(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ビームフォーミング装置の試験
(51)【国際特許分類】
G01R 31/28 20060101AFI20231222BHJP
G01R 29/08 20060101ALI20231222BHJP
G01R 29/10 20060101ALI20231222BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
G01R31/28 Z
G01R29/08 Z
G01R29/10 E
G01R29/10 Z
G01S7/02 216
(21)【出願番号】P 2022541838
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2021012508
(87)【国際公開番号】W WO2021142125
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-20
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505377474
【氏名又は名称】フォームファクター, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロゼナウアー、デニス
(72)【発明者】
【氏名】ヘイワード、ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】スワート、ロイ
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-195374(JP,A)
【文献】特開2014-157027(JP,A)
【文献】特表2016-519450(JP,A)
【文献】中国実用新案第205992026(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0212641(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0134905(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0050569(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0092824(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0046003(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0070405(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0081049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00-29/26、
31/28-31/3193、
G01S 7/00-7/42、
13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験Nポート電気装置を電気的に試験するための装置であって、
前記被試験Nポート電気装置のN個のポートに直接接続され、単一の電気試験ポートを提供するように構成されたN対1電気信号ネットワークと、
少なくとも前記被試験Nポート電気装置を制御し、前記被試験Nポート電気装置の特性評価を行うように構成された試験コントローラと、を備え、
前記特性評価は、試験入力及び/または出力に前記被試験Nポート電気装置の前記N個のポートを個別に用いる代わりに、試験入力及び/または出力に単一の前記電気試験ポートを用い
て行われ、試験のための電気信号は、前記被試験Nポート電気装置の内部において放射されることなく伝送線路を通して伝送されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記被試験Nポート電気装置がビームフォーミングトランスミッタであり、前記N対1電気信号ネットワークは、単一の前記電気試験ポートが前記被試験Nポート電気装置の出力信号を選択された遠方界における方向へ提供するような仮想アンテナレンジであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記N対1電気信号ネットワークが、前記試験コントローラによって制御されるアクティブネットワークであるように構成され、それにより、選択された前記遠方界における方向は、前記試験コントローラによって変化させることが可能であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記被試験Nポート電気装置がビームフォーミングレシーバであり、前記N対1電気信号ネットワークは、単一の前記電気試験ポートが前記被試験Nポート電気装置に対して選択された遠方界における方向において試験信号を提供するような仮想アンテナレンジであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記N対1電気信号ネットワークが、前記試験コントローラによって制御されるアクティブネットワークであるように構成され、それにより、選択された前記遠方界における方向は、前記試験コントローラによって変化させることが可能であることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記N対1電気信号ネットワークは、パッシブネットワークであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記N対1電気信号ネットワークは、前記試験コントローラによって制御されるように構成されたアクティブネットワークであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記N対1電気信号
ネットワークは、電気装置を試験するためのプローブアレイと一体化されており、これにより、前記被試験Nポート電気装置は、プロービングを介して試験を行うことを可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記N対1電気信号
ネットワークは、前記被試験Nポート電気装置と一体化されている、請求項1記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多入力または多出力のビームフォーミング装置の試験に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイアンテナビームフォーマーを備えた集積回路の試験は、多数の高周波ポートを有し、それらの強度(magnitude)や相対位相について試験を行う必要があるため、困難である。(例えば、
図1Aに示すような)最も直接的な解決策は、マルチポートベクトルネットワークアナライザを用いることにより、RF入力からそれぞれのビームフォーミング出力までの伝送パラメータ(S21)の強度を測定することである。多くの場合、集積回路内には周波数を変換する回路が含まれており、当該周波数変換部分について考慮する必要があるため、この測定は非常に困難なことがある。
【0003】
さらに、出力の数が非常に多くなることもあり、出力ごとの試験には多大なコストや時間がかかる傾向にある。
【0004】
(例えば、
図1B上部に示すような)他の従来の試験方法として、ビームフォーマーをアンテナテストレンジに配置し、ビーム幅、サイドローブ抑制、及びステアリング性能等の関連パラメータの観点からその性能の特性を直接評価する方法がある。より具体的には、アンテナテストレンジを用いた従来のビームフォーマーの試験は、ビームフォーマーを一組の放射素子に接続することによって行われる。このような素子には、個別のダイポール、またはパッチアンテナアレイのパッチがある。そして、ビームフォーマー及び放射素子をアンテナテストレンジに配置し、放射パターンやサイドローブ等をチェックする。結局のところ、一般的に、(例えば、素子3のようなもののS21振幅と位相の)素子レベルの仕様については、関連するパラメータに影響を与える範囲内においてのみ、考慮する必要がある。しかし、この方法にも欠点があり、その最たる点はアンテナテストレンジを用いる点である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本研究では、ビームフォーミング装置のための新たな試験コンセプトを提供する。その主なアイデアは、被試験装置の複数の出力(または入力)に直接接続されたアクティブまたはパッシブビームコンバイナを、試験装置の一部として提供することである。これにより、試験に必要な入力/出力が単一になり、試験に要する時間や必要な試験装置の複雑さが大幅に軽減される。また、この単一の入力/出力により、アンテナテストレンジを用いることなく、関連する装置のパラメータを効果的に測定することが可能になる。
【0006】
いくつかの簡単な例により、コンセプトを明確化することが可能になる。
【0007】
被試験装置は、指定された角度範囲での狭いビームを制御することを目的としたN出力ビームフォーマーであると仮定する。ビームコンバイナは、パッシブ式でバランスの取れたN対1コンバイナとする。この場合、ビームコンバイナは被試験装置に対し、遠方界(far field)における事実上の「軸上」に配置される。被試験装置を制御してビームステアリングすることにより、ビームコンバイナは、遠方界の軸上における観測点においてビームがどのように観測できるかを効果的に知ることが可能となる。アンテナテストレンジ内の遠方界の軸上に配置された検出器との類似性は非常に高い。
【0008】
ビームコンバイナが能動素子である場合、より高度な操作が可能である。例えば、ビームコンバイナの入力の位相をシフトすることで、被試験装置に対して、制御可能な軸外の位置に仮想的に配置することができる。ここでは、アンテナテストレンジの遠方界の軸外に配置された検出器を例に挙げている。
【0009】
本アプローチの重要な利点は、上述したようなビームコンバイナを、電気回路の試験を行うためのプローブアレイと一体化することが可能な点である。これにより、チャネル毎の詳細なRF特性評価の実施や、被試験装置を物理的なアンテナテストレンジに持ち込む必要がなく、効率的なプローブベースのアプローチでビームフォーミング回路を試験することが可能となる。
【0010】
このようなプローブアレイは、垂直プローブアレイまたはメンブレンプローブアレイであってもよい。ビームフォーミングネットワークをケーブルでプローブに接続することにより、外部のビームフォーミングネットワークをエンジニアリングプローブに追加してもよい。ケーブルの長さ、従って位相を調整することにより、ビームステアリングを行ってもよい。また、上述したビームコンバイナを被試験装置に統合することも考えられる。これは、ビームフォーミング装置のオンボード診断に用いられてもよい。
【0011】
大きな利点が提供される。
【0012】
(1)テスターに必要なRF試験ポートの数が減り、試験が簡素化される。(2)パッシブ型N対1ビームフォーミングネットワークの場合、位相較正は不要となる。(3)アクティブビームフォーミングネットワークを用いることにより、非常に汎用性の高い試験システムを作ることが可能となる。(4)本アプローチは、アンテナレンジ測定よりも高速である。また、VNA(ベクトルネットワークアナライザ)やVSA(ベクトルシグナルアナライザ)によるポートごとの測定よりも高速である。(5)本アプローチにより、オンチップでの統合的な試験が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】マルチポート装置のための従来の2つの試験アプローチを示す図である。
【
図1B】マルチポート装置のための従来の2つの試験アプローチを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態の試験コンセプトを模式的に示す図である。
【
図3】例示的なパッシブ信号スプリッタを示す図である。
【
図4A】例示的なアクティブ信号スプリッタを示す図である。
【
図4B】例示的なアクティブ信号コンバイナを示す図である。
【
図5A】
図5B~5Eの結果に対する模擬試験構成を示す図である。
【
図5B】物理的にシミュレートされたビームパターンを、本発明の実施形態によるシミュレートされた試験によって決定されたビームパターンと比較する図である。
【
図5C】物理的にシミュレートされたビームパターンを、本発明の実施形態によるシミュレートされた試験によって決定されたビームパターンと比較する図である。
【
図5D】本発明の実施形態による模擬試験により決定された、正常なビームフォーマーと欠陥のあるビームフォーマーのビームパターンとを比較する図である。
【
図5E】本発明の実施形態による模擬試験により決定された正常なビームフォーマーと、欠陥のあるビームフォーマーのビームパターンとを比較する図である。
【
図6A】プローブヘッドとの統合に適した例示的なパッシブ信号スプリッタ(またはコンバイナ)を示す図である。
【
図6B】
図6Aの装置と垂直プローブのアレイとの統合の一例を模式的に示す図である。
【
図6C】
図6Aの装置とカンチレバープローブのアレイとの統合の一例を模式的に示す図である。
【
図6D】アクティブ信号スプリッタ(またはコンバイナ)とカンチレバープローブのアレイとの統合の一例を概略的に示す図である。
【
図7A】本発明の原理による試験回路と被試験装置との統合の例を示す図である。
【
図7B】本発明の原理による試験回路と被試験装置との統合の例を示す図である。
【
図7C】本発明の原理による試験回路と被試験装置との統合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1A~1Bは、マルチポート装置のための従来の2つの試験アプローチを示す。
図1Aの例では、被試験ビームフォーミング装置102は、ベクトルネットワークアナライザ104に接続されている。これは、被試験装置の各ポートを個別に試験するための機能を提供するが、上述した通り、時間がかる上に、正常な動作であることを確認するために必要な情報よりも得られる情報が多くなってしまうことがある。
図1Bの例では、被試験ビームフォーミング装置(被試験装置)108は、アンテナレンジ112において、試験ソース106により駆動される。その結果、被試験装置108の遠方界でレシーバ114を作動させることにより、及び/または被試験装置108でビームステアリングすることにより特性評価を行うことが可能となるビームパターン110が得られる。代替的に及び/または追加的に、遠方界における放射パターンの特性評価を迅速化するために、複数のレシーバを使用してもよい。しかしながら、アンテナレンジでの試験は、コストと時間がかかる。
【0015】
図2は、本発明の実施形態の試験コンセプトを模式的に示したものである。ここでは、被試験装置204が、単一の試験入力/出力208に接続された他のビームフォーミングネットワーク206に接続されている。ここで、符号202は被試験装置204の試験I/Oであり、符号210は、少なくとも被試験電気装置を制御して被試験電気装置の特性評価を提供するように構成された試験コントローラである。試験コントローラ210はまた、ビームフォーミングネットワーク206及び/または被試験装置に提供される試験入力を制御するように構成されてもよい。試験コントローラ210と他の構成要素との間の接続について、特にこれらの接続のいくつかは任意であり、図中での混乱を避けるために示していない。
【0016】
以上のように、この試験構成は、試験時間とコストを大幅に削減し、かつ、アンテナレンジテストを効果的にシミュレートすることが可能となる。個々のビームフォーミング信号を電気ネットワークで結合することにより、合成されたソースアンテナと受信アンテナに相当するものを空間で合成することが可能となる。これにより、実際に信号を放射することなく、空間におけるアンテナパターンに相当する電気計測を行うことが可能となる。これにより、ビームフォーミングネットワークを実際にアンテナアレイに接続してアンテナテストレンジで試験することなく、効果的に試験を行うことが可能となる。要するに、我々は「仮想アンテナレンジ」を作り上げた。アンテナ及びレンジの測定は相互に影響し合うため、レシーバとソースを入れ替えても同様の結果を得ることが可能となる。
【0017】
より具体的には、本発明の例示的な実施形態は、被試験Nポート電気装置の電気的な試験を行うための装置であり、該装置は、(例えば、
図2の符号204の)被試験電気装置のNポートに直接接続されるように構成された(例えば、
図2上の符号206の)N対1電気信号ネットワークと、(例えば、
図2の符号208の)単一の電気試験ポートを提供するように構成された試験コントローラ(例えば、
図2の210)と、少なくとも被試験電気装置を制御して被試験電気装置の特性評価を提供するように構成された(例えば、
図2の符号210の)試験コントローラとを含む。
【0018】
ここで、特性評価では、Nポート被試験電気装置のN個のポートを試験入力及び/または出力として個別に用いる代わりに、単一の電気試験ポートを試験入力及び/または出力として用いる。
【0019】
被試験Nポート電気装置をビームフォーミングトランスミッタとしてもよく、N対1電気信号ネットワークは、単一の電気試験ポートが被試験Nポート電気装置からの出力信号を選択された遠方界における方向(direction)で提供するように、仮想アンテナレンジとして構成されてもよい。N対1電気信号ネットワークは、選択された遠方界における方向を試験コントローラによって変化させることが可能であるように、試験コントローラによって制御されるように構成されたアクティブネットワークであってもよい。これは、
図1Bのレシーバ114を被試験装置108の遠方界で作動させることにより、被試験装置108の遠方界における送信パターンを測定することに類似している。
【0020】
被試験Nポート電気装置は、ビームフォーミングレシーバとしてもよく、N対1電気信号ネットワークは、単一の電気試験ポートが選択された遠方界における方向で被試験Nポート電気装置に試験信号を提供するように、仮想アンテナレンジとして構成されてもよい。N対1電気信号ネットワークは、選択された遠方界における方向を試験コントローラによって変化させることができるように、試験コントローラによって制御されるように構成されたアクティブネットワークであってもよい。これは、
図1Bのレシーバ114をトランスミッタに変更し、被試験装置108の遠方界で作動させて被試験装置108の遠方界における受信パターンを測定することに類似している。
【0021】
このように、本発明を実施するときは、試験中の装置がトランスミッタとして動作しているか、またはレシーバとして動作しているかに依存しない。従って、1対N及びN対1電気信号ネットワークは、本明細書を通じて同義であるとみなされる。ここで重要なのは、N対1電気信号ネットワークによって被試験装置のN個のポートに接続された単一の試験ポートを介して、被試験装置が特性評価されることである。
【0022】
N対1電気信号ネットワークは、
図3の例のように、パッシブネットワークであってもよい。ここでは、パッシブスプリッタ300は、図に示すように、1対2スプリッタ302及び伝送線路セグメント304から形成される。位相シフトは、スプリッタ間または出力間の伝送線路の長さを変更することにより調整することができる。
図3の例では1対8スプリッタを示しているが、これを一般化して1対Nスプリッティング(またはコンバイニング)を提供することは、当技術分野で公知である。
【0023】
N対1電気信号ネットワークは、試験コントローラによって制御されるように構成されたアクティブネットワークであってもよい。
図4Aは、例示的なアクティブ信号スプリッタ400(例えば、受信モードの被試験装置を試験する際に用いるもの)を示している。
図4Bは、例示的なアクティブ信号コンバイナ410(例えば、送信モードの被試験装置を試験する際に用いるもの)を示している。これらの例では、伝送線路セグメントは符号402、1対2(または2対1)スプリッタ/コンバイナは符号404、可変位相シフタは符号406、可変利得は符号408として参照される。このような可変位相及び利得を提供するための装置は、当技術分野で公知である。位相シフトを変更することにより、ビームを動的にステアリングすることが可能となり、利得を変更することにより、サイドローブレベルを変化させることが可能となる。これは、ビームフォーミング集積回路にとって一般的な構造である。
【0024】
この試験コンセプトが上述したように機能することを確認するために、シミュレーションを実施した。
図5Aは、模擬試験構成を示し、
図5B~5Eはその結果を示す。シミュレーションは、送信ビームフォーマー504に提供されるソース502を含む。送信ビームフォーマー504は、被試験模擬装置である。シミュレーションでは、受信ビームフォーマー506(すなわち、上述したようなN対1電気信号ネットワークのシミュレーション)及び単一の試験ポート508も含んでいた。受信ビームフォーマー506は、送信ビームフォーマー504に効果的に向けられた指向性受信アンテナとして動作するように、その位相シフトネットワークによって生成されたパターンを有する受信アンテナとして動作する。
【0025】
図5B~5Cは、物理的にシミュレートされたビームパターンと、本発明の実施形態によるシミュレーション試験によって決定されたビームパターンとを比較するものである。ここで、
図5Cは、
図5Bのデータの極座標プロットであり、物理的シミュレーションの結果は実線514で示され、本発明の実施形態のシミュレーションの結果は破線516で示されている。
【0026】
より具体的には、模擬被試験装置504のパラメータに基づき、電磁界シミュレータで物理的シミュレーションを行った結果である。実線514は、結果として得られた模擬被試験装置504の遠方界における放射パターンである。破線516で示す結果は、受信ビームフォーマー506において適切な位相シフトを用いて
図5Aの構成をシミュレートし、上述したように遠方界における角度を仮想的に生成することにより得られたものである。
図5B~5Cから分かるように、2つのシミュレーション結果の一致は良好であり、この「仮想アンテナレンジ」のコンセプトを証明している。
【0027】
このコンセプトの更なる検証は
図5D~5Eに見られるが、これらは本発明の実施形態による模擬試験によって決定された、正常なビームフォーマーと欠陥のあるビームフォーマーとのビームパターンを比較するものである。ここで、両方のプロットにおける符号518は、
図5Aにおける正常に動作する送信ビームフォーマー504のシミュレートされた性能を示す。
図5Dにおける曲線520は、送信ビームフォーマー504における第1のシミュレートされた障害状態(ビームの1つにおける振幅障害)の結果を示している。
図5Eにおける曲線522は、送信ビームフォーマー504における第2のシミュレートされた障害状態(ビームの1つにおける位相障害)の結果を示している。両方の場合において、障害は、正常な動作に対するシミュレーション結果に実質的な差異をもたらす。これは、本明細書に記載されるような試験が、ビームフォーミング装置の現実的な障害を検出するのに十分な感度を有することがあることを示している。
【0028】
N対1電気信号コンバイナは、電気装置を試験するためのプローブアレイと統合することが可能であるため、被試験Nポート電気装置は、プロービングを通じて試験することが可能である。
図6A~6Dは、このいくつかの例を示している。垂直プローブヘッドにおいて、ビームフォーミングネットワークは、プリント回路基板(PCB)、空間トランス、またはガイドプレートの層における不動態化金属構造として製造されてもよく、またはプローブヘッド内の様々な位置にアクティブダイとして組み込まれてもよい。カンチレバープローブヘッドでは、ビームフォーミングネットワークは、プローブヘッドのポリイミド層に不動態化金属構造として作製されても、プローブヘッドの様々な位置にアクティブダイとして組み込まれてもよい。
【0029】
図6Aは、プローブヘッドとの統合に適した例示的なパッシブ信号スプリッタ(またはコンバイナ)600を示す。ここで、符号602は単一試験入力/出力を示し、符号604は被試験装置に接続するためのN個のポートを示す。本例は、ウィルキンソン分配器による図表である。
【0030】
図6Bは、
図6Aの装置と垂直プローブ610のアレイとの統合の一例を模式的に示す図である。ここで、符号606は被試験装置、符号608はプローブアレイの底部ガイドプレートであり、プローブアレイの上部ガイドプレートは、この図中で示す場合には混乱を招くため、示していない。さらに、本発明の実施は、プローブヘッドの機械的構成の細部には依存しない。
図6Bの実施例は垂直プローブアレイを示しているが、N対1電気信号コンバイナをカンチレバープローブのアレイと統合することも可能である。
【0031】
図6C(上面図)は、
図6AのN対1装置とカンチレバープローブのアレイとの統合の一例を模式的に示す図である。ここで、符号620はプローブヘッド用基板、符号622はカンチレバープローブ、符号624は被試験装置606への他の入力/出力(例えば、試験に必要な電力及び制御接続など)を示す。
図6Dの例は、パッシブ型N対1装置600の代わりにアクティブ型N対1装置616が用いられることを除いて、
図6Cの例と同様である。接続部626は、アクティブ型N対1装置616への電源/接地/制御接続部である。ここでも、前の実施例と同様に、単一の試験入力/出力602のみが存在する。
【0032】
N対1電気信号コンバイナは、被試験Nポート電気装置と一体化させてもよい。これにより、本発明の原理に従って、オンボード試験機能を提供することが可能となる。
【0033】
例えば、「仮想テストレンジ」回路は、主要機能ダイと同じダイ上に作製されてもよい。これにより、試験アクセスを内蔵することが可能となる。スイッチを用いて「仮想テストレンジ」回路を起動してもよく、RFポートに結合して連続的に監視されてもよい。この方法は、試験ビームフォーミングネットワークとしてダウンコンバートまたはダイレクトサンプリングレシーバを用いることにより、デジタルドメインで実装されてもよい。各ビームフォーミングチャネルの位相シフタと利得制御は、(FIR、HR、その他の)デジタルフィルタとして実装されてもよく、利得制御は単純な乗算により算出される。いずれの場合も、受信及び送信の方向を入れ替えてもよいため、同じ方法で適切な送信ビーム形状を生成し、ビームフォーミングレシーバが十分な空間識別性を有することを確認することにより、レシーバの性能を評価してもよい。
【0034】
図7A~7Cは、このアイデアのいくつかの例を示す。全ての実施例において、符号702は被試験装置を示す。
図7Aでは、パッシブN対1電気信号ネットワーク704の使用例が示されている。試験ポートのビームフォーミングは、ダイ上、積層体上、またはPCB上のいずれでも可能である。結合サンプリングにより、通常動作中の試験が可能である。
【0035】
図7Bでは、アクティブ型N対1電気信号ネットワーク706の使用例が示されている。試験ポートのビームフォーミングは、ダイ上、積層体上、またはPCB上のいずれでも可能である。結合サンプリングにより、通常動作中の試験が可能となる。試験ポートは、独立してビームステアリングを行うことが可能であり、通常動作中にメインビーム・パワーだけでなくサイドローブ除去についても試験を行うことが可能となる。
【0036】
図7Cは、アクティブ型N対1電気信号ネットワークがデジタル方式で実装されるアクティブ型N対1電気信号ネットワーク708の使用例を示している。
【0037】
一般に、先行する実施形態のいずれも、アナログ回路、デジタル回路、またはハイブリッドアナログ-デジタルシステムで実施されてもよい。さらに、(例えば、フィルタリング等の)デジタル信号処理は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組合せで行われてもよい。
【0038】
単純化するために、先の実施例では、ビームフォーミング装置を1次元アレイとして示した。また、本発明の原理を適用して、素子の2次元アレイを有するビームフォーミング装置の特性評価を行うことも可能である。
図8Aのビームフォーミング装置802は、1次元アレイの一例であり、
図8Bのビームフォーミング装置804は、2次元アレイの一例である。N
x×N
y個のポートの2次元アレイを有する2次元ビームフォーミング装置の場合、N=N
xN
yとするだけで、上述した説明が適用される。当然ながら、遠方界における角度に対応する位相シフトは、1次元ではなく2次元で計算されなければならないが、これをどのように行うかは、当技術分野で公知である。