(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】近赤外狭帯域光フィルタ及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/28 20060101AFI20231222BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20231222BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20231222BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20231222BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/26
B32B7/027
B32B15/04 B
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2021563621
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(86)【国際出願番号】 CN2019130539
(87)【国際公開番号】W WO2020244219
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】201910487259.6
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520093458
【氏名又は名称】信陽舜宇光学有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】肖 念恭
(72)【発明者】
【氏名】方 叶▲慶▼
(72)【発明者】
【氏名】丁 ▲維▼▲紅▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 策
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108873135(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108897085(CN,A)
【文献】中国実用新案第203012173(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110082849(CN,A)
【文献】特開2008-139693(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/26
B32B 7/027
B32B 15/04
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外狭帯域光フィルタであって、
基板と、狭帯域通過膜系と、広帯域通過膜系または長波通過膜系とを含み、
前記狭帯域通過膜系は前記基板の第1側に設けられ、
前記広帯域通過膜系は、前記基板の前記第1側と対向する第2側に設けられ、前記広帯域通過膜系の通過帯域は前記狭帯域通過膜系の通過帯域より広く、前記長波通過膜系は、前記基板の前記第1側と対向する第2側に設けられ、前記長波通過膜系の通過帯域は前記狭帯域通過膜系の通過帯域より広く、
前記狭帯域通過膜系は、780nm~3000nmの波長範囲において屈折率が3より大きい高屈折率層と、屈折率が3より小さい低屈折率層とを含み、
前記高屈折率層は、水素化非晶質シリコン、Si
xGe
1-x、及びSi
xGe
1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって形成され、または、水素化ゲルマニウム、Si
xGe
1-x、及びSi
xGe
1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって形成され、
近赤外狭帯域光フィルタの反射色はCIE xyz座標系において
x<0.509;
y<0.363;及び
z<50%
を満足
し、
前記近赤外狭帯域光フィルタは、780nm~3000nmの波長範囲において屈折率が1.7~4.5の間である複数の中屈折率層をさらに含むことを特徴とする近赤外狭帯域光フィルタ。
【請求項2】
前記近赤外狭帯域光フィルタの反射色はCIE xyz座標系において
x<0.509;
y<0.363;及び
z<30%
を満足する、ことを特徴とする請求項1に記載の近赤外狭帯域光フィルタ。
【請求項3】
前記狭帯域通過膜系はさらに中屈折率層を含
み、
前記中屈折率層の屈折率が前記高屈折率層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率の間にある、ことを特徴とする請求項1に記載の近赤外狭帯域光フィルタ。
【請求項4】
前記低屈折率層は、SiO
2、Si
3N
4、SiO
xN
y、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、Al
2O
3、SiCNおよびSiCのうちの1つまたは複数の物質によって形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の近赤外狭帯域光フィルタ。
【請求項5】
前記中屈折率層は、a-SiO
x:H
y、a-SiN
x:H
y、a-GeO
x:H
y、a-GeN
x:H
y、a-Si
zGe
1-zO
x:H
y及びa-Si
zGe
1-zN
x:H
yのうちの1つまたは複数の物質によって形成されることを特徴とする請求項3に記載の近赤外狭帯域光フィルタ。
【請求項6】
入射光が0度から30度の間で近赤外狭帯域フィルタに入射する時、前記狭帯域通過膜系の通過帯域の中心波長のドリフト量が16nm以下となる、ことを特徴とする請求項1に記載の近赤外狭帯域光フィルタ。
【請求項7】
前記近赤外狭帯域光フィルタのp光とs光の中心波長のドリフトが5nm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の近赤外狭帯域光フィルタ。
【請求項8】
前記狭帯域通過膜系と前記広帯域通過膜系または前記長波通過膜系の総厚が15μm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の近赤外狭帯域光フィルタ。
【請求項9】
近赤外狭帯域光フィルタの製造方法であって、
低屈折率層及び高屈折率層を基板の第1側で順次交互に成膜し、狭帯域通過膜系を形成することと、
前記基板の前記第1側と対向する第2側に広帯域通過膜系または長波通過膜系を成膜することと、
を含み、
前記広帯域通過膜系または前記長波通過膜系の通過帯域は、前記狭帯域通過膜系の通過帯域より広きく、
前記狭帯域通過膜系は、780 nm~3000 nmの波長範囲において、屈折率が3より大きい高屈折率層と、屈折率が3より小さい低屈折率層とを含み、
近赤外狭帯域光フィルタの反射色は、CIE xyz座標系において
x<0.509;
y<0.363;及び
z<50%
を満足し、
前記高屈折率層は、水素化非晶質シリコン、Si
xGe
1-x、及びSi
xGe
1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって形成され、または、水素化ゲルマニウム、Si
xGe
1-x、及びSi
xGe
1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって形成され
、前記狭帯域通過膜系を形成すること、及び、前記広帯域通過膜系または長波通過膜系を成膜することそれぞれは、780nm~3000nmの波長範囲において屈折率が1.7~4.5の間である複数の中屈折率層を成膜することをさらに含むことを特徴とする近赤外狭帯域光フィルタの製造方法。
【請求項10】
その製造方法は、スパッタ成膜または蒸発成膜による成膜法である、ことを特徴とする請求項
9に記載の近赤外狭帯域光フィルタの製造方法。
【請求項11】
前記中屈折率層の屈折率は、前記高屈折率層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率の間である、ことを特徴とする請求項
9に記載の近赤外狭帯域光フィルタの製造方法。
【請求項12】
シリコン、ゲルマニウム、アルゴンガス、水素ガス、及び酸素ガスに基づいて、グロー放電によって得られた帯電イオンビームがターゲット材を衝撃することにより前記中屈折率層を成膜することを含み、
前記中屈折率層は、a-SiO
x:H
y、a-SiN
x:H
y、a-GeO
x:H
y、a-GeN
x:H
y、a-Si
zGe
1-zO
x:H
y及びa-Si
zGe
1-zN
x:H
yのうちの一つまたは複数の物質を含む、ことを特徴とする請求項
11に記載の近赤外狭帯域光フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年6月5日に中国専利局に提出され、出願番号が201910487259.6であり、発明の名称が「近赤外狭帯域光フィルタ及び製造方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全文の内容が援用により本出願に組み込まれる
【0002】
本出願は、光学素子の分野に関するもので、特に近赤外狭帯域光フィルタ及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
技術の進歩と発展につれて、光フィルタは人の顔認識やジェスチャー認識機能を持つ端末に広く利用されている(例えば、スマートフォン、車載レーザーレーダー、セキュリティ・ゲート禁止、スマート・ホーム、仮想現実/強化現実/ハイブリッド現実、3D体感ゲーム、3Dカメラとディスプレイなどの端末装置)。
【0004】
従来の光フィルタは、端末装置へ適用される際に、光反射が生じる問題があるため、端末装置への適用には、より高性能な光フィルタが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術における上記の欠陥を解決または部分的に解決するために、本出願の実施例は、近赤外狭帯域光フィルタ及び製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本出願の実施例は、近赤外狭帯域光フィルタを提供し、この近赤外狭帯域光フィルタは、基板と、狭帯域通過膜系と、広帯域通過膜系または長波通過膜系とを含み、前記狭帯域通過膜系は前記基板の第1側に設けられ、前記広帯域通過膜系は、前記基板の前記第1側と対向する第2側に設けられ、前記広帯域通過膜系の通過帯域は前記狭帯域通過膜系の通過帯域より広く、前記長波通過膜系は、前記基板の前記第1側と対向する第2側に設けられ、前記長波通過膜系の通過帯域は前記狭帯域通過膜系の通過帯域より広く、前記狭帯域通過膜系は、780nm~3000nmの波長範囲において屈折率が3より大きい高屈折率層と屈折率が3より小さい低屈折率層とを含み、ここで、近赤外狭帯域光フィルタの反射色はCIE xyz座標系においてx<0.509;y<0.363;及びz<50%を満足する。
【0007】
本出願の実施例により、前記近赤外狭帯域光フィルタの反射色はCIE xyz座標系においてx<0.509;y<0.363;及びz<30%を満足する。
【0008】
本出願の実施例により、前記狭帯域通過膜系はさらに中屈折率層を含み、ここで:前記中屈折率層の屈折率が前記高屈折率層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率の間にある。
【0009】
本出願の実施例により、前記高屈折率層は、水素化シリコン、SixGe1-x、及びSixGe1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって形成され、または、前記高屈折率ゲルマニウムベース層は、水素化ゲルマニウム、SixGe1-xおよびSixGe1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって形成される。
【0010】
本出願の実施例により、前記低屈折率層は、SiO2、Si3N4、SiOxNy、Ta2O5、Nb2O5、TiO2、Al2O3、SiCNおよびSiCのうちの1つまたは複数の物質によって形成される。
【0011】
本出願の実施例により、780~3000 nmの波長範囲における屈折率が1.7~4.5の間である複数の中屈折率層をさらに含む。
【0012】
本出願の実施例により、前記中屈折率層は、水素化非晶質酸化ケイ素(a-SiOx:Hy)、水素化非晶質窒化ケイ素(a-SiNx:Hy)、水素化非晶質酸化ゲルマニウム(a-GeOx:Hy)、水素化非晶質窒化ゲルマニウム(a-GeNx:Hy)、水素化非晶質酸化ケイ素ゲルマニウム(a-SizGe1-zOx:Hy)及び水素化非晶質窒化ケイ素ゲルマニウム(a-SizGe1-zNx:Hy)のうちの1つまたは複数の物質によって形成される。
【0013】
本出願の実施例により、入射光が0度から30度の間で近赤外狭帯域フィルタに入射する時、前記狭帯域通過膜系の通過帯域の中心波長のドリフト量が16 nm以下となる。
【0014】
本出願の実施例により、前記近赤外狭帯域光フィルタのp光とs光の中心波長のドリフトが5nm以下である。
【0015】
本出願の実施例により、前記狭帯域通過膜系と前記広帯域通過膜系または前記長波通過膜系の総厚が15μm以下である。
【0016】
第2の態様において、本出願の実施例は、近赤外狭帯域光フィルタの製造方法を提供し、この製造方法は、低屈折率層及び高屈折率層を基板の第1側で順次交互にめっきし、狭帯域通過膜系を形成することと、前記基板の前記第1側と対向する第2側に広帯域通過膜系または長波通過膜系をめっきすることとを含み、前記広帯域通過膜系または前記長波通過膜系の通過帯域は、前記狭帯域通過膜系の通過帯域より広きく、前記狭帯域通過膜系は、780nm~3000nmの波長範囲において、屈折率が3より大きい高屈折率層と、屈折率が3より小さい低屈折率層とを含み、近赤外狭帯域光フィルタの反射色は、CIE xyz座標系においてx<0.509;y<0.363;及びz<50%を満足する。
【0017】
本出願の実施例により、その製造方法は、スパッタめっきまたは蒸発めっきによるめっき法である。
【0018】
本出願の実施例により、狭帯域通過膜系を形成するには、更に中屈折率層をめっきすることを含み、前記中屈折率層の屈折率は、前記高屈折率層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率の間である。
【0019】
本出願の実施例により、前記方法は、シリコン、ゲルマニウム、アルゴンガス、水素ガス、及び酸素ガスに基づいて、グロー放電によって得られた帯電イオンビームがターゲット材を衝撃することにより前記中屈折率層をめっきすることをさらに含み、前記中屈折率層は、a-SiOx:Hy、a-SiNx:Hy、a-GeOx:Hy、a-GeNx:Hy、a-SizGe1-zOx:Hy及びa-SizGe1-zNx:Hyのうちの一つまたは複数の物質を含む。
【0020】
本出願の実施例で提供された近赤外狭帯域光フィルタ及び製造方法は、基板の第1側に、780nm~3000nmにおいて屈折率が3より大きい高屈折率層と屈折率が3より小さい低屈折率層とを有する狭帯域通過膜系が設けてあり、基板の第2側に780nm~3000nmにおいて屈折率が3より大きい高屈折率層と屈折率が3より小さい低屈折率層とを有する広帯域通過膜系が設けてあり、広帯域通過膜系の通過帯域は、前記狭帯域通過膜系の通過帯域より広くて、光フィルタのめっき構造において、暗い反射色の条件がz<50%、x<0.509及びy<0.363を満足する狭帯域通過膜系と長波通過膜系とを形成し、多様な反射色、低い反射エネルギー強度、及び低い反射色輝度の近赤外狭帯域光フィルタを得て、携帯電話の全面スクリーンのうちのスクリーンの下のデバイスと車載デバイスの応用需要を満たす。
【0021】
本出願の他の特徴、目的、および利点は、以下の図面を参照して非限定的な実施例について詳細に説明することによってより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例に係る近赤外狭帯域光フィルタの構造概略図である。
【
図2】本発明の実施例に係る近赤外狭帯域光フィルタの製造方法のフローチャートである。
【
図3a】本発明の実施例1に係る明るい反射色の狭帯域光フィルタの反射率と波長の関係図である。
【
図3b】本発明の実施例1に係る暗い反射色の狭帯域光フィルタの反射率と波長の関係図である。
【
図4a】本発明の実施例2に係る明るい反射色の狭帯域光フィルタの反射率と波長の関係図である。
【
図4b】本発明の実施例2に係る暗い反射色の狭帯域光フィルタの反射率と波長の関係図である。
【
図5a】本発明の実施例3に係る明るい反射色の狭帯域光フィルタの反射率と波長の関係図である。
【
図5b】本発明の実施例3に係る暗い反射色の狭帯域光フィルタの反射率と波長の関係図である。
【
図6a】本発明の実施例4に係る明るい反射色の狭帯域光フィルタの反射率と波長の関係図である。
【
図6b】本発明の実施例4に係る暗い反射色の狭帯域光フィルタの反射率と波長の関係図である。
【
図7】本発明の実施例に係る光学系の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本出願をよりよく理解するために、図面を参照して、本出願の様々な態様についてより詳細に説明する。これらの詳細な説明は、本出願の範囲をいかなる形で限定することなく、ただ本出願の例示的な実施例の説明にすぎないことを理解すべきである。明細書の全文において、同じ図面符号は同じ元件を表す。「および/または」という表現は、関連するリストされた項目のうちの1つまたは複数の任意およびすべての組み合わせを含む。
【0024】
なお、本明細書では、第1、第2、第3などの表現は、特徴に対する制限を表すものではなく、特徴を他の特徴と区別するためにのみに用いられることを注意すべきである。したがって、本出願の教示を離反することなく、以下で説明する第1側を第2側とも呼ぶことができる。その逆もまた同様である。
【0025】
図面においては、説明を容易にするために、部品の厚さ、サイズ、形状を若干調整している。図面はただの一例であって、厳密に比例に従って描かれていない。例えば、第一膜系の厚みと長さは、実際の生産における比例を従っていない。本出願で使用されるように、「大体」、「およそ」という用語、および類似の用語は、程度を表す用語ではなく、近似を表す用語として使用され、一般的な当業者によって認識される測定値または計算値における固有の偏りを説明することを意図する。
【0026】
本文において、膜層の厚さは基板から離れる方向の厚さを意味する。
【0027】
「包括」、「包括する」、「有する」、「含む」および/または「含める」という用語は、本明細書で使用される際、述べられた特徴、素子、および/または部品が存在することを示すが、1つ以上の他の特徴、要素、部品、および/またはそれらの組み合わせの存在または付加されることは排除されていないことも理解すべきである。また、リストされた特徴のリストの後に「…のうちの少なくとも1つ」などの表現が現れると、リストされた特徴の全体が修飾され、リスト内の個々の要素が修飾されない。さらに、本出願の実施例を説明する場合、「…ことができる」を使用して「本出願の一つまたは複数の実施例」を表す。さらに、「例示的」という用語は、一例または例示することを表すことを意図する。
【0028】
特に限定されない限り、本出願で使用されるすべての用語(工学用語および科学技術用語を含む)は、本出願の属する技術分野の一般的な当業者の通常の理解と同じ意味を持つ。本出願に明示的な説明がない限り、常用辞書で定義される用語は、それらの関連技術の文脈における意味と一致して解釈されるべきであり、理想化または過剰形式化された意味で解釈されてはならないことも理解されるべきである。
【0029】
なお、本出願の実施例および実施例のうちの特徴は、矛盾しない場合、互いに組み合わせてもよい。また、明示的に定義されていない限り、または文脈と矛盾していない限り、本明細書に記載されている方法に含まれる具体的なステップは、記載された順序に限定されるものではなく、任意の順序で実行または並列で実行されてもよい。以下、図面を参照しながら、実施例に関連して本出願を詳細に説明する。
【0030】
既存の近赤外狭帯域光フィルタは干渉原理を利用して、材料の吸収特性を結合して通過帯域幅、通過帯域反射率、高カットオフ度、中心波長の低角度ドリフトなどの特定の狭帯域特性指標を実現する。例えば、高屈折率Si:Hの、可視光領域での高吸収性と近赤外帯域780nm~1100nmでの高屈折率、低吸収率の特性とを結合して、対応する光フィルタを製造する。
【0031】
なお、既存の近赤外狭帯域光フィルタは、可視領域での反射率の平均値が25%以上であり、さらに一部の波帯で90%以上を達しているため、光フィルタは赤(マゼンタ、深紅、紫紅など)、緑(濃い緑)を呈し、その反射光の強度は大きくて、反射色の輝度は高い。携帯電話の全面スクリーンのうちのスクリーンの下のデバイスと車載デバイスは、具体的に応用する時、多様な反射色、低い反射エネルギー強度、低い反射色輝度の光フィルタが必要である。
【0032】
上述した携帯端末または車載端末の光フィルタの応用の需要を満たすために、本出願の実施例は、近赤外狭帯域光フィルタを提供し、
図1は、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタの構造概略図であり、
図1に示すように、この近赤外狭帯域光フィルタは、基板11と、前記基板11の第1側に設けられた狭帯域通過膜系12と、前記基板11の前記第1側と対向する第2側に設けられた広帯域通過膜系又は長波通過膜系13とを含む。前記広帯域通過膜系又は長波通過膜系の通過帯域13は前記狭帯域通過膜系の通過帯域より広くて、前記狭帯域通過膜系12は、780~3000nmの波長範囲において屈折率が3より大きい高屈折率層と屈折率が3より小さい低屈折率層とを含む。近赤外狭帯域光フィルタの反射色は、CIE xyz座標系において、x<0.509;y<0.633;及びz<50%を満足する。
【0033】
具体的に、本発明の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、基板の第1側に、780~3000nmにおいて屈折率が3より大きい高屈折率層121と、3より小さい低屈折率層122とを有する狭帯域通過膜系が設けられており、基板の第2側に、780~3000nmにおいて屈折率が3より大きい高屈折率層131または高屈折率ゲルマニウムベース層131と、屈折率が3より小さい低屈折率層132とを有する広帯域通過膜系が設けられており、このような狭帯域通過膜系と広帯域通過膜系とを有する近赤外狭帯域光フィルタがz<50%、x>0.509、及びy<0.363の暗い反射色条件を満たすことにより、携帯端末や車載端末での応用を満たす多様な反射色、低い反射エネルギー強度、低い反射色輝度の近赤外狭帯域光フィルタが得られる。
【0034】
上記の実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタにおける狭帯域通過膜系は、中屈折率層をさらに含むことができる。この中屈折率層の屈折率は、高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率との間にあり、近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系は、3層の異なる屈折率の屈折層を有することができ、多様な反射色、低い反射エネルギー強度、低い反射色輝度の近赤外狭帯域光フィルタが得られて、携帯電話の全面スクリーンのうちのスクリーンの下のデバイスと車載デバイスの応用需要を満たすことができる。
【0035】
上記の実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタにおける高屈折率層は、水素化シリコン、SixGe1-x、及びSixGe1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって形成され、あるいは、高屈折率ゲルマニウムベース層は水素化ゲルマニウム、SixGe1-x、及びSixGe1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって形成されている。すなわち、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、高屈折率層を有する膜系を形成する際、この高屈折率層が、水素化シリコン、SixGe1-xおよびSixGe1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質が選択されて混合めっきされることができ、高屈折率ゲルマニウムベース層を有する膜系を形成する際、この高屈折率ゲルマニウムベース層が水素化ゲルマニウム、SixGe1-x:Hのうちの1つまたは複数の物質によって混合めっきされる。
【0036】
上記の実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタにおける低屈折率層は、SiO2、Si3N4、SiOxNy、Ta2O5、Nb2O5、TiO2、Al2O3、SiCN及びSiCのうちの1つまたは複数の物質によって形成されている。すなわち、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタの2つの膜系を形成する低屈折率層は、SiO2、Si3N4、SiOxNy、Ta2O5、Nb2O5、TiO2、Al2O3、SiCN及び SiCのうちの1つまたは複数の物質が選択されて混合めっきされることができる。
【0037】
上記実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、さらに、780~3000 nmの波長範囲における屈折率が1.7~4.5の間である複数のマッチング層を含む。すなわち、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、複数のマッチング層をさらに含む。
【0038】
上記の実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタの中屈折率層は、a-SiOx:Hy、a-SiNx:Hy、a-GeOx:Hy、a-GeNx:Hy、a-SizGe1-zOx:Hy及びa-SizGe1-zNx:Hyのうちの一つまたは複数の物質によって形成されている。すなわち、本発明の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタの中屈折率層はa-SiOx:Hy、a-SiNx:Hy、a-GeOx:Hy、a-GeNx:Hy、a-SizGe1-zOx:Hy及びa-SizGe1-zNx:Hyのうちの一つまたは複数の物質が選択されて混合めっきされることができる。
【0039】
本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、両側に狭帯域通過膜系と広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系をめっきした後、近赤外狭帯域光フィルタにおける反射色がCIE xyz座標系において以下を満足する:x<0.509;y<0.363;及び z<30%。すなわち、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、両側に狭帯域通過膜系と広帯域通過膜系をめっきした後、近赤外狭帯域光フィルタにおける反射色がCIE xyz座標系において、反射条件が、x<0.509;y<0.363;及びz<30%であることを満足すれば、得られた近赤外狭帯域光フィルタは、携帯電話の全面スクリーンのうちのスクリーンの下のデバイス及び車載デバイスにおける近赤外狭帯域光フィルタに対しての多様な反射色、低い反射エネルギー強度、及び低い反射色輝度の応用需要をより良く満たすことができる。
【0040】
上記の実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、入射光が近赤外狭帯域光フィルタに0度から30度の間で入射する時、狭帯域通過膜系の通過帯域の中心波長のドリフト量が16nm以下、すなわち通過帯域波段の中心波長のドリフト幅が16nmより小さくなる。すなわち、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、使用時に、入射光が0度から30度の間で近赤外狭帯域光フィルタに入射すると、狭帯域通過膜系の通過帯域の中心波長のドリフト量が16nm以下となり、めっき性能がより優れた近赤外狭帯域光フィルタを得る。
【0041】
上記実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタのp光とs光の中心波長のドリフトは5 nm以下である。すなわち、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、使用時に、p光とs光の中心波長のドリフトが5 nm以下により、めっき性能がより優れた近赤外狭帯域光フィルタを得る。
【0042】
上記実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系と広帯域通過膜系の総厚さは15μm以下である。すなわち、本出願の実施例で提供された近赤外狭帯域光フィルタは、両側の膜系がコーティングされた後、狭帯域通過膜系と広帯域通過膜系の総厚さが15μmより小さくなり、近赤外狭帯域光フィルタの厚さが薄くて使用が容易となる。
【0043】
本出願の実施例はさらに、
図2に示すように、近赤外狭帯域光フィルタの製作方法のフローチャートを提供し、この方法は以下のステップを含む。
【0044】
ステップ21)低屈折率層及び高屈折率層を基板の第1側で順次交互にめっきし、狭帯域通過膜系を形成する。
【0045】
ステップ22)前記基板の前記第1側と対向する第2側に広帯域通過膜系または長波通過膜系をめっきし、前記広帯域通過膜系または長波通過膜系の通過帯域は、狭帯域通過膜系の通過帯域より大きく、前記狭帯域通過膜系は、780nm~3000nmの波長範囲において、屈折率が3より大きい高屈折率層と、屈折率が3より小さい低屈折率層とを含み、及び近赤外狭帯域光フィルタの反射色は、CIE xyz座標系において、x<0.509;y<0.363;及びz<50%を満足する:。
【0046】
本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタの作製方法は、基板の両側に、780nm~3000nmでの屈折率が3より大きい高屈折率層と、3より小さい低屈折率層とを有する狭帯域通過膜系と広帯域通過膜系をそれぞれめっきすることにより、反射色がCIE xyz座標系において、暗い反射色条件としてのz<50%、x<0.509及びy<0.363を満たす近赤外狭帯域光フィルタを得て、携帯電話の全面スクリーンのうちのスクリーンの下のデバイス及び車載デバイスが近赤外狭帯域光フィルタに対しての多様な反射色、低い反射エネルギー強度、及び低い反射色輝度の応用需要を満たす。
【0047】
上記の実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタの製造方法はさらに以下を含む:前記狭帯域通過膜系の一側で高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率との間の屈折率を有する中屈折率層をめっきする。すなわち、本出願の実施例が提供する近赤外狭帯域光フィルタの製造方法は、基板をめっきする際、上記の2層膜料(高屈折率層と低屈折率層)でめっきして狭帯域通過膜系と広帯域通過膜系または長波通過膜系とを得てもよく、また、3層膜料(すなわち高屈折率層、中屈折率層、及び低屈折率層)でめっきして広帯域通過膜系または長波通過膜系を形成してもよく、操作の自由度が高くて、めっきの精度も高い。
【0048】
以上の実施例に基づいて、本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタの製造方法はさらに以下を含む:シリコン、ゲルマニウム、アルゴンガス、水素ガス、及び酸素ガスに基づいて、グロー放電によって得られた帯電イオンビームがターゲット材を衝撃することにより中屈折率層をめっきする。前記中屈折率層はa-SiOx:Hy、a-SiNx:Hy、a-GeOx:Hy、a-GeNx:Hy、a-SizGe1-zOx:Hy及びa-SizGe1-zNx:Hyのうちの一つまたは複数の物質を含む。すなわち、グロー放電の前に、まず堆積室を5*10^-5 torより小さく真空にポンプし、グロー放電堆積中に、流量が10sccm~300sccmのアルゴンガスを反応ガスとして注入し、順次に流量が80 sccm以下の水素ガス、流量60が sccm以下の酸素ガスを注入し;水素化反応中に酸素原子を非晶質シリコン薄膜にドープして、酸素原子を非晶質シリコン中にSiと新しい結合を形成させ、水素化非晶質酸化ケイ素(a-SiOx:Hy)、水素化非晶質酸化ゲルマニウム(a-GeOx:Hy)および水素化非晶質酸化ケイ素ゲルマニウム(a-SizGe1-zOx:Hy)を形成することにより、中屈折率層のめっきに対応する物質を得る。
【0049】
本出願の近赤外狭帯域光フィルタ膜系のめっき構造をより良く説明するために、以下の実施例を提供してさらに説明する。
【0050】
実施例1
本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、その第2側に広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系がめっきされていても良い。表1aは広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表1aは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系の膜層構造を示し、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、必要な膜系構造を形成する。表1aに示す構造において、SiO2は低屈折率誘電体材料であり、Si:Hは高屈折率シリコンベース材料である。
【0051】
近赤外狭帯域光フィルタの第1側に、明るい反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている際、以下の表1bに示す構造を参照することができる。表1bは、明るい反射色の狭帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表1bは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系の明るい反射色の狭帯域通過膜系の膜層の構造を示し、同様に、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、対応する膜系構造を形成する。ここで、高屈折率シリコンベース材料はa-Si:Hであり、低屈折率誘電体材料はSiO
2である。1931 CIE xyzシステムの特性評価によれば、表1aと表1bに基づいて調製された両面めっき光フィルタは、入射光の0°と30°の入射において、それぞれ(0.351,0.324,53.03%)及び(0.375,0.315,49.09%)と特性を評価されている。ここでx、yは色の色度座標、zは色の輝度を表す。
図3 aは、本出願の実施例1で提供される明るい反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている光フィルタの反射率と波長との関係図である。
【0052】
近赤外狭帯域光フィルタの第1側に、暗い反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている際、以下の表1cに示す構造を参照することができる。表1cは、暗い反射色の狭帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表1cは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系の暗い反射色の狭帯域通過膜系の膜層の構造を示し、この膜系と膜層は、3つの膜料により異なる厚さの膜層をめっきして、対応する膜系構造を形成する。表1cにおいて、3つの膜料は、高屈折率材料がa-Si:Hであり、低屈折率材料がSiO
2であり、中屈折率材料がa-SiO
x:H
yである。1931 CIE xyzシステムの特性評価によれば、表1aと表1cに基づいて調製された両面めっき光フィルタは、入射光の0°と30°の入射において、それぞれ(0.192,0.077,3.8%)及び(0.216,0.08,3.9%)と特性を評価されている。ここでx、yは色の色度座標、zは色の輝度を表す。
図3bは、本出願の実施例1で提供される暗い反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている光フィルタの
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
実施例2
本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、その第2側に広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系がめっきされていても良い。表2aは広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表2aは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系の膜層構造を示し、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、必要な膜系構造を形成する。表2aに示す構造において、SiO2は低屈折率誘電体材料であり、TiO2は高屈折率材料である。
【0057】
近赤外狭帯域光フィルタの第1側に、明るい反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている際、以下の表2bに示す構造を参照することができる。表2bは、明るい反射色の狭帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表2bは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系の明るい反射色の狭帯域通過膜系の膜層の構造を示し、同様に、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、対応する膜系構造を形成する。ここで、高屈折率シリコンベース材料はa-Si:Hであり、低屈折率誘電体材料はSiO
2である。1931 CIE xyzシステムの特性評価によれば、表2aと表2bに基づいて調製された両面めっき光フィルタは、入射光の0°と30°の入射において、それぞれ(0.351,0.324,53.03%)及び(0.375,0.315,49.09%)と特性を評価されている。ここでx、yは色の色度座標、zは色の輝度を表す。
図4aは、本出願の実施例2で提供される明るい反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている光フィルタの反射率と波長との関係図である。
【0058】
近赤外狭帯域光フィルタの第1側に、暗い反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている際、以下の表2cに示す構造を参照することができる。表2cは、暗い反射色の狭帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表2cは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系の暗い反射色の狭帯域通過膜系の膜層の構造を示し、同様に、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、対応する膜系構造を形成し、ここで、高屈折率シリコンベース材料はa-Si:Hであり、低屈折率誘電体材料はSiO
2である。1931 CIE xyzシステムの特性評価によれば、表2aと表2cに基づいて調製された両面めっき光フィルタは、入射光の0°と30°の入射において、それぞれ(0.301,0.319,35.22%)及び(0.276,0.309,29.66%)と特性を評価されている。ここでx、yは色の色度座標、zは色の輝度を表す。
図4bは、本出願の実施例2で提供される暗い反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている光フィルタの反射率と波長との関係図である。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
実施例3
本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、その第2側に広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系がめっきされていても良い。表3aは広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表3aは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系の膜層構造を示し、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、必要な膜系構造を形成する。表3aに示す構造において、SiO2は低屈折率誘電体材料であり、Si:Hは高屈折率シリコンベース材料である。
【0063】
近赤外狭帯域光フィルタの第1側に、明るい反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている際、以下の表3bに示す構造を参照することができる。表3bは、明るい反射色の狭帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表3bは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系の明るい反射色の狭帯域通過膜系の膜層の構造を示し、同様に、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、対応する膜系構造を形成する。ここで、高屈折率シリコンベース材料はa-Si:Hであり、低屈折率誘電体材料はSiO
2である。1931 CIE xyzシステムの特性評価によれば、表3aと表3bに基づいて調製された両面めっき光フィルタは、入射光の0°と30°の入射において、それぞれ(0.366,0.292,49.80%)及び(0.372,0.288,49.47%)と特性を評価されている。ここでx、yは色の色度座標、zは色の輝度を表す。
図5aは、本出願の実施例3で提供される明るい反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている光フィルタの反射率と波長との関係図である。
【0064】
近赤外狭帯域光フィルタの第1側に、暗い反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている際、以下の表3cに示す構造を参照することができる。表3cは、暗い反射色の狭帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表3cは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系の暗い反射色の狭帯域通過膜系の膜層の構造を示し、この膜系と膜層は、2つの膜料により異なる厚さの膜層をめっきして、対応する膜系構造を形成し、ここで、2つの膜料は、高屈折率ゲルマニウムベース材料Ge:Hと低屈折率誘電体材料SiO
2である。1931 CIE xyzシステムの特性評価によれば、表3aと表3cに基づいて調製された両面めっき光フィルタは、入射光の0°と30°の入射において、それぞれ(0.339,0.226,26.65%)及び(0.361,0.246,28.07%)と特性を評価されている。ここでx、yは色の色度座標、zは色の輝度を表す。
図5bは、本出願の実施例3で提供される暗い反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている光フィルタの反射率と波長との関係図である。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
実施例4
本出願の実施例で提供される近赤外狭帯域光フィルタは、その第2側に広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系がめっきされていても良い。表4aは広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表4aは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの広帯域通過膜系または長波帯域通過膜系の膜層構造を示し、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、必要な膜系構造を形成する。表2aに示す構造において、SiO2は低屈折率誘電体材料であり、Si:Hは高屈折率材料である。
【0069】
近赤外狭帯域光フィルタの第1側に、明るい反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている際、以下の表4bに示す構造を参照することができる。表4bは、明るい反射色の狭帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表4bは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系の明るい反射色の狭帯域通過膜系の膜層の構造を示し、同様に、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、対応する膜系構造を形成する。ここで、高屈折率シリコンベース材料はa-Si:Hであり、低屈折率誘電体材料はSiO
2である。1931 CIE xyzシステムの特性評価によれば、表4aと表4bに基づいて調製された両面めっき光フィルタは、入射光の0°と30°の入射において、それぞれ(0.366,0.292,49.80%)及び(0.372,0.288,49.47%)と特性を評価されている。ここでx、yは色の色度座標、zは色の輝度を表す。
図6aは、本出願の実施例4で提供される明るい反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている光フィルタの反射率と波長との関係図である。
【0070】
近赤外狭帯域光フィルタの第1側に、暗い反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている際、以下の表4cに示す構造を参照することができる。表4cは、暗い反射色の狭帯域通過膜系の膜層の厚さの表であり、表2cは、本出願の近赤外狭帯域光フィルタの狭帯域通過膜系の暗い反射色の狭帯域通過膜系の膜層の構造を示し、同様に、2つの膜料を交互することにより異なる厚さの膜層をめっきして、対応する膜系構造を形成し、ここで、2つの膜料はそれぞれ、高屈折率材料Si
xGe
1-x:Hと低屈折率誘電体材料SiO
2である。1931 CIE xyzシステムの特性評価によれば、表4aと表4cに基づいて調製された両面めっき光フィルタは、入射光の0°と30°の入射において、それぞれ(0.222,0.179,12.33%)及び(0.232,0.183,11.97%)と特性を評価されている。ここでx、yは色の色度座標、zは色の輝度を表す。
図6bは、本出願の実施例4で提供される暗い反射色の狭帯域通過膜系がめっきされている光フィルタの反射率と波長との関係図である。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
本発明の実施例は、さらに赤外線イメージセンサと前述の光フィルタ5とを含む光学系を提供し、光フィルタ5は赤外線イメージセンサの感光側に設けられる。
【0075】
図7は、本発明の実施例で提供される光学系の構造図であり、
図7に示すように、赤外線(Infreard Radiation)光源2、第1レンズ構成要素3、第2レンズ構成要素4、光フィルタ5、および3次元センサ6を含む。赤外線光源2から発射の光は、第1レンズ構成要素3を介して測定対象物1の表面に照射され、測定対象物1の表面から反射された光は、第2レンズ構成要素4を介して光フィルタ5に照射され、環境光が光フィルタ5によりカットオフされ、赤外線または部分の赤色光が光フィルタ5を透過して三次元センサ6の感光側に照射され、処理可能な画像データを形成する。光フィルタ5は、異なる方向の傾斜光線に対応して、より低い中心波長のドリフト量を有し、透過した赤外線の信号対雑音比が高くて、形成される画像の品質が良い。
【0076】
以上の説明は、本出願のより良い実施例および運用される技術原理についての説明のみである。当該技術分野の当業者は、本出願に係る保護範囲は、上記の技術的特徴の特定の組み合わせから成る技術的な態様に限定されるものではなく、上記技術的な概念から逸脱することなく、上記技術的特徴またはその等同な特徴による任意の組み合わせによって形成される他の技術的な態様を包含してもよいことを理解すべきである。例えば、上記の特徴と、本出願に開示されている(ただし、これらに限定されない)類似の機能を有する技術的特徴とを相互に置換して形成される技術的な態様でもよい。