(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】眼圧制御システム、部品キット、および方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
A61F9/007 160
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022030969
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2019043730の分割
【原出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-03-10
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】511158720
【氏名又は名称】ディー・オー・アール・シー・ダッチ・オフサルミック・リサーチ・センター・(インターナショナル)・ビー・ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ペーター・カンツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・アルベルト・アルバレス・カブレラ
(72)【発明者】
【氏名】ウィム・ローゼンクイスト
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0224888(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0247938(US,A1)
【文献】特表2015-505685(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0245909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼圧制御システムであって、
入力ポートおよび出力ポートを有する流体圧力調節器と、
近位端部および遠位端部を有する注入ラインであって、前記近位端部が、前記流体圧力調節器の前記出力ポートに接続され、前記遠位端部が、眼用潅注モジュールに着脱可能に接続されている、注入ラインと、
前記眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するために前記流体圧力調節器を駆動する制御ユニットと
を備え、
前記制御ユニットは、前記眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む流体較正プロセスを実行
し、前記制御ユニットは、所定の流体インピーダンス較正基準値が、予め指定された限界以内で、前記眼用潅注モジュールの決定された流体インピーダンスと同じであることを、前記流体圧力調節器の動作に対する静的および/または動的な流体応答で評価するために、あるタイプの眼用潅注モジュールの所定の流体インピーダンス校正基準値を使用するように構成され、
前記眼用潅注モジュールが、外科的使用のための眼用潅注装置であることを特徴とする、眼圧制御システム。
【請求項2】
眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するためのコンピュータプログラム製品であって、
前記眼用潅注モジュールが、圧力調節器の出力ポートに接続された近位端部を有する注入ラインの遠位端部に着脱可能に接続され、
当該コンピュータプログラム製品は、プロセッサに、前記眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む流体較正プロセスを実行するステップを実行させ
、所定の流体インピーダンス較正基準値が、予め指定された限界以内で、前記眼用潅注モジュールの決定された流体インピーダンスと同じであることを、前記圧力調節器の動作に対する静的および/または動的な流体応答で評価するために、あるタイプの眼用潅注モジュールの所定の流体インピーダンス校正基準値を使用させる、コンピュータ読み取り可能コードを含み、
前記眼用潅注モジュールが、外科的使用のための眼用潅注装置であることを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力ポートおよび出力ポートを有する流体圧力調節器と、近位端部および遠位端部を有する注入ラインであって、近位端部が、圧力調節器の出力ポートに接続され、遠位端部が、眼用潅注モジュールに着脱可能に接続されている、注入ラインと、眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するために圧力調節器を駆動する制御ユニットと、を含む、眼圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科手術では、小さいプローブがインサート開口部を介して目に挿入され、例えばカニューレが目の毛様体扁平部を通って挿入されて、組織を切断し、除去し、または別様に処理する。典型的には、目の内部は、目を貫通する眼用潅注モジュールを介して目の中に注入流体を流すことにより、その流体で洗浄される。潅注モジュールは、流体圧力調節器によって加圧される注入ラインにより送り込まれる。目の内部の組織を処理する間、インサート開口部を介して目から出る流体の量は、例えば外科行為に応じて、経時的に変化し得る。
【0003】
先行技術のシステムでは、目に向かう流体流は、眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するために圧力調節器を駆動する制御ユニットを用いて制御され得る。制御プロセスは、目の内部における感知された流体圧力に基づき得る。代替例として、同じ出願人の名における欧州特許第2538900号明細書は、流体圧力が流体圧力センサを使用せずに推定されることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するプロセスが改善される眼圧制御システムを提供することである。それに加えて、本発明によれば、制御ユニットは、眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む流体較正プロセスを実行するように構成され、注入ラインが、注入ラインに着脱可能に接続されている眼用潅注モジュールが部品キットの第2の眼用潅注装置であるように、外科的使用のための第1の眼用潅注装置を含む部品キットであって較正使用のための第2の眼用潅注装置をさらに含む部品きっとと関連付けられているか、または、眼用潅注モジュールが、外科的使用のための眼用潅注装置である。
【0006】
較正プロセスを実行することによって、圧力調節器の動作に対する静的および/または動的な流体応答が評価され得、それによって、例えば目の中の流体圧力を予め定義された設定点に設定するために、例えば補償速度および精度に関して、目における外科行為による目の内部での圧力損失を補償するように、システムを改善する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、眼用潅注モジュールの流体インピーダンスが、潅注モジュールの比較的小さい寸法により、眼圧制御システムの流体挙動に著しく貢献し得るという知見が利用される。眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定することによって、システムの全体的な流体応答が、より正確に推定され得、それによって、圧力制御プロセスがさらに改善される。
【0008】
本発明によるシステムを使用することによって、任意の外科処置に関わらず、眼内圧を、外科医が設定した値で安定した状態に保つことができる。
【0009】
さらに、注入ラインを、外科的使用のための第1の眼用潅注装置を含み、較正使用のための第2の眼用潅注装置をさらに含む部品キットと関連付けて、注入ラインに着脱可能に接続されている眼用潅注モジュールが部品キットの第2の眼用潅注装置となるようにすることによって、制御ユニットは、流体較正プロセスを実行することができ、このプロセスは、実際に外科プロセスで使用される第1の潅注装置に物理的に接続されずに、潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む。次に、較正プロセスは、外科的使用のための第1の潅注装置が他の場所、例えば目を貫通する、例えば外科位置に位置する間に、実行され得る。較正プロセスが終了した後、較正使用のための第2の潅注装置が、依然として外科位置にある間に、外科的使用のための潅注装置によって置き換えられ、それによって、外科行為を最低限にすることができる。
【0010】
有利には、決定された流体インピーダンスは、対応するタイプの眼用潅注装置と関連付けられた複数の所定の流体インピーダンス較正基準値と比較され得る。較正中に使用される眼用潅注装置が、実際には、例えば装置の外形および/またはサイズに応じて、限られた数の装置タイプを含むセットに属するので、流体インピーダンスの決定は、外科プロセスで使用される装置のタイプ、すなわち第1の装置を識別するのに使用され得る。流体インピーダンス較正基準値は、実験室条件中に、および/または専用の測定センサを用いて、前もって測定され得、例えば装置の説明書と共にデジタル方式で、第1の装置および第2の装置と一緒に提供され得る。次に、手元にある装置の識別は、流体インピーダンスの非常に正確な決定なしに得ることができる。原理上は、第2の装置の流体インピーダンスの比較的粗略で不正確な決定であっても、複数の所定の流体インピーダンス較正基準値との比較が高い確率レジーム(high probability regime)内の肯定的な結果で実行され得る場合は特に、第1の装置のタイプを識別するのに有用となり得る。較正プロセス中に決定された流体インピーダンス値が、選択された確率区間内で、複数の所定の流体インピーダンス較正基準値の特定の基準値と合致した場合、確実な識別が、前記基準値と関連付けられた眼用潅注装置のタイプに行われ得る。その後、第1の装置のタイプを識別すると、前記識別された第1の装置の既知の流体インピーダンス情報は、流体インピーダンスの比較的包括的または粗略な決定が較正プロセス中に実行された場合であっても、圧力調節器の動作への静的および/または動的な流体応答を評価するのに有利に使用され得る。
【0011】
所定の流体インピーダンス較正基準値は、対応するタイプの第1の眼用潅注装置の流体インピーダンスと合致し得る。次に、部品キットの第1の眼用潅注装置および第2の眼用潅注装置は、同じ流体インピーダンスを有し、合致した所定の流体インピーダンス較正基準値は、流体応答を評価するのに使用され得る。
【0012】
あるいは、所定の流体インピーダンス較正基準値は、対応するタイプの第1の眼用潅注装置の流体インピーダンスとは異なるが、独自の様式でこれに関連する。次に、部品キットの第1の眼用潅注装置および第2の眼用潅注装置は、互いに異なる流体インピーダンスを有するが、独自の様式で互いに関連する。装置のタイプは、第2の眼用潅注装置の流体インピーダンスを決定し、第2の装置の決定された流体インピーダンス値を、対応するタイプの第1の眼用潅注装置に関連させることによって、決定され得る。決定された流体インピーダンス値を対応する第1の眼用潅注装置のタイプに関連させるステップは、一方では、所定の流体インピーダンス較正基準値間の、他方では、対応するタイプの第1の眼用潅注装置の流体インピーダンス間の、関係の情報を用いることによって、適用され得る。前記情報は、任意の方法で、例えば表として、利用可能であってよい。
【0013】
所定の流体インピーダンス較正基準値を、対応する第1の装置の異なる流体インピーダンス値と、独自の様式で関連させることによって、部品キットの第1の装置および第2の装置の流体インピーダンスは、独自の既知の様式で、互いに異なっている。そして、較正に使用される第2の装置の流体インピーダンスは、迅速に測定され得るインピーダンスレジームに設定され、それによって、較正時間を節約する。一例として、部品キットの第2の装置は、第1の装置の流体インピーダンスよりも著しく低い流体インピーダンスを有し得る。
【0014】
第1の眼用潅注装置は、例えば水晶体用針(phaco needle)およびスリーブを含む、アクチュエータ機構を含み得、第2の眼用潅注装置は、受動的装置である。しかしながら、第1の潅注装置は、第2の潅注装置と同一であってよく、例えば両方の装置がアクチュエータ機構を含むか、または両方の装置が受動的であり、例えば注入カニューレとして実装される。
【0015】
あるいは、較正プロセス中、注入ラインの遠位端部に着脱可能に接続されている眼用潅注モジュールは、外科的使用のための眼用潅注装置である。そして、眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む較正プロセスは、外科的使用のための装置が目を貫通する位置に位置している場合であっても、その装置を探って実行され得る。
【0016】
また、この実施形態では、決定された流体インピーダンスは、対応するタイプの眼用潅注装置と関連付けられた、複数の既知の所定の流体インピーダンス較正基準値と比較され得、それによって、流体インピーダンス決定の精度要件を緩める。
【0017】
さらに、本発明は部品キットに関する。
【0018】
本発明はまた、注入流体圧力を制御する方法に関する。
【0019】
さらに、本発明は、コンピュータプログラム製品に関する。コンピュータプログラム製品は、CDまたはDVDなどのデータキャリアに記憶された、1組のコンピュータ実行可能命令を含み得る。1組のコンピュータ実行可能命令は、プログラム可能なコンピュータが前記に定めたような方法を実施することを可能にし、例えばインターネットを介して、リモートサーバからダウンロードされるのに利用可能であってもよい。
【0020】
本発明によるさらなる有利な実施形態については、以下の特許請求の範囲で説明する。
【0021】
前述された、または以下に記載される技術的特徴部はそれぞれ、それ自体で、システムまたは方法において具現化され、すなわち、それが記載される文脈から切り離されるか、他の特徴部から分離されるか、または、それが開示される文脈に記載された、いくつかのその他の特徴部のみと組み合わせられ得ることに留意されたい。これらの特徴部はそれぞれ、開示される任意の他の特徴部と、任意の組み合わせで、さらに組み合わせられ得る。
【0022】
本発明は、いくつかの例示的な実施形態および添付図面に基づいて、さらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による眼圧制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面は本発明による好適な実施形態を示すにすぎないことに留意されたい。図面では、同じ参照符号は、等しい部分、または対応する部品を指す。
【0025】
図1は、本発明による眼圧制御システム1の概略図を示す。システム1は、入力ポート3および出力ポート4を有する流体圧力調節器2を含む。システム1は、近位端部6および遠位端部7を有する注入ライン5も備え、近位端部6は、圧力調節器2の出力ポート4に接続されている。図示する実施形態では、注入ライン5の遠位端部7は、眼用潅注モジュール8に着脱可能に接続されている。注入ライン5は、いわゆる高流量注入ラインとして実装され得る。さらに、システム1は、眼用潅注モジュール8の遠位端部19における注入液体圧力を制御するために圧力調節器2を駆動する制御ユニット9を含む。
【0026】
システム1の動作中、眼用潅注モジュール8の遠位端部19は、患者の目の内部に入り込み、潅注流体を目の前記内部に流す。潅注流体を目の中に流すことによって、目の中での外科行為による、目における任意の内圧損失が、相殺され得る。流体圧力調節器2を起動すると、潅注流体圧力が、眼用潅注モジュール8の遠位端部19において及ぼされる。システムの動作中、制御ユニット9は、眼用潅注モジュール8の遠位端部19における注入流体圧力を制御するように、圧力調節器2を駆動する。
【0027】
注入ライン5を通じて流体圧力を調節する目的で、流体圧力調節器2は、流体圧力調節器2の入力ポート3に接続されたドリップチャンバを介して流体圧力調節器2に注入ライン5を供給する注入ボトルを備え得る。
【0028】
制御ユニット9は、流体較正プロセスを実行するようにさらに構成され、このプロセスは、眼用潅注モジュール8の流体インピーダンスを決定するステップを含み、その結果、制御ユニットは、眼用潅注モジュール8の遠位端部19における注入流体圧力を静的におよび/または動的に制御し得る。潅注流体を目の内部に向けて流すための内部流路を備えた眼用潅注モジュール8の流体インピーダンスを特徴づけることによって、眼用潅注モジュール8の静的および/または動的な応答が、目の手術中に、推定され得、それによって、モジュールの遠位端部における流体圧力制御が改善される。眼圧補償プロセスを実行する場合、所望の流体流動特徴が、例えば、較正されるシステムの流体システム挙動を考慮に入れて、容積および時間に関して、設定され得る。
【0029】
図1に示す第1の実施形態では、眼用潅注モジュール8は、外科的活動のために使用されるアクチュエータ機構を含む対応する眼用潅注装置10と同じ流体インピーダンスを有する受動的装置である。アクチュエータ機構は、例えば水晶体用針およびスリーブを含み得る。潅注モジュールの流体インピーダンスは、潅注モジュールを通る内部流体流路の寸法および/または外形、例えば長さ、直径、湾曲などによって決まり得る。対応する能動的な眼用潅注装置10の受動的な対応物8を使用することによって、制御ユニット9は、潅注装置10自体に物理的に接続されずに、眼用潅注モジュール8の流体インピーダンスを決定するステップを含む、流体較正プロセスを実行し得る。受動的な眼用潅注モジュール8は、流体較正処置を実行するのに適切な模擬モジュールとして役立ち得る。
【0030】
実際には、眼用潅注装置10、例えば水晶体用スリーブ(phaco sleeve)は、目を貫通する、例えば目の結膜/強膜に存在するカニューレを横断する、位置にとどまり得る。そして、能動的な潅注装置の受動的な対応物8は、較正プロセスを実行するために注入ライン5に着脱可能に接続され得、続いて、受動的な潅注モジュール8は、能動的な潅注装置10がその後注入ライン5に着脱可能に接続されている間に前記注入ライン5から取り外され得、注入流体を目の内部に、制御可能な様式で動作可能に提供する。言い換えれば、注入ライン5に着脱可能に接続されている受動的な眼用潅注モジュール8は、同じ流体インピーダンスを有するがアクチュエータ機構を含む、対応する眼用潅注装置10によって置き換えられる。
【0031】
図1では、受動的な眼用潅注モジュール8は注入ライン5の遠位端部7に接続され、能動的な潅注装置10は接続されていない。受動的な潅注モジュール8および能動的な潅注装置10は、モジュール8、10の近位端部から測定された、同じかまたは同様の流体インピーダンスを有し、よって、1組の関連する眼用モジュール、または部品キット11を形成する。部品キット11は、アクチュエータ機構を含む、外科的使用のための第1の眼用潅注装置10を含み、第1の眼用潅注装置10と同じ流体インピーダンスを有する受動的装置として実装された、較正使用のための第2の眼用潅注装置8をさらに含む。第1の眼用潅注装置10は、外科的使用のため、例えば目の中または上に置かれることが意図されており、ダミーモジュール8として役立つ第2の眼用潅注装置8は、第1の装置10の流体インピーダンスを決定することが意図されている。第2の眼用潅注装置8は、実際の装置10の代表的なツールとして、注入ライン5の遠位端部7上で予め組み立てられ得る、使い捨て可能なツール、例えばダミーカニューレとして実装され得る。較正プロセス中、ツール8の流体抵抗が測定され得る。次に、ツール8が取り外され得、注入ライン5は、原理上、外科的使用の準備ができる。
【0032】
部品キットが、特定の眼用装置の各ゲージサイズに、例えば各カニューレゲージサイズについて、提供され得る。さらに、各部品キットの第1の装置および第2の装置は、同じかまたは同様の流体インピーダンスを有し、これは、推定される眼内圧が予め指定された限界を有するように、一対の装置の内部流路外形の公差が、特定の限界を有することを意味する。
【0033】
第1の眼用潅注装置10が、例えば目に挿入される注入カニューレとして、アクチュエータなしで、受動的装置として実装され得ることにも留意されたい。そして、流体インピーダンスを決定するステップ中に使用される眼用潅注装置は、流体インピーダンスを決定するステップを終了した後で、すなわち手術中に、注入ラインの遠位端部に接続された別の眼用潅注装置と同一であってよい。この場合、部品キット11は、2つの同一の眼用潅注装置、すなわち、例えば目の中または上に設置されるよう、外科行為を実行するのに使用される第1の眼用潅注装置10と、装置の流体インピーダンスを決定するのに使用される第2の眼用潅注装置8と、を含み得る。2つの同一の眼用潅注装置はいずれも受動的である、すなわち任意の能動的に駆動される構成要素もしくはアクチュエータ機構なしであってよく、または、いずれも能動的である、すなわち能動的に駆動される構成要素もしくはアクチュエータ機構を含み得ることに留意されたい。
【0034】
よって、注入ライン5は、注入ライン5に着脱可能に接続されている眼用潅注モジュールが部品キットの第2の眼用潅注装置8であるように、外科的使用のための第1の眼用潅注装置10を含む部品キットであって較正使用のための第2の眼用潅注装置8をさらに含み、第1の眼用潅注装置10および第2の眼用潅注装置8が同じ流体インピーダンスを有する部品キットと関連付けられ得る。
【0035】
有利には、第2の装置8の決定された流体インピーダンスは、第2の装置の流体インピーダンスを反映し、対応するタイプの第1の眼用潅注装置10と関連付けられた、複数の所定の流体インピーダンス較正基準値と比較される。所定の流体インピーダンス較正基準値が、予め指定された限界以内で、第2の装置8の決定された流体インピーダンスと同じであることが分かる場合、流体インピーダンスの比較的包括的または粗略な決定が較正プロセス中に実行された場合であっても、第1の装置10のタイプが識別され、前記所定の流体インピーダンス較正基準値は、圧力調節器の動作への静的および/または動的な流体応答を評価するのに使用され得る。
【0036】
あるいは、第2の装置8の流体インピーダンスを反映する、所定の流体インピーダンス較正基準値は、対応するタイプの第1の眼用潅注装置10の流体インピーダンスとは異なるが、独自の様式で、前記タイプの第1の装置10に関連する。やはり、この装置のタイプは、何らかの方法で利用可能である前述した独自の関係の情報を用いて、例えば表またはアルゴリズムを用いて、第2の眼用装置8の流体インピーダンスを決定し、決定された流体インピーダンス値を、対応するタイプの第1の眼用装置に関連させることによって、決定され得る。一例として、第2の装置8の流体インピーダンス値は、第1の装置10の流体インピーダンス値より少なくとも1桁(order)低く、第1の装置のインピーダンスが比較的高い場合に較正時間が節約される。
【0037】
さらなる代替案として、第2の装置8の決定された流体インピーダンスは、所定の基準値と比較されないことに留意されたい。次に、決定された流体インピーダンス自体は、圧力調節器の動作への静的および/または動的な流体応答を評価するのに使用され得る。
【0038】
第2の実施形態では、注入ラインの遠位端部に着脱可能に接続されている眼用潅注モジュールは、オプションとして目を貫通する位置に位置する、外科的使用のための眼用潅注装置10である。装置10は、アクチュエータ機構を含み得る。次に、眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む較正プロセスは、装置10が目を貫通する位置に位置している場合であっても、外科的使用のための装置10で実行され得る。
【0039】
ここでも、装置10の決定された流体インピーダンスは、手元の装置のタイプを識別する目的で、装置の流体インピーダンスを反映する複数の所定の流体インピーダンス較正基準値と比較され得る。
【0040】
図2は、本発明による方法のフローチャートを示す。この方法は、眼用潅注モジュールの遠位端部における注入液体圧力を制御するのに使用される。方法100は、入力ポートおよび出力ポートを有する流体圧力調節器を提供するステップ110と、近位端部および遠位端部を有する注入ラインを提供するステップ120であって、近位端部が圧力調節器の出力ポートに接続されている、ステップ120と、注入ラインの遠位端部を眼用潅注モジュールに着脱可能に接続するステップ130と、眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するために流体圧力調節器を駆動する制御ユニットを提供するステップ140と、眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む流体較正プロセスを実行するステップ150と、を含み、注入ラインが、注入ラインに着脱可能に接続されている眼用潅注モジュールが部品キットの第2の眼用潅注装置であるように、外科的使用のための第1の眼用潅注装置を含む部品キットであって較正使用のための第2の眼用潅注装置をさらに含み第1の眼用潅注装置および第2の眼用潅注装置が同じ流体インピーダンスを有する部品キットと関連付けられているか、または、眼用潅注モジュールが、外科的使用のための眼用潅注装置である。
【0041】
方法は、第2の眼用潅注装置を切り離すステップをさらに含み得る。次に、第2の眼用潅注装置は、第1の眼用潅注装置と置き換えられ得る。
【0042】
眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む流体較正プロセスを実行するステップは、FPGAおよび/またはASICコンポーネントなどの、専用のハードウェア構造体を使用して、実行され得る。そうでない場合、方法は、コンピュータシステムのプロセッサに、前述したステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品を使用して少なくとも部分的に実行され得る。いくつかのステップは、原理上、単一のプロセッサ上で実行され得る。しかしながら、少なくとも1つのステップ、例えば眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップが、別個のプロセッサ上で実行され得ることに留意されたい。
【0043】
本発明は、本明細書に記載する実施形態に制限されない。多くの変形体が可能であることが理解される。
【0044】
これらおよび他の実施形態は、当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲で定められるような発明の範囲に含まれると考えられる。明確にし、簡潔に説明する目的で、特徴部は、同じかまたは別々の実施形態の一部として本明細書に記載される。しかしながら、本発明の範囲は、記載される特徴部のすべてまたは一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ることが、認識されるであろう。
【0045】
[第1項]
眼圧制御システムであって、
入力ポートおよび出力ポートを有する流体圧力調節器と、
近位端部および遠位端部を有する注入ラインであって、前記近位端部が、前記流体圧力調節器の前記出力ポートに接続され、前記遠位端部が、眼用潅注モジュールに着脱可能に接続されている、注入ラインと、
前記眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するために前記流体圧力調節器を駆動する制御ユニットと
を備え、
前記制御ユニットは、前記眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む流体較正プロセスを実行するように構成され、
前記注入ラインが、前記注入ラインに着脱可能に接続されている前記眼用潅注モジュールが部品キットの第2の眼用潅注装置であるように、外科的使用のための第1の眼用潅注装置を含む部品キットであって較正使用のための第2の眼用潅注装置をさらに含む部品キットと関連付けられているか、または、
前記眼用潅注モジュールが、外科的使用のための眼用潅注装置である、眼圧制御システム。
[第2項]
前記第1の眼用潅注装置が、アクチュエータ機構を含み、前記第2の眼用潅注装置が、受動的装置である、第1項に記載の眼圧制御システム。
[第3項]
前記第1の眼用潅注装置が、水晶体用針およびスリーブを備える、第2項に記載の眼圧制御システム。
[第4項]
前記第1の眼用潅注装置が、前記第2の眼用潅注装置と同一である、第1項に記載の眼圧制御システム。
[第5項]
前記部品キットの前記第1の眼用潅注装置および前記第2の眼用潅注装置が、同じ流体インピーダンスを有する、第1項から第4項のいずれかに記載の眼圧制御システム。
[第6項]
部品キットであって、外科的使用のための眼用潅注装置として実装された第1の眼用潅注モジュールを含み、前記部品キットは、較正使用のための試験装置として実装された第2の眼用潅注モジュールをさらに含み、第1の眼用潅注装置および第2の眼用潅注装置は、同じ流体インピーダンスを有する、部品キット。
[第7項]
前記第1の眼用潅注装置は、アクチュエータ機構を含み、前記第2の眼用潅注装置は、受動的装置である、第6項に記載の部品キット。
[第8項]
前記第1の眼用潅注装置は、前記第2の眼用潅注装置と同一である、第6項に記載の部品キット。
[第9項]
眼用潅注モジュールの遠位端部における注入液体圧力を制御する方法であって、
入力ポートおよび出力ポートを有する流体圧力調節器を提供するステップと、
近位端部および遠位端部を有する注入ラインを提供するステップであって、前記近位端部が、前記流体圧力調節器の前記出力ポートに接続されている、ステップと、
前記注入ラインの前記遠位端部を眼用潅注モジュールに着脱可能に接続するステップと、
前記眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するために前記流体圧力調節器を駆動する制御ユニットを提供するステップと、
前記眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む流体較正プロセスを実行するステップと
を含み、
前記注入ラインが、前記注入ラインに着脱可能に接続されている前記眼用潅注モジュールが部品キットの第2の眼用潅注装置であるように、外科的使用のための第1の眼用潅注装置を含む部品キットであって較正使用のための第2の眼用潅注装置をさらに含む部品キットと関連付けられているか、または、
前記眼用潅注モジュールが、外科的使用のための眼用潅注装置である、方法。
[第10項]
決定された前記流体インピーダンスを、対応するタイプの眼用潅注装置と関連付けられた複数の所定の流体インピーダンス較正基準値と比較するステップをさらに含む、第9項に記載の方法。
[第11項]
前記所定の流体インピーダンス較正基準値は、前記対応するタイプの眼用潅注装置の前記流体インピーダンスと合致する、第10項に記載の方法。
[第12項]
前記所定の流体インピーダンス基準値は、前記対応するタイプの前記第1の眼用潅注装置の前記流体インピーダンスとは異なるが、独自の様式でこれに関連する、第10項に記載の方法。
[第13項]
前記第2の眼用潅注装置を前記第1の眼用潅注装置と置き換えるステップをさらに含む、第9項から第12項のいずれかに記載の方法。
[第14項]
眼用潅注モジュールの遠位端部における注入流体圧力を制御するためのコンピュータプログラム製品であって、
前記眼用潅注モジュールは、圧力調節器の出力ポートに接続された近位端部を有する注入ラインの遠位端部に着脱可能に接続され、
前記コンピュータプログラム製品は、プロセッサに、前記眼用潅注モジュールの流体インピーダンスを決定するステップを含む流体較正プロセスを実行するステップを実行させる、コンピュータ読み取り可能コードを含み、
前記注入ラインが、前記注入ラインに着脱可能に接続された前記眼用潅注モジュールが部品キットの第2の眼用潅注装置であるように、外科的使用のための第1の眼用潅注装置を含む部品キットであって較正使用のための第2の眼用潅注装置をさらに含む部品きっとと関連付けられているか、または、
前記眼用潅注モジュールが、外科的使用のための眼用潅注装置である、コンピュータプログラム製品。
【符号の説明】
【0046】
1 眼圧制御システム
2 流体圧力調節器
3 入力ポート
4 出力ポート
5 注入ライン
6 近位端部
7 遠位端部
8 眼用潅注モジュール
9 制御ユニット
10 眼用潅注装置
11 部品キット
19 遠位端部