(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】電解液組成物及びそれを適用した二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20231222BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20231222BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231222BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231222BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231222BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M4/66 A
H01M4/13
H01M10/052
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022069644
(22)【出願日】2022-04-20
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517232729
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 2-1, Singhua Rd., Taoyuan Dist., Taoyuan City,330,Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】メコンネン テカリグネ、テシャガー
(72)【発明者】
【氏名】廖孝淳
(72)【発明者】
【氏名】蘇威年
(72)【発明者】
【氏名】黄炳照
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0078529(US,A1)
【文献】特開2009-117081(JP,A)
【文献】特開2016-213101(JP,A)
【文献】特開2012-089468(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052605(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/052、10/0566
H01M4/13、4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液組成物であって、前記電解液組成物が正極のアルミニウム表面に接触するように組み立てられ、前記電解液組成物は、電解液とヒドロキシキノリン系化合物とを含有
し、前記ヒドロキシキノリン系化合物は、5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンである、ことを特徴とする電解液組成物。
【請求項2】
前記電解液はリチウム塩を含有する、ことを特徴とする請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項3】
前記リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)及びテトラフルオロホウ酸リチウム(
LiBF
4
)のいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の電解液組成物。
【請求項4】
前記電解液組成物に対する前記ヒドロキシキノリン系化合物の重量パーセント濃度が0.1 wt%~2.5 wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項5】
前記電解液組成物の粘度範囲は、1 mPa・s~6 mPa・sである、ことを特徴とする請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項6】
前記アルミニウム表面は、集電体の表面である、ことを特徴とする請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項7】
二次電池であって、正極と電解液組成物を含み、
前記正極は、アルミニウム表面を備え、
前記電解液組成物は、前記アルミニウム表面に接触するように組み立てられ、
前記電解液組成物は、電解液と、ヒドロキシキノリン系化合物とを含有
し、前記ヒドロキシキノリン系化合物は、5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンである、ことを特徴とする二次電池。
【請求項8】
前記電解液は、リチウム塩を含有する、ことを特徴とする
請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)及びテトラフルオロホウ酸リチウム(
LiBF
4
)のいずれか1つを含有する、ことを特徴とする
請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記電解液組成物に対して、前記ヒドロキシキノリン系化合物の重量パーセント濃度は、0.1 wt%~2.5 wt%である、ことを特徴とする
請求項7に記載の二次電池。
【請求項11】
前記電解液組成物の粘度範囲は、1 mPa・s~6 mPa・sである、ことを特徴とする
請求項7に記載の二次電池。
【請求項12】
前記アルミニウム表面は、集電体の表面である、ことを特徴とする
請求項7に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液組成物及びそれを適用した二次電池に関し、特に、添加剤を利用して電池性能を改善できる電解液組成物及びそれを適用した二次電池に関する。
【先行技術】
【0002】
技術の急速な進歩に伴い、家電製品や電気自動車などの性能向上が進み、エネルギーに対する需要が高まっている。携帯性に優れ、充電が可能なことから、現在、二次電池は、エネルギー貯蔵の主流として使用されており、その中でもリチウムイオン電池が最も有望視されている。
【0003】
アルミニウムは、高い導電性、低密度、低コストという利点があるだけでなく、表面に酸化膜(Al2O3)を形成し、耐食性に優れる。そのため、リチウムイオン電池の正極集電体には、アルミニウム箔が最も多く使用されている。しなしながら、リチウムイオン電解液に含まれるリチウム塩は、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)及び過塩素酸リチウム(LiClO4)は、依然アルミニウム箔を酸化または腐食し、アルミニウムイオンが電解液に溶け出して、電池性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
従って、従来技術の欠点を改善するために、添加剤によって電池性能を向上させる電解液組成物及びそれを適用した二次電池を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、添加剤によって電池性能を向上させる電解液組成物及びそれを適用した二次電池を提供することである。ヒドロキシキノリン系化合物を電解液組成物の添加剤として使用することによって、正極であるアルミニウム箔が接触する電解液組成物による腐食や酸化を受けにくくなり、二次電池の電容量が増加し、自己放電の発生を抑制することができる。また、電解液組成物におけるヒドロキシキノリン系化合物の割合が0.1 wt%~2.5 wt%にすることによって、適宜な粘度を有する電解液組成物を得られ、電解液中のイオン伝導度の低下を防ぎ、電池性能をさらに向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、電解液組成物を提供する。当該電解液組成物は、正極のアルミニウム表面に接触するように組み立てられる。電解液組成物は、電解液及びヒドロキシキノリン系化合物を含有する。
【0007】
好ましくは、電解液はリチウム塩を含有する。
【0008】
好ましくは、リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)及びテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBO4)のいずれか1つを含む。
【0009】
好ましくは、ヒドロキシキノリン系化合物は、8-ヒドロキシキノリンまたは5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンである。
【0010】
好ましくは、電解液組成物に対して、ヒドロキシキノリン系化合物の重量パーセント濃度は、0.1 wt%~2.5 wt%である。
【0011】
好ましくは、電解液組成物の粘度範囲は、1 mPa・s~6 mPa・sである。
【0012】
好ましくは、アルミニウム表面は、集電体の表面である。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、電解液組成物を適用した二次電池を提供する。二次電池は、正極及び電解液組成物を含む。正極は、アルミニウム表面を備える。電解液組成物は、アルミニウム表面に接触するように組み立てられ、電解液組成物は、電解液とヒドロキシキノリン系化合物とを含有する。
【0014】
好ましくは、電解液は、リチウム塩を含有する。
【0015】
好ましくは、リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)及びテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBO4)のいずれか1つを含む。
【0016】
好ましくは、ヒドロキシキノリン系化合物は、8-ヒドロキシキノリンまたは5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンである。
【0017】
好ましくは、電解液組成物に対して、ヒドロキシキノリン系化合物の重量パーセント濃度は、0.1 wt%~2.5 wt%である。
【0018】
好ましくは、電解液組成物の粘度範囲は、1 mPa・s~6 mPa・sである。
【0019】
好ましくは、アルミニウム表面は、集電体の表面である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における電解液組成物を適用した二次電池の構造概念図である。
【
図2】
図2A~
図2Bは、本発明の比較例に係る電解液組成物を用いて一週間及び二週間の浸漬試験に供されたアルミニウム箔表面のSEM写真である。
【
図3】本発明の比較例の電解液組成物の動電位分極曲線図である。
【
図4】
図4A~
図4Cは、本発明の比較例に係る電解液組成物で構成された電池の異なるサイクルの充放電曲線図である。
【
図5】本発明の比較例に係る電解液組成物で構成された電池が充放電を行って静置したときの電池特性曲線図である。
【
図6】
図6A~
図6Bは、アルミニウム箔が本発明の第1実施例の電解液組成物に一週間及び二週間浸漬した後の表面形状SEM写真である。
【
図7】本発明の第1実施例の電解液組成物の動電位分極曲線図である。
【
図8】
図8A~
図8Cは、本発明の第1実施例の電解液組成物で構成された電池の異なるサイクルの充放電曲線図である。
【
図9】本発明の第1実施例の電解液組成物で構成された電池が充放電を行って静置したときの電池特性曲線図である。
【
図10】
図10A~
図10Bは、アルミニウム箔が本発明の第2実施例の電解液組成物に一週間及び二週間浸漬した後の表面形状SEM写真である。
【
図11】本発明の第2実施例の電解液組成物の動電位分極曲線図である。
【
図12】
図12A~
図12Cは、本発明の第2実施例の電解液組成物で構成された電池の異なるサイクルの充放電曲線図である。
【
図13】本発明の第2実施例の電解液組成物で構成された電池が充放電を行って静置したときの電池特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特徴及び利点を具体化するいくつかの典型的な実施形態は、以下の説明において詳細に説明する。本発明は、範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、以下の説明及び図面は、本発明を説明するために使用されており、本発明を限定するためのものではない。また、本説明での広い数値範囲の数値及びパラメーターは近似値であるが、特定の例に示されている数値は可能な限り精確に記載されている。「及び/又は」という用語は、挙げられた関連の1つまたは複数の要素の組合せを含む。操作/動作に関する実施形態において明確に定義しない限り、本明細に記載されているすべての数値範囲、量、数値及びパーセントなど(例えば、角度、維持時間、温度、操作条件、割合及びそれに相当するパーセントなど)はいずれも、すべての実施形態において用語の「約」または「実質的に」に理解すべきである。また、記載に示されない限り、本発明及び特許請求の範囲に記載されている数値はいずれも、必要に応じて変化しえる近似値に取ることができる。例えば、各パラメーターは、少なくとも記載されている有効桁数に照らして、通常の丸めの原則を適用して解釈しても良い。また、本明細での数値範囲は、一方の端点から他方の端点まで、または2つの端点の間の範囲として表することができる。本明細書に記載されているすべての範囲は、特に定義されていない限り、端点を含む。
【0022】
ある実施形態では、電解液組成物10は、正極20のアルミニウム表面21に接触するように組み立てられる(設置される)。電解液組成物10は、電解液とヒドロキシキノリン系化合物とを含有する。
【0023】
本実施形態では、電解液はリチウム塩を含有する。前記リチウム塩は、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)が挙げられる。別の実施形態では、リチウム塩は、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、またはテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBO4)であってもよい。
【0024】
ある実施形態では、ヒドロキシキノリン系化合物は、例えば、8-ヒドロキシキノリン(8-hydroxyquinoline)が挙げられる。8-ヒドロキシキノリンの分子構造は以下の図に示されている。
【0025】
別の実施形態では、ヒドロキシキノリン系化合物は、5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリン(5-formyl-8-hydroxyquinoline)である。5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンの分子構造は以下の図に示されている。
【0026】
別の実施形態では、ヒドロキシキノリン系化合物は、例えば、8-ヒドロキシキノリン、5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンまたはそれらの組合せである。本発明は、実際の需要に応じて変更でき、これには限定されない。
【0027】
本実施形態において、電解液組成物10に対して、ヒドロキシキノリン系化合物の重量パーセント濃度が0.1 wt%~2.5 wt%である。電解液組成物10の粘度範囲が1 mPa・s~6 mPa・sである。アルミニウム表面21は、集電体の表面である。表1は、異なる濃度のヒドロキシキノリン系化合物を含有する電解液組成物10の粘度を示している。表1に示す電解液組成物の電解液は、21 m(molality, molal, mol/Kg)のLiTFSI及び2 mのトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(Zn(OTf)
2)を含有する。表1に示すように、電解液組成物10に対して、ヒドロキシキノリン系化合物の重量パーセント濃度が3 wt%に達すると、電解液組成物10の粘度が6 mPa・sよりも大きくなる。粘度が大きくなると、イオン伝導度が低下し、この現象は低温でより顕著になる。そのため、ヒドロキシキノリン系化合物の濃度を制御することによって、適切な粘度の電解液組成物10を得ることができ、電解液におけるイオン伝導度の低下を防ぎ、電池の性能を向上させることができる。
【0028】
図1を参照されたい。
図1は、本発明の実施形態における電解液組成物を適用した二次電池の構造概念図である。本実施形態では、二次電池1は、正極20及び電解液組成物10を含む。正極20は、アルミニウム表面21を備える。電解液組成物10は、正極20のアルミニウム表面21に接触するように組み立てられ、且つ電解液組成物10は、電解液及びヒドロキシキノリン系化合物を含有する。別の実施形態では、二次電池1は、例えば、正極20上に塗布された正極材料を備えてもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0029】
本実施形態では、電解液はリチウム塩を含有し、リチウム塩は、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)である。別の実施形態では、リチウム塩は、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、またはテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBO4)である。
【0030】
ある実施形態では、ヒドロキシキノリン系化合物は、例えば、8-ヒドロキシキノリン(8-hydroxyquinoline)である。
【0031】
別の実施形態では、ヒドロキシキノリン系化合物は、例えば、5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリン(5-formyl-8-hydroxyquinoline)である。
【0032】
別の実施形態では、ヒドロキシキノリン系化合物は、8-ヒドロキシキノリン、5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリン、又はそれらの組合せである。本発明は、実際の需要に応じて変更でき、これには限定されない。
【0033】
本実施形態では、電解液組成物10に対するヒドロキシキノリン系化合物の重量パーセント濃度が0.1 wt%~2.5 wt%である。電解液組成物の粘度範囲が1 mPa・s~6 mPa・sである。アルミニウム表面21は、例えば、集電体の表面である。ヒドロキシキノリン系化合物の濃度を制御することによって、適切な粘度の電解液組成物10を得ることができ、電解液におけるイオン伝導度の低下を防ぎ、電池の性能を向上させることができる。
【0034】
以下、実験により、比較例及び実施例の評価、及び本発明の電解液組成物の効果を詳細に説明する。
(比較例)
比較例は、添加剤を含有しない電解液組成物である。電解液組成物は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を含有する
【0035】
図2A~
図2Bを参照されたい。
図2A~
図2Bは、本発明の比較例に係る電解液組成物を用いて一週間及び二週間の浸漬試験に供されたアルミニウム箔表面のSEM写真である。電解液組成物は、1 mのLiTFSIしか含有しない。
図2Aに示すように、一週間の浸漬後、アルミニウム箔の表面は明らかに腐食している。
図2Bに示すように、二週間の浸漬後、アルミニウム箔の表面は完全に腐食した。
【0036】
図3を参照されたい。
図3は、本発明の比較例の電解液組成物の動電位分極曲線図である。電解液組成物には、1 mのLiTFSIしか含まれていない。動電位分極曲線は、3電極システムにて測定して得た。3電極システムでは、作用電極がアルミニウム箔であり、補助電極がグラファイトであり、参照電極が可逆水素電極(Reversible Hydrogen Electrode,RHE)である。測定は、腐食電位(E
corr)から始まり、最初に陰極方向の電位スキャンが実行され、次に陽極方向に電位スキャンが実行される。測定前に、一致の腐食電位を確保するために、電極はいずれも電解液組成物に数秒間浸した。
【0037】
図3の動電位分極曲線のフィッティング結果は以下である。腐食電位が262.89 mVである。腐食電流(I
corr)が9.60 μAである。作用電極の腐食速度(Corrosion Rate, CR)が0.1116 mmpy (mm/年)である。動電位分極測定後のアルミニウム箔をエネルギー分散型X線分析装置(Energy dispersive X-ray spectrometer, EDS)で分析したところ、アルミニウム箔表面のアルミニウム含有量が79.08 wt%であることは分かった。換言すれば、動電位分極測定後、電解液組成物による腐食のため、約79 wt%のアルミニウムがアルミニウム箔表面に残っている。
【0038】
図4A~
図4C図を参照されたい。
図4A~
図4Cは、本発明の比較例に係る電解液組成物で構成された電池の第1サイクル、第5サイクル及び第15サイクルの充放電曲線を示している。電解液組成物には、21 mのLiTFSI及び2 mのZn(OTf)
2しか含まれていない。電解液組成物で構成された電池は、CR2032ボタン電池である。電池の陰極は、フルオロリン酸バナジウムリチウム(LiVPO
4F, LVPF)で塗布されたアルミニウム箔であり、陽極は、亜鉛箔であり、セパレーターは、ガラス繊維である。充放電測定は、40チャンネルのバッテリーテスターを使用して行われた。測定条件は、室温(25 ℃)、2Cの時間率、及び0.6 V~2.2 Vの電位窓の範囲である。表2は、第1サイクル、第5サイクル及び第15サイクルの電池の充放電容量、及び第15サイクルの電容量維持率を示している。
【0039】
図5を参照されたい。
図5は、本発明の比較例に係る電解液組成物で構成された電池が5サイクルの充放電を行った後、24時間静置したときの電池特性曲線図である。電解液組成物には、21 mのLiTFSI及び2 mのZn(OTf)
2を含有する。電解液組成物で構成された電池は、CR2032ボタン電池である。電池の陰極は、LVPFで塗布されたアルミニウム箔であり、陽極は、亜鉛箔であり、セパレーターは、ガラス繊維である。充放電測定は、40チャンネルのバッテリーテスターを使用して行われた。測定条件は、室温(25 ℃)、0.2C時間率、及び0.6 V~2.2 Vの電位窓の範囲である。
図5に示すように、電池は、約25時間で5サイクルの充放電を完了し、24~48時間静置した。電池の電流は、静置から48時間目まで明らかに下降する傾向を示した。このことから、比較例の電解液組成物で構成された電池が自己放電することは分かった。
【0040】
(第1実施例)
図6A~
図6Bを参照されたい。
図6A~
図6Bは、それぞれ、アルミニウム箔が本発明の第1実施例の電解液組成物に一週間及び二週間浸漬した後の表面形状SEM写真である。電解液組成物は、1mのLiTFSI及び0.1mの8-ヒドロキシキノリンを含有する。
図6Aに示すように、一週間の浸漬後、アルミニウム箔表面にわずかな腐食現象しか現れなかった。
図6Bに示すように、二週間の浸漬後、アルミニウム箔表面の腐食領域の面積はわずかに増加した。
【0041】
図7は、本発明の第1実施例の電解液組成物の動電位分極曲線図である。電解液組成物は、1mのLiTFSI及び0.1mの8-ヒドロキシキノリンを含有する。動電位分極曲線は、3電極システムを使用して測定した。3電極システムでは、作用電極がアルミニウム箔であり、補助電極がグラファイトであり、参照電極が可逆水素電極(Reversible Hydrogen Electrode,RHE)である。測定は、腐食電位(E
corr)から始まり、最初に陰極方向の電位スキャンが実行され、次に陽極方向に電位スキャンが実行される。測定前に、一致の腐食電位を確保するために、電極はいずれも電解液組成物に数秒間浸した。
【0042】
図7の動電位分極曲線のフィッティング結果は以下である。腐食電位が335.66 mVである。腐食電流(I
corr)が0.421 μAである。作用電極の腐食速度(Corrosion Rate, CR)が4.89×10
-3 (mm/年)である。また、動電位分極試験後のアルミニウム箔をエネルギー分散型X線分析装置(Energy dispersive X-ray spectrometer, EDS)で分析したところ、アルミニウム箔表面のアルミニウム含有量が84.85 wt%である。換言すれば、動電位分極曲線を測定した後、アルミニウム箔表面が電解液組成物によって腐食され、約85 wt%のアルミニウムが残っている。
【0043】
図8A~
図8Cを参照されたい。
図8A~
図8Cは、本発明の第1実施例の電解液組成物で構成された電池の第1サイクル、第5サイクル及び第15サイクルの充放電曲線図である。電解液組成物は、21 mのLiTFSI、2 mのZn(OTf)
2及び0.1mの8-ヒドロキシキノリンを含有する。電解液組成物で構成された電池は、CR2032ボタン電池である。電池の陰極は、LVPFで塗布されたアルミニウム箔であり、陽極は、亜鉛箔であり、セパレーターは、ガラス繊維である。充放電測定は、40チャンネルのバッテリーテスターを使用して行われた。測定条件は、室温(25 ℃)、2C時間率及び0.6 V~2.2 Vの電位窓の範囲である。表3には、電池の第1サイクル、第5サイクル及び第15サイクルの充放電容量を示している。表3に示すように、第1実施例の電解液組成物で構成された電池の第1サイクルの充電容量が151.75 mAh/gであり、放電容量が140.31 mAh/gであり、比較例の電解液組成物で構成された電池の充放電容量よりもはるかに優れる。
【0044】
図9を参照されたい。
図9は、本発明の第1実施例の電解液組成物で構成された電池が5サイクルの充放電を行った後、24時間静置の電池特性曲線図である。電解液組成物は、21mのLiTFSI、2 mのZn(OTf)
2及び0.1 mの8-ヒドロキシキノリンを含有する。電解液組成物で構成された電池は、CR2032ボタン電池である。電池の陰極は、LVPFで塗布されたアルミニウム箔であり、陽極は、亜鉛箔であり、セパレーターは、ガラス繊維である。充放電測定は、40チャンネルのバッテリーテスターを使用して行われた。測定条件は、室温(25 ℃)、0.2C時間率及び0.6 V~2.2 Vの電位窓の範囲である。
図9に示すように、電池は、約第22時間目に5サイクルの充放電を完了し、第46時間まで24静置した。静置し始まるから終了まで、電池の電流が一定に維持し、変化する傾向がなかった。この結果により、第1実施例の電解液組成物で構成された電池は、が発生しないことが分かる。
【0045】
(第2実施例)
図10A~
図10Bは、それぞれ、アルミニウム箔が本発明の第2実施例の電解液組成物に一週間及び二週間浸漬した後の表面形状SEM写真である。電解液組成物は、1mのLiTFSI及び0.1mの5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンを含有する。
図10Aに示すように、一週間の浸漬後、アルミニウム箔表面にはほとんど腐食現象が現れなかった。
図10Bに示すように、二週間の浸漬後も、アルミニウム箔表面にはほとんど腐食現象が現れなかった。
【0046】
図11は、本発明の第2実施例の電解液組成物の動電位分極曲線図である。電解液組成物は、1 mのLiTFSI及び0.1 mの5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンを含有する。動電位分極曲線は、3電極システムを使用して測定した。3電極システムでは、作用電極がアルミニウム箔であり、補助電極がグラファイトであり、参照電極が可逆水素電極(Reversible Hydrogen Electrode,RHE)である。測定は、腐食電位(E
corr)から始まり、最初に陰極方向の電位スキャンが実行され、次に陽極方向に電位スキャンが実行される。測定前に、一致の腐食電位を確保するために、電極はいずれも電解液組成物に数秒間浸した。
【0047】
図7の動電位分極曲線のフィッティング結果は以下である。腐食電位が306.85 mVである。腐食電流(I
corr)が0.253 μAである。腐食速度(Corrosion Rate, CR)が2.94×10
-3 (mm/年)である。また、動電位分極試験後のアルミニウム箔をエネルギー分散型X線分析装置(Energy dispersive X-ray spectrometer, EDS)で分析したところ、アルミニウム箔表面のアルミニウム含有量が86.30 wt%であることが分かった。換言すれば、動電位分極曲線を測定した後、アルミニウム箔表面が電解液組成物によって腐食され、約86 wt%のアルミニウムが残っている。
【0048】
図12A~
図12Cを参照されたい。
図12A~
図12Cは、本発明の第2実施例に係る電解液組成物で構成された電池の第1サイクル、第5サイクル及び第15サイクルの充放電曲線図である。電解液組成物は、21 mのLiTFSI、2 mのZn(OTf)
2及び0.1mの5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンを含有する。電解液組成物で構成された電池は、CR2032ボタン電池である。電池の陰極は、LVPFで塗布されたアルミニウム箔であり、陽極は、亜鉛箔であり、セパレーターは、ガラス繊維である。充放電測定は、40チャンネルのバッテリーテスターを使用して行われた。測定条件は、室温(25 ℃)、2C時間率及び0.6 V~2.2 Vの電位窓の範囲である。表4には、電池の第1サイクル、第5サイクル及び第15サイクルの充放電容量、及び第15サイクルの電容量維持率を示している。表4によると、第2実施例の電池の第1サイクルの充電容量が125.04 mAh/gであり、放電容量が114.57 mAh/gであり、比較例の電解液組成物で構成された電池の充放電容量より良好である。また、第2実施例の電池は、第15サイクルの充電容量維持率が81.9%であり、放電容量維持率が86.6%であり、これは、比較例の電解液組成物で構成された電池の約35%の電容量維持率よりもはるかに優れる。
【0049】
図13を参照されたい。
図13は、本発明の第2実施例における電解液組成物で構成された電池が5サイクルの充放電を行った後、24時間静置後の電池特性曲線図である。電解液組成物は、21 mのLiTFSI、2mのZn(OTf)
2及び0.1 mの5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンを含有する。電解液組成物で構成された電池は、CR2032ボタン電池である。電池の陰極は、LVPFで塗布されたアルミニウム箔であり、陽極は、亜鉛箔であり、セパレーターは、ガラス繊維である。充放電測定は、40チャンネルのバッテリーテスターを使用して行われた。測定条件は、室温(25 ℃)、0.2C時間率及び0.6 V~2.2 Vの電位窓の範囲である。
図13に示すように、電池は、約第22時間目に5サイクルの充放電を完了した後、第46時間まで、24時間静置した。静置し始めるから終了まで、電池の電流は一定に維持し、変化する傾向がなかった。この結果により、第2実施例の電解液組成物で構成された電池は、自己放電現象が発生しないことが分かる。
【0050】
比較例、第1実施例及び第2実施例の測定結果を比較して説明する。表面形状SEM写真及び動電位分極曲線のフィッティング結果によると、比較例と比較して、第1実施例及び第2実施例の電解液組成物によるアルミニウム箔の腐食速度は大幅に低下している。言い換えれば、添加剤を添加しない電解液組成物と比較して、ヒドロキシキノリン系化合物を含有する電解液組成物は、アルミニウム箔を酸化及び腐食しにくく、特に、5-ホルミル-8-ヒドロキシキノリンを含有する第2実施例では、効果が優れる。充放電曲線によれば、第1実施例及び第2実施例の電池の充放電容量は、比較例としての電池の充放電容量よりも良好であり、且つ第2実施例の電池の電容量維持率は、比較例と比較して大幅に向上した。電池特性曲線によれば、比較例と比較して、第1実施例及び第2実施例の電池は自己放電現象が現れない。これによって、ヒドロキシキノリン系化合物を含有する電解液組成物は、電池の性能を改善し、自己放電現象の発生を防ぐことができることが分かる。
【0051】
以上のように、本発明は、添加剤を利用して電池性能を向上させる電解液組成物及びそれを適用した二次電池を提供する。電解液組成物の添加剤としてヒドロキシキノリン系化合物を使用することにより、正極として使用されるアルミニウム箔は、それに接触する電解液組成物に腐食および酸化されないため、二次電池の電容量が増加し、自己放電が防止されることができる。また、電解液組成物におけるヒドロキシキノリン系化合物の割合を、例えば、0.1 wt%~2.5 wt%にすることで、適宜な粘度を有する電解液組成物を得て、電解液中のイオン伝導度の低下を防ぎ、電池の性能をさらに向上させることができる。
【0052】
本発明は、当業者による任意の変更及び改良を加えることができ、その変更または改良はいずれも本願特許請求の範囲に含まれている。
【符号の説明】
【0053】
1:二次電池
10:電解液組成物
20:正極
21:アルミニウム表面