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特許7407818医療システムのためのボディ・エリア・ネットワーク通信衝突回避概念
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】医療システムのためのボディ・エリア・ネットワーク通信衝突回避概念
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20240101AFI20231222BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20231222BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20231222BHJP
   H04W 72/566 20230101ALI20231222BHJP
【FI】
H04W74/08
H04W84/10 110
H04W4/38
H04W72/566
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021534269
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2019074968
(87)【国際公開番号】W WO2020126132
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】62/780,952
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19152531.0
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユーゲリッヒ、ブルクハルト
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502534(JP,A)
【文献】特表2018-512802(JP,A)
【文献】特表2012-519440(JP,A)
【文献】特開2008-022106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークのノードを形成する複数のデバイス(10、20、30)を備える、医療システム(1)であって、前記複数のデバイスの各デバイス(10、20、30)が、前記ネットワーク中の別のデバイスからメッセージを受信することによって、又は前記ネットワーク中の別のデバイスにメッセージを送信することによって、ワイヤレス様式で前記ネットワークの別のデバイスと通信するように構成され、各デバイス(10、20、30)に優先度が割り当てられ、前記ネットワーク中でメッセージの他の送信が進行中でない限り、各デバイス(10、20、30)が、開始信号(S1、S2、S3)を送信することによってメッセージの送信を開始するように構成され、前記それぞれのデバイス(10、20、30)の前記優先度が高いほど、前記それぞれのデバイス(10、20、30)に割り振られた前記開始信号(S1、S2、S3)の持続時間(D1、D2、D3)が大きくなり、前記ネットワーク中のいくつかのデバイスが、開始信号を送信することによってメッセージの送信を同時に開始する場合、最も高い優先度を有する前記ネットワーク中のデバイスに、メッセージを送信する許可が自動的に与えられ
各デバイス(10、20、30)は、前記それぞれのデバイス(10、20、30)が、別のデバイスからのメッセージを受信することが可能であり、各デバイス(10、20、30)自体のメッセージを送信することが可能であり、前記ネットワークの別のデバイスの進行中の又は開始されたメッセージによって抑止されない、受信モード(R1、R2、R3)にあるように構成され、
前記それぞれのデバイス(10、20、30)が、開始信号(S1、S2、S3)を送信した後に、あらかじめ定義された時間期間の間、前記受信モード(R1、R2、R3)に戻るように構成され、前記それぞれのデバイス(10、20、30)がこの時間期間中に別のデバイスからの開始信号(S1、S2、S3)を受けた場合、前記それぞれのデバイス(10、20、30)は、他のデバイスからの開始信号の進行中の送信が終了するまで、前記それぞれのデバイス(10、20、30)自体のメッセージの送信を延期するように構成され、前記それぞれのデバイス(10、20、30)は、前記それぞれのデバイス(10、20、30)が、前記それぞれのデバイス(10、20、30)自体の開始信号が終了した後に、異なるデバイスからの開始信号の進行中の送信を受けなかった場合、前記それぞれのデバイス(10、20、30)自体のメッセージを送信するように構成された、医療システム。
【請求項2】
前記ネットワークがボディ・エリア・ネットワークである、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記デバイス(10、20、30)が、半二重モードで互いに通信するように構成された、請求項1又は2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記ネットワークのいかなる2つのデバイス(10、20、30)も同じ開始信号持続時間(D1、D2、D3)を有しない、請求項1からまでのいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項5】
各2つの開始信号(S1、S2、S3)の持続時間(D1、D2、D2)間の差が、最も長い遷移時間を有する、前記複数のデバイス(10、20、30)のうちの1つのデバイスの送信から受信モード(R1、R2、R3)への遷移時間よりも大きい、請求項1からまでのいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項6】
前記複数のデバイスが少なくとも第1の医療デバイス(10)と第2の医療デバイス(20)とを備える、請求項1からまでのいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項7】
前記第1のデバイス(10)が心内ペースメーカーであり、及び/又は前記第2のデバイス(20)が、心内ペースメーカーであるか、若しくは患者の血圧を測定するように構成されたセンサーである、請求項に記載の医療システム。
【請求項8】
前記第1のデバイス(10)が、患者の右心室中に埋め込まれるように構成された心内ペースメーカーである、請求項に記載の医療システム。
【請求項9】
前記第2のデバイス(20)が、患者の右心房中又は左心室中に埋め込まれるように構成された心内ペースメーカーである、請求項又はに記載の医療システム。
【請求項10】
前記複数のデバイスが第3の医療デバイス(30)をさらに備える、請求項からまでのいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項11】
医療システム(1)のデバイス(10、20、30)間のワイヤレス通信のための方法であって、前記デバイス(10、20、30)がネットワークのノードを形成し、前記方法は、
各デバイス(10、20、30)に優先度を割り当てるステップと、
前記ネットワーク中でメッセージの他の送信が進行中でない限り、前記ネットワーク中の各デバイス(10、20、30)が、開始信号(S1、S2、S3)を送信することによってメッセージの送信を開始することを可能にするステップであって、前記それぞれのデバイス(10、20、30)の前記優先度が高いほど、前記それぞれのデバイス(10、20、30)に割り振られた前記開始信号(S1、S2、S3)の持続時間(D1、D2、D3)が大きくなる、メッセージの送信を開始することを可能にするステップと、
ネットワーク中のいくつかのデバイス(10、20、30)が、開始信号(S1、S2、S3)を送信することによって送信を同時に開始する場合、最も高い優先度を有する前記ネットワーク中のデバイス(10、20、30)に、メッセージを送信する許可を与えるステップと
前記ネットワーク中の各デバイス(10、20、30)を、前記それぞれのデバイス(10、20、30)が、別のデバイスからのメッセージの送信を受信することが可能であり、前記各デバイス(10、20、30)自体のメッセージを送信することが可能であり、前記ネットワークの別のデバイスの進行中の又は開始されたメッセージによって抑止されない、受信モード(R1、R2、R3)に維持するさらなるステップと、
前記それぞれのデバイス(10、20、30)が、開始信号(S1、S2、S3)を送信した後に、あらかじめ定義された時間期間の間、前記受信モード(R1、R2、R3)に戻るようにプロンプトするさらなるステップと、前記それぞれのデバイス(10、20、30)がこの時間期間中に別のデバイスからの開始信号(S1、S2、S3)を受けたときに、前記それぞれのデバイス(10、20、30)のメッセージの送信を延期するさらなるステップと、前記それぞれのデバイス(10、20、30)が、前記それぞれのデバイス(10、20、30)自体の開始信号が終了した後に、異なるデバイスからの開始信号(S1、S2、S3)の進行中の送信を受けなかった場合、前記それぞれのデバイス(10、20、30)が前記それぞれのデバイス(10、20、30)自体のメッセージを送信することを可能にするさらなるステップと
を含む、ワイヤレス通信のための方法。
【請求項12】
前記ネットワークのいかなる2つのデバイス(10、20、30)も同じ開始信号持続時間(D1、D2、D3)を有しない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各2つの開始信号(S1、S2、S3)の持続時間(D1、D2、D3)間の差が、最も長い遷移時間を有する、前記複数のデバイスのうちの1つのデバイスの送信から受信モード(R1、R2、R3)への遷移時間よりも大きい、請求項11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク、特にボディ・エリア・ネットワーク(BAN:body area network)を利用する医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の枠組において、ボディ・エリア・ネットワーク(BAN)は、患者のボディ・エリア内でワイヤレス通信を実行することが可能なデバイスのネットワークである。それぞれのデバイスは、患者の身体の内側に位置する埋め込み可能なデバイスであるか、又は患者の身体の外側に位置するデバイスであり得る。人の身体の外側に位置するデバイスは、患者によって身に着けられるように構成され得、人の身体の上に配置され得る。BANのデバイスは、電波(無線通信)、振動電場及び/若しくは磁場又は超音波に基づく方法など、好適な通信方法を利用することによって、(特に短距離の)ワイヤレスで通信し得る。特に、IEEE802.15は、医学、コンシューマー・エレクトロニクス/パーソナル・エンターテインメントなどを含む、様々な適用例に役立つように、(人間に限定されないが)身体の上、中又は周りの低電力デバイス及び動作のために最適化された通信規格として、BANを公式に定義している。
【0003】
半二重モードで動作するネットワーク又はBANでは、2つの当事者(例えばデバイス)が、同時にではないが、互いに通信することができる(すなわち、通信は一度に1つの方向に行われる)。そのようなネットワーク/BANが(例えば埋め込み可能な)医療デバイス間の通信のために使用されることになっている場合、そのネットワーク/BANは、信頼できる適時の様式で情報の交換を可能にする必要がある。
【0004】
デバイス間の通信は、送信当事者が宛先当事者からの肯定応答を受信するまで送信当事者が送信を繰り返す、送信/応答方式を実装することによって、信頼できるものにされ得る。
【0005】
既存のソリューションは、信頼できる適時の様態でタイム・クリティカルな通信を処理しない。埋め込み可能な医療デバイス間の通信のために想定されたものなど、半二重ボディ・エリア・ネットワークは、同時に偶発的に始動されたときに別個のデバイスからの送信の衝突を防ぐ能力を必要とし得る。情報の送信の衝突は、クリティカルであることもあり、クリティカルでないこともある。
【0006】
送信されるべき情報がタイム・クリティカルでない場合、送信は、送信当事者が宛先当事者からの肯定応答を受信するまで送信当事者が送信を繰り返す、送信/応答方式を実装することによって、信頼できるものにされ得る。1つのデバイスによって送信されるべき情報が、異なる心腔中に埋め込まれた心内(intra-cardiac)ペースメーカー・アクティビティの同期においてなど、別のデバイスについてタイム・クリティカルである場合、肯定応答が観測されるまでの繰り返される送信では十分でないことがある。タイム・クリティカルな情報は、送信の潜在的な衝突を防ぐ通信概念を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、特に、ネットワーク(例えばBAN)が半二重モードで動作する場合に、ネットワーク中の送信の衝突を防ぐ通信概念を備える医療システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の特徴を有する医療システムと、請求項13に記載の特徴をもつ方法とが提供される。さらなる実施例は従属クレームにおいて述べられている。
【0009】
一態様では、医療システムによって与えられるネットワークのノードを形成する複数のデバイスを備える、医療システムが開示されており、前記複数のデバイスの各デバイスは、ネットワーク中の別のデバイスからメッセージを受信することによって、又はネットワーク中の別のデバイスにメッセージを送信することによって、ワイヤレス様式でネットワークを介して前記複数のデバイスの別のデバイスと通信するように構成され、各デバイスには優先度が割り当てられ、ネットワーク中でメッセージの他の送信が進行中でない限り、各デバイスが、開始信号を送信することによってメッセージの送信を開始するように構成され、それぞれのデバイスの優先度が高いほど、それぞれのデバイスに割り振られた開始信号の持続時間が大きくなり、ネットワーク中のいくつかのデバイスが、開始信号を送信することによってメッセージの送信を同時に開始する場合、最も高い優先度を有するネットワーク中のデバイスに、メッセージを送信する許可が自動的に与えられる。
【0010】
別の態様では、医療システムのデバイス間のワイヤレス通信ための方法が提供され、デバイスはネットワークのノードを形成し、
本方法は、
各デバイスに優先度を割り当てるステップと、
ネットワーク中でメッセージの他の送信が進行中でない限り、ネットワーク中の各デバイスが、開始信号を送信することによってメッセージの送信を開始することを可能にするステップであって、それぞれのデバイスの優先度が高いほど、それぞれのデバイスに割り振られた開始信号の持続時間が大きくなる、メッセージの送信を開始することを可能にするステップと、
ネットワーク中のいくつかのデバイスが、開始信号を送信することによって送信を同時に開始する場合、最も高い優先度を有するネットワーク中のデバイスに、メッセージを送信する許可を与えるステップと
を含む。
【0011】
本開示は、したがって、特に、ネットワーク/BANが半二重通信を備える場合に、ボディ・エリア・ネットワークなどのネットワークにおける通信衝突を防ぐための新規の概念を提供する。
【0012】
一実施例によれば、ネットワークは、(例えば上記で定義したような)ボディ・エリア・ネットワーク(BAN)である。
【0013】
さらに、本システムの一実施例によれば、デバイスは、半二重モードでネットワークを介して互いに通信するように構成される。
【0014】
さらに、一実施例によれば、各デバイスは、それぞれのデバイスが、別のデバイスからのメッセージを受信することが可能であり、各デバイス自体のメッセージを送信することが可能であり、ネットワークの別のデバイスの進行中の又は開始されたメッセージによって抑止されない、受信モードにあるように構成される。開始信号を送ることを開始することは、別のデバイスからのすでに進行中の開始信号又はメッセージによって抑止され得る。
【0015】
さらに、本システムの一実施例によれば、それぞれのデバイスは、開始信号を送信した後に、あらかじめ定義された時間期間の間、受信モードに戻るように構成され、それぞれのデバイスがこの時間期間中に別のデバイスからの開始信号を受信した場合、それぞれのデバイスは、他のデバイスからの開始信号の進行中の送信が終了するまで、それぞれのデバイス自体のメッセージの送信を延期するように構成され、それぞれのデバイスは、それぞれのデバイスが、それぞれのデバイス自体の開始信号が終了した後に、異なるデバイスからの開始信号の進行中の送信を受けなかった場合、それぞれのデバイス自体のメッセージを送信するように構成される。
【0016】
さらに、本システムの一実施例によれば、ネットワークのいかなる2つのデバイスも同じ開始信号持続時間を有しない。
【0017】
さらに、一実施例では、各2つの開始信号の持続時間間の差が、最も長い遷移時間を有する、複数のデバイスのうちの1つのデバイスの送信から受信モードへの遷移時間よりも大きい。
【0018】
さらに、本システムの一実施例によれば、複数のデバイスは少なくとも第1の医療デバイスと第2の医療デバイスとを備え、特に、第1のデバイスは埋め込み可能な医療デバイスであり、特に、第2の医療デバイスは埋め込み可能な医療デバイスである。
【0019】
さらに、一実施例によれば、第1のデバイスは、患者の心臓中に埋め込まれるように構成された、埋め込み可能な心内ペースメーカーである。さらに、一実施例によれば、第2のデバイスは、患者の心臓中に埋め込まれるように構成された、埋め込み可能な心内ペースメーカーである。代替的に、第2のデバイスはセンサーであり得る。センサーは、患者の血圧を測定するように構成され得るか、又はセンサーは、ECGを測定するように構成されたループ・レコーダであり得る。
【0020】
特に、第1のデバイスは、患者の右心室中に埋め込まれるように構成された心内ペースメーカーである。さらに、特に、第2のデバイスが心内ペースメーカーである場合、その心内ペースメーカーは、好ましくは、患者の右心房中、左心房中又は左心室中に埋め込まれるように構成される。
【0021】
さらなる一実施例によれば、複数のデバイスは第3の医療デバイスをさらに備え、特に、第3の医療デバイスは埋め込み可能な医療デバイスである。第3の医療デバイスは心内ペースメーカーであり得、その心内ペースメーカーは、患者の右心房中、左心房中又は左心室中に埋め込まれるように構成され得る。また、第3の医療デバイスは(例えば、患者の血圧を測定するように構成された)センサー、又はループ・レコーダであり得る。
【0022】
複数のデバイスはまた、4つ以上の医療デバイスを備え得る。
【0023】
さらに、本方法の一実施例では、本方法は、最も高い優先度を有するデバイスからメッセージを送るさらなるステップと、半二重モードでネットワーク中の別のデバイスによってメッセージを受信するさらなるステップとを含む。
【0024】
さらに、本方法の一実施例によれば、本方法は、ネットワーク中の各デバイスを、それぞれのデバイスが、別のデバイスからのメッセージの送信を受信することが可能であり、各デバイス自体のメッセージを送信することが可能であり、ネットワークの別のデバイスの進行中の又は開始されたメッセージによって抑止されない、受信モードに維持するさらなるステップを含む。
【0025】
さらに、本方法の一実施例によれば、本方法は、それぞれのデバイスが、開始信号を送信した後に、あらかじめ定義された時間期間の間、受信モードに戻るようにプロンプトするさらなるステップと、それぞれのデバイスがこの時間期間中に別のデバイスからの開始信号を受けたときに、それぞれのデバイスのメッセージの送信を延期するさらなるステップと、それぞれのデバイスが、それぞれのデバイス自体の開始信号が終了した後に、異なるデバイスからの開始信号の進行中の送信を受けなかった場合、それぞれのデバイスがそれぞれのデバイス自体のメッセージを送信することを可能にするさらなるステップとを含む。
【0026】
さらに、本方法の一実施例によれば、ネットワークのいかなる2つのデバイスも同じ開始信号持続時間を有しない。特に、各2つの開始信号の持続時間間の差は、最も長い遷移時間を有する、複数のデバイスのうちの1つのデバイスの送信から受信モードへの遷移時間よりも大きい。
【0027】
特に、本開示による方法は、上記で説明した、第1のデバイス、第2のデバイス、及び特に、第3のデバイスを用いて行われ得る。本システムに関して本明細書で開示するすべての特徴は本方法に適用され得、本方法に関して本明細書で開示するすべての特徴は本システムに適用され得る。
【0028】
以下で、図を参照しながら本発明の実施例、特徴及び利点について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ネットワーク、特にBANのノードを形成する医療デバイスを備える医療システムの一実施例の概略図である。
図2図1に示された医療システムにおいてメッセージを送信することの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、図2とともに、少なくとも第1のデバイス10と第2のデバイス20とを備える医療システム1の一実施例を示す。
【0031】
特に、一実施例では、第1のデバイス10は、患者の右心室中に埋め込まれた心内ペースメーカーであり得、第2のデバイスは、患者の右心房中に埋め込まれた心内ペースメーカーであり得る。別の実例によれば、第1のデバイス10は、右心室中に埋め込まれた心内ペースメーカーであり得、第2のデバイスは、左心室中に埋め込まれた心内ペースメーカーであり得る。さらに、代替実例によれば、第1のデバイスは、右心室中に埋め込まれた心内ペースメーカーであり得るが、第2のデバイス20は、例えば、患者の血圧を測定するように構成されたセンサーであり得る。
【0032】
以下では、医療システム1中のデバイス間の通信について説明するために、第3のデバイス30もネットワークのノードを形成すると考える。
【0033】
特に、例えば、図1に示された医療システム1/ネットワークにおいて、通信を可能にするために、好ましくは、例えば、開始信号S1、S2、S3の形態で、データ送信の開始を決定するために、物理レイヤが定義され、並びに、本明細書でメッセージとして示されている実際のデジタル・データ送信の論理ビット値を定義するために、信号パターンが定義される。特に、通信は、特にBANである同じネットワーク内で通信しているすべてのデバイス10、20、30に割り当てられる優先度方式に依存するように、開始信号S1、S2、S3の持続時間D1、D2、D3に基づく。
【0034】
同じネットワーク/BAN内の情報交換に参加するいずれのデバイス10、20、30も、デバイス10、20、30が、デバイス10、20、30自体のメッセージを送信する許可を与えられない限り、常にメッセージ受信モードR1、R2、R3にある必要がある。送信した後に、デバイス10、20、30は、好ましくは、できるだけ早く受信モードR1、R2、R3に戻る必要がある。
【0035】
他の送信が進行中でない限り、いずれのデバイス10、20、30も、開始信号S1、S2、S3を送信することによって送信を開始し得る。各デバイス10、20、30のための開始信号S1、S2、S3の持続時間D1、D2、D3は、デバイス10、20、30に割り当てられた優先度に依存する。開始信号S1、S2、S3を送信することを開始することによって、デバイス10、20、30は、情報(すなわちメッセージ)を送信する意図を示す。
【0036】
開始信号S1、S2、S3を送信した後に、送信デバイス10、20、30は、最初に、限られた量の時間の間、受信モードR1、R2、R3に戻る必要がある。この時間において、デバイス10、20、30が入来送信を受けた(異なるデバイスからの進行中の開始信号を受信した)場合、デバイス10、20、30は、進行中のメッセージ/開始信号送信が停止するまで、デバイス10、20、30自体のメッセージ送信を延期する必要がある。デバイス10、20、30が、デバイス10、20、30自体の開始信号S1、S2、S3が終了した後に、異なるデバイス10、20、30からの開始信号S1、S2、S3の進行中の送信を受けなかった場合、デバイス10、20、30は、デバイス10、20、30の情報を送信することを可能にされる。
【0037】
いくつかのデバイス10、20、30が開始信号S1、S2、S3の送信を同時に開始する、図2に示されている状況の場合、開始信号S1、S2、S3の提案された実装によって、より高い優先度を有するデバイスに、送信を行う許可が自動的に与えられる。同じネットワーク(例えばBAN)内の各デバイス10、20、30に割り当てられる優先度方式は、開始信号S1、S2、S3の可能にされた送信の持続時間D1、D2、D3を定義する。最も高い優先度を有するデバイス30は、開始信号D3の最も長い持続時間を割り振られ、最も低い優先度を有するデバイス10は、開始信号S1の最も短い持続時間D1を割り振られる。好ましくは、同じネットワーク、例えばBAN中で動作している場合、いかなる2つのデバイス10、20、30も同じ開始信号持続時間D1、D2、D3を割り当てられてはならない。開始信号持続時間D1、D2、D3における増分の差は、各デバイス10、20、30が、より高い優先度のデバイスの進行中の開始信号を受けることが可能であることを保証するために、最も長い遷移時間をもつデバイス10、20、30の送信から受信への遷移時間よりも大きい必要がある。
【0038】
特に、一実例として図2に示されているように、第1のデバイス10は最も低い優先度(したがって、最も短い開始信号持続時間D1)を有し、第3のデバイス30は最も高い優先度(最も長い開始信号持続時間D3)を有し、第2のデバイス20は、最も低い優先度と最も高い優先度との間の優先度(D2とD3との間の持続時間D1)を有する。すべての3つのデバイス10、20、30は、それぞれ、メッセージの送信を要求するために、同時に、3つのデバイス10、20、30のそれぞれの開始信号S1、S2、S3の送信を開始する。
【0039】
第1のデバイス10は、最も低い優先度を有し、したがって、最初に時間tにおいて受信モードR1に戻り、第1のデバイス10は、次いで、より高い優先度の第2のデバイス20及び第3のデバイス30からの入来開始信号S2、S3を受け、したがって、入来メッセージを待つために、デバイス10のメッセージの送信を延期する。
【0040】
さらに、第2のデバイス20は、時間t’において、第1のデバイス10の後に受信モードR1に戻り、次いで、より高い優先度の第3のデバイス30からの入来開始信号S3を受ける。したがって、第2のデバイス20は、第2のデバイス20のメッセージの送信を延期し、第3のデバイス30の入来メッセージを待つ。
【0041】
最後に、最も高い優先度の第3のデバイス30は、第3のデバイス30の開始信号S3を送信した後に、時間t’’において、他の2つのデバイス10、20の後に受信モードR3に戻り、したがって入来開始信号S1、S2を受けない。したがって、第3のデバイス30は、第3のデバイス30のメッセージの送信を開始することを自動的に可能にされる。
【0042】
特に、本開示の1つの利点は、例えば、半二重モードで動作しているネットワーク、特に、ボディ・エリア・ネットワーク(BAN)における情報送信衝突による情報の損失を防ぐために、冗長なアービトレーション方式を回避する能力であり得る。
図1
図2