IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロレアルの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】マット効果のある化粧用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20231222BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20231222BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/06
A61K8/33
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/81
A61K8/89
A61Q19/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021534613
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019086715
(87)【国際公開番号】W WO2020127991
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】1873735
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】595100370
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L′OREAL
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ジャレンケス ,シルヴィ
(72)【発明者】
【氏名】カタラン-マルタン ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】レ-ボー ,クロエ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02986428(FR,A1)
【文献】特表2015-520216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335536(US,A1)
【文献】特開2017-081884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型、つまりO/W、のエマルションの形態である組成物であって、
a)少なくとも1つの疎水性シリカエアロゲルの粒子、
b)エステル油、及び
c)エーテル油、
を少なくとも含有し、上記エーテル油及びエステル油が1~2の範囲のエーテル油/エステル油の重量比で存在し、
前記疎水性シリカエアロゲル粒子は、固形分で該組成物の全重量に対して0.5重量%~13重量%を占め、
前記組成物は、該組成物の全重量に対して1重量%~15重量%の前記エステル油を含有し、
前記組成物は、該組成物の全重量に対して2重量%~20重量%の前記エーテル油を含有し、
該組成物は、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリから選択される前記エステル油を含み、及び、
該組成物は、ジカプリリルエーテル、ジカプリルエーテル、ジラウリルエーテル、ジイソステアリルエーテル、ジオクチルエーテル、ノニルフェニルエーテル、ドデシルジメチルブチルエーテル、セチルジメチルブチルエーテル、セチルイソブチルエーテル、及びそれらの混合物から選択される前記エーテル油を含む、
前記組成物。
【請求項2】
前記疎水性シリカエアロゲル粒子は、500~1500m/gの範囲の単位質量当たりの比表面積、且つ1~1500μmの範囲の体積平均径(D[0.5])で表されるサイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記疎水性シリカエアロゲル粒子は、5~18ml/粒子gの範囲の、湿潤点で測定される吸油能を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記疎水性シリカエアロゲル粒子は、少なくとも1つのシリル化されたシリカエアロゲル(INCI名:シリカシリレート)の粒子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記疎水性シリカエアロゲル粒子であり、固形分で該組成物の全重量に対して1重量%~3重量%を占める、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、該組成物の全重量に対して3重量%~8重量%のエステル油を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、該組成物の全重量に対して5重量%~13重量%のエーテル油を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物はまた、少なくとも1つのポリオールを含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリオールが、エチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物はまた、該組成物の全重量に対して0.3重量%~1.5重量%の、架橋化されたアクリル酸ホモポリマー及びコポリマータイプのゲル化剤を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の水性相は、該組成物の全重量に対して40重量%~80重量%を占める、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、シリコーン油及び/又はシリコーンエラストマーを1重量%未満しか含有していない、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、シリコーン油及び/又はシリコーンエラストマーを含有していない、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物はまた、染料を含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、染料を含有しない、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
ケラチン物質をケアする為の化粧的方法であって、処置されるべき該ケラチン物質への、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物の局所的施与を含む、上記方法。
【請求項17】
顔面皮膚をマットにする為の及び/又は該顔面皮膚のテカリを低減する為の方法であって、処置されるべき肌への、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物の局所的施与を含む、上記方法。
【請求項18】
混合肌及び/又は脂性肌をケアする為の、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物の化粧的使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質、とりわけ皮膚、をケアする為の分野に関し、且つより特には、組成物、とりわけ化粧用及び/又は皮膚科学的組成物、とりわけ皮膚をケアする為の組成物、とりわけ最も特には顔面皮膚をマットにし及び/又はそのテカリを低減する為の組成物、の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚にマット効果を得ることは、ユーザ、とりわけ混合肌又は脂性肌を有するユーザ、に強く望まれている。この理由は、これらの肌のタイプが、肌の表面に望ましくないテカリ効果をもたらす多量の皮脂の分泌に関連付けられていることが非常に多いためである。その上、皮脂の過剰な分泌が生じた肌は、皮膚上に生息する通常は無害の細菌を増殖し、そして次に皮膚の不具合、例えば染み又は吹き出物、を誘発するのに好ましい媒体を構成しうる。これらの非エステティック、従って望ましくない症状、は、思春期の場合に特に悪化されるが、とりわけアンドロゲンの過剰生産の結果、又は外的要因、例えば汚れ、の結果として、成人においてまた生じうる。最後に、テカリのある肌は一般的に、化粧のノリを悪くし、従ってそれは、一日経過する間に劣化していく傾向があることがまた知られている。
【0003】
従って、スキンケアの為に、より特にはテカリを調整する為に、意図されたガレヌス製剤が既に提案されている。一般的に、該ガレヌス製剤は、「皮脂調節」剤、すなわち、生物学的と呼ばれうる作用、及び/又は1種以上の皮脂吸収性フィラー、例えばパーライト(仏国特許出願公開第2881643号明細書)及びヒュームドフィラー(欧州特許第1637186号明細書)、によって皮脂腺の活性の調節を助けることができる剤、を含む。しかしながら、これらのフィラーは、不快感、とりわけ肌のケバ感及び/又は不潔な皮膚を有する知覚、をもたらしうる。
【0004】
より最近では、事業主は、疎水性エアロゲルがまた、持続的な様式で皮膚のマット感を改善する為に有効であることが証明されていることに注目した。しかしながら、このタイプの物質を1重量%超の量で使用することは、それを取り込まれる組成物の官能的品質に害を及ぼすことが証明されている。皮膚へ施与する際に、これら組成物は過度にひきずり(dragging)且つ粘着性であり、粗い皮膚の仕上げと判断される。即時且つ長期にわたって保湿の感覚は乏しく、従ってこのタイプのガレヌス製剤に関してユーザの期待と異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、有効な(強力な)即時且つ長期にわたるマット効果を与えると同時に、満足な美容特性、例えば施与時に滑らかで非粘着性の質感、を有し、及び清潔且つ粒の細い皮膚の仕上げをもたらし、即時且つ長期にわたる保湿且つ清潔な肌の感覚を与えることができる化粧用組成物が依然として必要とされている。
【0006】
本発明の目的は、正確には、この要望を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、組成物、とりわけ化粧用及び/又は皮膚科学的組成物、特にケラチン物質、とりわけ皮膚、特に顔面皮膚、をケアする為の組成物、であって、該組成物は水中油型、つまりO/W、のエマルションの形態であり、且つ
a)少なくとも1つの疎水性シリカエアロゲルの粒子、
b)エーテル炭化水素系油(an ether hydrocarbon-based oil)、及び
c)エステル炭化水素系油(an ester hydrocarbon-based oil)、
を少なくとも含み、上記エーテル炭化水素系油及びエステル炭化水素系油が1~2の範囲のエーテル油/エステル油の重量比で存在する、上記組成物に主に向けられている。
【発明の効果】
【0008】
以下の実施例から明らかである通り、本発明に従う組成物は、皮膚のマット効果を持続的な様式で改善することを可能にする。従って、該皮膚は耐久的にマット効果を維持する。該皮膚のテカリに関するこの効力とは別に、本発明に従う組成物は、施与時又は着用時にユーザによって期待される知覚特性、すなわち、施与時の流動性、滑らかさ、べたつきがない、潤いの感触をもたらし、この潤いの感触及び非粘着性の効果は時間の経過とともに変わらない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施態様に従うと、本発明に従う組成物は、エアロゲル、少なくとも1つの疎水性シリカエアロゲル、特にシリル化されたシリカエアロゲル(INCI名:シリカシリレート)、を含有する。
【0010】
別の好ましい実施態様に従うと、本発明に従う組成物は、少なくとも1つの疎水性シリカエアロゲルの粒子、特にシリル化されたシリカエアロゲル(INCI名:シリカシリレート)の粒子、を、固形分で該組成物の全重量に対して0.5重量%~13重量%の範囲の含有量、好ましくは1重量%~5重量%の範囲の含有量、特に1重量%~3重量%の範囲の含有量、で有する。
【0011】
好ましい変形態様に従うと、本発明に従う組成物は、シリコーン油及び/又はシリコーンエラストマー、とりわけポリシロキサンタイプのシリコーンエラストマー、を1重量%未満、又は更には0.5重量%未満、しか含有しておらず、好ましくはそれらを含有していない。
【0012】
本発明の別の観点に従うと、本発明は、ケラチン物質、とりわけ皮膚、特に顔面皮膚、をケアする為の、特に非治療的ケアする為の、化粧的方法であって、該ケラチン物質、とりわけ処置されるべき皮膚、への、本発明に従う少なくとも1つの組成物のコートを施与するものである工程を含む上記化粧的方法に関する。
【0013】
本発明に従うと、語「ケラチン物質」は好ましくは、身体、顔及び/又は目の周りの皮膚、口唇、爪、粘膜、睫毛、眉毛、体毛、頭皮及び/又は頭髪、又は身体の皮膚の他の任意の部位を云う。
【0014】
より特には、本発明に従うケラチン物質は、頭皮、毛及び/又は皮膚である。
【0015】
好ましくは、本発明に従うケラチン物質は皮膚である。
【0016】
語「皮膚」は、身体の全ての皮膚、好ましくは顔、首のライン、首、腕及び前腕の皮膚、又は更により好ましくは顔、とりわけ額、鼻、頬、顎及び目の周り、の皮膚を云う。
【0017】
本発明の更に別の観点に従うと、本発明は、顔面皮膚をマットにする為の及び/又は該顔面皮膚のテカリを低減する為の方法、とりわけ化粧的方法、であって、処置されるべき顔面皮膚への、本発明に従う少なくとも1つの組成物を施与するものである工程を少なくとも含む上記方法に関する。
【0018】
語「マットにする」(making matt)は、皮膚をよりマットにし、該皮膚のテカリを低減し、それ故に皮膚における美しくない任意の目立つ部位を低減することを意味する。
【0019】
本発明はまた、混合肌及び/又は脂性肌をケアする為の、本発明に従う組成物の化粧的使用方法に関する。
【0020】
疎水性シリカエアロゲル
シリカエアロゲルは、シリカゲルの液体成分を空気と置き換えることによって(乾燥することによって)得られる多孔質物質である。
【0021】
該シリカエアロゲルは一般的に、液体媒体におけるゾルゲル法を介して合成され、そして次に、通常、超臨界流体(最も一般的に使用される超臨界流体の一つは超臨界COである)で抽出することによって乾燥される。このタイプの乾燥は、孔及び物質の収縮を回避することを可能にする。ゾルゲル法及び様々な乾燥法が、Brinker C.J. and Scherer G.W., Sol-Gel Science, New York, Academic Press, 1990に詳述されている。
【0022】
本発明において使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は好ましくは、500~1500m/g、好ましくは600~1200m/g、更に好ましくは600~800m/g、の範囲の単位質量当たりの比表面積、及び1~1500μm、更に好ましくは1~1000μm、好ましくは1~100μm、特に1~30μm、より好ましくは5~25μm、更に好ましくは5~20μm、更により好ましくは5~15μm、の範囲の体積平均径(D[0.5])で表されるサイズを有する。
【0023】
単位質量当たりの比表面積は、The Journal of the American Chemical Society, Vol. 60, page 309, February 1938に記載されている、国際標準化機構ISO5794/1(付録D)に対応するBET(ブルナウアー-エメット-テラー:Brunauer-Emmett-Teller)法として知られている窒素吸収法によって決定されうる。該BET比表面積は、検討中の粒子の全比表面積に対応する。
【0024】
シリカエアロゲル粒子のサイズは、市販の粒径分析器、例えばMalvern製のMasterSizer 2000、を使用して静的光錯乱によって測定されうる。データは、ミー錯乱の理論(Mie scattering theory)に基づいて処理される。この理論は、等方性粒子に正確であり、非球形粒子の場合、「有効な」粒径を決定することを可能にする。この理論はとりわけ、Van de Hulst, H.C.による刊行物Light Scattering by Small Particles, Chapters 9 and 10, Wiley, New York, 1957に記載されている。
【0025】
有利な実施態様に従うと、本発明において使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、600~800m/gの範囲の単位質量当たりの比表面積(SM)を有する。
【0026】
本発明において使用されるシリカエアロゲル粒子は有利には、0.02g/cm~0.10g/cm、好ましくは0.03g/cm~0.08g/cmの範囲、特には0.05g/cm~0.08g/cmの範囲、のタップ密度ρを有しうる。
【0027】
本発明の文脈において、この密度はタップ密度として知られており、下記のプロトコルに従って評価されうる。
【0028】
40gの粉末がメスシリンダーに注ぎ入れられ、そして次に、該メスシリンダーはStampf Volumeter製のStav 2003装置上に置かれ、引き続き、該メスシリンダーは2500の一連のパッキング操作に付されて(この操作は、2つの連続する試験の間の体積の差が2%未満になるまで繰り返される)、そして次に、パッキングされた粉末の最終体積Vfがメスシリンダーにおいて直接的に測定される。該タップ密度は、m/Vf比、この場合は40/Vf(ここで、Vfはcmで表され、且つmはgで表される)によって決定される。
【0029】
好ましい実施態様に従うと、本発明において使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、5~60m/cm、好ましくは10~50m/cm、更に良くは15~40m/cm、の範囲の体積単位当たりの比表面積Svを有する。
【0030】
単位体積当たりの比表面積は、下記の関係式によって与えられる:S=Sxρ、ここで、上で定義されるように、ρはg/cmで表されるタップ密度であり、且つSはm/gで表される単位質量当たりの比表面積である。
【0031】
好ましくは、本発明に従って使用される疎水性シリカエアロゲル粒子は、5~18ml/g、好ましくは6~15ml/g、更に良くは8~12ml/g、の範囲の、湿潤点で測定される吸油能を有する。
【0032】
該湿潤点で測定され且つWpで示される該吸油能は、均一なペーストを得る為に100gの粒子に添加する必要がある油の量に対応する。
【0033】
該吸油能は、「湿潤点」(wet point)法又は標準NF T30-022に記載されている粉末の油吸収量を決定する為の方法に従って測定される。該吸油能は、以下に記載されている湿潤点の測定による、粉末の利用可能な表面上に吸着される油の量及び/又は粉末によって吸収される油の量に対応する。
【0034】
粉末の量m=2gがガラス板上に置かれ、そして次に、油(イソノナン酸イソノニル)が滴下で添加される。4~5滴の油の粉末への添加後に、スパチュラを使用して混合が行われ、油及び粉末の集合体が形成されるまで油の添加が続けられる。この時点から、油は一度に1滴の率で添加され、引き続き、該混合物はスパチュラで粉砕される。堅く且つ滑らかなペーストが得られる場合に、油の添加が停止される。このペーストは、ひび割れ又は塊の形成なしにガラス板上に広げられることができなければならない。次に、使用される油の体積Vs(mlで表される)が記録される。
【0035】
油吸収量は、Vs/m比に対応する。
【0036】
本発明に従う使用されるエアロゲルは、疎水性シリカのエアロゲル、好ましくはシリル化されたシリカのエアロゲル(INCI名:シリカシリレート)、である。
【0037】
語「疎水性シリカ」は任意のシリカを意味し、OH基とシリル基Si-Rn、例えばトリメチルシリル基、とを官能化するように、シリル化剤と、例えばハロゲン化シラン、例えばアルキルクロロシラン、シロキサン、特にジメチルシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン、又はシラザンと、該シリカの表面が処置される。
【0038】
シリル化によって表面改質された疎水性シリカエアロゲル粒子の調製に関しては、米国特許第7470725号明細書が参照されうる。
【0039】
好ましくは、トリメチルシリル基で表面改質された疎水性シリカエアロゲル粒子、好ましくはシリカシリレートのINCI名を有する上記疎水性シリカエアロゲル粒子、が好ましくは使用される。
【0040】
本発明において使用されうる疎水性シリカエアロゲルとして、Dow Corning社によってVM-2260又はVM-2270の名称で販売されているエアロゲル(INCI名:シリカシリレート)が言及され得、その粒子は約1000ミクロンの平均粒径を有し、且つ単位質量当たりの比表面積は600~800m/gの範囲である。
【0041】
参照名Aerogel TLD 201、Aerogel OGD 201及びAerogel TLD 203、Enova(登録商標)Aerogel MT 1100及びEnova Aerogel MT 1200でCabot社から販売されているエアロゲルがまた言及されうる。
【0042】
好ましくは、Dow Corning社から名称VM-2270で販売されているエアロゲル(INCI名:シリカシリレート)が使用され、その粒子は5~15ミクロンの範囲の平均粒径を有し、且つ単位質量当たりの比表面積は600~800m/gの範囲である。
【0043】
シリカエアロゲル粒子、特にシリル化されたシリカエアロゲルのシリカエアロゲル粒子、は、上記組成物の全重量に対して0.5重量%~13重量%の範囲の含有量で、好ましくは1重量%~5重量%の範囲、特に1重量%~3重量%の範囲、の含有量で、本発明に従う組成物中に存在されうる。
【0044】
前述されている通り、このエアロゲル物質は、少なくとも1つのエステル炭化水素系油及び少なくとも1つのエーテル炭化水素系油と一緒にされる。
【0045】
本発明の目的の為に、語「油」は、大気圧下、室温(20~25℃)で液体の形態である任意の脂肪物質を意味する。
【0046】
本発明の目的の為に、語「炭化水素系油」は、単一の炭化水素系油又は幾つかの炭化水素系油の混合物を包含する。
【0047】
エステル炭化水素系油
エステル炭化水素系油は、エステル油としてまた知られており、その炭化水素系構造中に少なくとも1つのエステル官能基を取り入れられている油である。本発明における使用の為に好適なエステル炭化水素系油は、合成起源又は植物起源としうる。それらは好ましくは、不揮発性である。
【0048】
本発明の目的の為に、語「不揮発性油」は、室温(20~25℃)且つ大気圧下で、0.13Pa未満の蒸気圧を有する油を意味する。
【0049】
該エステル油は、下記から選択されうる:
脂肪酸エステル、特に4~22個の炭素原子の脂肪酸エステル、とりわけオクタン酸、へプタン酸、ラノリン酸、オレイン酸、ラウリン酸又はステアリン酸の脂肪酸エステル、例えばプロピレングリコールジオクタノエート、プロピレングリコールモノイソステアレート又はネオペンチルグリコールジヘプタノエート、
合成エステル、例えば式RCOORの油(式中、Rは、4~40個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の脂肪酸残基を表し、且つRは、4~40個の炭素原子を有する炭化水素系鎖を表し、とりわけ分岐状であり、但し、R+R≧16である)、例えばパーセリンオイル(オクタン酸セトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、安息香酸C12~C15アルキル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、エルカ酸オレイル、イソステアリン酸イソテアリル、安息香酸2-オクチルドデシル、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸又はリシノール酸脂肪アルコール又は多価アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、又はコハク酸2-ジエチルヘキシル、好ましくは、好ましい合成エステルRCOOR(式中、Rは、4~40個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の脂肪酸残基を表し、且つRは、4~40個の炭素原子を有する炭化水素系鎖を表し、とりわけ分岐状であり、R及びRは20以上である)、
合計炭素数が35~70の範囲の直鎖状脂肪酸エステル、例えばテトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル(MW=697g/モル)、
グリセリルエステル、例えばAbitec社から参照名Capmul MCMで販売されているカプリル/カプリングリセリド、
ヒドロキシル化されたエステル、好ましくは35~70の範囲の合計炭素数を有するヒドロキシル化されたエステル、例えばトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(MW=965g/モル)、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ステアリン酸グリセリル、ジエチレングリコールジイソノナエート、
4~22個の原子を含む、芳香族酸とアルコールとのエステル、例えばトリメリット酸トリデシル(MW=757g/モル)、
24~C28分岐状脂肪酸又は脂肪アルコールのエステル、例えば欧州特許第A0955039号明細書に記載されているもの、とりわけクエン酸トリイソアラキジル(MW=1033.76g/モル)、テトライソノナン酸ペンタエリスリチル(MW=697g/モル)、トリイソステアリン酸グリセリル(MW=891g/モル)、トリス(2-デシル)テトラデカン酸グリセリル(MW=1143g/モル)、ペンタエリスリチルテトライソステアレート(MW=1202g/モル)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(MW=1232g/モル)又はテトラキス(2-デシル)テトラデカン酸ペンタエリスリチル(MW=1538g/モル)、
ヒドロキシル化されたカルボン酸(1以上)の少なくとも1つのトリグリセリドと脂肪族モノカルボン酸と任意的に不飽和の脂肪族ジカルボン酸とのエステル化から得られるポリエステル、例えばコハク酸及びZenitechから参照名Zeniglossで販売されているイソステアリン酸ヒマシ油、ヘプタン酸又はオクタン酸のトリグリセリド、或いは代替的には、例えば、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、マロー油、ブドウ種子油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アララ油又はアボカド油、或いはカプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、例えばStearinerie Dubois社から販売されているもの又はDynamit Nobel社から名称Miglyol 810、812及び818で販売されているもの、ホホバ油並びにシアバター油、
一般式HO-R-(-OCO-R-COO-R-)-OHのジオール二量体と二酸二量体とのエステル、ここで
は、ジリノール二酸の水素化によって得られるジオール二量体残基を表し、
は、水素化されたジリノール二酸残基を表し、
hは、1~9の範囲の整数を表す、
とりわけNippon Fine Chemical社から商標名Lusplan DD-DA5(登録商標)及びDD-DA7(登録商標)で販売されているジリノール二酸とジリノレイルジオール二量体とのエステル、並びに、
不飽和脂肪酸の二量体及び/又は三量体とジオール、特に、例えばジリノール酸及び1,4-ブタンジオール、との縮合によって得られるポリエステル、例えば仏国特許出願公開第0853634号明細書に記載されているもの。とりわけこの点において言及されうるものは、Biosynthisによって名称Viscoplast 14436Hで販売されているポリマー(INCI名:ジリノール酸/ブタンジオールのコポリマー)、又はポリオールとダイマー二酸とのコポリマー、及びそれらのエステル、例えばHailucent ISDAである。
【0050】
本発明における使用の為に最も特に好適であるエステル油は好ましくは、下記から選択される:
4~10個の炭素原子を有する液体脂肪酸トリグリセリド、例えばヘプタン酸又はオクタン酸のトリグリセリド、或いは代替的には、例えば、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、マロー油、ブドウ種子油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アララ油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、とりわけ例えばStearinerie Dubois社から販売されている該トリグリセリド又はDynamit Nobel社から名称Miglyol 810、812及び818で販売されている該トリグリセリド、ホホバ油並びにシアバター油、
合成エステル、とりわけ脂肪酸の合成エステル、例えば式RCOORの油、ここで、式中、Rは、8~29個の炭素原子を有する脂肪酸残基を表し、Rは、3~30個の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状の炭化水素系鎖を表す、例えばパーセリンオイル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル又はイソステアリン酸イソステアリル、
ヒドロキシル化されたエステル、例えば乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル又はクエン酸トリイソセチル、
脂肪族アルコールのヘプタノエート、オクタノエート又はデカノエート、
ポリオールエステル、例えばプロピレングリコールジオクタノエート、ネオペンチルグリコールジヘプタノエート及びジエチレングリコールジイソノナエート、並びに、
ペンタエリスリトールエステル、例えばペンタエリスリチルテトライソステアレート。
【0051】
カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル及びそれらの混合物は、本発明における使用に最も特に好適である。
【0052】
一般的に、本発明に従う組成物は、該組成物の全重量に対して1重量%~15重量%、好ましくは3重量%~8重量%、のエステル炭化水素系油を含有しうる。
【0053】
エーテル炭化水素系油
エーテル炭化水素系油は、エーテル油としてまた知られており、揮発性であってもよく又は不揮発性であってもよく、好ましくは不揮発性である。
【0054】
エーテル炭化水素系油は、式RORの油であり、ここで、R及びRは独立して、直鎖状、分岐状又は環状のC~C24アルキル基、好ましくはC~C18アルキル基、好ましくはC~C12アルキル基、を示す。R及びRが同一であることが好ましくありうる。
【0055】
言及されうる直鎖状アルキル基は、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基、ドコシル基、トリコシル基及びテトラコシル基を包含する。
【0056】
言及されうる分岐状アルキル基は、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、5-メチルオクチル基、1-エチルヘキシル基、1-ブチルペンチル基、2-ブチルオクチル基、イソトリデシル基、2-ペンチルノニル基、2-ヘキシルデシル基、イソステアリル基、2-ヘプチルウンデシル基、2-オクチルドデシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-(1-メチルエチル)-2-メチルプロピル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、1-(2-メチルプロピル)-3-メチルブチル基、3,7-ジメチルオクチル基及び2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル基を包含する。
【0057】
言及されうる環状アルキル基は、シクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基を包含する。
【0058】
有利には、該エーテル油は、ジカプリリルエーテル、ジカプリルエーテル、ジラウリルエーテル、ジイソステアリルエーテル、ジオクチルエーテル、ノニルフェニルエーテル、ドデシルジメチルブチルエーテル、セチルジメチルブチルエーテル、セチルイソブチルエーテル、及びそれらの混合物から選択される。
【0059】
好ましくは、該エーテル油は、ジカプリリルエーテル、ジカプリルエーテル、ジラウリルエーテル、ジイソステアリルエーテル、ジオクチルエーテル、及びそれらの混合物から選択される。
【0060】
ジカプリリルエーテルが、使用に最も特に好適である。
【0061】
一般的に、本発明に従う組成物は、該組成物の全重量に対して2重量%~20重量%、好ましくは5重量%~13重量%、のエーテル炭化水素系油を含有しうる。
【0062】
本発明に従って必要とされる2つの油の混合物は、本発明に従う組成物の知覚特性を有意に改善する為に、特に、該組成物が、該組成物の全重量に対して1重量%超の量のエアロゲルを含有する場合(この量は、施与時の組成物のソフト且つ流動性の感覚を損なうことが知られている)、これらの特性の顕在化が明らかにされる為に、特に有効である。
【0063】
従って、本発明に従って必要とされる3つの成分の組み合わせは、所望されるマット効果と期待される知覚特性との間での有利な妥協点を得ることを可能にする。
【0064】
これを行う為に、本発明に従う組成物が、1~2、好ましくは1.2~1.8、の範囲のエーテル油/エステル油の重量比で、エーテル炭化水素系油成分とエステル炭化水素系油成分とを含有することが有利である。
【0065】
有利には、本発明に従う組成物は、疎水性シリカエアロゲルの粒子、特にシリル化されたシリカエアロゲルの粒子、及びジカプリリルエーテルを含有する。
【0066】
特に、該組成物は、該組成物の全重量に対して1重量%超、又は更には2重量%超、のシリカエアロゲル粒子を含有する。
【0067】
特に、該組成物は、該組成物の全重量に対して5重量%~12重量%のジカプリリルエーテルを含有する。
【0068】
好ましくは、この組成物はまた、好ましくは該組成物の全重量に対して4重量%~8重量%の含有量で、エステル油としてのカプリル酸/カプリン酸のトリグリセリドを含有する。
【0069】
本発明に従う組成物の他の成分
前述されている通り、本発明に従う組成物は、化粧料及び/又は皮膚科学用、好ましくは化粧料、でありうる。
【0070】
本発明に従う組成物は一般的に、皮膚への局所的施与に好適であり、従って、一般的に、生理学的に許容される媒体、すなわち、皮膚と相性が良い媒体を含む。該媒体は好ましくは、美容的に許容される媒体、すなわち、快適な色、匂い及び感触を有し、且つユーザがこの組成物を施与することを思いとどまらせる何らかの許容できない不快感(刺すような感覚、緊縮性又は発赤)を引き起こさない媒体、である。
【0071】
本発明に従う組成物は、水性相中に油性相を分散させることによって得られるエマルション(O/W)の形態である。
【0072】
本発明に従うO/Wエマルションは一般的に、少なくとも1つの乳化剤及び任意的に共乳化剤を含有する。
【0073】
本発明における使用の為に好適な乳化剤として、言及されうる例は、非イオン性乳化剤、例えばグリセロールのオキシアルキレン化された(より特にはポリオキシエチレン化された)脂肪酸エステル、ソルビタンのオキシアルキレン化された脂肪酸エステル、オキシアルキレン化された(オキシエチレン化された及び/又はオキシプロピレン化された)脂肪アルコールエーテル、糖エステル、例えばステアリン酸スクロース、及びそれらの混合物、例えばステアリン酸グリセリルとステアリン酸PEG-40との混合物、を包含する。
【0074】
乳化剤及び共乳化剤は一般的に、上記組成物の全重量に対して0.3重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、の範囲の割合で、該組成物中に存在する。
【0075】
水性相
該水性相は、水及び任意的に水溶性の溶媒を含有する。
【0076】
本発明において、語「水溶性溶媒」は、室温で液体であり且つ水混和性(大気圧下、25℃で50重量%超の水に混和性)である化合物を示す。
【0077】
本発明に従って使用されうる水溶性溶媒はまた、揮発性でありうる。該水溶性溶媒の中で、とりわけ1~5個の炭素原子を有する低級モノアルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール、2~8個の炭素原子を有するグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びジプロピレングリコール、C及びCケトン及びC~Cアルデヒドが言及されうる。
【0078】
好ましくは、本発明に従う組成物は、少なくとも1つのC~C32ポリオールを含有する。
【0079】
本発明の目的の為に、語「ポリオール」は、少なくとも2つの遊離水酸基を有する任意の有機分子を意味すると理解されるべきである。
【0080】
好ましくは、本発明に従うポリオールは、室温で液体の形態で存在する。
【0081】
本発明における使用の為に好適なポリオールは、アルキル鎖上に少なくとも2つのOH官能基、特に少なくとも3つのOH官能基、より特には少なくとも4つのOH官能基、を有する、直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和アルキルタイプの化合物でありうる。
【0082】
使用の為に有利に好適なポリオールはとりわけ、2~32個の炭素原子、好ましくは3~16個の炭素原子、を有するものである。
【0083】
有利には、ポリオールは、例えば、エチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、例えばグリセロールオリゴマー、例えばジグリセロール、及びポリエチレングリコール、並びにそれらの混合物から選択されうる。
【0084】
本発明の好ましい実施態様に従うと、上記ポリオールは、エチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物から選択され、好ましくは少なくともグリセロールである。
【0085】
該水性相は有利には、品質改良剤、例えば増粘剤又はゲル化剤、でテクスチャを加えられる。言うまでも無く、この化合物の選択は、該組成物の為に望まれる他の特性を損なわないように行われる。
【0086】
カルボマータイプ(carbomer type)のゲル化剤、例えば架橋化されたアクリル酸ホモポリマー及びコポリマー、特にGoodrich社から名称Carbopol(登録商標)980、981、954、2984及び5984で販売されているもの又は3VSA社から名称Synthalen(登録商標)M及びSynthalen Kで販売されている製品、が、品質改良剤(texturizers)としての使用の為の特に好適である。
【0087】
従って、本発明に従う組成物は、該組成物の全重量に対して0.3重量%~1.5重量%の、架橋化されたアクリル酸ホモポリマー及びコポリマータイプのゲル化剤を含有しうる。
【0088】
好ましい変形形態に従うと、本発明に従う組成物は、少なくとも1つの架橋化されたアクリル酸コポリマーを含有する。
【0089】
別の好ましい変形形態に従うと、本発明に従う組成物は、少なくとも1つのポリアクリル酸ナトリウムを含有する。それは、とりわけBASFから名称Cosmedia SPで販売されている製品でありうる。
【0090】
アクリルアミドホモポリマー及びコポリマーであるアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸コポリマー(AMPS(登録商標)としてまた知られている)がまた、ゲル化剤としての使用の為に好適である。
【0091】
該水性相は、ガムタイプの化合物はまた、例えばキサンタンガム、でテクスチャを加えられうる。
【0092】
従って、本発明に従う組成物は、該組成物の全重量に対して0.05重量%~2重量%の、ガムタイプのゲル化剤を含有しうる。
【0093】
好ましくは、該水性相は、上記組成物の全重量に対して40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~70重量%、を占める。
【0094】
油性相
本発明に従って必要とされる2種の油及び疎水性エアロゲル物質の他に、該油性相は、他の化合物を含有しうるが、ただし、それらは当然ながら、該組成物の為に望まれる特性に害を及ぼさない化合物である。
【0095】
該油性相はとりわけ、他の追加の油又は脂肪物質を含有しうる。
【0096】
一方、前述されている通り、該油性相は好ましくは、シリコーン化合物を含有せず、従って、シリコーン油及び/又はエラストマーを含有しない。
【0097】
これらの補完的な油は、揮発性であってもよく又は不揮発性であってもよい。
【0098】
本発明の目的の為に、語「揮発性油」は、室温且つ大気圧下で、1時間未満で皮膚と接触すると蒸発することができる任意の油を意味する。該揮発性油は揮発性化粧用化合物であり、それは、室温で液体であり、とりわけ室温且つ大気圧下でゼロでない蒸気圧を有し、とりわけ0.13Pa~40000Pa(10-3~300mmHg)の範囲、特に1.3Pa~13000Pa(0.01~100mmHg)の範囲、より特には1.3Pa~1300Pa(0.01~10mmHg)の範囲の蒸気圧を有する。
【0099】
8~16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素系油の中で、とりわけ分岐状のC~C16アルカン、例えばC~C16イソアルカン(イソパラフィンとしてまた知られている)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、及び、例えば、商標名Isopar又はPermethylで販売されている油、分岐状のC~C16エステル、例えばネオペンタン酸イソヘキシル、並びにそれらの混合物、が言及されうる。好ましくは、該揮発性炭化水素系油は、8~16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素系油、及びそれらの混合物、特にイソドデカン、イソデカン及びイソヘキサデカンから選択され、とりわけイソヘキサデカンである。
【0100】
8~16個の炭素原子、特に10~15個の炭素原子、より特には11~13個の炭素原子を有する揮発性直鎖状アルカン、例えばSasolから個々の参照名Parafol 12-97及びParafol 14-97で販売されているn-ドデカン(C12)及びn-テトラデカン(C14)、並びにそれらの混合物、ウンデカン-トリデカン混合物、Cognis社からの特許出願の国際公開第2008/155059号パンフレットの実施例1及び2において得られるn-ウンデカン(C11)とn-トリデカン(C13)との混合物、並びにそれらの混合物がまた言及されうる。
【0101】
不揮発性炭化水素系油として、とりわけ、室温で液体であり、12~26個の炭素原子を有する分岐状及び/又は不飽和炭化系鎖を有する脂肪アルコール、例えば2-オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール及びC12~C22高級脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びそれらの混合物、が言及されうる。
【0102】
好ましくは、該油性相は、上記組成物の全重量に対して3重量%~55重量%、好ましくは8重量%~31重量%、の範囲の含有量で存在しうる。
【0103】
本発明に従う化粧用組成物は、局所的施与に慣用的に使用される任意の提示形態でありうる。これらの組成物は、通常の方法に従って調製される。
【0104】
本発明に従う組成物は多かれ少なかれ、流動性であってよく、且つ白色又は着色されたクリーム、軟膏、乳液、ジェル又はローションの外観を有しうる。
【0105】
有利には、本発明に従う組成物は3~8の範囲のpHを有する。好ましくは、該組成物のpHは4~6の範囲である。
【0106】
染料
本発明に従う組成物は、水溶性又は脂溶性染料、顔料及び真珠光沢剤、並びにそれらの混合物から選択されうる少なくとも1つの染料(着色剤としてまた知られている)を含有しうる。
【0107】
染料の存在は、着色メーキャップ効果だけでなく皮膚の被覆も組み合わせて与える為に、より特に有利である。
【0108】
従って、一つの変形形態に従うと、本発明に従う組成物はまた、少なくとも1つの染料、とりわけ少なくとも1つの顔料を含有する。この変形形態に従うと、本発明に従う組成物はファンデーションの形態でありうる。
【0109】
特に、本発明に従う組成物は、水溶性染料及び粉末染料、例えば当業者に周知である顔料、真珠光沢剤及びグリッターフレーク、から選択される1以上の染料を含有しうる。
【0110】
該染料は、該組成物の重量に対して0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~15重量%、の範囲の含有量で、該組成物中に存在しうる。
【0111】
語「顔料」は、水性溶液中に不溶性の白色又は有色の無機又は有機粒子を意味し、それは得られる膜を着色すること及び/又は不透明にすることを意図されるものであると理解されるべきである。
【0112】
該顔料は、化粧用組成物の全重量に対して0.01重量%~20重量%、とりわけ0.1重量%~15重量%、特に0.2重量%~10重量%、の比率で存在しうる。
【0113】
本発明において使用されうる無機顔料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム、及び更には酸化亜鉛、酸化鉄又は酸化クロム、フェリックブルー(ferric blue)、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー及び水酸化クロムが言及されうる。
【0114】
本発明において使用されうる有機顔料の中で、欧州特許第A542669号明細書、欧州特許第A787730号明細書、欧州特許第A787731号明細書及び国際公開第A96/08537号パンフレットに記載されているカーボンブラック、D&Cタイプの顔料、コチニールカーマインをベースとしたレーキ又はバリウム、ストロンチウム、カルシウム若しくはアルミニウム、又は代替的には、ジケトピロロピロール(DPP)が言及されうる。
【0115】
語「真珠光沢剤」は、任意の形態の着色粒子であり、それは虹色であってもよく又はなくてもよく、とりわけ殻内の或る軟体動物によって生成されるか又は代替的に合成され、且つそれは光学干渉を介して着色効果を有する上記着色粒子を意味するものとして理解されるべきである。
【0116】
該真珠光沢剤は、真珠箔、例えば酸化鉄で被覆されたチタンマイカ、オキシ塩化ビスマスで被覆されたチタンマイカ、酸化クロムで被覆されたチタンマイカ、有機染料で被覆されたチタンマイカ及び更にはオキシ塩化ビスマスをベースとした真珠箔、から選択されうる。該真珠光沢剤はまた、マイカ粒子の表面上で金属酸化物及び/又は有機染料の少なくとも2つの連続層で重畳される該マイカ粒子でありうる。また言及されうる真珠光沢剤の例は、酸化チタンで、酸化鉄で、天然顔料で又はオキシ塩化ビスマスで被覆された天然マイカを包含する。
【0117】
市販されている真珠光沢剤の中で、Engelhard社から販売されているTimica、Flamenco及びDuochrome(マイカに基づく)の真珠光沢剤、Merck社から販売されているTimiron真珠光沢剤、Eckart社から販売されているPrestigeマイカベース真珠光沢剤、及びSun Chemical社から販売されているSunshine合成マイカベース真珠光沢剤が言及されうる。
【0118】
好ましくは、該顔料及び/又は真珠光沢剤は、該組成物の重量に対して0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~15重量%、の範囲の全含有量で、該組成物に存在しうる。
【0119】
語「染料」は、一般的に有機の化合物であり、それは脂肪物質、例えば油、中に又は水性アルコール相中に可溶性である上記化合物を意味するものとして理解されるべきである。
【0120】
本発明に従う化粧用組成物はまた、水溶性又は脂溶性染料を含有しうる。該脂溶性染料は例えば、スーダン(Sudan)レッド、DCレッド17、DCグリーン6、β-カロチン、スーダン(Sudan)ブラウン、DCイエロー11、DCバイオレット2、DCオレンジ5及びキノリンイエローである。該水溶性染料は例えば、ビートルートジュース又はメチレンブルーである。
【0121】
言うまでも無く、別の変形形態に従うと、本発明に従う組成物は、染料を含有せず、特に白色以外の色の染料を含有しない。
【0122】
この変形形態に従うと、組成物は、とりわけ白色クリームの形態でありうる。そのような組成物の主な目的は通常、保湿効果を、本発明に従って所望される効果と組み合わせて与えることである。
【0123】
本発明に従う組成物はまた、化粧部門で通常使用される様々な補助剤(adjuvants)、例えばフィラー、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料、化粧用活性剤、例えば保湿剤、紫外線遮蔽剤、瘢痕形成剤、脂性肌を抑制する為の剤、抗汚染剤及び/又は皮膚老化防止剤を含有しうる。
【0124】
言うまでも無く、当業者は、本発明に従う組成物の有利な特性が、想定される添加によって悪影響を受けないように、又は実質的に受けないように、任意的なこの又はこれらの1以上の追加の化合物及び/又はその量を選択するように注意するであろう。
【0125】
従って、本発明に従う組成物のマット効果を強化する為に、該組成物は、とりわけ脂性肌をケアする為の少なくとも1つの活性剤を含有しうる。
【0126】
本発明の文脈において、語「脂性肌をケアする為の活性剤」は、それ自体が生物活性を有する化合物(すなわち、活性化の為に外部物質を介入させる必要がない)を意味する。この活性剤は優先的に、落屑剤(desquamating agents)、抗菌剤、抗炎症剤、皮脂調節剤及び抗酸化剤から選択される。
【0127】
この1以上の活性成分は、該組成物の全重量の0.01重量%~50重量%、好ましくは0.1重量%~25重量%、更に良くは0.5重量%~10重量%、を占めうる。
【0128】
同様に、本発明に従う組成物は、とりわけ、ソルビトール、多価アルコール、好ましくはC~Cの多価アルコール、より好ましくはC~Cの多価アルコール、好ましくは、例えばグリセロール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセロール、グリセロール、及びそれらの混合物から選択されうる少なくとも1つの保湿剤を含有しうる。好ましい実施態様に従うと、該保湿剤はグリセロールである。
【0129】
保湿剤は好ましくは、該組成物の全重量に対して0.1重量%~10重量%の含有量で脂肪相中に存在する。
【0130】
本発明はまた、ケラチン物質、特に皮膚、をケアする為の、より特には顔面皮膚をケアする為の、化粧的方法であって、該ケラチン物質への、特に皮膚への、本発明に従う組成物の局所的施与を含む、上記方法に関する。
【0131】
より具体的には、上記方法は、皮膚をマットにし且つ/又は該皮膚のテカリを低減する為の方法である。
【0132】
本発明はまた、混合肌及び/又は脂性肌をケアする為の、本発明に従う組成物の化粧的使用方法に関する。
【0133】
本発明は今、下記の非限定的な実施例によって示される。これらの実施例において、量は重量百分率で示されている。化合物は、事例に応じて、化学名又はCTFA(国際化粧品成分辞書・ハンドブック)名として引用されている。
【実施例
【0134】
実施例1
下記の組成物は、以下に詳述される一般的手順に従って調製された。
【0135】
A1の出発物質(S/M)は、70~75℃で融解される。次に、A2は乳化の直前に添加される。
【0136】
相DのSMは、スパチュラによって室温で混合される。
【0137】
BのSMは、熱い間に希釈される。相Aがそれに添加され、そして全体がローター/ステーター3上で5分間、均質化される。ローター/ステーター3を使用して撹拌しながら、全体が相Cの冷水で希釈される。
【0138】
相Dが添加され、そして全体がローター/ステーター3上で均質化され、相Eで中和され、デフロキュレーター上で冷却しながら再度均質化される。FのSMがデフロキュレーター上で冷却しながらそれに添加され、引き続き相Gがデフロキュレーター上で添加される。
【0139】
以下の表1は、こうして得られた2つの組成物の詳細な組成を与える。
【0140】
【表1】
表1
【0141】
実施例2
本発明に従う組成物は、実施例1に詳述されたプロトコルに従って調製される。この組成物は、そのマット効果力について試験され、且つその官能的品質について評価された。
【0142】
対照組成物がまた調製されて、同じ試験を受けた。ガレヌス製剤に関して、それらは組成物1のそれを再現するが、7.5%のジカプリリルエーテル及び5%のカプリル酸/カプリン酸のトリグリセリドが別の油で置き換えられた。下記の表2は、各対照組成物について、どの他の化合物が組成物1のこれら2つの成分で、どれくらいの量で置き換えられたかを示す。
マット効果力を評価する為の試験
組成物の施与で結果として生じる堆積物の光沢は通常、様々な方法、例えばByk Micro TRI光沢60°光沢計を使用する方法、に従って測定されうる。
【0143】
この光沢計を使用した測定の原理
【0144】
装置は、分析されるべき試料を特定の入射角度で照射し、そして鏡面反射の強度を測定する。
【0145】
反射された光の強度は、物質及び照射角度に依存する。非鉄材料(塗料、プラスチック)の場合、反射光の強度は、照射の角度とともに増加する。残りの入射光は物質を透過し、そして、色の濃淡の度合いに依存して、部分的に吸収されるか又は散乱される。
【0146】
反射率計の測定結果は、入射光の量ではなく、定義された屈折率の磨かれた黒ガラス標準に基づく。
【0147】
該測定は、内部標準に対して正規化され、そして100分の1の値にされる。この較正基準について、測定値は100 グロスユニット(Gloss Unit)(較正)に設定される。
【0148】
該測定値が100に近づくほど、試料はより高い光沢を持つ。測定単位はグロスユニット(GU)である。
【0149】
使用される照射角度は、反射率計の値に対して大きな影響を有する。非常に高い光沢とマットな表面とを容易に区別できるように、標準化が、定義された3つの幾何又は3つの測定ドメインを有する。
【0150】
試験プロトコル
a-Erichsen社から販売されているコントラストカード(Prufkarteタイプ24/5-250cm)に、その平均光沢を評価することが所望される組成物を、機械式膜スプレッダーを使用して2mg/cmの速度で塗り広げて100ミクロン厚の膜を得る。塗膜は、該カードの白色の背景と黒色の背景とを覆う。
b-37℃で24時間静置して乾燥する。
c-参照名microTri-GlossのByk Gardnerブランドの光沢計を使用して、吸収性の白色の背景上で60°における光沢を測定する(3回の測定)。
【0151】
スプレー1回分の混合物(20%オレイン酸+80%ビシー水+1%Oleth-10)が施与され、付着される量が、スプレー1回当たり約0.3gである。
【0152】
反射がゴニオリフレクトメーターを使用して測定され(即時光沢,GU)、12分後に室温で測定される(光沢持続性,GU)。得られる結果は、鏡面反射と乱反射(グロスユニット(Gloss Unit)、すなわちGU)との比Rである。Rの値は、マット効果が大きいほど、比例的に小さくなる。
【0153】
光沢の評価スケールは、下記の通りである:
-:光沢あり
0:効果なし
+:ややマット
++:マット
+++:非常にマット
【0154】
【表2】
表2
【0155】
本発明に従う組成物のみが所望の効力を得ることを可能にすることが留意されうる。
【0156】
官能的品質を評価する為の試験
手の甲の表面への試験組成物の試料の局所的施与の間及び該局所的施与後の滑らかさ及び粘着性品質がそれぞれ評価される。
【0157】
滑らかさが、手の甲の表面への試験組成物の試料の施与の間にこの表面における指の滑る容易さを評価することによって評価される。触感の評価を強化する為に、該施与が該表面上で滑らせる2本の指を用いて行われる。
【0158】
滑らかさ符号:
0:ドラッギング(dragging)
+:滑らか
++:非常に滑らか
【0159】
粘着性は、施与指で皮膚を触って、軽くたたくことによって評価される。
【0160】
粘着性符号:
-:非粘着性
0:効果なし
+:やや粘着性
++:粘着性
+++:非常に粘着性
【0161】
【表3】
表3
【0162】
上記結果から、本発明に従うエステル炭化水素系油とエーテル炭化水素系油との組み合わせを含む組成物のみが所望の効果を示すことが明らかになる。