(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】長寿命形質細胞の操作のためのサルモネラSiiE由来のペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20231222BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231222BHJP
C07K 14/255 20060101ALI20231222BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231222BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231222BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231222BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231222BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C12N1/21
C07K14/255
A61K38/16
A61P35/00
A61P37/06
A61P37/02
A61K48/00
(21)【出願番号】P 2022091092
(22)【出願日】2022-06-03
(62)【分割の表示】P 2020535298の分割
【原出願日】2018-09-06
【審査請求日】2022-06-03
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520079810
【氏名又は名称】ドイチェス リューマーフォルシュングスツェントルム ベルリン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】常世田,好司
(72)【発明者】
【氏名】高屋,明子
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/077183(WO,A2)
【文献】Database UniProt [online], Accessin No. G5SJV8,2012年01月25日,https://www.uniprot.org/uniprotkb/G5SJV8/entry
【文献】Database UniProt [online], Accessin No. M7SAA6,2013年05月29日,https://www.uniprot.org/uniprotkb/M7SAA6/entry
【文献】生活衛生,2003年,Vol.47, No.6,p.333-337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患の治療において薬剤として使用される、単離ポリペプチドからなる医薬であって、前記ポリペプチドが
配列番号2若しくは3から選択されるアミノ酸配列、又は
配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、配列番号2若しくは3から選択されるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列
からな
り、
前記疾患が病原性長寿命形質細胞に関連する、薬剤として使用される医薬。
【請求項2】
前記ポリペプチドが長寿命形質細胞(LLPC)との相互作用についてラミニンβ1と競合する、請求項1に記載の
薬剤として使用される医薬。
【請求項3】
前記病原性長寿命形質細胞に関連する疾患が多発性骨髄腫である、請求項
1又は2に記載の薬剤として使用される医薬。
【請求項4】
前記病原性長寿命形質細胞に関連する疾患が自己抗体関連自己免疫疾
患である、請求項
1又は
2に記載の薬剤として使用される医薬。
【請求項5】
前記疾患が関節リウマチ又は全身性エリテマトーデスである、請求項4に記載の薬剤として使用される医薬。
【請求項6】
前記病原性長寿命形質細胞がIgG分泌形質細胞であり、及び/又は骨髄中に存在し、及び/又はラミニンβ1陽性間質細胞と相互作用する、請求項3~5のいずれか一項に記載の薬剤として使用される医薬。
【請求項7】
病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される、請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードする核酸分子
からなる医薬。
【請求項8】
病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される、細胞
からなる医薬であって、
前記細胞が請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードする核酸領域を含む
弱毒化サルモネラ細菌であるか、又は、
前記細胞が遺伝子操作されており、請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードする外因性核酸領域を含み、該外因性核酸領域がプロモーターに操作可能に連結している、
薬剤として使用される医薬。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のポリペプチド、請求項7に記載の核酸分子及び/又は請求項8に記載の細胞と薬学的に許容される担体とを含む、病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)によるアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも(at least)70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる単離ポリペプチドであって、200アミノ酸以下(no longer than)、好ましくは170アミノ酸以下である、ポリペプチドに関する。本発明は、上記ポリペプチドをコードする核酸、該核酸を含む遺伝子療法ベクター、及び上記ポリペプチドを発現する遺伝子改変細胞に関する。さらに、本発明は、病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療のための上記ポリペプチド、上記核酸、上記遺伝子療法ベクター及び/又は上記細胞の医学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
BMは、造血(hematopoiesis)及び免疫記憶の中心となる組織である。造血幹細胞、B細胞前駆体、形質細胞及び記憶T細胞は、BMにおいて固有の特殊化した間質ニッチ(stromal niches)中に存在する(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。これらの間質ニッチはVCAM-1、ラミニン、フィブロネクチン及びコラーゲンのような細胞接着分子、並びにCXCL12、IL-7、IL-15、Kitリガンド、SCF、Flt3リガンド等のサイトカイン及びケモカインを供給し、造血細胞の生存、増加及び分化を支持する(非特許文献4、非特許文献5)。免疫応答の後期には、一部の抗原を経験した形質芽球がCXCR4/CXCL12依存的にBMに移動し(非特許文献6、非特許文献7)、そこで長寿命「記憶」形質細胞として存在する(非特許文献8)。好酸球及び巨核球は、形質細胞の生存ニッチの構成要素として重要な役割を果たし、APRIL及びIL-6を分泌して形質細胞の生存を促進する(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。Reynoldset al.は、IgM分泌形質細胞がIgG分泌形質細胞のような好酸球とは共局在化しないことを示しており、IgM分泌形質細胞とIgG分泌形質細胞とがBMにおいて異なる生存ニッチに局在化することが示唆される(非特許文献12)。しかしながら、クラススイッチした形質細胞とスイッチしていない形質細胞とが同じ生存ニッチを有するかは依然として不明確なままである。
【0003】
長寿命形質細胞は免疫抑制剤に反応せず、B細胞枯渇療法が液性記憶の維持、また自己免疫では自己反応性記憶に寄与する。結果として、長寿命形質細胞は、病原性抗体を分泌し続けることにより自己免疫疾患における慢性炎症過程を支持する可能性がある。長寿命形質細胞が現行の療法によって十分に除去されないことから、当該技術分野において、多発性骨髄腫又は自己免疫疾患等の病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療のための新たな治療概念を作り出す大きな必要性が残っている。
【0004】
グラム陰性細菌サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)は、世界中でヒトにおける高い死亡率及び罹患率の原因となっている(非特許文献13)。チフス菌は腸チフスを引き起こし、毎年およそ200000人の死者を出している。ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)は、腸チフスの実験モデルとして広く使用されている(非特許文献14)。腸管上皮を介した感染後に、サルモネラは骨髄性細胞に侵入し、脾臓及び肝臓に移動する(非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17)。サルモネラは、長時間にわたって骨髄性細胞中に留まることができる。しかしながら、サルモネラがどのようにして短寿命で移動性の骨髄性細胞中で長時間生き残り、液性免疫から逃れることができるのかは依然として不明である。
【0005】
ネズミチフス菌が、SiiEとも呼ばれる約600 kDaのタンパク質(siiEによってコードされる)を分泌するI型分泌装置をコードすることが以前に記載されている。SiiEは表面発現され、ウシにおける定着及びウシ腸細胞の浸潤に影響を与える(非特許文献18)。SiiEの配列は、原核生物の増殖を阻害するための、及び抗生物質を開発する目的で増殖に必要とされるタンパク質を特定するための核酸アンチセンス配列の使用に関する特許文献1に記載されている。
【0006】
チフス菌による感染は弱毒化株、例えばTy21aのワクチン接種によって予防することができる(非特許文献19)。対照的に、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、齧歯類及びキジ目において重度の食中毒を引き起こすネズミチフス菌に対するワクチン接種は、未だ利用可能でない。免疫化への弱毒化遺伝子改変細菌の使用が従来技術において記載されている(特許文献2)。しかしながら、ネズミチフス菌を含むこれらの侵襲性の非チフス性サルモネラ(NTS)によって引き起こされる疾患は、20%~25%と致死率がチフス菌による感染よりも高いにも関わらず軽視されている(非特許文献20)。したがって、当該技術分野において、NTS細菌による感染を予防するワクチン又はワクチン接種戦略を開発する大きな必要性が残っている。
【0007】
従来技術を踏まえると、病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の改善された治療、及び非チフス性サルモネラ(NTS)に対する効率的なワクチン接種戦略のための手段を提供する大きな必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第02/077183号
【文献】米国特許第8,771,669号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Nagasawa et al., 2006
【文献】Wilson and Trumpp, 2006
【文献】Tokoyoda et al.,2010
【文献】Clark and Keating, 1995
【文献】Anthony and Link, 2014
【文献】Hargreaves et al., 2001
【文献】Tokoyoda et al.,2004
【文献】Radbruch et al.,2006
【文献】O'Connor et al., 2004
【文献】Winter et al., 2010
【文献】Chu et al., 2011
【文献】Reynolds et al., 2015
【文献】Andrews-Polymenis et al., 2010
【文献】Santos et al., 2001
【文献】Bueno et al., 2008
【文献】Dougan and Baker, 2014
【文献】Tam et al., 2014
【文献】E. Morgan et al. Infection and Immunity, vol. 75, no. 3, 1 March2007, pages 1524-1533
【文献】Anwar et al., 2014
【文献】MacLennan et al., 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術を踏まえると、本発明の根底にある技術的課題は、病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療のための代替的な及び/又は改善された手段を提供することである。さらに、非チフス性サルモネラ(NTS)細菌に対する有効なワクチンが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の根底にある技術的課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施の形態は、従属請求項によって提供される。
【0012】
したがって、本発明は、配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)によるアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる単離ポリペプチドであって、200アミノ酸以下、好ましくは170アミノ酸以下である、ポリペプチドに関する。
【0013】
本発明は、本発明の単離ポリペプチドが骨髄中の形質細胞の数を減少させることができるという驚くべき知見に基づく。本発明のペプチドはヒト、マウス、ブタ、クジラ、ウシ、ニワトリ及び更にはワニを含む多くの種においてラミニンβ1に含まれる保存配列と高い配列類似性を有する。ラミニンβ1は細胞外基質の構成要素であり、基底膜の主要な非コラーゲン性構成成分である細胞外基質糖タンパク質のラミニンファミリーの成員である。ラミニンは細胞接着、分化、移動、シグナル伝達、神経突起伸長及び転移を含む広範な生物学的過程に関連付けられている。
【0014】
骨髄中の形質細胞、特に長寿命IgG産生形質細胞が、骨髄間質中に存在し、長寿命形質細胞(LLPC)の骨髄ニッチと共局在化するラミニンβ1と相互作用することは驚くべきことであった。本発明のペプチドの投与後に、骨髄中の形質細胞、特にIgG産生LLPCの数は減少する。理論に束縛されるものではないが、これは、形質細胞との相互作用についてのラミニンβ1と本発明のペプチドとの競合による骨髄ニッチ中のラミニンβ1とLLPCとの相互作用の破壊によるものと考えられる。形質細胞は、ラミニンβ1に結合する代わりに本発明のペプチドに選択的に結合し、それらのニッチからの形質細胞の放出、及び骨髄中の形質細胞数の大幅な減少がもたらされ得る。この減少は、アポトーシス及び/又は骨髄からの形質細胞の遊出によるものであり得る。
【0015】
骨髄常在形質細胞、特にLLPCが自己免疫、アレルギー、及び形質細胞由来の癌の発生等の多くの病理学的過程に関与することから、骨髄中の形質細胞の数を減少させるために本発明のペプチドを使用することができることが本発明のペプチドの特別な利点である。病原性LLPCは、骨髄中の保護生存ニッチにおけるそれらの局在化のために免疫抑制療法に反応しない。同様に、形質細胞由来の癌細胞は、B細胞枯渇及び化学療法等の抗癌療法が対応可能でない、これらの保護ニッチを占有する可能性がある。
【0016】
本発明のペプチドがヒト、並びに齧歯類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ及びキジ目等の多くの生産性家畜(productive livestock)及び農用動物を含む多くの種において保存されているラミニンβ1の配列と高い配列相同性を有することは、骨髄からのLLPC枯渇を多数の種において達成することができることから、本発明の大きな利点である。
【0017】
さらに、本発明のペプチドの投与後に、骨髄中のLLPCの数だけでなく循環抗体の量も減少することが有利である。保護骨髄ニッチ中に存在するLLPCによって分泌される抗体は、病原性LLPCに関連する自己免疫症状及びアレルギー症状の主な原因である。したがって、本発明のポリペプチドの投与後の循環抗体の減少は、かかる病状を患う患者の臨床改善につながる。
【0018】
本発明のペプチドが骨髄中の形質細胞、特にLLPCに特異的に結合する一方で、脾臓等の他の器官中の形質細胞への結合がそれほど効率的でないことは驚くべきことであった。したがって、本発明のペプチドは、脾臓又は他の器官の形質細胞を骨髄常在形質細胞と同じ程度まで枯渇させない。このことは、骨髄形質細胞、特にLLPCが自己免疫疾患、アレルギー、癌及び他の病状に関連し、他の器官の形質細胞がかかる病態にそれほど関与しないことから特に有利である。
【0019】
幾つかの実施の形態では、本発明のポリペプチドを骨髄中のLLPCの部位に局所的に投与する必要はなく、全身投与することができることが本発明の更なる利点である。したがって、様々な投与経路を用いることができる。さらに、上記ペプチドは、異なる温度で予想外に高い安定性を有し、異なる保存条件下でのペプチドの長期保存が可能である。また、ペプチドが被験体への投与後に安定しており、本発明のポリペプチドの単回投与の翌日又はその後であっても効果を観察することができることが有利である。
【0020】
本発明のペプチドは、ネズミチフス菌タンパク質SiiEに含まれることが特定された。SiiEを発現するサルモネラによる感染は、骨髄中のLLPCの減少及び循環IgG抗体の減少をもたらす可能性がある。この効果は、他の点では同一のSiiE欠損細菌による感染がこの効果を有しないことから、サルモネラによって発現されるSiiEタンパク質によるものであり得る。SiiEは、サルモネラによって分泌され、続いてプロセシングされることが知られている。SiiEは、5559アミノ酸の巨大タンパク質であり、N末端及びC末端の2つの異なる領域、並びにその間の53個の反復細菌Igドメインを有する。SiiEは、ラミニンβ1の保存領域に対して高い相同性を有し、これはタンパク質のN末端領域(ネズミチフス菌のSiiEのAA 1~404)に局在化する。
【0021】
SiiEとラミニンβ1との配列同一性に関して(withrespect to)最も同様のアミノ酸配列は、本発明の配列番号1に対応する、ネズミチフス菌のSiiEのアミノ酸(AA)136~154の間に位置する。配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)によるアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、200アミノ酸以下、好ましくは170アミノ酸以下のポリペプチドを使用して、骨髄中の形質細胞の数を減少させ、循環IgG抗体の数を減少させることができることが特に有利であり、これは、かかる短ペプチドが当業者に既知の化学的又は生化学的方法によって容易に作製され得るためである。配列番号1、又は配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む長さ200アミノ酸超のペプチドは、同じ効果をもたらさない場合もあった。
【0022】
好ましい実施の形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号2(KEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQN)によるアミノ酸配列、又は配列番号2に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0023】
ネズミチフス菌のSiiEタンパク質に含まれ(AA 129~168)、ラミニンβ1に対して高い配列相同性を有する、配列番号2に対応するアミノ酸配列は、特異的に骨髄中のIgG分泌形質細胞の数を減少させ、循環IgG抗体の数を減少させる。この効果は、IgM抗体が好ましくは本発明のペプチドの影響を受けないことから極めて特異的である。また、骨髄以外の組織及び器官の形質細胞が影響を受けないのが好ましい。
【0024】
本発明の更に好ましい実施の形態によると、ポリペプチドは、配列番号3(SAQVEKKGNGKRRNKKEEEELKKQLDDAENAKKEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQNFL)によるアミノ酸配列、又は配列番号3に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0025】
ネズミチフス菌のSiiEタンパク質に含まれ(AA 97~170)、ラミニンβ1に対して高い配列相同性を有する、配列番号3に対応するアミノ酸配列は、骨髄に由来するIgG分泌形質細胞と特異的に相互作用し、脾臓等の他の組織に由来する形質細胞とは、はるかに低い程度でしか相互作用しない。
【0026】
本発明の更に好ましい実施の形態は、配列番号4(MGNKSIQKFFADQNSVIDLSSLGNAKGAKVSLSGPDMNITTPRGSVIIVNGALYSSIKGNNLAVKFKDKTITGAKILGSVDLKDIQLERIDSSLVDSAQVEKKGNGKRRNKKEEEELKKQLDDAENAKKEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQNFL)によるアミノ酸配列、又は配列番号4に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、ポリペプチドに関する。
【0027】
本発明のポリペプチドは、少なくとも配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)によるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0028】
更に好ましい実施の形態によると、上記ポリペプチドは、少なくとも配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)又は配列番号2(KEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQN)によるアミノ酸配列を含む。
【0029】
さらに、本明細書に記載のポリペプチドは、少なくとも配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)、配列番号2(KEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQN)又は配列番号3(SAQVEKKGNGKRRNKKEEEELKKQLDDAENAKKEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQNFL)によるアミノ酸配列を含むことができる。
【0030】
本発明は更に、病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される、本明細書に記載のポリペプチドを含むか又はそれからなるポリペプチドに関する。
【0031】
LLPCは高レベルの抗体を分泌し、LLPCは、限定されるものではないが、IgM分泌LLPC、IgG分泌LLPC、IgA分泌LLPC及びIgE分泌LLPCを含む。さらに、LLPCは抗体クラスを切り替えることができず、抗原提示細胞として作用することができない。LLPCは、免疫記憶の独立した構成要素を構成する。LLPCは、記憶免疫反応との関連で生成し、骨髄に移動し、そこで数年、潜在的には数十年にわたって存続する。それらの生存は、形質細胞生存ニッチを形成する細胞によって供給される固有のシグナルの受容によって決まる。理論に束縛されるものではないが、生存ニッチからの形質細胞又は長寿命形質細胞の移動は、細胞のアポトーシスを引き起こし得る。
【0032】
病原性長寿命形質細胞は、自己免疫疾患、アレルギー又は癌性悪性腫瘍等の病理学的過程に関与する長寿命形質細胞である。それらの長い寿命及び持続性の結果として、病原性長寿命形質細胞は、病原性抗体を分泌し続けることにより自己免疫疾患における慢性炎症過程を支持する可能性があり、症状の再燃(flares)の一因となる可能性がある。病原性長寿命形質細胞は、非病原性形質細胞として骨髄中のそれらの生存ニッチにおいて保護され、免疫抑制、B細胞枯渇、化学療法及び放射線照射に反応しない場合がある。それらの除去は、依然として重要な治療課題である。
【0033】
幾つかの実施の形態では、骨髄常在形質細胞、特に病原性LLPCを含む骨髄常在LLPCの数を特異的に減少させることができることが本発明のペプチドの特別な利点である。これらの細胞の枯渇は、病原性LLPCに関連する疾患を患う被験体の臨床改善に直接つながり得る。付加的には、本発明のペプチドがそれらの保護ニッチからの病原性LLPCの移動をもたらし得ることから、細胞がB細胞枯渇、化学療法、放射線照射等の他の治療戦略に対応可能となる。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態によると、前記病原性長寿命形質細胞に関連する疾患は多発性骨髄腫である。
【0035】
多発性骨髄腫は、BM中の形質細胞骨髄腫から生じる余剰な抗体価によって引き起こされ得る。多発性骨髄腫は、形質細胞の単一クローンの腫瘍性形質転換を特徴とする成熟形質細胞形態のB細胞悪性腫瘍である。これらの形質細胞はBM中で増殖し、隣接骨、場合によっては血液に侵入する可能性がある。骨髄中に存在する骨髄腫細胞が、LLPCと同様、ラミニンに結合し得ることが既に報告されている。
【0036】
したがって、本発明のペプチドによる骨髄腫細胞とラミニンとの相互作用の破壊は、好ましくはそれらのニッチからの骨髄腫細胞の遊出をもたらし、骨髄腫細胞を、例えばアポトーシス、身体の免疫系、及び/又は化学療法、B細胞枯渇、放射線照射等の身体に適用される更なる療法、若しくは当業者(person skilled in the art)に既知の癌若しくは多発性骨髄腫に対する他の治療戦略によって、より除去又は死滅しやすいものとする。
【0037】
本発明のペプチドが骨髄常在形質細胞に特異的であるため、本発明のポリペプチドによって治療された被験体の体内の全ての形質細胞が枯渇するとは限らず、重度の免疫抑制が誘導されないことが本発明のペプチドの特別な利点である。
【0038】
本発明の更に好ましい実施の形態では、前記病原性長寿命形質細胞に関連する疾患は自己抗体関連自己免疫疾患である。
【0039】
自己抗体関連の自己免疫疾患では、自己反応性LLPCはAbを分泌し続け、自己免疫の慢性化又は再発を引き起こす。現行の治療戦略は、主に炎症過程及び活性化免疫細胞を標的とする。非ステロイド性抗炎症薬、抗マラリア薬、グルココルチコイド、従来の免疫抑制薬又は細胞毒性薬、及びBリンパ球を標的とする抗CD20(リツキシマブ)等の細胞枯渇抗体は、急性又は慢性炎症を効率的に低減することができる。炎症組織中の一時的なPC生存ニッチを抑止することで、これらの器官内のLLPCを除去することもできる。しかしながら、骨髄中のLLPCは通例、かかるB細胞枯渇抗体によって効果的に標的化されない。本発明のペプチドを用いることで、病原性LLPCを骨髄中のそれらの遠隔生存ニッチから枯渇させることが可能となり、これが細胞のアポトーシス又はニッチからの遊出に繋がる可能性があり、細胞は、LLPCがそれらのニッチ中に留まる場合に非効果的な更なる治療措置に対応可能となる。したがって、本発明のペプチドは潜在的に、既知の治療戦略と比較してより有効な自己抗体関連の自己免疫疾患の治療を可能とする。
【0040】
病原性長寿命形質細胞に関連する疾患は、関節リウマチ(RA)及び全身性エリテマトーデス(SLE)であるのが好ましい。
【0041】
RA及びSLEは、極めて関連した一般的な自己抗体関連自己免疫疾患であり、これらの疾患を患う患者は、特に本発明のペプチドによる治療が有効で有り得る。特に、本発明のペプチドは、SLEを患う被験体の骨髄中の自己反応性形質細胞の数の減少をもたらす。
【0042】
本発明の文脈において、病原性長寿命形質細胞がIgG分泌形質細胞であるのが好ましい。
【0043】
殆どのLLPC関連の病状は、IgG産生LLPCによって特異的に媒介され、他の抗体クラスを分泌するLLPCによっては媒介されない。本発明のペプチドがLLPC全般ではなくIgG分泌LLPCを特異的に標的とし、IgG媒介性のLLPC関連病状の場合に、病原性細胞を特異的に標的化することが可能である一方で、例えばIgM又は他の抗体クラスを分泌するLLPCが影響を受けないことが本発明のペプチドの特別な利点である。
【0044】
本発明の更なる好ましい実施の形態によると、病原性長寿命形質細胞が骨髄中に存在することが好ましい。骨髄における病原性LLPCの局在化は、本発明のペプチドが骨髄常在LLPCに特異的に結合し、他の組織中のLLPCには結合しないことから特に有利である。したがって、上記ペプチドは、骨髄LLPCのみに影響を及ぼし、及び/又はそれを枯渇させ、他の組織の非病原性LLPC又は形質細胞には影響を及ぼさない、及び/又はそれを枯渇させない。
【0045】
本発明の別の好ましい実施の形態では、病原性長寿命形質細胞は、ラミニンβ1陽性間質細胞と相互作用する。
【0046】
幾つかの実施の形態では、LLPCとラミニンβ1との相互作用を本発明のペプチドの投与によって破壊することができることから、ラミニンβ1又はラミニンβ1陽性間質細胞と相互作用する病原性LLPCに関連する疾患を治療することが有利である。病原性LLPCの機能及び/又は生存は、ラミニンβ1との相互作用によって決まる可能性があり、したがって本発明のペプチドの投与は、病原性LLPCにとって不利となり得る。細胞は、移入又は細胞死のいずれかによって枯渇させることができる。また、細胞は、本発明のペプチドの投与後に骨髄中のそれらの保護ニッチから離れた病原性LLPCを直接的又は間接的に標的とする薬物の投与等の更なる治療に対応可能となり得る。
【0047】
本発明の好ましい実施の形態によると、治療は、抗B細胞療法、免疫抑制薬又は抗腫瘍化学療法と併せた上記ポリペプチドの併用投与を含む。
【0048】
本発明の好ましい実施の形態によると、治療は、抗B細胞療法、免疫抑制薬及び/又は抗腫瘍化学療法と併せた上記ポリペプチドの併用投与を含む。
【0049】
幾つかの実施の形態では、本発明のペプチドの投与と更なる治療措置の実施とを組み合わせることが有利である。かかる措置は抗B細胞療法、B細胞枯渇、抗腫瘍又は抗癌化学療法、免疫抑制薬、免疫調節薬、放射線照射、及び当業者に既知の任意の更なる治療選択肢を含み得る。病原性LLPCが骨髄中のそれらの特異的ニッチによって保護され、上述の療法が容易に対応可能でないことが知られている。本発明のペプチドの投与は、病原性LLPCをそれらの骨髄ニッチから移動させ、本発明のポリペプチドと組み合わせて投与することができる薬物及び措置が対応可能となる。移動した病原性LLPCに対するこれらの治療措置の効果の増大は、骨髄ニッチによって供給される生存シグナルの喪失と併せて細胞死につながり、LLPCの減少又は枯渇は、最終的に患者の臨床症状の改善をもたらす。
【0050】
さらに、本発明は、好ましくは本明細書に記載の病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される核酸分子であって、本発明のポリペプチドをコードする、核酸分子に関する。
【0051】
付加的には、本発明は、本発明の核酸分子を含む、好ましくは本明細書に記載の病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される遺伝子療法ベクターを包含する。
【0052】
幾つかの実施の形態では、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の投与、又は本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を含む遺伝子療法ベクターによって本発明のペプチドを提供することが有利であり得る。これらの実施の形態では、本発明のポリペプチドの持続的な発現が単回投与だけでも可能である。さらに、核酸分子、特にDNAは極めて安定しており、顕著な分解のリスクなしに室温で長期間保管することができ、このことはアベイラビリティに関して大きな利点である。
【0053】
本発明は、好ましくは本明細書に記載の病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される細胞に更に関するが、細胞は、本発明のポリペプチドをコードする核酸領域を含むサルモネラ細菌であるか、又は細胞は遺伝子改変されており、本発明のポリペプチドをコードする外因性核酸領域、若しくは本発明の外因性核酸領域を含み、外因性核酸領域がプロモーターに操作可能に連結する。
【0054】
幾つかの実施の形態では、核酸、最終的には本発明のペプチドを病原性LLPCに関連する疾患を患う被験体に送達するためのビヒクルとして細胞、又は更にはサルモネラ等の細菌を使用することが特に有利である。SiiEタンパク質をコードするサルモネラ細菌の投与は、骨髄中のLLPCの枯渇及びIgGの減少をもたらす。このことは、本発明のポリペプチドを投与する代わりに、かかるペプチドの発現をもたらす細胞又は細菌の投与によっても、かかるペプチドを提供することができることを示す。
【0055】
本発明は、本発明のポリペプチド、本発明の核酸分子、本発明の遺伝子療法ベクター及び/又は本発明の細胞と薬学的に許容される担体とを含む、本明細書に記載の病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される医薬組成物にも関する。
【0056】
さらに、本発明は、被験体におけるNTS感染の予防においてワクチンとして使用される突然変異非チフス性サルモネラ(NTS)細菌であって、本明細書に記載のSiiEポリペプチドを含むか又はそれからなるポリペプチドを発現しない、突然変異NTS細菌に関する。
【0057】
本発明のこの実施の形態は、SiiE又は本発明のポリペプチドを含む任意の他のポリペプチドを発現しないサルモネラによる感染が、サルモネラに対する強い液性/抗体系免疫応答を引き起こすという驚くべき知見に基づく。これは、SiiEを発現する野生型サルモネラによる感染後には生じない。それどころか、SiiE発現サルモネラ細菌は通例、骨髄中の形質細胞の減少及びIgG抗体価の低下をもたらす。したがって、サルモネラは免疫反応を誘導し、免疫記憶をSiiE依存的に損なう。
【0058】
SiiE欠損NTSは、通例、宿主においてNTSに対するより高いIgG抗体価を生じるワクチンとして使用することができ、宿主はその後、SiiEを発現する野生型NTSによる感染に対して保護される。
【0059】
これまで、NTS、特にヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、齧歯類及びキジ目において重度の食中毒を引き起こすネズミチフス菌に対するワクチン接種は利用可能でない。さらに、非チフス性サルモネラの侵襲性株(iNTS)が、アフリカ人の成人及び小児における血流感染の顕著な原因として出現した。ネズミチフス菌を含む侵襲性の非チフス性サルモネラ(iNTS)によって引き起こされる疾患は、20%~25%と致死率がチフス菌による感染よりも高いにも関わらず軽視されている。
【0060】
対照的に、ヒトに限られ、重篤な、しばしば致命的な腸チフスを引き起こすチフス菌による感染は弱毒化株、例えばTy21aのワクチン接種によって予防することができる。本発明の文脈において、チフス菌が本発明のポリペプチドを含む機能性SiiEタンパク質を発現しない可能性が最も高いことが見出され、理論に束縛されるものではないが、これがチフス菌に対するワクチン接種が利用可能である理由のもっともらしい説明である。
【0061】
本明細書に記載のワクチンとして使用される突然変異NTS細菌は、SiiEコード遺伝子の欠失を示すのが好ましい。
【0062】
ワクチンとして使用されるNTS細菌の好ましい実施の形態では、被験体はヒト、キジ目、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ又は齧歯類である。
【0063】
野生型サルモネラは、骨髄形質細胞とラミニンβ1との相互作用を阻害する本発明のポリペプチドを含むSiiEにより液性免疫応答の阻害を媒介する。これにより骨髄形質細胞の枯渇及び抗体の減少がもたらされる。ラミニンβ1はヒト、キジ目、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ及び齧歯類に含まれる種を含む多くの種で保存されているため、幾つかの実施の形態では、これらの種におけるワクチンとして本発明のポリペプチドを含むポリペプチドを発現しないNTSを使用することが可能である。
【0064】
ワクチンとして使用される突然変異NTS細菌がネズミチフス菌であるのが好ましい。
【0065】
本発明のポリペプチド、病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用されるポリペプチド、及び本出願で特許請求される被験体のNTS感染の予防においてワクチンとして使用される突然変異非チフス性サルモネラ(NTS)細菌は、本発明のポリペプチドが骨髄中の形質細胞、特にLLPCの減少又は枯渇を誘導し、これが抗体価の低下を伴うという同じ発明概念に基づく。
【0066】
この概念は、病原性LLPCによって媒介される疾患を患う被験体のような骨髄中のLLPCの減少及びこれらの細胞によって産生される抗体の減少が望ましい状況において用いることができる。一方、NTS感染に対するワクチンとして使用される、今回特許請求される突然変異NTSの開発に同じ概念が適用された。この場合、NTSに対する免疫記憶を確立し、将来の感染を予防するために強いLLPC媒介性液性免疫応答が望ましい。しかしながら、野生型NTSによる感染後に、SiiEのフラグメント等の本発明のポリペプチドにより液性免疫応答及び免疫記憶を抑制することができる。SiiE又は本発明のポリペプチドを含むポリペプチドを発現しない突然変異NTSをワクチンとして使用すること、例えば被験体にかかる突然変異NTSを感染させることで、上記被験体の免疫系は、骨髄ニッチ中で長期間存在することができるNTS特異的LLPCの生成をもたらす強い液性免疫応答を生じ得る。
【0067】
したがって、本出願で特許請求される、(1)本発明のSiiEポリペプチド、及び病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療におけるそれらの適合性、並びに(2)本明細書に記載のSiiEポリペプチドを発現しない突然変異非チフス性サルモネラ(NTS)細菌、及び被験体のNTS感染の予防におけるワクチンとしてのそれらの適合性が、病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療のための代替的な及び/又は改善された手段を提供することの解決策、並びに非チフス性サルモネラ(NTS)細菌に対する有効なワクチンの提供を可能にする単一の技術概念に基づくと結論付けることができる。本発明のこれらの態様を結び付ける特別な技術的特徴は、長寿命形質細胞に対する本明細書に記載のSiiEタンパク質の機能と表現することができ、すなわち、本発明のポリペプチドは骨髄中の形質細胞、特にLLPCの減少又は枯渇を誘導し、これが抗体価の低下を伴う。SiiEタンパク質と長寿命形質細胞との機能的関連性は、SiiEタンパク質の治療的使用、及び被験体のNTS感染の予防においてワクチンとして使用される突然変異非チフス性サルモネラ(NTS)細菌におけるSiiEタンパク質の欠如の両方に直接関連しており、これは両方の実施の形態が形質細胞に対するSiiEの効果に基づくためである。SiiEと形質細胞との関係の従来技術における提唱は明らかでなく、したがって、上記の本発明の2つの態様は、独特かつ単一の機能的特徴によって結び付けられる。
【0068】
したがって、特許請求される本発明のポリペプチド、特許請求される本発明のポリペプチドの使用、及び特許請求される本発明のポリペプチドを含むポリペプチドを発現しない突然変異NTSの使用は全て、本発明のポリペプチドが骨髄からのLLPCの枯渇を誘導するという共通の概念に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】サルモネラが脾臓及び肝臓内で増加することを示す図である。
【
図2】サルモネラの腹腔内感染によるBM IgG分泌形質細胞の数値的減少を示す図である。
【
図3】野生型サルモネラがBM IgG分泌形質細胞を減少させることを示す図である。
【
図4】サルモネラの経口感染によるBM IgG分泌形質細胞の数値的減少を示す図である。
【
図5】BM IgG分泌形質細胞の数を減少させる微生物構成要素の特定を示す図である。
【
図6】SiiEがラミニンβ1の保存配列と高い相同性を有することを示す図である。
【
図7】サルモネラ感染マウスの脾臓におけるサルモネラ及びSiiEの分布を示す図である。
【
図8】BM IgG分泌形質細胞がラミニンβ1+CXCL12発現間質細胞において存続することを示す図である。
【
図9】脾臓形質細胞がラミニンβ1と接触しないことを示す図である。
【
図10】形質細胞上のラミニンの潜在的受容体を示す図である。
【
図11】ネズミチフス菌株ΔLon及びΔLonΔSiiEの微生物学的特徴を示す図である。
【
図12】SiiEの喪失がサルモネラに対する液性免疫応答を増強することを示す図である。
【
図13】サルモネラがCXCL12とは独立してBM IgG分泌形質細胞の数を減少させることを示す図である。
【
図14】サルモネラが形質細胞に対する接着分子及び生存因子の発現に影響を及ぼさないことを示す図である。
【
図15】SiiE129ペプチドが骨髄中のDNA特異的IgG分泌形質細胞の数を減少させることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
特許文献及び非特許文献の全ての引用された文書は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0071】
本発明の好ましいポリペプチドのアミノ酸配列を下記表1に挙げる。
【0072】
表1:好ましいニューレグリンタンパク質のアミノ酸配列
配列番号1:
SiiEのAA 136~154のアミノ酸(AA)配列(大きな反復タンパク質SiiE(ネズミチフス菌(Salmonellaenterica subsp. enterica serovar Typhimurium));GenBank:ASF67203.1
配列番号2:
SiiEのAA 129~168のアミノ酸(AA)配列(大きな反復タンパク質SiiE(ネズミチフス菌);GenBank:ASF67203.1
配列番号3:
SiiEのAA 97~170のアミノ酸(AA)配列(大きな反復タンパク質SiiE(ネズミチフス菌);GenBank:ASF67203.1
配列番号4:
SiiEのAA 1~170のアミノ酸(AA)配列(大きな反復タンパク質SiiE(ネズミチフス菌);GenBank:ASF67203.1
配列番号5:完全長SiiE(AA 1~5559)(大きな反復タンパク質SiiE(ネズミチフス菌));GenBank:ASF67203.1
配列番号6:マウスラミニンβ1;AA 1638~1681;NCBI参照配列:NP_032508.2
配列番号7:ヒトラミニンβ1;AA 1590~1633;GenBank:EAL24388.1
配列番号8:SiiEのN末端ドメイン(AA 1~404)(大きな反復タンパク質SiiE(ネズミチフス菌));GenBank:ASF67203.1
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0073】
したがって、一実施形態では、本発明は、以下のものからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる本明細書に記載のポリペプチドを包含する:
a)配列番号1~4によるアミノ酸配列を含むか又はそれからなるアミノ酸配列(ここで、ポリペプチドは好ましくは200アミノ酸以下、好ましくは170アミノ酸以下である);
b)アミノ酸分子の長さが10~300アミノ酸、好ましくは15~200アミノ酸、最も好ましくは19~170アミノ酸であり、周辺配列が好ましくは配列番号1~4によるアミノ酸配列に隣接するSiiE配列として設けられる、配列番号1~4によるアミノ酸配列を含むか又はそれからなるアミノ酸配列;
c)a)によるアミノ酸配列に対して機能的に類似した/同等となるのに十分な配列同一性を有し、好ましくはa)によるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、好ましくは90%、より好ましくは95%の配列同一性を有するアミノ酸配列;及び、
d)欠失、付加、置換、転座、逆位及び/又は挿入によって修飾され、a)、b)又はc)によるアミノ酸配列に対して機能的に類似した/同等のa)、b)又はc)のアミノ酸配列。
【0074】
機能的に類似した配列は、好ましくはラミニンβ1の保存配列に対して相同性を有する機能性ペプチドをコードする能力を指す。ラミニンβ1の保存配列が配列番号6又は7によるアミノ酸配列に対応するのが好ましい。
【0075】
これに関連して、機能性は、長寿命(long-lived)形質細胞と骨髄中のラミニンβ1との相互作用を妨げる又は阻害するペプチドの能力を指す場合もある。
【0076】
本発明の実施形態は、配列番号1~4のアミノ酸配列又はこれらの配列の変異体を含むか又はそれからなる本明細書に記載のポリペプチドを含む場合があり、配列変異体は、配列番号1~4に対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し得る。配列同一性は、BLAST又は他の配列アラインメントツール等の当業者に既知の方法を用いて決定することができる。
【0077】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、ネズミチフス菌SiiEタンパク質のN末端ドメインに由来するアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドに関する。ネズミチフス菌SiiEタンパク質のN末端ドメインに由来するアミノ酸配列は、ラミニンβ1の保存アミノ酸配列に相同のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるのが好ましい。ラミニンβ1の保存アミノ酸配列は、少なくとも19アミノ酸、より好ましくは25アミノ酸、最も好ましくは40アミノ酸の長さを有するのが好ましい。配列相同性は65%超、好ましくは70%超の配列同一性を指す。ネズミチフス菌SiiEタンパク質のN末端ドメインは、SiiEタンパク質のアミノ酸1~404を含む。
【0078】
SiiEは、ネズミチフス菌の5559アミノ酸の巨大タンパク質であり、N末端及びC末端の2つの異なる領域、並びにその間の53個の反復細菌Igドメインを有する(
図6)。SiiEは分泌され、腸管(gutintestinal)上皮細胞への接着に関与する(Gerlach et al., 2007)。
【0079】
アミノ酸配列及びそのような分子をコードする核酸配列における置換によって生じ得る本発明のポリペプチドへのタンパク質修飾も本発明の範囲内に含まれる。本明細書で定義される置換は、タンパク質のアミノ酸配列になされる修飾であり、それにより1つ以上のアミノ酸が、同数の(種々の)アミノ酸と置き換えられて、本来のタンパク質とは異なるアミノ酸配列を含むタンパク質が生成される。幾つかの実施形態においては、この修正は、タンパク質の機能を大きく変更しないであろう。付加と同様に、置換は、天然のものであっても人工的なものであってもよい。当該技術分野においては、アミノ酸置換が、タンパク質の機能を大きく変更することなく行われ得ることは、よく知られている。これは、特に、該修飾が、或るアミノ酸の類似の特性の別のアミノ酸への置換である「保存的」アミノ酸置換に関連する場合に当てはまる。そのような「保存された」アミノ酸は、サイズ、電荷、極性及びコンフォメーションのため、タンパク質の構造及び機能に大きな影響を及ぼすことなく置換することができる天然アミノ酸又は合成アミノ酸であってもよい。しばしば、多くのアミノ酸は、タンパク質の機能に有害な影響を及ぼすことなく保存的アミノ酸によって置換され得る。
【0080】
一般的に、非極性アミノ酸のGly、Ala、Val、Iie及びLeu、非極性芳香族アミノ酸のPhe、Trp及びTyr、中性極性アミノ酸のSer、Thr、Cys、Gin、Asn及びMet、正に荷電したアミノ酸のLys、Arg及びHis、負に荷電したアミノ酸のAsp及びGluは、保存的アミノ酸の群を表す。この一覧は、網羅的なものではない。例えば、Ala、Gly、Ser及び時としてCysは、それらが異なる群に属しているが、互いに置換することができることはよく知られている。
【0081】
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドをコードする治療遺伝子の投与を含む遺伝子療法を包含する。
【0082】
遺伝子療法という用語は、疾患を治療するための被験体へのDNAの移入を指すのが好ましい。遺伝子療法ベクターを用いて遺伝子療法を行うための戦略が当業者に知られている。かかる遺伝子療法ベクターは、外来DNAを被験体の宿主細胞へと送達するように最適化されている。好ましい実施形態では、遺伝子療法ベクターはウイルスベクターであり得る。ウイルスは、DNAを宿主細胞のゲノムに組み込むために自然に発展した戦略を有し、したがって有利に使用することができる。好ましいウイルス遺伝子療法ベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)等のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ポックスウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター又はヒト免疫不全ウイルスベクター(HIV-1)を挙げることができるが、これらに限定されない。しかしながら、真核生物プロモーターによって駆動されるプラスミドDNA発現ベクター、又はトランスファーDNAを封入するリポソーム等の非ウイルスベクターも好ましくは遺伝子療法に使用することができる。さらに、好ましい遺伝子療法ベクターは、エレクトロポレーション又は被験体への核酸の直接注射等のDNAを移入する方法を指す場合もある。さらに、遺伝子療法ベクター、例えばウイルス遺伝子療法ベクターを骨髄細胞、特に骨髄の間質細胞、造血細胞若しくは免疫細胞、又は長寿命形質細胞を標的とするように適合することが好ましい場合もある。この目的で、ウイルスカプシドをモノクローナル抗体等の骨髄細胞、特に骨髄の間質細胞、造血細胞若しくは免疫細胞、又は長寿命形質細胞に結合するリガンドとコンジュゲートすることができる。ウイルス遺伝子療法ベクターを誘導性プロモーター、又は骨髄細胞、特に骨髄の間質細胞、造血細胞若しくは免疫細胞、若しくは長寿命形質細胞に特異的なプロモーターを用いて遺伝子改変し、骨髄内の病原性長寿命形質細胞の周囲において特異的に核酸の発現を増強することが好ましい場合もある。したがって、好ましい遺伝子療法ベクターは、ポリペプチドの誘導性発現又は条件付き発現のためのベクターを含み得る。適用の必要性に応じて好ましい遺伝子療法ベクターを選ぶ方法、及び核酸を遺伝子療法ベクターに組み入れる方法が当業者に知られている(P. Seth et al., 2005、N. Koostraet, al. 2009.、W. Walther et al. 2000、Waehleret al. 2007)。
【0083】
本発明による核酸及びその好ましい実施形態、特に本発明のポリペプチドをコードする核酸は、小さいサイズでの高い治療可能性のために遺伝子療法に特に有効である。これにより長時間にわたって高い発現レベルで安定した組込みが確実となる。
【0084】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載の病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される細胞であって、細胞が遺伝子改変されており、本発明によるポリペプチド又はその好ましい実施形態をコードする外因性核酸領域を含み、外因性核酸領域がプロモーターに操作可能に連結する、細胞に関する。
【0085】
本発明によるポリペプチドを発現させるために細胞を遺伝子改変する方法が当業者に知られている。有利には、治療上有効なポリペプチドを発現させることにより、細胞は、ポリペプチドを発現し、被験体に供給し続けるバイオポンプ又は薬物工場として作用することができる。それにより、ポリペプチドの量を長期にわたって治療レベルに保持することができる。どの細胞がこの目的で好ましく使用され得るかが当業者に知られている。好ましい実施形態では、細胞は、ポリペプチドの安定した発現を特徴とする幹細胞である。幹細胞としては、初期胚性幹細胞及び胚盤胞胚性幹細胞等の胚性幹細胞;胎生幹細胞;臍帯幹細胞;並びに間葉系幹細胞、造血幹細胞、内皮幹細胞、末梢血幹細胞及び多能性体性幹細胞等の成体幹細胞を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0086】
別の好ましい実施形態では、細胞は、細菌細胞又は細菌であり得る。細菌は、原核単細胞微生物の大部分を占め、標準的な微生物学及び分子生物学の手法によって遺伝子改変することができる。自然発生細菌に加えて、遺伝子改変細菌及び人工細菌が存在する。当業者は、好ましくは本発明の文脈において使用することができる細菌細胞を選択することが可能である。
【0087】
細菌細胞は、サルモネラ細菌であるのが好ましい。サルモネラ細菌は、腸内細菌科のグラム陰性細菌である。サルモネラ細菌属は2つの種、サルモネラ・ボンゴリ(Salmonella bongori)及びサルモネラ・エンテリカ(Salmonellaenterica)を含み、サルモネラ・エンテリカは、6つの亜種(サルモネラ・エンテリカ・エンテリカ(S. e. enterica)、サルモネラ・エンテリカ・サラメ(S. e. salamae)、サルモネラ・エンテリカ・アリゾナエ(S. e. arizonae)、サルモネラ・エンテリカ・ダイアリゾナエ(S. e.diarizonae)、サルモネラ・エンテリカ・ホウテナエ(S. e. houtenae)及びサルモネラ・エンテリカ・インディカ(S. e. indica))に分けられ、これらは菌体O抗原(リポ多糖)及び鞭毛H抗原に基づいて規定される、2500を超える血清型(serotypes (also serovars))を有する。血清型の正式な名前は、例えばSalmonella enterica subsp. enterica serotype Typhimuriumのように示されるが、Salmonella Typhimuriumと略すこともできる。臨床調査及び疫学的調査を補助するための株の更なる区別は、抗生物質感受性試験によって、またパルスフィールドゲル電気泳動、多座位配列タイピング、また次第に全ゲノムシークエンシング等の他の分子生物学の手法によって達成することができる。歴史的には、サルモネラは、宿主選好及びヒトにおける疾患の兆候に基づいて侵襲性(チフス性)又は非侵襲性(非チフス性サルモネラ)として臨床的に分類されていた。当業者は、遺伝子改変することができるか、又は本発明のポリペプチドをコードする核酸領域を含む適切なサルモネラ細菌を選択することができる。
【0088】
細胞は、ポリペプチドを病原性細胞の周辺で局所的に発現させるために病原性長寿命形質細胞の部位へと移動することができる。しかしながら有利には、ポリペプチドを血管系によって被験体の全身に輸送することができるため、細胞を異なる位置に移植することもできる。したがって、例えば皮下注射による細胞の局所投与は、被験体の体内における細胞の位置に関わらず、全身的に大きく寄与し得る。
【0089】
更なる好ましい実施形態では、本明細書に記載の薬剤として使用される細胞は、生体適合性マトリックス内で治療上有効な数の上記細胞を被験体に導入することを特徴とする。生体適合性マトリックスに好ましい材料はアガロース、カラギーナン、アルギネート、キトサン、ゲランガム、ヒアルロン酸、コラーゲン、セルロース及びその誘導体、ゼラチン、エラスチン、エポキシ樹脂、光架橋性樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリスチレン及びポリウレタン、又はポリエチレングリコール(PEG)である。生体適合性マトリックスが半透過性ヒドロゲルマトリックスであり、細胞が該マトリックスに封入されることが更に好ましい。有利には、生体適合性マトリックスは、細胞を固定しながら、ポリペプチドを発現する細胞の長期にわたる生存を確実にするために栄養素、酸素及び他の生体分子の効率的な拡散を可能にする。それにより、細胞を被験体において好ましい位置に集中させることができる。例えば、細胞を皮下に、及び/又は被験体の罹患領域付近、すなわち前庭神経鞘腫の近くに移植することができる。封入された細胞を導入することにより、細胞が特に効率的にバイオポンプとして機能し、高レベルの治療用ポリペプチドを被験体に供給することは驚くべきことである。
【0090】
好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載の病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される医薬組成物であって、ポリペプチド、核酸、遺伝子療法ベクター及び/又は細胞、並びに任意に薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に更に関する。医薬組成物は、本明細書に記載の任意の投与経路にて治療有効量で被験体に投与するのが好ましい。
【0091】
好ましい実施形態では、本明細書に記載の薬剤として使用される医薬組成物は、治療有効量の組成物を被験体の血流中に導入することによって投与される。この投与経路は、ポリペプチドの投与に特に有利である。
【0092】
更なる好ましい実施形態では、本明細書に記載の薬剤として使用される医薬組成物は、局所投与される。医薬組成物を骨髄等の病原性長寿命形質細胞の部位に局所投与することが特に好ましい。本発明のポリペプチド又は医薬組成物を注射することによって骨髄への医薬組成物の局所投与を達成することが好ましい場合もある。
【0093】
さらに、好ましい実施形態では、ポリペプチドの局所投与は、好ましくはコラーゲンスポンジ等の埋め込み物によって媒介され得る。この目的で、ポリペプチドを含む医薬組成物にスポンジを浸漬し、スポンジを病原性長寿命形質細胞の部位の近くに埋め込むことが好ましい場合がある。そうすることで、ポリペプチドが有利に局所的に拡散し、部位特異的に作用することができる。
【0094】
更なる好ましい実施形態では、ポリペプチドは、ヒドロゲルを用いて局所投与することができる。ヒドロゲルは、水溶性ポリマーの3次元架橋ネットワークである。タンパク質又はポリペプチドの送達に適切なヒドロゲルを作製する方法が当業者に知られている(Hoare et al. 2008、Peppas et al. 2000、Hoffmann A. et al. 2012)。特に、ヒドロゲルの架橋ネットワークの密度は、ヒドロゲルへのポリペプチドの充填に適した空隙率を達成するように有利に最適化することができる。続いて、ポリペプチドの放出は、ゲルネットワーク全体へのペプチドの拡散に左右される。したがって、ポリペプチドの放出速度、ひいては治療有効量は、ヒドロゲルの架橋密度を最適化することによって正確に調整することができる。さらに、好ましいヒドロゲルは、ポリペプチドの放出のために最適化された外膜も含み得る。好ましいヒドロゲルは生体適合性であり、好ましくはポリペプチドの長期局所供給のために埋め込まれる。好ましい実施形態では、ヒドロゲルは、病原性長寿命形質細胞の部位又はその近くで皮下に埋め込むことができる。ヒドロゲルを用いたポリペプチドの経皮投与も想定され得る。ヒドロゲルにより、全身投与量を最小限に抑えながら、治療有効用量のポリペプチドを病原性長寿命形質細胞の部位に有利に局在化させることができる。それにより、持続した部位特異的な放出による、副作用を最小限に抑えた長期投与を達成することができる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「核酸」は、限定されるものではないが、DNA、RNA、及びそのハイブリッド又は修飾変異体を含む任意の核酸分子を意味するものとする。「外因性核酸」又は「外因性遺伝要素」は、細胞の「元の」又は「天然の」ゲノムの構成要素ではない、細胞内に導入される任意の核酸に関する。外因性核酸は、組み入れられたものであっても若しくは組み入れられたものでなくてもよく、又は安定にトランスフェクトされた核酸に関していてもよい。
【0096】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ペプチド及びタンパク質の両方を意味するものとする。本発明では、ポリペプチドは自然発生又は組み換え(すなわち、組み換えDNA技術によって作製された)であってもよく、突然変異(例えば、点突然変異、挿入突然変異及び欠失突然変異)、及び他の共有結合修飾(例えば、グリコシル化及び標識(ビオチン、ストレプトアビジン、フルオレセイン及び放射性同位体による))、又は付加的な構成要素に対する他の分子結合を含有していてもよい。例えば、PEG化(PEGylated)タンパク質が本発明の範囲に包含される。PEG化は、治療用タンパク質の生物医学的有効性及び物理化学的特性を改善するための作製後の修飾法として広く用いられている。この技術の適用性及び安全性は、長年にわたり様々なPEG化医薬品を用いて証明されている(Jevsevar et al, Biotechnol J. 2010 Jan;5(1):113-28を参照されたい)。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、非修飾ポリペプチドと比較してより長いin vivo半減期を示し、分解に抵抗するように修飾される。環化ポリペプチド、ビタミンB12に融合したポリペプチド、ステープルペプチド(stapled peptides)、タンパク質脂質化(lipidization)、及びD-アミノ酸による天然L-アミノ酸の置換等のかかる修飾は当業者に既知である(Bruno et al, Ther Deliv. 2013 Nov; 4(11):1443-1467を参照されたい)。
【0097】
本発明の幾つかの実施形態では、ペプチド、好ましくは本明細書に開示の配列によるペプチドは、配列のN末端及び/又はC末端の0~10アミノ酸の付加又は欠失を含み得る。
【0098】
本明細書で使用される場合、「配列のN末端及び/又はC末端の0~10アミノ酸の付加又は欠失」という用語は、ポリペプチドが、a)そのN末端の0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個の付加的なアミノ酸、及びそのC末端の0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個のアミノ酸の欠失、又はb)そのC末端の0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個の付加的なアミノ酸、及びそのN末端の0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個のヌクレオチドの欠失、c)そのN末端の0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個の付加的なアミノ酸、及びそのN末端の0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個の付加的なアミノ酸、又はd)そのN末端の0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個のアミノ酸の欠失、及びそのC末端の0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個のアミノ酸の欠失を有し得ることを意味する。
【0099】
さらに、本明細書に記載のポリペプチドに加えて、ペプチド模倣薬も企図される。ペプチド類似体は、鋳型ペプチドに類似した特性を有する非ペプチド薬物として医薬品産業において一般に用いられる。これらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣薬」("peptide mimetics" or "peptidomimetics")と称され(Fauchere (1986)Adv. Drug Res. 15: 29、Veber and Freidinger (1985) TINS p. 392、及びEvans et al. (1987) J. Med. Chem. 30: 1229)、通常はコンピューターによる分子モデリングを用いて開発される。治療上有用なペプチドと構造的に類似したペプチド模倣薬は、同等の治療効果又は予防効果をもたらすために使用することができる。幾つかの実施形態では、被験体に投与した場合のポリペプチドの安定性を持続させるためにペプチド模倣薬を使用することが好ましい場合がある。この目的で、ヒトプロテアソームによって切断されないポリペプチドのペプチド模倣薬が好ましい場合がある。
【0100】
本明細書に記載のポリペプチド、核酸分子、遺伝子療法ベクター又は細胞は、固体、液体又はエアロゾルのいずれの形態で投与されるか、また注射等の投与経路のために滅菌する必要があるかに応じて異なるタイプの担体を含み得る。
【0101】
本発明の活性物質は、当業者に知られているように、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病変内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜腔内、気管内、鼻内、硝子体内、膣内、直腸内、局所的、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、膀胱内、粘膜的、心膜内、臍帯内、眼内、経口的、局所的、局部的、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、持続注入、直接的に、カテーテルを介して、潅注を介して、クリームにおいて、脂質組成物(例えば、リポソーム)において、スポンジによる局所適用、又はその他の方法若しくは上記の任意の組み合わせにより投与することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company,1990を参照、その文献は引用することにより本出願の一部をなす)。
【0102】
本発明は、治療上有効な数の本発明のポリペプチド、核酸、遺伝子療法ベクター又は細胞を被験体の血流中に導入することによる患者の治療を包含する。本明細書で使用される場合、ポリペプチド、核酸、遺伝子療法ベクター又は細胞を被験体の血流中に「導入する」ことは、限定されるものではないが、かかるポリペプチド、核酸、遺伝子療法ベクター又は細胞を被験体の静脈又は動脈の1つに注射によって導入することを含むものとする。かかる投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1回以上の長期間にわたって行うこともできる。単回注射が好ましいが、時間をかけた反復注射(例えば、年4回、半年に1回又は年1回)が場合によっては必要とされ得る。かかる投与はまた、ポリペプチド、核酸、遺伝子療法ベクター又は細胞と薬学的に許容可能な担体との混合物を用いて行うのが好ましい。薬学的に許容可能な担体は当業者に既知であり、0.01 M~0.1 M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液又は0.8%生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
投与は局所的に、例えば病原性長寿命形質細胞が局在化する部位に近接した被験体の身体の領域への注射によって行うこともできる。本明細書で使用される場合、組織/部位に「近接した」とは、例えば組織から50 mm、20 mm、10 mm、5 mm以内、1 mm以内、組織から0.5mm以内、及び組織/部位から0.25 mm以内を含む。
【0104】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、任意の全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤(absorption delaying agents)等を含む。医薬活性物質へのかかる媒体及び作用物質の使用は、当該技術分野において既知である。任意の従来の媒体又は作用物質が活性成分と適合しない場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助活性成分が組成物に組み込まれてもよい。
【0105】
付加的に、かかる薬学的に許容可能な担体は、水性又は非水性の溶液、懸濁液及びエマルション、最も好ましくは水溶液であり得る。水性担体としては、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール溶液/水溶液、エマルション及び懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース(Ringer's dextrose)、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液及び不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充薬(nutrient replenishers)、リンゲルデキストロース、リンゲルデキストロースをベースとしたもの等の電解質補充薬等が挙げられる。静脈内投与に一般に用いられる流体は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., p. 808,Lippincott Williams S-Wilkins (2000)に見られる。保存料及び他の添加物、例えば抗微生物剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガス等が存在していてもよい。
【0106】
「薬学的に許容可能な」という表現は、ヒトに投与した場合にアレルギー反応又は同様の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。タンパク質を活性成分として含有する水性組成物の調製は、当該技術分野において十分に理解されている。通例、かかる組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかである注射剤として調製される。注射前の液体中の溶液又は懸濁液に適切な固体形態も調製することができる。調製物を乳化することもできる。
【0107】
組成物は、中性形態又は塩形態で配合することができる。薬学的に許容可能な塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基により形成される)が挙げられ、例えば塩酸若しくはリン酸等の無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸により形成される。遊離カルボキシル基により形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は水酸化第二鉄等の無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基に由来していてもよい。
【0108】
配合後に、溶液は、投与配合物に適合する方法にて治療上効果的な量で投与される。配合物は注射液、薬物放出カプセル等の様々な剤形で容易に投与される。
【0109】
本明細書で使用される場合、医薬組成物の「治療有効量」には、限定されるものではないが、以下の量及び量の範囲が含まれる:
本発明によるポリペプチドを含む組成物又はその好ましい実施形態については、(i)約1×10-3μg/kg(体重)~約1×106 μg/kg(体重)、(ii)約1×10-2μg/kg(体重)~約1×105 μg/kg(体重)、(iii)約1×10-1μg/kg(体重)~約1×104 μg/kg(体重)、(iv)約1×10-1μg/kg(体重)~約1×103 μg/kg(体重)、(v)約1×10-1μg/kg(体重)~約1×102 μg/kg(体重)、(vi)約1×10-1μg/kg(体重)~約0.5×102 μg/kg(体重)、(vii)約1×10-2μg/kg(体重)、(viii)約1×101 μg/kg(体重)、(ix)約10 μg/kg(体重)、(x)約1×102 μg/kg(体重)、(xi)約5×103 μg/kg(体重)。
本発明による細胞を含む組成物又はその好ましい実施形態については、(i)約1×102個の細胞/kg(体重)~約1×108個の細胞/kg(体重)、(ii)約1×103個の細胞/kg(体重)~約1×107個の細胞/kg(体重)、(iii)約1×104個の細胞/kg(体重)~約1×106個の細胞/kg(体重)、(iv)約1×104個の細胞/kg(体重)~約1×105個の細胞/kg(体重)、(v)約1×105個の細胞/kg(体重)~約1×106個の細胞/kg(体重)、(vi)約5×104個の細胞/kg(体重)~約0.5×105個の細胞/kg(体重)、(vii)約1×103個の細胞/kg(体重)、(viii)約1×104個の細胞/kg(体重)、(ix)約5×104個の細胞/kg(体重)、(x)約1×105個の細胞/kg(体重)、(xi)約5×105個の細胞/kg(体重)、(xii)約1×106個の細胞/kg(体重)、及び(xiii)約1×107個の細胞/kg(体重)。
【0110】
想定されるヒトの体重としては、限定されるものではないが、約5 kg、10 kg、15 kg、30 kg、50 kg、約60 kg、約70 kg、約80 kg、約90 kg、約100 kg、約120 kg及び約150kgが挙げられる。
【0111】
ウイルス遺伝子療法ベクターの投与量は、主として治療される病態、選択される遺伝子、患者の年齢、体重及び健康状態等の要因によって決まるため、患者によって異なり得る。例えば、ウイルスベクターの治療上有効なヒト投与量は、好ましくは約1×105プラーク形成単位(pfu)/ml~1×1012 pfu/ml、好ましくは1×106 pfu/ml~1×1011 pfu/ml、より好ましくは1×107 pfu/ml~1×1010 pfu/mlの濃度のウイルスを含有する約1 ml~約1000 ml、好ましくは10 ml~100ml、好ましくは20 ml~50 mlの生理食塩溶液の範囲であり得る。投与量は、任意の副作用に対する治療効果のバランスを取るように調整される。選択される遺伝子の発現レベルをモニタリングし、投与量の投与の選択、調整又は頻度を決定することができる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「誘導性発現」又は「条件付き発現」は、ポリペプチド発現を可能にする細胞中の1つ以上の分子(誘導因子)又は他の条件が存在しない限り、ポリペプチドが好ましくは発現されないか、又は幾つかの実施形態では、ごく僅かな若しくは比較的低いレベルで発現される、ポリペプチドの発現の状態、多状態又は系に関する。誘導性プロモーターは、特定の生物学的条件下で比較的より高いレベルで発現される自然発生プロモーター、又は任意の所与の誘導性要素を含む他の合成プロモーターのいずれかに関する場合がある。誘導性プロモーターは、特定の組織環境若しくは微小環境、若しくは特定の組織環境若しくは微小環境内に存在する生体シグナルの組合せによって誘導されるもの、又は外部要因、例えば小薬物分子の投与若しくは他の外部から適用されるシグナルによって誘導されるプロモーターを指す場合がある。
【0113】
本明細書で使用される場合、「バイオポンプ」又は「薬物工場」という用語は、好ましくは治療上有効な投与量で産生し続けるポリペプチドの供給源としての細胞の機能を表すのが好ましい。細胞を被験体に投与することによって、特に安定したレベルの本発明によるポリペプチド又はその好ましい実施形態を提供することができる。この意味で、細胞であるバイオポンプは、ポリペプチドのレベルを特に高い安定した状態に維持する連続供給を可能にし、例えばバイオポンプは、例えばプロテアソームによるポリペプチドの変性に起因するポリペプチドの喪失を補償することができる。
【0114】
「ヒドロゲル」、「ゲル」等の用語は、好ましくは容易に流動可能な液体ではなく、固体ではない材料を指すために本明細書で区別なく使用される。ヒドロゲルという用語は、好ましくは不水溶性の水を含有する材料であることが意図される。ヒドロゲルの例としては、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)、及び化学的又は物理的に架橋されたポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(N-ビニルピロリドン(pyrrolidone))、ポリエチレンオキシド、及び加水分解ポリアクリロニトリル等の合成ポリマーが挙げられる。有機ポリマーであるヒドロゲルの例としては、DNAヒドロゲル、又はアルギネート、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ヘパリン、ヒアルロネートの多価金属塩等の共有結合的に若しくはイオンで架橋された多糖ベースのヒドロゲル、並びにキチン、キトサン、プルラン、ジェラン及びキサンタンに由来するヒドロゲルが挙げられる。
【0115】
形質細胞はプラズマB細胞、プラズマ細胞(plasmocytes, plasmacytes)又はエフェクターB細胞とも呼ばれる。形質細胞は、大量の抗体を分泌する白血球/免疫細胞である。形質細胞は、血漿及びリンパ系によって輸送され、骨髄に由来する。B細胞が抗体分子を産生する形質細胞へと分化する。血液及びリンパ液中に放出された後、これらの抗体分子は標的抗原(外来物質)に結合し、免疫系によるその中和又は破壊を開始する。B細胞は、主にT細胞による刺激後に記憶B細胞又は形質細胞へと分化することができ、これは通常、脾臓及びリンパ節のような二次リンパ器官の胚中心において起こる。これらのB細胞の大部分は、形質芽球(又は「未熟形質細胞」)、最終的には形質細胞となり、大量の抗体を産生し始めるが、一部のB細胞は、抗原に対してより高い親和性を有する抗体の選択、並びにより高い親和性の抗体を分泌することが可能なB細胞クローンの活性化及び増殖を指す親和性成熟を受ける。
【0116】
胚中心における親和性成熟過程後に、形質細胞は、数日から数ヶ月に及ぶ不確定の寿命を有する。形質細胞の特定のサブクラスは、骨髄中ではるかに長時間存在することが示されている。このクラスの形質細胞は、「長寿命形質細胞」(LLPC)と称される。LLPCは高レベルの抗体を分泌し、LLPCは、限定されるものではないが、IgM分泌LLPC、IgG分泌LLPC、IgA分泌LLPC及びIgE分泌LLPCを含む。さらに、LLPCは抗体クラスを切り替えることができず、抗原提示細胞として作用することができない。LLPCは、免疫記憶の独立した構成要素を構成する。LLPCは、記憶免疫反応との関連で生成し、骨髄に移動し、そこで数年及び数十年にわたって存続する。それらの生存は、形質細胞生存ニッチを形成する細胞によって供給される固有のシグナルの受容によって決まる。生存ニッチからの形質細胞又は長寿命形質細胞の移動は、細胞のアポトーシスを引き起こし得る。
【0117】
長寿命形質細胞は、数年間又は更には一生涯にわたって保護微小環境内で生き残り、持続的なAb価を確立することによって液性記憶をもたらす。「病原性長寿命形質細胞」という用語は、例えば自己反応性、悪性及びアレルゲン特異的な長寿命形質細胞であり得る長寿命形質細胞を指す。これらの病原性長寿命形質細胞は、同様にそれらの生存ニッチにおいて保護され、免疫抑制、B細胞枯渇及び放射線照射に反応しない。それらの除去は、依然として重要な治療課題である。それらの長い寿命及び持続性の結果として、長寿命形質細胞は、病原性抗体を分泌し続けることにより自己免疫疾患における慢性炎症過程を支持する可能性があり、症状の再燃の一因となる可能性がある。
【0118】
したがって、「病原性長寿命形質細胞に関連する疾患」という用語は、限定されるものではないが、形質細胞腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、POEMS症候群/骨硬化性骨髄腫、I型及びII型クリオグロブリン血症、原発性アミロイド症(AL)、重鎖病、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)及び形質細胞白血病等の形質細胞に関連した癌性悪性腫瘍;関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性免疫性血小板減少症、シェーグレン症候群又は多発性硬化症等の自己抗体に関連した自己免疫疾患;並びに例えばアレルゲン特異的IgE抗体を産生するLLPCによるアレルギーを指す。当業者は、このカテゴリーに入る疾患を知っており、さらに長寿命形質細胞及びそれらの病原性を詮索するための確立された免疫学的方法を用いてこれらの疾患を決定することができる。
【0119】
本発明の好ましい実施形態によると、病原性長寿命形質細胞は、ラミニンβ1陽性間質細胞と相互作用する。ラミニンβ1陽性間質細胞は、例えば免疫蛍光による顕微分析においてラミニンβ1と共局在化する間質細胞として特定することができる間質細胞である。
【0120】
ラミニンβ1は、基底膜の主要な非コラーゲン性構成成分である細胞外基質糖タンパク質のラミニンタンパク質ファミリーの成員である。ラミニンは細胞接着、分化、移動、シグナル伝達及び転移を含む広範な過程に関連付けられている。ラミニンは、3つの異なる鎖:ラミニンα、β及びγ(以前はそれぞれA、B1及びB2)から構成される。各ラミニン鎖は、異なる遺伝子によってコードされる多ドメインタンパク質である。各鎖の幾つかのアイソフォームが記載されている。異なるα、β及びγ鎖の異性体を組み合わせることで、異なるヘテロ三量体ラミニンアイソフォームが生じる。例えば、α1-β1-γ1ヘテロ三量体はラミニン1である。β鎖アイソフォームであるラミニンβ1は、他のβ鎖異性体と共通する7つの構造的に異なるドメインを有する。ラミニンβ1は、基底膜を生じる殆どの組織において発現され、ラミニン1を構成する3つの鎖の1つである。細胞付着、走化性、及びラミニン受容体への結合に関与するβ1鎖の配列は特定されており、転移を阻害する能力を有することが示されている。
【0121】
「間質細胞」という用語は、組織の間質を構成する様々な細胞型を指す。間質は、結合及び構造的役割を有する組織又は器官の一部である。間質は、器官の特定の機能を果たさない全ての部分、例えば結合組織、血管、神経、管等からなる。他の部分である実質は、組織又は器官の機能を果たす細胞からなる。骨髄の間質は、骨髄の主要機能である造血に直接関与しない全ての組織である。骨髄の間質は、例えば造血に大きな影響を与えるコロニー刺激因子等の因子を生成することによって造血を促進する造血微小環境をもたらすことから、造血に間接的に関与する。骨髄間質に含まれる細胞型としては、限定されるものではないが、線維芽細胞(網様結合組織)、マクロファージ、脂肪細胞、骨芽細胞、破骨細胞、及び類洞を形成する内皮細胞、及び内皮幹細胞が挙げられる。
【0122】
多発性骨髄腫は、これらの細胞型の単一クローンの腫瘍性形質転換を特徴とする成熟形質細胞形態のB細胞悪性腫瘍である。これらの形質細胞はBM中で増殖し、隣接骨、場合によっては血液に侵入する可能性がある。多発性骨髄腫の異型としては、顕性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫及び髄外性形質細胞腫が挙げられる。
【0123】
病原性長寿命形質細胞に関連し得て、長寿命形質細胞に関連がある疾患に含まれる自己抗体に関連した自己免疫疾患は、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、家族性地中海熱、川崎病、結節性多発性動脈炎、皮膚型(cutaneous)結節性多発動脈炎、肝炎関連動脈炎、ベーチェット症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、ANCA-血管炎、チャーグ-ストラウス症候群、顕微鏡的多発性血管炎、結合組織疾患の脈管炎、ヘノッホ(Henoch)-シェーンライン紫斑病、クリオグロブリン血症性脈管炎、皮膚白血球破砕性血管炎、熱帯大動脈炎(Tropicalaortitis)、類肉腫症、コーガン症候群、ウィスコット-アルドリッチ症候群、癩腫の動脈炎、CNSの原発性血管炎、閉塞性血栓性血管炎、腫瘍随伴性動脈炎(arteritis)、蕁麻疹、デゴス病、骨髄異形成症候群、持久性(Erythema)隆起性紅斑、高免疫グロブリンD、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、歯周炎、リウマチ様関節炎、アテローム性動脈硬化症、アミロイドーシス、クローン病(MorbusChron)、潰瘍性大腸炎、自己免疫性筋炎、真性糖尿病、ギラン-バレー症候群、組織球症、骨関節炎、アトピー性皮膚炎、歯周炎、慢性副鼻腔炎、乾癬、乾癬性関節炎、顕微鏡的大腸炎、肺線維症、糸球体腎炎、ホイップル病、スティル病、結節性紅斑、耳炎、クリオグロブリン血症、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、好ましくは全身性エリテマトーデス(SLE)、再生不良性貧血、骨骨髄線維症、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、木村病、全身性硬化症、慢性大動脈周囲炎、慢性前立腺炎、特発性肺線維症、慢性肉芽腫症、特発性アカラシア、ブレオマイシン誘導肺炎症、シタラビン誘導肺炎症、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性リンパ球減少症、シャガス病、慢性自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性肝炎、橋本甲状腺炎、萎縮性(atrophic)甲状腺炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、自己免疫性アディソン症候群、尋常性天疱瘡、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、軽鎖沈着症、急性糸球体腎炎、天疱瘡及び類天疱瘡障害、並びに後天性表皮水疱症、落葉性天疱瘡、疱疹状皮膚炎、自己免疫性脱毛症、白斑症、抗リン脂質症候群、重症筋無力症、スティッフ-マン症候群、グッドパスチャー症候群、交感性眼炎、毛包炎、シャープ症候群(Sharp syndrome)及び/又はエバンス症候群、特に花粉症、歯周炎、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチから選択されることが好ましい。
【0124】
ループスとしても知られる全身性エリテマトーデス(SLE)は、身体の免疫系が身体の様々な部分の健常組織を攻撃する自己免疫疾患である。症状はヒトによって異なり、軽度から重度であり得る。一般的な症状としては、関節痛及び関節腫脹、発熱、胸痛、脱毛、口腔内潰瘍、リンパ節腫脹、疲労感、並びに最も一般的には顔面の赤い発疹が挙げられる。
【0125】
病原性長寿命形質細胞に関連する疾患は、B細胞非ホジキンリンパ腫、例えばバーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫も含み得る。
【0126】
本明細書で使用される場合、疾患の「治療」又は障害を患う被験体を「治療すること」は、障害の進行を遅らせる、止める又は逆転させることを意味するものとする。好ましい実施形態では、障害を患う被験体を治療することは、理想的には障害自体が解消されるまで障害の進行を逆転させることを意味する。本明細書で使用される場合、障害を改善すること及び障害を治療することは同等である。本発明の治療は、同様に又は代替的に本明細書に記載の活性物質
の予防投与に関していてもよい。かかる予防投与は、任意の所与の医学的障害の予防、又は該障害の発症の予防に関する場合があり、予防又は予防法は、いかなる場合にも完全な予防として狭く解釈してはならない。予防又は予防法は、好ましくは上記病態のリスクがある被験体における、被験体が任意の所与の医学的状態を発症するリスクの低下に関する場合もある。
【0127】
本発明の好ましい実施形態によると、治療は、抗B細胞療法、免疫抑制薬、抗腫瘍療法又は抗腫瘍化学療法と併せた上記ポリペプチドの併用投与を含む。
【0128】
「併用投与」は、上記抗B細胞療法、免疫抑制薬及び/又は抗腫瘍化学療法の前、その最中及び/又はその後の上記ポリペプチドの同時及び/又は連続投与に関し得る。併用治療は、治療のいずれかの治療構成要素の複数回投与を含む併用治療計画も含むものとする。併用投与の更なる実施形態を本明細書に提示する。
【0129】
併用投与は同時治療、併用治療(co-treatment)又は統合治療(joint treatment)を包含し、抗B細胞療法、免疫抑制薬又は抗腫瘍化学療法と併せた本発明のポリペプチド(polypeptide)の別個の配合物の投与を含み、治療は互いに数分以内、同じ時間、同じ日、同じ週若しくは同じ月、又は互いに3ヶ月以内に行われ得る。複合剤の任意の所与の組合せの連続投与も「併用投与」という用語に包含される。抗B細胞療法、免疫抑制薬及び/又は抗腫瘍化学療法と併せた上記ポリペプチドの1つ以上を含む複合薬も、様々な構成要素を単回投与又は投薬で同時投与するために用いることができる。
【0130】
本発明の抗腫瘍療法(又は抗癌療法)は、限定されるものではないが、外科手術、化学療法、放射線療法(radiotherapy, irradiation therapy)、ホルモン療法、標的療法、免疫療法、細胞療法及び免疫細胞療法を含む。
【0131】
「抗B細胞療法」という用語は、例えばB細胞媒介性疾患との関連でのB細胞又は病原性B細胞を対象とする治療アプローチ又は化合物を指す。当業者に既知のB細胞特異的療法、更には近年の進歩に関する当該分野における新たな展開は、当業者によってモニタリングされており、適切な抗B細胞療法を特定することができる。抗B細胞療法は、限定されるものではないが、抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブ及び抗CD19 CAR T細胞又はB細胞枯渇等のB細胞抗原を対象とする抗体及びモノクローナル抗体及び細胞治療剤を含む。
【0132】
本発明の文脈において、化学療法は、化学療法計画の一環としての1つ以上の抗癌薬(化学療法剤)を用いた癌治療のカテゴリーを指す。化学療法は、治癒目的で行われてもよく(殆どの場合、薬物の組合せを用いる)、又は延命するか若しくは症状を軽減させることが目的であってもよい(緩和的化学療法)。化学療法は、内科的腫瘍学(特に癌の薬物療法を専門とした医学的専門分野)の主要カテゴリーの1つである。化学療法剤は癌を治療するために使用され、数日~数週間にわたって2つ以上の作用物質を組み合わせた1回以上のサイクルの計画で投与される。かかる作用物質は、癌又は腫瘍細胞等の高い増殖速度を有する細胞に対して毒性である。
【0133】
化学療法剤は、限定されるものではないが、アクチノマイシン、All-transレチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンを含む。
【0134】
本発明の文脈における放射線療法(Irradiation or radiation therapy or radiotherapy)は、概して癌細胞又は腫瘍細胞等の悪性細胞を制御するか又は死滅させるための癌治療の一環としての電離又は紫外-可視(UV/Vis)放射線を用いた治療アプローチに関する。放射線療法は、身体の一領域に局在化する場合に多数のタイプの癌に治癒をもたらし得る。放射線療法は、原発性悪性腫瘍(例えば、早期乳癌)を除去するための外科手術後の腫瘍再発を予防する補助療法の一環として用いることもできる。放射線療法は化学療法と相乗作用を示し、感受性を有する癌の化学療法の前、その最中及びその後に用いることができる。放射線療法は、細胞成長を制御するその能力のために、一般に癌性腫瘍に適用される。電離放射線は、癌組織のDNAを損傷し、細胞死をもたらすことによって作用する。放射線療法は、全身的又は局所的に用いることができる。
【0135】
本発明の文脈において、免疫抑制薬は、身体の免疫系を抑制するか又はその強度を低下させる薬物群を指す。これらの薬物の幾つかは、身体が移植器官を拒絶する可能性を低くするために使用され、他の免疫抑制薬(immunosuppressant drugs)は、自己免疫障害を治療ためによく使用される。当業者は、適切な免疫抑制薬を特定することが可能である。免疫抑制薬は、限定されるものではないが、コルチコステロイド、例えばプレドニゾン(Deltasone、Orasone)、ブデソニド(Entocort EC)、プレドニゾロン(Millipred);カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン(Neoral、Sandimmune、SangCya)、タクロリムス(Astagraf XL、Envarsus XR、Prograf);mTOR阻害剤、例えばシロリムス(Rapamune)、エベロリムス(Afinitor、Zortress);IMDH阻害剤、例えばアザチオプリン(Azasan、Imuran)、レフルノミド(Arava)、ミコフェノール酸(CellCept、Myfortic);生物製剤、例えばアバタセプト(Orencia)、アダリムマブ(Humira)、アナキンラ(Kineret)、セルトリズマブ(Cimzia)、エタネルセプト(Enbrel)、ゴリムマブ(Simponi)、インフリキシマブ(Remicade)、イキセキズマブ(Taltz)、ナタリズマブ(Tysabri)、リツキシマブ(Rituxan)、セクキヌマブ(Cosentyx)、トシリズマブ(Actemra)、ウステキヌマブ(Stelara)、ベドリズマブ(Entyvio);モノクローナル抗体、例えばバシリキシマブ(Simulect)、ダクリズマブ(Zinbryta)、ムロモナブ(Orthoclone OKT3)を含む。
【0136】
本発明は、被験体のNTS感染の予防においてワクチンとして使用される突然変異非チフス性サルモネラ(NTS)細菌であって、本発明のポリペプチドを含むか又はそれからなるポリペプチドを発現しない、突然変異NTS細菌にも関する。
【0137】
本発明の文脈において、「突然変異」細菌は、「野生型」非修飾参照細菌と比較して遺伝子変化を有する細菌である。遺伝子変化又は突然変異は、遺伝物質の挿入及び欠失を含む。突然変異は、自然発生DNA損傷の誤りがちな(error-prone)複製バイパス(誤りがちな損傷乗り越え合成とも呼ばれる)、DNA修復時に導入されるエラー、又は突然変異原による誘導に起因する自発的なものであってもよい。また、突然変異は、遺伝子操作により意図的に導入することができる。
【0138】
遺伝物質の欠失は、染色体の一部又はDNAの配列が、例えばDNA複製時に又は遺伝子工学により失われる突然変異(遺伝子異常又は変化)である。単一塩基から数メガ塩基対又は染色体全体までの任意の数のヌクレオチドが欠失し得る。3の倍数の塩基数で生じない欠失は、遺伝子配列の3ヌクレオチドのタンパク質リーディングフレームを変更することによりフレームシフトを引き起こす可能性がある。
【0139】
本発明の文脈において、「SiiEコード遺伝子の欠失」は、NTS細菌によるタンパク質の発現が妨げられる、SiiEをコードするNTS細菌の遺伝物質全体又は遺伝物質の一部の欠失を指す場合がある。かかる欠失は、SiiE発現の欠失を引き起こすフレームシフト突然変異を生じる、小さな欠失又は更には塩基の挿入等のSiiEの発現を妨げる突然変異としても起こり得る。
【0140】
サルモネラ血清型は、チフス性及び非チフス性サルモネラの2つの主な群に分けることができる。
【0141】
非チフス性血清型は、侵襲性及び非侵襲性の非チフス性サルモネラを含む。非チフス性血清型は、より一般的であり、通常は自己限定性の消化器疾患を引き起こす。非チフス性血清型は、様々な動物に感染することができ、人畜共通性であり、ヒトと他の動物との間で伝達され得ることを意味する。
【0142】
サルモネラの非チフス性血清型(NTS)による感染は、概して食中毒を引き起こし、幼児及び低年齢小児がはるかに感染しやすい。この生物は通常、消化管を介して侵入するが、吸入も感染につながり得る。小腸に侵入した後、細菌は組織中で増殖し、大抵は腸炎等の消化器疾患を引き起こす。非チフス性サルモネラの約2000種の血清型が当業者に既知である。
【0143】
非チフス性サルモネラの侵襲性株は、アフリカ人の成人及び小児における血流感染の顕著な原因として出現し、関連致死率は20%~25%であり、ネズミチフス菌が含まれる。アフリカにおける侵襲性非チフス性サルモネラ病の臨床所見は、多様である。発熱、肝脾腫大症及び呼吸器症状が一般的であり、腸炎の特徴は見られないことが多い。侵襲性の非チフス性サルモネラ病(iNTS)の殆どの症例は、ネズミチフス菌(S. typhimurium)又は腸炎菌(S. enteritidis)によって引き起こされる。新種のネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)(ST313)がアフリカ大陸の南東部において75年前に出現した。最も重要な危険因子は、成人ではHIV感染、小児ではマラリア、HIV及び栄養失調である。
【0144】
サルモネラのチフス性血清型は、腸チフスを引き起こし、ヒト又は高等霊長類に厳密に適応し、チフス菌、パラチフスA菌、パラチフスB菌及びパラチフスC菌を含む。疾患の全身型では、サルモネラは、腸のリンパ系を通って患者の血液に入り(チフス型)、様々な器官(肝臓、脾臓、腎臓)に運ばれ、二次病巣を形成する(敗血症型)。内毒素が初めに血管及び神経装置に対して作用し、透過性の上昇及び血管の緊張性の低下、熱調節の異常、並びに嘔吐及び下痢を引き起こす。疾患の重症型では、十分な液体及び電解質が失われることで、水-塩類代謝が乱され、循環血液量及び動脈圧が減少し、血液量減少性ショックが引き起こされる。敗血性ショックが起こる可能性もある。混合特性のショック(血液量減少性ショック及び敗血性ショックの両方の兆候を有する)が重度のサルモネラ症ではより一般的である。重症例では、低酸素症及び毒血症に起因する腎障害の結果として乏尿症及び高窒素血症が起こり得る。
【0145】
本発明の文脈における「ワクチン」という用語は、癌等の特定の疾患、細菌又はウイルス等の病原体又は感染因子に対して能動的獲得免疫をもたらす生物学的製剤に関する。ワクチンは、疾患の原因となる微生物に似ているか又はそれに由来する作用物質又は抗原を含有し得る。ワクチンは、弱毒化した(weakened, attenuated)、突然変異させた又は死滅させた形態の病原体、その毒素、又はその表面タンパク質の1つから作製することができる。作用物質が身体の免疫系を刺激することで、作用物質が脅威として認識されて破壊され、免疫系が後に遭遇するワクチンの作用物質又は抗原を含む任意の病原体又は構造が認識及び破壊される。ワクチンは、予防的なものであっても(例えば、天然又は「野生」の病原体による将来の感染の影響を予防又は緩和するため)、又は特定の癌ワクチン等の治療的なものであってもよい。
【0146】
本発明においてワクチンとして使用されるNTS細菌の好ましい実施形態では、被験体はヒト、キジ目、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ又は齧歯類である。キジ目はシチメンチョウ、ライチョウ(grouse)、ニワトリ、新世界ウズラ及び旧世界ウズラ、ライチョウ(ptarmigan)、ヤマウズラ、キジ、ヤケイ及びホウカンチョウ科を含む重い体の地上採餌性の鳥類である。ウシ(Cattle, or cows)は、食肉(牛肉及び子牛肉)用に、牛乳及び他の乳製品のための乳畜として飼育される家畜である。「ブタ」という用語は、飼育ブタを指す。齧歯類は、上顎及び下顎の各々の一対の成長し続ける切歯を特徴とする哺乳動物である。既知の齧歯類としては、マウス、ラット、リス、プレーリードッグ、ヤマアラシ、ビーバー、モルモット、ハムスター、アレチネズミ及びカピバラが挙げられる。
【0147】
図面
本発明を添付の図面によって更に説明する。これらは、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本明細書に記載される本発明の更なる説明のために提示される本発明の態様の好ましい実施形態を示す。
【0148】
図面の詳細な説明:
図1。サルモネラは、脾臓及び肝臓中で増加する。C57BL/6マウスに10
4CFUの弱毒化サルモネラをi.p.感染させ、指定の日に屠殺した。脾臓及び肝臓中のサルモネラを計数した。データは、2回の独立実験を代表するものである。n=3~6。
【0149】
図2。サルモネラの腹腔内感染によるBM IgG分泌形質細胞の数値的減少。(A)サルモネラは、BM中のIgG分泌細胞の数を減少させる。C57BL/6マウスに10
4 CFUの弱毒化サルモネラを腹腔内(i.p.)感染させ、感染の4日後に屠殺した。サルモネラ感染(Inf)又は非感染(Uninf)マウスの脾臓及び大腿骨の細胞を、IgM分泌細胞又はIgG分泌細胞についてELISpotアッセイによって分析した。写真は、感染又は非感染マウスのBM中のIgG分泌細胞からのELISpotデータを示す。n=10。(B)サルモネラは、BM中のBlimp-1+IgM-細胞の数を減少させる。Blimpgfpマウスに10
4CFUの弱毒化サルモネラをi.p.感染させ、感染の4日後に屠殺した。BM細胞を、フローサイトメトリーによってBlimp-1+CD138+B220-IgM-IgA-細胞におけるIgA及びBlimp-1の発現について分析した。パーセンテージは、全生細胞中のBlimp-1+CD138+B220-IgM-細胞の頻度を示す。n=4。(C)サルモネラは、BM中の細胞内(ic)IgG+形質細胞を数値的に減少させる。C57BL/6マウスに10
4 CFUの弱毒化サルモネラをi.p.感染させ、感染の4日後に屠殺した。BM細胞を、フローサイトメトリーによってB220-CD138+細胞における細胞内IgGの発現について分析した。n=6。(D)サルモネラは、血清中のIgG価を低下させる。感染の7日後のサルモネラ感染及び非感染マウスの血清を、全IgM価及び全IgG価についてELISAによって分析した。n=4。データは、少なくとも2回の独立実験を代表するものである。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、n.s.有意ではない。
【0150】
図3。野生型サルモネラは、BM IgG分泌形質細胞を減少させる。マウスにサルモネラ野生型株を感染させ、5日目にIgG分泌形質細胞についてELISpotアッセイによって分析した。n=6又は7。データは、2回の独立実験を代表するものである。
***p<0.001。
【0151】
図4。サルモネラの経口感染によるBM IgG分泌形質細胞の数値的減少。C57BL/6マウスに10
7 CFUの弱毒化サルモネラを経口感染させ、7日目に分析した。感染又は非感染マウスの脾臓、大腿骨及び粘膜固有層(lamina propria)に由来する細胞を、IgM分泌細胞又はIgG分泌細胞及びIgA分泌細胞についてELISpotアッセイによって分析した。n=7。データは、2回の独立実験を代表するものである。
*p<0.05。
【0152】
図5。BM IgG分泌形質細胞の数を減少させる微生物構成要素の特定。(A)サルモネラは、脾臓及び肝臓中に定着するが、BM中には定着しない。感染の4日後のサルモネラ感染マウスの脾臓、肝臓及びBM中のサルモネラのCFUを計数した。点線は検出限界を表す。n=3~6。(B)サルモネラ特異的微生物構成要素は、BM IgG分泌形質細胞の数を減少させる。C57BL/6マウスに200 μlのLB培地、フラジェリン欠損弱毒化サルモネラ又は大腸菌(Escherichia coli)(ΔLonΔFlhD)に由来する未処理の又はLPSを枯渇させた培養上清を与え、翌日(24時間後)にIgG分泌細胞についてELISpotアッセイによって分析した。n=8。(C)弱毒化サルモネラに由来する上清は、BM中の抗原特異的IgG分泌形質細胞の数を減少させる。C57BL/6マウスを100 μgのNP-CGG/IFAでi.p.プライムし(0日目)、プライミングの4週間後に50 μgのNP-CGGでブーストした(28日目)。41日目に、マウスに200 μlのLB、及びフラジェリン欠損弱毒化サルモネラに由来するLPS枯渇上清をi.p.感染させ、翌日にIgG分泌細胞について分析した。n=6。(D)SiiE欠損弱毒化サルモネラに由来する上清は、BM IgG分泌形質細胞数を減少させことができない。C57BL/6マウスに200 μlのLB培地、及び弱毒化サルモネラΔLon又はΔLonΔSiiEに由来するLPS枯渇上清をi.p.で与え、翌日にIgG分泌細胞についてELISpotアッセイによって分析した。n=5。(E)SiiEタンパク質のN末端に由来する40アミノ酸ペプチドは、BM IgG分泌形質細胞の数を減少させる。C57BL/6マウスにSiiEアミノ酸129~168をコードする100 μgのペプチドをi.p.で与え、翌日にBM及び脾臓中のIgG分泌細胞及びIgM分泌細胞について分析した。n=5。(F)SiiEフラグメントは、脾臓ではなくBM中のIgG分泌形質細胞に結合する。C57BL/6マウスに由来するBM又は脾臓細胞を、30 μg/mlのGST-SiiE 97-170又はGSTタンパク質と共にインキュベートし、抗GST抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。n=3。(G)SiiEフラグメントは、in vitroでラミニンへのBM IgG分泌形質細胞の接着を阻害する。C57BL/6マウスのBMに由来する、選別したCD138+B220-IgM-IgA-細胞をGST-SiiE 97-170又はGSTタンパク質で処理し、ラミニンコーティングプレートと共にインキュベートした。洗浄後に接着細胞を計数した。データは、少なくとも2回の独立実験を代表するものである。
*p<0.05、
***p<0.001。
【0153】
図6。SiiEは、ラミニンβ1の保存配列と高い相同性を有する。
【0154】
図7。サルモネラ感染マウスの脾臓におけるサルモネラ及びSiiEの分布。サルモネラΔLon又はΔLonΔSiiEを感染させたC57BL/6マウスに由来する脾臓凍結切片を、サルモネラ及びSiiEタンパク質について染色した。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【0155】
図8。BM IgG分泌形質細胞は、ラミニンβ1+CXCL12発現間質細胞において存続する。(A)BM中のCXCL12+間質細胞上のラミニンβ1の分布。CXCL12/GFPノックインマウスに由来するBM凍結切片をラミニンβ1について染色した。(B)IgM分泌形質細胞ではなくIgG分泌形質細胞がラミニンβ1と接触する。Blimpgfpマウスに由来するBM凍結切片を、ラミニンβ1及びIgG又はIgMについて染色した。棒グラフは、全Ig+形質細胞中のラミニンβ1結合Ig+形質細胞のパーセンテージを示す。n=80~100(3匹のマウス)。(C)IgG+細胞は、BM中のラミニンβ1+CXCL12+間質細胞と接触する。CXCL12/GFPノックインマウスに由来するBM凍結切片をラミニンβ1及びIgGについて染色した。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【0156】
図9。脾臓形質細胞は、ラミニンβ1と接触しない。Blimpgfpマウスに由来する脾臓凍結切片を、ラミニンβ1及びIgG又はIgMについて染色した。棒グラフは、全Ig+形質細胞中のラミニンβ1結合Ig+形質細胞のパーセンテージを示す。n=50。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【0157】
図10。形質細胞上のラミニンの潜在的受容体。Blimpgfpマウスに由来するBM及び脾臓細胞を、Blimp-1+CD138+B220-IgM-又はIgM+形質細胞上の各ラミニン受容体の発現について分析した。アイソタイプ対照による染色を灰色で示す。n=3。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【0158】
図11。ネズミチフス菌株ΔLon及びΔLonΔSiiEの微生物学的特徴。(A)株ΔLon(丸)及びΔLonΔSiiE(四角)の成長曲線。(B)株ΔLon(レーン1)及びΔLonΔSiiE(レーン2)から調製した培養上清中の分泌タンパク質のSDS-12.5%PAGEパターン。レーンMは低分子質量標準を含有する。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【0159】
図12。SiiEの喪失は、サルモネラに対する液性免疫応答を増強する。(A)SiiE欠損弱毒化サルモネラは、通常は脾臓中で増加する。C57BL/6マウスに10
4 CFUのSiiE欠損(ΔLonΔSiiE)又はSiiE豊富(ΔLon)弱毒化サルモネラをi.p.感染させ、4日後に脾臓及びBM中のサルモネラのCFUについて分析した。点線は検出限界を表す。n=6。(B)SiiE欠損サルモネラは、抗サルモネラ抗体の供給を増強する。C57BL/6マウスに10
4CFUの弱毒化サルモネラΔLonΔSiiE又はΔLonをi.p.感染させ、感染の7日後、14日後、21日後及び42日後に採血し、抗サルモネラIgGについてELISAによって分析した。n=6。(C)SiiE欠損弱毒化サルモネラのワクチン接種は、致死用量のサルモネラを効率的に防ぐ。C57BL/6マウスに10
4 CFUの弱毒化サルモネラΔLonΔSiiE又はΔLonをi.p.ワクチン接種し、ワクチン接種の21日後に10
3 CFUの野生型サルモネラでi.p.チャレンジした。28日目に、感染マウスの脾臓中のサルモネラの数を計数した。n=5。データは、少なくとも2回の独立実験を代表するものである。
**p<0.01、
***p<0.001。
【0160】
図13。サルモネラは、CXCL12とは独立してBM IgG分泌形質細胞の数を減少させる。C57BL/6マウスに10
4CFUの弱毒化サルモネラをi.p.感染させ、感染の4日後に屠殺した。BM(A)、脾臓(B)及び血液(C)中の細胞をB220、IgM及びIgDに対する抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。n=4~6。(D~F)サルモネラは、BM中のCXCL12の発現を減少させる。CXCL12/GFPノックインマウスに10
4 CFUの弱毒化サルモネラをi.p.感染させ、4日目にCXCL12の発現について組織学(D)、定量的RT-PCR(E、全BM)、及びCXCL12+CD45-Ter119-PECAM-1-PI-細胞としてのフローサイトメトリー(F)によって分析した。n=3。(G)サルモネラは、細胞内IgG+形質細胞上のCXCR4の発現に影響を及ぼさない。4日目の感染又は非感染マウスのIgG+形質細胞上のCXCR4の平均蛍光強度(MFI)を示す。n=3。(H及びI)AMD3100は、BM中のIgG分泌形質細胞ではなくB細胞を数値的に減少させる。C57BL/6マウスに5 μgのAMD3100を4日間にわたって1日2回i.p.注射した。B220+細胞及びIgG分泌形質細胞を、4日目にフローサイトメトリー(H)及びELISpotアッセイ(I)のそれぞれによって分析した。n=5又は6。データは、少なくとも2回の独立実験を代表するものである。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【0161】
図14。サルモネラは、形質細胞に対する接着分子及び生存因子の発現に影響を及ぼさない。C57BL/6マウスに10
4個の弱毒化サルモネラをi.p.感染させ、4日目にVCAM-1及びフィブロネクチンの分布については組織学的分析(A)、BM細胞内IgG+形質細胞上のインテグリンα4、CD44及びBCMAの発現についてはフローサイトメトリー(B~D)、全BM中のAPRIL及びガレクチン-1の発現については定量的RT-PCR(E及びF)によって分析した。n=3。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【0162】
図15。SiiEタンパク質のN末端に由来する40アミノ酸ペプチドは、BM中の抗DNA IgG分泌形質細胞の数を減少させる。NZB/W F1雌性マウス(5月齢~6月齢)に、SiiEアミノ酸129~168をコードする100 μgのペプチドをi.p.で与え、0日目、3日目、7日目及び10日目、並びに11日目にBM中の抗DNA IgG分泌細胞についてELISpotアッセイによって分析した。n=5又は6。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【実施例】
【0163】
本発明を以下の実施例によって更に説明する。これらは、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本明細書に記載される本発明の更なる説明のために提示される本発明の態様の好ましい実施形態を示す。
【0164】
実施例で用いた方法
マウス
C57BL/6マウスはCharles Riverから購入した。CXCL12/GFPノックインマウス(Ara et al., 2003)は、長澤丘司博士の厚意により提供された。Blimpgfpマウス(Kallies et al.、2004)は、Stephen L. Nutt博士により惜しみなく供給された。全てのマウスをSPF(specific pathogen free:特定病原体除去)条件下で飼育し、6週齢~16週齢で用いた。全てのマウス実験をドイツの動物保護法に従い、地方獣医局の許可を得て、動物実験委員会のガイドラインに準拠して行った。
【0165】
細菌株及び成長条件
本研究に使用した全てのサルモネラ株は、ネズミチフス菌χ3306の誘導株であった。細菌をLBブロス(1%Bactoトリプトン(Difco)、0.5%Bacto酵母エキス(Difco)、1%塩化ナトリウム、pH7.4)及びLB寒天中で成長させた。必要に応じて、培地にクロラムフェニコール(20 μg/ml)、カナマイシン(25 μg/ml)及び/又はナリジクス酸(25 μg/ml)を添加した。本研究に使用した細菌株を表Aに詳述する。感染マウスの器官内の生菌の数は、ホモジネートの10倍段階希釈物をLB寒天プレート上にプレーティングすることによって決定した。コロニーを18時間~24時間後に日常的に計数した。
【0166】
表A. 本研究に使用した細菌株
【表A】
株
関連特性
a
参照
大腸菌
MC4100のlon146::miniTn10
本発明者らのコレクション
ネズミチフス菌
毒性株、gyrA、WT
χ3306のΔlon::Cm、ΔLon
χ3306のflhD::Tn10
CS2609のΔlon::Cm、ΔLonΔFlhD
本研究
χ3306のΔsiiE::Km
χ3306のΔsiiE::FRT、ΔSiiE
CS10049のΔlon::Cm、ΔLonΔSiiE
aCm、クロラムフェニコール耐性;Km、カナマイシン耐性
【0167】
ELISpotアッセイ及びELISA
Ig分泌細胞を計数するために、PVDFメンブレンを備えるMultiScreenフィルタープレート(Merck)を35%エタノールで1分間活性化し、続いて洗浄を行い、7.2 μg/mlのヤギ抗マウスIgのF(ab')2フラグメント(Jackson ImmunoResearch)により4℃で一晩コーティングした。洗浄し、RPMI1640/10%FCSでブロッキングした後、希釈した新鮮細胞を添加し、37℃で5時間インキュベートした。インキュベーション後に、アルカリホスファターゼコンジュゲート抗IgG、IgG1、IgM又はIgA(Southern Biotech)を37℃で1時間添加し、スポットをBCIP/NBTPlus基質(Mabtech)で可視化し、ELISpotリーダー(AID)によって計数した。全抗体及び抗サルモネラ抗体を測定するために、血清サンプルを、超音波処理及び濾過したサルモネラ(10 μg/ml)又はヤギ抗マウスIgのF(ab')2フラグメントでコーティングしたプレートにおいてインキュベートした。抗体のアイソタイプを、マウスIgG及びIgMに対するアルカリホスファターゼコンジュゲート抗体、並びにpNPP基質(Sigma)を用いて決定し、SpectraMax i3x(Molecular Devices)によって測定した。
【0168】
フローサイトメトリー
単細胞懸濁液を個々のマウスの脾臓、大腿骨、小腸及び血液から調製した。細胞の生存性をトリパンブルー色素排除法によって評定した。血球をチュルク液(Merck)によって計数した。血液中の白血球の絶対数を、全血液量が体重の7.5%であるという仮定に基づいて計数した。BM細胞の総数を、1本の大腿骨から得られる細胞数が全BM集団の6.3%に相当すると仮定して算出した。細胞染色については、細胞をB220(RA3-6B2)、IgD(11.26c)、CD138(REA104)、CD44(IM7)、インテグリンα1(REA493)、α6(GoH3)、α7(3C12)(Miltenyi Biotec)、IgM(AF6-78)、インテグリンα2(HMa2)、αV(RMV-7)(BioLegend)、α3(ヤギポリクローナル)、BCMA(161616)(R&Dsystems)、インテグリンα4(PS2、Abcam)、CXCR4(2B11、eBioscience)、IgA(ヤギポリクローナル抗IgA;IgM吸収及びIgG吸収、Southern Biotech)及び67-LR/RPSA(MLuC5、Santa Cruz Biotechnology)に対する抗体により4℃で20分間染色した。死細胞を排除するために、細胞を1 μg/mlヨウ化プロピジウム(Sigma)で染色した。細胞内染色については、細胞表面染色後に細胞を2%ホルムアルデヒド(Sigma)で15分間固定し、0.5%サポニン(Sigma)の存在下でヤギポリクローナル抗IgG Fcフラグメント(F(ab')2フラグメント、Jackson ImmunoResearch)により染色した。IgG分泌形質細胞へのSiiEフラグメントの結合を試験するために、BM又は脾臓細胞を、10%FCS及び1mM MnCl2を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中でGST-SiiE97-170又はGSTタンパク質と共に氷上で30分間インキュベートし、GST(B-14、Santa CruzBiotechnology)、CD138、IgM、IgA及びB220に対する抗体により氷上で20分間染色し、フローサイトメトリーによって分析した。IgM分泌形質細胞及びIgA分泌形質細胞は、表面Igを発現する(Kamata et al.,2000;非特許文献12)。ELISpotアッセイによって測定した場合に、選別したIgM-IgA-CD138+B220-形質細胞の95%超がIgG分泌細胞であった(データは示さない)。染色したサンプルをBD FACS CantoII又はLSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)によって測定し、FlowJoソフトウェア(Flowjo, LLC)によって分析した。
【0169】
免疫蛍光染色及び共焦点顕微鏡法
免疫蛍光染色については、以前に記載されているように(Tokoyoda et al.,2009)、サンプルを4%パラホルムアルデヒド中で固定し、30%スクロース(Sigma)中で平衡化した。成体大腿骨の凍結切片は、川本法(Kawamoto'sfilm method)(Kawamoto and Kawamoto, 2014)によって作製し、PBS中の5%FCSで30分間ブロッキングし、ラミニンβ1(LT3、1:100、Dianova)、VCAM-1(429、1:10、Miltenyi Biotec)、フィブロネクチン(ウサギポリクローナル、1:700、Sigma)、IgG Fcフラグメント(F(ab')2フラグメント、1:400、JacksonImmunoResearch)及びIgM(II/41、1:100、eBioscience)に対する抗体で2時間にわたって染色し、蛍光封入剤(DakoCytomation)を用いてマウントした。アフィニティー精製ウサギポリクローナル抗SiiE抗体は、GenScriptによって生成された。二次抗体として、Cy3標識抗ラットIgG(1:600、Jackson ImmunoResearch)、AlexaFluor 546標識ストレプトアビジン又は抗ウサギIgG(1:2000又は1:600、LifeTechnologies)を使用した。全ての組織学的分析を、共焦点レーザー顕微鏡(LSM710、Carl Zeiss)を用いて行った。
【0170】
RNA調製及び定量的RT-PCR分析
全RNAを、Trizol試薬(Life Technologies)を用いて単離した。相補的DNAを、オリゴ(dT)プライマー及びHigh Capacity RNA-to-cDNA Kit(AppliedBiosystems)を用いて合成した。定量的RT-PCR分析については、以下のプライマーを使用した:cxcl12 fwd AAACCAGTCAGCCTGAGCTACC(配列番号14)、rev GGCTCTGGCGATGTGGC(配列番号15);april fwd CTGGAGGCCCAGGGAGACAT(配列番号16)、rev GCACGGTCAGGATCAGAAGG(配列番号17);lgals1 fwd ATCCTCGCTTCAATGCCCATGG(配列番号18)、rev GGTGATGCACACCTCTGTGATG(配列番号19);hprt fwd TCCTCCTCAGACCGCTTTT(配列番号20)、rev CATAACCTGGTTCATCATCGC(配列番号21)。
【0171】
サルモネラ突然変異株の構築
株CS10044(ΔsiiE::Km)を、基本的にDatsenko and Wannerによって記載されるように、λRed及びフリッパーゼ(FLP)媒介組換えに従って構築した(Datsenko and Wanner, 2000)。遺伝子置換を構築するために使用されるPCR産物は、鋳型プラスミドpKD4、並びにsiiE-P1-F(TTACCACGCCGCGTGGTTCAGTGATCATTGTCAATGGCGCTCGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC)(配列番号22)及びsiiE-P2-R(GTGCTGTCCAGCACGATAGTCGGTTCTGACAGTAGGGTATCGCATATGAATATCCTCCTTAG)(配列番号23)のプライマーセットを用いて生成した。生成した1.4 kbpのフラグメントを精製した後、形質転換によってλRedリコンビナーゼをコードするpKD46を有する株χ3306に導入した。siiE遺伝子座へのKm耐性遺伝子の挿入を、siiE-check-F(TAATGCCAAAGGCGCAAAAG)(配列番号24)及びsiiE-check-R(TACGTTGGTCAGGTGATCGC)(配列番号25)のプライマーセットを用いた染色体DNAのPCR増幅並びにDNAシークエンシングによって検証した。CS10049(ΔsiiE::FRT)を構築するために、FLPリコンビナーゼをコードするpCP20を形質転換によってCS10044に導入した。siiEへのFRT挿入をPCRによって確認した。
【0172】
CS3186(ΔLonΔFlhD)及びCS10063(ΔLonΔSiiE)を構築するために、バクテリオファージP22をCS2022上で増殖させ、得られた溶解物をCS2609及びCS10049のそれぞれの感染に用いた。形質導入体をクロラムフェニコール耐性について選択した。
【0173】
GSTタグ付き融合SiiE 97-170タンパク質の精製
グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)のC末端に融合したSiiE 97-170タンパク質の精製のためのプラスミドpTKY1271を、GST-SiiE97-BamHI-F(5'-CTGGGATCCTCTGCTCAGGTAGAAAAGAAAGG-3')(配列番号26)及びGST-SiiE170-SalI-R(5'-CTCGAGTCGACTTACAAAAAGTTCTGCAGCATTTC-3')(配列番号27)プライマーを用いたコロニーPCR(colonydirect PCR)によってχ3306の染色体から増幅させた。生成したフラグメントを5'末端ではBamHI、3'末端ではSalIによって切断し、ベクターpGEX-6P-1にクローニングした。
【0174】
大腸菌DH5αZ1をプラスミドpTKY1271で形質転換し、形質転換体を、0.5%グルコース及び50 μg/mlアンピシリンを含有する3 lのLブロス中、37℃で0.5のOD600まで成長させた後、IPTGを1 mMまで添加してGSTタグ付き融合SiiE 97-170の発現を誘導した。37℃で3時間のインキュベーション後に、細胞をペレット化し、50 μg/ml DNaseI(Sigma-Aldrich)を含有するB-PER(商標)(PBS)細菌タンパク質抽出試薬(ThermoFisher)に再懸濁した。細胞を氷上で30分間溶解させ、8000×gにて4℃で30分間遠心分離した。上清をMagneGSTグルタチオン粒子(Promega)に添加し、PBSで平衡化し、穏やかに混合しながら4℃で2時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、融合タンパク質を溶出バッファー(50 mM Tris-HCl(pH8.1)、50 mMグルタチオン(glutathione))で溶出させた。GSTタグ付き融合SiiE 97-170タンパク質を精製する(purify)ために、この画分にPBSによりゲルクロマトグラフィー(Superose6 10/300;GE Healthcare)を行った。ピーク画分をCentriprep YM-10(Millipore)で濃縮した後、精製GSTタグ付き融合SiiE 97-170タンパク質として使用した。
【0175】
培養上清中のタンパク質の特性評価
CS3186細胞を6 lのLBブロス中、37℃で1.0のOD600まで成長させ、6000×gにて4℃で10分間の遠心分離によって取り出した。上清を、Express PLUSフィルターシステム(Millipore)を用いて濾過した後、硫酸アンモニウムを80%の最終濃度まで添加することによってタンパク質を沈殿させた。沈殿タンパク質を6000×gにて4℃で10分間の遠心分離によって採取し、10 mlの50 mM Tris-HCl(pH8.0)で溶解した。PD-10カラム(GE Healthcare)によって脱塩した後、タンパク質をRESOURSE Qカラム(1 ml、GEHealthcare)にロードし、バッファーA(20 mMTris-HCl(pH8.0)、10%グリセロール)中で平衡化し、0 M→1 MのNaClの直線勾配を含有するバッファーAで溶出させた。PBSで透析した後、形質細胞を数値的に減らす能力をC57BL/6マウスへの200 μlの各画分の接種によって評定した。この活性を有する画分中のタンパク質をTCA沈殿によって回収し、7.5%SDS-PAGEで分離した。クマシーブリリアントブルー染色によって可視化されたタンパク質を、nano LC-MS/MS(株式会社日本バイオサービス)によって分析した。
【0176】
in vitro細胞接着アッセイ
以前に記載されているように(Hanazawa et al.,2013)、96ウェルプレート(Greiner Bio-One)を、30 μg/mlのマウスラミニン(Sigma)を用いて4℃で一晩固定化し、乾燥させ、PBSで洗浄し、2%脂肪酸無含有ウシ血清アルブミンにより37℃で2時間ブロッキングした。C57BL/6マウスのBMに由来する1万個の選別したCD138+B220-IgM-IgA-細胞を、10%FCS及び1 mM MnCl2を含むIMDM中でGST-SiiE97-170又はGSTタンパク質と共に氷上で30分間インキュベートした後、更に1 ng/mlのホルボール12-ミリステート13-アセテートと共に37℃で1時間インキュベートした。自動マイクロプレートウォッシャー(吐出速度4、吸引速度4、Bio-Tek)により1 mM CaCl2及び0.5 mM MgCl2を含む予め温めたPBSで3回洗浄した後、接着細胞を、Cell-titerGlo試薬(Promega)及びルミノメーター(SpectraMax、Molecular Devices)を用いて生細胞として測定した。
【0177】
統計分析
全ての統計分析を、両側スチューデントt検定を用いて行った。
【0178】
ネズミチフス菌の成長曲線
株CS2022(ΔLon、丸)及びCS10063(ΔLonΔSiiE、四角)の細菌細胞を37℃で一晩成長させ、新鮮培地で100倍希釈した。指定の時点で、培養物のアリコートをPBSで希釈し、LB寒天上にプレートアウトし(plated out)、細菌数を決定した。
【0179】
分泌タンパク質のTCA沈殿
細菌細胞を10 mlのLBブロス中、37℃で1.0のOD600まで成長させ、6000×gにて4℃で10分間の遠心分離によって取り出した。上清を、Minisart High Flowシリンジフィルター(Sartrius)を用いて濾過した後、予め冷却したトリクロロ酢酸(TCA;最終濃度10%)と混合し、氷上で20分間冷却し、6000×gにて4℃で10分間遠心分離した。ペレットをアセトンで1回洗浄し、100 μlのLaemmliのSDSサンプルバッファーに懸濁した。タンパク質をSDS-12.5%PAGEによって検出した後、クマシーブリリアントブルーで染色した。
【0180】
実施例の結果
結果の概要
主に骨髄(BM)中のIgG分泌形質細胞から生成する血清IgGは、身体を様々な病原体から保護する。サルモネラがIgG分泌形質細胞の数を特異的に減少させるが、BM中のIgM分泌細胞を減少させず、その結果として血清中のIgG価を低下させる一方で、サルモネラがBM中で検出されないことが本明細書で示される。クロマトグラフィー及び質量分析を用いて、サルモネラから分泌され、BM中のIgG分泌形質細胞の数を特異的に減少させるSiiEタンパク質を特定した。この減少はリポ多糖(LPS)、フラジェリン又は還元型CXCL12ではなく、サルモネラタンパク質SiiEによって引き起こされた。SiiE欠損サルモネラは、BM IgG分泌形質細胞の数を減少させることができず、感染マウスにおけるサルモネラ特異的IgGの産生を強く誘導した。マウスラミニンβ1に対して相同性を有するSiiEタンパク質のN末端ドメインに由来する40アミノ酸長ペプチドもBM中のIgG分泌形質細胞の数を減少させ、SiiEが形質細胞とラミニンβ1との相互作用を阻害することが示唆された。組織学的分析から、ラミニンβ1がIgM分泌形質細胞ではなくIgG分泌形質細胞に特異的に結合することが明らかになった。本発明者らの研究から、ラミニンβ1がBM中のIgG分泌形質細胞の固有の生存ニッチの構成要素であることが実証される。サルモネラがSiiEを分泌し、液性免疫から逃れるための戦略としてBM中のIgG分泌形質細胞の保持を阻害することが示唆される。応用の点では、SiiE欠損サルモネラが有望なワクチン候補であり、SiiE由来の構成要素がBM中の病原性記憶形質細胞を枯渇させることによる自己免疫疾患及び多発性骨髄腫の治療に用いられ得る。
【0181】
実施例1:サルモネラは、BM中のIgG分泌形質細胞の数を特異的に減少させる
サルモネラは液性免疫を回避し、体内で長期にわたって生き残ることができ、慢性感染性疾患を引き起こす。長期持続性には、サルモネラが抗体を含有する体液を介して短寿命マクロファージ間を移動し続ける必要がある。初めに、抗体の産生に対するサルモネラの影響を、弱毒化サルモネラ(Lon枯渇)の腹腔内感染によって模倣される慢性感染モデルを用いて調べた(Takaya at el., 2002、Kodamaet al., 2005)。C57BL/6マウスに10
4コロニー形成単位(CFU)の弱毒化サルモネラを腹腔内で与えた。感染サルモネラは、4日目~7日目に脾臓及び肝臓中で増加し、そこで観察期間の最後の20日目まで小さな集団として留まった(
図1)。4日目のサルモネラ増加のピーク時に、脾臓及びBM中のポリクローナル抗体分泌細胞をELISpotアッセイによって計数した。驚くべきことに、BM中のIgG分泌形質細胞の数は減少したが、BM IgM分泌細胞及び脾臓IgG分泌細胞の数は影響を受けなかった(
図2A)。脾臓IgM分泌形質細胞の数は、おそらくは一般的な細菌刺激物質、例えばLPSのために僅かに増加した。さらに、主にIgG+形質細胞を含むBlimp-1+CD138+IgM-IgA-B220-細胞の数、及びBM中の細胞内IgG+CD138+B220-細胞の数も有意に減少した(
図2B及び
図2C)。BM IgG分泌細胞の数の減少は、野生型サルモネラによる感染後も観察された(
図3)。血清IgGの主な供給源であるBMIgG分泌形質細胞の数値的減少は、血清中のIgG価に影響を及ぼし得る。感染の7日後に、血清中のIgM価ではなくポリクローナルIgG価が有意に低下した(
図2D)。BMIgG分泌形質細胞の特異的な数値的減少は、サルモネラによる自然感染の場合も示された。10
7 CFUの弱毒化サルモネラによる経口感染は、BM IgG分泌形質細胞の数を減少させたが、脾臓及び基底膜中の形質細胞数には影響を及ぼさなかった(
図4)。
【0182】
実施例2:サルモネラタンパク質SiiEは、BM IgG分泌形質細胞を減少させる
感染の4日後に、殆どのサルモネラを脾臓及び肝臓中で検出することができたが、BM中では検出することができず(
図5A)、脾臓及び肝臓中のサルモネラがBM中のIgG分泌形質細胞に、おそらくは分泌タンパク質によって遠くから影響を及ぼすことが示唆される。サルモネラの培養上清は、LPS及びフラジェリンのような自然免疫活性化の幾つかの誘導因子を含む。LPSをフラジェリン欠損弱毒化サルモネラの上清から取り出し、上清をC57BL/6マウスに注射した。フラジェリン欠損サルモネラに由来する非処理のLPS無含有上清は、BM IgG分泌形質細胞の数を同様に減少させた(
図5B)。この減少がサルモネラに特異的であるかを決定するために、フラジェリン及びLon欠損大腸菌に由来する上清を注射した。大腸菌は、BM IgG分泌形質細胞の数に影響を及ぼさなかった(
図5B)。(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)アセチルニワトリγグロブリン(NP-CGG)による免疫化によって生成したLPS/フラジェリン無含有上清もBM中の抗原特異的IgG分泌形質細胞及びポリクローナルIgG分泌形質細胞の数を減少させた(
図5C)。これらのデータから、LPS及びフラジェリンを欠いたサルモネラ上清がBM IgG分泌形質細胞に影響を与える構成要素を含有することが示唆される。
【0183】
上清中のタンパク質をイオン交換クロマトグラフィーによって分画し、各画分をin vivoでのBM IgG分泌形質細胞に対するその影響についてスクリーニングした。次いで、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及び質量分析により、最も可能性の高い活性構成要素としてタンパク質SiiEを特定した。SiiE欠損弱毒化サルモネラに由来する上清は、BM中のIgG分泌形質細胞の数を減少させることができなかった(
図5D)。SiiEは、5559アミノ酸の巨大タンパク質であり、N末端及びC末端の2つの異なる領域、並びにその間の53個の反復細菌Igドメインを有する(
図6;Barlag and Hensel, 2015)。SiiEは分泌され、腸管上皮細胞への接着に関与する(Gerlach et al., 2007)。サルモネラによって分泌され、脾臓中のサルモネラ上に位置するSiiEタンパク質を検出した(
図74)。BasicLocal Alignment Search Tool(BLAST、米国立医学図書館)を用いた検索によると、N末端領域の2つの配列がそれぞれマウスラミニンβ1及びミオシン7Aに対して高い相同性を有していた(スコア<0.01)。ミオシンは細胞内タンパク質であるため、ラミニンβ1に焦点を合わせ、SiiEがIgG分泌形質細胞との相互作用についてラミニンβ1と競合すると仮説を立てた(hypothesizing)。多くの種におけるラミニンβ1の保存配列に対して高い相同性を有する合成40アミノ酸ペプチドであるSiiE 129-168(
図6)も、BM IgG分泌形質細胞の数を著しく減少させた(
図5E)。さらに、SiiE 97-170フラグメントは、脾臓中ではなくBM中のIgG分泌形質細胞に結合することができ(
図5F)、in vitroでラミニンへのBM IgG分泌形質細胞の接着を阻害することができた(
図5G)。これらの結果から、サルモネラに由来する微生物構成要素SiiEが、ラミニンβ1と競合することによってBM IgG分泌形質細胞を調節することが示唆される。
【0184】
実施例3:ラミニンβ1+CXCL12+間質細胞は、BM IgG分泌形質細胞の生存ニッチを組織する
ラミニンβ1はBM IgG分泌形質細胞に結合するのだろうか。組織学的分析から、ラミニンβ1が骨髄内で遍在的に分布することが示された(
図8A、左)。CXCL12+間質細胞の約30%がラミニンβ1について共染色された。ラミニンβ1は、CXCL12+間質細胞の細胞表面及び細胞過程で分布する(
図8A、右)。ラミニンβ1がBM及び脾臓中のIgG+又はIgM+Blimp-1+形質細胞と相互作用するかを決定するために、Blimpgfpマウスの凍結切片をラミニンβ1及びIgG又はIgMについて染色した。BM IgG+Blimp-1+形質細胞の約90%がラミニンβ1に結合したが、より少ないIgM+Blimp-1+及び脾臓IgG+Blimp-1+形質細胞がラミニンβ1に付着した(
図8B及び
図9)。IgG+形質細胞の約90%がCXCL12発現細胞と接触することは以前に既に示した(非特許文献7、Zehentmeier et al., 2014)。実際に、殆どのIgG+細胞がラミニンβ1でコーティングしたCXCL12+細胞と接触した(
図8C)。これらの組織学的データから、BM IgG分泌形質細胞がラミニンβ1+CXCL12+間質ニッチ中に選択的に存在することが示唆される。IgG分泌形質細胞は、ラミニンβ1にどのように結合するのだろうか。ラミニンの潜在的受容体はインテグリンα1、α2、α3、α6、α7及びαV、並びに67kDラミニン受容体(RPSA)である(Gu et al., 1999、Belkin and Stepp, 2000)。BM及び脾臓中のIgM-及びIgM+Blimp-1+形質細胞上でのこれらの受容体の発現を比較した(
図10)。他の形質細胞よりも多くのBM IgM-Blimp-1+形質細胞がインテグリンα2を発現したが、殆どの受容体はIgM-及びIgM+形質細胞の両方で発現されるか又は発現されなかった。
【0185】
実施例4:SiiEの喪失は、抗サルモネラIgGの産生を増強する
上記に示したように、SiiE欠損突然変異体の培養上清が形質細胞数を減少させることができないことから、SiiEはBM IgG分泌形質細胞の存在を阻害する。このため、SiiE突然変異体が、SiiEを介してBM IgG分泌形質細胞に影響を与えないことから、サルモネラに対する抗体の産生を増強すると予想した。SiiE突然変異細菌を感染させたC57BL/6マウスをそれらの抗サルモネラIgG価について分析した。サルモネラのSiiEコンピテント株及びSiiE突然変異株は、in vitro(
図11A)及びin vivo(
図12A)で正常に増加し、どちらもタンパク質及びLPSをそれらの上清中に分泌した(
図11B;データは示さない)。しかしながら、SiiE欠損株は、SiiEコンピテント株と比較して有意により多くの抗サルモネラIgGを誘導した(
図12B)。突然変異株を予防ワクチンとして評価するために、SiiEコンピテント又は欠損サルモネラによってプライムしたマウスを致死用量の野生型サルモネラでチャレンジした。チャレンジの7日後に全ての未感作マウスが死んだが、ワクチン接種マウスの両方の群は生き残った。SiiE欠損サルモネラをワクチン接種したマウスは、SiiEコンピテントサルモネラをワクチン接種したマウスと比較して、脾臓における毒性サルモネラの増加を強く抑制した(
図12C)。これらのデータから、SiiE欠損サルモネラが潜在的ワクチンと特徴付けられる。
【0186】
実施例5:サルモネラによるIgG分泌形質細胞ではなくB細胞のCXCL12依存性の減少
細菌感染は、自然免疫系及び適応免疫系に影響を及ぼす。サルモネラは、感染の4日後にBM中のB細胞の数を減少させ、脾臓中のB細胞の数を増加した(
図13A及び
図13B)。血液中では、総B細胞数は影響を受けなかったが、CD43+IgM-IgD-B細胞は数値的に有意に増加した(
図13C;データは示さない)。BM中のCD43+IgM-IgD-B細胞前駆体の数が劇的に減少したことから(
図13A)、血液CD43+IgM-IgD-B細胞がBMから放出された可能性が最も高い。IgG分泌形質細胞の数は、サルモネラによる感染後に脾臓(
図2A)及び血液(データは示さない)中で増加しなかった。BM B細胞前駆体がCXCL12及びVCAM-1/フィブロネクチンによって保持されることから(Miyake et al., 1991、Nagasawa et al., 1996、Kawano et al., 2017)、CXCL12及びVCAM-1/フィブロネクチン及びそれらの受容体の発現を調べた。間質細胞上のVCAM-1/フィブロネクチン、及びIgG+形質細胞上のVCAM-1/フィブロネクチンの受容体であるインテグリンα4の発現は影響を受けなかったが(
図S8A及び
図S8B)、CXCL12の発現は、組織学的分析(
図6D)、定量的RT-PCR(
図13E)及びフローサイトメトリー(
図13F)によって示されるように大幅に低下した。BM IgG+形質細胞上のCXCL12の受容体であるCXCR4の発現は、サルモネラによる感染によって変化しなかった(
図13G)。サルモネラによるCXCL12の喪失がBM中のIgG分泌形質細胞数の減少に影響を及ぼすかを決定するために、BM IgG分泌形質細胞の持続性におけるCXCL12/CXCR4アンタゴニストの効果を調べた。アンタゴニストの初回注射の4日後に、BM中のIgG分泌形質細胞の数は影響を受けなかったが、BM中のB細胞数は減少した(
図13H及び
図13I)。サルモネラは、BM形質細胞の接着及び生存に関与する他の分子であるCD44、BCMA、APRIL及びガレクチン-1に影響を及ぼさなかった(
図14C~
図14F)。IgG分泌形質細胞の数の減少が、CXCL12の下方調節ではなくサルモネラに由来するSiiEによって引き起こされると結論付けられる。
【0187】
実施例15:SiiE129ペプチドは、全身性エリテマトーデスのマウスモデルにおいて骨髄中のDNA特異的IgG分泌形質細胞の数を減少させる
NZB/W F1雌性マウス(5月齢~6月齢)にSiiEアミノ酸129~168をコードする100 μgのペプチドをi.p.で与え、0日目、3日目、7日目及び10日目、並びに11日目にBM中の抗DNA IgG分泌細胞についてELISpotアッセイによって分析した。データから、SiiE 129-168が骨髄中の抗DNA IgG分泌細胞の数を減少させることが示される(
図15)。
【0188】
論考
サルモネラが、血清IgGの主な供給源である、BM中のIgG分泌形質細胞の数をSiiE依存的に、CXCL12とは独立して特異的に減少させることを本明細書に示す。サルモネラをBM中で検出することができず、減少がサルモネラの培養上清によっても誘導されたことから、サルモネラの分泌構成要素が関与していると結論付ける。サルモネラタンパク質SiiEを関与する構成要素として特定した。マウスラミニンβ1に対して高い相同性を有するSiiEのペプチドは、BM IgG分泌形質細胞の数を減少させることができた。BMの組織学的分析から、IgM分泌形質細胞ではなくIgG分泌形質細胞がラミニンβ1に結合することが明らかになった。このため、ラミニンβ1+CXCL12+間質細胞が、サルモネラから得られる、BM中のIgG分泌形質細胞の生存ニッチの不可欠な部分である。
【0189】
BM IgG+形質細胞がCXCL12+間質ニッチ中に存在することは以前に示した(非特許文献7)。IgM分泌形質細胞の特性は依然として論争の的になっているが、これらはBM中に存在し、血清中の天然IgMの主な供給源である(非特許文献12)。Reynolds et al.は、IgG+形質細胞と比較してより少ないIgM+形質細胞が好酸球と接触することから、IgM分泌形質細胞及びIgG分泌形質細胞が固有のニッチに局在化すると提唱している。ここで本発明者らは、IgM分泌形質細胞及びIgG分泌形質細胞の生存ニッチ間の1つの本質的な違いであるラミニンβ1の存在を特定する。BM IgG分泌形質細胞の受容体及び細胞内シグナル伝達事象は謎のままであるが、BMIgM+Blimp-1+及び脾臓Blimp-1+形質細胞よりも多くのBM IgM-Blimp-1+形質細胞(IgG分泌形質細胞を含む)がインテグリンα2を発現する。
【0190】
形質細胞が、例えば放出又は死滅によってどのように消失するかについての疑問を提起した。脾臓及び血液中へのIgG分泌形質細胞の放出は、腹腔内感染の4日後に検出することができなかった。Slocombe et al.は、106CFUの弱毒化サルモネラによる静脈内感染の8日後及び16日後に、BM Ig+形質細胞が脾臓に移動した後、おそらくはBM中のCXCL12の発現の減少のために、BMに戻ることができなかったことを示している(Slocombe et al.,2013)。16日目までの長期的な減少から、形質細胞がサルモネラ特異的タンパク質SiiEによってそれらの生存ニッチから切り離され、生存因子の喪失により死滅することが示唆される。
【0191】
サルモネラはフィブロネクチン、VCAM-1及びAPRILではなくCXCL12の発現に影響を及ぼす。CXCL12は、CXCR4欠損胎児肝細胞が形質細胞を生成することができないことから、BM中の長寿命記憶形質細胞の形成に必要とされる(非特許文献6)。しかしながら、このことは、CXCL12が形成、すなわち移動及び/又は維持の際に必要とされる場合に論争の的になっていた。Hauser et al.は、新たに生成した形質細胞の移動能がブースト後8日目~12日目に失われることを示し、CXCL12がそれらの生存ニッチへの形質細胞の移動に必要とされ、それらの維持には必要とされないことを提唱した(Hauser et al., 2002)。CXCR4アンタゴニストがIgG分泌形質細胞ではなくB細胞の保持を阻害し得ることを本明細書に示す。本発明者らのデータにより、CXCL12 がBM中のIgG分泌形質細胞の保持及び維持に必要とされないという仮説が直接支持される。
【0192】
本発明者らのデータから、SiiEがIgG分泌形質細胞とBM中のラミニンβ1との相互作用を阻害することが示唆される。サルモネラは、これによりBM中のIgG分泌形質細胞の数を減少させることで液性免疫を調節する。ラミニンβ1は、粘膜上皮でも発現される。マウス及びウシでは、SiiEの喪失により、サルモネラによる腹腔内感染ではなくサルモネラによる自然経口感染の毒性が弱まった(Morgan et al., 2004、Kiss et al., 2007)。経口感染したサルモネラはSiiEを分泌し、腸内に侵入し、おそらくラミニンβ1及び上皮上のその受容体の相互作用を遮断する。腸内で存続する能力は、BM IgG分泌形質細胞を置換する副作用として用いることができる。サルモネラにおけるSiiEの増加は、動物及びヒト宿主における存在について利点をもたらし得る。
【0193】
サルモネラは、感染の4日後にBM中の全ての種類のIgG分泌形質細胞を特異的に減少させた。サルモネラを予め感染させたマウスでは、新たに侵入したサルモネラは、循環血液中の抗サルモネラIgGの主な供給源である長寿命抗サルモネラIgG分泌形質細胞を減少させる場合がある。液性免疫記憶の枯渇は、新たなサルモネラを宿主内に広げる可能性がある。サルモネラによる感染は、液性免疫反応を誘導する(
図5B、非特許文献20;Di Niroet al., 2015)。しかしながら、サルモネラが液性免疫記憶に影響を及ぼすかは不明のままである。サルモネラが免疫反応を誘導し、SiiE依存的に免疫記憶を損なうことを本明細書に示す。これらのデータから、サルモネラが液性免疫を回避し、記憶形質細胞を枯渇させ、更には記憶形質細胞の生成を阻害することが示唆される。
【0194】
ヒトに限られ、重篤な、しばしば致命的な腸チフスを引き起こすチフス菌による感染は弱毒化株、例えばTy21aのワクチン接種によって予防することができる(非特許文献19)。対照的に、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、齧歯類及びキジ目において重度の食中毒を引き起こすネズミチフス菌に対するワクチン接種は、未だ利用可能でない。ネズミチフス菌を含むこれらの侵襲性の非チフス性サルモネラ(iNTS)によって引き起こされる疾患は、20%~25%と致死率がチフス菌による感染よりも高いにも関わらず軽視されている(非特許文献20)。チフス菌のSiiE遺伝子は、2つの異なるORFとして報告されており(9852bp及び6771 bp、ネズミチフス菌は16680 bpを有する)、偽遺伝子であることが示唆される(Main-Hester et al., 2008)。さらに、チフス菌のsiiE遺伝子は、ラミニンβ1に対して密接な相同性を有する配列内に突然変異(148 A>T)を有する。チフス菌におけるSiiEの喪失又は非機能SiiEは、チフス菌に対する強力なワクチンが利用可能であることの理由であり得る。ネズミチフス菌のSiiE欠損突然変異体が、SiiEコンピテントサルモネラと比較して有効な免疫応答を誘導し得ることを本明細書に示す。ネズミチフス菌を含むiNTSに対するワクチンを確立するために、SiiE欠損突然変異弱毒化サルモネラを新規のワクチンとして提案する。
【0195】
ラミニンβ1に相同のSiiEペプチドは、BM中のIgG分泌形質細胞の数を顕著に減少させた。この特性を自己免疫疾患及び多発性骨髄腫の治療に利用し得る。全身性エリテマトーデス(lupuserythematosus)のような病原性IgG自己抗体が大きく寄与する自己免疫疾患は、これらの自己抗体を分泌するBM形質細胞がそれらのBMニッチ中で保護されることから、従来の治療に反応しない可能性がある(Hoyer et al., 2004、Hiepe et al., 2011、Cheng et al., 2013)。SiiE由来ラミニンβ1ホモログは、不応性自己抗体分泌BM形質細胞の枯渇のための候補である。多発性骨髄腫は、BM中の形質細胞骨髄腫から生じる余剰な抗体価によって引き起こされる。骨髄腫細胞株がin vitroでラミニンに選択的に接触することが既に報告されており(Kibler et al., 1998、Vande Broek et al., 2001)、ラミニンを含む接着分子の標的化を新規の療法とみなすべきであることが示唆される(Neri and Bahlis, 2012)。BM形質細胞骨髄腫の枯渇は、疾患を直接改善し得る。
【0196】
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【符号の説明】
【0197】
図面訳
図1
Salmonella (x10
4CFU in organ) サルモネラ(器官内の×10
4 CFU)
Days postinfection 感染後の日数
Spleen 脾臓
Liver 肝臓
図2
Spleen 脾臓
Ig-secretingcells Ig分泌細胞
CD138
+B220
-icIgG
+cells CD138
+B220
-icIgG
+細胞
Total IgM 全IgM
Serum dilution 血清希釈度
Total IgG 全IgG
図3
IgG-secretingcells in BM BM中のIgG分泌細胞
図4
Spleen 脾臓
Lamina propria 粘膜固有層
Ig-secretingcells Ig分泌細胞
図5
Salmonella (CFUper tissue) サルモネラ(組織当たりのCFU)
Salmonella サルモネラ
Spleen 脾臓
Liver 肝臓
Supernatant 上清
IgG-secretingcells in BM BM中のIgG分泌細胞
LPS depletion LPS枯渇
E. coli 大腸菌
Anti-NPIgG1-secreting cells in BM BM中の抗NP IgG1分泌細胞
Cont. 対照
IgM-secretingcells in BM BM中のIgM分泌細胞
IgM-secretingcells in spleen 脾臓中のIgM分泌細胞
IgG-secretingcells in spleen 脾臓中のIgG分泌細胞
Cell numbers 細胞数
GST binding GST結合
% adherentcells 接着細胞(%)
Laminin ラミニン
図6
Full-length 完全長
N-ter. N末端
53x BacterialIg domains 53個の細菌Igドメイン
C-ter. C末端
Laminin β1 ラミニンβ1
Mouse マウス
Human ヒト
Pig ブタ
Whale クジラ
Bovine ウシ
Alligator ワニ
Chicken ニワトリ
Mus musculus ムス・ムスクルス
Homo sapiens ホモ・サピエンス
Sus scrofa サス・スクロファ
Orcinus orca オルキヌス・オルカ
Bos taurus ボス・タウルス
Alligator mississippiensis アリゲーター・ミシシッピエンシス
Gallus gallus ガッルス・ガッルス
図7
Salmonella サルモネラ
図8
Laminin β1 ラミニンβ1
Merge マージ
% of laminin β1-bound Blimp-1
+Ig
+cells in BM BM中のラミニンβ1結合Blimp-1
+Ig
+細胞の%
図9
Merge マージ
% of laminin β1-bound Blimp-1
+Ig
+cells in spleen 脾臓中のラミニンβ1結合Blimp-1
+Ig
+細胞の%
図10
Spleen 脾臓
Integrin インテグリン
図11
Salmonella (CFUper ml) サルモネラ(1 ml当たりのCFU)
Incubation time(hours) インキュベーション時間(時間)
図12
Salmonella (CFUper tissue) サルモネラ(組織当たりのCFU)
Spleen 脾臓
Anti-SalmonellaIgG in serum 血清中の抗サルモネラIgG
Days afterinfection 感染後の日数
VirulentSalmonella (x10
4 CFU per spleen) 毒性サルモネラ(脾臓当たりの×10
4CFU)
ΔLon-primed mice ΔLonでプライムしたマウス
ΔLonΔSiiE-primed mice ΔLonΔSiiEでプライムしたマウス
図13
B cellpopulation in BM BM中のB細胞集団
All 全て
B220
+cells in spleen 脾臓中のB220
+細胞
Spleen 脾臓
B cellpopulation in blood 血液中のB細胞集団
Blood 血液
Relativeexpression 相対発現
% CXCL12
+stroma in BM BM中のCXCL12
+間質(%)
B cells in BM BM中のB細胞
IgG-secretingcells in BM BM中のIgG分泌細胞
IgM-secretingcells in BM BM中のIgM分泌細胞
IgG-secretingcells in spleen 脾臓中のIgG分泌細胞
IgM-secretingcells in spleen 脾臓中のIgM分泌細胞
図14
Fibronectin フィブロネクチン
Integrin α4 インテグリンα4
Relative expression 相対発現
Galectin-1 ガレクチン-1
図15
100 μg SiiE129 peptide vs Scrambled peptide 100 μgのSiiE129ペプチド対スクランブルペプチド
NZB/W F1 female NZB/W F1雌性
Time (Day) 時間(日数)
5 months old 5月齢
0.5 μg/ml Anti-DNA IgG in serum 血清中の0.5 μg/ml抗DNA IgG
NZB/W F1female: Murine Models of Systemic Lupus Erythematosus NZB/W F1雌性:全身性エリテマトーデスのマウスモデル
Anti-DNAIgG-secreting cells in bone marrow 骨髄中の抗DNA IgG分泌細胞
Scrambled スクランブル
【0198】
本発明は、以下を包含する。
1.配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)によるアミノ酸配列、又は配列番号1に対して少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる単離ポリペプチドであって、200アミノ酸以下若しくは170アミノ酸以下である、ポリペプチド。
2.配列番号2(KEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQN)によるアミノ酸配列、又は配列番号2に対して少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、前項1に記載のポリペプチド。
3.配列番号3(SAQVEKKGNGKRRNKKEEEELKKQLDDAENAKKEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQNFL)によるアミノ酸配列、又は配列番号3に対して少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、前項1又は2に記載のポリペプチド。
4.配列番号4(MGNKSIQKFFADQNSVIDLSSLGNAKGAKVSLSGPDMNITTPRGSVIIVNGALYSSIKGNNLAVKFKDKTITGAKILGSVDLKDIQLERIDSSLVDSAQVEKKGNGKRRNKKEEEELKKQLDDAENAKKEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQNFL)によるアミノ酸配列、又は配列番号4に対して少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、前項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
5.少なくとも配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)によるアミノ酸配列を含む、前項2に記載のポリペプチド。
6.少なくとも配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)若しくは配列番号2(KEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQN)によるアミノ酸配列を含む、前項3に記載のポリペプチド、又は少なくとも配列番号1(EEAEKAKEAAEKALNEAFE)、配列番号2(KEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQN)若しくは配列番号3(SAQVEKKGNGKRRNKKEEEELKKQLDDAENAKKEADKAKEEAEKAKEAAEKALNEAFEVQNSSKQIEEMLQNFL)によるアミノ酸配列を含む、前項4に記載のポリペプチド。
7.病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される、前項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドを含むか又はそれからなるポリペプチド若しくは医薬。
8.前記病原性長寿命形質細胞に関連する疾患が多発性骨髄腫である、前項7に記載の薬剤として使用されるポリペプチド若しくは医薬。
9.前記病原性長寿命形質細胞に関連する疾患が自己抗体関連自己免疫疾患、又は関節リウマチ若しくは全身性エリテマトーデスである、前項7に記載の薬剤として使用されるポリペプチド若しくは医薬。
10.前記病原性長寿命形質細胞がIgG分泌形質細胞であり、及び/又は骨髄中に存在し、及び/又はラミニンβ1陽性間質細胞と相互作用する、前項7~9のいずれか一項に記載の薬剤として使用されるポリペプチド若しくは医薬。
11.前項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
12.細胞であって、
前項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸領域を含むサルモネラ細菌であるか、又は、
遺伝子操作されており、前項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする外因性核酸領域を含み、該外因性核酸領域がプロモーターに操作可能に連結している、細胞。
13.前項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド、前項11に記載の核酸分子及び/又は前項12に記載の細胞と薬学的に許容される担体とを含む、病原性長寿命形質細胞に関連する疾患の治療において薬剤として使用される医薬組成物。
14.被験体におけるNTS感染の予防においてワクチンとして使用される突然変異非チフス性サルモネラ(NTS)細菌であって、SiiEコード遺伝子の欠失又は機能的破壊により、前項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドを含むか又はそれからなるポリペプチドを発現しない、突然変異NTS細菌。
15.NTS細菌がネズミチフス菌である、前項14に記載のワクチンとして使用される突然変異NTS細菌。
【配列表】