(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】カップ蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 47/40 20060101AFI20231222BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20231222BHJP
B65D 47/32 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
B65D47/40
B65D47/06 110
B65D47/32 100
(21)【出願番号】P 2022546582
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 CN2020074803
(87)【国際公開番号】W WO2021159288
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】517448098
【氏名又は名称】クオ、ツェファン
【氏名又は名称原語表記】KUO, Tse Huang
【住所又は居所原語表記】5F.-3, No.3, Yuanqu St., Nangang Dist. Building F Nankang Software Park, Taipei, 115 (TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】クオ、ツェファン
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08851325(US,B1)
【文献】登録実用新案第3219617(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0065333(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0198876(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0308779(US,A1)
【文献】特開2007-030984(JP,A)
【文献】特開2012-001265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/40
B65D 47/06
B65D 47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ本体の縁端によって画定されたカップ開口に取り付けられる蓋(100)であって、
前記蓋(100)は、カバー(110)と、側壁(120)と、フランジ(130)と、通気性フィルム(140)とを含み、
前記カバー(110)は、
平面部(112)と、前記カバー(110)に設けられる凹んだ開口部(114)とを有し、
前記側壁(120)は、前記カバー(110)の周囲に周設され、
前記フランジ(130)は、前記蓋(100)が前記カップ開口に取り付けられたときに前記カップ本体の縁端を収容するための溝空間が形成されるように、前記側壁(120)の底縁から延出し、
前記通気性フィルム(140)は、前記
平面部(112)の下方に設けられ、前記カバー(110)の前記凹んだ開口部(114)を覆い、
前記カバー(110)と前記通気性フィルム(140)は、単一の部品となるように一体的に形成され
、
前記通気性フィルムは、蒸気及びガスが透過するが、液滴が透過しない複数の微細孔を有する、蓋。
【請求項2】
前記側壁の一部は、前記カバーの一部の上方及び周囲に段差部を形成し、前記段差部は、前記凹んだ開口部の反対側に設けられる、請求項1に記載の蓋。
【請求項3】
前記段差部には、飲用孔が設けられる、請求項2に記載の蓋。
【請求項4】
前記飲用孔に嵌め込まれるように構成されるプラグをさらに含む、請求項3に記載の蓋。
【請求項5】
前記フランジは、前記溝空間に向かって内側に突出した少なくとも1つのリテーナを有し、前記フランジの底縁には、少なくとも1つのノッチが設けられる、請求項1に記載の蓋。
【請求項6】
環状フレームと、少なくとも1つのタブとを含む固定部材をさらに含み、
前記環状フレームは、前記溝空間内に設けられ、
前記タブは、前記環状フレームから前記フランジの外面に沿って下に延在し、前記ノッチを覆う、請求項5に記載の蓋。
【請求項7】
前記カバー、前記通気性フィルム及び前記固定部材は、それぞれ独立してアクリロニトリル-ブタジエンスチレン(ABS)、セルロースエーテル、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリ(エーテルブロックアミド)(PEBA)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエステル(PEE)、ポリエチレン(PE;超低密度ポリエチレン(ULDPE)及び極低密度ポリエチレン(VLDPE)を含む)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシルエーテル、ポリオレフィン(PO)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン-アクリロニトリル(PSAN)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルシクロヘキサン、シリコーン、スチレン-無水マレイン酸(SMA)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)及びそれらの組み合わせから選択される材料で作製される、請求項6に記載の蓋。
【請求項8】
前記カバー及び前記通気性フィルムは、それぞれ独立してポリプロピレン(PP)で作製され、前記固定部材は、ポリウレタン(PU)で作製される、請求項7に記載の蓋。
【請求項9】
前記通気性フィルムと前記凹んだ開口部は、共同で凹状キャビティを形成する、請求項1に記載の蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カップ本体のカップ開口に取り付けるための蓋の分野に関する。より具体的には、本開示は、蓋上の凹んだキャビティに、液体がカップから溢出したり、漏れたり、滴ったりすることなく蒸気を逸出させるための通気性フィルムが設けられる蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨て容器は、現代社会で広く使用されており、特に水、コーヒー、紅茶などの日常的な飲料に使用されている。使い捨て容器(カップなど)自体は、紙、段ボール、プラスチック、ラミネート材などの材料で作製されることが多いが、容器に取り付けるための蓋はほとんどプラスチックでされる。容器と蓋の材料が異なると、カップと蓋の密封性が不十分であるため、液漏れや液だれの原因になる。
【0003】
この問題を解決するために、蓋に固定コンポーネントを構築することによりカップと蓋を密封することができる。例えば、US2009/0090721A1(2009年4月9日)には、容器とそれに取り付けられた可撓性オーバーキャップを備え、可撓性オーバーキャップは、容器とオーバーキャップとの間の気密が達成されるように、それぞれ容器を密封しかつオーバーキャップに接着するための2つの表面を有するガスケットを含む包装システム(例えば、使い捨てカップ)が開示されている。
【0004】
しかし、カップと蓋の間に緊密な密封が形成されると、別の問題が発生する。カップに熱い飲み物を入れた場合、温度上昇によりカップ内の圧力が急激に上昇し、蓋を開けた瞬間(例えば、使用者が蓋を開けて飲むとき)に熱湯が勢いよく噴出する恐れがある。
【0005】
この問題を解決するために、蓋に小さな孔(空気孔など)を形成することによりカップの密閉空間内の蒸気を排出し、カップの内外の圧力のバランスをとることが提案されている。しかし、空気孔を追設すると、特に飲み物の輸送又は配送中に液体が溢れたり漏れたりする可能性が高くなる懸念がある。
【0006】
そこで、関連技術分野において、蓋とカップの気密性を保持しながら、液体が容器から溢出すぎたり漏出したりする可能性を最小限に抑制する改善された蓋の構造を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
以下は、読者に基本的な理解を提供するために本開示の簡略な概要を提示する。この概要は、本開示の広範な概要ではなく、本発明の鍵となる/決定的な要素を特定するものでも、本発明の範囲を示すものでもない。その唯一の目的は、後述するより詳細な説明の前置きとして、ここに開示されるいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0008】
本明細書で具現化され、広く説明されているように、本開示は、カップに取り付けられる蓋を提供する。本開示の実施形態によれば、前記蓋は、液体がカップから溢出及び/又は漏出する可能性を最小限に抑制しながら、蓋がカップの縁端に被せられたときに蓋とカップの間の密封を保持することができる改善された構造的特徴を有する。
【0009】
したがって、本開示の一態様は、カップ本体の縁端によって画定されたカップ開口に取り付けるための蓋に関する。前記蓋は、カバーであって実質的な平面部、及びカバーに設けられる凹んだ開口部を有するカバーと、前記カバーの周囲に周設される側壁と、前記蓋が前記カップ開口に取り付けられたときに前記カップ本体の縁端を収容するための溝空間が形成されるように、前記側壁の底縁から延出するフランジと、前記実質的な平面部の下方に設けられ、前記カバーの前記凹んだ開口部を覆う通気性フィルムと、を含む。好ましい実施形態によれば、本発明の蓋の前記カバーと前記通気性フィルムとは、単一の部品となるように一体的に形成される。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記側壁の一部は、前記カバーの一部の上方及び周囲に段差部を形成し、前記段差部は、前記凹んだ開口部の反対側に設けられる。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態において、前記段差部には、飲用孔が設けられる。
【0012】
好ましい実施形態によれば、前記蓋は、前記飲用孔に嵌め込まれるように構成されるプラグをさらに含む。
【0013】
本開示の特定の実施形態によれば、前記フランジの底縁には、少なくとも1つのノッチが設けられ、前記フランジは、前記溝空間に向かって突出した少なくとも1つのリテーナを有する。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態において、前記蓋は、環状フレームと、少なくとも1つのタブとを含む固定部材をさらに含み、前記環状フレームは、前記溝空間内に設けられ、前記タブは、前記環状フレームから前記フランジの外面に沿って下に延在し、前記ノッチを覆う。
【0015】
本開示の実施形態によれば、前記カバー、前記通気性フィルム及び前記固定部材は、それぞれ独立してアクリロニトリル-ブタジエンスチレン(ABS)、セルロースエーテル、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリ(エーテルブロックアミド)(PEBA)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエステル(PEE)、ポリエチレン(PE;超低密度ポリエチレン(ULDPE)及び極低密度ポリエチレン(VLDPE)を含む)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシルエーテル、ポリオレフィン(PO)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン-アクリロニトリル(PSAN)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルシクロヘキサン、シリコーン、スチレン-無水マレイン酸(SMA)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)及びそれらの組み合わせから選択される材料と同じ又は異なる材料で作製される。いくつかの実施例において、前記カバー及び通気性フィルムは、それぞれ独立してポリプロピレン(PP)で作製され、前記固定部材は、ポリウレタン(PU)で作製される。
【0016】
本開示の好ましい実施形態によれば、前記通気性フィルムは、蒸気及びガスが透過するが、液滴が透過しない複数の微細孔を有する。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態によれば、前記通気性フィルムと前記凹んだ開口部は、共同で凹状キャビティを形成する。
【0018】
上記構成により、このように製造された蓋は、改善された構造的特徴を提供する。即ち、蓋のカバー上の凹んだ開口部を覆う通気性フィルムは、蒸気を容器から逸出させることによりカップの内側と外側のガス圧のバランスをとり、液体が容器から溢出する可能性が最小限に抑制される。
【0019】
本開示の付随する特徴及び利点の多くは、添付の図面に関連して考慮される以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本説明は、添付の図面に照らして読まれた以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
【0021】
【
図1】本開示の一実施形態に係る蓋100を示す模式図である。
【
図2A】本開示の別の実施形態に係る蓋200の上面図を示す模式図である。
【
図2B】本開示の別の実施形態に係る蓋200の下面図を示す模式図である。
【
図3】
図2Aの線3-3に沿う蓋200の断面図である。
【
図4】
図3において丸で囲まれた本開示の別の実施形態に係る蓋200の部分の拡大図である。
【0022】
一般的な慣行に従って、記載された様々な特徴/部材は、縮尺通りに描かれておらず、代わりに、本発明に関連する特定の特徴/構成要素を最もよく例示するために描かれている。また、様々な図面における同様の参照番号及び名称は、同様の部材/部品を示すために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面に関連して以下に提供される詳細な説明は、本実施形態の説明として意図されており、本実施例が構築又は利用され得る唯一の形態を表すものではない。この説明は、この実施例の機能、並びにこの実施例を構成及び動作させるための一連のステップを示す。しかし、同じ又は同等の機能及び順序は、他の実施例によって達成されてもよい。
【0024】
I.定義
【0025】
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語がここに集められる。本明細書において他に定義されない限り、本開示において使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解され使用される意味を有するものとする。文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は複数の形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。具体的には、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、文脈が明らかに他に示されない限り、単数形「a」及び「an」は複数の言及を含む。また、本明細書及び特許請求の範囲で使用する「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」という用語は、同じ意味を有し、1、2、3又はそれ以上を含む。
【0026】
本開示全体を通して、用語「容器」は、物の保管、分配、包装、又は分割に利用される物品、レセプタクル、又は器を含むことが意図される。このような容器の例は、カップ、瓶、ボトル、ボウル、プレート、カートン、ケース、木枠、皿、又は他のタイプのホルダーを含むが、これらに限定されない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される用語「使い捨て容器」は、典型的には使い捨て材料に関連する特性を有する容器を指す。しかしながら、用語「使い捨て」の使用は、容器が必ずしも単回使用の容器でなければならず、1回の使用の後に廃棄されることを意味しない。本開示の特定の実施形態によれば、容器は、飲み物、特に熱い飲み物を保持するために使用される。
【0027】
本開示において、「蓋」は当該技術分野で周知の射出成形技術によって製造される。「射出成形」という用語は、所望の形状又は構成を有する物品を製造するために、1つ以上の材料(即ち、注入材料)を金型に注入する任意の技術を広く指す。注入材料として使用するのに適した材料の非限定的な例には、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマー、光硬化ポリマー、金属、ガラス、及びセラミックが含まれる。
【0028】
II.発明の説明
【0029】
本開示は、使い捨て容器と一緒に使用される改良された蓋を提供する。前記蓋は、蒸気や熱い空気を容器から逃がすことにより、容器から液体が突然噴出する可能性を最小限に抑制する独特な設計を有する。
【0030】
したがって、本開示の目的は、内部には、蓋が容器の縁端に取り付けられたときに空気を排出するための通気性フィルムが一体的に形成される蓋を提供することにある。
【0031】
理解できるように、本発明の容器は、飲み物を収容するためのカップ本体の縁端(brim)によって画定されたカップ開口を有し、蓋がカップ開口を覆うように前記縁端に取り付けられるカップであり得る。
【0032】
本開示の様々な実施形態によれば、本発明の蓋は、カップの開口を覆うようにカップの縁端に取り付けられ、カップの内容物がカップから容易に逸出することを防止することを意図している。カップをしっかりと保持するために、蓋のフランジはカップの縁端に実質的にマッチする必要がある。
【0033】
図1は、本開示の一態様に係る蓋100を示す。蓋100は、構造的に、実質的な平面部112及び凹んだ開口部114を有するカバー110と、カバー110の周囲に周設される側壁120と、側壁120の底縁から延出して溝空間Sを形成するフランジ130と、凹んだ開口部114を覆う通気性フィルム140とを含む。
【0034】
図1に示すように、凹んだ開口部114は、カバー110の縁の近くに設けられ、実質的な平面部112の表面より凹んでいる。なお、凹んだ開口部114は、カバー110における任意の位置に設けられてもよい。通気性フィルム140は、実質的な平面部112の下方に設けられ、凹んだ開口部114を覆う。好ましくは、通気性フィルム140は、カバー110と一体的に形成されて単一の部品となる。追加として又は代替として、通気性フィルム140とカバー110は、それぞれ独立して形成された後、(例えば、接着剤で)一緒に結合されてもよい。
【0035】
本開示の実施形態によれば、蓋100は、射出成形により作製される。射出成形は、注入材料、主にポリマーを加熱溶融させ、次に金型のキャビティに注射し、そこでキャビティの形状となるように冷却して硬化させる製造プロセスである。本開示の蓋100を製造するのに適した注入剤の例には、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン(ABS)、セルロースエーテル、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリ(エーテルブロックアミド)(PEBA)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエステル(PEE)、ポリエチレン(PE;超低密度ポリエチレン(ULDPE)及び極低密度ポリエチレン(VLDPE)を含む)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシルエーテル、ポリオレフィン(PO)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン-アクリロニトリル(PSAN)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルシクロヘキサン、シリコーン、スチレン-無水マレイン酸(SMA)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1種の注入材料を用いて射出成形により本発明の蓋100を形成する。ここで、カバー110、側壁120、フランジ130及び通気性フィルム140は、単一の部品となるように一体的に形成される。また、カバー110と通気性フィルム140は、それぞれ独立して同じ又は異なる注入材料で形成されてもよい。2種類の注入材料が射出成形に使用される場合、両者の注入材料は、既知のプロセスに従って、同時又は順次に注入することができる。いくつかの実施形態において、カバーは、第1注入材料(例えば、PP)で作製され、通気性フィルムは、第2注入材料(例えば、PE)で作製される。2種類の注入材料が使用される実施形態において、少なくとも1種は食品グレードの材料である。追加として又は代替として、少なくとも1種の注入材料は、生分解性材料である。他の実施形態において、1種のみの注入材料(例えば、PP又はPE)を用いて本発明の蓋100を形成する。いくつかの実施例において、PPを用いてカバー110及び通気性フィルム140の両方を形成して蓋100を構成する。他の実施例において、PEを用いてカバー110及び通気性フィルム140の両方を形成して蓋100を構成する。
【0037】
好ましくは、通気性フィルム140は、注入材料の緯糸及び経糸(例えば、PPの緯糸及び経糸又はPEの緯糸及び経糸)を織り合わせることにより形成される。これによって、蒸気及びガスが透過するが、液滴が透過しない微細孔を有するフィルムが形成される。言い換えれば、液滴の形の飲み物ではなく、熱い飲み物の蒸気は通気性フィルムの微細孔から逸出することができる。このようにして、カップ内外の圧力が平衡になり、飲用時や運搬時にカップから飲み物が急に噴出する可能性は低くなる。
【0038】
図2A、2B、3及び4は、本開示の他の態様に係る蓋200を示す。上述した蓋100と同様に、本実施形態の蓋200は、構造的にカバー210と、側壁220と、フランジ230と、通気性フィルム240とを含み、カバー210は、実質的な平面部212と、凹んだ開口部214とを有する。凹んだ開口部214の底部は、通気性フィルム240によって覆われる。好ましくは、カバー210と通気性フィルム240は、単一の部品となるように一体的に形成される(
図2、3参照)。
図3の断面図によく示されるように、凹んだ開口部214の縁は、通気性フィルム240内に滑らかに延在し、それらの間には、隙間や裂け目がなく、これによって、凹んだ開口部214と通気性フィルム240は、共同で凹状キャビティ(「C」で示される)を形成し、熱い飲み物の蒸気(液滴ではなく)は、フィルム240から逸出することができ、カップ外部の比較的冷たい空気と接触すると水滴として凹状キャビティCに蓄積される。
【0039】
さらに、
図2Aに示すように、蓋200の側壁220は、カバー210の一部の上方及び周囲に形成される段差部222を有する。好ましくは、段差部222は、凹んだ開口部214の反対側に形成され(即ち、凹んだ開口部214から離れる)、飲用孔224は、段差部222上に形成され、使用者がそこから飲み物をすすったり飲むことができる。また、飲用孔224が凹んだ開口部214から離れて設けられることにより、カップが傾けられる(即ち、使用者が飲用する)ときに液体が通気性フィルム240をブロックする又は塞ぐ可能性が低下する。追加として又は代替として、液体が飲用孔224から溢出することを防止するために、飲用孔224にプラグ260を挿入することができる。本開示に適用されるプラグ260は、飲用孔224の形状に適合しかつ飲用孔224に挿入されると密封を形成する限り、特定のサイズ及び/又は形状に限定されない。
【0040】
図2B、3及び4に示すように、溝空間Sは、フランジ230の両側壁によって画定され、U字型空間を形成する。カップの縁端(図示せず)は、蓋200がカップの縁端に取り付けられたときに、この空間にしっかりと保持され得る。カップと蓋200との間に確実に密封を形成するために、フランジ230は、その底縁にある少なくとも1つのノッチ234(
図2B参照)と、溝空間Sに向かって内側に突出したリテーナ232(
図3、4)を含むように設計される。ノッチ234及び突出したリテーナ232は、蓋200がカップの縁端に取り付けられたときにカップの縁端を適切な位置に保持する目的を果たす。
【0041】
また、フランジ230は、蓋200をカップに固定するための固定部材250をさらに含む。
図4の拡大図に示すように、固定部材250は、環状フレーム252と、少なくとも1つのタブ254戸を含む。環状フレーム252は、実質的に環状であり、溝空間S内又は蓋200のカップ開口に対向する内面に設けられる。蓋200がカップ開口上に取り付けられたときに、環状フレーム252は、カップ本体の縁端及びカップ本体の少なくとも一部に接触すると同時に、タブ254は、環状フレーム252からフランジ230の外面に沿って下に延在してフランジ230のノッチ234を覆う。タブ254は、蓋200がノッチ234から切り裂かれるのを防止する目的も果たし、これによって、蓋200の構造的完全性が改善される。したがって、タブ254は、ノッチ234の底部開口の幅以上であることが好ましい。このようにして、タブ254の下縁は、ノッチ234の底部を横切って設けられる。タブ254は、平坦部材又はフレームとして形成することができ、ノッチ234の形状にマッチする形状を有する。追加として又は代替として、タブ254は、環状フレーム252を蓋200上に保持する目的も果たし、これによって、蓋200とカップの確実な係合が達成される。そのため、各タブ254は、環状フレーム252からフランジ230の外面(即ち、外側に面する面)に沿って下向きにフランジ230内に延在し、ノッチ234を完全に覆う。これによって、固定部材250は、フランジ230及び蓋200としっかりと固定される。好ましくは、ノッチ234の数は、タブ254の数と同じであり、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってもよいが、これに限定されない。好ましい実施形態において、タブ254及びノッチ234はそれぞれ3つである(
図2B参照)。
【0042】
いくつかの実施形態において、固定部材250は、カバー210の注入材料と同じ又は異なる材料で作製される。さらに、固定部材250は、上記と同じ射出成形プロセスによって作製されてもよい。追加として又は代替として、固定部材250及びカバー210は、単一の部品となるように一体的に形成されてもよいか、又はそれぞれ独立な部品として形成されてもよい。いくつかの実施形態において、固定部材250はPUで作製され、カバー210はPP又はPEで作製される。
【0043】
以上を踏まえ、本開示の蓋は、通気性フィルムの構造的特徴を有する点で有利である。前記通気性フィルムは、カバーの実質的な平面部よりも低く配置され、蒸気を逸出させながら液滴がカップから溢出するのを防止する。さらに、蓋の通気性フィルム及びカバーは、射出成形によって単一の部品となるように一体的に形成される。結論として、本開示は、安価に製造可能であるとともに、蓋とカップの密封を強化し、液体溢出の可能性を低下できる蓋を提供する。
【0044】
実施形態の上記の説明が単なる例として与えられており、当業者によって様々な変更がなされ得ることが理解されるだろう。上記の明細書、実施例及びデータは、本発明の例示的な実施形態の構造及び使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態が、ある程度具体的に、又は1若しくは複数の個々の実施形態を参照して、上述されているが、当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を行うことができる。