(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】気筒休止及び補助バルブ作動で使用するための直列ロストモーションコンポーネントを備えるバルブ作動システム
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20231222BHJP
F01L 13/06 20060101ALI20231222BHJP
F02D 13/04 20060101ALI20231222BHJP
F02D 13/06 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
F01L13/00 302C
F01L13/06 Z
F02D13/04 A
F02D13/06 G
(21)【出願番号】P 2022535444
(86)(22)【出願日】2020-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2020061865
(87)【国際公開番号】W WO2021117015
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルトラッキ、ジャスティン、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】グロン、ジュニア、ジー.マイケル
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533452(JP,A)
【文献】特表2016-507701(JP,A)
【文献】特開2016-020696(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102787880(CN,A)
【文献】特表2010-521622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0293001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00~13/08
F02D 13/04~13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒及び前記気筒に関連付けられる少なくとも1つのエンジンバルブを備える内燃機関での使用のためのバルブ作動システムであって、
バルブ作動負荷経路を介して前記少なくとも1つのエンジンバルブを作動させるための主バルブ作動モーション及び補助バルブ作動モーション
の両方を提供するように構成された
単一のバルブ作動モーション源と、
前記バルブ作動負荷経路に配設され、第1のデフォルト動作状態で、少なくとも前記主バルブ作動モーションを伝達するように構成され、第1の作動状態で、前記主バルブ作動モーション及び前記補助バルブ作動モーションを失うように構成されている、ロストモーション減算機構と、
第2のデフォルト動作状態で前記補助バルブ作動モーションを失うように構成され、第2の作動状態で前記補助バルブ作動モーションを伝達するように構成されたロストモーション加算機構であって、少なくとも前記第2の作動状態の間、前記バルブ作動負荷経路において前記ロストモーション減算機構と直列になっている、ロストモーション加算機構と、を備える、バルブ作動システム。
【請求項2】
前記ロストモーション減算機構及び前記ロストモーション加算機構を使用して、前記内燃機関を、
前記ロストモーション減算機構が前記第1のデフォルト動作状態にあり、前記ロストモーション加算機構が前記第2のデフォルト動作状態にある正の動力モード、又は
前記ロストモーション減算機構が前記第1の作
動状態にあり、前記ロストモーション加算機構が前記第2のデフォルト動作状態にある休止モード、又は
前記ロストモーション減算機構が前記第1のデフォルト動作状態にあり、前記ロストモーション加算機構が前記第2の作
動状態にある補助モード、で動作させるように構成されたエンジンコントローラを更に備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項3】
前記補助バルブ作動モーションが、早期排気バルブ開放バルブ作動モーション、後期吸気バルブ閉鎖バルブ作動モーション、又は、エンジンブレーキバルブ作動モーションのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項4】
前記ロストモーション減算機構が、油圧制御された機械的ロック機構である、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項5】
前記ロストモーション加算機構が、油圧制御されたアクチュエータである、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項6】
前記ロストモーション減算機構が、前記バルブ作動負荷経路に沿って、前記ロストモーション加算機構よりも前記バルブ作動モーション源に近く位置されている、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項7】
前記ロストモーション加算機構が、前記バルブ作動負荷経路に沿って、前記ロストモーション減算機構よりもバルブ作動モーション源に近く位置されている、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項8】
前記バルブ作動負荷経路が、前記バルブ作動モーション源に動作可能に接続されたモーション受容端と、前記少なくとも1つのエンジンバルブに動作可能に接続されたモーション付与端と、を有するロッカーアームを備え、
前記ロッカーアームが、前記ロストモーション加算機構を備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項9】
前記ロッカーアームと前記少なくとも1つのエンジンバルブとに、及びそれらの間で動作可能に接続されたバルブブリッジが、前記ロストモーション減算機構を備える、請求項8に記載のバルブ作動システム。
【請求項10】
前記ロッカーアームと前記バルブ作動モーション源とに、及びそれらの間で動作可能に接続されたプッシュロッドが、前記ロストモーション減算機構を備える、請求項8に記載のバルブ作動システム。
【請求項11】
前記ロストモーション減算機構が、伸長位置にバイアスされ、前記ロストモーション加算機構が、格納位置にバイアスされる、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項12】
前記ロストモーション減算機構の前記伸長位置が、移動制限されている、請求項11に記載のバルブ作動システム。
【請求項13】
前記ロストモーション減算機構が、第1の力によって第1の伸長位置にバイアスされ、前記ロストモーション加算機構が、第2の力によって第2の伸長位置にバイアスされ、前記第1の力が、前記第2の力よりも大きい、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項14】
前記ロストモーション加算機構の前記
第2の伸長位置が、移動制限されている、請求項13に記載のバルブ作動システム。
【請求項15】
前記ロストモーション減算機構が、移動制限される第1の伸長位置にバイアスされ、前記ロストモーション加算機構が、移動制限される第2の伸長位置にバイアスされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
気筒及び前記気筒に関連付けられる少なくとも1つのエンジンバルブを備え、バルブ作動負荷経路を介して少なくとも1つのエンジンバルブを作動させるための主バルブ作動モーション及び補助バルブ作動モーション
の両方を提供するように構成された
単一のバルブ作動モーション源を更に備える、内燃機関を動作させる方法であって、
前記バルブ作動負荷経路に配設され、第1のデフォルト動作状態で、少なくとも前記主バルブ作動モーションを伝達するように構成され、第1の作動状態で、前記主バルブ作動モーション及び前記補助バルブ作動モーションを失うように構成されている、ロストモーション減算機構を提供することと、
第2のデフォルト動作状態で前記補助バルブ作動モーションを失うように構成され、第2の作動状態で前記補助バルブ作動モーションを伝達するように構成されたロストモーション加算機構であって、少なくとも前記第2の作動状態の間、前記バルブ作動負荷経路において前記ロストモーション減算機構と直列になっている、ロストモーション加算機構を提供することと、
前記内燃機関を動作させることであって、
前記ロストモーション減算機構が前記第1のデフォルト動作状態にあり、前記ロストモーション加算機構が前記第2のデフォルト動作状態にある正の動力モード、又は
前記ロストモーション減算機構が前記第1の作
動状態にあり、
前記ロストモーション加算機構が前記第2のデフォルト動作状態にある休止モード、又は
前記ロストモーション減算機構が前記第1のデフォルト動作状態にあり、前記ロストモーション加算機構が前記第2の作
動状態にある補助モード、で動作させることと、を更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、バルブ作動システム、特に、バルブ作動負荷経路に沿って直列のロストモーションコンポーネントを備えるバルブ作動システムに関し、バルブ作動システムは、気筒休止及び補助バルブ作動の両方を実装するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で使用するためのバルブ作動システムは、当技術分野でよく知られている。内燃機関の正の動力動作中、そのようなバルブ作動システムは、燃料の燃焼と併せて、いわゆる主バルブ作動モーションをエンジンバルブに提供するために使用され、その結果、エンジンは、例えば、車両を動作させるために使用され得る動力を出力する。代替的に、バルブ作動システムは、主バルブ作動モーション以外の、又はそれに加えて、いわゆる補助バルブ作動モーションを提供するように動作され得る。バルブ作動システムはまた、所与のエンジン気筒の動作を一度に停止するような方法で動作され得、すなわち、しばしば気筒休止と呼ばれるエンジンバルブの作動を除去することにより、主又は補助動作モードのいずれにおいても動作しない。当技術分野で更に知られているように、これらの様々な動作モードを組み合わせて、望ましい利益を提供することを提供することができる。例えば、大型ディーゼルトラックの将来の排出基準には、燃料経済性を改善し、排出量を削減する技術が必要である。両方を同時に提供する主要な技術は、気筒休止である。気筒休止により、燃料消費量が減少し、温度が上昇して、後処理排出量の制御が改善されることは十分に文書化されている。
【0003】
気筒休止のための既知のシステムは、米国特許第9,790,824号に記載されており、これは、バルブブリッジに配置された油圧制御のロストモーション機構を記載し、その一例は、‘824特許の
図11に図解され、本明細書では
図1として複製されている。
図1に示すように、ロストモーション機構は、バルブブリッジ100の本体110に形成されたボア112を備えて配置された外側プランジャ120を備える。ウェッジ180の形態のロック要素が提供され、このウェッジは、ボア112を画定する表面に形成された環状の外側のくぼみ172と係合するように構成される。内側プランジャ160に油圧制御が適用されていない場合(この場合、ロッカーアームを介して、図示せず)、内側ピストンばね144は、内側プランジャ160を所定の位置にバイアスし、その結果、ウェッジ180が外側プランジャ120に形成された開口部から伸長し、それにより、外側のくぼみ172と係合し、バルブブリッジ本体110に対して所定の位置に外側プランジャ120を効果的にロックする。この状態では、外側プランジャ120を介してバルブブリッジに適用されたバルブ作動モーション(主又は補助モーション)は、バルブブリッジ本体110に伝達され、最終的にはエンジンバルブ(図示せず)に伝達される。しかしながら、内側プランジャ160の上部に十分に加圧された作動油を供給すると、内側プランジャ160は下向きにスライドし、その結果、ウェッジ180が格納され、外側のくぼみ172から外れることができ、それにより、バルブブリッジ本体110に対して外側プランジャ120のロックを効果的に解除し、外側プランジャばね146によってロッカーアームに向かって提供されるバイアスを受けて、外側プランジャ120がそのボア112内で自由にスライドできるようになる。この状態では、外側プランジャ120に適用されたバルブ作動モーションは、外側プランジャ120をそのボア112内で往復運動させる。このようにして、ボア112内の外側プランジャ120の移動が、適用されるバルブ作動モーションの最大範囲よりも大きいと仮定すると、そのようなバルブ作動モーションは、エンジンバルブに伝達されず、対応する気筒が休止されるように効果的に失われる。
【0004】
ただし、気筒を休止することの1つの欠点は、エンジンを通過する空気流量が減少するため、排気システムのエネルギも減少することである。コールドスタートからの車両のウォームアップ中は、排気温度を上昇させて、触媒温度を効率的な動作温度まで急速に上げることが重要である。気筒休止は温度上昇を提供するが、空気流量の顕著な減少は、迅速なウォームアップには効果的ではない。
【0005】
気筒休止のこの欠点を克服し、迅速なウォームアップを提供するために、実証済みの技術の1つは、早期排気バルブ開放(early exhaust valve opening、EEVO)と呼ばれる、排気バルブの開放を進めて、追加された熱エネルギを排気システムに解放することであり、これは、主バルブイベントに加えて、特定のタイプの補助バルブ作動モーションである。実際には、このようなシステムは、主バルブの作動中に失われるバルブ作動モーションを追加して、この早期開放イベントを提供するという原理に基づいている。早期の排気の開放及び気筒休止機能の両方を組み合わせたシステムは、ウォームアップ要件を満たし、排出量を削減し、燃料消費量を改善することができる。
【0006】
EEVOを提供するためのバルブ作動システムは、米国特許第6,450,144号に図解されているような、アクチュエータの形態の油圧制御されたロストモーションコンポーネントを有するロッカーアームを使用して提供され得、その例は、‘824の特許の
図19に図解され、本明細書で
図2として複製されている。このシステムでは、ロッカーアーム200は、ロッカーアーム200のモーション付与端に配置されたアクチュエータピストン210を有するように提供される。アクチュエータピストン210は、アクチュエータピストン210が対応するエンジンバルブ(又はバルブブリッジ)に連続的に接触するように、ばね217によってそのボアからバイアスされている。油圧通路231、236は、作動油が制御通路211によって供給されてアクチュエータピストンボアを満たすことができるように提供される。これらの状況では、作動油は、逆止バルブ241によってボア内に保持され、油圧通路236が制御通路211と位置合わせしていない限り、この場合、アクチュエータピストン210は、伸長位置に堅固に維持され、そのボア内で往復運動することができない。他方、ボアが作動油で満たされていない場合(又はそのような作動油が、注記された通路236、211の位置合わせ時に排出される)、アクチュエータピストン210は、ラッシュ調整ねじ204によって許容される範囲で、そのボア内で自由に往復運動する。そのようなシステムでは、カムは、主及び補助バルブ作動モーションの両方を提供するためのカムローブを備える。主バルブ作動動作では、アクチュエータピストン210がそのボア内で往復運動することを許容されるように、作動油はアクチュエータピストン210に提供されない。この場合、アクチュエータピストン210のそのボアへの許容移動量が、少なくともEEVOローブによって提供される最大モーションと同じ大きさであるが、主イベントローブによって提供される最大モーションよりも小さい限り、EEVOローブによって提供されるバルブ作動モーションは、作動ピストン210の往復運動によって失われるが、しかし、主イベントバルブの作動により、作動ピストン210がそのボア内で(又は他の表面との固体接触を介して)底部に達し、それによって主イベントモーションを伝達する。一方、アクチュエータボアの位置ベースの排気(すなわち、注記された通路236、211の位置合わせによるリセット)は、主バルブイベントモーション中のエンジンバルブの過剰な伸長を防ぐが、アクチュエータピストンが伸長位置で油圧ロックされている場合、EEVOモーションは失われず、エンジンバルブに伝達される。
【0007】
少なくとも理論的には、ロストモーションベースの気筒休止と上記のタイプの補助バルブ作動モーションシステムとを組み合わせて、目的の気筒休止及びEEVO動作を提供することが可能であるはずである。しかしながら、このようなシステムを単に直接組み合わせることが所望の結果を提供することは与えられていない。
【0008】
例えば、上記のように、EEVOロストモーションは、正常な主イベントリフトを同じカムシャフト上の早期隆起部分と組み合わせる。この例を
図3に図解する。
図3では、第1の曲線310は、この例では約14ミリメートルの最大リフトを有する主イベントバルブリフトの理想化されたバージョンを図解している。第2の曲線311は、カムによって提供されるEEVOモーションが失われたときに発生するであろう、エンジンバルブが経験する典型的な実際の主イベントを図解しており、例えば、
図2の上記のロッカーアームアクチュエータは、往復運動することができる。上の破線の曲線312は、例えば、ロッカーアームアクチュエータが完全に伸長されたときに、EEVO対応カムによって提供される全てのバルブ作動モーションが提供される場合の理想的なバルブリフトを図解している。示されるように、理想化されたリフト312は、実際には、約2ミリメートルのバルブリフト314に変換される、バルブ開放中の約3mmのバルブリフトのEEVOイベント313を含む。
図3に図解されている例はまた、リセットの発生を示し、それにより、アクチュエータピストンは、この例では、リフトの約10mmで落下することを可能にし、(すなわち、アクチュエータボア内のロックされた作動油は、エンジンバルブのこのサイクルのために通気される)これにより、ノーマルリフト主イベント311が発生する。これらの2つのリフトイベントの組み合わせ(理想的なリフトプロファイル312で図解されているように)は、合計ストロークが約17mmになり、
図1に図解されるロストモーション機構によって失われる場合、外側プランジャ120の移動の17mm全体にわたって外側プランジャ120にバイアスをかけようとするとき、外側プランジャばね146に比較的高い応力をかける。
【0009】
追加の例として、上記のような気筒休止中に、ロッカーアームをバイアスしてバルブ作動モーション源(例えば、カム)と連続的に接触させるためにエンジンバルブばねによって加えられる通常の力がもはや提供されないことが知られている。外側ピストンプランジャばね146は、外側プランジャ120を介してロッカーアームに向かっていくらかの力を戻すが、この力は、比較的小さく、必要に応じてロッカーアームを制御するには不十分である。したがって、別個のロッカーアームバイアス要素は、典型的には、例えば、ロッカーアームの上に位置するばねを介してロッカーアームのモーション受容端でカムに向かってバイアス力を適用することによって、ロッカーアームをカムと接触するようにバイアスするために提供される。ロッカーアームによって提示される慣性を適切に制御できないこと(休止されているにもかかわらずロッカーアームにいまなお適用されるバルブ作動モーションのため)は、ロッカーアームとカムとが分離し、その結果、2つの間に有害な影響を与える可能性がある。同様に、EEVO動作が不要な場合に失われるEEVOバルブ作動モーションは、同様に制御する必要のあるロッカーアームに慣性を付与する。ロッカーアームバイアス要素によるこのような動作の複雑な要因は、これらの動作の各々(気筒休止及びEEVO)が典型的に、大幅に異なる速度範囲で発生することである。
【0010】
通常、気筒休止は、典型的に、約1800rpm以下のエンジン速度で発生し、ロッカーアームバイアス要素は、ロッカーアームとカムとの間の適切な接触を確実にするために、これらの速度で十分な力を提供するように構成されている。他方、ロストEEVOバルブ作動モーションは、最大で高いエンジン速度(例えば、2600rpmのオーダー)までも存在する。したがって、気筒休止とEEVOの動作とを組み合わせた利点を得るには、ロッカーアームのバイアス要素が、EEVOバルブの作動モーションをロッカーアームに依然として適用できる高速に対応する必要がある。それらが依然として発生する可能性がある比較的高速であるため、ロストEEVOバルブ作動モーションに対するロッカーアーム制御は、ロッカーアームバイアス要素による高い力の適用を必要とする。しかしながら、これは、ロッカーアームバイアスばねがその最低予圧を有する小さなバルブリフトで発生する。一方、気筒休止は、通常、低速で、ロッカーアームのバイアス要素が増加した予圧にあるより高いリフト部分(主バルブの作動モーション)全体で発生する。しかしながら、最小の予圧で高い力を提供し(EEVOで必要)、完全な移動中に必要な応力(気筒休止で必要)に耐えることができるロッカーアームバイアス要素を提供するという課題は、克服するのが困難である。
【発明の概要】
【0011】
従来技術の解決策の上記の欠点は、本開示に従って少なくとも1つのエンジンバルブを作動させるためのバルブ作動システムを提供することによって対処される。特に、バルブ作動システムは、バルブ作動負荷経路を介して少なくとも1つのエンジンバルブを作動させるための主バルブ作動モーション及び補助バルブ作動モーションを提供するように構成されたバルブ作動モーション源を備える。ロストモーション減算機構は、バルブ作動負荷経路に配設され、第1のデフォルト動作状態で、少なくとも主バルブ作動モーションを伝達するように構成され、第1の作動状態で、主バルブ作動モーション及び補助バルブ作動モーションを失うように構成されている。付加的に、ロストモーション加算機構は、第2のデフォルト動作状態で補助バルブ作動モーションを失うように構成され、第2の作動状態で補助バルブ作動モーションを伝達するように構成され、ここで、ロストモーション加算機構は、少なくとも第2の作動状態の間、バルブ作動負荷経路においてロストモーション減算機構と直列になっている。
【0012】
補助バルブ作動モーションの例は、早期排気バルブ開放バルブ作動モーション、後期吸気バルブ閉鎖バルブ作動モーション、若しくは、エンジンブレーキバルブ作動モーションのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
一実施形態では、ロストモーション減算機構及びロストモーション加算機構を使用して、内燃機関を、動作させるように構成されたエンジンコントローラを更に含む。正の動力モードにおいて、エンジンコントローラは、第1のデフォルト動作状態で動作するロストモーション減算機構及び第2のデフォルト動作状態で動作するロストモーション加算機構を制御する。休止モードにおいて、エンジンコントローラは、第1の作動動作状態で動作するロストモーション減算機構及び第2のデフォルト動作状態で動作するロストモーション加算機構を制御する。補助モードにおいて、エンジンコントローラは、第1のデフォルト動作状態で動作するロストモーション減算機構及び第2の作動動作状態で動作するロストモーション加算機構を制御する。
【0014】
様々な実施形態では、ロストモーション減算機構は、油圧制御された機械的ロック機構であり、ロストモーション加算機構は、油圧制御されたアクチュエータである。いくつかの実施形態によれば、ロストモーション減算機構は、バルブ作動負荷経路に沿って、ロストモーション加算機構よりもバルブ作動モーション源に近い位置に位置する。代替的に、他の実施形態によれば、ロストモーション加算機構は、バルブ作動負荷経路に沿って、ロストモーション減算機構よりも、バルブ作動モーション源に近い位置に位置する。
【0015】
一実施形態では、バルブ作動負荷経路は、バルブ作動モーション源に動作可能に接続されたモーション受容端と、少なくとも1つのエンジンバルブに動作可能に接続されたモーション付与端と、を有するロッカーアームを備える。この場合、ロッカーアームは、ロストモーション加算機構を含み得る。付加的に、この実施形態では、ロッカーアームと少なくとも1つのバルブとに、及びそれらの間で動作可能に接続されたバルブブリッジが提供され得、これは減算ロストモーション機構を備える。代替的に、この実施形態では、ロッカーアームとバルブ作動モーション源とに、及びそれらの間で動作可能に接続されたプッシュロッドが提供され得、これは減算ロストモーション機構を備える。
【0016】
様々な実施形態では、ロストモーション減算機構は、伸長位置にバイアスされ得、ロストモーション加算機構は、格納位置にバイアスされ得る。この場合、ロストモーション減算機構の伸長位置は、移動制限され得る。別の実施形態では、ロストモーション減算機構は、第1の力によって第1の伸長位置にバイアスされ得、ロストモーション加算機構は、第2の力によって第2の伸長位置にバイアスされ得、第1の力は、第2の力よりも大きい。この場合も、再度、ロストモーション加算機構の伸長位置は、移動制限され得る。更に別の実施形態では、ロストモーション減算機構は、移動制限される第1の伸長位置にバイアスされ得、ロストモーション加算機構は、また移動制限される第2の伸長位置にバイアスされ得る。
【0017】
対応する方法も開示される。
【0018】
本開示に記載される特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。これらの特徴及び付随する利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することから明らかになるであろう。ここで、単なる例として、同様の参照番号が同様の要素を表す添付の図面を参照して、1つ以上の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】先行技術による気筒休止を提供するために好適なロストモーション機構を図解している。
【
図2】従来技術に従って補助バルブ作動を提供するために好適なロストモーション機構を図解している。
【
図3】本開示によるEEVOバルブ作動モーションの例を図解するグラフである。
【
図4】本開示によるバルブ作動システムの実施形態の概略図解である。
【
図5】本開示によるバルブ作動システムの実施形態の概略図解である。
【
図6】
図4の実施形態によるバルブ作動システムの実施形態の部分断面図を図解している。
【
図7】
図6の実施形態によるリセットロッカーアームの分解図である。
【
図8】
図6~
図8の実施形態によるリセットロッカーアームのそれぞれの部分的上部及び側部断面図である。
【
図9】
図6~
図8の実施形態によるリセットロッカーアームのそれぞれの部分的上部及び側部断面図である。
【
図10】
図6~
図8の実施形態によるリセットロッカーアームのそれぞれの部分的上部及び側部断面図である。
【
図11】
図6~
図8の実施形態によるリセットロッカーアームのそれぞれの部分的上部及び側部断面図である。
【
図12】
図5の実施形態によるバルブ作動システムの第1の実施形態の部分断面図である。
【
図13】
図5の実施形態によるバルブ作動システムの第2の実施形態の部分断面図である。
【
図14】本開示による内燃機関を動作させる方法を図解するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図4は、本開示によるバルブ作動システム400を概略的に図解している。特に、バルブ作動システム400は、バルブ作動負荷経路406を介して1つ以上のエンジンバルブ404へのバルブ作動モーション(すなわち、バルブ開放及び閉鎖モーション)の唯一の供給源として機能するバルブ作動モーション源402を備える。1つ以上のエンジンバルブ404は、内燃機関の気筒405と関連付けられている。当該技術分野で知られているように、各気筒405は、典型的には、対応するエンジンバルブ404の作動のために、それに一意に対応する少なくとも1つのバルブ作動モーション源402を有する。更に、
図4には単気筒405のみが図解されているが、内燃機関は2つ以上の気筒を備え得、かつしばしば含むが、本明細書に記載のバルブ作動システムは、所与の内燃機関に対し任意の数の気筒に適用可能であることが理解される。
【0021】
バルブ作動モーション源402は、カムなどのバルブ作動モーションを提供することができる既知の要素の任意の組み合わせを備え得る。バルブ作動モーション源110は、補助モーションと一緒に排気モーション、吸気モーション、補助モーション、又は排気若しくは吸気モーションの組み合わせを提供するために専用であり得る。例えば、現在好ましい実施形態では、バルブ作動モーション源402は、主バルブ作動モーション(排気又は吸気)及び少なくとも1つの補助バルブ作動モーションを提供するように構成された単一のカムを備え得る。更なる例として、主バルブ作動モーションが主排気バルブ作動モーションを備える場合、少なくとも1つの補助バルブ作動モーションは、EEVOバルブイベント及び/又は圧縮-解放エンジンブレーキバルブイベントを備え得る。更に別の例として、主バルブ作動モーションが主吸気バルブ作動モーションを備える場合、少なくとも1つの補助バルブ作動モーションは、後期吸気バルブ閉鎖(late intake valve closing、LIVC)バルブイベントを備え得る。主バルブ作動モーションを有する単一のカム上で組み合わされ得る補助バルブ作動モーションのシル更なるタイプは、当業者に既知であり得、本開示は、この点に関して限定されない。
【0022】
バルブ作動負荷経路406は、バルブ作動モーション源402と少なくとも1つのエンジンバルブ404との間に展開され、バルブ作動モーション源402によって提供されるモーションを、少なくとも1つのエンジンバルブ404、例えば、タペット、プッシュロッド、ロッカーアーム、バルブブリッジ、自動ラッシュアジャスタなどに伝達するために使用される任意の1つ以上のコンポーネントを備える。更に、示されるように、バルブ作動負荷経路406はまた、ロストモーション加算(lost motion adding、LM+)機構408及びロストモーション減算(lost motion subtracting、LM-)機構410を含む。本明細書で使用されているように、LM+機構は、機構が、それに適用される補助バルブ作動モーションを伝達せず、それに適用される任意の主バルブ作動モーションを伝達し得るか、又はし得ない、デフォルトになっているか、又は「通常」の状態にある機構である(すなわち、制御入力がアサートされていない場合)。他方、LM+機構が作動状態にある場合(すなわち、制御入力がアサートされる場合)、機構は、それに適用される任意の補助バルブ作動モーションを伝達し、それに適用される任意の主バルブ作動モーションも伝達する。更に、本明細書で使用されているように、LM-機構は、機構が、それに適用される主バルブ作動モーションを伝達し、それに適用される任意の補助バルブ作動モーションを伝達し得るか、又はし得ない、デフォルトになっているか、又は「通常」の状態にある機構である(すなわち、制御入力がアサートされていない場合)。他方、LM-機構が作動状態にある場合(すなわち、制御入力がアサートされる場合)、機構は、それに適用される任意のバルブ作動モーション、主又は補助バルブ作動モーションかどうか、を伝達しない。要するに、LM+機構は、作動されると、デフォルト又は通常の動作状態に関連するバルブ作動モーションを加算又は含めることができるが、LM-機構は、作動されると、デフォルト又は通常の動作状態に関連するバルブ作動モーションを減算又は失うことができる。
【0023】
LM+又はLM-機構として機能し得る様々なタイプのロストモーション機構は、油圧、気圧、又は電磁作動であり得る油圧又は機械的ベースのロストモーション機構を含む、当該技術分野において周知である。例えば、
図1に描写され、米国特許第9,790,824号(この参照により本明細書に組み込まれる)に教示されているロストモーション機構は、油圧制御される機械的ロックLM-機構の例である。上記のように、内側プランジャ160への作動油の入力がない場合(すなわち、デフォルト状態)、ロック要素180は、外側のくぼみ772で受容され、それによって、それに適用された作動モーションが伝達されるように外側プランジャ120を本体120に「ロック」する。他方、作動油の入力が内側プランジャ160に提供されるとき(すなわち、作動状態にあるとき)、ロック要素180は格納することができ、それにより、そこに適用される作動モーションが伝達又は失われないように、外側プランジャ120を本体120から「ロック解除」する。別の例として、
図2に示され、米国特許第6,450,144号(この参照により本明細書に組み込まれる)に教示されているロストモーション機構は、油圧制御される油圧ベースLM+機構の例である。上記のように、通路231、236への作動油の入力がない場合(すなわち、デフォルト状態で)、アクチュエータピストン210は、そのボア内で自由に往復運動し、その結果、アクチュエータピストン210がそのボア内に格納することができる最大距離(アクチュエータピストンストローク長)よりも小さい大きさである作動モーションが伝達又は失われず、一方、アクチュエータピストンストローク長よりも大きい、それに適用される任意の作動モーションは伝達される。
【0024】
図4に更に描写されるように、エンジンコントローラ420は、LM+及びLM-機構408、410に提供及び動作可能に接続され得る。エンジンコントローラ420は、LM+及びLM-機構408、410の動作を制御するための、すなわち、上記のようにそれぞれのデフォルト動作状態と作動動作状態との間で切り替えるための任意の電子、機械、油圧、電気油圧、又は他のタイプの制御デバイスを備え得る。例えば、エンジンコントローラ420は、当技術分野で知られているように、以下に記載されるものを含む必要な制御機能を実装するために使用される実行可能命令を格納するマイクロプロセッサ及び対応するメモリによって実装され得る。エンジンコントローラ130、例えば、好適なプログラムされた特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)などの他の機能的に同等の実装が等しく用いられ得ることが理解される。更に、エンジンコントローラ420は、エンジンコントローラ420がLM+及びLM-機構408、410の動作状態に対する制御を達成することを可能にする、エンジンコントローラ420とLM+及びLM-機構408、410との中間の周辺デバイスを含み得る。例えば、LM+及びLM-機構408、410が、油圧制御機構(すなわち、入力への作動油の不在又は適用に応答して)の両方である場合、当該技術分野で知られているように、好適なソレノイドを含み得る。
【0025】
図4に図解されるシステム400では、LM+機構408は、LM-機構410よりもバルブ作動負荷経路406に沿ってバルブ作動モーション源に近接して配設されている。そのようなシステムの例は、
図6~
図12を参照して以下で更に詳細に説明される。しかしながら、これは要件ではない。例えば、
図5は、同様の参照番号は同様の要素を指しているが、
図4と比較して、バルブ作動システム400’を図解しており、LM-機構410は、LM+機構408よりもバルブ作動モーション源402の近くに配設されている。そのようなシステムの例は、
図13及び
図14を参照して以下で更に詳細に説明される。
【0026】
再び
図4を参照すると、LM+機構408は、LM+機構408の全ての動作状態において、LM-機構410を有するバルブ作動負荷経路406に沿って直列である。すなわち、上記のように、LM+機構408がそのデフォルト状態又はその作動状態にあるかどうかにかかわらず、バルブ作動モーション源402によって提供される任意の主バルブ作動モーションは、LM+機構408によってLM-機構410に伝達される。しかしながら、これもまた、LM+機構408がLM+機構408の動作状態の関数としてLM-機構410と直列又は直列にないいずれかで図解されている
図5に図解されるように要件ではない。この場合、LM+機構408がそのデフォルト動作状態にあるとき、すなわち、それに適用される任意の補助バルブ作動モーションを失うように制御されるとき、LM+機構408は、LM-機構410によって伝達される主バルブ作動モーションを伝達する際に役割を果たさず、これは、LM-機構410とエンジンバルブ404との間の実線矢印によって図解されている。効果的に、この状態では、LM+機構408は、
図5に描写されるようにバルブ作動負荷経路406から除去される。他方、LM+機構408がその作動動作状態にあるとき、すなわち、それに適用される任意の補助バルブ作動モーションを伝達するように制御されるとき、LM+機構408は、LM-機構410から受容される主バルブ作動モーション及び補助バルブ作動モーションの両方の伝達に関与し、これにより、LM+機構408を効果的に直列に載置し、これは、LM-機構410とLM+機構408との間、及びLM+機構408とエンジンバルブ404との間の破線の矢印によって図解されている。
【0027】
図4及び
図5のバルブ作動システム400、400’は、気筒405の動作を容易にし、その結果、単一のバルブ作動モーション源402を有するシステムにおいて、正の動力モード、休止モード、又は補助モードでの内燃機関の作動を容易し、全てのバルブ作動モーションをエンジンバルブ404に提供する。これは、
図14に図解される方法を参照して更に説明される。ブロック1402において、上記のように、LM+及びLM-機構は、バルブ作動負荷経路に配設される。特に、LM-機構は、第1のデフォルト動作状態で、そこに適用される少なくとも主バルブ作動モーションを伝達するように構成され、第1の作動状態で、そこに適用される主バルブ作動モーション及び補助バルブ作動モーションを失うように構成される。付加的に、LM+機構は、第2のデフォルト動作状態で、それに適用される任意の補助バルブ作動モーションを失うように構成され、第2の作動状態で、補助バルブ作動モーションを伝達するように構成され、LM+機構は、少なくとも第2の作動状態の間、バルブ作動負荷経路のLM-機構に直列である。
【0028】
ステップ1402でバルブ作動システムを準備した後、処理は、ブロック1406~1410のいずれかで進行し、ここで、エンジンは、LM+及びLM-機構の動作状態の制御に基づいて、それぞれ正の動力モード、休止モード、又は補助モードで動作される。したがって、ブロック1406において、エンジンを正の動力モードで動作させるために、LM-機構は、その第1のデフォルト動作状態に載置され、LM+機構は、その第2のデフォルト動作状態に載置される。このモードでは、LM+機構は、いかなる補助バルブ作動モーションも伝達しないが、LM-機構によって伝達されるいかなる主バルブ作動モーション(LM+機構が
図4又は
図5のように配設されているかどうかに応じて)を伝達することができる。この構成の正味効果は、正の動力動作に必要なように、主バルブ作動モーションのみがエンジンバルブに伝達されることである。
【0029】
ブロック1408において、エンジンを休止モードで動作させるために、LM-機構は、その第1の作動動作状態に載置され、ロストモーション加算機構は、その第2のデフォルト動作状態にある。このモードでは、LM-機構は、それに適用されるいかなるバルブ作動モーションも伝達しない。結果として、対応する気筒は、バルブ作動モーションがエンジンバルブに伝達されない限り、休止される。LM-機構のこの動作を考慮すると、LM+機構の動作状態は、エンジンバルブに影響を及ぼさないであろう。しかしながら、現在の好ましい実施形態では、休止モード動作中に、LM+機構は、その第2のデフォルト動作状態に載置される。
【0030】
ブロック1410において、エンジンを補助モードで動作させるために、LM-機構は、その第1のデフォルト動作状態に載置され、LM+機構は、その第2の作動動作状態に載置される。このモードでは、LM+機構は、任意の補助バルブ作動モーション及びLM-機構によって伝達される任意の主バルブ作動モーションを伝達する。この構成の正味の効果は、主バルブの作動モーションと補助バルブの作動モーションの両方がエンジンバルブに伝達され、それにより、特定の補助バルブ作動モーションによって提供される補助動作、例えば、EEVO、LIVC、圧縮-解放エンジンブレーキなどを提供することである。
【0031】
ステップ1406~1410で提供される様々なモードのうちのいずれかの間のエンジンの動作は、ブロック1412によって図解されるように、エンジンが運転している限り継続し得る。
【0032】
図6は、
図4の実施形態によるバルブ作動システム600の部分断面図を図解する。特に、システム600は、ロッカーアーム604のモーション受容端606でロッカーアーム604に動作可能に接続されたカムの形態のバルブ作動モーション源602を備える。固定表面622に対して反応するロッカーアームバイアス要素620(例えば、ばね)は、ロッカーアーム604をバルブ作動モーション源602と接触させるようにバイアスするのを支援するために提供され得る。当技術分野で知られているように、ロッカーアーム604は、ロッカーシャフト(図示せず)を中心に回転可能に往復運動し、それによって、ロッカーアーム604のモーション付与端608を介してバルブブリッジ610にバルブ作動モーション源によって提供されるバルブ作動モーションを付与する。次に、バルブブリッジ610は、一対のエンジンバルブ612、614に動作可能に接続されている。更に示されるように、バルブブリッジ610は、上記の
図1に図解され、記載されたタイプのLM-機構616(ロックピストン)を備え、一方、ロッカーアーム604は、
図2に関連して上に図解及び記載されたものと実質的に同様のタイプのLM+機構618(アクチュエータ)を含む。
【0033】
LM+機構618の詳細は、ロッカーアーム604内に配設された他のコンポーネントと共に
図7に更に図解されている。LM+機構618は、アクチュエータピストン702がラッシュ調整ねじ704上にスライド可能に配設されるように、リテーナ703に取り付けられたアクチュエータピストン702を備える。LM+機構618の更なる詳細は、以下の
図9を参照して説明される。
図9に最もよく示されるように、ラッシュ調整ねじ704は、LM+機構618がアクチュエータピストンボア710の下側部分に配設されるように、アクチュエータピストンボア710内にねじ式に締結される。ロックナット704は、使用中の所望のラッシュ設定にラッシュ調整ねじ704を固定するために提供される。
【0034】
図7はまた、ロッカーアーム604の上部及び底部(図示せず)上の開口部を含むリセットアセンブリボア724内に配設されたリセットアセンブリ712を図解している。リセットアセンブリ712は、リセットアセンブリボア724内にスライド可能に配設されたリセットピストン714を備える。リセットピストンばね715は、リセットピストン714の上に配設され、リセットピストンばね716の下側端は、c-クリップ718又は他の好適なコンポーネントを使用してリセットピストン714に固定される。ワッシャ720は、リセットピストンばね716の上側端に配設されている。リセットアセンブリ712は、当技術分野で知られているように、ばねクリップ722によってリセットアセンブリボア724内に維持される。
図10及び
図11に関して以下で更に詳細に説明するように、リセットピストンばね716は、リセットピストン714が固定表面(
図7には示されていない)に接触することができるように、リセットアセンブリボア724の下側開口部からリセットピストン714をバイアスする。ロッカーアーム604が往復運動すると、リセットピストン714は、ロッカーアーム604の回転によって規定される制御可能な様式でリセットアセンブリボア724内をスライドする。特に、以下で更に詳細に記載されるように、ロッカーアーム604の所望の位置において、リセットピストン714は、リセットピストンに形成された環状チャネル715がリセット通路802(
図8)と整合してLM+機構618のリセットを達成するように構成され得る。
【0035】
図7は、逆止バルブ732を受容するロッカーアーム604に形成された上側油圧通路730を更に図解している。以下でより詳細に説明するように、上側油圧通路730は、LM+機構618の動作を制御するために、アクチュエータピストンボア710に作動油(ロッカーシャフト、図示せずに形成された好適な供給通路によって提供される)を提供する。逆止バルブ732の設置後に上側油圧通路730上に液密シールを確実にするために、ねじ付きプラグ734又は同様のデバイスを用いることができる。付加的に、完全性のために、
図7はまた、当技術分野で知られているように、ロッカーシャフト開口部742に、かつロッカーシャフト上に挿入され得るロッカーアームブッシング740を図解している。付加的に、カムフォロワ744は、好適な開口部748内に配設されたカムフォロワ軸746に取り付けられ得る。
【0036】
しかしながら、
図2のアクチュエータピストン210とは異なり、
図9に最もよく図解されているように、LM+機構618のアクチュエータピストン702は、作動油がアクチュエータピストン702を介してLM-機構616に供給されることを可能にする油圧通路904、906を含む。
図9に示すように、ロッカーアーム604に形成された下側油圧通路908は、ロッカーシャフト(図示せず)内の供給チャネルから作動油を受容し、作動油をアクチュエータピストンボア710の下側部分にルーティングする。アクチュエータピストン702は、アクチュエータピストン702のストローク全体を通して油圧供給通路908と整合するその側壁表面に形成された環状チャネル910を備える。次に、環状チャネル910は、アクチュエータピストン702内に形成された水平通路904及び垂直通路906と連通する。垂直通路906は、作動油をLM-機構616に通過させるために、その中に形成された開口部を有する、作動油を旋回706に方向付ける。このようにして、作動油は、LM-機構616への制御入力として選択的に供給され得る。
【0037】
上記のように、
図9に更に示すように、LM+機構618は、アクチュエータピストンボア710内に伸長するラッシュ調整ねじ704を備える。アクチュエータピストンばね918は、ラッシュ調整ねじ704とアクチュエータピストン702との間に配置され、ラッシュ調整ねじ704に形成された肩部920の下側表面に当接し、それによってアクチュエータピストン702をアクチュエータピストンボア710からバイアスする。この実施形態では、アクチュエータピストン702は、以下で更に詳細に説明するように、ラッシュ調整ねじ肩部920の上側表面と係合し、それによってアクチュエータピストン702の外向きストロークを制限する、リテーナ703への好適なねじ山を介して締結される。
【0038】
図8及び
図9は、作動油(例えば、高速ソレノイド、図示せず)をアクチュエータピストン702の上のアクチュエータピストンボア710に選択的に供給するために、ロッカーアーム604に形成された上側油圧通路730を更に図解する(
図9に仮想線で)。(
図8において、LM+機構618及びリセットアセンブリ712を形成する様々なコンポーネントは、図解を容易にするために示されていないことに留意されたい。)逆止バルブ732は、アクチュエータピストンボア710から上側油圧通路730に供給する供給通路への作動油の逆流を防ぐために、上側油圧通路730の広い部分730’に設けられている。このようにして、以下に説明するようにLM+機構618のリセットがない場合、作動油のロックされた容積がアクチュエータピストン702を伸長(作動)状態に維持するように、アクチュエータピストンボア710内に、逆止バルブ732とアクチュエータピストン702との間に高圧室を形成することができる。
【0039】
図3に関連して上で説明したように、単一のバルブ作動モーション源が主及び補助バルブ作動モーションの両方を提供するバルブ作動システムは、組み合わされた補助及び主バルブの作動モーション中のエンジンバルブの過伸長を回避するためにリセットする能力を必要とし得る。
図6~
図11に図解されている実施形態の文脈において、作動油のロックされた容積の通気及びアクチュエータピストン702のリセットは、リセットアセンブリ712の動作を通じて提供される。
図8に最もよく示されるように、リセット通路802は、作動ピストンボア710のその部分と流体連通して提供され、アクチュエータピストン702及びリセットピストンボア804を有する高圧チャンバを形成する。リセットピストン714は、実際上、リセットピストンばね716のバイアス下でロッカーアーム604の底部から伸長する端部を有するスプールバルブである。
図10及び
図11に図解されている実施形態では、リセットピストン714は十分な長さのものであり、リセットピストンばね716は、リセットピストン714がロッカーアーム604の全ての位置を通して固定接触表面1002に連続的に接触することを確実にするのに十分なストロークを有する。
【0040】
図10に示すように、ロッカーアーム604は、カム602に対して基部円にある(すなわち、カム602に向かって最大限に回転する)。この状態、並びに比較的低いリフト(例えば、
図3に示されるリセット高さより下)では、環状チャネル715は、リセットピストン714の外径がリセット通路802との連絡をシールして、それにより、アクチュエータピストンボア710内に閉じ込められた流体の容積(提供される場合)を維持するように、リセット通路802と位置合わせされていない(
図10及び
図11に示されるように、上側油圧通路730の後ろに隠されている)。ロッカーアーム604は、
図11に示されるように、より高いバルブリフトで(例えば、
図3に示されるリセット高さ以上で)回転するので、リセットピストン714は、環状チャネル715がリセット通路802に整合し、それにより、閉じ込められた作動油が環状チャネル715を通ってリセットピストン714に形成された半径方向の穴1004に流れ込み、リセットピストン714に形成された軸方向通路1006(仮想線で示される)の上部を通って通気することを可能にするように、固定表面1002との接触点を中心に旋回し、リセットピストンボア804に対してスライドする。ロッカーアーム604が再び高リフトイベント後に回転すると、
図10のように、リセットピストン714はそのボア804内で並進し、再びリセット通路802をシールし、それによってアクチュエータピストンボア710の再充填を可能にする。
【0041】
上述のように、
図6~
図11に図解されるリセットアセンブリ712は、固定接触表面1002と一定の接触を維持するように構成されている。しかしながら、これは要件ではないことが理解される。例えば、リセットアセンブリは、必要なリセット高さが達成されたときにのみ、固定表面に接触するポッペット型バルブを代わりに備えることができる。
【0042】
前述のように、ロッカーアームバイアス要素620は、カム602と接触するようにロッカーアーム604をバイアスするのを支援するために提供され得る。開示されたシステム600の特徴は、ロッカーアームバイアス要素620もアクチュエータピストンばね918のいずれも、実質的に全ての動作条件を通してカム602と接触するように、ロッカーアーム604をバイアスするのに十分な力を個別に提供するように、個別に構成されていないことである。しかしながら、この実施形態では、ロッカーアームバイアス要素620及びアクチュエータピストンばね918は、ロッカーアーム604の実質的に全ての動作条件を通して、この目的のために組み合わせて機能するように選択される。例えば、カム602に向かってロッカーアーム604をバイアスするのを助けるために、アクチュエータピストンばね918は、比較的低いリフトバルブ作動モーション(例えば、EEVO、LIVCなど)中にのみ高い力を提供し、ここでは、潜在的な高速動作により、ほとんどが必要である。制御されない場合、アクチュエータピストンばね918によって適用されるバイアス力は、アクチュエータピストン702を有意な力でLM-機構616に押し付けることができる。LM-機構616が、
図1を参照して説明したような機械的ロック機構である場合、そのような力は、ロック要素180が伸長及び格納する能力を妨害するのに十分強く、それにより、LM-機構616のロック及びアンロックを防ぐ。アクチュエータピストン702のラッシュ調整ねじ肩部920によって課される移動制限は、LM-機構616へのそのような過度の負荷を防ぎ、それにより、LM-機構616内に通常提供されるラッシュスペースを維持し、ロック要素180が必要に応じて自由に伸長/格納することを可能にする。
【0043】
付加的に、アクチュエータピストンばね918によるアクチュエータピストン702の伸長は比較的小さいが、それにもかかわらず、外側プランジャばね746が耐える必要がある範囲応力を低減する。次に、アクチュエータピストンばね918は、低リフト、潜在的に高速バルブ作動モーションに特に必要な高い力を提供する高い力の、低移動ばねであり得る。アクチュエータピストンばね918及び外側プランジャばね746によるこの負担分担はまた、高い予圧を提供するためのロッカーアームバイアス要素620の必要性を軽減することができ、ロッカーアームバイアス要素620の設計が、休止状態の動作中に発生する主バルブ作動モーションのためのより低速でより高いリフト部分、これはより厳しくない設計制約である、に焦点を合わせることを可能にする。
【0044】
図12は、
図5の実施形態によるバルブ作動システム1200の部分断面図を図解している。このシステム600では、バルブ作動モーション源は、プッシュチューブ1202を介してロッカーアーム1204のモーション受容端1206に動作可能に接続されたカム(図示せず)と、上記
図1に図解及び記載されたタイプの介在LM-機構1216とを備える。
図6~
図11に図解される実施形態と同様に、ロッカーアーム1204は、ロッカーシャフト(図示せず)の周りで回転往復運動し、それにより、ロッカーアーム1204のモーション付与端1208を介してバルブブリッジ1210に、バルブ作動モーション源によって提供されるバルブ作動モーションを付与する。次に、バルブブリッジ1210は、一対のエンジンバルブ1212、1214に動作可能に接続されている。更に示されるように、ロッカーアーム1204は、
図2に関連して図解及び説明したものと実質的に同様のタイプのLM+機構1218を備える。この場合、作動油は、ロッカーシャフト及びロッカーアーム1204及びボール接合部1220に形成された好適な通路を介してLM-機構1216に提供される。同様に、作動油は、ロッカーシャフト及びロッカーアーム1204に形成された好適な通路を介してLM+機構1218に提供される。しかしながら、この実装形態では、先行する実施形態の逆止バルブ732は、制御バルブ1222によって置き換えられて、アクチュエータピストンを伸長状態に維持するために必要な油圧ロックを確立する。
図12の実施形態は、好適なブリッジピン1224を介して単一のエンジンバルブ1214のみと相互作用するLM+機構1218の配設によって更に特徴付けられる。
【0045】
この実施形態では、LM-機構1216は、プッシュロッド1202がカムと接触するようにバイアスされ、ロッカーアームがエンジンバルブ1212、1214の方向にバイアスされるように、プッシュロッド1202に対してロック機構の外側プランジャを外向きにバイアスするための比較的強いばねを含む。この実装形態では、LM-機構1216の外側プランジャは、(エンジンアセンブリとは対照的に)エンジン動作中に限定されないが、LM-機構1216に移動制限を課すことは、アセンブリを容易にする。
【0046】
LM+機構1218の構成、特に内向きばね付きアクチュエータピストンを考慮すると、LM+機構1218がそのデフォルト状態にあるときに、アクチュエータピストンとブリッジピンとの間にギャップが提供される。結果として、このデフォルト状態の間、LM+機構1218は、
図5に関連して上に説明したように、LM-機構1216を有するモーション負荷経路に沿って直列ではない。更に、デフォルト状態の間のギャップが存在するにもかかわらず、アクチュエータピストンは、上記のように外側のプランジャピストンばねの強度を考慮すると、完全に伸長することはできない。この場合、アクチュエータピストンは、主モーションバルブイベントが発生するまで完全に伸長することができず、それによって、アクチュエータピストンとブリッジピン1224との間に十分なギャップを作成して完全に伸長することを可能にする。しかしながら、伸長(作動)状態にあるとき、アクチュエータピストンは、それに適用される補助バルブ作動モーションを伝達するだけでなく、その対応するエンジンバルブ1214に適用される主バルブ作動モーションもまた伝達する。この場合、LM+機構1218は、
図5に関連して上に説明したように、アクチュエータピストンの作動状態の間にLM-機構1216と直列に載置される。
【0047】
図13は、
図5の実施形態によるバルブ作動システム1300の部分断面図を図解している。特に、
図13に図解されている実施形態は、球形接合部1220が外向きにバイアスされ、移動制限されたスライドピン1320で置き換えられていることを除いて、
図12の実施形態と実質的に同一である。この場合、LM-機構1216の外側プランジャばねは、好ましくは、ゼロ又は低バルブリフト中(例えば、基部円上)の低い予圧で設計され、休止モード動作中の主バルブ作動モーションにわたるロッカーアーム1204のモーションの全域を制御するためのピーク力を得るために必要なばね速度を有する。
【0048】
他方、スライドピン1320を外向きにバイアスするために使用されるスライドピンばね1322は、比較的高い予圧及び短いストローク(上で議論されたアクチュエータピストンばね918と実質的に同様)で構成されている。スライドピストン1320はそのボア内でスライドすることができるので、スライドピストン1320は、スライドピストン1320の全ストローク全体にわたって流体供給通路と環状チャネル1334を整合することにより、ロッカーアーム1204とLM-機構1216との間の連続的な流体連通を確実にするように、それに位置合わせされた環状チャネル1334及び半径方向開口部1336を含む。付加的に、ストローク調整ねじ1338は、スライドピン1320の移動を、そのボアからLM-機構1216に向かって制限するように機能する。上記のアクチュエータピストン702に適用される移動制限能力に関して説明したように、ストローク調整ねじ1338は、スライドピンばね1322の全力がLM-機構1216に適用されるのを防ぎ、そうでなければ過負荷になり、その動作に干渉する可能性がある。ストローク調整ねじ1338によって提供されるストロークを適正に選択することによって、すなわち、そのデフォルトの動作状態の間にLM+機構によって失われなければならないモーションに等しいことにより、LM-機構1216内のロック要素に提供されるラッシュは、前述のようにその適切な動作を確実にするように選択され得る。実際には、スライドピン1320のアセンブリ、スライドピンばね1322及びストローク調整ねじ1338は、この実施形態におけるLM+機構の一部を構成する。
【0049】
上記のように、LM+及びLM-機構内の外向き(伸長された)及び内向きばね付き(格納された)要素の様々な特定の組み合わせを、必要に応じて移動制限して、提供し得る。より一般的には、一実装形態では、LM-機構(より具体的には、要素又はそのコンポーネント)は、伸長位置にバイアスされ得、LM+機構(再び、より具体的には、要素又はそのコンポーネント)は、格納位置にバイアスされ得る。この場合、LM-機構の伸長位置は、移動制限され得る。任意の所与の実施形態の別の実装形態では、LM-機構は、第1の力によって伸長位置にバイアスされ得、LM+機構はまた、第2の力によって伸長位置にバイアスされ得る。この場合、第1のバイアス力は、好ましくは第2のバイアス力よりも大きい。付加的に、再度、LM-機構の伸長位置は、移動制限され得る。更に別の実装形態では、LM-機構は、伸長位置にバイアスされ得、LM+機構はまた、伸長位置にバイアスされ得る。この場合、しかしながら、LM+機構の伸長位置は、移動制限される。この実装形態では、LM+機構の移動を制限する可能性のある利点は、ブッシング摩耗を低減するために、カム基部円上のバルブトレイン上のゼロ負荷を可能にすることである。