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特許7407846集束イオンビーム装置及びイオンビームの視野ズレ補正方法
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  • 特許-集束イオンビーム装置及びイオンビームの視野ズレ補正方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】集束イオンビーム装置及びイオンビームの視野ズレ補正方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/21 20060101AFI20231222BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20231222BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20231222BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20231222BHJP
   H01J 37/30 20060101ALI20231222BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01J37/21 Z
H01J37/317 D
H01J37/244
H01J37/147 D
H01J37/30 A
H01J37/305 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022007051
(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公開番号】P2023105980
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】大堀 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 啓二
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095397(JP,A)
【文献】特開2015-088316(JP,A)
【文献】特開2009-139132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0203122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に集束イオンビームを照射して加工する集束イオンビーム装置であって、
イオンビームを発生するイオン源と、
イオンビームを試料に集束させるレンズ系と、
試料から発生する二次電子を検出する検出器と、
前記レンズ系を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、
試料上にイオンビームを走査せずに照射させ、前記イオンビームの照射中に対物レンズの強度を変化させて前記イオンビームの焦点を変化させる制御を行い、前記対物レンズの強度を変化させている間に前記試料から発生する二次電子の信号強度を測定し、測定された二次電子の信号強度が最小となるときの前記対物レンズの強度に基づいて前記イオンビームの焦点調整を行い、前記イオンビームの焦点調整を行ったときに試料上に形成されるスポット痕の像を含む二次電子像を取得し、前記二次電子像における基準位置と前記スポット痕の位置との差に基づいて前記イオンビームの視野ズレを補正することを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、
所与の電流値のイオンビームの焦点調整を行った後、試料上に当該イオンビームよりも小電流の基準ビームを走査することで、当該イオンビームの焦点調整を行ったときに形成される前記スポット痕の像を含む前記二次電子像を取得することを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、
所与の電流値のイオンビームの焦点調整を行った後、前記基準ビームを当該イオンビームの電流値に応じた倍率で走査することで、当該イオンビームの焦点調整を行ったときに形成される前記スポット痕の像を含む前記二次電子像を取得することを特徴とする集束イオンビーム装置。
【請求項4】
集束イオンビーム装置におけるイオンビームの視野ズレ補正方法であって、
試料上にイオンビームを走査せずに照射させ、前記イオンビームの照射中に対物レンズの強度を変化させて前記イオンビームの焦点を変化させ、前記対物レンズの強度を変化させている間に前記試料から発生する二次電子の信号強度を測定し、測定された二次電子の信号強度が最小となるときの前記対物レンズの強度に基づいて前記イオンビームの焦点調整を行うステップと、
前記イオンビームの焦点調整を行ったときに試料上に形成されるスポット痕の像を含む二次電子像を取得し、前記二次電子像における基準位置と前記スポット痕の位置との差に基づいて前記イオンビームの視野ズレを補正するステップとを含むことを特徴とするイオンビームの視野ズレ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビーム装置及びイオンビームの視野ズレ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集束イオンビーム装置において焦点調整を行う手法として、試料上にイオンビームを走査せずに照射させ、イオンビームの照射中に対物レンズの強度を変化させ、対物レンズの強度を変化させている間に二次電子の信号強度を測定し、測定された信号強度が最小となるときの対物レンズの強度に基づいて焦点調整を行う手法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-95397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集束イオンビーム装置において焦点調整を行った際、試料加工時のビームの位置と試料観察時のビームの位置が異なっていたため、毎回、オペレータが視野ズレを調整していた。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、イオンビームの視野ズレを自動で補正することが可能な集束イオンビーム装置及びイオンビームの視野ズレ補正方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る集束イオンビーム装置は、試料に集束イオンビームを照射して加工する集束イオンビーム装置であって、イオンビームを発生するイオン源と、イオンビームを試料に集束させるレンズ系と、試料から発生する二次電子を検出する検出器と、前記レンズ系を制御する制御部とを含み、前記制御部は、試料上にイオンビームを走査せずに照射させ、前記イオンビームの照射中に対物レンズの強度を変化させて前記イオンビームの焦点を変化させる制御を行い、前記対物レンズの強度を変化させている間に前記試料から発生する二次電子の信号強度を測定し、測定された二次電子の信号強度が最小となるときの前記対物レンズの強度に基づいて前記イオンビームの焦点調整を行い、前記イオンビームの焦点調整を行ったときに試料上に形成されるスポット痕の像を含む二次電子像を取得し、前記二次電子像における基準位置と前記スポット痕の位置との差に基づいて前記イオンビームの視野ズレを補正する。
【0007】
また、本発明に係るイオンビームの視野ズレ補正方法では、集束イオンビーム装置におけるイオンビームの視野ズレ補正方法であって、試料上にイオンビームを走査せずに照射させ、前記イオンビームの照射中に対物レンズの強度を変化させて前記イオンビームの焦点を変化させ、前記対物レンズの強度を変化させている間に前記試料から発生する二次電子の信号強度を測定し、測定された二次電子の信号強度が最小となるときの前記対物レンズの強度に基づいて前記イオンビームの焦点調整を行うステップと、前記イオンビームの焦点調整を行ったときに試料上に形成されるスポット痕の像を含む二次電子像を取得し、前記二次電子像における基準位置と前記スポット痕の位置との差に基づいて前記イオンビームの視野ズレを補正するステップとを含む。
【0008】
本発明によれば、イオンビームの焦点調整を行ったときに試料上に形成されるスポット痕を利用して自動で視野ズレを補正することができる。
【0009】
(2)本発明に係る集束イオンビーム装置及びイオンビームの視野ズレ補正方法では、前記制御部は、所与の電流値のイオンビームの焦点調整を行った後、試料上に当該イオンビームよりも小電流の基準ビームを走査することで、当該イオンビームの焦点調整を行ったときに形成される前記スポット痕の像を含む前記二次電子像を取得してもよい。
【0010】
(3)本発明に係る集束イオンビーム装置及びイオンビームの視野ズレ補正方法では、前記制御部は、所与の電流値のイオンビームの焦点調整を行った後、前記基準ビームを当該イオンビームの電流値に応じた倍率で走査することで、当該イオンビームの焦点調整を行ったときに形成される前記スポット痕の像を含む前記二次電子像を取得してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る集束イオンビーム装置の構成の一例を示す図。
図2】本実施形態に係る集束イオンビーム装置の焦点調整及び視野ズレ補正の処理の流れを示すフローチャート。
図3】基準スポット痕を含む二次電子像の一例を示す図。
図4】スポット痕を含む二次電子像を模式的に示す図。
図5】スポット痕を含む二次電子像の一例を示す図。
図6】スポット痕を含む二次電子像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る集束イオンビーム装置の構成の一例を示す図である。なお本実施形態の集束イオンビーム装置は図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0014】
図1に示すように、集束イオンビーム装置は、集束イオンビーム装置本体1、駆動部30、増幅器32、ステージ制御装置34、処理部40、操作部50、表示部52、記憶部54を含む。集束イオンビーム装置本体1は、イオン源10、集束レンズ12、ブランカー14、可動絞り16、非点収差補正器18(スティグメータ)、対物レンズ20、偏向器22、ステージ24、検出器26を含む。
【0015】
イオン源10は、イオンビームBを発生する。イオン源10で発生したイオンは引き出し電極(図示省略)によってイオン源10から引き出され、加速電極(図示省略)によって加速される。集束レンズ12は、イオン源10で発生したイオンビームBを集束する。ブランカー14は、イオンビームBのブランキングを行う。可動絞り16は、イオンビームBの電流量を選択的に制限する。非点収差補正器18は、イオンビームBの照射断面が円形になるようにビーム形状を整形する。対物レンズ20は、イオンビームBを試料Sの表面で集束する。偏向器22は、対物レンズ20によって集束されたイオンビームBを試料S上で走査させる。ステージ24は、試料Sを水平方向や垂直方向に移動させ、また試料Sを回転、傾斜させる。
【0016】
検出器26は、イオンビームBの照射に基づいて試料Sから発生する二次電子を検出する。検出器26によって検出された検出信号(二次電子の強度信号)は、増幅器32によって増幅された後、処理部40に供給される。
【0017】
駆動部30は、処理部40からの制御信号に基づいて、集束レンズ12、ブランカー14、可動絞り16、非点収差補正器18、対物レンズ20及び偏向器22を駆動する。ステージ制御装置34は、処理部40からの制御信号に基づいて、ステージ24の動作を制御する。
【0018】
操作部50は、ユーザが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部40に出力する。操作部50の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル型ディスプレイなどのハードウェアにより実現することができる。
【0019】
表示部52は、処理部40によって生成された画像(例えば、集束されたイオンビームBの走査に基づく試料Sの二次電子像)を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。
【0020】
記憶部54は、処理部40の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶するとともに、処理部40のワーク領域として機能し、その機能はハードディスク、RAMなどにより実現できる。
【0021】
処理部40は、駆動部30やステージ制御装置34を制御する処理や、増幅器32によって増幅された検出信号を、偏向器22に供給されるイオンビームBの走査信号と同期された画像データ(二次電子像)とする処理などの処理を行う。処理部40の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部40は、制御部42を含む。
【0022】
制御部42は、制御信号を生成し、生成した制御信号を駆動部30に出力して、レンズ系(集束レンズ12、ブランカー14、可動絞り16、非点収差補正器18、対物レンズ20及び偏向器22)を制御する。
【0023】
また制御部42は、イオンビームBの焦点調整時において、試料S上にイオンビームBを走査せずに照射させ、イオンビームBの照射中に対物レンズ20の強度を変化させてイオンビームBの焦点を変化させる制御を行う。そして、制御部42は、対物レンズ20の強度を変化させている間に試料Sから発生する二次電子の信号強度を検出し、検出した二次電子の信号強度が最小となるときの対物レンズ20の強度に基づいて、イオンビームBの焦点調整を行う。すなわち、検出した二次電子の信号強度が最小となるときの対物レンズ20の強度を、合焦点の対物レンズ20の強度とする。なお、制御部42は、検出二次電子の信号強度が最小となるときの対物レンズ20の強度に基づいて、試料加工時の焦点調整を行い、検出した二次電子の信号強度が最小となるときの対物レンズ20の強度を所定値だけオフセットした値に基づいて試料観察時の焦点調整を行ってもよい。
【0024】
また制御部42は、イオンビームBの焦点調整を行ったときに試料S上に形成されるスポット痕の像を含む二次電子像を取得し、当該二次電子像における基準位置(例えば、二次電子像の中心位置)とスポット痕の位置との差に基づいてイオンビームBの視野ズレ(位置ズレ)を補正する。イオンビームBの焦点調整時において、試料S表面にイオンビームBを走査しないで照射(スポットビームとして照射)すると、試料S表面の原子がはじきとばされることで、試料S表面に孔が形成される。この孔を、スポット痕と呼ぶ。ここで、試料加工時と試料観察時では、イオンビームBの電流値が異なることからビーム位置が異なり、イオンビームBの視野ズレが発生する。本実施形態の手法では、イオンビームBの焦点調整を行ったときに試料S上に形成されるスポット痕を観察して、観察像(二次電子像)におけるスポット痕の位置に基づいて自動でイオンビームBの視野ズレを補正する。
【0025】
制御部42は、上記の焦点調整と視野ズレ補正を、イオンビームBの電流値と加速電圧を変えて実行する。制御部42は、電流値と加速電圧の各値の組み合わせ毎に、合焦点の対物レンズ20の強度と視野ズレの補正値を求めて記憶部54に記憶しておき、試料加工時に、そのときの電流値と加速電圧の組み合わせに対応する合焦点の対物レンズ20の強度を設定するとともに、当該組み合わせに対応する視野ズレの補正値を偏向器22(駆動部30)に与える。
【0026】
図2は、本実施形態の集束イオンビーム装置の焦点調整及び視野ズレ補正の処理の流れを示すフローチャートである。
【0027】
まず、制御部42は、駆動部30を制御して、試料上に基準ビーム(試料観察時に用いる最小電流のイオンビーム)を走査せずに照射させ、照射中に対物レンズ20の強度を変化させ、対物レンズ20の強度を変化させている間に増幅器32から供給される二次電子の信号強度を取得する(ステップS10)。次に、制御部42は、取得した二次電子の信号強度が最小となるときの対物レンズ20の強度に基づいて基準ビームの焦点調整を実行する(ステップS11)。図3に、基準ビームの焦点調整を行ったときに試料上に形成されるスポット痕を観察した二次電子像SIを示す。この場合、焦点調整時と観察時とでイオンビームの電流値が同じであるため、視野ズレは発生せず、スポット痕は二次電子像SIの中心に位置している。このスポット痕を、基準スポット痕RSと呼ぶ。
【0028】
次に、制御部42は、可動絞り16(駆動部30)とイオン源10の電源を制御して、イオンビームの電流値と加速電圧を、焦点調整・視野ズレ補正の対象とするいずれかの組み合わせに設定(変更)する(ステップS12)。このときの電流値は、基準ビームの電流値よりも大きい。
【0029】
次に、制御部42は、駆動部30を制御して、試料上にイオンビームを走査せずに照射させ、照射中に対物レンズ20の強度を変化させ、対物レンズ20の強度を変化させている間に増幅器32から供給される二次電子の信号強度を取得する(ステップS13)。次に、制御部42は、取得した二次電子の信号強度が最小となるときの対物レンズ20の強度を合焦点の対物レンズ20の強度として設定する(ステップS14)。この合焦点の対物レンズ20の強度は、ステップS12で設定した電流値と加速電圧の組み合わせに対応付けて記憶部54に記憶される。
【0030】
次に、制御部42は、駆動部30を制御して、試料上に基準ビームを走査して二次電子像(ステップS13の焦点調整時に形成されたスポット痕の像を含む二次電子像)を取得する(ステップS15)。このとき、制御部42は、ステップS12で設定した電流値に応じた倍率(観察倍率)で基準ビームを走査する。焦点調整時に形成されるスポット痕はイオンビームの電流値が大きいほど大きくなるため、電流値が大きいほど観察倍率が低くなるようにして、二次電子像におけるスポット痕の像の大きさが電流値にかかわらず一定になるようにする。これにより、後述するステップS16においてスポット痕を認識し易くすることができる。
【0031】
次に、制御部42は、取得した二次電子像における中心位置(基準位置の一例)とスポット痕の位置との差を求め、求めた差に基づいて視野ズレの補正値を設定する(ステップS16)。この視野ズレの補正値は、ステップS12で設定した電流値と加速電圧の組み合わせに対応付けて記憶部54に記憶される。図4に、スポット痕SMを含む二次電子像SIを模式的に示す。二次電子像SIの中心位置CPとスポット痕SMの位置との差とは、中心位置CPとスポット痕SM間のX軸の距離及びY軸の距離(Δx,Δy)である。この距離(Δx,Δy)と観察倍率とに基づいてイオンビームの位置ズレ量(ΔX,ΔY
)を求め、求めた位置ズレ量(ΔX,ΔY)の符号を反転した値(-ΔX,-ΔY)を視野ズレの補正値とする。この補正値(-ΔX,-ΔY)を偏向器22に供給することでイオンビームの視野ズレを補正する。なお、中心位置CPとスポット痕SMとの距離(Δx,Δy)は、スポット痕SMを画像認識してその位置を特定することで求めてもよいし、基準スポット痕RSを含む二次電子像(図3)とスポット痕SMを含む二次電子像SIとのパターンマッチングにより求めてもよい。ここで、図5図6に示すように、二次電子像SIには、直前の(現在の電流値での)焦点調整時に形成されたスポット痕SMの他に、過去の(現在の電流値とは異なる電流値での)焦点調整時に形成されたスポット痕の像が含まれている場合がある。図5に示す例では、過去の焦点調整時に形成されたスポット痕SM'の大きさがスポット痕SMに比べて十分に小さい。そのため、画像認識やパターンマッチングにおいてスポット痕SM'は無視され問題なく距離(Δx,Δy)を求めることができる。また、図6に示す例では、過去の焦点調整時に形成されたスポット痕SM''の大きさはスポット痕SMと同等であるが、スポット痕SM''の輝度がスポット痕SMに比べて低い。そのため、画像認識やパターンマッチングにおいて輝度の高いスポット痕SMが認識され問題なく距離(Δx,Δy)を求めることができる。
【0032】
次に、制御部42は、イオンビームの電流値と加速電圧の全ての組み合わせについて焦点調整と視野ズレ補正を行ったか否かを判断し(ステップS17)、全ての組み合わせについて完了していない場合(ステップS17のN)には、ステップS12に移行し、電流値と加速電圧の組み合わせを変更してステップS13以降の処理を実行する。
【0033】
なお、ステップS15で取得した二次電子像に含まれるスポット痕の画像を、取得時の時間情報に関連付けて記憶部54に蓄積して管理するようにしてもよい。この場合、制御部42は、記憶部54に蓄積されたスポット痕の画像を参照して、当該スポット痕の形状に基づいてアパーチャー(可動絞り16)の消耗度や交換時期を推測するようにしてもよい。例えば、当該スポット痕の形状と基準となるスポット痕(アパーチャーが消耗していない状態で予め取得された二次電子像に含まれるスポット痕)の形状との相違度を求め、相違度が大きいほど推測する消耗度が大きくなるように或いは推測する交換時期が近くなるように、アパーチャーの消耗度や交換時期を推測してもよい。また、当該相違度が所定の閾値を超える場合に、メンテナンス時期であることやトラブルが発生したことを通知するアラート情報を出力するようにしてもよい。
【0034】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0035】
1…集束イオンビーム装置本体、10…イオン源、12…集束レンズ、14…ブランカー、16…可動絞り、18…非点収差補正器、20…対物レンズ、22…偏向器、24…ステージ、26…検出器、30…駆動部、32…増幅器、34…ステージ制御装置、40…処理部、42…制御部、50…操作部、52…表示部、54…記憶部、B…イオンビーム、S…試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6