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  • 特許-分光学的装置および方法 図1
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  • 特許-分光学的装置および方法 図4a
  • 特許-分光学的装置および方法 図4b
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  • 特許-分光学的装置および方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】分光学的装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
G01N21/65
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021520574
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 GB2019052966
(87)【国際公開番号】W WO2020079439
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】1817028.2
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジョン エドワード スミス
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514581(JP,A)
【文献】特表2015-532977(JP,A)
【文献】特開2001-059772(JP,A)
【文献】特開2005-043271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0070280(US,A1)
【文献】XIN WANG; ET AL,A BASELINE CORRECTION ALGORITHM FOR RAMAN SPECTROSCOPY BY ADAPTIVE KNOTS B-SPLINE,MEASUREMENT SCIENCE AND TECHNOLOGY,英国,IOP,2015年10月16日,VOL:26, NR:11,PAGE(S):115503(1-7),http://dx.doi.org/10.1088/0957-0233/26/11/115503
【文献】WENNI ZHENG; ET AL,FAST B-SPLINE CURVE FITTING BY L-BFGS,COMPUTER AIDED GEOMETRIC DESIGN,NL,2012年10月,VOL:29,NR:7,PAGE(S):448-462,https://doi.org/10.1016/j.cagd.2012.03.004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/83
G01J 3 /00-G01J 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光計によって記録されたスペクトルデータを平滑化する方法であって、
複数のスプライン曲線を前記スペクトルデータに連続的に適合させるステップであって、各スプライン曲線は異なる数のノットを有し、各スプライン曲線における終点ノット以外の各ノットのノット位置は、前記スペクトルデータに対して少ないノットを有する、以前に適合された前記スプライン曲線のうちの1つの点の適合度に基づいて決定される、該ステップと、
モデル選択基準に基づいて、前記スプライン曲線うちの1つを前記スペクトルデータの平滑化されたデータ曲線として選択するステップと
を含み、
前記モデル選択基準は、前記スプライン曲線が前記スペクトルデータに適合する可能性とともに増加するが、前記ノットの形でパラメータを追加することに対するペナルティに対してバランスがとられる尺度であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ノット位置は、前記適合度を使用して決定されるとき、前記以前に適合された前記スプライン曲線のうちの1つの不十分に適合された点の位置に対応することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不十分に適合された点は、前記ノットの許容位置に対する最悪の適合度を有する点であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スプライン曲線の各点についての前記適合度は、その点と前記スペクトルデータ内の対応する点との間の残余に基づくことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
各点についての適合度は、前記適合されたスプライン曲線の他の点と前記スペクトルデータ内の対応する点との間の残余に基づくことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のスプライン曲線のうちの前記スプライン曲線は、2からN/Kノットの間を有し、および該方法は、前記複数のスプライン曲線のうちのどれが前記モデル選択基準の極値をもたらすかを決定することを含み、ここで、Nは、前記スペクトルデータ内のデータ点の数であり、Kは、前記ノット間の点における最小分離距離であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記複数のスプライン曲線のそれぞれを前記スペクトルデータに連続的に適合させることは、最小のノット数の前記スプライン曲線で開始し、最大のノット数の前記スプライン曲線で終了することを含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記連続的に適合された各スプライン曲線は、前記スペクトルデータに適合された直前のスプライン曲線からのもう1つのノットを有することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記連続的に適合されたスプライン曲線のそれぞれに追加されたノットの位置は、直前のスプライン曲線の適合が不十分な点の位置に対応することを特徴とする請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記平滑化されたデータ曲線の分析から、前記スペクトルデータを生成したサンプルの特性を識別することを含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成されたことを特徴とするプロセッサ。
【請求項12】
サンプルからスペクトルデータを取得するための分光計と、請求項11に記載のプロセッサとを含むことを特徴とする分光計システム。
【請求項13】
命令が格納されているデータキャリアであって、該命令は、プロセッサによって実行される、該プロセッサに、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法を実行させることを特徴とするデータキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光学的装置および方法に関し、特に、ラマン分光法において有用であり、他の形態の分光法、たとえば、狭線光発光、蛍光、陰極発光、UV可視(UV Vis)、核磁気共鳴(NMR)、中赤外(mid-IR)または近赤外(NIR)にも利用可能である。
【背景技術】
【0002】
ラマン効果は、サンプルによる光の非弾性散乱である。ラマン分光法では、サンプルに単色レーザー光を照射し、散乱光を回折格子などの分散装置(モノクロメータなど)で分散させて、ラマンスペクトルと呼ばれるスペクトルを生成する。ラマンスペクトルは、電荷結合デバイス(CCD)などの検出器によって検出され、スペクトルデータが生成される。ラマン分光装置の例は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献1および特許文献2から知られている。
【0003】
化合物が異なれば、特徴的なラマンスペクトルも異なる。したがって、ラマン効果を使用して、サンプルに存在する化合物を分析することができる。
【0004】
スペクトルデータは、ノイズを備えたラマンスペクトルで構成される。ノイズの存在は、ラマン信号の分析に影響を与える可能性がある。たとえば、分析が信号内のピークの下の面積を決定することを含む場合、ノイズの存在は、面積を決定するための適切なベースラインを特定することを困難にする可能性がある。図1は、ラマンスペクトルのピークとノイズを含むスペクトルデータの例である。見てわかるように、ノイズの存在はスペクトルのピークを覆い隠す。
【0005】
Savitzky-Golayフィルタは、データを平滑化する目的で、つまり、信号を大きく歪ませることなく信号対雑音比を高める目的で、一連のデジタルデータ点に適用できるデジタルフィルタである。ただし、Savitzky-Golay平滑化は、不要なノイズだけでなく鋭いスペクトルピークも除去する傾向があるため、このような平滑化手法は、鋭いピークを持つスペクトル信号には不適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5,442,438号
【文献】米国特許第5,510,894号
【文献】WO2012/156667
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、複数のスプライン曲線をスペクトルデータに連続的に適合させることを含む、分光計によって記録されたスペクトルデータを平滑化する方法が提供され、各スプライン曲線は、異なる数のノット(knot)を有し、各スプライン曲線において、終点ノット以外の各ノット位置は、スペクトルデータに対して少ないノットを有する、以前に適合されたスプライン曲線の1つの点の適合度に基づいて決定され、モデル選択基準に基づいて、スプライン曲線のうちの1つを、スペクトルデータの平滑化されたデータ曲線として選択する。
【0008】
このようにして、ノット間の間隔は、スペクトルデータのローカル情報コンテンツに基づいて調整され、平滑化されたデータ曲線に鋭いスペクトルピークを保持しながら、同様に鋭いノイズが除去される。
【0009】
本明細書で使用される「スプライン曲線」という用語は、1つまたは複数の多項式によって区分的に定義される関数を意味する。各多項式は、ノットと呼ばれる2つの点の間に広がる。複数のスプライン曲線の各スプライン曲線におけるノットの総数は、2(すなわち、2つの終点ノットのみ)とN/Kとの間である。 ここで、Nはスペクトルデータ内のデータ点の総数であり、点において、Kは最小許容のノットの分離である。Kは、通常、1より大きく、好ましくは2から10の間である。終点ノットは、その間にすべての多項式が適合する、スプライン曲線の両端に位置するノットである。
【0010】
ノット位置は、適合度を使用して決定されるとき、以前に適合されたスプライン曲線のうちの1つの不十分に適合された点の位置に対応する。適合不良の点は、ノットの許容位置の適合度によって決定されるとき、すべての点の最良の適合ではない適合を有する点、50%の1つである点、好ましくは10%の最悪の適合点の1つである点、好ましくは最悪の適合点である。ノットの位置には、1つまたは複数の制限が規定される場合がある。例えば、ノット位置の許容位置は、以前に適合されたスプライン曲線のノットから離れた、1、2、3以上などの所定の数を超えるデータ点である位置である。これにより、最小のノット分離距離が確保される。
【0011】
モデル選択基準は、スプライン曲線がスペクトルデータに適合する可能性とともに増加する尺度であるが、ベイズ(Bayesian)情報量基準又はAkaike情報量基準などのノットの形式でパラメータを追加することに対するペナルティとバランスが取れている尺度である。このようにして、過剰適合が軽減される。
【0012】
複数のスプライン曲線のうちのスプライン曲線は、2からN/Kノットの間を有することができる。この方法は、複数のスプライン曲線のうちのどれがモデル選択基準の極値(BICおよびAICの場合、最小値)をもたらすかを決定することを含む。
【0013】
この方法は、複数のスプライン曲線のそれぞれをスペクトルデータに連続的に適合させることと、最小のノット数のスプライン曲線で開始することと、最大のノット数のスプライン曲線で終了することとを含む。連続して適合された各スプライン曲線は、スペクトルデータに適合された直前のスプライン曲線からのもう1つのノット(のみ)を有することがある。連続して適合されるスプライン曲線ごとに追加されたノットの位置は、直前のスプライン曲線の適合が不十分な点の位置に対応していることがある。
【0014】
あるいは、連続して適合された各曲線には、直前の適合されたスプライン曲線に使用されたノットに対して、追加または削除されたランダムな数のノットを有することがある(ただし、ノットの総数は、2~N/Kである必要がある)。
【0015】
適合されたスプライン曲線の各点の適合度は、その点とスペクトルデータ内の対応する点との間の不一致(例えば、残余)に基づくことがある。しかしながら、各点についての適合度は、その点だけに基づくのではなく、適合されたスプライン曲線とスペクトルデータ内の対応する点の、隣接する(例えば、直接隣接する)点、又はその前のすべての点などの、他の点間の残余に基づくことができることが理解される。例えば、ノット位置は、Savitzky-Golayフィルタなどの平滑化アルゴリズムを、以前に適合されたスプライン曲線のすべての点の残余に適用することによって残余平滑化曲線を生成することによって決定できる。ノット位置は、残余平滑化曲線上の最大点に対応する。代替の実施形態では、各点の適合度は、点に沿って連続的に進むときの、その点までの残余の累積和から決定することができる。ノットの位置は、残差の累積和の曲線上の最大点に対応する。他の点の残差を考慮に入れることで、ノットがピークの上部に位置する可能性を減らすように使用される。ノットを、ピークの上部またはその近くに配置すると、この領域内の滑らかさを失すことがある。このような適合度を使用すると、「最悪の」適合点は、スペクトルデータから最大の残余が得られる点ではない可能性があり、したがって、ピークの頂点にある点ではない可能性がある。
【0016】
この方法は、平滑化されたデータ曲線の分析から、スペクトルデータを生成したサンプルの特性を識別することを含む。この方法は、サンプル中に存在する1つまたは複数の成分を識別することを含む。この方法は、サンプル中の成分の濃度などの特性を特定するために、平滑化されたデータ曲線の1つの曲線の下の面積を決定することを含む。この方法は、平滑化されたデータ曲線から識別されたサンプルの特性に基づいて、サンプルのマップを生成することを含む。
【0017】
この方法は、サンプルを表すスペクトルとして、例えばディスプレイ上に、平滑化されたデータ曲線を出力することを含む。例えば、ユーザは、平滑化されたデータ曲線から、サンプル内に存在する1つまたは複数の成分をより容易に視覚的に識別することができる。
【0018】
この方法は、平滑化されたデータ曲線に基づいて、成分スペクトルのライブラリを検索することを含む。
【0019】
この方法は、サンプルの特性を特定して平滑化されたデータ曲線を分析することと、プロセスを制御することと、および/または特定された特性に基づいてサンプルについてさらなる処理を実行することとを含む。例えば、プロセスは製造プロセスである。サンプルは、1つまたは複数の製造された製品のサンプルであり、識別された特性は、製造された製品が必要な仕様を満たしているかどうかを決定するように使用される。必要な仕様を満たしていない場合は、製品が必要な仕様に合わせて製造されるように、プロセスの調整が必要である。サンプルは組織サンプルであり、プロセスは組織サンプルを提供する患者の治療である。この方法は、チェック手順、例えば、セキュリティ手順または品質制御手順、の一部として使用することができ、平滑化されたデータ曲線の分析に基づいて、アラームを生成することを含む。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様の方法を実行するように構成されたプロセッサが提供される。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、サンプルからスペクトルデータを取得するための分光計と、本発明の第2の態様によるプロセッサとを含む、分光計システムが提供される。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、命令が格納されたデータキャリアが提供され、その命令は、プロセスによって実行されると、プロセスを引き起こし、または本発明の第1の態様の方法を実行する。
【0023】
データキャリアは、揮発性メモリ、例えばRAM、不揮発性メモリ、例えばROM、フラッシュメモリ、およびハードディスク、光ディスクなどのデータストレージデバイス、などの一時的データキャリア、又は、電子信号若しくは光信号などの非一時的データキャリアであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ラマンスペクトルとノイズの両方を含む、ラマン分光計によって記録されたスペクトルデータを示す図である。
図2】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
図3図1に示すスペクトルデータから生成された平滑化されたデータ曲線を示す図である。
図4a】サンプル上のさまざまな点によって生成された平滑化されていないスペクトルデータの分析に基づくサンプルのマップを示す図である。
図4b】対応するマップを示し、ここで、分析は、スペクトルデータの平滑化されたデータ曲線上で実行されることを示す図である。
図5】適合の第1の尺度を使用して決定された平滑化されたデータ曲線でオーバーレイされたスペクトルデータを示す図である。
図6】2番目の適合度を使用して決定された平滑化されたデータ曲線でオーバーレイされたスペクトルデータを示し、ここでは、ノットの位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図2を参照すると、本発明の実施形態は、例えばコンピュータによって、分光計によって記録されたスペクトルデータを受信することを含む。スペクトルデータは、ラマン分光計によって生成されたデータである。図1は、各波数のカウント数(ラマンシフト)を含む受信可能なスペクトルデータのタイプを示す。カウントは、その波数で収集された光の強度の測定値である。スペクトルデータは、スペクトル情報とノイズで構成される。ラマン分光計は、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献3に記載されているものに従うことができる。
【0026】
コンピュータは、スペクトルデータを処理して、ノイズのないスペクトルデータを表す平滑化されたデータ曲線を生成する。平滑化されたデータを生成する方法は、異なる数のノット(knot)を有する複数のスプライン曲線をスペクトルデータに連続的に適合させることを含む103。複数のスプライン曲線の各スプライン曲線には、いくつかのノットnがあり、nは、2からN/Kで変化する。ここで、Nは、スペクトルデータ内のデータ点の総数であり、Kは、点におけるノット間の最小分離距離である。モデル選択値は、モデル選択基準に従ってスプライン曲線ごとに計算される104。この実施形態では、モデル選択値は、以下によって与えられるベイズ(Bayesian)情報量基準(BIC)を使用して計算されたBIC値である。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、
【0029】
【数2】
【0030】
は、近似スプライン曲線の尤度関数の最大値である。Nは、スペクトルデータ内のデータ点の数であり、kは、スプライン曲線によって推定されたパラメータの数であり、Aは、BICの2つの項の間の相対的な重み付けである。スプライン間隔ごとの3次多項式の適合することを含むスプラインの場合、スプライン間隔ごとに返される変数の数が4であるときは、kは、4nと見なされる。古典的なBICの場合、Aは2の値になる。しかしながら、本発明は、実施形態を含み、Aは、0.5から10の間の値を有する。BICの導出が均一なノイズを想定しているとき、2以外の値が正当化されるのに対して、スペクトルデータが均一なノイズを含まない場合、および/または、各ノットによって追加される変数の数が4と異なる場合がある。
【0031】
次に、最も低いBIC値を有するスプライン曲線は、スペクトルデータの平滑化されたデータ曲線として返される108。
【0032】
この実施形態では、アルゴリズムは、スペクトルデータの終点に配置された2つのノットを有する第1のスプライン曲線を適合103することによって開始する。適合された第1のスプライン曲線についてBIC値が計算される104。ノットの数がN/K未満であると判断された場合105、次に、第1のスプライン曲線の最悪の適合点が、適合度に従って決定される106。
【0033】
第1の実施形態では、各点の適合度は、スプライン曲線上の点とスペクトルデータ内の対応する点との間の残余である。追加ノットの候補位置と見なされる点について残余が最大の点は、最悪の適合点と見なされる。次に、次のスプライン曲線の追加ノットのノット位置が、最悪の適合点について波数位置として指定される。最小分離距離がノットについて設定される。したがって、既存のノットから最小閾値距離(データ点の数)の外側の点のみが、追加のノットについての候補位置と見なすことができる。最小分離距離は、ユーザによって選択できるが、通常は、2つのノットを同じ位置に配置できないように0より大きくなる。3の最小分離距離、すなわちK=3が効果的であることがわかっている。
【0034】
第1のスプライン曲線と同様に、追加のノットを有する次のスプライン曲線が、スペクトルデータに適合され103、およびその適合されたスプライン曲線についてBICが計算される104。
【0035】
次に、このループ103から107が繰り返され、異なる数のノットを有するさらなるスプライン曲線がスペクトルデータに適合され、N/Kノットを有するスプライン曲線がスペクトルデータに適合されるまで、BIC値が計算される。
【0036】
ステップ108において、最も低いBIC値を有する複数のスプライン曲線のうちのスプライン曲線は、スペクトルデータの平滑化されたデータ曲線として出力される。
【0037】
平滑化されたデータ曲線は、ユーザに表示され、および/またはスペクトルデータを生成したサンプルの分析に使用される。平滑化されたデータ曲線を分析に使用し、サンプルの表現を生成すると、関心のある情報のより明確な、および/または、より正確な表現が得られる。
【0038】
図4aおよび図4bは、サンプルによって生成された同じラマンスペクトルデータから生成されたマップ201、202を示す。スペクトルデータのマップ201、202は、サンプルのより大きな白色光画像上にオーバーレイされる。マップは、サンプル上のさまざまな点の989nmから1019nmの間のラマンピークの下の領域を表す。図1図3は、関心のあるピークを示す。図4aは生のスペクトルデータから生成されたマップであり、図4bはスペクトルデータから生成された平滑化されたデータ曲線から生成されたマップである。ご覧のとおり、2つのマップは大幅に異なる。ラマンピークを決定するために、バックグラウンドの放射線源に対応するベースラインが設定される。ただし、信号のノイズにより、このベースラインの場所に不確実性が生じる可能性がある。ベースラインの位置の不一致は、ピークの下の計算された面積の変動をもたらす可能性があり、したがって、サンプルの非代表的なマッピングをもたらす可能性がある。曲線の平滑化によってノイズを除去すると、この問題が軽減され、サンプルの組成をよりよく表すマッピングが得られる。
【0039】
図5は、スペクトルデータ、上記の実施形態に従って生成された平滑化データ曲線、平滑化データ曲線とスペクトルデータとの間の残余、およびノット位置(アンカー点と呼ばれる)を示す。見てわかるように、この例では、いくつかのノットがスペクトルピークと一致する位置に配置されている。これにより、図5に示すキン(kink)クなどの不自然な形状が生じる可能性がある。この問題を軽減するために、異なる適合度を使用して、スペクトルピークの上部がノット位置として識別される可能性を減らすことができる。例えば、各点の適合度は、残余の平滑化された曲線(本明細書では「残余の平滑化された曲線」と呼ばれる)から決定される。このような残余平滑化曲線は、Savitzky-Golayフィルタなどの平滑化アルゴリズムを、以前に近似されたスプライン曲線のすべての点についての残余に適用することによって生成できる。追加のノットについてのノット位置は、残りの平滑化された曲線上の最大点に対応する場合がある。
【0040】
図6は、測定値に従って生成されたスペクトルデータと平滑化されたデータ曲線とを示す。各点についての適合度は、他の点と対象点についての残余に依存している。図6は、平滑化されたデータ曲線とスペクトルデータとの間の残余およびノット位置(アンカー点と呼ばれる)も示す。見てわかるように、この代替の適合度を使用すると、ノットがスペクトルピークの上部から離れて配置されるため、平滑化されたデータ曲線において滑らかなピーク形状になる。
【0041】
本明細書で定義される本発明から逸脱することなく、上記の実施形態に対して修正および変更を行うことができることが理解される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6