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特許7407806睡眠段階において呼吸事象を使用するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】睡眠段階において呼吸事象を使用するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20231222BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61B 5/087 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61M16/00 305A
A61B5/087
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021516795
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019076662
(87)【国際公開番号】W WO2020070170
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】62/739,591
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ ドス サントス ダ フォンセカ ペドロ ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】グラッシ アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ グレゴリー デラノ
(72)【発明者】
【氏名】ケーン マイケル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスコ ジュニア レイモンド チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】クレー マレイケ
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-532703(JP,A)
【文献】特表2015-532855(JP,A)
【文献】特表2009-538720(JP,A)
【文献】特開2006-280686(JP,A)
【文献】特表2008-525060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
A61M 11/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成するように構成される1つ以上のセンサ、及び
前記1つ以上のセンサと動作可能に接続される1つ以上の物理的コンピュータ処理器
を有する睡眠段階決定システムにおいて、前記1つ以上の物理的コンピュータ処理器は、コンピュータ可読命令により、
前記出力信号に基づいて、前記被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴を決定する、
前記出力信号に基づいて、一定の時間期間からなる複数のエポックの各々において、呼吸事象の有無を検出する、
異なる既定の時間長からなる複数の移動する時間ウィンドウの各々にわたり前記1つ以上の呼吸特徴の分布を決定し、前記時間ウィンドウの各々は、異なるエポックを中心とする、
前記エポックを中心とする前記時間ウィンドウに対する前記呼吸特徴の分布及び中心とする前記エポックに対する検出される前記呼吸事象に基づいて、睡眠段階分類器モデルを用いて、前記中心とするエポックの各々に対する前記被験者の睡眠状態を決定する、並びに
前記睡眠状態を示すフィードバックを供給する
ように構成される、睡眠段階決定システム。
【請求項2】
複数の前記時間ウィンドウの少なくとも1つは、少なくとも60秒の長さを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記出力信号は、非脳波(非EEG)信号である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上の呼吸パラメタは、前記被験者の呼吸努力を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上の呼吸パラメタは、前記被験者の呼吸気流を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記睡眠段階決定システムは、CPAP装置を有し、前記CPAP装置は、被験者の気道に送出するための加圧される呼吸可能なガス流を生成するように構成される圧力生成器をさらに有し、前記1つ以上の物理的コンピュータ処理器は、前記圧力生成器と動作可能に接続され、前記1つ以上のセンサからの前記出力信号に基づいて、前記被験者の気道への前記加圧される呼吸可能なガス流の送出を制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴は、呼吸の持続時間、吸気の持続時間対呼気の持続時間、最小及び最大流量値、及び/又は個々の呼吸の1回換気量を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
睡眠段階決定システムの作動方法において、
前記睡眠段階決定システムの前記1つ以上のセンサが、被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成するステップ、
前記睡眠段階決定システムの1つ以上の物理的コンピュータ処理器が、前記出力信号に基づいて、前記被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴を決定するステップ、
前記1つ以上の物理的コンピュータ処理器が、前記出力信号に基づいて、一定の時間期間からなる複数のエポックの各々において、呼吸事象の有無を検出するステップ、
前記1つ以上の物理的コンピュータ処理器が、異なる既定の時間長からなる複数の移動する時間ウィンドウの各々にわたり前記1つ以上の呼吸特徴の分布を決定するステップであり、前記時間ウィンドウの各々は、異なるエポックを中心とする、ステップ、
前記1つ以上の物理的コンピュータ処理器が、前記出力信号に基づいて、呼吸事象の存在を検出するステップ、
前記1つ以上の物理的コンピュータ処理器が、前記エポックを中心とする前記時間ウィンドウに対する前記呼吸特徴の分布及び中心とする前記エポックに対する検出される前記呼吸事象に基づいて、睡眠段階分類器モデルを用いて、前記中心とするエポックの各々に対する前記被験者の睡眠状態を決定するステップ、並びに
前記1つ以上の物理的コンピュータ処理器が、前記睡眠状態を示すフィードバックを供給するステップ
を有する方法。
【請求項9】
複数の前記時間ウィンドウの少なくとも1つは、少なくとも60秒の長さを有する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記出力信号は、非脳波(非EEG)信号である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の呼吸パラメタは、前記被験者の呼吸努力を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の呼吸パラメタは、前記被験者の呼吸気流を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
圧力発生器が、被験者の気道に送出するための加圧される呼吸可能なガス流を生成するステップをさらに有し、前記1つ以上の物理的コンピュータ処理器は、前記圧力発生器と動作可能に接続され、前記出力信号に基づいて、前記被験者の気道への前記加圧される呼吸可能なガス流の送出を制御する、請求項に記載の方法。
【請求項14】
被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成するように構成される検知手段、
前記出力信号に基づいて、前記被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴を決定するように構成される決定手段、
前記出力信号に基づいて、一定の時間期間からなる複数のエポックの各々において、呼吸事象の有無を検出するように構成される検出手段、
異なる既定の時間長からなる複数の移動する時間ウィンドウの各々にわたり前記1つ以上の呼吸特徴の分布を決定するように構成される決定手段であり、前記時間ウィンドウの各々は、異なるエポックを中心とする、
前記エポックを中心とする前記時間ウィンドウに対する前記呼吸特徴の分布及び中心とする前記エポックに対する検出される前記呼吸事象に基づいて、睡眠段階分類器モデルを用いて、前記中心とするエポックの各々に対する前記被験者の睡眠状態を決定するように構成される決定手段、並びに
前記睡眠状態を示すフィードバックを供給するように構成されるフィードバック供給手段
を有する、睡眠段階決定システム。
【請求項15】
複数の前記時間ウィンドウの少なくとも1つは、少なくとも60秒の長さを有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記出力信号は、非脳波(非EEG)信号である、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記1つ以上の呼吸パラメタは、前記被験者の呼吸努力を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つ以上の呼吸パラメタは、前記被験者の呼吸気流を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記睡眠段階決定システムは、CPAP装置を有し、前記CPAP装置は、被験者の気道に送出するための加圧される呼吸可能なガス流を生成するように構成される圧力生成手段をさらに有し、前記CPAP装置は、前記圧力生成手段に動作可能に接続され、前記検知手段からの出力信号に基づいて、前記被験者の気道への前記加圧される呼吸可能なガス流の送出を制御する1つ以上の物理的コンピュータ処理器を有する、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、睡眠段階を決めるとき呼吸事象を使用するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、睡眠段階を決定するためのシステム及び方法に関する。本開示は、ある実施形態において、前記システム及び方法論を、呼吸障害を検出又は治療するためにも使用され得るシステム及び方法に組み込む。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の一般的な形態である。持続陽圧呼吸(CPAP)は、通常、OSAを治療するための第一選択の医学療法である。現在、CPAPマシンは、患者にフィードバックを供給し、そのフィードバックは主に、治療自身、(治療される)無呼吸-低呼吸指数(AHI)、使用履歴、漏れ等に関するパラメタに重点を置いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、客観的に測定された睡眠の質に対する治療の効果に関して効果的なフィードバックを供給するCPAPシステムは、限られているか、又は存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本開示の1つ以上の態様は、睡眠段階決定システムに関する。睡眠段階決定システムは、被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成するように構成される1つ以上のセンサ、及び1つ以上のセンサと動作可能に接続される1つ以上の物理的コンピュータ処理器を有し、1つ以上の物理的コンピュータ処理器は、コンピュータ可読命令により、前記出力信号に基づいて、被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴を決定し、1つ以上の時間ウィンドウにわたる前記1つ以上の呼吸特徴の分布を決定し、前記出力信号に基づいて呼吸事象の存在を検出し、呼吸特徴の分布及び1つ以上の呼吸事象に基づいて、睡眠段階分類器モデルを用いて前記被験者の睡眠状態を決定し、及び睡眠状態を示すフィードバックを供給するように構成される。
【0005】
本開示のもう1つの態様は、1つ以上のセンサを用いて、被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成するステップ、1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、前記出力信号に基づいて、前記被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴を決定するステップ、1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、1つ以上の時間ウィンドウにわたる1つ以上の呼吸特徴の分布を決定するステップ、1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、前記出力信号に基づいて呼吸イベントの存在を検出するステップ、1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、呼吸特徴の分布及び1つ以上の呼吸事象に基づいて、睡眠段階分類子モデルを用いて、前記被験者の睡眠状態を決定するステップ、並びに1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、睡眠状態を示すフィードバックを供給するステップ、を有する方法を提供する。
【0006】
本開示のもう1つの態様は、1つ以上のセンサを用いて、被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成する、1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、出力信号に基づいて、前記被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴を決定する、1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、1つ以上の時間ウィンドウにわたる1つ以上の呼吸特徴の分布を決定する、1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、前記出力信号に基づいて呼吸イベントの存在を検出する、1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、呼吸特徴の分布及び1つ以上の呼吸事象に基づいて睡眠段階分類子モデルを用いて被験者の睡眠状態を決定する、並びに1つ以上の物理的コンピュータ処理器を用いて、睡眠状態を示すフィードバックを供給するための方法に関する。
【0007】
本開示のさらにもう1つの態様は、被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成するように構成される検知手段、出力信号に基づいて、前記被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴を決定するように構成される決定手段、1つ以上の時間ウィンドウにわたる1つ以上の呼吸特徴の分布を決定するように構成される決定手段、前記出力信号に基づいて呼吸事象の存在を検出するように構成される検出手段、呼吸特徴の分布及び1つ以上の呼吸事象に基づいて、睡眠段階分類器モデルを用いて前記被験者の睡眠状態を決定するように構成される決定手段、並びに睡眠状態を示すフィードバックを供給するように構成されるフィードバック供給手段を有する睡眠段階決定システムに関する。
【0008】
構成物の関連する要素の動作方法及び機能、並びに製造部品と製造の経済性との組み合わせと同じく、本開示のこれら及び他の目的、特徴並びに特性は、付随する図面を参照して、以下の説明及び添付の請求項を考慮するとより明白となり、これらの全てが本明細書を形成している。様々な図面において、同様の参照番号は対応する部品を示している。しかしながら、これら図面は単に例証及び説明を目的とするものであり、本発明の境界を規定するものとは意図されないことは明白に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、1つ以上の実施形態による、被験者の睡眠段階を分類するための睡眠段階決定システム100を示す。
図2図2は、1つ以上の実施形態による、被験者の睡眠段階を分類するための睡眠段階決定システム200の例200を示す。
図3図3は、1つ以上の実施形態による、ウィンドウ処理の例300を示す。
図4図4は、1つ以上の実施形態による、被験者の睡眠段階を分類するための方法400を示す。
図5図5は、1つ以上の実施形態による、所定の呼吸事象特徴の経時的な分布を決定するために使用されるウィンドウ処理500を示す。
図6A図6Aは、1つ以上の実施形態による、CPAP装置を用いた呼吸療法セッション中の被験者の睡眠段階を分類するための例600を示す。
図6B図6Bは、1つ以上の実施形態による、CPAP装置を用いた呼吸療法セッション中の被験者の睡眠段階を分類するための例600を示す。
図7図7は、1つ以上の実施形態による、CPAP装置を用いた呼吸療法セッション中の被験者の睡眠段階を分類するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
明細書において、特に文脈上はっきりと述べていない限り、複数あると述べていなくても、それらが複数あることを含む。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が"結合される"と述べることは、連動している限り、これらの部品が直接的に又は間接的、すなわち1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介しての何れかにより接合される又は共に動作することを意味している。明細書において、"直接結合される"は、2つの要素が互いに直に接していることを意味している。明細書において、"固定して結合される"又は"固定される"は、2つの構成要素が互いに対し一定の方向を維持しながら、1つとして移動するように結合されることを意味している。
【0011】
明細書において、"ユニタリ(unitary)"という言葉は、構成要素が単一ピース又は単一ユニットとして作られることを意味している。すなわち、別々に作られ、その後ユニットとして連結される部分を含んでいる構成要素は、"ユニタリ"な構成要素又は本体ではない。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が互いに"係合する"と述べることは、これらの部品が互いに向けて直接的に又は1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介して間接的にの何れかにより力を及ぼしていることを意味している。明細書において、"数字"は、1若しくは1以上の整数(すなわち複数)を意味する。
【0012】
明細書において、例であり限定ではない方向の表現は、頂部、底部、左側、右側、上方、下方、前方、後方及びそれらの派生語は、図面に示される要素の方位に関連し、特に明瞭に言わない限り、請求項を制限しない。
【0013】
図1は、本開示の1つ以上の実施形態による、被験者の睡眠段階を分類するためのシステム100の一例を示す。幾つかの実施形態において、システム100は、被験者の呼吸パラメタを決定するように構成される。呼吸パラメタを決定することは、被験者の個々の呼吸を検出することを含む。システム100は、これら個々の呼吸の呼吸特徴に基づいて被験者の睡眠段階を分類するように構成される。各々の呼吸の呼吸特徴は、呼吸の持続時間、吸気の持続期間対呼気の持続時間、呼吸の最小及び/又は最大流量、及び/又は呼吸の1回換気量を含む。ある実施形態において、以下に詳細に説明されるセンサ(40)は、被験者と連結し、出力信号(例えば呼吸(流量、圧力、1回換気量等)、心血管(心拍数、血圧等)及び/又は被験者からの他の生理学的測定値を得る装置に組み込むことができる。例えば、ある実施形態において、センサ(40)は、幾つかの実施形態に関連して十分説明されるように、CPAPマシンに組み込むことができる。
【0014】
睡眠事象の存在は、被験者の睡眠構築及び/又は睡眠分類に使用される特徴の特性に影響を与える。例えば、被験者が睡眠段階N3にあり、中枢性睡眠時無呼吸事象が起こっている場合、中枢性睡眠時無呼吸事象は、この事象中(無呼吸の間、呼吸努力はない)の呼吸特性の変化及びこの事象の直後の期間(通常は、呼吸が再開し、過呼吸中はより高い周波数及び振幅を伴う)における呼吸特性の変化を引き起こす。この中枢性無呼吸事象の後に、しばしば覚醒事象が続き、これは、覚醒期間中、交感神経活動のバーストによる心拍変動特性の変化を引き起こす。覚醒後、被験者は「より軽い」睡眠の期間、通例はN1又はN2に入る。この呼吸事象の発生に関する情報がなく、この事象が起こっている間の時間ウィンドウにおいて、心臓又は呼吸特徴が分析される場合、分類器は、この覚醒より前のN3期間を検出することができない可能性がある(通例、N3は、規則的な呼吸振幅及び周波数を伴う低い交感神経の緊張により特徴付けられる)。無呼吸及び後続する覚醒が起きたことが分かると、分類器は、これら特徴の特性を睡眠段階のシーケンスに容易に関連付けることができ、次の睡眠段階がどのようなものになるかを容易に推測することができる。睡眠状態の決定に呼吸事象を使用することは、改善された睡眠分類性能を提供する。
【0015】
幾つかの実施形態において、最初に呼吸特徴が抽出され、次いで、これら特徴の値分布を特性付けるために、異なる時間ウィンドウを用いて呼吸特性が分析される。呼吸特性は、呼吸特徴の値分布を特徴付けるために、1つ以上のウィンドウ(30秒間、30秒以上)を用いて、記述的に分析される。ウィンドウのサイズは、そのウィンドウに含まれる呼吸数からは独立している、時間ベース(例えば、30、30、90、150秒等)である。幾つかの実施形態において、呼吸特徴の統計量(メタ特徴)は、1つ以上の時間ウィンドウにわたる前記特徴の分布の形状(例えば、中央値、異なる百分位数、範囲等)を描く。これは、分析ウィンドウにおいて前記呼吸特徴の分散又は標準偏差を測定するよりも有利である。次いで、前記統計量(メタ特徴)が睡眠段階分類器への入力として使用され、治療セッション中の被験者の睡眠段階を分類する。このステップは、睡眠段階と測定される統計量との間の良好なマッピングを提供する。睡眠段階が呼吸特徴から直接マッピングされる場合、このマッピングはそれほどロバストではない(より低い分類性能を有するモデルとなる)。明細書における「マッピング」という用語自体は、モデルに供給される入力を使用して、このモデルを用いて睡眠状態を決定することを意味すると広く解釈されるべきである。
【0016】
幾つかの実施形態において、睡眠段階分類器は、その状態の観察、前の状態において起きたこと及びそれまでの状態の履歴に基づいて、ある状態が起こる尤度を表すモデルを使用する。幾つかの場合において、睡眠段階分類器は、双方向モデルを使用し、夜間の所定の時点でのある段階の尤度は、前に起きたことだけでなく、その時点の後、最終的に被験者が朝目覚めるまでに起こることにも依存する。これらのモデルは、現在の検出にコンテキスト(context)を与えるために、メモリ(例えば、前の状態及びそれまでの状態の履歴)を用いて現在の状態の尤度を表現するという点で、時間シフト入力(例えば、マルコフ)を使用するモデルよりも有利である。例えば回帰型ニューラルネットワーク、長・短期記憶又は因果的畳み込みニューラルネットワークのようなメモリを持つモデルは、構造化された睡眠の性質、及び夜間の(検出された)睡眠段階の所定の履歴の後、その時点までにある睡眠段階が起こる尤度の変化を探るのに有益である。例えば、1時間を超えるN3が検出された場合、N3が引き続き起こる可能性はますます低くなる。メモリベースのモデルは、この情報を使用して、各時点において最も可能性の高い睡眠段階だけでなく、その時点までに起こったことに基づいて、最も可能性の高い睡眠段階の一晩中のシーケンスも推測することができる。任意で、(例えば、リアルタイムで利用するために)因果的な段階決定が必要なく、一晩中の観察が利用可能である場合、双方向モデルを使用することができ、それにより、所定の時点における睡眠段階に関する推測は、将来に関する情報、すなわち、その時点の後の観察が何であるかに関する情報を使用することができる。例えば、次の状態の観察がREM段階の存在を示す可能性が非常に高い場合、現在の段階がN3又はWakeである可能性は非常に低く、N1又はN2である可能性が高い。BEメタ特徴を含めることは、呼吸特徴の統計量(メタ特徴)しか使用せず、呼吸事象の影響が考慮されていないシステムの性能を向上させる。この背景にある考え方は、呼吸事象(例えば、無呼吸、低呼吸)の発生が睡眠構築に影響するということである。例えば、無呼吸事象の後、覚醒が起こり、最も可能性の高い睡眠段階はN1又はN2である。その結果、睡眠段階分類器は、BEメタ特徴を用いて、睡眠構築についてより多くを学習することができ、より良好な分類性能を示す。
【0017】
幾つかの実施形態において、システム100は、1つ以上のセンサ40、1つ以上の物理コンピュータ処理器30、ユーザインターフェース120、電子記憶装置130、ネットワーク150及び/又は他の構成要素を有する。
【0018】
幾つかの実施形態において、センサ40は、被験者70の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成するように構成される。幾つかの実施形態において、1つ以上の呼吸パラメタは、被験者に呼吸療法を施すための装置(例えば、PAPマシン)により供給される加圧した呼吸可能なガス流に関するガスパラメタ、被験者70の呼吸に関する呼吸パラメタ、被験者70の生理学的パラメタ及び/又は他のパラメタを有する。加圧した呼吸可能なガス流の1つ以上のガスパラメタは、例えば呼吸可能なガスの流量、容積、圧力、湿度、温度、加速度、速度及び/又は他のパラメタの1つ以上を有する。被験者70の呼吸に関する呼吸パラメタは、1回換気量、タイミング(例えば、吸気の開始及び/又は終了、呼気の開始及び/又は終了等)、呼吸数、呼吸気流、(例えば、吸気の、呼気の、呼吸サイクル等の)持続時間、呼吸周波数、呼吸努力及び/又は他の呼吸パラメタを有する。生理学的パラメタは、オキシメトリパラメタ、脈拍、体温、血圧及び/又は他の生理学的パラメタを有する。ある実施形態において、1つ以上のセンサにより検出される呼吸特徴は、後述するように、被験者の個々の呼吸の「呼吸特徴」も含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、様々な種類のセンサ40が使用され得る。様々な実施形態において、そのようなセンサは、(非EEG信号を生成するように構成される)1つ以上の非EEGタイプのセンサであるか又はそれらを含む。例えば、センサ40は、フォトプレチスモグラム(PPG)信号を生成する1つ以上のPPGセンサでもよい。PPGは、光学的に得られるプレチスモグラムであり、これは、組織の微小血管床における血液量の変化、胸部及び/又は腹部の容積の変化を検出するために使用される。PPGは、パルスオキシメータ、患者の胸部及び腹部の周りのベルトを用いることにより得られる。幾つかの実施形態において、センサ40は、心電図信号を生成する1つ以上のECGセンサである。心電図(ECG)は、心臓の電気的活動の記録である。ECGは、患者の皮膚上に置かれる電極を用いて得られる。幾つかの実施形態において、センサ40は、バリストカルジオグラフ(BCG)信号を生成する1つ以上のBCGセンサである。BCG信号は、各鼓動に伴う大血管への血液の急激な放出により生じる人体の反復運動のグラフ表示である。BCGは、非侵襲的方法を用いて(例えば、身体の表面上のセンサから)、又は非接触方式のカメラ形式のセンサを用いて得ることができる。幾つかの実施形態において、センサ40は、被験者の呼吸努力を測定するために、赤外線カメラを用いることにより、胸部/腹部マーカの動きを追跡するように構成される。幾つかの実施形態において、被験者の呼吸努力を決定するために、PPG、ECG及び/又はBCGが使用されてもよい。
【0020】
センサ40は、上記パラメタを直接(例えば、被験体との流体連通、被験体インターフェース、呼吸療法装置等を介して)測定する1つ以上のセンサを有する。幾つかの実施形態において、センサ40は、1つ以上のパラメタに関する出力信号を間接的に生成する1つ以上のセンサを有する。例えば、センサ40は、呼吸療法装置の動作パラメタに基づいて出力(例えば、モータの電流、電圧、回転速度及び/又は他の動作パラメタから被験者の流量及び/又は圧力の推定)を生成するように構成される1つ以上のセンサ及び/又は他のセンサを有する。幾つかの実施形態において、センサ40は、流量、位置、容積、圧力、湿度、温度、心臓、動き、加速度、オキシメトリ、音声、ビデオ、光センサ及び/又は他のセンサの1つ以上を含む。センサ40は、例えば被験者インターフェース内の(又は被験者インターフェースと連通している)様々な位置、被験者70上、呼吸療法装置内(又は呼吸療法装置と連通して)、導管50及び/又は他の位置のような複数の位置に配されるセンサを有する。
【0021】
処理器30は、システム100において情報処理能力を提供するように構成される。そのようなものとして、処理器30は、1つ以上のデジタル処理器、1つ以上のアナログ処理器、情報を処理するように設計される1つ以上のデジタル回路、情報を処理するように設計される1つ以上のアナログ回路、ステートマシン及び/又は情報を電子的に処理するための他の機構を含む。幾つかの実施形態において、処理器は、センサ(40)と動作可能に接続される。図1において、処理器30が単一体として示されていたとしても、これは単に例示を目的とするためである。幾つかの実装形態において、処理器30は、複数の処理ユニットを含む。これらの処理ユニットは、同じ装置(例えば、センサ(40)又はセンサ(40)を含む装置)内に物理的に配されてもよいし、又は処理器30は、協調して動作し、システム100の外部(例えば、クラウド内)に置かれる複数の装置からなる機能を表してもよい。幾つかの実施形態において、処理器(30)は、(例えば、ネットワーク150を介して通信可能に結合される)システム100内及び/又は外部に置かれる複数の装置からなる処理機能を表してもよい。
【0022】
図1に示されるように、処理器30は、1つ以上のコンピュータプログラム構成要素を実行するように構成される。1つ以上のコンピュータプログラム構成要素は、パラメタ構成要素32、制御構成要素33、呼吸特徴決定構成要素34、特徴分布構成要素36、睡眠分類構成要素38、フィードバック構成要素39及び/又は他の構成要素の1つ以上を有する。処理器30は、ソフトウェア;ハードウェア;ファームウェア;ソフトウェア、ハードウェア及び/又はファームウェアの如何なる組み合わせ及び/又は処理器30上に処理能力を構成するための他の機構により、構成要素32、33、34、36、38及び39を実行するように構成される。
【0023】
図1において、構成要素32、33、34、36、38及び39が単一の処理ユニット内の同じ場所に配されるように示されていたとしても、処理器30が複数の処理ユニットを有する実装形態において、構成要素32、33、34、36、38及び39の1つ以上が、他の構成要素から離れて置かれてもよいことを理解されたい。以下に記載される別々の構成要素32、33、34、36、38及び39により提供される機能の説明は、例示を目的とするものであり、構成要素32、33、34、36、38及び39の何れも、記載されるよりも多くの又は少ない機能を提供し得るので、限定を意図しない。例えば、構成要素32、33、34、36、38及び39の1つ以上が削除されてもよいし、その機能の幾つか又は全てが、他の構成要素32、33、34、36、38及び/又は39により提供されてもよい。もう1つの例として、処理器30は、構成要素32、34、36、38及び/又は39の1つの下に属し、その機能の幾つか又は全てを実行する1つ以上の追加の構成要素を実行するように構成されてもよい。
【0024】
パラメタ構成要素32は、システム100内の1つ以上のパラメタを受信、決定及び/又は取得するように構成される。例えば、1つ以上のパラメタは、センサ40からの出力信号に基づいて決定される。幾つかの実施形態において、パラメタ構成要素32は、被験者70の呼吸に関する1つ以上の呼吸パラメタ、システム100内の呼吸可能なガスの1つ以上のパラメタ(例えば、呼吸療法装置により送出される加圧される呼吸可能なガス流に関するパラメタ)、被験者70の1つ以上の生理学的パラメタ及び/又は他のパラメタを決定するように構成される。被験者70の呼吸に関する呼吸パラメタは、個々の呼吸の開始及び/又は終了を有する。幾つかの実施形態において、呼吸パラメタは、1回換気量、タイミング(例えば、吸気の開始及び/又は終了、呼気の開始及び/又は終了等)、呼吸数、(例えば、吸気の、呼気の、1回の呼吸サイクル等の)持続時間、呼吸気流、呼吸努力、呼吸周波数、AHI指数(無呼吸-低呼吸指数)及び/又は他の呼吸パラメタを有する。加圧される呼吸可能がガス流の1つ以上のガスパラメタは、例えば、流量、心拍数、容積、圧力、湿度、温度、加速度、速度及び/又は他のガスパラメタの1つ以上を有する。生理学的パラメタは、オキシメトリパラメタ、脈拍、体温、血圧、動き及び/又は他の生理学的パラメタを含む。
【0025】
幾つかの実施形態において、パラメタ構成要素32は、被験者が経験した呼吸事象を検出するように構成される。そのような呼吸事象は、被験者70による呼吸を妨害する事象を含む。幾つかの実施形態において、パラメタ構成要素は、呼吸事象の存在を示す被験者の呼吸の中断を検出するように構成される。例えば、そのような呼吸事象は、閉塞性無呼吸、中枢性無呼吸、声門閉鎖、チェーン・ストークス呼吸、低呼吸、いびき、過換気、覚醒及び/又は他の換気事象、及び/又は他の呼吸事象の1つ以上を含む。パラメタ構成要素32は、センサ40により生成される出力信号に基づいて、例えば、流量、圧力、呼吸気流、呼吸努力、瞬間1回換気量及び/又は被験者70の気道の又は気道の近く(例えば、被験者インターフェース内)の他のガスパラメタの1つ以上を監視することにより、上記呼吸事象を検出する。
【0026】
制御構成要素33は、幾つかの実施形態において、センサ(40)の動作を制御するように構成される。例えば、幾つかの実施形態において、制御構成要素は、ユーザ入力、測定結果、システム100部又は外部の1つ以上の構成要素からの要求に基づいて、1つ以上のセンサを稼働/非稼働させるように構成される。
【0027】
呼吸特徴決定構成要素34は、被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴を決定するように構成される。幾つかの実施形態において、各呼吸は、2つ以上の呼吸特徴、例えば、呼吸の持続時間、吸気の持続時間対呼気の持続時間、最小及び最大流量値、1回換気量等により特徴付けられる。幾つかの実施形態において、1つ以上の呼吸特徴は、被験者の睡眠段階に依存して変化する。例えば、N3の間、呼吸は、振幅及び周波数の両方に関して、より遅くなり、より規則的になる。幾つかの実施形態において、システム200は、出力信号に基づいて被験者の個々の呼吸203を検出するように構成されるコンピュータ処理器を有する。この出力信号は、非EEG信号(例えば、ECG、PPG、BCG、呼吸努力等)である。幾つかの実施形態において、各呼吸は、次いで、例えば、呼吸の持続時間、吸気の持続時間対呼気の持続時間、最小及び最大流量値、1回換気量等を表すその信号特性の幾つかに関して特徴付けられる。呼吸特徴208は、後処理され(210)、及びメモリを用いて予め訓練された機械学習モデル211により採用され、これらの特徴に基づいて事前に規定した30秒のエポックにおいて睡眠段階212を自動的に分類する。幾つかの実施形態において、この情報は、次いで、睡眠状態を示すフィードバックの形式でユーザにフィードバックされる。例えば、システム200は、決定した睡眠段階212を表示するように構成される。例えば、表示装置は、(上述した)ユーザインターフェース、自分のスマートフォン120上のアプリ等でもよい。
【0028】
幾つかの実施形態において、(BE)特徴値207(数値)は、検出される事象205のカテゴリを示すために使用される。この処理が図3に示される。図3は、1つ以上の実施形態による、所定のBE特徴302の経時的な分布を決定するために使用されるウィンドウ処理の例300を示す。
【0029】
図3は、呼吸事象(BE)特徴304の経時的な分布302を示す。この分布のY軸は、呼吸事象(BE)特徴値304を表す。この分布のX軸は、30秒のエポック308を中心とする時間を表し、時間ウィンドウにわたる(BE)特徴の特徴付けに使用される。図3は、15個の新しいメタ特徴306が作成され、各エポックに対し、そのエポックの境界により画定されるウィンドウ内で対応する事象が検出されたかを(BE特徴304により示されるように)示す。
【0030】
例えば、所定のエポック308間に、少なくとも1つのタイプ2(低呼吸)の事象304が検出された場合、対応する特徴306(_PE_HYPOPNEA)は、そのエポックに対し1の値を持つ。所定のエポック間にタイプ2の事象が検出されなかった場合、その特徴は0の値を持つ。同じエポック内で同じタイプの事象が複数検出される場合であってもこうであり、すなわち各エポックは0又は1のフラグ値を持ち、そのタイプの事象が1つ以上検出されたことを意味することを述べておく。同じエポック内で異なるタイプの事象が複数検出される場合、全ての対応する特徴は、1のフラグを持つ。これは、例えば、同じエポック内でタイプ2及び15の事象304が検出された、図3に示される例の第1のエポックの場合である。この場合、特徴306の_PE_HYPOPNEA(2)及び_PE_BIG_LEAK_SNORE(15)は共に第1のエポック間に1のフラグを得るが、他の全ての特徴は0のフラグ0得る。
【0031】
特徴分布構成要素36は、1つ以上の時間ウィンドウにわたる1つ以上の呼吸特徴の分布を決定/表現するように構成される。幾つかの実施形態において、特徴分布構成要素36は、呼吸特徴の経時的な分布の形状、例えば、時間ウィンドウにわたる呼吸特徴の特性を特徴付けるのに適切な分布の形状の中央値、異なる百分位数、範囲及び/又は他の表現(例えば、特性)を表現する。幾つかの実施形態において、時間ウィンドウは、少なくとも30秒の長さを各々持つ。例えば、時間ウィンドウは、30秒、90秒、120秒、150秒又は他の長さを持つ。幾つかの実施形態において、時間ウィンドウの長さは最初に、既知の睡眠の行動に基づいて推定されてもよい。より長い(例えば、ポリソムノグラフィを用いて注釈が付けられる睡眠段階に通常使用される30秒より長い)ウィンドウは、異なる睡眠段階の発生と相関されるように呼吸特徴を特徴付ける際により有利である。例えば、N3の間、呼吸がより遅くなり、より規則的になるので、呼吸特徴を特徴付けるのに、より長いウィンドウが良好である。幾つかの実施形態において、特徴分布構成要素36は、異なるサイズ(異なる長さ)を持つ1つ以上の時間ウィンドウにわたる1つ以上の呼吸特徴の分布を決定するように構成される。例えば、しばしば1又は2分未満しか続かない、夜間に起こる短時間の覚醒は、呼吸パターン及び呼吸周波数の急激な変化と関連している。異なるウィンドウサイズで取り込まれる呼吸特徴統計(メタ特徴)の組み合わせは、特徴的な時間及び周波数パターンを用いた睡眠段階の適切な分離を可能にする。例えば、睡眠状態N3は、より長い期間の呼吸安定性により特徴付けられ、例えば、覚醒は、短い一時的活動により特徴付けられる。30秒のエポック内で睡眠が記録され、従って、ウィンドウサイズに30の倍数を使用することが理にかなっている。全てのウィンドウ長からのメタ特徴を考慮した(分類器の)訓練処理により、最適なメタ特徴のセット、従って、最適なウィンドウサイズのセットが決定される。
【0032】
睡眠状態決定構成要素38は、被験者の現在の睡眠状態、例えば、wake、N1、N2、N3、REM又はこれらの状態の組み合わせ(例えば、wake、N1+N2、N3、REM)を決定するように構成される。幾つかの実施形態において、現在の睡眠状態は、睡眠段階分類器を用いて、呼吸特徴の分布を1つ以上の睡眠状態にマッピングすることにより決定される。幾つかの実施形態において、睡眠段階分類器は、現在の睡眠状態を決定するように構成される1つ以上のモデルを有する。幾つかの実施形態において、選択された数の呼吸特徴統計(メタ特徴)を用いて、機械学習モデルが使用され、特徴空間の一部を所定の睡眠段階(wake、N1、N2、N3、REM)又はこれらの組合せ(最も一般的にはwake、N1+N2、N3、REM)にマッピングする。この分類処理は、30秒のエポックの各々に対して別々に行われ、結果として、そのとのときにどの睡眠段階が起こった可能性が高いかに従って、各エポックのカテゴリ分類を得る。幾つかの実施形態において、睡眠状態モデルは、入力(例えば、メタ特徴)及び回答(例えば、睡眠段階)を用いて訓練されてもよい。(入力及び対応する回答を用いて)一度訓練されると、モデルは使用する準備ができる。幾つかの実施形態において、動作中、睡眠状態モデルは、入力(例えば、メタ特徴)を受信し、記憶された関係を使用して、どのように訓練されたかに基づいて睡眠段階の予測を与える。幾つかの実施形態において、過去及び将来の情報を使用する双方向モデルが使用されてもよい。幾つかの実施形態において、過去からの情報だけを持つ一方向又は因果モデルが使用されてもよい。
【0033】
幾つかの実施形態において、1つ以上のモデルは、現在の状態の直前の複数の睡眠状態に基づいて現在の睡眠状態を決定するように構成される。幾つかの実施形態において、睡眠段階分類器は、その状態の観察、前の状態において起きたこと及びそれまでの状態の履歴に基づいて、ある状態が起こる尤度を表すモデルを使用する。幾つかの場合、睡眠段階分類器は、双方向モデルを使用し、夜間の所定の時点におけるある段階の尤度は、前に起きたことだけでなく、その時点の後、最終的に被験者が朝目覚めるまでに起こることにも依存する。これらのモデルは、現在の検出にコンテキストを与えるために、メモリ(例えば、前の状態及びそれまでの状態の履歴)を用いて現在の状態の尤度を表現するという点で、時間シフト入力(例えば、マルコフ)を使用するモデルよりも有利である。
【0034】
例えば回帰型ニューラルネットワーク、長・短期記憶又は因果的畳み込みニューラルネットワークのようなメモリを持つモデルは、構造化される睡眠の性質、及び夜間の(検出された)睡眠段階の所定の履歴の後、その時点までにある睡眠段階が起こる尤度の変化を探るのに有益である。例えば、1時間を超えるN3が検出された場合、N3が引き続き起こる可能性はますます低くなる。メモリベースのモデルは、この情報を使用して、各時点における最も可能性の高い睡眠段階だけでなく、その時点までに起きたことに基づいて、一晩中の最も可能性の高い睡眠段階のシーケンスも推測することができる。
【0035】
幾つかの実施形態において、(例えば、非リアルタイムで利用するために)因果的な状態決定が必要とされず、一晩中の観察が利用可能である場合、双方向モデルが使用され、それにより、所定の時点における睡眠段階に関する推測は、将来に関する情報、すなわち、その時点の後の観察が何であるかに関する情報を使用することができる。例えば、次の状態の観察がREM段階の存在を示す可能性が非常に高い場合、現在の段階がN3又はWakeである可能性は非常に低く、N1又はN2である可能性がより高い。
【0036】
フィードバック構成要素39は、現在の睡眠状態を示すフィードバック情報を供給するように構成される。幾つかの実施形態において、一晩又は夜の一部の記録の間に検出される睡眠段階に対し、例えば、N3又はREMのような重要な睡眠段階の時間(分)(又はパーセンテージ)、夜間の覚醒数、睡眠効率(ベッドにいる時間量に対する睡眠時間のパーセンテージ)等の何らかの統計に関して、自身の睡眠中の睡眠段階の進行に関するフィードバックをユーザに与えることができる。幾つかの実施形態において、測定される睡眠統計(メタ特徴)の幾つかは、例えば、人の年齢で正規化される、これらの睡眠統計の加重平均を用いて、ユーザの睡眠の「質」を定量化する単一の睡眠スコアに組み込まれる。幾つかの実施形態において、CPAPマシン、スマートフォン等のユーザインターフェースにフィードバックする。
【0037】
ユーザインターフェース120は、システム100と被験者70及び/又は他のユーザとの間のインターフェースを提供するように構成され、このインターフェースを介して、被験者70及び/又は他のユーザは、システム100に情報を供給する及びシステム100から情報を受信する。他のユーザは、例えば、介護者、医師及び/又は他のユーザを有する。これは、データ、合図、結果及び/又は命令、並びに「情報」と総称される他の如何なる通信可能な項目が、ユーザ(例えば、被験者70)と、圧力発生器20、処理器30及び/又はシステム100の他の構成要素の1つ以上との間で通信されることを可能にする。もう1つの例として、睡眠段階、睡眠の持続時間、呼吸特徴の分布、治療情報のフィードバック、被験者70の呼吸数、及び/又は他の情報は、ユーザインターフェース120を介してユーザ(例えば、被験者70)に表示されてもよい。ユーザインターフェース120に含めるのに適切なインターフェース装置の例は、キーパッド、ボタン、スイッチ、キーボード、ノブ、レバー、表示スクリーン、タッチ式スクリーン、スピーカ、マイク、表示灯、警報器、プリンタ、触覚フィードバック装置及び/又は他のインターフェース装置を有する。ある実施形態において、ユーザインターフェース120は、複数の別個のインターフェースを有する。
【0038】
有線又は無線の何れかによる他の通信技術も、ユーザインターフェース120として本開示により考慮されることを理解されるべきである。例えば、本開示は、ユーザインターフェース120が、電子記憶装置130により提供される取り外し可能な記憶装置のインターフェースと一体化されてよいことも考慮している。この例において、ユーザがシステム100の実施をカスタマイズすることを可能にする取り外し可能な記憶装置(例えば、スマートカード、フラッシュドライブ、リムーバブルディスク等)から情報がシステム100に読み込まれてもよい。ユーザインターフェース120としてシステム100と共に使用するために適合される他の例示的な入力装置及び技術は、RS-232ポート、RFリンク、IRリンク、モデム(電話、ケーブル又は他のもの)を含むが、これらに限定されない。要するに、システム100と情報を通信するための如何なる技法も、ユーザインターフェース120として本開示により考慮される。
【0039】
幾つかの実施形態において、電子記憶装置130は、情報を電子的に記憶する電子記憶媒体を有する。電子記憶装置130の電子記憶媒体は、システム100と一体的に(すなわち、実質的に取り外し不能に)設けられるシステムの記憶装置、及び/又は例えば、ポート(例えば、USBポート、ファイアワイヤポート等)或いはドライブ(例えば、ディスクドライブ等)を介してシステム100に取り外し可能に接続可能である取り外し可能な記憶装置の一方又は両方を有することができる。電子記憶装置130は、光学的に読み取り可能な記憶媒体(例えば、光ディスク等)、磁気的に読み取り可能な記憶媒体(例えば、磁気テープ、磁気ハードドライブ、フロッピー(登録商標)ドライブ等)、電荷ベースの記憶媒体(例えば、EEPROM、RAM等)、ソリッドステート記憶媒体(例えば、フラッシュドライブ等)及び/又は他の電子的に読み取り可能な記憶媒体の1つ以上を有することができる。電子記憶装置130は、ソフトウェアアルゴリズム、処理器30により決定される情報、ユーザインターフェース120を介して受信する情報及び/又はシステム100が適切に機能することを可能にする他の情報を記憶する。電子記憶装置130は、(全体又は一部が)システム100内の別個の構成要素でもよいし、又は電子記憶装置130は、(全体又は一部が)システム100の1つ以上の他の構成要素(例えば、ユーザインターフェース120、処理器30等)と一体的に設けられてもよい。
【0040】
ネットワーク150は、インターネット及び/又は他のネットワーク、例えばイントラネット、PAN(Personal Area Network)、LAN、WAN、SAN(Storage Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、近距離無線通信、周波数(RF)リンク、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、Li-Fi、セルラー通信ネットワーク、公衆交換電話網及び/又は如何なる種類の有線若しくは無線ネットワークを含む。これは、限定を意図するものではなく、本開示の範囲は、システム100の構成要素が他の何らかの通信媒体を介して動作可能に連結される実施形態を含むと理解される。幾つかの場合、ネットワークは、ファイアウォールの内側にある有線のイーサーネットネットワークのような安全なローカルエリアネットワークである。
【0041】
処理器30により決定される及び/又は電子記憶装置130により記憶される情報は、センサの測定値、被験者70の呼吸、睡眠状態、フィードバック及び/又は他の情報に関する情報を有する。電子記憶装置130により記憶される情報は、ユーザインターフェース120を介して、別個のコンピュータに(有線及び/又は無線)接続することにより、及び/又は他の方法を介して見ることができる。電子記憶装置130により記憶される情報は、例えば治療設定を調整するため、医師が医学的決定を行うため及び/又は他の用途に使用されてもよい。幾つかの実施形態において、システム100は、無線送信機(図示せず)を含み、処理器30により決定される情報、電子記憶装置130により記憶される情報及び/又は他の情報は、例えば無線ネットワークを介して介護者に伝達されてもよい。限定ではない例として、介護者は、使用情報、被験者の状態及び/又は他の情報を受信し、介護者がシステム100により施される治療をリモートで追跡することを可能にする。
【0042】
幾つかの実施形態において、明細書に記載されるシステム100の処理機能は、上述したシステム100の構成要素を含む治療装置(例えば、センサ、呼吸療法装置等)において局所的に達成される。幾つかの実施形態において、明細書に記載されるシステム100の処理機能は、システム100の外部で(例えば、ネットワーク150を介してシステム100に接続される1つ以上の装置により遠隔的に)達成される。幾つかの実施形態において、明細書に記載される処理機能は、局所的に実行される処理機能と、遠隔的に実行される処理機能との組み合わせでもよい。
【0043】
図4は、CPAP装置を用いた呼吸療法セッション中、被験者の睡眠段階の分類において呼吸事象を使用するための方法400を示す。以下に示される方法700の動作は、例示を目的としている。幾つかの実施形態において、方法400は、説明されていない1つ以上の追加の動作を用いて及び/又は説明した動作の1つ以上を用いずに達成されてもよい。加えて、図4に示され、以下に説明される方法400の動作の順番は、限定を目的としていない。
【0044】
幾つかの実施形態において、方法400は、1つ以上の処理装置(例えば、デジタル処理器、アナログ処理器、情報を処理するように設計されるデジタル回路、情報を処理するように設計されるアナログ回路、ステートマシン及び/又は情報を電子的に処理するための他の機構)において実施される。1つ以上の処理装置は、電子記憶媒体に電子的に記憶される命令に応じて方法400の動作の幾つか又は全てを実行する1つ以上の装置を含む。1つ以上の処理装置は、ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを介して、方法400の動作の1つ以上の命令実行のために特に設計されるように構成される1つ以上の装置を含む。
【0045】
動作404において、被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号が生成される。幾つかの実施形態において、動作404は、(図1に示され、明細書に説明される)センサ40と同じ又は同様の1つ以上のセンサにより行われる。
【0046】
動作406において、被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴が、前記出力信号に基づいて決定される。幾つかの実施形態において、動作406は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理的コンピュータ処理器より行われる。
【0047】
動作408において、1つ以上の時間ウィンドウにわたる1つ以上の呼吸特徴の分布が決定される。幾つかの実施形態において、動作406は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理的コンピュータ処理器により行われる。
【0048】
動作410において、1つ以上の呼吸事象が、前記出力信号に基づいて検出される。幾つかの実施形態において、動作410は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理的コンピュータ処理器により行われる。
【0049】
動作412において、被験者の睡眠状態が、呼吸特徴の分布及び1つ以上の呼吸事象に基づいて決定される。幾つかの実施形態において、動作412は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理的コンピュータ処理器により行われる。
【0050】
動作414において、現在の睡眠状態を示すフィードバック情報が供給される。幾つかの実施形態において、動作414は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理コンピュータ処理器により行われる。
【0051】
本開示のシステム及び方法は、CPAP療法のユーザに、自身の睡眠に関する客観的なフィードバックを供給する。このフィードバックは、例えば、コーチングアプリで使用され、一般的には睡眠に関する知識、及び特別な場合はCPAPマシンを用いた睡眠の利点に関する知識を向上させ、順守を向上させるのに役立つ可能性がある。
【0052】
図6Aは、1つ以上の実施形態による、CPAP装置10を用いた呼吸療法セッション中の被験者の睡眠段階を分類するためのシステム600を示す。幾つかの実施形態において、システム600は、CPAP装置10を用いて提供される呼吸療法セッション中の被験者の呼吸パラメタを決定するように構成される。呼吸パラメタを決定することは、被験者の個々の呼吸を検出することを含む。システム600は、個々の呼吸の呼吸特徴に基づいて、治療セッション中の被験者の睡眠段階を分類するように構成される。幾つかの実施形態において、CPAP装置は、圧力発生器20、(図1との関連で上述した)1つ以上のセンサ40、被験者インターフェース90、(図1との関連で上述した)1つ以上の物理的コンピュータ処理器60、(図1との関連で上述した)ユーザインターフェース120、(図1との関連で上述した)電子記憶装置130、(図1との関連で上述した)ネットワーク150及び/又は他の構成要素の1つ以上を有する。
【0053】
明細書で意味する「呼吸療法」は、OSAを治療するために被験者がCPAP装置を使用するセッション又は時間期間である。治療は通例、1つ以上の処理器(例えば、以下に説明される処理器60)により制御されるソフトウェアプログラム又はアルゴリズムに従って、被験者に気道陽圧を供給することを含む。幾つかの実施形態において、本明細書で意味する「呼吸療法」は、呼吸可能ガス療法(例えば、酸素又は他の呼吸可能ガス療法)である。1つ以上の実施形態において、CPAP装置、センサ、圧力発生器及び1つ以上の処理器は、参照することでその全体が組み込まれる、米国特許番号第7168429B2が教えることに従って構成されることができる。
【0054】
幾つかの実施形態において、圧力発生器20は、被験者70の気道に送出するための加圧されるガス流を生成するように構成される。圧力発生器20は、治療目的及び/又は他の目的のために、ガス流の1つ以上のパラメタ(例えば、流量、圧力、容積、温度、ガス組成等)制御する。限定ではない例として、圧力発生器20は、被験者70の気道に圧力支持を施すために、ガス流の流量及び/又は圧力を制御するように構成される。
【0055】
幾つかの実施形態において、圧力発生器20は、ガス供給源から呼吸可能なガスの供給を受け、被験者の気道への送出のためにそのガスの圧力を上昇させる。圧力発生器20は、被験者に送出するために、ガス供給源から受け取った呼吸可能ガスの圧力を上昇させることが可能である如何なる装置、例えばポンプ、送風機、ピストン又はふいごを含む。例えば、幾つかの実施形態において、圧力発生器20は、圧力支持治療中に、一定の速度で駆動し、一定の圧力又は流量を生成する送風機でもよい。幾つかの実施形態において、圧力発生器20は、ガス流の圧力、流量、流れ方向及び/又は他のパラメタを制御するための1つ以上の弁を含む。本開示は、送風機の動作速度を、例えば、単独で又は圧力発生器20内及び/又は外部に含まれる1つ以上の弁及び/又は他の装置と組み合わせての何れか一方により制御し、被験者70に供給されるガスの圧力及び/又は流量を制御することを考慮している。
【0056】
ガス供給源は、圧力発生器20によりシステム内に吸い込まれる大気空気でもよい。幾つかの実施形態において、ガス供給源は、圧力発生器20と流体連通する、加圧されるガス(例えば酸素、空気又は呼吸可能なガスの他の混合物)のタンクを有する。幾つかの場合、別個のガス供給源が用いられる必要はなく、代わりに、圧力発生器20自体が加圧されるガスのキャニスタ又はタンクと規定されてもよく、患者に送出される圧力は、圧力調整器により制御される。
【0057】
被験者インターフェース90は、被験者70の気道に加圧される呼吸可能なガス流を伝えるように構成される。そのようなものとして、幾つかの実施形態において、対象インターフェース90は、導管50、インターフェース器具80及び/又は他の構成要素を有する。幾つかの実施形態において、導管50は、インターフェース器具80に加圧されるガス流を伝えるように構成される。インターフェース器具80は、被験者70の気道にガス流を送出するように構成される。幾つかの実施形態において、インターフェース器具80は、被験者70により非侵襲的に係合されるように構成される。非侵襲的な係合は、被験者70の気道の1つ以上の外口(例えば、鼻孔及び/又は口)と取り外し可能に係合し、被験者70の気道とインターフェース器具80との間でガスを伝えることを含む。幾つかの実施形態において、インターフェース器具80は、導管50に取り外し可能に結合される。インターフェース器具80は、清掃及び/又は他の目的のために取り外すことができる。幾つかの実施形態において、導管50は、被験者70の口により係合されるマウスピースとして構成される。
【0058】
幾つかの実施形態において、他のインターフェース機器がインターフェース機器80として構成されてもよい。インターフェース器具80の幾つかの例は、例えば鼻カニューレ、鼻マスク、鼻/口マスク、フルフェイスマスク、トータルフェイスマスク又は被験者の気道とでガス流を伝達する他のインターフェース器具を有する。本開示は、これらの例に限定されず、如何なるインターフェース器具、例えば気管内チューブ、気管切開チューブ、LMA(laryngeal mask airway)及び/又は他の侵襲的インターフェース機器を用いて、被験者にガス流を送出することも考慮している。
【0059】
幾つかの実施形態において、(図1との関連で上述した)制御構成要素33は、CPAP装置10の動作を制御するように構成される。例えば、幾つかの実施形態において、制御構成要素33は、1つ以上の治療計画(陽圧支持治療計画又は他の呼吸療法)に従ってガス流を生成するように、圧力発生器20を制御するように構成される。幾つかの場合において、制御構成要素33は、センサ40からの出力信号に基づいて、パラメタ構成要素32により決定される情報に基づいて及び/又はシステム100内又は外部の1つ以上の構成要素からの情報に基づいて、圧力発生器20の動作を制御するように構成される。例えば、陽圧気道支持療法において、圧力発生器20により生成される加圧されるガス流は、患者の規則的な呼吸に取って代わる及び/又は補完するように制御される。陽圧気道支持療法は、酸素及び二酸化炭素がより簡単に交換され、患者からの努力を殆ど及び/又は全く必要としないように、患者の開放気道を維持するために使用される。
【0060】
幾つかの実施形態において、制御構成要素33は、ガス流を介して被験者に提供される圧力支持が、持続的陽圧気道支持(CPAP)、バイレベル陽圧気道支持(BPAP)、比例陽圧気道支持(PPAP)、強制振動技術及び/又は他の種類の圧力支持療法を有するような圧力発生器20を制御する。CPAPは、患者に持続的な陽圧気道レベルを維持するために、一定の陽圧を供給する。BPAPは、第1の吸気圧(IPAP)及び換気中のより容易な呼気のための、第2の、通例はより低い呼気圧(EPEP)を供給する。幾つかの治療モード(例えば、PPAP)において、制御構成要素33は、吸入中及び/又は呼気中に患者に送出される圧力の量が呼吸毎に決定及び送出される可変圧力支持を適用するように、圧力発生器20を制御する。幾つかの実施形態において、制御構成要素33は、呼気中、供給される圧力を一時的に低下させ(C-Flex)、患者が必要とする呼気努力を減らすように圧力発生器20を制御するように構成される。
【0061】
幾つかの実施形態において、制御構成要素33は、段階的な圧力支持を送出するように圧力発生器20を制御するように構成される。段階的な圧力支持治療において、圧力発生器20により送出される圧力は、時間の経過と共に徐々に増加する。幾つかの実施形態において、制御構成要素33は、被験者70の呼吸に関する情報及び/又は他の情報に基づいて治療モードを切り替えるように圧力発生器20を制御する。例えば、制御構成要素33は、被験者70による一定数の呼吸の後、BPAPからCPAPに変化するように圧力発生器20を制御する。
【0062】
図5は、1つ以上の実施形態による、所定の呼吸特徴の経時的な分布を決定するために使用されるウィンドウ処理の例500を示す。図5は、呼吸特徴値504の経時的な分布502を示す。この分布のY軸は、呼吸特徴値504を表す。例えば、幾つかの実施形態において、呼吸特徴は、被験者の1回換気量でもよい。この場合、Y軸は1回換気量値を表す。この分布のX軸は時間を表す。図5の例において、30秒のエポック508を中心とするスライディングウィンドウ503は、このスライディング時間ウィンドウ503にわたる呼吸特徴の特性付け(characterization)510に使用される。スライディングウィンドウ503は、呼吸特徴値が分析される(又は特徴付けられる)時間量を表す。図から分かるように、スライディング時間ウィンドウ503は、少なくとも30秒の長さを有する。幾つかの例において、ウィンドウ503の長さは、異なるサイズ(例えば、60、90、120等)でもよい。幾つかの場合、特徴付け510は、異なるサイズ(長さ)を持つ複数のウィンドウ503にわたり行われてもよい。時間ウィンドウ503は、そのウィンドウに含まれる呼吸数からは独立している。これは、呼吸特徴の特徴付けが、個々の呼吸に局所化されるか、又は呼吸の短いシーケンス(例えば、5回の呼吸)で行われるかの何れかである、及び変動性(分散又は標準偏差)が測定される以前の方法よりも優れている。多数の特性値512は、各ウィンドウ503中に起こる(検出した呼吸と時間的に関連付けられる)呼吸特徴値の組の各々にわたり計算される。現在のエポックに対するウィンドウの位置は、異なる位置をとることができることにも留意されたい。図5は、現在のエポックを中心とするウィンドウを示し、従って、現在のエポックを取り囲む過去及び将来のエポックの両方からのデータを使用している。純粋な随意睡眠状態分類器を実施することが望ましい他のシナリオにおいて、ウィンドウは、現在のエポックに進み、この現在のエポックを含むこともできる。
【0063】
幾つかの実施形態において、明細書に記載されるシステム600の処理機能は、上述したシステム100の構成要素を含む治療装置(例えば、CPAP装置)において局所的に達成される。幾つかの実施形態において、明細書に記載されるシステム100の処理機能は、システム100の外部で(例えば、ネットワーク150を介してシステム100に接続される1つ以上の装置により遠隔的に)達成される。幾つかの実施形態において、明細書に記載される処理機能は、局所的に実行される処理機能と、遠隔的に実行される処理機能との組み合わせでもよい。
【0064】
図6Bは、1つ以上の実施形態による、CPAP装置10を用いた呼吸療法セッション中の被験者の睡眠段階を分類するためのシステム600の一例を示す。このシステムは、被験者に呼吸療法を施すためのCPAP装置10を有する。CPAP装置10は、被験者に送出するための加圧される呼吸可能なガス流を生成するための圧力発生器20(図6Bに図示せず)を有する。システム600は、被験者の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号を生成するための1つ以上のセンサ(図6Bに図示せず)を有する。例えば、1つ以上のセンサは、空気流602及び/又は圧力604を測定するように構成される。システム600は、出力信号に基づいて被験者の個々の呼吸603を検出するように構成されるコンピュータ処理器を有する。このコンピュータ処理器は、1つ以上の時間ウィンドウにわたる呼吸特徴の分布608を決定するように構成される。幾つかの実施形態において、時間ウィンドウは、異なる長さ610である。コンピュータ処理器は、睡眠段階分類器を用いて、呼吸特徴の分布を1つ以上の睡眠状態にマッピングすることにより、被験者612の現在の睡眠状態を決定するように構成される。システム600は、現在の睡眠状態を示すフィードバック情報を供給する(614)。例えば、システム600は、決定された睡眠段階を表示する(613)ように構成されてもよい。例えば、表示は、上述したユーザインターフェースでもよい。
【0065】
図7は、CPAP装置を用いた呼吸療法セッション中の被験者の睡眠段階を分類するための方法700を示す。以下に示される方法700の動作は、例示を目的としている。幾つかの実施形態において、方法700は、説明されていない1つ以上の追加の動作を用いて及び/又は説明された動作の1つ以上を用いずに達成されてもよい。加えて、図7に例示され、以下に説明される方法700が動作する順番は、限定を目的としていない。
【0066】
幾つかの実施形態において、方法700は、1つ以上の処理装置(例えば、デジタル処理器、アナログ処理器、情報を処理するように設計されるデジタル回路、情報を処理するように設計されるアナログ回路、ステートマシン及び/又は情報を電子的に処理するための他の機構)において実施される。1つ以上の処理装置は、電子記憶媒体に電子的に記憶される命令に応じて。方法700の動作の幾つか又は全てを実行する1つ以上の装置を含む。1つ以上の処理装置は、ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを介して、方法700の動作の1つ以上を実行するために特に設計されるように構成される1つ以上の装置を含む。
【0067】
動作704において、被験者の1つ以上の呼吸パラメタに関する情報を搬送する出力信号が生成される。幾つかの実施形態において、動作704は、(図1に示され、明細書に説明される)センサ40と同じ又は同様の1つ以上のセンサにより行われる。
【0068】
動作706において、被験者の個々の呼吸の1つ以上の呼吸特徴が、前記出力信号に基づいて決定される。幾つかの実施形態において、動作706は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理コンピュータ処理器により行われる。
【0069】
動作708において、少なくとも60秒の長さを各々持つ1つ以上の時間ウィンドウにわたる1つ以上の呼吸特徴の分布が決定される。幾つかの実施形態において、動作708は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理コンピュータ処理器により行われる。
【0070】
動作710において、睡眠段階分類器を用いて、呼吸特徴の分布を1つ以上の睡眠状態にマッピングすることにより、被験者の睡眠状態が決定される。睡眠段階分類器は、現在の睡眠状態を決定するように構成される1つ以上のモデルを有する。幾つかの実施形態において、動作710は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理コンピュータ処理器により行われる。
【0071】
動作712において、呼吸睡眠セッション中の睡眠状態を示すフィードバック情報が供給される。幾つかの実施形態において、動作712は、(図1に示され、明細書に説明される)処理器60と同じ又は同様の物理コンピュータ処理器により行われる。
【0072】
請求項において、括弧の間に置かれる如何なる参照記号もその請求項を限定すると解釈されるべきではない。「有する」又は「含む」という言葉は、請求項に挙げられる以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。幾つかの手段を列挙している装置の請求項において、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの同一のアイテムにより具現化されてもよい。要素が複数あると述べていなくても、その要素が複数あることを排除しない。幾つかの手段を列挙している如何なる装置の請求項において、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの1つの同じアイテムによって具現化されてもよい。幾つかの要素が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの要素が組み合わせて使用されることができないことを示していない。
【0073】
上述した説明が、最も実用的で好ましい実施形態であると現在考えられているものに基づいて、例示の目的に詳細を提供したとしても、そのような詳細は、単に例示が目的であること、並びに本開示は、明確に開示される実施形態に限定されるのではなく、それどころか添付の特許請求の範囲の主旨及び範囲内にある修正案及び同等の構成を含むことが意図されることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な限り、何れかの実施形態の1つ以上の特徴が他の何れかの実施形態の1つ以上の特徴と組み合わされ得ることを考えていると理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7