの面(部品30の縦断面および横断面)における曲率ρ、ρの半径は、同一であるか、類似しているか、または異なっている。
【0095】
この第三の実施形態では、リグノセルロース物質から作られた部品30は、シート31の上にオーバーモールドされた少なくとも1つの付属品40を含む。
【0096】
この実施形態では、限定するものではないが、付属品40は、リグノセルロース物質30から作られた部品のシート31の凹面の内側の面の上にオーバーモールドされた層を形成する。オーバーモールドされたシート40は、さらに、リグノセルロース物質から作られた部品をマウンティング(図示せず)に固定するのを可能にするために突起またはクリップを形成する一連のラグ41を含む。
【0097】
付属品40は、リグノセルロース物質から作られた部品30のシート31の含浸ポリマーに接着するように構成されたオーバーモールドポリマーでオーバーモールドされている。
【0098】
非限定的な例として、含浸ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のような熱可塑性ポリマーであることができ、モールドポリマーもまたポリメタクリル酸メチルであることができる。
【0099】
より一般的には、含浸ポリマーとオーバーモールドポリマーは同一であってもよいし、互いから異なっていてもよい。
【0100】
そのような付属品のオーバーモールドは、リグノセルロース物質から作られた部品30を機能的にすることを可能にし、リグノセルロース物質から作られた部品がマウンティングの上に固定されるために提供される場合、様々な固定手段(クリップ、プラスチックびょう、ニップル)をそれと結合させることを可能にする。
【0101】
リグノセルロース物質から作られたそのような部品は、たとえば、自動車の内部に装備するために、マウンティングの上に被覆部品のように加えることができるかもしれない。そのような被覆部品は、非限定的な例として、自動車、船舶または航空機のダッシュボードとして使用することができるかもしれないし、自動車の中央コンソールとして、または乗り物のドアのトリミングとして使用することができるかもしれない。
【0102】
特に、リグノセルロース物質から作られた部品が、上記のように少なくとも1つの半透明の部分を含むとき、それは、場合によりバックライトで照らされるかもしれない、ディスプレイ装置のまたはタッチスクリーンのマンマシンインターフェース(MMI)として使用することができる。半透明の部分は、1つ以上のタッチコントロールゾーンに対応することもできる。たとえば、リグノセルロース物質から作られた少なくとも部分的に半透明の部分がドアを飾るとき、それは乗り物の窓の開閉のためのタッチコントロールを含むことができる。
【0103】
他の実施形態では、リグノセルロース物質から作られた部分がケーシングの構造を形成するために提供されるとき、付属品はたとえばプラスチックの輪郭または閉鎖クリップであってもよい。
【0104】
したがって、非限定的な例として、図2Aおよび2Bに示されるリグノセルロース物質から作られた部品20はケーシングの底を構成し、図1Aおよび1Bに示されるリグノセルロース物質から作られた部品10はケーシングのカバーを構成することができるかもしれない。
【0105】
そのようなケーシングの製造およびケーシングの底の上の位置へのカバーの保持は、相補的なプラスチックの輪郭のおよび閉鎖クリップ(図示せず)のリグノセルロース物質の部品10、20の周囲の上へのオーバーモールドによって得ることができるかもしれない。
【0106】
ケーシングの一方の面に単なる継手を形成するまたは蝶番のシステムをオーバーモールドし、そしてケーシングの反対の面に閉鎖システムをオーバーモールドすることも可能である。
【0107】
そのようなケーシングは、たとえば化粧品、宝石、眼鏡などの分野で使用することができるかもしれない。
【0108】
オーバーモールドされた付属品は、リグノセルロース物質から作られた部品の一部にのみ存在することができる。しかし、リグノセルロース物質から作られた部品の上へのオーバーモールドポリマー層の付加は、それを機械的に強化し、その寸法安定性を改善することを可能にする。
【0109】
より一般的には、リグノセルロース物質から作られた部品の付属品付加または機能化は、付属品のオーバーモールド以外の方法で達成してもよく、付属品は、部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートに接合することもできる。
【0110】
付属品は押出によって製造することもできる。
【0111】
次に、上記のリグノセルロース物質から作られた部品を製造する方法の実施形態について図4を参照しながら説明する。
【0112】
リグノセルロース物質から作られた部品を製造する方法は、あらかじめリグノセルロース物質の板を切断する工程S1を含むことができる。
【0113】
前記のように、このリグノセルロース物質の板は、1本の木を縦方向または横方向に切断することによって得ることができる。
【0114】
その原理によれば、製造方法は、次に、リグノセルロース物質の板の中に存在するリグニンを部分的に抽出する工程S2、少なくとも部分的に脱リグニンされた板に含浸化合物を充填する工程S3、および少なくとも部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートを製造するために、含浸化合物を重合および/または架橋することによって仕上げをする工程S4を含む。
【0115】
この脱リグニンおよび含浸の方法の多数の例は、国際公開公報第2017/098149号に詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
特に、リグニンを抽出する工程S2は、リグニンの部分的な溶解を可能にする溶液の中にリグノセルロース物質の板を浸漬および洗浄することによって実施することができ、浸漬および洗浄は場合により単一の工程で組み合わされてもよい。
【0117】
除去されるリグニンの割合は、木材の中に存在するリグニンの40~90重量%であってもよい。
【0118】
それは、もっと低くてもよく、約20%または10%であってもよい。
【0119】
充填工程S3は、含浸化合物がリグノセルロース物質の板の部分的に脱リグニンされた構造の中に浸透する工程である。
【0120】
含浸化合物は、ポリマーまたはコポリマーであってもよく、好ましくは熱可塑性樹脂であってもよい。
【0121】
代わりに、充填化合物は重合可能なモノマーであってもよく、その後、仕上げ工程S4が重合によって含浸ポリマーを得ることを可能にする。
【0122】
熱硬化性ポリマーも想像されるかもしれないが、ここでは、ポリマーは好ましくは熱可塑性である。
【0123】
含浸成分は熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーの混合物であることもできる。
【0124】
それは、また、モノマーとポリマーの混合物であってもよいし、モノマーのみを含んでいてもよい。
【0125】
含浸成分は、石油由来であってもよいし、生物由来であってもよい。
【0126】
非限定的な例として、含浸工程S3で導入された含浸化合物は、仕上げ工程S4で重合によってポリメタクリル酸メチル(PMMA)を得ることを可能にするメタクリル酸メチル(MMA)であってもよい。
【0127】
したがって、仕上げ工程S4は、含浸化合物の重合および/または架橋の後に、少なくとも部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートを製造することを可能にする。
【0128】
シートは、たとえば被覆部品を形成するように構成された、0.1~3mmの厚さを有してもよい。
【0129】
例として、リグノセルロース物質から作られた部品は、0.6または0.9mmに等しい厚さを有するリグノセルロース物質の板を使用して製造することができる。
【0130】
PMMAのような熱可塑性ポリマーの含浸および仕上げの後、シートは、リグノセルロース物質の板の上により多くのまたはより少ない量のPMMAを追加することによって、約0.95mm(±0.05mm)の厚さを有してもよい。
【0131】
リグノセルロース物質から作られた部品を製造する方法は、さらに、成形工程S5を含む。
【0132】
例示的な実施形態として、成形工程S5は、加熱条件下で部品の熱成形を実施することができる。
【0133】
部品の成形は、熱成形、熱圧縮、スタンピング、エンボス加工、またはいかなる種類の成形によって行なってもよく、成形は高温で行なっても低温で行なってもよく、成形工程で使用される正または負の圧力をかけてまたはかけずに行なってもよい。
【0134】
図4において仕上げ工程S4と熱成形工程S5の間に破線の矢印によって表わされるように、製造方法のこれらの2つの工程は、相互に関連がなくてもよく、すなわち時間的および空間的に分離された方法で実施されてもよい。
【0135】
そのような実施形態では、仕上げ工程S4に加えて、製造されたシートは、周囲温度に冷却され、好ましくは自然冷却され、含浸ポリマーおよび部分的に脱リグニンされたリグノセルロース物質は、それによりシートの形の堅い構造を形成する。
【0136】
したがって、熱成形工程S5は、部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートの製造後、数日間、数週間または数か月実施することができる。
【0137】
この実施形態では、熱成形する工程S5は、二重曲率の表面を有する少なくとも1つの湾曲した部分を得るために、シートの上に実施される。
【0138】
しかし、製造方法は、二重曲率の表面を有する湾曲した部分の成形に限定されない。
【0139】
製造方法は、円錐形もしくは円錐台形の部分またはたとえば円筒状もしくは半円筒状の部分のような単一の曲率の湾曲した部分を得るためにシートを成形する工程で実施することもできる。
【0140】
部品は、非常に小さい曲率半径の、単一の曲率の湾曲した部分を含んでもよい。したがって、曲率がリグノセルロース物質の繊維の方向に平行な方向に作成されるときは、約1.5mmの半径を達成することが可能であり、そして曲率がリグノセルロース物質の繊維の方向に対して直角の方向に作成されるときは、約2mmの半径を達成することが可能である。
【0141】
したがって、直角に近い湾曲した部分を有する部品を得ることが可能である。
【0142】
上記のように、成形工程は、異なる技術によって、特に熱圧縮、真空熱成形またはエンボス加工によって実施してもよい。
【0143】
限定するものではないが、成形は、複合材料部品を製造するのに用いられる工業プロセス、特に樹脂トランスファー成形(RTM)または高圧樹脂トランスファー成形(HP-RTM)を実施してもよい。
【0144】
例として、熱圧縮の使用の実施形態では、成形工程は、シートを加熱する工程および熱圧縮金型を加熱する工程を実施する。
【0145】
シートと金型を加熱するのに使用される温度は、含浸ポリマーのガラス転移温度に依存する。
【0146】
したがって、シートおよび熱成形金型の加熱温度は、熱成形工程S5の間、含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートの構造およびメンテナンスを維持するために含浸ポリマーのある程度の粘度を維持しながら、含浸ポリマーを流動化し、それによってシートの成形を可能にするのに十分でなければならない。
【0147】
例として、含浸ポリマーがPMMAである場合、そのガラス転移温度は約80℃である。
【0148】
シートは、たとえば、約30秒、好ましくは1分未満の時間、約150℃の温度に加熱されてもよい。
【0149】
熱成形金型は、約80℃の温度にされた温度制御された金型であってもよい。
【0150】
加熱されたシートは、金型に入れられ、その後、シートは閉じた金型の中でプレスされる。
【0151】
熱成形金型は、さらに、リグノセルロース物質から作られた部品のための異なる表面仕上げを得るために、表面に処理(サンドブラスト表面、マイクロテクスチャなど)を施されてもよい。
【0152】
もちろん、熱圧縮の他の実施形態を想像することもできる。
【0153】
したがって、シートだけを加熱することも可能であり、その場合、金型は加熱もされないし、温度制御もされない。
【0154】
金型は、たとえば、木材またはプラスチック材料でできていてもよい。
【0155】
次に、シートの上に付属品をオーバーモールドするために、オーバーモールド工程S6を実施することができる。
【0156】
しかし、図4において熱成形工程S5から出る破線の矢印によって表わされるように、リグノセルロース物質から作られた部品は付属品なしで製造されてもよい。そのような場合は、熱成形工程S5の直後に直接、冷却工程S7が続く。
【0157】
好ましくは、冷却工程S7は、熱成形されたシートが熱成形金型の中に残されたまま、数分間行なわれる。金型は温度制御によって冷却されてもよい。
【0158】
必要ならば、熱成形され冷却されたシートは選択された形にカットされてもよい。
【0159】
機械的切削工具(たとえばダイカッター)による高温カット、またはたとえばフライス加工もしくはレーザーによる低温カットなど、いかなる種類のカットを使用してもよい。
【0160】
このようにして、細くて軽いトリミングまたは半構造の一片が得られる。
【0161】
リグノセルロース物質から作られた部品は、リグノセルロース物質の繊維の破損または白化なしに、単一または二重の曲率を有する湾曲した部分を有してもよい。
【0162】
付属品がシートの上にオーバーモールドされる場合、オーバーモールド工程S6は、好ましくは、シートの含浸ポリマーに接着するように構成されたオーバーモールドポリマーを使用する。
【0163】
好ましくは、オーバーモールドポリマーは、シートの含浸ポリマーと同一である。
【0164】
上記の例では、オーバーモールドポリマーは、好ましくはポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。
【0165】
オーバーモールドポリマーは、熱成形されたシートのリグノセルロース物質を燃焼させないように、十分に低い融解温度を有していなければならない。
【0166】
さらに、その収縮係数は、少なくとも部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートの収縮係数との相性を維持しなければならない。
【0167】
オーバーモールドポリマーは、好ましくは射出成形において使用されなければならない。
【0168】
オーバーモールド工程S6では、オーバーモールドポリマーの射出のためのオーバーモールド金型およびダクトは、オーバーモールドポリマーの射出のための条件に適合する温度に加熱されなければならない。
【0169】
オーバーモールド工程S6に加えて、上記のように、冷却工程S7が実施される。
【0170】
したがって、オーバーモールド工程S6は、上記のリグノセルロース物質から作られた部品の上にプラスチックの付属品をオーバーモールドすることを可能にする。
【0171】
それは、おそらく、リグノセルロース物質から作られた部品の機械的特性を増大するために、リグノセルロース物質から作られた部品のシートの上のオーバーモールドポリマーの増加した厚さを提供するかもしれない。
【0172】
オーバーモールドは、また、シートの輪郭の周辺の縁にのみ行なってもよい。
【0173】
次に、上記のリグノセルロース物質から作られた部品を変形させる方法の実施形態について、図5を参照しながら説明する。
【0174】
この変形させる方法は、それに新しい用途のための新しい形を与えることによって、リグノセルロース物質から作られた部品をリサイクルすることを可能にする。
【0175】
その目的を達成するために、含浸ポリマーはその部品が加熱されたときに軟化するように構成された熱可塑性ポリマーである。
【0176】
したがって、変形させる方法は、リグノセルロース物質から作られた部品を加熱する工程S10を含む。
【0177】
この加熱する工程は、リグノセルロース物質から作られた部品を含浸する熱可塑性ポリマーのガラス転移温度より高い温度で行なわれる。
【0178】
前に示したように、熱可塑性ポリマーが約80℃のガラス転移温度のPMMAであるときは、部品は約150℃の温度に加熱されてもよい。
【0179】
好ましくは、加熱された部品を平らにする工程S11は、変形させることが望まれるリグノセルロース物質から作られた部品の湾曲した部分をすべて取り除くために実施される。
【0180】
この加熱され平らにされた部品から始めて、熱成形工程S5が行なわれる。
【0181】
この熱成形工程S5は、図4に関して上に記載したものと同様であり、その後に、オーバーモールド工程S6および冷却工程S7が、少なくとも1つの湾曲した部分を含む変形した部品を得るために、続いてもよい。
【0182】
この湾曲した部分は、上記のように、単一または二重の曲率であってもよい。
【0183】
したがって、この変形させる方法は、リグノセルロース物質から作られた部品をリサイクルすることを可能にする。
【0184】
もちろん、本発明は上記の例示的な実施形態に限定されない。
【0185】
すでに上に示されたように、実施された寸法および材料に関する具体例は、本発明のリグノセルロース物質から作られた部品の製造を決して限定するものではない。
【0186】
さらに、製造方法は、また、少なくとも部分的に脱リグニンされ含浸化合物が含浸されたリグノセルロース物質の板に適用される、仕上げ工程S4と熱成形工程S5を同時に実施することができる。
【0187】
これらの2つの工程を対にすることは、少なくとも1つの湾曲した部分を含む部分的に脱リグニンされ含浸ポリマーが含浸されたリグノセルロース物質のシートを製造するために、含浸化合物の重合および/または架橋とリグノセルロース物質の板の曲率とを同時に得ることを可能にする。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5