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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】磁気共鳴装置用のシム鉄
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231222BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61B5/055 332
A61B5/055 ZAA
G01N24/00 610E
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022067352
(22)【出願日】2022-04-15
(62)【分割の表示】P 2020555103の分割
【原出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2022109935
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】18166915.1
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】バーニッケル ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュメール インゴ
(72)【発明者】
【氏名】リップス オリバー
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-238917(JP,A)
【文献】特開2015-211766(JP,A)
【文献】特開2015-208427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴(MR)装置と共に使用するためのシム鉄であって、
前記シム鉄はシムプレートのスタックからなり、
前記シムプレートのうちの少なくとも2つがスリットを含み、前記スリットは、前記シムプレートのそれぞれのスリットパターンを形成し、
前記スタック内の連続している前記シムプレートのうち、前記スリットのうちの少なくともいくつかは異なる方向に向けられており、
前記シムプレートは、前記スリットが、前記シムプレートの形状の面内回転対称軸からオフセットされたスリットパターンの回転軸に対して、離間し、かつ、面内回転対称性を有して配置されるスリットパターンを有する、
シム鉄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)装置と共に使用するためのシム鉄の分野に関し、特に渦電流によるシム鉄の加熱を低減するために、スリットが入れられたシムプレートのスタックからなるシム鉄に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)及び磁気共鳴撮像(MRI)では、磁石の動作前にシミングを使用して、その静磁場の不均一性を排除している。最初は、NMR分光計又はMRIスキャナー内の磁場は、デバイスの「理想的な」磁場と比べると均一にはほど遠い。これは、製造公差とスキャナーの環境の結果である。検査室の壁や床の鉄の構造が磁化され、スキャナーの磁場を乱す。プローブ及びサンプル又は患者は、強い磁場内に入れられるとわずかに磁化され、追加の不均一な磁場を生成する。これらの不均一性を補正するプロセスは、残っている不均一性の想定される原因に応じて、磁石のシミング、プローブのシミング、又はサンプルのシミングと呼ばれる。MRIスキャナーでは、数リットルのボリュームにわたって1ppmのオーダーの磁場均一性が必要である。高分解能NMR分光法では、数ミリリットルのボリューム内で1ppbよりもよい磁場均一性を必要とする。
【0003】
一般に、シミングには、アクティブシミングとパッシブシミングとの2種類がある。アクティブシミングは、調整可能な電流を有するコイルを使用する。パッシブシミングには、シム鉄とも呼ばれる適切な磁気特性を持つ鋼片が関与する。シム鉄は、永久磁石又は超伝導磁石の近くに配置される。これらは磁化され、独自の磁場を生成する。どちらの場合も、コイル又はシム鉄からの追加の磁場は、それぞれ、全磁場の均一性を高めるように超伝導磁石の磁場全体を増大させる。
【0004】
通常、MRIスキャナーは、シムレールが挿入される、長手方向軸に沿った開口部を備えた磁場生成ユニット(両方のB0+勾配)を含む。これらのシムレールには、シム鉄が配置されるさまざまなポケットがある。現在のMRIスキャナーでは、シム鉄は、通常、勾配磁場が最大に近い場所に配置される。さらに、このような構成では、シム鉄は、かなり静的であるB0生成ユニット(クライオスタットの内側構造体(inner hull))ではなく、振動しやすい勾配生成ユニットに機械的に接続されている。したがって、このようなMRIスキャナーの最近の展開は、長い間知られていた問題、すなわち、シム鉄の加熱、したがって、シミングの熱ドリフトを悪化させる。
【0005】
これは、注意深いパッシブシミングによって主磁場の非常に優れた静的均一性を達成することができるが、シム材料が温度に敏感であり、ボアが加熱されると(勾配集中シーケンスでは一般的にそうなる)、場シフトが発生する可能性があるというこの技術の欠点があることを意味する。シムプレートの加熱は、主に渦電流によって引き起こされる。時変磁束(勾配磁場)がシムプレートに電流を誘導し、シムプレートを加熱する。したがって、温度の変化により、パッシブシムによって作成された磁気分布が変化し、画質及び幾何学的精度に悪影響を与える可能性がある。したがって、パッシブシムの実装は、それらの正常な機能は安定した温度条件に依存することを認識した上でのみ進める必要がある。
【0006】
したがって、撮像スキャン又は撮像シーケンスの時間の間に、シム鉄の温度を一定に保つための様々な試み、例えば、それらを局所的に予熱すること、シム鉄を直接特別に冷却すること、又は流入温度ではなく流出時の冷却を調整することが特許文献に提示されてきている。或いは、鉄の磁化の飽和の負の熱係数が打ち消される材料又は材料の混合物を使用することができる。
【0007】
米国特許第5,555,251号から、磁気共鳴医用イメージャの2つの対向する鉄心ポールピースが、ポールピースの間に配置された患者撮像ボリューム内に静磁場を生成することが知られている。勾配コイルがポールピースの面前に配置される。ポールピースの面には、トランスシート材から有利にカットされた層を積層した薄い円盤状又はリング状の強磁性部品が取り付けられている。各層は、エナメル又は固定接着剤によって隣接する層及び表面から電気的に絶縁されている。これらの層の渦電流を減らすために、ラミネーションの前に、これらの層に細い放射状に向けられたスロットがカットされる。スロットは、隣接する層内で一致しないように向けられており、この結果、勾配コイルによる勾配磁場の生成中に、撮像ボリューム内の磁束の伝導が向上される。
【0008】
渦電流を抑制するためのカット(又はスリット)を備えたシムプレート自体は、日本実用新案第09-238917号から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、勾配磁場によって誘発される渦電流によって引き起こされる加熱が大幅に低減されたシム鉄でMR装置をシミングするための簡単かつ効果的な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の主題によって対処される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に説明されている。
【0011】
したがって、本発明によれば、磁気共鳴(MR)装置と共に使用するためのシム鉄が提供される。
シム鉄は、シムプレートのスタックからなる。
シムプレートのうちの少なくとも2つがスリットを含み、スリットはスリットシムプレートのそれぞれのスリットパターンを形成する。
スタック内で連続しているシムプレートのうち、スリットの少なくともいくつかは異なる方向に向けられている。
【0012】
本発明によれば、簡単なスリット加工は比較的小さい周波数に対してうまく機能するが、より高い周波数(>1000Hz)では、スリット加工は損失をさらに増加させることが見出された。これは、高周波の場合、シムプレートは2Dで処理することができず、3Dで処理されるという効果によるものと思われる。したがって、連続するシムプレートは、同じスリットパターンを含むべきではなく、特に、連続するシムプレートのスリットが互いに覆い合うスリットパターンであってはならないことが見出された。
【0013】
したがって、本発明の本質的な考えは、一般には、シムプレートのスタックの連続するシムプレートが合同の重なり合いにあるようにする、異なるシムプレートのこのようなスリットパターンを回避することである。これは、本発明によれば、スタックの連続するシムプレートのスリットが同じやり方で整列されることが回避されることを意味する。このようにして、このようなシムプレートからなるシム鉄は、連続する/隣接するシムプレートのスリットの上述の直接の重なり合いを回避する簡単で信頼できるやり方で組み立てることができる。
【0014】
連続するシムプレートのそれぞれのスリットパターンのスリットは、シムプレートの平面内で異なる向きを有するので、スタック内で一致する、すなわち、互いに重なるそれぞれのシムプレートのスリットはない。これは、連続するシムプレート内で渦電流の建設的な重なりを回避する。したがって、スタック内の渦電流による加熱が打ち消され、シム鉄はプレート内の渦電流による加熱にほとんど敏感ではなくなる。連続するシムプレートのスリットパターンの異なる向きは、プレートの形状の回転対称角にわたる面内回転について合同ではないそれぞれのシムプレートの異なるシムパターンを提供することによって達成することができる。
【0015】
したがって、シムプレートをプレートの形状に従ってスタックして整列させると、プレートの形状の回転対称角によって異なる向きを有するプレートとは無関係に、それぞれのパターンのスリットは一致しない。したがって、プレートがそれらの形状が整列するようにスタックされる限り、それらのスリットパターンのスリットは一致しない。したがって、スタッキングの際、シムプレートの形状が揃っている限り、シムプレートの正確な向きに特別な注意を払う必要はない。製造が特に簡単である実装形態は、それぞれのシムプレートに、プレートの形状の回転対称性の回転軸から面内オフセットされた回転軸に対して回転対称性を有する単一のスリットパターンを提供することによって達成される。したがって、スタック内のそれぞれのシムプレートの相対的な回転により、相対的に回転されたシムパターンは、それぞれのシムプレートの一致するスリットを持たない。特に、スタック内で整列された連続するシムプレートは、プレートの形状の回転対称の角度で回転するだけで、(同じ形状の)シムパターンを回転させて、スリットをそれぞれの異なる向きに向けることができる。
【0016】
1つのシムプレートで誘導された渦電流によって生成された磁場は、隣接する(連続した)プレートの磁場と建設的に重なる。この洞察は、この建設的な重ね合わせを破るという要求につながった。この点に関して、本発明は、異なるタイプのスリットを備えたシムプレートを使用することを提案する。基本的な考え方は、連続するプレートごとに異なるスリットパターンがあって、プレートをスタックすることによってスリットが一致しないようにすることである。
【0017】
一般に、本発明は、シム鉄のシムプレートの一部のみがスリットを含むことを可能にする。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、すべてのシムプレートがスリットを含む。さらに、一般に、シムプレートは異なる形状である。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、シムプレートはすべて同じ形状を有し、これは好ましくは長方形である。以下でさらに説明するように、これにより、シム鉄を組み立てるときに、シムプレートのスリットパターンを簡単かつ信頼できるやり方で正しく位置合わせすることができる。長方形のシムプレートは正方形の形状であってもよいが、本発明の好ましい実施形態によれば、長方形のシムプレートは、異なる長さの辺を有する。これにより、シムプレートの正しい位置合わせがさらに簡単になる。
【0018】
本発明のプラスの効果は、スリット自体の異なる形状で達成できる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、スリットはすべて真っ直ぐに延びる。一般に、シムプレートは異なる厚さを有するが、本発明の好ましい実施形態によれば、すべてのシムプレートは、同じ厚さを有する。シムプレートは、さまざまな磁化可能な材料で作ることもできる。しかしながら、シムプレートはすべて同じ磁化可能な材料から作られることが好ましい。好ましくは、連続するシムプレートは、好ましくはシムプレートと同じ形状を有する断熱シートによって、互いに電気的に絶縁されている。
【0019】
本発明を実施するためのさまざまなやり方が存在する。1つの好ましい代替案によれば、すべてのシムプレートは同じやり方でスリットが入れられ、スリットパターンは、それぞれのシムプレートの一方の側から見たとき、シムプレートの反対側から見たときのスリットパターンとは異なる。この点でスリットパターンは好ましくは非対称である。したがって、2つのシムプレートは同じスリットパターンを有するが、一方のシムプレートを反対側に180°回転させると、もう一方のシムプレートのスリットパターンと合同の重なり合いとはならない可能性のある別のスリットパターンがもたらされる。
【0020】
上記の解決策の代替として、本発明の好ましい実施形態によれば、スリットパターンは、視線方向とは無関係に、互いに合同に覆い合うことができない少なくとも2つの異なるスリットパターンからなる。これは、シムプレートをどちら側に向けても、どちら側から見ても、スリットパターンが常に異なることを意味する。このように成形された少なくとも2つの異なるスリットパターンを用いて、連続するシムプレートのスリットパターンが互いに合同に覆い合わないシムプレートのスタックを組み立てることができる。
【0021】
この点に関して、本発明の好ましい実施形態によれば、すべてのスリットパターンは、同じ数の直線スリットを含み、直線スリットは、互いに同じ相対角度を有し、第2のシムプレートのスリットパターンのスリットの向きは、第1のシムプレートのスリットパターンの各スリットの整数回の非有理の角度回転、好ましくは黄金角回転によって与えられる。幾何学では、黄金角は、黄金比に従って円の円周を分割する、つまり、大きい方の円弧の長さの小さい方の円弧の長さに対する比率が、全周の大きい方の円弧の長さに対する比率と同じになるように2つの円弧に分割することによって作成された2つの角度のうち小さい方である。黄金角は、度単位で137.508°と概算できる。このようにして、同じ視線方向から見たとき、シム鉄のすべてのシムプレートのスリットパターンがすべて互いに異なることを容易かつ信頼できるやり方で達成できる。
【0022】
本発明はさらに、複数のポケットを備えたシムレールに関する。少なくとも1つのポケットが、前述のようなシム鉄を含む。
【0023】
本発明はまた、被検者を収容するためのボアと、ボアを取り囲む磁場生成ユニットと、を有するMRI装置に関する。磁場生成ユニットは、ボアの長手方向軸に平行に延在する複数の開口部を含み、複数のボアのうちの少なくとも1つは、前述のようなシムレールを含む。
【0024】
さらに、本発明はまた、少なくとも1つのシム鉄でMRI装置をシミングする方法に関する。この方法は、
スリットを含む少なくとも2つのシムプレートを提供するステップであって、スリットは、スリットシムプレートのそれぞれのスリットパターンを形成し、スリットパターンは、同じ視線方向から見た場合、互いに合同に覆い合うことができない少なくとも2つの異なるスリットパターンからなる、提供するステップと、
少なくとも2つのシムプレートが互いに合同に覆い合わないように少なくとも2つのシムプレートをスタックすることによって少なくとも1つのシム鉄を組み立てるステップと、
MRI装置をシミングするために、少なくとも1つのシム鉄をMRI装置に取り付けるステップとを含む。
【0025】
好ましくは、この方法は、
連続するシムプレートが互いに合同に覆い合わないように、少なくとも別のシムプレートを少なくとも2つのシムプレートにスタックすることによって少なくとも1つのシム鉄を組み立てる追加の方法ステップを含む。
【0026】
最後に、本発明はまた、MRI装置で使用されるシム鉄用のシムプレートを製造する方法に関する。この方法は、
第1のスリットなしシムプレートを提供するステップと、
所定数の直線スリットを含むスリットパターンで、第1のスリットなしシムプレートにスリットを入れるステップであって、直線スリットは、互いに所定の相対角度を有する、スリットを入れるステップと、
第2のスリットなしシムプレートを提供するステップと、
第1のシムプレートと同じ所定数の直線スリットを含むスリットパターンで第2のスリットなしシムプレートにスリットを入れるステップであって、直線スリットは、互いに、第1のシムプレートと同じ所定の相対角度を有する、スリットを入れるステップとを含み、第2のシムプレートのスリットパターンのスリットの向きは、第1のシムプレートのスリットパターンの各スリットの整数回の非有理の角度回転、好ましくは黄金角回転によって与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかとなり、参照して解明されるであろう。しかしながら、このような実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を表すわけではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するために、特許請求の範囲及び本明細書を参照する。
【0028】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態によるMRIスキャナーを概略的に示す。
図2図2は、本発明の好ましい実施形態による、スリットシムプレートのブロック又はスタックの形態のシム鉄を概略的に示す。
図3図3は、本発明の好ましい実施形態によるMRIスキャナーの磁場生成ユニットの一部の拡大断面図を示す。
図4図4は、本発明の好ましい実施形態による、シム鉄を備えたシムレールが取り付けられる円筒形の層の可能な位置を概略的に示す。
図5図5は、本発明の好ましい実施形態によるシムプレートを概略的に示す。
図6図6は、本発明の別の好ましい実施形態によるシムプレートを概略的に示す。
図7図7は、本発明のさらに別の好ましい実施形態によるシムプレートを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるMRIスキャナー10を概略的に示す。これは、シムレール111が挿入される、長手方向軸に沿った開口部110を有する磁場生成ユニット100(両方のB0+勾配)を含む。これらのシムレール111は、シム鉄130が配置される様々なポケット120を有する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、図2に示すようなスリットシムプレート132、133のブロック又はスタックの形態のシム鉄130が配置されるポケット120が、MRシステムごとに100個以上ある。1ポケット120あたりのシムプレート132の量は、B0磁場を最も均一にするために、いくつかの反復ラウンドで決定される。いわゆるシミング手順の一部は、MRIスキャナー10の近くにある強磁性の建物部品や機器を補償するために顧客サイトで行われる。
【0031】
図3は、磁場生成ユニット100の一部の拡大断面図を示す。これは、B0生成ユニット111の外側部分(好ましくは、クライオスタット内の超伝導コイル)で構成され、その中に勾配生成ユニット113が取り付けられている。勾配生成ユニット113は、好ましくはシールドコイル114によって能動的に遮蔽されている勾配コイル116と、それらの間に位置するスペーサー115とからなる。
【0032】
図4は、シム鉄130を備えたシムレール111がその中に取り付けられる円筒形の層117の可能な位置を示している。オプションAは、より旧式のスキャナーで使用されるが、オプションCは、本発明の好ましい実施形態に使用されることが好ましい。オプションCは、効率よくスペースを使用でき、フリーボアの直径を大きくすることを可能にし(例えば70cm)、したがって、肥満患者にもアクセスできるために選択される。このスペースの使用は、コイル114と116とを分離するためにスペーサー115がいずれにせよ必要であるため、このスペースを、他のすべてのオプションのように無駄にするのではなく、シム鉄層117に使用することができるという事実に由来する。さらに、構成Cでは、シム鉄130は、勾配磁場が最大になる位置に配置されている。さらに、この構成では、シム鉄130は、かなり静的であるB0生成ユニット111(クライオスタットの内側構造体)ではなく、振動しやすい勾配生成ユニット113に機械的に接続されている。したがって、MRIスキャナーのオプションCは、長い間知られている問題、つまり、シム鉄の加熱、したがって、シミングの熱ドリフトを悪化させる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、この問題は、スリットシムプレート132、133を使用することによって対処される。隣接するシムプレート132、133は、互いに一致しないようなスリットパターンを含む。これは、スリットシムプレート132、133のスリットは、1つのシムプレート132のスリットを別のシムプレート133のスリットが覆うように延在しないことを意味する。図5に、このようなスリットパターンの例を示す。ここでは、シムプレート132、133用の2種類のスリットパターンが提供されている。このような異なるシムプレート132、133のセットを用いて、シム鉄130はスタックにされ、その中で隣接するシムプレート132、133は合同のスリットパターンを含まない。このようにして、これらのシムプレート132、133内の渦電流が減少し、したがって、シム鉄130の加熱が減少する。
【0034】
隣接するシムプレート132、133が合同なスリットパターンを含まないシム鉄130はまた、図6に示すようにすべて同じ非対称スリットパターンを含むシムプレート134に支援されてスタックされる。ここでは、シムプレート134をその裏面から表面に回転させ、また、「前」及び「後」並びにシムプレート134の両面の「1」、「2」、「3」、及び「4」によって示される法線軸に沿ってシムプレート134を180°回転させることによって、同じ視野角から、4つの異なる非合同スリットパターンを提供する1つのシムプレート134が示されている。1種類のスリットシムプレートのみを製造すればよい。シムプレートの望ましい違いは、プレートをその軸の周りで回転させることによって達成される。
【0035】
したがって、前述のようなシムプレート134の番号付け、又はシムプレート134の色分けを使用して、シミング中のワークフロー、すなわち、ニーズに適合するシム鉄を生成するためにシムプレート134をスタックすることがあまり影響を受けないようにされる。図6の例では、MRサービスエンジニアは、プレートをスタックするときに、1->2->3->4->1の番号が連続して読み取れるように、プレートをスタックする必要がある。ここで使用される非対称の「+」スリットパターンは、図5のように3番目のシムプレート132、133ではなく、5番目のシムプレート134で同一のスリットパターンが繰り返されるというさらなる利点を有し、スリット効率をさらに向上させる。
【0036】
図7の好ましい実施形態は、スタッキング中に正しい順序を維持するという問題を克服する。ここで、シムプレート135のスリットは、繰り返されないパターンで入れられている。スリットパターンは、黄金角比のように、特定の非有理の角度だけシムプレートに対して回転される。幾何学では、黄金角は、黄金比に従って円の円周を分割する、つまり、大きい方の円弧の長さの小さい方の円弧の長さに対する比率が、全周の大きい方の円弧の長さに対する比率と同じになるように2つの円弧に分割することによって作成された2つの角度のうち小さい方である。黄金角は、度単位で137.508°と概算することができる。これにより、各シムプレートが一意になり、番号付けやコーディングが不要になる。したがって、シミング手順は今日行われているように行うことができるが、繰り返しのないスリットパターンにより渦電流が大幅に減少する。スリットパターンを回転させることに加えて、中心の最終的にスリットのない領域のサイズを縮小するために、その中心をわずかに移動させることもできる。提案された繰り返しのない単純なスリットパターンのさらなる利点は、それを容易に生成することができる点である。各プレートのスリットパターンは単純で、回転も問題なく行うことができる。
【0037】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明されてきたが、このような例示及び説明は、例示的又は例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求される発明を実施する当業者によって理解及び実施することができる。請求項において、「含む」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属クレームに記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。クレーム内の参照符号は、範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。さらに、明確にするために、図面内のすべての要素に参照符号が付けられているわけではない。
【符号の説明】
【0038】
MRIスキャナー 10
磁場生成ユニット 100
開口部 110
シムレール 111
クライオスタットと勾配コイル間のエアギャップ 112
勾配生成ユニット 113
シールドコイル 114
スペーサー 115
勾配コイル 116
円筒形の層 117
B0生成ユニット 118
ポケット 120
シム鉄 130
シムプレート 131
シムプレート 132
シムプレート 133
シムプレート 134
シムプレート 135
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7