IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドンスン ファインテック カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7407903断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器
<>
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図1
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図2
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図3
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図4
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図5
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図6
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図7
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図8
  • 特許-断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】断熱支持体および断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/12 20060101AFI20231222BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20231222BHJP
   B60K 15/03 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
F17C1/12
F16J12/00 E
B60K15/03 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022211147
(22)【出願日】2022-12-28
(65)【公開番号】P2023099518
(43)【公開日】2023-07-13
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0193663
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518115573
【氏名又は名称】ドンスン ファインテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGSUNG FINETEC CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】120, Hyeopdongdanji-gil, Miyang-myeon, Anseong-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、カプス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、サンウ
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110054122(CN,A)
【文献】米国特許第6029456(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0059295(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0169704(US,A1)
【文献】特表2007-536485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0068993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
F16J 12/00
B60K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部容器と外部容器とからなる液化水素の貯蔵容器の真空が形成された前記内部容器と前記外部容器との間に配置されて前記内部容器を支持する断熱支持体であって、
一端が前記内部容器と接触し、他端が前記外部容器と接触し、複数回折り曲げて複数層で形成される、断熱支持体。
【請求項2】
樹脂材および強化繊維を含む複合材料で形成される、請求項1に記載の断熱支持体。
【請求項3】
前記複数層における層と層との間は真空である、請求項2に記載の断熱支持体。
【請求項4】
中央領域にキャビティが形成される、請求項3に記載の断熱支持体。
【請求項5】
前記重なる層の間に充填材が満たされる、請求項4に記載の断熱支持体。
【請求項6】
前記内部容器の円周方向へ複数個設けられる、請求項5に記載の断熱支持体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器。
【請求項8】
前記液化水素の貯蔵容器での内部容器の一端部は、外部容器に固定された、請求項7に記載の自動車用液化水素の貯蔵容器。
【請求項9】
前記液化水素の貯蔵容器での内部容器の反対側の端部は、長手方向に移動可能となるように固定されていない、請求項7に記載の自動車用液化水素の貯蔵容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化水素の貯蔵容器用断熱支持体およびこの断熱支持体を含む液化水素の貯蔵容器に関し、詳しくは複合素材を適用した断熱支持体およびこの断熱支持体を設けた自動車用液化水素貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、急速な産業化の発展と人口の増加によりエネルギー需要が絶えずに増加しており、これによって化石燃料の枯渇に伴う代替エネルギー需給が切実である。韓国の場合、エネルギー消費量が世界10位以内に入るほど大量のエネルギーを消費していながらも、使用するエネルギーの90%以上を外国からの輸入に依存している実情であるだけに、エネルギー確保対策が緊急である。
【0003】
そのため、全世界的に直面している複雑なエネルギー問題を解決するために注目を集めている代替エネルギーとして水素燃料が挙げられている。
【0004】
水素燃料は、地球上で炭素と窒素の次に最も豊富な元素であるだけでなく、燃焼時に極めて微量の窒素酸化物のみを生成させるだけで他の公害物質を全く排出しないクリーンなエネルギー源であり、地球上に存在する豊富な量の水を原料にして作り出すことができ、使用後も再び水に再循環されるため、枯渇の恐れのない最適の代替エネルギー源といえる。
【0005】
水素燃料を利用するための最も重要な課題は、水素の貯蔵方法であり、高圧ガスシリンダや地質学的特性が揃った地下または配管システムなどに圧縮貯蔵する方法と、金属水素化物(Metal hydride)、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube)、ガラス微小球体(Glass microspheres)などを用いた固体吸着による貯蔵方法と、極低温状態の容器に液化した状態で貯蔵する方法とがある。
【0006】
特に、液化した状態の水素は極低温状態で貯蔵されるため、外部熱源から伝導、対流および放射などによる微量の熱が伝達されると水素の気化を招き、このような水素の気化による損失率は容器の大きさ、形状、断熱材の形態によって異なる。
【0007】
現在、自動車用に使用されている高圧水素の貯蔵方式は一般に断熱が要求されていないが、液化水素の温度である-253℃を維持するためには断熱に優れている貯蔵方法が要求される。
【0008】
従来、液化水素を貯蔵するための高低圧兼用水素燃料の貯蔵容器が、韓国登録特許第0937520号(特許文献1)から提案された。特許文献1は、図1に示すように、内部容器10と外部容器20との二重構造で形成されており、内部容器10と外部容器20との間には断熱のための絶縁体30が装入され、外部容器20には水素燃料の充填のための充填口40と、内外部容器10、20間の空間を真空状態で組成するための真空ポート50とがそれぞれ設けられている構成となっている。
【0009】
しかしながら、特許文献1の水素燃料の貯蔵容器は、垂直型貯蔵容器の中心部分を支持する構造であるため、貯蔵容量が増大して重量および大きさが増加したり、熱荷重が加わったりする場合、半径方向に堅固に支持できないという問題がある。また、特許文献1の水素燃料の貯蔵容器は、内部容器10を支持するために外部容器20の内部に付着された支持構造物により内部の付着区域で断熱欠陥が生じて断熱効率が低くなる問題がある。
【0010】
自動車用液化水素の貯蔵容器のような水平型液化ガスの貯蔵容器に対する従来技術として、韓国公開特許公報第10-2021-0100675号(特許文献2)に、縦方向端部のうちいずれか1つで第2外側タンク3内に第1内側タンク2を支持するための支持装置15が提示されている。図2に示すように、前記支持装置15は、外側タンク3の一端部と内側タンク2の隣接した端部との間に縦方向Aへ延長される固定された剛性連結部を含む。前記支持装置15は、カンチレバー方式で縦方向端部で第2タンク3内に第1タンク2をホールド(hold)する水平の機械的連結部を形成する。
【0011】
ところで、特許文献2の水平型液体ガスの貯蔵容器は、支持装置15の反対側に別個の支持棒17を除去することにより、第2タンク3内部の付着区域に生じる可能性がある断熱欠陥をなくしてタンクの断熱を改善することができるようにした。しかし、特許文献2の貯蔵容器は、特許文献1のように内部タンクの中心部分をカンチレバー方式で縦方向の中心軸方向へ支持する構造であるため、貯蔵容量が増加して重量および大きさが増加したり、熱荷重が加わったりする場合、半径方向へ堅固に支持できない問題がある。
【0012】
一方、液体ガスの貯蔵容器の外側タンクと内側タンクとの間に結合されて内側タンクを支持する支持体の断熱欠陥を減らすために繊維強化プラスチック(FRP)のような複合材料からなる支持体が使用された。複合材料からなる支持体は、金属からなる支持体より保温性能に優れているものの、これより断熱性能にもっと優れた技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】韓国登録特許第10-0937520号公報
【文献】韓国公開特許第10-2021-0100675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、液化水素の温度を維持するために断熱性能に優れている断熱支持体およびこの断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器を提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、貯蔵容量を増やすために重量と大きさが増加する場合、重量による荷重および熱変形による熱荷重に対して安全に支持できる構造を有する液化水素の貯蔵容器用断熱支持体、好ましくは自動車用液化水素の貯蔵容器用断熱支持体、およびこの断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、貯蔵容器の熱変形を吸収することができる構造を有する液化水素の貯蔵容器用断熱支持体、好ましくは自動車用液化水素の貯蔵容器用断熱支持体、およびこの断熱支持体を含む自動車用液化水素の貯蔵容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するための本発明の一実施形態による断熱支持体は、内部容器と外部容器とからなる液化水素の貯蔵容器の真空が形成された、前記内部容器と前記外部容器との間に配置されて前記内部容器を支持する断熱支持体であって、一端が前記内部容器と接触し、他端が前記外部容器と接触し、複数回折り曲げて複数層に形成され得る。
【0018】
また、前記断熱支持体は、樹脂材および強化繊維を含む複合材料で形成されてもよい。
【0019】
また、複数層における層と層との間は真空であり得る。
【0020】
また、中央領域にキャビティが形成されてもよい。
【0021】
前記重なって隣り合う層の間に充填材が満たされることがある。
【0022】
また、前記断熱支持体は、前記内部容器の円周方向へ複数個設けられてもよい。
【0023】
また、本発明の一実施形態による自動車用液化水素の貯蔵容器は、前記断熱支持体を含み得る。
【0024】
また、前記液化水素の貯蔵容器の一端部は、外部容器に固定されてもよい。
【0025】
また、前記液化水素の貯蔵容器において内部容器の反対側の端部は、長手方向へ移動可能となるように固定されていない可能性がある。
【発明の効果】
【0026】
上記したように構成される本発明による液化水素の貯蔵容器用断熱支持体およびこれを含む自動車用液化水素の貯蔵容器は、液化水素の温度を維持するための断熱性能に極めて優れた効果を有する。
【0027】
また、前記断熱支持体は、貯蔵容量の増加のために重量と大きさが増加する場合、重量による荷重および熱変形による熱荷重に対して安全に支持することができる効果がある。
【0028】
また、前記断熱支持体は、熱荷重が加わる場合に貯蔵容器の熱変形を吸収することができる構造を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来の垂直型水素燃料の貯蔵容器を示す図である。
図2】従来の水平型液化ガスの貯蔵容器を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による自動車用液化水素の貯蔵容器を示す図である。
図4図3の貯蔵容器の側断面を示す図である。
図5図3および図4の貯蔵容器の内部に設置される断熱支持体の構造を示す図である。
図6図5の断熱支持体の断面を示す図である。
図7】本発明による自動車用液化水素の貯蔵容器用断熱支持体と従来の断熱支持体との断熱性能を比較するための図である。
図8】本発明による自動車用液化水素の貯蔵容器の内部に設置される断熱支持体の他の実施形態を示す図である。
図9】本発明による自動車用液化水素の貯蔵容器の内部に設置される断熱支持体のもう一つの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、図3図9を参照して本発明による自動車用液化水素の貯蔵容器を詳しく説明する。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態による自動車用液化水素の貯蔵容器を示し、図4図3の貯蔵容器の側断面を示す。
【0032】
本発明の一実施形態による自動車用液化水素の貯蔵容器は、水平型貯蔵容器として液化水素を貯蔵する内部容器110と、前記内部容器110を取り囲みながら収容する外部容器120との二重構造で形成される。
【0033】
外部容器20には水素燃料を充填するための充填口(図示せず)が設けられており、外部容器20の一端部には内部容器110と外部容器120との間の離隔空間130を真空状態にするための真空ノズル160が設けられている。
【0034】
前記内部容器110の長手方向の端部のうち前記真空ノズル160が設けられている側の端部は、固定体150と、この固定体150に連結されている固定フレーム151とによって前記外部容器120に固定される。前記内部容器110の反対側の端部は固定されていないため、熱荷重が加えられると、長手方向に自由に移動することができる。
【0035】
前記内部容器110と前記外部容器120との間には、前記内部容器110を支持するための断熱支持体140が設けられる。前記断熱支持体140の一端は、前記内部容器と接触し、他端は前記外部容器と接触する。
【0036】
前記断熱支持体140は、断熱性能に優れている複合材料で形成され、前記内部容器110内に貯蔵された液化水素の温度-253℃を維持するために外部からの熱伝達を最小化する。
【0037】
また、前記断熱支持体140は、樹脂を含む複合材料で形成されており、また幾重にも重なって複数層で形成されるため、熱変形により前記内部容器110が長手方向(図3で左側方向)に移動すると、前記断熱支持体140によって支持されながらスライディングが可能となる。すなわち、熱荷重によって前記内部容器110に熱変形が生じてもこれを吸収することができるため、耐久性が向上する。
【0038】
図4に示すように、前記断熱支持体140は、前記内部容器110と前記外部容器120との間の離隔空間130を通して設けられているが、収納容器100の半径方向へ堅固に支持の役割を果たすために、円周方向に複数個設けられることが好ましい。貯蔵容器に要求される容量が大きくなったり荷重が大きくなったりする場合に、前記したように円周方向に複数の断熱支持体140を設けることにより、増加された容量と荷重に対する堅固な支持が可能となる。図4の実施形態は、前記断熱支持体140が等間隔で3つ設けられた例示である。
【0039】
図5は、図3および図4の貯蔵容器の内部に設置される断熱支持体140の構造を示し、図6図5の断熱支持体の断面を示す。
【0040】
断熱支持体140は、樹脂材141bおよび強化繊維141aを含む複合材料で形成される。前記複合材料は、樹脂材141bに強化繊維141aを含浸させて製造されてもよい。断熱支持体140は、図5および図6に示すように複数回折り曲げて複数層で形成される。複合材料に含浸される強化繊維141aは、長さが長い繊維形態も可能であり、短い形態の繊維形態も可能である。このような複合材料で形成された断熱支持体140は、優れた強度と断熱性能を有するため、貯蔵容器100の外部容器120内の内部容器110を支持するために十分な強度を有するとともに、外部からの熱伝達を最小限に抑える断熱機能を遂行することができる。
【0041】
前記断熱支持体140は、複合材料本体141が幾重にも重なって形成されるが、重なって隣り合う層の間に間隙143が存在するようになる。前記断熱支持体140が、前記内部容器110と前記外部容器120との間の離隔空間130に設けられながら圧縮され、この状態で前記内部容器110を十分に支持することができる。このように幾重にも重なって形成されることにより、前記断熱支持体140は、熱荷重によって前記内部容器110の長手方向への移動が発生しても、このような熱変形を吸収することができる。
【0042】
以下では、前記断熱支持体140の断熱性能について詳しく説明する。
【0043】
液化水素を収容する内部容器と、この内部容器を取り囲む外部容器とからなる液化水素の貯蔵容器で真空断熱のために内部容器と外部容器との間に真空を作る。液化水素の貯蔵容器の真空断熱では、内部容器と外部容器との間に一定の距離を維持することができるようにする支持体が必要である。
【0044】
液化水素の貯蔵容器の場合、内部容器は液化水素の温度である-253℃まで温度が下がるため、LNGタンクによく使われる木材の支持体を使用するのには強度と断熱性能の両方を満たすのに限界がある。
【0045】
液化水素の貯蔵容器の内部のような極低温環境において強度と断熱性能に優れた支持体の材料として繊維強化プラスチック(FRP)のような複合材料からなる支持体を使用することができる。
【0046】
繊維とマットレス樹脂の種類によって異なるが、繊維強化プラスチック(FRP)の熱伝導度は約0.3W/mKである。一方、本発明による断熱支持体140のように繊維強化プラスチック(FRP)の素材が幾重にも重なった複合材料の構造体は、真空状態にある場合、真空状態によって異なるが、NASA資料によると、10-3Torrの真空環境で6.5×10-8W/mKの熱伝導率を有すれば、繊維強化プラスチック(FRP)の熱伝導率と比較して460万倍の差がある。
【0047】
すなわち、図7(a)のような従来の繊維強化プラスチックの素材の支持体の場合、貯蔵タンクの外部から熱がタンクの内部に浸透すると、約0.3W/mKの熱伝導度を有する繊維強化プラスチックの素材の剛体支持体を媒介にして、極低温環境の内部容器に向かって短い直線経路に沿って(矢印方向)熱が速く伝達され、単位時間当たりの熱浸透量が大きくなって保温性能が低下することになる。
【0048】
ところで、図7(b)のように繊維強化プラスチック(FRP)の素材が複数層で重なる複合材料の構造体からなる支持体の場合には、層と層との間の真空を介して熱が伝達される速度よりも、複数層をなしている複合材料の各層に沿って熱が伝達される速度が速いため、ジグザグ経路に沿って(矢印方向)熱が伝達される。すなわち、長い経路に沿って熱が伝達されるため、単位時間当たりの熱浸透量が小さいことから、保温性能が著しく向上する。
【0049】
図8は、本発明による自動車用液化水素の貯蔵容器の内部に設置される断熱支持体の他の実施形態を示す。この実施形態では、断熱支持体1140は、複合材料本体1141が複数層で重なって形成され、重なる部位の間に間隙1143が存在し、断熱支持体1140構造の中央領域にキャビティ145が形成されている。前記断熱支持体1140が前記内部容器110を支持するのに十分な支持力を発揮する範囲であれば、キャビティ145の大きさや形状は限定されない。
【0050】
図7(a)のような複合材料の剛体で形成される支持体と対比して、本発明による図7(b)(図5および図6と同一)の実施形態の断熱支持体140、および図8の実施形態の断熱支持体1140の断熱性能を数値解析により確認して見た結果は次の通りであった。
【0051】
すなわち、ANSYS数値解析プログラムを用いて有限要素解析を行った結果、図7(a)のような従来の複合材料の剛体支持体の熱フラックス(Heat Flux)は735.17W/mで、図7(b)(図5および図6)の実施形態の断熱支持体140の熱フラックスは6.10W/mで、図8の実施形態の断熱支持体1140の熱フラックスは3.31W/mである。この数値解析の結果、各場合の熱フラックスを比較すると、本発明による断熱支持体140、1140は、従来の複合材料の支持体よりも断熱効率が約120~220倍向上することがわかった。
【0052】
図9は、本発明による自動車用液化水素の貯蔵容器の内部に設置される断熱支持体のもう一つの実施形態を示す。
【0053】
本実施形態による断熱支持体2140は、複合材料本体2141が幾重にも重なって形成され、重なる部位の間に充填材2144が満たされている。図5および図6の実施形態による断熱支持体140の場合、間隙143が存在して荷重により圧縮されて断熱支持体140の厚さが減少されうるものの、この間隙143に充填材2144を満たすことにより、断熱支持体140の厚さの減少を減らして支持力を向上させることができる。また、充填材2144を満たすことにより、超低温で機械的強度が補強できるようになる。
【0054】
前記充填材2144は、伝導および放射の熱伝達を最小限に抑えることができる材料で形成されることが好ましい。例えば、前記充填材2144は、ガラスペーパー(Glass paper)やガラスネット(Glass net)と薄板AL-fileを積層して複数層で構成して断熱機能を同時に行うことができるようにすることが好ましい。さらに好ましくは、充填材2144の厚さは、図6の間隙143の数値と類似した範囲で構成して構造的安定性を高めることができる。
【0055】
以上の説明は、本発明の技術的思想を例として説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正、変更および置換が可能であろう。したがって、本実施形態は、本発明の技術的思想を限定するものではなく説明するためのものであり、このような実施形態によって本発明の技術的思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術的思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきであろう。
【符号の説明】
【0056】
100: 貯蔵容器
110: 内部容器
120:外部容器
130: 離隔空間
140、1140、2140:断熱支持体
141、1141、2141:複合材料本体
141a:強化繊維
141b:樹脂材
143、1143:間隙
145: キャビティ
150: 固定体
160:真空ノズル
2144: 充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9