(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20231222BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20231222BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2022114236
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2019040729の分割
【原出願日】2019-03-06
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】山口 健吾
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116001(JP,A)
【文献】特開2004-061168(JP,A)
【文献】特開2011-117825(JP,A)
【文献】特開2012-007940(JP,A)
【文献】特開平10-010061(JP,A)
【文献】特開2001-356101(JP,A)
【文献】特開2010-139425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 15/00 - G01B 15/08
B65G 1/00 - B65G 69/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(W)の入口(6)と出口(7)が設けられた遮蔽構造の筐体(2)と、
搬送手段(3)により前記筐体の内部で搬送方向(C)に沿って前記入口から前記出口に向けて搬送される被検査物に横方向からX線を照射するX線照射手段(4)と、
被検査物を透過したX線を検出するX線検出手段(5)と、
を有するX線検査装置(1)であって、
前記X線照射手段が照射するX線を透過しやすい材質で構成され、前記入口から前記出口へ前記搬送手段で搬送される被検査物を案内する連続した長手板状のガイド部材(15,16)を有し、
被検査物を透過して前記X線検出手段に到達したX線が前記ガイド部材を透過しているように、前記ガイド部材の高さを設定したことを特徴とするX線検査装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド部材で案内されつつ筐体内を搬送される被検査物にX線を照射して検査を行うとともに、筐体の出入り口にはユーザーが手などを差し入れる危険を排除するための検知センサを設けたX線検査装置に係り、特にユーザーにとっての安全性と、被検査物の高さの影響を受けない安定した搬送を両立させたX線検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にはX線異物検出装置の発明が開示されている。このX線異物検出装置によれば、搬入口と搬出口の高さに合わせて投受光素子4が設けられており、この投受光素子4によって監視領域を物体が通過するか否かを検知することができる。物体を検出した場合、制御手段は検出信号のレベルに基づいて当該物体が人体であるか被検査物Wであるかを判別し、人体と判別した場合にはX線曝射量を所定量未満に制御する。人体の搬送路内への侵入を検知してX線曝射量を制御することで人体をX線被曝から守ることができる。
【0003】
下記特許文献2には、搬送路へ組み込まれるX線発生器とX線検出器の位置調整を容易に行えるようにしたことを特徴とするX線検査装置の発明が開示されている。このX線検査装置では、筐体内を搬送される被検査物を案内するために、筐体4の開口部7,8を貫通する連続した左右2本ずつの棒状のガイド部材が被検査物に合わせた高さに配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検査物中の異物を発見する等の目的で、遮蔽構造の筐体内において被検査物を搬送しながら所定位置でX線を照射して検査を行うX線検査装置が広く使用されている。このようなX線検査装置においては、被検査物を転倒させることなく安定的に搬送して所定の姿勢で検査位置に運び込むために、上記特許文献1に示すように、被検査物の高さに合わせた棒状のガイド部材を筐体の出入り口を貫通して設けることがある。
【0006】
このようなガイド部材を備えたX線検査装置において、例えば牛乳や酒等の紙パック製品等を検査対象とする場合には、以下に説明するような課題があった。牛乳や酒等の紙パック製品は、一般に同一底面形状で高さが異なる複数種類の紙パックが用意されており、要求される製品の種類(容量)に合わせて紙パックを選択して製造するため、検査ラインには、高さの異なる複数種類の被検査物が搬送されることが一般的であり、X線検査装置は高さの異なる複数種類の被検査物に対応する必要があった。
【0008】
このため、前述したX線検査装置には、被検査物の高さに合わせた棒状のガイド部材が、筐体の入口及び出口を貫通し、かつ搬送される被検査物を挟むように入口及び出口の左右に設けられており、特にガイド棒の設置本数とその配置は、背の高低に係わらず被検査物を安定して案内できるようなものとする必要がある。一般的には、上記特許文献1に示すように少なくとも左右2本ずつとする必要があり、少なくとも1本は背の高い製品に合わせた配置とし、少なくとも他の1本は背の低い製品に合わせた配置とする必要がある。ここで、X線をほとんど減衰させない板状のガイド部材が設けられたX線検査装置であっても、被検査部がガイド部材よりも上方に大きく突出していると、被検査物を透過してX線検出手段に到達したX線は、被検査物を透過した位置によって、ガイド部材から受けるX線の減衰の程度が異なってくるため、ガイド部材の端部(ここでは上端部)に対応する部分では、生成される透過画像上に筋のような濃淡エッジが現れる。従って、X線検出手段から得られるデータを適宜に補正し、透過画像上に現れる濃淡エッジをなくすように補正しなければ、被検査物の透過検査結果を適正に評価することはできない。
【0010】
本発明は以上説明した従来の技術と、その課題に鑑みてなされたものであり、被検査物のガイド部材を、X線検出手段による検出結果が被検査物の全ての位置について実質的に同一の条件で得られたものとなるようにすることができ、安定した搬送と検査精度の向上を図ることができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載されたX線検査装置1は、
被検査物Wの入口6と出口7が設けられた遮蔽構造の筐体2と、
搬送手段3により前記筐体2の内部で搬送方向Cに沿って前記入口6から前記出口7に向けて搬送される被検査物Wに横方向からX線を照射するX線照射手段4と、
被検査物Wを透過したX線を検出するX線検出手段5と、
を有するX線検査装置1であって、
前記X線照射手段4が照射するX線を透過しやすい材質で構成され、前記入口6から前記出口7へ前記搬送手段3で搬送される被検査物Wを案内する連続した長手板状のガイド部材15,16を有し、
被検査物Wを透過して前記X線検出手段5に到達したX線が前記ガイド部材15,16を透過しているように、前記ガイド部材15,16の高さを設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載されたX線検査装置によれば、
被検査物を透過してX線検出手段に到達したX線はガイド部材も透過しているようにガイド部材の高さが設定されている。このため、ガイドがX線を減衰させる条件は被検査物の高さの範囲内のすべての位置において実質的に同一かつ変動しないので、被検査物を透過してX線検出手段に到達したX線の中にガイド部材を透過していない部分がある場合とは異なり、検出結果を補正する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態であるX線検査装置の一部を透視して正面側から見た斜視図である。
【
図2】実施形態のX線検査装置の筐体の入口付近の構成を示す右側面図である。
【
図3】実施形態のX線検査装置において、筐体内の検査位置付近における構成と、X線照射範囲と被検査物の位置関係とを、右側面方向から示した第1例の模式図である。
【
図4】実施形態のX線検査装置において、筐体内の検査位置付近における構成と、X線照射範囲と被検査物の位置関係とを、右側面方向から示した第2例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態について
図1~
図4を参照して説明する。
まず、
図1~
図3を参照して本実施形態のX線検査装置1の構成を説明する。
図1に示すように、本実施形態のX線検査装置1は、入口6及び出口7が設けられたX線遮蔽構造の筐体2と、入口6及び出口7の開口から両端部が外に突出するように筐体2の内部に設けられ、検査領域Pを含む筐体2の内部で被検査物Wを所定の搬送方向Cに沿って搬送する搬送手段としての搬送コンベア3と、搬送コンベア3によって搬送される被検査物Wに検査領域PでX線を照射するX線照射手段4と、被検査物Wを透過したX線を検出するX線検出手段5を備えている。なお検査領域Pは、筐体2の内部であって、入口6と出口7の中間となる位置に設けられている。以上説明したX線検査装置1の全体は脚部8によって台床面上に設置されている。
【0015】
図1及び
図3において、X線照射手段4は、X線が発生する陽極ターゲットの位置を示す点又は丸印として模式的に示されており、筐体2内の検査領域Pにある搬送コンベア3上の被検査物Wに横方向からX線を照射する。また、X線検出手段5は、検査領域Pにある被検査物Wを挟んでX線照射手段4の反対側に配置されており、複数の検出素子5aが縦方向に並ぶラインセンサによって構成されている。
【0016】
さらに、図示はしないが、搬送コンベア3の上流側には搬入用搬送コンベアが設けられ、上流から送られた被検査物WをX線検査装置1に供給するように構成されている。また搬送コンベア3の下流側には搬出用搬送コンベアが設けられ、検査された被検査物WをX線検査装置1から搬出し、さらに下流側の次工程(例えば選別工程)に送るように構成されている。
【0017】
図1に概略を示すように、筐体2の入口6と出口7の開口には、例えばユーザーの手のような、搬送コンベア3の搬送速度で開口を通過する被検査物Wではない外来物が誤って開口に存在する状態にあることを検知するために、検知センサ10が設けられている。
【0018】
図2に示すように、この検知センサ10は回帰反射型の光電センサであり、ビーム状の光を投受光する投受光部11と、投受光部11からの光を反射して投受光部11に回帰させる反射部12からなり、投受光部11と反射部12の間に何らかの物体が進入して被検査物Wが開口の通過に要する時間を越えて継続して光路が遮られ続けると、図示しない制御部が外来物の存在を示す検知信号を発生するように構成されている。なお、検知センサ10は、ビーム状の光を照射する投光部と、投光部からの光を受ける受光部からなる透過型の光電センサでもよい。
【0019】
図2に示すように、この実施形態では、検知センサ10は入口6及び出口7にそれぞれ5つが設けられている。各検知センサ10は、入口6の開口内で各光路が水平となるように、かつ上下方向については所定間隔となるように配置されている。出口7においても同様の配置である。具体的には、搬送コンベア3の搬送面Sを基準として入口6及び出口7の開口高さをHとすると、最も上にある検知センサ10は、搬送面Sを基準にして(0.9×H)の位置に設けられ、最も下にある検知センサ10は、同じく搬送面Sを基準にして(0.1×H)の位置に設けられ、その間に(0.2×H)ずつの間隔をおいて3つ設けられている。なお、容量が1000mlの牛乳パックの高さに合わせた開口高さHは、24cm乃至25cm程度がよい。
【0020】
図1及び
図2に示すように、搬送コンベア3が搬送する被検査物Wを案内するための一対のガイド部材15,15が搬送コンベア3に沿って対向配置されている。一対のガイド部材15,15の各々は連続した長手板状であり、好ましくは搬送コンベア3と同等の長さにわたって継ぎ目なく配置するのがよい。一対のガイド部材15,15は、搬送面Sとの間に互いに当接しない程度の微小な隙間をおいた搬送コンベア3の上方であって、かつ搬送面S上にある被検査物Wを移動可能に挟む両側の位置に、搬送方向C及び鉛直方向に平行な姿勢で、被検査物と摺接しない程度の間隔をおいて互いに平行に配置されている。一対のガイド部材15,15は、搬送コンベア3のフレーム3a,3aに取り付けられている。
【0021】
ガイド部材15は、検知センサ10が照射する光と、X線照射手段4が照射するX線を透過しやすい材料で構成されている。採用可能な材料としては、例えばPET、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂板がある。ガイド部材15の厚さは、移動していく被検査物Wを案内するのに必要な強度を保持することができ、搬送コンベア3のフレーム3a,3aに取り付けられる重量とされるとともに、検知センサ10とX線検出手段5が必要な機能を発揮できる程度に、透過する光とX線の強度を弱めないような厚さとされている。例えば、検知センサ10における光の透過度で50%以上、X線の透過度で80%以上が確保されればよく、このような初期条件のもとで画像処理等の各種機能を正しく動作させるためのパラメータがX線検査装置で設定されるようになっている。
【0022】
なお、搬送コンベア3による搬送方向Cは、
図1においては矢印で示しており、その他の図では紙面に垂直な方向である。また
図1に示すように、入口6及び出口7では搬送コンベア3の幅は一対のガイド部材15,15の間隔よりも若干小さい程度とされているが、
図2に示すように筐体2内の検査領域Pの付近では、搬送コンベア3のフレーム3aと一体である基台13の幅は一対のガイド部材15の間隔よりも広くなっている。
【0023】
図2に示すように、ガイド部材15の高さは、このX線検査装置1で検査されることが想定される被検査物Wのうち、最も背の高い製品よりも高く設定されている。具体的には、例えば牛乳の紙パック製品を被検査物Wとした場合、牛乳の紙パック製品には底面形状が同じで高さ及び容量が異なる500ml入り及び1000ml入りの2種類の製品がよく知られているが、このX線検査装置1のガイド部材15の高さは、背の高い製品の高さよりも大きく設定されている。
【0024】
図3を参照して、ガイド部材15の高さを最も背の高い製品より高く設定した理由について説明する。
図1を参照して先に説明したが、
図3に示すように、このX線検査装置1では、被検査物Wの一方の横側にあるX線照射手段4からX線を横方向(
図3中右方向)に照射し、被検査物Wを透過したX線を被検査物Wの他方の横側にあるX線検出手段5で検出するようになっている。ここで、被検査物Wを透過してX線検出手段5に到達したすべてのX線は、2枚のガイド部材15も透過しているので、被検査物W以外の部材(すなわちガイド部材15)によるX線の減衰は、高々X線がガイド部材15を厚さ方向に透過する際にわずかに生じる程度であり、X線検出手段5の各検出素子5aから得られるデータに基づき生成される透過画像には連続的になだらかに変化するオフセットとして現れるもののX線検査に不都合な濃淡差や濃淡エッジはなく、各検出素子5aのばらつきを補正するための感度補正を一旦実施すれば、あらためて補正する必要が生じることはない。
【0025】
ここで、仮に2枚のガイド部材15の高さを、被検査物Wの上部が露出するような高さに設定したとする(例えばガイド部材15の頂部を被検査物Wの下から2/3程度の位置とする。)。これでも被検査物Wの搬送中の安定性を確保することは可能であるが、被検査物Wを透過してX線検出手段5に到達したX線は、被検査物Wを透過した位置によって、ガイド部材15から受けるX線の減衰の程度が異なってくる。すなわち、被検査物Wを透過してX線検出手段5に到達したX線のうち、被検査物Wの下部を透過したX線は2枚のガイド部材15を透過しているが、これより上の一部分を透過したX線はX線照射手段4側のガイド部材15のみを通過しており、さらにこれより上方の部分を透過したX線はガイド部材15を全く透過することなくX線検出手段5に到達している。このように、X線をほとんど減衰させないガイド部材15であっても、その端部(ここでは上端部)に対応する部分では、生成される透過画像上に筋のような濃淡エッジが現れる。この濃淡エッジの現れる部分は、ガイド部材15に被検査物Wが接触したり、搬送コンベア3の動作により振動に伴い変動する。
【0026】
従って、上述のようにガイド部材15が低いために被検査物Wがガイド部材15よりも上方に大きく突出していると、X線検出手段5の各検出素子5aから得られるデータを適宜に補正し、透過画像上に現れる濃淡エッジをなくすように補正しなければ、被検査物Wの透過検査結果を適正に評価することはできない。
【0027】
しかしながら、本実施形態のX線検査装置1によれば、被検査物Wを透過してX線検出手段5に到達したすべてのX線は、2枚のガイド部材15を透過しており、X線を減衰させる条件は実質的に同一かつ変動しないので、X線検出手段5の各検出素子5aから得られるデータを補正する必要はなく、制御手段におけるデータの演算は比較的簡単に行える。なお、ガイド部材15の高さを、予想される複数種類の被検査物のうち、最も高いものより大きく設定しておけば、背の高い製品及び背の低い製品の何れも安定的に案内できる効果も得られる。
【0028】
次に、
図1~
図3を参照して本実施形態のX線検査装置1の作用を説明する。
このX線検査装置1は、前述したように背が比較的高い被検査物Wと、背が比較的低い被検査物Wの何れにも対応可能であるが、ここでは、例えば牛乳の紙パック製品のうち、比較的背の高いものを被検査物Wとし、これを検査する検査工程について説明する。
【0029】
図1において、図示しない上流側(図中右側)の搬入用搬送コンベアによって被検査物Wが搬送コンベア3に送り込まれる。
図2に示すように、搬送コンベア3の両側にある一対のガイド部材15,15は、被検査物Wの高さよりも高く、被検査物Wの幅よりも若干大きい間隔で互いに平行に配置されている。このため、比較的背が高くて転倒しやすい被検査物Wといえども、搬送中はコンベア投入時に定められた所定の検査姿勢で安定しており、搬送中に傾斜、転倒、位置ずれを起こすこともなく、筐体2の中央にある遮蔽された検査領域Pに送られる。
【0030】
X線検査装置1が作動している間、検知センサ10も常時作動状態にある。ガイド部材15は検知センサ10の光路の途中にあるが、検知センサ10からの光は、光を透過しやすい材質のガイド部材15に遮られることなく透過し、その透過した光量は検出に十分な値である。このため、光路が被検査物W以外の異物で遮られた場合の検出条件に問題はなく、異物の検出能力は安定している。従って、装置1を使用しているユーザーが、仮に誤って手などを入口6又は出口7から差し入れた場合が生じたとしても、検知センサ10がこれを検知し、検知センサ10からの出力を受けた制御手段がX線照射手段4の作動を直ちに停止させ、警報音又は光等により必要な報知を行う。これによって相応の安全性が確保される。
【0031】
またガイド部材15は、検知センサ10が照射する光を透過しやすい材質で構成されているので、検知センサ10を配置するに当たってはガイド部材15の配置を考慮する必要がなく、その個数、位置、光路の向き等を異物の効果的な検知のみを考慮して最適に設定することができる。例えば、検知センサ10の個数は
図2に示す5個から増減してもよいし、光路は水平でなく斜めにしてもよいし、互いに平行でなく交差させてもよい。仮に、「背景技術」で説明したような棒状のガイド部材であると、これを避けるように光路を配置する必要が生じ、検知センサ10の配置が制限されてしまう。
【0032】
被検査物Wは搬送コンベア3に搬送されて筐体2で覆われた検査領域Pの中央部に入り、X線照射手段4からX線の照射を受ける。被検査物Wを透過したX線はX線検出手段5の各検出素子5aによって検出される。制御手段は、X線検出手段5の出力に基づいて被検査物Wが異物を含んでいるか等についての検査を行う。
【0033】
この検査工程において、被検査物Wを透過してX線検出手段5に到達したすべてのX線は、2枚のガイド部材15を透過しており、X線検出手段5による検出結果は、被検査物Wの全ての位置について実質的に同一の条件で得られたものとなる。このため、X線検出手段5の各検出素子5aから得られたデータを補正する必要はなく、制御手段におけるデータの演算は比較的簡単である。なお、ガイド部材15は、X線照射手段4が照射するX線を透過しやすい材質で構成されているため、X線の減衰が検査に影響を与える可能性を考慮する必要もない。仮に、「背景技術」で説明したような棒状のガイド部材であると、被検査物Wを透過したX線のなかには、ガイド部材を透過したものと透過していないものがあり、またガイド部材を透過したものについても透過したガイド部材の本数が異なる場合があり、これら種々の条件が混在することになる。従って、X線検出手段の各検出素子が出力したデータは実質的に同一の条件下で得られたものとはならず、複雑な補正演算が必要になる。
【0034】
検査を受けた被検査物Wは搬送コンベア3によって搬送されて出口7から筐体2を出る。その後、検査済みの被検査物Wは、図示しない搬出用搬送コンベアによって下流側の次工程(例えば選別工程)に送られる。
【0035】
次に、
図4を参照してガイド部材15の構造が異なる実施形態の変形例を説明する。
図4に示す変形例では、X線がガイド部材を透過する条件を一定化するために、X線検出手段5の側にあるガイド部材15だけを被検査物Wよりも高くし、X線照射手段4の側にあるガイド部材16の高さは被検査物Wと同じか、やや小さい程度とした。これでも、被検査物Wを透過してX線検出手段5に到達するX線は2枚のガイド部材15,16も透過することになり、X線検出手段5の各検出素子5aから得られるデータを補正する必要はない。
【0036】
そして、この変形例では、検査領域Pのみにおいて、X線検出手段5の側にあるガイド部材15を被検査物Wより高くするものとし、検査領域P以外の部分では、2枚のガイド部材の高さは何れも被検査物Wと同等の比較的低い寸法(ガイド部材16の高さ)に揃えるものとした。このようにすれば、被検査物Wは一対のガイド部材15,16の間に挟まれているとはいえ、その頂部には容易にアクセスできるため、何らかの理由で搬送コンベア3上の被検査物Wをガイド部材15,16の外に取り出したい場合には有利になる。また、比較的低いガイド部材16の高さに合わせて筐体2の入口6と出口7の高さも低くできるため、外部に対してX線を遮蔽する点でより有利になる。
【符号の説明】
【0037】
1…X線検査装置
2…筐体
3…搬送手段としての搬送コンベア
4…X線照射手段
5…X線検出手段
5a…検出素子
6…入口
7…出口
10…検知センサ
15…ガイド部材
16…ガイド部材
W…被検査物
C…搬送方向
S…搬送面
P…検査領域